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` 組織有効性と管理会計システムの有効性評価

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` 組織有効性と管理会計システムの有効性評価
明治大学 社会 科 学研 究所 紀要
組織 有効性 と管理会 計 システムの有効性評価
1本
橋
正
美☆
OrganizationalEffectivenessandEvaluationofEffectivenesson
ManagementAccountingSystems
MasamiMotohashi
1は
じめ に
経 営 組 織 論 に お け る研 究 テ ー マ の1つ で あ る組 織 有 効 性 は 、組 織 の維 持 ・存 続 を 考 え る場 合 、 い か な
る状 態 が 組 織 と して 優 れ て い る か 、 と い うこ と を示 す 概 念 で あ る。 す な わ ち組 織 有 効 性 とは 、 端 的 に い
え ば 、 組 織 目的 な い し組 織 目標 を環 境 変 化 に 対 応 させ て 、 そ の 設 定 され た組 織 目的 な い し組 織 目標 を 達
成 す る こ とで あ る 。 こ う した 組 織 有 効 性 の概 念 は 、 大 別 す る と 目標 モデ ル と シ ス テ ム ・モ デ ル の2っ に
分 け られ る。 この2つ の概 念 の うち 目標 モ デ ル に お い て は 、組 織 有 効 性 は組 織 目標 の 達 成 度 に よ っ て 測
定 され る。 そ れ に対 して 、 シ ス テ ム ・モ デ ル で は 、組 織 は オ ー プ ン ・シ ス テ ム とみ な され 、組 織 有 効 性
は組 織 内外 の さ ま ざま な 環 境 要 因 と の相 互 関 係 に よ り規 定 され る た め 、 組 織 目標 達 成 の ス タイ ル や方 法
に 焦 点 が 当 て られ 、 測 定 され る こ とに な る。
こ の よ うな組 織 有 効性 の 測 定 ・評 価 の 問 題 は 、 企 業 の 業 績 管 理 シ ス テ ム あ るい は 意 思 決 定 支 援 シ ス テ
ム と して の 管 理 会 計 シ ステ ム の 有 効 性 の 測 定 ・評 価 の 問題 と き わ め て 密 接 な 関係 が あ る と考 え られ る。
と りわ け 、 今 日の よ うに企 業 環 境 が 激 変 す る社 会 で は 、 管 理 会 計 シ ス テ ム の 有効 性 が 重 要 な課 題 で あ る
とい え よ う。 そ の理 由 は、 管 理 会 計 シ ス テ ム は 企 業 の経 営 管 理 を支 援 す る 会 計 情 報 シ ス テ ム と して 業 績
管 理 や 意 思 決 定 を 支 援 す る機 能 を も って い る か らで あ る。 ま た 、 管 理 会 計 シ ス テ ム は 、企 業 の戦 略 や 組
織 の 管 理 の た め の コ ン トロー ル ・シ ス テ ム と位 置 づ け る こ と が で き、 企 業 業 績 の 改 善 や 経 営 革 新 を 支 援
す る役 割 を担 って い る と考 え られ る か らで あ る。 そ れ は 、 企 業 の 業 績 す な わ ち 事 業 活 動 の プ ロセ ス や 結
果 を 測 定 ・評 価 し、 当 該 企 業 が 将 来 進 む べ き方 向 や 、 あ るべ き 姿 を明 らか に す る こ と を支 援 す るシ ス テ
ム で あ る と考 え られ る た め 、組 織 有 効 性 の 測 定 ・評 価 に 十 分 に貢 献 す る もの で な けれ ば な ら な い の で あ
る。
しか しな が ら、 この よ うな組 織 有 効性 の 測 定 ・評 価 の 問題 と管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効 性 の 測 定 ・評 価
の 問 題 を総 合 的 な視 点 か ら考 察 す る研 究 は 、従 来 の 経 営 組 織 論 お よ び 管 理 会 計 論 の い ず れ の 領 域 に お い
☆経営 学部教授
一281一
411口200210月
て も十 分 に 行 わ れ て き た と はい え な い。
本 研 究 の 目的 は 、経 営 組 織 論 と管 理 会 計論 との 学 際 的 な 、 しか も 、 これ ま で あ ま り検 討 され る こ とが
な か っ た 当該 研 究 テ ー マ に つ いて 問題 提 起 の観 点 か ら基 礎 的 な研 究 を行 うこ とで あ る。
五 組織有効性の測定尺度 と評価基準
組 織 有 効 性 の 測 定 尺 度 は 、 従 来 、 経 営 学 の 領 域 で は 、 生 産 高 、 売 上 高 、 利 益 率 な ど とい った 組 織 活 動
の 成 果 を 中 心 と して 取 り 上 げ ら れ て い た 。 ま た 、 行 動 科 学 の 研 究 領 域 で は 、 組 織 成 員 の 満 足 度 、 モ ラ ー
ル な どの 心 理 的 状 態 、 あ るい は 、 そ の 結 果 と して の 欠 勤 率 、 離 職 率 な ど とい った 指 標 を 中 心 と して 取 り
上 げ られ て きた 。
こ う し た 研 究 成 果 を ふ ま え て 、 リ ッ カ ー ト(R.Likert)は
組 織 特 性 の 測 定 尺 度 と して8つ
の要因 をあ
げ て い る。 す な わ ち 、 Φ リー ダ ー シ ップ 、② 動機 づ け 、③ コ ミュニ ケ ー シ ョン 、 ④ 相 互 作 用 一影 響 、 ⑤
意 思 決 定 、 ⑥ 目標 設 定 ・命 令 、⑦ コ ン トロ ー ル 、 ⑧ 業 績 目標 と トレ ご ニ ン グ 、 で あ る 〔21:pp.254-267〕 。
こ れ ら の 尺 度 を 整 理 す れ ば 、 組 織 有 効 性 の 基 準 と して 、 ① 組 織 の 安 定 ・維 持 に 関 す る 尺 度 、 ② 組 織 成
員 の 業 績 に 関 す る 尺 度 、③ 環 境 へ の 適 応 に 関 す る 尺 度 、の3つ
一方
に ま と め る こ と が で き る 〔3:pp.42-45〕
。
、 組 織 有 効 性 の 評 価 基 準 に 関 し て は 何 人 か の 論 者 が 、 当 該 基 準 を 明 ら か に して い る 。 馬 場 昌 雄 の
研 究 に よ れ ば 、 例 え ば ジ ョ・
一 ジ ポ ラ ス(B.S.Ge・rg・p・u1・s)=タ
