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中国における新たなアパレル生産・ロジスティクス体制
根本, 敏則; 石原, 伸志; 橋本, 雅隆; 林, 克彦
日本物流学会誌, 15: 137-144
2007-06
Journal Article
Text Version publisher
URL
http://hdl.handle.net/10086/22001
Right
Hitotsubashi University Repository
日本物 流 学会誌 第 1
5号 平成 1
9年 6月
論文 R
中国における新たなアパ レル生産 ・ロジスティクス体制
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根本敏則 (
一 橋 大 学 )、石 原 伸 志
(
東 海 大 学 )、橋 本 狗 墾 (
横 浜商 科 大 学 )、林 克 彦 (
流通経 済大学)
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要旨
日本のアパ レル企業は、中国での低コス ト生産を活用 した うえで、需要の変化に合わせ品揃えす る必要があ り、投級、延期
戦略 を取 り入れた生産システム、ロジスティクスシステムを適切に構築することが求められている。中国におけるアパ レル製
造業、検針検品事業者へのインタビュー調査に基づき、中小 ロッ トでの一貫生産体制、高品質な流通加工、バイヤーズ .コン
ソリデーシ ョン等により、延期靭略の方向に向けた新たな生産 ・ロジスティクスシステムを構築 していることを明 らかにした。
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技術 な どを活用 し、川 上企 業、川 下企 業 が連
1
. は じめに
日本 のアパ レル企 業 の国際進 出の歴 史 は長
携 しなが ら、 どの様 に生産 システ ム、 ロジス
い が、最 近 で は中国が アパ レル 生産 の拠 点 に
テ ィクス システ ム を構 築 してい るか、 を明 ら
な ってい る。 しか し、 これ まで生産 を委託 し
か にす る こ とで ある。 以 下で は、まず従 来 の
て きた 中国企業 の 中には、
.単純 な縫製 な ど生
アパ レル事 業モデル の特徴 を把握 し、最 近 の
産機 能 だ けで はな く、在 庫 、物流加 工機 能 、
scM へ の取組 や 中国 を中心 と した グ ロー バ
さ らにはデ ザイ ン機 能 を担 う企業 まで現れ て
ル化 の動 向 を把握す るo そ の変化 を見 る視 点
きてい る。 需要サイ ドで は消費者 ニー ズの多
と して、
投機 ・
延 期 の原理 が有効 な こ とを指摘
様化 も進 んでお り、小 売業者 にはデ ザイナー
す る。次い で、中国 にお けるアパ レル の生産 ・
ズブ ラン ドか ら普及 品 にいた るまで品揃 え し、
ロジステ ィクス体 制 につ い て、イ ンタ ビュー
またそ の構成 を変 えてい くこ とが求 め られ て
調査 に基 づ き、その革新 の実態 を把握 す る。
い る。 この様 なシー ズ、ニー ズの変化 を うま
最 後 に、その意 義 と今 後 の研 究課題 につ いて
く捉 え、商品別 に投機 、延期 戦 略 を取 り入 れ
取 りま とめ る こ ととす るo
生産 システ ム、 ロジステ ィクス システ ム を適
2.従 来のアパ レル事 業 モデル と新 しい動 き
2
.
