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理数系コンテスト・セミナー参加者の進路等に関する調査

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理数系コンテスト・セミナー参加者の進路等に関する調査
概要
内容に関する問い合わせ
科学技術政策研究所 第 2 調査研究グループ 担当:渡辺 政隆
Tel 03-3581-2392
Fax 03-5220-1252
ホームページ http://www.nistep.go.jp
理数系コンテスト・セミナー参加者の進路等に関する調査
(調査資料-129)
平成 18 年 10 月
文部科学省
科学技術政策研究所
1.報告書の骨子
第 3 期科学技術基本計画や科学技術・学術審議会人材委員会第三次提言の中でもその重要性が謳わ
れているコンテストやセミナーを効果的に運営するための示唆を得ることを目的の1つとして、「日本数学オリ
ンピック」「全国化学グランプリ」「数理の翼夏季セミナー」の参加者に対してアンケートを実施し、コンテスト・
セミナーが参加者の進路決定等に及ぼす効果を調べた。
・
一般に、この種のコンテストでは、参加者の多くが大学医学部に進学すると考えられている。しかしアン
ケート結果によれば、医学系進学者は全体の10~20%あまりだった。それ以外の多くはそれぞれ、「好
きな勉強」ができる理数系の専門に進学している。
・
コンテストないしセミナーへの参加は、その後の進路選択において参考となったとの回答が多かった。
参考にならなかったと答えた回答者の多くも、理系への進学を選択している(コンテスト等への参加でも、
進路希望に変更はなかったという意味と思われる)。
・
コンテストないしセミナーにおいて、一流の研究者あるいは同じ生徒同士の交流の機会を増やすことに
は、その後の勉学意欲を高める効果があるほか、進路選択にあたって好きな勉強を学びやすい大学を
選ぶ効果もある。その反面、自分よりも優秀な生徒の存在を知り、進学先を考えなおした回答者もいた。
・
理系と文系に対する印象を質問したところ、仕事は忙しい割に報われない、イメージが暗いなど、ネガテ
ィブな回答が多かった。
2.調査を行った背景と問題意識
第 3 期科学技術基本計画では、
「理科や数学好きな子どもの裾野を広げ、知的好奇心に溢れた子どもを育成する」ために、「様々な主体に
よる科学技術コンテスト等の開催を促進する。・・・・・・効果的な理数教育を通じて理科や数学に興味・関心の
高い子どもの個性・能力を伸ばし、科学技術分野において卓越した人材を育成していく必要があり、・・・・・・
才能ある子どもの各種の国際科学技術コンテスト等への参加を促進する」と謳われている。
また、平成 16 年7月に出された科学技術・学術審議会人材委員会の第三次提言の中でも、初等中等教
-1-
育の段階から科学技術を支える人材養成を行うためには、科学技術関連のテーマへの挑戦を通して意欲を
高める機会を充実することが重要であり、「科学技術コンテスト等やサイエンスキャンプへの参加促進と活動
振興を図る必要がある」と述べられている。
文部科学省においても、平成16年度から各種の科学技術コンテストに対する支援を行ってきており、平
成18年度時点で独立法人科学技術振興機構(JST)を通じて支援及び共催している科学技術コンテストは
9つである(表1)。また、平成19年度予算概算要求においては、「青少年向けの国際科学技術コンテストを
支援し、各地域における青少年の知的好奇心・探求心に応じた科学技術学習機会を充実」するために、
「国際科学技術コンテスト支援」を重点拡充施策として位置づけ、いっそうの支援拡大を予定している。
表1 JSTが支援ないし共催する科学コンテストとそれに対応する国際コンテスト一覧
コンテスト名
主催・実施機関
上位の国際大会
(日本の参加状況)
日本数学オリンピック、
日本ジュニア数学オリンピック
財団法人日本数学
オリンピック財団
国際数学オリンピック
(1990年から参加)、
アジア太平洋数学オリンピック
全国高校化学グランプリ
夢化学 21 委員会、
日本化学会化学教育協議会
国際化学オリンピック
(2003年から参加)
国際生物学オリンピック国内大会
国際生物学オリンピック日本
委員会
国際生物学オリンピック
(2005年から参加)
物理チャレンジ
