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1 - Pmda 独立行政法人 医薬品医療機器総合機構
1. 品目の総括 1.1 品目の概要 品 目 の 概 要 2 類別 名称 1 機械器具(10) 放射性物質診療用器具 一般的名称 放射性医薬品合成設備 (70009000) 販売名 放射性医薬品合成設備 FASTlab 3 クラス分類 クラスⅢ 4 申請者名 GE ヘルスケア・ジャパン株式会社 5 使用目的、効能又は効果 本品は、遠隔操作により自動的に放射性標識化合物の注射剤を製造 するために用いる。 [18F]FDG の効能・効果は以下のとおりである。 ① 悪性腫瘍の診断におけるグルコース代謝異常の評価 ② 心筋のグルコース代謝能の評価 ③ てんかん発作焦点のグルコース代謝異常領域の確認 [18F]フルテメタモルの効能・効果は以下のとおりである。 アルツハイマー型認知症が疑われる認知機能障害を有する患 者の脳内アミロイドベータプラークの可視化 6 構造・原理 バルブ、アクチュエータ、ヒータ、真空ポンプ、各種センサなどか ら成る合成装置本体に、反応試薬等が予め充填された専用のディス ポーザブルカセットをセットし、サイクロトロンから放射性物質を 導入し、適切な条件で反応を進めることにより放射性同位元素標識 化合物を合成する。 7 操作方法又は使用方法 1. 合成用カセットをセットする。 2. 放射性物質を導入する。 3. 合成を開始する。 4. 合成完了後、品質管理のための品質検定を行う。 1 8 備考 申請年月日: 平成 26 年 3 月 20 日 申請区分: 新医療機器(承認基準なし、臨床あり) 一般的名称への該当性説明: 放射性医薬品合成設備の定義は、 「悪性腫瘍、代謝機能等の検査に用 いる核医学診断用放射性薬剤又は放射性医薬品の小規模製造設備を いう。例えば、PET 検査に使用されるポジトロン核種で標識された 化合物を合成する設備がある。」であり、本申請品の構造、動作原理、 使用目的等は当該定義に合致する。 外観写真: 申請書別紙 13 参照 2 1.2 起原又は発見の経緯及び開発の経緯 1.2.1 起原又は発見の経緯 1.2.1.1 フルテメタモル合成用カセットと[18F]フルテメタモルについて 本一部変更申請は、既承認の構成品である FDG 合成用カセットに加え、フルテメタモル合成 用カセット(下図 1.2.1.1-1)を追加するものである。合成装置本体及びフルテメタモル合成用カ セットを用いて[18F]フルテメタモル(下図 1.2.1.1-2)が溶液として合成される。 [18F]フルテメタモルは、ポジトロン断層撮影法(PET)による認知機能障害の診断において、脳 内アミロイド β 沈着の評価に使用することを目的とした化合物である。 [図 1.2.1.1-1]フルテメタモル合成用カセット [図 1.2.1.1-2] [18F]フルテメタモル 6-Benzothiazolol, 2-[3-[18F]fluoro-4-(methylamino)phenyl] 18 HO S N F H N Me 1.2.1.2 疾患と背景 認知機能障害の主な原因である認知症は脳の進行性変性を特徴とし、記憶、思考、行動及び 感情に影響を及ぼす。厚生労働省研究班の報告によれば本邦の認知症患者は 2012 年で約 462 万人、65 歳以上の約 7 人に 1 人と推計されている。認知症に罹患すると、日常生活全般にケ アが必要であり、たとえば米国の社会的コストは約 1000 億ドルと推定されている([1] Hurd et al. 2013)。 認知症の主な原因はアルツハイマー病(AD)で、患者の 50~75%を占める([2] World Alzheimer Report 2009, Alzheimer’s Disease International)。この疾患は、アミロイド斑と神経原線維変化 を病理学的所見とする。DSM-IV(精神障害の診断と統計の手引き第 4 版)によれば、主な AD の確定診断は、臨床徴候及び症状の既往のほか、剖検時のアミロイド β の組織病理学的 3 検出に基づいて下される。 本邦でも加齢によって AD の罹患率が増加していることから、高齢化社会が進むにつれて患 者数が急速に増加すると考えられている([3] Yoshitake et al. 1995)。65 歳以上の AD 患者数は、 2005 年に 117 万人と推定され、20 年間で倍増すると予測されており、2015 年に 182 万人、 2025 年に 240 万人に増加すると考えられる([4] Shimokata et al. 2008)。患者数が増加するこ とから、社会経済的な影響を含め、介護費や治療費も増加する。 1.2.1.3 アルツハイマー病の病態 アルツハイマー病(AD)は、日本では脳血管性認知症及びレビー小体型認知症(DLB)とともに、 認知症の最も一般的な形態の一つである。一般的に 65 歳以上の高齢者で診断されるが、罹患 率は少ないものの若年で発症する場合もある。 初期の段階では、最も一般的に認められる症状は、最近覚えたことを思い出せないなどの記 憶喪失である。しかし、これらの症状は「加齢に伴い、高齢者によくある」事象、又はスト レスによるものであるなどと誤解されることが多い。疾患が進行すると、精神錯乱、短気や 攻撃性、気分の変動、言語障害、長期記憶喪失、感覚の衰えに起因する引きこもりといった 症状が現れる。また、アルツハイマー病は症状がはっきりするまでの期間が一様ではなく、 診断されないまま数年にわたって進行してしまうことがある。 診断は、通常、患者の病歴、傍系親族の病歴、及び臨床所見から行われている。 X 線コンピュータ断層撮影(CT)や磁気共鳴画像撮影法(MRI)を用いた最新の画像診断により、 その他の脳病状や認知症サブタイプを排除したり、記憶テストなどの知的機能の評価を行う ことにより、疾患の状態をより明らかにすることができる。このように、診断を容易にし標 準化するための基準が確立されてきているものの、正確には脳組織を入手して組織学的検査 ができる死後までは確定的な診断ができない。