ン ネ ン バ ウ ム(A.S.Tannenbaum)は
、
組 織 の 生 産 性 、 経 営 資 源 の 確 保 、 柔 軟 性 な ど を あ げ て い る 。 ま た 、 シ ェ イ ン(E.H、Schein)は
、組織 の
存 続 ・成 長 性 、 自 己 維 持 能 力 、 順 応 性 な ど を あ げ て い る 。 さ ら に 、 キ ャ ブ ロ ー(Th.Capl・w)は
、組 織 の
業 績 、 組 織 の 統 合 ・自 発 性 、 安 定 性 な ど を あ げ て い る 。 さ ら に ま た 、 ベ ニ ス(W.G.Bennis)は
一 体化
、適 応 性 、
、 現 実 の 認 知 能 力 な ど を あ げ て い る 。 こ れ らの 組 織 有 効 性 の 評 価 基 準 で は 、 ベ ニ ス の 例 示 を 除 け
ば 、 ① 組 織 の 生 産 性 、 ② 組 織 の 業 績 、 ③ 組 織 の 存 続 ・成 長 性 、 が 共 通 した 基 準 と して 理 解 す る こ と が で
き る 〔3:p.40-42〕 。
他 方 、 キ ャ ン ベ ル(J.P.Ca叩bell)は
てい る
、 組 織 有 効 性 の 評 価 基 準 と して 以 下 の よ う な30の
〔6:p.36〕 。
①
組織全 体の有効性
⑯
計 画 設 定 ・目標 設 定
②
生 産性
⑰
目標 整 合 性
③
効率性
⑱
組 織 目標 の 内 在 化
④
利益
⑲
役 割 と規 則 の一 致
⑤
品質
⑳
人 事 管 理 ス キル
⑥
業 務 停 止 の発 生 率
⑳
業 務 管 理 ス キル
⑦
成 長率
⑳
情 報 の 管理 と コ ミュニ ケ ー シ ョン
⑧
欠勤率
⑳
意思決 定の迅速性
⑨
離職率
⑳
環 境 の利 用
一282一
基準を列挙 し
日
一"△
・
一
空
月
ぼ
⑩
仕 事 の満 足
⑳
外部機関による評価
⑪
動機 づ け
⑳
安定性
⑫
モ ラー ル
⑳
人的資源の価値
⑬
コ ン トロ ー ル(マ ネジ メント・コントロール)
⑳
参加
⑭
コ ン フ リ ク ト/連 携
⑳
能力開発
⑮
柔 軟 性/適
⑳
目標達成
合性
これ らの 基 準 は 、組 織 の さま ざま な側 面 の 有 効 性 に つ い て網 羅 的 に示 した もの で あ る とい え る。 これ
らの 基 準 の 中 に は 、 い くつ か の矛 盾 した もの が 含 ま れ て い る とい う指 摘 も あ る が 〔30:pp.50-5i〕、そ れ
は と もか くと して 、 これ らは概 して 、 組 織 の ア ウ トプ ッ ト、成 果 、利 益 、 組 織 の 内 部 プ ロセ ス とそ の 手
続 き、 組 織 構 造 、従 業 員 の 態 度 、組 織 の環 境 へ の 対応 な どに 関 す る基 準 で あ る 〔33:p,63〕
。
組 織 有 効 性 の 評 価 基 準 に 関 す る上 記 の キ ャ ン ベ ル の 例 示 は、 十 分 に 検 討 され 、 か つ 整 理 され て示 され
た もの で は な い けれ ども 、 そ れ ま で の研 究 成 果 を あ る程 度集 大 成 した 点 は 評価 で き る と思 われ る。
組 織 有 効 性 の 測 定 尺度 と評 価 基 準 に つ い て概 観 して きた が 、 以 上 の 考 察 を ふ ま えて 、 次 に組 織 の 業 績
評 価 に つ い て 検 討 す る。
皿
組 織 の業績 評価
組 織 有 効 性 評 価 のた め の組 織 の 業 績 評 価 に っ い て は 、 さま ざま な ア プ ロー チ や 方 法 が あ る が 、 総 合 的
な い し包 括 的 な ア プ ロ ー チ と し て は 、 「360度 評 価 」 とい う方 法 が あ る 。 こ の 方 法 は 、 評 価 の 対 象 とな る
組 織 成 員 が 日 常 接 触 す る す べ て の 人 々 か ら の 評 価 を フ ィ ー ドバ ッ ク す る と い う も の で あ る 。 そ の 場 合 の
評 価 項 目 の 数 は 企 業 に よ っ て 異 な り 、通 常 、5∼10程
度 の 評 価 項 目 を設 定 し評 価 す る 〔31:p,343〕。 最 近
の ア メ リカ 企 業 の 調 査 で は 、 フ2-一 チ ュ ン 誌1,000社
中 約90%の
企 業 が360度
評 価 を 導 入 して い る。360
度 評 価 の 業 績 評 価 手 法 を 広 義 に 解 釈 す れ ば 、 後 述 す る バ ラ ン ス ト ・ス コ ア カ ー ド(BalancedScorecard:
以 下 、BSCと
略 称 す る)も
こ の360度
評 価 の1形
態 で あ る とい え る。
組 織 の 業 績 評 価 に 関 す る 最 近 の 傾 向 で は 、 過 去 に 実 施 した 活 動 を 評 価 す る 業 績 測 定 尺 度(performance
measures)と
、 将 来 実 施 す る 活 動 を 指 示 す る 業 績 評 価 指 標(performanceindicators)と
を区 別 し、 ま
た 、 財 務 的 測 定 尺 度 と 非 財 務 的 測 定 尺 度 の 両 面 か ら総 合 的 に 業 績 評 価 を行 う と い う 考 え 方 が 一 般 的 で あ
る。
と こ ろ で 、 そ う した 組 織 の 業 績 評 価 基 準 に っ い て は 、 リエ ン ジ ニ ア リン グ の 立 場 か ら は 図 表 一1の
ウ2・ ン タ ム ・パ フ ォ ー マ ン ス の 評 価 マ ト リ ッ ク ス が 参 考 に な る 。 図 表 一1の
マ トリッ クス で は 、組 織 、
プ ロ セ ス 、 お よ び 人 の 価 値 と サ ー ビ ス の 視 点 か ら 「コ ス ト」、 「品 質j、 「時 間 」 の3つ
の 測 定尺 度 で それ
ぞ れ 評 価 す る こ と を 示 して い る 。 と りわ け 組 織 の 業 績 評 価 基 準 に っ い て は 、 図 表 一2で3つ
の 具 体 例 が あ げ ら れ て い る 。 組 織 の 業 務 改 善 や 業 務 革 新 を 指 向 す る 業 績 評 価 基 準 の1つ
とい え る。
一283一
ク
の測 定尺度
のモデル であ る
第41巻 第1号2002年10月
図 表 一1ク
ウtン
タ ム ・パ フ ォ ー マ ン ス の 評 価 マ ト リ ッ ク ス
射
向
績
業
的
躍
㎝
一
玖
マ
汁
フ
パ
ム
坤
努
ク
ス
ビ
ー
サ
値
価
蹄
時
質
敬答応
さ性力 力
軟
さ性
答応
力力
控性性
⑨
応適
性 性
頼実往
感生信確適
速柔
