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分析法による高感度放射性炭素年代測定の現状と展望

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分析法による高感度放射性炭素年代測定の現状と展望
加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る高 感度 放射 性 炭 素 年代 測定 の現 状 と展 望
中村
俊夫
名古 屋 大 学 年 代 測定 資料 研 究 セ ンタ ー
1. は じめ に
考 古 学 で は ,人 類 の 出現 か ら文 明 の形 成 を経 て 今 日に至 る歴 史 が ,そ の周 囲 の様 々な事
象 と共 に ,時 間 の流 れ の な か で , どの よ うに発 展 して きたか を調 べ る こ とが 研 究 対 象 の一
つ とな って い る .従 って ,過 去 の事 象 の年代 軸 を正 確 に設 定 す るた め に年代 測定 が不 可 欠
で あ る.
自然 科 学 的手 法 に基 づ いた さま ざまな年 代 測定 ・年 代 推 定 の方 法 ,そ の方 法 に適 用 され
る考 古 学 的 な資 ・試料 お よ び適 用 され る年 代 範 囲 を表 1に示 す .
この様 な様 々 な年 代 測定 法 の なか で ,1
9
5
0年 代 か ら利 用 され始 め た放 射 性 炭 素
(
14C) 年
代 測 定 法 の 出現 は , と りわ け セ ンセー シ ョナ ルな もので あ った と され て い る .例 え ば , 日
本 で も, また世 界 的 に も新 石 器 時 代 の長 さは ,従 来 推 測 され て い た長 さの ほ ぼ 2倍 で あ る
こ とが 14C
年 代 測定 の結 果 か ら明 らか にな り,多 くの考 古学 者 を 当惑 させ た ト 2).従 来 よ り,
考 古学 で は ,遺 跡 か ら発 掘 され る土器 の形式 や文 様 を分 類 して極 め て詳 細 な土 器 編 年 表 が
作 られ て い る. しか し, この ま まで は編 年表 に年 代 値 が入 らな い . また ,土 器 に よ る時 代
区分 は , ご く限 られ た地 域 で しか適 用 で きな い .た とえ 日本 全 土 で適 用 で きた と して も,
諸 外 国 の遺 跡 との年 代 比 較 に は使 え な い . 14C年 代 測定 法 な どに よ り,土器 編 年 表 に正 確 な
年 代 値 が刻 まれ て 始 め て ,諸 外 国 との年 代比 較 が 可 能 とな った の で あ る .
炭 素 は ,生 物 遺 体 を始 め様 々な考 古学 的 資 ・試 料 に含 まれ て い る.従 って , 14C年 代 測定
法 は表 1に挙 げ た種 々 の年 代 測定 法 の中 で も,考 古 学 的 な資 ・試 料 の年 代 測 定 に特 に一 般
的 に適 用 され る方 法 で あ る.
14C年 代 測 定 法 は ,約 4
0年 の歴 史
の 40
年 の歴 史 を持 つ放 射 能 測 定
を持 ち ,今 や考 古学 な どの研 究 に深 く浸 透 して い る . こ
(
・
14Cの朋 壕 で 放 出 され る β 線 を検 出 し, 14C濃 度 を知 る方
5
年
演 ) に よ る 14C年 代 測定 法 に対 し,加速 器 技 術 を取 り入 れ た 新 しい 14C年 代 測 定 法 が約 1
前 に開 発 され ,現 在 全 世 界 で 活躍 して い る.名 古屋 大学 で も, この測定 法 に基 づ くタ ンデ
9
8
0
-19
81
年 度 に導 入 され ,活 発 に利 用 され て い る3 7'
トロ ン加速 器 質 量 分 析 計 が 1
こ こで は ,加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る年 代 測 定 法 を概観 し,現 在 まで に得 られ た研 究 成 果
を紹 介 す る .
2.加 速 器 質量 分 析 法 に よ る 1
4
C
年 代 河定 の発 展
2. 1。 加 速 器 質 量 分 析 法 の特 孜
加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る極 微量 元素 測 定 の方法 は , ア メ リカ合 衆 国 とカナ ダを舞 台 に し
97
6
年 か ら1
97
7
年 にか けて開 発 が始 め られ た が ,1
98
0
年 台 に は早 く も実 用 の段 階 に入
て ,1
-2
5
2-
表 1. 考 古 学 資 ・試 料 の年 代 測 定 (推 定 ) 法
測 定 法 ・推 定 法
適 用 試料
適 用 年 代 (年 )
カ リウ ム ー ア ル ゴ ン法
溶 岩 ・火 砕 流 堆 積 物
104- 5Ⅹ1
09
フ ィ ッ シ ョ ン トラ ック法
火 山 灰 ・溶 岩 ・ガ ラ ス ・
105- 3xlO9
[理 化 学 的 方 法 ]
火砕 流堆積物
放 射性炭素法
生物遺体
0- 6Ⅹ104
ウ ラ ン ー ト リ ウ ム法
化 石 骨 ・サ ン ゴ
104- 3xlO5
熱 ル ミネ ッセ ン ス法
火 山 灰 ・員 化 石 ・土 器
103- 3xlO5
電 子 ス ピ ン共 鳴 法
鍾 乳 石 ・火 山 灰 ・化 石 骨
103- 3xlO6
ラ セ ミ化 法
化 石 骨 ・微 化 石 ・員 化 石
103- 5Ⅹ106
黒 曜石水和法
黒 曜 石 ・ガ ラ ス
103- 3xlO4
[化 学 変 化 を利 用 す る方 法 ]
[設 定 され た 標 準 との 比 較 に よ る方 法 ]
古地磁気法
炉 ・土 器 ・溶 岩 ・堆 積 物
火 山灰層位 法
火山灰
年 輪年 代法
木材
0- 104
った . 約 15年 経 過 した 今 日で は ,様 々 な 研 究 分 野 で 多 大 の成 果 を 挙 げ ,不 可 欠 な技 術 と な
って い る .加 速 器 質 量 分 析 法 は ,感 度 が 高 く,か つ バ ッ ク グ ラ ウ ン ドが 極 め て 低 い とい う
特 徴 を 持 つ . こ の 分 析 法 は , 従 来 ,放 射 能 測 定 に よ り数 日か ら数 十 日 と い う長 い時 間 を か
け て 定 量 され て い た天 然 の 長 寿 命 放 射 性 核 種 な ど に つ い て ,必 要 な 試 料 の量 を 千 分 の- 以
下 と少 な く し, 測 定 時 間 を 数 時 間 程 度 に 短 縮 し, さ らに検 出 可 能 な 低 濃 度 の 限 界 を 大 幅 に
更 新 す る こ と に よ り,新 た な 応 用 研 究 の 分 野 を切 り開 い て い る2 9) (
表 2) .
