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学校教育指導の重点

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学校教育指導の重点
平成
28 年度
学校教 育指導 の重点
現行の学習指導要領は、全面実施から小学校は6年目、中学校は5年目、高等学校は4年目を迎えま
した。各学校においては、学習指導要領の趣旨を再確認し、地域、学校の実態や子どもの発達の段階に
応じて創意工夫を生かした特色ある教育活動を展開するとともに、知・徳・体の調和のとれた力の育成
を重視した適切な教育課程を編成・実施し改善していくことが求められます。
そこで神奈川県教育委員会では、幼・小・中学校において教育要領、学習指導要領の理念の実現をめ
ざし、学校教育指導の重点を次のように定めました。
子どもの「学び」をつなげる教育課程の編成
~発達の段階を踏まえて~
幼稚園における教育は、小学校や中学校につながる学校教育の始まりとして、学校教育法において義
務教育及びその後の教育の基礎を培うものとして位置付けられています。さらに、小学校の学習指導要
領においても、幼稚園との連携について示されています。
このことは、校種間の「つながり」が今まで以上に重視され、子どもの発達の段階を踏まえた指導の
重要性を示唆したものといえます。
こうしたことを踏まえ、各学校においては、今までの教育活動の成果と課題を学校全体で十分検証し、
あわせて、県学習状況調査や全国学力・学習状況調査等の客観的なデータを十分活用することを通して、
指導方法の工夫・改善を進め、学習意欲の向上に努めるなど、適切な教育課程の編成の下、「生きる力」
の育成に努めることが求められます。
神奈川県教育委員会では、各学校の適切な教育課程の編成及び実施とその評価の充実を図るため、次
のことを重点項目として推進します。
Ⅰ 一人ひとりの教育的ニーズに応え、共に育ち合う支援教育の充実
~できるだけすべての子どもが同じ場で共に学び共に育つことをめざすインクルーシブ教育の推進~
「いじめ・暴力行為対策の推進と不登校への対応」「特別支援教育の充実」「国際教育の充実」
等の課題を踏まえ、教育相談の充実を図り支援教育を推進します。また、共生社会の実現に向け、
インクルーシブ教育を推進します。(詳細はp.2~3)
Ⅱ 幼稚園教育指導の重点
平成 20 年 3 月に告示された幼稚園教育要領から7年が経過する中、改めて基本に立ち返り、
改定の趣旨や内容を踏まえた教育課程の適切な編成を行い、着実な取組に努めることが大切です。
幼稚園では、幼児の生活や遊びを通して人とかかわる力、思考力、感性や表現する力をはぐく
むなど、生きていくための基礎を培うことが大切です。
また、小学校以降の「生きる力」の育成につながるように、幼児の主体的な活動としての遊び
を十分に確保することが重要になります。(詳細はp.4~7)
Ⅲ 小学校・中学校教育指導の重点
子どもたち一人ひとりに「生きる力」をはぐくむため、学習指導要領の円滑な実施に向け、そ
の趣旨に基づいた適切な教育課程の編成及び実施に努めるとともに、校種間の連携を図り、「確
かな学力の向上」「豊かな人間性の育成」「健康・体力つくり」を推進します。
その際、一人ひとりのニーズに応じた支援教育の理念を基本に据え、家庭・地域の人々と連携
して取り組みます。(詳細は p.8~12)
Ⅳ 特別支援学校教育指導の重点
「生きる力」の育成をめざし、個が生きる多様で柔軟な教育の推進を図り「自立と社会参加を
めざす教育課程編成の工夫・改善」「いのちを大切にする心と健やかな体をはぐくむ教育の充実」
「幼・小・中・高等部を通じたキャリア教育の推進」に努めます。(詳細p.13~15)
-1-
Ⅰ
一人ひとりの教育的ニーズに応え、共に育ち合う支援教育の充実
~できるだけすべての子どもが同じ場で
共に学び共に育つことをめざすインクルーシブ教育の推進~
支援教育とは、障害の有無にかかわらず、子どもたち一人ひとりの教育的ニーズに適切に対応し
ていくことを学校教育の根幹に据えた教育のことです。
支援教育を推進していく際に重要なことは、教職員一人ひとりが、子どもたち一人ひとりのニー
ズをきめ細かく把握し、情報を共有化した上で、状況に応じて校内だけでなく関係機関と連携し
ながら対応していくための「校内支援体制づくり」を進めていくことです。
さらに、支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、できるだけすべての子どもが同じ場で
共に学び共に育つことをめざすインクルーシブ教育を推進していく視点を持つことが大切です。
いじめ・暴力行為対策の推進と不登校への対応(支援教育の観点から)
いじめ・暴力行為や不登校に対しては、表面化した事象への対応だけに注意を奪われがちですが、個
々の事象の背景には、児童・生徒の特性や発達の課題、個人を取り巻く家庭・学校・社会環境に至るま
で様々な要因が考えられます。学校は、すべての児童・生徒に問題行動等につながる要因が潜在してい
る可能性があるということを常に念頭に置き、児童・生徒の発するサインを見逃さないよう、日ごろか
ら様々な方法により児童・生徒理解を着実に進め、問題行動等の早期発見に努める必要があります。ま
た、対応に当たっては、チーム支援を基本に、教員だけでなくスクールカウンセラーやスクールソーシ
ャルワーカーなど専門的視点からの助言を求めることや、関係機関等と役割を分担し、連携しながら支
援を行うなど、多様なかかわりによる支援を行うことが大切です。
特別支援教育の充実
発達障害を含む障害のある子どもたち一人ひとりの教育的ニーズを正確に把握し、学校全体で協力し
て必要な支援体制を整え、環境を整備し、教材や指導方法を工夫し、学校教育全体を通して一人ひとり
に適切な指導を行うように努めることが重要です。
国際教育の充実
「かながわ国際施策推進指針(第3版)」を踏まえ、指導資料等を活用しながら、外国につながりの
ある子どもたちの受け入れ体制の整備や、適応指導、日本語指導、進路指導及び教育相談等の支援の充
実に努めることが大切です。
また、児童・生徒一人ひとりが国際社会の一員として国際平和の実現と福祉の向上に貢献し、世界の
人々と心を開いて交流できる人間に育つよう、「国際教育」の積極的な推進を図ることが重要です。
