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WHITE PAPER Hitachi Unified Compute Platform( UCP

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WHITE PAPER Hitachi Unified Compute Platform( UCP
WHITE P APER
Hitachi Unified Compute Platform(UCP)がもたらす
IT 部門の革新と攻めのビジネス価値創造
Sponsored by: 日立製作所
福冨 里志
April 2013
IDC Japan(株)〒 102-0073 東京都千代田区九段北 1-13-5 Tel 03-3556-4761 Fax: 03-3556-4771 www.idcjapan.co.jp
はじめに
多くの企業は「事業収益力の強化」を重要な経営課題として捉えている。事業収益
力強化のためには、「商品開発力/マーケティング力の強化」「一段と多様化が進
む顧客ニーズへの対応」「環境変化へのスピーディな対応」「事業会社間の連携強
化」「企業コストの削減」などに取り組むとしている。
このような経営課題の認識と具体的な取り組みに呼応して、IT 部門の課題意識に関
するユーザー調査では「運用管理の効率化」や「社内ユーザーへのサービス提供迅
速化」といった項目が多くの企業から指摘されている。この結果を見る限り、経営
課題と IT 部門の課題意識は連携がとれている。
しかし、本質的な課題解決に向けたアクションがとられていないケースが多い。そ
の背景として、「企業コストの削減」を企業収益力の強化を図るための具体的な施
策として強力に推し進めてきた点を指摘できよう。2008 年秋のリーマン・ブラザー
ズ破綻に端を発した世界的金融危機や、翌年ユーロ圏で顕在化した債務超過問題、
円高の進行などによって、さまざまな分野で需要が縮小する中、IT 支出についても
企業コストの一つとして削減要求が高まり、IT 部門はやむにやまれぬコスト削減に
取り組んできた。
その結果、サーバーごとに物理的にサイロ化されていたシステムが、仮想化サーバー
上に論理的に仮想マシンとしてサイロ化されたまま構築されている。そのようなアー
キテクチャの延長線上にあるシステムでは、「商品開発力/マーケティング力の強
化」「一段と多様化が進む顧客ニーズへの対応」「環境変化へのスピーディな対応」
「事業会社間の連携強化」といった経営側のニーズを実現できる可能性は低い。
調査概要
本ホワイトペーパーでは、IT 部門が抱える根本的な課題を日々の運用の中で解決し、
経営課題である「事業収益力の強化」に資する IT 基盤を構築する上で、Hitachi
Unified Compute Platform がもたらす効果と価値について、市場動向やユーザー調査の
結果を交えて分析している。
概況
成熟社会におけるビジネスアジェンダ(経営課題)
イギリスの物理学者デニス ガボール(Dennis Gabor)は、成熟社会について「量的拡
大のみを追求する経済成長が終息に向かう中、精神的豊かさや生活の質の向上を重
視する、平和で自由な社会」であるとしている(出典:The Mature Society. A View of the
Future (1972 年))。日本では人口構成比の変化(少子高齢化や都市部と地方の格
差)を伴いながら社会が成熟してきた。
上場企業の決算報告書を見ると「経済のグローバル化(日米中心から日米欧アジア
へのグローバル化)」「世界経済の減速」「国内の少子高齢化」を経営環境の変化
として捉え、次の 5 点すべて、もしくは一部を対処すべき課題であると認識している
企業が多い。特に「事業収益力の強化」に関する課題意識が高い。
 事業収益力の強化
 事業継続計画(BCP)
 コンプライアンス体制の再構築
 持続可能な社会の実現
 キャッシュフローの改善
成熟社会で事業収益力を強化するためには「新たなビジネス価値の創造」「機会損
失の最小化や逸失利益の回避」が重要である。決算報告書の対処すべき課題の記述
を見ると、多くの企業は、次の 9 項目の組み合せによって事業収益力の強化を実現し
たいとしている。
成熟社会で事業収益
力を強化するために
は「新たなビジネス
価値の創造」「機会
損失の最小化や逸失
利益の回避」が重要
 営業力の強化
 商品開発力/マーケティング力の強化
 一段と多様化が進む顧客ニーズへの対応
 環境変化へのスピーディな対応
 事業会社間の連携強化
 ストック型ビジネス(例:メインテナンス事業)への対応強化
 海外事業展開
 人材育成の強化
 企業コストの削減(例:調達方法、生産/物流体制の見直し)
IT 部門が対処すべき根本的な課題
経営課題に対処する上で IT 部門に求められることは何か。当然、「事業収益力の強
化を実現することに資する IT インフラを提供すること」である。つまり、IT インフ
ラの効率的運用、IT 投資効果の最大化、そして経営環境変化への対応である。
事業収益力の強化に資する IT インフラに求められる要件とは何か。以下に 4 つ列記
した。まずは「運用容易性」および「サービスレベルの確保」が重要である。運用
容易性やサービスレベルの確保なくして、実運用に耐えるレベルで変化への即応性
や IT リソースの高効率活用を実現することはできない。
1.
