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6本編(PDF:3584KB)
平成 25 年度政策研究
~ №6
研究報告書
JR飯田線の利用促進について ~
田本駅(秘境駅ランキング第4位)と秘境駅号
平成 26 年2月
下伊那地方事務所
◆◆研究生◆◆
地域政策課
環
境
課
久保田 和彦
松澤 一生
三宅 悠介
岩下 裕昭
税 務 課
農地整備課
林 務 課
新井
滝沢
津田
政徳
一志
拓也
№6 JR飯田線の利用促進について
目
次
はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
1 飯田線の現状・課題
1
・・・・・・・・・・・・ 2
(1)飯田線の概要
(2)飯田線の沿革
(3)飯田線の特徴
(4)飯田線の秘境駅
(5)飯田線を取り巻く状況
(6)飯田線乗車状況調査
(7)沿線市町村調査
(8)現状・課題のまとめとありたい姿
2 施策の検討案
・・・・・・・・・・・・・・・
14
3 支障木伐採事業
(1)現状認識及び目的
(2)森林整備に係る規制及び協議
(3)実施方法
(4)森林整備実施後のイベント
(5)所要額
☆トピック「平成 25 年9月台風 18 号災害で被災した飯田線」
4 リゾートトレインツアー事業 ・・・・・・・・ 22
(1)各地域のイベント列車
(2)先進地視察
(3)リゾートトレインのねらい
(4)リゾートトレインの内容
(5)リゾートトレインの販売戦略・商品
(6)リゾートトレインの運行の効果
(7)将来を見据えて
(8)「おいなんよ 伊那谷」号の販売見込み
(9)所要額
おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
下伊那地方事務所
30
№6 JR飯田線の利用促進について
はじめに
JR飯田線は飯田・下伊那地域の通勤・通学などに利用する幹線交通
としての役割を果たしているが、モータリゼーションの進展及び特徴的
な地形から自動車通勤者が圧倒的に多く、また少子化が進む中、学生の
利用が減少してきており、利用客の減少に歯止めがかからない状況が続
いている。
こうした中、JR東海が、県内9駅を平成 25 年4月から無人化し、
特に定期券を購入して通学する学生などに影響が懸念される。
飯田線を維持存続していくためには、利用促進に向けた取組みを、よ
り強化していかなければならない。
また、飯田線は、地域住民の生活路線だけでなく、車窓から眺める南
アルプスや天竜峡の絶景など、様々な景色が四季折々楽しめ、特に、天
竜峡駅以南は、天竜川の険しい渓谷を走り、田本駅や金野駅などの秘境
駅の存在から、鉄道ファンには人気のある路線である。
そのため、こうした他の路線にはない飯田線の魅力を調査し、利用促
進に繋げる方策を研究する。
下伊那地方事務所
1
№6 JR飯田線の利用促進について
1
飯田線の現状・課題
(1)飯田線の概要
飯田線は、愛知県豊橋駅と長野県辰野駅を結ぶJR東海の地方交通線であり、
長野・静岡・愛知の3県にまたがる山岳路線である。
◆路線距離 195.7km
うち 長野県区間
107.9km
飯伊地域区間 63.1km
◆駅数
うち
94 駅
長野県区間
飯伊地域区間
◆複線区間
複線 豊橋駅
単線 豊川駅
-
-
55 駅
30 駅
豊川駅
辰野駅 ※長野県内は全て単線
(2)飯田線の沿革(長野県区間)
1909(明 42)年 12 月
伊那電車軌道 辰野駅~松島(現伊那松島)駅開業
1919(大8)年 8月
伊那電気鉄道に社名変更
1927(昭2)年 12 月
辰野駅~天竜峡駅全通
1932(昭7)年 10 月
三信鉄道 天竜峡駅~門島駅開業
1937(昭 12)年8月
伊那電気・三信・鳳来寺・豊川鉄道の4社で
豊橋駅~辰野駅全通
1943(昭 18)年8月
4社が一括国有化し名称「飯田線」に
1987(昭 62)年3月
国鉄分割民営化でJR東海に承継
1996(平8)年3月
特急「伊那路」
(豊橋駅~飯田駅)運行開始
2001(平 13)年3月
天竜峡駅~辰野駅でワンマン開始
2013(平 25)年4月
鼎駅、元善光寺駅、沢渡駅、伊那北駅が無人化
特急「伊那路」
(飯田駅にて)
下伊那地方事務所
2
№6 JR飯田線の利用促進について
(3)飯田線の特徴
ア 1943(昭和 18)年に私鉄4線が国有化し「飯田線」に
伊那電気鉄道
天竜峡駅~辰野駅
三信鉄道
三河川合駅~天竜峡駅
豊川鉄道・鳳来寺鉄道 豊橋駅~三河川合駅
イ
運行区間は概ね3区間
◆伊那地区(天竜峡駅~辰野駅)
概ね1時間に1本が運転され、飯田市、駒ケ根市、伊那市などの南信主要
都市を結んでいる。
特急「伊那路」が乗り入れているが、一部ワンマン運転も行われている。
◆三遠南信地区(本長篠駅~天竜峡駅)
天竜川・豊川水系沿いの小町村・小集落を縫って走る急峻な山岳路線であ
るが、秘境駅と呼ばれる駅もいくつか存在する。
朝夕1時間1本、日中は2~3時間に程度の間隔が開く。
◆東三河地区(豊橋駅~本長篠駅)
豊橋市を中心とする東三河区間で 15 分~1時間の間隔で運行されている。
飯田線では最も旅客輸送の盛んな区間であり、初詣シーズンは豊川稲荷の
参詣輸送も行われる。
ウ
駅間距離が短く(駅が多く)、トンネルが多い
平均駅間隔は約 2.1km と大都市の市街地並みである。これは沿線サービス
を旨とする私鉄出身のため、駅が非常に多い。
トンネルが 138 あり、旧三信鉄道区間は「地下鉄飯田線」とも揶揄される
ほどの難所区間であったが、天竜川の電源開発を行うため、出資の半分を電
力会社が負担した。
そのため、速度は遅くなり、急カーブや急勾配も多くみられる。
エ
特急「伊那路」、快速「みすず」が運行
特急「伊那路」が豊橋駅~飯田駅に1日2往復運転され、飯田駅~辰野駅
(長野駅、松本駅)に快速「みすず」が運行されている。
一方、天竜峡駅~辰野駅(豊橋駅~中部天竜駅)ではワンマン運転も行っ
ている。
以前は新宿駅、長野駅、名古屋駅などに直通急行列車が4~7両編成で走
っていたが、中央自動車道が全通し高速バスの影響で廃止された。
下伊那地方事務所
3
№6 JR飯田線の利用促進について
(4)飯田線の秘境駅
天竜川の険しい渓谷を縫うように走る車窓風景も絶景だが、飯田線には多く
のいわゆる「秘境駅」が存在する。
また、JR東海では「秘境駅号」を平成 22 年より春秋2回運行しているが、
毎回好評を得ており、乗車率も高い。
◆秘境駅ランキング
飯田線(長野県内)の秘境駅ランキングは次のとおり