1 グ ローバ ル S CM の重要 性
切 に構 築す る試 みが始 まってい る。
本稿 の 目的 は、 中国 にお け るアパ レル 製 造
業 、検針検 品事業者 へ のイ ンタ ビュー調 査 に
繊維 産業 で は、他 の産 業 に も増 して グ ロー
基 づ き、 中国の保 税 区制度 、新 しい情報 通信
バル 規模 で の SCM 構 築 が重要 な課題 となっ
-1
37 -
ているD繊維産業 は多様 な企業か ら構成 され 、
国での代表的な原材料 と副資材 の調達パ ター
それ ら企業 間の分業 に よ りアパ レルが生産 さ
ンについてみ ると、従来 は 日本か ら素材 を輸
れてい る。 しか もアパ レルのサプ ライチ ェー
出す る場合が多かったが、現在で は現地 日系
ンは近年 グローバル化 が急速 に進展 してい る。
企業や 中国企業か ら調達す る場合 が増 えてい
この要 因 として、各 国の産業保護施策 のた
るo現地で調達 が困難 な高級服地や副資材 に
ついては欧州等 か ら輸入す る場合 もある。
め、早い段階か ら日本企業が海外現地で生産
中国での生産方式 については、従来は中国
を開始 した こと、国際競争が激 しくコス ト削'
減 のため労働集約 的な工程 を発展途上国に移
企業 との合弁方式 が一般 的で あったが、最近
管 した方が有利 な こ と等 があげ られ る。
では外資 に対す る規制緩和 を受 けて直接進 出
これまでの 日本繊維産業 の国際化 の段階に
す るケー スが増 えてい る。 また、委託加 工、
ついては、①関税等 の国境障壁 を克服す るた
企画輸入、開発輸入 、専用 ライ ン、補償 貿易
1
95
5-60年代)、②テキスタ
めの現地生産 (
等、様 々な生産形態 が模索 されてい る。
イル企業 を中心 とす る現地販売 目的の海外進
販売については、 日本- の逆輸入が主であ
出 (
1
970年代前半)、(
卦発展途上国の競争力
るが、高級品については欧米市場への輸出 も
拡大に対応 した現地生産 の見直 し (
1
970年代
一部行 われている。 また 中国での購 買力増大
後 半∼1
98
0年代前半)、④ 円高 に対応 して逆
に対応 し、現地販売 を拡大す る企業 もある。
輸入 を 目的 とした 中国 ・ASEAN- の進 出
2
.
2 延期 ・投機戦略
(
1
980年代後 半以降)が指摘 され てい るlo
第 4期 については、アジアのなかで も中国
サプライチ ェー ンにお ける生産 とロジステ
-の進 出が顕著 となったが、中国の急速 な経
ィクスの配置 を決定す る重要 な戦略 として、
済発展 とともに進 出地域 の変化がみ られ る。
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nd
延期 と投機 の組合せ があげ られ る。 Pa
日系繊維企業の 中国進 出は、①香港 を介在す
coop
er(
1
998
)
は、生産については最終的な製
る中国華南地域- の生産委託 (
1
980年代)、
品仕様 の決定地点で代表 させ 、 ロジステ ィク
②労働 コス ト削減 を 目的 とす る東北地域-の
スについては在庫配置で代表 させ る土 とによ
直接進 出 (
1
98
0年代後半 ∼1
990年代初 め)、
り、それぞれの延期 ・投機 を区分 し、 この組
③繊維産業集積地域 となった上海地域- の進
合せ によ り4つの戦略 を指摘 してい る(
図 1)
0
1
990年代後半以降)- と推移 してい る2。
出(
ロジステ ィクスj
投機
延期
分散在庫 集中在庫 .直送
本稿 の対象 とす る上海地域 のアパ レル生産で
は、 この指摘 にみ られ るよ うに、 日系企業間
だ けではな く、現地企業 の集積 を活用 した原
産
坐
材料 ・
副資材調達や工程分業が行 われ てお り、
日中企業間の新たな連携 関係 が模索 され てい
生産して在庫
投機
延期
機戦略
完全投
生産延
ス延期戦略
ロジステ イク
完全延期戦略
出所 :pa
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r(
1
998
)
図 1 延期 ・投機マ トリックス とサ プライ
る ところに革新性 が見出せ る。
