...

こちら - ペーパーポット

by user

on
Category: Documents
24

views

Report

Comments

Transcript

こちら - ペーパーポット
平成25年2月15日発行
ペーパーポット ® 通信
-
78号
目
次
発行編集人
村井信仁
-
◎「ひっぱりくん」3条タマネギ高能率移植法
- ロングピッチチェーンポットLP303-10
-・・・(1)
◎南瓜の播種法に関する考察・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
◎食用菊の生花利用・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3)
<<気象変動ニュース>>
ここ4~5年異常気象が続いている。24年度の場合、春に降水量が少なく、
一部に旱魃の被害がみられた。7月に入って降水があり、作物は何とか生育を
取り戻して、旱魃年に不作無しとはこのことかと感じさせた。ところが、9月
にはこれ迄にない高温続きで、やはり地球は温暖化の傾向にあるらしいと印象
付けられた。事実、甜菜は寒冷地作物として知られているが、含糖率はこれ迄
に例をみない低さであった。異常気象対策に加えて、温暖化に対してもそれな
りの技術対応が必要になってきていると思われる。
発行所
札幌市中央区北3条西4丁目
日本生命札幌ビル16階
(日本甜菜製糖(株)札幌支社内)
発行責任者
北海道農業近代化協会
会長
村井信仁
TEL011-261-6142
-1-
FAX011-261-6143
「ひっぱりくん」3条タマネギ高能率移植法
-
ロングピッチチェーンポットLP303-10
-
タマネギの株間隔は、10センチ以上としなければならない。このためBP303を用
い「スーパーひっぱりくん」で両側から紙を巻き取る方法で移植していた。この方式は株
間を任意に設定できるのが特長としても、新しい苗を補充する時に時間を要することから、
この改善が望まれていた。ここでロングピッチチェーンポットが開発され、長ねぎを移植
するのと同じ感覚で移植できるようになった。これが評価され、都市近郊の野菜作農家が
タマネギ栽培に積極的に取り組み、面積を増やし始めている。
長ねぎの場合、収穫期に合わせて移植するので、1回当たりの移植面積はそれ程広くは
ない。大面積栽培の農家でも「ひっぱりくん」で充分に対応できる。これに対してタマネ
ギは一斉収穫であり、栽培面積が増えると、高能率移植法が要望されてくる。「ひっぱり
くん」の特性を生かしながら多条処理、動力移植を検討することになった。
ロングピッチチェーンポットLP303
-10(口径3㎝、高さ3㎝、株間隔10
㎝、1冊当たりの株数264)といえども、
専用移植機を開発するについては、機械費
が負担となる。既存のテイラでけん引する
方法がもっとも合理的と考えられた。橇の
上に3台の「ひっぱりくん」をセットして、
けん引する方式が検討された。
5馬力級のテイラで、広幅のタイヤで走
行するものであれば、充分なけん引力が得
3条移植作業
ティラにはロータリが取り付けられている。けん引のバランスを
られ、動力源としては不足しない。小回り
取るためのもであるが、将来は苗台とすれば、より効率的な移植
も可能で能率的な作業ができる。「ひっぱり
作業可能となる。
くん」を載せる橇は平坦に均す仕事もする
ので、植え付け精度を高めることにも効果
的である。
タマネギの条間隔30センチ、LP30
3-10の平均株間隔10.6センチとす
れば、10アール当たりの株数は31.4
47株となる。LP303-10のチェー
ンポットは1冊当たり264株であるので、
10アール当たりの必要冊数は119冊で
ある。1冊の植え付け長さは、約28メー
トルであり、その都度苗を補充する。長ね
「ひっぱりくん」の取付け
「ひっぱりくん」はワンタッチで橇の上にセットするように工夫され
ぎの場合は、チェーンポットCP303を