性 性性性性
合産
適
信
確
的的的
織
適
速柔
応
受座頼実任
適生
務務略
品
ス
財業戦
ト
コ
組
プ
セ
ト 動
ツ
プ
ン
イ 活
ロ
ス
開
付
材機
報人動
テ ィ ー ブ ンM.フ
酬 発け
人
出 所:ス
ォ ロ ニ ッ ク 、 アL-一
ー
サ ー ア ン ダ ー セ ン&カ
ンパ ニ ー 著 、
ア ー サ ー ア ン ダ ー セ ン ・オ ペ レ ー シ ョ ナ ル ・コ ン サ ル テ ィ ン グ ・グ ル ー プ 訳
『リエ ン ジ ニ ア リ ン グ の た め の 業 績 評 価 基 準 』 産 能 大 学 出 版 部 、1994年
一284一
、31頁
。
明 治大学 社会 科 学研究 所 紀要
図 表 一2組
内
コ ス ト
容
織 の業績評価基準
定
財 務 的
業 務 的
義
例
外部の規定に基づく財務
情報
●lRS(米
国 歳 入 庁)
●SEC(証
券 取 引 委 員 会)
日々 の ビジ ネ ス遂 行 上 、
●受注残
必 要 な財 務}青報
●売 上 高
∀
`
●現金残高
戦 略 的
品
質
感 受 性
長 期的意思決定をサポー
トす る財務分析
●内 作 ・外 作 分析
個 々の関心
●顧客満足度
●製造原価分析
●目標原価分析
●従業員満足度
生 産 性
組織効率性
●従 業 員1人 当 た り売 上 高
●一 定 時 間 当た り生 産 高
● イ ン プ ッ トに 対 す る ア ウ トプ
ッ トの 比 率
信 頼 性
安 定 した 信 頼 で き る業 績
●返 品
●顧 客 ク レー ム
確 実 性
適 任 性
利害関係者の組織に対す
●イ メー ジ 調査
る思 い 入 れ
●広報評価点
実行能力
●外部資格制度
●顧 客 照 会
時
間
ア ウ トプ ッ トの提 供 の 速
●受 注処 理 サ イ クル 時 間
さ
●新製品開発時間
柔 軟 性
要 求 の変 化 に 応 え る能 力
●組 織 レベ ル の 数 と管 理 の範 囲
応 答 力
迅 速 な サ ー ビス を提 供 す
る能 力 と意 欲
●顧 客 の 要 求 に応 え る ま で の 時
速
さ
間
●電 話 の 相 手 にた ど りつ く時 間
適 応 力
出 所:ス
テ ィ ー ブ ンM.フ
変化に対す る柔軟性 と積
極性
●組織的な変化への準備度
●導入 される提案件数
ォ ロ ニ ッ ク 、 ア ー サ ー ア ン ダ ー セ ン&カ
ンパ ニ ー一著 、
ア ー サ ー ア ン ダ ー セ ン ・オ ペ レー シ ョ ナ ル ・コ ン サ ル テ ィ ン グ ・グル ー プ 訳 、
前 掲 書 、42-43頁
。
一285一
第41巻 第1号2002年10月
一方
、 ク リス トフ ァ ー(W.F.Christopher)=ト
準 と し て 次 の15の
基 準 をあげ ている
ー ア(C.G.Thor)に
〔8:pp.1-87〕
よ れ ば 、 業 績 改 善 の た め の評 価 基
。
つ ま り ① ビ ジ ョ ン 、 ② 成 果 、 ③ 顧 客 価 値 、 ④ 目標 、 ⑤ 業 績 の 測 定 尺 度 、 ⑥ エ ン パ ワ ー メ ン ト、 ⑦ チ ー
ム ワ ー ク 、 ⑧ 継 続 的 改 善 、 ⑨ 革 新 性 、 ⑩ 優 越 性 、 ⑪ 学 習 と知 識 、 ⑫ シ ス テ ム 、 ⑬ 認 識 と表 彰 、 ⑭ 経 験 の
伝 達 、⑮ 変化 へ の 対応 、 で あ る。
これ ら の基 準 は 、 組 織 の 全 体 に 関 わ る き わ め て 包 括 的 な 尺度 で あ る と い え る。 各 基 準 に っ い て 詳 述 す
る こ と は 割 愛 す る が 、 現 在 で は 製 品 や サ ー ビ ス の 質 の み な らず 経 営 の 質 す な わ ち 経 営 品 質 が 重 要 視 さ れ
て い る こ とは 、 わ が 国 で も 日本 経 営 品 質 賞 が あ る こ と か ら明 ら か で あ る 。 上 記 の15の
評 価 基 準 は 日本 経
営 品 質 賞 の ア セ ス メ ン ト基 準 と は 異 な る が 、 優 れ た 業 績 を 達 成 す る た め に は 不 可 欠 な 検 討 事 項 で あ る と
考 え られ る。
こ の よ う に 、 実 際 に 優 れ た 業 績 を 達 成 す る た め に は 、 結 果 の み を 評 価 す る シ ス テ ム で は な く 、PDC
Aサ
イ ク ル が 組 み 込 ま れ た 業 務 の プ ロセ ス の 測 定 を 重 視 し た 業 績 管 理 シ ス テ ム を 構 築 す る こ と が 必 要 で
あ る 。 優 れ た 業 績 管 理 シ ス テ ム の 条 件 は 、 筆 者 に よ れ ば 、 管 理 会 計 を 中 核 と した 組 織 の コ ア ・コ ン ト ロ
ー-ntル・シ ス テ ム で あ る 。 そ れ は 、 後 述 す るBSCの
要 素 を 取 り入 れ た シ ス テ ム で あ り 、 一 方 、 経 営 管 理
者 の 意 思 決 定 支 援 の 側 面 か らは ナ レ ッ ジ ・ペ イ ス トの 意 思 決 定 支 援 シ ス テ ム を 組 み 込 ん だ 統 合 的 な 戦 略
的 マ ネ ジ メ ン ト ・シ ス テ ム で あ る と い う こ と が で き る 〔25:p.2〕 。
さ て 、 上 述 の よ うに 、 組 織 の 業 績 評 価 を 効 果 的 か つ 効 率 的 に 行 うた め の 管 理 会 計 シ ス テ ム は 、 ど の よ
うな シ ス テ ム で あ る べ き な の か を 次 に 検 討 す る。
IV管
1情
理会 計 システ ム の有 効性 評価
報 シス テ ム と して の 管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効 性
管 理 会 計 シ ス テ ム は 、 い うま で も な く情 報 シ ス テ ム の1つ で あ る。 ま た 、 情 報 シ ス テ ム と して の 管 理
会 計 シ ス テ ム は 、 会 計 情 報 シ ス テ ム の構 成 要 素 で あ る。 筆 者 に よれ ば 、 「
現 実 の シ ス テ ム(現 在 稼 働 して
い る シ ス テ ム)に お け る会 計 情 報 シ ス テ ム の 機 能 」(① 、 ② 、 ③ の3っ)と
計 情 報 シ ス テ ム の機 能 」(④)は
①
意 思決定支援機 能
②
業 績管理支援 機能
③
業 務 管 理 支援 機 能
④
業 務 革 新 支援 機 能
、 「シ ス テ ム 開 発 に お け る会
次 の とお りで あ る 〔24:pp.39-42〕 。