このよ うな国際化 の歴 史 を背景 に、 日本企
チ ェー ン戦略の類型
業 は海外 に整備 した調達、生産 、販売拠点だ
けでな く、現坤企業 との協力 によ り、グロー
3延期一投機は一般に、時間的な分類と空間的な分類
バル なサプ ライチ ェー ンを構築 してい る。 中
に分けて議論される。空間的には集中在庫が投機で
分散在庫が延期とされるが、pag
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(
1
998
)
では、需要確定まで時間的に発注を延期して直送す
る場合が延期、見込みで市場の近傍まで在庫を分散
させるのが投機としているD
1 通商産業省生活産業局
2
(
1
99
4) による発展段階。
本木・
上野 (
20
01
)による時代区分。
ー1
38 -
アパ レル について、この戦略概念 を当ては
点か ら、サプライチ ェー ンにお ける 日中企業
める と、従来は多段階の生産工程の分業 を前
間の新たな連携や延期戦略 を支 える物流サー
提 とし各段階で在庫 を保有 し、在庫 は分散型
ビスについて分析す る。
であった。また各生産工程 を分業す る企業が、
生産効率化 を図 るため、生産で もま とめてバ
3・ アパ レル生産体制の革新 とその意義
ッチ生産 とす る場合が多 く、生産面 も投機型
わが国の市場ニーズに対応すべ く、中国に
で あった。す なわち、 このモデル での典型的
お けるアパ レル製造業が如何 なる生産体制 を
な完全投機型 のサプ ライチェー ンであった。
敷いてい るかについて検証す るために、わが
完全投機戦略 は、需要 がある程度予測可能 な
国の衣料品専門チェー ンおよび量販店衣料部
場合 には、各段階 にお ける規模 の経済や習熟
門の主要商品調達先 となっている上海のアパ
効果 を活用で き、優れた戦略であるQ
レル製造業 2社 にインタ ビュー調査 を行 った。
しか し、現代の成熟化 したアパ レル市場で
両社 はわが国のアパ レル販売 企業か ら高 く評
は、需要変動が激 しく、需要予測 の失敗 に よ
価 され ているのみ な らず、アパ レル生産 に求
り売れ残 りや品切れ損失が生 じやす くなって
め られ る市場需要 との連動性 でも優れてい る。
い る。す なわち、完全投機戦略 によるデ メ リ
ッ トが発生 しやす くなっているのである。 ア
3.1上海 朋雅美 (
ボ ンア ミ)時装有限公司
パ レルの場合、
組立型機械 工業製品 と異な り、
上海朋雅美 (
ボ ンア ミ)
時装有 限公 司は上海
その商品の性格上、完全延期型戦略 を採用す
市浦東 区に本社 があ り、アパ レル製品の生産
ることは困難 である。 しか しなが ら、情報技
を行 うメーカー として 1
00%中国資本 で 1
994
術 の進展や物流サー ビスの開発 によ り、延期
年 に創設 された企業である。染色、刺繍、プ
型戦略の要素 を取 り込む ことが可能 になって
リン ト、裁断、縫製、仕上げ、検品、包装 と
いるDアパ レル産業では、情報 ・
物流 に係 わる
いったアパ レル製品の製造工程 をほぼ一貫体
技術革新 を導入 し、サプ ライチェー ンをよ り
制で行 ってい る。製品はカ ッ トソー、スポー
需要変動 に対応 した柔軟 な延期型 に してい く
ツ ウェア、ベ ビー ウェア、その他である。輸
ことが、重要 な戦略 となっている。
出製品の分類 は、ベ ビー ・子供服 40%、婦人
南(
2003)
は、ZARA の ビジネスモデル を短
服 40%、紳士服 20%で、日本 の量販店、卸売
サイクル開発 とス ピーデ ィー な市場投入 を実
0%を輸出 して
業向けに約 90%、欧米 向けに 1
現 した延期的事業モデル と分析 しているが、
敷地約 3万平
いる。工場 は、4つの縫製工場(
生産 ・ロジステ ィクス ・販売(
商品開発)
の連
600名、年間約
方 メー トル)
で、従業員 は約 1,
結の実態 に関す る分析 は行 われていない。本
800万枚の生産能力を有す る。2005年度の輸
論文では ロジステ ィクス(
バイヤ-ズ ・コン ソ
出総額 は 2,
300万 ドル に達 してい る。国内売
リデ ー シ ョン)による生産 と販 売 の結合 の あ
上高は 5,
000 万人 民元 を超 えてい る。 2002
