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浅野誠旅シリーズ3

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浅野誠旅シリーズ3
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
浅野誠旅シリーズ3
フィンランド(2010年、2011年)
付 エストニア・スウェーデン
2013年11月制作
写真は「冬の宮殿」
から見たトゥールー
湖畔
湖の向こう岸は、ヘ
ルシンキ駅などヘル
シンキ中央部
1
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
はじめに
旅シリーズでは、「沖縄各地」「台湾・バリ」につぐものだ。
ここ15年ほど、1年にだいたい1回ぐらい海外に出かけている。でも、年齢相応に、だんだん
おっくうになり、少しずつ減ってきている。なにか、強い誘いがないと動けなくなってきている。
いまでも、友人のいるアイルランドやアメリカなどに、いつか行きたいとは思っている。また、大
陸中国、韓国、ベトナムなどにはいきたい、と思う。
さて、今回のフィンランドは、フィンランド経済を研究対象にしている娘夫妻の誘いがきっかけ
だ。誘いがあった時、以前から関心があったので、「渡りに船」で出かけた。2回目は、かれらと
の共同研究という要素も多少含めた。その研究報告を含めて、フィンランド学習・発見など文章中
心のものは、改めてまとめて、このホームページで紹介するつもりだ。おそらく2014年春のこ
ととなろう。
2010年には、エストニア、11年にはスウェーデンに、ほんの少しだけの旅もしたので、そ
の報告も含める。
いずれも、とても美しい光景にであったので、写真を楽しんでいただきたい。
目次
旅日記 2010年9月
ヘルシンキ街風景
シベリウス公園
生活風景
P4
岩教会
セウラサーリ野外博物館
2
ヘルシンキ大学植物園
スオメリンナ
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
キアズマ国立現代美術館
ヌークシオ国立公園
観光船=クルーズ船
セウラサーリ再訪
ヘルシンキ南部散歩
屋内市場
カイヴォプイスト公園
元老院広場
大聖堂
フィンランド料理
物価・生活
美術作品・工芸品
クラフト展
鬱を直す器具
起業を支えるテクノポリス
ラップランド料理
土産物
ウスペンスキイ寺院
クラフトショップ
湖・中央駅・ベリー
ヘルシンキ大学
デザイン博物館
学生たちのコスプレ
エストニア首都タリン
古風なエレベーター
保育園
植物園再訪
テンペリアウキオ教会再訪
買物
振り返り
アモス・アンデルセン美術館
滞在型個人旅行のおすすめ
旅日記 2011年9月
ヘルシンキ到着と森散歩
オリンピック公園
柳
花々
ログハウス展示場
デザイン見本市
P80
セウラサーリ再訪
トゥールー湖
トラムの検札
フィンランド語
2010-2011
ヘルシンキ街風景
自動車運転
ストックホルム船旅
農村風景
紅葉
森歩き・市民農園
冬の庭園
ムーミン絵本
ストックホルムの建物
扉と表札
変わった競馬
きつつき
土産物―――サルミアッキ ぬいぐるみのムーミン ふくろう
装飾プレート 花カード 巨大なしゃもじ 工芸品
3
鉄道
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
旅日記 2010年9月
中部国際空港管制塔
9月6日
今日も暑い愛知県
沖縄、特に玉城は涼しく30℃止まり。しかし、愛知県は連日
35℃以上。フィンランドのヘルシンキは昨日 12℃。
世界も日本も様々だ。
ヘルシンキ到着・携帯普通で大苦労
9月6日
15時前ヘルシンキ空港到着.時差6時間(サマータイム)のため,日本時間は21時だ.
満席のフィンランド航空だが9割は日本人客.しかし,ヘルシンキでは降りず,トランジットでヨーロッパ各
地に向かう人がほとんど.
ヘルシンキが,ヨーロッパのなかでは日本から一番近く(搭乗時間は9時間30分)
,ヨーロッパ各地への起点
になるためらしい.毎日ほぼ同時刻に,成田,中部,関空から到着し,各地への便が接続している.
ヘルシンキで降りる人が少ないので,入国手続きや荷物受け取りなども大変スピーディに進む.飛行機到着か
ら20分で,すべて完了して空港からヘルシンキ中央駅までのバスに乗る.日本の国内線よりずっと早い感じ.
その後,ちょっとした「事件」二つ.
国際対応に切り替えたはずの携帯電話が,
「圏外」表示のままで,使えない.先にヘルシンキに来ている娘たち
と連絡がとれない.ともかくバスでいく.
迎えにきているはずの娘たちがいない.後でわかったが,携帯電話連絡を待っていたとのこと.
到着したヘルシンキバスターミナルで30分待つ.そして,意を決して,これから滞在するマンスリーマンシ
ョンめいたところへと動き始める.その途端に,娘たちが現れる.喜びの再会.このまま私がスタートして行き
違いになったら,大変なことになっていた.
はらはらドキドキのヘルシンキ生活スタートだ.
余談
ヘルシンキバスターミナルの30分での発見
そこの広い歩道は,スケボー青年たちの練習場.こんなところで練習とは,驚き.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
通行する人たちが,胸をはって堂々と,足早に歩いている光景が,健康的に感じる.
バスの運転手さん.温かみがある親切な応対.途中でおりたお客さんに道案内もしている.
ここでは,ほぼどこでも英語でやっていけるということは,聞いていたが,その通りのようだ.
楽しみにしていたフィンランド旅.ちょっと長めだし,計画というか,予定がない旅なので,ちょっとした滞
在という感じだ.
こんな楽しい旅・滞在に招待してくれた娘夫婦に感謝である.
そこで旅日記を始めることにしよう.
本文中にも詳しく書くが,このブログ投稿に至るには,かなりの苦労話がある.紆余曲折を経て,4日目の9
月9日にようやく成功した.
ヘルシンキ街風景
彫刻像 中央駅
ヘルシンキに滞在し始めたころにとっ
た街風景の写真をいくつか紹介しよう。
三人の鍛冶屋像
ヘルシンキ中央の歩道に立つ.
街には、
こうした像があちこちにある.
さすがデザインの街というべきか
ヘルシンキ中央駅ホーム。近郊通勤列
車はもちろん、全国とつなぐ。ロシアのペトロブルグともつなぐ。
広軌鉄路で、ロシアと同じだそうだ。1917
年までのロシア支配時代に鉄道が作られたためだ
ろう。
中央駅としては、
割合こじんまりした感じだと、
はじめは思ったが、
後でそうでないことに気づく。
なかなか広く、十何番線まである。人口五百万
で、沖縄の4倍、愛知より少ないということを考
えに入れると、すごくでかい。自動車社会の今日
にあって、公共交通機関がよく健闘していると思
う。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
私たちのヘルシンキ生活風景
日本との時差は6時間なので,時差ぼけは少ない.
寒さ対応にしばし苦労しそうだ.5 日は 12 度だった
そうだが.私が到着した 6 日は 18 度あった.でも夕方
からぐっと冷え込む.
部屋の暖房配管のスウィッチをさわってみると,す
でに暖房が開始している.
ここは,ヘルシンキど真ん中.ヘルシンキ中央駅か
ら徒歩7,8分の街中.
商店街にある長期滞在用のアパ
ートメント.最高4人まで泊まれる.前の通りは石畳道で,100〜200年以上の歴史を感じる.
夕食風景
上写真は、フィンランドでの最初の食事.アパ
ートメントで娘製作.ウィーン生活をしていたこ
ろのスタイルだそうだが,彼女が招かれた家での
食事と似ているとのこと.
黒パンに何かを塗って,チーズ,ハム,トマト,
キュウリを載せる主食.
そして,野菜スープ
右はアパートメントの室内写真
正面がキッチン。食器や調理道具付き。キッチ
ンの上のロフトに2つのベッド。左側のソファを
広げると大きなダブルベッド。右側にテーブルと椅子
写真にはないが,手前には机とテレビ。写真奥には,玄関,物干場,バストイレ、洗濯機など。
結構快適な空間だ。日本でいうと、マンスリーマンション生活のようなもの。宿泊費が数倍異なるだけでなく、
外食になってしまうホテル住まいと比べれば、数倍以上の安価で、長期滞在できる。外国暮らし経験のある若い
人は、なかなかいいアイデアをもっているものだ。
生活スタート コンピュータ・インターネット事情
9月7日
午前、港の屋外市場まで出かける.
野菜・果物,そして,季節柄だろう,きのこ類がいくつも豊富に出ている.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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いくつか購入する.他にみやげ用の小物類.水
彩の風景画など.
日本各地の朝市にちょっと似た感じ.
この港風景は,11年前,そして15年前に訪
問したカナダのヴィクトリアに似ている感じだ.
その後,緊急用に携帯を持たないといけないと
いうので.中央駅近くのノキアの店(右写真)に
行くが,10時開店ということで,後ほどに,と
いうことにする.
※ 後に訪問。
中は広い。
さすが携帯の本場だ。
ノキアは世界最大級のIT会社だ。
経済研究者である二人が別のところへ行くので,私は先に帰り,お留守番.
洗濯物干しを終えて,今,日記などを書いている.
ここのコンピュータ事情はいい.
今使用しているのは,婿殿から借用している携帯パソコン
始動すると,
「ネットワーク接続環境にあります」というメッセージが出る.
そこで,婿殿にセットしてもらう.無線で20以上の接続環境が用意されている.ビックリだ.リナックスと
いうこの機種に合う接続を選んでもらう.たちまちインターネット可能となる.
そこで私のブログにアクセスする.
名古屋での生活指導学会参加からの連続の旅なので数日ぶりのブログ再会.
そして,記事投稿に挑む.ところが,パスワードを忘れている.いつもオートマチックにやっているので,記
憶していないのだ.沖縄に連絡して,調べてもらうことにした.いよいよフィンランドからのブログ投稿ができ
そうだ.
たった一つのブロードバンド環境ができて大喜びの玉城とはおお違いだ.さすがIT王国フィンランドだ.
ところで,このリナックスパソコン.リナックスには,いろいろな思い出がある.
その1 アメラジアンスクール校長をしているとき,机上にあったのが,リナックスパソコン.ところが,使
用方法が分かる人がいないので,宝の持ち腐れ状態が続いた.
その2 ある全国紙記者が,私のワークショップについて電話インタビューしたが,かれが私のワークショッ
プを評して「ウィンドウズ型ではなくてリナックス型ですね」と話した.
無料で誰でも使え,独占的ではなく誰でも活用発展させるものだ.
その3 そして,そのリナックス誕生の地がフィンランドなのだ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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左は、
ヘルシンキ中央駅を正面から写す。
手前左側からトラムが走ってくる。
岩教会・博物館・携帯電話購入
9月7日夕方
午後,歩いて観光スポットなどを回る.
まず近くのカンピを通り,テンペリアウキオ教会へ(左下写真)
自然の岩を切り出して,半地下に作った教会
スピリチャルな雰囲気を作り出すのに絶好.しかし,観光客がたくさんで,雰囲気が感じにくい.
フィンランドは,この教会もそうだが,ルーテル派プロテスタントが多い.
次は,歩いてすぐのフィンランド国立博物館(右下写真)
石器時代・鉄器時代の展示からすぐにカソリック時代・ルーテル派時代のキリスト教展示に移る.そして,大
公国時代へ.というように,歴史に『ブチ切れ感』を持たせる流れ.スウェーデンやロシア支配などの狭間で困
難を強いられてきたフィンランドの特徴を反映しているのだろうか.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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次に,
歩いてすぐ,
国会議事堂の前を通る.
(右写真)
そして,午前中の開店前に行ったノキアの店にいき
携帯電話を買う.そして,すぐ近くにあるキオスクで
プリペードカードを購入.
わずか10分の買い物,しかも100ユーロ(1 万1
000円ぐらい)で,国際電話/国内電話が使えると
いう.これまた日本では信じられない話だ.IT・携帯
王国ならでは話だ.
セッティングは,簡単だとのことだが,説明書はフィンランド語/スウェーデン語なので,少々心配.心落ち着
いてからやるつもり.
そして.スーパーで買い物をして帰る.
スーパーではハーブティーを探す.
英語表示がある商品はいいが,ハーブティーは,フィンランド語とスウェーデン語表示商品がほとんどだ.仕
方がないので,絵でどのハーブが入っているか推理する.でも適切なものが見当たらないので.ミックスしたも
のをひとまず買ってみる.
ヘルシンキ大学植物園
9月8日午前
ヘルシンキ大学植物園が,中央駅の向こう側にある.だ
が,行く途中で,道を間違え,15分でいけるところを2
5分かけてしまう.駅周辺の道が多少入り組んでいる.カ
ンで行ったのが間違いの元だった.
植物園を取り囲むように,高さ10〜20メートルの大
木が並ぶ.樹齢は100〜200年だろう.
そして,その間にグラウンドがいくつかあり,クラブハ
ウスというか,道具入れの箱状のものがある.多分ヘルシ
ンキ大学の運動部の練習場なのだろう.その一角に,大き
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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な紫陽花の花を見つける.アジサイだ
というのは,推理だが.
周りを半周ぐらいして入り口を見つ
ける.入場料は不要.中にある温室は
有料のようだ.温室には,この地の気
候では冬を越せないもののようだ.バ
ナナが見えた.そうした植物よりこの
地のものに関心があるので,外だけを
まわった.朝なので,訪れる人は少な
い.高齢者の方が多い印象.
表示が,フィンランド語とスウェーデン語なの
で,
名前はほとんどわからない.
ハーブ園だけは,
推理できるものがあった.
右は、キキョウの仲間だと思うが、名称不明。
落葉樹が結構あった.
もうすぐ落葉の季節になるだろう.
寂しくなるだろうと思う.トロントにいた時,夏は森の中
に家が少し見えるが,冬になって,家がいっぱい見えると
いう対照的な光景だったが,その時を思い出した.意外と
針葉樹は多くない.
草花園のなかで,赤く美しい花を咲かせているのは.絹
さやだった.実もたくさんついていた.この時期に絹さや
か,と意外に思った.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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ハーブ園は,フェンネルやラベンダーな
どの寒地のものが多いのは当然だろう.
リンゴの木には,可愛い実がいっぱいついて
いる.小さすぎて食用にはできないだろう.
バラの花は少し残っていたが,実が結構つ
いているのにびっくりした.バラに実がつく
などとは知らなかった.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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季節が終わったのか,花が少ない中で,
ひときわ目立ったのは,シャクヤク,もし
くはボタンだった.
帰る途中,建物のまえに子供たちがたくさん出てきて遊んでいる.
小学校だろうと
推理した.多分
休み時間には外
に出て遊ばなく
てはならないキ
マリになってい
るのだろう.ト
ロントと雰囲気
が似ている.
植物園脇の並木道
その後,中央駅前の国立アテネウム美術館に行く.近代絵画が中心
の展示.
沖縄とは対照的な色づかい.暗い色調.見ていると,深刻なムード
に引き寄せられる.そして,比較的シンプルな表現.そこに哲学的な
雰囲気さえ感じる.また,フィンランドの風景を織り込んだものが多
い.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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歩く人・フィンランド語・多文化
余談1 道行く人々は足早だ.背筋をピンと伸ばして,ぐいぐい歩くといった感じ.男女共にだ.沖縄とは対
照的だ.
余談2 フィンランド語の話
公式言語は,フィンランド語とスウェーデン語なので,この二つが併記されていることが多い.英語表記はそ
れほど多くない.購入したノキアの携帯電話の説明書もこの二つだ.だから,読むのは不可能だ.街角の表記で
も,英語に出会うことは少ない.
