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とりまとめ報告書

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とりまとめ報告書
平成23年度 インフラ・システム輸出促進調査等委託費
(自治体間(秋田県-タイ・チョンブリ県)連携による
循環型都市協力推進調査事業)
報
告
書
平成 24 年3月
経 済 産 業 省
目次
第 1 章 調査の概要 ..................................................................................................................1
1.1 調査の背景、実施方針 ................................................................................................. 1
1.2 調査事業の実施体制..................................................................................................... 2
1.3 現地調査等の実施 ........................................................................................................ 4
1.4 秋田県北部エコタウンの概況 ...................................................................................... 6
第 2 章 タイの概況 ................................................................................................................11
2.1 タイの基礎情報 ...........................................................................................................11
2.2 タイの製造業の状況................................................................................................... 17
2.3 チョンブリ県の概況................................................................................................... 21
第 3 章 タイの廃棄物処理・リサイクルの状況 ....................................................................26
3.1 所管官庁の枠組み ...................................................................................................... 26
3.2 WEEE にかかる法制度 ............................................................................................... 28
3.3 WEEE 回収パイロット事業 ........................................................................................ 41
3.4 チョンブリにおけるごみ処理の状況、リサイクルの推進 ........................................ 56
第 4 章 地域間交流事業 ........................................................................................................61
4.1 現地セミナー・現地視察の概要 ................................................................................ 61
4.2 セミナーの開催 .......................................................................................................... 62
4.3 現地視察の実施 .......................................................................................................... 71
4.4 訪日研修 ..................................................................................................................... 77
4.5 タイ側の関心事項のまとめ........................................................................................ 95
第 5 章 我が国民間事業のリサイクルビジネス可能性調査 ..................................................96
5.1 タイの WEEE の状況 ................................................................................................. 96
5.2 チョンブリ県における WEEE の状況 ..................................................................... 102
5.3 事業化検討調査 ........................................................................................................ 104
5.4 地域間協力事業との協調 ......................................................................................... 129
5.5 地域間協力事業の成果 ............................................................................................. 130
第 6 章 研究会の運営 ..........................................................................................................132
6.1 研究会の概要............................................................................................................ 132
6.2 研究会の概要(国内研究会) .................................................................................. 133
第1章
調査の概要
1.1 調査の背景、実施方針
アジア地域においては、急激な経済発展に伴って、廃棄物の発生量や先進国からの再生
資源輸入量が増大しているが、3R制度・技術が不十分であり、不適正な処理による環境
汚染が懸念されている。このため、経済産業省では、我が国に蓄積された3R制度・技術
をアジア各国に移転し、各国におけるリサイクルを推進することを目的として、アジアエ
コタウン事業を実施してきた。
1 年目事業 1 では、アセアン各国(タイ・ベトナム・マレーシア・シンガポール・インド
ネシア等)を対象として、3R政策・動向、現地日系進出企業や政府のリサイクルに関す
るニーズ等を既存資料・ヒアリング等から分析し、秋田県が有する環境リサイクル技術や
エコタウンのノウハウを活用したリサイクルシステム構築の可能性のあるアセアンの対象
地域を検討し、タイに協力の可能性があることが確認できた。
2年目事業 2 では、2009 年度の結果を踏まえ、タイのチョンブリ県における廃電気電子
機器(WEEE)の処理・リサイクルを対象として、秋田県との協力可能性を調査してきたと
ころである。
チョンブリ県はタイでも有数の工業団地が所在する地域であり、日系メーカーも多く進
出しており、環境事業のインフラ整備が期待されている。また、タイでは、エコインダス
トリアルタウン構想が検討中で、その具体化のための取り組みがなされており、我が国の
知 見 ・ 技 術 が そ の 計 画 に 有 効 に 活 用 さ れ る こ と が 期 待 さ れ て い る 。 タ イ の 工 業 省 工 場局
(DIW)としては、産業側と市民との間で発生している環境関連の問題の解決策としてのエコ
インダストリアルタウン構想を重要視している。しかしながら、本構想は導入段階であり、
チョンブリ市などを先進的な自治体として育成し、さらに将来的な他の自治体とのネット
ワークの必要性を認識している。また、タイにおいては、WEEE のリサイクルに係る法制度
が検討されており、当該分野におけるハード面、ソフト面での秋田県との協力事業推進の
可能性を有している。
一方、秋田県は環境・リサイクル産業、教育施設などを含む関連インフラが集積し、エ
コタウンと連携した地域ぐるみで3Rを推進しており、アセアンの諸都市との交流の実績
もある。また、先導的な家電リサイクルへの取り組みだけでなく、使用済小型家電からの
レアメタルの回収及び適正処理を行うことを目的とした回収モデル事業(経済産業省・環
境省)のモデル地区に採択され、県内の全市町村を対象とした収集試験に協力するなど、
非鉄金属リサイクルでの知見の多い地区でもある。
本事業では、都市間交流という枠組みを利用して、チョンブリ県への働きかけを行うと
ともに、3Rの推進について自治体の取組みを支援している DIW 等との協力事業実施にか
かる枠組みを構築し、我が国の3R制度や我が国リサイクル企業が有する3R技術・関連
インフラの紹介、普及を推し進めることにより、チョンブリ県における循環型都市の構築
と我が国リサイクル企業のビジネス展開を後押ししていくことを目的として実施している。
1
2
平 成 21 年 度
アジア大の3Rネットワーク構築プロジェクト-アセアンにおけるリサイクルシステム構築のための地域間協力可能性調査
平 成 22 年 度
アジア資源循環推進事業-都市間(秋田県-タイ王国・マレーシア連邦)連携による循環型都市協力推進事業
1
1.2 調査事業の実施体制
本事業は日本(秋田県)、タイ(チョンブリ)との協力事業であり、日本側及びタイ側
を含めた実施体制を以下の図 1.2-1 に示す。本事業に先立つ 2 年目事業では日本とタイ間
での GAP Green Aid Plan(GAP)におけるタイ側のカウンターパートである DIW(工業省工
業局:Department of Industry, Ministry of Industry)に事業の提案を行い、事業を実
施している。本事業(今年度事業)実施にあたっては、上記 2 年目事業の継続事業として
実施するために、2011 年 10 月 18 日にタイ(バンコク)にて、DIW に対して事業計画の説
明を行い、内容を調整のうえ、継続事業を開始している。
日本側のカウンターパートは、秋田県(産業労働部資源エネルギー産業課)であり、事
業において適切な助言、指導を得るために3Rにかかる施策及び技術、あるいはタイ等の
アセアン諸国の現況に知見を有する研究会を組成している。
タイ側としては、上記のとおり DIW を通して事業を実施しているが、本事業は WEEE(使
用済電気電子機器:Waste Electrical and Electronic Equipment)を主な対象としており、
WEEE の 制 度 化 等 を 担 当 す る PCD ( 天 然 資 源 環 境 省 公 害 管 理 局 : Pollution Control
Department, Ministry of Natural Resource and Environment)に対しても、事業説明及
び協力要請を行っている。
チョンブリ県に対しても調査事業の説明を行い、具体的な事業の進め方は、2 年目事業
(セミナー、訪日研修)においても関与しているチョンブリ市と協議を行い実施した。ま
た、パタヤ市についても昨年度同様にタイでの面談のほか、セミナー、訪日研修等におい
て本事業に参加している。
2
日本側
タイ側
経 済 産 業省
リ サ イ クル 推 進課
イ ー ・ アン ド ・イ ー ソ リ ューシ ョ ン ズ株 式 会社
( 受 託 者)
日 本 側 実施 体 制
タ イ 側 実施 体 制
秋田県
中央政府
( 産 業 労働 部 資源 エ ネル ギー産 業 課 )
・ DIW ( 工 業 省 工 業 局 : Department of
Industry, Ministry of Industry)
・ PCD ( 天 然 資 源 環 境 省 公 害 管 理 局 :
Pollution
Control
Department,
Ministry of Natural Resource and
Environment)
国 内 研 究会
菅原拓男
市川博也
小島道一
三浦泰茂
白鳥寿一
野澤一美
村上進亮
( 委員 長 )秋 田大学 名 誉 教授
工学博士
国 際教 養 大学
グ ロ ー バル ・ ビジ ネ ス課 程長
教授
日 本貿 易 振興 機構 ア ジ ア経 済
研 究 所 新 領 域研 究 セン ター
環 境・資源 研 究グ ル ープ 主任
研究員
秋田県産業労働部 資源エネル
ギ ー 産 業課 課長
東 北大 学 環境 科学研 究 科 教授
日本アイ・ビー・エム株式会社
CSR・環境 プ ログ ラ ム推 進 環境
統 括 担 当部 長( 日本 、ア セ アン
担当)
東京大学大学院工学系研究科シ
ス テ ム 創成 学 専攻 准教 授
図 1.2-1
地方
・ チ ョ ン ブリ 県
・ チ ョ ン ブリ 市
・ パタヤ市
調査実施体制
3
1.3 現地調査等の実施
本事業において実施した、タイでの現地調査等の内容を以下に示す。
(1)現地調査
キックオフミーティング、視察
表 1.3-1
調査時の訪問先
月日
訪 問先
10 月 18 日(火)
チョンブリ市面談
(バンコク、チョンブリ) チョンブリ県面談
パタヤ市面談
DIW 面談
10 月 19 日(水)
ローカルコンサルタント面談
(バンコク、チョンブリ) Eastern Seaboard Environmental Complex (ESBEC)面談、視察
10 月 20 日(木)
Waste Management Siam (WMS)面談
(バンコク)
Pollution Control Department (PCD)面談
表 1.3-2
調査参加者(日本サイド)
名 前(敬称 略)
所属、役職
白鳥寿一
東北大学教授(本事業研究会メンバー)
川上伸作
秋田県 産業労働部 資源エネルギー産業課 主幹
阪口幸三
イー・アンド・イー
(2)現地調査
ソリューションズ株式会社
面談、視察
表 1.3-3
調査時の訪問先
月日
訪 問先
12 月 13 日(火)
WMS 面談
(バンコク)
DIW 面談
PCD 面談
12 月 14 日(水)
ローカルコンサルタント面談
(バンコク)
EEI(電気電子研究所、工業省傘下)面談
12 月 15 日(木)
チョンブリ県
(チョンブリ)
チョンブリ市面談、WEEE 回収状況等の視察
ESBEC 面談、視察
12 月 16 日(金)
パタヤ市面談
( チ ョ ン ブ リ 、 ノ ン タブ
Suan Keaw 視察
リー)
4
主席研究員
表 1.3-4
調査参加者(日本サイド)
名 前(敬称 略)
所属、役職
野澤一美
日本アイ・ビー・エム株式 会社
CSR・環境プログラ ム推進 環境
統括担当部長(日本、アセアン担当)(本事業研究会メンバー)
阪口幸三
イー・アンド・イー
ソリューションズ株式会社
主席研究員
橋本真也
イー・アンド・イー
ソリューションズ株式会社
主席研究員
井上真由美
イー・アンド・イー
ソリューションズ株式会社
研究員
(3)現地調査
現地セミナー/サイトツアー、面談
表 1.3-5
調査時の訪問先
月日
訪 問先
2012 年 1 月 30 日(月)
DIW 局長表敬訪問
(バンコク、チョンブリ) DIW 面談
チョンブリ市面談
1 月 31 日(火)
<セミナー(終日)>
(チョンブリ(バンセ
ン))
2 月 1 日(水)
<サイトツアー(終日)>
(チョンブリ)
チョンブリ市の取組視察(WEEE パイロット事業、リサ イクルバン
ク)
ESBEC 視察(WEEE リサイク ル)
表 1.3-6
調査参加者(日本サイド)
名 前(敬称 略)
野澤一美
所 属、役職
日本アイ・ビー・エム株式 会社
CSR・環境プログラ ム推進 環境
統括担当部長(日本、アセアン担当)(本事業研究会メンバー)
白鳥寿一
東北大学教授(本事業研究会メンバー)
佐々木誠
秋田県
産業労働部
川上伸作
秋田県
産業労働部 資源エネルギー産業課
主幹
佐藤直彦
秋田県
産業労働部 資源エネルギー産業課
技師
仲
DOWAエコシステム
雅之
新エネルギー政策統括監
担当部長
吉成明夫
DOWAエコシステム株式会社
小林英里
株式会社エコリサイクル
阪口幸三
イー・アンド・イー
ソリューションズ株式会社
主席研究員
井上真由美
イー・アンド・イー
ソリューションズ株式会社
研究員
5
企画室
副室長
1.4 秋田県北部エコタウンの概況
本事業は都市間(秋田県-タイ・チョンブリ州)連携による循環型都市協力推進事業の
枠組みのもと実施されており、本事業における日本側のカウンターパートである秋田県の
リサイクル、廃棄物処理などの概況を基礎情報として以下に示す。
(1)環境・3R技術(非鉄金属):秋田県北部エコタウン計画
秋田県はわが国でも有数の製錬技術を活用した非鉄金属リサイクル拠点(技術、施設等)
の立地を活かし、環境産業の振興を図っている。本事業においては、タイ(チョンブリ)
のリサイクル技術を調査し、秋田県の有する技術、施設を参照し、今後の協力事業、ある
いは我が国企業のビジネス展開を検討するものとする。
<秋田県北部エコタウン>
図 1.4-1
秋田北部エコタウンの概要
・ 秋田県北部エコタウン計画は、鉱業関連基盤を活用した金属リサイクル産業の推進等
により環境調和型社会の形成を目指すものであり、平成 11 年 11 月 11 日付けで国(通
商産業大臣、厚生大臣)から承認を得ている(平成 16 年 10 月 7 日に変更計画承認)
・ 鉱業関連では「家電リサイクル事業」および「リサイクル製錬拠点形成事業」からな
り、「家電リサイクル事業」については㈱エコリサイクルが家電リサイクル法施行に
あわせて平成 13 年に本格操業を開始している。
・ また「リサイクル製錬拠点形成事業」については、「小坂製錬㈱」において、非鉄金
属低含有プラスチック類からの金属回収・熱回収事業を実施している。
6
・ 「リサイクル製錬拠点形成事業」に関連する県内の施設・技術の組み合わせにより、
スクラップ等の二次原料より多様な元素類の回収が可能である。
・ エコタウン事業以外の関連環境事業施設として、以下が挙げられる。
・
秋田製錬㈱:亜鉛、カドミウムの回収
・
日本 PGM㈱:白金、パラジウム等の回収
・
秋田レアメタル㈱:インジウムの回収
・
エコシステム秋田㈱:低品位基板の焼却→基板焼却滓(製錬原料利用)
・
オートリサイクル秋田㈱:使用済自動車の回収・解体・リサイクル
(2)レアメタル等素材供給拠点
秋田県にはわが国の産業にとって非常に重要なレアメタル等の素材供給企業が集積し
ており、鉱石のみならず二次原料(国内外リサイクル原料)からも素材を精製している。
・ 小坂製錬㈱:金、銀、銅、鉛、その他レアメタル等
・ 秋田製錬㈱:亜鉛、カドミウム等
・ 日本 PGM㈱:白金、パラジウム、ロジウム
・ 秋田レアメタル㈱:インジウム、ガリウム
・ 日本新金属㈱:酸化タングステン
・ マテリアルエコリファイン㈱:酸化インジウム、酸化スズ等
・ ジャパンスーパークォーツ㈱:石英
・ ㈱ジェムコ:シリコン製品等
(3)秋田県の資源循環型産業の振興施策
秋田県としては環境・リサイクル技術を活かし、持続可能な循環型社会に向けた環境リ
サイクル産業の創出や育成を推進する考えであり、リサイクル技術や産業の発展のため、
国内外からの情報や技術を集約し、世界をリードする環境・リサイクルの総合拠点を目指
している。
○ 環境・リサイクル産業の振興
・ 環境・リサイクル関連の企業の誘致、事業拡大など、事業・経営面に対する
支援を行う。
・ 使用済み小型家電や、高度医療機器、燃料電池、太陽光発電機、ハイブリッ
ド自動車などのリサイクル事業化を進める。
○ 環境・リサイクル総合拠点の地位の確立
・ 金属鉱業に関する研修や研究開発等を実施
・ 国内外の人材育成、情報発信、企業支援、研究開発等を推進
・ エコタウンセンターを活用し、環境教育活動の充実や教育旅行等の増大を図る
ほか、環境産業観光の推進による交流人口の増加を目指す
7
(4)小型家電回収プロジェクト
秋田県は平成 18 年より大館市において家電リサイクル法の対象外となる使用済小型家
電の収集試験を開始しており、その後対象地域を拡大するとともに、平成 20 年には国(経
済産業省、環境省)のモデル地域に指定され、その取り組みを強化している。秋田県はモ
デル地域の中でも、パイオニア的に回収事業を推進しており、回収試験にかかる知見を多
く有している。また、小型家電のリサイクルについては、国レベルでの制度化の検討が開
始されており、今後も秋田県の取り組みが期待されている。
タイにおいても WEEE の制度化が検討されており、さらに WEEE 回収にかかるプロジ
ェクトが実施されており、秋田県の知見、経験がタイ(チョンブリ)に活用されることも
期待される。
(出典:環境省ホームページ)
図 1.4-2
小型家電リサイクル新制度の概要
(5)循環資源流通拠点:シーアンドレール構想(秋田港)・リサイクルポート(能代港)
秋田県には海上物流の拠点となる秋田港および能代港があり、それぞれシーアンドレー
ル構想、リサイクルポートとして計画されており、将来的な循環資源の国際的な拠点とし
ての活用が期待されている。
・ 「秋田港シーアンドレール構想」とは、既存の秋田臨海鉄道などの施設を有効活用し
て、秋田港を環日本海の国際交流拠点にしようという構想。
・ 能代港は全国二十一港のうちの一つのリサイクルポートとして指定(国土交通省・平成
8
18 年)されており、能代港の後背地に位置する秋田県北部エコタウン計画と連携した
取り組みとして、リサイクル資源輸送の利便性の向上方策が検討されている。
※リサイクルポートについて
国土交通省重点施策「港湾を核とした総合的な静脈物流システムの構築」に基づき、広
域的リサイクル施設立地に対応した静脈物流ネットワーク拠点港湾を指定するもの。
能代リサイクルポート
図 1.4-3
リサイクルポート
(6)非鉄金属リサイクルにかかる技術研修:金属鉱業研修技術センター
(秋田県資源技術開発機構、国際資源大学校、石油天然ガス・金属鉱物資源機構)
秋田県小坂町にある「金属鉱業研修技術センター」では、資源開発、資源リサイクル等
にかかる事業の促進、研究開発、研修(海外技術者含む)等を実施しており、非鉄金属リ
サイクルにかかる技術研修あるいは国際交流の受け皿が整備されている。
「金属鉱業研修技術センター」は「(財)秋田県資源技術開発機構」、「(財)国際資
源大学校」および「(独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
金属資源技術研究所」の3つ
の機関からなり、それぞれが各機能の連携、補完を行い、研究開発、研修、国際交流等を
実施している。
○ (財)秋田県資源技術開発機構
・ 研究開発・資源事業:有用金属の効率的回収技術の研究(企業との共同研究等)
・ 資源リサイクル普及啓発事業:エコタウンセンター機能の充実
・ 交流事業:大学等との学術交流
・ 研修事業:技術指導等、国際資源大学校への研修支援
○ (財)国際資源大学校

海外技術者研修協会(AOTS)研修事業受託:「鉱物・金属リサイクル研修コース」
9
・ 2009 年 2 月(5 日間)には秋田県小坂町にて研修を受け入れており、参加者
(計 16 名)はインドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナム、カ
ンボジア、中国となっている。
・ 参加者の所属は鉱物資源開発、鉱業、金属回収、廃棄物処理等の協会、企業
となっており、研修内容は講義(選鉱技術、リサイクル技術等)、施設見学
(小坂製錬、エコリサイクル等)である。

JICA の研修事業の受託:「集団研修
鉱山開発と持続可能な成長コース」
・ 持続可能な鉱山開発に関する知識、鉱山保安・環境対策等の知見を深めるこ
とを目的に実施しており、平成 16 年から平成 20 年までにアセアン諸国を含
む計 49 ヶ国からの研修生を受け入れている。