加 速 器 質 量 分 析 法 で は ,加 速 器 (通 常 タ ンデ ム加 速 器 が 用 い られ る) ,質 量 分 析 計 , そ
して 垂 イ オ ン検 出 器 が 組 み 合 わ せ て 用 い られ る .核 物 理 実 験 な ど に用 い られ る垂 イ オ ン加
速 器 の 技 術 を駆 使 して , イ オ ン源 で 試 料 を原 子 ご と に バ ラバ ラに 分 割 して 負 イ オ ンの状 態
に変 え , そ れ を 高 エ ネ ル ギ ー に加 速 し, エ ネ ル ギ ー 分 析 ・質 量 分 析 を行 った あ と ,最 終 的
に重 イ オ ン粒 子 検 出 器 を用 い て 目的 の 核 種 の イ オ ンを 1個 1個 直 接 数 え る方 法 で あ る .
通 常 の質 量 分 析 計 で は , 目 的 とす る核 種 の イ オ ン と同 じ質 量 数 を 持 つ 同 重 体 イ オ ンや 分
子 イ オ ンの 識 別 は 不 可 能 で あ る .加 速 器 質 量 分 析 計 で は ,以 下 の 3点 の 工 夫 を 凝 らす こ と
に よ り, そ の識 別 が 可 能 と な る .
(1) 負 イ オ ンを 形 成 し難 い 性 質 を利 用 して 同 重 体 を排 除 す る (例 え ば , 14C測 定 の際 の
14N) .
-25
3-
表 2.加速器質 量分析 法 で測定 対象 とな る天 然放射性 核種 とその応用
核種
3
H
7
Be
1
0
Be
半減期
生成機 構
12.26年
応用
1
4N(
∩,t
)12
C.
地下水 の年齢 と流動追 跡 ,
N,0の破砕反応
トレーサ ー と して医学 利用
53.3日
N,
0の破 砕反応
成層 圏 -対流 圏大気 の混 合
1.5xlO6年
N,
0の破 砕反応
海洋堆積 物 や氷床 の年 代測定 ,
岩石表面 照射年代 測定 ,
宇宙線強 度変動 ,地球 磁場 強度 変動 ,
太陽活動 の変動 ,火山帯 のマ グマの起 源
1
4C
5730年
各種年代 測定 ,隅石 の落下年代 測定 ,
1
4N(
∩,p)1
4C
トレーサ ー と して環境 中 の炭素 循環 の解析
や医学利 用
2
6A1
Fe,
Arの破砕反 応 , 岩石表面 照射年 代測定 ,
年
7.1
Ⅹ105
トレーサ ー と して医学 利用
Al
,Siとの核反 応
32
si
1
01-172
年
Arの破砕反応
3
6cl
3.OxlO5
年
35cl(
n,γ)3
6cl
,
隅石 の落 下年代 ,地下水 の年齢 ,
3
6Ar(
n,p)3
6cl
.
岩 石表面 照射年代 測定 ,太陽活動 の変動 ,
地下水 の年齢
Arの破 砕反応
41
ca
1
.OxlO5
年
トレーサ ー と して大気循 環 の解 析
40ca(
∩.γ)41ca
骨 な どの年代測定 ,
トレーサ ー と して 医学利 用
55
Mn
3.7xlO6年
Feとの核反応
年 代測定 ,宇宙線 強度変 動
(
5
6Fe(
p,α)53
Mn.et
c)
1
2
9Ⅰ
1
.57xl
O7*
129
xe(
n.p)1291
, 年 代測定 ,火山活動 の歴 史 ,
238
Uの 自発核 分 裂
宇宙線強 度変動 ,
トレーサ ー と して地下水 の流動 追跡
-2
5
4-
(2) タ ンデ ム加 速 器 を用 い る場 合 に ,加 速 イ オ ンの荷 電 変 換 の 際 に ,分 子 イ オ ンを原 子
イ オ ンに分 解 し,同 じ質 量 数 の分 子 イ オ ンを 除 去 す る .
(3 ) 垂 イ オ ン検 出器 を用 い て ,入 射 イ オ ンの エ ネ ル ギ ー損 失 率 の違 い な どか ら同 重 体 を
区別 す る .
4C/1
3
C比 )
これ らの工 夫 に よ り, 目的 とす る核 種 を ,安 定 同位 体 に対 す る存 在 比 (例 え ば 1
- 10 1
6の レベ ル まで 検 出 す る こ とが で き る.
で 10 15
加 速 器 質 量 分 析 法 を用 い て 測定 対 象 と され て い る主 な天 然 放 射 性 核 種 を表 2 に示 す .義
に示 され る如 く, そ の応 用 目的 は様 々 な分 野 に また が って い る.応 用 例 の詳 細 につ いて は ,
本 セ ンター で発 行 して い る タ ンデ トロ ン加速 器 質 量 分 析 計 業 績 報 告 書 三6),現 在 まで に 6
回開 催 され て い る加 速 器 質 量 分 析 法 国 際 会 議 の報 告 書 10-1
5),今 村 はか (1991)1
6)な ど看
参 照 され た い .
2. 2. 1
4C測 定 の た め の タ ンデ トロ ン加 速 器 質 量 分 析 計
14C測 定 に関 して は ,米 国 ロチ ェ ス ター大 学 の教 授 で あ りか つ Generall
onex
杜 の社 長 で
Purserは ,19
78年 頃 早 く も小 型 の タ ンデ ム加 速 器 を 用 いた加 速 器 質 量 分 析 専
あ った Dr.冗.
81年 に , タ ー ミナ ル電 圧
用 の装 置 の 開 発 に着 手 した . Purserの計 画 は み ご と に成 功 し,19
2.0MVの 1
4C測 定 専 用 の第 1号 機 Mode1413
0A C-1
4Ta
ndetr
onAnal
yzer:Ul
tra-s
ensi
ti
vemasss
pectro
meteropti
on) が ア リゾナ大 学 に導 入 され た .そ の 後 ,名 古 屋 大 学 の タ
ンデ トロ ン加 速 器 質 量 分 析 計 を含 めて ,表 3に示 され る よ うに全 世 界 で 5台 が各 国 に導 入
され ,現 在 活発 に利 用 され て い る . さ らに最 近 で は ,初 期 の タ ンデ トロ ン加 速 器 質 量 分 析
計 の改 良 を さ らに進 め ,測 定 装 置 を コ ン ピュー ター 制 御 と した , い わ ゆ る第 二 世 代 の タ ン
e海 洋 研 究 所 に 1991
年に
デ トロ ン分 析 計 が 開 発 され て い る .そ の第 1号 機 が 米 国 woodshol
92
年 の始 め か ら稼 働 を開 始 して い る. ター ミナ ル電 圧 3
.0MVの この装 置 は ビ
導 入 され ,19
個 の試 料 を 同時 に装 填 で き る イ オ ン源 を
ー ム入 射 系 を 2 セ ッ ト持 って お り,そ れ ぞ れ が 60
持 つ . これ を交 互 に作 動 させ ,後 段 の加 速 器 お よ び分 析 部 を休 ま せ る事 な しに測定 を継 続
で き る. ま た この 装 置 で は , い った ん立 ち上 げ た後 の測 定 の操 作 は コ ン ピュ ー ター に よ る
個 の試 料 の 測 定 が無 人 で 行 わ れ る . Woo
dsHol
e
研 究 所 で は ,年 間約 3.
