...

第 8 章/環境影響評価(環境アセスメント)

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

第 8 章/環境影響評価(環境アセスメント)
第 8 章/環境影響評価(環境アセスメント)
美しい自然、清らかな空気や水といった豊かな環境を将来に引き継いでいくことは、私たちの重
要な責務であり、もし、人間の活動が環境に影響を与える場合には、それをできる限り少なくする
ための努力をする必要があります。特に道路、ダム、発電所等の大規模な開発事業は、環境に対す
る影響が大きくなるおそれがあり、これらの事業を行う際には、環境の保全に十分配慮することが
重要です。
環境影響評価(環境アセスメント)とは
事業の実施が環境に及ぼす影響について、環境の構成要素に係る項目ごとに調査、
予測及び評価を行うとともに、これらを行う過程においてその事業に係る環境の保全
のための措置を検討し、この措置が講じられた場合における環境影響を総合的に評価
すること。(環境影響評価法第2条)
環境影響評価に関連する法律・条例の制定経緯は、以下のとおりです。
○環境基本法
環境基本法は平成 5 年 11 月に公布されました。環境基本法第 20 条には、「環境に著しい影響
を与えるおそれのある行為の実施・意思決定に当たりあらかじめ環境への影響について適正に調
査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、環境の保全について適正に配慮する」という環境
影響評価を国が推進していくことが盛り込まれています。
○環境影響評価法
環境影響評価を行うための手続きを規定した環境影響評価法が、平成 9 年 6 月に公布されました。
○高知県環境影響評価条例
高知県において、環境影響評価を行うための手続きを規定した高知県環境影響評価条例が、平成
11 年 3 月に公布されました。
8-1/環境影響評価の実施主体
環境影響評価は、基本的には対象事業を実施する事業者が自ら行います。
また、環境影響評価の対象となる事業や施設が都市計画に定められる場合、事業者に代わって、
都市計画決定権者が環境影響評価を行います。
8-2/環境影響評価の対象事業
環境影響評価の対象事業は、事業の規模によって定められています。
・第一種事業とは、規模が大きく、環境影響の程度が著しいものとなるおそれがあるものとして、
必ず環境影響評価を行う必要のある事業をいいます。
・第二種事業とは、第一種事業に準ずる規模を有し、環境影響評価を行う必要があるかどうかを判
定した上で環境影響評価を行う事業を指し、その判定をスクリーニングといいます。
・高知県は、高知県環境影響評価条例で、環境影響評価の対象となる第二種事業の規模を環境影響
評価法より小さく設定し、比較的、小規模な事業でも環境に配慮するようにしています。
59
第8章 環境影響評価(環境アセスメント)
第一種事業と第二種事業
●第一種事業では、必ず環境影響評価を実施する必要があります。
【国土交通省直轄事業に係る事業及び規模】
o 高速自動車国道法に規定する 4 車線以上の高速自動車国道の新設(全て)
o 同改築(延長 1km 以上)
o 道路法に規定する 4 車線以上の一般国道の新設(延長 10km 以上)
o 同改築(延長 10km 以上)
o 河川法に規定するダムの新築(サーチャージ水位における貯水面積 100ha 以上)
o 河川法に規定する堰の新築改築(計画湛水位における湛水面積 100ha 以上)
o 河川法に規定する放水路の新築事業(土地形状変更面積 100ha 以上)
o 公有水面埋立法に規定する水面の埋立て及び干拓の事業(埋立干拓域 50ha 以上)
o 空港整備法に規定する飛行場の設置事業(滑走路の長さが 2500m 以上)
●第二種事業では、それぞれの事業での環境影響評価の必要性を判定した上で、環境影響評価を実施
します。
第二種事業については、環境評価手続きを行うかどうかを個別に判断します。(スクリーニング)
高知県環境影響評価条例の対象事業一覧
高速自動車国道
高知県環境影響評価条例
第1種事業
第2種事業
すべて
−
環境影響評価法
第1種事業
第2種事業
すべて
−
一般国道(4車線)
事業の種類
①道路
10km以上
5km以上10km未満
10km以上
県道、
市町村道(4車線) 10km以上
5km以上10km未満
−
−
国道、県道、市町村道
10km以上(特別地域)
−
−
(2車線)
林道(幅員6.5m以上)
村道、農道(2車線)
ダム
②河川
③鉄道
⑥廃棄物処理施設
20km以上
10km以上20km未満
−
大規模林道20km以上 15km以上20km未満
10km以上(特別地域)
−
−
貯水面積100ha以上 50ha以上100ha未満
貯水面積100ha以上
75ha以上100ha未満
堰
湛水面積100ha以上 50ha以上100ha未満
湛水面積100ha以上
75ha以上100ha未満
