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わが国の国民経済計算における雇用者ストックオプションの導入に向けて

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わが国の国民経済計算における雇用者ストックオプションの導入に向けて
わが国の国民経済計算における雇用者ストックオプションの導入に向けて
2008SNA における雇用者ストックオプションの取り扱いとわが国における推計結果
内閣府経済社会総合研究所国民経済計算部企画調査課
政策企画調査官 吉野 克文*
出し、企業価値の向上を通じて、役職員、株主双方にと
1.はじめに
ってより望ましい状況を実現するために設計された制度
であり、役職員に対する一種の「業績連動型報酬制度」
ストックオプションとは、企業が役職員に対して、
「将
と捉えることができる。
来の一定期間」に、
「予め定められた価格」で、
「一定数
わが国のストックオプション制度は、1997 年 5 月の
の自社株式を購入する権利」を付与するものである。ス
改正商法において導入され、2002 年 4 月施行の改正商
トックオプションの付与を受けた者は、将来の一定期間
法において現在の仕組みが整備された。今日、わが国で
において、自社株式を購入することが「できる」が、購
もストックオプション制度を導入する企業は広がってお
入を義務付けられているわけではなく、その判断は当人
り、データが把握可能な上場企業 1 に限ってみても、
に委ねられている。したがって、自社株式の時価が「予
400 社以上、全上場企業の 1 割以上の企業がストックオ
め定められた価格」を上回っていれば、自社株式を購入
プションを導入している(2009 年度)。
したうえでそれを市場で売却することにより、その差額
ところで、上記のとおりこうしたストックオプション
を利益として得ることができる。逆に自社株式の時価が
は一種の業績連動型報酬制度であり、役職員の給与・賞
低迷し「予め定められた価格」を下回っていれば株式の
与、あるいは退職金の代りに(ないし追加して)支給さ
購入を見送ることができる。この場合は、利益は得られ
れるものである。このため定性的には、ストックオプシ
ないが、少なくとも損失を蒙ることはない。つまり、ス
ョンが広がれば広がるほど、現金や銀行振り込み等によ
トックオプションとは、基本的にあくまで自社株式を購
り支給される従来型の給与・賞与、あるいは退職金は、
入する「権利」であって、何ら義務を伴うものではない。 減少するものと考えられる。
企業がストックオプション制度を導入する一義的な目
国民経済計算体系は、一国の経済を包括的に捉えるこ
的は、「役職員に対して、業績向上に向けた有効なイン
とを目的としているが、実は、これまでの体系は上記の
センティブを与えるとともに、その結果得られた成果に
ような動きを適切に捉えることができなかった。すなわ
見合うよう適切に報いること」である。こうしたインセ
ち、国民経済計算体系では、役職員への給与・賞与等は
ンティブの付与により、役職員の企業業績向上に向けた
「雇用者報酬」として計上され、その他の控除を経て残
意欲が一層高まれば、結果的に株価の上昇を通じて既存
されたものは「営業余剰」として記録されるが、旧来の
の株主も利益を享受することができる。さらにストック
体系は、ストックオプションを雇用者報酬として記録す
オプションを、優秀な人材を確保する、あるいは流出を
ることとしていなかったのである。この背景としては、
防止するための手段として利用することも可能であり、
かつてはストックオプションが今日ほどには一般的では
これも最終的には企業価値の向上に繋がることとなる。
なかったこと 2、またストックオプションを雇用者報酬
このようにストックオプションは、役職員の意欲を引き
の一部と考えるべきか、考えるとしてどの範囲までを含
* 本稿作成に当たっては、内閣府経済社会総合研究所の私市光生総括政策研究官、豊田欣吾国民経済計算部長、長谷川秀司前企画調査課
長(現経済社会総合研究所上席主任研究官)をはじめとする国民経済計算部の職員、日本銀行調査統計局の櫻庭千尋審議役、清水雅之
金融統計グループ長をはじめとする調査統計局の職員、大和証券キャピタルマーケッツの原田富制度商品部次長から有益なコメントを
頂いた。また、執筆に先立つ研究に際しては、日本銀行調査統計局の広木友隆氏のサポートを得た。記して謝意を表したい。なお、本
稿の内容は、筆者が属する組織の公式の見解を示すものではなく、内容に関しての全ての責任は筆者にある。
1
東京、大阪、名古屋、札幌、福岡の各証券取引所。重複上場の場合は 1 社として計上。いずれも新興市場も含む。
2
例えば U.S. Bureau of Economic Analysis[2008]は、アメリカの状況について次のとおり記している。
Stock options, once considered a“perk”for top executives, have become an increasingly common part of compensation packages for many
employees.
(脚注 1)In 2005, the National Center for Employee Ownership estimated that up to 20 percent of all public companies provide stock options to their
employees.
- 23 -
めるべきか 3、といった点が十分には整理できていなか
というストックデータに一定のモデルを当てはめること
ったこと、などが影響していたと思われる。いずれにせ
でフローの計数を推計している。上記③の課題の多くは、
よこの結果、
旧来の体系においては、
ストックオプション
このような方法論の特長に因るものである。そこで本稿
相当分だけ、雇用者報酬が過少に推計されていた(営業
では、こうした特長を有する推計方法をやや仔細に説明
余剰が過大に推計されていた)
と考えられる。
こうした状
しながら、ストックオプションの導入に向けたこれまで
況等を踏まえて、
2008 年改訂国民経済計算体系(System
の検討結果とそれに基づく試算値等を紹介するとともに、
of National Accounts 2008 <European Commission,
併せて推計精度の限界も明らかとする。
International Monetary Fund, Organisation for Economic Co-
本稿の構成は次のとおりである。まず第 2 節では、
operation and Development, United Nations and World
2008SNA におけるストックオプションの捉え方を整理
Bank[2009]>、以下 2008SNA)は、ストックオプション
する。続いて第 3 節では、わが国の国民経済計算におけ
を雇用者報酬に含め、同時に金融資産・負債として記録
るストックオプションの推計方法を検討する。最後に第
4
4 節において、第 3 節で提示した推計方法に基づく推計
するよう改められた 。
この改訂を受け、わが国の国民経済計算でもストック
結果(試算値)を紹介するとともに、今後の課題を整理
オプションの導入に向けて動き出すこととなり、内閣府
する。なお、議論を簡潔にするために、本論から拡張す
経済社会総合研究所国民経済計算部は、日本銀行の全面
る議論については、補論 1 ~ 3 として別途、簡単に取り
5
的な協力を得つつ 、具体的な推計方法の開発に向けて
まとめる。また、わが国におけるストックオプションの
検討を進めてきた。これまでの作業により、①一定の精
状況に関しては参考資料として取りまとめているので、
度を確保した推計は可能であること、②導入した場合の
適宜、参照されたい。
金額的な影響はそれほど大きなものではないこと、ただ
なお、以下では、一般的な「ストックオプション」に
し、③いくつかの課題も残されていること、などが明ら
代えて、国民経済計算において標準的な「雇用者ストッ
かとなっている。また、本稿で取り上げた推計手法は、
クオプション」という用語を用いる。また混乱を避ける
国民経済計算において一般的に採用されている方法とは
ため、株式に関する通常のオプション取引については、
やや性格を異にしている。すなわち、生産・支出・分配
「株式オプション」と呼称する。
といったフローの計数は、仕入れ・出荷額、設備投資・
財貨サービスの輸出入、給与支払いといったフローデー
タに基づいて推計されるのが一般的である。これに対し
2.2008SNA における雇用者ストックオプショ
ンの捉え方
て本稿では、ストックオプションに関するデータが限ら
れていることを踏まえ、企業の財務諸表(貸借対照表)
ここでは、初めに雇用者ストックオプションの基本的
3
一例として、雇用者ストックオプションを付与した後に株価が上昇し、これに伴い雇用者ストックオプションの公正価値は増加した場
合を考えよう。これを単なる雇用者ストックオプションの「価値の変動」と捉えるか、それとも「付与された役職員の努力の結果とし
て株価が上昇したのであるから、労働の対価、つまり雇用者報酬に含めるべき」と考えるか、といった議論の対立があった。例えば、
日本銀行調査統計局経済統計課 [2001] では、当時の議論が簡単に紹介されている。
4
2008SNA は次のとおり記している。
Annex 3. 2. Treatment of employee stock options described
A3.96 Employee stock options are a common tool used by companies to motivate their employees. An employee stock option is an agreement made on
a given date (the“grant”date) under which an employee may purchase a given number of shares of the employer’
s stock at a stated price (the“strike”
price) either at a stated time (the“vesting”date) or within a period of time (the“exercise”period) immediately following the vesting date. The 2008
SNA recommends that transactions in employee stock options should be recorded in the financial account as the counterpart to the element of
compensation of employees represented by the value of the stock option. Ideally the value of the option should be spread over the period between the
grant date and vesting date; if this is not possible they may be recorded at the vesting date.
A3.97 The 1993 SNA did not provide guidance on the treatment of employee stock options.
なお 2008SNA が上記のような結論に至った背景に関しては、Intersecretariat Working Group on National Accounts (ISWGNA)[2007]が参
考となる。
5
わが国の国民経済計算・金融勘定は、日本銀行が作成・公表する資金循環統計を基礎データとして、これを加工することで作成されて
いる。雇用者ストックオプションは、雇用者報酬のみならず金融資産・負債にも影響することから、その導入に際しては、国民経済計
算の実体面および金融面はもとより、資金循環統計をも通じて、体系としての一貫性を確保することが期待される。こうしたことから、
内閣府では、日本銀行の全面的な協力を得つつ検討を進めることとした経緯である。本論では、国民経済計算側の金融勘定を取り上げ
て整理しているが、その考え方や方法論は資金循環統計とも基本的に共有されている。なお、資金循環統計の概要および推計方法の詳
細に関しては、日本銀行調査統計局[2011a]および同[2011b]を参照されたい。
- 24 -
・
なお、権利確定日や権利行使期限、また権利行使価格は付与の時点で予め定められて
いる。
図表1 雇用者ストックオプション取引の時間的な流れ
図表1 雇用者ストックオプション取引の時間的な流れ
付与日
↓
権利確定日
雇用者ストックオプションの付与を受ける
この間に退職すると雇用者ストックオプションの権利を失う
一定期間の勤務を経て、権利が確定
↓
権利行使日
任意の時点を捉えて権利を行使
↓
権利行使期限 この時点までに権利を行使しないと雇用者ストックオプションの権利を失効
注:付与対象となる役職員の側からみた取引の流れ
(2)2008SNA における雇用者ストックオプション取引の計上方法
な仕組みを確認したうえで、2008SNA
における具体的
【説明例の前提】
2008SNA では、これを次のように記録する(図表2-1~2-3)
。以下の説明例では、
➢ 2006 年、役職員に対して総額[2]の雇用者スト
な取扱いを整理する。なお
2008SNA は、雇用者ストッ
ックオプションを付与する。
クオプションの取扱いに関して第
17 章において述べて
議論の簡略化のため、極力単純な前提を置いている。これを拡張した場合の取扱いに関し
➢ 対象勤務期間(付与日から権利確定日まで)は 2
いるが、以下では、より具体的に説明している Eurostat
ては、補論1において整理している。
年。この期間の退職者はゼロ。
[2004]を参考としながら、2008SNA の考え方を簡潔に
➢ 権利確定日から権利行使期限までは 5 年。
紹介している。
【説明例の前提】
➢ ただし、実際の権利行使は権利確定日から 3 年後。
付与された全員が一斉に行使。このため権利失
(1)雇用者ストックオプション取引における一般的な
¾
2006 年、役職員に対して総額[2]の雇用者ストックオプションを付与する。
効はなし。
時間の流れ
¾ 対象勤務期間(付与日から権利確定日まで)は2年。この期間の退職者はゼロ。
➢ 権利行使時は、総額[5]の株式を、
[3]の資金
雇用者ストックオプションの付与から権利行使までの
流れは概略次のとおりである(図表1)
。
¾ 権利確定日から権利行使期限までは5年。
で購入する。これにより実質的に[2]の利益を
・まず、対象となる役職員に対して雇用者ストックオプ
得る。なお、資金は当初より保有していた自身
¾
ただし、実際の権利行使は権利確定日から3年後。付与された全員が一斉に行使。
の預金[3]を全額取り崩すことで賄う。
ションが付与される(付与日)
。
このため権利失効はなし。
➢ 雇用者ストックオプションの公正価値は、付与
・その後、対象勤務期間を経て、権利が確定する(権利
¾。 権利行使時は、総額[5]の株式を、[3]の資金で購入する。これにより実質
から権利行使まで[2]のままで一定(概念上は
確定日)
変化しうるがこのケースでは偶々変化しなかっ
・さらにその後、権利を行使する。いつ行使するかは、
的に[2]の利益を得る。なお、資金は当初より保有していた自身の預金[3]
た)
。
付与を受けた対象者の判断に拠る。
を全額取り崩すことで賄う。
・株価の低迷などから権利を行使しないまま権利行使期
¾
雇用者ストックオプションの公正価値は、付与から権利行使まで[2]のままで
