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成功する経営リーダーチーム 6 つの条件
成功する経営リーダーチーム 6 つの条件 Original Title:Senior Leadership Teams : What it takes to make them great ルース・ワーグマン 他著 ヘイグループ 訳 in brief 社内の精鋭を集めてチームを編成し、経営に当たる ―― 。 このチームによる経営を成功させる上で欠かせない、 「 6 つの 条件」を明らかにする。 ● グローバル化など、ビジネスを取り巻く環境の激変により、 生産性出版 2009 年 5 月 28 日発行/277 頁 2 , 940 円/ISBN 978 -4 -8201 - 1917 - 3 主要目次 1 章 英雄的な CEO の失墜と経営リー ダーチームの台頭 Ⅰ部 必須条件 2 章 チームが必要なのかどうかを見き わめる 他 Ⅱ部 促進条件 5 章 経営リーダーチームがうまく機能 するために必要な構造を作る 他 Ⅲ部 経営リーダーチームを率いる 8 章 チームを率いる能力を高める 他 著者紹介 Ruth Wageman ヘイグループ研究部長。 Debra A. Nunes ヘイグループのマクレランド研究イノベ ーションセンター副所長。 James A. Burruss 同イノベーションセンター上級副所長。 J. Richard Hackman ハーバード大学社会・組織心理学教授。 1 人のトップが全てを統率するのは難しくなった。そのため、 経営者を補佐する「経営リーダーチーム」を編成して、経営 に当たる企業が増えている。 ● しかし、それらは有効に機能しているとは言えない。その原 因は、成功を急ぐあまり、チームを入念に作り上げていない ことにある。経験を積んだ幹部がメンバーであっても、チー ムとして取り組むべき重要事項、共有された方向性がなけれ ば、うまくいかない。 ● 有効に機能する経営リーダーチームを作るには、まず、次の 3 つの「必須条件」を整える必要がある。 ①チームが本当に必要なのかどうか、どのようなタイプのチ ームが必要なのかを見極める。 ②重要で、チャレンジングで、心に響くような、明確な目的 を与える。 ③適切な能力を持った人材をチームに入れる一方、チームに 深刻なリスクをもたらす撹乱分子を除外する。 ● 必須条件を整えたなら、次の 3 つの「促進条件」を満たすよ う努める。 ①チームがうまく機能するために必要な構造を作る。 ②チームの成功に必要なサポートを与える。 ③適切なチーム ・ コーチングを実施する。 これらの条件が満たされれば、チームは必須条件によって築 かれた確固たる基礎を十分に生かすことができる。 27 成功する経営リーダーチーム 6 つの条件 増える「経営リーダーチーム」 チーム作りの必須条件 大企業であれ、小企業であれ、多くのリーダー では、有効に機能する本物の経営リーダーチー たちが、組織を効果的に運営するのは以前より難 ムを作るにはどうすればよいのか? しくなったと感じている。 世界中の 120 以上の経営リーダーチームを調 それは、激しい競争と容赦ない変化の中で、リ 査・分析した結果、チームを有効に機能させるた ーダーとメンバーの役割が変わったからだ。 めの 6 つの条件が明らかになった。 かつては、事業を地域ごとに管理すればうまく それは、 「必須条件」と「促進条件」に分ける 機能したかもしれないが、今ではグローバリゼー ことができる。まず必須条件は、次の 3 つである。 ションと成長に力点が置かれるようになり、業務 ①チームが必要なのかどうかを見極める の範囲、スピード、顧客とのつながりの濃密さが 最初の問題は、チームが必要だという差し迫っ 変わってきている。 たニーズがあるかどうかである。 経営チームは常に顧客のニーズが満たされてい 会社が、急速な成長段階にある、新分野に参入 ることを確認しなければならず、その仕事は待っ している、大規模な資本投下を計画している、と たなしである。 いった状況にあるのなら、あなたの会社はかなり 今日、トップに上り詰めても、その地位は決し 複雑な業務を行っているということだ。 て安泰ではない。例えば 1995 年、米国と英国で 管理しなければならない財務的資源、技術資 職を去った CEO のうち、72%は引退するか、在 源、人的資源が増大しているだろう。これには、 職中に死去していた。だが、2001 年にはそれは 間違いなくチームが必要である。 47%に下がり、CEO の更迭は 53%に跳ね上がっ 多くの経営者は、経営リーダーチームを作らな た。トップの仕事の厳しさがよく窺える。 くても何とか調整ができるのではないかと考える こうしたことから、多くの経営トップが自分を が、大抵の場合、その推測は間違っている。 