これ らの 会 計 情 報 シ ス テ ム の機 能 は 、 実 際 に は 相 互 に 関 連 して お り、 ま た 、 企 業 の 組 織 階 層 や 測 定 ・
評 価 の 対 象 、 あ る い は 測 定 ・評 価 の時 点 な ど に よ って 複 雑 な 関係 な い しは構 成 に な っ て い る 。
一286一
明 治 大学 社会 科 学研 究 所 紀要
(1)管
理会 計情報 の質 的基準
管 理 会 計 シ ス テ ム が 情 報 シス テ ム で あ る以 上 は 、 管 理 会 計 シ ス テ ム に よっ て 作 成 ・提 供 され る 管 理 会
計 情 報 の 質 が 問 題 と な る の は 当然 の こ とで あ る。 オ ブ ラ イ エ ン(J.A.0'Brien)は
情報の一般 的な質的基
準 に つ い て 、 以 下 の よ うな3つ の 側 面 か ら15の 基 準 を示 して い る 〔28:p,17〕e
(1)時
間 の側 面
①
適時性
②
鮮度
③
頻度
④
期 間比較
(2)F勺
容a){興」
匡6
①
正確性
②
目的 適 合 性
③
完全性
④
簡潔性
⑤
範囲
⑥
業 績(プ
(3)形
ロセ ス と結 果)
式 の側面
①
明確性
②
詳細 度
③
順序
④
プ レゼ ン テ ー シ ョン
⑤
メデ イア
オ ブ ラ イ エ ン に よ る これ らの15個
の}青報 の 質 的 基 準 は 、必 ず しも管 理 会 計 情 報 の 質 的 基 準 と して示 さ
れ た もの で は な い 。 しか し な が ら、 経 営 管 理 者 に 対 して 有 用 性 の 高 い 管 理 会 計 情 報 を提 供 す べ き で あ る
と考 え る な らば
管 理 会 計 シ ス テ ム か ら提 供 され 硝
報 は ・ これ らの ほ とん どの 基 準 を満 た して い る こ
とが 必 要 で あ る と思 わ れ る。
(2)管
一方
理 会 計 情 報 シ ス テ ム の 質 的 基 準.
、 ケ リー(J.1t.Carey)は
う な13の
、 情 報 シ ス テ ム と りわ け 経 営 情 報 シ ス テ ム の 質 的 評 価 基 準 と し て 次 の よ
基 準 を 列 挙 し て い る 〔7:p.1〕
①
情 報の正確性
②
情 報 の 適 時 性`
。
-287一
第41巻 第1号2002年10月
③
情 報 の 目的適 合 性
④
適 切 な情 報 の形 式
⑤
情 報範 囲 の 適 切 な レベ ル
⑥
意思決定 支援の処理能 力
⑦
情 報 の処 理 速 度
⑧
情 報処理の正確性
⑨
ユ ー ザ ー の 満 足度
⑩
ユ ー ザ ー ・フ レン ドリー ネ ス
⑪
シ ス テ ム の応 答 の 信 頼 性
⑫
通信の質 の向上
⑬
シ ス テ ム の 信 頼性
これ らの 経 営 情 報 シ ス テ ムの 質 的 評 価 基 準 の うち① ∼ ⑤ ま で の 基 準 は 、 上 記 の オ ブ ライ エ ン の 情 報 の
質 的 基 準 と重 複 して い る が 、 ⑥ ∼⑬ まで の 基 準 は 、 ま さに 情 報 シ ス テ ム と して の 管理 会 計 シ ス テ ム の 有
効 性 を判 断 す る基 準 で あ る とい うこ とが で き る。
以 上 の よ うに 、 情 報 シ ス テ ム と して の 管 理 会 計 シ ステ ム は 、 上 述 の よ うな さま ざま な基 準 を ど の程 度
満 た して い るか に よ っ て 、 そ の 質 す な わ ち 有 効 性 が測 定 ・評 価 され る の で あ る。
2管
理 会 計 シ ス テ ム の 有 効 性 と経 営 品 質
管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効 性 を評 価 す る た め に は 、 さ らに 企 業 が どの 程 度 優 れ た 業 績 を 上 げ て い る か ど
うか を総 合 的 に評 価 す る基 準 す なわ ち経 営 品 質 を 検 討 す る 必 要 が あ る。 とい うの は、 前 述 した よ うに 業
績 管 理 支 援 機 能 を もっ 管 理 会 計 シス テ ム が 有 効 に 機 能 して い な けれ ば、 優 れ た 業 績 を 達 成 す る こ とは 困
難 で あ る と考 え られ るか らで あ る。
経 営 品質 に つ い て は 、 わ が 国 で もア メ リカ の マ ル コ ム ・ボル ドリ ッジ 国 家 品 質 賞 に よ るセ ル フ ・ア セ
ス メ ン トの 考 え方 を模 範 と して 、 日本 経 営 品質 賞 委 員 会 に よ っ て1996年 度 か ら 「日本 経 営 品 質 賞]の 表
彰制 度 が 実 施 され て い る。 これ ま で の6年 間 で82の 組 織 が応 募 申請 し、llの 組 織 が 受 賞 して い る(各 年
度 で1∼30)組
織)〔26〕。 な お 、 次 章 で 日本企 業 のBSCの
(以下 、 リコ ー とす る)は 、1999年 度 にfH本
導 入 事 例 と して 取 り上 げ る株 式 会社 リコー
経 営 品 質 賞 」 を受 賞 して い る。
さて 、2002年 度 の 日本 経 営 品 質 賞 の ア セ ス メ ン ト基 準 で は 、次 の よ うな構 成 に な って い る 〔26:pp.4-23〕。
(1)
目指 す方 向
パ ブ ォ ー マ ン ス ・エ ク セ レ ン ス の 追 求
(2)
基本理念
① 顧 客 本 位 、 ② 独 自能 力 、 ③ 社 員 重 視 、 ④ 社 会 との 調 和
(3)
基 本 的 な 考 え 方 一 一① ク オ リ テ ィ 、 ② リ ー ダ ー シ ッ プ 、 ③ プ ロ セ ス 、 ④
「知 」 の 創 造 と 活 用 、 ⑤
時 間 と ス ピ ー ド、 ⑥ パ ー トナ ー シ ッ プ 、 ⑦ 社 会 的 責 任 と 環 境 保 全 、 ⑧ 事 実 に
基 づ く経 営 、 ⑨ グ ロ ー バ リゼ ー シ ョ ン 、 ⑩ フ ェ ア ネ ス 、 ⑪ イ ノ ベ ー シ ョ'ン
(4)の フ レー ム ワー ク は 図 表 一3に
示 す と お り で あ る 。 ま た 、 ア セ ス メ ン ト基 準 の 評 点 の 配 分 は 図 表 一
一288一
明治 大 学社 会科 学研 究所 紀 要
4の
よ う に な っ て い る 。図 表 一4の
中 で 、特 に 配 点 が 高 い 項 目 は 、 「
経 営 幹 部 の 役 割 と リー ダ ー シ ッ プ 」、
「プ ロ セ ス の 結 果 」、 「財 務 の 結 果 」、 「顧 客 満 足 の 結 果 」 な ど で あ る 。 こ の4つ