運用容易性
2.
サービスレベルの確保
3.
変化への即応性
4.
IT リソースの高効率活用
2
#202764
運用容易性やサービ
スレベルの確保なく
して、実運用に耐え
るレベルで変化への
即応性や IT リソース
の高効率活用を実現
することはできない
©2013 IDC
また、IT 部門の管理対象となるサーバーは急増しており、今後も増加し続ける。国
内サーバー市場では、管理対象となるサーバーの中心が、物理サーバーから仮想マ
シン(仮想サーバー)へとシフトする。管理対象となるサーバーの数は過去に経験
したことのないレベル にまで増加する。また、増加するのは仮想マシンである
(Figure 1)。2016 年の物理サーバーの出荷台数は、2012 年の 55 万 7,179 台から 1 万
5,044 台減少して、54 万 2,136 台になる見込みである。一方、2016 年の仮想マシンの
出荷台数は、2012 年の 69 万 2,471 台の 2.5 倍に当たる、174 万 9,498 台に増加する見込
みである。
管理対象となるサー
バーの数は過去に経
験したことのないレ
ベルまで増加
世界サーバー市場においても管理対象となるサーバーが急増しており、管理対象が
仮想マシンへとシフトする、といった傾向が顕著である。世界サーバー市場では
2009 年に仮想マシンの出荷台数が物理サーバーの出荷台数(680 万台)を上回った。
仮想マシンの出荷台数は 2010 年に 1,000 万台を超えて、2015 年には 2,000 万台を超え
る見込みである。
FIGURE 1
国内サーバー市場 出荷台数予測、2007 年~2016 年:物理サーバーと
仮想マシン(仮想サーバー)
Notes:
 非仮想化サーバーとは、1 台の物理サーバーを物理分割もしくは論理分割せずに利用してい
るサーバーを表す。
 仮想化サーバーとは、サーバー仮想化技術を利用して、1 台の物理サーバーを複数のサーバ
ーに物理分割もしくは論理分割して利用しているサーバーを表す。
 仮想マシン(仮想サーバー)とは、仮想化サーバー上で物理分割もしくは論理分割された
個々のサーバーを表す。
 2007 年~2011 年までは実績値、2012 年は 2012 年第 3 四半期までの実績値と同年第 4 四半
期の予測値の合計値、2013 年~2016 年は予測値である。
 『2013 年 国内サーバー市場 ユーザー動向調査:サーバー仮想化環境のワークロード(IDC#
J13230105、2013 年 3 月発行)』からの引用。
Source: IDC Japan, March 2013
©2013 IDC
#202764
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Figure 2 は IT 部門が現在取り組んでいる課題についてまとめたものである。優先度が
最も高い課題は「運用管理の効率化」である。ついで「災害対策/事業継続」「IT
スタッフのスキルアップ」「IT 資産の有効利用」「社内ユーザーへのサービス提供
迅速化」の順であった。ユーザー調査の結果を見る限り、経営課題と IT 部門の課題
意識は連携がとれていると言えよう。
しかし、実態としては「課題解決に向けた実質的なアクションはとられていない」
可能性が高い。ユーザー調査の結果を仮想化サーバーの「活用レベル」と「運用管
理レベル」といった観点で指標化して分析すると、IT スタッフのスキルレベルの向
上、運用設計の見直しに十分取り組まず、目に見えるコスト削減を優先して仮想化
サーバーに多くのワークロードを取り込みすぎている可能性が示唆されている。
実態としては「課題
解決に向けた実質的
なアクションはとら
れていない」
FIGURE 2
IT 部門が抱える課題
運用管理の効率化
379
災害対策/事業継続
302
ITスタッフのスキルアップ
267
IT資産の有効利用
237
社内ユーザーへの
サービス提供迅速化
スマートフォン/
タブレットからのアクセス
外部サービスと
社内システムの連携
164
133
129
クライアントの仮想化
128
IT機器消費電力の削減
125
システムインベントリー管理の
簡素化/効率化
104
海外事業への対応
59
その他
43
0
100
200
300
(評価ポイント)
400
Notes:
 ユーザー調査は 2013 年 2 月に実施した。有効回答数は 434 である。
 評価ポイントは、課題の優先順位によって重み付けして算出した。具体的には、1 番目を 3
ポイント、2 番目を 2 ポイント、3 番目を 1 ポイントとして計算した。なお、テーブルは評
価ポイントが高い順に並べた。
 『2013 年 国内サーバー市場 ユーザー動向調査:サーバー仮想化環境のワークロード(IDC
#J13230105、2013 年 3 月発行)』からの引用。