限を迎えると、その雇用者ストックオプションは失効
する。
【付与対象となった役職員(家計)の場合】
一定(概念上は変化しうるがこのケースでは偶々変化しなかった)
。
・雇用者ストックオプションを、対象勤務期間
2 年に対
応するように按分された形で、つまり毎年 1 ずつ付与
・なお、権利確定日や権利行使期限、また権利行使価格
は付与の時点で予め定められている。
される。そして、この毎年の[1]
(2 年間における受
【付与対象となった役職員(家計)の場合】
取総額[2])は雇用者報酬(受取)として記録される。
・ 雇用者ストックオプションを、対象勤務期間2年に対応するように按分された形で、
・この雇用者報酬は、金融資産「その他」として蓄積さ
(2)2008SNA
における雇用者ストックオプション取引
れる。雇用者ストックオプションの性質上、対象勤務
の計上方法
つまり毎年1ずつ付与される。そして、この毎年の
[1]
(2年間における受取総額[2])
2008SNA では、これを次のように記録する(図表2
期間中は、これを引き出して自由に処分することはで
は雇用者報酬(受取)として記録される。
きない。
-1~2-3)
。以下の説明例では、
議論の簡略化のため、
極力単純な前提を置いている。これを拡張した場合の取
扱いに関しては、補論 1 において整理している。
5
・権利確定時に、金融資産「その他」の[2]は同じく
金融資産「金融派生商品」の[2]に振り替えられる。
これは、権利行使が可能となった雇用者ストックオプ
- 25 -
図表2-1 雇用者報酬
図表2-1 雇用者報酬
図表2-1 雇用者報酬
2006 2007 2008 2009 2010 2011
2007
2008 2009 2010 2011
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
+1
雇用者報酬(家計・受取) +1
+1
図表2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
図表2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
図表2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-3
預金 取引額
-3
3
3
3
3
3
0
預金 残高
残高
3
3
3
3
3
0
取引額
+1
+1
-2
その他 取引額 +1
+1
-2
残高
1
2
0
その他
金融資産
1
2
0
取引額
+2
-2
金融資産 金融派 残高
金融派
取引額
+2
-2
生商品 残高
2
2
2
0
生商品 残高
2
2
2
0
取引額
+5
株式 取引額
+5
残高
5
株式
残高
5
図表2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
図表2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
図表2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
+3
金融資産 預金 取引額
+3
3
金融資産 預金 残高
残高
3
取引額
+1
+1
-2
その他 取引額 +1
+1
-2
1
2
0
その他 残高
残高
1
2
0
金融派 取引額
+2
-2
負債
金融派 残高
取引額
+2
-2
2
2
2
0
生商品
負債
生商品 取引額
残高
2
2
2
0
+5
株式 取引額
+5
残高
5
株式
残高
5
なお、以上の説明は 2008SNA に準拠して、付与日から権利確定日までの雇用者ストック
なお、以上の説明は 2008SNA に準拠して、付与日から権利確定日までの雇用者ストック
オプションの全額を「その他」として整理している。もっとも、1.でも述べたとおり、
6
オプションの全額を「その他」として整理している。もっとも、1.でも述べたとおり、
と考えられるためである
。
・この雇用者報酬は、負債「その他」として蓄積される。
雇用者ストックオプションの一部は給与・賞与ではなく将来支払われることが見込まれる
・権利行使時(付与日から
5 年後、権利確定日から 3 年
・権利確定時に、負債「その他」の[2]は同じく負債「金
雇用者ストックオプションの一部は給与・賞与ではなく将来支払われることが見込まれる
退職金(特に役員向けの退職金)を代替するものとして支給されている。2008SNA
は両者の
後)には、金融資産「金融派生商品」が[2]減少、
融派生商品」の[2]に振り替えられる。
退職金(特に役員向けの退職金)を代替するものとして支給されている。2008SNA
は両者の
金融資産「預金」が[3]減少し、金融資産「株式」
・権利行使時(付与日から
5 年後、権利確定日から 3 年
相違に着目していないが、その基本理念に照らせば、SNA
体系自体を、この退職金代替部分
相違に着目していないが、その基本理念に照らせば、SNA
体系自体を、この退職金代替部分
7
が[5]増加する
。
後)には、負債「金融派生商品」が[2]減少、金融
を「年金準備金」として記録する形に発展させることも考えられる。この点についての理
を「年金準備金」として記録する形に発展させることも考えられる。この点についての理
資産「預金」が[3]増加し、負債側(貸方)にある「株
論的整理については補論2において取りまとめる。
【付与した企業(法人)の場合】
式」が[5]増加する 8。
論的整理については補論2において取りまとめる。
ションは、もはや一般的な株式オプションと同じもの
る。
オプションの全額を「その他」として整理している。もっとも、1.でも述べたとおり、
・雇用者ストックオプションを、対象勤務期間 2 年に対
なお、以上の説明は 2008SNA に準拠して、付与日か
応するように按分された形で、つまり毎年 1 ずつ付与
ら権利確定日までの雇用者ストックオプションの全額を
する。そして、この毎年の[1]
(2 年間における支払
「その他」として整理している。もっとも、1.でも述べ
3.わが国における雇用者ストックオプションの推計方法
3.わが国における雇用者ストックオプションの推計方法
い総額[2]
)は雇用者報酬(支払い)として記録され
たとおり、雇用者ストックオプションの一部は給与 ・ 賞
ここでは、初めに推計に利用できる基礎データの有無を確認したうえで、2.で示した
ここでは、初めに推計に利用できる基礎データの有無を確認したうえで、2.で示した
2008SNA の考え方に従った推計方法を整理する。
6
2008SNA の考え方に従った推計方法を整理する。
上記の整理からも明らかなとおり、
より正確には、雇用者ストックオプションは、特定の株式オプションを原資産とするオプション(オ
プションのオプション)である。そして、その付与を受けた役職員は、権利確定日において、この「オプションのオプション」を自動
(1)雇用者ストックオプションの推計に用いる基礎データ
的に行使して株式オプションを手に入れている、と整理できる。
(1)雇用者ストックオプションの推計に用いる基礎データ
7
詳細は補論 1 において整理されているが、付与日以降、株価の上昇により雇用者ストックオプション(その時点では実質的には株式オ
上場企業は、雇用者ストックオプションを付与する場合、有価証券報告書において、各
プションと同じ)の公正価値が増減する場合がある。この場合、2008SNA
は、権利確定日以降に、その価値の増減を調整勘定・再評価
上場企業は、雇用者ストックオプションを付与する場合、有価証券報告書において、各
勘定において適切に記録することを求めている。これは、価値の増減を調整勘定・再評価勘定で記録する他の金融派生商品と同様な取
雇用者ストックオプション一つひとつに関して、①(発行の)決議日、②付与対象者の区
雇用者ストックオプション一つひとつに関して、①(発行の)決議日、②付与対象者の区
扱いである。つまり、2008SNA
は、「オプションのオプション」としての雇用者ストックオプションについては公正価値の変動を認識
分および人数、
③新株予約権の目的となる新株の種類、
④新株予約権の目的となる株式数、
せず、
「株式オプション」についてのみその変動を認識する。そして、
「オプションのオプション」としての雇用者ストックオプション
分および人数、③新株予約権の目的となる新株の種類、④新株予約権の目的となる株式数、
については、付与日において想定された価値の増加のみを所得として認識しこれを金融資産「その他」に記録する。一方、「株式オプ
⑤新株予約権の行使時の払込金額、⑥新株予約権の行使期間、⑦新株予約権の行使により
ション」としての雇用者ストックオプションについては、
(「その他」からの振り替わりおよび権利行使を除けば)公正価値の増減のみ
⑤新株予約権の行使時の払込金額、⑥新株予約権の行使期間、⑦新株予約権の行使により
を価値の変動(増価・減価)として認識し、これを金融資産「金融派生商品」の調整勘定・再評価勘定の調整額として記録するよう求
株式を発行する場合の発行価格および資本組入額、⑧新株予約権の行使の条件、⑨新株予
株式を発行する場合の発行価格および資本組入額、⑧新株予約権の行使の条件、⑨新株予
めているのである。
8
約権の譲渡に関する事項、⑩代用払込みに関する事項(該当する場合)、⑪組織再編行為に
ここでは企業が新株発行により役職員による雇用者ストックオプションの権利行使に対応するものと考えている。実務上は、このほか、
約権の譲渡に関する事項、⑩代用払込みに関する事項(該当する場合)
、⑪組織再編行為に
(予め取得しておいた)自社株を割り当てる方式もある。具体的な事例は補論
1 の「4.自社株割り当てによる権利行使への対応」に示
すが、この場合も上記の議論の本質に影響はない。
- 26 -
7
7
与ではなく将来支払われることが見込まれる退職金(特
把握することができる。この方法は、各企業が発行した
に役員向けの退職金)を代替するものとして支給されて
雇用者ストックオプションの公正価値を統一的な基準で
いる。2008SNA は両者の相違に着目していないが、そ
計算できるほか、期中の価格変動も適時適切に把握でき
の基本理念に照らせば、SNA 体系自体を、この退職金
るなど、統計作成上、確かに望ましい面を有している。
代替部分を「年金準備金」として記録する形に発展させ
もっとも、企業によっては数十本も発行している雇用者
ることも考えられる。この点に関する理論的整理につい
ストックオプションについて、それらの公正価値を一つ
ては補論 2 において取りまとめる。
ひとつ手元で計算し、全企業分を集計することは、実務
上困難であると言わざるを得ない。
3.わが国における雇用者ストックオプションの
推計方法
ところで、企業は、雇用者ストックオプションを付与
する場合、その公正価値を自らブラック ・ ショールズ・
モデル等により算定し費用計上する必要がある。そして
ここでは、まず初めに推計に利用できる基礎データの
その額は「新株予約権」として負債側(貸方)にある純
有無を確認したうえで、2.で示した 2008SNA の考え方
資産の部に計上される(企業会計基準委員会[2005])。
に従った推計方法について整理する。
もちろん、概念上、この「新株予約権」には、雇用者ス
トックオプションの公正価値以外のものも含まれる。具
(1)雇用者ストックオプションの推計に用いる基礎デ
体的には、新株予約権付社債のうち新株予約権相当部分
の一部や 10、資本政策の一環として発行される新株予約
ータ
上場企業は、雇用者ストックオプションを付与する場
権などであるが 11、実態としてこれらはむしろ例外的な
合、有価証券報告書において、各雇用者ストックオプシ
ものである。したがって、実務上は企業会計上の「新株
ョン一つひとつに関して、①(発行の)決議日、②付与
予約権」の全額を雇用者ストックオプションの公正価値
対象者の区分および人数、③新株予約権の目的となる新
と捉えても大きな問題はないと考えられる。
株の種類、④新株予約権の目的となる株式数、⑤新株予
ただし、この新株予約権を用いて SNA 上の雇用者ス
約権の行使時の払込金額、⑥新株予約権の行使期間、⑦
トックオプションを推計する場合に、いくつか留意すべ
新株予約権の行使により株式を発行する場合の発行価格
き点がある。第一に、この新株予約権は残高である。雇
および資本組入額、⑧新株予約権の行使の条件、⑨新株
用者報酬を推計するためには、新規付与額を特定するこ
予約権の譲渡に関する事項、⑩代用払込みに関する事項
とが必要となるが、新株予約権の変動には新寄付与と権
(該当する場合)
、⑪組織再編行為に伴う新株予約権の交
9
利行使・権利失効の双方が反映されてしまう。このため、
付に関する事項(同)
、を開示しなければならない 。
後述するとおり、残高から新規のフローを抽出する推計
このほか雇用者ストックオプションの公正価値を計算す
が必要となる。第二に、この新株予約権には、権利確定
るうえで必要となる、安全利子率や、当社の株価および
日を迎えたものと迎えていないものの双方が、言い換え
ボラティリティは、市場において観察可能である。この
れば、金融勘定において「その他」に計上すべきものと
ため、理論的には、一つひとつの雇用者ストックオプシ
「金融派生商品」に計上すべきものの双方が含まれてい
ョンの公正価値を個別に計算し、それを合計することで、 る。このため、後述するとおり両者を分割する推計が必
わが国における上場企業のストックオプションの総額を
要となる。第三に、株価の上昇・下落等により雇用者ス
9
有価証券報告書のほか、適時開示の対象となる。
新株予約権付社債には、類型として、社債元本を株式取得に充当する「転換社債型」と、元本を充当しない「非転換社債型」(かつて
は「ワラント債」と呼称された)がある。非転換社債型の場合、社債部分と新株予約権部分が同時に発行され、それぞれ分離して取引
できるように設計されることが一般的であった。ところで現在では、業界統計で確認できる限り、新株予約権付社債は全て転換社債型
のタイプであり、非転換社債型の新株予約権付社債は発行されていない。実際、東京証券取引所は、2004 年、それまで上場してきた新
株予約権証券等の上場を廃止している(東京証券取引所[2004])。また、転換社債型の新株予約権付社債については、「新株予約権と
社債に分解して、前者を資本、後者を負債に計上する区分処理が原則であるが、簡便法として、分解せずにまとめて負債に計上する一
括処理が認められおり、実務では専ら後者が用いられている」(大杉[2009])とされる。こうしたことから、実際の企業会計において、
新株予約権に計上されている「新株予約権付社債のうち新株予約権相当部分」は非常に少額と考えられる。
11
実例としては、東京放送(TBS)が楽天による買収提案に対応するために発行した新株予約権(2005 年度末残高 6 億円、2006 年度末以
降は残高なし)や、スカイマークエアラインズが航空機調達等のための機動的な資金調達を目的として複数回に亘って発行した新株予
約権(2006 年度末残高 30.4 百万円、2007 年度末以降は残高なし)などがある。詳細に関しては、各社の決算短信等を参照されたい。
10
- 27 -
トックオプションの公正価値が変動した場合も、新株予
項目や対象が広く包括的であること、また四半期調査で
約権の計上額は変更しない(増額・減額修正を行わない)
あり公表も調査対象四半期の翌々月上旬頃と比較的早い
12
扱いとなっている(中央青山監査法人[2006]
) 。SNA
ことなどから使い勝手に優れており 14、わが国の国民経
上は、本来であればこれを推計により補正することが必
済計算においても 2 次速報値(QE)以降の推計(民間
要となるが、実際にはこれは困難である。まず、補正額
非金融法人の設備投資、営業余剰等)において広く用い
を正確に計算するためには一つひとつの雇用者ストック
られている。雇用者ストックオプションを推計するため