ている。枕地では取外して回行するが、この作業は短時間で行える
用いるので、平均株間隔は5.3センチで、
ので、作業効率にそれ程影響しない。
1冊当たり14メートルとの植え付け長さ
である。これに比較すると、苗の補充頻度
-2-
は2分の1であって、その分省力的であると言える。
3条機の作業速度は、平均秒速0.3メートルであった。理論作業能率は1時間当たり
約10アールであるが、10アール当たりの冊数が多いこともあって、作業効率は回行時
間や調整時間等を加えると、0.5である。1日当たりの実作業時間が6時間であれば、
1日当たり30アールの移植面積となる。2日の移植作業で約60アール植え付けた実績
からも、この数字は妥当と言えよう。
「ひっぱりくん」1条の作業能率は1日当たり10アールから13アールである。この
作業能率であれば、別に動力化しなくともよいのではないかと考えられようが、実は3.
332メートルから4.340メートルの後進歩行作業である。長ねぎの場合は、条間隔
が1メートルであり、こ約3分の1の歩行で済むので、必ずしも大きな労働負担ではない。
これと同一視することは無理であり、その上、後進歩行作業は普段あまり使用していない
筋肉を動員して作業しなければならないことから、大きな疲労を伴うものである。面積が
拡大すれば、この負担は軽視できない。「ひっぱりくん」による3条動力移植は植え付け
条数を増やして高能率化しているばかりでなく、前進作業であるので、軽労働化に結び付
いている。
タマネギは株数が多い作物であることから、専用の移植機が必要とされてきたが、「ひ
っぱりくん」のテイラけん引であれば、テイラは他作業に幅広く使用されるものであり、
経費負担は少なくて済むと言える 。「ひっぱりくん」は長ねぎはもちろんのこと葉茎菜作
物にそのまま利用できるので便利である。都市近郊の野菜作農家の場合、多様な野菜を栽
培しなければならないので、今後ペーパーポットによる移植栽培は、さらに注目されると
考えられる。
今回の3条移植はタマネギ専用ではなく、他作物に容易に利用できるものである。条間
を広げることも可能であり 、「ひっぱりくん」の高能率移植を可能にしたものとみればよ
い。今後、直売所の販売は、新鮮さ、顔の見える栽培などの信頼性でさらに拡大しよう。
ペーパーポーット苗は、根傷みがなく、品質に秀れているのが、特長である。活用される
場面が広がってきたと言える。
-3-
南瓜の播種法に関する考察
南瓜はかつて東南アジアから輸入され、わが国の南瓜生産が脅かされた時代があった。
しかし、味に迫力がなく、品質に厳しいわが国には、安価なだけでは認められなくなって
しまった。北海道は生育期間中に日照量が多いばかりでなく、夜間と昼間に寒暖の温度差
があり、昼間蓄積したエネルギが蓄えられ、
味の良いことでは知られている。これが再
認識されると、改めて北海道が注目を集め
るようになってきた。当然のことながら品
種改良も進展し、栽培法にも改善がみられ
る。
これ迄、南瓜と言えば、大苗移植であり、
機械移植は困難とされてきた。しかし、栽
培面積が増加すると、必ずしも大苗移植に
は拘泥せず、稚苗移植も検討されるように
播種後5日目
品種 あまえびす
なってきた。出荷調整の意味合いもあり、
播種日H24.6.14
紙筒 №5-91-A(口径5.0センチ 高さ7.5センチ)
挿込み
平置き
胚上
挿込み
胚下
作期を広げる観点から直播栽培も検討され
ている。
安定的な生育・収量・品質、あるいは耐病
害虫については、はやり移植栽培が有利で
ある。移植の省力化が強く要望されて、機
械移植が当たり前のようになってきた。マ
ルチフィルムを破りながら移植するのは困
難とされてきたが、需要と供給の関係であ
り、需要があれば、工夫で至難と言われて
きたことも可能になるものである。現在で
はマルチフィルムを破りながら正確に移植
播種後6日目
挿込み胚上は子葉展開は早いが、発芽率が劣る。
平置きは、子葉の展開はやや遅れているものの、発芽率はよい。