したがって、別の認知症であるにもかかわら ず、アルツハイマー病と誤診される患者も少なくない。 4 1.2.1.5 脳内アミロイドの検出とマーカ 現在、アミロイド β を含むアミロイド斑を検出する主な方法は、脳生検又は剖検時に採取し た脳組織の病理組織分析であり、免疫組織化学的(IHC)試薬(アミロイド β に対する抗体)( [10] Vallet et al. 1992)又は、線維性アミロイドに特異的な組織化学的(HC)染色を用いる([11] Cooper 1969)。In vivo で線維性アミロイドを検出することができる非観血的方法を確立すれば、生存 患者に関して有用な診断情報や予後情報が得られることから、臨床的ベネフィットがある。 現在、In vivo で線維性アミロイドを検出する目的でデザインされた造影剤が複数開発されて いる([12] Wu et al. 2005)。このような薬剤は、顕微鏡下で線維性アミロイドを検出するのに 用いられる組織学的色素の類似体である。 チオフラビン T 色素は、脳切片中の線維性アミロイド β に選択的に結合し、その結果、死後 のアミロイド斑の特徴的なパターンを標識する蛍光が生じる。しかし、チオフラビン T は脳 血液関門を通過しないため、脳内の in vivo イメージング用の静脈投与剤としては不適であっ た。 このため、脳血液関門を通過する造影剤の開発が進められ、いくつかの修飾を経てチオフラ ビン T の中性類似体である誘導体、Pittsburgh Compound B (PiB:2-[4-methylamino phenyl]-1, 3-benzothiazol-6-ol, PiB)が開発された。 PiB は、血液脳関門を通過し、ナノモル単位の低濃度において線維性アミロイドに高い親和 性で結合するが、正常な脳組織からは迅速に除去される。PET で測定した生体大脳皮質にお ける 11C-PiB 取り込みレベルは、脳組織の HC 分析及び IHC 分析によって明らかにされ、か つ死後に測定した脳組織内の線維性アミロイド濃度と相関していた([13] Ikonomovic et al. 2008)。 しかし一方で、PiB の PET 撮像特性は、陽電子放出同位元素である炭素 11(11C)に由来したも のであり、11C の半減期は約 20 分と短いため、PET 撮像に用いる造影剤として医療機関で製 造し、流通するには限界がある。 6 2012 年に PET 撮像によるアミロイド β 検出を目的としてフロルベタピルが欧米において放射 性医薬品として承認された。また、2013 年には同じく米国 FDA より本申請品により合成さ れる放射性医薬品である VIZAMYL([18F]flutemetamol, GE ヘルスケア社)が承認を受けたとこ ろである。VIZAMYL は本装置及び本申請で追加するフルテメタモル合成用カセットで合成 されたものである。 1.2.1.7 フルテメタモルの期待される有用性 一般に、認知症の原因は多岐にわたり、症状が広く重なることから診断が困難である。この ため、認知症の主たる原因であるアミロイド β を in vivo で検出できれば、臨床上非常に有用 である。前述のとおり、従来アミロイド斑の検出方法は剖検又は脳生検で得た脳組織を用い た組織学検査、又は免疫組織学的検査だけであった。アミロイド β を in vivo で検出する方法 を確立できれば、アミロイド β の有無に基づいて認知症の判断、さらに治療開始及び治療法 を決定することができるため、臨床的に大きなベネフィットがもたらされる。 PET 画像撮影バイオマーカとして、アミロイド β に選択的に結合するフルテメタモルを用い ることで主に以下の臨床的有用性が期待される。 ① アミロイド β を迅速かつ特異的に検出することができる。 ② 認知機能障害を有する患者において初期の AD においても診断が可能となり、AD に対 して早期に適切な治療を開始することができる。 ③ 治療開始後、アミロイド β 沈着を評価することにより治療薬の奏効率を客観的に評価 できる。 8 1.2.2.2 FASTlab フルテメタモル合成用カセットの開発 1.2.1 項で述べたとおり、GE ヘルスケア社は、20 年にチオフラビン T 誘導体に関する特許権 を取得した。これを元に 2003 年にチオフラビン誘導体に的を絞った研究開発プログラムが開始 され、2004 年フルテメタモルが同定された。 [18F]フルテメタモルは放射性化合物であるため、臨床利用されるにあたり被曝を避け遠隔的に 合成される必要がある。そこで最新の合成装置である FASTlab をプラットフォームとして放射 性同位元素で標識した[18F]フルテメタモルを製造するため、フルテメタモル合成用カセットの 製品化を目的として開発に着手した。 最初に一般的な合成手法を用いて実現できる 11C 置換反応を用いて、[11C]フルテメタモルの合 成工程が検討され、合成に成功した。しかし実際の臨床利用にあたり 11C 標識化合物の半減期 は 20 分と短く、合成後すぐに使用しなければならず、検査計画が立てにくい等の問題があった。 そこで、標識放射性同位元素を 11C から 18F に変え、[18F]フルテメタモルの合成の検討が行われ た。 実際製品化している TRACERlab をベースに合成工程が検討され、[18F]フルテメタモルの合成に 成功した。しかし、TRACERlab は設計に柔軟性を持つ反面、手作業による操作が多く、操作者 や手技の程度によって合成収率にばらつきが出ることがあった。これを受け、合成工程をほぼ 全自動化できる FASTlab プラットフォームに移し、FASTlab 合成用カセットの開発が進められ た。 TRACERlab では最終溶液の撹拌工程を電磁気的に行っていたが、FASTlab では吸引・注入動作 によるものから SPE カートリッジによる精 による混合に改良した。その後、精製工程の 製に変更し、FASTlab 専用のフルテメタモル合成用カセットとして製品化した。 