オプションの公正価値を個別に計算するしか手だてがな
の基礎データとしては、この法人企業統計調査を利用す
13
いが 、既に指摘したとおりこうした対応は国民経済計
ることが最も現実的である。
算の推計実務上、採用困難である。また概念的には、一
定の仮定に基づいて補正額をマクロ的に推計することも
(2)法人企業統計調査を用いた推計方法
考えられるが、個別要素の取り込み方など検討すべき課
上記のとおり法人企業統計調査を用いて雇用者ストッ
題は多く、現時点ではそうした手法の開発には成功して
クオプションを推計するためには、①雇用者報酬の特定、
いない。こうしたことから、現段階では、この要素は捨
②金融勘定における「その他」と「金融派生商品」の分
象せざるを得ない。
割が必要となる。まず、所得に関する推計を行う場合、
このように一定の制約はあるが、雇用者ストックオプ
一般論としては、行政記録、特に税務情報を利用するこ
ションを推計するうえでは、企業会計上の新株予約権の
とが考えられる。しかしながら、参考資料に示したよう
利用が有効である。実際の推計に際しては、その集計値
に、雇用者ストックオプションには税制適格のものと税
を入手する必要があるが、この新株予約権は「四半期別
制非適格のものがあり、前者は権利行使時には課税され
法人企業統計調査」
(財務省、
以下「法人企業統計調査」)
ない。また雇用者ストックオプションに基づき取得した
の調査項目となっている。法人企業統計調査は、調査の
株式を売却した時点では株式譲渡益税が課税されるが、
12
増額・減額修正を行うのは、既存の雇用者ストックオプションに関して条件変更を行う場合である。例えば、株価の大幅な下落に伴い、
既存の雇用者ストックオプションが役職員に対するインセンティブとして有効に機能しなくなった場合に、それらの行使価格などを見
直すことがある。このような場合には、企業会計上でも新株予約権の計上額を見直す必要がある。
13
雇用者ストックオプションの公正価値は、株価、ボラティリティ、安全利子率から大きな影響を受けるが、このほか行使価格や権利行
使期限といった市場では観察できない要素にも大きく依存する。一例として、コールオプションについて株価と行使価格の関係を考え
ると、そもそもオプションの本源的な価値は「株価-行使価格」の正の値であり、株価そのものとは大きく異なっている。さらに公正
価値の変化率をみても、株価が行使価格近傍にある時にそのオプションの公正価値の変化率が最大となる。そして、行使価格が現在の
株価を大きく上回っておりその公正価値が非常に小さい場合、多少株価が上昇したとしてもオプションの公正価値はほとんど変化しな
い。逆に、行使価格が 1 円であるなど現在の株価を大きく下回っている場合、株価の変化幅と公正価値の変化率は概ね一致する。こう
したことから、雇用者ストックオプションの公正価値についてその水準や変化率を正確に把握するためには、行使価格や権利行使期限
といった個別の要素を適切に捕捉する必要がある。
14
法人企業統計調査は、国民経済計算の推計を行ううえで確かに使い勝手が良いが、反面、一定の制約もある。具体的には、主に以下の
2 点である。特に(1)は雇用者ストックオプションの推計精度に影響を与えている。
(1)調査対象の範囲
法人企業統計調査の調査対象は「本邦に本店を有する合名会社、合資会社、合同会社及び株式会社並びに本邦に主たる事務所を有す
る信用金庫、信用金庫連合会、信用協同組合、信用協同組合連合会、労働金庫、労働金庫連合会、農林中央金庫、信用農業協同組合連
合会、信用漁業協同組合連合会、信用水産加工業協同組合連合会、生命保険相互会社及び損害保険相互会社」(財務省ホームページよ
り引用)に限定されることから、海外企業の在日支店は調査対象外となっている。一方で、各調査項目の回答は法人単位で行われてい
るため、概念上、本邦企業の海外支店の計数が含まれてしまっている。この結果、雇用者ストックオプション(新株予約権)についても、
海外企業の在日支店分が計上されない(定性的には過小推計要因)一方、本邦企業の在外支店分が混入(定性的には過大推計要因)し
ていることとなる。方向性としては両者が相殺し合うことから最終的にどの程度の影響が生じているかは判然としないが、いずれにせ
よこの要因を適切に補正することは実務上の制約が大きい。なお、わが国の国民経済計算の具体的な推計方法に関しては、内閣府経済
社会総合研究所[2006]および同[2007]を参照されたい。
(2)調査対象の規模
法人企業統計調査には、上記の四半期別調査のほか、年次別調査も存在する。国民経済計算の推計実務上は、主として四半期別調査
を利用しているが、この四半期別調査では、年次別調査では調査対象となっている「資本金、出資金又は基金 1,000 万円未満」の法人
が調査対象外となっている。ただし、年次別法人企業統計調査における「資本金、出資金又は基金 1,000 万円未満」の法人(「全産業(金
融業、保険業を含む)」)の新株予約権(当期末純資産)をみると、調査が開始された 2008 年度末、および 2009 年度末ともゼロとなっ
ている。これは、未上場会社において雇用者ストックオプションを導入する場合、実質的に費用計上が求められないという実務上の取
り扱いを反映したものである。国民経済計算の推計上は、こうした事例に関しては、その公正価値がゼロとみなされている雇用者スト
ックオプションが付与されたものとして捉えることができる。こうしたことから、調査対象の規模の問題は無視して差し支えない。
- 28 -
これは通常の株式売買と同様に処理される。こうしたこ
ション取引)を想定したうえで、それに基づき推計を行
とから、税務統計上も、雇用者ストックオプションに係
うことを考える。
る課税額を抽出することはできない。したがって税務情
15
参考資料に示した情報および筆者らが実施した大手証
報を用いて上記の推計を行うことは不可能である 。ま
券会社に対するヒアリング調査結果に基づき、標準的な
た、現在、雇用者報酬を推計するための基礎統計となっ
雇用者ストックオプションとして図表3-1のように想
ている「毎月勤労統計調査」
(厚生労働省)でも、現金
定する。
給与額は調査対象となっているものの、雇用者ストック
また、図表3-2のような定常状態を想定する。この
オプションに関する調査項目は存在しない。このように、 結果、モデルの上では、各年の値が全て同一となる。
その時点で存在する雇用者ストックオプション残高につ
さらに、図表3-2に示される状態を具体的な取引に
いてはほぼ正確に把握できるものの、それを分割するこ
分解して表示すると図表3-3のとおりとなる。これに
とによって得られる「雇用者報酬」や金融勘定の「その
より定常状態における、①雇用者報酬、金融勘定の②「そ
他」
、
「金融派生商品」を推計するために利用可能な基礎
の他」、③「金融派生商品」を特定することが可能となる。
的なデータ(いわゆる補助系列)は見当たらない。そこ
なお、図表2-2および2-3に示すとおり、取引に際
で、一定のモデル(いわば標準的な雇用者ストックオプ
しては金融勘定の「預金」や「株式」も変動する。もっ
図表3-1 モデルの概要とその背景となる考え方
設定
背景等
付与日から権利確定日 ・ 雇用者ストックオプションの大部分を占める税制適格雇用者ストックオプ
ションの場合、税制上、付与決議から権利確定日を
「2年以上10年未満」とする
までは2年。
よう求められている。
付与日から権利確定日 ・ この期間の退職者に関する情報はない。また、雇用者ストックオプション付
までの間、退職者は発
与直後に大量の退職者が発生する状況は常識的には想定し難い。
生しない。
権利確定日から権利行 ・ 雇用者ストックオプションのうち株式報酬型は、役員の再任等の可能性を考
使までは3年。
(例)
付 与 日:2006年7月1日
権利確定日:2008年7月1日
権利行使日:2011年7月1日
慮して権利確定日から権利行使期限までの期間
(権利行使可能期間)を長め
に設定することが多い。このため、結果的に、実際の権利行使が権利行使期限
よりもかなり前になることも多く、権利行使日の想定を行ううえでは参考と
ならない。そこで株式報酬型以外のもの限定して雇用者ストックオプション
の権利行使可能期間の平均を計算すると、4.66年となる。
・ 株価等の動向次第ではあるが、権利確定日以降、有利な局面が到来すれば権
利行使期限を待たずに権利行使すると考えられる。このため、実際の権利行
使は権利行使可能期間
(4.66年)よりも短いと想定するのが自然である。そこ
で便宜的に、平均的な行使期間として3年を想定する
(この点について大手証
券会社からも
『もとより確認はできないが、印象として違和感はない』旨のコ
メントを得ている)。
・ ここでは権利失効や権利確定日以降の退職を明示的には考慮していないが、
結果的には、
「失効や退職は3年後」と想定していることと同義である(金融派
生商品が消滅するという事象だけを捉えると、権利行使と、失効や
(権利行使
しないままの)退職とは同じ効果を持つため)。
雇用者ストックオプシ ・ 個別の雇用者ストックオプションの公正価値を計算した情報は公表されて
ョンの公正価値は一定
いない。また、雇用者ストックオプションの公正価値の変動を手元で正確に
で推移。
計算することは実務上困難。
15
補論 3 に示すとおり、この点はわが国と、アメリカやカナダとの大きな相違である。
- 29 -
図表3-2 定常状態にある雇用者ストックオプション
20
00 2001
後
半
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
20
2011 12
前
半
Aグループ 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 1年目 2年目
Bグループ 5年目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 1年目
Cグループ 4年目 5年目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目
Dグループ 3年目 4年目 5年目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 1年目 2年目 3年目 4年目
Eグループ 2年目 3年目 4年目 5年目 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 1年目 2年目 3年目
[解説]
①雇用者ストックオプションの権利行使日は付与日から5年(2年+3年)後の同じ日(例:付与日2006年7月1
日、権利行使日2011年7月1日)。ある雇用者ストックオプションが権利行使される日に、同じ条件の雇用者ス
トックオプションが新たに付与される(例:元の雇用者ストックオプションの権利行使日2011年7月1日、新たな
雇用者ストックオプションの付与日2011年7月1日)。
②わが国において雇用者ストックオプションを付与する企業は、付与時点に応じて5グループに分かれる(例
えば、2000年7月1日に新たに雇用者ストックオプションを付与した企業はAグループに、2001年7月1日に新た
に雇用者ストックオプションを付与した企業はBグループに分類される)。
③上記①、②により同じ取引が繰り返される結果、各年における雇用者報酬、金融勘定の「その他」「金融派
生商品」は全て同じ値になる(定常状態となる、例えば2006年の値は2001~2005および2007~2011年と同
一)。
とも、両項目は別な手法により高い精度で(雇用者スト
業統計調査のデータはそのようにはなっていない。上記
ックオプションに関連する取引分も含めて)推計されて
モデルはあくまで現実に接近するための近似的な想定で
いることから 16、ここで追加的に推計を行う必要はない。 ある。そこで、実際の推計に際しては、次のような修正
したがって、上記①~③が特定されればモデルの上では
を行う。まず、
「その他」や「金融派生商品」の取引額を
必要な推計が完了する。
明示的に計上する。これは、法人企業統計調査の全産業
無論、現実の姿は図表3-3のような完全な定常状態
(金融業、保険業を含む)・全規模・新株予約権について、
とは異なっている。例えば、完全な定常状態であれば、 「当期末純資産-前期末純資産」を計算することによっ
新株予約権の残高は一定であるはずだが、実際の法人企
て得ることができる 17、18。この値は「その他」と「金融
16
「預金」は「預金者別預金」(日本銀行)等により、「株式」は「株式分布状況調査」(東京証券取引所)や「投資部門別売買状況」(同)
等により推計されている。仮に雇用者ストックオプションの権利行使があれば、例えば家計については、預金が減少する一方で株式が
増加することとなるが、こうした動きは上記の基礎統計に予め反映されている。
別な言い方をすれば、現行の国民経済計算には、雇用者ストックオプションに係る動きのうち、
「預金」と「株式」に関するものは(暗
黙のうちに)既に取り込まれており、雇用者報酬と「その他」および「金融派生商品」に関するものは取り込まれていない、という不
整合が内包されている。今回の取り組みにより、そうした不整合が解消することとなる。
17
法人企業統計調査は、標本替、標本のうち実際に回答が得られる企業の相違、回答企業による回答内容の変更(誤計数の訂正や仮計数
の確定など)など様々な要因から、n期調査における前期末残高とn- 1 期調査における当期末残高が一致しない。このため、n期の
取引額としては、n期調査における「当期末残高-前期末残高」を利用した方が信頼性の高い計数を得ることができる。
18
こうした処理の結果、金融勘定においても、該当項目については「当期末残高-前期末残高(ストックの差分)」と「取引額(フロー)」
に乖離が生じる。当該計数は、調整勘定・その他の資産量変動勘定に記録される。これに伴い「金融派生商品」には調整額が記録され
るが、これはあくまで統計上の不連続を記録するために「その他の資産量変動」が計上されるに過ぎず、本来、計上されるべき雇用者
ストックオプションの公正価値変動に伴う「再評価勘定・名目保有利得」が記録されているわけではない点には留意が必要である。
- 30 -
図表3-3 雇用者ストックオプションの推計
図表3-3 雇用者ストックオプションの推計
グループ
項目
その他
B
金融派
生商品
その他
C
金融派
生商品
その他
D
金融派
生商品
その他
E
金融派
生商品
その他
A
日本
全体
日本
全体
金融派
生商品
取引額
残高
取引額
残高
取引額
残高
取引額
残高
取引額
残高
取引額
残高
取引額
残高
取引額
残高
取引額
残高
取引額
残高
2006 2007 2008 2009 2010 2011
1
1
-2
1
1
2
0
1
-2
2
0
0
-2
0
2
2
2
0
1
1
-2
1
2
0
0
-2
2
0
0
2
0
2
2
2
1
1
-2
1
2
0
0
0
-2
2
0
2
2
0
2
2
-2
1
1
-2
0
1
2
0
2
0
0
-2
2
2
2
2
0
2
1
-2
1
1
2
0
1
2
2
0
0
-2
2
2
2
0
取引額
残高
金融派 取引額
生商品 残高
0
3
0
6
0
3
0
6
0
3
0
6
0
3
0
6
0
3
0
6
0
3
0
6
新株予約権残高
雇用者報酬
9
2
9
2
9
2
9
2
9
2
9
2
その他
[解説]
①各グループは総額2の雇用者ストックオプションを付与。
②付与後2年経過時点で権利が確定。この時、「その他」が「金融派生商品」
に振り替わる。
③権利確定日から3年経過時点で権利行使。この時、「金融派生商品」は
「株式」に振り替わる(上表では株式は非表示)。
④新株予約権の残高は、「その他」の残高と「金融派生商品」の残高の合計
と一致する。両者の割合は3:6。
⑤雇用者報酬は、「その他」の正の取引額の合計と一致(負の取引額は権利
確定に伴う金融派生商品への振り替わり)。新株予約権残高の2/9(年間、四