の 項 目 を み れ ば 、 日本 経
営 品 質 賞 で 何 が 重 視 され て い る か が よ く わ か る 。
図 表 一32002年
度版
日 本 経 営 品 質 賞 ア セ ス メ ン ト基 準 の フ レ ー ム ワ ー ク
組 織 プ ロフ ィー ル
3.顧
客 ・市 場 の 理 解 と 対 応(110)
(業務 シ ステ ム〉
(方向性 と推 進力)
〈目標 と結 果)
4.戦 略 の 策 定 と
リー ダ ー シ ッ プ
展 開(60)
と意 思 決 定 く120)
5.個 人 と組 織 の
8.活 動 結 果(400)
能 力 向 上(100)
2.経 営 に お け る
社 会 的 責 任(50)
6.価 値 創 造 の
プ ロ セ ス(100)
7.情 報 マ ネ ジ メ ン ト(60)
出 所:日
本 経 営 品 質 賞 委 員 会 『2002年
H本 経 営 品 質 賞 委 員 会 、2002年
度版
日本 経 営 品質 賞
、10頁
。
一289一
ア セ ス メ ン ト基 準 書 』
第41巻 第1号2002年10月
図 表 一42002年
度版
日 本 経 営 品 質 賞 ア セ ス メ ン ト基 準
〈ア セ ス メ ン ト基 準 一 覧 〉
組 織 プ ロ フ ィー ル
1.リ
1.1経
営 幹 部 の 役 割 と リ ー ダ ー一
・シ ッ プ
1.2意
思 決 定 と合 意 の仕 組 み
2.経
IOO
20
50
営 に お け る社 会 的 責 任
2,2社
会 貢献
O
り一
会 要請への対応
ハ
U
り0
2.1社
3.顧
120
ー ダ ー シ ッ プ と意 思 決 定
客 ・市 場 の 理 解 と 対 応
3.2顧
客 との 信 頼 関 係
3.3顧
客満足 の明確化
0
3
客 ・市 場 の 理 解
0
'
0
3.1顧
110
略 の策定 と展開
り0
略 の展 開
0
4.2戦
り0
略 の策 定 と形 成
60
0
4.1戦
5.個
0
り0
4.戦
人 と組 織 の 能 力 向 上
100
0
4
5.2社
員の能力開発
5.3社
員満 足
6.価
0
3
織 的能力
0
0﹂
5.1組
値 創 造 の プ ロセ ス
100
0
4
幹 プ ロセ ス
6.2支
援 プ ロ セ ス と新 事 業 プ ロセ ス
6.3ビ
ジ ネ ス パ ー トナ ー と の 協 力 関 係
0
3
6.1基
報 マネ ジメン ト
合 比較 とベ ンチ マ ー キ ン グ
7.3情
報 シ ス テ ムの マ ネ ジ メ ン ト
0
9匂
7.2競
0
2
営 情 報 の 把 握 と分 析
60
0
ワ︼
7.1経
8.活
0
3
フ.情
動結 果
400
8,1リ
ー ダ ー シ ッ プ と社 会 的 責 任 の 結 果
60
8.2個
入 と組 織 の 能 力 向 上 の 結 果
60
8.3プ
ロセ ス の結 果
80
8.4財
務 の結 果
100
8、5顧
客満 足 の結 果
100
合
1000
計
出所:日 本 経 営 品質 賞 委 員 会 、 前 掲 書 、23頁 。
一290一
明治 大学 社会 科 学研究 所 紀 要
管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効 性 を 検 討 す る場 合 、組 織 の経 営 管 理 の ど の プ ロセ ス あ るい は何 の 結 果 を重 視
して 評 価 しな けれ ば な らな い か は 、'上記 の 日本 経 営 品 質 賞 の アセ ス メ ン ト基 準 を1つ の モ デ ル と して 参
考 に す る こ とが で き る。
こ う した 日本 経 営 品 質 賞 の ア セ ス メ ン ト基 準 の よ うな組 織 の 総 合 的 業 績 評 価 基 準 とは 異 な る が 、 と り
わ け 人 事 管 理 、 人 的 資 源 管 理 な い し人 的 資 源 開 発 な ど の研 究 分 野 の 立 場 か ら業 績 管理 シス テ ム の 評 価 を
図 示 した もの が 図 表 一5で
あ る。 図 表 一5は 、 み れ ば わ か る よ うに 、組 織 の 人 的 資源 の 業 績 管 理 シ ス テ
ム の 全 体 像 を 明 らか に した もの で あ る。'組織 の業 績 管 理 は 、い うま で もな く経 営 資源 に沿 っ て 考 え れ ば 、
他 に 物 的 な 設 備 の 管 理 、 資 金 の 管 理 、 情 報 資源 の 管 理 とい うよ うに経 営 資 源 の全 般 に関 わ る さま ざ ま な
管 理 が 必 要 で あ る 。 しか し、 特 に 組 織す な わ ち 人 の 業 績 は 、 企 業 に と って は きわ め て重 要 で あ る とい わ
な け れ ば な らな い 。 とい うの は 、 企 業 の 業 績 、 つ ま り財 務 的 ・非 財 務 的 業 績 の結 果 は 、組 織 す な わ ち人
が 生み 出す情 報や 織
・ 換 言す れ ば 企 業 の マ ネ ジ メ 汁
の方 法 や 仕 綱
な どのど れ を とっ て み て も ・ そ
の源 に あ る の は 人 つ ま り組 織 な の で あ る。 最 近 、 特 に 成 果 や 業 績 に 連 動 した 賃金 制 度 が 多 く の 企 業 で導
ド
ぐ
入 さ れ て い る の は 、 組 織 成 員 の モ チ ベ ご シ ョ ン を 高 め る と 同 時 に 、 イ ン セ ン テ ィ ブ ・シ ス テ ム と して の
報 酬 シ ス テ ム の 管 理 、 あ る い は 優 れ た 人 材 の 育 成 な ど が 重 要 視 され て い る か ら で あ る 〔1〕 〔4〕 〔le〕
〔15〕 〔19〕
。 そ れ は 一 方 で は 、 業 績o?改
善 や 人 件 費 の 削 減 、 あ る い は 、 業 務 の ア ウ トソ ー シ ン グ な ど の
問 題 と も 密 接 な 関 係 が あ る の で あ る 。1,
.三,、
以 上 、 管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効性 に つ い て 経 営 品 質 や 人 事 管 理 な ど との 接 点 で若 干 の考 察 を行 っ て き
た 。 し か し な が ら 、 管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効 性 は 、 実 際 に 企 業 で ど の よう な 方 法 で そ の 有 効 性 が 評 価 さ
れ て い る か 、 換 言 す れ ば 業 績 管 理 に 役 立 っ て し・る か を 検 証 し な け れ ば 十 分 に 立 証 さ れ た と は い え な い 。