以下(1)~(4)に開発経緯の詳細を述べる。 (1) [11C]フルテメタモルの合成 合成プロセスの開発にあたり、まず 11 C 標識アナログである[11C]フルテメタモルの合成が検 討され、前駆化合物に 11C 標識化合物の化学合成に一般的に用いられる を 用いて合成が行われた。下図 1.2.2.1-1 に反応式を示す。 [図 1.2.2.2-1] [11C]フルテメタモルの合成 [11C]フルテメタモル 前駆化合物 10 以上より、本一部変更申請で追加するフルテメタモル合成用カセットとして製品化してい る。 1.2.2.3 フルテメタモル合成用カセットの性能・安定性評価 フルテメタモル合成用カセットを設計するにあたり、合成装置の主たる性能である合成収率を 向上させることを主眼に、合成プロセスを最適化する条件が検討された。 一般に放射性標識化合物の合成において、重要となる工程は、 1)放射性同位元素の取り込み(置換反応による標識) 2)合成による不純物や副産物を除去する精製工程 が挙げられる。 これらを最適化することで、合成装置の主たる性能である合成収率が確保され、且つ不必要な 含有物質が少ない最終溶液を合成することが可能となる。 (1) 置換反応の最適化 まず、[18F]フルテメタモルを合成する際、最も重要な反応である放射性同位体元素の置換 反応の最適化が検討された。 前項で述べた TRACERlab による合成工程をベースに主に下記項目が検討された。 ( ( ) ) これらの検討により、最も高収率が得られるカセット内のバイアルに含まれる 及び 、 、 が決定された。 (2) 精製工程の最適化 前述のとおり本カセットでは最終的に SPE(固相抽出)カートリッジによるカセット内精 製が採用された。本工程について主に下記のパラメータを検討し、SPE 精製工程について の堅牢性を確認した。 以上から最終精製プロセスのパラメータについて最適化設計を行った 12 (2) 臨床試験 前項の非臨床試験の評価をもって臨床試験を実施した。 以下に概要を述べる。 臨床試験の概要 フルテメタモル(18F)注射剤の臨床開発プログラム 脳内の老人斑である線維性アミロイドβの視覚的に検出することを目的として、フルテメタモ ル(18F)注射剤の安全性及び有効性データを得るため、計12試験を実施した。表1.2.2.4-2に 示すとおり、第I相試験2件、第II相試験2件、第III相試験8件を含む12件の臨床試験に登録され た831例の被験者からデータを収集した。12試験目は第III相読影医電子トレーニング試験 (GE067-021)であり、被験者登録は行わず、試験終了していなかった第II相国際共同試験 (GE067-017)を除く他の10試験から得たプール画像を解析し、[18F]フルテメタモルのPET画 像の適切な読影を医師が学習するための電子トレーニングプログラムの効果を評価した。 対象とした被験者母集団は、欧米の健康成人、aMCI患者、アルツハイマー病の可能性が高い (pAD)患者、NPHの診断又は疑いのある患者、余命1年以内の患者(初期診断を問わず)で あった。また本臨床開発プログラムには92例の日本人被験者を組入れ、第I相の2試験中1試験 (GE067-014)には22例(健康成人14例、AD患者8例)、第II相の2試験中1試験(GE067-017) には70例(健康成人25例、pAD患者25例、aMCI患者20例)を登録した。 患者の対象疾患及び病変の有無を分類する診断の正確性は、感度(対象病変を有する患者に おける真陽性検査結果)と特異度(対象病変を有しない患者における真陰性検査結果)で示 される。フルテメタモル(18F)注射剤の場合、対象病変は老人斑であり、感度及び特異度の 判断は異常老人斑密度の検出に依存する。有効性は認知障害患者の診断における精度及び再 現性(感度、特異度、陽性的中率[PPV]、陰性的中率[NPV])について評価した。 また、診断結果の再現性を評価することも重要である。診断用放射性医薬品の場合、再現性 は(1)複数の独立した読影医が1つの画像の読影でどれくらい一致するかという読影医間一 致度(IRA)、(2)同じ読影医が1つの画像を2度、異なる時間に読影した際どれくらい一致 するかという読影医内再現性(IRR)で判断される。 17 [表1.2.2.4-2 ]臨床試験一覧 開発 相 試験名 ALZ103 試験 I GE067-014 試験 概要 安全性、生体内分 欧州 布、内部被曝線量 日本人での安全性、 生体内分布、内部被 日本 曝線量 ALZ201 試験 POC GE067-017 試験 c 脳内取り込み及び 安全性の非盲検評 価 II GE067-005 試験 III GE067-007 試験 GE067-008 試験 GE067-009 試験 GE067-010 試験 GE067-011 試験 GE067-015 試験 GE067-021 試験 d 実施場所 aMCI から AD への 移行予測 脳剖検試験 脳生検試験 脳生検試験 脳生検試験 脳生検試験 健康成人での特異 度試験 電子読影 トレーニング試験 c 投与方法/薬剤の種類 投与放射能量 EOLa 被験者 aMCI NPH 患者 患者 健康 成人 合計 22 単回/フルテメタモル b 100、150 又は 185 MBq 8 14 単回/フルテメタモル b 100、150 又は 185 MBq 8 14 単回/フルテメタモル b、又は 2 回投与/フルテメタモル b、 185 MBq 120 MBq 欧州 8 施設 又は 11 各単回/フルテメタモル b 及 333 MBq C-PiB 11 び [ C]PiB 185 MBq(単回投与 日本 5 施設及び韓国 1 単回/フルテメタモル b、又は 被験者) 施設 2 回投与/フルテメタモル b 120 MBq(2 回投与 被験者) 米国及び欧州 28 施設 単回/フルテメタモル b 米国及び英国 19 施設 米国 1 施設 米国 1 施設 フィンランド 1 施設 フィンランド 4 施設 pAD 患者 単回/フルテメタモル b 単回/フルテメタモル