半期ではその四分の一である2/36)が雇用者報酬。
派生商品」の取引額の合計に相当するため、このモデル
の取引額を下回る場合は、
「その他」の取引額に置き換
では、これを「その他」と「金融派生商品」の日本全体
える。これは、「その他」の正の値は、「少なくとも同額
における合計として、3:6 で按分する。また「当期末
以上の雇用者ストックオプションの付与があった」こと
純資産」も同じく 3:6 で按分する。雇用者報酬は、原
を意味しているためである 19。以上の修正により次の推
則としてモデルにより算出するが、この値が「その他」
計方法が得られる。
19
こうした問題が生じる場合、その原因として、①雇用者報酬の推計比率が不適当である、②「その他」と「金融派生商品」の推計比率
が不適当である、③①と②の両方、が考えられる。いずれが妥当するか先験的には特定しがたいが、ここではストックに比べてフロー
は変動が大きいと考えられることに加え、推計を徒に複雑化させないことを企図して、①に基づく修正を採用している。
- 31 -
【推計方法の概要】
4.わが国における雇用者ストックオプション
の推計結果
✧新株予約権・当期末純資産が金融資産・負債「そ
の他」および「金融派生商品」の残高の合計。こ
れを 3:6 でそれぞれ按分する。いずれも家計の
金融資産、民間非金融法人ないし金融の負債 20。
ここでは 3.示した推計方法に基づいて、わが国にお
✧新株予約権の「当期末純資産-前期末純資産」が
ける雇用者ストックオプションの動向を推計する。これ
金融資産・負債「その他」および「金融派生商品」
をまとめたものが図表4である。具体的には、次のとお
の取引額の合計。これを 3:6 でそれぞれ按分する。
りである。
いずれも家計の金融資産、民間非金融法人ないし
・雇用者報酬は 37 ~ 213 億円(四半期の実額、以下同様)
金融の負債。
・
「その他」の取引額は -7 ~ 213 億円、残高は 195 ~
✧原則として、
新株予約権・当期末純資産の 5.6%(年
968 億円
間 2 / 9、したがって四半期では 2 / 36)が四半
・
「金融派生商品」の取引額は -14 ~ 427 億円、残高は
390 ~ 1,935 億円
期の雇用者所得。ただし、これが上記「その他」
の取引額を下回る場合は、
「その他」の取引額で
・付与しているのは、民間非金融法人がほとんどであり、
置き換える。
金融は僅少
法人企業統計調査に内包される統計上の不連続により、
上記の推計方法は法人企業統計に依拠していることか
時系列的な推移を捉えにくくなっている面は否めないが、
ら、2 次QE以降には適用可能であるが、1 次QEでは
「その他」や「金融派生商品」の残高に関しては、レベ
適用できない。ここでの推計対象のうち 1 次QE時点で
ルシフトが観察された 2008 年 2Q 以降は、多少の振れ
の公表項目は雇用者報酬のみであるが、その推計方法を
を伴いつつも全体としてある程度安定的に推移している
予め整理する必要がある。わが国の国民経済計算の推計
ように窺われる。また、
「雇用者報酬」の推計は、残高
上、こうした場合、一般的には他の代替的な系列を利用
の一定割合としていることから 2008 年 3Q のように付
することが多いが、上記のとおり雇用者ストックオプシ
与額が一時的に増加する動きを的確に捕捉することは難
ョンに関してはそれに類するデータが存在しない。この
しいが、2008 年 4Q 以降は 100 億円強である程度安定的
ため、雇用者報酬に関しては、前四半期の値をそのまま
に推移しているし、
[当期末純資産の 5.6% <その他の
用いることとする。これは、
(後述する)金額的な大き
取引額]となった期間も限られていることが確認できる。
さに鑑みて簡便な手法により対応することが現実的と考
こうしたことから少なくとも近年に関しては、3.で置
えられること、加えて、現段階では季節性を利用した推
いた「概ね定常状態」の前提は基本的には満たされてい
計手法の適用による推計精度の向上を確認できないこ
ると考えられるほか、それ以外の按分比率なども含めて、
21
と 、を踏まえた判断である。
推計が実態から著しく乖離している可能性は小さいこと
が示唆される。また、1 次QE時点における雇用者報酬
20
負債側の各制度部門への配分は、法人企業統計調査の業種分類を用いて次のとおり行う。
以下、国民経済計算の分類 :法人企業統計調査の分類
民間非金融法人 :全産業(除く金融保険業)
国内銀行 :銀行業
ファイナンス会社 :貸金業・クレジットカード業等非預金信用機関
ディーラー・ブローカー:金融商品取引業(第一種金融商品取引業であって有価証券関連業に限る)
非仲介型金融機関 :その他の金融商品取引業・商品先物取引業
民間生命保険 :生命保険業
民間損害保険 :損害保険業+その他の保険業<全額を非生命保険に係る少額短期保険とみなす>
21
明確な季節性が観察される場合、前四半期の値をそのまま用いるのではなく、①前年同期の値、あるいは、②前年同期の値 × 前四半
期の前年比、を用いることが適当と考えられる。もっとも、利用可能なデータが 2007 年 2Q 以降と短いこともあって、現段階では明確
な季節性を確認することは難しい。また 2007 年 2Q ~ 2010 年 4Q に関して実際に試算したところ、①や②よりも前四半期の値をその
まま用いた方が誤差は小さかった。こうしたことから本稿では、暫定的に前四半期をそのまま用いることとしている。なお、この点に
関しては、時系列データの蓄積を待って改めて検証する必要がある。
- 32 -
図表4 わが国における雇用者ストックオプション
図表4 わが国における雇用者ストックオプション
[法人企業統計季報]
単位:億円
2007
2008
2009
2010
新株予約権
当期末純資産
(残高)
2Q
3Q
4Q
1Q
除く金融保険
640
585
688
666 1235 1426 1273 1507 2022 1805 1827 1822 2826 1896 1882
含む金融保険
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1512 1721 1635 1955 2085 1877 1905 1904 2903 1991 1882
国内銀行
33
22
36
34
34
33
36
40
40
ファイナンス会社
8
3
3
4
2
2
3
3
3
1
3
ディーラー・ブローカー
3
4
4
3
3
7
7
7
6
10
10
212
242
299
386
5
5
5
5
21
31
28
民間生命保険
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
民間損害保険
20
25
19
21
19
24
27
26
6
7
6
うち
うち
うち
非仲介型金融機関
うち
うち
うち
46
50
[法人企業統計季報]
2007
新株予約権
当期末-前期末
(取引額)
2Q
3Q
除く金融保険
117
161
2008
2009
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
66
51
102
589
299
69
-20
640
369
129
含む金融保険
国内銀行
2Q
2010
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
58
165
116
90
28
216
-1
54
174
122
91
2
236
0
-17
3
14
-2
0
-1
3
3
0
6
4
ファイナンス会社
-161
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
ディーラー・ブローカー
1
1
1
-2
0
4
0
0
-1
4
0
54
43
53
61
-2
0
0
0
-6
9
-4
民間生命保険
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
民間損害保険
1
5
1
2
-2
5
3
-2
-20
1
0
うち
うち
うち
非仲介型金融機関
うち
うち
うち
[推計結果](ここでは家計の金融資産および雇用者報酬を表示)
2007
2Q
取引額
3Q
2008
4Q
2009
2010
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
1Q
2Q
3Q
4Q
39
54
22
17
-7
213
123
43
18
58
41
30
1
79
0
213
195
229
222
504
574
545
652
695
626
635
635
968
664
627
78
107
44
34
-14
427
246
86
36
116
82
61
1
158
0
427
390
459
39
54
39
その他
残高
金融派
生商品
取引額
残高
雇用者報酬
444 1008 1147 1090 1303 1390 1251 1270 1269 1935 1327 1255
37
85
213
123
109
117
105
107
2008年2Q以降は「含む金融」で接続
イタリックは[当期末純資産の5.6%<その他の取引額]であったため、前者を後者により置き換えた箇所
1次QE時点における雇用者報酬の推計値と実績値の乖離(雇用者報酬の前期と当期の差)の平均は1億円
16
- 33 -
107
163
111
105
を前期と同額とみなすという簡便な推計でも、平均的に
依存することから、局面によって大きく変動すると考え
はある程度の精度を確保できていることが確認される。
られる。これらに関してもモデルの拡張が望まれるが、
以上が、推計方法の概要およびその結果である。
それに先立ち、これらの要素をモデルに取り込むための
土台として、株価やボラティリティ等の変動と雇用者ス
最後に、
推計方法に関する今後の課題を整理しよう。3. トックオプションの権利行使との時間的な関係に関する
でも述べたとおり、雇用者ストックオプションに関する
学術的な研究の進展が要請される。言うまでもなくその
基礎データは、各社が個別に発表しているミクロデータ
ためには、
(あくまで守秘義務など一定の条件を付した
とそれらを集計した唯一のマクロデータである法人企業
うえでの限定的なもので十分であるが)付与した企業や
統計調査のみしか存在しない。このため、実務上の制約
関連事務を引き受けた証券会社等から、研究者等に対し
から法人企業統計調査のみに依拠した推計を採用するほ
て詳細な取引データが開示されることが必要となる。さ
か手段がないが、法人企業統計調査は「ある特定時点に
らに⑤は、単に推計精度の問題にとどまらず、2008SNA
おける公正価値」というミクロデータ中でもごく限られ
の勧告に対して概念的に準拠できていない部分であるこ
た一面を切り取っているに過ぎない。本稿では、この制
とから、特に改善を要する点である。当面、行使価格や
約を補う目的で標準的なモデルを設定することとしたが、 権利行使期限といった個別の要素を一定の想定に基づき
そこではいくつかやや強い前提を置いている。すなわち、 マクロ的に評価し、これをモデルに取り込む形に推計手
①「付与日から権利確定日」および「権利確定日から権
法を進化させることが課題となる。将来的には、そうし
利行使まで」は全ての取引において共通、②権利確定日
た想定に依らずに、個別の雇用者ストックオプションの
までの退職者はゼロ、③権利確定日以降の退職は権利行
公正価値を適切に反映できることが期待されるが、改め
使日のみ、④権利行使期限到来による権利失効はなし、
て指摘するまでもなくその実現には個別の雇用者ストッ
⑤雇用者ストックオプションの公正価値は全期間を通じ
クオプションの公正価値一覧といった詳細なマクロデー
て一定、等である。これらは、
「長期に亘る平均的な姿」
タの整備が大前提となる。
としては妥当する前提とみられるが、
「短期における個
幸い、現在までのところ、わが国においては雇用者ス
別取引の実態」としては、①については様々な取引が存
トックオプションの取引規模が、雇用者報酬全体や他の
在することが明らかとなっているし、②や③は関連する
金融資産・負債残高との相対的な関係においてはそれほ
データが存在しないために採用せざるを得なかった便宜
ど大きくなく、上記の様々な制約を許容することができ
的な前提であり、いずれも厳密な意味では実態を正確に
るが、将来的にはこれらがわが国の国民経済計算に大き
描写しているとは言い難い。多様な取引形態を包摂でき
な歪みをもたらす可能性もゼロとは言えない。こうした
るようにモデルを拡張することが必要である。そのため
ことから、業界関係者を中心とした関連データの整備・
には、より詳細なマクロデータの整備が不可欠である。
開示範囲の拡大が強く期待される。
また①、④に係る権利行使日は、現在の株価・ボラティ
リティおよび将来の株価・ボラティリティの見通し等に
- 34 -
補論1:2008SNA の説明例の拡張
-1~2-3は補論1図表1-1-1~1-1-3のよ
うに修正される。
結局、雇用者報酬が減少し、それと対応する形で「そ
本論、2.では、簡潔な議論を展開することを念頭に、
の他」
「金融派生商品」
「株式」
「預金」も変化すること
補論1:2008SNA の説明例の拡張
Eurostat[2004]の中から 3.以降の説明に必要不可欠
となるが、議論の本質は本論と同じである。
補論1:2008SNA
補論1:2008SNA の説明例の拡張
の説明例の拡張
な部分に絞ってそのエッセンスを紹介した。ここでは、
本論では捨象していた部分を紹介するともに、さらに議
(2)対象勤務期間中の途中退職に関する想定の導入と
本論、2.では、簡潔な議論を展開することを念頭に、Eurostat[2004]の中から3.
本論、2.では、簡潔な議論を展開することを念頭に、Eurostat[2004]の中から3.
以降の説明に必要不可欠な部分に絞ってそのエッセンスを紹介した。ここでは、本論では
以降の説明に必要不可欠な部分に絞ってそのエッセンスを紹介した。ここでは、本論では
上記のとおり権利確定日よりも前に途中退職すると、
以降の説明に必要不可欠な部分に絞ってそのエッセンスを紹介した。ここでは、本論では
捨象していた部分を紹介するともに、さらに議論を拡張する。
その役職員は雇用者ストックオプションの権利を失う。
1.対象勤務期間中
(付与日から権利確定日まで)
捨象していた部分を紹介するともに、さらに議論を拡張する。
捨象していた部分を紹介するともに、さらに議論を拡張する。
実際には、企業は、ある程度これを予め織り込んで費用
の途中退職者
本論、2.では、簡潔な議論を展開することを念頭に、Eurostat[2004]の中から3.
論を拡張する。
想定の下振れ
計上するのが一般的である。そこで、付与日において、
1.対象勤務期間中(付与日から権利確定日まで)の途中退職者
1.対象勤務期間中(付与日から権利確定日まで)の途中退職者
1.対象勤務期間中(付与日から権利確定日まで)の途中退職者
以下、本論
2.における説明例の前提を、「途中退職
企業は予め 20% の途中退職を見込んでいたものとしよ
以下、本論2.における説明例の前提を、
「途中退職者の存在」
を考慮する形に拡張する。
者の存在」を考慮する形に拡張する。いずれの場合にお
う。また、実際に途中退職した役職員は想定を下回り
以下、
「途中退職者の存在」
以下、本論2.
本論2.における説明例の前提を、
における説明例の前提を、
「途中退職者の存在」を考慮する形に拡張する。
を考慮する形に拡張する。
いても、基本的に本論における議論の本質に影響はない、
10% しかいなかったものとしよう。この場合、図表2
いずれの場合においても、基本的に本論における議論の本質に影響はない、
つまり本論4.
いずれの場合においても、
基本的に本論における議論の本質に影響はない、
つまり本論4.
いずれの場合においても、
基本的に本論における議論の本質に影響はない、
つまり本論4.