国内資源人材育成事業:資源開発人材育成事業、製錬・リサイクル人材育成事業
○ (独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構
金属資源技術研究所
現在の研究内容は以下のとおり。
・ レアメタルリサイクル技術の開発
・ バイオリーチング技術の開発
等
10
第2章
タイの概況
2.1 タイの基礎情報
(1)人 口
2008 年末現在のタイの人口は 6,4070 万人であり、バンコクを中心とした中央部に約 3
分の1の人口が集中している。タイの地域別人口を以下の表 2.1-1 に示す。地域としては、
東北部が最も多く、約 2,150 万人と全国の 34%を占めている。
表 2.1-1
タイの地域別人口
1970 年
人口
2009 年
構成比
人口
構成比
バンコク
3,077,361
8.9
5,702,595
9.0
中央部
7,534,516
21.9
15,742,529
25.0
18.7
北部
7,488,688
21.8
11,770,233
12,025,140
35.0
21,495,825
34.1
南部
4,271,674
12.4
8,813,880
14.0
全国
34,397,374
100.0
63,525,062
100.0
東北部
( 出 典 ;タ イ 国経 概 況、 バンコ ク 日 本人 商 工会 議 書)
(2)国土
インドシナ半島の中央部に位置し、カンボジア、ラオス、ミャンマー、マレーシアの 4
か国と国境を接する。国土面積は 51 万 3,115km 2 で、南北に 2,500 ㎞、東西に 1,250 ㎞を
占める。
( 出 典 ;外 務 省ホ ー ムペ ージ)
図 2.1-1
タイとその周辺国
主要な河川としては、中央部を流れるチャオプラヤ川と、東部のラオス国境を流れるメ
コン川がある。タイは 25 の大河川流域を有しており、そのうち中央部に位置する8つの河
川流域をあわせて、チャオプラヤ川流域と称している。その流域面積は 162,800 ㎞ 2 であ
11
り、タイ国土の約 3 分の1を占め、全人口の約
40%が住んでいる、タイにおいて重要な地域で
ある。2011 年 7 月より続いた大雨により、タイ
北部、東北部、中部において河川の氾濫、冠水
被害が発生した。タイ国内の 10 県(ナコーンサ
ワン、アユタヤ、ノンタブリ、パトムタニ、ロ
ッブリー、アーントーン、シンブリ、チャイナ
ート、ウタイターニ、チェチェンサオ)は、特
に大きな被害が発生したといわれている。ちな
みに、本プロジェクトの対象となるチョンブリ
県では洪水での直接的な影響は生じていない。
2011年12月26日時 点
■:洪 水発 生中
■:洪 水が 発生 した もの の既 に 水が引 いて いる
(出典;タイ洪水復興セミナー資料(ジェトロバンコク事務所))
図 2.1-2
洪水被害県
(3)気候
タイの気候は雨季と乾季(寒季、暑季)に区分される。
雨季(5 月~10 月):南西モンスーンの影響を受け、1~2 時間程度の激しい雷雨を
伴うスコールが降ることが多い。
寒季:乾燥した北東モンスーンの影響を受け、朝晩は比較的涼しく、湿度も低い。
暑季:1 年で最も暑い季節で最高気温が 40℃近くまで達する。
(4)民 族
タイではタイ族が多数を占めている(85%)。タイ族以外では、華人系(10%)のほか、
マレー系、インド系があり、マレー系民族については南部の 4 県に居住しており、その多
くがイスラム教徒である。
(5)言 語
タイの公用語はタイ語で、ほぼすべての人がタイ語を話す。中央官庁、企業等では英語
も話すが、地方(自治体等)では英語での会話は難しい場合もある。
12
(6)宗 教
憲法は信仰の自由を規定しているが、タイ国民のほとんどが仏教徒である。タイの仏教
は、スリランカ系の上座部仏教(小乗仏教)である。
(7)行政組織
内閣は国王によって任命された首相 1 名及び 35 名以内の国務大臣(大臣・副大臣)によっ
て構成されている。中央行政組織は、1 府 19 省より成り、各省庁には国務大臣のほか、一
部省庁には副大臣が任命されている。タイの省庁を次に示す。
なお、日本との GAP( Green Aid Plan)のタイ側カウンターパートは、上記工業省(Ministry
of Industry, MOI)のもとの工場局(Department of Industrial Works, DIW)である。DIW
はタイ国内の工業団地を含めて工場発生の廃棄物を所管しており(工業団地公社(IEAT)所
管の工業団地もある)、工業団地から排出される廃棄物についても DIW の所管となる。DIW
は 1 年目調査から本事業でのタイ側窓口(中央レベル)として、関与している。
また、有害廃棄物を所管する公害規制局(Pollution Control Department)は天然資源・
環境省(Ministry of Natural Resource and Environment)に属する。
表 2.1-2
タイの中央省庁一覧
内務省
労働省
国防省
保健省
大蔵省
社会開発・人間安全保障省
外務省
天 然資源・ 環境省
商務省
エネルギー省
運輸省
情報・通信技術省
工 業省
※
※
科学技術省
教育省
文化省
農業・協同組合省
観光・スポーツ省
法務省
(8)地方自治・地方行政
タイにおける行政は以下の3つに区分される。
①中央行政
内閣、政府の各機関等が行う行政
②国による地方行政(以下、「地方行政」という。)
地方で行う行政で、中央官僚を知事や郡長等として地方(国の出先機関)へ派遣
③地方自治体による行政(以下、「地方自治行政」という。)
各地方自治体が行う行政であり、各々の管轄区域や執行機関及び立法機関を持つ
上記のうち、「地方行政」と「地方自治行政」について以下に示す。
13
1)「地方行政」
国による「地方行政」は、以下のとおり区分される。
①県(Province、タイ語ではチャンワット)
②郡(District、タイ語ではアンプー)・準郡(Minor District、タイ語では
キン・アンプー)
③行政区(Sub District、タイ語ではタンボン)
④村(Village、タイ語ではムーバーン)
県及び郡・支郡は自治体組織としてではなく、「国の出先機関」としての位置づけであ
る。また、行政区及び村は内務省が区割りをした行政単位のもので、自治体ではない。
行政区長及び村長は住民の直接選挙で選ばれるものの、政府からの命令等を実施してお
り、実質上政府から管理されている。
県は地方行政における最も上位に位置する単位で、全国に 75 の県(バンコク都を含ま
ない。)がある。県行政には、政府(国)が県レベルで行う地方開発、雇用促進、公衆衛
生 の 向 上 等 の 政 策 や 県 内 の 地 方 自 治 体 の 指 導 ・ 管 理 監 督 等 が 含 ま れ 、 県 庁 ( Government
Provincial Office)は各関係中央省庁の出先機関の集合体という位置づけとされる。県知
事は内閣の承認の下、内務大臣の任命により内務省から派遣されている。
2)「地方自治行政」
地方自治体による「地方自治行政」は地方自治体により、以下に示す形態からなる。
①県行政機構(PAO;Provincial Administration Organization、
タイ語ではオーボーチョー)
②自治市・町(Municipality、タイ語ではテーサバーン)
③地区行政機構(タイ語ではオーボートー)
このうち、特別な地方自治体の形態としては、バンコク都(BMA;Bangkok Metropolitan
Administration)とチョンブリ県にあるパタヤ特別市(City of Pattaya)の2つが挙げら
れる。
14
中央政府
[首相]
内務省地域行政局
[内務大臣]
県(チャンワット)
[県知事]
県行政機構(オーボーチョー)
自治市・町(テーサバーン)
郡(アンプー)
[郡長]
地区行政機構(オーボートー)
準郡(キン・アンプー)
地区(タンボン)
バンコク都
[地区長]
パタヤ特別市
地区(タンボン)
[地区長]
( 出 典 :タ イ 国経 概 況、 バンコ ク 日 本人 商 工会 議 書)
図 2.1-3
タイの地方行政機構図
①県行政機構(PAO;Provincial Administration Organization)
県行政機構は、法人格を持つ県レベルにおける地方自治体である。各県に一つの県自治
体があり、そのエリアは各県のエリアに一致する。県行政機構は県知事からの指導・管理
監督を受ける。
県行政機構は、人口規模に従って、以下の3つに区分される。
①大規模県自治体
②中規模県自治体
③小規模県自治体
県行政機構は、立法機関の県議会と県自治体長(PAO Chief Executive)を長とする執行
機関とで構成される。県行政機構の主要な役割は、公共施設や医療サービスの提供、就業
支援活動等であるが、最も重要な機能は、管内の各自治体間で交錯している各機能の調整
や管内の各自治体に対する支援(補助金交付や開発計画策定)である。
もともと県行政機構は自前の職員数が少なく、地方行政ラインの県知事や郡長の補助的
業務を長年行ってきたため、行政経験が低いとされている。
②自治市・町(Municipality)
自治市・町(タイ語ではテッサバン)は、人口密度が比較的高く、商業地区を持つ都市
部に設置されている。1999 年に衛生区(Sanitary District)を全て自治市・町に格上げ
15
したことにより、市町自治体の数が増加した。
基礎自治体としての性格を持つ自治市・町は、人口密度及び収入規模等に応じて、以下
の3つの形態からなる。
①特別市(City Municipality、タイ語ではテッサバン・ナコン)
②市(Town Municipality、タイ語ではテッサバン・ムアン)
③町(District Municipality、タイ語ではテッサバン・タムボン)
特別市及び市は県知事の指導・管理監督を、町は郡長の指導・管理監督をそれぞれ受け
る。自治市・町は、立法機関の議会と市長・町長(Mayor)を長とする執行機関とで構成さ
れる。市長(特別市及び市の執行機関の長)は住民による直接選挙により選出される。
行政の実務面での責任者は助役(Municipal Clerk)であり、市町自治体の職員であり、
内務省の任命によるものである。市町自治体の業務は、社会福祉、医療サービス、教育の
提供等であるが、予算収入規模に応じて実施される。なお、個々の市町自治体はその規模
や行財政能力にかなりの格差があり、廃棄物・汚物処理等に対処できない自治体が多いと
されている。
16
2.2 タイの製造業の状況
(1)工業団地の分布状況
タイには、現在約 60 の工業団地が存在し、以下の図 2.2-1 に示す通り特にバンコク北
部のアユタヤ県からバンコク南東部のチョンブリ県、ラヨーン県にかけて工業団地の集積
度が高い。特にこれらの地域はスワンナプーム国際空港、レムチャバン港などの交通運輸
の拠点がある。
( 出 典 :タ イ 国経 概 況、 バンコ ク 日 本人 商 工会 議 書)
図 2.2-1
タイの工業団地の分布
17
(2)タイの製造業の特徴
図 2.2-2 からわかる通り、①「コンピューター機器類(HDD 等)」、②「自動車」がタ
イの製造業の中でも主要なものとなっていることがわかる。「コンピューター機器類」の
構成比は、2004 年ごろまで 2%前後であったが、2005 年以降に急速に上昇し、2009 年に
は約5%まで上昇している。また、「自動車」の構成比は、アジア通貨危機の影響で 1998
年 に は 0.8% に ま で 低 下 し た が 、 そ の 後 は 自 動 車 生 産 台 数 の 増 加 を 背 景 に 2008 年 に は
4.8%にまで再び上昇している。2009 年には、前年秋のリーマン・ショックの影響もあっ
たが、2010 年の生産台数及び国内販売台数は過去最高水準を記録していることから、構成
比も大幅に上昇していると推察される。なお、冷蔵庫や洗濯機等の白物家電が含まれる「電
気機器・家電」の構成比は経済全体の 1%未満に留まっている。
( 出 典 :タ イ の投 資 環境 、国際 協 力 銀行 )
図 2.2-2
実質 GDP に占める主な製造業(小分類)の構成比
(3)コンピューター機器(HDD)産業
タイにおける「コンピューター機器類」の主要な機器は、輸出向けの HDD 関連セクター
である。
大 手 メ ー カ ー の タ イ へ の 進 出 に つ い て は 、 2009 年 時 点 の シ ェ ア 1 位 の Seagate
Technology(以下、Seagate とする)が 1983 年に、2 位の Western Digital が 2001 年に、
3 位の日立グローバルストレージテクノロジー(以下、日立 GST、とする)が 2003 年に、
4 位の東芝ストレージデバイスが 2008 年に富士通タイランドより買収してそれぞれ進出
し、タイを代表とする品目となった。
18
表 2.2-1
タイのハードディスク生産メーカーと生産能力
会社名
進出年
総生産能力
(100 万ユニット)
Seagate Technology (Thailand)
1983
66
Western Digital (Thailand)
2001
60
日立グローバルストレージテクノロジー(タイランド)
2003
60
東芝ストレージデバイス・タイ
1988
69.86
合計
255.86
( 出 典 :タ イ の投 資 環境 、国際 協 力 銀行 )
HDD 産業の発展については、タイ政府が積極的な支援をおこなってきたことが大きな要
因となっている。タイ投資委員会(Board of Investment、BOI)は投資奨励策において、
HDD および HDD 部品の製造を特別重要対象業種に指定している。これにより、HDD 生産メ
ーカーは、8 年間の法人所得税の免除(免除額の上限なし)や機械輸入税の免除等の恩典
を享受できるようになっている。タイ政府の支援の効果もあり、タイは HDD の主要輸出国
になり、2009 年には世界の HDD 輸出全体の 4 割超を占めるまでに成長している。
( 出 典 :タ イ の投 資 環境 、国際 協 力 銀行 )
図 2.2-3
タイ製 HDD の世界市場におけるシェア
19
(4)家電製品
家電のうち、特に冷蔵庫、エアコンについては、日系メーカーのみならず、韓国、欧州、
中国メーカーなどが、タイを主要な生産拠点としての展開を行っている。
表 2.2-2
タイ
フ ィ リ ピン
エアコン
冷蔵庫
●
ベトナム
電子レンジ
●
●
エアコン
冷蔵庫
●
●
インドネシ
ア
電子レンジ
●
エアコン
冷蔵庫
電子レンジ
●
エアコン
冷蔵庫
●
シンガポー
ル
電子レンジ
●
エアコン
●
●
●
●
●
冷蔵庫
●
●
●
電子レンジ
中
国
欧
米
●
エアコン
韓
国
シャープ
パナソニッ
ク
日立
東芝
三菱
三菱重
富士通
ダイキン
三星
LG
大字
ハ イ ア ール
格力
キャリア
冷蔵庫
電子レンジ
日
本
家電白物メーカーのアセアン進出状況
マ レ ー シア
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
●
( 出 典 :タ イ の投 資 環境 、国際 協 力 銀行 )
タイは白物家電を中心に世界の供給基地としての基板を固めつつあるが、タイ国内家電
産業の課題として 2 点あるとされている。一つは FTA が拡大していく中での、国際競争力
の維持が必要な状況であることであり、もう一点はタイ国内でも今後は少子高齢化が進み、
労働力人口の不足という問題が発生し、家電産業の拠点の維持が困難になってくるという
点である。
20
2.3 チョンブリ県の概況
2009 年の名目 GDP において東部が占める割合は 15.6%と、バンコクに次いで経済活動が
盛んであり、2002~2004 年の実質 GDP 成長率は 10%超を記録している。しかし、2009 年
はリーマン・ショックの影響により、マイナス成長となった。東部では製造業が盛んであ
り、ラヨーン、チョンブリ、チャチェンサオの 3 県にこれらの企業が多く立地している。
チョンブリからラヨーンにかけての東部臨海工業地域はタイの中でも最重要工業地帯で
ある。タイ政府は自動車産業の育成を目指して「アジアのデトロイト」化を図っているが、
その中心的な役割を担うのがチョンブリにあるレムチャバン港に近いこの地域で、日米欧
の大手組立メーカーのほか、関連する部品メーカーが多数進出している。
他方、ラヨーン南部のマプタプット港一帯には石油化学工業関連の企業が集積し、大規
模なコンビナートが形成されている。
特にチョンブリにはタイにある工業団地の中でも特に規模の大きいアマタナコーン工業
団地がある。入居企業数は 550 社以上で、そのうち日系企業が全体の 3 分の 2 の約 400 社
以上を占めている。
日本人駐在員が多く居住するチョンブリ県のシラチャはバンコクから車で 1 時間 20 分、
ドンムアン国際空港から 1 時間 30 分 、観光地パタヤとは 30 分の距離にある。近年は日
系企業が数多く進出し、多くの日本人が居住している。シラチャは近隣の工業団地からも
比較的近く、立地条件にも恵まれている。
(1)チョンブリ県の概要
チョンブリ県はバンコクから約 80km 離れており、海辺の観光地として昔から有名である
と共に、タイの重要な農工業地の一つでもある。ここでは米作りや、サトウキビ、タピオ
カ、ココナッツが耕されており、漁業、工業が営まれている。
チョンブリ県の周囲は以下のような県等に隣接している。
北側:チャチェンサオ県
南側:ラヨーン県
東側:チャチェンサオ県、 チャンタブリー県、ラヨーン県
西側:タイ湾
チョンブリ県は以下に示す 11 の郡から構成される。本事業にて訪問したチョンブリ市は
ムアンチョンブリー郡に、パタヤ特別市はバーンラムン郡に位置する。
1.ムアンチョンブリー郡(チョンブリ市がある)
2.バーンブン郡
3.ノーンヤイ郡
4.バーンラムン郡(パタヤ特別市がある)
5.パーントーン郡
21
6.パナットニコム郡
7.シラチャ郡
8.シーチャン島郡
9.サッタヒープ郡
10.ボートーン郡
11.コチャン郡
チョンブリ市
シラチャ市
パタヤ市
図 2.3-1 チョンブリ県の地図
チョンブリ県内の自治体の概要を以下の表に示す。パタヤ市の人口が最も多くなっている
が、タイは住民票の登録システムがないため、実際に居住している人口は以下の値と異な
ることが多い(例えば、パタヤ市は外部からの流入があり、居住人口が多くなっている)。
22
表 2.3-1 チョンブリ県の概要
人口
面積(km²)
1
パタヤ(Pattaya)
市/町
バーンラムン郡
郡
101,939
22.2
2
Chaophraya Surasak
シラチャ郡
80,088
306.44
3
Ban Suan
ムアンチョンブリー郡
61,072
n/a
4
Laem Chabang
シラチャ郡
64,607
109.65
5
Nong Prue
バーンラムン郡
49,558
45.54
6
Saen Suk
ムアンチョンブリー郡
42,843
20.843
7
チョンブリ(Chon Buri)
ムアンチョンブリー郡
32,276
4.567
8
Angsila
ムアンチョンブリー郡
25,673
18.6
9
Sattahip
サッタヒープ郡
22,539
6.22
10
Huay Yai
バーンラムン郡
22,208
153
11
Si Racha
シラチャ郡
19,221
4.058
12
Ban Bueng
バーンラムン郡
16,336
n/a
13
Huay Kapi
ムアンチョンブリー郡
15,297
14.5
14
Mon Nang
パナットニコム郡
13,522
52.58
15
Phanat Nikhom
パナットニコム郡
11,717
2.76
16
Bang Sai
ムアンチョンブリー郡
11,140
2.16
17
Nong Maidaeng
ムアンチョンブリー郡
10,689
10
18
Bang Sare
サッタヒープ郡
7,875
7.87
19
Hua Lo
ムアンチョンブリー郡
7,670
18.5
20
Tha Bunmee
コチャン郡
6,348
5.692
21
Ko Sichang
シーチャン島郡
4,975
7.9
22
Nong Phai Kaew
バーンブン郡
2,018
11.692
工業に関しては、既述のとおりヘマラート・チョンブリ工業団地、アマタナコン工業団地、
レムチャバン工業団地など、タイでも有数の工業団地が位置しており、日系企業も多いた
め、日本人も多く近隣に居住しており、「チョンブリ・ラヨーン日本人会」も組織されて
いる。特にシラチャではタイ日本人学校も設立されている。
また、シラチャ郡に位置するレムチャバン港はタイ最大の国際貿易港であり、タイで製造
された自動車も多く輸出されている。ちなみに、レムチャバン港は北九州港と姉妹港とし
て締結している。
観光については、海外でも有名なパタヤがチョンブリ県にあり、チョンブリ県の観光産業
において大きな役割を担っている。
23
(2)チョンブリ市の概要
チョンブリ市はチョンブリ県北部に位置し、チョンブリ市の西側はタイ湾に面している。
また、スワンナプーム空港から約 45 ㎞、レムチャバン港のから約 35 ㎞の位置にある。
チョンブリ市の面積は 4.57km2、人口は約 3 万 3 千人である。工場勤務者、漁業・商業従
事者が多い一方、農業従事者は少ない。
図 2.3-2 チョンブリ県及び周辺の地図
市長(Mr. Decho
Khongchayasukwat)のもとに、副市長が二人配置されている。チョン
ブリ市の行政組織(助役(Municipal Clerk 以下)を以下の図に示す。
24
助役
副助役
公共事業課
副助役
教育課
環境衛生課
技術計画課
医療課
財政課
福祉課
(出典:チョンブリ市提供資料より作成)
図 2.3-3 チョンブリ市の行政組織
後述する WEEE のパイロット事業(WEEE Can Do プロジェクト)については、市長、助役
など市のトップが積極的に推進しているが、直接は「環境衛生課」が担当となり、コミュ
ニティとの対応等を行っている。
<引用文献>
「タイの投資環境」、国際協力銀行
「タイにおける地方分権化の動向」、財団法人自治体国際化協会
「在タイ 日本国大使館ホームページ」
「タイにおける洪水の概要と被害状況」(NKSJ リスクマネジメント)
25
第3章
タイの廃棄物処理・リサイクルの状況
3.1 所管官庁の枠組み
タイでは、環境に関する基本的な法律である「国家環境質向上保全法 1992」(The
Enhancement
and
Conservation
of
National
Environmental
Quality
Act,
B.E.2535)の下、様々な省・局が廃棄物・リサイクルに関する法律を所管しており、
複雑な仕組みとなっている。国家環境質向上保全法では環境基金、環境基準、環境影
響評価等について規定されており、廃棄物に関する規定もあるが、具体的な規制につ
いては排出源ごとに個別法で規定されている。
家庭から排出される廃棄物に関しては 1992 年公衆衛生法が策定されており、家庭
から排出される一般廃棄物、及び感染性廃棄物について規制している。また、廃棄物
の処理責任は地方行政となっている。
工場から排出される廃棄物については、工業省工場局所管の 1992 年工場法(The
Factories
Act
B.E.2535)、または工業団地公社所管の 1979 年工業団地法
(Industrial Estate Authority of Thailand Act B.E.2522)で規制される。また、
有害物質については PCD 所管の 1992 年有害物質法(The Hazardous Substances Act
B.E.2535)が策定されている。実質的には、上記の法律に基づく省令、告示等で具体
的な廃棄物管理に関わる事項が規定されている。
以下に廃棄物・リサイクル関連制度の主要所管官庁を示す。
(1)工業省工場局(DIW:Department of Industrial Works)
工業省(Ministry of Industry:以下 MOI)の中の部局である DIW は、廃棄物処理・リサ
イクル工場だけでなく、工場の操業に関する許認可権を持っている。工場の設置運営認可
業務に付随して排水規制、大気汚染規制などを実施し、産業廃棄物に関しても排出許可、
マニフェスト制度、有害産業廃棄物・非有害産業廃棄物の基準の選定などを行っている。
さらに、中古家電輸入に関する許認可権限も有している。
工 業 省 の 出 先 機 関 で あ る 工 業 省 地 方 事 務 所 ( the Provincial Industrial Office,
Ministry of Industry)は、工業省登録コード 101、105、106 の廃棄物処理・リサイクル
工場の運営に関して管理監督している。また、2005 年工場法に関する MOI 告示で定められ
た有害か非有害か定まらない廃棄物に関しての判断する権限を有する。
(2)天然資源・環境省公害管理局(PCD:Pollution Control Department)
PCD は環境問題全般を担当している天然資源環境省(Ministry of Natural Resources and
Environment: 以下 MONRE)の中の部局である。環境保全と汚染防止の国家政策および計画の
策定支援、環境基準と排出基準の策定、環境管理計画の策定、その他の汚染物質に関する
26
規制の設定、一般廃棄物、感染性廃棄物、バーゼル条約など廃棄物全般に関して管理して
いる。特に有害物質法も所管しており、DIW が管理する法令との関係は、基本的に DIW が
各種告示等で有害物質法の基準を参照に有害産業廃棄物を規定しているため、産業廃棄物
管理に関しては DIW の法令が優先されるといえる。ただし、現在の法令に基準がない有害
廃棄物に関しては許認可権・監督権を有している。
(3)工業団地公社(IEAT:Industrial Estate Authority of Thailand)
MOI の関連第三セクターである IEAT も自らが運営する工業団地には独自の排水、有害廃
棄物管理などの規制を適用して運営している。また独自に産業廃棄物の処理サービスを提
供している工業団地もあるが、IEAT は MOI の管轄であり DIW との基準・規則との間の整
合性について問題はない。
(4)その他
その他、WEEE に関しては、以下の省庁を含む多数の省庁が関与している。
•
商務省(Ministry of Commerce):政府機関、及び民間セクターより WEEE 規制に関
わるコメント、助言を集め、欧州に提案する。また、タイの商業、工業を保護する
ための政策を立てるため、WEEE 制度化によって想定される影響を調査。内閣に対し
ては、経済、及び消費者に便益が無い限りは使用済み電化製品は輸入されるべきで
はないとする指針を提言しており、すでに承認されている。
•
税関局:上記の指針に関して、新製品と使用済み製品の通関コードの区別を行って
いる。
27
3.2 WEEEにかかる法制度
3.2.1 法制度の背景(WEEE に関係する課題)
(1)タイの WEEE フロー
タイ国内の WEEE の発生ポイントは、電気電子機器の輸入、生産、中古製品の輸入、廃電
気電子機器の輸入などが挙げられる。家庭向けの電気電子機器の場合、これらの製品は小
売業者を介して消費者に販売される。消費者が購入した後、その製品の劣化後においても
まだ使用できる場合、リペアショップで修理を行い、再度利用されることがある。一方劣
化した製品で再利用できない場合、消費者は分別場所へ持ち運び、リアカーによる廃品回
収や中古品買取店へ売ることができる。リサイクル可能な有価な部品/廃電気電子機器は、
リサイクル業者に売却される。一般ごみとして排出された場合には、処理責任のある自治
体では適正な廃棄処理がなされていないのが現状である。これらの家庭系 WEEE のタイにお
けるフロー概観を図 3.2.1-1 に示す。
電子機器メーカー等からの WEEE については、分別・リサイクル処分を行う施設に引き取
られ、処理される。IBM 社を例に挙げると、使用済み製品のうち、再使用可能な製品・部品
は再使用され、再使用が不可能な部分は厳格な基準で選定された WEEE 処理業者に引き渡さ
れ、適正処理されている。ただし、IBM 社の取り組みは先進的な例であり、他の事業者につ
いてどの程度適正に処理されているかは不明である。IBM 社の使用済み製品の処理フローを
図 3.2.1-2 に示す。
以上の通り、タイでは一部でのみ WEEE の適正処理が実施されており、WEEE の不適切な処
理による市民の健康や環境への影響が懸念されている。リアカー回収及び中古品買取店に
よる WEEE の不適正な方法での解体が行なわれている点についても問題とされており、不適
切な部品の解体によって残った部品等による、一般市民の健康や環境への影響が懸念され
ている。
28
廃電化製品の輸出
販売/使用
製品の輸入
再利用/リサイクル
処理
製品販売店
製品修理店
国内での製品の
生産
消費者
中古製品の輸入
鉄部品/パーツ販売店
廃電化製品の輸入
パーツ解体(リアカー
分別及びリサイクル工
公共の場所/環境
回収、中古品買取店)
場
認可を得た処理施設
(出典:WEEE Strategy 2007)
図 3.2.1-1 タイにおける家庭系廃電気電子機器のフロー概観
29
契約業者の承認
使用済み製品
倉庫
廃棄工程
解体工程
再商品化工程
・ 手分解
製品の再商品化
・ 有害物質除去
工程
部品の再利用
工程
・ 機能破壊
・ 減容
・ 分別
廃棄物処理 リサイクル
中古製品として
スペアパーツと
販売
して利用
・ 再資源化
・ 熱回収
(出典:IBM 資料より作成)
図 3.2.1-2 IBM タイ社による事業系廃電気電子機器の処理フロー
(2)タイにおける WEEE に関する課題
WEEE 管理に関し、タイで認識されている課題は以下の通りである。
•
WEEE 処理業者が必要な認可を受けないまま不適切な処理を行い、環境汚染につながっ
ていることが懸念される。適正な処理を行う業者も存在するが、認可を有していない
不適切な業者も多く、これらはリアカー等で集落やゴミ捨て場から有価なごみをピッ
クアップする。その後、自ら分解・解体を行い、有価物は売却、非有価物は廃棄する。
•
WEEE を直接的に規制する法令がなく、また消費者は WEEE の適正な処理の必要性につい
て知識がないまま、事業者による買い取りが行われている。また、一般の消費者が家
電類を買い替える場合には、古い家電類は零細事業者に売却され、適切な処理が行わ
れているのかどうかは不明である。
•
家庭系 WEEE については、公衆衛生法により自治体が WEEE の処理を行うという原則が
定めているが、WEEE を直接規制するものではない。また、自治体の方では十分な体制
が整っていない。自治体では一般ごみの処理の対応が重要な課題となっており、WEEE
への個別対応を行うリソースが不足しているのが現状である。WEEE の適切な処理を行
うための収集方法が地方自治体では確立されておらず、また適正な処理を行う施設も
30
限定的である。このような点も背景となり、零細業者による不適切な処理が引き起こ
されている。
•
大型の家電を適正に回収、処理している自治体はタイにはほとんどなく、後述する WEEE
回収パイロット事業が行われた地域であるチョンブリ県のチョンブリ市など、非常に
少ない。
•
WEEE リサイクルを直接規制する法制度が無いため、現状としては銅抽出のための野焼
きについても地方住民から苦情がなければ取り締まりができない。また取り締まられ
ても罰金は少額である場合もある。
•
収集、分別、リサイクル、処理について適切な行動が行われるシステムが存在しない。
•
適正なリサイクル技術を有する施設が少ない。
•
現在は将来的に発生するWEEEの予想値を分析している状況で、投資する場合の投資に
移すまでの判断材料が欠けている。どの程度の回収率で事業性が確保されるかといっ
た数字が提示できない。
素手での部品計量
自宅を倉庫として使用
家族経営での子供による解体
住宅地での解体作業
31
非有価物の不法投棄
銅抽出のための野焼き
(出典:PCD提供資料)
図 3.2.1-3 WEEEの不適正処理の現状
3.2.2 WEEE 処理の現況
(1)WEEE の定義
1)有害物質法
タイでは有害物質法において、使用済み電気電子機器、及び部品を「Type3」の有害物質
であると定めており、取扱いにはライセンスが必要であるとしている。現在のタイの WEEE
に関する法規制では当法令の定義が引用され、危険物の一種として規制されている。
<規制対象となる電気電子機器>
電気機器或いは電子部品が組み込まれており、再販売、再使用、変更、修理、改良、処理、
貯蔵、分別、解体される物。
例:冷蔵庫、TV、ラジオ、ビデオプレーヤー、テープレコーダー、エアコン、洗濯機、乾燥機、炊
飯器、電気ケトル、電子レンジ、電気オーブン、電話、FAX、電信送信機、計算機、タイプライ
ター、コピー機、携帯電話、PC、プリンター、ゲーム機等
<規制対象となる電気電子機器の部品>
上記の電気電子機器に使用されていた部品であり、再販売、再使用、変更、修理、改良、
処理、貯蔵、分別、解体される物。
2)WEEE 指令
PCD のガイドラインでは、WEEE について WEEE 指令と同様のカテゴリ分類をしている。
WEEE に関する調査等は当カテゴリ分類を参照しており、2007 年の PCD と EEI による調査
ではカテゴリ-①③④が対象とされている。
(Translated from Guidelines for Waste Management, http://www.pcd.go.th)
①大型家電:冷蔵庫、洗濯機、エアコン、食器洗浄機等
②小型家電:掃除機、アイロン、トースター、電気シェーバー等
③IT 機器:コンピューター、ラップトップ、スキャナ、ファックス等
④民生用機器:ラジオ、テレビ、カメラ、ビデオカメラ、VCD/DVD 等
32
⑤照明機器:蛍光管、ナトリウムランプ等
⑥医療機器:放射性治療機器、心臓・肺換気装置(cardiology
and
pulmonary
ventilators)等
⑦監視・制御装置:煙検知器、サーモスタット等
⑧玩具:ゲーム機、電子玩具等
⑨電気・電子工具:ドリル、電動のこぎり等
⑩自動販売機:飲料自動販売機等
(2)WEEE に関連する法制度
タイにおいては、WEEE を含む廃棄物は排出源別(家庭、或いは工場)に規制が異なる。
また、WEEE は有害物質法において「type3」の有害物質であると規定されており、関連する
法制度で規制されている。
タイでは WEEE 処理を直接規制する法制度は整備中の段階であり、
現状では様々な法律によって間接的に規制される状態となっている。以下に WEEE に関連す
る法制度を示す。なお、下線がついた法令は主要な上位法である。
表 3.2.2-1 WEEE 関連法
法律名
概要
所管
WEEE(廃棄物)全般に関連する法律
国家環境質向上保全法 1992
(The Enhancement and
Conservation of National
Environmental Quality Act,
B.E.2535)
タイの環境に関する基本的な法律であり、環境基
金、環境基準、環境影響評価等について規定して
いる。廃棄物については、「塵芥、生活ごみ、排
水、汚染された大気、汚染物質、及び汚染源から
排出される固形、液状、ガス状の全ての有害物質」
と定義しており、収集・運搬・処理・処分につい
ては個別法で規制するとしている。
家庭由来の WEEE(廃棄物)処理に関連する法律
公衆衛生法 1992
(Draft) Act on Fiscal Measures
for Environmental Management
(Draft)WEEE Management Act
家庭から排出される一般廃棄物、及び感染性廃
棄物について規制している。廃棄物の処理責任
は地方行政となっている。
現在検討中の WEEE 法の上位法となる法律案。汚
染税(pollution tax)、排出課徴金(emission
charge)、製品手数料(product fee)及び保険
債券(insurance bond)等の幾つかの経済手法
を盛り込んだもの。詳細は後述する。
WEEE の処理手数料を電気電子機器の販売時に上
乗せし、基金として整備するもの。詳細は後述
する。
工場由来の WEEE(廃棄物)処理に関する法律
工場法 1992
工業団地内の工場操業を規制する法律であり、廃
棄物の処分、汚染または環境に影響を及ぼす汚染
物質に関する工場の運営を管理することを目的
に、工場法に関連する規則と規制が公布されてい
る。E-waste については、工場内の製造過程から
排出される E-waste について規定されている。
33
工業省工場局
工業団地法 1979
Notification of the Ministry
of Industry on criteria for
permission of factory types
105 and 106, 2002
有害物質法 1992
Notification
on
import
control of used electrical and
electronic products, 2003
Notification of the Ministry
of Industry on prohibition of
household
refrigerator
producers
using
CFC
in
production, 1992
Industrial Product Standards
Act, 1968
工業団地内における、有害廃棄物に関する規制や
取組の実施などを含めた工業団地の権限を定めて
いる。
工場法の通達であり、ライセンス 105、及び 106
の施設に関するもの。ライセンス 105 の対象とな
る施設は、他の告示で指定される廃棄物・不用品
を分別、最終処分する施設、或いは工業過程から
の廃棄物・不用品を最終処分する施設である。ラ
イセンス 106 の対象となる施設は不用品となった
産業製品、産業廃棄物をリサイクルする施設であ
る。
有害物質の輸入・生産・輸送・消費・処分・輸出
に関する規制基準を定めている。
WEEE については、
事業者から排出された WEEE に適用され、WEEE の
輸入、輸出、保管、運搬を管理している。この法
律は事業者を管理するものであり、一般消費者は
対象外である。事業者は WEEE の収集、運搬、処理
に関連する事業者であり、メーカー等の切り分け
ではない。輸出入でバーゼル条約の手続きが必要
である。
有害物質法の通達であり、販売、再利用目的の場
合、製造日から 3 年以上経過した中古電子・電気
機器の輸入は禁止されている。リサイクル目的の
場合、中古機器に経済的価値があること、DIW の
登録工場で全ての残渣を含めて処理が可能である
こと、バーゼル条約加盟国からの輸入であること
が条件となる。告示の条件は中古品の電化製品は
使える状態である、耐久年数、商品的価値、タイ
国内の工場で修理できることが輸入条件となる。
規制される対象となるのは有害物質法の「Type3」
に分類される使用済み電気電子製品、及びその部
品である。
通達であり、家庭用冷蔵庫製造者に対して CFC の
使用を禁じるもの。
工業団地公社
工業省工場局
天然資源環境省・環
境政策計画局
天然資源環境省・公
害管理局
工業省工場局
税関局
工業省工場局
天然資源環境省公害
管理局
法令であり、工業製品、及び輸入製品が工業規格
に適合することを管理する。
タイ工業規格研究所
(3)取り扱う業者、処理方法等
タイにおいては、前述の通り、廃棄物の分別・埋立処分を行う施設はライセンス 105、廃
棄物を再使用・リサイクルする施設はライセンス 106 を DIW より取得する必要がある。取
り扱い品目・量はこれらのライセンスの中で指定される。また、ライセンス取得に際して
は環境影響評価を行う必要がある。
WEEE を含む有害廃棄物の運搬については、運輸省の陸上・港湾・航空の各部局が登録、
許可の権限を有している。現行の産業廃棄物を規定する 2005 年工場法に関する MOI 告示が
施行されるまでは、廃棄物の排出者や運搬業者、処理・リサイクル業者の責任について明確
な規定は無かった。2005 年工場法に関する MOI 告示により、廃棄物の排出者の責任・義務
について細かな規定が設定された。
34
3.2.3 タイにおける WEEE 法制度化の動向
(1)WEEE 法の概要
タイでは後述する「WEEE Strategy」の下、WEEE 適正処理を制度化する「WEEE Management
Act」の検討がすすめられている。内容としては、WEEE の処理手数料を電気電子機器の販売
時に上乗せし、基金として整備するものである。WEEE 法自体は詳細な規定はなく、対象品
目、加算する費用の比率などは、公示として出していくものとされている。現在検討され
ている WEEE 処理システムの概要について、関係者別の役割を以下に示す。また、フローを
図 3.2.3-1 に示す。
•
メーカー、輸入者:製品出荷量に応じて、製品手数料を支払う。
•
基金(新制度の下で設立):メーカー、輸入者から手数料を徴収し、BuyBack センター
に交付する。手数料と買戻し料金は中央政府が一律で設定する。
•
BuyBack センター:消費者から WEEE の買戻しによる回収を行う。回収された WEEE は物
流会社(或いは処理施設)に委託し、適切な処理施設へ送る。買戻し費用、事務手数
料(回収、買い戻し促進等)の諸経費は基金から資金調達し、運営する。調達する資
金の量は、WEEE の回収量によって決められる。センターの管理は地方自治体で行う。
•
物流・処理施設:WEEE の適正処理を実施する。
35
EEE 及び WEEE の輸出
EEE 製造者
EEE 修理ショップ
販売業者及び小売店
EEE 輸入業者
(新製品/中古製品)
消費者
料金徴収機関
廃棄物収集者
Tricycler/
ジャンクショップ
スペアパーツ
ショップ
政府基金
バイバック
センター
素材メーカー
解体及び
リサイクル施設
最終処分場
EEE, Electrical and Electronic Equipment:電気電子製品
WEEE, Waste Electrical and Electronic Equipment:廃電気電子製品
バイバックパートナー
お金の流れ
製品・廃棄物の流れ
(出典:PCD 提供資料)
図 3.2.3-1 WEEE 法で検討されているスキーム
(2)今後の動向
WEEE 法で手数料等を徴収するに当たり、財務省管轄の上位法となる「(Draft) Act on
Fiscal Measures for Environmental Management」 を WEEE 法の前に発布する予定であっ
た。上位法は、汚染税(pollution tax)、排出課徴金(emission charge)、製品手数料
(product fee)及び保険債券(insurance bond)等の幾つかの経済手法を盛り込んだもの
であり、製品手数料については、財務省の財政政策室(FPO: Fiscal Policy Office)より提
案された手法である。上位法についてはこれまで手続きが進められていたが、2011 年 7 月
の政権交代以後において、内閣から再度の検討を求められており、指示の内容は上位法と
下位の法律をまとめることを求めるものであった。上位法のドラフトは多様な環境関連の
項目を扱っており、水質汚濁及び大気汚染関連が優先され、WEEE についてはメカニズム及
び内容が水質及び大気と異なるため、分離されることも想定されている。
36
今後の見通しとして、WEEE 法の内容は既に用意されているものの、上位法成立の見込み
が立っていないことから、天然資源環境省としては、上位法より分立して単独での WEEE 法
発布についても検討する予定であるが、方向性については今後決定される。
財務省
2011 年の政権交代後により、
(Draft) Act on Fiscal Measures for
Environmental Management
内閣から再検討の指示
WEEE 法で手数料を徴収するために
上位法の発布が必要。
WEEE 法の内容は用意済み
天然資源環境省 公害管理局
上位法の成立の見込みが立たない
(Draft) WEEE Management Act
上位法と分立等の方向性を検討
図 3.2.3-2 今後の WEEE 法の動向
(3)WEEE 制度化に向けて取り組むべき課題
WEEE 制度化に対応するにあたり、以下の課題が認識されており、今後取り組む必要があ
るとされている。
•
自治体は一般ごみの処理が重要な課題となっており、WEEE への対応についてはキャ
パシティ不足が懸念される。
•
WEEE の不適切処理に起因する環境影響等については住民に根付いておらず、啓発、
及び家庭からの WEEE の分別排出を促す必要がある。
•
タイ国内では WEEE を適切に解体、有害物質処理、再資源化を行うことができるイン
フラが整っていない。
•
メーカーの製品手数料への協力を今後要請する必要がある。
•
BuyBack センター及び WEEE リサイクル施設にかかる要件の設定等、他省庁と協調し
て進める必要がある。
3.2.4 WEEE Strategy2007 の内容と達成状況、今後の Strategy の方向性
(1)WEEE Strategy 2007 の概要(目的、目標)
タイでは 2007 年の内閣承認によって「WEEE Strategy 2007」を策定し、以下の目的、目
標を達成するために 2007 年から 2011 年にかけての実施計画を作成し、
順次実施している。
○目的
•
タイ国内で排出された WEEE について、学術的見地で統括的なシステムに則った処
理を可能にする。
37
•
社会の各関係機関からの協力を得ながら、タイ国内で効率的且つ恒久的な WEEE の
処理運営システムを構築する。
•
WEEE からの危険廃棄物を減らし、環境にやさしいデザイン及び、製品製造を支援
する。
•
海外取引におけるタイ国内の競争力及び優位性の強化を促進させる。
•
2017 年までに効率的な再建に根ざした WEEE の処理をタイ国内に浸透させる。
○目標
•
効率的且つ学術的理論に適った WEEE の分別、及び回収システムを持ち、2011 年ま
でに WEEE の全体総数を 50%以下にすること。
•
WEEE に含まれる有価物を効率的にリサイクルし、2011 年までに WEEE の全体総数
の平均値より 50%以下に下げること。
•
国内で排出される WEEE を学術的理論に適った方法で解体・リサイクルし、分別す
ることのできるリサイクル施設を建設する。
•
タイ国内の電気電子メーカーの国際競争力強化のため、分別・リサイクルが容易
な製品を設計・製造する。
•
2011 年までに、効率的且つ学術的理論に適った、地方行政体が運営する有害廃棄
物処理施設を1箇所以上設置する。
•
2017 年までに効率的、統括的な WEEE 処理システムをタイ国内に浸透させる。
(2)実施方針と戦略
実施方針としては、予防原則(Precautionary Principle)、汚染者負担原則(Polluter
Pays Principle)を適用することとしている。初期段階では現行の仕組みを発展させ、電
気電子機器への基準適用や、実施能力のある地域にプロジェクトとして WEEE 処理システム
を構築する。長期的には、WEEE の製造や輸入においての手数料を生産者及び輸入者から徴
収できる法律改革を行い、国レベル、及び地域レベルの処理運営組織を発展させ、恒久的
な WEEE 処理運営ができる財務システムを構築するための基金を設置し、運営することとし
ている。
実施方針に従い、以下の 5 つの戦略(Strategy)が設定されている。また、各戦略には
対策がさらに設定されている。各対策については図 3.2.4-1 に示す。
•
Strategy1:WEEE 適正処理の技術開発、及び電気・電子機器製造。
•
Strategy2:キャパシティビルディング、各行政機関の協力。
•
Strategy3:WEEE 処理に関する法律の施行、法規システムの開発。
•
Strategy4:財政面の制度、投資を支援する法制度。
•
Strategy5:効率的、効果的な WEEE の処理システム開発。
38
(3)結果と今後の方針
上記の戦略に基づき、14 のプロジェクトが計画された。必要に応じて新しいプロジェク
トを発足させることも可能である。計画されたプロジェクトは天然資源・環境省、工業省、
科学技術省、内政省、財務省、資金支援委員会、研究支援基金事務所、電気・電子研究所、
タイ環境事務所、タイ国工業協会、タイ商工会議所協会といった関係機関が戦略に則って
実行している。実施結果と今後の方針を以下に示す。
•
現在は 5 年間の実績・結果を上に報告している状況である。国家環境委員会は首相が
代表を務める環境委員会の下に WEEE に関する小委員会が設けられており、評価を行っ
ている。
•
製品の品目に応じた適切な手数料と条件に関する調査は実施され、提示されている。
•
計画された 14 のプロジェクトはそれぞれ進められているが、実現できていないプロジ
ェクトについては、取りやめることも想定している。
•
現行の Strategy は 2011 年までの期間を対象としており、2012 年~2016 年の期間を対
象としたものについては、現在作成している。
•
それぞれのサブプロジェクトの進捗状況に基づき、2016 年までの計画を作成する。
•
今後はそれぞれの部署での草案が作られる予定である。
39
第1の戦略
第1の対策
第2の対策
第3の対策
廃電化製品及び電子機器の処理のテクノロジーや適切な方法の開発、環境にやさしい製品作りを行なう。
中小企業(SMEs)への取引及び環境指定項目に即した生産部品及び構成パーツの知識開発支援。
3R/グリーンプロダクトを念頭に置いた製品製造の設計/調整を行い、R&Dの支援やテクノロジーの引継ぎを行なう。
研究学習を支援し、製品及び、廃電化製品のデーターを作成すると共に、国内外の機関のデーターと情報交換できリンクできる
ネットワークシステムの開発を行なう。
第4の対策 国内の廃電化製品及び電子機器製品の処理について最新のテクノロジーを導入して支援を行なう。
第5の対策 タイ国に似合った廃電化製品及び、電子機器製品の処理システムの開発を行なう。
目的
1.
タイ国内で排出された WEEE について、学術的見地で
統括的なシステムに則った処理を可能にする。
2.
社会の各関係機関からの協力を得ながら、タイ国内で
効率的且つ恒久的な WEEE の処理運営システムを構築
する。
3.
WEEE からの危険廃棄物を減らし、環境にやさしいデザ
イン及び、製品製造を支援する。
4.
海外取引におけるタイ国内の競争力及び優位性の強
化を促進させる。
5.
第2の戦略 関係各位からの参加協力体制を持ちながら、廃電化製品及び電子機器の処理における能力向上、学習工程の支援を行なう。
第 1 の対策 一般市民、リアカー、中古品買取店や地方行政体へ廃電化製品及び電子機器の処理 グリーン・プロダクト(Green Product)の情報支援及び知識
を与え広報活動を展開し、環境にやさしい製品を購入するよう支援する。
第2の対策 公的及び民間機関において電化製品及び電子機器製品についてのデーター、情報、研究結果や開発の情報交換ができるよう、計画を立て/ネット
ワークを構築する。
第 3 の対策 電化製品及び電子機器の一消費者として一般市民へ学術的な見地において適正な電化製品及び電子機器製品の分別、保管や回収に参加を呼びかけ
支援する。
2017 年までに効率的な再建に根ざした WEEE の処理を
タイ国内に浸透させる。
短期
目標
1.
効率的且つ学術的理論に適った WEEE の分別、及び回
収システムを持ち、2011 年までに WEEE の全体総数を
50%以下にすること。
2.
WEEE に含まれる有価物を効率的にリサイクルし、2011
年までに WEEE の全体総数の平均値より 50%以下に下
げること)。
3.
国内で排出される WEEE を学術的理論に適った方法で
解体・リサイクルし、分別することのできるリサイク
ル施設を建設する。
4.
タイ国内の電気電子メーカーの国際競争力強化のた
め、分別・リサイクルが容易な製品を設計・製造する。
5.
2011 年までに、効率的且つ学術的理論に適った、地
方行政体が運営する有害廃棄物処理施設を1箇所以
上設置する。
6.
2017 年までに効率的、統括的な WEEE 処理システムを
タイ国内に浸透させる。
長期
第3の戦略 廃電化製品及び電子機器の処理の便宜を図るための効率的な法律の執行及び法規システム開発の支援を行なう。
第 1 の対策 国際間の法規、低品質製品輸入の規制管理などを念頭に置き、電化製品基準指定の法規を発布する。
第2の対策 廃電化製品及び電子機器についての分別やリサイクル工場事業者活動の管理における実施方針の定める。
第 3 の対策 製造者及び輸入者へ種類、品質、製品の原料(危険化学薬品+リサイクル部品)などのデーターを開示するよう指定し、リサイクルや廃棄物処理
業者へリサイクル可能な量、処理希望量などを報告させること。いずれも国際間取引における競争力を念頭におくこと。
第 4 の対策
第5の対策
適正に危険物を含む廃製品の再利用するため、廃棄物のリサイクルを支援する運営システム、財務機構を構築するため、法律を発布する。
一般市民へ一般ゴミから廃電化製品及び電子機器を分別する法規を発布させ、地方行政体の法規を調整する。
第 4 の戦略
第 1 の対策
第 2 の対策
第 3 の対策
第 4 の対策
第5の対策
財務についての対策を使い、環境にやさしい廃電化製品及び電子機器処理の支援をするための資金の調達を行なう。
統括的な電気・電子工業開発のため、製品基準試験センターを設置する財務の支援を行なう。
恒久的な廃製品の処理運営における財務機構を構築するための支援を行なう。
製品リサイクルや再利用を推進していくための必要なテクノロジー導入基金の支援を行なう。
タイ国各地方で地方行政体の管轄する地域からの危険廃棄物処理センターを設置し、運営するための財務支援を行なう。
環境にやさしい電化製品及び電子機器を選んで購入・使用するよう公共及び民間機関への対策支援を行なう。
第5の戦略 効率的且つ統括的な廃電化製品及び電子機器の処理運営システム開発
第 1 の対策 効率的且つ統括的な廃電化製品及び、電子機器の処理運営における公的機関や地方行政体との連携組織体制の構築及び整備するため、廃電化製品
の処理運営の法規を設置する。
図 3.2.4-1 WEEE Strategy 2007 の概要
40
3.3 WEEE回収パイロット事業
3.3.1 背景・目的
WEEE Strategy 2007 の一環として、WEEE 回収パイロット事業が以下の目的で実施され、
家庭から回収された WEEE について調査が行われた。
•
市民に対して環境と健康への影響についての意識を高め、WEEE の一般廃棄物からの分
別廃棄を促す。
•
WEEE を環境負荷の少ない適切な手法で処理する。
•
地方行政は WEEE 回収拠点を設置し、長期的には他の自治体との連携体制を構築する。
•
制度化するにあたり、実際の WEEE 処理にかかる費用のデータを収集する。
(※2011 年 12 月 5 日はプミポン国王の 84 歳の誕生日にあたり、タイでは干支の一回りが
大切にされることから(84 歳は 12 年を 7 周)、本パイロット事業は記念事業の一環として
実施されている。)
3.3.2 事業概要
(1)対象品目
回収対象品目は PCD より小型家電を中心に指定されている。回収対象品目は小型家電を
中心として携帯電話、バッテリー(携帯電話)、固定電話、コードレスフォン、プリンタ
ー、ファックス、MP3 機器、ゲーム機、VCD、DVD、デジタルカメラとなっている。
(出典:PCD 提供資料)
図 3.3.2-1 パイロット事業で示している対象機器
(2)回収目標
プミポン国王の 84 歳の誕生日を記念し、84,000 台が目標として設定されている。
41
(3)関係者の役割
PCD 主導の下、以下に示すスキームで実施されている。2011 年 10 月の時点では、69 機関
が協賛しており、WEEE の回収等に協力している。協賛機関の一覧を表 3.3.2-1 に示す。な
お、広報費等を含めた全体予算は 130 万バーツである。
•
回収:自治体、及び企業・教育機関等の協力機関が WEEE 回収容器の設置場所を提供し
ている。2011 年 10 月の時点では 667 箇所の回収拠点が PCD に報告されている。2011
年 10 月時点での回収拠点の一覧を表 3.3.2-2 に示す。
•
運搬:PCD が各回収拠点より回収(費用負担)し、ユミコアの倉庫(サムットプラカン
県)に保管したのち、各リサイクラに分配(当初計画、洪水前)。
•
解体・処理:リサイクラ(TES-AMM、ユミコア、フジゼロックス(OA 機のみ)、WMS/ESBEC)
にて解体等の作業を行い、試験結果(機器の種類、重量、解体・選別後の物質別の比
率データ)を PCD に提供する(無償で引き取り)。

