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060313 フォーラム議事録抜粋版
NIRA政策フォーラム 「裁判外紛争解決(ADR)の現状と展望」 ― 英 国 FOS (金融オンブズマン)に 学 ぶ ― 2006年3月13日 議事録 抜粋版 (3月12日の講演および質疑内容増補版) 総合研究開発機構 ◆主 催◆ 総合研究開発機構(NIRA) ◆共 催◆ 特定非営利活動法人 日本メディエーションセンター(JMC) ◆後 援◆ 日本司法書士会連合会、東京司法書士会、神奈川司法書士会 第7回NIRA政策フォーラム 「裁判外紛争解決(ADR)の現状と展望」 −英国FOS(金融オンブズマン)に学ぶ− 日 時 :平成18年3月13日<月> 14:00−18:30 会 場 :司法書士会館 日司連ホール フォーラムの模様と資料は以下のHP参照: http://www.nira.go.jp/newsj/seisakuf/07/seisakuf07.html 抜粋して掲載した内容を以下に示す 14:55-16:15 講演(3月12日質疑内容増補版) 「 英 国 FOS ( David Thomas P.003 Financial (Corporate director and Principal Ombudsman Service)の現状と ombudsman) 課題」 Walter Merricks (Chief ombudsman) 17:00-18:10 パネルディスカッション David Thomas ・Walter Merricks 「英国FOSに学ぶ日本のADRの 山本 和彦・田中 圭子・犬飼重仁 P.082 展望と可能性」 Q&A P.091 フォーラム講師プロフィール紹介 P.097 −1− (以下に掲載のFOSのお二人の講演内容の議事録には、3月13日の当日の講演内容 に、前日12日のNIRAにおける意見交換会の内容のうちの一部および質疑の内容を 適宜織り込んで、2日間にわたってFOSのお二人より伺った内容がほぼすべて含ま れるように考慮して作成している) 3月12日意見交換会出席者(敬称略 五十音順)(NIRA大会議室) 氏名 所属 1 David Thomas Financial Ombudsman Service corporate director and principal ombudsman 2 Walter Merricks Financial Ombudsman Service chief ombudsman 3 簗瀬 捨治 (社)日本仲裁人協会 評議員・弁護士 4 有田 芳子 日本メディエーションセンター 理事 5 安藤 信明 東京司法書士会 理事 6 稲村 厚 日本司法書士会連合会 理事 7 犬飼 重仁 総合研究開発機構 主席研究員 8 内堀 宏達 法務省(大臣官房司法法制部) 司法制度改革推進支援室長 9 岡村 正文 日本司法書士会連合会 ADR対策部委員 10 楠本 くに代 金融消費者問題研究会 代表 11 高橋 清人 日本司法書士会連合会 常任理事 12 田中 圭子 日本メディエーションセンター 代表理事 13 中井 浩一 神奈川県司法書士会 理事 14 中 日本司法書士会連合会 常任理事 15 野田 神奈川県司法書士会 メディエーション委員会委員 16 日和佐 日本メディエーションセンター 理事 17 松本 総合研究開発機構 研究員 18 間々田 神奈川県司法書士会 メディエーション委員会委員 19 山崎 敦子 日本メディエーションセンター 20 渡辺 宏之 早稲田大学 弘 順一 信子 高宏 昇 法学学術院 助教授 −2− 「英国FOS(Financial Ombudsman Service)の現状と課題」 (NIRA HP添付資料:配付資料) ○メリックス この度はお招きを頂きましてありがとうございます。私、そして 同僚でありますデビッド・トーマスがこのように温かく迎え入れていただいたこ とに感謝申し上げたいと思います。 われわれ2人にとって、これは初来日でございます。東京も初めてですので、 今、日本での滞在を楽しませていただいております。このようにお招きいただき 大変光栄に存じます。 NIRA総合研究開発機構の犬飼さんには、このようにお招きいただいたことに心 より謝意を表したいと思います。それから、日本司法書士連合会の皆様方に感謝 申し上げたいと思います。後ほど個別にもお話できればと思っております。 Alternative dispute resolution of financial complaints in the UK (p.1)デビッド・トーマスと私の方から、イギリスの金融ADR の状況につい てお話ししたいと思います。イギリスにおける状況ということで、この裁判外紛 争解決、特に金融関連の申立てという内容になっておると思います。私たちの FOSのモデルは、ほかとはちょっと違った特異なものでありますので、説明に少 し時間をかけたいと思います。できる限り、説明を金融制度の文脈の中で進めて いきたいと思っております。私どもの説明をもって、皆様が何かを学び、これを きっかけに日本における独自の制度をつくっていただければと思います。 私たちは「特にこうしなさい」と申し上げるつもりは全くございません。その ようなことは愚かであると思います。私たちは英国の経験を皆さんにお話し共有 できればと思います。 UK =United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland, England, Wales, Scotland and Northern Ireland (p.2)イギリスというのは 、もちろん英語ではユナイテッド ・キングダム (The U.K.)でありますけれども、イングランドのみならずスコットランド、ウ ェールズ、そして北アイルランドを含んだ国であります。イングランドだけが1 つの国であると考えられるかもしれませんけれども、イングランドは英国の一部 −3− に過ぎません。私たち同じ法律を持っておりますし、金融サービスにおいても同 じ法律、規制を設けております。スコットランド、北アイルランドはもともと法 体系が違って、イングランドとも違っておりますけれども、私たちはこの3つの 法体系すべてをカバーしております。いわゆるイングランド、ウェールズ、スコ ットランド、北アイルランドを1つにまとめた形です。ということで、ADR はい ずれも共通しており、英国全体に共通のものとなっております。 n 60 million people n £1 = ¥200 n Firm = financial business (p.3)さて、イギリスは人口でいいますと日本の約半分であります。そして、 今回のプレゼンテーションにおいては為替レート1ポンド当たり200円という計算 をさせていただいております。それから、私たち、しばしばファームという表現 を使っていますが、金融サービス会社であります銀行、保険会社、そして金融ア ドバイザー、ブローカーすべてを総称してファーム(金融会社)という言い方を しております。私たちはこのような金融セクターのすべての金融会社を相手に仕 事をしております。 では、ここで金融サービスの英国におきます制度についてお話ししたいと思い ます。 where we fit in … Financial Services Authority (the regulator) Financial Ombudsman Service (adjudicates on unresolved disputes) Financial Services Compensation Scheme (p.4)われわれFOSの位置づけをわかっていただければと思います。われら 3つの機関が単一の法律のもとで設けられておりますが、この法律は2000年に制 定された金融サービス市場法(FSMA )であります。その法律をもとに3つの独 立した別々の機関ができております。 まず、FSA (英国金融サービス機構)、これが規制当局となります。日本の金 融庁にあたりますけれども、英国におけるあらゆる金融サービスのほとんどを管 −4− 轄しております。そして、金融オンブズマンサービス(FOS)であります。これ は紛争処理を行う機関、すなわち裁定機関となっております。これはこの後詳し くご説明しますけれども、ここはいわゆる未解決の紛争の裁定に当たるところで あります。3番目に金融サービス補償機構(FSCS)があります。これは消費者か ら来るさまざまな申立て、訴えなどを扱っておりまして、例えば、破綻してしま った金融会社を相手に訴訟を起こしている消費者を対象にしております。これに ついても後ほどお話ししたいと思います。 この3つの機関はいずれも、2000年に制定した金融サービス市場法(FSMA) に基づいて設けられております。 ここで強調したいことは、この3つはそれぞれ別の機関でありますけれども、 お互い非常に自然な形でもって連携を図っているということです。同じ領域でも って仕事をしております。ただ、それぞれ持っている機能が多少違っていて、三 人姉妹という表現もとられております。私たちお互い協力をしており、同じ家族 の一員であります。そして同じ構造の一部をなしております。しかしそれぞれ独 立しております。非常に近しい関係にいて、お互いについていろいろ理解はして おりますけれども、あくまでも独立的に機能しております。 Financial Services Authority (FSA) n makes and polices the rules n supervises financial firms n prudential regulation n conduct-of-business n some self-regulation through codes (p.5)さて、それぞれの機能でありますけれども、FSA は規制当局が普通行 うようなことをやっております。まず、FSA は金融会社が準拠すべきすべてのル ールをつくり、金融会社の監督をしております。管轄、統制、監視をしておりま す。すべての会社ではありませんが、定期的に金融会社を訪問して、監督、査察 等を行っております。特に問題のある場合には検査、査察を行います。 それから、2つのレベルにおける規制を行っています。1つ目はプルデンシャ ルレギュレーション(健全性規則)です。会社の資本が健全であるか、銀行であ −5− れば、例えば預金者に対する義務を果たすだけの十分な自己資本を持っているか、 そして保険会社であればその請求に対してきちんと保険金が払えるだけの潤沢な 資金をもっているかということです。サービス会社であればその事業を展開する だけの資金があるかどうかということを監督しなくてはなりません。ファームが 義務を果たすだけの十分な資本があるかどうか監督します。一部でありますけれ ども、金融サービスの中でもいわゆるリテールバンキングのところ、例えば銀行 の普通口座など、こういったところは自己規制が導入されております。FSA でも こういった銀行の資本金等の規制は行っておりますけれども、銀行の自己規制と いう部分もあります。 2つ目は、金融会社が事業を行う上でのビジネス行動規範に相当する規則、特 に顧客に対するサービスに関連する規制をつくっております。それぞれの会社が お客さんに対しどのようなことをしなくてはいけないのかという部分であります。 これは文書の面でどういったものを提示し、そしてどういった形でPR、広告宣伝 ができるのかなど、いろいろなルールがありますが、いずれもFSA が設定してい るルールであります。 一部のセクターに関しては、ある程度自己規制に基づくルールがあります。例 えばその業界団体がつくっているような規範があって、ある程度の自己規制がで きますが、それと並行してFSAの規制があります。 Financial Ombudsman Service (FOS) n resolves individual disputes n an alternative to the civil courts n informal / quicker / cheaper n not a regulator n some decisions can have big effect (p.6)続きまして、私たち金融オンブズマンサービス(FOS)です。金融オ ンブズマンサービスは金融サービス関連市場法規制の1つの構造の中の1つの要 素として出てきますけれども、私たちは主に消費者と金融会社の間の個別の紛争 の解決に当たります。われわれはみずからを裁判外紛争解決(ADR)の手段と見 ております。これは民事裁判に代替する方法と見なされております。ですから、 −6− 民事裁判所に行って何か訴えを起こすとか、紛争解決をするかわりの手段となっ ております。そして、ごく当然のことでありますけれども、インフォーマルで、 アクセス性が高い、消費者にとってはなじみやすい、迅速である、また法廷で裁 判を起こしたときと比べて費用はずっと安価であります。 個人の紛争処理に関する司法制度は日本ではそれほど高く評価されていないと いうお話もお聞きしましたが、イギリスでも例外ではございません。 私たちは規制当局ではありませんが、私たちが規制当局と見なされてしまうこ ともあります。しかしその点は違っております。規制当局はルールをつりますが、 われわれはルールをつくっていません。ただ、私たちの意思決定、裁定が影響を もたらすことは認識しております。私たちがやっていることの影響、効果、これ は個別の金融会社に対し、本来やらなかったであろうことを無理やりやらせると いう側面がありますので、時として規制当局であると思われることもあります。 例えば、ある案件が同じ金融商品を購入した非常に多くの消費者に絡んでいる 場合、1つの決定が、潜在的にですが、かなりの数の消費者に影響し得る、そう いった影響力があることは事実であります。つまり、ある金融会社から1,000人の 顧客が同様の商品を買っていた場合、そのうちの1人の顧客の訴えに対し、われ われが、その会社に賠償金を払えということを裁定したとします。そうした場合 には、潜在的には少なくともその他の999社にもその影響が出る可能性はあります。 Financial Services Compensation Scheme (FSCS) n safety net n claims against ‘dead’ firms n contributions from ‘live’ firms (p.7)さて、FSCSという三姉妹の3人目は、金融サービスの補償機構であり ますけれども、これはいわゆる安全ネットに当たります。消費者にとっての安全 ネット、最後のよりどころであります。例えば、ある金融会社が破綻をしてしま った場合、破綻金融会社はもはや取引をしない死んだ会社という表現を使ってい ますけれども、そこと取引をしていた消費者は被害の金額をこの補償機構のファ ンドに対し請求することができます。そういった請求に対して、まだ取引をして いる金融会社が積み立てたお金でもって支払いをするのが、補償制度であります。 −7− つまり、ここの資金源は、今現在事業を展開している金融会社からの拠出金でも ってまかなわれております。 オンブズマンサービスの方は、今、経営をしている、まだ生きている会社に対 するいろいろな紛争、苦情を取り扱っております。それに対してこのFSCSは、も う既に死んでしまった会社に対する訴えに対応するという内容であります。もち ろん破産してしまった金融会社でありますから、お金はないということで、その 分、生き残っている会社が積み立てた拠出金でもってその資金を賄う必要性があ るわけです。 Ombudsmen … (p.8)では、オンブズマンについて少しお話をしたいと思います。 最初に、このオンブズメンという言葉はどこからきたのかですが、これは英語 ではありません。これは皆さんにはもちろん、英国の人たちにさえ、あまりなじ みのない表現であります。改訂版でなければ、普通の英語の辞書、英和辞典で調 べても載っていないかもしれません。もともとはスウェーデン語で、英語を話す 人たちがうまく発音できないということすらありますので聞きづらい場合にはお 許しください。皆さんが発音できなくても、それは問題ないと思います。(笑) ということで、私たちはこの言葉を借りてまいりました。もともとのスウェー デン語は、いわゆる正義をもたらす人という意味であります。つまり正義をもっ た公正な人間であり、そして、その人には正義をもたらす権限が与えられていま す。しかし、裁判官、判事ではありません。 Characteristics … n citizen/consumer v state/institution n deal with unresolved disputes n free to citizen/consumer n flexible and informal processes n investigative procedure (p.9)では、このオンブズマンの特徴について幾つかお話しします。 私たち英国のオンブズマンは、ほかの国々もそうですが、次のような特徴を持 −8− っております。オンブズマンというのは、何かのトラブルが起きた場合、市民な いしは消費者が、何らかの苦情申立てを、自分より力を持った国、国の機関、そ の他さまざまな機関、会社に対して起こすことを可能にします。市民、消費者が 相手と対等の立場で闘えるようにするのがその趣旨であります。オンブズマンと いうのはそういった面で、大変重要な役割を果たしております。 オンブズマンはあくまで未解決の紛争を取り扱っております。オンブズマンと いうのは、最初の段階で苦情を取り扱うのではありません。最初の拠り所とはな っておりません。というのは、いかなる消費者、市民であっても、何か紛争解決 をしたい場合には、まず自分たちが本来訴えを起こすべき相手の機関に行くべき です。そこで解決できるかどうかを見た上で、そこでうまくいかなかった場合の み、次にオンブズマンに来るという順番になっております。オンブズマンはもは や解決できない、その組織自体でもって解決できない苦情を処理します。それも 時間の制限がありますけれども、その話は後でまた申し上げたいと思います。 私たちは、常に市民に対し無料であります。少なくとも市民、消費者にとって は無料であるということはオンブズマン に共通する普遍的な特徴と言えるでしょ う。オンブズマンに何かを頼んだ場合、どんなセクターであっても無料でサービ スを提供します。 また、私たちは非常に柔軟性に富んだインフォーマルなプロセスをとっており ます。法廷と比べて非公式であります。 