でも会話は英語が通用する.私よりはるかに上手な英語だ.この三つの言語が使用出きるというのが,ここで
は普通なのだ.
スウェーデン語の方は,時々推理できる単語に出会うが,フィンランド語,完璧に無理だ.でもローマ字表記
どおりに読めばいいというので,意味不明でも,読むことはできる.それで,日本語話者には親しみを感じさせ
る言葉だ.市場で絵を売っていた若者が,日本語は馴染みやすいと言っていたが,同じことだろう.
フィンランド語に似た言語は,隣のエストニア語だけだそうだ.
意味不明でも親しみを感じるので,ちょっとした楽しみをしてみる.ミコンカツという地名があった.初めは,
「みそかつ?」と感じたが,冗談で「未婚活」といったら笑われてしまった.
「カツ」というのは「〜通り」とい
う意味だ.私たちが滞在している通りは,エエリキンカツだ.
そういえば.ロシアも近い.今朝,セントペテロブルグからのバスを見た.久々にロシア語を聞いた.40 年以
上前に第二外国語でロシア語を学んだ私には懐かしい言語だが,まったく忘れてしまった.
余談3 多文化性
色々な地域から来た人々に出会う.色々な食事を出すレストランもあちこちにある.この近くでは,中国,ト
ルコ,日本,ネパールなど。多文化主義を原理とするカナダほどではないが,日本よりずっと多文化的な感じだ.
若者の大騒ぎ・シベリウス公園
9月7日夕方
シベリウス公園まで散歩
途中の地図上の緑地は墓地だった.木々に囲
まれて雰囲気を感じる.個人墓地が中心で,二
〜三人が一緒にならんでいる例も多い.
(右写真)
そこを抜けると海岸.最初はそこがシベリウ
ス公園かと思ったが,そこは,ただの海岸.
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高校生と思われる若者がクラス単位か,一緒にサッカーとかゲームに興じていた.
・・・後で気づいたが,あちこちで,しかも私たちのアパートメント一階でも,若者の大騒ぎ.どうやら高校
生ではなく,大学生の新入生歓迎行事のようだ.
一階はまさに「飲み会」で,順々に飲ませていく
掛け声がすごい.
「いっき,いっき」
「もういっぱ
い,もういっぱい」
『ガンバレガンバレ」といって
いるように聞こえた.
海岸に座り,湾をしばし眺める.
そこを抜けて,歩いていくと,レジャーボート
がならんでいる.周りは高級マンションが並ぶ.
その一つは最近できたばかりのデザインが売りに
なっていそうだ.
その先が実はシベリウス公園だった.大
きな木がならんでいる.
雰囲気のある森だ.
回り道をしたが,直線だと30分足らず
の場所だ.
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シベリウス公園のモニュメント
公園内の別のモニュメント
ブログへのアクセス・外出・生活リズム
9月9日朝記
てぃーだブログへのアクセスで苦労している.
パスワードも正確に入力しているが,
うまくいかない.
こういうことに詳しい娘夫妻がいろいろ調べてくれる.
結果として,リナックスパソコンとてぃーだとの相性の問題らしい.そこで,いろいろと工夫してくれた.とい
うことで,なんとか成功しそうだ.そのため,数日遅れで投稿をすることになる.
9月9日夕
毎朝,今日はどうするか,と相談.私にとっては,3〜5時間の外出が適度だ.当面は,
『地球の歩き方』
『ビ
ジターズ・ガイド」
(ヘルシンキ市観光局)が,情報元だ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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外出以外は,旅日記書き/読書などだ.だから,沖縄での日常生活リズムとの変わりは少ない.むろん,農作
業や卓球はないが.でも,かなりの量歩いている.室内でのストレッチは欠かさない.
外出は一人の時,娘や婿と一緒の時と,いろいろだ.最初の数日間は,ヘルシンキ市内を中心にしていくつも
りだ.そのうち,ヘルシンキ以外,さらに人々との出会いも出てきそうな気配だ.
今日は,いくつかの候補から,セウラサーリ野外博物館を選ぶ.
セウラサーリ野外博物館
9月9日夕
滞在4日目.市街地ではなく,郊外の自然感のある場所に挑戦だ.徒歩圏を越えて,バスなどの交通機関使用
だ.セウラサーリ野外博物館へは,ガイドブックによると,市バス24番にスウェーデン劇場前で乗るとある.
バス停の時刻表は,フィンランド語とスウェーデン語だけだが,カンで読む.次のバスまで15分あるので,飲
み物・サンドイッチを購入.
行き先地のレストランは,土日しか開かないとあるためだ.
バスのチケットは運転手から買う.チケットは,日本のチケットのイメージとはまったく違い,レシートのよ
うなものだ.そういえば,他のヨーロッパでもそんな感じだった.
乗ると,小学生の団体で満員だ.しばらくいくと,我がアパートメントの近くを通る.
「なーんだ」ということ
で,帰りは近くのバス停で降りた.そして,昨日いったシベリウス公園のそばを通っていく.バスに乗って20
分ぐらいで到着.
セウラサーリ野外博物館は,小さな島で,橋でつながっている.入り口で入場券購入.順路があるわけではな
いので,森林浴散歩気分でいく.途中風車小屋を過ぎる.
一説によると,大統領もこの島を散歩するという.女性大統領なので,
「あのおばあさん,大統領かもしれない」
と勝手に推理する.
フィンランドは,人口500万なので,
沖縄の5倍,愛知県より少ない.だから,
国会議事堂は,県議会のイメージに近い.
でも,しっかりした一国であり,ここに至
る歴史の重みは大きい.
7月ころは緑に覆われていただろうが,
いまや落葉直前の季節.すでに紅葉が始ま
っている木もある.だから,鬱蒼とした感
じではない.
そして,島の野外博物館施設は,9月1
5日までのオープンだ.以降,5月15日
までの長い休み期間に入る. 9月の開場
時間は9時~15時なのだ.
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だから,小学生の社会見学・遠足がいまど
きにセットされているのだろう.バスで乗り
合わせた以外にいくつもの小学生団体がいた.
来訪者は,ほかには,散歩の高齢者と,外国
からの団体客だった.その一つのドイツを話
す人々の団体が入場していた施設に,私たち
も入る.
前ページ写真は風車小屋。
左写真の私たちが偶然入った施設は,園内
の施設の維持管理をしつつ,木工のワークシ
ョップなどをする施設で,常時開放している
施設ではなかったらしい.何かがあって,ドイツグループが入っていたときに,休憩所と間違えた私たちが入っ
てしまったようだ.
そこの職員に声をかけられた.この若者はとって
も話し好きだ,たくさんの話題に飛び火しながら,
30分ぐらい会話したか.
日本,フィンランド,沖縄、木工/建築,日本の
大工,フィンランドの大工養成,国柄・・・・。日
本に関心が深く,沖縄の米軍基地のこともご存知だ
った.
盛り上がって,かれの仕事部屋まで案内された.
右写真は、公園建築物維持管理部門の木造建築作
業場にて写す。
ここでは,松が立派な建築材料だった.建物の基礎に使う重要なものだ.後で,まっすぐ伸びた太い松の木を
見た.曲がりくねる日本の松を見慣れた私たちにとっては不思議な感覚を与える.
また,かれの話だと,日本の在来工法と,フィンランドの工法には共通したものがあるらしい.
そして,最後に近くの古民家を見ていくよう勧められた.最後に記念にと思って渡した名刺を見て,彼はメー
ルを送るかもしれないと話した.
彼の出身地は北カレリアのコリで、いいところだそうだ.帰宅してガイドブックを見ると国立公園ですごくい
いところのようだ.しかし,8月半ばでシーズンは終わりのようだ.
散歩を続けていくと,移築した古い建物が立ち並んでいた.やっとここで野外博物館であり,入場料6ユーロ
であることに納得であった.
古い民家.教会など,すべて木造のしっかりした建物だ.なかには大型の船を収める建物もあった.その船は,
教会船と呼ばれ,教会礼拝の送迎船ということだった.見たところ,30人の漕ぎ手の船が一番大きかったが,
100人も乗ったとのこと.
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古い民家のなかで大きいものには,
夫,妻,娘,台所,農機具部屋,叔
父,家畜,サウナなどの部屋がある
建物で,
広い中庭を囲む建物だった.
そこでは,小学生相手に,職員が説
明をしていた.
左写真は、民家の中で、学芸員と
おぼしき人から説明を受ける小学生
たち
散歩していると,かわいいリスにしばしば出会
う.栗色で表情豊かな雰囲気を持つ.一匹が私の
足に『登ってきた』 多分,おやつのおねだりだ
ろう. 結果的に三時間あまりの滞在になった.
ここは一つの島なのだが、島のあちこちに、主
として18~19世紀の建物が移築保存されてい
る。
そのいくつかを何回かに分けて、
紹介しよう。
古びているが、木造建築がこのように残されてい
る事に好感を持つ。
右写真は、保存されている民家。これは比較的
新しい。
食糧庫
2~300年前の食糧庫
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
カルナ教会内部
2010-2011
古い木造教会。落ち
着いた気持ちになる。
330年前のしっかりした建物で,いま
でも使えそうな感じさえする.
カルナ教会外観
さすがサウナのフィンランド
民家のなかのサウナ室
結構広い。10人は余裕では入れる、と
いった感じ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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松の巨木 先に紹介した公園建物管理部門の工場では,これ
が建物の基礎個所に使われていた。
こんなに垂直に高く伸びる松を見た経験が稀なので、びっく
り。
森の中
この森はよく整備されており、散歩、ジョッギングに絶好だ
街・ゴミ・自動車・岩石・建物
9月10日夕記
このところ,よく歩いている.
8日のシベリウス公園,9日のセウラサーリ島,そして10日のスオメンリンナ島,いずれも歩くコースに出
かけた.それに,その地にいきつくまでも,よく歩く.だから測ってはいないが,一万歩をはるかに越えている
ようだ.
自動車がよく通る道路も歩くが,排気ガスがひどい印象はない.長年,弱い呼吸器と付き合ってきた私には助
かる.歩きながら,様々なウォッチングをする.看板.地名.店.マンションなどなど.英語にお目にかかるこ
とは少なく,理解がまったく困難なフィンランド語,スウェーデン語であるだけに,想像するのが楽しい.
街中の狭い道路は別にして,たいていの通りには街路樹が植えてある.今は緑があるが,落葉したら寂しいだ
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
ろうな,と思う.
街にゴミは少ない.例外は一回.街中の公園の芝生がゴミだらけ.大学生の新入生歓迎行事の余波だろうと推
測する.
後日記・・・・これは訂正しなくてはならない.
週日は,清掃がよく行われるが,土日になると,ゴミが増えることに気づいた.
自転車は多いが,多くの道路が自転車と歩行者を区分しているのが,ありがたい.
バイクはとても少ない.暴走族めいたものはなさそうだが,整備不良?のバイクが時々あって,大きな音を出
す.
自動車は,いろんな国製のものに散らばっている.あえていうと,ドイツ,フランスが多いようだ.たまにボ
ルボとかフォードを見かける.日本車は多くない.
軽自動車はなきに等しい.日本製の二人乗りのものをたまに
見かけるが,軽自動車扱いでないようだ.軽自動車という区分
があるのだろうか.
何度も信号待ちするような渋滞光景に出会ったことはない.
電車・バス・トラムなどの公共交通機関が発達している感じだ.
人口500万の日本の都道府県と比べると,はるかにいいよう
に思う.
町のところどころに,重量感あふれる巨大な岩石が顔をのぞ
かせている.とても古い岩石のようで,それを氷河が丸くなだ
らかに削ったようだ.そのためもあるのか,岩石を削って,道
をまっすぐ通すというのではなく,起伏に応じて,道や街を作
った感じだ.日本で岩石というと,ゴツゴツを連想するが,こ
こでは,柔らかさを感じる.
建物には100年,200年をへたものが多そうだ.たまに
現代的なものを見るが,まわりの歴史の長いものと
マッチするように工夫しているようだ.日本のよう
に新旧の建物の並存が雑然感を与えるのとは異なる.
上写真は、ヘルシンキ中心部にあるアパートメン
トの前の通り光景
左はバスのチケット。 セウラサーリの往復に運
転手から購入。
日本の感覚では、チケットというより、レシート
だ
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
ノキアで買った携帯電話
フィンランド語表示なので、意味不明。カンで使うしかない。後に、
娘が英語表示に変えてくれた。
スオメリンナ
9月10日夕記
午前中,スオメンリンナに行く.スウェーデン支配下の18世紀につ
くられ,19世紀には,ロシア,そしてフィンランド独立後の20世紀
にはフィンランドの軍事基地があった島だ.
スオミが,フィンランド語の「フィンランド」で,リンナは城という
意味だそうだ.そんなに大きくはない連なった四つの島で構成されたま
さに「海上要塞」である.
ユネスコの世界遺産でもある.かつての軍事に彩られた島は,今は歴
史遺産,そしていこいの島であるようだ.軍事的なものは,海軍の学校があるくらいだそうだ.
それでも800人の方が生活しており,学校もあるようだ.9時発の船に乗ったが,島からの通勤客らしい方々
と入れ替わっての乗船だった.
バルト海を広く見渡せる島で,軍事的要衝になりそうな気配を強く感じた.実際,この地で戦争があり,悲劇
の島でもある.島内にあるスオメンリンナ博物館には,そうした戦争の歴史遺産が展示してあった.
島の南端には,いまでも大砲が歴史遺産として数台置かれている.私は,1972年まで渡嘉敷島,多野岳に
あった米軍のナイキハーキュリー,つまり対中国のミサイル発射台を思い出した.少し凹みをつくってセットさ
れ,近くには弾薬庫とおぼしき土の山が築かれていた.
博物館の映画だと,攻撃してくる船めがけてここから砲弾を発射したようだ.島のあちこちには,要塞の名に
ふさわしい構造物がある.
ところで,島のなかには,軍事博物館もある.ここでは平和博物館とはいわず,戦争とか軍事とかつける.カ
ナダでもそうだった.日本では,平和の名が普通だ.この名のプラスマイナスも話題になろう.
左写真は、スオメリンナ博物館。
右は、人間が近づいても,ほとんど動かない海鳥。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
大砲近くにあるビーチ
バルト海に面した美しい海
スオメリンナは、要塞の島だった。今で
も残されている。
要塞内部の通路
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
要塞の建物
銃眼らしきものが見える
右は、要塞の中から外を見る
この要塞は、バルト海に向かっている。大砲がそれを象徴する。
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2010-2011
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
天気・情報入手
2010-2011
9月10日夕〜11日午前 記
10日,スオメリンナにでかけた日は,快晴で心地よい.11日,雨だ.小雨ないしは霧雨といった感じ.気
温は15℃前後.雨に濡れた,窓の外の石畳道が喜んでいる感じ.
11日午後追記・・・雨なので,傘が必要かと思うが,まわりの通行人を見ると,傘持参は,1〜2%の人.
霧雨で,降ったりやんだりなので,傘不要なのだろう.傘購入はやめた.
インターネットで,天気予報を調べる.10日までの晴れ続きとかわって,しばらくは曇り・雨の予報だ.日
本の天気の移り変わりと比べると,ゆっくりしたテンポのようだ.