b 単回/フルテメタモル b 単回/フルテメタモル b 単回/フルテメタモル b 米国及び欧州 10 施設 単回/フルテメタモル b 185 MBq 米国 該当なし 該当なし 20 25 72 25 20 25 70 232 232 180 180 7 12 15 18 7 12 15 18 180 合計 27 185 MBq 185-370 MBq 185 MBq 185 MBq 185 MBq 185 MBq 68 272 52 181 181 259 831 EOL=終末期患者、MBq=メガベクレル、aMCI =健忘性軽度認知障害患者、PiB=Pittsburgh 化合物 B、NPH=正常圧水頭症患者、pAD=アルツハイマー病の可能性が高い患者、POC=概念実証 a 余命 <1 年、年齢≥55 歳、b フルテメタモル(18F)注射剤、c GE067-017 試験結果は統合解析に含めず、別個に記載。d 被験者は組み入れず、他試験で収集した画像を用いた。 GE067 試験 ISE、表 1 18 22 第I相試験 ALZ103試験及びGE067-014試験:フルテメタモル(18F)注射剤の第I相試験2試験を実施し、被験者 合計44例を対象とした。ALZ103試験は白人被験者22例、GE067-014試験は日本人被験者22例で あった。両試験とも同様のデザインで、主な違いは被験者の人種であった。いずれの試験も、 被験者22例(14例は健康成人、8例はアルツハイマー病の可能性がある(probable AD[pAD])と臨 床診断された患者)におけるフルテメタモル(18F)注射剤の安全性、生体内分布、内部被曝線量を 検討することが目的であった。 • ALZ103試験 (海外) 健康成人及びpAD患者を対象とした第I相単一施設・単回投与・非盲検・非ランダム化試 験であり、放射性同位元素フッ素18で標識されたフルテメタモル([18F]フルテメタモル) を用いた最初の臨床試験である。健康成人及びpAD患者におけるフルテメタモル(18F)注 射剤の安全性、生体内分布及び内部被曝線量の評価と撮像条件の最適化を目的として実 施した。被験者集団は、50歳以上の被験者22例(健康成人 14例、pAD患者8例)であった。 フルテメタモル(18F)注射剤は安全であり忍容性は良好であった。死亡例、重篤な有害事 象、及び有害事象による中止例はみられなかった。臨床検査パラメータ(血液学的検査、 凝固検査、血清生化学的検査、尿検査)、バイタルサイン、及びECGの評価では、臨床 的に重要な傾向及び安全性のシグナルは認められなかった。 [18F]フルテメタモルを用いた脳のPET撮像において、pAD患者と健康成人のURを比較す ることで両者を鑑別することができた。脳橋を除くすべての検査領域で示された[18F]フ ルテメタモルのURは、pAD患者の大半で健康成人と比べて高かった。こうした所見は 統計学的な比較でも裏付けられた。投与開始85分後の前帯状皮質領域の画像を除き、異 なる2時点の30分スキャン枠([18F]フルテメタモル投与後85分及び140分)でpAD患者と健 康成人の画像を比較したところ、すべての皮質領域で有意な差(p<0.05)が認められた。 • GE067-014試験 (国内) 健康成人及びpAD患者を対象とした第I相単一施設・単回投与・非盲検・非ランダム化試 験であり、日本人集団におけるフルテメタモル(18F)注射剤の安全性、生体内分布及び内 部被曝線量の評価と撮像条件の最適化を目的として実施した。本試験の被験者集団は、 50歳以上の被験者22例(健康成人14例、pAD患者8例)であった。 日本人健康成人及び日本人pAD患者において、フルテメタモル(18F)注射剤は安全であり 忍容性は良好であった。死亡例、重篤な有害事象、及び有害事象による中止例はみられ なかった。有害事象が1件報告されたが、軽度であり試験中に回復し、治験薬との関連 性はないと判断された。臨床検査パラメータ(血液学的検査、凝固検査、血清生化学的 検査、尿検査)、バイタルサイン、及びECGの評価では、臨床的に重要な傾向及び安全 性のシグナルは認められなかった。 19 [18F]フルテメタモルを用いた脳のPET撮像において、pAD患者と健康成人のSUVRを比較 することで両者を鑑別することができた。脳橋及び内側側頭皮質を除くすべての検査領 域で示された[18F]フルテメタモルのSUVRは、pAD患者の大半で健康成人と比べて高か った。 第II相試験 • ALZ201試験 (海外) 第II相多施設共同・非盲検・POC試験で、AD患者及び健忘性軽度認知障害(aMCI)患者の PET検査による脳内アミロイドβ蓄積増加部位の確認、並びにこれらの患者と健康成人の 鑑別におけるフルテメタモル(18F)注射剤の有効性と安全性を評価することを目的とし た。白人被験者72例を対象として実施された。被験者の内訳は、健康成人(n=25)、pAD と臨床診断された患者(n=27)、ADの前駆段階とされているaMCIと臨床診断された患者 (n=20)であった。 フルテメタモル(18F)注射剤におけるpAD患者、aMCI患者、健康成人の忍容性は概ね良好 であった。死亡例及び有害事象による中止例はみられなかった。1件の重篤な有害事象 が報告されたが、治験薬投与前に発現したものであった。臨床検査パラメータ、バイタ ルサイン、ECG、神経学的・理学的検査に臨床的に重要な変化はみられなかった。 フルテメタモル(18F)注射剤投与後のPET撮像により、pAD患者と健康成人との鑑別が可 能であった。各被験者のベースライン時の診断をSoTとして用いると、盲検化された[18F] フルテメタモル画像の視覚的読影の合意(過半数:盲検化画像の読影医5名中最低3名の 一致と定義)での感度は93%、特異度は96%であった。定量化した値(SUVR)と視覚的読 影結果との一致度は非常に高かった。2年間の追跡期間後にSoTとして臨床的に診断した ところ、ほぼ同程度の結果が得られた(感度87%、特異度96%)。 IRAのFleiss κスコアは0.96(満点は1.0)であり、これは異なる読影医による視覚的画像読 影の一致度が高いことを示している。