Source: IDC Japan, March 2013
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©2013 IDC
Figure 3 は、個々の回答者について x86 仮想化サーバーの活用レベルを 10 ポイントで
相対的に評価してプロットしたものである。縦軸は回答比率の累計を、横軸は活用
レベルまたは運用管理レベルの評価値を表す。活用レベルはユーザー調査で得られ
た「x86 仮想化サーバー導入台数」「x86 サーバー仮想化率」「x86 仮想化サーバー上
で運用しているワークロードの種類」「x86 サーバー上のワークロードのうち、x86
仮想化サーバー上で運用しているワークロードの比率」に対する回答を基に評価し
た。同様に運用管理レベルは「IT スタッフのスキルレベル」「IT プロセス/ポリシ
ーの標準化および統合の状況」「サーバー仮想化環境の運用管理状況」に対応する
回答を基に評価した。なお、グラフ上の交点は、活用レベルまたは運用管理レベル
が平均以上の企業の占める割合を示す。
仮想化の活用レベルが平均よりも高いことを示す 5 ポイント以上の企業が約 60%存
在するのに対して、運用管理レベルが 5 ポイント以上であるサンプルは約 10%しか
存在しない。IT スタッフのスキルレベル向上や運用設計の見直しなどに取り組まず、
x86 仮想化サーバーに多くのワークロードを取り込みすぎているユーザー企業が半数
以上存在することが示唆される。つまり、仮想化サーバーの活用は進んでいるが、
仮想化サーバーの活
用は進んでいるが、
その運用管理は同レベルまで進んでいないという事実がある。
その運用管理は同レ
ベルまで進んでいな
「IT スタッフのスキルレベル向上」「IT プロセス/ポリシーの標準化および統合」、 いという事実
そして IT スタッフの役割分担を含む運用管理設計の見直しこそが、「事業収益力の
強化に資する IT インフラに求められる要件」を満たす上での必要条件であるにもか
かわらず、直接的なコスト削減効果を評価しにくいことから、課題として認識され
ているが対処がなされない、対処できないままになっている可能性が高い。
©2013 IDC
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FIGURE 3
x86 仮想化サーバーの活用レベルと運用管理レベルの乖離
90%
90%
80%
80%
70%
70%
回答比率累計
100%
回答比率累計
100%
60%
50%
60%
50%
40%
40%
30%
30%
20%
20%
10%
10%
0%
0%
0
1
2
3
4
5
6
7
活用レベル評価値(ポイント)
8
9
10
0
1
2
3
4
5
6
7
8
運用管理レベル評価値(ポイント)
9
n = 339
Notes:
 活用レベルは「x86 仮想化サーバー導入台数」「x86 サーバー仮想化率」「x86 仮想化サー
バー上で運用しているワークロードの種類」「x86 サーバー上のワークロードのうち、x86
サーバー上で運用しているワークロードの比率」に対する回答を基に評価した。
 運用レベルは「IT スタッフのスキルレベル」「IT プロセス/ポリシーの標準化および統合の
状況」「サーバー仮想化環境の運用管理状況」に対する回答を基に評価した。
 ユーザー調査は 2013 年 2 月に実施した。採用した関連質問のいずれかで「分からない」と
した回答を除外して集計した。
 『2013 年 国内サーバー市場 ユーザー動向調査:サーバー仮想化環境のワークロード(IDC
#J13230105、2013 年 3 月発行)』からの引用。
Source: IDC Japan, March 2013
「やむにやまれぬコスト削減」から「攻めのビジネス価値創
造」へ
前項では、経営課題である「事業収益力の強化」について、その実現に資するシス
テム基盤の要件、IT 部門の課題意識と実際に行っている対応の乖離といった点につ
いて考察した。IT 部門の課題意識は経営課題と呼応しており整合性があるものの、
本質的な課題解決に向けたアクションはとられていない。
その背景として、「企業コストの削減」を企業収益力の強化を図るための具体的な
施策として強力に推し進めてきた点を指摘できよう。2008 年秋のリーマン・ブラザ
ーズ破綻に端を発した世界的金融危機、翌年ユーロ圏で顕在化した債務超過問題と
円高の進行などによって、さまざまな分野で需要が縮小する中、IT 支出についても
企業コストの一つとして削減要求が高まり、やむにやまれぬコスト削減に IT 部門は
励まざるを得なかった。
6
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©2013 IDC