つまり本論 4.に示す結論を変更する必要がないことを
-1~2-3は補論1図表1-2-1~1-2-3のよ
に示す結論を変更する必要がないことを確認できる。
に示す結論を変更する必要がないことを確認できる。
確認できる。
うに修正される。
に示す結論を変更する必要がないことを確認できる。
(1)対象勤務期間中における途中退職者の発生結局、2006 年の雇用者報酬は減少するが、2007 年に
(1)対象勤務期間中における途中退職者の発生
権利確定日よりも前に途中退職すると、その役職員は雇用者ストックオプションの権利
権利確定日よりも前に途中退職すると、その役職員は雇用者ストックオプションの権利
権利確定日よりも前に途中退職すると、その役職員は
その不足分の穴埋めも含めて雇用者報酬が支払われる。
権利確定日よりも前に途中退職すると、その役職員は雇用者ストックオプションの権利
を失う。ここで、付与後、1年を経過した時点で付与対象となった役職員の
10%が退職した
雇用者ストックオプションの権利を失う。ここで、付与
こうした動きと対応する形で「その他」
「金融派生商品」
を失う。ここで、付与後、1年を経過した時点で付与対象となった役職員の
を失う。ここで、付与後、1年を経過した時点で付与対象となった役職員の 10%が退職した
10%が退職した
ものと想定しよう。この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
後、1 年を経過した時点で付与対象となった役職員の
「株式」「預金」も変化することとなるが、議論の本質は
ものと想定しよう。この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
ものと想定しよう。この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
10% が退職したものと想定しよう。この場合、図表2
本論と同じである。
結局、雇用者報酬が減少し、それと対応する形で「その他」
「金融派生商品」「株式」「預
結局、雇用者報酬が減少し、それと対応する形で「その他」
結局、雇用者報酬が減少し、それと対応する形で「その他」「金融派生商品」
「金融派生商品」「株式」
「株式」「預
「預
金」も変化することとなるが、議論の本質は本論と同じである。
金」も変化することとなるが、議論の本質は本論と同じである。
金」も変化することとなるが、議論の本質は本論と同じである。
(1)対象勤務期間中における途中退職者の発生
(1)対象勤務期間中における途中退職者の発生
は企業にとっての費用計上が過少であることが判明し、
補論1図表1-1-1 雇用者報酬
補論1図表1-1-1 雇用者報酬
補論1図表1-1-1 雇用者報酬
補論1図表1-1-1 雇用者報酬
2006 2007 2008 2009
2007
2009
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
+0.8 2008
2006
2007
2008 2009
雇用者報酬(家計・受取) +1
+0.8
雇用者報酬(家計・受取) +1
+0.8
2010
2010
2010
2011
2011
2011
補論1図表1-1-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-1-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-1-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-1-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-2.7
預金 取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-2.7
残高
3
3
3
3
3
0.3
預金 取引額
-2.7
預金 残高
3
3
3
3
3
0.3
取引額 +1
+0.8
-1.8
残高
3
3
3
3
3
0.3
その他 取引額 +1
+0.8
-1.8
残高
1
1.8
0
その他
取引額
+1
+0.8
-1.8
金融資産 その他
1
1.8
0
取引額
+1.8
-1.8
金融資産 金融派 残高
残高
1
1.8
0
金融資産 金融派
+1.8
-1.8
生商品 取引額
残高
1.8
1.8
1.8
0
金融派
取引額
+1.8
-1.8
生商品 残高
1.8
1.8
1.8
0
取引額
+4.5
生商品
残高
1.8
1.8
1.8
0
株式
+4.5
残高
4.5
株式 取引額
取引額
+4.5
株式 残高
4.5
残高
4.5
補論1図表1-1-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-1-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-1-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-1-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
2007 2008 2009 2010 2011
取引額 2006
+2.7
2006
2007 2008 2009 2010 2011
金融資産 預金 取引額
+2.7
残高
2.7
金融資産 預金 取引額
+2.7
金融資産 預金 残高
2.7
取引額 +1
+0.8
-1.8
残高
2.7
その他 取引額 +1
+0.8
-1.8
残高
1
1.8
0
その他 取引額
+1
+0.8
-1.8
その他
1
1.8
0
金融派 残高
取引額
+1.8
-1.8
残高
1
1.8
0
負債
金融派
+1.8
-1.8
生商品 取引額
残高
1.8
1.8
1.8
0
金融派
負債
取引額
+1.8
-1.8
負債
生商品 残高
1.8
1.8
1.8
0
取引額
+4.5
生商品
残高
1.8
1.8
1.8
0
株式 取引額
+4.5
残高
4.5
株式 取引額
+4.5
株式 残高
4.5
残高
4.5
・10%の途中退職者の発生により、最終的に付与すれば良い金額は[2]から[1.8]へ減少。
・10%の途中退職者の発生により、最終的に付与すれば良い金額は[2]から[1.8]へ減少。
・2006年に既に1を付与済みであるため、2007年は[1.8]と[1]の差額である[0.8]を付与。
・10%の途中退職者の発生により、最終的に付与すれば良い金額は[2]から[1.8]へ減少。
・2006年に既に1を付与済みであるため、2007年は[1.8]と[1]の差額である[0.8]を付与。
・2006年に既に1を付与済みであるため、2007年は[1.8]と[1]の差額である[0.8]を付与。
(2)対象勤務期間中の途中退職に関する想定の導入と想定の下振れ
(2)対象勤務期間中の途中退職に関する想定の導入と想定の下振れ
(2)対象勤務期間中の途中退職に関する想定の導入と想定の下振れ
- 35 -
上記のとおり権利確定日よりも前に途中退職すると、その役職員は雇用者ストックオプ
上記のとおり権利確定日よりも前に途中退職すると、その役職員は雇用者ストックオプ
上記のとおり権利確定日よりも前に途中退職すると、その役職員は雇用者ストックオプ
ションの権利を失う。実際には、企業は、ある程度これを予め織り込んで費用計上するの
ションの権利を失う。実際には、企業は、ある程度これを予め織り込んで費用計上するの
ションの権利を失う。実際には、企業は、ある程度これを予め織り込んで費用計上するの
結局、2006
結局、2006 年の雇用者報酬は減少するが、2007
年の雇用者報酬は減少するが、2007 年には企業にとっての費用計上が過少で
年には企業にとっての費用計上が過少で
結局、2006 年の雇用者報酬は減少するが、2007 年には企業にとっての費用計上が過少で
あることが判明し、その不足分の穴埋めも含めて雇用者報酬が支払われる。こうした動き
あることが判明し、その不足分の穴埋めも含めて雇用者報酬が支払われる。こうした動き
あることが判明し、その不足分の穴埋めも含めて雇用者報酬が支払われる。こうした動き
と対応する形で「その他」「金融派生商品」
「金融派生商品」「株式」
「株式」「預金」も変化することとなるが、議論
「預金」も変化することとなるが、議論
と対応する形で「その他」
と対応する形で「その他」「金融派生商品」「株式」「預金」も変化することとなるが、議論
の本質は本論と同じである。
の本質は本論と同じである。
の本質は本論と同じである。
補論1図表1-2-1 雇用者報酬
補論1図表1-2-1 雇用者報酬
補論1図表1-2-1 雇用者報酬
補論1図表1-2-1 雇用者報酬
2006
2006 2007
2007 2008
2008 2009
2009 2010
2010 2011
2011
雇用者報酬(家計・受取)
+0.8
+1
2008 2009 2010 2011
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+0.8 2007
+1
雇用者報酬(家計・受取) +0.8
+1
補論1図表1-2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007
2007 2008
2008 2009
2009 2010
2010 2011
2011
2006
取引額
-2.7
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-2.7
預金
預金 取引額
残高
3
3
3
3
3
0.3
-2.7
残高
3
3
3
3
3
0.3
預金
取引額
+0.8
+1
-1.8
残高
3
3
3
3
3
0.3
取引額 +0.8
+1
-1.8
その他
その他 残高
0.8
1.8
0
取引額 +0.8
+1
-1.8
残高
0.8
1.8
0
金融資産
金融資産 その他
金融派 取引額
取引額 0.8
+1.8
-1.8
残高
1.8
0
+1.8
-1.8
金融資産 金融派
生商品
残高
1.8
1.8
1.8
0
金融派
取引額
+1.8
-1.8
生商品 残高
1.8
1.8
1.8
0
取引額
+4.5
生商品
残高
1.8
1.8
1.8
0
取引額
+4.5
株式
株式 取引額
残高
4.5
+4.5
4.5
株式 残高
残高
4.5
補論1図表1-2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表1-2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007
2007 2008
2008 2009
2009 2010
2010 2011
2011
2006
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
+2.7
取引額
+2.7
金融資産 預金
預金
金融資産
残高
2.7
取引額
+2.7
2.7
金融資産 預金 残高
取引額 +0.8
+0.8
+1
-1.8
残高
2.7
取引額
+1
-1.8
その他
その他 取引額
残高
0.8
1.8
0
+0.8
+1
-1.8
残高
0.8
1.8
0
その他
金融派
取引額 0.8
+1.8
-1.8
1.8
0
金融派 残高
取引額
+1.8
-1.8
負債
負債
生商品 取引額
残高
1.8
1.8
1.8
0
金融派
+1.8
-1.8
生商品
残高
1.8
1.8
1.8
0
負債
取引額
+4.5
生商品
残高
1.8
1.8
1.8
0
取引額
+4.5
株式
株式 取引額
残高
4.5
+4.5
残高
4.5
株式
残高
4.5
・企業は20%の途中退職を見込んで、2006年に[0.8]を費用計上(=雇用者報酬に相当)。
・企業は20%の途中退職を見込んで、2006年に[0.8]を費用計上(=雇用者報酬に相当)。
・2007年に途中退職者が10%に止まることが判明。最終的な付与額は[1.8]と確定。
・企業は20%の途中退職を見込んで、2006年に[0.8]を費用計上(=雇用者報酬に相当)。
・2007年に途中退職者が10%に止まることが判明。最終的な付与額は[1.8]と確定。
・このため、[1.8]と既に費用計上済みの[0.8]の差額[1]を2007年に費用計上。
・2007年に途中退職者が10%に止まることが判明。最終的な付与額は[1.8]と確定。
・このため、[1.8]と既に費用計上済みの[0.8]の差額[1]を2007年に費用計上。
・このため、[1.8]と既に費用計上済みの[0.8]の差額[1]を2007年に費用計上。
間に企業の株価が上昇すると、雇用者ストックオプショ
2.株価の上昇等
2.株価の上昇等
ンの公正価値は増加する。ここで、付与後、1 年を経過
2.株価の上昇等
2.株価の上昇等
した時点で当該企業の株価が上昇し、雇用者ストックオ
以下、本論2.における説明例の前提を、
以下、本論2.における説明例の前提を、「株価の上昇」を考慮する形に拡張する。結論
「株価の上昇」を考慮する形に拡張する。結論
以下、本論2.における説明例の前提を、
「株価の上昇」を考慮する形に拡張する。結論
以下、本論 2.における説明例の前提を、
「株価の上昇」 プションの公正価値が[2]から[3]へと増加したもの
としては、本論における議論は、調整勘定・再評価勘定を含む形に修正される。ただし3.
としては、本論における議論は、調整勘定・再評価勘定を含む形に修正される。ただし3.
を考慮する形に拡張する。結論としては、本論における
と想定しよう。この場合、図表2-1~2-3は補論1
としては、本論における議論は、調整勘定・再評価勘定を含む形に修正される。ただし3.