[18F]フルテメタモルを用いたスキャンによる試験 ‐再試験をpAD患者のうち5例で実施したところ、SUVRの差の平均は全領域で2.1%であ り、ばらつきが少ないことが示された。pADに移行したaMCI患者の77%でベースライン 時のPET画像に異常があったが、移行しなかった患者では80%がベースライン時の画像 が正常であった。 • GE067-017試験 (国際共同) 第II相多施設共同・非盲検試験で、日本人のpAD患者、健忘性軽度認知障害(aMCI)患者、 健康成人を対象にフルテメタモル(18F)注射剤の脳への取り込みと安全性を評価するこ とを目的とした。本試験では70例を登録し治験薬を投与した(健康成人25例、aMCI患者 20 20例及びpAD患者25例)。 pAD患者、aMCI患者、健康成人でのフルテメタモル(18F)注射剤の単回投与及び反復投与 に対する忍容性は概ね良好であった。 有害事象は7例(10%)が報告された。2例(2例とも55歳超の健康成人群)に治験薬に関連の ある有害事象が発現した。1例では治験薬に関連のある心窩部不快感、潮紅、高血圧が 発現し、もう1例では治験薬に関連のある頭痛が発現した。有害事象はすべて軽度であ り、いずれも回復した。 死亡例、中止例及び重篤な有害事象は認められなかった。臨床検査パラメータ、バイタ ルサイン、ECG、神経学的・理学的検査に臨床的に意味のある変化はみられなかった。 1例で血圧に臨床的に意味のある変化が生じたが、軽度であり回復した。治験薬との関 連はないと判断された。 フルテメタモル(18F)注射剤投与後のPET撮像により、pAD患者と健康成人との鑑別が可 能であった。各被験者のベースライン時の診断をSoTとして用いると、盲検化された[18F] フルテメタモル画像の視覚的読影の合意(過半数:盲検化画像の読影医5名中最低3名の 一致と定義)での感度は日本人及び日本人以外の読影医ともに92%であり、特異度は日本 人及び日本人以外の読影医ともに96~100%であった。定量化した値(SUVR)と視覚的読 影結果との一致度は非常に高かった。 IRAのFleiss κスコアは日本人読影医5人では0.94であり、日本人以外の読影医5人では0.96 であった(満点は1.0)。これは異なる読影医による視覚的画像読影の一致度が高いことを 示している。 第III相試験 • GE067-007脳剖検試験 (海外) 第III相脳剖検ピボタル試験では終末期患者におけるフルテメタモル(18F)注射剤の安全 性及び感度を検討した。患者180例に最大370 MBqのフルテメタモル(18F)注射剤を投与し、 脳のPET撮像を行った。試験中に死亡した患者には脳剖検を行い、脳内アミロイドの有 無の確定、及びPET画像所見と一致するか検討した。 フルテメタモル(18F)注射剤は安全であり忍容性は良好であった。有害事象は9例(5%)で 報告された。臨床検査変数、バイタルサイン、及びECGを含むその他の安全性パラメー タのいずれにも、臨床的に重要な傾向及び安全性のシグナルは認められなかった。 試験終了時、180例の被験者の撮像が終了しており、また69例の脳検体が収集され、そ 21 のうち68例が評価可能であった。解剖学的画像のないPET画像に対する盲検下の視覚的 読影の感度は81.4~93.0%であった。感度の両側95%信頼区間の下限が5名の読影医のう ち少なくとも3名で70%超(事前に定義された試験成功の基準)であったことから、本試験 の主要目的は達成された。事後解析において、ADの臨床診断(症例報告書の既往歴に記 載されているもの)でのアミロイドβに対する感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率は それぞれ51%、68%、73%、45%であった。[18F]フルテメタモルを用いたPET画像に対す る盲検下の視覚的読影では、アミロイドβに対する感度、特異度、陽性的中率、陰性的 中率はそれぞれ81~93%(中央値88%、最頻値86%)、44~92%(中央値88%、最頻値92%)、 74~95%(中央値92%、最頻値95%)、73~87%(中央値82%、最頻値79%)であった。 NPVについて臨床診断(45%)とフルテメタモルを用いたPET画像(73~87%)を比較すると、 フルテメタモルを用いたPET撮像でNPVが大幅に上昇しており、その臨床的な有用性が 確認された。ADに関するNIA-Reagan病理診断基準をSoTとして用いると、ADの臨床診 断の感度、特異度、陽性的中率、陰性的中率は、それぞれ45%、61%、61%、45%であ った。ADではなくても脳内アミロイドを有する場合もあるが、これらのデータは、多 量の脳内アミロイドがADに関連している可能性が高いことを示している。また、PPV 及びNPVはともに高いことが示された。 • GE067-015健康成人における特異度試験 (海外) 第III相ピボタル試験で、文献上脳内アミロイドが認められることは稀であると考えられ ている40歳未満の健康成人を対象にフルテメタモル(18F)注射剤の安全性と特異度を評 価した。被験者181例に185 MBqのフルテメタモル(18F)注射剤を投与し、脳のPET撮像を 行った。 [18F]フルテメタモルに対する忍容性は概ね良好であった。有害事象は27例(15%)で報告 された。最も頻度の高い有害事象は潮紅(6%)、胸部不快感(4%)、悪心(3%)であった。大 半の有害事象は一過性であり軽度であった。死亡例、重篤な有害事象、その他の重篤な 有害事象は報告されなかった。臨床検査結果、バイタルサイン、ECGにおいて臨床的に 意味があり、治験薬との関連があると判断された変化は認められなかった。また、理学 的検査及び神経学的検査に変化はみられなかった。 181例の被験者で盲検下で読影可能な画像を取得した。5名の独立した読影医による盲検 下の読影結果での特異度の推定値は100%、68%、99%、99%、99%であり、特異度の95% 信頼区間の下限が5名中4名の読影医で95%を超えていた。