そ こ で 次 章 で は 、1社
の 事 例 研 究 で は あ る が 、:日本 企 業 のBSCの
導入 事 例 に よ って そ の 検 証 を行 うこ
と に す る 。 管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効 性 評 価 の 事 例 と して 日本 企 業 のBSCの
導 入 事 例 を 取 り上 げ る 理 由
は 、 次 の と お りで あ る 。
す な わ ち 周 知 の よ う に 、BSCは
年 に 提ll昌さ れ て 以 来IO年
事 例 が 紹 介 され て い る
化 さ れ て お り 、BSCが
キ ャ ブ ラ ン(R.S.Kaplan)=ノ
ー トン(D、P.Norton)に
よ っ て1992
が 経 過 し、 欧 米 諸 国 で は す で に 多 くの 営 利 ・葬 営 利 企 業 で 導 入 され 、 数 多 く の
〔5〕 〔16〕 〔17〕 〔27〕
。 ま た;BSCの
パ ッ ケ ー ジ ・ソ フ ト、
ウエ ア もす で に商 品
あ る 程 度 普 及 じ て き て い る と み る こ と が で き る 。 そ の よ うな 状 況 の 中 で 管 理 会
計 論 の 研 究 分 野 で は ・Bscは
今Hで
は 「
戦 略 的 マ ネ ジ メ ン ト嘩
め磯
績 管 理 シ培
ム・ と して雌
づ け られ て い る の で あ る。 そ れ ゆ え に 、 管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効性 を評 価 す る た め に は、 と りわ け そ の
業 績 管 理 支 援 機 能 の 側 面 を検 討 す る た め に は 、BSCの
SCの
考 察 が 不 可 欠 な の で あ る 。 ま た 、 日本 企 業 のB
導 入 事 例 を 取 り上 げ る の は 、 欧 米 とわ が 国 と で は 、 経 営 環 境 や 社 会経 済 的 な 背 景 が か な り異 な る
か らである。
一291一
・ 、§
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三
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1
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・
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・
紅鱒
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・
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恒 本 欄 繕 継 継ト.
・
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⇔
工
く トK" 蓋騨
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-
口
⇔
←
1
一292一
第4正巻 第1号2002年10月
\
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く トK" 恒款鰹蝋
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埠嵩eス
口
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ト埋農振蝋1
ー
坦嵩Q 摯無㎏eくト 咲ふ 蔭 騨
担嵩 e4 + ×"醐 蜘想洲
u。- 網 図
明 治大 学社会 科学 研究 所紀 要
V日
本 企 業 の バ ラ ンス ト ・ス コ ア カ ー ドの 導 入 事 例 に よ る検 証
上 述 の よ うに、 管 理 会計 シ ス テ ム が 有 効 で あ る か 否 か を 判 断 す る た め に は 、 現 実 の企 業 の 事 例 に よ っ
て 検 証 す る 必 要 が あ る。本 章 で は 事 例 と して 、リ コー の ケ ー ス を 取 り 上 げ る こ と に す る 〔18:pp.281-296〕 。
事 例 の 考 察 を 行 う前 に 、 リ コ ー の 会 社 の 概 要 に つ い て み て お く こ と に し よ う(業
経 済 新 聞2002年6月28日
付
「決 算 公 告 特 集jに
績 に 関 し て は 、 日本
よ る)。 リ コ ー は 、 複 写 機 、 プ リ ン タ ー な ど を 中 心 に オ
フ ィ ス 機 器 の 研 究 開 発 か ら 生 産 販 売 、 お よ び そ の サ ー ビ ス ま で 一 貫 した 事 業 で 全 世 界 市 場 へ 展 開 して い
る 。 グ ル ー プ 企 業 の 社 員 は 全 世 界 で 約7万
社 で あ る。2002年3月
営 業 利 益 が1、296億
人 、2001年
度 末 の 連 結 子 会 社 は331社
、 持 分 法 適 用 会 社 は73
期 の 日本 企 業 の 連 結 経 営 指 標 ラ ン キ ン グ で は 、売 上 高 が1兆6、723億
円 で20位
、ROEが10.3%で56位
円 で46位
、
と な っ て お り、 こ こ 数 年 来 、 好 業 績 を 維 持 し て
い る。
図 表 一6は
び 成 果 指 数(成
、 リ コ ー の 例 で は な い け れ ど も、BSCの1例
果 指 標)が
と し て4つ
の 視 点 とそ の 重 要 成 功 要 因 お よ
示 さ れ て い る 。 こ の ケ ー ス で は 、 見 直 し の 結 果 を 示 す 方 法 と して 色 分 け を し
て 、 目標 値 を 上 回 る と緑 色 、だ い た い 目標 値 と 同 じで あ れ ば 黄 色 、 目 標 値 を 下 回 れ ば 赤 色 と い う よ うに 、
そ の 結 果 が は っ き り と わ か る よ う に な っ て い る と さ れ て い る 〔18:pp.297-298〕 。
図 表 一6バ
視
点
重要成功要 因
ラ ン ス ト ・ス コ ア カ ー ドの 例
成果指数
2002
Ql
財務 の視点
売上増 大
前年度比率(%)
利 益増 大
前年度比率(%)
在庫削 減
前年度比率(%)
'
キ ャ ッシ ュ フ ロ ー
前年度比率(%)
顧 客の苦情低減
前年度比率(%)
主要顧 客 との 関係強化
訪 問 回 数(回)
市 場 シ ェ ア増 大
前年度比率(%)
顧客満足度 調査
前年度比率(%)
業 務 プ ロセ ス
納 期遵 守 の 確 実 化.