【所在】
たもと
田 本駅
下伊那郡泰阜村田本
第4位(第4位)
金 野駅
飯田市千栄
第 10 位(第 13 位)
なかいさむらい
侍
昭和 10 年 11 月 15 日
【所在】
きんの
中井
【開業】
駅
第 16 位(第 30 位)
してぐり
為 栗駅
第 20 位(第 32 位)
ちよ
千代駅
第 34 位(第 38 位)
【開業】
昭和7年 10 月 30 日
【所在】
下伊那郡天龍村平岡
【開業】
昭和 11 年 12 月 30 日
【所在】
下伊那郡天龍村平岡
【開業】
昭和 11 年8月 19 日
【所在】
飯田市千栄
【開業】
昭和7年 10 月 30 日
※ブームの火付け人牛山隆信氏のHP2014 年版「秘境駅へ行こう!」より
※( )内前回順位
(参考1)小和田駅(飯田線・静岡県)は第2位
(参考2)鈍行列車ランキング(牛山氏ホームページより)
飯田線(上諏訪駅(中央本線)~豊橋駅)は第2位
下伊那地方事務所
4
№6 JR飯田線の利用促進について
(5)飯田線を取り巻く状況
ア 飯田・下伊那地域の将来推計人口
(人)
200,000
年少人口(15歳未満)
総人口
177,179
179,462
180,763
22,205
12.5%
25,800
14.4%
29,663
16.4%
150,000
100,000
116,361
65.7%
生産年齢人口(15~64歳)
老年人口(65歳以上)
ピーク
116,251
64.8%
115,536
63.9%
179,038
34,834
19.5%
112,691
62.9%
178,014
41,057
23.1%
108,285
60.8%
178,392
45,284
25.4%
106,007
59.4%
175,523
48,297
27.6%
101,220
57.8%
169,504
49,973
29.6%
95,313
56.4%
164,368
157,226
H39リニア開業
150,027
143,078
53,068
32.3%
90,001
54.7%
50,000
53,831
34.2%
84,735
53.9%
53,160
35.4%
52,116
36.4%
136,025
50,916
37.4%
80,006
53.3%
74,972
52.4%
69,801
51.3%
38,613
21.8%
37,411
20.8%
35,564
19.7%
31,504
17.6%
28,672
16.1%
27,100
15.2%
25,669
14.6%
23,656
14.0%
21,308
13.0%
18,655
11.9%
16,859
11.3%
15,994
11.2%
15,309
11.3%
S50
S55
S60
H2
H7
H12
H17
H22
H27
H32
H37
H42
H47
0
※資料 国勢調査、毎月人口異動調査、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口
・人口は昭和 60 年をピークに減少し、生産年齢人口と年少人口の減少が続く
一方、老年人口の割合が高くなり、将来推計でもこの傾向が続く。
・リニア中央新幹線開業直前の平成 37 年は 15 万人前後になり、平成 47 年に
は 14 万人を割り込む見込みである。
見込まれる更なる人口減少
イ 乗車人員の推移
(ア)長野県内の飯田線 54 駅の乗車人員の推移
※資料 JR東海
下伊那地方事務所
5
№6 JR飯田線の利用促進について
(イ)飯田線と県内JR7線の乗車人員の推移(平成 12 年を1として比較)
1.0
JR7線
0.87
0.9
0.8
0.7
飯田線
0.74
0.6
0.5
H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 H21 H22
JR7線:信越本線、飯山線、中央東線、中央西線、
篠ノ井線、小海線、大糸線
・
(ア)の図から、飯田線の乗車人員は、平成3年をピークに減少が続いて
おり、特に定期外の減少幅が大きい。
また、飯田・下伊那区間の列車本数は、上伊那区間に比べ少ない。
・
(イ)の図から、飯田線は県内他の路線と比べ乗車人員の減少率が大きい。
進む利用者数の減
(ウ)飯田・下伊那地域の飯田線各駅の1日あたりの乗車人員
駅 名
中井侍
伊那小沢
鶯 巣
平 岡
為 栗
温 田
田 本
門 島
唐 笠
金 野
千 代
天竜峡
川 路
時 又
駄 科
H20年度
H21年度
H22年度
6
5
3
124
3
278
1
14
61
0
6
367
49
109
189
5
5
3
106
2
258
1
12
57
0
4
336
59
101
160
5
4
2
102
6
256
2
16
62
0
3
317
66
111
154
駅 名
毛 賀
伊那八幡
下山村
鼎
切 石
飯 田
桜 町
伊那上郷
元善光寺
下市田
市 田
下 平
山 吹
伊那大島
上片桐
H20年度
H21年度
H22年度
134
224
52
567
212
1,120
84
806
506
60
403
91
76
526
416
117
208
41
506
200
1,061
83
751
485
60
383
74
74
473
381
114
200
38
512
169
1,006
89
687
437
52
388
66
83
466
384
乗車人員が多い駅TOP5 ①飯田 ②伊那上郷 ③鼎 ④伊那大島 ⑤元善光寺
下伊那地方事務所
6
№6 JR飯田線の利用促進について
・主要駅をはじめ飯伊地域全体で乗車人員は減少している。
・秘境駅ランキング第 10 位の金野駅は乗車実績がなく、他の秘境駅も乗車人
員は1桁台で推移している。
(6)飯田線乗車状況調査
研究生が実際に飯田線に乗車し、乗車率、客層・年齢層、乗車区間等を調査
した。
調査日・調査区間
①
H25.6.6(木)
飯 田 → 水 窪
(10:00)
(11:07)
乗車状況
・乗車人数は3両編成で 12 人(7.7%)~9人(5.8%)
・客層は、サラリーマンが約半分、その他は 50~60 代の男
女
・天竜峡駅以南は天竜川沿いの渓谷を走り、車窓からの絶景
が楽しめるが、トンネルが多く、また支障木により本来の景
観が損なわれている。
②
H25.6.6(木)
水 窪 → 天竜峡
(11:08)
③
天竜峡 → 飯 田
④
・乗車人数は2両編成で2人(2.5%)~1人(1.3%)
・客層は、60 代男性と 10 代女性(予備校生?)