り方、生産工程 の内面の分析 を行 ってお り、
年 に SGS社の I
SO9001お よび 、I
SO1
4001
それ らの全体的プ ロセ スを措写 し、その整合
を取得す るな ど品質面の高 さを維持 している。
ARA の場
性 について検証 している。 また、Z
同社の経営戦略及び生産体制 を調査す るた
合 は 1企業に よる完全な製販 の垂直統合モデ
め 2006年 9月 1日に同社 を訪 問 し、Zhang
ルであるが、本論文は、生配版 のアライア ン
GuoBi
n総経理お よび Ji
angYouFen国際貿
ス ・モデルである とい う点で、一般性が高い
易部副経理権管理担 当にイ ンタビューを行 っ
事例 であるとい う点で も先行研 究には無い新
た。 その結果、同社 の経営戦略の特徴 として
規性 がある。以下の事例では、この よ うな視
以下の点が明 らかになった。
- 139-
を調達す るわが国の量販店衣料部 門担 当者 に
① 小 ・中ロッ ト・短納期生産
同社 の製 品は、ニ ッ トや カ ッ トソーな ど比
よれば、従来は量販店が原材料 を供給 し生産
較的軽衣料 タイプの中級 商品であ り、 ここに
を委託 していたが 、
2005年 頃か ら上記①∼⑥
ファッシ ョン性 を加 味 して、このクラスの製
の よ うな特徴 を持っ体制 に移行 した。本事例
500枚-)・短納期 生
品 としては中 ・小 ロッ ト(
企業 に、従来型 の委託加 工の受 け皿 としての
産体制(
糸があれば 40 日程度)を実現 し、徹底
縫製工場 か ら脱皮 を図 り、主体的 に積極的か
した品質管理 に よって輸 出商品 としての競争
つ戦略的な展 開を開始 した 中国アパ レル企業
力 を創 出 してい る。 また近年 、生産す る商品
の姿 を見 ることが出来 る。
アイテムの増大傾 向が認 め られ る。
② 一貫生産体制 に よる納期 の短縮 ・晶質 の
3.
2上海宜華葺業有限公 司
上海宜華賓業有限公司は、上海市金 山区に
確保 と生産体制の柔軟性 を実現
製糸か ら染色、縫製 、仕上 げまで社内に一
あるアパ レル製品の縫製 メーカーで輸 出品を
貫生産体制 を敷 くことで、
生産体制 の柔軟性 、
中心に生産 し、従業員約 3
,
000名 、売上高約
短納期、晶質の維持 ・.
向上を図ってい る。 こ
5,
500 万 ドル を達成 している中堅企業である
の点、混合生産体制に よるライ ンの柔軟 な運
仕 向地は従来、日本 7
0%、米国 30%であった
用が注 目され る。納 品 リー ドタイムを短縮す
が、近年米国向けが 5
0%まで伸びてい るQ 日
るため、受注 ロッ トを分割 し浪流生産 を実施
-1
6年 間の取引実績 を持つ。
本 の量販店 とは 5
。
す ることもある とい う。
同社 の経営戦略及び生産体制 を調査す るた
③ 日本 人デザイナー の内部化 による 日本の
量販店向け提案型 マーケテ イングの実施
従来、デザイ ンは販売 国で行い、 これ に基
づき中国では生産 のみ を受託す るケースが大
め 2
006 年 9 月 1 日に同社 を訪 問 し、Lu
Ji
nGuang理事長お よび AnTi
ng
Ji貿易 2部
マネジャー にイ ンタビュー を行 った。
(
丑 生産体制
半であったが、同社 では 日本人デザイナーを
3,
000名 で ミシン 88台、年間 1
,
000万枚 の
雇用 し、 日本 の消費者 の噂好 を反映 したデザ
生産能力 を有す る。 ロ ッ トは 200枚 -5,
000
イ ンを 自社企画 し、 日本 の量販店 向けに内覧
枚 まで幅広 い生産が可能 で ある。1
00%輸 出商
会 を行 うな ど、
提案型 の営業 を開始 してい る。
品を生産 してお り、 7箇所 の工場せ 運営 して
④ 素材 か ら検品まで徹底 した品質の管理
いる。 4 シー ズンの展 開で、先行的な発注内
素材 の段階か ら、最終 出荷検 品(
全量検 品 と
示 に よる予約 で前発 注量 の約 3
0%が確 定す
抜き取 り検 品の併用)
に至 るまで、徹底 した品
る。パ ター ンナ-2
00名 を抱 えてい る。仕様
質の管理 を行 ってい る。
書 を受 けるとサ ンプル を作成 し航 空便 で送 る。
⑤ 新素材 の導入
AD.