その点、対照的なのが裁判所です。裁判所というのはすべてをきちんと型通り にやらなくてはいけません。裁判所はもっと固定的なプロセスと言えるでしょう。 英国の裁判制度を見ますと、フォーマルな調査型の手順をとっております。だ れかが訴訟を起こした場合、そもそもなぜそのような訴訟が有効であるかという ことを示すものも必要になります。そのために、まず、訴訟を起こしている個人 にその内容を文章で提出させます。訴訟の内容を明確にし、そして、答える側は それに対して文章で完全に回答しなくてはいけません。自分たちの抗弁を述べな くてはいけないことになっております。相手方は、それに対応する自分たちの主 張を書面でもって提出します。そこには必要な文書すべてがそろうわけです。そ して、そこでもって、判事の前で双方の意見が述べられ、裁判官が2つの文書に 基づいて、最終的に、どちらが正しいかの軍配を上げるわけです。しかし判事み −9− ずからが何か事をおこすことはありません。イギリスの裁判制度においては、裁 判官みずからが問いかけをするとか、何かを調査するということはありません。 一方、オンブズマンの方ですけれども、私たちはみずからいろいろな調査をし ます。必要に応じて、個人、いわゆる申立人がわれわれに言ったことにプラスし て、例えば、書面を見て情報が足りないといった場合は、私たちみずから問いか けをし、調査をおこなうアプローチをとっております。 … characteristics n wider dialogue n encouraging complaint resolution n encouraging complaint prevention (p.10)それから、このような紛争解決に加えて、私たちはより大きな役割を 担っていると思っております。 私たちはより広く対話を行っております。関連の業界といろいろな対話を行っ ておりますし、消費者とも、一般の社会とも対話をしております。私たちは関連 のある組織といろいろな対話を持ち、話し合いをし、それでもって制度全体を改 善することができるという特徴を持っております。いろいろな間違ったことが起 きている、潜在的にトラブルが起こる状況があることを見れば、柔軟にそういっ た対応をします。私たちはこういった申立てを、できるだけ早い段階で解決する ように呼びかけております。 そして、苦情処理をするやり方そのものは、処理の仕方を改善させることもで きますし、またこういった申立てそのものを防止するよう奨励することもできま す。 (参考)Ombudsman From Wikipedia, the free encyclopedia (一部) An ombudsman is an official, usually (but not always) appointed by the government or by parliament, who is charged with representing the interests of the public by investigating and addressing complaints reported by individual citizens. In some jurisdictions, the Ombudsman is referred to, at least officially, as the 'Parliamentary Commissioner' (e.g., the West Australian state Ombudsman). The word ombudsman and its specific meaning −10− has since been adopted in to English as well as other languages, and ombudsmen have been instituted by other governments and organizations such as the European Union. An ombudsman need not be appointed by government; they may work for a corporation, a newspaper, an NGO, or even for the general public. Public sector ombudsmen n 1967: Parliamentary ombudsman n 1973: Health service ombudsman n 1975: Local government ombudsman (p.11)オンブズマンは、最初英国においては公共セクターで設けられました。 英国のオンブズマンは、かなり長い歴史がありますけれども、オンブズマンとい うのが最初に出てきたのは議会であります。さかのぼること1967年に、議会オン ブズマンがつくられました。このオンブズマンは議会に関する紛争を解決するこ とはありませんけれども、政府の各部署、議会が責任を持っているさまざまな政 府の部署に関する問題を扱っております。議会に対する苦情ではなく政府のさま ざまな部署に対する苦情を扱っているのです。すべての省庁あるいはある省庁が とった行動に対して不平不服のある人たちは、この議会オンブズマンに苦情申立 てをすることができます。 今、説明しましたように、まずその省庁に直接苦情申立てをすることが必要で す。それがうまくいかない場合のみオンブズマンの方に持ち込むという形になり ます。 英国においては、医療サービスについても医療サービスオンブズマンがありま す。そして、ヘルスサービスオンブズマンと呼ばれる法律もあります。医療、ヘ ルスサービスに関しては、NHSという国民健康保険サービスがあり、これらに関 する苦情を医療担当のオンブズマンに持ち込むことができます。もちろん、その 医療機関、病院、その他の機関にまず苦情申立てをして、そこで処理できなけれ ばここに持ち込みます。 それから、75年に自治体のオンブズマンができました。これはいわゆる政府、 自治体のサービスに対するものです。つまり、自治体レベルでの活動に関する問 −11− 題と紛争の解決に当たるオンブズマンです。これはすべて公共部門にかかわるオ ンブズマンでありますが、オンブズマンの権限というのは解決の方法を提案する ことにあります。オンブズマンは非常に経験のある、そしてステータスの高い人 たちですから、この勧告が無視されるということはめったにありません。 政府であっても医療機関であっても自治体であっても、状況に変わりはありま せん。技術的には勧告に過ぎませんが、実態はその勧告に従わない事例は極めて 例外的だと言えます。 1981: Insurance Ombudsman n established by industry voluntarily n in partnership with consumer bodies n independent council n alternative to civil courts n but redress beyond the law n binding on firm, but not consumer (p.12)次に、英国の民間部門を見てみたいと思います。 民間では1981年までオンブズマンがありませんでした。81年になって初めて民 間部門でオンブズマンが導入されました。ここで初めてオンブズマンという言葉 が公共セクター以外で使われるようになりましたが、最初に使ったのが保険業界 でした。それまでは公共部門にしか存在しませんでしたから、それは画期的なこ とでした。そのとき始まったのが保険オンブズマンです。 大手保険会社で紛争を解決するに当たって、裁判所以外の手段が欲しいという 考えが、保険会社のほうから出てきたのです。消費者との長い紛争が解決できな い場合、消費者に対して「裁判にかけるしかありません」と言うのは、答えとし ては不十分であるし、お客様に対して「裁判をしましょう」というのはおかしい ということで、独立した機関をつくることとなりました。 つまり、幾多の保険会社が集まって、みずからの事案つまり苦情を最終的に自 分たちで判断するのではなく、別の中立的な立場にある人にお願いをして、保険 に限ってはそこで苦情処理してもらった方がいいのではないかと、そういう結論 に達したのです。 −12− 契約者が苦情を持ってきたのを保険会社がまず一義的に却下した場合、以前の やり方では「仕方ありませんね、不満であったら裁判にかけてください。裁判官 の言うことを聞きましょう」と言ってきたのですが、こういう対応の仕方はやは りお客様にとって適切ではないのではないかという考えからはじまったのです。 そこで必要となったのは消費者機関とのパートナーシップでした。保険会社が みずからすべてをやろうとしたら、信頼性を失ってしまうということで、そうい う方法ではなく、消費者団体とパートナーシップを組むことで消費者の利益を代 表するところと協力をしました。業界の代表、消費者の代表を交えた独立した協 議会組織をつくりました。保険会社のみによる設置団体であれば中立性が疑われ るので、そこで消費者団体とパートナーシップを結んだわけです。消費者団体も これに対していい計画だと合意してくれました。そこでカウンシルと呼ばれる協 議会を独立団体として設置しました。そこにはほとんどの消費者団体が参加しま した。当然のことながら保険会社も参加しています。 この制度は民事裁判に代わる一つの手段という特徴があります。そこで消費者 のためのさまざまな救済策を提供するわけです。その救済については法律以上の ものを含むことがありました。これは必要に応じて、法律で保障されている以上 の救済をするというものでした。オンブズマンの役割は、単に契約書に書かれて いる、例えば保険の約款・契約書に書かれている文章だけを見るのではなく、あ らゆる状況において何が公正であるかを、もっと広い範囲で見ることでした。 普通ですと、裁判所から補償等の強制命令が出ます。しかし、保険会社の約款 が消費者にとって公正でない場合は、たとえ消費者の賠償請求が契約に従えば妥 当でなくても、約款そのものに問題があるときは賠償を要求するという、そうい う超法規的な救済も、保険のオンブズマンは、行うことが認められます。 次の部分が重要ですけれども、1981年成立の保険のオンブズマンでは、この決 定を、金融会社に対しては拘束力を持つが、消費者に対しては拘束力を持たない ものにしました。つまり、消費者が仮に裁定に不満であっても、法的な権利はこ れによって侵害されることがありません。(包括的な片面的仲裁合意の成立) オンブズマンの裁定は事業者側にのみ拘束力を持つが、消費者に対しては拘束 力を持たないものにするというのは、実は、保険会社側の希望でした。問題が山 積していたところ、これによって決着をつけたいというのが彼らの気持ちだった −13− のです。 オンブズマンという制度は、単に勧告をして終わるのではなく、これが最終的 な決定となって金融会社が従うというのが金融会社側の望みでした。 このようなやり方は、日本では、法律上ではちょっと難しいというふうに伺っ ています。しかし、イギリスは保険オンブズマン制度をそもそも始めた保険会社 の希望があって、こういう状態になったのです。 オンブズマンのやり方については、いろいろなやり方が可能だと思います。単 に勧告を出して、それに拘束力を持たせないというのも1つの方法です。といっ ても、ほとんどの場合それに従ってもらっているわけですけれども、それは先ほ ど申し上げたように、オンブズマンというこのポジション自体が非常に尊敬され ているからです。 Other financial ombudsmen n Banking Ombudsman n Building Societies Ombudsman n Investment [Management] Ombudsman n Personal Investment Ombudsman (p.13)金融関係のオンブズマンは保険が最初の業界でした。間もなくほかの 金融セクターのオンブズマンもあらわれました。いろいろな分野でオンブズマン が広がっていきました。 保険のオンブズマンが発足して間もなく、オンブズマン制度は、全く同じモデ ルで銀行業界にも導入されました。また、住宅金融組合、貯金組合、こういった ところは住宅ローンの割合がかなり高いですが、そういったものに対するオンブ ズマンが導入されました。それから、投資運用オンブズマン、個人投資オンブズ マンが生まれました。これらのすべては、リテール市場のイギリス国内の相談者 向けのものです。 FOS established by law … ‘a scheme under which certain disputes may be resolved quickly and with minimum formality’ −14− (p.14)2000年までには、金融面だけでもすでに6つのオンブズマン制度がで きていました。政府は、金融に関係するこの6つのオンブズマンを1つの制度に 統合すること、1つの法律のもとで規制当局を1カ所に一元化して、オンブズマ ン制度も統合することを考えました。 1つの法のもとですべてのオンブズマンがカバーされ、以前は6つばらばらだ ったものを今度は1つの組織、1つの法律でやろうという考え方です。それが議 会で決定され、2000年、このようなすべてのオンブズマンを包括する法律ができ ました。それがFSMA (2000年金融サービス市場法)です。この法律によって設 立されたスキームによって、ある特定の紛争について、迅速に、そして最低限の 形式主義で、問題の解決が図られるようになりました。もともとこれは保険オン ブズマンのモデルをもとにして、派生してきた金融オンブズマンを1つにまとめ たものです。 統一的な金融ADRについての補足(3月12日の質疑の転記) ○田中 それぞれのオンブズマンから統一的なADRに移行したという話で、メリ ットとして、例えば、ケースがワンストップでアクセス可能になったことをお話 していただいたと思いますが、課題とか問題点というのは実際あったのでしょう か。そこに対してどのように対処して克服したかについて、もし可能であればお 話ししていただきたいなと思います。 ○メリックス もちろん困難はありました。それぞれのオンブズマンから統一的 な金融ADRに移行したわけですが、メリットとして、ケースがワンストップでア クセス可能になったことがあります。ご参考までに、そこでの課題、問題点、困 難についてお話しします。 私たちが一番懸念していたこと、そして最も厄介だった問題は、業界との関係 でありました。いろいろな業界セクター、例えば保険、銀行、投資、こういった セクターは、それぞれ長年にわたって自分流のスキームを持っていたのですね。 主体性を持ってやっているし、自分たちのオンブズマンと非常にいい関係を持っ ていて、その関係を失いたくないという抵抗がありました。 オンブズマンが強制的な力を持った機関になったとき、例えば、もともと保険 のオンブズマンは、何が何でもオンブズマンの制度に加入しなくてはいけないと −15− いうことはありませんでした。結果的には加入しましたけれども、少なくとも理 論上そこをやめることはできました。 ところが、FOSが強制的な法的なスキームになって、どの会社でも加入しなく てはいけないことになってしまったわけです。法的スキームになる前、私たちは そういった中でどうなるかが大変心配しました。そこでいろいろなリエゾンコミ ティー(連絡委員会)をつくりまして、銀行、保険、その他のセクターを代表す る業界団体との関係づくりをしました。そういった業界団体、そこにいる金融会 社の主たる代表の方々といろいろな連絡をとり合いました。そこで、彼らの意見、 これまでの苦情処理の経験、新しい領域で私たちが今後予想しなくてはいけない ような苦情申立ての内容等を聞くことができました。我々も自分たちの経験を語 ることができました。例えば、彼らの方から新しい商品の話をしてもらって、今 後どうなるか、どういった問題が発生し得るかを予想し、彼らにフィードバック することもできました。私たちはできるだけ時間と努力をかけて、業界団体との 関係づくりをし、こういった懸念を払拭しようとしました。 やはり統一化というのは、消費者だけにとってでなく、もっと大きなメリット があったと思います。例えば、アドミニストレーションがよくなりました。これ については、ちょっと詳しく説明をした方がいいと思います。私トーマスは保険 オンブズマンを、統一化の前からしていました。そしてデビッドは、バンキング のオンブズマンをしていましたので、あの当時のことはまだ記憶に残っています。 当時はそれぞれ小さな組織で活動していました。組織が統合後大きくなりました ので、スタッフトレーニングをしようとしてもリソースが十分ありますし、ITを 使っての事例、事案のハンドリングシステムもあります。財務、クオリティーシ ステムなど、いろいろなものが、組織が前よりずっと大きくなったことで整備さ れてきました。現在スタッフが1,000名を超えておりますので、予算も大きくなっ て、リサーチができる予算もあります。また、アウトリーチや、顧客満足度を調 査することも、かつては不可能だったことが可能になりました。そういう意味で は大変大きなメリットがあります。 メリットというのはスタッフにとってもあります。キャリアとプランが広がり ました。いろいろな部署を異動することによってノウハウを蓄積していくことが 可能になり、将来のキャリアが今までより大きく広がって、管理職への道も開け −16− ました。そういう意味では、前より大変健全な組織になったと思えます。 それから、大きくなったことの結果として、いろいろなインパクトに耐え得る ようになりました。例えば、モーゲージ養老保険というすごいスキャンダルで、 爆発的に苦情が増えましたが、これはそれぞれやっていた当時の小さい組織では、 手に負えない状況だったと思います。 統合はリソースの面で大変大きな効果がありました。大きなセクターを横断的 にカバーするのも、今だからできることです。消費者が利用しやすくなったのは 大変重要なことで、それ以外にもメリットはたくさんあります。私とデビッドが 統合前に期待していたよりも、効果は大きかったといえます。 Disadvantages compared with courts n centralised n cannot cover third parties (p.15)では、われわれFOSの活動と司法手続がどう違うかをご説明したいと 思います。 私たちのアプローチを従来の裁判所と比べると、やはり幾つか劣るところがあ ります。