教 育 相 談 の 充 実
一人ひとりに寄り添う教育相談は、子どもたちの様々な問題行動への予防的な役割を果たします。また、
保護者や子どもとの教育相談は、具体的な支援を考えていくケース会議につながっていきます。学校だけで
は解決できない課題が多い昨今、これからは教育相談機能を校内組織に明確に位置付け、教育相談コーディ
ネーターが核となり、必要に応じて学校外の人材を活用するなど協働チームを編制し、さらには関係機関と
の連携を図ることが重要です。
人
権 教
育
の 充
実
「かながわ人権施策推進指針(改定版)」に基づき、「人権教育ハンドブック」「人権学習ワークシー
ト集」等を活用しながら、一人ひとりの人権に配慮し、一人ひとりを大切にする教育を推進しましょう。
その際、児童・生徒が人権教育の本質を正しく理解し、人間尊重の精神を基盤として、人権感覚を身に付
け、子ども、女性、障害者、高齢者等に対するあらゆる差別をなくそうとする意欲と差別を克服する実践
力を培い、差別を許さない人間に育つよう、学校の教育活動全体を通して、その積極的な取組に努め、充
実を図ることが大切です。
-2-
○「支援シート」を活用した連携の推進
自らの力では解決することが難しい課題(教育的ニーズ)を抱える子どもたち一人ひとりを支える
ために、「支援シート」(個別の支援計画)を活用することが重要です。「支援シート」は子どもと
保護者を中心に、関係する機関が連携を図り、課題解決に向けてチームで取組を進めるためのツール
(道具)です。
○家庭・地域の人々、関係機関との連携の推進
一人ひとりの教育的ニーズに応え、共に育ち合う支援教育を推進するために、学校は家庭・地域の
人々、関係機関との連携を図ることが大切です。そのためには、地域の教育力を学校教育に生かすと
とともに、積極的に情報発信を行い、学校評価の推進・充実に努め、より開かれた学校、信頼される
学校づくりを進めることが必要です。
○開かれた学校、信頼される学校づくり
保護者や地域の人々、学校評議員等に学校の情報を積極的に提供し説明することによって、学校教
育への理解や協力を得るように努め、「開かれた学校、信頼される学校づくり」を推進することが大
切です。
そのことにより地域の人々との連携・交流を図り、互いの教育機能を高めながら、子どもたち一人
ひとりの豊かな人間性や社会性を育成するように努めることが必要です。学校が地域の人々の信頼に
応え、開かれたものとなるためには、教職員が、学校の教育活動の重点化された目標に対して自己評
価を行い、その結果を公表することが必要です。また、保護者や学校評議員等、地域の人々の声を聞
く学校関係者評価を行い、その結果を公表することに努め、理解や信頼を得るための取組を進めるこ
とが重要です。
○特別支援学校のセンター的機能の充実と活用
子どもたちを地域全体で支えていくためには、特別支援学校のセンター的機能を充実させるととも
に活用することが必要です。
各地域で、幼稚園、小・中学校と特別支援学校との連携を深めるとともに、特別支援学校は、その
専門性を高めることが大切です。
○地域の学校等との交流及び共同学習の推進
幼稚園、小・中学校と特別支援学校等が、交流及び共同学習を計画的・組織的に実施することによ
り、子どもたちの相互理解を促進することが大切です。
○教職員の人格的資質・情熱、指導力の向上をめざした研修・研究の充実
教育活動の活性化を図るため、教職員の自主的研修、園内・校内研修、初任者研修、教職経験者研
修等を通じて、保育、教科等の指導に関する研修はもとより、学校教育推進上の課題等についても積
極的に研修に努め、その研修の成果を日々の教育実践に反映するように工夫していくことが大切です。
また、学校の教育計画や諸課題との関連を考慮した園内・校内研修・研究計画を作成し、各校の実
態に即した研修・研究の内容や運営について創意工夫し、学校教育の充実を図ることが大切です。
あわせて、園内・校内研修・研究計画については、P―D-C-A(計画―実行―評価―改善)サイ
クルの下、年度途中においても点検・見直しを行い、改善・充実を図ることが重要です。
不祥事防止の徹底
安全で安心な学校
児童・生徒が安全で安心な学校生活を送るこ
とができるよう、また、事件・事故や災害等に
よる被害が発生しないよう、日ごろから、避難
訓練の実施、防災マニュアルの見直しや修正な
どを行い、安全確保に心がけ、防災・安全教育
を進めることが大切です。さらに、万一、不測
の事態が発生しても、早期に発見し、適切かつ
迅速に対応できる組織体制づくりが必要です。
教育は教職員と児童・生徒、保護者、地域の
人々との信頼関係の上に成り立つものです。教
職員一人ひとりが不祥事防止を自らの問題とし
て認識し、自覚と責任を持った綱紀保持に努め
ることが大切です。また、個人情報の管理や保
護、著作権の保護など、コンプライアンス(法
令遵守)の意義をしっかりと理解し、日々の教
育活動に当たることが大切です。
-3-
Ⅱ
幼稚園教育指導の重点
幼稚園教育の果たす役割は、生活や遊びなどの豊かな体験を通して、学ぶ力の基礎を育て、小学校以
降の学校教育のねらいである「生きる力」の育成へつなげていくことにあります。これは、生涯にわた
る人格形成の基礎を培う上で重要なことといえます。
平成 20 年3月の幼稚園教育要領の告示以降、各園では、幼児の発達や地域の実態に応じた適切な教
育課程を編成し実践する中で、その成果と課題を整理して日々の指導に努めています。
そこで県としてこの7年間の取組を整理し、平成28年度の幼稚園教育指導の重点を次の4点に定め
ました。
キーワード
発達やまなびの
連続性を踏まえた
幼稚園教育の充実
「連 続 性」
預かり保育と
子育て支援の
充実
4つの重点項目
重点項目
幼稚園生活と家庭生活
の連続性を踏まえた
幼稚園教育の充実
社会の変化に対応した
幼稚園教育の充実
発達やまなびの連
続性を踏まえた幼稚
園教育の充実
幼稚園教育と小学校教育の円滑な接続のために必要なこととして「小学校の教師
との意見交換や合同の研究の機会を設けること」「幼児と児童の交流の機会を設け
ること」が幼稚園教育要領では明確になっています。
幼児と児童の交流については、近年、各地区では地域の実態に応じた取組がされ
るようになってきました。しかし、該当教師が変わると交流等の意義が引き継がれ