000
個
自動 制 御 で ,60
4C測 定 を行 う との事 で あ る 1
7). さ らに , この研 究 所 で は 1
r
J
Beや 2
6Alの測 定 も小
の試 料 の 1
規 模 で は あ るが行 わ れ て い る.
この よ うな専 用 機 とは別 に ,原 子 核 実 験 な どに用 い られ て きた 既 存 の タ ンデ ム加 速 器 を
改 造 して ,加 速 器 質 量 分 析 を進 め る こ とが欧 米 で は一 般 的 で あ り,既 に全 世 界 で 30ヶ所 を
越 え る施 設 で加 速 器 質 量 分 析 が可 能 とな って い る . 日本 で は ,東 京 大学 にお い て ター ミナ
J
Be,
ル電 圧 5MVの タ ンデ ム ・バ ンデ グ ラー フ加速 器 を用 いた加 速 器 質 量 分 析 が開 発 され , 1r
1
4C, 2
6Alの測 定 が 1991
年 末 まで ルー テ ィ ンに行 な わ れ て い た 7)が ,現 在 は ,新 型 の加 速
994
年 に は再 稼 働 を始 め る予 定 で あ る. また ,大 阪 大 学 核
器 へ の交 換 が進 め られ て お り, 1
物 理 研 究 セ ンタ ー 18),京 都 大 学 理 学 部 物 理 教 室 ,筑 波 大 学 加 速 器 セ ン ター 19)で既 存 の 加
速 器 を 用 い て加 速 器 質 量 分 析 の研 究 が 計 画 され ,一 部 実 施 され て い る.
-
255 -
表 3 .世 界 の タ ンデ トロ ン加 速 器 質 量 分 析 計
番号
導 入年
設 置施 設
測 定 核種
米 国 ・ア リゾナ大 学
14C, 10Be
日本 ・名 古屋 大 学
14C
第一世代
1号 機
1
980年
2号 機
1
981
-1
9
82年
3号 機
1
982
年
英 国 ・オ ック ス フ ォー ド大 学 ‡ 14C
4号 機
1
9
82
年
カ ナ ダ ・ トロ ン ト大 学
14C, 26Al. 129I
5号 機
1
983
年
仏 国 ・Giト s
ur-Yvett
e
lOBe, 14C, 26
Al
1号 機
1
991
年
米 国 ・woods H
ol
e海 洋 研 究 所
14C,10
Be,2ら
Al
2号 機
1
992
年
オ ラ ンダ 。グ ロー ニ ンゲ ン大 学
14C, ?
3号 機
1
99
4年 予 定
ドイ ツ 。キ ー ル大 学
14C, ?
第二世代
* オ ッ ク ス フ ォー ド大 学 で は ,加 速 器 の み を購 入 した .
名 古 屋 大 学 で は ,表 3 に示 され る如 く1
9
82
年 2月 に導 入 され た ,世 界 の第 2号 機 で あ る タ
4C測 定 に絞 って利 用 が進 め られ て きた 2 6).す な
ンデ トロ ン加 速 器 質 量 分 析 計 を用 いて , 1
4C年 代 測 定 や 1
4Cトレー サ ー研 究 の た め の環 境 1
4C濃 度 測 定
わ ち ,考 古 学 .地 質 学 的試 料 の 1
で あ る. 現 在 , タ ンデ トロ ン分 析 計 は ,名 古 屋 大 学 内 の共 同 利 用 機 器 と して 研 究 ・教 育 に
盛 ん に利 用 され て い る .名 古 屋 大 学 タ ンデ トロ ン分 析 計 に よ る 14C測 定 の方 法 につ いて は ,
別 の機 会 に既 に詳 し く報 告 して い る8,20)ので , この で は割 愛 す る.
3.名 古 屋 大 学 タ ンデ トロ ン加 速 器 質 量 分 析 計 の性 能 の現 状
4C年 代 測 定 利 用 の諸 性 能 を ,従 来 の放 射 能 測定 法 (C
O2ガ
タ ンデ トロ ン分 析 計 を用 い る 1
ス比 例 計 数 管 法 ) に よ る方 法 と比 較 して 表 4 に示 す .
4C
/13
C比 を ,検 査 試 料 と14C濃 度 が 既 知 の標 準 体 とに つ い て
タ ンデ トロ ン分 析 計 で は , 1
4C濃 度 が得 られ る .標 準 体 で の 1
4Cの計 数 率 は は
交 互 に測 定 し, そ れ らの比 較 か ら試 料 の 1
ば3-5 c
psで あ る .従 って ,数 千 年 前 の比 較 的 年 代 が新 しい試 料 につ いて ± 1%程 度 の統 計
誤差
(
1
4Cの 計 数 に して 1
04個 程 度 ) で 14C濃 度 あ るい は 14C年 代 値
(年 代 値 の 誤 差 で ± 8
0年
に相 当 す る) を得 よ う とす る と,約 3-4時 間 の測 定 時 間 を要 す る .
表 4 に示 した よ うに ,年 代 が新 しい試 料 で は ,測 定 精 度 は タ ンデ トロ ン分 析 計 と放 射 能
測 定 法 とで ほぼ 同 程 度 で あ る . しか し,数 万 年 前 よ り古 い試 料 で は , 14Cバ ック グ ラ ウ ン ド
計 数 が 極 め て低 い タ ンデ トロ ン分 析 計 の 方 が バ ック グ ラ ウ ン ドの高 い放 射 能 測 定 法 に比 べ
て ,誤 差 は格 段 に小 さい . ま た , この理 由 に よ り,測定 可能 な古 い年 代 の限 界 は ,従 来 の
3- 4万 年 前 か ら約 6万年 前 と, よ り古 い年 代 値 まで拡 大 して い る.
ー25
6-
表 4.加 速 器質 量 分 析 法 とベ ー タ線計 数 法 に よ る 14C年 代 測 定 の比較 21)
名 古 屋 大学
日本 ア イ ソ トー プ協 会
タ ンデ トロ ン加 速 器質 量分 析 計
CO2ガ ス比 例計 数 管
炭 素 試 料 の量
0.2- 5 mg
2.2 g
測 定 可能 な古 い
約 6万年 前
3.5- 4万年 前
精度
約 ± 80年
約 ± 80年
測定 時間
3- 4時 間
16- 20時 間
年 代 の限 界
(標 準体 の測 定 も含 む)
(試 料 のみ の測 定 )
タ ンデ トロ ン分 析 計 は ,名 古屋 大学 内共 同利 用 施 設 と して全学 の研 究 ・教 育 に利 用 され
V) 3
て い る. そ の成 果 は,名 古 屋 大学 加速 器 質量 分析 計 業績 報告 書 (Ⅰ∼ I
ら)と して公 表
され て い る .
分 析 計 の使 用 状 況 は ,現 在 の と ころ ,測定 中 に は オペ レー ター が常 時 対応 す る必 要 が あ
る こ とか ら,夜 間 便用 は行 わ な い た め通 常 1日あ た り 3個程 度 の試 料 の測定 が行 わ れて い
る.従 って ,年 間 の測定 数 は 500- 600個 で あ る. また , 1983年 に測 定 を開始 して以 来 , 19
93
年 10月 まで の 14C測定 の積算 総 数 は 4132個 に達 して い る .