放水路
土地改変面積100ha以上 50ha以上100ha未満
改変面積100ha以上
75ha以上100ha未満
普通鉄道
長さ10km以上
5km以上10km未満
10km以上
7.5km以上10km未満
軌道
長さ10km以上
5km以上10km未満
10km以上
7.5km以上10km未満
滑走路長2500m以上 1,250m以上2,500m未満
滑走路2,500m以上
1,875m以上2,500m未満
出力3万kw以上
④飛行場
⑤発電所
−
7.5km以上10km未満
水力発電所
1.5以上3万kw未満
出力3万kw以上
2.25万以上3万kw未満
火力発電所(地熱以外) 出力15万kw以上
7.5以上15万kw未満
出力15万kw以上
11.25万以上15万kw未満
最終処分場
15ha以上30ha未満
30ha以上
25ha以上30ha未満
一般廃棄物焼却施設
面積30ha以上
−
−
処理能力100t/日以上
−
産業廃棄物焼却施設
処理能力100t/日以上
−
−
−
し尿処理施設
処理能力100kl/日以上
−
−
−
⑦公有水面の埋立て及び干拓
面積50ha超
⑧下水道終末処理場
計画排水量2万㎥/日以上
−
−
−
⑨工場又は事業場
(製造業、ガス供給業、熱供給業)
最大排ガス量4万㎥
/時以上は又は平均排
水1万㎥/日以上
−
−
−
豚舎
飼育頭数5,000頭以上
−
−
−
牛舎
飼育頭数500頭以上
−
−
−
⑪土又は岩石の採取
面積50ha以上
−
−
⑫土地区画整理事業※
面積100ha以上
50ha以上100ha未満
100ha以上
75ha以上100ha未満
⑬流通業務団地造成事業※
面積100ha以上
50ha以上100ha未満
100ha以上
75ha以上100ha未満
⑭宅地の造成※
面積100ha以上
50ha以上100ha未満
100ha以上
(特殊法人によるもの)
75ha以上100ha未満
ゴルフ場
面積50ha以上
−
−
遊園地その他
面積50ha以上
−
−
面積の合計50ha以上
−
⑩畜産施設
⑮レクリエーション施設※
⑯複合開発事業
上記※のものを併せて
複数実施する事業
25ha以上50ha以下
各第1種事業の面積比
の合計が1以上のもの
50ha超
40ha以上50ha以下
−
−
−
50ha以上
⑰その他
○港湾計画
埋立・掘込み面積150ha以上
60
埋立・掘込み面積300ha以上
~高知県の都市計画事業における環境影響評価の実績(例)~
高知県では、平成 16 年 12 月に都市計画道路窪川佐賀線の都市計画事業で、条例による環境影響評価が実
施されました。
○環境影響評価の項目
事業の実施により影響を及ぼすおそれのある 10 項目について予測・評価を行いました。
<大気質、騒音、振動、低周波音、地形及び地質、動物、植物、生態系、景観、廃棄物等>
L=17.3km
窪川都市計画
道路の変更(追加)
幡東都市計画道路の決定
L=10.8km
L=6.5km
高岡郡四万十町
幡多郡黒潮町
窪川都市計画区域
幡東都市計画区域
『第二種事業 自動車専用道路 都市計画道路窪川佐賀線』( 平成 16 年 12 月 )
一般国道の改築
車線数2車線 延長約 L=17.3km
設計速度 80km/h
■貴重な動物
工事実施前に繁殖状況調査を実施しました。
影響が考えられる場合には、専門家の指導、助言を得
ながら、必要に応じて環境保全措置を実施しました。
■貴重な植物
移植等の環境保全措置を行いました。
クマタカ
参考)第116回高知県都市計画審議会資料
写真出典)クマタカ:高知県レッドデータブック[動物編]・高知県
写真出典)コカモメヅル:高知県レッドデータブック[植物編]
・(財)高知県牧野記念財団
コカモメヅル
8-3/環境影響評価の方法の決定
環境影響評価の対象とすることが決まれば、環境影響評価の項目を確定します。この時、住民や
地方公共団体の意見を聞いて、調査項目の選定に意見を反映できる手続き(スコーピング)が設け
られています。
61
第8章 環境影響評価(環境アセスメント)
環境影響評価の流れ
【環境影響評価の手続き】
第二種事業
第一種事業
●対象事業者の決定
(スクリーニング)
第二種事業者の実施計画
環境影響評価の
実施要否の判定
(事業の認可を行う者 )
県知事意見
未実施
●アセスメントの方法の判定(スコーピング)
方法書の作成
公告・縦覧
住民等意見
関係市町村意見
知事意見
項目・手法の選定
環境影響評価の実施
【都市計画決定の手続き】
都市計画( 素案) の作成
準備書の作成
公告・ 縦覧 ・説明会
住民等意見
※縦覧期間は1箇月
※意見書の提出期間は、
公告の日から1箇月+2週間
※公聴会は必要に応じて実施
住民等意見
公聴会
公聴会
関係市町村意見
関係市町村意見
知事意見
都市計画( 案) の作成
評価書の作成
公告・ 縦覧
住民等意見
都市計画審議会への付議
都市計画決定(告示・縦覧)
評価書(公告・縦覧)
62
Fly UP