ず交流を継続させることが難しいこと、園として組織的な取組となっていないこと
などの課題も指摘されています。そこで発達の連続性を踏まえた交流を推進するた
めに、次の 5 点についての教師同士の意見交換や合同研究を積極的に推進するな
ど工夫・改善が求められます。
小学校教育との連携・接続
小学校での学習や生活への適応の課題に基づき、小学校教育との円滑な接続を図り、幼稚園の教育の
成果を小学校へつなげることが大切です。
連携・接続を進めていくためには、幼稚園と小学校が連携の担当者を位置付けたり、教育相談コーデ
ィネーターを活用したりして組織として取り組むことが大切です。その際、小学校教師との意見交換、
合同研究、保育・授業参観、幼児・児童の交流などを通して、幼児と児童の実態や指導の在り方につい
て相互理解を深めることが重要です。
また、地域によっては園児の 8 割近くが私立幼稚園に在園していることなどを踏まえ、市町村教育委
員会が率先して、公立・私立の連携を図ることが必要です。
-4-
協同する経験の充実
幼児期から児童期への発達過程として「一人ひとりのまなび」から「協同した学び」へ、そして「学
級全体での学び」へと移行していきます。
幼稚園では、集団生活を通して自発性や主体性等を育てるとともに、人間関係を深め、幼児同士が共
通の目的を生み出し、協力し、工夫して実現していくという協同する経験を重ねることが重要になりま
す。
規範意識の芽生え
幼稚園教育要領・小中学校学習指導要領では、教育内容に関する主な改善事項の一つに道徳教育の充
実があげられ、中でも規範意識を養うことが重視されています。
幼稚園では、幼児自身が集団生活の中で起こる様々な葛藤やいざこざを体験することで、きまりや約
束を守ることの大切さに気付いていきます。園生活や遊びを通して幼児が人とのかかわりを深め、規範
意識の芽生えを培うことが大切です。
キャリア教育の芽生え
幼稚園では、遊びや生活を通して、教師や友達とのかかわりの中で自己の存在感を確認し、他者への
思いやりを深め、集団への参加意識を高めて、自立性、社会性、豊かな人間性等を育みます。こうして
自分を肯定的にとらえることは小学校以降のキャリア教育へとつながっていきます。
支援教育の充実
幼稚園の生活の中で一人ひとりの教育的ニーズを把握し、幼児のもてる力を高め、生活するうえでの
課題を改善し、適切な指導及び必要な支援を行うことが大切です。
その際、特別支援学校や関係機関などとの連携、支援のための個別指導計画の作成や教育相談コーデ
ィネーターを中心としたケース会議を行うなど、園としての組織的な対応が望まれます。
子どもを取り巻く環境の変化の中で、子どもの発達段階や、家庭や地域の教
社会の変化に対応し 育力の低下が問題となっています。家庭や地域の中で、子ども同士の遊びや地
た幼稚園教育の充実 域の人とのかかわりが少なくなり、子どもの生活体験の場が失われつつありま
す。こうしたことから幼稚園教育に対する期待は大きく、教師や友達などとか
かわりを通して、体験や言葉などに関する指導の充実が求められています。
体を動かす心地よさの体験
幼児期は、身体の諸機能が著しく発達する時期ですが、近年、家庭や地域において戸外で体を使って
遊ぶ経験が不足する傾向にあります。戸外での遊びの面白さに気付かないまま室内の遊びに偏りがちの
幼児も少なくありません。
幼稚園では、幼児の関心を戸外に向けながら戸外の空気に触れて活動するようにし、その楽しさや気
持ちよさを味わえるようにすることが求められます。
言語活動の充実
幼稚園では、教師や友達などとかかわったり、絵本や物語などを見たり聞いたりして、言葉を獲得し
ていきます。そして心動かす体験を通して様々な思いをもち、その気持ちを相手に伝え共有していきま
す。
-5-
このような体験は、言葉に対する感覚を養い、状況に応じた適切な言葉を表現できるようになる上で
も重要です。
思考力の芽生え
幼稚園では、幼児の発達の特性を踏まえ、幼児が主体的に活動し、友達とのかかわりや多様な体験を
通して考えることができるように、環境を構成し、援助していくことが必要です。
幼児が周りの環境とかかわりながら、自分なりの考えを持ったり、友達の考えに触れたりすることで
考えを生み出す喜びや楽しさを味わう体験は、小学校以降の生活や学習における思考力の基盤づくりに
つながっていきます。
食育の推進
幼稚園では、食べ物への興味や関心を高め、自ら進んで食べようとする気持ちが育つような環境の構
成や教師のかかわりが大切になってきます。また、教師や友達と一緒に食べることが楽しめるようにす
る体験を重ねていくことも大切です。
幼稚園生活と家庭生
活の連続性を踏まえ
た幼稚園教育の充
実
幼児は、幼稚園や家庭などの中で様々な人とかかわったり、様々な体験を重
ねたりしながら、いろいろなことを学びとっていきます。このことから、幼稚
園での生活と家庭などでの生活の連続性を踏まえた幼稚園教育の充実を図る
ことが重要です。
幼稚園では、家族のつながりや子育てが変容しているという現実を踏まえ
て、きめ細かな家庭との連携やその方法等に工夫・改善して取り組む必要があ
ります。
(子どもの育ちと5領域のイメージ図)
幼稚園教育
「生きる力」の基礎を育成
小学校以降の教育
「生きる力」
学びの芽の育成
領域
物事に自分からかかわろうと
する意欲を育てる。
「表現」
領域
領域
「健康」
一
一
人
ひ
と
り
の
一人
人ひ
ひと
とり
りの
の
子
ど
も
の
育
ち
子
子ど
ども
もの
の育
育ち
ち
「言葉」
領域
領域
「人間関係」
「環境」
確かな学力
豊かな心情の芽生えの育成
身近な人や環境とのかかわり
を通して、豊かな感性を育てる。
豊かな人間性
健全な心身の基礎の育成
安心して生活する中で、生活
に必要な習慣や態度を身に付け
るようにする。
※発達の側面から5つの領域を示しています。これらは、幼児が環境にかかわっ
て展開する具体的な活動を通して総合的に指導されるものです。
-6-
健康・体力
預かり保育と
子育て支援の充実
幼稚園教育の果たす役割として、教育課程に係る教育時間の終了後等に行う
教育活動や地域の子育て支援が位置付けられています。幼稚園の教育活動とし
ての「預かり保育」の適切な実施と、幼稚園の機能を生かした子どものよりよ
い育ちを実現する「子育ての支援」が求められています。