私たちの方は一元化されている組織になってイギリス全部をカバーして いますが、オフィスはロンドンの一箇所しかありませんので、すべてはここを通 さなくてはならないわけです。そういう意味では多元ではありませんし、距離的 には皆さんと離れていますから、電話で問い合わせを受けたり、郵便あるいはEメ ールで相談を受けたりしています。これによって実際処理のコストは安いし、迅 速に解決することも可能ですが、それによるデメリットもあります。 離れたところにおいては、直接ひざを交えてということがなかなか難しく、そ れによるデメリットがあります。相談してくる方々は、応対してくれる人、裁定 してくれる人、代表者の顔を見ることはきません。ちょっと物足りないと思われ る方もいるようです。 普通、裁判所へ行きますと、紛争を解決するため、当事者たちは、お互い目と 目を見ながらフェイス・トゥ・フェイスで審理を進めていきますが、それが難し いというデメリットがあります。 もう1つのデメリットは、第三者までカバーすることができません。つまり、 −17− 証人を喚問することができません。第三者を呼んで話を聞くことができません。 これは裁判所では常に可能で、判事が召喚をすれば証人をいつでも呼べますが、 私たちにはそれができません。 Advantages over courts n free to customer n draw line for firm n specialist knowledge n informal n we mediate n we investigate n fair in the circumstances (p.16)ただし、その一方で裁判所にはない有利な点もたくさんあります。例 えば無料で利用できるという点です。普通でしたら、弁護士の謝礼ですとか、い ろいろなコストがかかってきますが、ここでは最後の裁定が消費者側の勝ちでな くても、苦情申立てをした消費者は、費用を負担する必要はありません。 事業者にとっても、これ以上長引かないという一線を引いて、決着をつけるこ とができます。 もちろん、不服の場合、消費者は法的権利を持っていますので、裁判所に訴え ることはできますが、ほとんどそういったことには至っておりません。われわれ FOSは、オーソリティーを持って、裁定を出すわけであって、受け入れてもらう 場合がほとんどです。 消費者にとって無料とすることができる理由は、業界が拠出金を負担している からです。例えば、保険のオンブズマンは業界が設置したもので、予算も業界が 出してくれて、利用者には負担がかかりませんでした。これは裁判所と比べて大 きな優位点だと思います。 次に、これも利点ですけれども、この制度があるために、ここに書いてある言 葉を直訳すれば、金融会社にとっては一線を引くことができます。つまり紛争を 最終的に決着させるというメリットがあります。金融会社と紛争を起こす人は、 感情的にもこじれてしまったことがしばしばあります。なぜ苦情をずっとしつこ −18− く言ってくるかというと、大きな組織を相手にしているわけですが、「例えばこ のような大銀行を相手にしてどうしてこんな弱い私が苦情を持ち込まなきゃいけ ないのか」と大変怒っていらっしゃるわけですね。でも、こういった中立的な組 織を利用することによって、一個人であっても相談者の方々は公正さを期待でき ます。お金もかかりません。消費者はきちんとした公正な結果を得られるという ことで安心して利用してくれます。これは金融会社にとってもいいことです。実 際どういう方法であれ、紛争がとにかく解決するのであれば、最終的な裁定が相 手方と出れば、それはそれで決着するわけです。これはある程度権威によってで はありますが、例えば「お客様のおっしゃっていることのこれは妥当ではありま せんよ。なぜならば、金融会社の言っていることは、中立的な私の考えではこう です」と、私たちのスタッフは説明することができるからです。 また、お客様の苦情に対して、「金融会社の方でそういう対応をしたというこ とで、通常これは対応済みと考えられていますよ」というような説明もできます。 いずれにしても、本当に金融会社にとって価値あるのは紛争が解決するというこ とです。そうでなければこの不満を持ったままのお客様は外へ行って悪いことを 言いふらすでしょう。そういう意味ではそういったことを防ぎ、業界に対する信 頼を守るという意味で大きなメリットがあります。 それから専門知識です。専門知識についても、裁判所よりわれわれFOSの方が 強いと感じています。われわれは金融に特化して金融を専門でやっておりますか ら、これについての専門知識は確かなものです。一方、裁判官はいろいろな事件 を取り扱っています。金融を専門でやっている裁判官はいないわけで、住宅だけ でなく、離婚離婚、債務、自動車事故ですとかいろいろな契約にかかわる紛争を 取り扱っています。われわれはそういう意味で特化した専門知識を持っているの が強みです。 また、インフォーマルで、つまり形式主義にとらわれません。電話で相談を受 けますと、銀行や消費者といろいろインフォーマルに話をして、調停を進めてい くわけです。調停を進める過程で、調査もわれわれの方で行った上で、裁定結果 を出します。そして、常にフェアな立場を保っております。裁判所ですと、裁判 官から電話をするということはないと思うのですが、私たちであればすぐに電話 をして、質問があればそこで確認することができます。そういったところは裁判 −19− 所と違っていいと思っています。 それからメディエーションです。メディエーションでは、調停のさまざまなテ クニックを使います。もちろんわれわれの方でもっと情報を必要とすることもあ ります。両当事者がお互いに理解に向かって進めるよう、一体争点は何なのか、 どうしてこうなったかなど、私たちの方からたくさんの質問をして明らかにしま す。そして集めた情報をもとに紛争の解決のお手伝いをします。相談者の話を一 方的にうのみにするわけではありません。 というのは、相談者がすべての重要な点をわかって相談してくるわけではない からです。そういう意味では、われわれFOSの方から金融会社のいろんなドキュ メントを見て、どこが問題の原因となったのか、それを確認しながら解決方法を 探ります。もしそこで見つからなければ、直接口頭で質問することもできます。 そして、私たちの考える、どういう状況で考えても公正であるという見地から解 決いたします。 もちろん非常に複雑になってしまって、長い話なので5年も前から始まってい る取引が絡むこともあるでしょう。そういうときは大変です。しかしそういうと きにしても、どういう方法であれば公正に解決できるのか、そして原状回復でき るのかを考えます。そして、これをもっとインフォーマルな形で私たちはやって いると思います。裁判所に比べてインフォーマルな形でこれを進めています。 FOSとFSAの組織形態に関する補足(3月12日の質疑の転記) ○犬飼 私の理解では、日本では、官と民が、公と私に対応するという伝統があ りましたので、行政組織以外の団体が公権力の行使と見なされるような強制力を 伴う行為、これを行いにくいという問題がありました。イギリスの場合には、 FOSもFSA (金融サービス機構)も国の行政組織そのものではなく、株式会社で はないけれどもある種の会社形態、コーポレーションの形態をとっていると理解 しているわけです。日本の伝統的な発想からいえば、行政組織、国でないところ が強制力を持つことは本来できないはずです。それができてはおかしいのだとい う発想が普通だと思うのです。しかし、これはFOSだけではなくて、FSAも同じ かもしれませんが、そこがなぜそうでなくなったのか。これは歴史的にいうと、 2000年の金融サービス市場法ができる前と後では状況が違うと思うのですが、そ −20− の辺、ご説明がいただけると、大変にありがたいです。 ○メリックス そうですね、皆さんにわかりやすいように、我々の状況を紹介し ながら、かつ日本と比較をしながら、説明してみます。 もちろん我々も民と官は区別しています。プライベートとパブリックは違いま す。民間の団体はおっしゃったように公権力を行使することはできません。公権 力というのは官、政府、国家のみに与えられている権力です。そしてその権力は 議会によって与えられたときのみ行使できます。FOSができる前の保険オンブズ マン、バンキングオンブズマンは、完全にプライベートな団体として存在してい ました。政府が設置したものではなかったので、政府は全く関与しませんでした。 議会も別にこれを承認したものではありません。任意団体であって、そういう意 味では、だれでもつくることのできる団体と何ら変わりはありませんでした。 その団体が行使した権力というのは、自発的なボランタリィーな権力であって、 例を保険会社に絞れば、保険会社が自発的にオンブズマンに付与した権力であり、 これは合意に基づいたものです。つまり、保険会社がオンブズマンの裁定に自発 的に従うということに合意したわけであって、その条件があって初めてクラブに 入れるというようなものです。いろいろなルールがありましたが、その1つの加 入条件が「オンブズマンの決定に従う」ということで、そうでなければ、そもそ も加入できませんでした。ですから、これは民間の組織で公権力を行使するもの ではありませんでした。 金融オンブズマンサービスになったときに公的な組織になったのです。議会に よって設置されている公的機関です。技術的に言わせれば、法律では「このよう な機能を果たさなければいけない組織が存在しなければいけません」というふう に言っています。一見民間のような形をとっているのですけれども、公共の権力 を行使する公共の機関と言えます。 次に、だれに対してこの公権力を行使するかという問題ですけれども、私たち は権力を消費者に対して行使しているわけではありません。消費者たちの法律的 な権利ということに関しては、私たちは全く介入しないからですね。消費者たち から何かをもらったり、何かをしてもらったりするというわけでもありません。 権力の行使をしていますのは、ただ金融会社に対してです。これは否定できない 事実です。 −21− なぜ合法的な機関なのかということに関しては、ちょっと事実を用いて説明し たいと思います。金融会社には、裁判所に行って私たちFOSが機能をちゃんと果 たしたかどうかを判断してもらう権利があります。司法審査の一部としてそれが できます。 それからもう1つ、われわれのような公共の機関によって不利益を被った場合、 裁判所に行って不服を申し立てることができます。そして適切なアクションを起 こさなければならないことになっています。裁判所の役割は、公的な私たちFOS の機能そのものを監督することです。私たちは公的な権力を行使する公的な機関、 しかも法廷、裁判所によって監督をされている機関だと言えます。 日本ではどのようなことが参考になるかわかりませんけれども、このようなご 説明でお答えとさせていただきたいと思います。 では、私の同僚の方に、この先を少し続けてもらいたいと思います。皆さん、 ありがとうございました。(拍手) ○トーマス メリックスさんの方から、一般的に私たちがどういうことをやって いるかという話をいたしました。 Who we cover … (p.17)では、ここからはもう少し詳しく、一体どういう人たちが、金融会社 がこのFOSの制度でカバーされているのかということについてお話をしたいと思 います。 26,000 financial firms … n banks n building societies (mortgage banks) n other mortgage lenders n mortgage intermediaries n credit unions n electronic money institutions n insurance companies −22− n insurance intermediaries n investment/pension companies n investment/pension advisers n stockbrokers (p.18-19)大規模、小規模合わせて、全体で2万6,000の金融会社、すなわち、 銀行、住宅金融組合、そのほかの金融会社、例えば住宅ローンの会社あるいはブ ローカーの人たち、信用組合(クレジットユニオン)、電子マネー取扱機関、生 命保険あるいはそのほかの保険の仲介、年金、投資を扱っている会社、投資顧問 の会社、株式仲買人、このような会社すべてを含んでいます。 ○有田 日本メディエーションセンターの有田と申します。1%ぐらいにしか満 たないクレジットユニオンだとは思いますけれども、クレジットユニオンの苦情 がFOSに持ち込まれたことがあるかどうかということをお聞きしたいです。 ○トーマス ないです。全くありません。 … for these activities … n taking deposits, lending money and providing credit/debit/cash cards n providing, arranging or advising on mortgages n providing, arranging or advising on investments/pensions n providing, arranging or advising on insurance (p.20)今、英国において、金融当局(FSA)が管轄しているのは、ただいま 申し上げた2万6,000の事業者であります。彼らが行うすべての金融的な活動、金 融サービスをカバーしています。例えば預金ですとか貸付け、クレジットカード ですとかデビットカード、キャッシュカードのような銀行などが行うサービスの 提供もそうですし、住宅金融関連の住宅ローンの提供もそうです。それから、ブ ローカーというような仲介業者もそうです。電子マネー取扱機関もそうです。信 用組合というのも入っています。 イギリスでは信用組合はそれほど強いものではありませんので、その利用率も余 り高くありません。以前、1年ぐらい信用組合と一緒にトレーニングをして、彼 らがどういうふうに苦情処理をするかということを研修しましたけれども、そこ は非常にうまくいっているみたいで、信用組合への不満は全く出ていませんでし −23− た。それは多分、信用組合の場合、人間関係がうまくいっているからだと思いま す。それから、保険会社、保険のブローカー、仲介業者、運用年金の関連会社、 投資に関する手配、提供とアドバイザー、証券会社もカバーしています。 住宅ローンの仲介会社は2004年10月に規制対象に加えられ、FOSの対象範囲に入 りました。その他の住宅ローン融資業者もアドバイザーとして対象範囲に入るこ とになりました。また、2005年1月には保険仲介業者も対象範囲に入りました。 … if they are provided n in the UK n from the UK (p.21)ただ、1つ条件があります。サービスは、英国内で提供されたものか、 あるいは英国から提供されたものを対象としています。たとえ消費者が外国にい ても同じです。つまり、英国の金融会社の英国支店、支社のビジネスをカバーし ます。また、海外の金融会社の英国国内支店、支社もカバーしています。例えば、 日本の金融会社で英国に支社があればわれわれの管轄になってきます。 英国だけでなく、インド、パキスタン、中東のお客様方が随分英国の銀行を利 用しておられますので、その方からの相談も受け付けています。 We cover business done from all UK branches of: n UK firms n Foreign firms We do not cover business done from non-UK branches: n even of UK firms (p.22)ただし、英国の金融会社であっても英国国内以外の支店、支社が行っ たものについてはカバーしておりません。英国の銀行の支店が東京にある場合は 私たちの管轄外となります。ですから、どこに支店があるのかということによっ て私たちのサービスが提供できるかどうかということが決まります。 Complainants covered Customers, potential customers and some others −24− n individual n business (< ¥200 million turnover) n charity (< ¥200 million income) n Trust (< ¥200 million assets) n from UK and world-wide (p.23)われわれは個別の消費者の方々からの苦情を受け付けます。代理人か ら受け付けることもできます。小規模の事業所からも苦情を受け付けます。この 小規模の事業所というのは、個人の消費者と同じような立場にありますので、や はり支援が必要だと考えています。この小規模の事業所ですけれども、年間の売 上げが2億円未満のところを小規模の金融会社と考えています。 また、慈善団体(チャリティー)からの苦情も受け付けています。この場合に は2億円の収入あるいはそれ以下というところですね。 チャリティーからの苦情は余りないのですけれども、時としてありますね。こ の扱い方はほかの零細企業と同じような扱いです。チャリティーというのは、例 えば銀行、保険、その他の金融商品から公正に扱ってもらう権利があります。苦 情があって、我々を介して解決するべきであれば、チャリティーコミッション (チャリティーの規制当局)を介して行う必要はありません。ここで言っている のはあくまでも、チャリティーの中で苦情を持って、申し立てているチャリティ ーです。彼らは銀行に対して苦情を申し立てる権利がありますから、わざわざチ ャリティーの規制当局とやりとりする必要はありません。 そして、信託であってその資産、信託財産が2億円未満のもの、このようなもの も受け付けています。 苦情はイギリスだけでなくて、世界中どこからの苦情でも受け付けます。ただ、 先ほど申し上げたように、そのサービスはイギリスから提供されたものでなけれ ばいけません。例えば中東、インド、バングラディッシュで、イギリスの銀行を 使っている人たちがいます。そういったところからの苦情が来ることもよくあり ますので、私たちはさまざまな国からの苦情の取扱いに大変慣れております。 Complaint process … (p.24)次に、苦情の申し立てに関するプロセスについてお話したいことは、 −25− 幾つかのツールを私たちは使っているということです。とても柔軟な形でこれら のツールを使っているので、全く同じ手順ということではありません。