の説明のとおり、実際の推計においてこの部分を取り込むことはできない。
の説明のとおり、実際の推計においてこの部分を取り込むことはできない。
議論は、調整勘定・再評価勘定を含む形に修正される。
図表2-1-1~2-1-3のように修正される。
の説明のとおり、実際の推計においてこの部分を取り込むことはできない。
なお、繰り返しを避けるために具体的な説明は省略するが、株価が下落した場合や、ボ
ただし 3.の説明のとおり、実際の推計においてこの部
結局、雇用者報酬は不変である。上記の期間における
なお、繰り返しを避けるために具体的な説明は省略するが、株価が下落した場合や、ボ
なお、繰り返しを避けるために具体的な説明は省略するが、株価が下落した場合や、ボ
分を取り込むことはできない。
雇用者ストックオプションの公正価値の増加は、権利確
ラティリティや金利など株価以外の要素によりの雇用者ストックオプションの公正価値が
ラティリティや金利など株価以外の要素によりの雇用者ストックオプションの公正価値が
ラティリティや金利など株価以外の要素によりの雇用者ストックオプションの公正価値が
なお、繰り返しを避けるために具体的な説明は省略す
定日において初めて認識される。そしてそれに起因する
変動した場合も、株価が上昇した場合と同様な整理が可能である。
変動した場合も、株価が上昇した場合と同様な整理が可能である。
るが、株価が下落した場合や、ボラティリティや金利な
調整勘定・再評価勘定の記録も「金融派生商品」にのみ
変動した場合も、株価が上昇した場合と同様な整理が可能である。
ど株価以外の要素によりの雇用者ストックオプションの
(1)付与日から権利確定日までの株価上昇
発生する(「その他」には記録されない)。それ以外の点
(1)付与日から権利確定日までの株価上昇
(1)付与日から権利確定日までの株価上昇 についての議論の本質は本論と同じである。
公正価値が変動した場合も、株価が上昇した場合と同様
他の条件は同一として、付与日から権利確定日までの間に企業の株価が上昇すると、雇
他の条件は同一として、付与日から権利確定日までの間に企業の株価が上昇すると、雇
な整理が可能である。
なお、付与日から権利確定日までの間、雇用者ストッ
他の条件は同一として、付与日から権利確定日までの間に企業の株価が上昇すると、雇
クオプションの公正価値の変化を認識しない取扱いは、
(1)付与日から権利確定日までの株価上昇
他の条件は同一として、付与日から権利確定日までの 19
19
19
企業会計との整合性を考慮したものである。
- 36 -
再評価勘定の記録も「金融派生商品」にのみ発生する(「その他」には記録されない)。そ
再評価勘定の記録も「金融派生商品」にのみ発生する(「その他」には記録されない)。そ
れ以外の点についての議論の本質は本論と同じである。
れ以外の点についての議論の本質は本論と同じである。
れ以外の点についての議論の本質は本論と同じである。
なお、付与日から権利確定日までの間、雇用者ストックオプションの公正価値の変化を
なお、付与日から権利確定日までの間、雇用者ストックオプションの公正価値の変化を
なお、付与日から権利確定日までの間、雇用者ストックオプションの公正価値の変化を
認識しない取扱いは、企業会計との整合性を考慮したものである。
認識しない取扱いは、企業会計との整合性を考慮したものである。
認識しない取扱いは、企業会計との整合性を考慮したものである。
補論1図表2-1-1 雇用者報酬
補論1図表2-1-1 雇用者報酬
補論1図表2-1-1 雇用者報酬
補論1図表2-1-1 雇用者報酬
2006 2007 2008 2009 2010
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
雇用者報酬(家計・受取) +1
2007
+1
2007
+1
+1
2008
2008
取引額 2006
2006
取引額
残高
3
取引額
残高
3
取引額
+1
残高
3
取引額
+1
残高
1
取引額
+1
残高
1
取引額
残高
1
取引額
残高
取引額
残高
調整額
残高
調整額
取引額
調整額
取引額
残高
取引額
残高
残高
2007
2007
3
3
+1
3
+1
2
+1
2
2
2008
2008
3
3
-2
3
-2
0
-2
0
+2
0
+2
3
+2
3
+1
3
+1
+1
2009
2009
2010
2010
2011
2011
2011
補論1図表2-1-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-1-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-1-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-1-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
預金
預金
預金
その他
その他
金融資産 その他
金融資産 金融派
金融資産 金融派
生商品
金融派
生商品
生商品
株式
株式
株式
2009
2009
3
3
3
2010
2010
3
3
3
3
3
3
3
3
3
2011
-3
2011
-3
0
-3
0
0
-3
-3
0
-3
0
0
+6
+6
6
+6
6
6
補論1図表2-1-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-1-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-1-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-1-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
2007 2008 2009 2010 2011
取引額 2006
+3
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
+3
残高
3
取引額
+3
残高
3
取引額
+1
+1
-2
残高
3
取引額 +1
+1
-2
残高
1
2
0
取引額
+1
+1
-2
残高
1
2
0
取引額
+2
-3
残高
1
2
0
取引額
+2
-3
残高
3
3
3
0
取引額
+2
-3
残高
3
3
3
0
調整額
+1
残高
3
3
3
0
調整額
+1
取引額
+6
調整額
+1
取引額
+6
残高
6
取引額
+6
残高
6
残高
6
・付与後1年を経過した時点で株価が上昇し、雇用者ストックオプション総額の公正価値が
金融資産 預金
金融資産 預金
金融資産 預金
その他
その他
その他
金融派
負債
金融派
生商品
負債
金融派
生商品
負債
生商品
株式
株式
株式
・付与後1年を経過した時点で株価が上昇し、雇用者ストックオプション総額の公正価値が
[2]から[3]へ上昇。
・付与後1年を経過した時点で株価が上昇し、雇用者ストックオプション総額の公正価値が
[2]から[3]へ上昇。
・ただし雇用者報酬として計上する額は不変のまま処理。
[2]から[3]へ上昇。
・ただし雇用者報酬として計上する額は不変のまま処理。
・権利確定日において、金融派生商品の公正価値を[3]として計上。
・ただし雇用者報酬として計上する額は不変のまま処理。
・権利確定日において、金融派生商品の公正価値を[3]として計上。
・その他から金融派生商品へ振り替えられる取引額は[2]のみ。このため調整勘定・再評価
・権利確定日において、金融派生商品の公正価値を[3]として計上。
・その他から金融派生商品へ振り替えられる取引額は[2]のみ。このため調整勘定・再評価
勘定に調整額[1]を計上。
・その他から金融派生商品へ振り替えられる取引額は[2]のみ。このため調整勘定・再評価
勘定に調整額[1]を計上。
・株価が上昇した結果、新株の発行額は[5]ではなく[6]に増加。
勘定に調整額[1]を計上。
・株価が上昇した結果、新株の発行額は[5]ではなく[6]に増加。
・株価が上昇した結果、新株の発行額は[5]ではなく[6]に増加。
(2)権利確定日から権利行使までの株価上昇
(2)権利確定日から権利行使までの株価上昇
(2)権利確定日から権利行使までの株価上昇
他の条件は同一として、権利確定日から権利行使までの間に企業の株価が上昇すると、
(2)権利確定日から権利行使までの株価上昇
は補論1図表2-2-1~2-2-3のように修正され
他の条件は同一として、権利確定日から権利行使までの間に企業の株価が上昇すると、
他の条件は同一として、権利確定日から権利行使までの間に企業の株価が上昇すると、
雇用者ストックオプションの公正価値は増加する。ここで、権利確定日から1年を経過し
他の条件は同一として、権利確定日から権利行使まで
る。
雇用者ストックオプションの公正価値は増加する。ここで、権利確定日から1年を経過し
雇用者ストックオプションの公正価値は増加する。ここで、権利確定日から1年を経過し
の間に企業の株価が上昇すると、雇用者ストックオプシ
結局、雇用者報酬は不変である。上記の期間における
た時点で当該企業の株価が上昇し、雇用者ストックオプションの公正価値が[2]から[3]
た時点で当該企業の株価が上昇し、雇用者ストックオプションの公正価値が[2]から[3]
た時点で当該企業の株価が上昇し、雇用者ストックオプションの公正価値が[2]から[3]
ョンの公正価値は増加する。ここで、権利確定日から
1
雇用者ストックオプションの公正価値の増加は、その増
へと増加したものと想定しよう。この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
へと増加したものと想定しよう。この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
年を経過した時点で当該企業の株価が上昇し、雇用者ス
加時点で認識される。そしてそれに起因する調整勘定・
へと増加したものと想定しよう。この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
結局、雇用者報酬は不変である。上記の期間における雇用者ストックオプションの公正
結局、雇用者報酬は不変である。上記の期間における雇用者ストックオプションの公正
トックオプションの公正価値が[2]から[3]へと増加
再評価勘定の記録も「金融派生商品」に発生する。それ
結局、雇用者報酬は不変である。上記の期間における雇用者ストックオプションの公正
価値の増加は、その増加時点で認識される。そしてそれに起因する調整勘定・再評価勘定
したものと想定しよう。この場合、図表2-1~2-3
以外の点についての議論の本質は本論と同じである。
価値の増加は、その増加時点で認識される。そしてそれに起因する調整勘定・再評価勘定
価値の増加は、その増加時点で認識される。そしてそれに起因する調整勘定・再評価勘定
20
20
20
- 37 -
の記録も「金融派生商品」に発生する。それ以外の点についての議論の本質は本論と同じ
の記録も「金融派生商品」に発生する。それ以外の点についての議論の本質は本論と同じ
の記録も「金融派生商品」に発生する。それ以外の点についての議論の本質は本論と同じ
である。
である。
である。
補論1図表2-2-1 雇用者報酬
補論1図表2-2-1 雇用者報酬
補論1図表2-2-1 雇用者報酬
2006 2007 2008 2009 2010 2011
補論1図表2-2-1 雇用者報酬
2007
2008 2009 2010 2011
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
+1
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
+1
2007
2008 2009 2010 2011
雇用者報酬(家計・受取)
+1
+1
補論1図表2-2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
補論1図表2-2-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-3
預金 取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-3
3
3
3
3
3
0
預金 残高
残高
3
3
3
3
3
0
取引額
-3
取引額 +1
+1
-2
預金
その他 残高
取引額 +1
+1
-2
3
3
3
3
3
0
1
2
0
その他 残高
1
2
0
取引額
+1
-2
金融資産 その他 残高
取引額 +1
+2
-3
金融資産 金融派 残高
取引額
+2
-3
1
2
20
3
3
0
金融派 残高
残高
2
3
3
0
金融資産 生商品
取引額
+2
-3
調整額
+1
生商品
金融派 調整額
+1
残高
2
3
3
0
+6
生商品
株式 取引額
+6
調整額
+1
残高
6
株式 取引額
残高
6
+6
株式 取引額
残高
6
補論1図表2-2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表2-2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
補論1図表2-2-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
+3
金融資産 預金 取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
+3
3
金融資産 預金 残高
残高
3
取引額
+3
+1
+1
-2
金融資産 その他
預金 取引額
取引額
+1
+1
-2
残高
3
1
2
0
その他 残高
残高
1
2
0
取引額
+1
+1
-2
取引額
+2
-3
その他
金融派 残高
取引額
+2
-3
1
2
負債
20
3
3
0
金融派 残高
生商品
負債
残高
2
3
3
0
取引額
+2
-3
+1
生商品 調整額
金融派
調整額
+1
負債
残高
2
3
3
0
取引額
+6
生商品 取引額
株式
+6
調整額
+1
残高
6
株式
残高
6
+6
株式 取引額
・権利確定日から1年を経過した時点で株価が上昇し、雇用者ストックオプション総額の公
残高
6
・権利確定日から1年を経過した時点で株価が上昇し、雇用者ストックオプション総額の公
正価値が[2]から[3]へ上昇。
正価値が[2]から[3]へ上昇。
・当該時点において、金融派生商品の公正価値を[3]として計上。
・権利確定日から1年を経過した時点で株価が上昇し、雇用者ストックオプション総額の公
・当該時点において、金融派生商品の公正価値を[3]として計上。
・同時に調整勘定・再評価勘定に調整額[1]を計上。
正価値が[2]から[3]へ上昇。
・同時に調整勘定・再評価勘定に調整額[1]を計上。
・株価が上昇した結果、新株の発行額は[5]ではなく[6]に増加。
・当該時点において、金融派生商品の公正価値を[3]として計上。
・株価が上昇した結果、新株の発行額は[5]ではなく[6]に増加。
・同時に調整勘定・再評価勘定に調整額[1]を計上。
・株価が上昇した結果、新株の発行額は[5]ではなく[6]に増加。
用者ストックオプションの公正価値が[2]から[1]へ
3.権利の失効
と減少し、その後、回復せずに権利行使期限の 2013 年
3.権利の失効
3.権利の失効
を迎えたものと想定しよう。簡略化のため、権利確定日
3.権利の失効
本論では、基本的に、雇用者ストックオプションを付与された全員が行使するものと想
本論では、基本的に、雇用者ストックオプションを付与された全員が行使するものと想
本論では、基本的に、雇用者ストックオプションを付
以降、権利行使した者はいなかったものとする。この場
本論では、基本的に、雇用者ストックオプションを付与された全員が行使するものと想
定した。しかしながら、実際は、権利確定日を迎えながらも、株価の低迷等から権利行使
与された全員が行使するものと想定した。しかしながら、
合、図表2-1~2-3は補論1図表3-1~3-3の
定した。しかしながら、実際は、権利確定日を迎えながらも、株価の低迷等から権利行使
定した。しかしながら、実際は、権利確定日を迎えながらも、株価の低迷等から権利行使
実際は、権利確定日を迎えながらも、株価の低迷等から
ように修正される。
を見送ることもありうる。以下、本論2.における説明例の前提を、
「権利の失効」を考慮
を見送ることもありうる。以下、本論2.における説明例の前提を、
「権利の失効」を考慮
権利行使を見送ることもありうる。以下、本論
2.にお
結局、家計は、株価急落時(2009
年)と権利行使期
を見送ることもありうる。以下、本論2.における説明例の前提を、
「権利の失効」を考慮
する形に拡張する。結論としては、本論における議論の本質に影響はないことを確認でき
する形に拡張する。結論としては、本論における議論の本質に影響はないことを確認でき
ける説明例の前提を、
「権利の失効」を考慮する形に拡
限(2013 年)においてキャピタルロスを蒙ることとな
する形に拡張する。結論としては、本論における議論の本質に影響はないことを確認でき
る。
る。
張する。結論としては、本論における議論の本質に影響
るが、雇用者報酬は不変である。それ以外の点について
る。
ここで、権利確定日から1年後、株価の急落により雇用者ストックオプションの公正価
はないことを確認できる。
の議論の本質は本論と同じである。
ここで、権利確定日から1年後、株価の急落により雇用者ストックオプションの公正価