預かり保育
預かり保育については、通常の教育時間の前後や長期休業期間中などに、地域の実態や保護者の要請
に応じて、幼稚園が当該幼稚園の園児のうち希望者を対象に行う教育活動です。
実施の際には、適切な指導体制を整備し、教師の責任と指導の下、幼児の心身の負担に配慮しながら
教育課程との関連を図り、家庭や地域での幼児の生活に配慮した計画を作成しなければなりません。
また、地域の様々な資源を活用して、多様な体験が得られるようにするとともに、家庭との緊密な連
携を図り、幼児の生活リズムなどにも配慮することが重要です。
子育ての支援
幼児の家庭や地域での生活を含め、生活全体を豊かにし、健やかな成長を確保していくためには、幼
稚園が家庭や地域との連携を深め、地域の実態や保護者及び地域の人々の要請などを踏まえ、地域にお
ける幼児期の教育のセンターとしてその施設や機能を開放し、積極的な子育ての支援をしていく必要が
あります。
幼稚園は、子育てについての相談、情報提供、幼児と保護者との登園、保護者同士の交流の機会を提
供するなど、地域における幼児期の教育のセンターとしての役割を果たすように努めることが大切です。
今日的課題として
防災教育の推進
東日本大震災の教訓を踏まえ、子どもたちが自らのいのちを自らの力で守ることができるよう年間計
画の中に位置付け、学級活動、避難訓練等を通して、日ごろから防災に対する意識を高める取組が重要
です。
この時期の幼児には、基本的な対処の方法を確実に伝えるとともに、幼児自ら安全な行動ができるよ
うに、発達の実情に応じて指導を行う必要があります。
また、幼稚園として、地域や関係機関と協力して防災や安全等に関する実施体制の整備や危機管理マ
ニュアルを見直し・修正して実効性のあるマニュアルを作成しておくことが必要です。
学校評価の充実
学校評価は、学校運営の充実・改善を図るために教職員による自己評価や保護者・地域の人々の代表
等による学校関係者評価を通して保育内容の充実や活力ある学校づくりにつながります。
学校評価の結果を踏まえて、全教職員が教育の成果や課題を共有し、保育の充実に向けた取組を進め
ることが重要です。
-7-
Ⅲ
小学校・中学校教育指導の重点
教科指導と生徒指導の充実を図る
子どもたち一人ひとりに「生きる力」をはぐくむため、学習指導要領の趣旨に基づいた適切な教育課
程の編成・実施に努めるとともに、校種間の連携を図り、「確かな学力の向上」「豊かな人間性の育成」
「健康・体力つくり」の調和のとれた教育活動を推進します。
その際、一人ひとりのニーズに応じた支援教育の理念を基本に据え、家庭・地域の人々と連携して取
り組むことが大切です。
「確かな学力」の向上
学習指導要領及び学校の教育課程全体のねらいを理解し、各教科等の目標を達成
するために、計画的かつ効果的に日々の授業実践に取り組むことが必要です。その
際、小学校と中学校における学習内容の系統性を十分に踏まえた教育に取り組みま
しょう。
学習指導要領の趣旨に基づいた教育課程の適切な編成及び実施
学習指導要領の趣旨に基づいた教育課程の適切な編成・実施に努めることが重要です。
◆小学校及び中学校では、27 年度までの実施状況から成果と課題を明確にし、より充実した教育課程
の編成・実施に努めましょう。
◆すべての教科等で義務教育9年間の学習内容の系統性を踏まえ、
キーワード
知識・技能の習得とともに、発達の連続性を考慮した思考力・判断力・ 「系統性・連続性」
表現力等の能力をはぐくみ、主体的に学習に取り組む態度を養いましょう。
基礎・基本の確実な定着
「確かな学力」をはぐくむためには、基礎的な知識・技能及び知識等を活用する力をバランスよく育
成し、学習意欲を養うことが大切です。平成 27 年度全国学力・学習状況調査の結果から、本県では基
礎的な知識・技能に課題があると分かりました。こうしたことから、各学校においては、県教育委員会
で作成した「課題解決教材」などを参考に、指導事項・指導内容に応じた適切な教材の開発や指導方法
の工夫・改善に努めることが必要です。また、家庭での学習習慣の確立など、個に応じた家庭学習の在
り方について校内で共通理解を図った上で、家庭と連携することも大切です。
「わかる授業」の推進・充実
「わかる授業」を推進するためには、身に付けさせたい力を明確にし、子どもがその力を身に付けら
れるように適切な単元を構想することが大切です。学習のゴールについて見通しを示すとともに習得し
た基礎的・基本的な知識及び技能を活用して課題解決を図り、話し合ったり、発表するような自分の考
えを発信する活動を取り入れた学習プロセスのデザインに工夫をしましょう。また、子ども自身が学ん
できた過程を振り返る機会を設定し、次の学習に向けての意欲を高められるよう指導することが大切で
す。さらに、教材・教具、発問・板書などの指導方法の工夫・改善等、教師の創意や工夫が効果的に生
かされるよう校内研修を充実させ、改善に努めましょう。
授業改善と学習評価の充実(指導と評価の一体化)
「わかる授業」をめざして、子どもに身に付けさせたい力や具体の評価規準を明確にした授業実践の
充実や年間指導計画・年間評価計画の作成、評価方法・評価場面等の検証・見直しをするなど、学校全
体で授業改善の視点から授業研究に取り組むことが大切です。さらに、研究協議の進め方を工夫し、一
人ひとりの教師が積極的に授業改善に取り組めるようにしましょう。県教育委員会が委託している「学
びづくり」の研究会では、付箋紙協議や書き込み協議など、様々な形態の研究協議が行われ、教師の意
識改革や授業改善の必要性について認識する機会となっています。推進地域や推進校の取組を参考にす
ることも必要です。また、評価する内容と評価した結果については、校内で共通理解を図った上で、児
-8-
童・生徒、保護者に十分な情報提供と丁寧な説明を繰り返し行い、検証・改善を図ることにより、学習
評価の妥当性・信頼性を高めることも重要です。
<参考> ホームページ『「確かな学力を育てるために」リーフレット解説編』を積極的に活用しましょう。
「いのち」を大切にする心、他人を思いやる心、規範意識など児童・生徒一人ひ
豊かな人間性の育成 とりの豊かな人間性をはぐくむために、教育活動全体を通じた取組を推進しましょ
う。
いのちを大切にする心をはぐくむ教育の推進