補佐するチームを設けるようになった。だがそれ 経営リーダーチームがどう役立つか、それを は、うまく機能しているとは言えない。なぜか? IBM のケースで見てみると 1990 年代初め、IBM は勢いをなくしていた。 世界中の経営トップを調査したところ、次のよ だが、ルー・ガースナーがトップになり、統一の うなシナリオが繰り返されることがわかった。 ―― ―― 新社長がトップの地位を引き継ぐ。彼は、 とれたリーダーシップを確立したことで、業界の 会社の問題点を洗い出した後、経営リーダーチー リーダーとして再浮上することができた。 ムについて検討する。この時、具体的な情報が少 それを可能にしたのが、経営リーダーチームだ。 ないため、多くの場合、既存のメンバーでチーム ガースナーは、長い間、力を振るってきた経営 をスタートさせる。そして、直ちに会社の重要な 会議をなくした。この会議体は、全社的意思決定 問題に着手する。 に関わっていたが、形骸化していた。 つまり、成功への道を急ぐあまり、チームを入 彼は、そんな会議体ではなく、各ユニットを超 念に作り上げることを怠ってしまうのだ。経験を える課題について自分と話し合うチームが欲しい 積んだ幹部なのだから、助力や指示をしなくても と考えた。そこで、コーポレート・エグゼクティ 優れた運営が可能だろうと思い込むのである。 ブ委員会( CEC )を創設した。 それまで経営会議の権限下にあった業務上の問 しかし、それは不可能だ。皆それぞれ自分のテ ーマや責任を持っている。チームとして取り組む 題の解決や意思決定は各々の事業部門に委ねられ、 べき重要事項、共有された方向性がなければ、牽 CEC は会社全体の問題に責任を負うことになった。 引力は生まれない。これが、問題なのである。 同時に、事業部間の意思疎通を図るため、ワー 28 ルドワイドマネジメント協議会を発足させた。こ バーだったら、自分個人の仕事とチームの仕事の れは、全社的なプロジェクトについて話し合い、 どちらに手応えがあって必要不可欠と感じるか、 考えを共有することを目的とするもので、CEC の 自分に問いかけてみよう。もしも答えが前者なら、 意思決定機能を補足する情報共有チームであった。 チームのやりがいのレベルを上げる必要がある。 ガースナーは、もはや役に立たない伝統的なグ ③適切な人材を入れ、不適切な人材を外す ループをなくし、代わりに、明確な役割を持った チームの役割をはっきりさせたら、次に必要な 2 つの経営リーダーチームを作ったのである。 のは、メンバーを見極めることである。 調査によれば、こうした経営リーダーチーム 多くのリーダーは、多様なメンバーを集めて、 は、次の 4 つのタイプに分けられる。 中核的な意思決定チームを構成するという誤りを ・情報共有チーム:様々な業務分野に関して重要 犯している。 な情報を収集、交換するチームで、幹部たち 全ての地域、事業部門などの代表がチームに含 が十分な知識や情報を持てるようにする。 まれるなら、メンバーは与えられたメッセージ通 ・助言チーム:必要な情報を提供し、関連する問 りの役割を果たす。すなわち、「私は販売部門の 題について討議するチーム。経営者が重大な 代表としてここにいる。だから私は販売担当副社 決定をする前に考えを試す場となる。 長としてのみ発言しなければならない」と考える。 ・調整チーム:各部門間の業務を調整する。 こうしたチームでは、メンバーが連携しながら ・意思決定チーム:企業全体にとって最も重大な 仕事を進めたり、あるいは組織全体のレベルで一 少数の意思決定を行う。 緒に考えたりするのは難しい。 ほとんどの組織では、複数のチームが同時並行 優れた経営リーダーチームを作る第一歩は、チ 的に活動している。一般的なのは、中核的な意思 ームがその仕事を実行する上で、メンバーが持つ 決定チームと、組織の主だった活動を監督・運営 べき中心的なスキルと経験は何かを考えることだ。 する調整チームがあるという形である。 経営リーダーチームのメンバーには、テクニカ ②チームにとって心に響く目的を与える ルなスキルの他、チームワークの能力が必要であ どのようなチームを作るかを決めれば、次は経 る。また、問題点や機会に対応する色々な方法を 営リーダーチームの目的を明確にする必要がある。 探るために、活発な議論を行う能力も要る。 経営者は、重要で、チャレンジングで、心に響 調査から、活気のある真の議論を可能にする 2 く明確な目的をチームに示さなければならない。 つの能力が明らかになっている。それは、共感力 すなわち目的は、メンバーが各自の役割を果た と誠実さである。 しながら、片手間に取り組むようなものではいけ では、共感力を持つメンバーを見つけるには、 ない。