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その結果、サーバーごとに物理的にサイロ化されていたシステムが、仮想化サーバ
ー上に論理的に仮想マシンとしてサイロ化されたまま構築されている。そのような
アーキテクチャの延長線上にあるシステムでは、「新たなビジネス価値の創造」
「機会損失の最小化や逸失利益の回避」を実現できる可能性は低い。
IT 基盤のアーキテクチャの見直しと、新しいアーキテクチャに基づく運用設計、そ
れに伴う IT スタッフの役割分担と果たすべき役割の見直しなくして、事業収益力の
強化は実現されない。なぜなら、事業収益力の強化のための施策 9 項目のうち、下記
の 6 項目は IT の支援なくして達成するのは不可能に近いからである。
 営業力の強化
 商品開発力/マーケティング力の強化
IT 基盤のアーキテク
チャの見直しと、新
しいアーキテクチャ
に基づく運用設計、
それに伴う IT スタッ
フの役割分担と果た
すべき役割の見直し
なくして、事業収益
力の強化は実現され
ない
 一段と多様化が進む顧客ニーズへの対応
 環境変化へのスピーディな対応
 事業会社間の連携強化
 海外事業展開
統合型プラットフォームが根本的な課題解決のトリガーに
2012 年は、主要サーバーベンダーから統合型プラットフォームの発表が相次いだ。
統合型プラットフォームは、サーバー、ストレージ、ネットワークといった IT 機器
を統合した製品と、さらにデータベースやビジネスアナリティクスなどといった固
有のワークロードを効率的かつ高速に実行できるように最適化した製品の 2 種類に大
別される。
サーバー、ストレージ、ネットワークなどを統合した製品は、企業の共通 IT 基盤向
けプラットフォームとしての導入が期待されている。統合型プラットフォームの採
用は、一般的に次のメリットがあるとされている。
 導入容易性:サーバー、ストレージ、ネットワーク機器、ミドルウェアなどの
組み合せが事前検証されているので導入ケースごとに動作検証を行う必要がな
い。さらに、パッケージ化されているため調達時に細かい構成チェックを行う
必要がない。
 導入工程の短縮:導入容易性とも関連するが、事前に動作検証されているので、
構成やサイジングに要していた導入工程は短縮される。
 システムの安定稼働:従来、システムの構成要素ごとに提供されてきたパッチ
などは、システムとしての整合性を保った形で提供されるので、初期導入時に
限らず、運用フェーズにおいてもシステムの安定稼働が統合型プラットフォー
ムの提供側によって担保される。
 ワンストップサービス:運用フェーズにおいて、システムの不具合や障害に対
するサポート窓口が一元化される。
しかし、企業の共通 IT 基盤として統合型プラットフォームを導入する重要なメリッ
トは、これまで IT 部門がおざなりにしてきた根本的な課題への取り組みを加速する
トリガーになることにあると IDC では捉えている。つまり、統合型プラットフォー
ムの導入が、IT 基盤のアーキテクチャの見直しと、新しいアーキテクチャに基づく
©2013 IDC
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統合型プラットフォ
ームを導入すること
の重要なメリット
は、これまで IT 部門
がおざなりにしてき
た根本的な課題への
取り組みを加速する
トリガーになること
7
運用設計、それに伴う IT スタッフの役割分担と果たすべき役割の見直しにつながり
得る、ということである。
Figure 4 はサーバー仮想化利用形態の成熟度をまとめたものである。「試験的導入」
から「クラウド化」までの 4 段階がある。それぞれの段階から次の段階へと進む上で
最もハードルが高いのは、「統合/集約」段階から「標準化」の段階である。なぜ
ならば、財務面での効果が見えにくくなるからである。
統合/集約段階では、物理的にハードウェアの数が減少するので非常に分かりやす
い。標準化段階では「TCO 削減」や「事業継続の確保」といった効果が期待される。
これらの効果を実感するためには、適正な TCO 評価の実施と、事業継続の確保によ
って得られる経済的価値を評価する手法を導入している必要がある。しかし、TCO
評価を適正に実施し、事業継続価値の評価を合理的に実施している企業は必ずしも
多くはないと考えられる。これは、もはや IT 部門だけの問題ではない。
また、IT プロセス/ポリシーの統合や標準化についてもあまり進んでいない。それ
自体が直接的に目に見えるコスト削減を実現するわけではない。適正な TCO 評価が
根付いていないことが背景にあると考えられる。さらに、テクノロジー/ツール面
では、構成管理データベースの実装は極めて重要である。にもかかわらず、手作業