「いのち」を大切にする心の育成は、人間形成の土台づくりとして欠くことのできないものです。児
童・生徒の発達の段階に応じ、あらゆる教育活動を通して、「いのち」のかけがえのなさ、夢や希望を
もって生きることの大切さなど「いのち」を大切にする心をはぐくむ教育の推進を図ることが重要です。
<参考> ホームページ かながわ「いのちの授業」を活用しましょう。
道徳教育の充実
小学校では平成 30 年度、中学校では平成 31 年度から「特別の教科である道徳」が始まります。現
在は改正された学習指導要領の全部または一部において行うことができる移行措置がとられています。
教科化に向けてまずは、現行の学習指導要領の確実な実施をしていくことが大切です。その中で、文部
科学省から配付されている「私たちの道徳」等を活用して、道徳教育の改善・充実を図っていく必要が
あります。
現行の学習指導要領における道徳教育の重要性については、教職員間で共通理解をし、学校の教育活
動全体を通じて、道徳的な心情、判断力、実践意欲と態度等の道徳性を養うことが重要です。
また、道徳教育の要となる道徳の時間においては、各教科等と密接な関連を図りながら、計画的、発
展的な指導によって補充、深化、統合し、道徳的価値の自覚を深め、道徳的実践力を育成することが大
切です。あわせて、積極的に授業を公開するなど、家庭や地域との連携を図りながら、様々な体験を通
して心に響く道徳教育を計画的に推進していくことが大切です。そのためには、各学校において、道徳
教育推進教師をはじめとする道徳担当などを中心として、道徳教育の全体計画の整備、実践・活用しや
すい道徳の時間の年間指導計画の作成・見直しと有機的な組織づくりが必要です。
自然体験、社会体験、ボランティア活動の推進
自然体験やボランティア活動などの社会体験等、児童・生徒の心に響く体験活動の推進を図ることが
大切です。様々な体験活動を通して、人と社会等とのつながりを自覚し、他者への関心や愛着、信頼感
を高めるようにすることが大切です。そのためには、学校の教育活動について、学校外の機関や団体と
共通理解を図り、積極的な支援の下で活動を推進することが重要です。
健康・体力つくり
体力・運動能力の向上とともに生活習慣の改善をめざし、家庭・地域等との連携
を図り、学校教育活動全体で総合的な健康・体力つくりに努めましょう。
健康で活力ある生活習慣の確立
近年、子どもたちの心身の健康についての問題が、深刻かつ多様になっており、気力や学習意欲の低
下など学校生活全般への影響が指摘されています。活力ある生活を送るためには、規則正しい生活習慣
を確立し、“健康3原則(食事・運動・休養及び睡眠)”を意識しながら、自らの生活習慣を見直し、
改善させるとともに、学校と家庭・地域が連携した取組を進めることが重要です。
体力・運動能力の向上
体力・運動能力は、近年の年次推移をみますと向上の傾向もみられますが、まだ低い状況であり、生
涯を通じて健康で活力にあふれた生活を送る上で大きな課題となっています。
各学校においては、定期健康診断や新体力テスト等の結果を活用するなどして、子どもたちが自らの
-9-
健康や体力に関心がもてるよう、発達の段階を考慮した体育・健康に関する指導を充実させることが大
切です。さらに、体育的行事、休み時間の活動や運動部活動などにも進んで参加できるような体制づく
りを行い、積極的に運動やスポーツに親しむ態度を身に付けさせることが重要です。
実践的な健康教育の推進
子どもたちを取り巻く生活環境等の変化により、性・エイズ教育、喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育、
がん教育、身の回りの生活の安全や交通安全、防災に関する指導の充実、さらに食育の推進等、様々な
課題が指摘されています。各学校においては、これらの課題に対する指導の充実を図り、子どもたちが
実践力を身に付けられるよう、学校の実態を踏まえ、家庭・地域、さらには関係機関等と連携・協力し
た取組を推進することが重要です。
いのちを守る防災教育の推進
東日本大震災の教訓を踏まえ、子どもたちが自らのいのちを自らの力で守ることができるよう、各学
校において学級活動、学校行事や各教科等で防災に関する知識を体験的に身に付け、意識を高められる
よう、学校の教育活動全体を通した防災教育を計画的に推進することが重要です。
キャリア教育の推進
幼稚園、小・中学校を通したキャリア教育の推進
キャリア教育では、子どもたちが、将来、社会的自立・職業的自立を図るために、しっかりとした勤
労観、職業観を形成、確立させることが求められています。
社会人としての基盤をつくるために、学び続ける意欲を維持することは大切です。そのために教育活
動全体を通して、発達における個人差に留意し、系統性のある取組を実践し、子どもたちに学ぶ面白さ
や大切さを理解させることが重要です。
そこで、幼稚園、小・中学校を通したキャリア教育の推進に向けて、異校種の教員間で互いの取組や
生徒のキャリア発達状況を共有したり、既存の教育活動の中に数多くあるキャリア教育に関連する内容
をとらえ直したり、活動の関連を明確にするなどの取組が大切です。
職場体験活動等の推進・充実
「学ぶこと」、「働くこと」、「生きること」をつなげる実践の場として職場体験活動の推進を図る
ことが大切です。地域で働く人々と直接かかわることを通して、子どもたち一人ひとりが、自己有用感
を獲得し、将来の夢や希望をもち、自らの生き方を考える機会になるように、体験活動の充実に取り組
むことが重要です。
そのためには、小・中学校での学びを通して、職場体験活動の意義を踏まえ、学校と家庭、地域、関
係機関が協力しながら、充実した体験活動を推進することが大切です。
政治的教養を育む教育の充実
選挙年齢が満 18 歳以上に引き下げられたことに伴い、小・中学校でも、学習指導要領に基づき、主
体的に政治に参加することの意義を学習するなど政治や選挙等に関する教育の充実が求められていま
す。
そのためには、習得した知識を活用し、主体的な選択・判断を行い、他者と協働しながら様々な課題
を解決していくという学習の取組が大切です。
グローバル化などに対応した教育の推進
グローバル化に対応した教育環境づくりを進めるため、小学校における英語教育の拡充強化、中学校
における英語教育の高度化など、小・中・高等学校を通じた英語教育全体の抜本的充実を図ることが求