このプロ セスはというのは、やはり不満を持っている苦情の申立人によって異なります。 Complainants heard about us from: n the firm 29% n the press 28% n our literature 13% n friend/relative 10% n advice centre 7% (p.25)そのツールの利用者ですけれども、ツール別に集計しますと、私たち のことを金融会社から聞いてきたという人が29%、新聞や雑誌で知ったという人 が28%います。私たちオンブズマンのサービスが一元化されたことで、新聞や雑 誌などにもたくさん記事が出て非常に有名になったので、一般の消費者の方々は 私たちの存在を知ることがより容易にできるわけです。FOSのことをどちらから 知ったかというそのほかの内訳はこのスライド(p.25)に書いてあります。 If complainant comes to FOS and has not complained to firm FOS n refers complaint to firm n issues complaint form n awaits complainant contact (p.26)私たちは未解決の苦情に関しても作業をしています。まず、消費者は 金融会社の方に行って苦情を言います。間違えて私たちのところに最初に苦情を 持ち込む人もいますが、そういう場合には、単に受け付けられませんと言って追 い返すわけではありません。そういうときには、「苦情はまずお取引のあった金 融会社の方に持ち込んでください。もし必要であれば私たちの方からその金融会 社宛に照会をかけますよ」ということを申し上げます。その場合には、私たちは、 どういう性質の苦情なのかということの記録とその消費者の詳細情報を記録とし て取ります。そしてそれを金融会社の方に送るわけですね。「この名前のこの住 −26− 所のこの口座番号あるいはこの証券番号の人が、このような苦情を持っていま す」ということで連絡をするわけです。私たちは記録したものを金融業者の方に 渡すと同時に、コンピューターにも記録しておきます。また、時間の制限に関し ても、その先方の金融会社の方に伝えます。その時間の期限内に苦情の解決をし なければいけないからです。 また、この苦情が、その後、監督当局(FSA)の指示に従ってタイムリーにフ ォローされたかどうかがわかるようにしておきます。 金融会社に消費者の方がいらっしゃったとき、その会社は、FSA によって定め られている処理の仕方に従い、苦情処理をしなければいけません。 私たちは、消費者の方に、「金融業者の方で満足のいくような解決策が提示さ れ、もし解決できて満足されれば、特にその後私たちには連絡は要りませんよ」 と申し上げます。しかし、まだ苦情が解決なされない場合、「何か問題があれば、 例えば、解決に時間がかかり過ぎるといったことがあれば、既にわかっているこ とに関しては記入済みですので、この用紙に必要事項を記入してサインをしてこ ちらへ送り返してくだされば、われわれの方でお手伝いします」と申し上げます。 そして、「その場合に、私たちがその苦情について対処しますから」というふう にご説明をしておきます。 −27− What FSA requires firms to do about complaints complaint unless resolved by close of next business day 4 weeks written response – final or holding 5 business days written acknowledgement and recorded as complaint 8 weeks written response – final ombudsman referral rights (p.27)FSAは金融業者に関して、苦情の取扱いルールを設けております。お 客様の方から不満だという苦情が寄せられたとき、それは書面であったり、電話 であったり、いろいろな方法があるでしょうが、何でもそういうものを苦情とし て取り扱うわけではありません。不服のある場合、金融業者はそれを必ずしも書 面に残さなければいけないというわけではありません。電話で苦情が入ってくる ということもあるかもしれません。その場合でも、すぐに解決ができる場合には、 正式には苦情としてカウントする必要はありません。シンプルな問題で、翌営業 日の終了までに解決すれば、苦情として考えなくていいのです。例えば、ある銀 行に苦情を申し立てて、銀行がその不服に基づいて速やかに支払いをするのであ れば、苦情の処理のプロセスは経なくていいわけです。 ただ、苦情が翌営業日の終了までに解決できないときのみ、苦情としてカウン トされるようになりますが、これらについては、続いていろいろなことをしなく てはならないという決まりがあります。 解決できない場合、まず、金融会社は、書面による苦情確認書を5営業日以内 に作成し、それを記録しなければなりません。そして、担当者の名前も入れなけ ればいけません。ここで正式に苦情として記録が残されます。苦情の数について はFSAの方に報告する義務があります。 そして4週間以内に苦情申立て者への書面回答が義務づけられています。これ は最終的な回答あるいは回答を保留するという経過報告かもしれませんが、いず れにしても書面によって回答しなくてはなりません。最終回答を送るか、あるい は残念ながら記録がなかなか見つからない、問題がかなり前に起こったため、保 留をしますというような回答を送ります。 −28− さらに、8週間以内には最終的な書面回答が必要になります。苦情を受け入れ ようと受け入れまいと送らなければいけません。もし苦情を受け入れた場合には、 何らかの賠償などに関して提案をするということになります。それが受け入れら れれば、どのような救済あるいは補償が行われたのか、何が問題の原因だったの かを記録します。 そして、苦情を受け入れようと受け入れまいと、その消費者がもしまだ不満を 持っている場合には、消費者に対して、「もしこの回答で満足がいかないのであ れば、金融オンブズマンサービス(FOS)というものがあるので、そちらの方に 相談する(苦情を付託する)権利があります」ということを書面で知らせます。 そして、金融会社は、私たちのリーフレットをお客様に渡してもらわなければい けないことになっています。消費者の方が自分の権利をよくわかるため、FOSの パンフレットを渡していただく必要があるのです。 Time limits n after final response letter or 8 weeks (if sooner) n 6 months from final response letter n 6 years from event or 3 years from knowledge (if later) n we can waive time limits in exceptional circumstances (p.28)ただ、時間の制限がありまして、消費者はこれらの制約の中でFOSを 利用しなくてはなりません。この時間内に苦情を持ってきていただかなければい けません。 先ほども申し上げましたように、まず金融会社に行っていただいて、最終回答 を得ます。ここまでは苦情を私たちのところに持ってくることはできません。 金融会社、業者から最終的なレスポンスの回答の手紙が出た場合、それが1つ の制約となります。8週間以内に最終回答が来ない場合、オンブズマンの方に言 ってくることはできます。 2点目は、金融業者の最終回答の中でオンブズマンに関して言及されます。 「まだ不満な場合には6カ月以内、オンブズマンの方に苦情を持ち込まなければ いけませんよ」ということが言及されているわけです。消費者が依然として不満 であればオンブズマンサービスを利用できますが、それは業者からの最終回答書 −29− が出て6カ月以内ということになります。 3点目は、消費者は、そもそも苦情の原因となる事件が起こってから6年以内 にオンブズマンの方に来てもらう必要があります。もし事情がわからなかった場 合は、その問題について事情を把握してから3年以内にオンブズマンに持ち込ん でいただかなければいけません。それが制限になっています。 非常に例外的な状況の場合、何らかの特殊な事情があった場合で、例えばずっ と入院してしていた間にその期限が切れてしまったというのも一つの特殊状況に なりますが、その場合には時間の制約がかけられないという例外的な条件に該当 し、適用除外になります。3年以内というこの時間制限は、比較的緩やかなもの だと思います。英国の裁判所で採用されているものと同じような形ですが、ヨー ロッパよりも緩い形の時間制限になっています。 −30− phone enquiries sift and respond to casework Cases written enquiries (p.29)FOS内部のプロセスですけれども、まず、電話でたくさんの問い合わ せが来ます。そして書面での問い合わせや相談もたくさん来ます。 カスタマーコンタクトディビジョンという相談受付窓口にスタッフがおりまし て、まず、そこに入ってきたものについて、どのようなカテゴリーの苦情なのか を分類します。そして、できる限りその段階で適切な答えを提供します。 多くの場合はここで解決します。というのは、早い段階でアドバイスをするか らです。例えば電話がかかってきて、保険会社ですとか銀行ですとかでこういう トラブルがあったのですけれども、どうでしょうかという相談があったとき、 「これはいいのですよ、それは銀行や保険会社が規則によってやらなくてはいけ ないことですので、それについては仕方ありませんよ」ということを言って相談 者に納得していただければ、これ以上は進みません。 問い合わせの多くは、本当の事案(ケース)にはならないのです。また、私た ちのサービスを全面的に必要としている苦情でないものもあります。銀行あるい は保険会社から何かを聞いて、消費者の方々が金融サービスに関してよくわから ないので、セカンドオピニオンを求めるという形で問い合わせをしてくるという 場合もたくさんあります。私たちがそれでいいですよというふうにセカンドオピ ニオンを差し上げると、「ああ、それでいいのだな」というふうに理解します。 それで満足がいかなければ、例えば、説明に誤解を招くような要素があったと いうことがあれば、さらに独立的なオンブズマンサービスを利用することになり ます。 非常に悪い取扱いを受けたと信じていらっしゃる消費者の方々がいます。その 場合でも金融会社の方が悪い取扱いをしていないことがよくあります。苦情とし −31− て成立しないわけですね。私たちのプロセスの一環というのは、できるだけ早く 解決することです。もし苦情として成立し得ないのであれば、そのことを消費者 が早く知った方がいいと思います。ずっと長引かせるより、苦情として成立しな いということをすぐに理解してもらうことが必要です。 最初、このような形で対応をするわけです。その後、もう少し真剣に取り組ま なければならない事案を把握するわけです。これに関しては後ほど詳しくご説明 いたします。 case termination/mediation by adjudicator 42% initial decision by adjudicator 50% final decision by ombudsman 8% (p.30)われわれは事案をケースと呼んでいます。そのプロセスをご説明した いと思います。 2つのレベルの人たちが私たちのスタッフにいます。苦情を扱っている人たち で、アジュディケーターと呼ばれる人たちです。アジュディケーターというのは FOSで事案を扱うスタッフたちのことです。この方々は、私たちのスタッフの中 では苦情の対応をしているジュニアオンブズマンという位置づけと言っていいか もしれません。アジュディケーターは、まずこの事案は扱うべきものなのかある いは却下すべきものなのか、それを判断します。調停で解決できるものかどうと いうことを判断します。大体42%のケースは、このアジュディケーターの段階で 却下されるか、もしくは調停などで短期に解決を見ております。 そのような形で解決を見るのが不適当な場合は、アジュディケーターが第1回 初期審査というものをしなければいけません。それでどんな解決策があるかがわ かるわけです。アジュディケーターが決定を下すと、金融会社あるいは消費者は これを受け入れるか、それとも(FOSの中でアジュディケーターの上の段階にい −32− る)オンブズマンに付託したいかいう最終のステージに移っていくことができる わけです。大体50%のケースというのは、このアジュディケーターの決定で解決 を見ています。そして、両当事者がそれを受け入れるという形で終わっています。 それから最終段階のところにオンブズマンがいるわけです。この事案のうち、 わずかなものしかオンブズマンのところに到達いたしません。それぞれの事案と いうのは、まずはアジュディケーターに割り振られます。オンブズマンは最初の 段階ではまだケースに入ってきません。実際、オンブズマンが取り扱うのは限ら れた数の事案だけです。 すべてのケースのうちの8%ぐらいは、どちらかの当事者が受け入れないこと になります。その場合だけ、オンブズマンの方に事案が持ち込まれます。最終的 には全体のケースの8%だけがオンブズマンの最終決定を伺うわけです。オンブ ズマンはかなりの権限を持って、金融会社に対して拘束力のある決定を行うこと ができます。 ですので、私たちが法的な権限を完全に活用し、解決策を見出さなくていけな いのはこの8%に過ぎません。逆に言えば、92%の人たちというのは、アジュデ ィケーターから、第三者の意見というものを受け入れ、それ以外の(8%の)人 もオンブズマンが言っていることは受け入れようと考えているようです。やはり 独立した第三者が入ってくれることで安心感があり、しかも権限があるというこ とだと思います。 Termination by adjudicator n no reasonable prospect of success n no loss/material inconvenience n fair settlement on offer n court has dealt with merits n more suitable for court n legitimate commercial judgment [can ask for review by ombudsman] (p.31)さて、ここでそれぞれのステージについてもう少し詳細にご説明した いと思います。 −33− アジュディケーターがこのケースを見た場合、まずこれは却下すべきかどうか ということを考えます。こういったケースはもう調べなくてもいいということを ルールに従って決めていくわけです。苦情申立ての却下、最初の段階でアジュデ ィケーターが却下する理由は幾つかあります。以下に却下できる理由の一番重要 なものだけを列挙しておきます。 第1に、合理的に考えて成功する見込みがないといった場合です。場合によっ ては、金融会社が消費者から苦情を言われたことをすべてやったかもしれないが、 だからといって何か過ちを犯したことにはならなかった場合、金融会社の側に間 違いがなかった場合には、苦情として成り立たないケースです。勝ち目がないわ けで却下します。 2番目に、損失がない、あるいは重大な不便を来たしていない場合もそうなり ます。金融会社が何か若干まずいことをしたかもしれませんけれども、その結果 として消費者の方が非常に損を被ったとか、重大な不便を被ったとかということ でなければ、この苦情をそれ以上追及していく理由はないということで却下にな る場合もあります。 3番目に、金融会社の方から既に公平な和解案が出ていた場合です。例えば金 融会社の方で既に非を認めて消費者に何らかの補償を提案していたが、消費者の 方はそれでは不服で、オンブズマンのところへ持ち込んだケースです。われわれ の場合は、消費者に対し、「おっしゃるようなことはすべてあったかもしれませ んけれど、われわれが賠償額を提示するのであれば、金融会社が言っていらっし ゃる額以上のものは出しません。ですからもうこれ以上やっても無駄ですよ」と 言います。消費者が誇大な被害妄想を持っているかもしれませんが、私たちから 見て、補償の金額が適切なものであれば、時間の無駄になるわけですから、もう 適切な解決法が提示されていたということで却下します。 また、法廷の場で既に判決が下ったもの、裁判所が判断すべき事柄であると考 えられるものは取り扱いません。一部の人たちは誤解しているようですけれども、 そういったことはしません。 ごく少数のケースですけれども、私たちが見て、裁判所で取扱った方が適切で あるというケースがあります。裁判所が審査をして宣誓をした上で、証拠を取っ て対処してもらった方がいいという場合があります。これは紛争がその苦情申立 −34− 人と金融会社の間の単純な問題だけではなく、また別の人との間の問題であると きです。例えば夫婦が銀行口座をめぐってもめて、2人のうちのどちらかが銀行 に文句を言ったとしても、これが夫婦げんかの域に属している、ないしはビジネ スパートナー同士のもめごとであった場合、私たちは第三者に対する権限は持っ ておりませんので、裁判所に持ち込む方が適切だと判断します。 そのほか、金融会社が正当な商業上の判断を下したケースも、私たちは取り扱 いません。例えば保険会社が25歳未満の人に対して、馬力の高いスポーツカーに 対する保険を提供しないといった場合、これは正当な商業判断であるということ でわれわれは介入しません。ローンの申込みをしたのに、銀行の方がその人の所 得を見て、「これはとても融資できません」と言った場合、私たちはそういった 正当な判断に対し介入しません。しかし、別の理由、間違った理由で、例えば手 続が間違っていた、あるいは女性であるから、外国人であるからといった差別的 な理由による拒否であれば、もちろん扱います。 上記のような条件に合致すれば、アジュディケーターはこれ以上この問題を取 り上げないということができます。ただ、アジュディケーターは、消費者の方に こういった判断を下した場合に、オンブズマンによってさらにそれを審査しても らうということもできます。苦情の申立てをしている人がオンブズマンに相談を したければ、その道は開かれているということも申し上げます。 