ここで、権利確定日から1年後、株価の急落により雇用者ストックオプションの公正価
ここで、権利確定日から
1 年後、株価の急落により雇
値が[2]から[1]へと減少し、その後、回復せずに権利行使期限の
2013 年を迎えたものと
値が[2]から[1]へと減少し、その後、回復せずに権利行使期限の 2013 年を迎えたものと
値が[2]から[1]へと減少し、その後、回復せずに権利行使期限の
2013 年を迎えたものと
想定しよう。簡略化のため、権利確定日以降、権利行使した者はいなかったものとする。
想定しよう。簡略化のため、権利確定日以降、権利行使した者はいなかったものとする。
想定しよう。簡略化のため、権利確定日以降、権利行使した者はいなかったものとする。
この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
結局、家計は、株価急落時(2009 年)と権利行使期限(2013 年)においてキャピタルロ
結局、家計は、株価急落時(2009 年)と権利行使期限(2013 年)においてキャピタルロ
結局、家計は、株価急落時(2009 年)と権利行使期限(2013 年)においてキャピタルロ
スを蒙ることとなるが、雇用者報酬は不変である。それ以外の点についての議論の本質は
スを蒙ることとなるが、雇用者報酬は不変である。それ以外の点についての議論の本質は
スを蒙ることとなるが、雇用者報酬は不変である。それ以外の点についての議論の本質は
本論と同じである。
本論と同じである。
本論と同じである。
21
21
21
- 38 -
補論1図表3-1 雇用者報酬
補論1図表3-1 雇用者報酬
補論1図表3-1 雇用者報酬
2006 2007 2008 2009
・・・
2013
補論1図表3-1 雇用者報酬
2007
2008 2009
・・・
2013
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
+1
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
+1
2007
2008 2009
・・・
2013
雇用者報酬(家計・受取)
+1
+1
補論1図表3-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表3-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表3-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009
・・・
2013
補論1図表3-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
・・・
2013
取引額 2006 2007 2008 2009
預金 取引額 2006 2007 2008 2009
・・・
2013
3
3
3
3
3
3
預金 残高
残高
3
3
3
3
3
3
取引額
取引額
+1
+1
-2
預金 取引額 +1
その他
+1
-2
残高
3
3
3
3
3
3
1
2
0
その他 残高
1
2
0
取引額
+1
-2
金融資産 その他 残高
取引額 +1
+2
金融資産 金融派 残高
取引額
+2
1
2
02
1
1
0
金融派 残高
残高
2
1
1
0
金融資産 生商品
取引額
+2
調整額
-1
-1
生商品
金融派 調整額
-1
-1
残高
2
1
1
0
生商品 取引額
株式
調整額
-1
-1
残高
株式 取引額
残高
株式 取引額
残高
補論1図表3-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表3-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009
・・・
2013
補論1図表3-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表3-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
・・・
2013
取引額 2006 2007 2008 2009
金融資産 預金 取引額 2006 2007 2008 2009
・・・
2013
金融資産 預金 残高
残高
取引額
取引額 +1
+1
-2
金融資産 預金
その他 残高
取引額 +1
+1
-2
1
2
0
その他 残高
残高
1
2
0
取引額 +1
+1
-2
取引額
+2
その他
金融派 残高
取引額
+2
1
2
02
負債
1
1
0
金融派 残高
生商品
負債
残高
2
1
1
0
取引額
+2
調整額
-1
-1
生商品
金融派 調整額
-1
-1
負債
残高
2
1
1
0
生商品
株式 取引額
調整額
-1
-1
株式 取引額
残高
残高
株式 取引額
・権利確定日から1年後の2009年に株価が急落。これにより雇用者ストックオプションの公正
残高
・権利確定日から1年後の2009年に株価が急落。これにより雇用者ストックオプションの公正
価値は[2]から[1]へ半減。
価値は[2]から[1]へ半減。
・このため権利行使できずに権利行使期限の2013年を迎え、そのまま失効。
・権利確定日から1年後の2009年に株価が急落。これにより雇用者ストックオプションの公正
・このため権利行使できずに権利行使期限の2013年を迎え、そのまま失効。
価値は[2]から[1]へ半減。
・このため権利行使できずに権利行使期限の2013年を迎え、そのまま失効。
4.自社株割り当てによる権利行使への対応
4.自社株割り当てによる権利行使への対応 はないことを確認できる。
4.自社株割り当てによる権利行使への対応
この場合、図表2-1~2-3は補論1図表4-1~
4.自社株割り当てによる権利行使への対応
本論では、役職員による雇用者ストックオプションの権利行使に対して、企業は新株発
本論では、役職員による雇用者ストックオプションの権利行使に対して、企業は新株発
4-3のように修正される。
本論では、役職員による雇用者ストックオプションの権利行使に対して、企業は新株発
行により対応している。実際は、このほか、予め取得しておいた自社株割り当てにより対
行により対応している。実際は、このほか、予め取得しておいた自社株割り当てにより対
本論では、役職員による雇用者ストックオプションの
結局、雇用者報酬は不変であり、企業の金融資産・負
行により対応している。実際は、このほか、予め取得しておいた自社株割り当てにより対
応することもできる。以下、本論2.における説明例を、新株発行ではなく「自社株割り
権利行使に対して、企業は新株発行により対応している。
債のうち、負債の株式増加に代えて、資産の株式が減少
応することもできる。以下、本論2.における説明例を、新株発行ではなく「自社株割り
応することもできる。以下、本論2.における説明例を、新株発行ではなく「自社株割り
当て」へと変更する。結論としては、本論における議論の本質に影響はないことを確認で
実際は、このほか、予め取得しておいた自社株割り当て
することとなる。それ以外の点についての議論の本質は
当て」へと変更する。結論としては、本論における議論の本質に影響はないことを確認で
により対応することもできる。以下、本論
2.における
本論と同じである。
当て」へと変更する。結論としては、本論における議論の本質に影響はないことを確認で
きる。
きる。
説明例を、新株発行ではなく「自社株割り当て」へと変
なお、一般的には、自社株割り当てであれば、株式数
きる。
この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
更する。結論としては、本論における議論の本質に影響
の増加に伴う「希薄化」を避けることができるとされる。
この場合、図表2-1~2-3は次のとおり修正される。
結局、雇用者報酬は不変であり、企業の金融資産・負債のうち、負債の株式増加に代え
結局、雇用者報酬は不変であり、企業の金融資産・負債のうち、負債の株式増加に代え
結局、雇用者報酬は不変であり、企業の金融資産・負債のうち、負債の株式増加に代え
て、資産の株式が減少することとなる。それ以外の点についての議論の本質は本論と同じ
て、資産の株式が減少することとなる。それ以外の点についての議論の本質は本論と同じ
て、資産の株式が減少することとなる。それ以外の点についての議論の本質は本論と同じ
である。
である。
である。
なお、一般的には、自社株割り当てであれば、株式数の増加に伴う「希薄化」を避ける
なお、一般的には、自社株割り当てであれば、株式数の増加に伴う「希薄化」を避ける
なお、一般的には、自社株割り当てであれば、株式数の増加に伴う「希薄化」を避ける
ことができるとされる。
ことができるとされる。
ことができるとされる。
- 39 -
22
22
22
補論1図表4-1 雇用者報酬
補論1図表4-1 雇用者報酬
補論1図表4-1 雇用者報酬
補論1図表4-1 雇用者報酬
2006 2007 2008 2009 2010 2011
2007
2008 2009 2010 2011
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
+1
2007
2008 2009 2010 2011
雇用者報酬(家計・受取) 2006
+1
+1
雇用者報酬(家計・受取) +1
+1
補論1図表4-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表4-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表4-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表4-2 家計の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-3
預金 取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
-3
残高
3
3
3
3
3
0
預金 取引額
-3
3
3
3
3
3
0
預金 残高
取引額 +1
+1
-2
その他 取引額
残高
3
3
3
3
3
0
+1
+1
-2
残高
1
2
0
金融資産 その他 残高
取引額 +1
+1
-2
1
2
0
金融派 取引額
+2
-2
金融資産 その他
残高
1
2
0
取引額
+2
-2
金融資産 金融派
生商品 残高
2
2
2
0
金融派
取引額
+2
-2
生商品 残高
2
2
2
0
取引額
+5
株式 取引額
生商品
残高
2
2
2
0
+5
5
株式 残高
取引額
+5
残高
5
株式
残高
5
補論1図表4-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表4-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表4-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
補論1図表4-3 法人の資金運用・調達および金融資産・負債
2006 2007 2008 2009 2010 2011
取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
+3
預金 取引額 2006 2007 2008 2009 2010 2011
+3
残高
3
預金
金融資産
取引額
+3
残高
3
取引額
-5
金融資産 預金
株式 残高
3
取引額
-5
金融資産 株式 残高
5
5
5
5
5
0
取引額
-5
残高
5
5
5
5
5
0
株式 取引額 +1
+1
-2
その他 残高
5
5
5
5
5
0
取引額 +1
+1
-2
残高
1
2
0
その他 取引額 +1
負債
+1
-2
残高
1
2
0
金融派 取引額
その他
+2
-2
負債
残高
1
2
0
金融派 残高
取引額
+2
-2
負債
生商品
2
2
2
0
金融派
取引額
+2
-2
生商品 残高
2
2
2
0
生商品 残高
・役職員による権利行使に対して、企業は、予め取得していた自社株を割り当てることで対
2
2
2
0
・役職員による権利行使に対して、企業は、予め取得していた自社株を割り当てることで対
応。
応。
・役職員による権利行使に対して、企業は、予め取得していた自社株を割り当てることで対
応。
23
23
23
- 40 -
続期間が延びたり昇給に伴い将来の支給額が増加する場
補論2:退職金代替の雇用者ストック
オプションの取扱い
合、退職金代替の権利未確定雇用者ストックオプション
であれば、途中退職者の発生が当初の想定と異なる場合、
など)。さらに両者とも、実際に支給されるまでは、自
1.でも説明したとおり、雇用者ストックオプション
身の資産であるとはいえ、家計が自由に処分することは
の一部は退職金の代替として付与されている。実際、参
できない点も共通している。これに対して相違点は、退
考資料において示すとおり、わが国における雇用者スト
職給付に備えた資金の総額が積み立てられるまでの時間
ックオプションのおよそ四分の一程度は退職金代替と考
的経路である。前者は、各時点においてそれまでに既に
えられ、その相対的な大きさは無視し得ないものである。 発生しており将来の給付が確実視される金額が計上され
そこで、この退職金代替の雇用者ストックオプションの
る。一方、後者は、予め付与総額が想定されたうえで、
金融勘定における取扱いに関して、以下、整理する。
複数年に亘って段階的に付与される。また、想定よりも
2008SNA では、将来支払われると見積もられる退職
給付額(一時金+年金形式で支給されるもの)は、金融
勘定の「年金準備金」として計上される
22、
23
。例えば、
早く、例えば対象者が現時点で退職した場合、前者では、
それまでの積立相当分を退職金として受け取ることがで
きるが、後者の場合、権利確定日を迎えていないことか
企業が将来の退職給付債務の支払に備えて年金資産とし
ら何も得られない(実質的に退職金はゼロ。企業側では、
て国債を保有している場合、2008SNA 上は、その国債
それまでの積立相当分は戻入される)
。また、自身の資
は法人の保有ではなく企業年金の保有(資産)として記
産として自由に処分できるタイミングについても、前者
録され、同時に企業年金の負債に「年金準備金」が記録
は退職後、後者は権利確定日以降という相違がある。こ
される。さらにその「年金準備金」は家計の資産として
うした類似点と相違点を比較すると、相違点はいずれも
計上される。そもそも 2008SNA が、
「年金準備金」を「そ
技術的なものであり、本質的には類似点の方がかなり大
の他」に含めることなく独立した取引項目としているの
きいものと考えられる。
は、その目的、つまりこれまでの労働の対価や現在の積
こうした整理を前提に、2008SNA の理念を忖度する
み立ての結果として将来支払いを受けることが見込まれ
ならば、権利未確定雇用者ストックオプションのうち退
る金銭債権、という性質に鑑みたものと考えられる。
職金代替分については、その目的に鑑み「年金準備金」
この間、付与日から権利確定日までの間における雇用
に振り替えることは十分な合理性を有すると考えられる。
者ストックオプション(以下、権利未確定雇用者ストッ
すなわち、観念上、2008SNA には商品性に基づく分類
クオプション)は、それが給与・賞与代替であれ退職金
基準と目的に基づく分類基準とが併存している。そうし
代替であれ、一律、金融勘定の「その他」として計上す
た中にあって、
(退職金代替分を含めて)権利未確定雇
ることとされている。
用者ストックオプションを「その他」に計上しているの
ここで、2008SNA の年金準備金と退職金代替の権利
は、あくまで雇用者ストックオプションの商品性に着目
未確定雇用者ストックオプションの類似点および相違点
した分類であるが、これに対して、その目的に着目して
を確認しよう。最大の類似点は、言うまでもなくどちら
「年金準備金」に分類するという整理も(ひとつの考え
も退職給付として支給される点である。加えて、退職前
方としては)十分に可能と考えられる。実際にこのよう
の期間(勤務継続中)において、支給額に影響を与える
な変更を行う場合、金融勘定における退職金代替の権利
ような事象が生じた場合、退職給付に備えた資金の総額
未確定雇用者ストックオプションの記録方法は次のとお
は、両者とも、将来の支給が見込まれる金額に調整され
り修正される。
る(典型的には、2008SNA の年金準備金であれば、勤
22
2008SNA は次のとおり記している(なお、ここでは取引項目は明示されていないが、その性格に鑑みれば「年金準備金」と解される)。
Chapter 11: The financial account.
6. Insurance, pension and standardized guarantee schemes
11.107 Pension entitlements show the extent of financial claims both existing and future pensioners hold against either their employer or a fund
designated by the employer to pay pensions earned as part of a compensation agreement between the employer and employee.