CAM デー タ
デザイ ンが決定 され る と C
製 品の安全性や 晶質 向上 を 目的 とした新素
に展 開 し、裁 断一
縫製 工程 に投入 され る。生地
材 の導入 に も積極的である。
リスクを当社 が約 90
%負担 してい る。納期 は、
⑥ ベ トナ ム等海外-の生産拠点の進 出計画
綿 ・ポ リエ ステル物で 25
-30日、毛織物 で約
近年 の中国国内の労働 市場 の変化や生産量
45 日で、 ロッ トにもよるがお よそ 60日以下
の拡大を視野 に入れて、ベ トナム方面-の生
での納品が可能 ある。
産拠点の展開投資 を計画 してい る。
② 能力 の拡大 と顧客 の選別
以上、同社 はアパ レル 関連 の供給機能 の う
同社 は徹底 した品質管理 と販売先 との綿密
ち一部商社機能 まで取 り込み、利益振泉の内
な調整 による晶質 の確保 お よび安 定的供給体
部化 を図 ってい るよ うに思われ る。 同社製 品
制 が強みである。 日本の量販店での研修経験
-1
40-
のあるスタ ッフが 日本 の量販店 のバイヤー と
イクス・
サー ビスを開発 している。以下では、
・
F
AXや直接交渉等 による密接な情報
アパ レル に固有 な検 品 ・
検針 等 を含む流通加
交換 を行 い、 日本 の市場 の状況 を深 く理解 し
工サー ビスの事例 と、それ を組み込んだ新た
た取引で高い信頼 を得てい る。 この結果 、取
なバイヤーズ・コンソ リデー シ ョン・
サー ビス
引量が拡大 し、本社工場 の拡張計画が進展 し
の開発 について現状 を把握す る。
メール
ている。品質は、工程 ご とに検査 を行 い、不
良率な どの生産実績 を厳 しく管理 して晶質 を
4
.
1流通加工サー ビスの高度化
高めてい る。取引先 との相互理解 と取引実績
従来、アパ レル商品では、 日本 の消費者の
を重視す るため、同社 か ら見て良好 とはいえ
厳 しい品質要求 に対応 し、 日本 国内で検 品 ・
ない取 引内容 を強要す る販売先 とは取引を制
検針 、再仕上 げ、再包装等の流通加 工が行わ
限す る等の通常 とは逆の選別 が行われ てい る。
れて きたo Lか し、 日本 国内で このよ うな流
以上の事例研究の結果 、中国のアパ レル メ
通加 工を行 うと、高い作業費がかかるだけで
ーカー は中級 クラス以上 の輸 出用製 品の生産
な く、在庫が多段階化 しリー ドタイムが伸び
体制 において、生産規模 の拡大 ・海外工場展
るこ とになるD 日本 国内での流通加工 を中国
開な ど自主的な資本投資姿勢 を示 してお り、
に移管 し、直送型 の ロジステ ィクスに移行す
戦略的な方 向性 を明確 に し始 めてい る。 もは
るた めには、中国での流通加 工の精度 を上げ
や、委託加 工5の域 を脱 してい るといえる。さ
ることが重要な課題 となってい る。以下の事
らに、川上 ・川 下機能 を内部化 し、一貫生産
例 では、情報技術 を活用 し、きめ細かな労務
体制 を強化す る とともに、販 売先 の選別 な ど
管理 を行 うことによ り、高度な流通加工 を可
主体的に リスクを とりつつ も投資収益性 の確
能 に している。
保 を強 く意識 した経営姿勢 を打 ち出 してい る。
上海華和国際儲運有限会社(
本社:
上海 市逸
また、混合 ライ ン生産等 、一貫生産化 を指向
仙路、物流加 工 ・検品セ ンター:
上海市延安東
しつつ も、′
J
、ロッ ト・短納期 ・柔軟 な生産体
路の東海商務セ ンター内)
は、輸 出繊維製品の
制の整備、品質管理 の徹底 な ど激 しく変化す
流通加 工業務 を行 う日系の物流専業者 で、一
る国際市場-の対応 を着実 に図 りつつある。
級国際貨物運輸代理企業 の免許 も持ち、輸 出
入取扱業務、保税倉庫業務 、輸 出監管倉庫業
4
. ロジステ ィクス体制の革新 とその意義
務等 を行 ってい る。
日中間の企業連携 に よるアパ レル の SCM
わが国の衣料品が中国 の出荷物流拠 点で ど
では、生産体制の改革 に加 えてロジステ ィク
の よ うに検品 ・検針、流 通加 工が実施 されて
ス体制の改革が重要な役割 を果た してい る。
いるかを検証す るために、2006年 8月 30 日
変化す る 日本市場 のニーズに対応す る うえで、
に同社の山之内隆夫総経 理 にイ ンタビュー を
在庫 を集約 し市場 に直送す るロジスティクス
行 った。その結果、
次 の点 が明 らかになった。
体制の構築が求め られ ている。そのよ うなニ
① 厳正 な検品 ・検針 の履行
ーズに対応 し、物流事業者 は新たな ロジステ
中国の縫製 工場か ら集荷 された商品 を厳正
に二重検品 ・検針 し、良品のみ を出荷す る。
日通総合研 究所 (
200
4) によれ ば、委託加 工は加
工貿易 とも呼ばれ 「
資材 ・部品を保税 で輸入 し生産
された完成 品 (
半完成 品) を輸 出す る貿易形態 」(
p.