で構成情報をとりまとめ、それが結果として IT スタッフの重要なタスクになってい
るケースも少なくない。
統合型プラットフォームの導入メリットとして、先に列挙した「導入容易性」「導
入工程の短縮」「システムの安定稼働」「ワンストップサービス」は理解できるも
のの、初期導入コストが大きすぎて採用できない、といった判断を下す企業が多い
という。
しかし、IT 部門内に閉じた議論でこのように判断するのではなく、事業部門、経理
/財務部門を含む全社的な観点から、成熟市場における競争に打ち勝っていくため
には、自社 IT 基盤がどうあるべきか、IT スタッフが果たすべき役割は何なのか、本
質的な議論が不可欠であろう。
成熟市場における競
争に打ち勝っていく
ためには、自社 IT 基
盤がどうあるべき
か、IT スタッフが果
たすべき役割は何な
また、このような全社的議論のトリガーとして、さらには IT 部門が抱える根本的な
のか、本質的な議論
課題解決に向けたトリガーとして、統合型プラットフォームの採用を検討すること、 が不可欠
その結果、実際に導入に踏み切ることが真の「事業収益力の強化」に貢献すると
IDC では考えている。
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#202764
©2013 IDC
FIGURE 4
サーバー仮想化利用形態の成熟度
(低)
仮想化利用形態の成熟度(Virtualization Maturity)
試験的導入
統合/集約
標準化
(高)
クラウド化
スタッフスキル
•専門知識未習得
•経験による専門知識習得
•専門トレーニング
•専門トレーニングによる知 •専門的資格取得が好ましい
識の部分的補完
といったレベル
テクノロジー/
ツール
•簡易な静的
パーティショニング
•簡易な仮想マシンの
モビリティ
•アプリケーションの組み合
せによるピーク処理要求の
平準化(自動化なし)
•財務内容に影響を与え
るほどのコスト削減効
果はない
•ハードウェアコスト削減効 •TCO削減効果
果
•事業継続の確保
•電力コスト/設置スペース
コスト削減効果
ITプロセス/
ポリシー
•属人的
•特定的
•限定的
•部分的統合
•すべて統合
•部分的標準化
•すべて標準化
ユーザー部門
•不可視
•可視化
•透明化
•ガバナンスプロセスへの関与
財務
アプリケーション •テスト/開発環境
•専門的資格取得必須
•ポータブルアプリケーション •ポリシーベースの自動化
•ITサービスマネージメント
•自動フェイルオーバー
•ライフサイクルマネージメント
•構成管理データベース
•セルフサービスデリバリー
(CMDB)の実装
•コストの変動費化
(固定費からの脱却)
•チャージバックモデルの確立
•本番環境
•本番環境
•本番環境
•ミッションクリティカルは •ミッションクリティカル対象 •サービスプロファイルおよび
対象外
カタログ化
Note: 『2013 年 国内サーバー市場 ユーザー動向調査:サーバー仮想化環境のワークロード
(IDC #J13230105、2013 年 3 月発行)』からの引用。
Source: IDC Japan, March 2013
©2013 IDC
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Hitachi Unified Compute Platform の提供価値
Hitachi Unified Compute Platform とは
日立製作所は 2012 年 10 月 22 日に日立統合プラットフォーム「Hitachi Unified Compute
Platform(UCP)」を同年 12 月 25 日から出荷開始すると発表した。
UCP は、クラウド運用の経験に基づく統合管理機能と、実績のある高信頼ハードウ
ェア/ソフトウェアを組み合わせ、検証済み構成として提供するものである。変化
し続ける事業環境において迅速な業務構築/変革と、自動化/自立化による運用コ
ストの削減を両立し、攻めの IT 戦略を可能にするプラットフォームであると、日立
製作所は位置付けている。
JP1、Cosminexus によって培われた統合運用管理、BladeSymphony によるハードウェア
コンソリデーション、ハードウェアおよびソフトウェアの統合保守のプラクティス、
さらには Hitachi Storage Solutions によるストレージ仮想化などといった大規模データ
センターにおいて実績のある高信頼で、かつ評価/検証済みのノウハウを統合した
製品である。具体的には、次の 2 つのモデルを提供している(Figure 5)。
 PaaS 基盤モデル(UCP with OpenMiddleware):クラウド環境を構築する企業
向けにミドルウェアを含めた実行環境を提供するものである。日立製作所が培