4.14C年 代 軸 定 の た め の試料 調製
14C年 代 測 定
の対 象 と され る試料 は ,炭 素 を 含 む もので あ れ ば何 で も良 い .一 般 的 に は,
木 炭 ,木 片 ,泥 炭 ,炭 質物 ,骨 ,牙 ,歯 ,動 物組 織 ,体 毛 ,埋 没 土 壌 ,湖 底 ・海 底 堆 積 物 ,
貝 殻 , サ ンゴ,有 孔 虫 ,海 水 ・淡 水 中溶 存炭 酸 な どが用 い られ る .
14C年 代 測 定
のた め に採 取 され る生 試 料 か ら,加速 器質 量 分析 計 に用 い る炭 素 タ ー ゲ ッ ト
を調 製 す る方 法 を 図 1に示 す .
年 代 測定 の対 象 と され る試 料 は ,長 い年 月 の間 自然環 境 に さ ら され た結 果 ,二 次 的 に年
代 の異 な る炭素 に よ り汚 染 され て い る恐 れが あ る. これ らの二 次 的混 入 物 を 除 去 す る為 に ,
試料 調 製 を始 め る に当 た って ,超 音波 洗 浄 な どの物 理 的処理 お よ び塩 酸 や水 酸 化 ナ トリウ
ム溶 液 を加 えて加 熱 す るな どの前 処理 が必 要 とな る.
前 処 理 を終 え た あ と,木 片 ,植 物 片 , な どは真 空 中 にて 500℃ で加 熱 して完全 に炭 化 す る.
土 壌 中 有 機 物 (フ ミン質 ) ,貝殻 ,サ ンゴ,有孔 虫 ,古代鉄 中 の炭 素 な どは ,助 燃 剤 を加
えて加 熱 して燃 焼 す るか ,塩 酸 で溶 か して二 酸化 炭 素 を回収 し, これ を水素 還 元法 で鉄 粉
上 に グ ラフ ァイ トに変 換 す る.鉄 粉上 に付着 した グ ラフ ァイ ト粉 末 は,加速 器 質量 分析 計
の イ オ ン源 にセ ッ トす るた め に , アル ミニ ウム製 の ター ゲ ッ トホ ル ダー の 1.5mm卓の穴 に
入 れ て ,手 動 の圧 縮 装 置 で 固 め る .一 方 ,炭 化物 は ,銀 粉 と混 合 した の ち,同様 に して タ
-2
5
7-
- ゲ ッ トホ ル ダー に圧 入 す る.
図 1.加 速 器 質量 分 析 法 によ る1
4C年 代 測定 の た め の試 料 調 製 方 法
5. タ ンデ トロ ン加速 器質 量 分析 計 に よ る14C年 代 測 定 の応 用 例
名 古 屋 大 学 内 の共 同利 用 に基 づ く教 育 ・研 究 , さ らに学 外 者 との共 同 研究 と して ,14C年
代 測 定 が さま ざま な分 野 で利 用 されて い る.それ らの例 を以 下 に箇 条書 きに示 す .詳細 に
つ い て は文 献 3
-6を参照 して頂 きた い .
地球科 学 :
(1)最 終 氷 期 ∼完 新 世 の古海 水 準 変 動 ・古気 候 変動 の推 定
(2)活 断 層 運 動 速 度 の推 定
(
3)海 底 ・湖 底 ・湿原 堆 積物 の堆 積 速 度
(
4)黄 土 中 の炭 酸 カル シ ウムや炭 酸塩 結 核 (黄 土小 僧) の 1
4C年 代
海洋科 学 :
(5)駿 河 湾 ター ビダ イ トの年 代 測 定
(6)底 生 有 孔 虫微 化 石 に よ る古海 水 年代 測定
-2
5
8-
(7)浮 遊性 有 孔 虫 の ア ミノ酸 の ラセ ミ化 とそ の 14C年代 との相 関
(8)立 山 火 山 噴 火 の歴 史
(9)降 下 テ フ ラの年代 測定 (浅 間 火 山 ,富士 火 山 ,箱根 火 山 ,妙 高 火 山 ,な ど)
林 産 学 ・木 材 科 学 :
(10)森 林 内 の残 置木 の年 代 測定
雪 氷 学 ・氷 河学 :
(ll)永 久 凍土 の 14C年 代 とそ の形 成 機 構
2)北 ア ル プ ス雪渓 氷体 の形 成 年 代 の測定
(1
水理学 :
(1
3)地 下 水 の 14C年 代 と流動
考 古 学 。人 類学 :
(14)考 古遺 物 の年 代 測定
化 石骨 コ ラー ゲ ン,堅 果 類 化 石 ,独 木舟 ,布 ,紘 ,竹 か ご,員 化石 ,土器 付着 炭
化 物 ,昆 虫 の カ ラ, な ど
(1
5)マ ンモ ス 。ナ ウマ ン象 化 石 の 14C年 代 と分 布
(16)古文 書 ・古 文化 財 な どの年 代 測定
(17)古代 製 鉄 炉 跡 の木炭 ,鉄 材 中 の炭 素 の 14C年代 測定
(1
8)縄 文 遺 跡 出 土 の ウマ の骨 の年代 決 定
5. i. タ ンデ トロ ン加速 器 質量 分 析 計 を用 いた 14C年代 測 定 の試 み
以 下 に ,名古 屋 大学 タ ンデ トロ ン加 速 器質 量分 析 計 を用 いた 14C年 代 測定 の応 用 例 の幾 つ
か を簡 単 に述 べ る.
(1) ター ビダ イ ト堆 積 物 の 14C年 代 22)
駿 河 湾 の駿 河 トラフで採 取 され た ター ビダ イ ト堆 積 物 中 に は,微 細 な植物 片 が含 まれ て
いた .従 来 の放 射 能 測 定 法 で は ,炭素 試 料 の量 を確 保 す るた め ,植 物 片 を含 め て堆 積物 全
20±80y.B.P.(
KSU-803)で あ
体 か ら炭 素 を抽 出 して 14C年代 測定 が行 わ れた . その結 果 は 9
B.P.(
KSUl1780)と得 られ て い
る. そ の後 ,植 物 片 だ けを何 とか選別 して測定 し550±70y.
る.堆 積物 の同 じ層 準 で も,有 機 炭素 の種 類 によ り 14C年 代 値 は異 な って い る.加 速 器 質 量
分 析 法 で は ,数 1
ngの炭 素 で測 定 で きる こ とか ら, ター ビダ イ ト堆 積 物 を植 物 細 片 と砂 泥 と
に分 離 し, それ ぞ れ につ いて フ ミン酸 抽 出 を行 い ,最終 的 に独立 に 4種 類 の有 機物 成分 に
30∫.B.
P.(NUTAつ い て 14C年 代 測定 を行 った .そ の結 果 ,植物 細 片 の固形 成 分 が 1550± 1
0±80Y.B.P.(
NUTA-749),砂 泥 中 の フ ミン質 が 9400±170
71
5), そ の抽 出 フ ミン酸 が 27
0±90y.B.P.(
NUTA-748)と ,それ ぞ れ の成 分 で
∫.