物理チャレンジ組織委員会
日本情報オリンピック
情報オリンピック日本委員会
ロボカップジュニア日本大会
ロボカップ日本委員会、
ジャパン・サイエンス&エンジニア
リング・チャレンジ(JSEC)
朝日新聞社
国際物理オリンピック
(2006年から参加)
国際情報オリンピック
(1994~96年参加後は中断し、
2006年から参加再開)
ロボカップ世界大会ジュニア
リーグ(2002年から参加)
インターナショナルサイエンス&
エンジニアリングフェア(ISEF)
(2004年から派遣)
日本学生科学賞
全日本科学教育振興
委員会、読売新聞社、
独立行政法人科学技術振興
機構
全国こども科学映像祭
財団法人日本科学映像協会、
独立行政法人科学技術振興
機構
インターナショナル
サイエンス&エンジニアリング
フェア(ISEF)
(1958年から派遣)
独立行政法人科学技術振興機構(JST)が平成18年度に支援ないし共催しているコンテスト
ISEFは、国際学生科学技術博覧会とも呼ばれる
このようにセミナーやコンテストの重要性が謳われているが、実際にセミナー、コンテストに参加した人たち
のその後はどうなっているのだろうか。自分の能力を活かした進路をとっているのだろうか。あるいは異なる
分野に進む道を見つけたのだろうか。そして、進路を決める際どのようなことを重視してきたのだろうか。ある
いは、理数系が得意であろう彼ら彼女らは、理数系の仕事に対してどのようなイメージを持っているのであろ
うか。このような問題意識の下に調査を実施した。
-2-
3.アンケート方法等
(1)
アンケート対象の選定
まな
アンケートを実施するコンテストの対象は、文部科学省が認定している「学びんピック」にエントリ-されて
いる大会の中から、長期にわたって開催されていて、しかも参加者の名簿も完備している「日本数学オリンピ
ック」と「全国高校化学グランプリ」の2つを選定した。この 2 大会は、それぞれ国際数学オリンピックと国際化
学オリンピックの日本予選を兼ねている。
また、現在、日本国内では、さまざまな科学・数学系セミナーが開催しているが、その中で、長い歴史があ
り、同窓会組織による名簿管理がしっかりしている「数理の翼夏季セミナー」を調査対象として選定した。
今回アンケートを行ったコンテスト・セミナーの対象者及び目的等の概要は表2の通りである。
表2 アンケートを実施したコンテスト・セミナーの概要 (参加状況等の人数は概数)
日本数学オリンピック
全国高校化学グランプリ
歴史
プレ大会:1990年~第15回:2005年
第1回:1999年~第7回:2005年
対象
高校生以下
高校生
目的
国際数学オリンピックへ参加する日本
代表選手を選ぶために日本国内で行
われる数学のコンテスト
・予選(1000人→100人)
参加状況等
・本選(100人→20人)
・春合宿(20人→6人)
・国際数学オリンピック(6人参加)
備考
2005年の第46回国際数学オリンピック
メキシコ大会の日本人選手の成績は
金メダル3個、銀メダル1個、銅メダル2
個で国別順位は8位
数理の翼夏季セミナー
第1回:1980年~第26回:2005年
高校生、大学生等
数理科学に強い情熱と優れた資質を
国際的にも通用する若い化学者を育て
持つ若者に学年や地域の壁を越えた
ることを目的に、国際化学オリンピック
交流の機会を提供し、数理科学に対す
の日本代表選手を選ぶ化学のコンテ
る意欲を育む契機を作ることを目的と
スト
する1週間の合宿形式のセミナー
数理科学、特に数学に優れた素質と高
・第一次選考(1200人→60人)
い関心を持つ高校生・大学生等を対象
・第二次選考(60人→10人)
に書類審査で約50名を選定。募集に
当たっては数学担当教師の推薦が必
・強化訓練合宿(10人→4人)
要で、1校当たり男女1名ずつの2名ま
・国際化学オリンピック(4人参加)
で応募可。
セミナーの創始者は、数学者の広中平
2005年の第37回国際化学オリンピック
祐氏。なお、セミナーへの参加費、宿
台湾大会の日本人選手の成績は金メ
泊費は無料で交通費は一部が自己負
ダル1個、銅メダル3個
担
上述の通り、3 つのうち数理の翼夏季セミナーがもっとも古くから開催されており、昨年で第 26 回を迎えて
いる。また、日本数学オリンピックは 15 回、全国高校化学グランプリは7回開催されている。
(2)
アンケートの実施方法
① 調査方法