湿度の高い沖縄はもちろん,日本と比べても乾燥気味だ.しかし,トロントほどではない.トロントの時は,
バスタブに水を張って,室内の湿気を確保するなどの工夫をした.そうしないと,乾燥で喉を痛めるのだ.しか
し,ヘルシンキは,海に近いせいか,湿気があり,その必要はない.
でも日本に比べれば,乾燥ぎみで,雨の日以外は,洗濯ものが,室内で十分に乾く感じだ.
天気予報などのニュースの情報入手先は,インタ
ーネットに頼るしかなさそうだ.テレビでは,英語
チャンネルもあるが,ニュースに遭遇したことはな
い.フィンランド語のニュースを見るが,画像イメ
ージしかわからない.一週間一回発行の英字新聞を
見つけたが,天気予報も一週間単位で,それほどあ
てにはできない.
ということで,
インターネットが一番都合がいい.
11年前カナダ在住期に比べるとはるかに事情はい
い.それで,このところ,沖縄の新聞と,日本の全
国紙を閲覧している.
ところで,スオメンリンナへの行き帰りの船に乗
る前,往復の乗船券を買うが,どこでも切符をわたさないどころか,提示も求められない.乗り合わせた日本人
客が不思議がる.
「性善説による」との声も聞かれる.
ここで、ヘルシンキ滞在開始数日後にとった写真
を何枚か紹介しよう。
右上 ヘルシンキの港近くの小島
こんなとこ
ろにも、豪邸がある。別荘だろうと推理する。
左は大統領官邸。港の前にある。すぐ近くに、国
家機関やヘルシンキ市機関が集まっている。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
スオメリンナからの帰りの船からヘルシン
キ港を見る
バイキングラインなど,大型クルーズ船が
3隻とまっている
キアズマ国立現代美術館
9月11日記
霧雨が降ったりやんだり状態なので,近くの
キアズマ国立現代美術館に行く.デザイン性豊
かな建物だ.現代美術に対応している.
展示の現代美術は,しばしば見かける「奇を
てらう」タイプや「遠未来」型のものは少ない.
日常生活感覚に近く,現代社会の盲点を突き,
そのありようを訴える
「まじめ」
タイプが多い.
夫婦喧嘩シーンをビデオ映像化したもの,た
くさんの人形を壁に飾ったもの,何千という蝶
をデザイン化したもの,などもある.
そんななかでも,孤独の心象風景をえがくものがいくつもある.寂しさを訴えている.出どころのない孤立・
寂しさが表現される.哲学的雰囲気さえた
だよう.重い.
対照的に,ジョークや皮肉で表現するも
のは少ない.
これがフィンランドの一つの顔なのであ
ろうか.地味で真面目なのだ.
左上は、玄関前からの撮影
右はキアズマ国立現代美術館遠景
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
マーケット広場
ここはあちこちに行く要所でもあるの
で、何度も行った。買い物もした。
写真は八百屋さんを写したものだ。他
には魚屋、土産物店、屋外カフェなどが
ある。
物価・食事
9月10〜12日記
物価の話.フィンランドは「高い」と聞いていた.しかし,私の印象だが,沖
縄より高いが,日本の都市地区と同じくらいか.バスは2.5ユーロ.博物館・
美術館などは5〜8ユーロ.
日常的に接する食堂は,8〜13ユーロぐらい.
衣類は安い.10〜20ユーロで T シャツが買えそうだ.
消費税は23%だが,価格表示に含まれているので,意識しにくい.
あちこちにスーパーマーケットがあり,不便を感じさせない.ビールなども売
っている.酒類は国営店で販売.棚のほとんどは,世界各地からのワインだ.
食事
魚が意外に少ない.スオメリンナ島のカフェで,鮭のおいしいのに出会った.
ソースにはベリーもはいっているらしく,新鮮な感じがする.市場には数種類の魚が並んでいる.
酒でビール以外に飲んだのは,国営の酒店で見つけた地
元産のブラックベリー・ワイン(写真)
.これがかなりいけ
る.濃厚で,味わい深い.トロント時代に経験したアイス
ワインに匹敵.それは,秋,枝についたままぶどうを凍ら
せたものを原料にするもので,普通のものの10倍以上の
価格.その味のレベルだと感じる.
フィンランドみやげ候補には何があるか,と尋ねると,
娘たちが「サルミアッキ.とてもまずいけど」という.で
は,一度試してみよう,というので,購入し試す.
(右写真)
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
私には「いい」と思われる.特徴的な味だ.すると,
娘たちも試してみて,悪くないという.多分好みの問
題だろう.
ヘルシンキ南部 計画なし散歩
9月11日午後。
アパートメントはヘルシンキ中心部の商業・住宅区にある.そこから繁華街方面には毎日出かけているが,反
対方向へはまだだ.そこで,反対方向への散策をする.昨晩寝すぎるほど寝て体力充実なので,散策というより,
速足だ.1 時間をめどにして,写真を撮りな
がら,無計画に出かける.こんな散歩をトロ
ント時代にはよくやった.
まず西に向けてスタート.アパートの前の
通りをまっすぐ行く.タイ料理店,キューバ
料理店を発見.お店が並ぶこの通りも5分も
すると,住宅街だ.つきあたって南に方向を
変える.港に行き当たる.名前はわからない
が,もう一つのヘルシンキ港で 貨物埠頭が
多そう.
(上写真)
港から見える大きな建物は,地図を見ると,ヒエタラハティ・アンティーク&アートホールと書いてある.
(中
写真)
さらに南に行くと,海岸線に出る.散策の人た
ちが増える.犬を連れた人も多い.平日出会う歩
行者は,とても早く歩くが,土曜日の今日は,ゆ
っくりの人も多い.海が見える場所のマンション
は高級感が漂う.でも,一軒家はまったくない.
右は、南岸沿いの高級マンション。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
海に突き当たって,
海岸沿いに東に進む.
海岸は,
ここではよく出会う岩だ.海にはたくさんのレジャ
ーボートやヨットが浮かぶ.
今日は,霧雨か曇りのそれほど好い天気とは思え
ないが.多すぎてぶつかりそうだ.時々警笛が聞こ
える.
ヨットには何人も乗っている.
中写真は、レジャー用の港近くだ。
ここで,出発後45分になったので,アパートに
戻る北方向の道をとる.
私の予定なし散歩は、時間だけを決め
ておく。その半分になったら、帰り道に
つく。
このあたりのアパートは,値段が高そ
うだ.大半を占める昔ながらといった感
じのアパートのなかに,現代的な建築が
並ぶ.
とはいっても,
突飛な形ではない.
(下左写真)
このあたりでは,道路沿いには緑地が
並行することが多い.しばらくすると,
きれいな公園,そして教会に出会う.
アパートにもどって,たまたま見たト
ラムの駅説明には,
「ミカエル アグリコラ教会(ルーテル教会 1935年)と,書かれている.
(下右写真)
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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この教会のある道路は,
フレドリキンカツ通り
(右
写真)で,わがアパートメントまではまっすぐだ.
歩いていくとだんだんお店が増えていく.トラムの
説明書にはブティックが多いとある.
かくして,80分の散策は終わり.5キロほど歩
いたろう.こんな散歩が好きだ.また試みよう.
近くの教会など
ヘルシンキの街のあちこちに教会があ
る。街なかの教会は、歴史のあるものが
多く、町の風情にマッチしている。
何度もそばを通った、近くの教会を紹
介しよう。
一つは、左写真のバッハ教会で、教会
の前は公園。
右写真の教会の名前はわからない。ヘルシンキ南
への散歩の時に見つけた。隣の公園では保育園生が
遊んでいた。恵美子と保育園探しに出かけた時、そ
の教会の近くにいって、うまくいった。デザイン博
物館近くでもある。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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バッハ教会の通りの向いの小さな公園には、カレ
ワラ像が置かれている。フィンランドの[国民的叙
事詩]で、愛されている。私はまだ読んでいないの
で、いつか読もうと思っている。
ヌークシオ国立公園
9月12日記
フィンランドは何といっても森と湖
どこか行きたいと考えていたが,ヘルシンキからもっと
もアクセスがしやすいのがヌークシオ国立公園らしい.
「地
球の歩き方」にも,現地の案内本にも推奨されている.
ヘルシンキの案内所でパンフレットをいただくが,英語
版がなくて,フィンランド語版のみ.地図を見て,推理す
るだけ.婿殿が,インターネットで時刻表などを調べる.
朝8時に出発.現地の人が,公園内にはお店がないので,食べ物飲み物を持参するように,アドバイス.駅で
購入.日曜朝なので,駅員から切符を購入できず,フィンランド語の案内しかない自動販売機で購入するしかな
い.婿殿の奮闘により,無事成功.一人4ユーロで安価に感じる.
写真は、ヘルシンキ中央駅で乗車した電車(各駅停車)
行き先は,隣の市であるエスポー.ローカル列車だが,1時間に2,3本ある.乗ったのは,各駅停車で,1
3個目の駅まで行く.日曜の朝のためか,乗客は少ない.
広軌鉄道で揺れが少なく,止まる時のブレーキの揺れも感じない.揺れをあえていうと,横揺れよりも縦揺れ
をほんの少し感じるくらいだ.30分の乗車だった.
次の苦労は,バス乗車.駅を降りてすぐに接続しているという話だったが,簡単ではない.止まっているバス
の運転手に聞くと,路線が違うとのこと.粘って,路線番号・乗車場所・次のバスの時間を聞き出す.その場所
にいくと,その路線番号が見つからない.そこで親切な女性が,そのバスは駅の反対側だと教えてくれる.はき
はきと英語で教えてくれたので,きっと学校教師だろうと推測する.
反対側に止まっているバスは,正解の路線番号だったが,乗り場は別のところで,そこに行くように指示され
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
る.
結局,そのバスが来て乗車.そして,バスは駅の反対側を経由して行く.乗客は,私たちの他は,二人.一人
はかなりの装備をした中高年女性.もう一人は,スーツ姿のアジア系の方.全員終点まで行く.料金は2ユーロ
50セント.30分乗車だから,割安感がある.丘陵地帯をぬって走る.かなりのスピードだ.
途中のアナウンスは一切ない.わたしたちはどこで降りるかわからないので,ともかく終点まで行く.
終点では,案内図があり,一応の予定をたてる.だが,最初の入り口がわからない.そこで発車待ちの,例の
バス運転手に尋ねる.結局,
「わからない」ことがわかる.
バス運転手は,大変素朴な雰囲気だ.英語の対応はしてくれる.サービス精神といえば,問題になろうが,人
柄はとてもいい感じがする.
行きたいところは,公園の一番の中心部.どの道を行けばいいのかがわからない.他に人は少ない.しばし探
していたら,マウンテンバイクで巡る親子,といっても推理だが,60歳前後と 30 代の男性親子に尋ねると,と
ても丁寧に教えてくださる.救世主のようだ.
その道に入っていくと,日本の遊歩道のように,
鮮明過ぎる案内板はないにしても,所々に,あと何
キロという,木製の掲示がある.それに,道のそば
の木々に,
青や黄などの小さな板がうちつけてあり,
それが案内してくれていることに気づく.一度,道
を間違えたときも,それを頼りに修正できた.
ヘルシンキの街中でよく見かける岩が,ここでもあちこちにある.このあたりは,すべてこの岩盤の上にのっ
ているのだな,と推測する.もしかすると広
大なのかもしれない.
氷河期以降,何千,何万年もかけて,そん
な岩の隙間に根を下ろして,木々は大きく成
長しているのだろうと推測する.
固い岩盤は,そのまま残り,そのうえに,
トレイル=遊歩道をつくったところも多い.
すべりやすく,歩きにくいが,風情がある.
(右写真)
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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そんな岩には苔がびっしりとついているこ
とがある.まさに「苔むす」感じだ.その苔
の緑色の美しさは素晴らしい.
所々にキノコが顔を出している.どれが食用で毒なのかは,皆目わからない.途中でキノコをとっている高齢
女性を見かけた.国立公園だけど,キノコは取ってもいいそうだ.キノコ取りのシーズンなのだ.ヘルシンキの
港市場にも,キノコをたくさん売っていた.
公園中心部に近づくと,時々すれ違う人がいる.家
族ずれが多い.トレイルがきちんとしており,たくさ
んの人が通って踏み固められている感じがするので,
シーズンの時は歩く人が多く,にぎわうのだろう.
右写真のトレイルの向こうに湖が見える。
こんな風に、所々に湖と言うか池というか、顔を出
す.地形的に湖・池・沼が多そうだ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
苔の緑が鮮やか
湿原もある.たまに,木道もある.その周辺では地
面に苔が多い.
スタートから 1 時間余り歩くと,公園中心部に着く.人がたくさんになる.設置されているバーベキューポイ
ントで食事をとるグループもある.
公園中心は,大きな池,というより湖だ.蓮の葉がたくさん浮かんでいる.花のシーズンは終わったようだ.
紅葉のシーズンが近づいている感じがしたが,紅葉する木は多く
はなさそうだ.
湖のかたわらで,昼食をとる.
そして,バス停へと道をとる.このあたりは人が多い.団体やグ
ループも見かける.駐車場には,車がいっぱいだ.大多数の人は車
でくるようだ.バスは子供グループや車をもたない人が活用するよ
うだ.駐車場には,大型バスもとまっていたので,団体客・観光客
もいそうだ.
この公園は、何かの日本映画でも紹介されたらしく,日本人観光
客も関心が高いそうだが,日本人とは出会わなかった.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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帰り道,かわいい家を見つけた.
このあたりには一戸建てが多そうだ.
とはいっても,
かたまって建っているわけではなく,離ればなれにあ
りそうだ.道路にはところどころ郵便ポストがいくつ
かかたまって置かれている.多分,ここまで車でとり
にくるのでないかと推理する.
バス停につく.中写真は、バス停から写した,ヌー
クシオ国立公園中心への入り口の案内板だ.白樺の木
が囲んでいる.
帰りの電車は,日曜日でも午後になったせいか,けっこう混んでいた.ところで,ここの電車は,降りるとき,
乗るとき,ボタンを押す.すると開く.閉じるのは,自動だ.日本では寒い地方の冬場に見かけるスタイルだ.
私の日本のドコモ携帯は,ここでは電話としてはまったく役立たずだ
が,歩数計としては使える.そこで,今回は持参して,歩数を測った.
出発から帰宅までで,16000歩.ヘルシンキ駅への行き帰りなどを
差し引くと,公園では,13000歩歩いたことになる.平坦な道はわ
ずかだったので,結構歩いたと思う.
帰宅して昼寝した.
余談 森林と田舎光景だが,農地が見当たらない.馬を飼育している
場と牧草は見た.どこに農地はあるのだろう.ヘルシンキ空港への着陸
直前に畑がみえたが.
屋内市場・ウスペンスキイ寺院
9月13日午後記
食料品などの買い物に出かける.いつものところ
ではなく,港の屋内市場にでかける.歴史のある市
場のようだ.細長い建物のなかに,二つの「通り」
があり,通りをはさんで店が立ち並ぶ(左写真)
。魚・
肉・チーズなどの食料品が中心だ.なかなか良さそ
うだ.買い物は,他の場所からの帰りにする.
そこを抜けて,屋外市場に行き,野菜と帽子を買
う.帽子は娘へのプレゼント.フィンランドマーク
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
入りのかわいく,デザイン性にすぐれたもの.こん
な店は,おばあさんがやっていることが多いが,こ
こはおじいさん.80代かな,と推察する.口下手
だが,実直さを感じる.