B.
P.(
NUTA-750),そ の抽 出 フ ミン酸 が 227
大 き く異 な った 14C年 代 値 が得 られ た . この研 究 で は , ター ビダ イ ト堆 積物 が形 成 され た年
代 と して ,植物 細 片 の固形 成 分 の年 代 が 最 も近 い と考 え た . この例 の様 に加 速 器質 量 分 析
法 で は ,一 つ の試 料 か ら抽 出 され るい くつか の炭 素 成 分 に分 けて 年 代 測 定 が 可能 とな り,
よ り詳 細 な情 報 を 引 き出す こ とが 出来 る・
t
(2) 有孔 虫 に よ る海 底 堆 積 物 の 14C年 代 測定 23)
-18-P4) 中 に
四 国 沖 の下 部 斜 面 海 盆 (水 深 2700 m) か ら採取 され た ピス トン コア (KT89
-2
5
9-
含 まれ る有 孔 虫 殻 につ いて 1
4C
年 代 測 定 を行 う こ とが 可能 と な った .海 洋 底 堆 積 物 中 の有 孔
4
C
年 代値 が異 な る.
虫 は ,海 洋 深 層 水 の循 環 に よ り,浮 遊 性 の もの と底 生 の もの とで 示 す 1
00
個 程度 集 め
逆 に そ の違 いか ら,深 層 水 の循 環 の速 さを知 る こ とが で きる .有 孔 虫 の殻 を 5
る と1
0mg
程 度 のC
a
C
03が得 られ , そ の 中 に 1mgの炭 素 が 含 まれ る .加 速 器 質 量 分 析 法 で は ,
この様 な 微量 試 料 の年 代 測 定 が 可 能 で あ る.
KT
89
-19
-P4コ ア の表 層 か ら深 度 約 80
0c
mまで の有 孔 虫 試 料 につ い て の 1
4
C年 代 値 は ,深 度
と共 に単 調 に古 くな り, コ ア堆 積 物 中 で 検 出 され た 姶 良 -Tn
火 山 灰 の年 代 (2
2(
∼2
5)ka)
と調 和 的 で あ った .加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る 1
4
C
年 代 測定 は , ご く微 量 な炭 素 試 料 につ いて
も信 頼 性 が高 い こ とが 示 され た .
(3) 海 底 地 震 断 層 の年 代 測 定 24)
別 府 湾 の海 底 活 断 層 の両 側 で ボ ー リン グ コ アを採 取 し, コア中 に微 量 に含 まれ る員 化 石
片 や植 物 片 につ い て細 か い層 準 ご と (約 1
0mの長 さの間 に , それ ぞ れ 1
0
層 準 お よ び8
層準)
4
C
年 代 測 定 を行 った .深 度 の増 加 と共 に 1
4C
年 代 値 は単 調 に増 加 し, また , 1
4C年 代 が 古
に1
くな る に連 れ て 断 層 変 位 量 が 増 大 して い る様 子 が 明 瞭 に読 み と る こ とが で きた .
(4 ) 化 石 氷 体 中 の - イ松 の 年 代 測定 25)
北 ア ル プ ス立 山 連 峰 の内 蔵 助 雪 渓 は越 年 性 の雪 渓 で あ り, そ の 下 部 の氷 体 の厚 さは 2
0m
近 く もあ る.氷 体 中 に 自然 に開 い た縦 穴 を利 用 して ,氷 体 か ら氷 の ブ ロ ック を採 取 す る こ
とが で きた .氷 の ブ ロ ックの 中 に は ,希 に植 物 片 が 散 在 す る . この わず か な 植 物 片 (主 と
して - イ マ ツの葉 片 ) につ い て 1
4C
年 代 測 定 を 行 った .氷 体 の最 下 部 で 採 取 され た - イ松 の
76
0±1
40y
.B.
P.(
NU
T
A
-7
1
3)と得 られ , この 氷 体 が 古墳 時
葉 片 に つ い て の最 も古 い年 代 は 1
代 頃 か ら形 成 され た こ とが推 察 され た . この時 代 に氷 体 の形 成 が 可 能 か 否 か ,気 候 変 化 と
関 連 して検 討 す る必 要 が あ る.
(5) 古 人 骨 ・獣 骨 化 石 の年 代 測 定 26,27)
人 骨 ・獣 骨 の年 代 測 定 で は , リン酸 カ ル シ ウム分 や炭 酸 カ ル シ ウム分 を塩 酸 で分 解 除 去
した後 に残 る タ ンパ ク質 成 分 (コ ラー ゲ ン) を用 い る.野 尻 湖 底 堆 積 物 につ い て , ナ ウ マ
ン象 の 臼歯 , オ オ ツノ シカ の 牙 や木 片 な どに つ い て 年 代 測定 を行 った と ころ ,従 来 の放 射
能 測 定 に よ る1
4
C
年 代 測 定 結 果 よ り古 い年 代 が 得 られ た .野 尻 湖 底 堆 積 物 の ナ ウマ ン象 化 石
を伴 う最 下 層 は 5 万 年 前 に遡 る こ とが ,加速 器 質 量 分 析 計 を用 い る 1
4C年 代 測定 で 明 か とな
-3gの骨 を用 い
った . また ,縄 文 時 代 ,弥 生 時 代 の保 存 の良 い人 骨 ・獣 骨 に つ い て は ,1
て ,信 頼 性 の高 い 1
4C
年 代 値 を得 る こ とが で きた .
(6) 縄 文 後 期 員 層 出 土 ウマ遺 存 体 の年 代 測 定 28)
鹿 児 島 県 出水 市 の 出水 貝 塚 の縄 文 後 期 員 層 か ら出 土 した と され る ウマ の歯 資 料 に つ い て ,
4C
年 代 測 定 を行 った .1
4
C
年 代 値 は6
1
0±9
0∫.
B.
P.(
NUT
A-167
4)
コ ラー ゲ ンを抽 出 し, そ の 1
と得 られ た . また , 同 じ資 料 に対 して行 わ れ た フ ッ素 分 析 に お い て , フ ッ素 含 有 量 か ら縄
文 時 代 まで 遡 る ほ ど古 い とは考 え られ な い こ とが 示 唆 され た . これ らの結 果 か ら, 出水 員
塚 出 土 の ウマ歯 資 料 は ,恐 ら く鎌 倉 時 代 末 か ら室 町 時代 初 頭 の間 に混 入 した もの で あ り ,
-2
6
0-
縄 文 時 代 の遺 残 物 で は な い こ とが 明 か とな った .今 後 さ らに ," 縄 文 馬 " の 存 否 に つ い て ,
実 証 的 に検 討 を加 え る必 要 が あ る .
(7) 古代 鉄 の年 代 測 定 29)
古 代 の製 鉄 で は ,木 炭 が 酸 化 鉄 の還 元 に用 い られ る.鉄 材 の中 に わず か に残 った木 炭 の
年 代 を 測 れ ば ,製 鉄 が 行 わ れ た年 代 が推 定 で きる. 今 回 , 日本 刀 お よび鉄 産 (て っ さん)
につ い て 14C年 代 測 定 を行 った . 日本 刀 に つ い て は ,予 想 よ りや や古 い年 代 が , ま た鉄 産
につ い て は や や新 しい年 代 が 得 られ た が , ほ ぼ調 和 的 な結 果 と言 え る.今後 , さま ざま な
鉄 試 料 につ いて 年 代 測 定 を試 み る予 定 で あ る .