(13:54)
H25.6.6(木)
市 田 → 飯 田
(7:23)
・客層は、50~70 代の男女で、温田から高校生6人が乗車
(12:10)
H25.6.6(木)
(13:26)
・乗車人数は2両編成で8人(11.3%)~2人(2.5%)
(7:39)
・乗車人数は2両編成で 100 人(125%)~40 人(50%)
・客層は、学生が大半であり、一般客は1割程度
・高校生の乗車マナーが悪い。
・高校の統廃合により、混む時間がずれてきている。
⑤
H25.6.24(月)
市 田 → 飯 田
(7:51)
(8:08)
・乗車人数は2両編成で 150 人(187.5%)~60 人(75%)
・客層は、学生が大半であり、一般客は1割程度
・市田駅利用者は約 75%が通勤・通学客であり、昼間は1
本あたり6人程度となる。
⑥
H25.6.27(木)
飯 田 → 平 岡
(7:06)
(8:33)
・乗車率は2両編成で 85%~50%
・客層は、学生が大半であり、一般客は1割程度
・温田駅で大半(阿南高生)が下車
・高校生の乗車マナーが悪い。
⑦
H25.6.27(木)
平 岡 → 飯 田
(8:34)
(9:47)
・乗車率は2両編成で 21%~2%
・客層は、社会人、高齢者が多いが、女子短大生も乗車して
いた。
・天竜峡駅までの乗車率は 4%~2%
下伊那地方事務所
7
№6 JR飯田線の利用促進について
⑧
調査日・調査区間
乗車状況
H25.6.27(木)
・乗車人数は2両編成で 159 人(198.8%)~40 人(50%)
天竜峡 → 飯 田
(7:06)
(7:36)
・客層は、学生が大半であり、一般客は1割程度
・鼎駅(飯田OIDE高、下伊那農業高)、飯田駅(飯田風
越高)で学生が下車
・一般(通勤)客のほとんどが飯田駅で下車
※①は特急「伊那路」
、それ以外は各駅停車
※乗車定員は、特急「伊那路」が3両 156 人、各駅停車は2両 80 人とし、乗車率を算出した。
・通勤・通学時間帯の乗車率は 100%を超えるが、昼間は1割前後である。
特に、天竜峡駅以南の乗車率が低い。
・通勤・通学時間帯は約9割が学生で、一般客(通勤客)が1割程度である。
・通学高校生の乗車マナーが悪い。
・天竜峡駅以南は天竜川沿いの渓谷を走り、車窓からの絶景が楽しめるが、
トンネルが多く、また支障木により本来の景観が損なわれている。
(7)沿線市町村調査
研究生が飯田線沿線市町村に出向き、各市町村における飯田線との関わりや
他公共交通機関との連携状況等を調査した。
【調査市町村】
飯田市、泰阜村、阿南町、天龍村、南信州広域連合
ア
飯田市
調査日 平成 25 年8月2日
◆飯田線利用促進への取組について
・飯田線の無人駅化を受け、初めて利用促進の対応に乗り出した。
・従来から市民バスや乗り合いタクシーに力を入れてきたが、その時刻表
に飯田線の時刻表を入れ、市内高校生に配布した。
・平成 25 年4月から7月まで、乗継バスを鼎駅と伊那八幡駅で試験的に運
行した。うち伊那八幡駅からの乗継バスは継続する方針。
◆期成同盟会の発足について
・JR飯田線利用促進連絡協議会(飯田市、伊那市、駒ケ根市、南信州広
域連合、上伊那広域連合及び下伊那郡町村会で構成)が平成 13 年に発足し
たが、活動は年 1 回要望を取りまとめ、JR東海に伝えているだけ。
・無人駅化を受け、飯田線沿線の市町村及び県で構成される「JR飯田線
活性化期成同盟会(仮称)」が発足する予定である。期成同盟会の下部組織
に部会(観光部会など)を作り、より機動的に動くことのできる体制づく
りからまず始める。県も参加予定と聞いている。
下伊那地方事務所
8
№6 JR飯田線の利用促進について
◆JR東海に対して
・鼎駅を利用する高校生を例にとると、今の飯田線のダイヤだと、特に北
方面について部活帰りの高校生の足が確保できていない。本数の増加を要
望したいが、JR東海としては経費削減のために効率化・合理化を追求し
ている以上、過剰な設備投資はできないだろう。
・JR東海の目は完全にリニア中央新幹線に向いているため、不採算路線
である飯田線にこれ以上のサービス向上は期待できない。
◆イベントについて
「秘境駅号」の飯田市宿泊版を来年度JR東海と連携して開催する予定
である。予算額は 1,334 千円。
宿泊地である昼神温泉まで利用者を送迎する貸し切りバスを、飯田市で
手配する予定。
◆県への要望
期成同盟会に県も加わるが、JR東海は県を窓口として対応するだろう。
期成同盟会は広域に渡るものとなるが、広域的な事務については県の方が
市町村よりも当然長けているので、協力をお願いしたい。
イ
泰阜村
調査日 平成 25 年6月 21 日
◆飯田線の利用状況
・泰阜村内には5つの駅があると考えている。地籍的には飯田市地籍の駅
もあるが、村民が利用している。
・飯田線の利用状況は下り方面が飯田市内の高校の通学、上り方面が阿南
高校への通学と阿南病院への通院である。
◆他の公共交通機関との連携状況
・広域連合の公共交通の取組として、村を縦断し、天竜峡駅までバスが 1
日 1 往復している。これは主として通学利用である。
・その他、村の高齢者にタクシー券を配布して利用促進を図っている。
◆イベントの開催状況(観光地への誘導)
・JR東海で春にウォーキングを開催している。
・その他にJR東海で毎年秘境駅号を春と秋の2回運行しており、田本駅、
金野駅に停車している。
◆駅周辺の環境整備の状況
・温田駅、門島駅はトイレが設置されており、駅構内の清掃も含めてJR
東海が外部に委託している。唐笠駅については泰阜村が下條村からの負担
金も含めてトイレの清掃等を外部に委託している。
・温田駅周辺に単身者用のアパートを整備し、阿南病院の職員が入居して
いる。駅周辺には、食堂があり単身者がよく利用している。
下伊那地方事務所
9
№6 JR飯田線の利用促進について
◆JR東海への要望
・温田駅付近には、阿南高校、阿南病院があり、地域の主要駅になってい
るので、駅員の配置を要望したい。
・天龍村から阿南高校へ通学する場合、定期券は天竜峡駅まで行って買わ
なければならず不便であることから、温田駅での販売を要望。
・今ある駅を残していただきたい。特に、門島駅について、利用者は少な
いが、旧三信鉄道の拠点であり、列車交換施設もある。
・今後、下伊那南部の町村が、駅存続に関しJR東海から応分の負担を求
められた場合は、非常に苦しい事態に陥る。
ウ
阿南町
調査日 平成 25 年7月 31 日
◆飯田線の利用状況
阿南病院への通院及び阿南高校へ通学には、飯田線が必要不可欠。
※阿南高校:生徒の 70%がJRを利用(219 人/313 人)
◆他の公共交通機関との連携状況