タイ国内で処理するのは WMS/ESBEC のみで、ユミコア、TES-AMM については海
外の工場で処理。
•
メーカー:WEEE 提供者には抽選くじを提供し、その景品となる家電等についてはメー
カーが提供。
図 3.3.2-2 WEEE 回収パイロット事業のフロー
42
(4)対象地域
自治体としては、タイ全土の 23 市町村が協賛し、参加している。また、民間企業、教育
機関も回収拠点を提供する等の面で協力している。以下に事業参加機関を示す。
(PCD 提供資料、□が参加市町村)
図 3.3.2-3 WEEE 回収パイロット事業参加自治体
43
表 3.3.2-1 WEEE 回収パイロット事業の協賛機関
WEEE 回収容器設置場所の提供
教育機関(24 校)
カセサート大学
ラムカムヘン大学
シーナカリンウィロート大学
メーファールアン大学
キングモンクット工科大学トンブリー校
キングモンクット工科大学プラナコンヌア校
ラーチャモンコン工科大学タンヤブリ校
スラナリー工科大学
ワライラック大学
チェンマイ大学
チャントラカセム・ラーチャパット大学
コンケーン大学
スコータイタンマティラート大学
ナレースワン大学
スワンスナンター・ラーチャパット大学
スワンデゥシット・ラーチャパット大学
シーパトゥム大学
マハナコン工科大学
セント・ジョーンズ大学
サイアム大学
トゥラキット・バンディット大学
パヤオ大学
他、2 か所(名称不詳)
金融機関(2 社)
アユタヤ銀行(公開株式会社)
サイアムコマーシャル銀行(公開株式会社)
企業・公社(7 社)
タイ電話公社(Telephone Organization of Thailand、公開株
式会社)
電気電子研究所(Electrical and Electronic Institute)
アドバンスト・インフォ・サービス社(公開株式会社)
ソニー(タイランド)社
G-Net International 社
フジゼロックス・タイランド社
他、1か所(名称不詳)
管轄地区の情報提供支援、ゴミ廃棄場より WEEE の回収及び、回収された WEEE の中間保管
施設への運搬等
地方行政体(23 箇所)
バンコク都 環境事務所
チョンブリー自治体
ノンタブリー市役所
チャイナート自治体
パトゥムターニー自治体
スラータニー市役所
トゥンソン自治体
ナコンラチャシーマ市役所
ホアヒン自治体
44
ピサヌローク市役所
ケラーンナコン自治体
ランパーン市役所
トラン市役所
ウドンターニー市役所
クルン自治体
ソンクラー自治体
チェンマイ市役所
チェンライ市役所
ナコンパークグレット市役所
シーサゲット自治体
ハジャイ市役所
プーケット市役所
ラヨン市役所
懸賞の支援、回収支援や廃棄台数のデータ提供など
製 造 者 及 び 製 品 輸 入者 東芝 タイランド社
(9 社)
ブラザー・コマーシャル(タイランド)社
エプソン(タイランド)社
キャノン マーケティング(タイランド)社
リコー(タイランド)社
パナソニック・マネージメント(タイランド)社
デル コーポレーション(タイランド)社
ノキア (タイランド)社
ヒューレッド・パッカード(タイランド)社
リサイクル品の選別、処理や廃電気製品の処理、台数統計資料の提供、リサイクル処理に
関する部品や材料業者
リ サ イ ク ル 及 び 廃 棄物 ユミコア・マーケティング サービス(タイランド)社
処理業者
TES-AMM Thailand 社
フジゼロックス・エコマニュファクチャリング社
Waste Management Siam 社
45
表 3.3.2-2
WEEE 回収パイロットプロジェクト回収拠点
番号
機関
1
アユタヤ銀行(公開株式会社)
1222 プララーム3通り
バーンポーンパーン ヤーンナ
ーワー地区
バンコク 10120
サイアムコマーシャル銀行(公
開株式会社)
9 ラチャダーピセーク通り チャ
ットチャック
バンコク 10900
2
受入拠点数
金融機関(2 社)
地方行政体管轄地
フードセンタ―入口 2 箇所、
駐車場広場周辺 1 箇所
計 3 箇所
ヤーンナーワー地区
センター事務所
計 1 箇所
チャットチャック地区
企業・公社(7 社)
3
4
TOT(タイ電話公社、公開株式
会社)
89/2 第3村落 トゥンソーンホ
ーン区域
ラックシー地区 バンコク 102
10
ジーネット・インターナショナル
(タイ)社
3/2 スパーライパーク棟
ラートヤーオ区域 チャットチャ
ック地区
バンコク 10900
5
電 気 ・ 電 子 研 究 所 ( Electrical
and Electronic Institute)
6
ジーエーブル社
127/27,29-31
ノンシー通り チョンノンシー区
域 ヤーンナーワー地区 バンコ
ク 10120
ソニー タイ 社
2126 グロマディット棟 4階
バーンガピ区域 フアイクワーン
地区 バンコク 10310
7
計 200 箇所(詳細は不明)
ラックシー地区
サービスセンター
計 17 箇所
ディンデーン地区
チャットチャック地区
チャットチャック地区
バーンパラット地区
スワンルワン地区
バーンクンティヤン地区
サーイマイ地区
チョンブリー自治体
ジャンタブリー自治体
プラナコンシーアユタヤー市役所
チェンマイ市役所
ピサヌローク市役所
コーンケーン市役所
ナコンラーチャシーマー市役所
ハートヤイ市役所
スラタニー市役所
プーケット市役所
プラナコン地区
サムットプラカーン市役所
工業団地(同)工場棟 1 箇所
バンプ―工業団地規格実験セン
ター1 箇所
計 2 箇所
バンジャターニービル 1 箇所
CDG Houseビル 1 箇所
計 2 箇所
サービスセンター
20 箇所
46
ヤーンナーワー地区
フアイクワーン地区
チャットチャック地区
トンブリー地区
バーンナー地区
コーンケーン市役所
パタヤー市
チョンブリー自治体
ナコンラーチャシーマー市役所
ピサヌローク市役所
プーケット市役所
ハートヤイ市役所
スラタニー市役所
ウドンタニー市役所
ウボンラーチャタニー市役所
チェンマイ市役所
パトムワン地区
ノンタブリー市役所
バーンケー地区
バーンガピ地区
クローントゥイ地区
8
9
アドバンス インフォ サービス
社
(公開株式会社)
シンナワットタワー1棟
414 パホンヨーティン通り
サームセンナイ区域
パヤータイ地区 バンコク 104
00
フジゼロックス(タイ)社
サービスセンター
30 箇所
センター事務所
1 箇所
チャットチャック地区
地方自治体(15 地域)
10
バンコク環境センター
11
ハートヤイ市役所
12
ウドンタニー市役所
13
ピサヌローク市役所
14
チョンブリー自治体
15
16
17
18
パトムタニー自治体
スラタニー市役所
パークグレット市役所
ケーランナコン自治体
19
ラムパーン市役所
20
チェンマイ市役所
21
ラヨーン市役所
軍医科学研究センター2 箇所、
環境事務所 1 箇所
計 3 箇所
スーパーマーケット、ショッピング
センター
計 3 箇所
市役所 1 箇所
ごみ収集車駐車場 1 箇所
計 2 箇所
市役所事務センター1 箇所、
国民登録事業所 1 箇所、
共同体健康センター4 箇所、
図書館 1 箇所、公害防止・軽減
事業(消防棟)1 箇所、
計 8 箇所
自治体事務所 1 箇所、
共同体 18 箇所、学校 8 箇所、デ
パート 3 箇所
計 30 箇所
自治体事務所1箇所
市役所事務所1箇所
廃棄物受け入れ場所候補無し
共同体
計 63 箇所
役所市場1(ラックムアン)1 箇
所、学校 11 箇所、共同体 2 箇
所、墓地 1 箇所
計 15 箇所
全ての自治体
計 100 箇所
Road
show 事業による受入れ
47
ラーチャテーウィー地区
ディンデーン地区
ハートヤイ市役所
ウドンタニー市役所
ピサヌローク市役所
チョンブリー自治体
パトムタニー自治体
スラタニー市役所
ケーランナコン自治体
ラムパーン市役所
チェンマイ市役所
22
23
24
ソンクラー市役所
シーサケット自治体
クルン自治体
計 10 箇所
計 10 箇所
計 4 箇所
ソンクラー市役所
シーサケット自治体
クルン自治体
25
スコータイタマティラート大学
9/9 バーンプート村
パークグレット郡 ノンタブリー県
11120
ラムカムヘン大学
282 ホワマーク区域
バーンガピ地区 バンコク102
40
メーファールワン大学
333 第1村落 タースット村
ムアン郡 チェンラーイ県5710
0
セント・ジョンズ大学
1110/5 ジョムポン区域
チャットチャック地区 バンコク
10900
スラナリー工科大学
111 スラナリー村 ムアン郡
ナコンラーチャシーマー県 300
00
ホワチヤオチャルムプラギヤット
大学
18/18 バーンナー-タラート
通り バーンチャローン村 バー
ンプリー郡
サムットプラカーン県 10540
カセサート大学
50 ガームウォンワーン通り
ラートヤーオ区域 チャットチャ
ック地区 バンコク 10900
マハナコン工科大学
140 チュアムサムパン通り
グラトゥムラーイ区域 ノーンジョ
ーク地区バンコク10530
キングモンクット工科大学トンブ
リー校
126 バーンモット区域
トゥンクル地区 バンコク1014
0
スワンドゥシット・ラーチャパット
大学
295 ラーチャシーマー通り
ドゥシット区域 ドゥシット地区
バンコク 10300
シーパトゥム大学
61 パホンヨーティン通り
セーナー区域 ニコム チャット
チャック地区 バンコク 10900
スワンスナンター・ラーチャパッ
ト大学
1 ウートーンノーク通り
総務棟地下 1 箇所、
学科棟地下 1 箇所
計 2 箇所
パークグレット市役所
総務棟 1 箇所、その他大学内の
エレベーター前等 4 箇所、
計 5 箇所
バーンガピ地区
教育機関(23 校)
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
大学寮
計 7 箇所
学内時計塔1箇所
チャットチャック地区
学内棟 9 箇所、
寮管理棟 3 箇所、
計 12 箇所
サービス棟 1箇所、
共同学習棟 1箇所、
食堂棟1箇所、
学生寮棟 2 箇所、
ヨセー構内 1箇所、
計 6 箇所
学内廃棄物選別所 1 箇所、
図書館 1 箇所、
計 2 箇所
バーンチャローン郡役場
バーンプリー郡
サムットプラカーン県
ポームプラーブ地区
チャットチャック地区
1箇所
ノーンジョーク地区
計 6 箇所
トゥンクル地区
受付窓口周辺 1 箇所、
正門前周辺 1 箇所、
中庭周辺イベント広場 1 箇所、計
3 箇所
ドゥシット地区
学内棟計 4 箇所
チャットチャック地区
計 36 箇所
ドゥシット地区
48
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
ワチラ区域 ドゥシット地区
バンコク 10300
サイアム大学
38 ペットガセーム通り
バーンワー区域 パシージャル
ン地区 バンコク 10160
トゥラキット・バンディット大学
110/1-4 プラチャーチューン
通り ラックシー地区 バンコク
コーンケーン大学
123 ナイムアン村 ムアン郡
コーンケーン県 40002
ラチャモンコン工科大学タンヤブ
リー校
39 第1村落 クロンホック村
クロンルワン郡 パトムタニー県
12110
国立開発行政研究院(NIDA)
118 クローンジャン区域
バーンガピ地区 バンコク 102
40
タマサート大学
99 第18村落 クローンヌン村
クローンルワン郡 パトムタニー
県 12121
ワライラック大学
222タイブリー村ターサーラー
郡
ナコンシータマラート県 8016
0
チェンマイ大学
239 フワイゲーオ通り
ステープ村 ムアン郡
チェンマイ県 50200
キングモンクット工科大学プラナ
コンヌア校
1518 ピブンソンクラーム通り
ウォンサワン区域
バーンスー地区 バンコク 108
00
ナレースワン大学
99 第9村落 ターポー村
ムアン郡 ピサヌローク県 650
00
チャントラカセム・ラーチャパット
大学
ラチャダーピセーク通り
チャットチャック地区 バンコク
学内棟計 2 箇所
パシージャルン地区
学生事務所周辺 1 箇所、
図書館入口 1 箇所、
学内棟 1 箇所、
計 3 箇所
学内食堂計 2 箇所
ラックシー地区
学内学科棟等計 10 箇所
クロンホック郡役場
学内地下駐車場1箇所
バーンガピ地区
学生寮周辺・中央棟
計 2 箇所
タークロン自治体
コーンケーン市役所
学生寮計 13 箇所
学内棟1箇所
チェンマイ市役所
全学部計 20 箇所
バーンスー地区
共同学習中央ホール1箇所
理学部棟1箇所
49
チャットチャック地区
3.3.3 これまでの経緯・結果
当初はプロジェクトの実施期間として、2011 年の環境の日(6 月 5 日)からプミポン国
王の誕生日(12 月 5 日)までが予定されていた。また回収拠点からの PCD による回収は 2
回予定されており、1 回目は 10 月、2 回目は回収終了の 12 月 5 日以降で予定されていた。
しかしながら、10 月に洪水が発生したことから回収が遅れ、プロジェクトの実施期間が 1
月末まで延長されている。回収された WEEE は 11 月末に 1 回目、回収期間終了後に 2 回目
の回収が実施されている。なお、後述するチョンブリ市については、チョンブリ市庁舎に
一定量の WEEE が集められていたことから、PCD の了承を得て、WMS 社が直接引き取ってい
る。
WEEE と引き換えに配布される抽選くじの抽選は 2 月 15 日に行われ、2 月 22 日に抽選結
果が発表された。今後景品との引き換えが行われる予定となっている。
プロジェクト全体の結果は現在取り纏めの段階であるが、PCD によると、1 回目の回収で
は約 2 万個の WEEE が回収されている。PCD によるデータ収取、取り纏め後にプロジェクト
の結果が明らかになると予想される。
抽選くじ
(名前、住所、電話番号を記載し、右写真の通り貼り付け)
回収された WEEE に張り付けられている抽選くじ
(PCD セミナー資料より)
図 3.3.3-1 WEEE 回収パイロットプロジェクト実施状況
3.3.4 今後の方向性
PCD ではパイロット事業終了後の予算を計上しておらず、現行の回収プロジェクトが終了
した時点で取り組みは終わる。PCD として今後は自治体が主導して、実施されることを期待
している。また、景品としては抽選で精米(ある大学が提供)を渡すことを考えている。
50
3.3.5 チョンブ市での WEEE 回収プロジェクトの取り組み