(8) 土 器 付 着 炭 化 物 の年 代 測定 30・51)
岐 阜 県 森 ノ下 遺 跡 お よび諸 家遺 跡 か ら出土 した土 器 片 に付 着 して いた 炭 化 物 か ら精 製 し
た ,わ ず か数 ミ リグ ラ ムの炭 につ いて 14C年 代 測 定 を行 った .付 着 炭 化 物 は ,土 器 を用 いて
食 物 を 煮 炊 きす る際 に用 い た 薪 の炭 や ス ス, あ るい は食 物 の焦 げ た もの が付 着 して残 った
もの と考 え られ る .従 って ,付 着 炭 化 物 の 14C年 代 は土 器 が 使 用 され た 年 代 を示 す もの と推
察 され る.実 際 ,得 られ た 14C年 代 値 は ,土 器 形 式 に よ る編 年 とほぼ一 致 した .
(9) さま ざま な 文 化 財 の年 代 測 定
0 gと多 い
従 来 ,放 射 能 測 定 法 に よ る 14C年 代 測定 で は ,測定 に必 要 な試 料 が生 試 料 で数 1
た め ,年 代 測定 は しば しば文 化 財 自体 を 破 壊 す る こ とを意 味 した . そ こで ,文 化 財 の 14C年
代 測 定 は必 要 最 小 限 に限 られ て い た . しか し,加 速 器 質 量 分 析 法 で はわ ず か 数 1
0 mgで 十分
なた め , 今 後 大 い に活 用 され る こ とが期 待 され る. しか し,文 化 財 の年 代 測 定 は , そ の結
果 が社 会 に及 ぼす イ ンパ ク トが非 常 に大 きい た め , そ の適 用 に は 十 分 注 意 を払 う必 要 が あ
る.名 古 屋 大 学 で は ,古代 和 紙 な どを提 供 して頂 い て ,繰 り返 し測 定 の再 現 性 試 験 な ど
14C年 代 測定
の信 頼 性 の検 討 を進 め て い る .
5. 2.諸 外 国 で の さま ざ ま な 14C年 代 測 定 の 試 み
加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る 14C年 代 測 定 は諸 外 国 で も盛 ん に利 用 され て お り,多 くの重 要 な
成 果 が 得 られ て い る.
(1) トリノ聖 骸 布 の年 代 32・33)
イ タ リア ・ トリノ市 のサ ン ・ジ ョヴ ァ ンニ大 聖 堂 に保 管 され て い る トリノ聖 骸 布 (キ リ
ス トの 遺 骸 を包 ん だ と され る リンネル布 で ,歴 史 上 の記 録 に よ る と西 暦 1
3
54
年 まで 遡 る こ
とが で き る) か ら布 片 を分 取 し, ア リゾ ナ大 学 , オ ック ス フ ォー ド大 学 , ス イ ス ・ETH・中
エ ネ ル ギー物 理 学 研 究 所 の 3研 究 機 関 で ,加 速 器 質 量 分 析 法 に よ る 14C年 代 測 定 が 行 わ れ た .
14C年 代 値
は加 重 平 均 で 6
89±1
6∫.
B.
P.と得 られ ,13
世紀 に織 られ た布 で あ る こ とが 明 か と
な った .
(2) フ ラ ンス ・スペ イ ンの洞 窟 壁 画 の年 代 54)
先 史 時 代 に措 か れ た洞 窟 壁 画 につ い て ,線 描 に用 い られ た炭 が ご くわ ず か (1
0- 20 mg)
採 取 され , そ れ か ら精 製 され た 1 mg程 度 の炭 素 につ いて 14C年 代 測定 が 行 わ れ た . この結 果 ,
-2
6
1-
スペ イ ンの Al
ta
mira洞 窟 の壁 画 が 1
4000±400y.B.P.,EICastill
o洞 窟 の壁 画 が 1299
0±
200∫.B.ド., フ ラ ンス ・ピ レネー 山脈 の Ni
aux洞 窟 の壁 画 が 1
2890±1
60∫.
B.P.と得 られ ,
14C年 代 値 が絵 の文 様 。形 式 に よ る編 年 とは必 ず し も一 致 しな い こ とを示 した .
これ らの ■
(3) 花 粉 の年 代 測 定 35136)
Br
own,etalは ,物 理 ・化 学 的処 理 に よ り,泥 炭 試 料 か ら花 粉 を濃 縮 し, 1
4C
年 代測定 を
4C
年 代 値 とよ く一 致 して い る . また ,
行 った .花 粉 の年 代 値 は ,泥 炭 全 体 を用 いて 得 られ た 1
Long, etalは ,湖 沼堆 積 物 に つ い て ,物 理 ・化 学 的処 理 に よ り花 粉 を 濃 縮 した あ と,手 仕
4C年 代 値 を得 て い る.彼 らは ,樵
事 で機 械 的 に花 粉 の み を選 別 し,0.5mgの花 粉 につ いて 1
積 物 中 の有 機 態 炭 素 全 体 の年 代 は ,石 灰 岩 起 源 の 古 い炭 素 の寄 与 に よ り実 際 の年 代 よ り古
4C年 代 の方 が 正 しい と して い る .
い年 代 を示 す傾 向 に あ り,花 粉 の 1
(4) ヨ・
一 口 ッパ ・ア ル プ ス の ア イ スマ ンの年 代 37)
ヨー ロ ッパ ア ル プ スの イ タ リア ・オ ー ス トリア国 境 に あ る シ ミラ ウ ン氷 河 で 1
991
年 9月
19日 に発 見 され た 氷 漬 け の男 性 遺 体 につ いて ,皮 膚 と骨 につ いて 加 速 器 質 量 分 析 法 に よ り
1
4
C年 代 測 定 が 行 わ れ た . この男 性 が死 ん だ年 代 は 51
00- 5300年 前 と得 られ ,中 央 ヨ- ロ ッ
パ の新 石 器 時 代 の 後 期 に あ た る こ とが 明 らか に され た .
