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GIS連続セミナー 講演概要 基調講演「ASP利用アプリケーションの動向

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GIS連続セミナー 講演概要 基調講演「ASP利用アプリケーションの動向
GIS連続セミナー 講演概要
●基調講演「ASP利用アプリケーションの動向」
講師:ASPインダストリ・コンソーシアム・ジャパン 山田 靖二 氏
【ASPの定義・要件】
今までは、IT資産を全部自前で購入・運用・メンテナンス
をしていましたが、購入されたアプリケーションも、実際にど
れくらい利用され、どのような効果をもたらしたかが問題視さ
れるようになってきました。そこで、IT資源を所有するので
はなく、必要なときに必要とする機能だけを利用するというこ
とがASPの基本的な考えになっています。ASPサービスで
は、アプリケーション、データは外部の耐震、耐火設備はもち
ろん、第三者からの攻撃にも耐えうる堅牢なインターネット・
データセンターに置かれています。
外部にデータを預けるわけですから、インターネットでのセキュリティは大丈夫かという話が必ずでてきま
す。その対応策の通常の回線をあたかも自分の専用線のように利用するバーチャル・プライベート・ネット
ワーク(VPN)などの技術開発も進んでいます。ASPを普及させるためにはネットワークを始めとした
インフラ作りも大変です。自治体の一部ではギガビット・ネットワークやバックボーン・ネットワークを実
際に運用しているところもありますが、まず基幹インフラとしてのネットワーク、そして提供するサービス
のインフラを作ることが非常に重要になってきます。
【ASPサービスの形態と背景】
ASPサービスを提供するプラットフォームは2つ
あります。サーバにホスティングされたアプリケーシ
ョンをただ単にダウンロードするようなサービスは厳
密にはASPサービスとはいいません。現在、日本で
一番多いASPのサービスはウェブベースのプラット
フォームでASPサービス全体の8割から9割を占め
ています。ウェブベースのサービスの形態は「i-ア
プリ」などを想像すれば理解が早いでしょう。
最近、普及してきているのが、サーバベースド・コ
ンピューティング(SBC)のプラットフォームです。
端末側にはインテリジェンシーのないシンクライアン
トや使い古したパソコンを利用することができます。
サーバと端末間は 20kb から 30kb の回線スピードがあ
れば、アプリケーションやデータをストレスなく自由
にやり取りすることができます。
ASPの登場の背景には、サーバ、パソコンなどの
情報機器の機能アップ競争と高度なアプリケーション
の登場と頻繁なバージョンアップへの対応に加え、ネ
ットワーク全体を含めた維持管理に非常な労力と時間
とコストがかかり、その問題解決の手段としてアウト
ソーシングが生まれ、ASPへと発展してきました。
今後は、ウェブの環境もブロードバンドが定着し、
回線スピードが上がれば、今までにない新しいサービ
スがASP方式によって追加されてくることと思われ
ます。
【ASP産業の現状】
今、日本国内でのASP事業者を単純に集計すると、昨年 11 月時点では 265 になります。前年の数字は
117 社でしたから、1年の間に倍増していることになります。
一方、アメリカのASPベンダーで成功している会社はASP創世記から会社が多く、ASPサービスの
コアのプラットフォームあるいはビジネスモデルを持ち、自社の提供するサービスをどの企業が採用してい
るかといったユーザー企業の名前もきちんと公表しています。一方、ITバブルにのって新規参入したドッ
トコム・カンパニーにとってはバブル崩壊後は厳しい状況となり、撤退したASP事業者も少なくありませ
ん。これは日本でも同じ現象で、ASPサービスのための基幹のインフラを整備し、アプリケーションをき
ちんと準備しなければユーザーの信頼を得ることができないことは、何もASPサービスに限ったことでは
なく、安易な発想で参入した企業は早々と撤退を余儀なくされています。
【ASPの効果・メリット】
自治体でのASPサービスの効果が顕著にあらわれ
る例としては学校でのIT教育があげられます。教室
には 20 台から 25 台のパソコンがサーバにつながって
おり、授業のたびごとに一台一台のパソコンを初期化
しなければならないといった作業が必要になります。
また、サーバが動かなくなったら、現場での修復は困
難となり専門家がきて、直すまでは使えない状態とな
ってしまいます。
授業の現場にASPを導入したら、どう変わるか?