Mediation by adjudicator n evaluative mediation n by agreement (p.32)最初のアジュディケーターの段階で苦情が却下されなかった場合、次 の段階に入ります。最初の段階で却下されなかった場合、アジュディケーターの 方で、果たしてこれを調停で解決できるかどうかの可能性を探ることになります。 このメディエーション、調停、コンシリエーション、あっせん、そういったも のに関してはきちんとした定義がなく、混乱しているようです。いろいろな人が 違った内容を指して同じ言葉を使っているので混乱が起こっていると思います。 メディエーションというのは、評価を行うような形の調停です。アジュディケ ーターがケースを見て、自分の頭の中で考えをまとめます。消費者が言っている −35− ことを聞いて、金融会社が言っていることを聞いて、それにオンブズマンサービ スの経験に基づいて、自分の意見というものを考え、当事者に対して自分の意見 を言うわけです。アジュディケーターは書類を読んで、「金融会社の側に間違い があった」というふうに言うかもしれません。その場合には金融会社に電話をか け説得をしたり、損害賠償の金額に関して持ちかけたりします。あるいは消費者 の方に電話をかけて、「アジュディケーターの考えはこうだ」ということを言う こともあります。そして、「金融会社の側からこういった申し出があった」とい うことを言います。このような形で合意に基づいて解決をしていくわけです。 ただいまのご説明を、もう少し具体的な事例に沿ってかみくだいて申し上げま しょう。アジュディケーターが適切だと思った場合、評価に基づく調停を行いま す。2人の当事者を会わせて、当事者を合意させるような形に持っていくのでは なく、アジュディケーターの方で本来こうあるべきだという答えを出して、両当 事者にその正しいと思われる答えを受け入れさせるよう説得します。例えば、銀 行が消費者に対して1,000円を提示したのに、消費者の方は、いや5,000円欲しい と言った場合、アジュディケーターの方は、では、その真ん中の3,000円ぐらいで どうですかとは言いません。アジュディケーターは、その事実関係を見て、もし 自分たちであったら、どのくらいの補償額を支払うかと考えます。そして、正当 に見て、例えば3,750円ないしは2,500円という判断を下し、その額を両当事者に 受け入れさせようと説得し、合意を取りつけます。 それに代わる方法としては、アジュディケーターは、場合によっては何らかの 決定を下さなくてはいけないことがあります。欧州委員会においては、オンブズ マンはある解決策を提案するないしは押しつけるという表現もしますけれども、 何らかの形をもって合意をさせます。私たちは、こうあるべき ということと、そ してこうしなさいということの両方をします。 メディエーションに関する補足(3月12日の質疑の転記) ○田中 よろしいですか。FOSのプロセスに関してのご説明にもありましたけれど も、オンブズマンニュースなどにもメディエーションの事例がよく出ております。 インベスティゲーションとエバリュエーティブメディエーション(評価を行うよ うな形の調停) の違いのところをもう少し詳しくご説明いただけないでしょう −36− か? エバリュエーティブメディエーションでもメディエーターが評価をするこ とになって、インベスティゲーションでも調査をすることになっていますが、そ この違いとは何でしょうか。これは稲村さんからの質問ですが、よろしいですか。 デビッドからお願いします。 ○トーマス できるだけ分かりやすく説明したいと思います。先ほど説明しまし たけれども、難しいのはきちんとした定義がない問題です。少なくとも英国にお いてはコンシリエーション、メディエーションとは何かについて、公式に認めら れた定義がありません。 私たちがメディエーションをやっている場合には、できるだけ両当事者が何ら かの結論に至ってほしい思うわけです。当事者両方から聞いた内容と専門的な知 識に基づいて私たちが公平だと思うような結論に対し説得します。 先ほどと同じ例ですが、消費者が銀行に対する何らかの苦情申立てをしたとき、 銀行はミスを認め1,000円払うと言ったが、消費者はそれに不服で5,000円くれと 言ったとします。もしそこで両方を満足させるような合意を取りつけるのであれ ば、例えば3,000円で手を打たないかという言い方をするでしょうが、私たちはそ うはしません。状況をみて何が公平なのかを問いかけます。1,000円なのか、それ とも5,000円の方なのか、ないしは2,750円なのか、3,200円なのか、自分たちで判 断を下します。みずから何が公平な額かを判断し、それに基づいて両当事者にそ れを納得させるメディエーションを行うわけです。ただ、このメディエーション とインベスティゲーションの違いがなかなか見えないことはあります。 さて、私たちはこのメディエーションが孤立した概念ではないと思っているの です。そこが難しいところです。メディエーションだけでもって解決するのでは なく、解決方法はいろいろありますので、私たちはその場合に適切だと思う解決 方法をもって、それぞれの段階に応じて手段をとります。一般にはメディエーシ ョンを早い段階でとります。当事者が自分たちの立場に余り固執していないよう な段階で、メディエーションで何とか和解をさせようとします。それが失敗に終 わった場合のみ、もう少し突っ込んで情報を取って判断を下します。 逆のケースもあります。最初の段階ではお互い全く納得しなかったのが、調査 する中でいろいろな情報が出て、状況が変わることがあります。例えば金融会社 の方でこの苦情を却下したが、私たちが致命的な情報を彼らに見せたことで気が −37− 変わり、消費者側に歩み寄ることもあるわけですね。 裁判所とは違い、非常にフレキシビリティーが求められています。個別の調停 とは違いまして、私たちはいろいろなツールがあるのですね。いろいろツールを、 その順番はどうでもいいので、その場、その場、適宜な使い方をしています。 ○メリックス そうですね、私は時々ガイデッド・コンシリエーション、ガイデ ッド・メディエーションという言葉を使います。指針に基づくという意味ですけ れども、今説明したように、私たちは当事者を何かについて合意させるだけでは なくて、そういった種類の紛争を解決した経験に基づいて、指針を与え和解に導 いているのです。 20万、30万件の苦情をここ四、五年扱ってきたわけですから、恐らく我々組織 として初めて出会ったような苦情が出てくることはほとんどないのですね。過去 においてどこかで見たことのあるようなものが必ず出てくるのですね。見たこと のないようなものはほとんどないと思います。 電話で苦情を聞くと、消費者は必ずしも最初から正確にその内容を言い伝えな いものなのです。おばあちゃんの話をします。最初は、おばあちゃんが銀行に行 ってお金を借りて家を建てたという話から始まります。ところが、その後息子が ああだこうだとだんだん途中から出てきて、苦情の内容がだんだん見えてきます。 核心の部分といいましょうか、この人に情報を提供すれば簡単に解決できるよう な内容なのか、それとも厄介な問題で、情報提供だけでは解決できないものなの かが、話を聞いているうちに、途中からだんだん見えてきます。 私たちの事案は2カ月で解決すればかなり早いものだと思いますね。ものによ っては1年半ぐらいかかるのもあります。それはどのぐらい当事者同士が怒って いるかによって違います。銀行が顧客に対してかなり怒っているケースがあれば、 お客さんの方が銀行や保険会社に怒りを覚えているなど、いろいろなケースがあ ります。単純な事実関係や、法律問題、ルールといったことだけではない、非常 に感情が絡んでいるわけです。情緒的なものを落ち着かせ、何とか解決させよう と、我々は働きかけます。 私たちは独立した立場にあり、権限のあることを生かしています。独立して、 中立的な立場にいて、必要であれば、消費者に、「あなたは間違っていますよ」 と言えますし、銀行に対しても「あなたは間違っていますよ」と言えます。非常 −38− に公平であり、中立的であるという点で評価をされています。 消費者の方から、「金融会社を信用できない」というエピソードもよく聞くと ころです。例えば、消費者が、金融会社から、なぜ自分の苦情が今まで受け入れ られなかったかの理由を3回聞かされたけれども、毎回違っていたというケース で、例えば4回目の何か違う説明を銀行員から受けたとして、どうしてその人が それを信用できますか。 それに対して、私たちの場合は、「こういう理由でこうですよ」と言えば納得 するでしょう。 自慢するわけではないですけれども、35%のケースで消費者が勝つにもかかわ らず、80%の申立人が私たちのやり方について満足します。消費者は、納得した 上で負けているのです。負けた消費者のケースを調べたときでも、60%の申立人 は、私たちの提供したサービスに対し満足していると答えてくださっています。 Initial decision by adjudicator n initial view n (paper) investigation n power to compel evidence n adjudication [can ask for review by ombudsman] (p.33)調停が不調に終わった場合、あるいは調停によって解決するのが好ま しくない場合、アジュディケーターは決定を下します。私たちはとても柔軟ない くつかのプロセスをとっています。最初から金融会社あるいは消費者の方から十 分な情報をいただいていて、情報が十分そろっている場合があります。そういう ときは、アジュディケーターはどちらが勝ちそうかなということをよくわかって いるので、初期の評価というものを当事者に送り、「あなたは負けそうです」と いうことを言うわけですね。例えば消費者に対して、「この苦情に関しては負け そうだ」ということを言います。あるいは、金融会社に対して「消費者が勝ちそ うだ」というレターを送ります。そういうふうにすれば、評判を著しく損ねるこ となく引き下がることができるので、しこりが残らないようになるわけです。 つまり、アジュディケーターは非常に早い段階でもって、いわゆる初期の審査、 −39− 見解を述べることがあります。その負ける側、負けるであろう側に対しその意見 を述べます。アジュディケーターは、例えば申立てに対し、「まあこれは苦情と は言えないでしょう。私が何か見落としているなら別ですけれども、私の見る限 り、これはちょっと苦情として成り立たないと思いますよ」というときがありま す。「何しろ、金融会社の方に行って事実関係を見る限り、こういう証拠がない かぎりは、とても勝ち目はないですよ」ということを伝えます。その内容を聞い て消費者は、場合によっては、「では撤回します」ということがあります。逆に 金融会社の方から、消費者のメンツを潰さない程度の何か提案をするということ も、十分あり得るでしょう。 それから、場合によって、アジュディケーターは何らかの調査をする必要があ るかもしれません。当事者から十分な情報が提供されていない場合、また非常に 複雑な事実に関して混乱がある場合、あるいは消費者と金融会社が非常に恨みを 持っているような場合などには、私たちはプロセスの一部として、質問をし情報 収集をし、情報のコントロールをします。つまり、消費者の方にも金融会社の方 にも情報の提出を求めます。証拠を提出してもらい私たちがそれを見るわけです。 金融サービス市場法(FSMA)は、金融会社が私たちに情報を提供しなければな らないことを決めています。もしこれに違反しますと、罰則がありまして、罰が 加えられることになります。 実務的に大事なのは、金融会社の守秘義務というものを超えて情報提出を要求 できることです。強制的に情報を出してもらうことができるわけで、顧客情報を 提供できませんといった理由で、私たちに情報の提供を拒むことはできません。 それで、どちらが勝ちそうかということが判断できるだけでなく、大体幾らぐら いの賠償金になるかということもわかるわけです。 私たちは法的にそのような権限を持っており、金融会社に対して「証拠を出 せ」と強制する権限を認められております。これは私たちが十分必要な情報を得 られるための手段であると同時に、銀行等が顧客に対し持っている機密保持の責 任を超越した形でその証拠を出させる手段なのです。 例えば、他の顧客の記録が、苦情申立ての内容に絡んでいて、われわれに記録 を出せないと言った場合、それを超越することができます。アジュディケーター は、それに基づいて正式な決定をします。そういう情報を基礎として、どちらが −40− 勝つどちらが負けるという判断を下します。場合によっては、賠償額はこうであ るべきという決定を下します。大多数の場合、両当事者はアジュディケーターが 言った内容を受け入れます。しかし、どちら側かがこれをオンブズマンの方でも って審査をしてほしいと言うこともできます。 ただ、先ほど申し上げたことを繰り返しますけれど、アジュディケーターはい ろいろなツールを使うことができます。解決のためにいろいろな道具があります。 必ずしも今申し上げたような順番とは限りません。その時々、最も適切と思われ るツールを使います。例えば、ケースが最初にオフィスに来たときは調停が不適 切だと思ったかもしれませんが、調査をする中でいろいろな文書と証拠が出てき て、両当事者にそれを見せたとします。例えば、それがそれぞれの主張している 内容を覆すような証拠であった場合、調停を受け入れてくれるかもしれません。 それから、オンブズマンにこの問題が持ち込まれた場合でも、オンブズマンに よる調停でもって解決することがあります。アジュディケーターが何らかの決定 をしたが、金融会社の方はそれでもオンブズマンの方で審査してほしいと言った 場合、オンブズマンが金融会社に電話をして、「一体これはどうなっているので すか。おたく、何か説明していないものがない限りにおいては、これはもう成り 立ちませんよ」といったオンブズマンからの説得をもって、最後の段階で調停を 受け入れてもらうこともあり得ます。このように、その場その場で必要な、適切 なツールを、私たちは使います。 Review by ombudsman (‘appeal’) n request by either side n additional evidence/arguments n possible hearing (rare) n ombudsman’s final decision n if customer accepts, both bound n otherwise, neither is bound n [possibility of judicial review] (p.34)次のステップですが、消費者も金融会社も、不服であれば、オンブズ マンの方にその件を持ち込むことになっています。これはたったの8%に過ぎま −41− せんけれども、その場合にはオンブズマンが審査することになります。これはレ ビュー、審査と言います。上訴(アピール)というふうに言われることもままあ ります。上訴といいますと、第一審の裁判所が何か誤った判断をしたような印象 がありますので、アピールという表現は使いません。実はオンブズマンによる審 査と言った方が正しいと思います。これは再審手続のようなもので、最初からも う1回新たにすべてを見ることで、さらなる当事者からの証拠の提示、もしくは 新たな主張といったものが出てくることもあるでしょう。 この段階で、追加的な証拠、主張などを出してもらうこともできます。重要だ と思われなかったものが、アジュディケーターが決定をしてから重要であること がわかる場合があります。そうした場合には、証拠あるいは主張というものをさ らに提出させることができるわけですね。 消費者であれ、金融会社であれ、まず「負けそうだ」という警告が来てから負 ける形になるわけです。負けてしまってから、やっと負けたことがわかるという 状況ではなく、あらかじめ警告が来ます。 この段階ではヒアリング(聴聞会)を行うこともあります。ただ、ヒアリング を実施するというのは非常に珍しく、両当事者をオンブズマンの前に呼んで、ヒ アリングをすることはほとんどありません。1年間に20回ぐらいのヒアリングし か行っていないのが実情です。 皆さんにとっては、特に弁護士の方にとっては奇異に聞こえるかもしれません。 私もかつて弁護士をやっていたときにはとても納得できなかったのですが、実際 にはそうなのです。ほとんどの場合、ヒアリングを開くことなく解決できるので す。というのは、ヒアリングをやる場合、それまでのプロセスの流れを止めてし まいます。これは随分長くかかってしまいます。場合によって、早い段階で解決 して、ヒアリングは必要ないということもあるでしょう。 一方、オンブズマンの狙いというのは、どんな形であっても解決すること、し かもできるだけ早く解決するのが主眼です。 こういったプロセスの最後に、オンブズマンが最終的な裁定を下すわけです。 それは1981年保険オンブズマンがつくった前例に基づいているわけですけれども、 オンブズマンの段階に来てオンブズマンが裁定を下したとき、もし消費者がそれ を受け入れれば、当事者の消費者と金融会社両方に拘束力を持ちます。金融会社 −42− は賠償金を払うことになるでしょう。しかし、消費者が受け入れない場合は、金 融会社も消費者も法的拘束力を受けませんので、場合によってはその苦情を裁判 所に持ち込み訴えることができるわけです。少なくとも理論上はそうであります。 しかし裁判所に訴えるとお金がかかりますし、また負けるという危険もあるわけ です。金融会社の側が裁判所に対してオンブズマンの裁定はどうだったかを言う こともあります。オンブズマンに関しては、これがプロセスの最後のところです。 理論上というのは、消費者は、保険会社ないしは銀行を相手の苦情で、オンブ ズマンに勝ち目がないと言われた段階で、わざわざ裁判を起こすことは考えられ ないということです。裁判では負けた側がすべての費用を負担するわけですから。 恐らく、オンブズマンの裁定が証拠として裁判所に持ち込まれますので、オンブ ズマンに「負けた」と言われた後で裁判を勝ったというケースは、聞いたことが ありません。会社側は裁判所に持ち込むのではないかというリスクを感じるかも しれないけれども、実際にはそういったことにはなっておりません。 オンブズマンの決定というのは最終的なものでありますが、私たちは裁判所で はありません。ほかの重要な意思決定機関、例えば、裁判所に私たちが権限以上 のことをやってしまったと思われた場合、法律に反するような形でもって権限を 使ってしまった、ないしは非合理的な意思決定を下してしまったと思われた場合 は、裁判所に持ち込む、司法審査に持ち込むということにまだ道が開かれていま す。