6.加 速 器 質 量 分 析 計 に よ る 1
4C測 定 の今 後 の課 題
4C年 代 値 を 利 用 す る
他 の 分 野 と同 様 ,加 速 器 質 量 分 析 の技 術 も 日進 月 歩 で あ る . ま た , 1
ユー ザ ー の要 求 も次 々 と厳 し くな って く る. こ こで は , これ か ら検 討 し,改 良 を進 め て 行
くべ き と考 え る下 記 の課 題 に つ い て現 状 お よ び展 望 を述 べ る .
a)測 定 精 度 の向 上
② 古 い年 代 試 料 の 測定
③ ご く微 壁 試 料 の 測 定
C年 代 測 定 法 と他 の 年 代 測 定 法 との ク ロ ス チ ェ ック
④ 14
4C年 代 か ら暦 年 代 へ の校 正
⑤1
6. 1.洞 定 精 度 の向 上
分 析 計 の時 間 的 安 定 性 さえ良 け れ ば ,測定 精 度 は ,統 計 精 度 で 決 ま る . イ オ ン源 に お け
る炭 素 試 料 の イ オ ン化 は ラ ンダ ム に お こ るの で ,放 射 線 計 測 の場 合 と同 様 に ,加 速 器 質 量
4Cの計 数 は統 計 的 変 動 を免 れ な い .統 計 誤 差 を小 さ くす る に は 14C
計数 を
分 析 計 にお け る 1
増 加 させ れ ば良 い . そ こで 高 出力 の イ オ ン源 の開 発 が進 め られ て きた .名 古 屋 大 学 タ ンデ
CONEX 844) は , 12
C 出 力 が 5-1
0〟Aで あ るが ,第 二 世 代 タ ンデ トロ
トロ ンの イ オ ン源 (HI
0- 1
00L
LAと10倍 の出 力 を持 ち ,短 時 間 の うち に 1
4C
計数 を
ンの イ オ ;
/蘇 (846B) で は ,5
増 や す こ とが で き る 38)
名 古 屋 大 学 の タ ンデ トロ ンで は ,現 代 試 料 の 1
4C濃 度 の測 定 精 度 は 1 %程 度 で あ るが ,罪
2世 代 の タ ンデ トロ ンで は 0.4 %の 測 定 精 度 が 達 成 され て い る 38). これ は 1
4Cの計 数 に して
6.3Ⅹ1
04個 に相 当す る .
この よ うに ,高 出 力 イ オ ン源 を導 入 し,電 源 ライ ンや室 温 の変 動 に対 して 分 析 計 の安 定
-2
62-
度 を保 つ よ うに改 良 を加 え れ ば ,測定 誤 差 を ±0.4 % (年 代 値 の誤差 で ± 3
0年 ) ま で小 さ く
す る こ とが 可能 で あ る こ とが 実 証 され て い る .
6. 2。 1
4
Cバ ック グ ラ ウ ン ド (測 定 可能 な古 い年代 の限界 )
一 般 に ,測定 可 能 な古 い年 代値 の限 界 は次 の様 に して調 べ られ る .人 工 グ ラフ ァイ トや
天 然 の鉱 物 グ ラフ ァイ トな ど十分 に古 くて 1
4Cを全 く含 まな い はず の炭 素 試 料 を用 いて 14C
測定 を行 う.す る と, 1
4Cの計 数 が あ る. これ は ,既 に測定 した ター ゲ ッ トか らの 1
4Cを 含
む炭 素 に よ るイ オ ン源 の汚 染 や ,残留 ガ ス中 の 14C
02な どが 考 え られ る .中村 ・中 井 3
9-40)
の報 告 にあ るよ うに,人工 グ ラフ ァイ トにつ いて の 1
4Cバ ックグ ラウ ン ドは , 14C年 代 値 に
,850-72,570y.B.
P.の広 が り (平 均値 66,340 y.ち.P
.) を示 し, セ イ ロ ン産
換 算 して ,62
,030- 76.030 ∫
.
B
.
P
.の広 が り (平均 値 64,440 y
.
B
.
P.
)
の鉱 物 グ ラフ ァイ トにつ いて は 59
を示 した .す な わ ち, この 14Cバ ック グ ラ ウ ン ドは見 か け の 1
4C年 代 値 で約 65,000年 前 に相
当 して いた 59 40)
この結 果 か ら, タ ンデ トロ ン分 析計 で は5
万 年 前 台 の 14C年 代 は充 分 使 え る と考 え られ る.
0万年前 の 1
4C年 代 測定 は出 来 な いか との
ユー ザ ー か らは , これ よ り さ らに古 く6万 年前 ∼ 1
要 望 が あ るが ,現 時点 で はか な り困難 で あ る と考 え る. カ リウム - アル ゴ ン法 ,電 子 ス ピ
ン共 鳴 法 や フ ィ ッ シ ョ ン 。 トラ ック法 の , この年 代 領域 にお け る利 用 の拡 大 と高精 度 化 を
期 待 した い .
6. 3。檀 徒 量 試 料 の朔定
14C測定 に お いて ,充 分 な統 計精 度 を保 った ま まで必要 な炭素 量 を減 らす べ く検 討 を進 め
て い る. この場 合 , イ オ ン源 で用 い る ター ゲ ッ トと して ,炭 素 イ オ ン ビー ム強 度 が充 分 大
き くとれ る ター ゲ ッ トを少 量 の炭 素 を用 いて如何 に して作 るか とい うこ とに な る.
現 在 の ルー テ ィ ンの測定 で は , 2種 類 の試 料 ター ゲ ッ トを用 い て い る.そ の⊥ っ は,木
炭 や炭 化物 な どの炭素 粉 末 を銀粉 と混 合 し, それ を アル ミニ ウム製 の ター ゲ ッ トホ ル ダー
の 1.5 mm卓の穴 に圧 入 す る. この C-Agター ゲ ッ トは, イ オ ン源 で 最 も強 い炭 素 ビー ムが得
られ る グ ラフ ァイ ト 。ター ゲ ッ トと比 較 して ,炭 素 イオ ン ビー ム強度 が約 1
/3で あ り, しか
も ビー ム強 度 の減 衰 が早 い . この方法 で は炭 素 の量 は最 低 5mg必 要 で あ る. しか し,樹 木
片 試 料 な どで は調 製 方 法 が簡 単 で , 14Cバ ック グ ラウ ン ドが低 く押 さえ られ るた め ,今 で も
一 部 の試 料 につ い て は採用 されて い る方 法 で あ る.
ogeletal41)が 開発 した C02の水 素 還 元 によ るFe
-グ ラフ ァイ ト作
も う一 つ の方 法 は ,V
e
-グ ラフ ァイ トが作 成 で き,
製 技 術 で あ る. この方 法 で は ルー テ ィ ンに1 mg程 度 の炭 素 で F
純 粋 な グ ラ フ ァイ トに匹敵 す る程 の炭 素 イオ ン ビー ム強 度 が得 られ て い る. テ ス ト試料 で
は ,0
.2mg程 度 まで少 量 の炭 素 につ い て グ ラフ ァイ ト化 が成 功 して お り42J
l,実 際 の試 料 へ
の適 用 が検 討 され て い る.今 後 の利 用 の拡 大 が大 い に期 待 で きる .
6。 4. 他 の年 代 測定 法 との ク ロ スチ ェ ック
14C年 代 測 定 法 に よ り測 定 可能 な約 6万年 前 まで の範 囲 を カバ ーす る他 の年 代 測 定 法 と し
て , フ ィ ッ シ ョ ン 。 トラ ック法 , ウ ラ ンー トリウム法 , カ リウム ー アル ゴ ン法 ,ESR年 代 測
定 法 ,熱 ル ミネ ッセ ンス法 な どが挙 げ られ る.