ASPではアプリケーションも生徒一人一人のデータ
もサーバ側で管理されていますので、生徒が利用する
パソコンは単にアプリケーションなりデータを表示す
るだけです。授業が終わったら、電源を切って終わりです。データはサーバに蓄積されていますので、次回
からは前回の終了した続きから始めることができます。また、サーバのメンテナンスは専門家が 24 時間監
視していますので、不具合が発生しても即座に修復してもらえます。
ASPのメリットはメンテナンスが楽になるだけでなく、古いパソコンでも利用できますので初期投資が
少なく、運用コストも利用したサービスに限定されますので投資効果が非常に高く、ITの利用効率も格段
にアップするといったことがあげられます。
【ASPの課題】
通信インフラの問題はASPがスタートしたときか
らの課題です。高い、遅いといった問題もADSLを
含めたxDSLの普及で、安価で使いやすい環境が整
備されつつあります。また、ASPを推進するための
技術もSBCの技術を始めとして安価で、運用も手軽
にできるようになってきています。
特に、行政の場合には、データを民間のASP事業
者に預けて大丈夫なのかといった問題もあります。ま
た一般のユーザーにとっても、ASP事業者が提供し
ているサービスを止めた場合の対応、ASP事業者を
変えたい場合の問題などがあります。
ASP事業者は民間企業ですから、一つの自治体だ
けではユーザー数が少なく採算ベースに合わないサービスは利用金額が高価になるか、その種のサービスを
提供しない場合も考えられます。ASPの特色は市町村、都道府県といった境界を越えてもネットワークさ
えつながっていれば同一、同質のサービスが受けられるメリットにあります。各自治体のアプリケーション
はそれぞれの自治体の枠の中で運用するのではなく、多くの自治体の共通アプリケーションとして利用する
ことができるわけです。共同利用型のアプリケーションの運用もASP化の大きなメリットとなります。
電子自治体で一番問題になるのがPKIを含めた個
人認証と原本性の保証です。現在、さまざまなソフト
ウェアが開発され実証実験が行われていますので、電
子認証のインフラ、電子決済のインフラ、時刻同期イ
ンフラといった形のサービスが、利用者からは意識す
ることなく利用できるような形で提供されてくるよう
になります。GISはASPで提供される一つのアプ
リケーションですが、個人認証、原本性の保証などは
アプリケーションとは別の、いうなれば、電子政府、
電子自治体のサービスの根幹をなすインフラとして運
用されなければなりません。
今、我々が提案しているのは、サービスの種類、利
用するアプリケーションの種類によって運用の方法を
切り分けるやり方です。全国一律の共通サービスは別として、すべてのサービスが県をまたがった全国規模
の広範囲のASPサービスで行う必要はなく、各自治体独自の特性を加味した運用の方法もあるわけです。
大規模な、広範囲なサービスを提供するためにはネットワーク、施設、機材などの物理的な投資と、実際の
運用にあたって満足できるネットワークの回線容量が確保できるかといった予測できない問題点をクリアし
なければなりません。サービス・メニューは良いが遅くて実用的でないといった問題も起こりうるわけです。
それよりも市町村単位でのサービス、あるいは県単位でのサービスといった地域を限定した形でスタートし、
順次ネットワーク網を拡大して相互連携の輪を広げていくのが現実的な方法となります。実際の動きも県単
位の回線網の整備、データセンターの設置・運用が行われているのも現実に則した対応といえます。
【まとめ】
これからのASPの流れは単体ベースのASPアプ
リケーション、あるいはASPサービスから他のアプ
リケーション、サービスと合体、統合されたインテグ
レーション・モデルへと推移していくようになります。
アメリカではASPサービスを統合したアグリゲーシ
ョン・モデルがあり、シングル・サインオンですべて
のサービスを利用できる環境がうまれています。当然、
その裏側ではネットワークの円滑な運用をはかるマネ
ージメント・サービス・プロバイダ(MSP)の機能
も包含されています。
日本では従来型のクライアント・サーバシステムとA
SPサービスを融合したトータルなアプリケーショ
ン・サービスの動きが主流となりつつあります。それ
も、一つのASP事業者だけでなく、複数のASP事
業者のコーポラティブな関係の上に成り立ちます。自
治体サービスのアプリケーションの内容も各々の自治
体が利用できる共通項を網羅した共同利用型のアプリ
ケーションの開発が高付加価値サービスを生みだすこ
とができるわけです。
ASPの普及のためには、アプリケーション、サー
ビスの内容あるいは利用形態から一つ一つ解決しなけ
ればならない問題点もありますが、運用者側の最小限
の付加で、何処でも、いつでも、誰もが利用できるI
Tサービスのバックグランドとして拡大していくこと
でしょう。
― 了 ―
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