全体的な司法の審査、レビューを受けることになります。 もちろん裁判所は、私たちの決定の内容を見るのではなく、果たして私たちの やったことが明らかに間違っていたかどうかというところを見ます。要するにき ちんとした手続を行ったかどうかということを見るわけです。また、裁判官の判 断とオンブズマンの判断が類似性のある判断かどうかということを見ます。最終 的にそのような司法の監視を受けることになります。私たち、何回か司法審査を 受けたことがありましたけれども、今のところ、私たちの側に非があった、ミス があったと言われたことはありません。 ただ、1つ考えなくてはいけないのは、第二次世界大戦後多くのヨーロッパの 国々が署名した人権に関する条約で、この中に「公正な裁判」という条項があり ます。いかなる当事者も、民事訴訟を起こした場合には公正な手続をとることに なっております。私たちがそれに準拠しなくてはならないことは、そもそもこの −43− 金融オンブズマンをつくるときに決まったわけです。 なお、そういった取決め、そして日本における憲法に関する問題 1などを対比す ることはできるかもしれません。日本の場合、金融ADRの制度的な問題の解決は 法律の側面では難しいところがあるようですが、英国においては少なくともその 問題は克服されました。 アジュディケーターとオンブズマンの関係についての補足(3月12日の質疑の転記) ○渡辺 FOSのADRのプロセスで、アジュディケーターとオンブズマンの役割の 2つに大きく分かれるというふうに理解したつもりですけれども、アジュディケ ーターの方とオンブズマンの方が案件を処理する場合のインセンティブはどうな っているかを伺いたいと思います。もちろんそれぞれの方々は大変すばらしい方 で、誠実に業務を執行しておられると思うのですけれども、例えば日本の場合、 裁判官も抱えている案件が非常に過多なものでありますので、判決を書くのが大 変で、できれば和解に導きたいとかいうことはよく言われます。それと同様に、 例えばアジュディケーターがオンブズマンの方に案件を回したいとか、あるいは その逆、オンブズマンについてもそういうことがあるのかどうかということと、 もしそれが無意識というか、グループ別にそういう傾向が何かあるとしたならば、 それを正すために何か考えておられるのかということをお伺いしたいと思います。 1 片面的仲裁制度が任意加入のスキームであれば、加入時に包括的な合意を認定す ることは不可能ではないが、強制的なものであるとすると(例えば、銀行業務等をする要 件として加入が求められるとすると)、日本では、業者の裁判を受ける権利(憲法第32 条)を侵害することになり、問題とされる。仮にこれが行政処分として位置づけられれば (民間の組織であってもその限りで行政権限の一部委譲があると理解すれば)上記の問 題はなくなるが、それに対する不服申立てを許さずファイナルなものと構成すると、今度 は「行政機関は終審として裁判を行うことができない」とする憲法第76条第2項に反する おそれがある。つまり、いかなる行政府の組織・部門も司法に関わることについて確定的 な判断をする権力を与えられないという原則に抵触する恐れがある。ただ、行政機関も、 審判の制度として、人事院の裁定、公正取引委員会の審決、選挙管理委員会の決定な ど、行政機関による審判の制度をすでに有しており、司法機関にかける前に担当行政機 関が迅速に事件の処理にあたることが 行政サービスの向上になるという考えは日本にも 存在する。日本では、従来、以上のような議論もあり、英国の金融オンブズマン制度のよ うな「片面的仲裁の制度化」には問題も多いとされて、これまで突っ込んだ検討がなされ てきていない。(NIRA事務局注) −44− もう1つは、非常に細かいことですが、チャリティーからの苦情を受け付けてお られるということを聞いたのですけれども、その場合はチャリティーコミッショ ンに対して何か報告したり、あるいは何か共同でしたりということは全然ないと いうふうに考えてよろしいのでしょうか。 ○メリックス アジュディケーターとオンブズマンの関係についてですけれども、 FOSには550人のアジュディケーターがおりまして、彼らが9割のケースを取り扱 っております。彼らはもちろん専門性がありますので、少なくとも9割取り扱う 能力があると言った方がいいでしょう。私たちはそれぞれの案件をアジュディケ ーターに委託します。恐らく彼らは同時に1人当たり50件ないしは60件ぐらいの 案件を持っていると思います。 彼らは、どういった解決方法があるか、いろいろ手探りをしながら解決します。 アジュディケーターが消費者ないし会社側に対し、自らの意見を述べ、報告書に 書いたにもかかわらず、一方がまだ不満で、不服である場合にはオンブズマンに 移ります。25人いるうちの1人がオンブズマンとして対応するのです。 オンブズマンとアジュディケーター、これはいずれも同じオフィスで仕事をし ています。彼らは同じチームで仕事をしていて、お互い近いところにいます。組 織の中で私たちはいろいろな専門性を持ったチームをつくっています。ユニット と言った方がいいでしょうか。たとえば、銀行の案件ばかりを取り扱っているユ ニットがあります。アジュディケーターの中で銀行だけを専門に扱っているのは、 大体50人から60人ぐらいいます。そして、4人ぐらいの銀行担当のオンブズマン がいるわけですが、彼らはそのアジュディケーターたちと一緒になって仕事をし ています。 アジュディケーターはしばしば、オンブズマンの方に専門家の意見を求めるこ とがあります。意見というのは別に文書でありません。単にその人のところに行 って、「こんなの見たことがあるのか」、「どうすればいいのか」、「これは銀 行にもっと情報をもらうべきなのか」、それとも「これだけで決着がつくのか」、 といったことを相談します。 オンブズマンの方がベテランです。彼らの方がかなり一貫性を持っているので すね。というのは、オンブズマンというのはいわゆるアジュディケーターのやっ たものに対し再審する人たちですので、オンブズマンの人たちは何とかプロセス −45− に一貫性を持たせようとします。オンブズマンは全体のチームの人たち、アジュ ディケーターの人たち皆と話をして、例えば「こういったケースの方が多いじゃ ないか」とか、「これを差し戻すということもこういったときにはあった」とい う話をします。オンブズマンは一番最近のトレンドについてもアジュディケータ ーと話をします。オンブズマンの方がチームをリードしているのですね。オンブ ズマンはどういう方針でやるかを決める立場にあって、ただ、当然マネジメント からのプレッシャーといいましょうか、そういう部分もあって、オンブズマンと してはできればアジュディケーターにもっと処理してほしいと、そうすると自分 は楽になると思う部分もありますよね。これはごく自然の成り行きといいましょ うか、傾向だと思います。アジュディケーターが、もうこれでは先に進まないと 簡単にあきらめて、この不満だらけのお客さんに対してオンブズマンの方でやっ てくれと投げてしまうのではなくて、アジュディケーターにはできるだけ最善の 努力をして解決していくよう、上のマネジャーであるオンブズマンが何とか対応 します。 オンブズマンの方はまた逆に、チームのアジュディケーターに余り負担が大き くなり過ぎないようにいろいろ配慮しております。これはオンブズマンの仕事の 一部だと思っておりますし、そして、トップにいる同僚がすべて、そういったス タッフの関係をうまくコントロールしなくてはいけないと思っています。最初の 段階において電話で対応しているカスタマーコンタクトディビジョンのスタッフ もいますよね。彼らは、例えば、わざわざアジュディケーターの方に回さなくて いいような案件をいろいろ仕分けしてくれて、なおかつ、適切な情報がきちんと スタートからそろっているようにいろいろ配慮しています。この電話受付をして いる人たち自体、もうその問題の深刻さを見分けることが必要ですね。私はチー フでありますので、組織全体に責任を持っております。すべてがスムーズに進み、 そしていいサービスを提供する責任を持っております。それも、タイムリーにサ ービスを提供して、1つの段階であまり長く時間かからないように配慮しなくて はなりません。すべての制度をそろえて、やるべきことをやるため、いろいろな 配慮をしております。 さて、チャリティーに関しては、余りチャリティーからの苦情はないのですけ れども、時としてありますね。この扱い方はほかの零細企業と同じような扱いで −46− す。チャリティーというのは、例えば銀行、保険、その他の金融商品から公正に 扱ってもらう権利があります。苦情があって、我々を介して解決するべきであれ ば、チャリティーコミッションを介してやる必要はありません。ここで言ってい るのはあくまでも、チャリティーの中で苦情を持って、申し立てているチャリテ ィーです。彼らは銀行に対して苦情を申し立てる権利がありますから、わざわざ チャリティーの規制当局とやりとりする必要はありません。 We decide what is fair in the circumstances of that case taking into account n law n regulations n regulator’s rules n relevant codes n good industry practice (p.35)○トーマス いずれにしても、私たちはあくまでも、その案件の状況 に基づいて何が公正であるかという視点で判断を下します。その際には、法律、 法令を参照しますし、規制ですとか、FSAのさまざまなルール、規則ですとか、 関連する産業セクターの行動規範ですとか、一般に言う商慣行ですとか、そうい ったものに基づいて判断をします。 金融会社が法律を破っていなかったとしても、商慣行に反するようなことをし てしまった場合には、私たちは金融会社に非があるという判断を下します。例え ば、保険オンブズマンの場合は、そういったモデルを採択していましたけれども、 私たちもそういった観点から、場合によっては法律を超えた救済策を提供するこ とがあります。あくまでも公正である前提で、ある状況においては法律が必ずし も公正な結果をもたらさないことがありますので、私たちは結果が公正であるよ う努力をしております。逆のケースもあります。例えば法律で公正な結果がもた らされるのであれば、もちろん法律に基づいて決めます。 司法の審査と執行命令についての補足(3月12日の質疑の転記) ○中 オンブズマンのファイナルディシジョンに対して、ジュディシャル・レビ ュー(司法の審査)をするということですが、そのジュディシャル・レビューの −47− 範囲について、例えば仲裁手続、あるいは仲裁のアウォードに対する裁判所によ るスーパービジョンと同じように、どの範囲でどのようにレビューをするかとい うことについての制定法の規定があるか、質問させていただきます。 ○メリックス ジュディシャル・レビュー(司法の審査)については、監督パワ ーということで、常に政府の機関に対し、裁判所が持つ権力です。これは司法権 として、特別法の中に含まれていますが、実は議会の方でちょっと通過しなかっ たのですね。ですから、裁判所の方で、公的機関がその権限の中で、権力を行使 しているかどうか、そのスコープ、幅、範囲について監督できます。これは控訴 とは同じではありません、通常、上訴、控訴というのは、控訴裁判所はその下級 裁判所が下した判決を含む判決全体を審理するわけです。我々の場合はオンブズ マンですから、その与えられた権力を行使したわけですが、司法審査というのは そういうものではなく、それ以上のものまで及びます。というのは、裁判所は常 にオンブズマン、あるいは法の適用を適正に行わなくてはならないとされている からです。法を適正に適用しなかったオンブズマンは、その与えられたパワー (権力)の中での行使をしなかったと見なされます。ジュディシャル・レビュー というのは、いかにもプロシージャ(手続上)のエラーだけを見ているかのよう に聞こえますが、実はそれ以上の範囲に及んでいます。それについては、実はい ろいろケースがありました。裁判官の方に我々の方の個別の事案を審査するよう な要請がいったことがあります。 これまで、私の知るかぎり、我々の方が法を誤って適用したという判断が下さ れたことはありません。我々が法を不適正に使ったということはこれまでなかっ たけれども、ジュディシャル・レビューの対象になることはあります。可能性と して、金融業者の方が我々の裁定に不満を持ったときなどは、非常に大きな誤り であると我々の裁定を攻撃してくるわけですね。そういう受けとめ方をされたこ ともあります。可能性としては、特に多額の賠償金が絡んでいるときは、大体そ れが動機となって攻撃してくるのです。消費者がそもそも損をしたと思って、金 融業者を訴えるのと同じ心理です。金融業者は、我々に不服があってもジュディ シャル・レビューを要請しないこともあります。多額のお金が絡んでいても攻撃 してくることもあれば、相手が間違っていると思っても訴えないときもあります。 裁判所が、もし我々の裁定が間違っていて欠陥があるという決定をするかどう −48− か、それは裁判所次第です。オンブズマンの方に差し戻させ、もう一度裁定をし ろという命令が来るかもしれないし、こういうふうにしなさいという裁判所の決 定を下すかもしれません。ジュディシャル・レビューの中で、裁判所が新しい裁 定を下すかどうかというのは、彼らの裁量によって任されています。オンブズマ ンの方に差し戻される場合は、1つの原理というものが示されて、それに基づい て裁定するようにと言われます。通常、我々はもう専門家団体ですから、専門家 の方に差し戻してほしいという気持ちがあります。ただ、差し戻されるというこ とは、裁判所の方からここのところに欠点があるからというその欠陥部分を特定 してくるわけです。我々はそれに従って裁定をします。 ○中 オンブズマンのファイナルディシジョンを強制執行するためには、どうい う裁判所の手続があるのでしょうか。日本の法律であれば執行判決を得るとかい うような手続が制定法の中に組み込まれている可能性があるのですけれども、そ この部分の制定法はどのようになっているのでしょうか。 ○メリックス 裁判所からの執行命令が必要かどうかということですね。法律に よれば、我々の裁定は裁判所で強制執行することができます。つまり裁判所に行 こうと言って、そこから命令を求めることも可能です。例えば、資産の没収とか ですね。ただし、そのときにもう一度審理するということはありません。エンフ ォースメントのパワーに逆にゆだねます。ただ、裁判所の命令が最も重要という のではありません。これはレギュレーター(FSA )のルールです。つまり、その 監督官庁の規則で、我々の裁定に業者は従わなくてはならないということになっ ておりますが、それは我々の裁定の背景にFSA の権力がついているからです。 FSAは、会社が廃業した後は債権を回収することはできません。それでも債権を 回収したいというのであれば、今度は我々の方ではなく、司法手続を経て裁判所 に訴えてもらわなくてはなりません。 ○内堀 法務省の内堀と申します。先ほどの片面的仲裁といいますか、そのジュ ディシャル・レビューに関して、ちょっと確認させていただきたいと思います。 ジュディシャル・レビューにおいて、裁判所がオンブズマンの裁定、あるいは判 断が間違っているというふうに思った場合には、その裁定を取り消すという理解 でよろしいのでしょうか。その後、その案件といいますか、その事件は、どのよ うに処理されることになるのか、裁判所がみずから正しいと思う裁定をするのか、 −49− あるいは事件をさらに、再度オンブズマンに差し戻すことになるのでしょうか。 その点だけ、ご確認です。 ○メリックス 裁判所は、もし我々の裁定が間違っていて、欠陥があるという決 定をすれば、それは裁判所次第です。オンブズマンの方に差し戻さ、もう一度裁 定をしろという命令が来るかもしれないし、こういうふうにしなさいという裁判 所の決定を下すかもしれません。それはジュディシャル・レビューの中で、裁判 所が新しい裁定を下すかどうかというのは、彼らの裁量によって任されています。 オンブズマンの方に、差し戻される場合は、1つの原理というものが示されて、 それに基づいて裁定するようにと言われます。通常、我々はもう専門家団体です から、専門家の方に差し戻してほしいという気持ちがあります。ただ、差し戻さ れるということは、裁判所の方からここのところに欠点があるからというその欠 陥部分を特定してくるわけです。我々はそれに従って裁定をします。 Outcome of cases ¢ In about 35% of cases on average we agree with the complainant ¢ But that reflects rates of 15% to 80% depending on firm and product ¢ In about half the cases where we agree with the firm, it had not explained properly to the complainant (p.36)○トーマス さて、私たちが毎年扱っている案件のうち、35%ぐらい は苦情申立てに合意します。金融会社の方としては何も悪いことをしていないと 思っているにもかかわらず、金融会社では、提示されている賠償額が非常に少な いとして苦情申立てに賛同するケースを含め、35%です。金融会社側が、「自分 たちには責任がない」と言ったのを私たちが「責任ある」と判断したとか、ある 程度の賠償額を提示したものの、私たちが「それでは不十分である」と判断した といったいろいろなケースがありますが、大体35%のケースの場合、苦情申立人 の言い分を受け入れます。 金融会社が最終的な回答を出したときと、最終的なケースの結果がどうであっ たかについて、その状況を見る必要があります。金融会社が何か間違ったことを やるというのではなく、ケースが結果的にどうなったかを見るということです。 ただ、ケースによっては、随分ばらつきがあって、平均は35%ですけれども、3 −50− 分の2のケースの場合は、消費者が負けます。これは平均値であって、金融会社 によってもかなりのばらつきがあります。極端なケースでいいますと、会社ない し金融商品によって、この率は15%から80%まで開きがあります。特に難しい金 融商品のある一定時期においては、かなりの差が出てきます。会社によっては、 苦情の処理の仕方がうまいところ、下手なところもいろいろあります。 