この界隈にくると,観光客が多い.クルーズ船か
ららしい客は団体で行動するようだ.ヨーロッパ人
や,中国人が多そうだ.日本人はそれほど見かけな
いが,一人か,2〜3人の個人旅行が多そうだ.有
名な日本人団体旅行には,まだ出会っていない.
さらにそこを抜けて,月曜日なので開館はしていな
いが,建物のまわりには行けそうな,ウスペンスキイ
寺院にいく.
(右上は遠景。
中の2枚は敷地内から撮影)
ロシア正教の立派な寺院で,19世紀後半の建造の
ようだ.重みを感じる.
高台にあるウスペンスキイ寺院からは,見晴らしが
いい.すぐ隣の大統領官邸,そして屋外市場もよく見
える.その先がヘルシンキ中心部だ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
再び屋内市場に戻る.まずコーヒータイム.ここのコーヒー
はおいしかった.香りがいい.値段も安い.さすが市場。
ここで,来客もてなし料理用の魚などを買う.結構,種類は
ある.海藻の袋詰めがあり,日本語の説明がついていたが,値
段が大変高かった。
驚いたのは,この市場の一角に,寿司屋がある.午前中なの
で,まだ開いていなかったが。
※ 滞在日数が増えるにつれて、あちこちに日本食レストラン
が多いのに気付いていく。日本食ブームは、この地にも広がっ
ているようだ。
右写真は、魚店。
この後,帰り道に,ヘルシンキ随一の目抜き通り、ポホヨイエスプラナーディ通りを歩く.ウィンドウショッ
ピング気分だったが,つられて4軒ほど中に入る.
イッタラの店にまず入る.帰ってから,ガイドブックをみると,フィンランド随一のブランドとのことだ.ま
ず蝋燭たてが目に入る.見れば見るほど,いろいろなものに惹かれる.鳥デザインの置物などもすごい.値段も
高いというわけではない.他の店も魅力的なものが多い.
いずれもデザイン性を売り物にしている.かといって,使いにくいものではなく,機能性にもすぐれていそう
だ.デザインはシンプルさがいい.
そのうちの一軒,カンクリン・トゥ
パで,トナカイデザインのTシャツ1
枚を買う.
恵美子が来たら,たまらなく喜ぶだ
ろうな,とその光景を推理しながら,
スーパーマーケットに向かう.
このあたりの道はだいぶ覚えたが,
地下街や商店街・テナント街に入ると,
わからなくなる。私は、空が見えない
と,方角感覚がつかめない.私の地理
感覚に依存してきて,地図がわからな
いと叫ぶ娘は,
「視覚で空間を把握」す
るそうで,こういうところは強い.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
カイヴォプイスト公園
9月14日午後記
14日,午前9時スタート。11日の散
歩は,アパートメントから南西方向の往復
だったが,今日は南東方向へ向かう.
街で気づいたこといくつか.
1)自動車は,歩行者に親切だ.これま
でクラクションは聞かなかったが,今日はじめて,信号無視の歩行者にクラクションを鳴らすタクシーに出会っ
た.
2)警官に出会うことは大変少ない.制服が地味
なこともあろう.今日,パトカーと警官を見た.地
図を見ると,ヘルシンキ警察がすぐ近くにあった.
3)公的機関の建物表示は地味だ.博物館なども
そうで,探しにくいほどだ.
4)日本製の軽自動車スズキアルトを見た.ナン
バープレートも他の車と同じで,外観は軽自動車の
感じがしない.
アパートメントから,30分たらずで,海
岸に沿うカイヴォプイスト公園に着く.ここ
も巨大な岩の塊の上の公園だ.上写真は、巨
大な岩の原っぱ。中写真は、巨大は岩壁が続
いている場所。
ここからは,すでに出かけたスオメンリン
ナ島がすぐ近くに見える.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
公園の紅葉が進んでおり,落ち葉が多かった
が,紅葉する木は2種類しか見つけられなかっ
た.
カイヴォプイスト公園から出ると,美しい
通りにでるが,
「撮影禁止」の表示が見える.
美術館でも撮影できる場があるほどなので,
この表示は珍しい.なんだろうと,見ると,
どこかの国の大使館だ.でも,この表示があ
るのは,一国だけだった.
緑に囲まれた美しい通りだ.
日本大使館は,ここにはなく,後で見つけ
たが,繁華街近くのビルの何階かだった.
左写真の建物は,最初何だかわからなかっ
た.小さい赤十字マークを見つけたので,病
院だとわかり,フィンランド語でも病院のよ
うな単語が書かれていた.地味だ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
この後,当初の訪問予定だった建築博物館を
見つけたが,鍵がかかっていた.10時開館な
のに,どうしたんだろう.隣のデザイン博物館
は,11時開館なので,あきらめて中心街方面
を歩いた.
そして,昨日立ち寄った屋内市場で,昼食を
買う.サラダが5ユーロで,たっぷりとツナと
エビが入っている.
元老院広場・大聖堂・ヘ
ルシンキ大学
さらに、散歩の続きだ.
その後,アパートの方向へ,気
楽な散歩.いつもと違う道をとっ
たら,元老院広場(左写真)に出
る.ガイドブックの最初にでてく
るが,初訪問だ.
元老院広場には,2メートルの高さの熊
の像が百以上並ぶ.熊には世界各地の人が
絵をつけている.
多文化共生へのメッセージのようだ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
元老院広場の前にヘルシンキ大聖堂がある。ヘルシンキ随一のルーテル派教会だ.大きい.なかも広い.神聖
な雰囲気に満ちている.
元老院広場の西側にヘルシンキ大学がある.外側に表示は見つけられない.
(上の2枚の写真)
中に入ってみると,小さな表示がでている.大学としての権威誇示をしないのだろう.
若者の通行が,大学の雰囲気をもたらす.
14日午後,恵美子が日本から到着し合流する.
夕方,二人で散策.私は二度目なので,彼女のペースに合わせて,ゆったりと.
テンペリアウキオ教会,国会議事堂前.駅前の書店,フォルム百貨店内のムーミンショップ,通路脇の絵本店
などを回る.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
観光船=クルーズ船
9月15日午後記
ヘルシンキ滞在も半分を過ぎた.発見/味わい
も第二ラウンドだ.
今日の午前は,恵美子と二人でまわる.大通り
に行くが,店などはまだ開いていない.博物館な
ども午前10時,11時スタートが多い.そこで
港前の屋外市場に行くが,断続的な小雨模様で,
ここも開店テナントは少ない.
元老院広場に行く.たくさんの熊たちを見て回る.すると,政府庁舎前で軍隊が隊列行進.多分新兵訓練だと
の印象。フィンランドは軍隊を持つ国なのだ。
その後,両替店で両替.円高だが,1ユーロ1
17円で両替.両替店は高めだと聞いていたが,
そのようだ.そして,一昨日も入ったガラス,陶
器,木工製品の店をいくつか見て回る.
その後,予定の観光船=クルーズ船に乗る.観
光シーズンも終わり近づいているためか,100
〜200人乗りの船に,10人ほどが乗船.こう
したコースを運行している会社を3社見つけたが,
なかにはランチ付きプランもある.私たちはシン
プルなプランにする.1時間30分コー
スで19ユーロだ.
中にはちょっとしたカフェがあるので,
そこでコーヒーとお菓子を買ってすわる.
写真は、クルーズ船から見るヘルシン
キ市街地南部
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
クルーズは,港から南に向かい,先日出かけ
たスオメリンナ島を見ながら,島々の間を抜け
て行く.
島々は、休暇地の雰囲気で、高級セカ
ンドハウスといった感じ。小さい建物は
サウナらしい。
こうした家は、金持ちだけでなく、多
くの人が持っていると聞く。
フィンランドでは、親の世代が家を建
てれば、長持ちする家なので、子どもは
家をつくる必要はなく、余裕があれば、
こうしたセカンドハウスを手に入れると
いう。自宅をつくるにしても、何年もか
けて、自分自身で建てる人が結構いるとのことだ。
家は、100年とか200年という単位で使用す
るのだろう。30~50年で耐用年数がくる日本の
家とは大違いだ。
ヘルシンキの近くは,島がたくさん.ちょっとし
た島にも,きれいな家がある.そして家の近くには
船着き場があることが多い.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
船のなかでの観光説明は,フィンランド語,スウェー
デン語,英語,ドイツ語,ロシア語の順に,
スピーディに行われる.数少ない乗客もさまざまのとこ
ろからきている感じだ.
陸に近い島は,橋をつたってヘルシンキ市街からわず
かな時間でこられるという.
小舟で魚つりを楽しむ人も見る.海岸や船で見かける
人は,平日のためか,高齢者が多い感じだ.
なかには,高級マンションもあり,高
所得層の身近な「リゾート地」と言った
感じだ.水上飛行機も2機見かけた.
左写真は、キャナルを抜けるところ。
こうした船の航行のために作られたよう
だ。
高級マンション
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
休暇地の絶好の雰囲気
2010-2011
水上飛行機
説明の詳細は聞き取れなかったが、歴
史的建物だそうだ
フィンランド料理
9月15日午後
記
船観光を終えて,レストランに入る.フィン
ランド料理を食べようということになる.
メニューから,
野菜ボルシチと魚料理を選ぶ.
ボルシチは,ロシア料理のものとは異なって,
あっさりした印象.でもボルシチ風の味だ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
写真は、入ったレストラン。
普通のレストランに入ると、
東京並みの価格だ。
この旅で、こういうレストランに入ったのは、3
回だけだった。これがホテル滞在になると、毎日
入ることになるので、支出が大変だ。
※ 沖縄にもどってから、しばしば「食事はど
うだった?」と聞かれる。ほとんどが自前でつく
った、と答えるが、それだけでは、答えにならな
いので、
「まあまあ」と答える。
「目立つほどのも
のはない」とか「イギリス料理並み」と書いてあ
る本もあるが、
「それなりの食事」である。フランス料理のように、料理に「誇り」をむき出しにするようなこと
はないが、だからといってまずいわけではない。グルメでもないわたしには、それほど関心があることではない。
寒いところだし、太陽に恵まれているわけではないので、国内の食材の種類には限りがあると思う。魚も、ノ
ルウェーのように恵まれているわけではない。スーパーで売っている魚は数種類。野菜は 10 種類以下だ。季節が
ら、キノコが美味しかったが、スーパーにはなく、市場で売っていた。
デザイン博物館
9月15日夜記
9月15日夕方,デザイン博物館へ行く.デザイン立国という言葉があるくらい,デザインが得意技のフィン
ランドだ.さすがだ.インテリア,家具,ガラス製品を中心に,オリジナルでフィンランドらしさを感じるもの
があふれている.日本では,デザインというより,芸術に分類されるものも多い.
いろいろと刺激的なものが多いが,等身大のガラス像
(めいたもの)を100ぐらい立てて,人間集団を表現
したものが,私にはもっとも印象的だった.
(次ページ写
真)
生活芸術を追求した1900年前後のイギリスの運動
を思い出したが,デザイン表現がまったく異なる.
説明を読むと,19世期末に,スウェーデン,ロシア
などとの関係も意識しつつ,フィンランド独自のものを
創造する動きがあったようだ.その際,カレワラ精神の
ようなものが役割を果たしたとも書かれている.
ここは写真撮影禁止なので,高価なガイド本を購入し
てきた.
写真集は、フィンランドのガラス芸術の中心的な人ら
46
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
しい Oiva Toikka さんの作品集だ。
前ページ写真は、その表紙。
左は、等身大のガラス像で、この写真
集に収められているもの。
タイトルは、
「ガラスの森」
。私は人間
に見立てたが。森が人間のように生きて
いるんだな、と思う。
沖縄のガラス芸術も最近優れた作品が
次々と登場しているが、
フィンランドは、
さらに歴史的蓄積がすごい、と感じた。
帰りはあいにく雨だった.ここの天気
予報は当たるのか当たらないのか,よく
わからないが,今日はあたって,雨が降ったり止んだりの天気だった.
そこで,そうそうに帰宅した.
※ 私が滞在した前半は天気続きだったが、後半は雨が多かった。といっても、短時間で少ない雨だ。傘を買
おうかどうか迷ったが、結局買わなかった。傘なしでもやっていけなくはない雨量だ。
この時期は、
『雨季』になるのだそうだ。
セウラサーリ再訪
9月16日午後記
16日午前は,恵美子とともに,セウラサー
リ島を再訪する.島の野外博物館は15日で終
了なので,訪問者はぐっと少ない.高齢者を中
心とする散歩,ジョッギングをする人がほとん
ど.団体は,小学生20人の一組だけ.静かだ.
前回の訪問から一週間だが,
紅葉が進み始めた.
公園の案内図に「大統領のジョッキングコー
スと書かれた島を海岸沿いにぐるっと回るコー
スをとる. 大統領ジョッキングコース=島一
周を歩く
47
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
ここ数日,雨が多かったせいか,きのこがたくさん出ている.
これは、きのこというべきかどうかわからな
い。
「さるのこしかけ」に似ている。
天気は曇ったり,
晴れたりで,
気温は12℃
ぐらい.
ところが,である.一人の中年?女性が,
水着で海岸沿いに泳ぐのに出会う.
びっくり.
しばらく歩いて出会った public bathe と
書かれた場では,男性二人も泳ぐ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
海岸近くだが,いくつかの池に出会う.そこには鴨たちが暮らす.
別の池の上に,藻めいたものが美しい図形を描いている.
水が静かに流れており,それが図形を
作り出しているようだ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
途中で,つい最近の8月にできたばかりのカレワラ物語にもとづく小さな建物に出会う.アメリカ人のデザイ
ンと書かれている.
シャーマンたちの世界では,時間は直線で流れるのではなく,サイクルを描いて回る、ということを表現して
いると説明されていた.
その内部
その近くで,恵美子は大木の鼓動を聞いていた.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
島は湾になった海に囲まれている.岩の小島が,この
あたりらしい雰囲気をかもしだす.
リスにしばしば出会う.秋なので食料収集に熱心だ.
大きな実をくわえているリスにも出会った.
餌を与える訪問者がいるらしく,われわれにもおねだ
りにくる.
11年前に滞在したカナダのトロントでも、
街中のあちこちにいたが、
ヘルシンキの街中では見かけなかった。
そして、トロントのものより、ずっと小さい。かわいいという言い方でいうと、ここのがずっと可愛い。そして、
人間の体にも触ってくる。トロントではそういう経験はしなかった。
鳥も多い.鳥にも餌を与える人がいるらしく,ベンチに座るとすぐに寄ってくる.足にのっかかってくるもの
さえいる.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
雀に似た小鳥に餌をやっている親子ずれに出会う.彼らが餌をやっているところを写す
橋のたもとで我々も休憩し,おやつを食べる.すぐに,かもめとカラスが集まってくる.小さなきれはしをあ
げると,争奪戦だ.カラスが強い.
かもめとカラスは一緒に群れを作っている.なに
か不思議.ここのカラスはまだら模様だ.
島を2時間余りかけての一周だった.
セウラサーリ島を出て,シベリウス公園方向へ向
かう.
前回はバスに乗ったが,
海岸線も美しいので,
歩いてみた.
途中,立派な建物と庭園があった.レストランか
と思ったが,そうではなく大変な高級住宅だった.日本なら,首相別荘という感じである.