納期遵守率(%)
の視点
品 質の 向上
不良発生率(%)
原 価低 減
前年度 比率(%)
回 答灯 クルタ仏 短縮
前年度 比率(%)
学 習 と成 長 の
従 業員意識調査
前年度 比率(%)
視点
教 育 訓 練,
計画 実施率(%)
資格取得件数
計画達成 率(%)
提案件数増大
前年度比 率(%)
顧客の視点
注:重
要 成 功 要 因 と成 果 指 数 は現 実 のBSCと
Q2
2003
Q3
2004
Q4
.
は異 なる。
出 所:高 橋 義 郎 稿.「経 営 品 質 向 上 を支 援 す るバ ラ ンス ・ス コア カー ドの活 用 」(企 業 研 究 会 『企 業 価 値 創造 の
た め の 新 しい シ ステ ム ー 経 営 構 造 改 革 と事 業 評 価 ・管理 シス テ ム の実 際 』 企 業 研 究 会 、2002年 、298頁 。)
一293一
第41巻 第1号2002年10月
さ て 、 リ コ ー で は 、 図 表 一7の
よ う な 「戦 略 的 目 標 管 理 制 度 」 を1999年
わ せ て 、本 社 の 組 織 でBSCを1999年
度 か ら導 入 して い る 。図 表 一7か
ら 明 らか な よ う に 、リ コ ー で は 、
「事 業 構 造 を 変 革 す る た め の 経 営 シ ス テ ム 」 の 構 築 を 目指 して 、BSCの
年 に か け て マ ル コ ム ・ボ ル ド リ ッ ジ 国 家 品 質 賞(MB賞)、
か ら 導 入 して い る 。 そ れ に 合
導 入 以 前 に1994年
か ら1998
そ して 日本 経 営 品 質 賞(JQA)へ
た 取 り組 み が 行 わ れ た こ と が わ か る。 現 に 上 述 の ご と く 、1999年
の 徹底 し
度 に 「目 木 経 営 品 質 賞 」 を 受 賞 して い
る。
リ コ ー に お け るBSCの
の4っ
特 徴 は 、 図 表 一8の
の 視 点 に 加 え て 、5っ
中 で5つ
目の 視 点 す な わ ち
周 知 の よ うに 、 企 業 で は 最 近 、ISO14001の
の 視 点 と 書 か れ て い る よ う に 、 基 本 的 なBSC
「
環 境 保 全 の 視 点 」 が 位 置 づ け られ て い る こ と で あ る。
環 境 マ ネ ジ メ ン ト ・シ ス テ ム の 国 際 認 証 取 得 が さ か ん に
行 わ れ て い る。 そ れ は 企 業 に と っ て 重 要 な 問 題 で あ る か らで あ る 。 「環 境 保 全 の 視 点 」 は 、 日本 経 営 品 質
賞 で も 基 本 的 な 考 え 方 の1っ
に な っ て い る。 リコー で は 、 そ うした
「環 境 保 全 の 視 点 」 を 付 け 加 え る こ
と に よっ て 、結 局 は 、 財 務 的 成 果 につ な が る こ とに な る か らで あ る と され て い る
〔18:p.286〕 。 例 え ば 、
環 境 改 善 の た め に 省 資 源 、 リ サ イ ク ル 、 省 エ ネ ル ギ ー を 推 進 す る こ と に よ っ て 操 業 度 が 上 が り、 ま た 部
品 点 数 も 削 減 し た 結 果 、 コ ス トも 下 が っ て 経 営 が 改 善 す る と い うわ け で あ る
な お 、 詳 述 す る こ と は 割 愛 す る が 、 図 表 一9で
SCの
〔18:p.286〕 。
は 目標 管 理 プ ロセ ス が 、 ま た 、 図 表 一10で
は 部 門 別B
概 要 が明 らか に され て い る。
図 表 一7(株)リ
1994
コ ー一に お け る戦 略 的 目標 管 理 制 度 の 導 入 経 緯
1997
/、MB賞
の研 究
r\
1997
r\
経営指
■
CS経 営 体 質 を測 る
ための有効性検証
人
ノ
の審査基準で
ス と して検 討
一
ノ
(1997)
JQA視
点 で全 社 の
「成 果 指 標 」 の検 討
■
\
(1997)
■JQAコ
ンサ ル の 視 点
■経 営 幹 部 の 視 点
社 内部門 を評価
(試行)
研 究
米 国 の指 標 研 究G
開 発 のBSCを
べ一
■
CS経 営 品質 を
測 る メ ジ ャー が必 要
\
ノ
(1996)
MB賞
BSCの
標の
必 要性の認識
一
13次中経
を 加 味 し、
(経 営 指 標 ワー ク
グル ー プ 活 動)
■BSCを
ベー ス に全
社 経 営 指 標 を検 討
蚕
業
構
造
を'
1999
/、
・「
経 営 シス テ ム 革 新」
のための評価制度 とし
■
'JQA受
賞
\
ノ
変
革
す
る
た
め
の
経
)
て検討
(1999)
「経 営 シス テ ム 革新
プ ロ ジ ェ ク ト」 に よ
る検討
営
(1997)
審査 基 準 と のギ ャップ
(例)
評価 尺 度 、 指標 が
不十分
出所:中
(1998)
全社経営指標 の答 申
(1)
「専 門 家 」 の 意 見
の 取 り入 れ指 示
全社経営指標の答 申
(2)
マ ネ ジメ ン トす べ き
「85項 目+α
村 高稿 「
戦 略 的 目標 管 理 制 度 の 導 入 に つ い て一
」 の設 定
ζ
z
L
を
(1999)
「戦 略的 目標 管 理 制 度 」
と して 提 案 、 実 施
!