・下伊那南部5町村で運行する南部公共バスは、飯田線の各駅(温田・天
竜峡・川路・飯田)と接続している。
・利用者は主に高校生や高齢の通院者で、H21 年から実証運転しているが、
利用者は増加している。運賃は低額で、国の補助金を利用している。
◆飯田線を利用してのイベントの開催状況(観光地への誘導等)
・JR東海のイベント企画は駅長次第で、3年前は駅長が知人であったた
め、イベントを誘致した。
・豊川稲荷初詣ツアーを特急伊那路の新設記念として企画し、当時は、阿
南町・泰阜村・天龍村で各1両の3両編成だったが、参加者が減少し、今
年の開催は見送られた。
(東海ツアーズと信州アトムで企画)
・さわやかウォーキングはJR東海の企画で実施され、JR東海で案内板
等を設置し、町は温田駅で特産品等を販売した。
◆JR東海への要望
・近年、イベント列車の減少が懸念される。利用客が増加するよう、新た
なイベント列車の企画を要望したい。
・民間事業者が企画した「飯田線紅葉見学ツアー」客を町内にも呼び込み
たい。
◆県への要望
・秘境駅などの観光資源が飯田線に存在するが、県の情報発信力を最大限
活用して全国的な情報発信をしていただきたい。
下伊那地方事務所
10
№6 JR飯田線の利用促進について
エ
天龍村
調査日 平成 25 年7月 27 日
◆飯田線の利用状況
・飯田線の利用目的として、病院への通院と高校生(小・中学生)の通学
が主となる。
・県外からの通勤者及び観光目的利用者が存在する。
◆他の公共交通機関との連携状況
・平岡駅から飯田線ダイヤに接続し、村営バスが1日4往復しており、高
齢者の通院や温泉施設へ行くために利用している。
・乗合タクシーが平岡駅から飯田市南信濃の中心地まで1日5往復してお
り、通院・通学に利用している。
◆イベントの開催状況(観光地への誘導等)
・村では平岡駅を利用した新緑、初秋、紅葉列車ツアーを行っている。
・村内駅を利用する「さわやかウォーキング」を年2回開催している。
・今年度、ツアー会社が中井侍駅を中心とした列車ツアーを計画中である。
◆駅周辺の整備状況
・平岡駅に「龍泉閣」という複合施設を併設し、村の観光拠点となってい
る。
・伊那小沢駅には、県内で一番早く咲くカンザクラが駅構内にあり、近隣
住民が管理している。
◆JR東海への要望
・天龍村から阿南高校に通学する場合、定期券を天竜峡駅まで購入に行か
なくてはならないため、数カ月に1回、近隣駅で定期券を販売してほしい。
・高校の朝練に間に合う列車を設定してほしい。
・緊急時の連絡手段として、無人駅に電光掲示板を設置してほしい。
オ
南信州広域連合
調査日 平成 25 年8月9日
◆他公共交通機関との連携について
・バスとJRとの乗り継ぎマップを作成し、配付している。
・飯田線利用者で一番多い高校生を対象に飯田線についてアンケートを行
ったが、不便だという意見が多かった。不便さをバスやタクシーで補うこ
とになるが、結果JRの乗客を減らしかねない。
・バス等他の交通機関からの乗り継ぎでJRの運賃を安くするなどの案が
あったが、JR東海が了承しない。
・スマートフォンでバスの時刻を確認できるが、JRは別サイトになって
しまい利便性がよくない。
下伊那地方事務所
11
№6 JR飯田線の利用促進について
・バスの場合JRに比べ、どこに停車するのか分かりづらく、乗りづらい
イメージがあるので、安心して乗車できる方法を検討する必要がある。
◆JR東海と南信州広域連合について
・南信州広域連合内に南信州交通問題協議会があり、JR東海もその一員
となっている。例年は年2回の開催で、支社長は総会のみ出席で、その他
は係長が出席している。
・毎年要望を出しているが、聞き入れてもらえることもあり、今年は 1 本
増便された。
・JR東海の情報について、ある程度は提供してもらえる。
◆飯田線を使ったイベントについて
・大鹿村で登山バスが夏季限定で運行している。伊那バスが企画しており、
伊那大島駅を出発するが、飯田線とのアクセスが悪い。
・秘境駅号について、駅に到着しても降りるだけで、イベントなどは何も
ないので、駅で降りた後のイベント等考える必要がある。
・10 年前「JR飯田線フォトコンテスト」を開催し、40 作品に賞をつけた
が、広報などに効果的であった。
◆今後の飯田線の振興について
観光客や鉄道ファンだけでなく、地域住民が飯田線に愛着を持てるよう
な企画が必要になる。具体的には、次の案が考えられる。
・駅の愛称(駅名とは別に)を募集し、地区民で駅の美化を行う。
・無人駅の再利用として商業施設を誘致する。
・名古屋駅で写真展を行い、秘境駅等の飯田線の魅力を知ってもらう。
・南信州のゆるきゃらを作る。
◆JR東海への要望
・朝の通勤・通学ラッシュ時の車両を増やして欲しい。
・飯田線のことについて、我々が考えていてもJR東海にやる気がない。
JR東海自身も地域のことなのでもっと本気で考えて欲しい。
◆県への要望
・市町村や広域連合よりも県の方がJR東海に影響力があるため、県から
要望をJR東海に伝えて欲しい。
・市町村ごとに温度差があるため、とりまとめをお願いしたい。
下伊那地方事務所
12
№6 JR飯田線の利用促進について
(8)現状・課題のまとめとありたい姿
現状・
課題
通 学 区 間
秘 境 区 間
【生活路線】
【観光路線】
沿線上に主要企業・商業施設・
秘境駅や絶景スポットが多く、
公共施設がない
ファンに人気
▼通勤・通学時間帯を除き、
▼トンネルや支障木により、
乗車率が 10%を下回る
景観が損なわれている
▼通勤・通学客の9割が学生
▼イベント列車の減少
利用者減少による鉄道サービスの低下
ありたい姿
利 用 客 の 増
路線・便数の維持
住民の「足」を守る
天龍峡の絶景
下伊那地方事務所
13
№6 JR飯田線の利用促進について
2
施策の検討案
「1
た。
飯田線の現状・課題」を踏まえ、利用促進に係る検討を次のとおり行っ
施策名
内容
効果
駅と公共施設(学校・病院等)とを
①他交通機関と 繋ぐバス・タクシーとの連携を主要
の連携(デマン 駅に広める。
生
ド交通)
⇒広域連合や飯田市が中心となり、
活
整備が進んでいる。(※)
路
主要駅近くに駐車場等を整備するこ
線
②パーク&ライ とで、よりJRを利用しやすい環境
ド専用駐車場等 を整備する。
の整備
⇒課題が多く、研究テーマとしては
乗継によるJRの
利用(主に昼間)
↓
利用客の増加
JR利用者数の増加
駅前の活性化
発展が望めない。
・沿線支障木を撤去することにより、
③支障木伐採事 望はもちろん、鉄道写真愛好家から
観
業
も喜ばれるよう整備を行う。
・整備後は、フォトコンテストを開
路
催し、広く飯田線の魅力をPRする。
線