日本数学オリンピックの予選通過者、全国高校化学グランプリの一次選考通過者、数理の翼夏季セミ
ナーの 1 回目から昨年までの参加者全員を対象とした郵送による全数調査である。
②主な質問事項
アンケート票の前半部分では、回答者の属性とそれぞれのコンテスト、セミナーに参加したときの立場
等を質問した。後半の質問項目は基本的に同一であり、高校生に対しては希望する大学の専攻や職
業、大学生や大学院生には大学の専攻や希望する職業、社会人には大学時代の専攻や現在の職業
を聞いた。
さらに、全員に対して大学の専攻を選ぶ際に重視した(重視する)ことや、一般的な理数系の仕事と文
系の仕事を比較した場合の各自の印象を質問した。
-3-
③回収状況
アンケート票の回収状況等は表3の通りである。
表3 アンケート実施状況
日本数学オリンピック
全国高校化学グランプリ
アンケート対象年 第1回(1990)~第15回(2005) 第1回(1999)~第7回(2005)
アンケート対象者数
1,063
380
アンケート表着信数
1,045
358
回収数
296
223
回収率
28.3%
62.3%
数理の翼夏季セミナー
第1回(1980)~第26回(2005)
1,111
853
373
43.7%
注:アンケート票着信数は、郵送したアンケート票が住所不明で戻ってきた数を対象者数から差し引いた値
④回答結果の基本情報
・ 回答者の男女比は、各コンテスト・セミナー参加者の男女比とほぼ対応している。
・ 年齢構成は、日本数学オリンピックは 14 歳~32 歳、全国高校化学グランプリは 16 歳~25 歳である
のに対し、数理の翼夏季セミナーの回答者は 15 歳~51 歳と幅広い。
・ その結果、数理の翼夏季セミナーは回答者が社会人と学生が半々であったが、日本数学オリンピッ
クでは学生が約 70%、全国高校化学グランプリでは社会人がわずか1名のみで、それ以外は学生
であった。
・ いずれの回答者も 80~100%近くが数学、物理、化学の勉強が好きであると回答しており、興味・関
心を持つきっかけとして、1 位が先生の影響をあげ、2 位は本、雑誌の影響をあげている。
4.アンケートの主な結果
(1)希望する大学の専攻、在籍していた大学の専攻、および希望する将来の職業は、数学、物理学、化学
および医学系の割合が高い (日本数学オリンピック、化学グランプリ、数理の翼夏季セミナー)
日本数学オリピック参加者で比較すると、希望の専攻、在籍していた専攻、希望の職業は、いずれも1位
が数学、2 位が医学、3 位が物理学の順になる。しかし、現在の職業では医師と事務従事者(公務員、事務
系会社員他)が多くなり、数学系、物理学系研究者は数%程度となる(図1)。
数理の翼夏季セミナー参加者の大学の専攻や職業を比較してみると希望の専攻、在籍していた専攻、希
望の職業は、順位に若干の変化はあるが上位3つは医学、数学、物理学である。しかし、現在の職業は情
報処理技術者、事務従事者、数学系研究者、医師が 10%前後で並んでいる。
化学グランプリでは、社会人が1名しかいないが、大学での専攻は1位が工学系(情報工学以外)、2位が
理学系(化学)、3位が理学系(物理学)で、医学系は4位である(図2)。
ただしいずれも、最初はそれぞれ数学系、化学系、数理系の進路希望が多いが、結果的に医学部など、
別の進路に進む事例も多い。
今回の調査は追跡調査ではないため進路変更の経緯を時系列で述べることはできないが、数学や物理
学を専攻していたり、数学や物理学の研究者を希望していたものの、結果的に別の職業に就きたくなり、志
望が変わる場合も多いようである。
-4-
29.6
17.1
数学系研究者
29.5
6.6
医師
20.9
11.1
17.1
15.9
物理学系研究者
4.4
その他
5.7
2.3
9.9
11.0
3.8
教員(大学教員以外)
5.5
5.5
5.5
生物学系研究者
7.4
5.5
1.9
2.3
情報処理技術者
24.1
19.0
9.1
2.3
2.2
7.6
3.7
2.9
分からない(不明)
1.9
1.0
情報工学系研究者
11.4
6.6
1.9
化学系研究者
4.5
1.1
1.9
1.9
それ以外の研究者
経済学系研究者
機械・電気・通信技術者
2.3
1.9
2.2
大学院生
社会人
3.8
5.5
2.9
金融・保険等投資関連商品研究開発者
大学生
6.8
1.9
1.0
2.3