った運用手順のノウハウをテンプレート化して提供することで、運用容易性と
サービスレベルの確保を高レベルで実現している。
 IaaS 基盤モデル(UCP Pro for VMware vSphere):プラットフォームを効率的に
運用したい企業向けに高信頼な仮想化環境を提供するものである。統合プラッ
トフォームオーケストレーション機能(UCP Director)によって、VMware 管理者
にとって使い慣れた vCenter からのシームレスなハードウェア(サーバー、スト
レージ、ネットワーク)の管理を実現している(Figure 6)。UCP Director 適用に
よる VM(Virtual Machine)デプロイメント時間短縮の適用例を Figure 7 に示す。
10
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©2013 IDC
FIGURE 5
Hitachi Unified Compute Platform の構成要素
アプリケーション
ア
プ
リ
層
運用サービス
PaaS基盤モデル
UCP with OpenMiddleware
JP1システム監視サービス
ミドルウェア活用サービス
1万5000社を超える企業で
採用実績のあるJP1を採用
ミドルウェア
ミ
ド
ル
層
JP1、Cosminexus、HiRDB
IaaS基盤モデル
システム管理ソフトウェア
UCP Pro for VMware vSphere
UCP Director
イ
ン
フ
ラ
層
VMware管理体系との
親和性を考慮し、
vCenter上で統合管理
仮想化
VMware
サーバ ネットワーク ストレージ
Source: 日立製作所, April 2013
FIGURE 6
VM 管理画面からのシームレスなハードウェア管理を実現する UCP
Director
個々のツールを利用する複数管理者が連携する管理形態から、
ひとつのツールを利用した単一管理者の管理形態へ
(運用管理作業スピード向上、運用コスト削減)
従来の管理形態
UCPでの管理形態
ITリソース管理者
ITリソース管理者
vCenter画面
統合プラットフォームオーケストレーション機能
サーバ管理
サーバ管理
ストレージ管理
ネットワーク
管理
サーバ
ストレージ
ネットワーク
ストレージ管理
ネットワーク管理
ストレージ
LAN
SAN
サーバ
Hitachi Unified Compute Platform
分断された個別管理
一元管理
Source: 日立製作所, April 2013
©2013 IDC
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FIGURE 7
IaaS 基盤モデル UCP Director による VM デプロイメント時間の短縮
Source: 日立製作所, April 2013
UCP の提供価値
日立製作所は「IT 活用の目的がデータを活用した新たな価値創造へと変化」すべき
段階にあると捉えているという。
これまで、業務部門の目標である「システム化推進」「業務拡大と効率化」「グル
ープ統廃合や M&A による業務の集約」を達成するために、先進的で高速/高信頼の
システムを構築することが優先されてきた。一方で、コスト低減のために仮想化や
基盤統合が繰り返されてきた。その結果、仮想化環境上でシステムのサイロ化が進
んで硬直化するばかりか、サービスレベルの低下リスク、構成管理の複雑化や問題
発生時の原因究明対象の複雑化などの運用スタッフの負荷、運用コストが増加し続
けるといった状況に陥った。
仮想化環境上でシス
テムのサイロ化が進
んで硬直化するばか
りか、サービスレベ
ルの低下リスクや構
成管理の複雑化、問
題発生時の原因究明
対象の複雑化など運
用スタッフの負荷や
運用コストが増加し
続けるといった状況
昨今、業務部門の目標は「新商品や新業務のスピード立ち上げ」「サービスとの連
携」「新分野への挑戦」へとすでにシフトしつつある。当然、CIO は適正な IT コス
ト管理の下で品質や生産性の高い IT システムの構築を目指し、またデータ利用によ
る価値創造に期待することになる。IT 部門は、クラウドの活用によるスピード開発、 クラウドの活用によ
るスピード開発、サ
サービスの連携による新ビジネスの創出といったゴールの達成を求められている。
ービスの連携による
これは先に議論した「サーバー仮想化利用形態の成熟度」における統合/集約段階
から標準化段階、そしてクラウド化段階へのシフトに相当する。しかし、すでに考
察した通り、統合/集約段階から標準化段階やクラウド化段階へ移る際のハードル
は極めて高い。
新ビジネスの創出と
いったゴールの達成
このハードルを越えるためには、次のステップを踏む必要がある。
1.