チョンブリ市では、PCD と連携して WEEE のパイロット事業(WEEE の回収)を 2011 年 6
月より実施中である。

チョンブリ市の助役(Ms.Chutharut)は昨年度事業でのセミナー(バンコク)、秋田
でのスタディツアーに参加しており、これらの経験を活用して、パイロット事業を進
めているとのこと。

PCD が予定しているパイロット事業の終了後も、チョンブリ市は回収を独自に継続する
など意欲的である。

継続する場合には、処理の委託先についても独自に探すことになり、自治体からの WEEE
の引き取りを行うことができる契機となることが予想される。

ただし、回収されている品目には雑多な家電類(電子ポット、炊飯器等)も含まれて
おり、これらの処理において課題があると思われる。
(1)チョンブリ市での取り組みの概要
•
プロジェクト実施にあたっては、PCD、チョンブリ市、セントラルデパート、学校関係
者関係者を招集してアレンジングミーティングを行っている。また、PCD、チョンブリ
市の 18 のコミュニティ、企業と MOU を締結している。
•
回収拠点は市庁舎、コミュニティ、学校、デパート等に設置されており、チョンブリ
市内の回収拠点は全 46 箇所である(12 月 15 日時点)。回収容器はチョンブリ市から
提供される。
•
費用負担として、コミュニティの回収所から市庁舎まではチョンブリ市が負担してお
り、市庁舎から運び出す費用以後は PCD の負担である。
•
これまではスポンサーがついていたので、会議、キャンペーンの費用以外には市では
負担していない。
PCD と MOU を締結
WEEE 回収容器の授与式
図 3.3.5-1 チョンブリ市の取り組み状況
51
(2)各回収拠点の設置状況
•
市庁舎:各コミュニティで回収された WEEE が持ち込まれ、保管されている。プロジェ
クト回収対象外の品目も受け付けられている。CRT テレビや PC モニターが多く見られ
た。(12 月 17 日に WMS 社が直接回収している。)
•
コミュニティ:各コミュニティ及び公共施設に回収容器が設置されている。回収容器
はコミュニティのリーダーの家や店舗等の入り口付近に設置されており、比較的人目
に付きやすい場所にある(※盗難防止のための管理がしやすい)。回収容器にはプリ
ンター、電話、電卓、ドライヤー等の中型・小型 WEEE が回収されていた。回収された
WEEE は市庁舎へ持ち込み、或いは直接業者に引き渡される。
•
ショッピングセンター:回収拠点は PC や携帯電話等の IT 機器フロアの中心部に設置
されている。解体されたプリンターが多くみられ、ショッピングセンター内の店舗か
ら使用できない機器が持ち込まれている様子である。
(3)WEEE 回収結果
チョンブリ市では 2011 年 6 月 5 日から 2012 年 2 月までの期間において、
2,104 個の WEEE
を回収している。携帯電話、及び携帯電話のバッテリーや充電器等の附属品が最も多く回
収されている。
詳細は以下に示す通りである。
(※2011 年 12 月末の時点では 1810 個の WEEE
を回収していることが現地セミナーで報告されている。)
チョンブリ市庁舎に回収された WEEE は、洪水の影響により、PCD による回収が滞ってい
る状況にあった。その為、PCD による承認の下、チョンブリ県内に施設を有する WMS/ESBEC
社が直接チョンブリ市庁舎から WEEE を引取り、処理を行った。なお、回収された WEEE の
中には雑多な家電類も含まれており、処理費の関係から一部の小型家電を中心とした WEEE
のみが引き取られている。WMS/ESBEC 社で引き取られなかった家電は他社で処理されている。
52
表 3.3.5-1 WEEE Can Do プロジェクトの回収結果
品目名
WEEE 回収パイロット事業対象品目
1. 携帯電話
2. 携帯電話用バッテリー
ノートブックパソコン用バッテリー
デジタルカメラ用バッテリー
3. 家庭用電話機
4. プリンター
5. ファックス
6. VCD/DVD プレイヤー
7. デジタルカメラ
8. MP3 プレイヤー
9. ゲーム及びゲーム機
10. ハンズフリー、ブルートゥース、充電器な
どの付属品
WEEE 回収パイロット事業対象外品目
11. キーボード
12. 電子レンジ
13. テレビ
14. コンピューターのモニター
15. 炊飯器
16. アイロン
17. 照明器具
18. コンピューター.
回収量
(個)
ESBEC 引取品目
ESBEC
引取量(個)
560
374
○
○
277
147
118
124
8
81
24
7
5
606
○
○
154
135
○(DVD)
○
56
26
○(toy)
○(マウス、充電
器)
24
188(マウス)
116(充電器)
○
48
○(懐中電灯)
○(デスクトップ
ノートブック)
11
3(デスクトップ)
1(ノートブック)
○
28
○
○
○
○
○
○
27
40
8
19
78
63
1,449
47
11
21
22
7
29
8
36
19. 扇風機
6
20. ミキサー
4
21. HUB、LAN の接続線
3
22. ヘアドライヤー
1
23. リモコン.
2
チョンブリ市の回収品目リストに記載されていない品目
ラジオ
計算機
時計
スピーカー
トナー
ビデオテープ
合計
2,104
なお、ESBEC 社では WEEE の引取り後、以下に示す段階まで解体している。
PCB(Mid)、PCB(Low)、Al、ケーブル、Cable、ABS 樹脂(PC)、ポリスチレン、ポリプロピレ
ン、プラスチック(ミックス)、スチール、ステンレス鋼、Cu、Cu 部品、バッテリ-、CRT
ガラス、トナー、紙、CD、OPC、黄銅、マグネシウム、メタル(ミックス)、アクリルゴム、
ウレタン、ガラス、HD ガラス、繊維、マグネット、LCD 部品、ランプ、ニッケル、ケーブ
ル部品
53
(4)今後の計画
チョンブリ市ではパイロット事業終了後も WEEE の回収を続けていく意向であり、市の予
算で取り組みを拡大する意思もある様子である。以下はチョンブリ市担当者との面談で確
認された今後の計画である。
•
周辺地域の危険ゴミ、電化製品をチョンブリが回収し、適切に処理する仕組み
を考えている。
•
リサイクルバンクよりも大規模なもので、各市が回収した廃棄物をチョンブリ
市で処理する試みであり、ICM(Integrated Coastal Management)のメンバー
にも参加を呼びかける。
(※ICM は沿岸管理を総合的に行う国際的な取り組みであり、タイではチョンブ
リ県沿岸地域の 99 の自治権を有する村から構成されている。海辺の環境保護を
中心に環境活動が行われている。)
•
処理方法については、予算をつけて適切な基準を満たす事業者に処理してもら
う。DIW や PCD と協力しながら進めていきたい。もしよいパートナーを見つけら
れない場合には、市がお金を出して処理することも考えている。
•
まずは市民に対して啓蒙活動を行い、初期段階では市がパートナーと処理を行
うが、将来的にはコミュニティの中で処理できるように考えていきたい。
•
ゴミ回収センターの規模は、20 程度の市から出る家電製品を回収したい。回収
費用などの詳細は決まっていないが、今年は啓蒙活動を行い、6 月に 20 の市を
集めて会議、MOU 締結を行う予定。タイでは法制度がしっかりしていないため、
意識を高める活動を重要視している。
•
今後の取り組みについては、DIW と PCD に話はしていないが、まずは市の役員レ
ベルで話をし、決定してから話を中央に持ちかけていく意向。
•
家電は新しいものが日本などから次々と入っており、これまでは中国のリサイ
クル業者がタイで不適切な処理を行ったことがあるが、今後はちゃんとした設
備を作っていきたい。
•
回収した E-waste については、今後リサイクルできる施設が整備されていくことを
期待している。
54
市庁舎の回収拠点
(10 月中旬頃)
市庁舎の回収拠点
(左の写真と同じ場所、12 月中旬頃)
コミュニティ回収拠点で回収された WEEE
(デジタルカメラ、携帯電話等)
コミュニティ回収拠点で回収された WEEE
(Fax、プリンター等)
ショッピングセンターの回収拠点
ショッピングセンターの回収拠点で回収された WEEE
(プリンター、PC 等)
図 3.3.5-2 WEEE 回収状況
55
3.4 チョンブリにおけるごみ処理の状況、リサイクルの推進

本事業ではチョンブリ市によるごみ処理の状況、リサイクルの推進状況を市担当者と
の面談、及び現地視察を通して確認している。また、パタヤ市については市担当者と
の面談を通して確認している。

両市においてリサイクルバンク、及び危険廃棄物の分別回収がコミュニティベースで
行われているが、回収段階がフォーカスされており、回収後の処理プロセスは把握さ
れていない。その為、危険廃棄物の適正処理についての啓発の必要性が確認された。

パタヤ市の担当者は、廃棄物が最終処分される過程が適切に監督されていないと認識
しており、問題視している様子である。
チョンブリ市、パタヤ市における取り組みの状況は以下のとおりである。
3.4.1 リサイクルバンク
(1)チョンブリ市(ワットソンコミュニティ)における取り組み
本事業では、チョンブリ市の中で最も活発に WEEE 回収、及びリサイクルバンクの取り組
みを行っているコミュニティとして、ワットソンコミュニティを視察している。リサイク
ルバンクの活動はコミュニティで構成される委員会 9 名を含むボランティアで運営されて
いる。なお、当コミュニティはリサイクルバンクの地方大会(中部・東部大会)において
優勝しており、天然資源環境相の大臣から表彰を受けている。
リサイクルバンクの活動については、家庭から持ち込まれたビン、プラスチック、缶、
段ボール等の廃棄物をボランティアが分類、計量し、廃棄物の品目・量によって決まる金
額を記帳する。廃棄物は夕方に買取業者に売却される。なお、受け入れる廃棄物の品目は
限定されておらず、持ち込まれた廃棄物は全て引き受ける方針となっている。
廃棄物の買取業者とは個別の品目で価格協定が結ばれており、買取価格の 2 割が持ち込
み者への還元分として通帳に記帳され、2 割はリサイクルバンクの活動経費として利用され
る。記帳された金額は現金化、或いは金額を貯めることができ、最も多く貯蓄した人には、
半年に一度賞品或いは賞金が授与される。
活動は毎月一度、月末の日曜日に行われ、学校でも同様の活動が行われている。また、
毎週木曜日には再生資源の回収、及びチョンブリ市からマラリア等の保健衛生関係の啓発
活動が行われている。
当リサイクルバンクの活動はコミュニティ間でも意思疎通が図られており、成功を収め
ているコミュニティが他のコミュニティが抱える問題解決に協力している。ワットソンコ
ミュニティは路地が狭く、コミュニティの団結が強いため、自分たちの住む場所をきれい
にしようという意識で活発に活動が行われている。
56
リサイクルバンクの他、チョンブリ市では EM 溶液を排水溝や運河に流して悪臭等の防
止、水質の改善を図る取組やポリ袋、発泡スチロールを減らすキャンペーン等の環境関連
の取り組みを行っている。
チョンブリ市によると、住民の環境への意識の改善により、ゴミの排出量はここ 2 年間
で 1 日 45 トンから 36~38 トン程度に減少している。チョンブリ市ではコミュニティで継
続して活動を行うには、行政がアドバイザー・リーダーとしてサポートすることで、コミ
ュニティでの運営が可能になると考えている。
リサイクルバンク(受入・計量)
リサイクルバンク(分別)
リサイクルバンク(記帳)
資源ごみを持ち込む小学生
リサイクルバンクで回収されたプラスチック製品等
リサイクルバンクで使用されている通帳
図 3.4.1-1 ワットソンコミュニティでの取り組み
57
(2)パタヤ市における取り組み
パタヤ市では学校を中心としたコミュニティでリサイクルバンク活動が行われており、
パタヤ市の職員によると、それなりに成果を上げている様子である。リサイクルバンクの
活動は市民へのキャッシュバックが動機づけとなっており、危険廃棄物収集よりも成果が
出ている。ただし、リサイクルについては市民がウォンパニ社等に直接持込み、売却して
いる場合もあるとのこと。
3.4.2 危険廃棄物回収
(1)チョンブリ市
危険ゴミ回収ボックスはコミュニティの事務所前、コミュニティリーダーの自宅前、シ
ョッピングセンター内、或いは学校などの代表的な場所に設置され、蛍光灯、スプレー缶、
乾電池が回収されている。回収ボックスは廃材を利用し、刑務所の服役者によって作成さ
れているものである。
チョンブリ市の危険廃棄物回収量は毎月 50kg 程度となっている。その内の蛍光灯はメー
カー責任の下、メーカーの費用負担で処理されていたが、洪水の影響によりサービスが停
止しており(2 月 1 日の時点)、処理についてアマタナコン工業団地等に問い合わせている。
その他のバッテリー、スプレー缶等は市の負担により、WMS 社で処理されている。ショッピ
ングセンター内の設置個所については、内部の店舗からの蛍光管の持ち込みが多く、月に
100 本程度になっている。
危険廃棄物回収ボックス設置場所
(コミュニティ事務所前)
写真上部が蛍光灯、右下がスプレー缶、左下が乾電
池用として区切られている
58
左側:スプレー缶、右側:乾電池
図 3.4.2-1 危険物回収ボックス設置状況
(2)パタヤ市
パタヤ市では 2008 年から危険廃棄物の分別収集を行っている。まず、23 コミュニティ
から 3 人のリーダーを招待して PCD の専門家と有害性、収集方法について勉強会を行って
いる。その後、コミュニティの運営事務所に回収ポイントを設置し、リーフレットで啓蒙
活動を行っている。毎月コミュニティ会議が開かれるため、その際に市民が持ち込んでい
る況である。また、パタヤ市が市の専用車で毎月巡回収集している。回収ポイントは中学
校以上の学校、デパート、ホテルにも設置されている。
しかしながら、キャッシュバックなどの動機付けが無いため、活動はあまり広まってお
らず、依然として生ごみ等と一緒に排出される場合がある。加えて、パタヤ特別市の中に
は工業団地がないため、回収は一般市民が対象となっていることもあり、回収量はあまり
多くない。実績としては 2008 年から 3 年間の総量で 1 トンである(平均すると 1 ヶ月あた
り 30kg 弱)となっている。
回収された危険廃棄物はパタヤ市内に集め、一定量になると処理業者の入札により引き
取られている。収集される危険廃棄物は蛍光灯、携帯バッテリー、電池であり、蛍光灯(フ
ィリップス、東芝製)はメーカーで処理、電池・バッテリーは DIW の認可を取得している
施設で処理をしている。ただし、実際の処理状況については把握していない模様。
危険廃棄物収集の際に、IT 機器が偶然回収される場合があり、IT 機器についても処理業
者を探して委託されているが、実際の処理状況は把握されていない。基本的には、IT 機器
や家電が廃棄物として排出される際には、有価系の部品が取り外された後の容器等の部分
が排出されている様子である。
面談を行ったパタヤ市の担当者は、タイでは危険廃棄物は法制度が確立されて厳密に実
施されることが求められていると認識しており、廃棄物が最終処分される過程についても
適切な監督が必要と課題を認識している。
59
3.4.3 寺院における取り組み
(1)トンソン寺院
トンソン寺院では、リサイクルバンクでの回収量が不十分で買取業者に売却されなかっ
た際には、回収された廃棄物が保管されている。保管は E-waste、危険廃棄物、資源ごみで
分類されており、コンポスト作成も行われている。
保管施設は最近設置された様子であり、E-waste については、現在は保管のみしている段
階だが、ある程度の量になったら処理できる業者に委託される予定である。危険廃棄物に
ついてはコミュニティ内の危険廃棄物回収ボックスと同様に処理される。
当寺院だけでなく、その他のコミュニティにも同様の保管施設を整備中であり、チョン
ブリ市としては、他の市からも E-waste の回収を行い、チョンブリ県の中心として動いて
いきたい意向がある。
コンポストは 6~10 か月程度かけて作成され、家庭菜園等で利用されている。EM 溶液の
容器には使用方法が記載されており、わかりやすくなっている。
トンソン寺院
危険ゴミ保管
E-waste 保管
資源ごみ保管
図 3.4.3-1 トンソン寺院での取り組み
60
第4章 地域間交流事業
4.1 現地セミナー・現地視察の概要
これまでの本事業の成果、及び現地ニーズを受け、タイでの循環型社会形成支援及び将
来的な WEEE リサイクルシステム構築を支援するとともに、秋田県(県内の企業含む)の取
組への理解を深め、現地行政との関係構築をはかり、秋田県関係企業の展開のための素地
形成を目的として、現地セミナー、及び現地視察を 2 日間に渡り実施した。
現地セミナー、現地視察を実施するにあたっては、WEEE 適正処理を中心的なテーマとし
た。現地ではすでに使用済家電等のリサイクルが行われているが、銅などの価値の高い物
質のみを回収して、その他の部材等は適切に管理されていないことが考えられる。今後、
タイでの適切な WEEE リサイクルの展開にあたっては、選別・解体、売却される資源等の適
切な管理の重要性が認識される必要がある。また、リサイクルネットワークの構築におい
ては、回収された資源のトレーサビリティの確保が重要であり、現地においてもその重要
性が認識される必要がある。以上の点から、WEEE 適正処理を中心とした現地ニーズに対応
するテーマで、現地セミナー・現地視察を実施している。
1 日目の現地セミナーでは以下に示すテーマの通り、タイにおける循環型社会形成、及
び WEEE リサイクルにかかる状況を確認するとともに、秋田県が有するリサイクル行政、
WEEE
適正処理に関する知見・ノウハウを紹介した。2 日目の現地視察では、行政とコミュニティ
で先進的な取り組みをしているチョンブリ市、及びタイ国内にて WEEE 適正処理を行う ESBEC
社を視察した。
両視察先については 1 日目のセミナーで取組み等の概要が発表されており、
その内容について理解を深めることを目的として視察を実施した。
表 4.1-1 現地セミナー・現地視察のテーマ
テーマ
タイ、秋田県のリサイ
クル行政
コミュニティにおける
住民の役割、行政によ
るコミュニティへの対
応、普及啓発
家電リサイクル技術
WEEE リサイクルネッ
トワーク(トレーサビ
リティ、コンプライア
ンス)
実施内容
【セミナー】
講演:行政機関(タイ政府、チョンブリ市、秋田県)による資源循環
型社会への取り組み
 日本(秋田県)における資源循環型社会推進の経験
 タイにおけるエコインダストリアルタウン構想
【現地視察】
チョンブリ市のコミュニティにおける WEEE 回収、3R の取り組み
【セミナー】
講演:タイにおける WEEE リサイクルの現状と将来的な方向性
 WEEE 回収プロジェクト及びタイにおける WEEE 管理の方向性
 チョンブリ市における WEEE 回収及び3Rの取り組み
講演:日本及びタイにおける WEEE 適正処理
 日本の WEEE リサイクル技術
 WEEE のリサイクルにおける国際協力
【現地視察】
WMS/ESBEC における WEEE 解体事業の視察ディスカッション
61
4.2 セミナーの開催
4.2.1 セミナーの概要
セミナーの概要を以下に示す。当日はチョンブリ県知事がセミナー開会のあいさつを行
っており、閉会の挨拶はチョンブリ市長が行っている。セミナーはタイ、日本の参加者あ
わせて 160 名程度が参加している。
・ 主催:DIW、チョンブリ市、秋田県
・ 日時:平成 24 年 1 月 31 日
9:00~17:00
・ 場所:タイ王国チョンブリ県バンセン The Tide Resort Hotel
・ 出席者:160 名程度
<タイ側出席者>
来賓
チョンブリ県知事
Komsan Ekachai 氏
チョンブリ市長
Decho Kongchayasukawat 氏
参加機関・組織
中央政府
DIW、PCD、IEAT、その他
地方自治体
チョンブリ県、チョンブリ市、パタヤ市、その他
民間事業者
メーカー等
教育機関
大学等
その他
コミュニティ等
<日本側出席者>
本委員会メンバー
野澤委員
秋田県
佐々木新エネルギー政策統括監、川上班長、
佐藤技師
民間
DOWA エコシステム(株)吉成氏、仲氏
(株)エコリサイクル
EES
2名
62
小林氏
4.2.2
セミナーの評価
現地セミナーを実施するに当たり、参加者に対してアンケート調査を行い、160 名程度の
出席者のうち 138 名から回答を得た。調査結果を以下に示す。結果として、参加者の所属
組織は行政機関、教育機関が多く、次いで民間企業となっている。セミナーの内容につい
ては概ね満足されたと考えられる。また、当セミナーと同様のセミナーが毎年開催される
ことを希望する旨のコメントもあった。
その他
7%
所属組織
中央政府
19%
地方自治体
(県)
6%
教育機関
33%
地方自治体
(市町村)
9%
民間企業
25%
セミナーは有益だったか
非常に
不満足
不満足
0%
4%
非常に
どちら
満足
ともい
17%
えない
25%
工業団地
1%
セミナーで得た知識は活用できるか
非常に不
満足
非常に満
1%
不満足
足
8%
13%
どちらと
もいえな
い
25%
満足
53%
満足
54%
図 4.2.2-1 セミナーの評価
63
4.2.3 セミナーの実施内容
セミナーの発表及び質疑応答の概要を以下に示す。
(1)講演:行政機関による資源循環型社会への取り組み
タイにおけるエコインダストリアルタウン構想
時間:10:15-11:30
発表者:DIW Industrial Waste Management Bureau
Director of Waste Technical and Planning
Section1
Bundit Tunsathien 氏
発表概要
タイではエコインダストリアルタウン構想に向けた取組が実施されており、産業側と市民と
の間で生じている環境関連の問題の解決策として期待している。タイの行政による循環型社
会へ向けた取り組みの事例として、エコインダストリアルタウンに向けた取り組みが紹介さ
れた。
•
エコインダストリアルタウン構想の概要:
工業省の先導によるプロジェクトで日本のエコタウンを例として考え出された構想で
ある。エコインダストリアルタウンは環境面について経済、産業、社会面を並行させ
て発展させていくことを理想とする。
•
ロジャナ工業団地におけるエコインダストリアルタウン開発について:
団地の内外での協力関係が必要であり、ロジャナ工業団地の廃棄物の量、データを基
にしてエコインダストリアルタウン開発の検討が必要。プロジェクトの最初の 2 年間
において、セミナー、研修、産業廃棄物の有効活用等、様々な取り組みが実施されて
きた。
発表資料
64
日本(秋田県)における資源循環型社会推進の経験
時間:11:45-12:15
発表者:秋田県産業労働部
新エネルギー政策統括監
佐々木誠氏
発表概要
秋田県は自治体としてリサイクル産業の振興を行うとともに、市民への情報公開、普及啓発
を通して循環型社会の形成を推進している。タイ側へのリサイクル行政の例示として秋田県
が実施してきた資源循環型社会推進のための取り組みを紹介した。
•
秋田県の概要(面積、人口、北部リサイクルコンビナート等)
•
本事業、及び訪日研修の概要説明
•
日本での循環型社会に向けた法律の成立の経緯と法体系
•
日本の廃棄物の処理区分と一般廃棄物の回収方法
•
秋田県における小型家電回収実証実験
•
検討段階にある小型家電リサイクル新制度の概要
発表資料
主な質疑応答の内容
質疑応答のポイント
•
PCD から秋田県への質問
質問:小型家電の回収方法について、ボックス回収とピックアップ回収のどちらがコ
ストが安いか。
回答:市町村としては、ボックス回収の方がコストは安いと考えられる。ジャンクシ
ョップに売却された場合、不適切な処理により、社会的なコストがかかることになる。
•
チョンブリ市環境事務所から秋田県への質問
質問:タイでは自治体が家電を回収しているが、その後の処理が曖昧である。日本で
の産業廃棄物の処理はどのように行っているのか。
回答:排出者責任の下、工場自らが処理、或いはライセンスを持つ処理業者が処理す
る。廃棄物処理施設には焼却等の施設ごとの基準が設定されている。
65
(2)講演:タイにおける WEEE リサイクルの現状と将来的な方向性
WEEE 回収プロジェクト及びタイにおける WEEE 管理の方向性
時間:13:00-13:30
発表者:PCD Environmental Officer
Patarapol Tularak 氏
発表概要
タイでは PCD を中心とした WEEE の制度化が停滞している一方で、制度化に向けた WEEE 回収
等の取り組みが行われている。タイの WEEE 管理に関する現状と将来的な方向性について、
PCD の WEEE 制度化の担当者が発表を行った。
•
タイにおける WEEE の現状
•
WEEE CAN DO プロジェクトについて
WEEE に関する法令制定の前に、法令の現実性を確認し、市民に適正処理を意識づける
ために実施。品目を限定し(大型家電は対象外)、家庭の WEEE を回収する。
•
WEEE 法制度化について
現在は消費者から排出された WEEE が処理の最終地点で正しく処理されているか不明で
あるため、今後は適正処理を実施できる業者に流通するようなシステムを作る。
政府で基金を設け、運搬費用や処理費用を捻出する。電化製品のメーカー、輸入業者
が手数料として費用を負担する。
現在は手数料に関する財務省管轄の素案が承認されないため、今後の法制度化への予
定は明確になっていない。
•
WEEE 適正処理について
携帯電話、CRT 等を例として、WEEE は有価ゴミである一方、適正処理にはコストがか
かる点を指摘。
発表資料
66
チョンブリ市における WEEE 回収プロジェクト
時間:13:40-14:30
発表者:チョンブリ市
Chief of Subdivision of Public Health and
Environmental Administration
Natchaporn Srinoparatanakul 氏
発表概要
チョンブリ市は PCD が主導する WEEE 回収プロジェクトに積極的に取り組んでおり、周辺自
治体、コミュニティと協力した活動を行っている。また、コミュニティでの 3R 活動も活発
に行われている。実際の市町村・市民レベルでの WEEE 回収と循環型社会に向けた取り組み
として、チョンブリ市の取り組みが紹介された。
•
チョンブリ市の概要、廃棄物の処理フロー
•
WEEE CAN DO プロジェクトへの取り組みについて
市内のコミュニティ、学校等と協力し、回収ボックスの設置、回収イベント等を実施
している。品目は限定せず、持ち込まれた WEEE は全て引き取っている。
12 月末までに 1810 個の WEEE を回収し、WMS 等の事業者に引取り、処理されている。
•
3R 関連の活動について
チョンブリ市のコミュニティベースで実施されている様々な 3R活動について紹介さ
れた(EM ボール、コンポスト、リサイクルバンク等)。
発表資料
日本の WEEE リサイクル技術
時間:14:40-15:25
発表者:DOWA エコシステム株式会社
吉成明夫氏
株式会社エコリサイクル
小林英里氏
発表概要
日本では家電リサイクル法の施行以来、制度の運用面、あるいは技術面でのノウハウを積み
重ねてきており、DOWA エコシステム(株)は国内、中国、及び東南アジアで廃棄物処理、
リサイクル事業を展開する企業である。吉成氏からは環境リサイクル事業について、小林氏
からは家電を中心とした WEEE の適正処理技術について紹介した。
67
吉成氏:「DOWA の環境リサイクル事業」
•
DOWA ホールディングス、DOWA エコシステムの事業概要
•
産業廃棄物処理事業の概要(焼却、埋立、土壌浄化等)
•
金属リサイクル事業の概要
•
E-waste からの金属回収を行っており、中国、東南アジアに展開している。東南アジア
では廃棄物処理が中心だが、タイ、インドネシア、シンガポールに拠点がある。ESBEC
では WEEE の事業を始め、土壌汚染処理の事業も開始した。
小林氏:「家電及び WEEE リサイクル活動」
•
日本の家電システム、及び法制度
各関係者(排出者、小売業、メーカー等)の役割
•
一般的な家電 4 品目の解体手法(TV を例として説明)
•
エコリサイクルにおける家電リサイクル事業
フロン、水銀、PCB 等の有害物質の適切な処理
家電解体後のリサイクルネットワーク
小型家電回収プロジェクト
吉成氏発表資料
小林氏発表資料
68
事例:WEEE のリサイクルにおける国際協力
時間:15:25-16:15
発表者:IBM Thailand Co., Ltd
Global Logistics Control Tower
Integrated Supply Chain
Thitima Chantorn 氏
WMS/ESBEC Strategic Planning Manager
奈良部善之氏
発表概要
IBM 社は自社の使用済み製品の適正処理を確保するため、契約業者に対し環境要求事項を定
めている。WMS/ESBEC 社はタイ国内で適正に WEEE 処理を実施できる事業者として、IBM
Thailand 社の使用済み製品を分別・解体している。WEEE 適正処理に必要とされる事項を
Thitima 氏から、WEEE 適正処理に対する事業者の取り組みを奈良部氏から紹介した。
Thitima 氏:「IBM の使用済み製品及び有害物質管理」
•
IBM の環境マネジメントシステム
•
IBM の環境要求事項
•
IBM の廃棄物処理に関する優先順位
•
使用済み製品管理
使用済み製品のリサイクルを行う事業者については、事前評価、現場視察、評価・承
認の 3 段階の評価プロセスが必要となる。
•
契約業者の評価
土地履歴、施設の汚染防止対策、二次サプライヤー管理、財務健全性、保険等が重要
な評価項目である。
奈良部氏:「ESBEC における WEEE リサイクル」
•
WMS/ESBEC の事業概要
•
WEEE リサイクル事業について
事業を立ち上げる上での基本方針として①有害廃棄物の処理を適切に行う、②一部の
部品の転売等を行わないとしている。(パーツが出回るとブランドイメージに影響が
ある)
•
WEEE 処理のフロー
①パッキング(要求に応じて顧客の目の前で機能破壊⇒不適切なリサイクルを防ぐ)、
②受け入れの際に計量し記録、写真撮影、③解体後にも解体結果のレポートを作成す
る、④分解された部品は事業者に再度委託し、リサイクルを行う。各金属等の種類に
応じて委託先が決まっており、IBM 社の方でも確認されている。電池、CRT、PCB には
有害な重金属が含まれており、注意が必要である。
•
今後の展開の方向性
WEEE の規制法案法整備の手伝いを引き続き行っていく。WEEE CAN DO プロジェクトの
サポートも引き続き行う。タイでのベストプラクティスを発表することで啓蒙活動を
行っていく。
日本からの技術移転として、リサイクル技術をタイに導入し、タイ国内でのリサイク
ル事業の拡張を行う。
リサイクルは一社だけでは完結せず、解体業者と最終処分の協力が必要であるため、
適正処理業者のネットワークを拡大する。
69
Thitima 氏発表資料
奈良部氏発表資料
主な質疑応答の内容
質疑応答のポイント
•
•
•
タイ側から Patarapol 氏への質問
質問:WEEE CAN DO プロジェクトによる WEEE の回収量、地域別の結果、品目の割合、市民
からの意見を知りたい。
回答:全体の回収量として、1 回目の回収では 2 万個回収できた。良い成果を残した市町村
では積極的な広報活動が行われていた。
タイ側から Patarapol 氏への質問
質問:CRT の処理で問題を抱えており、危険ゴミを処理できる業者はどれくらいいるのか知
りたい。
回答:工場から排出される廃棄物は認可を持つ事業者で処理される。具体的な事業者につ
いては工業省に確認してほしい。危険廃棄物を処理できる認可を持っていることが重要で
ある。
Patarapol 氏から日本側への質問
質問:日本では CRT のリサイクルはどのように行っているのか。また、LCD、LED のリサイ
クル方法についても知りたい。
回答:ブラウン管の鉛が入っている部分はパネルガラスから分離した後、精錬所で鉛を回
収している。パネルガラス(LCD、LED)についてはリサイクル技術が確立されていないた
め、焼却処理されている。
70
4.3 現地視察の実施
4.3.1 現地視察の概要
現地セミナーで説明した取り組み(WEEE パイロット事業、ESBEC での WEEE リサイクル)
の理解を深めるために、実際の現場の視察を行った。タイ側の参加者は行政(中央、地方)
を対象としている。
・ 日時:平成 24 年 2 月 1 日 9:00~14:00
・ 場所:タイ王国チョンブリ県チョンブリ市、及びスラサック市(WMS/ESBEC)
・ 出席者:タイ側 20 名程度
<タイ側出席者>
参加機関・組織
中央政府
DIW、PCD
地方自治体
チョンブリ市、パタヤ市、他
<日本側出席者>
本委員会メンバー
野澤委員、白鳥委員
秋田県
佐々木新エネルギー政策統括監、川上班長、
佐藤技師
民間
DOWA エコシステム(株)仲氏
(株)エコリサイクル 小林氏
EES
2名
・ 視察概要
チョンブリ市
•
WMS/ESBEC
•
•
•
•
•
ワットソンコミュニティでの WEEE CAN DO 回収ポ
イント及びリサイクルバンクの活動
危険物回収ボックス設置状況
トンソン寺院での取り組み
WMS/ESBEC 事業紹介
施設見学(WEEE 解体施設、埋立処分場)
質疑応答
4.3.2 チョンブリ市視察内容
(1)ワットソンコミュニティ
ワットソンコミュニティは活発に WEEE 回収、及びリサイクルバンクの取り組みを行って
おり、視察では実際に市民や学生が廃棄物を持ち込み、コミュニティボランティアが受け
入れ、計量、分別、記帳を行った。また、資源ごみを再利用してボランティアによって作
成された帽子や椅子等が展示された。WEEE 回収ボックスはリサイクルバンク活動が行われ
る場所に設置されており、
参加者は回収ボックスの設置状況や回収された WEEE を視察した。
71
参加者はチョンブリ市職員及びコミュニティボランティアと交流し、活動や展示物に関
する確認、及び当コミュニティで活発な活動が行われる理由等を確認した。
当コミュニティの取り組みの詳細については 3 章 3.4.1(1)を参照。
リサイクルバンク
回収された WEEE
図 4.3.2-1 ワットソンコミュニティ視察
(2)危険廃棄物回収ボックス
前述のワットソンコミュニティ内に設置されている、危険廃棄物回収ボックスを視察し
た。チョンブリ市から危険廃棄物回収ボックスの作成方法、回収の状況等が説明された。
参加者は実際に危険廃棄物回収ボックスを近くから見学し、設置状況や危険廃棄物の回収
状況を確認した。
危険廃棄物回収の取り組みの詳細については 3 章 3.4.2(1)を参照。
危険ゴミ回収ボックス
危険ゴミ回収ボックス(スプレー缶、乾電池)
図 4.3.2-2 危険廃棄物回収ボックス視察
(3)トンソン寺院
ワットソンコミュニティの近隣に位置するトンソンコミュニティ内に設置されている、
廃棄物保管庫を視察した。保管されている廃棄物は E-waste、危険廃棄物、資源ごみで分類
されており、それぞれの保管庫の中に入り、視察を行った。参加者からは保管後の処理方
法、売却先等に関する質問が挙げられた。
72
廃棄物保管庫の隣ではコンポスト作成も行われており、コンポストの取り組みについて
も視察した。
トンソン寺院での取り組みの詳細は 3 章 3.4.3(1)参照。
トンソン寺院
危険ゴミ保管
E-waste 保管
資源ごみ保管
図 4.3.2-3 トンソン寺院視察
4.3.3
WMS/ESBEC 視察
(1)事業紹介
ESBEC 社より参加者に対して、以下に示すような事業概要が説明された。