- 10 -
められています。さらに、「英語を用いて何ができるようになるか」という観点から目標を具体化し、
小中高を通じて一貫した学習到達目標を設定することが求められています。
また、我が国や郷土の伝統や文化について英語で伝えるという視点も含め、グローバル化が進む中、
国際社会に生きる日本人としての自覚を育むため、日本人としてのアイデンティティを育成するための
教育を推進することが重要です。
きめ細かな児童・生徒指導の推進
児童・生徒指導とは、単に問題行動等への対応や防止にとどまらず、すべての子どもが集団や社会の
一員として自分らしく生きることができる大人へと育つことをめざして、その成長・発達を支え、促す
ものです。また、学校生活がすべての児童・生徒にとって有意義で興味深く、充実したものになること
をめざすものです。
いじめの問題に対しては、「いじめは、どの学校にも、どの子にも起こりうる」ことを十分理解しつ
つも、どのような理由があろうとも、決して許されない行為であることを基本に据えて、各学校で策定
している学校いじめ防止基本方針に則って、学校・家庭・地域が一体となって対応することが重要です。
チームで取り組む児童・生徒指導
○
児童・生徒は、指導に当たっては公平で公正であってほしいと願っています。学校として、「だめ
なものはだめ」という指導の軸をぶらさないためには、教職員間の共通認識が大切です。「共通認識」
を言葉の上だけの理解にとどめず、「何をどうする」という具体的な行動レベルまで明確にして対応
する必要があります。
○ 児童・生徒指導のねらいの一つは、人とのかかわりの中で、社会のルールを知るとともに、身に付
けることです。社会で許されない行為は、学校でも許されないことを徹底する必要があります。その
際、大切なことは「人と人とのかかわりの中で」であり、少なくとも教員とのかかわりにおいては、
厳しさの中にも温かい配慮を持って対応することが大切です。
○ 「だめなものはだめ」と教えることができる厳しさと、児童・生徒の気持ちを受け止めることがで
きる温かさは両立すべきことであり、事を見過ごしてしまう甘さや、気持ちを聴こうとしない冷たさ
とは違うことをはっきりと意識する必要があります。
○ 教職員は年齢や性別、経験、性格、体力、指導技術など様々です。同じ指導をしても、児童・生徒
の受け取り方、浸透の度合いは異なります。教職員がチームとして、お互いの持ち味を生かし、支え
合える関係を築き、学校全体で厳しくも温かい児童・生徒指導を推進することをめざすことが大切で
す。
「授業づくり」「学級づくり」の充実
○
児童・生徒は、学校生活のほとんどを占める学級集団での授業の中で、自分たちが大事にされてい
る、安心して学校生活を送ることができると実感して、はじめて教員を信頼し、その言葉に耳を傾け
るようになります。
○ このことから、児童・生徒指導を機能させるためには、まず、教員が自らの教科指導を見直し、児
童・生徒が理解し、楽しいと感じる授業づくりに向けて研鑽を重ねること、さらに、児童・生徒が集
団として自主的かつ充実感を持って学習に取り組めるよう、指導の工夫に努めることが必要です。
○ また、学習への意欲は、教科学習の時間だけでなく、学級生活全体の中で育つという意識を教職員
が共有することが大切です。「学級生活の中に児童・生徒の出番があり、役割がある」「自分の言葉
で、仲間と意見を対立させながらも、学級を良くしていくための話合い活動がある」このような学級
活動を丁寧に実践する中で、人の話を聞く態度、お互いを注意し合える態度、一部のわがままや理不
尽な言動に対して「それは違う」と、はっきり言える風土や規範意識等をしっかりとはぐくむことが
大切です。
○ 例えば、学級活動や児童会・生徒会活動などの場を利用して、いじめ問題等を、児童・生徒が自分
たちの問題として受け止め、自ら活動することができるような場を設定することが必要です。
気付くこと・見逃さないこと
○
学校は、すべての児童・生徒に問題行動等の要因が潜在している可能性があるということを常に念
- 11 -
頭に置き、児童・生徒の発するサインを見逃さないよう、日ごろから様々な方法により児童・生徒理
解を着実に進め、問題行動等の早期発見に努める必要があります。また、児童・生徒を多面的に理解
するためにも、複数の教職員が互いの学級をよく知り、気になる様子について、常に情報や意見を交
換することが大切です。
○ アンケート調査や個人面談等の方法に加えて、教室の掲示物やゴミ箱の中身まで、教員は常に気を
配り、日常の何気ない場面からも児童・生徒の生活や状況の変化を読み取ろうとする姿勢が大切です。
○ 児童・生徒の欠席については、早期の段階で生命の安全など、状況を確認し家庭や関係機関と連携
して対応することが重要です。
迅速なチーム対応と継続した支援
○
いじめや暴力行為など問題が発生した際には、管理職に報告するとともに、速やかに情報を共有し、
学級担任が一人だけで対応せずに複数の教職員で役割分担し、協働して迅速かつ適切に対応すること
が必要です。また、保護者への連絡・相談も欠かせません。
○ いじめ・暴力行為や不登校のほか、多岐にわたる問題の背景には、子どもの発達にかかわる課題や、
家庭や生育に関する課題など、児童・生徒を取り巻く様々な環境が複雑に影響しており、学校だけで
は、対応・解決が困難な事例が増加しています。そのため学校は、スクールカウンセラーやスクール
ソーシャルワーカーなど、教員とは異なる視点からの専門的助言を求めることや、地域における社会
教育関係の団体や、NPO等の民間団体、また、相談機関、警察、児童相談所、医療・保健・福祉な
どの関係諸機関と役割を分担し、多様なかかわりによるチーム支援を、粘り強く続けることが必要で
す。
家庭・地域の人々への情報発信
○
児童・生徒の社会性や規範意識は、家庭や学校に加えて、地域の大人たちと様々なかかわりを持つ
中ではぐくまれていくものです。地域の人々と交流する機会を積極的に設け、「開かれた学校、信頼
される学校づくり」を推進することが重要です。
○ 学校は、家庭や地域に対して、児童・生徒指導の基本方針や計画、問題があった際の対応方法等を
あらかじめ情報発信し、保護者や地域の人々の理解や協力を得るよう努めることが必要です。
中学校での部活動の活性化
○