この仕事をしてみて私たちがわかったことは、金融会社、大手の有名な金融会 社であっても、消費者に対するアプローチは随分違っているし、消費者の側の苦 情申立ての内容も違っているということです。 大半の場合、消費者が負けることでありますので、例えば金融会社が3分の2 の比率で勝つのに、彼らが費用を負担するのは、一見不公平ではないかとも考え られますけれども、金融会社が勝つケースのうち半分のものは、金融会社のスタ ッフの説明がわかりにくく、不十分で、消費者が混乱してしまったと判断されま す。したがって、消費者は金融会社が何か間違ったことをしているという誤った イメージを持ってしまうわけです。そこでは、消費者を責めることはできないケ ースが多々あります。日本とは状況が違うのかもしれませんが、状況についての 金融会社の説明が不十分であるということは、しばしばあります。 金融会社の方がオンブズマンに拠出金を出していますけれども、35%は相談者 が勝っています。オンブズマンスキームが存在するということは、それが金融会 社に対する信頼性の根拠となるわけで、その結果、消費者は金融会社のより多く のサービスと商品を買うことになるでしょう。その意味でもスキームの存在意義 は大きいと思います。 ここまでにしまして、メリックスの方にまたバトンタッチしたいと思います。 ○メリックス デビッド、どうもありがとう。 Redress … (p.37)ここでは、金融会社が、消費者に対する補償をしなければならないと、 申立人に賛同したケースを想定してみましょう。アジュディケーターあるいはオ ンブズマンが金融会社側に責任ありという判断をしたとき、その金融会社に対し て命令というか要請というか、損害賠償の要請をします。その方法については裁 −51− 判所とほとんど変わりません。 Remedy Generally, our aim is to put the complainant in the position they would have been in if the firm had not done something wrong (p.38)私たちは金融会社が何か誤ったことをしていなければ、苦情申立人はこ ういう状態にあっただろうというところまで戻すのが狙いであります。本来はも っと複雑なのですが、単純化してしまうとこういったことになります。つまり、 目的は、相談者に対して損害が与えなかった状態に回復させることです。過去の 原状に戻し、損害がなかった、エラーがなかったときの状態あるいは誤った説明、 アドバイスがなかったらこうであったろうという状況に戻すことをわれわれの方 で要請します。 そのときには、これは仮定の話になりますけれども、損害がなかったらどうな るかということを想像してやるわけです。多くの場合、計算をすれば済むわけで、 大体幾らの損害になるのかという計算で、紛争が済まされます。 アジュディケーターは、金融業界について特別な専門知識を持っていて、公平 な査定をするのを得意としています。どのようにすれば原状回復ができるか、そ の最適な方法をアジュディケーターが一番よくわかっています。 We can make the firm n pay compensation up to ¥20 million n pay interest n pay costs (rare) We can recommend more than ¥20 million, but the excess is not binding (p.39)多くの紛争の場合、単にその会社が間違っているかどうかということ だけではなく、どのぐらいの補償、賠償額が公平と言えるかという問題が出てき ます。一連の出来事があった中で、幾らが賠償額として正当であるかという判断 を決めなくてはなりません。 私たちの持っている権限の1つは、金融会社に対して賠償させることですが、 ただし、制限があります。限度額は10万ポンドということになります。円にしま −52− すと大体1事案当たり2,000万円です。余りに小さなもののためにつくられたスキ ームではありませんので、結構、上限があるとはいっても、それは大きな金額だ と思います。 それから、その間発生したであろう金利についても計算式の中に取り込んで補 償の対象とします。例えば3年前に1億円受け取る予定だったのに受け取れなか ったとします。1億円預けておけば当然金利を生むわけです。インフレがありま すので、ある一定期間にそのお金を払ってもらわないとその価値が減ってしまう ということで、金利も支払わせることがあります。それから、これはめったにあ りませんけれども、弁護士費用のような費用を金融会社側に負担させることもあ ります。金融会社側の回答が法律的に非常に難しい回答である場合、あるいは提 案が難しいとき、仮に賠償金がないとしても、相談者が合理的に考えて弁護士に 相談を受けることが妥当だと思われたときは、弁護士費用を金融会社側に負担さ せることが公正であるとわれわれは考えています。ただ、これが実際に起こるこ とは非常にまれです。その理由は、まず、その相談の中で弁護士費用を必要とす るような判定が少ないということです。それから、もしわれわれの方でそういう ことを必要とするのであれば、FOSの存在意義がないわけで、弁護士の助けを得 なくても紛争が解決できるようにするのがわれわれの制度のそもそもの狙いであ ります。そして、当然のことながら、われわれのサービスを使う利用者は、無料 のメリットで来るわけで、わざわざ弁護士を雇ってまでオンブズマン制度を利用 するという人はいません。 われわれの勧告が2,000万円以上の金額になることもあります。ただし、2,000 万円以上の金額については拘束力を持ちません。ほとんどの場合、金融会社の方 は支払う準備があるでしょう。支払わなければ、相談者の方は、われわれの方の 裁定で、消費者に有利な決定が出れば勝つ見込みがあるということで、裁判所に 訴えるでしょう。非常に小さな、お金の支払えないような金融会社であれば話は 別ですが、拘束力のない勧告であっても、大体従ってくれます。 場合によって、金額の計算を金融会社側に任せることもあります。計算式はこ ちらで用意していますので、それを渡して計算をお願いすることがあります。 Additionally, or alternatively, we can make the firm take ‘appropriate’ action −53− This might be to put something right, reconsider an application or simply to apologise (p.40)また、金融会社に適切な是正措置をとることを要請することもありま す。例えば最初に出された(ローンなどの)アプリケーション(申請書)をはじ めに戻って再考したらどうかということもありますし、このお客様に迷惑をかけ たということで謝罪をしたらどうですかという勧告を出すこともあります。謝罪 をするだけで十分だと考えれば、そういったお金以外の方法も提案します。 賠償額を言うのが非常に難しい場合、金融会社に対し適切な行動を取れといっ た方が簡単な時もあります。幾ら払えというのではなく、会社が自分たちでどの ぐらいの金利が発生し得たのかをみます。例えばローンに絡んだミスで消費者が 払い過ぎた、払い不足といった場合には、私たちはコンピュータソフトがありま せんので、そういった計算はできませんので、銀行側に対し、ミスを正して必要 な額を返済せよと言うことができます。場合によっては、会社に対して謝罪をせ よと言うだけのケースもあります。そして、金融会社が何かの申込みを却下した 場合に、再考してくれというケースもあります。 We cannot make the firm n compensate other customers in similar circumstances n change its products, procedures or staff (p.41)ただ、同様の問題を抱えているその他の顧客のために金融会社に補償 を求めることはできません。これは金融会社自身が考えるべきことであります。 同じような状況に置かれているほかのお客様にも同様の補償をすべきかどうかの 判断は、会社の問題であり、規制当局の問題であって、われわれは何も言えませ ん。 先ほど申し上げたように、われわれは監督官庁ではありませんから、同じよう な状況にあっても相談に来ていないほかの方々までカバーすることはできません。 同じ商品を買ったほかの方々も同じような状況にあるわけですが、この方々に対 しての損害賠償支払いを命じることはできません。もしそれが必要だということ がわれわれの考えであれば、FSAの方にその旨の付託をして、レギュレーターで あるFSA が最終的にどうするのかを判断してもらいます。つまり、かなりの多く −54− の被害者があり得るケースが出てきた場合のみ、われわれで判断し、規制当局に その報告をします。その上で規制当局が、果たしてその他のお客さんに同様の賠 償を払うかどうかということを金融会社に決めさせることはできます。 また、金融会社に対して商品を変更しろ、手続を変更しろ、あるいはスタッフ を変えろとか従業員の解雇を命じるといったことはできません。再教育しろとか そういうようなことはできません。われわれの権限は相談者の原状回復に限定さ れています。 消費者が過大な期待を持っていることもあります。わずかなお金を損しただけ にもかかわらず、「この会社を閉鎖させろ」と言うような人たちがいます。それ は不当ですね。私たちはそんな権限はございません。私たちのできることには限 りがございます。あくまでも「補償を支払え」と強制するまでです。 Complying with awards n a firm must comply promptly with any award made by the ombudsman n a complainant may enforce a money award or direction in the law courts (p.42)金融会社は、ルールに従って迅速にわれわれFOSの裁定に従わなくて はなりません。苦情申立て者に、われわれは書面にて裁定を交付します。苦情申 立て者がそれを裁判所に持っていけば、裁判所はそれを再審理することはできま せんが、強制執行させることができます。ここまで必要になることはめったにあ りません。 先ほどから申し上げましたとおり、ほとんどの場合、オンブズマンの裁定に金 融会社が従うからです。もっと大事なのは、金融会社がFSAの監督下にありまし て、そのルールの1つがオンブズマンの裁定に従って補償しなくてはならないと なっているからです。 ですから、苦情申立て者が、金融会社の破綻直前ということでもない限り、裁 判所に行って強制執行を要求するというような状況にはならないでしょう。ただ、 遅くなってしまうと、つまり破綻した後になってしまうと、われわれの方は金融 サービス補償制度の方に委ねます。こちらの制度は金融会社の方からの拠出金を もとにして、破綻金融会社にかわって補償を支払うので、その補償を受けること ができます。 −55− 会社側はもちろん、速やかにオンブズマンの求めた内容に応じる必要がありま す。アジュディケーターが判断した内容に従う必要があります。これは強制力を 持っていて、裁判所においても効力を持っています。私たちが言っていることの 裏にはちゃんとお墨付きがあって、その権限が認められている一面があります。 FOSの仕事の内容はだいたいわかっていただいたと思いますけれども、ここで 幾つかの数字、事実を話したいと思います。 Workload … (p.43)次に、私たちの組織の仕事について申し上げたいと思います。 まず、私たちの規模からお話ししたいと思います。私たちは単一の機関であり ます。私たちFOSのロンドンの事務所が英国で唯一、かなりの数のスタッフ、ア ジュディケーターを常勤で雇って、こういった作業をするところとなっておりま す。 アジュディケーター(裁定者)というのはパートタイマーではありません。1 人、2人パートタイマーはいますけれども、その他は全員正社員であります。ス タッフは全部合わせて1,000人いますが、そのうち、550人ほどがアジュディケー ターであります。 phone enquiries (330, 000) total enquiries (615,000) to casework Enquiries to cases (111,000) written enquiries (285, 000) year ended 31 March 2005 … (p.44)われわれは1つの組織ですので、オフィスはロンドンに1つです。ス タッフは大勢いて、いろいろな仕事をして紛争を解決しています。このスライド の数字を見てみると、2005年3月31日までの1年間、かなり多くの問い合わせを 電話で受け付けていることがわかります。では、どれぐらいの取扱量かというと、 電話での問い合わせは、一般の方々から毎日平均1,400件の電話がかかってきます。 −56− 100人ぐらいのスタッフがこの部門に応対しております。かなり忙しいですよね。 また、いろいろな消費者からの手紙に対応しています。私たちは1人1人と話を して、できるだけの助けを提供しようと努力しております。 ヘルプラインと呼ぶ、最初に問い合わせを受け付ける窓口に、2005年3月31日 までの1年間、33万件の問い合わせが入ってきました。これは1日にすると1,400 本の問い合わせに相当します。電話を専門で直接取っているスタッフは約80名お ります。 あとは書面による問い合わせもあります。年間28万5千通を受け付けています。 このように、電話か手紙で最初にコンタクトがあります。この受付係は、コー ルセンターの単なるスクリプトを読んで対応するだけの人間ではなく、しっかり した研修を受けて簡易な応対や質問に対応できるように知識を与えています。 われわれは、なるべく初動(カスタマーコンタクトディビジョン)のところで しっかり応対するように心がけています。だれでも問い合わせしたい人には、で きるだけ敷居を低くしアクセスしていただけるようにしています。英国全土から、 そして英国だけでなく、世界のどこにいても、イギリスで金融サービス、金融商 品を買った人が困っていれば連絡がもらえるようになっています。 電話料金は、海外からの電話であっても国内の料金と変わりません。また、特 別なアレンジをして、英語が母国語でない場合あるいは英語が全然わからない相 談者の場合は、自動的な同時通訳サービスを用意しています。即座に通訳とつな げて通訳できますし、目の不自由な方には点字、耳の不自由な方には文字で見え るように音声翻訳機などを提供しています。このように、どのような人でもアク セスできるようにしておりますので、アクセスしていただければ、後はこちらの 方でお手伝いすることができます。 さて、コンタクトをしてきた人の数ですが、その中で実際にケースと呼ばれる 事案になるのはほんのわずかな割合でしかありません。上の例で言えば、61万5千 件中、11万1千件です。事案になって初めて調査をします。できるだけ早期に解決 を図るというのがわれわれの目的になっています。 1つの統合の組織が生まれ、1点に一元化されたことによって電話番号も1つ になったことで、かなり有名になりました。消費者から見ると、どこへ行ったら いいのかわからないというような混乱がなくなったので、利用しやすくなったと −57− 思います。今はもうわれわれの方一ヵ所に来ていただければ、大体が解決するだ ろうという期待がありますから、金融サービス、金融商品についての苦情があれ ば、皆さんこちらにいらっしゃいます。 仕方のないことですけれども、お問い合わせとか、余り大したことのないもの まで入ってきます。どこかの保険会社や銀行よりFOSの電話番号が知られて、銀 行と間違えてかけてきたり、保険会社と間違えてかけてきたりします。 mortgage endowments current inflow … general insurance banking and mortgages securities other investments pensions (p.45)その次、苦情の分布を考えてみましょう。その内訳をお話しし、金融 サービスではどういう分野で苦情が多いのかをご説明いたします。 ケースの種類には、ありとあらゆる内容のものがありますけれども、金融商品、 一般保険、銀行、ローン、預金も含まれます。モーゲージ養老保険に絡むもので 1つ大きなスキャンダルがありまして、これはしばらく続きました。これは大変 な問題になりまして、これで苦情の数がかなり膨れあがりました。 私たちが実際スタートしたのは2000年の法律に基づいての2001年からで、それ 以前のものやその当時と比べても、かなり大幅に増加しています。モーゲージ養 老保険のスキャンダルによるところが大きいですが、それだけではありません。 一番大きいのはやはりこの金融サービスのスキャンダルに関連したものです。 残念ですけれども、モーゲージ養老保険、これが非常に大きい割合を占めていま す。これは住宅ローンで借りた資金の一部を使って行う長期保険型の投資のよう −58− な形を取っております。住宅ローンと一部セットになった投資を資産と負債の両 建てのスキームとして勧誘されて、投資部分の元本と将来のリターンで、住宅ロ ーンの元本部分の満期日における完済が十分可能という見込み(確定利回り的な 説明)のもとに、基本的にローンの元本の返済を行わないか小額のみ行い、主と して住宅ローンの金利部分の支払いを行うという、個人にとって一見負担の少な いように見える、借入と投資の両建てのスキームですけれども、残念ながら投資 のリターンが当初想定したほどに増加しなかったため、これはうまくいかず、住 宅ローンの満期を控えて、非常に多くの件数がこのモーゲージ養老保険に関して 寄せられています。3年ぐらい前にこの問題が発覚いたしまして、私たちのシス テムに寄せられる苦情が急激に増え続けたのですけれども、これからまだ2年ぐ らいはかかると思います。1つの大きな波が襲ってきたという形になっています。 そのほかの苦情に関しましては、例えば損害保険に関する苦情も多いです。 銀行、住宅ローンに関する苦情もあります。そのほかの投資に関しては、長 期・短期の投資に関する苦情が多いですね。それから、年金、証券の取引、株式 仲買に関する苦情もあります。非常に幅広い金融サービスあるいは金融商品に関 して、苦情が寄せられています。 私たちスタッフのアレンジの仕方ですけれども、それぞれの分野の専門家が対 応可能なように手配をしています。