WMS/ESBEC 社は DOWA によるタイでの廃棄物事業への参入により、3 年前に DOWA グルー
プとなっている。

ESBEC のコアビジネスは非有害廃棄物の埋め立て処分、廃液の処理である。

DOWA が参入した 3 年前に WEEE リサイクル事業を立ち上げており、今年度は土壌汚染調
査事業を立ち上げている。
続いて、タイ側参加者に対して、映像資料により事業概要(輸送、処理、焼却、埋立、
公害対策等の一連の流れ)が紹介された。
73
(2)施設見学(WEEE 解体施設、埋立処分場)
WEEE 解体施設
<視察内容>
① IBMから受け取ったキーボード、モニター、CPU等のPC周辺機器を品目別に分類
② ハードディスクを手分解
③ ハードディスクの機能破壊
<主な質問事項>

作業員の解体作業の速度について。

マグネットの処理方法について。

HD部分の取扱いについて(機能破壊など)。

WEEE CAN DOで集められたWEEEを解体するときの作業時間の記録について。
最終処分場(バスツアー)
<視察内容>
① トラックスケール
② コンテナ保管場:廃棄物受け取り前に洗浄を行う。
③ 排水処理施設:生物分解を行っている。
④ 埋め立て処分場:取り扱うのは非有害廃棄物であるが、設備としては有害廃棄物用の
技術を利用している。
⑤ 貯水池:雨水、処理後の排水を貯めており、定期的に水質検査を行っている。
⑥ 場内スプリンクラー:EM菌を散布し、悪臭対策を行っている。
⑦ 埋め立て処分場から発生するガスを燃焼。
<主な質問事項>

現在の埋め立て処分場の寿命

排出されるガスを燃焼させてエネルギー回収を行っているか

24時間体制で操業を行っているのか

埋め立てた後はどうするのか
(3)質疑応答
WEEE 解体施設について
PCD
質問:HD を破壊するのは解体前か後か。
回答:HD は顧客の要望に応じて破壊する。サーバー等はトラックに積み込む
前に破壊している。
PCD
質問:WEEE CAN DO プロジェクト後に何か実施計画はあるのか。
回答:行政からのリクエストに応じて対応したいと思う。収集イベントがあ
れば協力したい。
74
チョンブリ
市
質問:WEEE からは金属を回収しているが、利益と処理費はどちらが大きいの
か。
回答:品目に依存する。貴金属を含むものは処理費がかかっても利益が出る
が、価値の高い金属が含まれていない場合には利益は出ない場合もあ
る。PC や TV のモニターは処理費を徴収しなければ処理は難しい。
チョンブリ
市
質問:町中に古いテレビやラジオがあるが、新しいものと古いものではどち
PCD
質問:WEEE を解体した後はどうしているのか。
らが危険なのか。
回答:古い方が危険である。バックライトに水銀が使用されていたり、鉛は
んだが使用されている。
回答:鉄、ステンレス、CRT 等に分別して、それぞれ取引のあるリサイクル
業者に引き取られる。
PCD
質問:将来的には事業所内でリサイクルを行う予定はあるのか。
回答:貴金属等の一部は内部でリサイクルを行いたいが、鉄、アルミニウム、
樹脂などは既存のリサイクル事業者があるので、引き続き利用した
い。
最終処分場について
チ ョ ン ブ リ コメント:これまで見た中で最も衛生的な処分場である。バスに乗っていた
市
ので臭いはわからなかったが。
回答:これからも努力していきたい。事業所内に入られた時の臭いで判断し
ていただけたらいいと思う。
不明
質問:埋め立てが終わったのち、通常の土地に戻るまでどの程度の時間がか
かるのか。
回答:埋め立てが終わってから 10 年間ガス、水質のモニタリングを行う。
その後土地所有者である工業団地に土地を返却する。この内容につい
ては工業団地とあらかじめ Agreement を作っている。
不明
質問:モニタリングの頻度は
回答:埋め立て中は毎日行い、埋め立て終了後は月に 1 回程度行う。これに
ついても土地所有者と打ち合わせを行っている。なお、モニタリング
の経費は顧客からいただく処理費に含まれている。
チョンブリ
市
コメント:(環境対策など)素晴らしい処分場だと思う。このような処分場
がないと環境はもっと悪化してしまう。自信を持って操業してもらい
たい。TV や新聞などで WMS の奨学金プログラムなど、社会貢献が報道
されている。
回答:昨年 EIA を行い、悪臭対策などを行ってきた。これからも続けていく。
社会貢献活動については、埋め立て量に応じて、コミュニティファン
ドとして地域社会に寄付を行うようにしている。
75
その他
不明
質問:ゴミの分別が正しく行われていない場合にはどうするのか。
回答:契約内容と受け入れた廃棄物が異なる場合には、顧客に引き取りを依
頼している。受け入れた廃棄物は毎日チェックしており、環境セクションが
担当している。
PCD
質問:分別を行うのは場内だけか。
回答:サイトサービスとして、顧客事業所内でリサイクル可能なものと不可
能なものを分別するサービスを行っている。リサイクルできないものは引き
取り、処分している。
PCD
質問:現在水銀を含む廃水(掘削水)は海外で処理されているが、タイでは
処理できないのか。
回答:WMS の STS 事業所で水銀処理施設を建設し、ライセンスを取得してい
る。今月から操業を開始する予定で、処理できるようになる。
76
4.4 訪日研修
4.4.1 研修概要
(1) 目的
訪日研修(スタディツアー)は、タイ・チョンブリ県における3R分野の行政、あるい
は技術等に携わる人材(行政、民間)を秋田県に招聘して、秋田県および関連する施設が
有する技術・経験を紹介することで、タイ・チョンブリ県での技術・産業の発展を支援す
るとともに、秋田県の企業が現地関係者と協力できる素地を形成することを目的としてい
る。また、本研修の参加者は前述の現地セミナー・現地視察にも参加していることから、
本研修では現地セミナー・現地視察での啓発効果をより高めることが図られた。具体的に
は、以下に示すテーマで研修を実施している。
目的
タイ(チョンブリ県)
でのリサイクル技術、産業の発展を支援
民間企業の現地国におけるWEEEシステム
参画の素地形成
現地国のニーズ・問題に対応
WEEE適正処理の必要性を普及・啓発
有害物質管理
WEEEの適切な回収、処理、リサイクルに
必要とされる制度・技術レベルの共有
市民への普及啓発
コミュニティレベルでの取り組み
研修テーマ
秋田県のエコタウン・リサイクル行政の
経験・ノウハウ
日本の家電リサイクルシステムと秋田県の
知見・ノウハウ
秋田県における小型家電回収試験
日本の廃棄物処理の歴史・経緯
WEEE適正処理・金属回収技術
図 4.4.1-1 スタディツアーの目的とテーマ
タイ(チョンブリ県)でのリサイクル技術、産業の発展の支援については、これまでの
事業経緯から要望のあったニーズ・課題を研修内容に取り入れている。また、現地セミナ
ーでは秋田県のリサイクル行政が紹介されていることから、実際に秋田県を視察し、担当
者と意見交換を行うことは理解の醸成に有効と考えられる。
民間企業の現地国における WEEE システム参画の素地形成については、WEEE 適正処理の必
77
要性を普及・啓発することが重要である。また、現地ニーズとして、日本の家電リサイク
ルにおける関係者の役割や実際の家電リサイクルの流れに関する研修が挙げられている。
以上のことから、日本での家電リサイクル全体(回収・選別・解体・リサイクル・焼却・
最終処分)を視察し、理解を深めるとともに、トレーサビリティの担保、及び有害物質管
理等の WEEE 適正処理に関わる内容を取り入れる。
また、現地では小型家電を中心とした WEEE
回収プロジェクトが行われている一方で、回収後の WEEE の処理について課題を抱えている
ことから、日本での同様の取り組みとして、小型家電回収プロジェクトと法制度化の流れ
についても研修で取り上げている。
(2) 研修内容
上述した各研修テーマに対応し、次の通りの研修を実施した。
表 4.4.1-1 スタディツアーの研修内容
月日
2月5日
2月6日
曜日
日
月
場所
東京
秋田市
研修内容
来日
東京⇒秋田
オリエンテーション
〔視察〕国際教養大学
〔講義〕日本のごみ処理の歴史、経緯
〔講義〕家電リサイクル法の概要
2月7日
火
秋田市
2月8日
水
大館市
小坂町
2月9日
木
2 月 10 日
金
秋田市
2 月 11 日
土
-
〔講義〕秋田県の3R行政
〔表敬〕秋田県副知事
〔視察〕家電販売店
〔視察〕指定引取場所
〔講義〕秋田県の環境・リサイクルの取組について
〔講義〕小型家電回収プロジェクト
〔講義〕大館市のごみ処理
〔表敬〕大館市長
〔視察〕大館クリーンセンター
〔視察〕小型家電の回収状況
〔視察〕エコリサイクル
〔視察〕DOWA 小坂地区事業
・小坂製錬
・グリーンフィル小坂
タイ側プレゼンテーション、クロージング、昼食会
秋田 ⇒ 東京
帰国
78
(3)招聘者
昨年度の研修では、将来的な地域間交流事業に資する成果を得ることを目的として、地
域間3R協力のカウンターパートとなり得る現地政府間関係者を中心に招聘した。
本年度は上記の通り、チョンブリ県でのリサイクル産業育成支援と、現地における日本
側民間企業の事業展開の支援を目的としている。このため研修の招聘者としては、チョン
ブリ県等の自治体関係者、エコインダストリアルタウン構想・WEEE の制度化の関係者(タ
イ中央政府:DIW、PCD 等)を対象としている。実際の招聘者は以下に示す通りである。
図 4.4.1-2 スタディツアー招聘者リスト
組織
中
央
行
政
中
央
省
庁
地
方
行
政
地
方
自
治
体
チ
ョ
ン
ブ
リ
県
ア
ユ
タ
ヤ
県
氏名
肩書き
MISS NAVAPORN SA-NGUANMOO
ナバポン女史
*産業廃棄物(WEEE 含む)許認可担
当
Engineer (Professional Level), Industrial Waste
Management Bureau, Department of Industrial Works,
Ministry of Industry
工場局 産業廃棄物管理課
MR. PISIT RATTANATHANALERK
ピシット氏
*バーゼル条約、リサイクル・埋
立施設認可担当
MISS. BENCHAWAN
CHOKCHAITRAKULPHO
ベンチャワン女史
*WEEE 制度化担当部署
MR. ANNOP KLINTHONG
アノップ氏
*県内の工場・産業廃棄物管理
MISS. MUTITA TRIWITTAYAPOOM
ムティタ女史
*技術振興、エコインダストリアル
タウン担当
MRS.SUWADEE SORNSITHONG
スワディー女史
*県内の廃棄物処理、排水処理担当
MR. DECHO KHONGCHAYASUKWAT
デチョ コンチャヤス
クワット氏
MRS.NATCHAPORN
SRINOPARATANAKUL
ナチャポン女史
*WEEE CAN Do 推進担当
Engineer (Professional Level), Industrial Waste
Management Bureau, Department of Industrial Works,
Ministry of Industry
工場局 産業廃棄物管理課
Environmental
Officer
(Professional
Level),
Pollution Control Department, Ministry of Natural
Resource and Environment
天然資源・環境省 公害管理局
Chonburi Provincial Industrial Office
チョンブリ県工業局
MR.WITAYA SIRINWORACHAI
ウィタヤ氏
Pattaya City
パタヤ特別市
MR. CHALIAO SUKPRASOET
チャリオー氏
*エコインダストリアルタウン構
想に取り組むロジャナ工業団地の
属する行政区
Chief
of
Thanu
Subdistrict
Organization, Thanu Subdistrict
Organization
タヌ-行政区助役
Director of Technology Promotion Division,
Industrial Estate Authority of Thailand
工業団地公社 技術振興部門長
Provincial Administration Organization
チョンブリ県自治体
Mayor of Chonburi Municipality
チョンブリ市 市長
Chief of Subdivision of Public Health and Environment
Administration, Chonburi Municipality
チョンブリ市 公衆衛生・環境管理部門長
79
Administration
Administration
4.4.2 スタディツアーの成果
上述した研修目的、テーマに対応して研修を実施した。研修によって得られたコメント、
日本側に対する要望は次のとおりである。
目的
タイ(チョンブリ県)でのリサイクル事業、産業の発展を支援
↓
研修テーマ
秋田県のエコタウン・リサイクル行政の経験・ノウハウ
日本の廃棄物処理の歴史・経緯
↓
研修内容
〔講義〕日本のごみ処理の歴史、自治体の一般廃棄物処理
秋田県のエコタウン・3R行政の経験・ノウハウ
〔視察〕一般廃棄物処理施設(焼却施設)
↓
研修成果
講義・啓発内容

民間企業の事業活動を含め、リサイクル活動は地域住民の理解が重要であり、日常から住民への環境
教育と情報提供を行うことが住民から理解を得るのに重要である。

市民から小型家電を効果的に回収するために、専門家と市民が議論する会議を開催し、市民への教育、
回収方法の検討を行った。
感想・コメント

研修で得た知識を地方自治体の方で、市民への知識普及、協力、参加促進に生かし、WEEE の分別を
推進していきたい。

工業団地内の産業廃棄物について、3Rの理念で対応していきたい。具体的には、工業団地の入居者
でミーティングを行い、ある企業から排出される廃棄物が他の企業で利用できるような取り組みをし
ていきたい。
今後の展開への期待・要望

タイでは電炉ダストを日本に輸出する計画があった(バーゼル条約による手続を通せなかった)。秋
田製錬の亜鉛リサイクル事業に関心がある。タイで同様のプラントを建設したい。

タイでは石炭灰が大量に排出されており、エコプラッシュ、秋田ウッド等の事業に関心がある。

北海道にある水銀を処理する企業について教えてもらいたい。

今後も3Rについて協力関係を継続していきたい。
80
目的
民間企業の現地国における、WEEE システム参画の素地形成
↓
研修テーマ
日本の家電リサイクルシステムと秋田県の知見、ノウハウ
秋田県における小型家電回収試験、WEEE 適正処理、金属回収技術
↓
研修内容
〔講義〕家電リサイクル法の概要、小型家電回収プロジェクト
〔視察〕廃家電リサイクルの流れ(家電量販店、指定引取所、家電解体施設、金属回収施設)
小型家電の回収状況
↓
研修成果
講義・啓発内容

家電リサイクルのトレーサビリティを確保するために家電リサイクル券を活用。

家電・WEEE 解体では、各パーツの適切なリサイクル・処理を行うために、最初は手分解を行い、必要
に応じて機械破砕を行う。解体段階での有害物質の処理が重要。

日本の小型家電回収試験では、回収方法、有害性、レアメタル含有実態が調査研究されている。秋田
県では事業化した際のインフラがすでに整っている。
感想・コメント

タイでは WEEE リサイクルに直接的に働きかける法律が存在せず、回収・分別・リサイクル・処理に
ついて適切な行動が行われるシステムが存在しないのが改題である。

家電回収責任は日本ではメーカーであるのに対し、タイでは自治体に責任がある。

タイの様々な部署から研修生が参加しており、今回得た知識は、PCD は情報提供、自治体は市民や若
者への伝達で活用していきたい。また、中央政府は国全体の方針に今回の内容を生かすことができる。
今後の展開への期待・要望

日本では小型家電リサイクルにおいて 20~30%の回収率で事業が成立するという数値を算出している
が、タイでは数値の予測が正確でなく、投資の判断材料が欠けている。WEEE 発生量の正確な数値を予
測する調査・分析を行いたい。

タイで適切な処理・公害対策を行うことができるリサイクル企業を作ってもらいたい。バーゼル条約
により輸出には制限があるため、国内のリサイクル企業の技術を更新していく必要がある。