・リゾート列車を企画し、試行とし
④リゾートトレ て夏休み期間の土曜日に運行させ、
インツアー事業
その季節に見合った伊那谷の伝統文
化や食等を車内で振る舞う。
↓
観光客の増加
リピーターの確保
↓
研 究
光
飯田線の人気向上
研 究
絶景スポットを広げ、車窓からの眺
観光客の増加
※①については、次のとおり既に取組みがされており、試行的段階のものもあ
ることから、当面は各取組みを見守ることとする。
名称・路線名
営業主体
接続駅
行先
大鹿線
大鹿村・伊那バス(株)
伊那大島
大鹿村内
まつかわフルーツバス
松川町・伊那バス(株)
伊那大島
松川町内
広域バス
飯田市・信南交通(株)
飯田
喬木村・豊丘村内
阿島線
駒場線
阿智村・平谷村・
根羽村内
下伊那地方事務所
平岡線
平岡
飯田市南信濃内
遠山郷線
飯田
飯田市南信濃内
14
№6 JR飯田線の利用促進について
名称・路線名
市民バス
循環線
営業主体
接続駅
行先
飯田市・信南交通(株)
飯田
飯田市内
天龍村
平岡
天龍村内
温田線
下伊那南部地域公共交通 温田
売木村内
阿南線
対策協議会
阿南町・下條村内
大休線
千代線
久堅線
三穂線
天龍村村営バス
南部公共バス
川路
大新東(株)阿南営業所
泰阜線
下伊那南部地域公共交通 天竜峡
泰阜村内
対策協議会
マルトハイヤー本社
喬木村営バス
喬木村・信南交通(株)
飯田
喬木村内
乗継バス(飯田市)
飯田市
鼎
飯田市内(病院・
伊那八幡
学校・アピタ)
【運行実験】
飯田駅
◆開業:1923(大 12)年 8 月
◆乗車人員:1,066 人/日
飯田・下伊那地域の飯田線各駅
の中で最も乗車人員が多い。駅舎
は 1992(平 4)年に改築された。
赤は、飯田市のシンボル「リンゴ」
をイメージしている。今では、駅
前に発着する高速バスに客が流れ
ている。
天竜峡駅
◆開業:1927(昭 2)年 12 月
◆乗車人員:317 人/日
飯田線沿線で重要な観光地の一
つである天竜峡は駅のすぐ東側。
しかし観光客は最盛期の半分に激
減し、駅近くにあった老舗ホテル
は姿を消した。三遠南信自動車道
のインターが開通し、飯田市は天
龍峡活性化事業に取組んでいる。
下伊那地方事務所
15
№6 JR飯田線の利用促進について
3
支障木伐採事業
(1)現状認識及び目的
鉄道本来の機能である「移動手段」として飯田線を評価した場合、天竜峡駅
以南については、天竜峡駅以北と同様、通勤・通学時間帯に利用のピークを迎
え、それ以外の時間帯では乗車率は数パーセント台まで落ち込むことから、大
部分の飯田・下伊那地域住民の「生活の足」として、これ以上の通勤・通学客
の増加を天竜峡駅以南について望むのは非常に厳しい現状である。
天竜峡駅以南の飯田線は、天竜川沿いの険しい渓谷に敷設されているため自
然公園の絶景を望むことができるが、沿線の雑木のため車窓から十分に風景を
眺めることができず、地域の資源を十分に活用できていない。
そこで、飯田線を従来の生活路線として利用するだけでなく、雑木を伐採及
び森林整備を行い、車窓から自然公園を眺望できる「絶景ポイント」を創出す
ることで飯田線の乗車による効用を高め、県外や県内他地域の利用客に対する
イベント等の開催により飯田・下伊那地域の魅力を発信し、もって飯田線の利
用促進につなげる。
(2)森林整備に係る規制及び協議
ア 自然公園法
天竜峡駅以南の飯田線は、自然公園「天竜奥三河国定公園」の特別地域内
にあることから、森林整備として木竹の伐採を行うには自然公園法上の手続
が必要となる。
なお、自然公園法施行規則第 12 条第1項第 14 号では、
「森林の保育又は電
線路の維持のために下刈りし、つる切りし、又は間伐すること」は、自然公
園法の適用除外となると規定しているため、純粋な意味での森林整備につい
ては同法の手続は不要である。
ただし、車窓からの景観整備を目的とした整備を行う場合は、同法施行規
則第 12 条第1項第 14 号の適用除外とはならないため、自然公園法の規制に
適合した施工方法を遵守しなければならない。
イ 森林法
天竜峡駅以南の飯田線沿線は保安林にも指定されているため、森林法に基
づく手続が必要となる。
自然公園法で規制のかからない森林整備としての間伐を実施する場合、間
伐により当該森林の樹冠疎密度が 8/10 程度とすることが基準となる。
ウ 線路内作業におけるJR東海との協議
作業前に鉄道管理者・鉄道保有者であるJR東海との事前協議が必要とな
る。なお、雑木の伐採に当たっては、地権者の所有権に抵触するため、事前
に協議する必要がある。
下伊那地方事務所
16
№6 JR飯田線の利用促進について
(3)実施方法
車窓からの絶景を確保するため、森林整備を行うに当たっては以下の点に留
意する必要がある。
ア 伐採ポイントの選定
森林整備を行うに当たっては、飯田線が天竜川の渓谷に敷設されているた
め、作業は危険が伴うことから、安全性を考慮した方法が求められる。
なお、伐採ポイントの選定に当たっては、森林整備のみならず地域振興の
側面もあるため、安全性を前提に、地元自治体及び観光協会の協力も欠かせ
ない。
イ 技術基準の適合(自然公園法・森林法・鉄道の安全面等)
関係法令の基準に適合した施工方法による。
ウ 実施主体
森林整備の実施主体としては、沿線の市町村のほか、飯田・下伊那地域の
「南信州広域連合」による協力は必須であり、鉄道保有者及び鉄道管理者で
あるJR東海の全面的な協力のもとで行う。
エ 実施時期及び工期
森林整備に適した8月から 12 月にかけて行う。なお、具体的な工期のスケ
ジュールとしては、設計に1ヶ月、公告に1ヶ月、作業及び検査に3ヶ月程
度の期間を要する。
森林整備による効果
伐採前の景色
伐採後の景色(イメージ)
(4)森林整備実施後のイベント
飯田・下伊那地域のみならず、他県・他地域からの誘客による利用者の増加
を図るため、森林整備後においては、主に東海地方において飯田線の魅力を発
信するイベントを開催する。
特に、鉄道写真撮影愛好家である、いわゆる「撮り鉄」に飯田線の車両を撮
影する機会を提供し、フォトコンテスト等のイベントを開催することで飯田・
下伊那地域の魅力を発信し、もって飯田線の利用促進につなげる。
下伊那地方事務所
17
№6 JR飯田線の利用促進について
事業内容
森 林 整 備
フォトコンテスト
目的
車窓からの眺望を確保し、飯田線の 飯田線の魅力を地域内外へ発信す
乗車による効用を高める
る
内容
・伐採ポイントの選定
・事前PR
・技術基準の適合(自然公園法・森
・展示会及び表彰(東京・名古屋
林法・鉄道の安全面等)
等)
・雑木の伐採
主体
JR東海、市町村、南信州広域連合、
南信州広域連合、長野県