運用管理手順の整理/見える化
2.
運用管理手順の標準化と自動化
3.
状況分析/システム資産の整理
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©2013 IDC
「1. 運用管理手順の整理/見える化」および「2. 運用管理手順の標準化と自動化」は
日々の運用における改善に当たり、「3. 状況分析/システム資産の整理」はアプリケ
ーションライフサイクルにおける改善である。
PaaS 基盤モデル(UCP with OpenMiddleware)は、仮想化環境上のサイロ化したシステ
ムを日々の運用で使いながら整理/適正化して、運用しやすく改善し、運用コスト
を低減する手段を提供している。サイロ化したシステムの初期構築(Plan)から定常
運用(Do)、監視運用(Check)、更改(Action)といったサイクルを繰り返すこと
で、運用容易性を実現し、サービスレベルの確保を実現する(Figure 8)。
UCP には、この PDCA サイクルをスピードアップして、企業が UCP の導入効果を早
い段階で享受できるようにするノウハウが統合されている。具体的には、仮想化運
用の統合、構築テンプレート活用によるサービスイン時間の短縮や、JP1 の豊富なノ
ウハウを生かした自動運用支援による運用容易性の実現とサービスレベルの確保で
ある。
UCP の提供価値は、仮想化環境上でサイロ化され運用管理が複雑化してしまったイ
ンフラを「動かしながら整理/最適化」していくことで、サイロ化の問題を解決し、
業務変化のスピードに追随できるシステム基盤へのシフトを促す点にある。UCP に
よって、IT 活用の目的は、データを活用した新たな価値創造へと進化する。
仮想化環境上でサイ
ロ化され運用管理が
複雑化してしまった
インフラを「動かし
ながら整理/最適
化」していくこと
で、サイロ化問題を
解決し、業務変化の
スピードに追随でき
るシステム基盤へと
シフト
FIGURE 8
UCP がアプリケーションライフサイクルの中で課題を解決
Source: 日立製作所, April 2013
©2013 IDC
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市場機会と課題
市場機会
プライベートクラウドは IT の効率化と、迅速性/柔軟性/運用性の向上をもたらす
ことから、企業の経営戦略を支える重要な基盤となりつつある。IDC では、国内プラ
イベートクラウド市場における 2011 年~2016 年の年間平均成長率が 37.6%になると
みている。2016 年の国内プライベートクラウド市場の規模は、2011 年の 4.9 倍に当た
る 1 兆 1,132 億円になると予測している(Figure 9)。
また、国内パブリッククラウドサービス市場も 2016 年に向けて高成長を維持する。
2016 年の市場規模は、2011 年の 4.7 倍に当たる 3,027 億円に成長する見込みである。
中でも高い成長が見込まれるのはクラウドプラットフォーム( PaaS:Platform as a
Service)である。
IaaS 基盤モデルである UCP Pro for VMware vSphere、および PaaS 基盤モデルである
UCP with OpenMiddleware は、高成長が見込まれる国内プライベートクラウド市場や
国内パブリッククラウドサービス市場において、運用容易性が高く、サービスレベ
ルの確保に貢献する高信頼なシステム基盤を提供する製品である。
UCP は、重要な経営課題である「事業収益力の強化」に貢献し、IT 部門に革新をも
たらす統合型プラットフォームとして、有力な選択肢になると IDC はみている。特
に、「UCP は、仮想化環境上のサイロ化したシステムを日々の運用で使いながら整
理/適正化して、運用しやすく改善し、運用コストを低減する」といったアプロー
チは導入企業に大きなメリットをもたらすと考えている。
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#202764
「UCP は、仮想化環
境上のサイロ化した
システムを日々の運
用で使いながら整理
/適正化して、運用
しやすく改善し、運
用コストを低減す
る」といったアプロ
ーチは導入企業に大
きなメリット
©2013 IDC
FIGURE 9
国内クラウド市場の成長性と市場機会
国内プライベートクラウド市場 配備モデル別 支出額予測
2011年~2016年
国内パブリッククラウド市場 配備モデル別 支出額予測