バンプ―工業団地の焼却施設において、エコリサイクルのように CFC の焼却炉での熱処理が可能か検

タイにも鉱山跡地があるため、秋田のような取り組みの可能性について検討したい。鉱山開発の部署
討したい。
が電解製錬を計画しており、日本の投資家にも協力をお願いしたい。
81
4.4.3 スタディツアーの実施内容
オリエンテーション、国際教養大学キャンパスツアー
日時:平成 24 年 2 月 6 日(月)13:30~15:00
場所:国際教養大学 D 棟会議室
説明者:秋田県産業労働部佐々木統括監
国際教養大学 中島学長
国際教養大学 中村啓人氏
内容:関係者からご挨拶
事務局から事業概要、研修の行程を説明
キャンパスツアー
オリエンテーション、キャンパスツアー概要
•
秋田県(産業労働部佐々木統括監)からの歓迎の挨拶につづき、タイの参加者からそ
れぞれの自己紹介と担当業務の概要が述べられた。
•
国際教養大学は本事業の研究会メンバーである市川委員(教授)が所属しており、海
外への留学制度、タイのチュラロンコン大学を含む海外の大学との提携等を通して、
秋田県における国際交流の拠点となっている。
•
国際教養大学中島学長より歓迎の挨拶を頂いた。国際教養大学では、新たに「東アジ
ア研究所」を設立し、東南アジアを含む地域を対象とした新たな取り組みを開始して
おり、同研究所の柴田教授よりご挨拶を頂いた。キャンパスツアーでは①海外の提携
校、②大講堂、③語学学習センター、④図書館を見学した。
関係者からの挨拶概要
【チョンブリ市長 Mr. Decho】
•
今回秋田県に来ることができ光栄である。
•
視察内容をタイでも生かしていきたい。研修生を代表して感謝申し上げる。
【秋田県佐々木統括監】
•
本研修では県北部地域に行くが、歴史的に鉱業関連産業が発達しており、鉱山関連技
術・施設を活用した家電リサイクル技術が集積している。
•
教育においても環境・リサイクル分野に積極的に取り組んでいる。
•
こうした取り組みは全国から注目されており、できるだけたくさんのことを視察して
いただきたい。
•
これを契機にタイ、チョンブリ県、チョンブリ市と日本の秋田県が協力し、資源循環
型社会の構築が進むようお祈り申し上げる。
〔講義〕日本の廃棄物処理の歴史
日時:平成 24 年 2 月 6 日(月)15:00~16:00
場所:国際教養大学 D 棟会議室
説明者:上田愛氏(DOWA エコシステム株式会
社)
内容:講義「日本の廃棄物処理の歴史」
JICA 映像資料上映
講義概要
秋田の廃棄物・リサイクル関連施設を視察するに当たり、日本の現在の廃棄物処理・リサイ
クルの現状の理解を深めることを目的として、多くの経験を踏まえて整備されてきた日本の
廃棄物処理の歴史に関する講義を行った。
82
講義のポイントとして、日本の廃棄物処理において、大火災の防止、廃棄物の衛生的な処理、
埋立地不足が重要であることが説明された。
循環型社会形成
エネルギ ー回収
衛生環境改善
(ごみ戦争等)
ダイオキシン管理
スラグ再 利用
埋立処分場逼迫
焼却処分 促進
衛生環境改善
(コレラ流行)
直接埋立 処分
空き地に 廃棄
大火災防止
主な質問、コメント
タイでも一般ごみの処理については課題を抱えており、参加者からは、埋立処分、焼却施設
についての質問が挙げられた。
•
海面埋め立てによる環境への影響や住民の反応等
•
埋立処分場の構造、及び埋め立て後の有効利用について
•
日本の廃棄物処理のフローについて
•
焼却施設からのエネルギー回収について
〔講義〕家電リサイクルシステム
日時:2012 年 2 月 6 日(月)16:00~16:45
場所:国際教養大学 D 棟会議室
説明者:阪口幸三(イー・アンド・イー
ソリューションズ株式会社)
内容:講義「家電リサイクルシステム」
講義概要
本研修は家電リサイクルの流れを追うプログラムとしており、実際の家電リサイクルに関わ
る施設を視察する前の基礎情報として、家電リサイクル法の背景、仕組み、関係者の役割に
ついて説明を行った。
•
家電リサイクル法制定の背景
①自治体の処理が困難
②排出量が多い
③有用な資源が含まれている
•
関係者の役割(消費者、小売店、メーカー)
•
メーカー側の関係者(管理会社、指定引き取り所、リサイクル施設、家電リサイクル
センター)
•
料金の支払い方法について
ウェブサイトで排出者が家電のリサイクル状況について確認することができる
•
家電の流れとリサイクル券の流れを確認
主な質問、コメント
参加者からは家電リサイクルシステムの仕組み、処理費等、様々な質問が挙げられた。
•
リサイクルセンターの運営について
•
法制度の必要性、罰則について(⇒法制度は関係者の役割を定める上で重要と回答)
•
リサイクル法が施行されるまでにかかった期間について
•
家電の処理費用について
•
市民の家電の使用期間について
83
〔講義〕秋田県の3R行政
日時:2012 年 2 月 7 日(火)09:00~10:00
場所:ルポールみずほ 2F
説明者:近藤一之氏(秋田県環境整備課)
内容:講義「秋田県の 3R 行政」
講義概要
自治体の立場での 3R への取り組みについて理解を深めてもらうために、廃棄物処理・リサ
イクルにかかる法制度、秋田県としての施策の取り組みについての講義を実施した。
•
日本における資源循環に関する概論
 循環型社会の形成に向けた法制度について
 法制度の構成:環境基本法のもとに循環型社会形成推進基本法→個別リサイクル
法(容器包装、家電、食品、建設資材、自動車)
 循環型社会推進基本計画
•
秋田県内の取り組み
 国の計画に準じた計画を策定。
 秋田県が目指す循環型社会の姿
①循環を基本としたライフスタイル、②環境を基本とした事業の推進、③役割分
担、④循環型社会の基盤
 各主体の役割分担(市民、地域団体、事業者、自治体)
 各主体の役割に基づいた実施内容、具体的な取り組み内容
 数値目標(一般廃棄物、産業廃棄物、各推進項目)
主な質問、コメント
参加者からは個別リサイクル法や秋田県での 3R の特徴に関する質問が挙げられた。
•
個別法(グリーン購入法、建設リサイクル法等)について
•
秋田県と他の県を比較した場合の積極度、先進度(⇒3R の取り組みは各県で異なり、
秋田県はエコタウン、小電などの鉱山技術を利用したリサイクルが特徴と回答)
〔視察〕家電量販店
日時:2012 年 2 月 7 日(火)13:00~14:00
場所:ケーズデンキ秋田中央本店
説明者: 皆川氏(ケーズデンキ秋田中央本店)
内容:廃家電引取の手順等の説明
視察概要
家電リサイクルシステムの一連の流れのうち、排出から指定引取所への輸送までの部分、及
び家電リサイクル券について視察・説明を行った。
•
家電リサイクル券について
•
廃家電、料金、家電リサイクル券の流れについて
84
主な質問、コメント
家電リサイクル券と輸送・リサイクル料金の流れが複雑で理解するのが困難だった模様で、
流れの確認に関する質問が多数挙げられた。その他、以下の質問も挙げられている。
•
リサイクル券の発行元
•
消費者のリサイクル料金の支払い方
•
行政からの検査の有無
また、視察前に店内を見学した際には、店内の蛍光灯(大型)の処理方法、店舗に設置し
ているインクカートリッジの回収ボックスなどについて、質問が出されていた。
<視察要点>
家電リサイクル券について
廃家電、料金、家電リサイクル券の流れについては排出者から小売業者に引き渡され、
指定引取所に輸送される流れを説明した。
85
〔視察〕家電指定引取場所
日時:2012 年 2 月 7 日(火)14:30~15:30
場所:日本通運秋田中央ロジスティクスセンター
説明者:進藤渉氏
内容:施設概要説明
指定引取所内倉庫の視察
視察概要
家電リサイクルシステムの一連の流れのうち、指定引取所での受け取りからリサイクル施設
への輸送までの部分について視察・説明を行った。
•
Aグループ、及びBグループの分類について
•
廃家電、料金、家電リサイクル券の流れについて
•
郵便局を小売業者の代わりに窓口とすることもできる
•
指定引取所がメーカーの窓口となるため、指定引取所に家電が到着した段階でメーカ
ーのリサイクルプロセスに入ったということになる。
主な質問、コメント
家電リサイクル券と輸送・リサイクル料金の流れの確認に関する質問が多数挙げられた。
また、具体的なリサイクル技術に関する質問も挙げられた。
•
上記の廃家電、料金、家電リサイクル券の流れに関わる確認等
•
機械破砕の適用について(⇒分別するために最初は手分解すると回答)
<視察要点>
廃家電、料金、家電リサイクル券の流れについては小売業者、或いは一般市民から持ち
込まれ、リサイクル施設に輸送されるまでの流れを説明した。
86
〔講義〕秋田県の環境、リサイクルの取り組みについて
日時:2012 年 2 月 8 日(水)8:45~9:30
場所:ルポールみずほ 3F
説明者:石田副主幹(秋田県資源エネルギー産業
課)
内容: 講義「秋田県の環境、リサイクルの取り組
み」
視察概要
国の法制度の枠組みの中で、秋田県が市民等と協力して循環型社会を進める手法について講
義を行った。
•
秋田県の概要
•
秋田県北部エコタウン
•
秋田県のリサイクルに関する環境教育
主な質問、コメント
石炭灰等を原料として利用するエコプラッシュ・秋田ウッドの事業、及び電炉ダストから
亜鉛をリサイクルする秋田製錬の事業に関心が示された。
•
子供への教育について
•
石炭灰、廃プラスチックを原料とするエコプラッシュ、秋田ウッドの事業について
•
電炉ダストから亜鉛リサイクルを行う秋田製錬の亜鉛リサイクル事業について
<講義要点>
•
秋田県北部エコタウン
 エコタウンプロジェクトの国のスキーム(承認の流れ)
 秋田県北部エコタウン→世界自然遺産との共存が重要
 エコタウンの特徴
・地域基幹産業の活用(鉱業技術を利用した金属リサイクル、林業・農業からの廃棄物
の活用)
・ハード事業(家電リサイクル・金属製錬事業、)
・ソフト事業 1998 年から 2007 年まで毎年シンポジウムや講義を開催し、住民に対し
て積極的に情報提供を行なった。小坂町にある金属工業技術センター内に秋田エコタ
ウンセンターを開設している。
・秋田県北部の環境リサイクル関連企業
・小坂地区:銅・鉛製錬所+秋田市:亜鉛製錬所→リサイクルコンビナートを形成し、
23 種類の金属を回収している。
•
秋田県のリサイクルに関する環境教育
 リサイクル事業は住民の理解が必要であるため、エコタウンセンターで教育・
啓発活動
・ボランティアによるエコタウン案内人の組織を設立(関連企業と協力して養成講座)
・展示物と見学コースをアレンジ(リサイクル原料ヤードから最終処分場まで)
87
〔講義〕小型家電回収プロジェクト
日時:2012 年 2 月 8 日(水)9:45~11:00
場所:ルポールみずほ 3F
説明者: 藤原氏(秋田県資源エネルギー産業課)
内容:講義「小型家電回収プロジェクト」
講義概要
タイでは WEEE リサイクルの制度化が検討されている一方、日本でも小型家電のリサイクル
に関する制度の検討を行っており、秋田県のプロジェクトがモデルプロジェクトとして採
択されている。タイでの法制度化への参考となるよう、モデル事業の概要、及び新制度の
概要について講義を行った。
•
背景・課題
•
国のモデル事業概要
•
秋田県でのモデル事業
•
市民会議
•
新たなリサイクル制度
主な質問、コメント
参加者からは小型家電リサイクルの新制度、及び小坂製錬の事業に関し質問が挙げられた。
•
20%~30%の目標回収率について確認(⇒家電 4 品目を除く、持ち運び可能な電子機器
の予想排出量に対する割合、目標達成できない場合は処理費を賄うことが困難と回答)
•
処理費を徴収しないことについて、市町村への負担に関する質問
•
小坂製錬のリサイクル原料の仕入れ先について(⇒国内外から引き受けており、将来
的には小型家電の処理にも対応可能と回答)
<講義要点>
•
国のモデル事業概要
 適正で効果的なレアメタルリサイクルシステムを構築するための回収方法の検
討、レアメタル含有実態の把握、有害物質の検討が行なわれた。
•
秋田県でのモデル事業
 大館市の家電リサイクル工場で分解する。受入、重量測定、手分解、機械破砕を
行なう。その後、売却或いは製錬を利用して金属回収される。レアメタルを含む
部品は一定量まで保管し、レアメタル回収施設で処理する。残渣などについては
焼却し、最終処分する。
 効率よく解体するために類似品(レアメタル含有量等の構成)を集めて解体する。
•
市民会議
 使用済み家電を回収するために、2007 年に秋田市で市民会議を開催。
 会議内容は専門委員から市民への情報提供、質問への回答、市民同士の討論、市
民から回収方法の提案
•
小型家電リサイクル制度化について
 各ステークホルダーの役割と責任(行政、小売店、認定事業者、リサイクル施設)
 20%~30%の回収率の達成が重要で、今後は回収率向上と市町村への負担について
検討する。
 施行までのスケジュールと政省令を整備するための検討会の設置
88
〔講義〕大館市の廃棄物処理の概要
日時:2012 年 2 月 8 日(水)14:00~14:30
場所:大館市役所 第一委員会室
説明者: 羽生氏(大館市役所)
内容:講義「大館市の廃棄物処理の概要」
講義概要
タイでは一般廃棄物の処理についても課題を抱えており、午後の大館クリーンセンター視察
の基礎情報の意味も含め、大館市での廃棄物処理に関する講義を行った。
•
大館市の概要
•
ゴミ処理の概要
 ゴミの分類(可燃、不燃、資源ごみ)
 各ゴミの処理方法
 大館市のごみ処理にかかるコスト
 ゴミ収集システム
主な質問、コメント
参加者からは回収したペットボトルの売却の有無について確認された。タイではペットボト
ルは売却されるが、日本ではペットボトルの市場価格下落の影響により、処理費を支払う必
要がある。
〔視察〕大館クリーンセンター
日時:2012 年 2 月 8 日(水)15:30~16:30
場所:大館クリーンセンター
説明者:高原センター長
内容:施設概要説明
施設見学
視察概要
大館クリーンセンターは、一般廃棄物焼却施設であり、日本で最初に PFI 手法が適用された
廃棄物処理施設でもある。
施設概要説明の後、オペレーション室、及びピット(オペレーション室内から)の見学を行
った。
主な質問、コメント
施設の構造、投資額等について質問が挙げられた。
•
施設の投資額
•
施設の各部の構造等に関する確認
•
近隣住民との関係構築について
•
廃熱利用について
89
〔視察〕小型家電回収ポイント
日時:2012 年 2 月 8 日(水)17:00~17:15
場所:大館市役所内 回収ボックス設置個所
説明者: 羽生氏(大館市役所)
内容:小型家電回収ボックス設置個所見学
視察概要
タイでは WEEE 回収プロジェクトが実施されており、市民から小型家電を中心に WEEE が回収
されている。日本での同様の取り組みとして、小型家電の回収ポイントを視察した。
主な質問、コメント
参加者からは回収の頻度、回収方法、回収ボックスの作成予算や素材など、具体的な事項
が確認された。
〔視察〕エコリサイクル
日時:2012 年 2 月 9 日(木)09:00~12:00
場所:株式会社エコリサイクル
説明者: 笹本直人 代表取締役常務
内容:施設概要説明
施設見学
視察概要
先日の指定引取所で回収された家電 4 品目、及び小型家電の解体を行うエコリサイクル、及
びフロンの焼却を行うエコシステム秋田の見学を行った。
ストックヤード
•
年間 20 万台の処理が可能
•
冷蔵庫は CFC の種類ごとに置き場を整理
•
家電リサイクル券の確認
家電手分解行程
•
フロン抜き取り
•
洗濯機手分解⇒機械破砕
•
CRT 鉛ガラスとパネルガラスの分離作業
•
コンプレッサ切断(鉄と銅を分離)
•
薄型テレビ解体(液晶パネルは砒素を含むため焼
却)
90
小型(中型家電)ストック
•
ピックアップ回収された小型・中型家電の保管場所
•
ボックス回収された小型家電の保管場所
エコシステム秋田
•
焼却炉(ロータリーキルン)では産業廃棄物に加え、
家電・自動車から回収された CFC を焼却
•
定期的に点検を行う
•
一般廃棄物と産業廃棄物両者のライセンスを取得
主な質問、コメント
DOWA 花岡地区における家電リサイクル施設、廃棄物焼却施設、及び最終処分施設について
それぞれ質問が挙げられた。
•
PCB(ポリ塩化ビフェニル)、CFC、CRT 等の有害物の処理に関する質問
•
PCB(基板)の分解後の送り先(⇒小坂製錬に原料として供給と回答)
•
焼却施設の排ガス処理のフロー、各部の燃焼温度等について
•
近隣の住民からの反対の有無や従業員の健康への影響について
•
最終処分場の構造について
<施設概要説明の要点>
•
解体はセル方式を採用し、一人が最後まで分解する。大きな会社ではコンベアによ
る流れ作業で分解していく。事業規模による。
•
フロン処理:エコリサイクルの特徴。コンプレッサからフロンを抜き取る。抜き取
ったフロンはボンベに充てんし、焼却施設に運ばれる。ウレタンにもフロンが含ま
れており、破砕機で砕く際にフロンが発生する。空気ごと破砕機から吸い取り、パ
イプで焼却施設に送り、850℃で熱分解している。近くに焼却炉があるのでこのよ
うな仕組みをしているが、焼却施設がない施設では冷却して液体として回収する、
或いは活性炭に吸着させて活性炭を焼却するという方法がある。この2つの方法に
比べると直接焼却はコスト的に有利。
•
家電の分解では有害物質の管理が重要。
 水銀:バックライト等の水銀を含む部品を回収し、北海道のリサイクル施設に
送っている。かつて水銀を産出する鉱山だったため、管理がしっかりしている。
 PCB:メーカーへ返却し、メーカーが直接PCBを処理する工場に送っている。
•
CRT:製造量が少なく、処理が問題となっている。バックガラスは鉛を含んでいる。
ほとんどは輸出され、海外で CRT とされている。一部は産業廃棄物として処分され
る。エコリサイクルは製錬工程で鉛を回収している。製錬のキャパシティがあるた
めすべてはできない。フロントガラスはグラスウール等の製品となる。
91
〔視察〕DOWA 小坂地区事業
日時:2012 年 2 月 9 日(木)14:00~16:00
場所:小坂製錬 事務所会議室
説明者:永田監査役
内容:小坂地区事業の概要説明
小坂地区の施設見学
視察概要
エコリサイクルで解体された基板等を受け入れ、金属回収する小坂製錬、及び産業廃棄物の
焼却灰等の最終処分を行うグリーンフィル小坂を視察した。
○小坂製錬
・ リサイクル原料のストックヤード
・ TSL 炉(リサイクル原料を対象)
・ 製品(インゴット)保管庫(Au、Ag、電気鉛、電気銅、錫等のインゴットを保管)
○グリーンフィル小坂
・ 日本最大の最終処分場。一般廃棄物と産業廃棄物の焼却灰を同程度ずつ埋め立てし
ている。
・ 埋立の際には GPS を利用し、埋立物の位置を記録(確認)している。
○オートリサイクル
・ 自動車の解体を行い、エンジンなどは再使用するために輸出され、ボディーは鉄ス
クラップとして売却。
・ シュレッダーダストは KSR 炉で焼却され、金属と水蒸気が回収される。
主な質問、コメント
日本では回収された家電が最終的にどのようなプロセスで金属回収されるという一連の流
れを視察し、家電の適正処理について一定の啓発効果があったと考えられる。
参加者からは埋立処分場、製錬施設等について質問が挙げられた。
92
日・タイ共同研究会
日時:2012 年 2 月 10 日(金)9:00~12:00
場所:ルポールみずほ 2F
日本側出席者:菅原委員長(秋田大学名誉教授)
市川委員(国際教養大学教授)
野澤委員(日本 IBM)
タイ側発表
情報交流の一環として、タイ側から「WEEE 処理の現状と将来的な計画」についてのプレゼ
ンテーションが実施された。プレゼンテーションの構成は次の通りである。
•
WEEE 処理の現況(不適正処理の状況)
•
政策と今後の処理指針
•
これまでの取り組み
•
関連する法制度
•
今後の課題
•
秋田視察研修で得た内容を今後どう生かすか、日タイの連携について
今回の研修に対するコメントとして PCD から、研修生は中央政府・地方政府の様々な部署か
ら来ているため、それぞれの立場で中央、地方レベルでの活動に生かしていくとあった。中
央政府は国全体の方針に活用することができ、特に PCD は情報提供、DIW は民間企業への取
り組みを行うことができる。また、地方政府についてはチョンブリ市で先進的な取り組みを
しており、今後も得た知識を活用していきたいというコメントであった。
今後の取り組みとしては、以下の点が日本側に対する要望として挙げられた。
<WEEE 関連>
•
日本では小型家電リサイクルにおいて 20~30%の回収率で事業が成立するという数値
を算出しているが、タイでは数値の予測が正確でなく、投資の判断材料が欠けている。
WEEE 発生量の正確な数値を予測する調査・分析を行いたい。
•
タイで適切な処理・公害対策を行うことができるリサイクル企業を作ってもらいたい。
バーゼル条約により輸出には制限があるため、国内のリサイクル企業の技術を更新し
ていく必要がある。
•
バンプ―工業団地の焼却施設において、エコリサイクルのように CFC の焼却炉での熱
処理が可能か検討したい。
•
タイにも鉱山跡地があるため、秋田のような取り組みの可能性について検討したい。
鉱山開発の部署が電解製錬を計画しており、今後拡大していきたい。日本の投資家に
も協力をお願いしたい。
<その他 3R 関連>
•
タイでは電炉ダストを日本に輸出する計画があった(バーゼル条約による手続を通せ
なかった)。秋田製錬の亜鉛リサイクル事業に関心がある。タイで同様のプラントを
建設したい。
•
タイでは石炭灰が大量に排出されており、エコプラッシュ、秋田ウッド等の事業に関
心がある。
•
北海道にある水銀を処理する企業について教えてもらいたい。
•
今後も3Rについて協力関係を継続していきたい。
93
日本側コメント
日本側からは本事業の研究会から菅原委員長、市川委員、野澤委員から意見等が述べられて
いる。
<菅原委員長>
持続可能な開発の視点で開発されているのは合理的である。例えば鉱山の跡地の技術を
適用できないかということを例に考えてみると、秋田県の場合は地域の住民との長い時
間の連携、情報発信、情報共有があって今の仕組みができ、長い時間が必要だった。今
秋田県は大館・小坂地区の成功を基に秋田県全域に3Rプロジェクトを広めている。し
かし秋田県の南部では地域の歴史、文化が違う。南部では先進産業が多く、一方で林業・
農業についても別の考えを持っている。常に秋田県は住民に情報を開示し、環境を保全
しながら3R を進めると聞いている。これからも秋田県をご覧になって、利用できる情報、
産業、技術をタイに持ち帰られたらいいと思う。
<市川委員>
日本は戦後に重化学工業界が起こり、高度経済成長の時期を経験した。その間に公害の
問題が発生し、公害問題は政治・社会的に大変な問題となり、環境庁の設立や環境に関
する法律が制定された。当時の経済界は反対したが、企業が刑事罰の対象となるという
ことで、公害を防止するための設備投資が各企業で行われた。そのため民間設備投資が
増え、日本の経済が成長したという経緯がある。日本の製造業が環境技術を持っている
のは、企業が環境をビジネスとして取り上げたからである。企業と規制を打ち出す政府、
市民との間での反作用を繰り返しながらシステムができていく。経団連の中では産業廃
棄物の委員会があり、100 社程度の社長が集まる。DOWA の会長が経団連のこの分野での
リーダーになっている。経団連では十数年前に、企業の製造活動において、廃棄物を処
理しやすい製品を作るということを宣言した。経済界で環境を維持する動きを始めたの
が日本の環境に重要な役割を果たした。
このような取り組みを広げ、地方の行政、中央政府、経済界の団体と何度も話し合いを
繰り返していってほしい。
<野澤委員>
WEEE 適正処理の具体例を作ることを勧める。例えばチョンブリはリサイクルを行ってい
るので、企業から排出される E-waste を回収し、そして E-waste にはどのようなものが
含まれているかを調べ、適切に解体できる WMS のような施設に持っていく。WMS は WEEE
の適正処理が可能である。まずはチョンブリ県内で始め、タイの様々な場所に展開する
のがいいのではと思う。本来はタイの中でマテリアルリサイクルするのが望ましく、そ
のような取り組みを行うと、バッテリーや CRT 等のタイでリサイクルできない部分が判
明する。このようなことを知ることでタイ国内でのリサイクルインフラを発展させるこ
とができる。また、メーカーが製品にどのような有害廃棄物が入っていることを開示す
ることが重要だが、住民が E-waste 中の有害物に関する教育も必要。企業に頼めば製品
中の成分を開示するはずなので、活用してほしい。
94
4.5 タイ側の関心事項のまとめ
情報交流事業全体の成果として、タイ側からは以下に示す関心事項が確認された。
(1)WEEE リサイクル制度

タイでは WEEE 法制度化について、手数料等を所管する上位法の承認が停滞している
状況にあり、適切な WEEE 回収・分別・リサイクル・処理のシステムが無いことが課
題であると認識されている。今回の視察においては日本の家電リサイクルの仕組み
に関し、関係者の役割・責任、及び家電・費用の流れについて関心が示され、多数
の質問が挙げられた。

家電リサイクル券において家電のトレーサビリティを確保している点については一
定の理解が示された。

中央政府の方では WEEE の処理における有害物質管理の必要性を認識しており、家電
解体時における具体的な有害物質対策について関心が示されていた。

地方自治体の方では、これまでの事業では WEEE 回収までの関与に留まり、回収後の
適正処理についてはあまり注意が払われていなかったが、今回の研修で回収から金
属回収・最終処分までの流れを視察することができ、一定の啓発効果があったと考
えられる。

エコリサイクル・小坂製錬の規模にインパクトを受けた様子。DIW のコメントから
は、タイの解体・リサイクル業者と秋田で稼働する施設の規模・技術的差を感じた
模様。
(2)その他関心事項等

タイでは埋立処分場の逼迫により産業廃棄物・一般廃棄物の処分に課題を抱えてい
る。今回の研修では視察した産業廃棄物・一般廃棄物焼却施設の投資規模、構造、
汚染対策、住民対応等に関する質問が挙げられた。

DIW では石炭灰や電炉ダスト等、産業廃棄物・有害廃棄物の処理に課題を抱えてい
る様子である。産業廃棄物を活用したリサイクル事業や電炉ダストからの亜鉛リサ
イクル事業に関心が示された。