事務従事者(民間企業、公務員等)
中高生
10.5
6.8
22.0
4.5
1.9
建設・土木・測量技術者
0
5
10
15
20
25
30
35
%
図 1 日本数学オリンピック参加者の将来就きたい職業・現在の職業
35
工学系(情報工学以外)
33
理学系(化学)
25
理学系(物理学)
医学系
22
18
理学系(未決定)
15
薬学系
13
理学系(数学)
7
情報工学系
理学系(生物学)
6
農学系
6
2
社会科学系(法律、政治、経済学系)
総合科学系
1
人文科学系(哲学、文学等)
1
歯学系
1
教育学系
1
0
5
10
15
20 25
人数
30
図2 日本化学コンテスト参加者の大学での専攻
-5-
35
40
大学生、大学院生、社会人172名に対する質問。複数専攻を含むため、回答数は186。
(2) コンテスト参加者の中には結果的に医学部に進学した人が多いが、数学オリンピックの成績優秀者の
多くは数学を活かせる分野に進学している。
数学オリンピックの回答者296名のうち、日本数学オリンピックでの成績は、国際オリンピック出場者が17
名、本選通過・春合宿参加者が45名、予選通過者が234名だった。大学生以上240名の大学での専攻は、
理学系(数学)48名、医学系46名、理学系(物理)36名、工学系(情報工学以外)30名といった順である。
医学系への進学者はおよそ20%だが、日本数学オリンピックでの成績で見ると、国際オリンピックに出場し
た現役高校生4名を除く13名のうちで医学系に進学したのは1名のみで、それ以外は理数系に進学してい
る(図3)。しかも医学系大学院に進学した1名も、数学の知識を活かしていきたい(活かせる職業に就きた
い)と答えている。
それでも医学系への進学者が多いことは事実だが、その理由の多くは、必ずしも収入や社会的地位では
ない。むしろ、数学系研究者としての自分の才能や研究職に就ける可能性の少なさという面で漠とした不安
を抱いている事例が多いようである。
予選通過
医学系
41
理学系(数学)
35
理学系(物理)
29
工学系(情報工学系以外)
11
社会科学系
11
情報工学系
11
理学系(化学)
11
17
7
17
16
7
16
13
1
9
教育学系
3
8
理学系(地学)
2
7
総合科学系
2
6
人文系
1
5
農学系
1
4
薬学系
1
3
歯学系
1
2
6
15
1
14
1
2
12
11
10
1
13
2
12
3
2
11
1
10
2
9
8
1
7
6
5
4
3
2
5
0
5
14
理学系(生物学)
無回答
6
15
24
その他
国際数学
オリンピック
出場
本選通過・
春合宿参加
1
10
20
30
40
50
1
0
1
10
図3 大学での専攻(数学オリンピック成績別)
大学生、大学院生、社会人に対する質問(有効回答者数240)
国際数学オリンピック出場者17名の内4名は高校在学中、「その他」の専攻
-6-
0
10
2名は東京大学教養学部(理数系)在学中
(3) 大学の専門分野を選択する際には「好きな勉強ができる」「最先端の勉強ができる」「理科、数学
を利用した学問ができる」「夢を実現したい」「学生生活を楽しみたい」等、個人の興味・価値観
を反映したことを重視する傾向がある。また、コンテスト・セミナーは、理数系に進学するに
あたって、概ねプラスに影響している(数学オリンピック、化学グランプリ、数理の翼夏季セミ
ナー)
大学の専門分野を選択するに際しては、いずれのコンテスト・セミナー参加者も、「好きな勉強」や「最先
端の勉強」ができる専攻や大学を選択したとの回答が多かった。収入や社会的地位などを重視するとの意
見はそれほど多くはない(図4)。
コンテスト・セミナーに参加したことがその後の進路選択に多かれ少なかれ影響した(「大いに影響した」
+「少し影響した」)との回答が、2つのコンテストでは40~50%あまり、数理の翼夏期セミナーでは60%以
上あった。また、「影響がなかった」と答えた回答者の中にも、当初から考えていた理数系、化学系への進学
意志に変更のなかった人が多く含まれている(図5、6)。
とても重視
少し重視
あまり重視しなかった
好きな勉強
まったく重視しなかった
81.0
理科・数学を利用する学問
16.4
57.6
最先端の勉強
23.5
42.8
夢の実現
授業料が安い
大学・学部が有名
22.8
学生生活を楽しむ
22.2