シベリウス公園についたが,疲れてバスに乗った.3時間になる長時間散歩だった。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
クラフトショップなど
2010-2011
9月16日夕記
先日買ってきたトイペがおもしろい.日本では普通,
数枚折り畳んで使用するが,これは,15センチぐらい
の1枚でOKなのだ.分厚いこともある.紙の使用量が
減らせそうだ.
16日夕、恵美子と夕方の街に出る.はじめにフィン
ランド・デザイン・フォーラムに行く.デザイン博物館
とならんで,フィンランドのデザインに出会う好都合の場だと,ガイドブックには書かれている.しかも,ここ
は購入できる.博物館ほどではないが,さまざまなデザインと出会えた.紙工作風のものをいくつか買う.
ここの案内リ-フレットもデザイン性溢れる。
そこから出て,目抜き通りへ。さらに、もう一つの目抜き通りに出るが,両側ともデザイン,クラフトのショ
ップがならんでいる.南側には,はじめて入る.実は先日も入ろうとしたが,10時の開店時間前だったのだ.
ここでは,10~18時開店の店が多い.土日はさらに短い.博物館・美術館などの公的施設もそうだ.勤務す
る人の労働時間をきちんと守るのはいいことだろう.
その店のひとつで,美しいデザインのフェルト作品を
購入した.店の人とおしゃべりをする.10月にデザイ
ナーたちとともに日本に来るとのこと.
許可を得て,お店の写真を撮った.きれいなディスプ
レイは,さすがデザインの国だ.
プレゼントのように包装してくれた.過剰包装ではな
いが,独特のやり方だ.リボンを蝶々結びにしていたの
で,
「日本では『蝶々結び』というが,フィンランドでは,
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
どういう呼び方をするか」と尋ねたが、とくに名前はないという.
お店の店員は,最初の微笑みはとてもいいが,後の応対は実に地味だ.しかし,話しかけると楽しそうに語っ
てくれることが多い.
学生たちのコスプレ
9月16日夕記
2,3日前から,目抜き通りで,大学生らしきグループが,おもしろい衣装をつけて,わいわいやっている.
酒も飲んでいる.タバコを吸うものもいる.たしかここでは飲酒は18才からだと読んだことがある.
あまりにも楽しく盛り上がっているので,あるグループに近づいて,聞いてみた.
すると,予想どおり,ヘルシンキ大学の新入生のグループが,学部・学科ごとに楽しんでいる.写真をとって
もいいか,と聞くと楽しそうに OK だった.
左の写真は,文系学部のようだ.白い服のグループは何かと,ついでに聞いたら医学部だという.たしかに聴
診器をかけている学生もいた.
次にであった学生たちは,もうすでに「出来上がって」おり,おおノリだ.教員養成学部で,小学校教員にな
りたい学生たちであった.
「バイキング」か、と聞いたら,
「パイレーツ」だ,と返ってきた.
その後,屋内市場に行く.コーヒー・ブレイクにする.
デザートに珍しいものがある.パン生地の上に,白身魚
がのっている.食べてみると,ヒラメの味.ヘルシンキ
で始めて生魚を食べた.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
物価・生活
2010-2011
9月17日午後記
1)信号の仕組みが複雑に感じる.交通量の多い市街地ではとくにそうだ.たとえば,交差点で車道に右左折
用路線がある場合、歩行者は 3 つの信号を越えなくてはならないことがある.その際,3 つが同時に変わるわけ
ではない.手前が赤で,真ん中が青,向こう側は,すでに青になっていることがある.最初のころ,真ん中の信
号に目がいってしまい,間違えそうになった.
この信号に慣れた人には,青になる前に渡り始める人がいる.しかし,わたしには,どういう順序で青になる
のかがわかりにくい.バスにのっていると,左折信号の出方が日本と違い,複雑に感じる.
でも,交通事故めいたものを見たわけではない.自動車が歩行者を譲る精神がかなり徹底している.まだ歩道
にいるのに,自動車がとまってくれることもよくある.
2)最初は物価がそれほど高くないと感じたが,食料など日常生活用品の購入が中心だったからだ.レストラ
ンとか,土産物店などにいくと,高さを感じる.日本より2〜3割高めかなと思う.
消費税の高さも一因かな,と思う.
だが,人々の消費生活における金銭依存度はどうだろうか.日本のように,どこにいってもといっていいほど,
コンビニがある状態とは異なるようだ.ヘルシンキのような大都市でも,少し歩いて街外れにくると,お店はな
いにひとしい.そして店の多くは 6 時ころにしまる.
私の推測だが,すぐに買い物に出るような生活をしなければ,なんとかなりそうな感じがする.その点では,
私たちの沖縄田舎生活に似ているのかな,と勝手に想像する.沖縄田舎生活では,住宅費用と子供の教育費用が
大きな問題となるが,ここでは,教育費は,日本と比べれば限りなくゼロに近そうだ.ヘルシンキ大学でも,外
国人を含めて,授業料無料なのだ.
住宅は,ヘルシンキ中心部のこの近辺では,一戸建てはなく,すべてアパートで,築100年以上がざらだ.
だから住宅経費も少なめになりそうだ.
3)日常生活用品にもデザイン性があふれる.
写真は,羊毛製なのか,毛皮製なのかよく分か
らないが,スリッパだ.なかなかかっこいいし,
暖かい.
照明,食器など含め,デザイン製豊かなものが
あふれている感じだ.
4)滞在10日になるが,日に日に,日照時間
が短くなっている.来たときは6時過ぎに明るく
なったが,今では7時前だ.気温も16℃ぐらい
だったが,今日は12℃ぐらいだ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
美術作品・工芸品
2010-2011
9月17日午後記
今日午前中は,保育所訪問が最大のニュースだ.恵美子は、保育所訪問をぜひとも実現したがっていた。イン
ターネットで,コンタクト先をいろいろと調べて,近くのファミリーサポートセンターを探し出す.
英語での情報量は少なく,直接,デイケアセンター(保育所と同じこと)を探し出すことはできなかったが,そ
こを手がかりにしようというわけだ.通り名と番地を手がかりに探し当てたが,建物工事中で移転先不明.電話
もつながらず.
そこで恵美子式がはじまった.赤ちゃんを散歩に連れだしている親に,話しかけて情報を得る.大変親切なお
母さんたちに出会い,ある保育所を訪問.そして見学・歓談をした.ここでの話は恵美子の領分なので,ここで
は割愛する.
帰り道,印象的な作品を飾った店に入る.メルヘン
チックな絵の作品が並ぶ.
写真は,
そこで購入した絵.
展示している一連の作品の登場者はきつねと熊.店員
に聞くと両者はフレンドリーな関係とのこと.
※ この作品の作者の作品と、
後日美術館で出会う。
全く異なる世界での表現であったことが判明。
少し休んだ後,再び外出.前日訪問した店を再び訪問.
昨日応対してくれた方はお休み.聞いてみると,作家達が
交代で店を見ているとのこと.
今日の担当は,ガラス工芸作家.スオメリンナ島にある
工房で,作成しているという.彼女が作ったガラスデザイ
ンの文鎮が気に入って,購入.ついでに記念撮影する.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
写真は、文鎮の作者
ここの店の名はオクラ.野菜のオクラと偶然同
じ。店の人もそのことを知っていた。
この後,屋外市場にいき,サーメ(ラ
ップ)の人たちによる,
となかいの角製
のキーホルダーを購入.
そして,自ら写した写真を販売して
いる店で,ふくろう写真を買う.
エストニア首都タリン訪問
9月19日午前記
18日は,丸一日,隣国エストニアの首都タリン
に行く.
同じEU加盟国なので,
大変簡単にいける.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
まずバスで港まで行く.バスは満員状態.土曜日
朝で、
他のバスはがらがらなのに,
このバスは満員.
港に行っても,大変な混雑状況.
搭乗チェックインの時に,パスポート提示が求め
られたが,あとはすいすい.
それがかえって失敗しかけを招いた.すいすいと
行ったら,
違う船に乗る.
タッチセーフで気づいて,
乗り換える.どちらの船もタリンにいくが、双方と
も満員.
私たちがのったのは、タリンク社の「スーパース
ター」という、大型のクルーズ船だ.
写真は上甲板
船上では,盛り上がる数人グループが目立つ.近くに缶ジン10本を飲んで,
「出来上がっている」女性グルー
プ.どうやら週末旅行のようだ.
それに大きなバッグをもつ人が多い.エス
トニアは物価が安いとガイドブックに書いて
あった.とくに酒類がそうだ.
「買出し」では
ないかと予測する.ユーロ加盟国の人は、お
そらくパスポートもなしで、気楽に行けると
ころなのだろう。
2時間でタリンに到着.
写真は、船上から見るタリン
タリンの街を見ての第一感.歴史性.
オールドタウンと呼ばれるところが,
観光地になっている.12〜13世紀ご
ろから街づくりが始まったようだ.それ
は城塞都市だ.
購入した英語版のガイドブックによる
と,デンマークが建設を始めたようだ.
左は、オールドタウンを港のある北側
から見る
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
エストニアは,ソ連崩壊の流れのなかで,独立する.そ
の記念碑(右写真)が,城入り口近くにある.
オールドタウンの北入り口の門にくっついた建物は,
「ふ
とっちょマルガレータ」
(中左写真)という愛称の旧監獄で、いまでは海事博物館になっている.展示物をみると,
バルト海の要所としてのタリンの歴史がおおまかにわかる.
写真は、北側の門からオールドタウンを見る
オールドタウンの中に入ると,中世の雰囲気を想
像させる.石畳道と古い建物ばかりだ.
写真は、スウェーデン大使館とブラックヘッド兄
弟の古い建物
タリンはハンザ同盟の重要な場所だ.世界史の教
科書で,
50年前に習ったことは覚えているが,その
中身はよく記憶していない.ギルドの建物もある.
200年ぐらいの歴史しかないヘルシンキとはお
お違いの雰囲気だ.
とはいっても,
城塞都市の外は,
新しい感じだ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
オールドタウンを歩きながら,あちこちにある土
産物店に入ったりする.
ここは,EU加盟国ではあるが,通貨はEEKと
いう独自のものを使用している.そこで,一万円を
下船入国した場所で両替した.もっと両替すること
をしきりにすすめられたが,数時間の滞在なので,
それだけにした.使い始めると,貨幣価値が混乱し
てくる.我々が入るようなところは,ユーロも通用
するので、使い分けに困った。
タウンホールと広場
昼時になって,昼食場所を探すが,結果
的にエストニア家庭料理店を選ぶ.
(下左写
真)
写真は出てきた料理だ.私たちにも親しみやすいものだった.この店は結構大きいが,家族でやっているとの
話だ.一人でウェイトレス役を務める娘さんの行動力あふれる動きは感心させられた.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
ここで,アメリカのシアトルからツアーで来ている
高齢日本人女性との出会い・会話もあった.ウクライ
ナ,モスクワ,タリン,ヘルシンキというツアーだそ
うだ.私より一まわり以上年上の彼女の話を聞いてい
ると何か勇気づけられる.
城塞の出口の近くに日本大使館を見つける
(右写真)
.
ヘルシンキのビルの一角の日本大使館とは大違いだ.
桜が植えてあった.
城塞のなかには,歴史性のある教会などの建物が並ぶ.
中右は、アレクサンダーネフスキー寺院
写真は、トームペア城
この国は、スウェーデンとロシアの長い支配
の後、ようやく独立したフィンランドと似た歴
史をたどっている。タリンは、ヘルシンキの歴
史よりはるかに古い。一時果たした独立も、他
国支配下に戻され、ようやく最近独立を果たし
ている。交通の要所だけに、そうした歴史が作
られたのかもしれない。
ちなみに、フィンランド語に似た言語はエス
トニア語だけだそうだ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
左は、聖マリア寺院
右は、城壁
城壁の端には見晴らしのいい場所がある.
(右と下
の写真)
オールドタウンを見ると,それだけの歴
史的価値を感じる.
夕方,
帰りのフェリーに乗る.
想像通り,
酒などの買出しを終えたフィンランド客が
多い.
わずか6時間の滞在だったが,私の訪問
国が一ヶ国増えた.人口が沖縄と同じくら
いのこの国が,
今後どう展開していくのか,
興味がもたれる.相撲力士「把留都」を通
してしか知ることの少ない,私たちにとっ
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
て,エストニアをふくめて,こうした国の現
在,将来に関心を持つことは,日本や沖縄の
将来にとって,示唆的なことが多くなりそう
だ.
ここでは,フィンランド同様,実に多様な
地域から観光客がきて,多種類の言葉が飛び
交う.
それに比べると,日本を訪問する外国から
の観光客の種類は少ない.
写真は、城壁南端から見る、オールドタウンの外側のエストニア風景
クラフト展
9月19日夕記
フィンランド在住の方から得た情報をもとに,港近くの会
場で土日開催のクラフト展・即売会場に出かける.
途中で,エスプラナーディ公園の写真を撮る.いわば大通
り公園で,何度も通ったところだ.ヘルシンキ大学の新入生
の仮装グループが「活躍」したところでもある.
クラフト展は入場料10ユーロ.女性客が80%.多様な世代だが,
年齢層は比較的高そう.男性は私と同世代が多いか.展示品が,女性
に親しみやすいものが多いためだろうと思う.
100ぐらいもある展示スペースは,会社が出しているところもあ
るが,家族協同で製作するといった感じが多い.
ともかくたくさんの人出だった.
あるショップの前で,写真のように,子どもに引きひもで結びあっ
ている母親がいた.
話しかけたら,話がどんどん進んだ.
「写真をとってもいいか」と尋
ねたら、OKだった.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
人ごみの中で迷子にならないための工夫だとい
う。
手をつないでいると、
子どもも窮屈に感じて、
このほうが好きだ、との話。
話がすすんでいくと,父母,18歳の娘と赤ち
ゃんの四人で,自分たちで製作したものを、その
店を売っていたのだった.馬.猫.エンジェルを
題材にした焼物・絵などだ.
こんな風に,いくつかの店で話が弾んだ.自ら
製作した木工作品の説明が英語では難しいと感じ
て,娘が応対した店で写した写真が,椅子の写真
だ.なかなか素敵なデザインだが,持って帰れないから,許可を得て写真をとった.その店では,料理用の木工
道具を買った.このお父さん,職人らしく熱心に素材などを説明してくれた.
ある店では、押し花・押し葉でとっても美しいカードを作ったものが
あった。この 6 枚で10ユーロとは、申し訳ないような安価だった。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
別の店では、素晴らしいデザインのカップという
か、小物入れというか、そんなものに出会った。2
個セットで買うと割引ということだ。1組買った。
どう使うかは、検討中
鬱を直す器具・古風なエレベーター
9月20日夕記
フィンランドは,緯度が高く太陽が低いし,秋から冬にかけて
日照時間が急速に減ってくる.秋分の日直前の今日も,どんどん
短くなるのを感じる.
地元の人たちの話では,11月になると,鬱気分になりがちだ
そうだ.職場でも集中がとぎれたりするという.ということで,
太陽光を浴びるのと同じ効果のある電球?を浴びる器具がある.
写真はその器具だ.9月ころから浴び始めて,徐々に増やしてい
くという.本によると,うつ病の治療器具の一つになっていると
いうことだ.
また,ある地元の人は,最近,それに類したものとして,耳穴に光を当てる器具が出回りはじめたという.鬱
でもない娘たちが,
「試し」にということで,早速購入してきた.私も
やってみた.