5名中3名以上の読影医で信頼 区間の下限が80%を超えていたため、主要目的は達成された。PET画像に対する盲検下 の視覚的読影の結果の大半で特異度(95%信頼区間)が99%(97~100%)であった。4名の読 影医でIRAが高く、一致度は99~100%であった。しかし1名は外れ値を示し、一致度は 68~69%であった。盲検化された5名の独立した読影医のうち4名(読影医1、3、4、5)の 22 IRAは100%であり、読影医2では75%(再評価PET画像16枚中12枚)であった。人口統計学 的カテゴリ(性別、年齢、民族、人種)、治験実施施設、地理的な位置、スキャン装置の 種類のすべてで、特異度において臨床的に意味のある差は認められなかった。小脳を参 照領域とした場合、複合皮質領域におけるSUVRの平均値は1.12(SD:0.097)であり、脳 橋を参照領域とした場合のSUVRの平均値は0.49(SD:0.036)であった。すべての撮像に おける複合SUVRは、第II相試験で確立された正常値上限(1.56)未満であった。 • GE067-008脳生検試験 (海外) 第III相レトロスペクティブ生検試験で、正常圧水頭症(NPH)患者を対象としてフルテメ タモル(18F)注射剤の安全性と有効性の評価を行った。シャント留置時に脳生検歴がある 患者7例に185 MBqのフルテメタモル(18F)注射剤を投与し、脳のPET撮像を行った。画像 評価と生検サンプルのアミロイド蓄積の病理組織学的測定結果を比較した。 [18F]フルテメタモルは安全であり忍容性は良好であった。3例の被験者に軽度から中等 度の血圧上昇が認められ、治験薬の投与と関連ありと判断されたが、処置なく回復した。 死亡例、重篤な有害事象、有害事象による中止例はなかった。臨床検査において臨床的 に意味のある異常は認められなかった。ECGにおいても臨床的に意味のある変化はなか った。 回帰モデルにより、SUVR‐CER(小脳を参照領域とした場合)とIHC染色 (NAB228)によ るアミロイドβ濃度の推定値(組織-切片領域の染色率で表示)との間に高いレベルで直 接の相関が認められた。SUVRのモデル因子と同様(傾き= 0.631、p = 0.011)、完全モデル で有意であった(R2 = 0.834、p = 0.027)。生検からPET撮像までの時間的因子では有意 性が認められず、生検からPET撮像までの間にアミロイドβ濃度はほとんど変化していな いことが示された。IHC染色に4G8を用いた解析と同様、複合SUVRを用いた解析では、 アミロイドβ濃度領域の割合との有意な相関(p = 0.042)が示された。PET画像に対する盲 検下の視覚的読影結果の大半で100%の感度(n = 4)及び100%の特異度(n = 3)が認められ、 2名の読影医で完全一致が、1名の読影医で偽陰性1件が認められた。 • GE067-009脳生検試験 (海外) 第III相プロスペクティブ生検試験で、NPH患者を対象としてフルテメタモル(18F)注射剤 の安全性と有効性の評価を行った。患者12例に185 MBqのフルテメタモル(18F)注射剤を 投与し、脳のPET撮像を行った。その後、脳室腹膜シャント留置の脳神経外科術の際に 脳生検を実施した。画像評価と生検サンプルのアミロイド蓄積の病理組織学的測定結果 を比較した。 [18F]フルテメタモルの忍容性は良好であった。死亡例、中止例、その他の重篤な有害事 象は報告されなかった。臨床検査所見及び理学的・神経学的検査所見では臨床的に意味 23 のある異常は認められなかった。ECGにおいても臨床的に意味のある変化はなかった。 SUVRで測定した場合の[18F]フルテメタモルの皮質での取り込みと、4G8でアミロイドβ の染色で陽性を示した脳内組織切片領域の割合には相関が認められた。完全モデルで小 脳を参照領域とした場合、生検部位のSUVRは生検試料のアミロイドβ濃度と有意かつ直 接的に相関しており(R2 =0.64、p = 0.0174)、これはSUVRのモデル因子でも同様であった (傾き=1.04、p = 0.0174)。ピアソンの相関係数は0.799(p = 0.0174)であった。 副次的有効性解析では、小脳を参照領域とした場合の対側及び複合SUVRは、4G8によ る染色で陽性を示した組織-切片領域の割合に有意かつ直接的に相関していた(それぞ れR2 = 0.69、p = 0.0107;R2= 0.81、p = 0.0025)。3名の読影医によるPET画像に対する 盲検下の視覚的読影の結果は、BSS、チオフラビンS、及び全体的な病理学的評価と比 較した場合、[18F]フルテメタモルを用いたPET撮像によるアミロイド検出の感度は100% であり、特異度も100%であった。 • GE067-010脳生検試験 (海外) 第III相レトロスペクティブ生検試験で、NPH患者を対象としてフルテメタモル(18F)注射 剤の安全性と有効性の評価を行った。シャント留置時に脳生検歴がある患者15例に185 MBqのフルテメタモル(18F)注射剤を投与し、脳のPET撮像を行った。画像評価と生検サ ンプル内のアミロイド蓄積の病理組織学的測定結果を比較した。 [18F]フルテメタモルの忍容性は概ね良好であった。4例(27%)で計4件の有害事象が報告 されたが、いずれも軽度であった。そのうち2件は治験薬に関連する可能性があると判 断された。死亡例、中止例及び重篤な有害事象はなかった。臨床検査所見及び理学的・ 神経学的検査所見では臨床的に意味のある異常は認められなかった。ECG所見に臨床的 に意味のある変化はなかった。 SUVRで測定した場合の[18F]フルテメタモルの皮質での取り込みと、4G8を用いてアミロ イドβに対する免疫染色で陽性を示した組織切片領域の割合は有意に相関していた。完 全モデルで小脳を参照領域とした場合、対側のSUVRは剖検サンプルのアミロイドβ濃度 と有意かつ直接的に相関しており(R2 = 0.74、p = 0.0003)、これはSUVRのモデル因子で も同様であった(傾き=12.60、p = 0.0003)。