1
54)
である。外国企業が中国の製造企業 に対 し生産
のみ を委託す る方式であ り、素材調達か ら販売まで
自社で行 ってい る事例企業は委託加工の域 を明 らか
に脱 しているn
不良品はサプライヤーが 当セ ンターで修理可
能 な ものは修理す る。
② 検品や 出荷状況 の情報交換
検 品 ・検針 、流通加工作業の進捗状況 をエ
クセル表 とデ ジタルカメ ラの画像お よび コメ
-1
41-
ン トのメール ・I
P電話等を活用 し、折衝経験
び輸入通関用船積書類の送付、⑧輸入通関、
の長い中国人の社員が 日本のバイヤー との間
⑨小売店の指定場所 までのコンテナ配送、⑩
で綿密な情報交換 を行 ってい る。
船積み進捗管理な どである。 このよ うな従来
③ きめ細かい出荷 コン トロール
型のバイヤーズ ・コンソリデーシ ョンをベー
国際海上輸送 による出荷管理 は、積載効率
スに、最近一部のコンソリデー ターが、上海
の向上 と納品 リー ドタイムの重視の 2つの管
外高橋物流園区 (
以下 「
物流固区」と略称)7
理 目標 の間でバ ランスを とる必要があるO 同
での一時保管及び物流加 工を一体化 させた新
社では、輸入者 との綿密な情報交換 によ り、
たなサー ビス8を提供 してお り、注 目され る。
これ らの優先順位 を判断 し、 ロッ トを組み合
最近の小売店は、商品の売れ残 りや陳腐化
を回避す るため延期戦略に基づいてぎ りぎ り
わせて最適出荷 を行 うよ うに している。
まで発注を控 え、発注後 は短時間で輸入 しよ
4
.
2 国際混載直接物洗 システムの構築
うとしているQ これ に対 し、アパ レル生産業
バイヤーズ ・コンソリデーシ ョンに関す る
者 に とっては投機戦略が理想である。そ こで、
確 たる定義 はない6が、 「
特定の輸入者 のため
小売店 と生産業者は連携 して、延期 と投機 の
に、その輸入 者 に よって指定 され た フ レイ
バ ランスを とりなが ら、 リー ドタイムの短縮
ト・フォワーダー (
バイヤーズ ・コンソリデ
と物流 コス トの削減 を図るサプライチ ェー ン
ーター :以下 「
コンソリデーター」 と略称)
の再構築を模索 している。 このよ うなニーズ
の海外倉庫で、その輸入者 によって買い付 け
に対応 したサー ビスが、
一時保管、
流通加 工、
られた コンテナ単位 に満たない小 口単位 の貨
バイヤーズ ・コンソリデー シ ョンを組み合 わ
LCL貨物 ;Le
s
st
hanCont
ai
ne
rLoad)
物 (
せた国際混載直接物流なのである。物流園区
を集荷 し、その特定輸入者 向けの専用 コンテ
設置以前には、バイヤーズ ・コンソリデーシ
FCL;Ful
lCo
nt
ine
a
rLo
ad)に詰 め合わ
ナ (
ョン自体が制度上不可能であ り、これ を組み
せて積載率 を向上 させ輸送す ることで、物流
込んだ国際混載直接物流は制度改革 を利用 し
コス トの削減 を図ろ うとす るシステム」 とい
た革新的なサー ビス と評価 できる。
うことができる
中国における国際混載 直接物流の ビジネス
。 .