2011年~2016年
Notes:
 オンプレミスプライベートクラウドサービス:IT(リソース)資産はユーザー企業が所有し、
占有利用する。
 デディケイテッドプライベートクラウドサービス:IT(リソース)資産は事業者が所有し、
個別企業/企業グループ内で占有利用する。
 コミュニティクラウドサービス:IT(リソース)資産は事業者が所有し、コミュニティ(メ
ンバーシップ制)に属する複数の企業/企業グループに対してサービスを提供する。業界特
化型クラウドまたは共同センター型クラウドとして提供されることが多い。
 『国内プライベートクラウド市場 2011 年の実績と 2012 年~2016 年の予測(IDC
#J12280104、2012 年 9 月発行)』『国内パブリッククラウドサービス市場 2011 年の実績
と 2012 年~2016 年の予測(IDC #J12280102、2012 年 4 月発行)』からの引用。
Source: IDC Japan 2012
課題
統合型プラットフォームの導入をためらう企業は、ベンダーロックインに対する懸
念を挙げるケースが多い。また、初期導入コストが高く投資に踏み切りにくいとい
ったことや自社 IT スタッフのスキルレベルが十分ではないといった懸念もある。
仮に統合型プラットフォームの導入によってベンダーロックインに陥るとしても、
それが将来の IT 支出にどの程度、どのように影響するのか、逆に、従来型のシステ
ム導入形態を踏襲した場合と統合型プラットフォームを採用した場合、コストはど
れだけ異なるのか、などといった点について、客観的な評価ができていないものと
考えられる。人的リソースをも含めた TCO 評価を国内においても根付かせる必要が
ある。
国内の企業において TCO 評価を根付かせる、統合型プラットフォームの真の提供価
値について理解を深めてもらう、といったことが、統合型プラットフォームを提供
している、すべての IT ベンダーに共通する課題である。
TCO 評価が根付いていないことに起因して、統合型プラットフォームの提案では初
期提案から導入決定までのプロセスに時間がかかる。日立製作所固有の課題として
©2013 IDC
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は、UCP の提案活動を効率的に、迅速に進めることで、先行した IT ベンダーの提案
活動にキャッチアップする必要がある。
結論
IT 基盤のアーキテクチャの見直しと、新しいアーキテクチャに基づく運用設計、そ
れに伴う IT スタッフの役割分担と果たすべき役割の見直しなくして、多くの企業が
掲げる経営課題である「事業収益力の強化」は実現されない。
成熟市場における競争に打ち勝っていくためには、事業部門、経理/財務部門を含
む全社的な視点から、自社 IT 基盤がどうあるべきか、IT スタッフが果たすべき役割
は何なのか、といった本質的な議論が不可欠である。
このような全社的議論のトリガーとして、さらには IT 部門が抱える根本的な課題解
決に向けて、統合型プラットフォームの採用を検討すること、その結果、実際に導
入することが真の「事業収益力の強化」につながると IDC では考えている。また、
統合型プラットフォームの採用は、IT 部門に次の 5 つの領域において革新をもたら
すとみている。
 コスト評価手法:TCO、機会損失、事業継続価値の評価手法が導入される。そ
の結果、IT 投資のみならず、新規投資に対する客観的な評価が可能になる。
 意思決定:IT システムの柔軟性が増し、事業計画に基づいた新規システムの導
入や撤去にかかる時間が短縮されコストも下がるので、経済環境などビジネス
を取り巻く環境の変化に即応したビジネス上の意思決定を行いやすくなる。
 IT 部門の活性化と IT スタッフのモチベーション:必ずしも付加価値が高いとは
言えないルーティンワークから解放され、IT 部門や IT スタッフのビジネスへの
貢献度が明確になる。
 IT コスト配賦モデル:将来的にクラウド化段階への道筋が描けるようになり、
IT コストをサービス利用量ベースで利用部門に配賦することが可能になる。
 ユーザー部門との関係性:ユーザー部門へのコスト配賦プロセスの透明化やガ
バナンスプロセスへの関与によって、IT 部門とユーザー部門の関係性が密にな
る。IT スタッフのスキルが伴えば、IT 部門が新たなビジネス価値創造に貢献す
る道筋が開ける。
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