ピアソンの相関係数は0.858(p <0.0001)であっ た。時間的因子による有意性は認められず、アミロイド蓄積量は生検とその後のPET撮 像時点で大きく変化しないことが示唆された。副次的有効性解析では、小脳を参照領域 とした場合の同側及び複合SUVRは、4G8による染色で陽性を示したアミロイドβの組織 -切片領域の割合に有意かつ直接的に相関していた(それぞれR2=0.69、p=0.0009;R2= 0.72、p=0.0004)。 24 [18F]フルテメタモル画像に対する盲検下の視覚的読影では、個々の読影医の感度は33~ 100%であり、過半数の読影では感度が67~100%であった。個々の読影医の特異度は91 ~100%であり、過半数の読影では特異度は同程度であった。コホートサイズが小さか ったにもかかわらず、[18F]フルテメタモルのPET撮像による感度及び特異度は高かった。 • GE067-011脳生検試験 (海外) 第III相プロスペクティブ生検試験で、NPH患者を対象としてフルテメタモル(18F)注射剤 の安全性と有効性の評価を行った。患者18例に185 MBqのフルテメタモル(18F)注射剤を 投与し、脳のPET撮像を行った。その後、頭蓋内圧測定又は脳室腹膜シャント留置の際 に脳生検外科術を実施した。画像評価と生検サンプルのアミロイド蓄積の病理組織学的 測定結果を比較した。 フルテメタモル(18F)注射剤の忍容性は概ね良好であった。2例(11%)で計2件の有害事象 が報告された。そのうちの1件(悪心)は、少なくとも治験薬と関連あり判断された。有害 事象は2例とも軽度であった。死亡例、中止例及び重篤な有害事象はなかった。 臨床検査所見及び理学的・神経学的検査所見では臨床的に意味のある異常は認められな かった。ECG所見に臨床的に意味のある変化はなかった。 SUVRで測定した場合の[18F]フルテメタモルの皮質での取り込みと、4G8を用いてアミロ イドβに対する免疫染色で陽性を示した組織切片領域の割合は有意に相関していた。完 全モデルでは、小脳を参照領域とした場合、生検部位のSUVRは生検試料のアミロイドβ 濃度と有意かつ直接的に相関しており(R2 = 0.45、p = 0.0064)、これはSUVRのモデル因 子でも同様であった(傾き= 1.30、p = 0.0064)。ピアソンの相関係数は0.669(p = 0.0064)で あった。副次的有効性解析では、小脳を参照領域とした場合、同側及び複合SUVRは、 4G8による染色で陽性を示したアミロイドβの組織-切片領域の割合に有意かつ直接的 に相関しており(それぞれR2 = 0.45、p = 0.0063、R2 = 0.43、p = 0.0083)、脳橋を参照 領域とした場合の生検部位、対側、複合SUVRも有意な相関を示した(それぞれp=0.0050、 p=0.0048、p=0.0041)。 [18F]フルテメタモル画像に対する盲検下の視覚的読影では、アミロイド検出の感度は43 ~100%、特異度は93~100%であることが示された。BBSで示される病理学的結果と比 較して、画像読影の感度はすべての読影医で100%であり、特異度は93~100%であった。 • GE067-005 aMCIからpADへの移行予測試験 (海外) 現在進行中の第III相試験であり、pADに移行する可能性があるaMCI患者の予後予測にお ける安全性と有効性を評価することを目的とした。aMCI患者232例に185 MBqのフルテ メタモル(18F)注射剤を投与し、脳のPET撮像を行った。pADへの移行を確認するため、6 ヵ月ごとの追跡調査を実施した。 25 フルテメタモル(18F)注射剤の忍容性は概ね良好であった。20例(9%)で有害事象が発現し た。そのうち11例(5%)は少なくとも治験薬と関連があるかもしれないと判断された。1 例が重篤な有害事象を発現した(アナフィラキシー様反応)。最も頻度の高い有害事象は、 浮動性めまい(2%)及び頭痛(2%)であり、重篤な有害事象は報告されなかった。 臨床検査所見、ECG所見、及び理学的・神経学的検査所見には臨床的に意味のある異常 は認められなかった。 [18F]フルテメタモルを用いたPET画像について、盲検下での視覚的読影を完了し、IRA 及びIRR結果を得た。ペアIRA(すなわち読影医ペアのIRA)は77%(κ = 0.56)~98%(κ = 0.96)であった。読影医2と他4名の読影医それぞれとの一致度は低く、77%(κ = 0.56)~ 85%(κ = 0.70)であったが、他のすべての読影医ペア間の一致度は90%(κ = 0.78)~98%(κ = 0.96)であった。IRRは86%(κ = 0.70)~100%(κ = 1.00)であった。 • GE067-021読影医の電子トレーニング試験 (海外) 読影医のための電子トレーニングプログラムの効果を検討する第III相ピボタル試験で ある。本試験では被験者登録は行わず、他試験で得た読影結果を解析した。 いずれかのSoTタイプを有する被験者(解析対象集団1;n=135:病理組織学的に脳内アミ ロイド蓄積が確認された被験者[生検又は剖検による]又は40歳以下という年齢及び健 康状態から脳内アミロイドの状態が推定される被験者)において解剖学的画像を用いず、 盲検下で視覚的読影を行ったところ、感度、特異度、PPV及びNPVはいずれも高かった。 感度及び特異度は主要評価項目であり、事前に定義された試験成功の基準(感度及び特 異度に関する両側95%信頼区間の下限が、盲検下された読影医5名中3名[以上]で70% を超える)を満たした。読影医ごとの感度は84~94%、中央値は92%であった。感度の過 半数値(すなわち読影医5名中3名以上が真陽性の画像読影をした被験者の割合)は94%で あった。読影医ごとの特異度は77~96%、中央値は81%であった。特異度の過半数値は 92%であった。読影医ごとのPPTは73~94%、中央値は75%、過半数値は87%であった。 読影医ごとのNPVは91~96%、中央値は94%、過半数値は96%であったが、これは臨床 的有用性の観点から最も重要である。