自分の偏差値で合格
19.3
特別な資格
17.7
いろいろな就職先
16.1
収入の高い職
社会的地位の高い職
24.1
26.4
33.4
13.8
26.7
37.0
17.4
20.3
22.5
23.2
51.1
23.2
28.6
19.9
31.5
35.7
29.6
10.6
17.4
33.8
38.3
8.7
21.2
30.5
39.2
両親の薦め
5.8
友人・先輩の薦め
4.8
先生の薦め
4.8
0%
19.3
21.5
36.7
14.5
講義を受けたい先生
12.5
21.2
26.4
8.0
19.9
16.1
30.2
43.4
31.8
22.5
46.6
28.6
20%
40%
9.3
24.1
28.3
27.3
5.1
16.4
25.1
30.9
社会貢献できる仕事
13.5
31.2
37.9
無回答
43.7
60%
80%
100%
図4 数理の翼夏季セミナー参加者が大学や専攻分野を選ぶに際して最終的に重視した項目
-7-
大学生、大学院生、社会人 311 名の回答
どちらとも言え
ない
少し影響した
大いに影響した
理学系(数学)
1 4
理学系(物理)
1 3
ぜんぜん
影響しな
かった
あまり影響しな
かった
1 4
1 4
1 3
1 3
医学系
1 2
工学系(情報工学系以
外)
1 1
情報工学系
1 0
1 2
1 2
1 1
1 1
1 0
1 0
理学系(化学)
9
9
9
総合科学系
8
8
8
理学系(生物学)
7
理学系(地学)
歯学系
7
7
6
6
6
5
5
5
社会科学系
4
4
4
薬学系
3
3
3
人文系
2
2
1
1
2
教育学系
1
0
2
4
6
8
0
2
4
6
0
8
2
4
6
8
0
2
4
6
8
10
0
2
4
図5 日本数学オリンピック参加の影響度と大学院生の専攻
横軸は人数。有効回答数89(無回答1名を含む)。影響を受けなかったと答えた回答者も
大半は理数系に進学している
21
15
1 8
医学系
19
9
20
工学系(情報工学以外)
8
1 5
17
9
4
理学系(化学)
3
社会科学系(法律、政治、経済学系)
5
人文化学系(哲学、文学等)
3
理学系(地学)
1
8
1
7
1
1
5
歯学系
1
4
農学系
1
3
3
1
5
1
1
4
12
0
5
10
6
1
15
20
25
0
6
5
5
1
10
15
0
5
5
4
4
3
3
2
2
1
1
10
15
図5 数理の翼夏季セミナー参加の影響度と大学の専攻
-8-
7
6
1
2
1
8
5
2
無回答
1
9
1
7
3
芸術系
3
8
6
教育学系
1 1
1 0
9
6
3
2
9
2
7
総合科学系
1
1 0
1 1
3
8
薬学系
1 1
1 2
1 0
9
2
1
1 2
1
1 0
1
3
4
1 1
1
1 3
1 3
5
1 2
1
1 4
3
7
1 3
1 2
その他
2
1 4
1 3
理学系(生物学)
1 5
4
4
1 4
1
1 6
3
1 5
1 4
情報工学系
2
1 6
11
1 5
7
3
1 7
5
11
1 6
4
1 8
4
1 7
1 6
理学系(物理学)
10
1 8
11
1 7
1 7
ぜんぜん
影響しな
かった
8
1 8
理学系(数学)
あまり影響しなかっ
た
どちらとも言えない
少し影響した
大いに影響した
0
1
1
5
10
15
0
5
横軸は人数。回答数314
数理の翼夏季セミナーは全員合宿であるのに対し、数学オリンピックと化学グランプリは、一部の成績優
秀者のみが合宿に参加できる。合宿では一流の研究者等の話をじっくりと聞く機会が得られるため、その後
の進路選択に大きな影響を受ける可能性が高い。そのせいで、コンテストとセミナーで数値の若干の差が出
た可能性はある。
(4) 一般的な理数系の仕事と文系の仕事のイメージを比較すると、理数系の仕事に就いているにも
かかわらず、ネガティブな印象を持っている人が多い(数学オリンピック、化学グランプリ、数
理の翼夏季セミナー)
回答者の半数近くから6割以上の人が、理数系の仕事の方が文系の仕事に比べ「収入が少ない」「昇進
が遅い」「忙しい」「イメージが暗い」という印象を持っている(図6)。
・ 学生より社会人のほうが「収入」「昇進」「忙しさ」「イメージ」で理数系の仕事についてネガティブな印
象を持っている(数理の翼夏季セミナー)