長野県
時期
8月から 12 月
森林整備後の次年度
場所
飯田線
飯田線
天竜峡駅~中井侍駅
長野県区間
(5)所要額
森林整備にかかる諸経費及びフォトコンテスト開催経費については下表のと
おりである。
事
業
内
森林整備(伐採面積 10ha)
(森林区域=実際の伐採面積ではない。)
フォトコンテスト
合
訳
費
本数調整伐
4,515,840
枝落し
2,492,530
列車見張員
4,800,000
調査委託費
2,000,000
事前PR関係
390,000
表彰・展示会関係
730,000
計
14,928,370
南信州広域連合主催「JR飯田線フォトコンテスト」(H19)
出
典:長野県南部ローカル線の旅
用(円)
グランプリ作品
タイトル
「茶畑を走る特急伊那路」
撮影場所
中井侍
撮 影 者
山田
勝
さん
スロートラベル飯田線で行く南信州の旅
http://iidasen.ii-s.org/static/spe0201.html
下伊那地方事務所
18
19
20
№6 JR飯田線の利用促進について
☆トピック
「平成 25 年9月台風 18 号災害で被災した飯田線」
平成 25 年9月 16 日から 17 日にかけて台風 18 号が本州を通過し、長野県南部に
甚大な被害をもたらした。飯田線は下伊那郡泰阜村黒見地籍(門島駅から北に約1
km)で発生した土石流により鉄橋が閉塞し軌道敷に土砂が堆積したため、約1ヶ月
間天竜峡駅から平岡駅の区間が運休となり、代行バスによる振替輸送が行われた。
被災箇所の南には温田駅があり、そこには、阿南高校・阿南病院・阿南警察署等
の公共施設が立地しており、特に高校生の通学が不便であった。また、秘境駅区間
のため、代行バスが寄れない駅(千代・金野・田本・為栗)もあった。天竜峡駅か
ら北上する飯田線にも代行バスとの接続の関係から、一部の列車でダイヤの変更が
あった。
天竜川渓谷の秘境駅が続く利用者が少ない区間ではあったが、電車の運休が地域
に与えるダメージは様々な面に波及する事を改めて実感させられた。
堆積土砂の量から当初は橋梁が破損し橋梁交換が必要と想定され、復旧に3ヶ月
が必要と言われていたが、土砂を撤去し詳細な点検を行った結果、奇跡的に橋梁・
レール・枕木等に著しい破損が無かったため、早期の運転再開となった。
土石流が発生した沢の上流部を調査すると崩壊した沢の源頭部に激しい水の流下
痕があり、さらにこれを遡ると道路に出た。局所的なゲリラ豪雨により道路の路面
水が集中して流下したものと思われる。一方、温田駅の東側でも斜面崩壊が発生し
下部の県道まで土砂が流出した。これは、廃屋の雨水排水が直接斜面を流下したた
めに崩壊が発生したものである。いずれも過疎地域において管理が行き届かない箇
所で災害が発生しているようである。
このことから、過疎地域における災害防止対策として、以下の対応が必要である。
①
②
③
④
下伊那地方事務所
道路排水の管理
管理者不在の家屋の雨水排水管理
排水されている先(沢や小河川)の安全確認
(崩壊等危険性の有無)
管理・保全するための施策の確立
21
№6 JR飯田線の利用促進について
4
リゾートトレインツアー事業
(1)各地域のイベント列車
ア 飯田・下伊那地域で開催されたイベント列車
内
容
企画者
豊川稲荷初詣ツアー
・特急伊那路の新設記念 ・ J R 東 海
として企画。
ツアーズ
定
員
備
参加者
170 名
考
・参加費:10,000 円
~10,800 円
30~45 名
・当時は、阿南町・泰阜 ・ 信 州 ア ト
・H21 から信州アトムと
村・天龍村で各1輌の3 ム(阿南町)
共催。それ以前は各町村
輌編成だったが、3町村
の観光協会などが受け
で1輌となり、H25 の開催
持っていたが、近年参加
は見送られた。
者が少ないことから、
H25 より休止。
バスツアーにて天竜峡
・伊那路グ
25 名~
新緑・初秋・紅葉列車
(旅行会社
・参加費:コースにより
駅から飯田線で平岡駅等
ループ
変動
に移動し、自然を満喫し
・旅行会社
による)
・期間合計は天龍村観光
ながら地元の料理を食す
・天龍村観
期間合計
協会共催ツアーの合計。
等季節ごとのおもてなし
光協会
503 名
村と無関係の旅行会
を行う。
・ていざな
社ツアーも随時行われ
す生産組合
ており、天竜峡駅~平岡
駅近辺を利用したツア
ー人口はより多いと思
われる。
・H22 より開始、秘境駅で ・JR東海
3両編成
・料金は区間の料金+特
秘境駅号
の停車時間を長く設定し
100 名以上
急料金
たことにより、駅周辺を
(11 月の平
・大嵐・小和田・中井侍・
散策できるため、1日で
日に確認)
為栗・田本・金野・千代
秘境駅をすべて回ること
の各駅にて 10~20 分停
が出来る。
車する。
・豊橋駅~飯田駅間上下
線各 1 本運行。
・4月と 11 月の新緑・紅
葉の季節に合わせて開
催。
下伊那地方事務所
22
№6 JR飯田線の利用促進について
イ
その他地域で開催されているイベント列車
内
容
企画者
定
員
備
参加者
考
「ほたる飛び交う伊那谷北部」の
ウォーキング(JR飯田線)
・辰野駅から歩き、ゴー
・上伊那北
500 名
・参加費:一般 500 円
ル後電車に乗って辰野駅
部観光連絡
180 名
小学生以下 200 円
まで戻る。
協議会
・もみじちゃんコース
・辰野駅に戻った後、蛍
(辰野駅~伊那松島
祭りに参加。
10km)と、まっくんコー
【開催日】
ス(辰野駅~北殿駅
H25.6.16(土)
15km)の 2 コース。
辰野駅⇒伊那松島駅
・H25 元気づくり支援金
辰野駅⇒北殿駅
活用事業(総事業費
1,320 千円うち支援金
858 千円)
(JR飯山線)
走る 農家レストラン
・駅ごとに地元食材を利
・飯山市
用した料理が振舞われ、
・JR東日
車内で景色を見ながら料
本
2両編成
74 名
・参加費
北野天満温泉コース
おとな 4,500 円
理を楽しむ。
こども 4,000 円
・終点駅でのパフォーマ
絵手紙体験コース
ンスと、温泉入浴や絵手
おとな 5,900 円
紙体験を行い、復路は地
こども 5,400 円
元の野菜等の販売を行
(どちらも長野駅発着の
う。
場合)
【開催日】
・佐久平駅・上田駅・上
H25.6.29(土)
諏訪駅・塩尻駅・松本駅
からの設定もある。
・車内で生ビール飲み放
・しなの鉄
題、地元の店の料理も振
道
3両編成
満員
・参加費:3,900 円
(長野駅から乗車の場
ビール列車
し(なの鉄道 )
舞われる。
合)
・途中の駅で停車し、地
・日によってビールメー
元商品の購入も行える。
カー(アサヒ・キリン・
【開催日】
サッポロ・サントリー)