NPVの値が高いことから、陰性のPETスキャンに よって確信を持ってADでない患者を除外できるが、これはADの臨床診断と矛盾する可 能性があることを示唆している。 解析対象集団2(n = 104;病理組織学的にSoTが裏付けられた被験者)を対象とした同様の 解析では、解剖学的画像の有無で感度、特異度、PPV、NPVに有意差は認められなかっ た。解析対象集団3(n = 68;剖検によりSoTが裏付けられた被験者[GE067-007試験の被 験者])に対する同様の解析でも解剖学的画像の有無で有意差は認められなかった。こ うした解析結果をGE067-007試験(読影医に対する直接指導が実施された試験)結果と比 較したところ、2つの読影医訓練方法(電子トレーニングと直接指導)の間で有効性に意味 26 のある差はないことが確認された。いずれの読影医でも、妥当性を解析した3つの被験 者集団での読影結果に解剖学的画像の有無による有意差は生じなかった。 また、読影の再現性は高かった。全5名の読影医のIRA(解析対象集団4;n = 276)は81% であった。これはκ係数の0.83と一致する。κ係数の両側95%信頼区間の下限は事前に 規定した基準値(0.6)を超えており、IRAに関する目的を達成した。他のすべてのκ係数 (読影の再現性の指標)も試験の達成基準を満たした。 27 臨床試験の経緯図を図 1.2.2.4-2 に示す。 [図 1.2.2.4-2] 臨床試験の経緯図 実施期間 試験項目 第Ⅰ相試験 ALZ103 第Ⅱ相試験 ALZ201 2007年 2008年 GE-067-005 GE-067-007 GE-067-008 臨 床 試 験 海外 GE-067-009 第Ⅲ相試験 GE-067-010 GE-067-011 GE-067-015 GE-067-021 第Ⅰ相試験 GE-067-014 第Ⅱ相試験 GE-067-017 日本 28 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 以上のとおり合成する目的化合物及び最終溶液は臨床上有効性・安全性を持つことが確認さ れたことから、本装置及びフルテメタモル合成用カセットは医療機器としての有用性をもち、 製造販売申請することは妥当と判断した。 1.2.2.5 ガイドライン等の策定状況 1.2.1.2 項で述べたとおりアルツハイマー病に罹患する高齢者が増加している。これを受け アルツハイマー病の進行と治療薬の効果を評価するための画像・バイオマーカ指標の確立を 目的として、世界 4 極連携により ADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Intiative)研究プロジ ェクトが進んでいる。 本邦においても、国家プロジェクトとして厚生労働省、経済産業省 NEDO 及び製薬企業か らの公的研究資金により、産官学共同で同様の趣旨の元設立された J-ADNI 研究プロジェク トが進んでいる。 これまで J-ADNI では主に[11C]PiB を用いて PET 画像撮影バイオマーカの研究を進めてき た。 平成 25 年度からは J-ADNI2 と呼ばれる J-ADNI を引き継ぐプロジェクトが発足し、[11C]PiB に加えて、本一変申請で追加するフルテメタモル合成用カセットで合成される[18F]フルテメ タモルについても臨床研究が始まり、評価基準が検討されている。 GE ヘルスケアでは、[18F]フルテメタモルが広く安全に利用されることを目的に、認知症学 会や日本核医学会と協同して J-ADNI2 に参画し、ガイドライン等を策定している。 29 【1.2.1 参考文献】 [1] Hurd MD, Martorell P, Delavande A, Mullen KJ, Langa KM. Monetary costs of dementia in the United States. NEJM. 2013;368(14):1326-34. [2] Alzheimer’s Disease International. World Alzheimer Report 2009. 2009. [Accessed on September 30, 2009]. Available at : http://www.alz.co.uk/research/files/World%20Alzheimer%20Report.pdf. [3] Yoshitake T. Incidence and risk factors of vascular dementia and Alzheimer’s disease in elderly Japanese population: The Hisayama Study 1995:45:1161-1168. [4] Shimokata H. Epidemiological studies on Alzheimer’s disease in Japan: Nippon Rinsho 2008:66: 23-27. [5] Cotran RS, Kumar V, Robbins SL. Amyloidosis in: Diseases of Immunity. Chapter 5 in: Robbins Pathologic Basis of Disease. 4th Ed. W.B. Saunders Company. Philadelphia. 1989a, 210-220. [6] Cotran RS, Kumar V, Robbins SL. Alzheimer’s Disease in: The Nervous System. Chapter 29 in: Robbins Pathologic Basis of Disease. 4th Ed. W.B. Saunders Company. Philadelphia. 1989b, 1427-1429. 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