・ 大学で理工系を専攻していた人たちの 50~60%は、「収入」、「昇進」、「忙しさ」、「イメージ」で理数
系の仕事についてネガティブな印象を持っている。また、医学系では「忙しさ」でネガティブな印象を
持っている人が特に多い(数学オリンピック、化学グランプリ、数理の翼夏季セミナー)
・ 研究者、技術者の人たちは、「収入」「昇進」「忙しさ」「イメージ」で理数系の仕事について 5 割を超え
る人がネガティブな印象を持っている(数理の翼夏季セミナー)
・ 男女別で比較すると、「収入」と「昇進」に関する設問で、男性より女性の方がネガティブな意見が少
ない傾向が見られる。これは、女性が理数系の仕事という専門的な知識を持った職業に就くことに
より、その他の職業よりも「収入」「昇進」が良くなると考えられているためと推測される(数理の翼夏季
セミナー)
○
数学オリンピック
数理の翼
数学オリンピック
化学グランプリ 4.5
11.1
化学グランプリ
11.2
数理の翼
12.6
20.2
51.0
14.9
40
△同じ、×暗い
44.2
15.5
20
イメージ(○明るい、
55.6
12.6
27.1
△同じ、×忙しい
45.8
22.8
化学グランプリ
0
53.4
19.7
21.6
忙しさ(○忙しくない、
50.7
23.0
数学オリンピック
数理の翼
47.2
26.3
25.7
数学オリンピック
△同じ、×遅い
63.2
20.2
数理の翼
昇進(○早い、
52.4
25.0
10.1
△同じ、×遅い)
44.5
31.1
13.9
収入(○多い、
45.3
26.9
19.3
×
49.7
27.4
14.2
化学グランプリ
△
%
60
-9-
80
100
図6 文系の仕事と比較した場合の理数系の仕事の印象
5.まとめと提言
(1)まとめ
・ 一般に理数系のコンテストでは、参加者の多くが大学医学部に進学すると考えられている。しかしア
ンケート結果によれば、医学系進学者は全体の10~20%あまりだった。それ以外の多くはそれぞれ、
「好きな勉強」ができる理数系の専門に進学している。
・ コンテストないしセミナーにおいて交流の機会を増やすことには、その後の勉学意欲を高める効果
があるほか、進路選択にあたって好きな勉強を学びやすい大学を選ぶ効果もある。特に、全国大会
のコンテスト・セミナーは、いわゆる有名進学校以外において、同じ学校に同好の士が少ないせい
でともすると孤立しがちな成績優秀な生徒、あるいは「理数オタク」の生徒たちが友情を育む上でも
効果がある。
・ コンテスト・セミナー参加者のあいだには、理数系研究者や理数系職業に対してネガティブなイメー
ジを抱いている人が多い。そうしたイメージを高めるためには、そうした研究の面白さや意義をもっと
アピールすると共に、理数系出身者が自分たちの専門や職業をもっとプラスに評価する必要がある。
また、理数系に進学し、専門知識を身につけた優秀な人材を活用する受け皿を、社会の様々な分
野に広げる必要もある。
(2)提言
結論として、日本数学オリンピック、全国化学グランプリ、数理の翼夏季セミナーは、理科・数学が好きで得
意な生徒の勉学意欲と才能を伸ばす上で良い影響を及ぼし得ることが判明した。ただしその効果をさらに
高めるためには、
・ 宣伝活動に力を入れることでより多く、より多様な生徒の参加を促す
・ 参加者同士、参加者と研究者との交流の場を増やす
・ 数学や科学にはそれぞれ多様な研究分野が存在しており、様々な才能を発揮する可能性が開か
れていることを積極的にアピールする
・ 優れた才能、ユニークな才能を伸ばすための方策を工夫する
・ コンテスト成績優秀者に対する大学推薦入学、入学試験免除などの特典を拡大する
などの対策に力を入れる必要がある。これらは、同世代の優秀な生徒の存在を知ることで、逆に成績優秀者
が好きな科目への自信を失い、進路を変更する事例を減らす上でも、また、理系の多様なキャリアパスの存
在を知らしめる上でも必要な対策である。
数学と化学以外にも理数系の国際コンテストへの参加が奨励されているが、それらのコンテストにおいても、
国内選考の課程で上記のような対策に力を入れることで、理数系好きを増やし、優秀な人材の裾野を拡大
するという目的の実現に近づけるものと思われる。関係者のなおいっそうの工夫と努力に期待したい。
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