バイヤーズ・コンソリデーシ ョンに関 して、
モデルは どのよ うな ものであろ うか。それは、
コンソリデーターが行 う主な業務 は、①本船
ズケジュールの作成、②ベ ンダー とコンタク
トし、発注書 に基づ く貨物の追い出 し (
納入
状況の確認)、
③海外の指定倉庫での荷受 け時
に異常有無の確認 、
④船会社-のブ ッキング、
⑤入出庫 ・保管 ・バ ンニング及び船会社のコ
ンテナ ・ター ミナルまでのコンテナ運送、⑥
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銀 行 買 取 り用 FcR (
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i
pt
)の発行、⑦ シ ッビングア ドバイス及
6
バイヤーズ ・コンソリデーシ ョンに関 してはイ ン
タ-ネ ッ トのホームページの中で、業務 内容 として
紹介 してい る企業は多いが、具体的に著述 してい る
のは大阪商船三井船舶編 (1994)、社団法人 日本海運
集会所 (
2
004)程度である。論文に関 しては、橋本
(
2005
)以外見 当た らない よ うに思われ る。
7上海物流園 区は 、2
003年
1
2月 に交付 された国務院
弁公庁か らの上海外高橋保税 区 と外 高橋港 区の試験
004年 4月の同意す る
的連動に関す る書簡 に基づ く 2
公告 によって制定 された保税地域 である。物流圃区
の特徴は、①貨物搬入時に増値税還付が可能である
こと、②非居住者名義の保管が可能であること、③
簡単な物流加工作業が可能であること、④第三国か
らの貨物 を物流圃区内で リ ・コンソ リデーシ ョンを
2005)参照。
行 うことが可能な ことである。石原 (
& 中国で正式 にバイヤー ズ ・コン ソリデー シ ョンを
F
S免許 が必要である。
行 う場合には、交通部か らの C
物流園区設置以前は、免許 を有 しない コンソ リデー
ターが暗無下で類似サー ビスを行 ってきたが、設置
以後 は免許 を有 していない もので も正式 にバイヤー
ズ ・コン ソリデーシ ョンが可能 となった。 さらに、
従来は単に複数ベ ンダーの貨物 を同一 コンテナに詰
めるだけであったが、最近は物流固区で複数ベ ンダ
ーの貨物 を店別 に同梱 し、バイヤーズ ・コン ソリデ
ー シ ョンで輸送す る新 しい形態 が生 まれ て きてい るd
-1
42-
①在庫量 とキャッシュフロー を改善す るため
画か ら店頭販売まで約 2ケ月 に短縮 されてい
に多頻度小 ロッ ト単位 で買い付 けた製品を上
る。高級なデザインや特殊な糸、素材 を利用
海市内の普通倉庫で検針 ・検品を行い (
良品
す る場合 は、 1 ケ月以上 リー ドタイムが伸び
のみを船積みす るため)、
②物流園区での非居
るものの、普及品の場合はある程度在庫 リス
住者名義での仮置 き ・店別仕分 けを し、③効
クが軽減 できるため (
投機戦略が適用できる
率的な輸送 と一貫 した情報管理 を行 うための
ため)、短 くできること、また工程上の工夫、
バイヤーズ ・コンソリデーシ ョンで輸送 し、
材料の使い回 しな どによ り工程 の短縮が図れ
④ コンテナ ・ター ミナルでの輸入通関後、ク
ることが明 らかになった(
図 2)
O
これは、投機 ・
延期の視点か らは、次のよ う
ロス ドック機能 を使 って各店舗 まで配送す る
一気通貫による全体最適 なロジステ ィクスを
に理解す ることができる。すなわち、中国か
構築す ることである90
らわが国のアパ レル市場-の商品供給は、国
さらに、国際混載直接物流 を支援す るため
際混載直接物流 に加 えて、開発 ・デザイ ン機
に重要なことは、適正在庫を維持 しリアル タ
能 ・自主営業機能や生地 ・素材 の生産 ・確保
イムでの情報 を把握す るために、
広域在庫 (
棉
まで機能 を集 中化 しつつ、混流生産体制が可
送中の製品 も含 め)・進捗 ・発注な ど全体のプ
能になった中国の製造業の供給体制の再編 に
ロセスを一貫で網羅 した情報管理システムを
よ り、 よ り、延期的な体制に移行 しつつある
構築す ることであるoその結果、全体最適な
ことが確認 された。時間的には、生産 とロジ
輸送 システムが構築 され、生産 ・輸送 リー ド
ステ ィクスの両面において リー ドタイムを短
タイムの短縮 とコス トの削減が図 られ る。
縮化 し、販売時点に引き寄せ るとい う意味に