個人によって効果は違うということだ.私の場合,すぐに耳穴が暖
かくなり,そのうち後頭部がちょっと痛くなる.他の人の場合は,そ
んなことはない.私には合わないのかな,と思う.
それにしても,いろいろなものが作られるのだな,と思う.鬱対策
に関心の高いフィンランドらしいなと思う.
ところで,地元のあるアパートメントには,大変クラシックなエレ
ベーターがあり,
思わず写真にした.
鉄格子に似たものでできており,
日本だと30年以上前には消えたタイプだと思うが,大切に継承され
ているようだ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
起業を支えるテクノポリス
9月20日夕〜21日午前記
9月20日朝,研究調査に便乗して,テクノポ
リスを見に行く.アパートメントから近くのヘル
シンキ・バスセンターからバスで行く.ちょうど
出勤ラッシュ時間で,10分間隔のバスだが,満
員だ.都心から郊外向けのバスが満員とは,日本
では珍しい光景だ.
行き先は,隣のエスポー市内のオタニエム地区
だ.IT産業が集積しているところで,ヘルシン
キ工科大学もある.
テクノポリスは,ベンチャー企業を起こそうとす
る,または,起こし始めた,あるいは,起こして軌
道に乗りかけた,そういった動きを支える場,施設
だ.
巨大なものだ.フィンランド内外に拠点をいくつ
かもっているが,ヘルシンキ近郊のここのものは,
かなり実績をあげているようだ.
私の専門外なので,
わからないことだらけだが,びっくりすることが続
出.
建物の外観からしてすごいが,中もすごい.すべ
てデザイン性があふれている.フィンランドらしく
木製品がうまく使われている.無機質のなかに,温かみを加えている.
大きな建物が二つあるが、上写真は、そのうちの一つの全景。中写真は、前景。
下右写真は、同じ建物のレセプション。下左写真は、同じ建物の内部を見渡す
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
テクノポリスの内部施設は,IT関連の起業を支援
する機能が豊かだ.ビデオ会議室は,世界のどことで
も会議ができる方向で準備されている.
起業家たちのためのミニオフィスには,一人用の事
務室が連なる.事務機器の販売やレンタルのサービス
が受けられる.自動車の洗車サービスまである.共用
の会議室などもいろいろ用意されている.
ミニオフィスが連なる
レセプションには起業社名が並ぶ.
極め付きは,最上階にある,サウナつきの会議室だ.会議を終えたら皆でサウナに入るという段取りだ.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
窓からは美しい森が見える.
こんな所で起業すれば、成功まちがいなし。環
境が良すぎて、かえって、か。
これまで紹介してきた建物1に隣り合わせて,大きな建物2がある.
建物2
講堂。
似たつくりだが、建物1になかったものとして,講堂と教室がある.
教室は,数人収容で,IT機器が装備され,充実した授業ができる印象だ.
ヴィデオ会議室
会議室のサウナ
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
このサウナ付き会議室には、大きな室内バーベキ
ューグリルまで用意されている.
ここには,建物設備などのハード面を業務とする
テクノポリスとペアで,起業支援を直接担当するス
ピノーという組織がある。そのスピノーの専門家か
ら,インキュベーションについての説明を受けた.
アイデアを持ち込む起業志望者にたいして,いろ
いろな援助をしていく.志望者のうちの1/3が起業候補になり,そのまた1/3が起業し,そのなかの何分の1
かが軌道にのるわけだが,その過程のサポート例がたくさん説明される.自信にあふれて,楽しい事例をたくさ
ん紹介された.
こうした専門家が何人もいる.MBAをもち,若いころから,10年,20年と,この仕事に携わり,実際に,
今では著名な世界規模の企業を育ててきたようだ.日本の場合は,銀行とか企業を退職したベテランが担当する
ような仕事かもしれない.
ここでは,産業/教育における日本との違いについて考えさせられた.たとえば,アイデアを持ち込んだ起業
志望者にたいして,市場化し利益を得るようになるにいたるまでの間に生じるであろう諸問題を発見し,その問
題を解決していくことについて,志望者自身にうんと考えさせるのだ.
ここは,学校を卒業して,企業人になる間の過程を教育する機関だといいかえてもいいような感じさえした.
日本の場合,学校から仕事への過程は,就職活動,そして新入社員教育に焦点化されるが,ここでは,その過程
がもっと広いのだ。
こうした問題発見/問題解決型学習が,小学生段階から行われるフィンランドと,大学,ないしは大学卒業後
にはじめて少しばかり行われる日本との違いは大きい.
また,この過程が,多種多様なつながりを作り出していくものとして行われ,それほど競争的でない点も注目
される.
こうしたことが,人口500万のフィンランドで
行われ,しかも世界的企業をたくさん生み出してい
る点,大変関心がもたれる.
このあたりのことは,深めて考えて行きたい.
写真は、スピノーの入り口
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
保育園訪問
2010-2011
9月21日午前記
9月20日午後,恵美子の希望で,2度目の保育所訪問した.恵美子はここにきて,どこか保育園訪問をした
いと,インターネットで調べた。そのなかで、ベロニエム・デイ・ケア・センターが注目されるという。住所表
示はみつからない。ベロニエムという地名を頼りに,私が場所を調べ,見当をつけて出かけた.
目当て場所の近くになったら,たくさんの子どもと遊ぶ保育集団を見つけた.先生と思しき方に声をかける.
すると,目当ての保育園ではなく,別のスウェーデン系の保育園だった.
もう少し行って,ベビーカーと一緒のお母さんに話しかけて,尋ねる.その人は,この地域に住んでいないか
らわからないけど,といいながら,自分のアイポッドで,保育所の名前を調べ,探し出す.そこにもう一組の親
子がとおりかかり,2組がかりで場所を探し出してくれた.
その通りにいくと,公園らしきところで,たくさんの子どもが遊んでいる.親も何人かいる.一人に聞くと,
それは、ベロニエミ・デイ・ケア・センターの園庭で,向かいの建物にセンターの入り口あるとのこと.そこに
いくと,リトアニア大使館の表示.
(右写真)
写真のなかの中央に、フィンランド語で「昼の
子どもの家」と書いてあるとは、後でフィンラン
ド語がわかる人から聞いた。
私たちはわからない。
下側の表示は、英語表示があるので、リトアニア
大使館と分かる。
そこで、近くの入り口などを探すなど、迷った
挙句,中に入ると,デイ・ケア・センターを発見。
ブザーを鳴らすと,男性教師があらわれ,突然の
訪問にもかかわらず,中にいれてくれた.
3時40分ごろだったが,ちょうど
降園時間で,子どもたちはすべて,先
ほどの園庭で迎えを待ち,建物のなか
は教師たちのまとめ作業や清掃時間だ
った.
写真は保育所風景
各部屋を案内してくださった.子ど
も数70名,教師数は10名で,男女
半々.筋肉質な二人の男性教員が私に
は印象的だった。他に食事清掃担当が
2名。ヘルシンキ市が運営する。3歳
70
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
から6歳までで,6歳はプリスクールだ。雰囲気がとても
いい.
右写真は,物語を作りながら遊ぶ,
「空飛ぶじゅうたん」
だ。恵美子がインターネットで調べて注目した実践に使わ
れるものだ。
補足 9月20日朝配布されたヘルシンキ市発行で年6
回全戸配布される Herusinki info 紙には,デイ・ケア・
センターについてこんな情報が掲載されていた.
全部で24ページあるうち英語で書かれているのは、
1/
2ページだけで,くわしくはインターネットサイトを参照とのことだ.その記事によると、ヘルシンキのデイケ
アセンターには,13%の外国生まれの子どもがおり,園によっては20%になる.言語の数は80に及ぶ。こ
のように,フィンランドも多文化多言語的色彩を強めているようだ.
植物園再訪
9月21日午後記
20日午後,保育園のあと,植物園に行く.
私には再訪となる.
そこに入る前に,交差点の街角コーヒー店に
立ち寄る.一杯1ユーロで,おいしかった.私
は気づかなかったが,恵美子は,店の主は妊娠
中だそうだ.妊娠中の人をよくみかけるそうだ
が,私は一度も気づかない.
前回訪問から10日余りたつ植物園では,ぼたんの花が印象的だった.美しい写真を並べよう。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
アスパラガスを発見
見たことがないキノコも見た.雨続きで,キ
ノコがよく育つようだ.地元の人の話では,い
まが雨シーズンだとのこと.
湖・中央駅・ベリー
9月21日午後記
20日のお出かけの最後は、植物園を出て
周辺を散歩し寄り道をしながら帰る。
植物園の北側の湖がきれいだった.
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
中央駅の植物園側の丘から見た列車もきれいだ.
ここでは改札口はない。ホームには自由に出入りできる。
駅ホームで、
ブルーベリーなどの3種類のベリーを買って,
アパートで食べる.おいしい.ベリー収穫の季節のようだ。
テンペリアウキオ教会再訪
9月21日夕記
今日は一日雨.これまで,こんなに降り続
くことはなかった.さすが雨のシーズンだ.
ヘルシンキ滞在も最終段階.
午前中ゆっくりとアパートを出て,テンペ
リアウキオ教会に向かう.
ちょうど,吹奏楽プラスアコーディオンの
73
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
グループが練習していた.オーケストラ
に近い.教会でオーケストラに類したも
のをするのは素敵だ.岩に囲まれた教会
なので,音響的にどうなのかは,わから
ないが,興味深い雰囲気をつくる.
その後,カッペンにあるテンニスパラ
ッチ=ヘルシンキ市立美術館に行く.
フィ
ンランド美術と思いきや,南アフリカの
現代美術作家の作品の企画だった.差別
など現代南アフリカをめぐる状況への強
力なメッセージを放つものだった.先日
購入したきつねと熊の小さな絵も,フィ
ンランド作家のものではなくて,南アフリカ作家であることをここで知る.メルヘン調の作品だと思っていたも
のが,実は風刺的なものであることを知る.わからないものだ.
ラップランド料理
9月21日夕 記
21日の昼食は,思い出つくりの意味もこめて,すぐ近くのラッ
プランド料理に行く.
ラップランドは、北極圏内にあるフィンランドの北部地方だ。
びっくりするほどの値段でもあるし,ここのレストランの量はとても多いので,半人前の注文をする.
右写真は,トナカイのチーズ風味スープ.
下写真は、みんなでシェアしていただいた主菜の,
「野生の盛り合わせ二人前」
。
ヘラジカのサーロインステーキ,カモシカのソー
セージ,トナカイの煮込み。
ステーキは,牛肉の味を濃くした感じ.ほかのも
のも,味が濃厚だ.
このほかに、野菜のオーブン焼き,ポテトとクリ
ームソース添え、シーザーサラダ,きのこスープを
いただく。
半人前で正解であった.満足して店を出る.
74
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
買物
2010-2011
9月21日夜 記
21日夕方,すぐ近くのカンピショッピングセン
ターに買い物に出る.いつも駅前商店街などにでて
いたが,こんな近くに大規模なものがあるのに気づ
かなかった.
このセンターは100ぐらい店があるらしいが,
店の個性を保ちつつも,全体としてのデザイン統一
が美しい.ここに限らず,どこに行ってもデザイン
性を感じるのが,この国の特徴だろう.
美しい店なので商品価格が高いという,というも
のでもない.衣類でいえば,百貨店とスーパーの中
間というべきか.
ここで買ったのは,孫へのみやげと,私の収集のためのぬいぐ
るみ人形だ(ふくろう)
.
とってもかわいいし,手頃な価格.製造国は,フィンランド,
スウェーデン,ドイツと多様だ.
上写真は、ぬいぐるみ。 となかい りす ムーミン
左写真は、ふくろう
アモス・アンデルセン美術館
9月22日機内メモ・28日記
ヘルシンキ滞在最後の22日午前に、すぐ近くのアモス・ア
ンデルセン美術館に行く。実業家が自ら収集した美術品を、没
後、当人が住んでいた住宅に展示したということらしい。
右写真は、美術館の外観
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
展示物はさておき、ここの美術館のトイレが、デザイン性溢
れるもので美しかったので、つい写真にしてしまった。フィン
ランドは、さりげない生活空間のデザイン性がとってもいい。
さて、ここでの話題の一つは、若い美術館員とたくさん話し
たことである。私たちからではなく、彼女の方から話しかけて
きて、長話になった。
ヘルシンキのどこの美術館に魅かれたか。
ヘルシンキの印象はどうか。
・・・などなど、この旅日記で書
いてきたようなことを話した。
彼女は、日本にとても関心があるらしく、日本のどこに住ん
でいるかなど、日本のことも尋ねてきた。彼女に、このブログ
のアドレスが書いてある名刺をあげた。最近は、英語名刺をも
っていないので、
すべて日本語だけど、
アドレスだけはわかる。
こんな風に、日本に関心を示すフィンランド人には他にも出会
い、名刺をあげた。
話題の一つは、フィンランドと日本の違いと共通性だった。
開館まもない平日の朝なので、美術館員もゆとりがあるのだろう。そうしたユトリを見せてくれる館員がいる
こと自体がうれしい。他の館員にも声をかけられて、あの部屋は見たか、などと声をかけられた。
初対面は、無愛想に見えるフィンランド人だが、実は人懐っこいのだ、と私は思う。
振り返り
9月22日午前記 現地で書く最後の日記
今日夕方のフライトで,帰る.時差が 6 時間(サマータイム期間)あるので,日本時間で23日午前9時に中
部国際空港到着.乗り継いで午後に帰宅となる.
16日間の滞在.トロントに 1 年間滞在した以外は,1週間以内の旅なので,長期は今回が初体験だ.旅とい
うよりも滞在という言葉が似合う.
計画なしの滞在なので,ゆったりしたペースだった.平均して,一日3〜5時間外出.それでも長期滞在なの
で,ヘルシンキ市内の主だったところはほぼまわったようだ.
ヘルシンキ以外は,隣のエスポーの二ケ所だけだが,他のところは,次の機会にしよう.とはいっても,来る
可能性はそんなに高くはない.
出会ったフィンランド人の印象.道ですれ違うときは,無愛想な感じ.ヌークシオ国立公園ですれ違う人は,
たいてい無応答だった.しかし,いったん会話が始まると,とても親切に明るく話が進む.セウラサーリ島の「大
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
工」のお兄さん.突然訪問のデイケアセンターの先生.訪問先のお宅の方々.印象深い方々が多い.
海外に出ると,安全が気になるが,ここはとても安全だ.都心滞在なのに,日常生活で警官に出会うことがと
ても少ないことがそれを示しているだろう.恵美子がカバンを忘れたときも,隣のおばさんがわざわざ呼び止め
てくれたし,傘を忘れた時,写真を買ったお店の人が,わざわざ持ってきてくれた.
物価は高めだが,外食を減らせば,そんなに高くつかない.
英語が通用するという話だが,確かにそうだ.しかし,英語表示は多くない.
料理は「それほどには」と書いてある本に事前に出会ったが,私には悪くなかった.トロントなどでもそうだ
が,多文化のものに出会えるし,むしろ豊かかもしれない.グルメ嗜好の人にはどうだかわからないが.
街のあちこちで,また人々の暮らしのなかで,デザイン性のよさが目についた.飾りがすごいというのではな
く,シンプルで機能性に溢れているところがポイントだ.シンプルななかに美しさを感じさせるのは,そういう
文化の蓄積がかなりあるゆえだろう.