十分にチャレンジングかつ不可能ではない どこに着目すればよいのか。目印は、仲間の言葉 目的を与える必要がある。 にしっかりと耳を傾けるだけでなく、話し手が提 だが、実際には、経営者は、メンバー個人には 起した問題にきちんと反応することである。 過剰な課題を与える一方で、チームには手応えの 誠実さとは、例えば、討議の結果が自分の担当 ない課題しか与えない傾向がある。 分野に不利になるとしても、組織全体に影響する そうすると幹部たちは、チームの仕事は自分の 問題をグループの協議のテーブルに載せる、とい 仕事より重要性が小さいと感じる。そして、会議 った行動をとることだ。 に出るより顧客と会うのを優先するなど、自分の こうした能力を持つ適切な人材を集める一方 重要な責任とみなす事柄に重点を置くようにな で、チームの成功にとって深刻なリスクをもたら る。その結果、チームの目的意識は失われてしまう。 す、撹乱分子を排除する必要がある。 最も危険なタイプは、表では計画に賛同するふ チームの目的を作る時は、自分がチームのメン 29 成功する経営リーダーチーム 6 つの条件 りをしながら、裏でそれを妨害する人である。 外での発言と行動と同じでなければならない。 撹乱分子は被害者意識が強い。彼らに自分のキ ②成功に必要なサポートを与える ャリアについて尋ねると、ひどい待遇を受けた、 経営リーダーチームの仕事を円滑に進めるため には、サポートが必要である。 自分の仕事が公正に評価されなかった、といった 例えば、優れた経営リーダーチームは、メンバ ことばかり語る。何らかの形で自分にも原因があ ーがチームとしての責任を遂行したことを認知 るという認識はほとんど見られない。 し、強化するような報酬制度を採用している。 また、他人を全面的に否定する傾向も強い。 「彼 また、必要に応じて、チームの能力の開発、メ は能無しだ」など、人をばっさり切り捨てる。 ンバーの教育などを実施している。 撹乱分子を見つけ出すための単純な基準はない そして、経営リーダーチームは十分な時間、ス が、着目すべきいくつかの兆候はある。 例えば、「しばしば人前で他者について不満を タッフの支援、日常的な物的資源など、共同作業 言い、批判する」 「問題を批判するのではなく、 に必要な基本要素を必要とするので、優れた経営 人を攻撃する」「会議室の中で意見を言わず、廊 者は、チームがこれらの資源を確実に利用できる 下に出てからあれこれ言う」などだ。 よう気を配っている。 ③適切なチーム・コーチングを実施する こうした行動をするメンバーには注意しよう。 チームの能力を高めるためには、メンバーが実 際にその共同作業を行う中で、チームとしてコー 成功に導くための促進条件 チングを受ける必要がある。 前述の必須条件を満たしたならば、次の 3 つの チーム・コーチングにおいては、次の 3 つを高 促進条件を整える必要がある。 めることを目的として、課題に関連したチームの ①うまく機能するために必要な構造を作る 行動に注意を向ける。 必要最小限の人数を集め、その目的を達成する ・チームとして共同作業を行う意欲 ために実行すべき課題を与え、一緒に仕事をして いくための基本的な行動規範を定める ―― ・集団としてチームの課題に取り組む効果的なア これ プローチ が、しっかりとしたチームの構造の基本である。 ・チームメンバーが持つ様々な資質に気づき、そ チームのサイズは小さくするのがベストで、典 れをお互いに利用する能力 型的には 8 人以下だ。 * * * 選んだメンバーには、明確な課題を与え、チー 経営リーダーチームはオーディオのアンプのよ ムの目的にとって核心となる仕事に取り組ませ うなもので、そこを通るものは何でも増幅される。 る。明確に規定された課題のリストを与え、それ うまく設計され、適切に支援されたチームは驚 らの課題の質を評価するよう求めよう。 くほどの相乗効果を生む。だが設計が悪く、うま そして、共に仕事をする上で欠かせない一連の く活動できないチームは泥沼に陥る。そうしたチ 行動規範を明確に定める。それは次の 4 つである。 ームが率いる会社より、伝統型の統率が円滑に行 ・真剣な取り組み:メンバーとしての役割を、個 われている会社の方が、良い成績を上げられる。 人の役割と同じく真剣に捉えねばならない。 従って問題は、チームを持つ会社、持たない会 ・透明性:複数のメンバーに影響を及ぼす事項は、 社のどちらの業績が上かということではない。 チームの会議に提起しなければならない。 問題は、あなたの会社にチームが必要なのかど ・参加:会社全体に影響を及ぼす問題について、 うか、もし必要なら、成功のチャンスを最大限に 全てのメンバーの意見が歓迎される。 するようにそれを構造化し、サポートできるかど ・誠実さ:チーム内での発言や行動は、チーム うか、ということである。 30