PCD からは今回の研修から、タイの鉱山跡地の有効活用についても関心が示された。

地方自治体レベルでは、住民への対応に関心があり、住民との関わり方について関
心が示された。

チョンブリ市では今後も WEEE を含む3Rに関する取組を継続する意向で、日本との
協力関係の継続が希望された。
以上
95
第5章
我が国民間事業のリサイクルビジネス可能性調査
5.1 タイのWEEEの状況
5.1.1 タイにおける WEEE のフロー、排出ポテンシャル
今後のタイにおけるWEEEの回収、処理システム構築にあたっては、タイにおけるWEEEの
フローと、排出ポテンシャルを把握する必要がある。本項ではPCDの調査 3により取り纏め
られたデータに基づき、タイにおけるWEEEの現状を整理する。データ算出にあたっては廃
棄物フローモデルに基づき、各製品のライフサイクルの特性に基づいた調査が行われてい
る。調査には、生産データ、消費データ、再利用/リサイクルデータ、廃棄データが対象と
されている。調査の対象となった電気電子機器を以下に示す。
テレビ、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、携帯電話、VCD プレーヤー、
DVD プレーヤー、デジタルカメラ
廃棄物フローモデルに基づく、WEEE のフローを以下の図 5.1-1 に示す。上記の対象とな
る WEEE の発生量は 308,336 トン/年であり、そのうち保管されるものが 106,675 トン/年、
廃棄されるものが 28,599 トン/年(WEEE 発生量の 9%)である。この廃棄分のうち 8,370
トン/年(廃棄分の 29%)が公共の場で投棄され、20,229 トン/年(廃棄分の 71%)が自治
体ごみとして投棄される。
中古品買い取りショップなどには 91,541 トン/年の WEEE が流れ、最終的に廃棄物処分
(31,368 トン/年)、リサイクル(127,151 トン/年)されている。
発生した WEEE(上記 9 品目)の流れとその占める割合を以下の表 5.1.1-1 に示す。
表 5.1.1-1 発生後のWEEEの状況
保管(自宅、オフィス)
中古ショップ等
修理
販売会社による回収
自治体ごみとともに廃棄
公共の場所で投棄等
合計
量(トン/年)
106,674.97
91,541.58
46,419.36
35,609.80
20,229.38
8,369.69
308,844.72
比率(%)
34.5
29.6
15.0
11.5
6.6
2.7
100.0
図 5.1.1-1 に廃棄物フローに基づく、タイの WEEE フローを示す。フローは 3 つに区分さ
れ、製品の生産・輸入、消費、そして中古利用を含む「廃棄物の発生」とその後の修理し
ての再利用、自治体ごみとしての回収、保管などの「WEEE 管理(第 1 レベル)」、最終的
なリサイクル、処理、処分が行われる「WEEE 管理(第 2 レベル)」より構成されている。
3
Household Hazardous Waste and Waste Electrical and Electric Equipment Inventories, 2008 (PCD)
96
Export
輸出
Newタイにおける
Product in Thai
新製品の生産
in country
WEEE
EEEconsumption
の消費
Imported
New product
新製品の輸入
-
-
399,336.24 1/
-
Total
WEEE Generation
の総発生量
中古品
2nd hand
product
308,844.72
55,313.24
Waste Generation
Other 他国
Countries
Other他国
countries
8,893.88
8,893.88
2nd hand product
廃棄物の発生
Storage
保管
Waste
Discard
廃棄
Improvment/Reparing
修理
106,674.97
28,599.02
46,419.36
Discarding
in to public
公共の場所で
area and 廃棄
Environment
Disposed
with
自治体ごみと
Municipal
Solid Waste
ともに廃棄
Separation
選別
8,369.69
20,229.38
-
Separating
選別
/Used
product buyer/
中古ショップ等
recycle shop
91,541.58
Collected
by Sale
販売会社による
回収
Dealer
35,609.80
Export
輸出
-
Collected by
自治体による回収
Municipality
20,229.33
E-waste management
WEEE 管理(第
1 レベル)
1st level
Landfill
埋立処分
Treatment/Disposal
処理/処分
20,229.33
Recycle
separation
再利用/リサイクル
工場タイプ
Factory
type106
106
127,151.37
Waste
Disposal
廃棄物処分
工場タイプ
Factory
type 101
101
31,368.24 2/
単位:トン/年
E-waste management
WEEE 管理
(第
2 レベル)
2nd
level
Remark: tonnes/year
-: No HHW management data
1/: Data gathering from consuming products with taxes and are recorded, only
2/: Calculated from surplus at factory type 106/Factory cannot be recycled
図 5.1.1-1 廃棄物フローモデルに基づく WEEE のフロー
97
5.1.2 品目別、地域別の WEEE 発生状況
タイにおける品目別の WEEE 発生量を以下の図 5.1.2-1 に示す。発生量に関してはテレビ
(84,905 トン/年)
が最も多く、
28%を占めており、
次いでエアコン
(60,211 トン/年、
20%)
、
冷蔵庫(52.915 トン/年、17%)、洗濯機(49,412 トン/年、16%)、パソコン(45,247 ト
ン/年、15%)と重量で言えば上記 5 品目で全 9 品目の発生量の 95%以上を占めている。そ
の他 4 品目については小型のものが多いため、重量で占める比率は少ない。
90,000.00
84,905.21
発生量(トン/年)
Amount
(ton/year)
80,000.00
70,000.00
60,000.00
50,000.00
60,211.45
52,914.98
49,411.66
45,247.42
40,000.00
30,000.00
20,000.00
10,802.70
3,836.081,347.04
10,000.00
168.18
デジタルカメラ
携帯電話
DVDプレーヤ
WEEE Type
VCDプレーヤ
パソコン
洗濯機
冷蔵庫
エアコン
テレビ
0.00
図 5.1.2-1 品目別の発生量
続いては地域別の WEEE の発生量のデータを示す(図 5.1.2-3)。データはタイ全土を 7
地域に区分したものであり、バンコク周辺、中部(アユタヤ県含む)、東部(チョンブリ
県含む)、西部、北部、東北部、南部に分けられている。表 5.1.2-1 に各区域の内容・人
口について、図 5.1.2-2 タイの地域区分を示す。
98
表 5.1.2-1 各区域の内容・人口
地域
バンコ
ク周辺
県
バンコク
人口
10,065,126
地域
東北部
サムットプラカーン
ブリラム
ノンタブリ
スリン
パトムターニー
シーサケート
ナコンパトム
ウポンラーチャタニー
サムットサコン
中部
東部
アユタヤ
チャイヤブーム
ロッブリー
アムナートジャルン
シンブリ
ノーンブアラムプー
チャイナート
コンケン
サラブリ
ウドンタニ
チョンブリ
4,194,533
ルーイ
北部
ノンカイ
チョンタブリ
マハーサーラカム
トラート
ローイエト
チェチェンサオ
カーラシン
プラチンブリ
サコンナコン
ナコンナヨック
ナコンパノム
サケーオ
ムクダハン
ラチャブリ
3,148,297
南部
ナコンシータマラート
カンチャナブリ
クラビー
スパンブリ
バンガー
サムットソンクラーム
プーケット
ペチャブリ
スラーターニー
プラチャワブキーリー
カン
ラノン
チェンマイ
人口
21,385,647
ヤソートン
9,374,694
ラヨン
西部
県
ナコンラチャシマ
6,215,099
チュムポン
ランプーン
ソンクラ
ランパーン
サトウン
ウトラディット
トラン
プレー
パッタルン
ナーン
パッタニー
パヤオ
ヤラー
チェンライ
ナラティワート
メーホンソーン
ナコンサワン
ウタイタニ
カンペンペット
ターク
スコータイ
ピサヌローク
ピチャット
ペチャブーン
99
8,654,831
(出典:「タイの投資環境」(JBIC))
図 5.1.2-2 タイの地域区分
図 5.1.2-3 に示すように、地域別でみた場合にバンコク周辺が最も多く 108,169 トン/
年(全体の 35%)であり、次いで東北部の 57,715 トン/年(19%)、南部の 40,664 トン/
年(13%)であり、チョンブリ県の所在する東部は 30,762 トン/年(10%)となっている。
100
26,714.82
Bangkok
Metropolitan/
バンコク周辺
Bangkok neighborhoods
13,798.42
東北部East
North
108,168.84
30,762.76
南部
South
中部
Central
31,019.87
東部
East
40,664.19
57,715.82
(単位:トン/年)
北部
North
南部
West
図 5.1.2-3 地域別の発生量
5.1.3 産業セクターから発生する WEEE の状況
2006 年から 2011 年までの産業系のWEEEの発生量データを以下の表 5.1.3-1 及び図
5.1.3-1 に示す。本データは家電、電子機器等の製造を行う工場(工場タイプ 69-724)か
ら発生するWEEE(不良品)を工場外で処理する際にDIWに報告されるものである(実績)。
表 5.1.3-1 産業系WEEEの発生量
4
年
発生量(トン/年)
2006
135,023
2007
295,715
2008
304,235
2009
243,145
2010
274,694
2011
264,993
テレビ、エアコン、コンピューター、電子機器の製造を行う工場。
101
350,000
300,000
250,000
200,000
150,000
100,000
50,000
0
2006
2007
図 5.1.3-1
2008
2009
2010
2011
産業系WEEEの発生量
5.2 チョンブリ県におけるWEEEの状況
チョンブリ県を含む東部地域の WEEE の発生状況を以下の図 5.2-1 に示す。発生量に関し
てはテレビ(7,856 トン/年)が最も多く、26 %を占めており、次いでエアコン(7,378 ト
ン/年、24%)、冷蔵庫(5,354 トン/年、17%)、洗濯機(4,257 トン/年、14%)、パソ
コン(4,188 トン/年、14%)となっている。総排出量は 30,763 トン/年で、タイ全体(308,845
トン/年)の 10%とである。
9,000.00
8,000.00
7,000.00
6,000.00
5,000.00
4,000.00
3,000.00
2,000.00
1,000.00
0.00
図 5.2-1 チョンブリ県における WEEE 排出の状況
本事業にも関与しているチョンブリ県内のパタヤ市(人口 100,012 人)及びチョンブリ
市(32,276 人)における WEEE 発生状況を以下の図 5.2-2 に示す。なお、算出にあたって
は上記の PCD 調査に記載のある該当する発生量原単位を利用し、
算出しているものである。
102
700
600
500
400
300
パタヤ市
200
チョンブリ市
100
0
図 5.2-2 パタヤ市及びチョンブリ市における WEEE 排出の状況
チョンブリ市は 3 章に記載しているように WEEE パイロット事業に積極的に参加し、参加
自治体の中でも WEEE 回収量が多く、活発な活動をしている(ただし、プロジェクト全体で
のデータ精査は今後実施される予定である)。着実に実績をあげているチョンブリ市の活
動は今後の WEEE 回収システムの構築に向けて他の自治体等への展開をはかる上で、タイ現
地での貴重な事例であることから、チョンブリ市の活動のうち特徴的なものを以下に列記
する。
・ コミュニティの結びつきが強く、世話役が献身的に関与している(パイロット事業以外
のリサイクルバンクの活動など含む)。
・ 行政(チョンブリ市)がコミュニティのアドバイザー的に関与し、コミュニティによる
活動を支援している。
・ 地元の寺院との結びつきも強く、
寺院が WEEE 及び危険ごみの保管場所を提供するなど、
コミュニティの活動を支援している。
・ リサイクルバンクの活動がタイの中部・東部のコンテストで優勝し、天然資源環境省の
大臣から表彰されることにより、活動のモチベーションが高まっている。
・ パイロットプロジェクト実施にあたって、18 のコミュニティ、民間業者、学校と MOU
を締結し、積極的な関与を得ている。
・ 2 年目事業においてチョンブリ市(助役)が秋田県での視察研修に参加し、活動の参考
となるノウハウを吸収し、帰国後に実施されたパイロット事業の活動で実践することが
できた。
103
5.3 事業化検討調査
5.3.1 我が国民間事業のリサイクルビジネスの概要
本事業は、タイ(チョンブリ)での我が国民間事業のリサイクルビジネスの展開の可能
性を検討するものであるが、本セクションにおいては我が国、特に秋田県における代表的
なリサイクル事業者について、技術の特徴等をあわせて説明する。
秋田県には秋田北部エコタウンを始めてとして、多様なリサイクル事業者が存在するが、
本事業では特に秋田県の特徴となっている金属リサイクル、家電リサイクル分野での代表
的な企業である、DOWA エコシステム㈱の事業及び技術の概要を示す。
DOWA エコシステム㈱の所属する DOWA グループは、非鉄製錬技術を活用した総合素材メー
カーであ。また精鉱等の一次原料のみならず、廃家電、自動車廃触媒等の二次原料から金
属回収を事業として行っており、日本のみならず国際的な廃棄物処理・リサイクル事業者
となっている。
図 5.3.1-1 DOWA グループのビジネスの概観
104
図 5.3.1-2 金属リサイクルビジネスの概観(1)
図 5.3.1-3 金属リサイクルビジネスの概観(2)
特に秋田県においては多くのグループ企業を有しており、秋田エコタウンにおいても、
環境ビジネスの中核事業者となっており、我が国でも有数の非鉄金属のリサイクル拠点と
なっている。
○ 小坂製錬株式会社:非鉄金属製錬・スクラップ等の二次原料を対象とした非鉄金属
105
リサイクル
○ 株式会社エコリサイクル:家電リサイクルを行う
○ 日本 PGM:自動車触媒からのパラジウム等の金属を回収する
○ エコシステム秋田:廃棄物処理を行う
○ グリーンフィル小坂株式会社:廃棄物の埋立処分場
○ オートリサイクル秋田株式会社:廃自動車の解体等
○ エコシステムジャパン株式会社:廃棄物・スクラップ原料の集荷(グループの営業
部門)
以上のように多岐にわたる 2 次原料を対象として、貴金属等の金属回収事業の展開を行
っており、製錬所等の施設、技術ノウハウのみならず、非鉄金属資源の国内外の物流につ
いても有用な知見を有している。
廃棄物リサイクル分野にかかる海外の主なグループ企業として、アセアン諸国に関して
は、2009 年に廃棄物リサイクルの拠点として、Modern Asia Environmental Holdings Inc.
(以下 MAEH 社)を新たにグループ企業としている。MAEH 社は、東南アジア3カ国(イン
ドネシア、タイ、シンガポール)、4拠点で実際に廃棄物処理事業を展開している会社で
あり、施設の計画、運営、廃棄物ビジネスにかかるマーケット情報に精通しており、また
現地日系企業とも深い関係を有している。
タイでは、焼却処理施設(BPEC)と最終処理施設(ESBEC)の2拠点を保有して廃棄物処
理事業を行っている。後述するように、特に ESBEC においては、タイに WEEE(パソコンな
ど)解体処理設備を既に設置しており、WEEE 分野におけるビジネスを展開しており、タイ
政府(PCD(公害管理局))のパイロット事業(WEEE の回収プロジェクト)にも参画してい
る。
インドネシア拠点(PPLi 社)は、国内で唯一、有害廃棄物の最終処理の営業許可を所有
している会社として、最終処理施設や廃油・廃液処理施設などを保有し、廃棄物処理事業、
燃料再生事業、土壌・施設浄化事業などを行っている。シンガポール拠点(FTEC)では焼
却処理や蒸留・再生事業を行っているが、現在スクラップ原料からの金属回収のための湿式
処理設備の導入が進められており、シンガポール国内のみならずアセアン地域での金属資
源の回収拠点として期待されている。
グループ企業のエコシステムジャパン株式会社については、国内のみならず、タイ、マ
レーシア等の東南アジアにおけるリサイクル資源の集荷、マーケッティング等を行ってい
る。
中国では非鉄金属のリサイクルを行う蘇州同和資源綜合利用有限公司があり、家電リサ
イクル工場も有している。中国の家電リサイクルの制度化に合わせて、天津、杭州、江西
においても家電リサイクル工場を整備中である。
106
図 5.3.1-4 環境事業の海外展開の状況
このように貴金属等の含有濃度が比較的高い工程スクラップ等のほか、多様な金属が含
有するリサイクル原料から多種類の金属を回収するなど、非鉄金属製錬技術を活用とした
金属リサイクルを特徴としている。本事業においては、タイでの現況のほか、これら特徴
的な技術を参照して我が国民間企業の展開を検討している。
5.3.2 WMS/ESBEC の事業概要
DOWA グループの環境事業のうち、タイで事業を行っているのが WMS グループである。タ
イにおける廃棄物処理・リサイクルの拠点は ESBEC(リサイクル、非有害廃棄物最終処分等)
及び BPEC(非有害廃棄物の焼却等)がある。
107
図 5.3.2-1 DOWA グループの環境ビジネスのアジア展開
また、タイ全土からの廃棄物等の収集を効率的
に行うために、輸送拠点(集荷拠点)を各地に設
けている。現在では 4 か所の輸送拠点を有してお
り、北部(Chingmai)にある NTS、中部(Lad Krabang)
にある LTS、東部(Amata Nakorn)にある ATS、
南部(Songkla)にある STS である。上記の ESBEC、
BPEC とこれらの輸送拠点のネットワークにより、
タイにおけるリサイクル、廃棄物処理事業を展開
している。
図 5.3.2-2 タイにおける WMS の輸送拠点
108
a) ESBEC
ESBEC は 2000 年に非有害廃棄物の埋立最終処分場として建設され、これまでに 100 万ト
ン以上の廃棄物の埋め立て処分を行っている。処分場の構造は米国 EPA(環境省)の基準を
満たしており、高密度ポリエチレン遮水シートの 2 重構造に粘土層を加えた 3 重の遮水構
造を取り、周辺の環境を汚染する恐れのない構造を採用している。処分場の閉鎖後にかか
るタイの法制度上の規制はないが、自主的に閉鎖後の対策にかかるファンドを設けている。
最終処分だけでなく、有機系廃液の処理も行っており、他にもリサイクルサービスとして、
廃油やスラッジ類の再資源化や廃棄物からの有価物(各種金属スクラップ・プラスチック
など)の分別回収も行っている。
b) ESBEC における WEEE 処理
クライアント(IT メーカー)においては、タイにおける同社の使用済機器(パソコン等)
の適正処理(解体、回収した資源の適正なネットワークによる活用)の受け皿となるリサ
イクル事業のニーズがあり、DOWA グループのノウハウを活用することができることから、
WEEE のリサイクル事業を 2010 年に開始している。
WEEE リサイクル事業を立ち上げる上での基本方針として、①有害廃棄物の処理を適切に
行う、②一部の部品の転売等を行わないこととしている(パーツが市中に出ることによる
顧客のブランドイメージ低下を防止)。現在取扱っている品目は、パソコン、その周辺機
器、CRT モニター、サーバー等である。
WEEE リサイクル(解体等)にかかるライセンスについては対応する 106 ライセンスを取
得している。また、Waste Management Classification で金賞(優良事業者)を受賞して
いる。クライアントの要求事項に対応するためにも、財務面での健全性について、環境モ
ニタリングのための資金を積み立てる制度を利用している。
WEEE 処理の流れとして、①パッキング(要求に応じて顧客の目の前で機能破壊⇒不適切
なリサイクルを防ぐ)、②受け入れの際に計量を記録、写真撮影、③解体後にも解体結果
のレポートを作成する、④分解された部品は事業者に再度委託し、リサイクルを行う。各
金属等の種類に応じて委託先が決まっており、クライアントの方でも確認されている。原
則としてタイ国内でリサイクルを完結することとしているが、タイで適正処理ができない
ため例外として PCB は国外に送っている。
109
図 5.3.2-3 ESBEC のプロセスフロー及びリサイクルネットワーク
今後は、WEEE の制度化整備にかかる現地政府の支援、WEEE Can Do プロジェクトのサポ
ートも引き続き行い、タイでのベストプラクティスの実践をアピールしていくことを目指
している。また、日本からの技術移転として、リサイクル技術をタイに導入し、タイ国内
でのリサイクル事業の拡張を行うとともに、解体後の適正処理業者のネットワークを拡大
することを目指している。
110
5.3.3 タイでの同業他社の状況
タイでは WEEE の回収システムが構築されておらず、家庭等から発生する WEEE は前述の
とおり、零細業者を中心とする業者の引取り、処理が行われるケースが多く、適正な処理、
そして処理後の部品等の適正処理ネットワークを有するリサイクル業者はほとんど存在し
ないとされている。実際に ESBEC とともに WEEE のパイロット事業に参画している TES-AMM
及びユミコアについては、タイで WEEE の処理を行う施設を有しておらず、他国にある処理
施設を有するグループ会社の拠点において処理を行うスキームを利用している。以下に
ESBEC 以外に WEEE 処理をタイで行っているウォンパニと Fuji Xerox Eco-Manufacturing 社
の取り組みを紹介する。
(1)ウォンパニ社
1)事業の概要
ウォンパニ社はタイ国内に約 700 の拠点(従業員約 14,000 人)を有しており、タイ南部、
東北部、バンコク周辺部が強い。
ピサヌローク県では、産官民の協力が得られるため、当地にウォンパニのリサイクル拠
点を設置している。事業化に当たっては、他の県にも協力要請のために訪問を実施したが、
行政当局は、直接的なメリットがないと興味を示さないこともあったとのことである。ウ
ォンパニ社は海外にも展開しており、ラオス、マレーシア等に支社を設けている。
2)WEEE リサイクル
ウォンパニ社は、資源ごみの回収にあたって、フランチャイズ制を導入し、回収にかか
るネットワーク化に取り組んでいおり、WEEE も資源ごみとして回収されている。
WEEE の収集にあたっては専用の収集車(以下の写真参照)を用意している。WEEE の収集
元は、家庭からの他、学校、ホテル、工場等と多岐にわたっている。
WEEE の処理は、分解(Disassembly)⇒選別(Sorting)⇒破砕(Crushing)⇒ 出荷(Shipping)
により行っている。分別した後の WEEE のリサイクルに関して、メタルはタイ国内でインゴ
ット処理または国内で再利用用途として出荷しており、プリント基板等に含まれる貴金属
等についてはタイ国内の下請け工場で抽出作業を実施しているとのことである。
ただし、WEEE 処理にかかる実際のオペレーションの稼働状況、処理後のネットワーク(金
属回収等)等については不明な点が多い。
111
図 5.3.3-1 WEEE 収集車
(2)Fuji Xerox Eco-Manufacturing
Fuji Xerox Eco-Manufacturing は 2004 年 12 月に稼動しており、アジア・パシフィック
地域の計 9 ヵ国・地域 5から富士ゼロックス社により回収した複写機/プリンターなどの使
用済商品やカートリッジを、鉄系、アルミ系、レンズ、ガラス、銅系など 74 カテゴリーに
分解・分別し再資源化を実施している。
図 5.3.3-2
•
5
Fuji Xerox Eco-Manufacturing の事業展開
オーストラリア、フィリピン、香港、インドネシア、韓国、マレーシア、ニュージーランド、シンガポール、タイ
112
当社により構築されたシステムの特徴を以下に示す。
・ 9 ヵ国・地域の協力と信頼のもと、中間処理業者に委託することなく、企業の責任にお
いて使用済商品の国境を越えた回収、分解、有害物の無害化を行なう。
・ 再資源化率を確実に向上させ、限りなく「廃棄ゼロ」を目指す。
・ 量を確保することで生産性を高めるとともに、処理費用は各国販売会社が負担する国
際公平分担を行なう。
・ 拠点国タイにとっては、国内の「廃棄物」を削減できるほか、新しい産業システムを
創出するきっかけとなる。
Fuji Xerox Eco-Manufacturing では、タイ国政府の工業省工場局(DIW, Department of
Industrial Works)の主導する CSR 活動「DIW-CSR」の認証を受け、政府主導のもと社会貢
献活動などにも参加している。
(出典:富士ゼロックス社ホームページより)
113
その他参考事例:寺院による廃家電等の回収事例(Suan Keaw 寺院)
家電等の回収、リサイクルにかかるタイでの特徴的な拠点として、寺院での取り組みが
あり、参考事例として紹介する。Suan Keaw 寺はバンコク北西のノンタブリー県に位置して
おり、廃品(衣類、家具、家電等)の回収、リサイクルを行っている。
敷地内の市民から寄進された不用品を受け付ける受付棟、及び不用品を販売する販売棟
において運営されている。市民から持ち込まれた不用品は受付棟で引き取られ(持ち込ま
れたものは何でも引き取っており、使えない等の理由で引き取りが拒否されることはない
様子。)、品目に選別される。その後、再利用可能な物は販売棟で販売され、修理が必要
な物は修理された後に販売されている。
販売棟は 3 階建てであり、1階~3 階、及び屋上のすべてのフロアにおいてリサイクル品
が販売されている。各フロアは個別店舗で仕切られており、各店舗のオーナーの采配で販
売が行われている様子。また、寺の敷地外にもリサイクル品販売店舗が立ち並んでいる。
受入棟外観
受入棟内部
受入棟で仕分けされた PC
販売棟外観
114
販売棟内部(PC 等)
販売棟内部(オーディオ機器等)
販売棟内部(炊飯器、電気ポット等)
販売棟内部(冷蔵庫、扇風機、洗濯機等)
Suan Keaw 寺外部のリサイクル品店
Suan Keaw 寺外部で販売されている冷蔵庫等
図 5.3.3-3 Suan Keaw 寺院の概要
115
5.3.4 検討にあたっての考え
タイにおける WEEE リサイクルの事業展開の検討にあたっての考え、方針を以下に示す。
1)我が国民間企業の将来的な WEEE のリサイクル(解体、分別)事業展開を想定
2)我が国関連企業の既存サイト(WEEE リサイクル)の有効活用、発展(ESBEC 及び
WMS の集荷拠点の活用)
3)タイを中心としたリサイクルネットワークを構築する
4)WEEE の制度化において現地政府を支援しつつ、集荷ルートの確保
5)タイ国内における適正処理の実践場所としての位置づけを確保
6)解体物からの金属回収については、既存の施設を活用(タイ国外を含む)
7)将来的な集荷量の確保が見込める場合には、タイ国内での金属回収(湿式)施設
の導入も視野に入れる。
1)については、ESBEC が既にタイにおいて WEEE リサイクルを実施している。特にタイに
おいても数少ない適正処理を行うサイトとして、中央政府(PCD)からも認知されている。
当面は既存の ESBEC のリサイクル施設の最大活用を目標として、その後の拡張、関連する
施設(湿式回収等)を目指すものとする。また、ESBEC の関係グループとして、WMS の集荷
拠点がタイ各地に配置されており、拠点を活用した集荷の向上をはかる。
2)同業他社ではタイ国内に解体施設を持たずに、集荷後海外の関係会社で解体を行い、
解体後の部品等についても海外で利用されるケースがある。本事業ではタイでの処理、そ
して解体後についてもアルミニウム、鉄などについては、タイ国内での資源化を行うもの
とする。
3)タイでは WEEE の制度化が検討され、回収にかかる問題に直面している。ESBEC ではタ
イで適正処理を行う事業者として、現地の制度化を支援しつつ、今後の回収ルートの確立
を図るものとする。
4)
日本の技術等を導入し、
タイにおける WEEE リサイクルのベストプラクティスを実践し、
タイ国内でのリサイクル事業者としての位置づけを確保する。
5)解体により回収される基板等は、貴重な金属を含むが、これらについてはタイでの適
正処理による金属回収を行うことができないため、秋田県の小坂製錬での金属回収を行い、
性状に応じてシンガポールにある DOWA グループの拠点(F-TEC)において金属回収(湿式)
を行い、適正な国際資源循環を目指す。
116
6)上記の事業の展開を行いつつ、WEEE の集荷量の確保、そしてその他工程スクラップの
集荷の確保の状況によって、タイ国内での金属回収(湿式)の施設導入を検討する。
WEEE の集荷
今後
現在
タイ全土からの集荷、集荷拠点の活用
国内の大口排出事業者等
(消費者系 E-waste への展開
及び産業系 E-waste の集荷増)
WEEE リサイクル(解体、分別)
現在
今後
<チョンブリ県>
<チョンブリ県>
ESBEC(DOWA グループ)
ESBEC の最大活用(当面)
WEEE の既存リサイクル施設
周辺での拡張(場所、設備)(将来)
(集荷)⇒解体⇒分別⇒
(集荷)⇒解体⇒分別⇒
図 5.3.4-1 事業展開のイメージ
117
5.3.5 市場/集荷
(1)消費者系 WEEE
自治体ルートなどによる消費者からの WEEE 回収が実現できれば、安定した収益源となる
ことが期待できる。ただし、タイでは消費者からの WEEE の回収システムが構築されておら
ず、一定量の集荷を行うことは難しい。一方、PCD を中心に回収システム構築が目指されて
おり、制度化準備の段階で支援、協力を行いながら、将来的なタイにおけるリサイクルの
キープレーヤとしての位置づけを占めることを目指していく。
(2)産業系 WEEE
ESBEC は現状で一部 IT メーカーからの使用済の機器(パソコンン等)を受け入れて処理
を行っている。その他 IT/家電メーカーにおいても、使用済機器及び不良品等の再生、リサ
イクルを行っていることが想定されるが、現状のフローが不明である。このため、今後こ
れらの状況の把握を進める一方、PCD/チョンブリ市の取組みへの支援を実績(適正処理の
実践)として活用して、信頼しうるリサイクル業者としての展開(営業)をはかる。特に
オフィス用のパソコンなどに対する企業の情報セキュリティの重要性が認識されているが、
オフィス用のパソコンはリースなどの形態をとることが多く、リース会社と協力しての回
収・リサイクルスキームに協力していくことも考えられる。
(3)工程スクラップ(E-Scrap)
WEEE リサイクルの場合には、解体により得られる鉄、アルミ、基板等を売却することに
より利益を得られるが、有害物質管理含めて処理費と相対して、コストメリットは大きく
はない。このため、共通する金属の回収という視点からも工場から発生する工程スクラッ
プ(高品位基板等)の集荷、金属回収も視野に入れる。
(4)リサイクル費用
WEEE 処理にあたっては、保管、解体、有害廃棄物・残渣の適正処理の費用が必要となる。
一方、鉄、アルミ、非鉄金属等の売却による利益を得る場合がある。収入、支出のバラン
スは対象となる機器の種類等により大きく異なる。PCD が試算したリサイクル費用(「処理
費用」-「売却益」)を以下の表 5.3.5-1 に示す。本試算については、適正処理コストな
どはタイでの事例がほとんどなく仮定のものが利用されていると推察され、今後の WEEE 制
度化において見直されるものと考えられ、試算値として留意が必要であるとともに、今後
の動向に注意が必要である。
118
表 5.3.5-1 WEEE リサイクル費用の試算
種類
リサイクル費用
種類
(バーツ)
リサイクル費用
(バーツ)
ブラウン管テレビ(21 インチ以下)
45
プリンター/ファクシミリ
11
ブラウン管テレビ(21 インチより大)
11
デジタルカメラ
-5
液晶/プラズマテレビ(32 インチ以
下)
38
カムレコーダー
-3
液晶/プラズマテレビ(32 インチよ
り大)
131
ポータブルメディアプレイヤ
ー
-2
パソコン(CRT モニター)
-125
携帯電話
-5
パソコン(液晶モニター)
-145
携帯型トランシーバー
エアコン(12,000Btu 以下)
1
-1
蛍光灯(短)
0.1
エアコン(12,000Btu より大)
-1
蛍光灯(長)
0.2
冷蔵庫(小)
340
蛍光灯(丸型)
0.2
冷蔵庫(大)
494
乾電池(充電式)
ノートブックパソコン
-77
乾電池(非充電式)
注(1):上記のマイナスの数値は売却益が処理費用よりも多いもの。
注(2):1タイバーツ = 2.65 円(2012 年3月時点)
119
2
0.4
5.3.6 WEEE 処理(解体分別)プロセス(例示)
以下の図 5.3.6-1 に WEEE の処理プロセスの例を示す。WEEE の回収後に再利用可能なも
の、不可能なものを選別する。再利用できない WEEE は分解し、再利用できるパーツと再利
用できないパーツに選別する。再利用できないパーツは破砕機にかけられ、利用可能な素
材を回収する。
製品回収
再商品化
検査・選別
部品再利用
解体
ブラウン管
減容
品目別に分類
処分
処分
(出典:E-waste Management Manual, UNEP-IETC)
図 5.3.6-1 WEEE 処理プロセス(例示)
図 5.3.6-2 にWEEEの処理システムの例 6を示す。このシステムは大きく分けて以下の3つ
のレベルに区分される。
○第1処理レベル
○第2処理レベル
○第3処理レベル
第 1 レベルと第2レベルが同一のサイトで連続的に行われることはあるが、第3レベルに
ついては、素材等の利用先について地域が限定されているために第 1 レベル及び第2レベ
ルの処理施設とは別の場所に存在するケースが多い。
6
E-waste Management Manual, UNEP-IETC
120
処分(埋立、焼却)
コンデンサ
冷蔵庫
冷凍庫
その他
白物家電
テレビ
モニター
コンピュ
ーター
その他
WEEE
処分・リサイクル
バッテリー
・
・
解体
Hg スイッチ
第 1 レベル
再利用・リサイクルする部品
有害物質を含む部品
その他
プラスチ
ック
CRT
PCB
ケーブル
CFC・油
処分
CFC
破砕・解体
破砕
専用処理
第 2 レベル
廃棄物
鉄
鉄/スチール
リサイクル
非鉄金属
製錬施設
貴金属
分離
プラスチッ
ク(分別)
リサイクル
ミックスプ
ラスチック
プラスチッ
ク(混在)
エネルギー
回収
焼却
埋立
ガラス片
ガラス
工業
鉛
製錬
第 3 レベル
(出典:E-waste Management Manual, UNEP-IETC)
図 5.3.6-2 WEEE 処理システム例
121
(1)第1レベル(手分解)
第1レベルの作業工程は大きく分けて、「液状/ガス状物質の除去」と「手分解、分別」
がある。これらの工程により、「有害物質の除去(CFC、水銀スイッチ、CRT、バッテリー
等)」、「プラスチック、プリント基板、ケーブル等の分別」が行われる。
以下の図に手分解の工程を参考として示す。
・Step1:回収した WEEE を分解工程に搬入
・Step2:モニターの手解体
・Step3:有害物質を含む部分の除去
・Step4:分解、分別工程の完了
(出典:E-waste Management Manual, UNEP-IETC)
図 5.3.6-3 WEEE 手分解工程
(2)第2レベル
第2レベルのプロセスの概要を以下に示す。第2レベルは主に以下のようなプロセスか
ら構成される。
・破砕
・CRT 除去
・磁力選別
・渦電流選別
・比重選別
第2レベルを経て、鉄、アルミ、非鉄金属(銅)、貴金属(金、銀、パラジウム)、プ
ラスチックが再資源化される素材として回収される。これらの素材を再資源化する施設は
WEEE の処理プラント近郊にない場合が多い。鉄、アルミなどは当該国、地域において再資
源化を行う施設が立地していることがあるが、特に金属回収については製錬所等の活用が
必要で、国際的な移動を伴うことが多い。
ESBEC においては手分解による処理とそれに伴う適正処理を実施しているが、上記の第 1
レベルあるいは第 2 レベル含めて、タイで適正処理をしている事業者はほとんどないと言
われる。既述の WEEE 回収パイロット事業に参加しているユミコア、TES-AMM についてはタ
イ国内で処理できる施設を有しておらず、海外の関連施設で処理を行っているがタイの現
状である。
122
5.3.7 事業化のオプション
事業化にあたっては以下の表 5.3.7-1 に示すとおり、WEEE リサイクル解体・分別をメイ
ンに、それに必要な集荷システム・ネットワークの構築、そして金属リサイクルのタイで
の実践も将来構想の一部として想定に含まれる。
表 5.3.7-1 事業化の構成要素
工程
対象
サイト
WEEE 解体分別
消費者系
ESBEC(既存施設の活用)
集荷量増加の場合には ESBEC 内施設の拡張、他
産業系(メーカー不良品) 地域での施設設置も想定。
当面は現行行っている手分解(上記のレベル1
に相当)を行うが、集荷量、採算性を考慮して、
メーカー回収品(使用済
機械破砕(レベル2)などの導入も検討する。
電気電子機器)
集荷
(上記品目)
WMS 既存集荷拠点の活用
金属回収
産業系(WEEE 解体分別後
の解体物(金属価値のあ
るもの))
品目に応じて、シンガポール(DOWA グループ
の金属回収施設)(湿式)及び小坂製錬(乾式)
将来的には(集荷ネットワークの構築後)、タ
イ国内での金属回収(湿式)も想定。
工程スクラップ
5.3.8 リサイクルネットワーク
WEEE の処理(解体、分別)後に得られる素材原料については、タイ国内での再資源化を
優先することと、有害廃棄物の適正管理を基本とする。
鉄、アルミ、銅については、タイ国内の施設で再資源化可能(売却)であるが、基板等
からの金属回収については、適正に処理を行う施設がタイ国内にないことから、例えば日
本(秋田)の小坂製錬での金属回収、性状に応じて DOWA グループの F-TEC における湿式処
理(適正処理)を行うなどの、国際的なネットワークも活用する。この場合にはバーゼル
条約に則り手続きを行う必要がある。本事業において開催された現地セミナー及び訪日研
修には DIW 及び PCD のバーゼル条約を担当する職員が参加しており、タイでは ESBEC の視
察、日本(秋田県)では金属回収を行う小坂製錬を訪問するなど、輸出先における現場視
察を経験しており、これら職員の理解が深まったものと期待される。
また、CRT ガラスなどは有害物質として適正にタイ国内で処理を行う必要がある(処理費
が発生)。有害廃棄物については、ESBEC で埋立処分のライセンスを有していないが、取得
した場合には、ESBEC において WEEE の解体、分別を行うとともに、一部適正処理が必要な
有害廃棄物については、ESBEC 内で処理を完結することが可能となる。
冷蔵庫の冷媒に用いられるフロンについても適正処理が必要である。ESBEC の関係グルー
プの BPEC は非有害廃棄物の処理ライセンスを有しているが、フロンなどの有害廃棄物処理
ライセンスは有していない。訪日研修に参加した DIW 職員からは家電リサイクル工場で回
123
収したフロンを隣接する焼却施設で処理する方法に関心が示された。また、PCD においても
フロンの適正処理の必要性を認識しているが、今後、DIW、PCD と協議して、実証試験を BPEC
で行い、その成果等を確認し、許認可を取得し、フロンの処理を行うこともオプションと
して想定される。また、実証試験等を通じて、有害廃棄物の適正処理の必要性のほか、必
要なコストについても行政、市民等に理解を深めてもらうことが重要である。特に PCD に
とってはタイで入手できない適正処理コストの把握は有用である。
鉄/ステンレス
電炉メーカー(タイ国内)
アルミ
アルミ工場(タイ国内)
銅
真鍮工場(タイ国内)
プラスチック
(タイ国内)
モニター
有害廃棄物として処理(タイ国内)
バッテリー
リサイクル(タイ、又は日本)
プリント基板
金属回収(小坂製錬、日本)
5.3.8-1 リサイクルネットワーク
124
5.3.9 許認可
廃棄物処理、リサイクルにかかるタイの許認可の種類を以下に示す。これらの工場ライ
センスについては DIW の管轄である。例えば ESBEC では WEEE(有害廃棄物)のリサイクル
を行うためのライセンス(106)を既に取得しており、この許可の範囲であれば引き続き事
業を実施することができるが、拡張等を行う場合には許可の変更手続きが必要となる。ま
た、埋立処分に関しては、前述のとおり ESBEC では有害廃棄物のライセンスを新たに取得
した場合には、今後有害廃棄物の適正処理について自社で完結できることになる。
表 5.3.9-1 廃棄物処理、リサイクルにかかる許認可
処理の内容
許認可の種類
101
対象廃棄物
焼却
有害
非有害
排水処理
分別
105
分別
保管
埋立
106
リユース
リサイクル
5.3.10 事業展開のステップ
集荷量の確保が第一の課題となるが、タイでの制度化が遅れており、早いタイミングで
の集荷量の確保は困難である。
一方、PCD はスタディツアーなどを通じて秋田の取り組み(家電リサイクル、小型家電回
収プロジェクト)に関心を示しており、中央レベルでの制度化を支援(仕組み作りに関与)
し、集荷力向上を図り、その後に今後必要な設備、施設の導入を図っていく。チョンブリ
市はパイロットプロジェクト終了後も、周辺の自治体を巻き込んで続けていく意向があり、
ESBEC もチョンブリ県(タイ南東部)に位置しており、チョンブリ県を中心に、地元の取り
組みに協力しつつ、適正な処理の受け皿としての位置づけを確保する。
125
≪消費者系 WEEE≫
チョンブリ地域での集荷システム
タイ全域での WEEE 回収システム
に参画
に参画
(チョンブリ市及びその周辺での
(PCD の制度化/仕組み作りを
自主的な WEEE 回収の取組に協力)
支援)
≪産業系 WEEE≫
IT/家電メーカーが回収する使用済機
器の現状把握、営業活動の実施
(アユタヤ地区の詳細調査)
タイ国内集荷拠点の活用
タイでの法制度化に対応した
WEEE リサイクルの展開
及び
関連する金属リサイクル、国際資源循環の展開
図 5.3.10-1 今後の事業展開(1)
本事業では PCD のパイロット事業、チョンブリ市の取組、WEEE 排出ポテンシャル調査な
ど、消費者系の WEEE を中心に進めてきている。排出フローが異なる産業系の WEEE につい
ても排出ポテンシャルが高いとみられ集荷対象となるが、特に電気電子産業の多いアユタ
ヤ地区(ロジャナ工業団地)での産業系 WEEE のフローが不明であるため、より詳細な情報
を収集調査する。本事業を経て詳細な実現可能性調査を行う際の確認ポイントを以下に示
す。
○ 産業系 WEEE の排出実態