おいて延期化 の方向に近づけている。
5
.新たな生産 ・ロジステ ィクス体制の意義 と
Pag
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1
998
)
のマ トリクスでいえ
課題
ば、完全延期戦略の方向に進んでいることが
本稿 では、中国のアパ レル生産 ・ロジステ
確認 された。ただ し、品揃 えの形成 とい う意
ィクスシステムで どのよ うな革新が導入 され
味では川上の製造段階に投機化 されている。
ているかを、インタビュー調査 によ り_
把握 し
この投機化 は実需が確定 していない時点で見
た うえで、投機 ・延期の理論的枠組み を援用
込み大量生産 を行 うとい う意味での.
投機化で
し分析 した。その結果、従来は完全投機型で
はな く、 どの店舗でいっか ら何 を何枚売 るか
あった生産 ・ロジステ ィクスシステムが、
延期
が受注時点で決まっていて、 しかも返品は し
化に向かっていることが明 らかになった。
ない とい う意味での確定需要情報 に基づ くノ
J
、
標準的なアパ レル製品の例 をみ ると、CAD
ロッ ト生産である。それ によって、事前に生
活用、一貫生産、バイヤーズ ・コンソリデー
産 と輸送、仕分けが計画的に行われ、グロー
シ ョン、クロス ドッキング等 によ り、商品企
バル調達ネ ッ トワーク全体の中で不確定在庫
を持つ必要が無 く、海外の工場か ら国内の店
9橋本 (
2005)は量販店向け製 品の物流 コス ト削減の
手段 として、①バイヤーズ ・コン ソリデーシ ョン、
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ki
n
g)、③ vMI(
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② クロス ドッキング (
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di
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nt
or
y)、④ ミル クラン、⑤非居住者在庫
をあげてい る。新バイヤーズ・コン ソリデー シ ョンは、
中国での① と日本での② を組み合わせた もの と評価
できるo Lか し、イ ンフラが悪 く輸送途上での盗難
や カー ゴダメー ジも多い中国で、④ による買付 けは
容易でない。また③ 、⑤ については、制度、契約等 、
多 くの問題が残 されている。
舗まで直接供給す ることが可能 になっている。
その意味で国際物流は延期 と投機 の新たなバ
ランスを実現す るための仕組み といえよ う。
本研究では、代表的な事例 をベースに中国
にお けるアパ レル生産 とロジスティクスを分
析 してきた。今後の課題 として、企業事例数
を拡大 し、本研究の知見の妥 当性 をさらに検
4
3
-
-1
証す るこ とがあげ られ る。 またアパ レル 商品
謝辞
は多様 であ り、本研 究の主な対象 とした 中級
本研 究の実施 に御協力 いただいた上海朋雅
品だけでな く、高級 品や低価格品について も
美時装有限公 司、上海宜華賓業有限公 司、上
研 究対象 を拡大 してい くことが必要であるo
海華和国際儲運有限会社 の皆様お よび関係各
位 に深 く感謝 申 し上 げます。
図2
中国におけるアパ レル生産 とロジスティクスの流れ (
中級品の例)
参考文献
(
1
)石原伸志 :上海外高橋保税物流園 区での一時保
管業 務 に関す る一考 察 、 日本 港湾 経 済学会年 報 、
No.44、pp.1
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山堂 、1
994
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87特
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川嶋弘
尚、根本敏則編著)、勤草書房 、pp.
57
-80、1
998
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s
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1
9,
No.
2,pp.
1
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