23
企業会計上は、年金資産および退職給付引当金に未認識債務を加えたものが、上記「年金準備金」に相当する。
- 41 -
まで雇用者ストックオプションの商品性に着目した分類であるが、これに対して、その目
的に着目して「年金準備金」に分類するという整理も(ひとつの考え方としては)十分に
可能と考えられる。実際にこのような変更を行う場合、金融勘定における退職金代替の権
利未確定雇用者ストックオプションの記録方法は次のとおり修正される。
補論2図表1 各部門の金融資産・負債の変化
補論2図表1 各部門の金融資産・負債の変化
[変更前]
法人
資産
家計
負債
資産
その他
負債
その他
[変更後]
法人
資産
企業年金
負債
資産
家計
負債
年金準備金
その他
資産
負債
年金準備金
その他
ところで、補論2で提案した変更は、そもそも現在の 2008SNA の記述と明確に対立して
いるわけではない。2008SNA の依拠する考え方を丁寧に解釈すれば、むしろ取扱いを変更す
るものとみられる。つまり、補論 2 の提案は、2008SNA
ところで、補論 2 で提案した変更は、そもそも現在の
る方が体系全体としての整合性が高まるものとみられる。
つまり、補論2の提案は、2008SNA
2008SNA
の記述と明確に対立しているわけではない。 を「変更」するものというよりも「精緻化」するもので
2008SNA
の依拠する考え方を丁寧に解釈すれば、むし
あり、SNA 体系の理論的な発展に資するものと言える。
を「変更」するものというよりも「精緻化」するものであり、SNA
体系の理論的な発展に資
この点に関する今後の議論が期待される 24。
ろ取扱いを変更する方が体系全体としての整合性が高ま
するものと言える。この点に関する今後の議論が期待される24。
24
現在、わが国の国民経済計算における退職給付の取扱いは基本的に 1993SNA に準拠している。すなわち退職給付に関
しては、①(補論2で採り上げた)退職金代替の雇用者ストックオプションを含めず、②退職一時金、③年金基金から
の給付を計上しており、また、②を無基金雇用者社会保険給付と位置付けたうえで、所得支出勘定において現金主義で
記録している。この間、2008SNA は、7.68-7.70 Employers' imputed non-pension contributions において、所得支出勘
定における②の取扱いを見直し、発生主義で記録するよう求めている。わが国の国民経済計算の 2008SNA への移行に際
して、この点をどのように整理すべきかについては別稿に譲るが、仮に退職金代替の雇用者ストックオプションの取扱
いを補論2のような形で見直す場合は、この問題との整合性に十分配慮する必要がある。なお、②、③に関する所得支
出勘定におよび金融勘定における現行の取扱いについては、内閣府経済社会総合研究所[2006]および同[2007]、日本銀
行調査統計局[2011c](資金循環統計に関する説明であるが、その内容は金融勘定にも共通する)、を参照。
25
24
現在、わが国の国民経済計算における退職給付の取扱いは基本的に 1993SNA に準拠している。すなわち退職給付に関しては、①(補
論 2 で採り上げた)退職金代替の雇用者ストックオプションを含めず、②退職一時金、③年金基金からの給付を計上しており、また、
②を無基金雇用者社会保険給付と位置付けたうえで、所得支出勘定において現金主義で記録している。この間、2008SNA は、7.68-7.70
Employers' imputed non-pension contributions において、所得支出勘定における②の取扱いを見直し、発生主義で記録するよう求めている。
わが国の国民経済計算の 2008SNA への移行に際して、この点をどのように整理すべきかについては別稿に譲るが、仮に退職金代替の
雇用者ストックオプションの取扱いを補論 2 のような形で見直す場合は、この問題との整合性に十分配慮する必要がある。なお、②、
③に関する所得支出勘定におよび金融勘定における現行の取扱いについては、内閣府経済社会総合研究所[2006]および同[2007]、
日本銀行調査統計局[2011c](資金循環統計に関する説明であるが、その内容は金融勘定にも共通する)、を参照。
- 42 -
て年 1 回発行される所得明細に係る情報を収集しており、
補論3:海外における雇用者ストック
オプションの推計
雇用者ストックオプションに係る所得もこの中で捕捉さ
れている(Canada Revenue Agency[1996])。カナダ統計
局では、この情報を利用して雇用者ストックオプション
現在、各国は 2008SNA の導入に向け作業を進めてい
に係る所得を推計している。
る最中にあり、雇用者ストックオプションの取り扱いに
ただし、もともと課税を目的とした情報収集であるこ
関して具体的に説明している国は少ない。そうした中に
とから、記録時点は雇用者ストックオプションによる利
あって、オーストラリアとカナダは 2008SNA の導入に
益が確定した時点、つまり権利行使時点となる。また記
向けて先行しているほか、アメリカは自国における雇用
録される所得も、行使時点における「時価-権利行使価
者ストックオプションの取り扱いに関して検討資料を公
格」となる。つまり、権利確定後に発生した公正価値の
表している。そこで、以下では、上記 3 国における雇用
上昇も含めて所得として一時点で記録するものであり、
者ストックオプションの扱いを紹介する。
その記録時点も含めて、2008SNA が勧告している「付
与時点における公正価値を対象勤務期間に按分して計上
する」とは異なった手法である 25。
[オーストラリア]
オーストラリアは 2008SNA への対応が最も進んだ国
であり、既に 2008SNA に移行済みである。オーストラ
[アメリカ]
リア統計局は、現時点では、雇用者ストックオプション
ア メ リ カ に は、nonqualified stock options(NSOs) と
のうち国内で完結する取引については独自のサーベイ調
incentive stock options(ISOs)という 2 種類の雇用者スト
査(年次)により捕捉し、所得および金融勘定・金融派
ックオプションが存在する。NSOs は、雇用者ストック
生商品として計上しているが、海外企業が絡む取引は捕
オプションに係わる利益が給与所得として扱われ、付与
捉できておらず、
『国際基準より乖離しており今後の検
した企業にとっては当該額を損金として処理できるもの
討課題(ongoing research and divergence issues)
』
(Australian
である。一方 ISOs は、一定の条件を満たすことを条件
Bureau of Statistics[2009]
)と位置づけている。オース
として、雇用者ストックオプションに係る利益が(給与
トラリア統計局は、このような判断に至った理由として、 所得よりも税制上有利な)長期に亘るキャピタルゲイン
国際的な雇用者ストックオプション取引を的確に捕捉す
として扱われるものである。アメリカの SNA(NIPA)
ること自体そもそも難しく、特に海外企業の在豪子会社
では、このうち NSOs に係る、権利行使時の市場価格と
が海外親会社の株式を用いた雇用者ストックオプション
権利行使価格の差額が、雇用者報酬に計上されているが、
を付与する場合はその把握が一層困難である、としてい
ISOs は 計 上 で き て い な い(U.S. Bureau of Economic
る。
Analysis[2008]
)
。また NSOs に関する取り扱いも、カ
こうした問題はわが国においても同様に生じていると
ナダと同様、権利確定後に発生した公正価値の上昇も含
みられるが、本論でも整理したとおり、それに伴う歪み
めて所得として一時点で記録するものであり、その記録
の程度は許容範囲に収まると考えた。わが国とは異なり、 時点も含めて、2008SNA が勧告している「付与時点に
オーストラリア統計局がこの点に拘った背景としては、
おける公正価値を対象勤務期間に按分して計上する」と
オーストラリアの場合は、海外企業の在豪子会社のプレ
は異なった手法である 26。
アメリカの SNA 当局である U.S. Bureau of Economic
ゼンスが日本のそれと比べて相対的に大きかった、とい
Analysis <BEA> 自身も、上記の記録方法が理念的に不
う可能性が考えられる。
十分なものであることを認めている。こうした手法を採
[カナダ]
用せざるを得なかった背景は、基礎データとして利用し
カナダでは、カナダ歳入庁が、企業から役職員に対し
ている Quarterly Census of Employment and Wages (QCEW)
25
補論1図表2-2-1~2-2-3に従って整理すれば、2008SNA の勧告は「2006 年と 2007 年に毎年[1]の雇用者報酬を記録する
もの」であり、一方、カナダの手法は「2011 年の時点で雇用者報酬を[3]記録する手法」である。
26
脚注 25 と同様。なおアメリカの場合、雇用者ストックオプションのうち ISOs は捨象されており、2008SNA からの乖離はカナダ以上に
大きい。
- 43 -
(United States Department of Labor, Bureau of Labor
酬を把握することができないのである。
Statistics <BLS>)の制約である。QCEW は、税務情報に
こうした状況を踏まえ、BEA は、公表までの時間が
基づいて調査されている。このため、その利益が給与所
掛かり過ぎるとの理由からこれまで利用されてこなかっ
得として扱われる NSOs は「その他の報酬」の一部を構
た詳細な税務データの利用や、BLS が新たに公表を始
成するものとして捕捉されているが、給与所得とは無関
めた所得関連の試行データの活用を通じて、雇用者スト
27
係の ISOs は調査対象外となっている 。また NSOs を
「そ
ックオプションに係わる雇用者報酬の推計精度を高める
の他の報酬」の中から単独で抽出することはできない。
研究を続けるとしている。
この結果、概念上、NSOs のみを含む形でしか雇用者報
27
このほか、実際に調査を実施する州レベルでの問題として、(1) 課税上限額の問題から、NSOs による高額な報酬が適切に捕捉されてい
ない可能性や、(2) 本来、調査対象外であるはずの ISOs の一部が混入している可能性も指摘されている。
(U.S. Bureau of Economic Analysis[2008]脚注 11 より抜粋)Because the annual tax base for UI<unemployment insurance> wages and salaries
is capped at $7,000 per employee, states may have little incentive to follow up with firms to ensure correct reporting of special compensation items.
(U.S. Bureau of Economic Analysis[2008]脚注 14 より抜粋)However, some states also included the exercising of ISOs as wages and salaries.
- 44 -
参考資料:わが国における雇用者ストックオプションの概要
本資料は、筆者らが大手証券会社に対して実施したヒアリング結果の一部を取りまとめ
たものである。計数に関しては上場会社ベースであり、(法人企業統計調査には含まれてい
参考資料:わが国における雇用者ストックオプションの概要
る)未上場会社を含まない。
本資料は、筆者らが大手証券会社に対して実施したヒ
関しては上場会社ベースであり、
(法人企業統計調査に
1.雇用者ストックオプションの種類
アリング結果の一部を取りまとめたものである。計数に
1.雇用者ストックオプションの種類
は含まれている)未上場会社を含まない。
概要
割当の対象者
税制適格
租税特別措置法第 29 条の 2 に適合した 新株予約権の発行会社およびその子会
概要
割当の対象者
雇 用 者 ス ト ッ ク 雇用者ストックオプション。一定の条
社の取締役、執行役員、従業員等
1
件 を満たすことにより、権利行使時に 新株予約権の発行会社およびその子会社の取締
オプション 租税特別措置法第29条の2に適合した雇用者ス
税制適格
雇用者ストック トックオプション。一定の条件
非課税扱いとなる 2。 1を満たすこと 役、執行役員、従業員等
オプション
により、
権利行使時に非課税扱いとなる2。
税制非適格
税制適格ではない雇用者ストックオプ 特に制限はないが、税制適格の対象と
税制非適格
税制適格ではない雇用者ストックオプション。
税制適格の対象とならない
ならない監査役、社外協力者に付与さ
雇用者ストッ
ク ション。権利行使時に給与所得として 特に制限はないが、
2
2
雇用者ストック
権利行使時に給与所得として課税される
。
監査役、
社外協力者に付与されるケースが多い。
れるケースが多い。
オプション
課税される 。
オプション
(税制非適格)
権利行使価格が1円である雇用者スト 特に制限はないが、役員退職慰労金の
(税制非適格)
権利行使価格が1円である雇用者ストックオプ 特に制限はないが、役員退職慰労金の代替とし
株式報酬型
ックオプション。税制非適格雇用者ス 代替として採用されることが多いこと
株式報酬型
ション。税制非適格雇用者ストックオプション て採用されることが多いことから、取締役や執
雇 用 者 ス ト ッ ク トックオプションの一つであり、権利 から、取締役や執行役員に付与される
雇用者ストック の一つであり、権利行使時に給与所得として課
行役員に付与されるケースが多い。
2
オプション
行使時に給与所得として課税される
。
ケースが多い。
2
オプション
税される 。
1:①権利行使は付与決議後の日後2年を経過した日から当該付与決議の日後10年を経過する日までの間に行うこと
1: ①権利行使は付与決議後の日後
2 年を経過した日から当該付与決議の日後 10 年を経過する日までの間に行うこと
②権利行使により取得する株式の総額(権利行使価額×株式数)が一人当たり年間 1200 万円以下
②権利行使により取得する株式の総額(権利行使価額 × 株式数)が一人当たり年間 1200 万円以下
③権利行使価格が契約締結時の時価以上
③権利行使価格が契約締結時の時価以上
④権利行使に係る株式の譲渡又は新株の発行が会社法上の決議事項に反しないこと
⑤権利行使で取得された株式が、一定方法により証券会社等に保管の委託がなされること
④権利行使に係る株式の譲渡又は新株の発行が会社法上の決議事項に反しないこと
⑥雇用者ストックオプションを譲渡できないこととされていること
⑤権利行使で取得された株式が、一定方法により証券会社等に保管の委託がなされること
このほか、割当対象者が付与決議時に満たすべき要件(割当対象者の範囲)や、付与の調書の税務署長への提出等の
⑥雇用者ストックオプションを譲渡できないこととされていること
要件が定められている。
このほか、割当対象者が付与決議時に満たすべき要件(割当対象者の範囲)や、付与の調書の税務署長への提出等の要件が
2:権利行使により取得した株式の売却時に利益が出ていれば、その売却益(売却価格と権利行使価格の差)について株
定められている。
式譲渡益課税がなされる。
2: 権利行使により取得した株式の売却時に利益が出ていれば、その売却益(売却価格と権利行使価格の差)について株式譲渡
益課税がなされる。
2.雇用者ストックオプションの導入会社数
2.雇用者ストックオプションの導入会社数
市場別雇用者ストックオプション導入会社数(2009年度)
取引所
上場会社数
東京1部、大阪1部、名古屋1
部
1714
東京2部、大阪2部、名古屋2
部
703
東京マザーズ、大阪ヘラクレ
ス、名古屋セントレックス
357
札幌単独、札幌アンビシャス、
福岡単独、福岡Q-Board
JASDAQ、JASDAQ NEO
合計
60
864
3698
役員のみ
役員+従業員 役員+従業員
従業員のみ
(同じ内容) (異なる内容)
64
4%
15
2.1%
9
3%
1
1.7%
15
2%
104
3%
注1:従業員には子会社の役職員を含む。
注2:下段の%は各上場会社数との比率。
28
- 45 -
149
9%
23
3.3%
44
12%
1
1.7%
39
5%
256
7%
32
2%
1
0.1%
15
4%
0
0.0%
5
1%
53
1%
11
1%
2
0.3%
11
3%
0
0.0%
4
0%
28
1%
合計
256
15%
41
5.8%
79
22%
2
3.3%
63
7%
441
12%
3.雇用者ストックオプションの導入状況
(2006 年 5 月 1 日~ 2010 年 3 月 31 日 東京証券取引所適時開示情報発表分、延べ 2302 件・784 社)
(1)種類
・ 雇用者ストックオプションの四分の一程度は役員退職慰労金の代替として採用されることが多い株式報酬型。
一般1
73%
株式報酬型
27%
1:株式報酬型以外の雇用者ストックオプション
(2)権利確定日~権利行使期限
・ 株式報酬型は、役員の再任等の可能性を考慮して権利確定日から権利行使期限までの期間(権利行使可能期間)
を長く設定することが多い。
・ 一般の雇用者ストックオプションについて権利行使可能期間の平均を計算すると、4.66 年となる。
(件数、%)
一般1
01年
12年
23年
34年
45年
56年
67年
78年
89年
21
190
387
185
311
66
87
230
22
119
11
7
0
32
7
12
9
2
25
3
11
9
0
23
257
253
15
12
株式報酬型
91020- 30年 その
10年 20年 30年
他
1:株式報酬型以外の雇用者ストックオプション
(3)割当対象者
・ 取締役のみならず従業員や子会社役員まで幅広く雇用者ストックオプションが割り当てられている。
(件数、%)
取締役・監査役
779
34%
取締役・監査役・従業員等
765
33%
子会社役員を含む
677
30%
外部関係者を含む
77
3%
1
1:例えば、100% 出資の子会社(非上場)の場合、当社の
株式を雇用者ストックオプションの対象とすることはで
きない(取得した株式を市場で売却できない)ため、親
会社の株式が用いられる。
注:資料の性格上、参考資料の 1. ~ 3. の正確性、完全性を保証するものではない点、留意されたい。
資料:大和証券キャピタルマーケッツ
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【参考文献】
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行金融研究所ディスカッションペーパー No.2009-J-4、
2009 年 4 月
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日
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E)の推計方法(第 5 版)』、2006 年 7 月 12 日
内閣府経済社会総合研究所[2007]
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日本銀行調査統計局[2011a]『資金循環統計の解説』、2011
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、
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いて」、2011 年 3 月 23 日
日本銀行調査統計局経済統計課[2001]『入門 資金循環』東
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Implementation of new international statistical standards in
ABS National and International Accounts" September 2009
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Bulletin NO: IT-113R4 Benefits to Employee – Stock
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Eurostat[2004]"Employee Stock Options Paper for Advisory
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Issue Paper SNA/M1.04/11
European Commission, International Monetary Fund, Organisation
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2008" February 2009
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[2007]"The Full Set of Consolidated Recommendations The
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