メーカー回収物

リース会社回収物

家電販売店回収物
○ WEEE 制度化の動向
○ 集荷対象地域の絞り込み
○ 必要な設備(機械破砕、金属回収等)
126
アユタヤの産業系
E-waste の集荷
チョンブリ市を中心
にタイ東部の集荷
チョンブリ市
図 5.3.10-2 今後の事業展開(2)
事業の方向性としては、既述のとおりタイでの集荷拠点を活かしての WEEE 処理(解体、
分別)の推進があるが、秋田県の特徴である製錬技術を活用した金属リサイクル技術も WEEE
に含有する貴重な金属回収(タイで適正処理できないもの)に適用していく。性状に応じ
て、DOWA グループが 2012 年にシンガポールの F-TEC に導入した湿式法での貴金属回収によ
り、適正処理を行うことが可能であり、湿式処理により発生する残渣や WEEE 処理により発
生する低品位基板(タイで適正処理が難しいもの)については、秋田県の小坂製錬で金属
回収を行う。このようにタイ国内での WEEE 処理、あるいは海外での金属回収などについて
は、本事業でセミナー/現地視察、そして訪日研修で関係を構築した DIW 及び PCD の支援が
必須であり、今後も WEEE 制度化などの中央政府が推進する取り組みに積極的な関与を行う
ことがビジネスの展開上重要な点である。
127
図 5.3.10-3 今後の事業展開
上記のとおり、民間企業の事業展開において、中央政府、地方自治体との良好な関係は
重要である。本事業において実施した現地セミナー/視察及び訪日研修においては、参加者
が問題意識を持って参加していることがうかがえ、彼らの課題に対応しつつ、我が国民間
企業が展開できる適正処理の素地を形成していくことがビジネス展開上も有効と考える。
本事業を通じて示されたニーズ等をもとに想定する現地政府等への協力テーマ(案)を以
下に示す。
○ 現地政府との協力テーマ(案)

適正処理の必要性、技術、コスト

フロン処理(実証試験)

WEEE 処理の技術水準

家電リサイクル法の運用詳細(家電リサイクル券の運用)

金属回収技術

市民への意識啓発(回収への協力度向上をはかる)

我が国の小型家電制度化の取り組み
128
5.4 地域間協力事業との協調
本事業においては我が国民間企業のビジネス展開とともに、チョンブリ県と秋田県との
地域間協力事業が推進され、情報交流事業が実施されている。タイでは WEEE 制度化が検討
途上であり、それに関連する WEEE 回収のパイロット事業も展開中であり、タイにおいても
関心の高いテーマである。
一方で秋田県は、現在は回収・リサイクルの法規制の対象となっていない、小型家電等
の回収事業を我が国でも先駆けて実施している。我が国においても、これらの小型家電等
の回収にかかる法制度が検討されており、秋田県は今後も日本のモデル地域として、取り
組みが進められていくことが予定されている。このような小型家電の回収事業を通して得
られた経験、ノウハウは同様な制度化が検討されおり、パイロットプロジェクトに取り組
むタイにとっても有用な知見となりうるものである。
収集・運搬
処理工場
(大館市)
ボックス回収
(イベント回収)
金属製錬所、廃棄物処理施設等
鉄スクラップ
鉄鋼原料等としてリサイクル
非鉄部品
アルミ原料等としてリサイクル
電子基板
金、銀、銅等非鉄原料としてリサイクル
レアメタル含有部品
一定量が溜まるまで蓄積
その後、精製プロセスで金属回収
残渣物
焼却灰等は最終処分場で適正処理
分解・選別
(機械破砕・選別、手分解等)
市粗大・不燃ごみからの
ピックアップ回収
市民からの回収
回収物の仕分け、分解、選別
金属の回収、残渣の処理
(出典:秋田県提供資料)
図 5.4-1 秋田県における使用済小型家電のリサイクル事業の概要
秋田県には秋田県鉱業会という、鉱業関連の企業を母体とした企業群があり、秋田県と
の協調によりタイ(チョンブリ)への技術者の短期派遣などによる、協力も考えられてい
る。
このため、本事業終了後も我が国企業のビジネス展開が進められていくものと期待され
るが、引き続き日本、タイの中央政府の関与、支援が効果的な成果を生み出すものと考え
られる。
129
5.5 地域間協力事業の成果
本事業は以下2つの事業のタイにおける継続的事業である。
「平成21年度 産業技術研究開発委託費
アジア大の3Rネットワーク構築プロジェクト
アセアンにおけるリサイクルシステム構築のための地域間協力可能性調査」
「平成22年度
中小企業等資源循環推進調査等委託費(アジア資源循環推進事業-都市間
(秋田県-タイ王国・マレーシア連邦)連携による循環型都市協力推進事業)」
1 年目事業において提示された協力事業のフローを以下の図 5.5-1 に示す。3 年目である
本年度事業については、第 3 段階、そして第 4 段階の範囲を想定しており、セミナー、訪
日研修を中心とした情報交流の促進が本事業のもとで実施されており、着実なステップを
達成してきている。特に第 3 段階にあるパイロット事業に関するものとして、PCD が主導し
ている WEEE 回収パイロットプロジェクトがある。本事業のもとで実施されたものではない
が、本事業がメインテーマとして取り扱う WEEE のリサイクルに関して、本事業に関係して
いるチョンブリ市(セミナーに共催、訪日研修にも参加)が WEEE の回収分野において、そ
して ESBEC が WEEE リサイクルの分野において、それぞれ重要なプレーヤーとしてパイロッ
トプロジェクトでの役割を果たしている。特にチョンブリ市は 2 年目事業のもとで実施さ
れた訪日研修での経験をパイロットプロジェクトにも活かしており、本事業とパイロット
プロジェクトによる相乗効果を生み出しているといえる。ESBEC については、タイで WEEE
の適正処理を実践できる企業としての認知度を高めており、今後の制度化での積極的な関
与によってタイの WEEE リサイクルにおける重要なポジションを確保していくことが期待さ
れる。
WEEE の制度化自体は遅れている状況であるが、本事業が現地のパイロット事業と関連性を
有するタイミングの事業となり、大きなステップを踏むことができたといえる。
また、今後の WEEE リサイクルの展開のほか、それに伴う金属リサイクルについては、現
状ではタイでの適正処理がむずかしいことから、アジアでの資源循環と有害物質適正管理
の協業・分業という第 4 段階での目標にも取り組んでいる途上にある。
実際のビジネス展開はこれから具体的な検討が行われていくと思われるが、1 年目事業で
想定していたステップを着実に踏んできていることが成果として考えることができる。
また、訪日研修において秋田県の製錬所を活用した取り組みを紹介したところ、DIW 職員
からはタイにおける電炉ダストの処理に課題があり、日本側の協力(技術の紹介等)にか
かる要望が出されるなど、本事業実施による新たな協力分野の種となる可能性があるテー
マが出てきている。
130
1 年目事業の範囲
第1段階:基礎調査(対象・パートナー選定、ロードマップ作成)
○ 日本(秋田県)の経験等を整理、ターゲットを選定
経験等については本調査において各国視察時等に情報提供
○ 現地(政府、日系進出企業等)のニーズ把握
○ 現地からの視察受入を実施し、秋田県(日本)が有する経験・技術
を研修するするとともに、地域間交流の促進を開始
○ アセアン諸国における産業構成や抱えている問題を整理し、
対象となりうる国・地域を選定して 3R 協力ロードマップを作成
第2段階:3R 協力の具体化と計画(パートナー確定後)
○ 地方政府担当者、企業等がこれまでの取組や課題、今後の計画等に
ついて確認し、協力内容の具体化を行う
○
○
○
○
2 年目事業の範囲
第3段階:具体的な協力の開始
合意した協力内容に基づき調査や、情報共有、技術指導等の実施
必要に応じて中央・地方の計画策定に対する支援
セミナー、専門家派遣、ワークショップ、展示会等の情報交流
優先順位の高い品目・地域については、パイロット事業策定
第4段階:地域間3R協力事業の実施、展開
○ 当国の他地域も含めた協力事業の展開の検討
○ パイロット事業の実施、ビジネスマッチング支援等の展開
○ 将来目標に向けた取組の展開
 アジアにおける金属資源の適正な循環
 アジアにおける有害物質の適正な管理
 アジアでの資源循環と有害物質適正管理の協業・分業
 わが国の金属資源の確保、適正処理
図 5.5-1 地域間 3R 協力フロー
131
3 年目(今年度)事業の範囲
第6章
研究会の運営
6.1 研究会の概要
調査の実施に当たって、自治体間 3R 協力、リサイクル技術、国際資源循環に関する意見
を聞くために、有識者、自治体関係者等による研究会を設置し、国内研究会を2回、訪日
研修期間中のタイ参加者との合同討議(研究会)を 1 回(第 4 章記載)開催している。
研究会委員を以下の表 6.1-1 表 6.1-1 に示す。
表 6.1-1 研究会委員
委員
菅原拓男
秋田大学名誉教授
工学博士
市川博也
国際教養大学
グローバル・ビジネス課程長 教授
小島道一
日本貿易振興機構(ジェトロ)
アジア経済研究所
新領域研究センター
環境・資源研究グループ長
村上進亮
東京大学大学院工学系研究科
システム創成学専攻 准教授
野澤一美
日本アイ・ビー・エム株式会社環境統括担
当部長(日本、アセアン担当)
白鳥寿一
東北大学環境科学研究科教授
三浦泰茂
秋田県産業労働部
課長
資源エネルギー産業
・ 工学資源学部教授として、環境反応工学分野の教育研究に
従事。
・ 秋田県における廃棄物処理・非鉄金属リサイクルの技術、
インフラ等に関する広範な知見を有し、秋田県等での委員
会・審議会での座長経験を有する。
・ 経済政策、政策企画分野でのバックグラウンドを有する。
・ 秋田県における地域経済にかかる知見を有する。
・ 国際機関との調整等にかかる経験を有する。
・ 環境・資源経済学に関するバックグラウンドを有する。
・ アジアにおけるリサイクル、再生資源・廃棄物の施策・制
度等に精通。
・ 経済産業省「アジア3R協力基礎調査」の調査を受託、実
施し、アジアにおける3R推進協力にかかる知見を有する。
・ 資源経済学に関するバックグラウンドを有する。
・ アセアン等における国際資源循環の実態、解析にかかる知
見を有する。
・ 電子機器等のメーカーにおける環境管理担当・統括責任者
として、アセアンに所在するメーカーが有する廃棄物処
理・リサイクルに関する課題、問題点等に精通。
・ アセアンにおける廃棄物処理・リサイクルを行う業者の実
態等について精通。
・ 非鉄金属リサイクル技術、非鉄リサイクル技術、使用済み
機器等の回収システムにかかる知見を有する。
・ 秋田県北部エコタウンを所管し、秋田県のリサイクル関連
の施策等を行う行政担当者。
132
6.2 研究会の概要(国内研究会)
(1)第1回研究会
日時:平成 23 年 9 月 14 日(水)15:30
~
16:30
場所:秋葉原 UDX ビル 22 階会議室 E
議
題
①本年度事業の進め方
②今後のスケジュール
出席者名簿
○研究会
委員長
菅原拓男
秋田大学名誉教授
工学博士
委員(代) 川上伸作
秋田県産業労働部
委
員
白鳥寿一
東北大学環境科学研究科 教授
委
員
野澤一美
日本アイ・ビー・エム株式会社
資源エネルギー産業課
課長
CSR・環境プログラム推進
環境統括担当部長(日本、アセアン担当)
委
員
小島道一
日本貿易振興機構
アジア経済研究所
新領域研究センター
環境・資源研究グループ
主任研究員
○オブザーバー
小沼
直樹 経済産業省 産業技術環境局
リサイクル推進課
係長
○事務局
阪口
幸三 イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社
井上真由美
同
主任研究員
研究員
○本年度事業の進め方、今後のスケジュール

タイの事業は本年度以降も継続する可能性はあるのか。

(経産省としては)3年目の事業であるため、今年が最後である。半年しかないので、
効率的にお願いしたい。

タイの WEEE の話もあるので、関連付けてできればいいと思う。

(本事業について)ビジネス調査の方も焦点を絞らないと進まないだろう。誰のため
に何をするのか、日本企業のために出るのか等、目的をはっきりさせなければならな
い。少しずつ事業の効果は出ており、(現地国関係者との)人間関係はよく構築でき
ているので、もう少しフォーカスしたい。もっと範囲を絞って集中した方がいいので
は。

リサイクルビジネス可能性調査が今年の目玉だと聞いているが、フォーカスするとい
うのであれば、行政同士はうまくいっているように感じているが、リサイクル業者同
士(の関係構築)に行こうとしているが行けずに終わってしまう気がしている。フォ
ーカスの仕方等の見通しをつけてもらいたい。

タイは WEEE の(法制度の)ドラフトが動いていないが、その面で我々が上手く技術協
133
力し、なおかつその中に入り込んでビジネスを作っていく、というように両方(日本
側とタイ側)にとって WinWin の関係を作るのが分かりやすいのでは。彼ら(タイ側)
は WEEE のプロセスを立ち上げたいと思っている。

7 月に EEI (Electrical and Electronics Institute)の人にインタビューをする機会
があったが、その時の話では、リサイクル法の大枠の枠組みは既にドラフトで決まっ
ており、現在は資金を集める部分の法律を作成している。それは家電リサイクルだけ
でなく、下水やその他環境関係の費用徴収をする仕組みをまとめた法律を作ろうとし
ている。財務省が担当しており、まとめ作業をしている。そのため、調査方針1にあ
る(日本の家電リサイクル法の仕組み)は説明してもどうしようもない状況にある。
どちらかというと2、3項目目(家電リサイクル法における管理体制、家電リサイク
ルにおいて求められる技術水準)について(現地側が)どこまで作業ができているか
確認し、状況に応じて情報を(現地国に対して)入れていくのがいいように思う。

その場合、大枠の部分を詰めているメンバーと話をすることになるのでは。対象を絞
って、テクニカルガイドラインを作成するチームが存在する可能性があるので、そこ
と話をする等。調査方針1に関してはそのくらいのことをしたらいいのでは。EEI やチ
ュラロンコン大学の先生が入っている可能性がある。フジゼロックスが絡んでいる可
能性もある。

テーマ2(リサイクルビジネス可能性調査)の(WEEE の)フローの調査はどのくらい
丁寧に行うのか。チョンブリ県(市)に絞って本格的に調査を行うのか。ヒアリング
ベースで調査を実施すると、2003 年に JETRO が実施した調査しか出てこないと思われ
る。それ以降にしっかりした調査を実施したという話は聞いていない。チョンブリ県
に対しての調査を実施するのであれば、もう少し丁寧にやってもいいかと思うが、そ
の余裕があるか。

調査する対象としてパタヤも含めた方が良い。パタヤでは中古 PC マーケットが 2005
年くらいから大きくなっている。大勢のバックパッカーがパタヤを訪れており、外国
からの長期滞在を含めて需要があるらしい。一つのビルのワンフロアに中古 PC 店が並
んでいるような場所もある。

テーマ2については、色んなネットワークができ始めており、ウォンパニのように色々
な動きがある中で、リサイクルビジネスを考えた場合、やはり法制度が重要である。
法制度、或いは CSR がない限りお金を出して(リサイクルを)やろうということには
ならないので、有価で動いているだけの話である。法制度による後押しが一番重要で
あると思う。実態をもう少し皆に分かってもらうということで、例えば(WEEE)がど
のくらい一般廃棄物に混ざっているのか等、実態を見せてもいいのでは。意外と実態
を知らないと思われる。捨てられているものに鉛がどの程度入っているのか分析して
もいいし、カドミウムや水銀でもいい。大学と一緒にしないと厳しいかもしれないが、
そのような値を出して、有害物管理として法制度は必要であるということで WEEE はで
134
きる。それに準じて CSR を担当する人が自社の管理をしっかり行い、そしてビジネス
ができるようになる。有価金属の買取を目的にビジネスを検討してもどうしようもな
い。日本では(有害物管を)何らかの形で行っている。資源回収を強調せず、違う視
点も入れた方が良いのでは。

タイで E-waste 処理施設を探しているが、
E-waste の Dismantle プロセス(成体の解体)
があまり無いように思う。
135
(2)第 2 回研究会
日時:平成 24 年 2 月 16 日(木)
場所:秋葉原 UDX ビル 8 階
議
15:00
~
16:30
ネットカンファレンス会議室 K
題
①
現地調査の報告
②
現地セミナー、視察の報告
③
スタディツアーの報告
④
本事業の成果、取り纏めの方向性
出席者名簿
○研究会
委員長
菅原拓男
秋田大学名誉教授
委
員
市川博也
国際教養大学
委
員
小島道一
日本貿易振興機構
工学博士
グローバル・ビジネス課程長 教授
アジア経済研究所
新領域研究センター
環境・資源研究グループ
委員(代) 川上伸作
秋田県産業経済労働部
資源エネルギー産業課
委
員
白鳥寿一
東北大学環境科学研究科教授
委
員
野澤一美
日本アイ・ビー・エム株式会社
主任研究員
課長
CSR・環境プログラム推進
環境統括担当部長(日本、アセアン担当)
委
員
村上進亮
東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻
准教授
○オブザーバー
小林
雅明 経済産業省 産業技術環境局
リサイクル推進課
課長補佐
小沼
直樹 経済産業省 産業技術環境局
リサイクル推進課
係長
○事務局
阪口
幸三
井上真由美
イー・アンド・イー ソリューションズ株式会社
主任研究員
同
研究員
○現地調査の報告、現地セミナー・視察の報告、スタディツアーの報告

タイの中での E-waste の処理は排出、解体、分別、リサイクル、埋め立てを含めたプ
ロセスを通しでできたので、もう少し継続して行いたいと思っている。他に E-waste
の解体を適切に行い、事業者の委託先について正しく検討できるリサイクラはタイに
いない。明らかに BtoB からの発生量が少ないので、どこかに消えているはず。ここを
見ればもっと回収の数も増えるし全体の流れもしっかりとらまえることが出来る

チョンブリ市のパイロットプロジェクトにおいて、不明確だったのが、チョンブリで
はジャンクショップはなかったのか。状況が良く見えない。零細の業者がいないのか。

(チョンブリ市庁舎等に回収された WEEE は)どの程度の期間で回収されたのか分から
ないと分量感が分からない。回収ボックスは小さいが、抜き取る人はいないのか。
136

(事務局回答)秋田県のように、コミュニティの商店などの人目のつく場所におかれ
ている。

チョンブリ市のようにある程度回収が機能するのであれば、WEEE 回収も見込みがある。

チョンブリの中で回収から解体分別まで完結できているので、それを色々な場所に展
開していければ。

チョンブリ市自体が周辺の自治体とネットワークがあるようで、今後リードしていく
という話もある。

今までは回収するだけでその後はリサイクラに任せているが、チョンブリ市は ESBEC
で適切に処理できており、このような市は他にはない。

本事業でチョンブリ市と交流が始まり、秋田への研修に来ていただいて、その内容を
現地でフィードバックしてという良い流れができた。それに民間の ESBEC も関係する
ことができてきている。制度化が遅れているので地元でできるところから活動してい
る。

WMS はタイ全土に集積所があるので、遠方でも回収は可能である。地方行政が関係する。
法制度については、(WEEE の処理について)手数料を徴収する法案ができていたが、
国民から徴収する部分で財務省管轄の法律を変える必要があり、その法案が政権交代
によって承認されなかった。WEEE については費用を徴収する仕組みを待っていたため、
頓挫している。法制度を押し、法制度ができれば(WEEE リサイクルは)上手くいく。
現状ではボランティア活動になっているが、法制度を押せば、次が見えてくるのでは。
今が良い機会である。

PCD では海外の法制度を勉強されたようで、日本の制度も学びたいという要望があり、
(WEEE 担当者の)Patarapol 氏も研修への参加を希望していた。

DIW から聞いた話だが、日本でやっていることは分かるが、実務としてどのようなこと
をしているのか知りたいという要望があった。その為今回は実務部分を研修に取り入
れている。

スタディツアーの成果について、電炉ダストの処理について補足する。DIW から話があ
ったが、電炉ダストの処理について問題になっており、上の方から電炉ダストの処理
について計画をたてる指示が来ている様子。過去に日本に輸出する計画もあったが、
バーゼルの関係で実現しなかった。今回の研修で、秋田製錬のジンクリサイクルが電
炉ダストをリサイクルする工場を昨年スタートしていることを知り、そのような技術
があればタイで展開してほしいとのこと。もし展開が難しければ日本で処理してほし
いと要望があった。また、タイでの講演の依頼があり、講演できる場合には DIW で鉄
鋼メーカーや高炉メーカー等から人を集めるという話もあった。タイには亜鉛製錬所
があり、酸化鉱を処理しているので、前処理が行われれば亜鉛の回収を行うことがで
きる。何らかの障害で停滞しているか。

基本的には秋田製錬に入る電炉ダストは前処理されており、前処理は行っていない。
137
前処理をしないと受け入れることはできない。ニーズがあるとすれば、鉄鋼関係の先
生に講演に行っていただくことはできる。

日本での手法の話はできる。今回は前処理が問題になっており、不純物を除去する等
しないと日本には持ち込めない。

日本の企業が競っているのであれば、まだ PCD や DIW に接触できていないはずなので、
我々のネットワークを利用していただいて、日本全体としてセミナーをするなど対応
するのは重要である。この情報をつかんでいただき、企業の担当者と話してもよい。

処理費が高くても良いというかもしれないので、国として対応した方が良い。3R事
業で資源循環である。

(CFC の焼却処理について)BPEC は有害廃棄物が扱えないので、扱えるようにできれ
ば、考えられなくはない。しかし、現在の炉では(技術的に)難しいかもしれない。
隣の工場に一日 15 トン程度蒸気を送っていた。現在は買い取ってもらえないため、使
い道がなく、発電機について考えているが、排ガス処理については考えなければなら
ない。(DIW が)承認すれば、専用の炉をつけることはできる。
○本事業の成果、取り纏めの方向性

チョンブリを巻き込むことについては賛成である。チョンブリはタイの中でも力があ
るようで、上手く捕まえてチョンブリ県内でリサイクルを上手く行うのが重要。

今は WEEE については市民から集めたものを処理しているが、もう少し BtoB ベースで
も取り組んでいきたい。今年はそこまで進んでいない。ESBEC については有害廃棄物の
ライセンスがあると、対応しやすくなる。現在では危険廃棄物の処理の問題が出てし
まう。水銀については対応できるようになったが、その他の危険廃棄物も対応できる
ようになれば BtoB の話がやりやすくなる。

報告書として、制度の話については、今取り組む必要があると報告書に書き、提出し
た方がいいのでは。今のままでは回収された WEEE を誰かが持って行ってしまうように
なり、法制度で抑えきれなくなる。意識が向いているうちに法制度を作れば上手く動
くのでは。タイミングとして、国として対応すればよい国になる。

税金以外で手数料を国民から徴収するという部分で財務省管轄の法律を変えなければ
ならない。制度が無い状態で物がどんどん出てくると、タイの日本企業の投資環境が
悪くなるので、日本政府として投資を促進するための助言として伝えてもらえれば。
世界に出れば国際標準で、一定のレベルが求められるので、廃棄物についても適切な
処理を行わないと困るはず。
【全体】

次のステップだが、有る無しを含めて考えた方が良い。いきなり関係が切れると 3 年
間の信頼関係が崩れてしまう。
138

タイの方は今になって積極性が増してきている。繰り返しの交流がこのような結果に
なったと思う。

二本立てという認識で、具体的な話は個別で進め、一方で(日本として)バラバラに
訪問するのがダメなのであれば、大学や学会を招聘機関として利用してもいいのでは。

整理してほしいのは、昨年度は訪日研修については、タイとマレーシア共同で招聘し
たが、どちらが効果的か整理してほしい。

3 年間事業を行ってきて、タイの中を日本の協力で発展させていってほしい。
秋田県
この事業は今年で終わりになり、特に昨年と今年は秋田県とも交流を行っ
てきた。信頼関係を構築することができ、県としては関連団体と連携して
秋田県企業が海外に進出できるように引き続き検討して交流をしていき
たい。国からもご指導、ご支援をお願いしたいとともに、研究会の皆様か
らもご協力をお願いしたい。
経済産業省
本日は色々とご意見を頂いたが、ここまでやってきたので、経産省として
も引き続き関係を維持、発展できるように努力していきたい。
139
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