H25.7.26(金)7.31(水)
が異なる。
8.7(水)8.23(金)
8.30(金)9.6(金)
下伊那地方事務所
23
№6 JR飯田線の利用促進について
(2)先進地視察
ア 視察路線
岐阜県恵那市明知鉄道
イ 明知鉄道の概要
(ア)沿革
昭和 60 年に国鉄明知線を引き継ぎ、第三セクター明知鉄道株式会社開業
(イ)営業範囲
旅客運輸事業および付帯関連事業
(ウ)営業線名、営業キロ及び駅数
恵那駅~明智駅 25.1km 11 駅(有人3駅、無人8駅)
(エ)他線との接続状況
JR中央本線・恵那駅
(オ)列車本数
恵那駅~明智駅間 【平日】14 往復(旅客) 【土日祝】13 往復(旅客)
(カ)配備車輌
DC(アケチ型)6両 定員 94 人/両(座席 44 人、立席 50 人)
ウ 視察結果
・
「急行大正ロマン号」では、季節ごとの地元食材を使ったグルメ食堂車を7
名以上の予約で運行している。復路はフリー切符となっており、何度でも途
中下車が可能。岩村駅での岩村城跡の散策、花白温泉駅での温泉入浴等、途
中駅での観光も楽しめる。
・「列車愛称命名権(ネーミングライツ)」を発売(1往復 5,250 円)し、プ
レートがプレゼントされる。
・つり革広告を 1 年間 5,000 円で販売している。
・極楽駅新設に当たり、地元岐阜県に本社があるスーパーマーケット「バロ
ー」から費用の半額に相当する出資金が寄せられた。
・飯羽間駅付近の景観は「農村景観日本一」に認定されている。
・阿木駅付近は全国有数のシクラメンの産地として知られており、平成 25 年
12 月 15 日には、
「恵那のシクラメンの学校列車」というイベント列車が運行
した。参加者は恵那農業高等学校の生徒の講義を受けたり、シクラメンの寄
せ植え体験等を行った。
・終点の明智駅では、大正時代の建造物や景観を残した「日本大正村」があ
る。
・各駅に、散策コースを表示した看板が設置されている。
・沿線に広がる農地の畔や、鉄道敷の築堤斜面が全線に渡り綺麗に管理され
ていたため、沿道景観がとても美しい。
・リニア中央新幹線や、地元企業のラッピング電車が走っている。
下伊那地方事務所
24
№6 JR飯田線の利用促進について
エ
まとめ
今回の視察を通じ、地方の鉄道が活気を取り戻すためには、「地域との連携」
が重要であることがわかった。
「鉄道会社が主体的に取組むこと」と「自治体・
地域が主体的に取組むこと」とがマッチングできれば、鉄道は単なる輸送手段
ではなく、沿線自治体、地域及び鉄道会社が一つのコミュニティーとなり、地
域の振興に直接結び着く。
すでにこのような取組みを実施している私鉄も数多くある。一方で首都圏の
大手私鉄で輸送状況の変化に対応できない路線は、不採算路線となっている。
飯田線経営者のJR東海が培ったノウハウを参考に、各地域のコミュニティ
ーを形成し、それを飯田線で結ぶと面白い地域に変貌すると期待する。
(3)リゾートトレインのねらい
ア なぜリゾートトレインを計画するのか
(ア)飯田線の利用者が減少する中で、
「土・日・祝日」の利用者増加対策と位
置付けながら、飯田線の魅力を長野県外の多くの方に把握してもらう。そ
のため、飯田・下伊那地域に留まるのではなく、上伊那地域とも連携し、
飯田線の魅力を発信していく。
(イ)地域振興策として、伊那谷の魅力を列車内で乗客が満喫してもらえる「自
然景観・伝統芸能・食」を通じたサービスを行い、伊那谷への誘客を連携
付ける「きっかけづくり」の列車とする。
イ イベント列車との違い
イベント列車は乗客の大半が沿線住民であり、1回限りの単発的な企画列
車として運行されることが多いため、恒常的な利用者の増加や地域振興には
結び付かないと考えられる。一方、今回提案するリゾートトレインは一定期
間列車を運行し、首都圏から集客することにより県外来訪者の飯田線の利用
増加が見込まれ、また、車内サービスにより伊那谷に興味を持たれた方は、
次回は自身の目的で伊那谷に再来することが期待できるため、地域振興への
波及効果を望むことができる。
(4)リゾートトレインの内容
ア リゾートトレインの愛称
「おいなんよ 伊那谷」号
「おいなんよ」とは下伊那地方の方言で、親しい人に「いらっしゃい、
おいで」を表す言葉であり、親しみをこめて「伊那谷においでよ!」と
いう意味になる。
下伊那地方事務所
25
№6 JR飯田線の利用促進について
イ
リゾートトレインの編成
飯田線の各駅の有効長が最大4両なので、2~4両編成となる。車内で食
事をし、くつろげる空間も必要なので、最低でも現行の特急用普通車輌を充
当する必要がある。
最大乗車人員は3両で約 130 名、4両で約 180 名を想定。
ウ リゾートトレインの運行時期
4月下旬~5月上旬、7月下旬~8月下旬、9月中旬、10 月中旬~11 月中
旬の土・日・祝日
エ リゾートトレインの運行区間と特徴
(ア)伊那松島駅から飯田駅まで
・甲斐駒ケ岳、仙丈ヶ岳の雄大な南アルプス
・木曽駒ケ岳、宝剣岳、空木岳、越百岳の雄々しい中央アルプス
・中田切川、与田切川を渡る里山オメガカーブ
・天竜川左岸の中山間地の景観
・沿線に散在する果樹園
(イ)豊橋駅から飯田駅まで
・飯田松川を渡る街中オメガカーブ
・天竜峡駅~水窪駅間の「秘境駅区間」に散在する渓谷美、時間や音の無
い絶景の世界
オ 乗車時間
2つの運行区間ともに約3時間と設定し、そのうち1時間を車内サービス
に充当し、2時間を列車の旅を味わう時間とする。約3時間という設定は、
乗車時間2時間では物足りなさを感じ、一方、乗車時間3時間を超えると飽
きてしまうため、一番客に満足してもらえる時間の範囲と考える。
カ 車内サービス
(ア)伝統芸能の実演・文化の紹介
芸
能
箕輪町
大鹿村
飯田市
阿南町
天龍村
伊那市
伊那市
文
駒ヶ根市
化
喬木村
古田人形(人形浄瑠璃)
大鹿歌舞伎
今田人形、黒田人形(人形浄瑠璃)、お練祭、霜月祭
早稲田人形(人形浄瑠璃)、和合念仏踊り、新野雪祭
坂部の冬祭
長谷・中尾歌舞伎
竹沢長英(登山黎明期の南アルプス開拓者)
光前寺と霊犬早太郎(伝説)
椋 鳩十(童話文学)
以上の伝統芸能や伝記・伝説・文学などについて、列車内で約 20 分程度
の実演や朗読を行い、伊那谷の地域に根付いている物を広く紹介し、知っ
てもらう。
下伊那地方事務所
26
№6 JR飯田線の利用促進について
◆大鹿歌舞伎(大鹿村)
300 年余りの伝統を誇り、平成8年
に、地芝居では全国初の国選無形民
俗文化財の指定を受けた。
春と秋の年2回の定期公演。
2011 年には映画「大鹿村騒動記」
が放映され注目を集めている。
(イ)伊那谷が育んだ「おいしいもの」の提供
メインディッシュ:クマ・イノシシ・シカ肉等のジビエ料理