バ ラ ン ス ト ・ス コ ア カー ドを活 用 した 目標 管理 ・業 績 評 価 」
(企業 研 究 会 『企 業価 値 創 造 の た め の 新 しい システ ムー
業 研 究 会 、2002年 、285頁 。)
一294一
経 営 構 造 改 革 と事 業 評 価 ・管 理 シス テ ム の 実 際 』 企
一
一
図表 一
ー
一8(株)リ
コ ー に お け る 戦 略 か ら指 標 へ の 展 開
《コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン プ ラ ッ トフ ォ ー ム 》
" \ へ:
5つ
の 視 点
‖
目歴 ⇒
先 行的指 標
⇒
戦
略
目
標
成 果指 標
中
期
戦
略
1
戦略
戦
略 目標
目標 を達成す
を
るため
に実施する施策
に
実施する
を定量的
中 期 戦 略 を5つ の
視 点で 置 き換 えた
もの
に 測 る指 標
成 果 を出す ため に
実施 す る 事
・日常 管 理 す る指 標
(変化 の 兆 しを 把 握
(具体 的 な 目標)
…
、
↓
す る指 標)
業績評価 指標
・戦 略 目 標 達 成 の 鍵 と な る 要 素 を 見 つ け 、 そ こ に 手 を 打 ち 、
マ ネ ジ メ ン トす る(仮 説 、 検 証 の サ イ ク ル → 学 習 す る 組 織)
・意 欲 的 な 目 標(ス
トレ ッチ ト ・ゴ ー ル)を 設 定 す る
一
出 所:中
村 高 稿 、 前 掲 論 文 、286頁
。
図 表 一9(株)リ
コ ー に お け る 目標 管 理 プ ロセ ス
戦 略 的 目標 管 理 制 度 は評 価 だ け で な く 、方 針 、 戦 略 か ら業 績 評 価 、成 果 の フ ィー ドバ ック まで
→ マ ネ ジ メ ン トの 仕 組 み の 中核 を なす 。
誌
ご
ノ→搬
《詳 細 プ ロ セ ス 》
銚
一重点麟
一プ・セス管理一縣
ビジ ・ン1
..」
【《 一
全社、
部門内、関連会社
展開
↓
業 績 目標
・部 門 別
‖ 目標
1
●
担 当役員、部門長の
事業 ・部門男
肪 針
↓
中期 計 画
業績審 議
一
一
トップ方 針
事 業 ・音匡P弓
男tl
・
独事業計画
策 定 プ ロセ ス
中期経 営計画
・ぽ
■
連 結/単
中綴方針
竺イ輌
ブ イ ー ドバ ツ ク
ス パ イ ラル ア ップ
1醐
の評瞭
◆
;
◆施策、BSC展
◆業績計画
⑱
開
(全 審
体
議
事
会)
計
個別業績
審議 会
o日
曝
績
業
評
価
◆実行
◆プロセス管理
◆
▲
」`
中経 レ ビュー
◆問題事業
'
戦 略 検 討 会(定 例 、随 時)
出 所:中
村 高 稿 、 前 掲 論 文 、288頁
。
一295一
報酬へ
笙41巻 第1号2002年10月
図 表 一10.(株)リ
コ ー に お け る 部 門 別BSC
業 績 評 価 ・管 理 指 標
戦略 目標
5軸
已 価値・駄1
赴 高の拡大k
財務
射1͡
資醐 物 雑k・
商 品XのMS拡
…
1開
大
1サ プライ売上高購1
撤引 卜<<
新製 品売 上高
発投資比率
開 発 人員 の 生 産性
い ・テムデ仁
デ ィーラ}内 シ ェアkく
シス愁Yの 顧 客 内 シ ェ ア拡 大
:顧客
先行的指標
事後的指標
大手 ・・Mの 鮒
」
已
ラー訪問緻1
1新製蹴 勅(縦
⊂1綱
・・
蹴 上・1く
1・ ・M轍
臓 比較}1
・㈱1
、
N糎
効率の阯
醜 同轍 間の矯k-一_
,社 内
プ ロセ ス
・・M離 ブ・セスの濾k
販効
学習成長
ポー ト加
:
向上k
ll機 織
∼
姻 発コス 川
在庫回転率4--_
ゲ
1販殻 脇 願 解
:
『
醗 眠 人{働ぴ判
・
『
ド
疑 一飯競 倉庫礫1
1サ ポー ト有資儲
数1
:
:
注 ・匡 コ 願 業績評価指標
●
出 所:中
Wむ
村 高 稿 、 前 掲 論 文 、288頁
す
。
び
以 上 、 組 織 有 効 性 の 測 定 尺 度 や 評 価 基 準 に 関す る研 究 成 果 をふ ま えて 、組 織 の 業績 評 価 、 さ らに管 理
会 計 シ ス テ ム の 有 効 性 の 評 価 に っ い て 検 討 を行 っ た 。
組 織 有 効 性 の 測 定 尺 度 や 評 価 基 準 に 関 す る議 論 は 、 今 口で は 、 特 に管 理 会 計論 の 分 野 で はBSCな
ど
の よ うに 、 戦 略 的 マ ネ ジ メ ン トを支 援 す る 業績 管 理 シ ス テ ム の 有効 性 評 価 の 問題 と して 展 開 され てい る
の で あ る 。 本 稿 で は 、 管 理 会 計 シ ス テ ム の 有 効 性 評 価 に つ い て は 、 そ う したBSCの[1本
企 業 における
1社 の導 入 事 例 に 関 す る若 干 の 考 察 を 行 った 。 リ コー の ケ ー ス で は 、全 社 的 な 「戦 略 的 目標 管 理 制度 」
の 導 入 に よ って 、BSCを
る 。 そ して 、BSCを
中核 と した 管 理 会 計 シ ス テ ム が 再構 築 され 、 そ の役 割 が 明 確 に な っ た とい え
中 核 と し た管 理 会 計 シ ステ ム が 、 明 らか に 業 績 の 改 善や 経 営 革新 の 支 援 に 十分 に
貢 献 して い る とみ る こ とが で き る の で あ る。 ま た 、 リ コー の 場 合 に は 、 特 に経 営 品 質 の改 善 に か な りカ
を 入 れ て 取 り組 ん だ こ とが わ か る。
わ が 国 の 企 業 で は 、BSCの
導 入 事 例 は 、 ま だ そ れ ほ ど 多 く な く、 当 面 は 今 後 の 展 開 に 期 待 す る こ と
に な るで あ ろ ラ。 本 稿 で も、1社1の 事 例 にっ い て 若 干 の 考 察 を した に 過 ぎ ず 、 さ らに数 多 くの 事 例 研 究
を 積 み 重 ね て い か な けれ ば な らな い 。 管 理 会 計 シ ス テ ムの 有 効 性 評 価 の 問題 に つ い て も、 そ れ らの 研 究
を 行 わ な けれ ば 十 分 に検 討 す る こ と は で き な い。 そ.うした 研 究 に つ い て は 、 筆者 の今 後 の 課 題 に す る こ
とに した い。
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日"A'・A古
跨
(注)』本 稿 に お い て 、・H本 経 営 品 質 賞 に 関 す る 図 表 一3,4は
ン か ら転 載 許 可 を 得 て い る 。 ま た 、(株)リ
日 本 経 営 品 質 賞 委 員 会 ア ド ミ ニ ス トレ ー シ ョ
コ ー の 事 例 に 関 す る 図 表 一6,7,8,9,10は(社)企
業研究
会 か ら 転 載 許 可 を 得 て い る 。.
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