部活動は、豊かな人間関係を築き、心身の健全育成を図る大変有意義な教育活動です。学級や学年
の枠を超えて共通の興味・関心を持つ仲間とともに、スポーツや文化及び科学等に親しむことで個性
の伸長を図り、自主性や協調性、責任感、連帯感などを養い、互いに協力し友情を深めるといった好
ましい人間関係の形成に大いに役立ちます。
○ また、学習指導要領に、部活動は学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意する
ことが明確に示されていることから、スポーツや文化等の活動への参加を通じて、豊かな学校生活を送
れることができるよう、「より多くの生徒が参加できる部活動」「参加した誰もが満足できる部活動」
を目指すことが大切です。
- 12 -
Ⅳ
特別支援学校教育指導の重点
教育要領及び学習指導要領では、①障害の重度・重複化、多様化への対応、②一人ひとりに応じた指
導の充実、③自立と社会参加に向けた職業教育の充実、④交流及び共同学習の推進が求められています。
この趣旨を踏まえて、特別支援学校では、個が生きる多様で柔軟な教育の推進を図り、これからの社会
に対して未来を切り拓く力、豊かな人間性や望ましい社会性、基本的な生活習慣など「自立と社会参加」
に向けた「生きる力」と、いのちがかけがえのないものであることを自覚し、いのちを大切にする心の
育成をめざします。
幼児・児童・生徒が将来自立し、社会参加する力をはぐくむという教育目標
「自立と社会参加」
の実現に向け、学校全体の教育課程の工夫・改善を図りましょう。
をめざす教育課程
編成の工夫・改善
「個別教育計画」を生かしたチームでの授業づくりと評価の充実
「個別教育計画」に基づくチームによる授業の実践と評価の充実
授業の実施に当たっては、「個別の支援計画」と、アセスメントによる実態把握を踏まえて作成し
た「個別教育計画」を活用し、授業における幼児・児童・生徒一人ひとりの指導のねらいを明確にし、
チームで共通理解を図り授業計画を作成し、授業を進めることが大切です。また、一人ひとりのねら
いに基づいた学習の状況や結果を評価することも必要です。
さらに、授業を振り返り、指導の目標が達成されたか、目標や手立てが適切であったか等、授業の
評価をチームで行い、次の指導に生かすことが求められています。
そのためには、教育要領及び新学習指導要領のねらいと内容を踏まえて、各教科等の目標を確認し、
幼児・児童・生徒の実態や地域の特性を考慮した教育課程を編成するとともに、各教科等の年間指導
計画や各単元での具体的な指導内容と目標を、チームで検討・確認し、育てたい子ども像を共有し、
分担・協力して授業実践に努めることが大切です。
地域の学校等との交流及び共同学習の推進
特別支援学校が近隣の幼稚園、小・中学校及び高等学校等と、計画的・組織的に交流に取り組んだ
り、地域の様々な人と活動をともにする機会を増やしたりすることは、障害のある幼児・児童・生徒
が地域で暮らしやすい社会を作ることにつながります。各学校においては、小・中学校等と連携し、
多くの機会を利用して交流及び共同学習を推進してください。その際、相互の学習のねらいが十分達
成されるよう、計画的・組織的に実施することが重要です。
また、各学校に在籍する児童・生徒が、それぞれの居住地の学校で交流する居住地交流は、地域で
の生活を豊かにするための大切な取組です。児童・生徒の実態に応じ、個別教育計画に位置付けて推
進してください。
情報教育の推進
タブレット端末等は幼児・児童・生徒の興味・関心の領域を広げるとともに、障害をサポートす
る支援ツールとしても活用されています。障害特性に応じた支援が可能となるタブレット端末等を使
った学習活動について各校で研究・研修を活発に行い、情報機器を活用した学習活動の推進に取り組
んでください。あわせて、携帯電話、スマートフォン等の適切な使い方について、情報セキュリティ
や情報モラルに関する教育の推進に取り組んでください。
政治参加教育の充実
選挙権年齢の引下げを踏まえ、従前より取り組んでいる生徒会役員選挙における選挙活動・投票を
通した学習に加え、県立高校のシチズンシップ教育を参考にしたり、選挙管理委員会等の外部機関の
講師を活用したりして、政治や選挙に関する仕組みを理解し、選挙に主体的に参加できるよう政治参
加教育に一層取り組んでください。
- 13 -
いのちを大切にする
心と健やかな体を
はぐくむ教育の充実
いのちを尊重する心と豊かな人間関係を築くことのできる幼児・児童・
生徒を育成するために、心と体の教育の充実に努めましょう。
いのちの尊重に関する教育の充実
いじめを未然防止するために、学校教育活動全般において、道徳やいのちの授業との関連を図りな
がら、幼児・児童・生徒がお互いを思いやる気持ち、生命や人権を擁護する態度を育むことができる
ような授業実践に取り組むことが大切です。
子どもの安全と健康に配慮した指導の充実
すべての学校生活、学習活動において、幼児・児童・生徒が自他の大切さを認められる学習内容・
学習方法に配慮し、お互いを思いやる気持ちを育むはたらきかけに努めましょう。
また、日々の健康観察を丁寧に行い、体調に合わせた健康管理等の適切な対応を図ることが大切で
す。そのためには、保護者からの情報等を、担任だけでなく、学年や学部全体で共有するとともに、
常に養護教諭や看護師、栄養教諭・学校栄養職員とも共有しながら指導の充実を図ることが大切です。
「かながわパラスポーツ推進宣言」を踏まえ、パラスポーツ用具の活用やスポーツ教室の開催を通し
て、年齢、障害などによって異なる一人ひとりの運動機能を生かして、スポーツをする喜びを実感で
きるよう取り組んでください。
防災教育の推進
各学校においては、学級活動・ホームルーム活動や学校行事はもとより、各教科・科目においても
防災に関する知識の体験的な取り組みや「災害図上訓練(DIG)」の実践などに取り組み、防災に
関する意識を高め、学校の教育活動全体を通した防災教育を推進してください。
幼・小・中・高等部
を通じたキャリア教
育の推進
幼児・児童・生徒の卒業後の社会自立に必要な力を高めるために、幼・小
・中・高等部を通じたキャリア教育を推進しましょう。
幼・小・中・高等部を通じたキャリア教育の推進
幼児・児童・生徒の卒業後の社会自立に向けた指導は、幼稚部・小学部・中学部・高等部を通じて