信州アルプスサーモン
副
菜:各市町村で生産されている“旬の野菜”
デ ザ ー ト:各市町村で生産されている“旬の果物”
ド リ ン ク 類:梅ジュース、リンゴジュース、赤石銘茶、天龍銘茶、
ワイン、清酒、南信州地ビール等
特に南信州では、早春から初冬にかけて「信州の伝統野菜」をはじめ
“旬の野菜や果物”が目白押しとなるため、1ヶ月ごとに副菜やデザー
トのメニューを変えた軽食の提供が可能。
現在全国で運行されているリゾート列車で1ヶ月ごとにメニューが変
わる列車は無いと思われる。
「南信州・伊那谷の泥臭いけれど、なつかし
い味」あるいは「豪華さ華やかさは無いけれど、やっぱりおいしいもの」
が月毎に提供できれば、「食」を楽しむリピーターの確保も可能となる。
◆ジビエ料理
鹿肉の唐揚げ
下伊那地方事務所
鹿肉の赤ワイン煮込み
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№6 JR飯田線の利用促進について
(5)リゾートトレインの販売戦略・商品
ア 販売戦略
旅行業者とタイアップして、首都圏からの誘客を狙う。年齢層は、30~50
歳代のサラリーマン世代及び 60 歳代以上のシルバーエイジをターゲットと
する。前者には都会で働く人々に思いもよらない「非日常」を、後者には「南
信州・伊那谷の素晴らしさ」をセールスポイントとして販売する。
特に、関東地方において伊那谷の認知度は低いが、逆に新鮮で、しかも質
の良いサービスが享受でき、手軽に利用できる旅行商品があれば、販売は可
能と思われる。伊那谷の認知度が関東地方で低い理由は、飯田線がJR東海
(国鉄時代:静岡鉄道管理局)の管轄にあり、関東地方を中心とするJR東
日本(国鉄時代:東京西鉄道管理局)において管轄外である飯田線に関わる
旅行商品を積極的に販売して来なかったことが理由の一つだと考えられる。
イ 商品設定
手軽に利用できる商品として、日帰りと1泊2日ツアーの2本を用意
(ア)日帰りツアーの内容
首都圏から列車乗車駅の伊那松島駅・豊橋駅までは専用ツアーバス又は
東海道新幹線を利用し、列車終着駅の飯田駅から首都圏までは専用ツアー
バスを利用。
所要時間を 10 時間から 12 時間とし、料金設定は大人1名 10,000~20,000
円を想定する。
(イ)1泊2日ツアーの内容
日帰りツアーに宿泊を組込む。宿泊候補地は以下のとおり。
・大鹿村 小渋温泉又は鹿塩温泉(山中の秘湯)
・飯田市上村 ハイランドしらびそ(南アルプスの山懐の宿)
・飯田市上村 下栗ロッジ(天空の里の宿)
・阿智村 昼神温泉(南信州を代表する温泉)
昼神温泉以外は、都会から隔絶された山中での宿泊となるため、
「非日常」
を体感できる絶好の宿泊地である。
料金設定は大人1名 22,000~40,000 円を想定する。
(6)リゾートトレイン運行の効果
リゾートトレインの運行による波及効果は以下のとおり。
・伊那谷の「伝統芸能・食・自然景観」を乗客へ効果的に紹介できること
から、リピーターの確保が期待できる
・伊那谷の観光産業の活性化
・農産物や特産品の販売促進や販路拡大
・飯田線の知名度アップ
下伊那地方事務所
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№6 JR飯田線の利用促進について
(7)将来を見据えて
伊那谷の「ひと昔前の日本の風景」「素朴ななつかしさ」「南信州・伊那谷の
泥臭いけれど、なつかしい味」
「豪華さ華やかさは無いけれど、やっぱり美味し
いもの」を武器にした「レトロ感溢れる飯田線」の小旅行が、今の時代だから
こそ、首都圏の人々にとって価値のある「癒し」や「非日常を体験できる」商
品となる。
したがって、今回の提案以外にも、多くの魅力発信の素材が伊那谷にはある
ため、これらの素材を結び付けながら「おいなんよ 伊那谷」号に乗せていくこ
とが必要になる。
また、リニア新幹線が開通するまでの間に、伊那谷の素晴らしさを世間に認
知してもらえれば、リニア新幹線開通に併せた新たな観光戦略が浸透し易くな
るものと思われる。
そして、もう一つ重要な課題がある。リゾートトレインの車輌の問題である。
当面はJR東海の特急用車輌を間合い運用するが、ある時期からは、飯田線に
相応しい「鉄道ファンならば一度は乗車してみたい車輌」を導入することも必
要になる。例えば、ED19 型電気機関車の復元と専用客車3両の新製が一案と
して考えられる。列車も内容も常に進化させる必要があると思う。
(8)「おいなんよ 伊那谷」号の販売見込み
(1)アの表のとおり、現在、飯田線では新緑と紅葉の時期に、急行「秘境
駅号」が運行されている。首都圏からの利用者が多く、乗車率の高い列車とな
っている。
また、伊那大島駅から飯島駅間の飯田線を乗車するというツアーが関東方面
で商品化されている。
この2区間においては、現在でも県外の利用者があることから、同区間を走
る列車に付加価値を設ける「おいなんよ 伊那谷」号には、一定の需要が見込
めるものと考える。
(9)所要額
リゾートトレイン「おいなんよ
ては下表のとおりである。
内
訳
伊那谷」号ツアー事業にかかる経費につい
費
用(円)
団体列車借入保証金
2,920,000
車内サービス(飲食費)補助
1,500,000
伝統芸能等催事補助
2,000,000
アテンダント配置補助
合
下伊那地方事務所
計
800,000
7,220,000
29
№6 JR飯田線の利用促進について
おわりに
今回、研究の中で乗車状況調査を行ったが、通勤・通学の時間帯を除
いた昼間の乗車率が極めて低く、また、通勤手段として飯田線を利用し
ている会社員も1割程度と少ない。この調査で不採算路線となっている
要因を目の当たりにした。
当グループでは、飯田線の利用促進策として主に観光路線としての研
究を行ったが、本来は、生活路線としてどう乗客を増やし、飯田線を維
持していくかが最大の課題である。今後は、飯伊地域の市町村は勿論の
こと、上伊那地域とも更に連携を密にし取り組んでいくことが重要であ
る。
三遠南信自動車道や 14 年後のリニア中央新幹線の開通を控え、今後、
飯伊地域は大きく変わることとなるが、是非良い方向に変わり地域が活
性化されるよう、また、新交通体系の中で飯田線の存在が不可欠なもの
になっていることを望みたい。
また、来年度は長野県の南北軸の交流拡大をコンセプトに全体で研究
することになるが、その研究の中で、飯田線の路線・便数が維持される
施策が盛り込まれるよう取り組んでいきたい。
JR飯田線 天竜峡駅
下伊那地方事務所
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