挿込み胚下は意外なことに子葉の展開が遅れている。
表層が乾燥していて種皮を破れない。
することは当たり前になってきた。
さて、南瓜の栽培面積が増えると、新規
参入の農家も多くなる。ここでは、常識と
されてきた播種法が理解されずに失敗を招
くことがある。苗を作る場合の播種は種子
を平置きにするのがよいとされているのに対し、胚、すなわち根の出る尖っている方を挿
込むようにすれば、発芽も早く、安定して、子葉も綺麗に展開するであろうこと考えるよ
うである。形状からすれば、当然のこととしても、先達を越えようとする野心を持っては
いけない。農業は典型的な経験産業であり、その経験を重んずべきである。
何人かが訪れて相談される場合、経験から平置きがもっとも安定的な発芽をし、健全な
苗を仕立てることができると説明しても納得しない。苗半作と言う言葉があり、如何に健
全な苗を仕立てるかが生産性に大きく係わると諭しても、怖さ知らずと言うべきか、敢え
て自分流に挑戦する人達がいる。
-4-
南瓜の種子は比較的高価であるので、失敗すると経済的な打撃も大きい。失敗させない
ためには、きちんと事例で理解させる必要があると感じ、播種方別の実験例を紹介するこ
とにした。
写真は6月14日の播種であり、かなり温暖化しているので種子の発芽はよい時期のも
のである。それでも播種法によって歴然とした差があり、平置きが最も秀れていることを
示している。胚を下にして挿込むのは、最も発芽が早いようでも、種皮を破れずに浮上す
るので結局はマイナスである。品種によっては、もっと差が出るのもあり、留意したいと
ころである。
播種後8日目
播種後7日目
発芽率がよく、子葉が綺麗に展開しているのは平置きである。挿込み
挿込み胚上は端の乾燥しているところが発芽率が極端に悪い。挿込み
胚下は、種皮が開かずに子葉の展開を押さえている。端の比較的乾燥し
胚下は種皮を外して大部平置きに追い付いてきているが、生育にばらつ
て水分の少ないところは、その傾向が強い。
きがあり、葉の傷んでいるのも見受けられる。
-5-
食用菊の生花利用
食用菊を直売所に出荷しても、北海道では馴染みがなかったためか、当初、あまり売れ
行きはよくなかった。数年する内にこれが噂の食用菊かと注目され、少しずつ売れ行きが
増えてきた。これに合わせて2品種加えると、さらに関心が強くなり、食用菊は最早珍し
いものではなくなってしまった。
菊の大輪品種は鉢物や切り花として観賞用に評
判が高い。中輪品種は清楚な雰囲気を醸していて
式花に多く使われる。これに対して食用菊は必ず
しも格調は高くはないが、親しみやすい趣きがあ
り、結構美しいことから生花に使えるのではない
かと言われるようになってきた。直売所に生花と
して出荷してみると、これが評判が良い。値段も
手頃なこともあって、意外と需要も多いことに驚
移植2年目の食用菊
食 用 菊 は 挿 し木 で 簡 単 に増 殖 で きる 。 移 植 後生 育 は 旺 盛で 、
1年目から採花が可能である。品種や気象条件によって異なる
かされた。
日持ちの良い花であることも、人気を集めてい
が大体移植後3年を経過すると退化するので、場所を換えて
る要因であろうが、何よりも香りが人の心を引き
植え直すのがよい。
付けていると思える。一般的に菊は高級花として
の位置付けであるが、食用菊は大衆花としてこれ
からは定着するものと考えられる。
食用菊の増殖は容易である。春に萌芽した芽を
切り取り、挿し木(挿し茎)する。発根促進剤を
切り口に粉衣するだけで、確実に良苗に生育する。
紙筒は№5-91-Aが丁度良いサイズである。
床土は市販の葉茎菜用の育苗用土にニッテンピー
トモス、バーミキュライトを3種等量混合したも
生花用に人気の食用菊
有名な品種は写真右の「もってのほか」である。
のが、最も安定した根張りであり、健全な生育の
苗となる。
現在3種類程一般化しているが、生花用としては、黄色系が人気。
上品な菊独特の仄かな香りが室内に満ち、人の心を和ませる。
-6-
Fly UP