色はモノトーンに近いものが多い.地味さのなかに美しさを追求しているといってもよいだろう.沖縄感覚で
いうと,もう少し,明かり,光を強く感じさせるものがほしくなるが.
土産物
9月22日メモ、28日記
22日午後、フィンエアウェイのバスで、空港へ。飛行機は満席で、席が確定したのは、搭乗直前。しかも二
人並びの席ではない。行き同様、ヨーロッパ各地からの人が乗り継ぎで乗るからだ。搭乗後、これまた離れ離れ
になっているグループがあり、席を交替しあって、恵美子と隣席に坐ることができた。
空港では、残ったユーロで、土産物を買う。一つは、旅日記の最初の方で話題にした、ベリーの果実酒だ。地
元の人に、どれがいいかを聞いておいたが、それを見つけて購入した。
2,3回も出かけて買っていなかったフィンランドのブランド磁器を買う。いくつかブランドがあるが、デザ
インがシンプルで、機能性も高く、気にいって
いた、イッタラのマグカップを購入(写真)
。他
にお菓子なども買った。
二人での外国旅行は、4年ぶり。ウィーン、
ドレスデン以来だ。二人での外国旅行を通算す
ると、7,8回目かな。すべて、団体旅行では
なくて個人旅行なので、旅の最中、けんかする
わけにはいかない。助け合いが必要になる。今
回は娘夫妻といっしょのこともあったが、大半
はふたりでの行動だった。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
滞在型個人旅行のおすすめ
2010-2011
9月28日 記
外国旅行は、大半の日本人にとっては、団体のツアー旅行が多いだろう。それはそれで素晴らしい体験となる
だろう。私のように、自分なりのペースで、自分が体験したい事をするというタイプにとっては窮屈だし、余り
に忙しすぎるとは思うが、体験がない人に、自分なりに計画を作るというのは、大変難しい。
それにしても、回数を重ねるごとに、旅行社の助けを借りながら自分でプランを作り、自分で行動する個人旅
行のほうへチャレンジしてほしい、と思う。それへの過渡期として、団体ツアーでありながらも、フリープラン
を含むものがあるようだ。
それらを経て、個人旅行へとすすんでほしい。そうなってくると、旅行社だけでなく、現地在住の人とのネッ
トワークで動くことも出てこよう。なかには、仕事で、あるいは家族が在住する、あるいは、知人がいる、とい
うことがきっかけで旅行する人もいる。私などは、そうしたケースが多い。
そうなると、観光スポットをまわる旅ではなく、人と会い、交流することを含む体験滞在型になってくる。
日本人の場合は、こういう流れの展開が多いだろう。しかし、トロントにいた時も、今回のフィンランドでも
そうだが、観光ではない形での外国旅行、外国滞在の人が多い。生活のために行き、滞在するのだ。学校通い、
仕事、NGO業務、結婚といったのがそうだ。さらには、カナダのように、移民難民の人も多い。
そういう意味では、外国訪問の視野のなかに、観光以外があることを考えて欲しい。観光だけでなく、友好交
流を目的とする、自治体主催の姉妹都市行事などもその一つだろう。
いずれにせよ、いろんなチャレンジをして、地球人へと成長していきたいものだ。
ところで、海外での言葉問題をどうするかが、日本人には関門になっている。だが、たいていの人は、6~9
年間、英語学習している。他国と遜色があるわけではない。私なども、中高大、8 年間は英語学習した。しかし、
会話学習はゼロで、50歳代になってはじめて英会話学習を始め、外国滞在生活を始めた。
先日、英語は1000時間の耳慣れが必要だ、という説を聞いた。しかし、50歳以上になると、1500時
間ぐらい必要だ、というのが、私の実感だ。私自身は、数百時間英会話に接しているのに、成長がとても遅いの
だ。
ところが、そんなに長い時間勉強していない外国人がどんどん英語を話す。フィンランドで、私が英語で話し
かけたら、全員が英語で返してきた。ただ一人だけ、クラフトショップの高齢者が、途中で娘にバトンタッチし
ただけだ。フィンランドで英会話する時は、第二、第三言語どうしであるので、お互い気楽に, 間違えつつ、苦
労しつつ英語を話している、という気持になり、気分が楽だし、ゆっくり話すからいい。
私の考えでは、大切なのは、自分から英語で話しかけることだと思う。残念ながら、日本の学校での英語教育、
とくにテストでは、自分から話しかける場面が無に等しいのだ。
自分で話しかけることの有効さを、実演したのは、恵美子の保育園訪問だった。道でベビーカーといっしょの
母親に話しかけて、近くの保育園を紹介してもらい、アポなしの保育園訪問を二度も成功させたのだ。外国生活
経験が私より短いのに、彼女の大胆さは、英語力どうのこうのというわけではない。彼女の[魔力]に相手がの
ってくるという感じだ。いずれの保育園でも、私たちの予想よりずっと親切に対応して下さった。
英検とか、TOEICとかTOFELとかで高得点をとるだけでは十分ではない。実際に話しかけることだ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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私の場合も、これらのテストは一度も受けたことはない。でも、いつも「英語力がないのに、話しかけている」
と言われてきた。必要なのはチャレンジだ。
私にとって、この体験は大変貴重だった。計画なしの滞在型「旅」が良かったということもある。
また当然、フィンランドの興味深さ、そしてエネルギーに新しい発見があったこともある。20世紀初頭まで
「不遇」の位置に置かれてきたのが、なぜこうもエネルギッシュに動いているのか、そこには興味深いことが底
深くありそうだ。また、沖縄と共通する面が見られるのも、興味深いことだ。
ということで、研究的関心も湧いてきている。機会があれば、さらに現地の人々と意見交換のために再訪して
みたいとも思っている。
関心事は、私の専門分野の教育ということには限っていない。今回の旅はむしろそれ以外の事ばかりに首をつ
っこんできた。今後、それ以外のことと教育との関係も考えてみたい。
私にとっての最大の問題は、カナダ同様、寒いことだ。そして、カナダ以上に日差しがとっても弱いことだ。
でも一カ月以内なら耐えられそうな気もする。
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2011年9月
ヘルシンキ到着と森散歩
前年と同じ時期に、ヘルシンキに滞在した。
今回の旅は、当初、
「まじめ」な仕事と「楽しい
遊び」半々のつもりだったが、実際は、
「まじめ」
な仕事7~8割になってしまった。
「まじめな」話
のファイルに掲載するだろう。
ではスタートしよう。
5日に飛行機に乗る。乗ると満席。どうやら、前日まで台風欠
航していたので、変更して搭乗した人が多いようだ。ほとんどが
ヨーロッパ各地へと乗り継いでいく人たちで、ヘルシンキで降り
る人は、数えられるほどだ。
ヘルシンキのこの日は意外に暖かく、20 度ぐらいだ。
荷解きした後すぐに、近くの公園というより、森といってよさ
そうなところへ散歩に出かける。
冗談だと思うが、地元の人はこの森はラップランドまで続くと
いう。でも、真実に近そうだ。北極圏のラップランドまでは10
00キロ以上ありそうだ。南端では、自然林というよりは、植林
が多そうだが、
それでも、
100年200年はたっていそうな木々
だ。
森の南端に隣接するのは、オリンピック公園であり、
ヘルシンキ中央駅まで2キロぐらいのところ。国の南端
にある首都中心近くから国の北端まで森が続くというの
は、ステキなことだ。
森を歩いていると、高さ2メートル足らずが立木のま
ま残っている倒木に、
「胎児」が彫ってある。プレートに
作者などが書いてある(中写真)
。
森の南端近くには、馬の飼育や乗馬練習場(障害物レ
ース向け)があり、馬の道も整備されている。
(右写真)
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
6時間の時差があるので、8時には就寝。10時
間眠る。
右の写真は、ヘルシンキの宿泊先すぐそばのトゥ
ールー湖だ。
セウラサーリ再訪
昨年、2度も訪れたセウラザーリ島も、宿舎に近い。徒歩で30分もかからない。美しい光景が多い。
ここは、学校からまとまって来る子どもたちが多い。あるグループは、先生が英語で話し、子どもたちはフィ
ンランド語で話す。ここは徒歩なので、近くの学校だろう。遠くからバスでくる学校もある。
島の中には美しい泉が多い。
(中写真)
きのこの季節でもある。
(右下写真)
島の中には、
「野外博物館」ということで、古い建築が残されている。
左下写真
は、釘を使
わないログ
ハウス。丸
太そのまま
ではなく、
カットして
ある。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
森歩き・市民農園
3日目の朝、例のラップランド?まで続く森
をどんどん歩いて見る。途中、道路、鉄道をく
ぐる。ともかくどんどん続きそうな気配。
途中、市民農園と思しきものに出会う。
(中写真)
スイスチャード、ボリジなどのハーブ、
野菜などが見られる。でも、そろそろ季節
が終わる気配。
頭を使う日々だし、健康維持のためもあ
って、時間があれば、ともかく歩いた。イ
ンタビュー会場へも、40分ぐらいで行け
るところは歩いた。
ところで、私の携帯電話、高齢者向けのラクラクフォンは、国際仕様ではない。昨年は、間違った説明をうけ
て、あやうく到着したばかりのヘルシンキで、迷子になりそうになった苦い体験がある。
でも、時計として使える。6時間の時差を直さないで、換算して使用。
そして、歩数計として大活用。
ちなみに、滞在の日々の歩数を記そう。
15日 10177
14日 10609
11日 16574
10日 15848
9日
9056
6日 17429
5日
7206
7日 26478
13日 10216
12日 17142
8日 19760
1日平均15000歩だ。こんなに歩いたのは、前例がない。お陰で、沖縄に戻ってから体脂肪計にのると、
体脂肪も内臓脂肪も体重も、ぐんと減少。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
オリンピック公園 トゥールー湖
宿舎から、インタビューの場所になることが多
いヘルシンキ中心部まで徒歩でほぼ40分。たい
ていは、オリンピック公園→トゥールー湖畔→中
心部→会場というコースで徒歩移動。
オリンピック公園(右写真)は、1952年の
ヘルシンキオリンピックの施設などで構成される。
高い建物は聖火台に使われたらしい。私が6~7
歳のころで、水泳で古橋が活躍した時か。私の脳
裏にかすかに残っている。世界の戦後復興の象徴のようなものだ。
すぐそばに、サッカー場もあり、私が着いた翌日ぐらいに、オランダとフィンランドのワールドサッカー予選
があり、フィンランドが善戦したそうだ。
オリンピック公園の南側にトゥールー湖があ
る。冬場は凍結し、湖面を歩いて渡る人もいる
とのこと。
湖畔には美しい建物が多い。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
ヘルシンキ街風景
インタビューへの徒歩往復で出会ったいくつか
の風景。
1)フィンランディア・ホール(トゥールー湖畔)
2)大聖堂。昨年はこの広場に世界のたく
さんの国を象徴する白熊像があったが、今
年はない。
3)あるインタビュー先で見た、コーヒーメ
イカー(右写真)
自分で好きなコーヒーの袋を入れると、コ
ーヒーがでてくる。普通のものと同じ構造だ
が、自分の選択で一人分のものがドリップさ
れてくるのがミソ。
フィンランドは、コーヒーの一大消費国。
どこに行っても、コーヒーが出てくる。自分
で選択して用意する場合が多い。クッキーな
どを選択できることもある。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
4)フリージャーナリストたちが、国会議事堂に請
願デモをしている光景。これまでなかった新聞への
消費税課税実施に反対などの内容らしい。
小国だが、
フリージャーナリストがこれだけたくさんいて、労
働組合を組織しているのも興味深い。
5)昨年工事中で入れなかったヘル
シンキ・ミュージックセンター(芝
生)から、
フィンランディアホールを
見る。
ここが中央駅すぐ近くなのだ。他
の国では想像ができないだろう。
6)左写真は、Forum Virium Helsinki を紹
介するパンフレット。
こんなものにもデザイン性が溢れる。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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冬の庭園
オリンピック公園とトゥールー湖にはさまれ
た位置に「冬の庭園」がある。なぜ、そんな名
前かはわからない。私の推理では、大型の温室
になかに、ヤシなどが植えられていて、冬でも
楽しめるからではないか。
その温室を始め施設全体が改修中なので、入
り口付近しか入れない。それでも満足できる。
この時期、あちこちでバラが満開だが、ここもそうだ。典型的なヨーロッパスタイルだ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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柳 花々
トゥールー湖畔には、柳の大木が多い。幹の目通りは2メー
トルを越しそうだ。樹齢はどのくらいか。100年以上。もし
かして200年以上か。トロントにも、このような大木があっ
たのを思い出した。
「かえるが枝にとびつく」という日本の柳の
イメージとはまったく異なる。
ところどころ、芝生と花壇がコントラストをな
して作られているところがある。写真は、ヘルシ
ンキ中央駅からトゥールー湖畔に行く道の傍ら。
紫はセージかラベンダーか。
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トラムの検札 自動車運転
交通関係の話題
トラム(ストリートカー、路面電車)は便利だ。市内中心部では特に便利。他に、鉄道(近郊路線と長距離路線、
セントペテルブルグまで行く国際列車もある)
、バスなど公共交通機関が凄く発達している。車社会ではあるが、
公共交通機関がこれだけあるのは、旅のものにとっても助かる。
タクシーも多いし、価格が安い。市内の主な地点の移動は、1000円前後で可能だろう。かなり距離のある
ヘルシンキ・バンタ国際空港までも3000円くらい。バス使用だと、6~7ユーロ。
オートバイ・スクーターの類いは少ない。自転車は多い。歩道と自転車道がはっきりと区分されているのもい
い。
自動車の運転は、私から見ると急発進急停車が多いが、日本の都市と同じくらいか。沖縄より激しいが。
歩行者に対して、自動車運転手はとても親切。横断歩道で立っていると、止まってくれる車が多い。
トラムに乗った時、検札に出会った。交通量調査も兼ねているのか、乗車駅と下車駅を、調査票に記入してい
た。男女3人組のやさしそうな職員だった。日本のように、乗車下車の際に料金支払いといったシステムは、他
国では余り見かけない。指定購入店で買うと2ユーロ、乗車時に運転手から買うと2ヨーロ50セント。乗車時
下車時に切符を見せるとか渡すとかはない。信頼関係で成り立っている。
検札もめったにない。いくつかの国で乗車したが、今回初体験。
検札に出会って、サッサと下車した若い女性、高校生ぐらいの2人組がいた。制度がゆるいので、無賃乗車す
る人もいるようだ。摘発されると、100ユーロ近い罰金が取られる。そのシーンを見たことはない。
写真は、本文と関係ないトゥールー湖畔
ムーミン絵本 フィンランド語
ヘルシンキの目抜き通りにアカデミア書店が
ある。大きな書店で、フィンランド随一の書店
かもしれない。フィンランドは、一人当たりの
読書量が世界のトップクラスらしい。長い冬の
時間や、人々の知的で真面目な雰囲気から、容
易に想像がつく。
私は、フィンランド語はほぼ完璧にわからな
い。分かるのは、次の単語くらいだ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
ヨー
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はい
キートス ありがとう
オイ
会社
ローマ字を使用するが、ヨーロッパ語とも全く異なる。似ているのは、エストニア語だけ。
フィンランドでは圧倒的多数が、フィンランド語を母語とする。数%の人がスウェーデン語を母語とする。だ
から、この二つが公用語だ。英語は小学校から教える。そして、ほとんどの人が英語を使える。日本のように、
読み書き英語にとどまるのではなく、聞く話すも十分できる。だから、英語を使える人は、フィンランド生活で
はほぼ困らない。
ある時、フィンランド語で話しかけられた。英語で返したが、通じないらしく、またもやフィンランド語で話
しかけられる。そういう人もいる。
といっても、道路標識などはフィンランド語とスウェーデン語の二言語表記なので、私には難しい。スウェー
デン語の方は、ドイツ語に近いらしく、欧米言語の単語に似通ったものが多く、そこから想定して意味を汲み取
ることができることもある。
書店でも、圧倒的にフィンランド語
の書籍だが、少々の英語本が置かれて
いる。