-2
6
3-
神 奈 川 県 大磯 丘 陵 にて ,東 京軽 石流 堆 積物 か ら炭 化 木 片 を採 取 し, タ ンデ トロ ン分 析 計
4C年 代 値 を 測 定 した . この結 果 , 1
4C年 代値 は約 53.000年 前 43)と得 られ て お
に よ りそ の 1
り, この年 代 値 は フ ィ ッシ ョ ン 。 トラ ック年 代 49
,000±5,000年 前 44)とはぼ 一 致 して い る.
また ,金 沢 大学 理 学 部 大 村 明 雄 教 授 との共 同研究 と して オー ス トラ リア産 サ ンゴにつ い て
45), また ,諸 外 国 にお け る研 究 で はBarbados島 のサ ンゴに つ いて 46), 1
4C年 代 と ウ ラ ンー
トリウ ム年 代 との比 較 が実 施 され つつ あ る. さ らに ,カ リウム- ア ル ゴ ン法 で も数 万年 前
とい う, この方 法 に と って は非常 に若 い年代 の測 定 が可能 とな って きて お り,御 岳 火 山 草
木 谷 噴 出物 につ い て , 1
4C年 代 との比 較 が行 わ れ ,両 年 代 測 定 法 で一 致 した結 果 が 得 られ て
い る47
49). この よ うに ,様
々な異 な る原理 に基 づ く年 代 測 定 法 の 問 で互 い に年 代 値 を比
較 す る ことは , そ れ ぞれ の測 定 年 代値 の校 正 法 や そ の適 応 限 界 を調 べ る うえ で大 い に役 立
つ もの と期 待 され る.
6. 5。 1
4C年 代 か ら磨 年 代 へ の較 正
14C年 代 測 定 の大 前提 は ,過 去 の大 気 C02の 1
4C濃度 が一 定 で あ った とい う仮定 で あ る . し
か し, この仮定 が 正 し くな い こ とが ,樹 木年 輪 な どを用 いて 明 らか に され て い る.例 え ば ,
約 7000年 前 に は ,大 気 C02の 14C濃 度 は現 在 よ り約 10%高 か った 50).1
0%高 い 14C濃度 は ,莱
際 よ り約 8
00年 若 い 14C年 代 値 を与 え る こ とに な る .米 国 のBristl
econePi
neな どの樹 木 年
02の 1
4C濃 度 が調 べ られ て お り50), この デ - タ
輪 を用 いて約 8000年 前 に遡 って過 去 の大 気 C
4C年 代 か ら暦 年 代 - の較 正 が行 われ て い る 51)
を用 い て 1
大 気 循 環 は比 較 的速 やか で あ るた め ,局 所 的 な影 響 を除 けば 14C
濃 度 は全 世 界 で はぼ均 一
と考 え られ るが ,米 国 で生 育 した樹木 を用 いて得 られ た較正 曲線 が ,そ の ま ま 日本 で適 用
出来 るか 否 か につ いて ,加 速 器 質 量分 析 計 を用 いて 研 究 を進 めて い る.
7.将 来 - の展 望
以 外 で考 古学 的 な年 代 測
加 速 器 質量 分 析 法 で 測定 可 能 な放射 性 核 種 (表 1) の うち , 14C
定 に と って興 味 深 い核 種 は41caで あ る 2). カル シ ウ ムは動物 の骨 を造 る主 要 元素 で あ る .
また , 41c
aの半 減 期 は 10万 年 と長 いた め ,約 100万年 前 に遡 って年 代 測 定 が で き る可能 性 を
持 つ .将 来実 用 化 され れ ば ,北 京 原 人 や ジャ ワ原 人 の年 代 を直接 測定 す る こ とが で きるで
4C年 代 測 定 の場 合 の
あ ろ う. 現在 の と ころ ,現 生 動物 中 の 41ca濃 度 にバ ラツ手が大 き く, 1
初期 14C
波度 が一定 で あ る とい う仮 定 が ,41
caで は成 立 して い な い ら しい とい うこ とが大 き
な障 害 とな って い る.
名 古 屋 大学 タ ンデ トロ ン分 析 計 は ,導 入 以 来約 1
0年 間 はぼ順 調 に機能 して きた .本論 で
述 べ た 様 に , タ ンデ トロ ンに よ る 1
4C年 代 測定 は ,様 々 な分 野 で大 い に利用 され て お り,覗
在 で は不 可欠 な存 在 とな って い る.今後 は さ らに ,分析 計 の性能 を極 限 まで 引 き出 して 、
利用 を広 げ るべ く努 力 して い きた い と考 えて い る .
参考 文 献
1)
浜 田達 二 ,考 古 学 の た め の化学 10
章 ,東 京 大学 出版 会
(1
981)69
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ki
n,Sci
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1990)p274.
2)
M.∫. At
3)名古 屋大 学 ア イ ソ トー プ総 合 セ ンター ,名古屋 大学 加速 器 質量分析 計 業績 報告書 (Ⅰ) ,
-2
6
4-
(19
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4)名古屋大学年 代 測定 資料研究 セ ンター ,名古屋大学 加速器 質量分析 計業績 報告書 (Ⅱ) ,
(19
91)p122
.
5)名古屋大学年 代 測定 資料研 究 セ ンター ,名古屋大学 加速器 質量分析 計業績 報告書 (Ⅲ) ,
(19
92)p162
.
6)名古屋大学年 代 測定 資料研 究 セ ンター ,名古 屋大学 加速器 質量分析 計業績 報告書 (Ⅳ ) ,
(19
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ng,etal
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03
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-2
6
6-
Present and Future of Ultra-sensitive Radiocarbon Dating yith
Accelerator Mass Spectrotetry
Toshio NAXAMURA
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I
n archeology. radiocarbon (14C) dating has played a very i
mportant
role since its appearance in the 1950S. in particular, in extending the
Neolithic period to al
most double its accepted length. I
n addition, chro
nologies of pre-historic events can be correlated among various sites in
different countries of the World, by using 14c dates.
Techniques of accelerator l
n
aSS SPeCtrOmetry (
AMS), developed since
1977, based mainly on a tandem accelerator and associated apparatus used
to analyze charge state, energy, mass number. and atomic number of accel
erated ions. enabled us to T
n
eaSure extremely-loy-abundance nuclides such
, 36cl
. 41ca. 53Mn, 1291, etc., in natural samples.
as lobe. 14C, 26Al
The main AMS application is 14c measurement. and in particular. 14c dating.
The amount of carbon necessary for the AMS 14c measurement has
been reduced to 1 mg and the ol
dest date measurable has been extended to
about 60.000 y.B.P., compared to a fey grams and about 35.000 y. B.P.,
respectivel
y. for β-counting measurements of 14C.
A tandetron accelerator mass spectrometer, constructed by the General l
onex Corporation, USA, Was installed at Nagoya University in 1982,
to measure 14c dates of archeol
ogical and geol
ogical samples. Measure一
ments of 14c yere started in the fallof 1983. Routinely, about 600 samples are measured per year, and in total 4257 samples have been analyzed
up to the end of December 1993.
The present performance and vari
ous applicati
ons of the spectrometer
for 14c dating are described. Some programs for i
mproving the spectr0meter and some plans for scientific research are also discussed.
-2
6
7-
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