取り組む必要があり、様々な体験活動を通して能力や意欲を育てることが大切です。そこで、キャリ
ア教育の視点から、ライフステージや発達の段階に応じ、自らその役割を果たそうとする意識、スキ
ルを身に付けさせ、主体的に課題を解決する力を養うなど、指導内容を工夫し、個に応じた継続した
指導を実施する必要があります。
職業教育の充実
職業教育の充実に向け、指導内容や学習環境の設定の工夫・改善に努め、生徒や保護者の就労への
意欲を高める取組が大切です。その際、企業等外部の関係者による意見を参考にすることも有効です。
また、地域の産業界や福祉、労働の関係機関、支援機関等と連携して、新たな就労先・実習先の開
拓、障害者雇用への理解・啓発等を図るとともに、清掃技能検定の積極的な活用など職業教育の改善
・充実に取り組んでください。
あわせて、卒業した生徒が、就労先で長く働き続けるためには、就労先や支援機関等と連携した定
着支援を行うことや、生徒一人ひとりの障害の状態、適性に応じた作業学習や現場実習を計画的に行
うなど、生徒の自己肯定感を高める進路指導・支援の充実に取り組むことが重要です。
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関係者の連携による効果的な支援
校内研修・研究体制の強化
一人ひとりのニーズに応えるためには、本人・
保護者をチームの一員として、保護者の気持ちに
も寄り添いながら十分に協議し、関係機関とも連
携して「個別の支援計画」を作成し、支援体制の
整備を図ることが必要です。「個別の支援計画」
により教育の役割を確認し、学校が求められてい
る取組を明確にすることが大切です。
一人ひとりの教育的ニーズに合わせた教育課
程の工夫・改善を継続して図ることが大切です。
そのためには、授業改善に向けた研修・研究体
制の強化を図るとともに、一人ひとりの障害の特
性についての研修や、ニーズに応じた授業展開に
関する研究をチームで行うなど、教職員の専門性
を高めていくことが大切です。
平成 28 年度特別支援学校教育の重点項目〈構造図〉
防災教育の推進
安全と健康に配慮した指導の充実
関係機関の役割
家庭の役割
個
別
の
支
援
計
画
学校の役割
キャリア教育
の推進
授
業
実
践
と
評
価
個
別
教
育
計
画
活用
職業教育の充実
交流及び共同学習の推進
教
科
等
の
単
元
指
導
計
画
学
部
等
の
年
間
指
導
計
画
学
校
目
標
・
教
育
課
程
新
し
い
学
習
指
導
要
領
改善
「個別の支援計画」を踏まえた「個別教育計画」を
生かした、チームによる授業づくりと評価の充実
「個別の支援計画」を踏まえた「個別教育計画」に
基づく、チームによる授業の実践と評価の充実
相談内容を教育活動や
研修・研究の成果をより
支援の場面に生かす
よい授業づくりに生かす
校内研修・研究体制の強化
関係者の連携による効果的な支援
- 15 -
小・中学校における特に重視する内容
☆ 「確かな学力」の向上
学校では、「わかる授業」「学び合いを中心とした授業」づくりに努め、子どもたち一人ひとりが、
「学ぶ意味」「学ぶ喜び」「学ぶ楽しさ」を実感できるように工夫することが重要です。
そのために、教職員全体で、
○児童・生徒理解に努め、子どもたち一人ひとりが安心して学べる環境づくりを進める。
○教師の意識改革や授業改善を図るための学校全体の研究・研修の充実に努める。
○校種を超えて教職員が交流し、発達の段階を踏まえた系統的な指導計画の作成に努める。
○子どもたち一人ひとりの家庭学習を支援し、意欲的に学習する子どもたちを育てるために、学
校での学習状況を家庭と共有する。
子どもたちの現状を把握し、授業改善を図るとともに、家庭・地域の人々へ積極的に情報発信す
ることを通して、連携を図ることが大切です。
☆
きめ細かな児童・生徒指導の推進
本県の公立小・中学校における暴力行為・いじめ、不登校が憂慮すべき状況にあること、また、学
校が有する経験や従来の指導方法では対応が難しいケースが増えていることを踏まえ、次のような視
点から自校の児童・生徒指導の現状を点検することが重要です。
○チームで取り組む児童・生徒指導・・・学校全体がチームとなって厳しくも温かい指導を推進する。
○「授業づくり」「学級づくり」の充実・・・子どもたちの「居場所づくり」「絆づくり」を推進する。
○気付くこと・見逃さないこと・・・長期欠席の状況や日ごろの様子を、複数の視点から多面的に見
守り、児童・生徒理解を推進する。
○迅速なチーム対応と継続した支援・・・学級担任や学校が抱え込まずチーム支援を推進する。
○家庭・地域の人々への情報発信・・・学校の指導方針や対応方法など積極的な情報発信を推進する。
☆
一人ひとりの教育的ニーズに応え、共に育ち合う支援教育の充実
~できるだけすべての子どもが同じ場で共に学び共に育つことをめざすインクルーシブ教育の推進~
自らの力では解決することが難しい課題(教育的ニーズ)を抱える子どもたちには、周囲の適切
な支援が必要です。そのためには、教職員が子どもたち一人ひとりの気持ちに寄り添い、個別の教
育課題を把握するとともに、課題解決に向けて取り組もうとすることが何より必要です。
多くの課題に対して、適切な支援をしていくためには、担任などが一人で抱え込むことなく、
① 学校全体で子どもたち一人ひとりの情報を共有する。
② 必要に応じて学校内外の人や機関と連携し、解決の手立てを考える。
③ 教育相談コーディネーターを中心に支援体制を確認し、分担して取り組む。
という手順により、一人ひとりの教育的ニーズについて、学校全体で共通理解しながら取り組むこ
とが大切です。
また、支援教育の理念のもと、共生社会の実現に向け、インクルーシブ教育の視点を生かした授
業づくりや学級づくり、学校づくりを進め、できるだけすべての子どもが同じ場で共に学び共に育
つことをめざしていくことが重要です。
神奈川県
神奈川県教育委員会教育局支援部
〒231-8509 横浜市中区日本大通 33
子ども教育支援課 電話(045)210-1111(代表)内線 8217
特 別 支 援 教 育 課 電話(045)210-1111(代表)内線 8276
平成 28 年3月発行
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