恵美子から絵本を買ってきて、と頼
まれていたので、探す。絵本コーナー
で、英語本を探すと、圧倒的にムーミ
ン本が多い。そこで、ムーミン本を、
英語版3冊フィンランド語版1冊を購
入。
楽しい本だ。
ストックホルム船旅
週末、ストックホルムまで船旅をする。何万t
もある巨大クルーズ船だ。シリアラインという会
社のセレナーデ号である。毎日、夕方ヘルシンキ
を出て、翌朝ストックホルムに着き、再び夕方出
航して翌朝戻るというコースだ。2つの船で、毎
日往復している。もう一つバイキングという会社
89
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
も同様に運航している。
船上は、世界からの客もいるが、圧倒的にフィ
ンランド人だ。いわば【週末休暇宴会コース】と
いう人々が結構多い。船内の免税売店で、酒を買
い、宴会をするのだ。大学の新入生歓迎行事と思
しきグループもある。船内には、大型会議室など
もたくさんあり、インタビューしたある労働組合
の人が、毎週どこかの組織が、ここで会合を開い
ているそうだ。船で学会を開くなどもできそうな
雰囲気だ。
読者のみなさんは、値がはるのではないか、と心配かもしれない。私も日本でのクルーズ船の価格を想像して
いたが、その10分の1くらいなのだ。往復船賃で、合計一〇〇〇〇円。バストイレ付の3人船室で、これが最
安値だが。
船室は、
日本でいえば、
ビジネスホテル並み。
1泊2日ホテル付き交通費10000円などと
いうのは、通常価格として、日本ではありえな
い。
12階建て船内の7階には、大型モールに匹
敵する店・レストランがある。ピアノ演奏・大
道芸などもある。
サウナももちろんある。
この旅で、スウェーデン訪問して、私は12
ケ国に行った計算になる。6,7時間しか滞在
しないというのは初体験だ。
写真説明
前ページ 12階の甲板。煙突自体が数回建てに匹
敵する。この甲板で、私はバルト海、フィンランド
とスウェーデンの島々、
夕陽朝陽月などを堪能した。
上左 船室 (3人部屋)
中右 7階のモール
出港してしばらくして、夕陽シーンとなる。
反対の東の空には、12日月がでている。当たり
前のことだが、地球上では、月の満ち欠けは同じ月
90
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
日だ。それが何故だか不思議に感じる。
「日は西に、月は東に」 大型船だから、甲板上で、
たやすく見られる。
私たちの乗ったクルーズ船は、
夕方5時出港。
出港して船上から、ヘルシン
キの町並みを見る。
すぐに、世界遺産でもあるス
オメンリンナ島の間をくぐって、
船は進む。バルト海をにらんだ
要塞である。今は主として観光
資源となっている。私は昨年訪
問した。
下写真は、島の南端。このあ
たりに砲台などがたくさん置か
れている。
91
浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
翌朝、
甲板に出ると、
スウェーデンの島々
を縫うように船は走る。こんなに島ばかり
とは知らなかった。
寒い。広い甲板だが、人の気配は、一人
二人ぐらい。昨夜の宴で、眠っている人が
多いのだろう。
朝日が出る。私の独占状態。
朝日に、島々が照らされる。建物は、
休暇向けのものだろうか。
日はさらに上がる。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
空が明るくなり、船がさらにすすむと、
スウェーデン風景が目に入る。ヘルシンキ
の島々と大きな違いを感じない。
かつての要塞の跡のような感じの施設も
見られる。
朝日がさらにのぼって、新鮮な朝の雰囲気が立
ち込める。
ストックホルムの港に入る。
同じEUなので、
出入国手続きはない。
ユーロを使わないスウェーデンなので、
両替をしようとするが、する場所がみつ
からない。結局、おおよそにおいて、ユ
ーロ使用可なので、
両替なしですませた。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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港からストックホルム中心へはバス移動。
ストックホルムをヘルシンキと比べると、
歴史の長さ、王国の歴史、洗練のされ方な
どの違いを感じる。それには、かつてフィ
ンランドが、スウェーデン領だったという
歴史が反映しているのだろう。
いくつか建物を紹介しよう。
上の写真はバスの車窓からとる。
中央駅には、右の写真のようなファ
ッショナブルな建物がある。
市庁舎前広場から対岸の旧市街を見る。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
ストックホルム滞在時間が限られて
いるので、市の中心部で、普通の観光
客が行きそうなところを回る。
ノーベル賞授賞式の市庁舎は、中央
駅の隣の建物(右と下の写真)
。有名な
ので、観光客が一杯だ。
隣の湾には、ヨットが浮かぶ
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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帰りの船の時間の都合で、ストックホルムの町中を
歩けるのは、わずか4時間余り。そこで、ガイドブッ
クにあるストックホルム中心で歩いて回れるところだ
けに限定。そして、建物の中の見学も絞った。
旧市街をガムラ・スタンというのだそうだが、ここへも
徒歩でいく。最初に出会ったのは、リッダーホルム教会。
700年前に建てられた由緒ある教会で、王族の多くがこ
こに葬られているという。
左の写真は『貴族の館』
。これまた古い建物のよう
だ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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このあたりに歴史的に重要な建物が固まっ
ている。
右写真は、スウェーデンの国会議事堂
中写真は、いずれも王宮。
どちらが正面で、どちらが裏なのか、分か
らないが、双方からの写真だ。
こうしたところの衛兵は、じっと動かない
ものと決め込んでいたが、道案内もしている
し、観光客の記念撮影にも加わっている。
大聖堂は、スウェーデン最古の教会だそうだ。
その隣に、かつては証券取引所だったノーベル博物館がある。入場
したが、私の印象には余り残らなかった。
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この急ぎ足の見学の最後に、国立美術館に入っ
た。写真は、王宮前から写したもの。対岸の左側
の建物
この美術館は、入った価値があった。ヨーロッ
パ近代美術がたくさん展示されているのに加えて、
現代デザインのかなり展示されている。
シンプルで地味なフィンランドのデザインに比
べると派手で、洗練さを追求している印象を受け
た。
王宮そばで偶然、衛兵交代式に出くわした。音楽隊もあり、立派な演奏をしていた。
帰路につく。港光景。いずれも何万tもの大型クルーズ船だ。これらの船は、ロシアのセントペテロブルグ、
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ラトビア首都リガへと向かう。多分、ヘルシンキに向かう私たちの船と同じ会社のものだろう。
別の港には、別の会社のヘルシンキ行きの船が、同じ時間帯に出港する。
船の切符が、そのまま船室の鍵を兼ねている。なかなかの工夫だ、と思う。
出航後、かもめに出会う。
かもめは、多分世界各地の海・港で見られるものだろう。船について飛んでいる。船が餌をまき散らすのか、
それとも、船が作る水流が、魚などの餌をとりやすくするのか、そのあたりの事情はわからない。水面から比較
的高い位置から急降下して、水面に飛び込み、餌をとっているようだ。
それにしても、素人の私には、飛ぶ鳥を撮るのは難しい。なかば「やまかん」でたくさん撮り、その中からいい
ものだけを残すやり方。確率10%
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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ストックホルムの港を出港し、スウェーデンの島々をぬって、クルーザーは進む。そのうち、島々のなかに、
太陽が沈み始める。そのシーンの写真を紹介しよう。
昨晩は、ヘルシンキ沖で見た光景だが、今晩は、スウェーデンの夕陽と月。
世界どこでも同じといえば同じだが、違うと言えば違う。
船というのは、さえぎるものがないので、写真をとるには好都合
だ。それにしても、夕陽が沈んでしまうと、デッキ上は、人影がほ
とんどない。私は一人で楽しむ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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翌朝、私は夜明け前からデッキにでた。この時間にデッキにいる人は、私以外ゼロに近い。日の出を「独り占め」
だ。海以外にさえぎるものはなし。
ヘルシンキに近づいているが、まだ陸ははっきりとは見えない。
日の出が終わっても、朝日はしばし輝く。沖縄でもどこでもそうだ。日の出の瞬間は、見えにくいことが多く、
10~20分後にようやく太陽を確認できることの方が普通だ。この日もそうだった。
しばらくすると、ヘルシンキ近くの陸・島々も見えてきた。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
戻ってきた宿舎でも、朝陽14日月を楽しむ。
左が朝陽。右は14日月
鉄道
写真は、ヘルシンキ中央駅の北にある陸橋から、中央駅方向をながめた風景。
私には愛らしく感じられる鉄道だ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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ログハウス展示場
フィンランドのログハウスは、有名だ。歴史
的伝統を引き継ぎつつ、デザイン性機能性を追
求する現代的志向の中で、それらが一層洗練さ
れてきている。いくつもの会社によって作られ
ているが、経営事情の変化の中で、日本企業に
買収された大手企業もあるそうだ。
強い関心をもつメンバーがいたので、立ち寄
った。日本で言う住宅展示場だ。雨の中だし、
季節外れだったのか、他に来客者はほとんどいなかった。展示場を事務所にしているところもあった。
どのログハウスにもサウナが必ずついている。
ログハウスといっても、
日本で多くの人がイメージするような、
丸太そのままを積み上げるのではなく、丸太
を整形して、組み立てていく。なかには、集
成材のようにして、なかに断熱機能を持たせ
るものを入れて、「丸太もどき」をつくり、そ
れで作るところもあった。
中右写真は、ログを組み立てる仕組みをみ
せる展示
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
農村風景
ログハウス見学の帰り道、鉄道の車窓からみる農村風景。
ヘルシンキ郊外で。
扉と表札
ポリテク学長会議のある建物の扉は、時代物。貫禄がある。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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どの建物も表札の小さいことが特徴だ。権威主義が弱いため
かなあ、と推理する。
上左写真は、教育文化省の表札。上右写真は、中央教育委員
会がある
建物の表
札
左写真
は、教育
文化省の
建物
上写真は、教職員組合が入っている建物の全景
下写真は、たまたま通りかかった私立ビジネススクール
余談
トラムで、高齢者が乗って来られたので、席を譲
った。
「老老席譲り」かな、と思った。
その老女は、隣の席の小学生のゲームに興味を示
して、いろいろと尋ねる。日本でも、時々見かける
光景だ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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デザイン見本市
空き時間に訪問した。
大きな会場の入り口がわからなくて、探す。同じ
ような人がいて、その方がフィンランド語で尋ねて
くるが、対応不能。
まず高い入場料にびっくり。そして、受付脇にあ
るコンピュータ登録場で、登録する。そこででてき
たネームプレートをぶら下げて入場というわけ。登
録の際、メールアドレス記入したので、しばらくし
てから、フィンランド語のメールが届いたが、
これまた対応不能。
上写真は、入り口から会場建物を撮影。
ここから入ればよかったのに、
反対側から入って苦労した。
なかは巨大。ビジネス交渉用の場のようだ。入場したことそのものが間違いだったのか、と後悔するが、会場
内の脇道に入ると、美術品・手工芸品展示がある。これまた充実している。市内にある美術館の数倍の規模。量
質ともに豊かで、高い入場料以上の価値を感じた。
紅葉
撮影は、9月12日ごろだが、すでに紅葉時期だ。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
2010-2011
変わった競馬
フィンランド地元のテレビ局を見ていると、初
めて見るスタイルの競馬をしている。
馬の後ろに、
小さな馬車をつけて、それに騎手が乗るものだ。
騎手は、若い人とは限らない。ベテランたちが多
いと見受けられた。
勝利した馬は、馬主とおぼしき人と記念撮影を
している。
スタートは、ファジーな感じで、各馬がだいたいそろったという時だ。
なにか「ほほえましい」雰囲気を感じる。
フィンランド語なので、詳細は不明だが、見るだ
けでもけっこう楽しい。
テレビ画面を撮影したので、不鮮明になっていて
申し訳ない。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
きつつき
宿舎近くのしばしば歩いた森で、出会った。
都心からそれほど離れていない場所、ヘルシン
キ中央駅から数キロ。副都心になるような駅か
ら1キロ、で出会うなどとは、日本では考えら
れない。沖縄でもやんばるの森の中ぐらいしか
出会えない。
このきつつきは、人を恐れない。10分余り
にわたって、至近距離で10数枚撮影。
土産物―――サルミアッキ
購入してきた土産品の一部を紹介しよう。
まずサルミアッキ。
これがうまいかまずいかは、議論大いにありだ。昨年も購入し
てきたが、
差し上げた卓球仲間が、
インターネットで調べて、
「世
界一まずい」という情報を見つけ話題になる。今年も、ご希望に
応えて差し上げる。私は、まずいとは思わない。結構、おいし
い。食わず嫌いな人も食べだすと、結構ハマルようだ。
それに、飴だけでなく、チョコ風とか、柔らかい飴とか、種
類もいろいろとあるから、好みに応じて楽しめる。
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浅野誠旅シリーズ3フィンランド
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ぬいぐるみのムーミン
もう一つは、定番のぬいぐるみ。今年は、孫たちへのお土産ということもあって、ムーミンが中心。しかし、
ムーミンを知らない人たちがふえたようだ。
ムーミンカップルもなかなかいい。
ふくろう
フィンランドでも、ふくろうは人気のようだ。親子のように見えるものは、実は香りを楽しんだり、ろうそく
たてにもできる。小さな穴を一つひとつ開けるのは、点描画
を思い出させる。
ぬいぐるみ風のフクロウの腹部分の赤いシールには、ここ
を押せと書いてある。
押すと、
ふくろうの鳴き声が聞こえる。
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装飾プレート
手工芸市が、昨年と同じ場所ほぼ同じ日にあり、
再度訪問。昨年もであった店が多い。
今年もいろいろと買ったが、その一つは、セラミッ
ク製の装飾プレートだ。
プレートに水墨画を思い起こさせるようなものが
描いてある。
花カード
手工芸市では、昨年同様高齢者夫妻
の花カードを売っていた。二人で作っ
たものだ。押し花を何枚も組み合わせ
て作られている。6枚で、10ユーロ
とは申し訳ないほど安価。この二人の
楽しく充実した、自然とともにある健
康生活が想像できる。
巨大なしゃもじ
50センチぐらいの、
この巨大なしゃもじも、
手工芸市で購入したもの。普通のフライパンで
使うには巨大すぎる。シーンメイナベ用にちょ
うどいい。帰宅してから、時々、チャンプルー
用に使用している。
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工芸品
フィンランド旅で購入してきた小物工芸
品を並べよう。
小さなカップル人形 ハグしあう配置で
販売されていた。
ブレスレットやネックレス
トナカイの人形
再々度、フィンランド訪問するかどうかは、未定。行くなら、季節を変えて、ヘルシンキから離れた田舎に行
きたいな、と思う。
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