いろいろなスタッフを再訓練したりしますが、 1つの分野の苦情が増えてくると、例えば損保を今扱っていたとしても、研修を するからモーゲージ養老保険の方に移ってくれというふうな形でスタッフの割り 振りを、苦情の割合に応じて張りつけています。そして、苦情が減ってくれば、 モーゲージ養老保険の方からまた損保や銀行の方の苦情担当に回すというふうな ことをしています。 −59− number of new cases 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 1998/99 1999/00 2000/01 2001/02 2002/03 2003/04 2004/05 2005/06 2006/07 2007/08 (p.46)私たちFOSが機能を一元化された形で始めたのは2001年のことです。 図に示しているのは新規の案件の数なのですけれども、98年から2000年までの 間の数字というのは、私たちの母体となった6つの制度が取り扱った苦情の件数 の合計となっています。つまり、以前のすべてのスキームを一緒にしたものです。 そうでなければ、FOSが存在もしなかったのに、1999年の数字は一体どこから持 ってきたのかと思われるかもしれません。 2002年、2003年ぐらいから事案の件数が非常に大きく伸びていますけれども、 このところの伸びというのは、先ほどのモーゲージ養老保険のところだというふ うに判断していただいて間違いないと思います。この件が片づけば、総計6万件 まで減るのじゃないかと思っています。2007年の末、2008年ぐらいには6万件で 落ち着くのではないかと期待しています。 n >50% of complaints are about the 11 largest groups n >15% of complaints are about the 20 next largest groups n <35% of complaints are about the other 22,000 firms (p.47)当たり前かもしれませんけれども、私たちは非常に大きな金融グルー プとやりとりをしています。大体50%ぐらいの苦情というのは最大の11の金融グ −60− ループに関する苦情です。顧客の数が非常に多いし、スタッフの数も多いし、さ らに長い歴史があります。さまざまな取引を今までしてきていたので、また、大 きなボリュームで合併とか所有が変わったりするので、それだけ多く、お客様か ら苦情が上がってくるというのが実態だと思います。 それから、その次の大体20社の準大手のところですけれども、ここの苦情が 15%ぐらいです。そして、それ以外の小さいところが35%未満になっています。 大体2万2,000の小さな会社が、合計で35%ぐらいですね。 苦情を扱った金融会社の数は毎年変わりますが、合計で1年2,000社ぐらいに対 する苦情が寄せられています。金融会社数にしては、延べ2,000ぐらいですから、 2万ぐらいの金融会社に関しては苦情がないということです。たまに苦情が上が ってくる金融会社もありますし、非常に大きな金融会社に関しては、たくさんの 苦情が上がってきているという形です。 集中多発被害への対応についての補足(3月12日の質疑の転記) ○楠本 金融消費者問題研究会をつくりまして、金融消費者問題を研究している 楠本くに代と申します。 個別の事案の解決だけではなくて、年金ミスセリング、 それからエンダウメントモーゲージ(モーゲージ養老保険)など、集中的に多発 する被害に関しても、オンブズマンシステムの中で対応していらっしゃる、そし て、非常にすばらしい成果を上げられたと思いますが、そうした集中多発被害に 対応するようなシステムをどうつくっていらっしゃるでしょうか。 ○メリックス 英国においても、年金ミスセリング、モーゲージ養老保険のよう に、集中多発型の、頻度の高い問題が発生することがあります。 日本の状況をわかっておりませんので、英国の状況をお話ししますと、金融商 品というのは2つのグループに分けて考えることができます。まず、ほとんどの 銀行商品がこれに該当すると思いますけれども、いわゆる透明性が重要な商品で あります。消費者が自分で何を買っているかがわかっているという種類の金融商 品です。一方、投資の商品ですけれども、これはその消費者がアドバイスを受け て買うケースが多いのです。規制当局のルールは、商品がその消費者に適してい ること(適合性の原則)をさらに求めています。そのため、金融会社がお客さん に商品を売って、お客さんが商品内容を全部知っていたとしても、金融会社はも −61− っと具体的に消費者の背景と財産などを見て、その人がその商品を買うにふさわ しいかどうか、をきちんと把握しなくてはいけないという要件があります。 さて、私たちFOSは金融会社と非常におもしろい関係を持っております。そし て規制当局とも非常におもしろい関係を持っております。私たちとしては、微々 たる問題が発生するたびに、毎回規制当局(FSA )にそれを報告することは避け たいと思っています。もしそうしますと、なかなか金融会社の方から情報と証拠 をもらえなくなってしまいます。 しかしながら、慢性的な問題といいますか、ある特定の金融会社のやり方その ものに起因しているようなもの、特定の金融商品がいつも問題を起こしているよ うなものがあった場合には、FSAのところに行ってその問題を報告し、対応を求 めます。そのフォローアップ、どういったやり方をとっているかについてはFOS とFSAの共同ののホームページをご覧ください。 http://www.ombudsmanandfsa.org.uk/default.htm そこにケーシズ・ウィズ・ワイダーインプリケーションズという項目があります けれども、ここでFOSはFSA との間の特別な取り決めがあります。私たちはこの 関係の責任者ですけれども、まさに今おっしゃったようなケースをどのように扱 っているかが示してあります。ケーススタディー、事例研究も載っております。 http://www.ombudsmanandfsa.org.uk/case_studies/case_studies.htm そのうちの1つだけをご紹介したいと思います。これはまさに、ある特定の銀 行の、ある特定の商品にまつわる大きな問題でした。 http://www.financial-ombudsman.org.uk/publications/ombudsmannews/26/high-income-26.htm http://www.financial-ombudsman.org.uk/publications/ar04/ar04overview.htm これはプレシピス(precipice )ボンドという 名称がついている債券(singlepremium investment bonds )に関わる問題で、その価値は崖っぷちから落ちるような、 そういったイメージでした。一見魅力的で、8%ぐらい金利がもうかりそうな、 そういったうまい話で皆さん買いましたけれども、しかし、文章を読んだだけで はわからないことは、金利は株式市場が一定の水準に達しないと払われないと規 定されていたのです。消費者の多くはリターンが期待できるということで、普通 −62− の預金をボンドに回してしまったが、ノーリスクの状態から非常にリスクの高い 状況に移ったということは認識していませんでした。 これは我々も非常に懸念していたし、FSA も懸念をしていた問題のある商品で、 情報をいろいろ交換しました。この問題が、ある1つの銀行で余りに多発し、し かも、ある特定のセールスマンが売ったお客さんから、多額の投資の事実、それ から「今この債券を買うと非常にお得ですよ」という勧誘の事実があったのが分 かりました。 ところが、その後よく調べてみると、1人の営業員の問題ではなく、どこの支 店でも全国規模で起こっていたことがわかりました。125万ポンドぐらいか幾らか の確かの数値はわかりませんけれども、かなりの損害賠償金になったと思います。 私たちは確かにわずかな裁定しかしていません。そのときは大体1,000件ぐらいで す。でも、FSAの方からその銀行に対して、2万5,000のお客様に対して補償する ようにという命令が下りました。私たちがその問題を小さな端緒から発見して、 それが随分多発したので、規制当局の方に報告したことで、結局これは特定のブ ローカーの問題ではなく、銀行全体としての問題であるということを認めてもら ったわけです。消費者にとって大変影響があったので、このとき不服を申し立て なかったお客様に対しても、補償が支払われたということでした。 アウトリーチについての補足 昨日のNIRA関係者とのミーティングで、直接の苦情の取扱い以外のところで、 私たちがどんな活動をやっているかという質問がありました。私たちはアウトリ ーチという活動をやっていますのでご説明します。これは苦情の取扱いとは直接 関係ありません。 苦情が起こることを予防するのもわれわれの目的の1つです。紛争が起こった 後でなく、その前の予防を考えています。それから、金融会社みずからに解決し てほしいとも思っています。そのためにいろいろな活動を行っているのです。 ヘルプラインのスタッフも協力しています。金融会社で働いている苦情処理の 担当者がわれわれの方に電話をかけてきます。例えば、「うちの会社とお客様で 問題があって苦情が来てかなり怒っていますが、オンブズマンのサービスではこ んな問題を解決したことがありますか、その結果どうなりましたか」というよう −63− な問い合わせがあります。私たちのヘルプラインでは、金融会社の人たち向けで すから、このような苦情処理の担当の方々に、「われわれの方で似たような事案 を例えば2年前に扱ったことがあります。その場合、こういう回答がいいでしょ う」とか、あるいは、「私たちの方では最終的な結論は出していませんので、お 客様の方で満足していないのであれば、こちらに回してくださってもいいです」 とか、「私ならこういう裁定をするでしょう」とか、というような形でいろいろ アドバイスをします。 業界の方々にも参画をしてもらうためには、単に決定を連絡するのでなくて、 業者の方との一般的な意思の疎通、コミュニケーションが必要だと思っているの です。そのため、金融会社、消費者団体の方々をお招きして会議のプログラムな ども実施しています。オンブズマンですとかアジュディケーター、あるいは専門 のコミュニケーションのスタッフが、いろいろな金融会社と会議などを開いて参 加しています。 上層部の幹部のような方々、例えばこの組織全体、顧客サービスなどを担当し ている上層の方々にも来ていただいたり、日々の苦情処理の実務に当たっている 人たちにも来ていただいたりして、会議でお会いするようにしています。そうい う人たちが、私たちが毎日苦情の取扱いでお世話になっている方々です。 私たちの方でやっている会議の開催の活動について、少し詳しくご説明します。 これは消費者アドバイザー向けが多いものですが、昨年は英国内でだいたい7回 会議を開催しました。この7回だけでなく、100以上の会議にスピーカーを派遣し ています。こういった外部の会議というのは、消費者団体が開催しているもので あったり、金融会社や代理店、または業界団体が開催しているものであったり、 銀行がスタッフ向けに開催するもの、あるいは銀行協会、保険協会のいろいろな 会議があります。そういったところに講師を派遣し、苦情処理についての改善策 を、そこの場でお話しします。 さらに、金融会社の苦情窓口担当者向けの研修やワークショップもやっていま す。そういったワークショップでは、具体的なケースを例にあげて説明します。 金融会社からの参加者に、「こういう事実があった場合、皆さんはどういうふう に対応しますか、これは妥当な苦情だと皆さん思いますか」ということを聞きま す。そして、大いに議論をして最後に参加者が「もっともな苦情だ」というとき、 −64− われわれはこう言います。「これは皆さんの会社のお客様の苦情で、皆さんは妥 当でないと言って却下したものですよ。そして、あなたのところは賠償金を払お うとしませんでした」というふうに種明かしをすることがあります。どこから来 たかということを名前は言いませんけれども、そういうふうにわれわれは説明し ます。実際、担当者の方々に参加してもらえば、自分たちのやっていることにつ いて、より理解を深めることができます。 原則が何なのかということを、このようなセッションを通じてわかってもらう ことができると思います。苦情の解決に関してどういう原則があるのかを、この ようなエクササイズを通してわかってもらうことができると思います。 議会とも接触をします。というのは、消費者から陳情の手紙が随分行くので、 国会議員も私たちと接触します。マスコミとも頻繁に会います。ジャーナリスト とミーティングをします。また、パーソナルファイナンスや個人金融のライター 向けに記者発表、記者説明会などを開きます。コラムやページ、記事というもの を消費者苦情専門で書いている方々とミーティングをすることによって、今の金 融業界の動きについて意見交換をします。 われわれはウェブサイトを持っていますが、年間大体100万ヒットがあり、かな りの頻度で皆さんが来てくださいます。ウェブサイトには、いろいろ情報を載せ てあるし、一般の人にも利用しやすい形でつくっています。 それからパンフレットを消費者団体に配布しています。毎年250万部ぐらいを作 成しています。消費者が最終的な回答を業者から必要とする状況になった場合、 業者はFOSのパンフレットをつけて送らなくてはいけないことになっています。 そのため、こちらの方からパンフレットを印刷して、金融業者の方に配布してお きます。そうすれば、消費者の方がその前まで知らなくても、業者と何かあった ときには、必ずわれわれの存在に気づきます。 Resources … (p.48)では、デビッド・トーマスさんにもう1度、最後のリソースのところ をお話してもらいたいと思います。 ○トーマス 私たちはたくさんの仕事をこなしていますが、この仕事をこなすた め、どういったリソースを持っているのかに関してお話をいたします。 −65− Staffing n 1 chief ombudsman n 2 principal ombudsmen n 27 ombudsmen n 1,000 other staff (p.49)FOSは今ではかなり大きな組織になっています。今日ここに来ていま すウォルター・メリックス氏がチーフオンブズマンです。それから2人のプリン シパルオンブズマンがいますが、私はそのプリンシパルオンブズマンの1人です。 そのほかにも27人のオンブズマンがいます。ほとんどが弁護士の資格を持ってい ますが、全員そうというわけではございません。金融業界出身者もいますし、金 融サービス監督機構(FSA)出身の人間もいます。それ以外のスタッフが約1,000 人、そのうち500名がアジュディケーターです。中には弁護士の資格を持つ人もい ますけれども、パーセンテージとしては低いです。金融サービス業界関連の出身 者、それから大学で金融サービスを学んだ者が多いです。彼らについてもADRの 研修を行った上で配置します。また、法的なバックアップが必要な場合もありま すので、法律を専門としているチームも持っています。 全体で約1,000人の人たちがロンドンの事務所で仕事をしています。 トレーニングやクオリティーについての補足(3月12日の質疑の転記) ○田中 トレーニングやクオリティーの話に移らせていただきたいと思います。 FOSのトレーニング、私が訪英したときにも、何種類かのトレーニング、テレ フォンメディエーション以外にもマネジメントのトレーニングですとか、いろい ろなトレーニングがやられていたと思います。私の理解では、職員さんのための トレーニングということで新しく入ったときに、まず具体的なアクティブリスニ ングのようなトレーニングを受けるという話を聞いたイメージがあるのですけれ ども、その辺に対して、だれを対象にどういったトレーニングを行っているのか を教えて頂けますか。 あと、イギリスではADR というクオリティーマークがあったと思いますけれど も、そのクオリティーマークの質を維持するために、FOSではどういったことを −66− 具体的に行っているのか教えていただけますか。 ○トーマス わかりました。では、トレーニングの方からお答えしたいと思いま す。 ここでトレーニングとクオリティーの話をさせていただきます。FOSのトレー ニングは、何種類かのトレーニング、テレフォンメディエーション以外にもマネ ジメントのトレーニングですとか、いろいろなトレーニングが行われています。 新しく採用されたスタッフに対しては、導入コースで一連のものが用意されてい てこれを受講します。そこで必要なスキルや情報を手に入れ、また、組織の感じ についてもここで理解してもらいます。我々は何が公正であるかについて独特の 考え方を持っています。ここで働くスタッフは、皆共通の理念、理解を持って仕 事をしなくてはなりませんので、ここにはかなり力を入れています。 2つ目は、新しく人を採用するときにメンターを指名します。このメンターが それぞれの新人のコーチになり、新しいスタッフの仕事を見守ります。また、ア ジュディケーターは皆マネジャーとチームを組んで、緊密な関係を持ちながら仕 事をします。 それ以外にもいろいろなトレーニングのプログラムを用意しています。これは スタッフ向けのものもたくさんありますし、スキルやノウハウもいろいろありま す。例えば、スキルトレーニングで今の仕事を遂行するのに必要なものを具体的 なテーマを設けて、たとえば、人間関係とか、裁定文の書き方について学ぶこと もあります。調停のプロセスに加えて、技術的なテーマを設けたものもあります。 例えば銀行、保険、業界ごとにテーマを設ける研修を行っています。 新しい分野での仕事が出たとき、仕事でシフトが変わるとき、これまでやった ことのない金融サービスに担当を任されたとき、こういうときアジュディケータ ーに研修を行います。アジュディケーターでチームをつくって、必要なノウハウ について再教育を行ったり、研修を行ったりします。 管理職向けのトレーニングもあります。今既に管理職である人だけではなく、 管理職候補者に向けての研修を行っています。それによって、将来管理職になっ たときには必要なスキルを持ってオンブズマンの仕事ができるようトレーニング します。 シニアマネジメントのものもあります。われわれ二人もそうですけれども、ほ −67− かの同僚たちと、どういうプログラムを我々自分たち向けにやればさびつかない かということを話し合っていました。 あと、イギリスではADRというクオリティーマークがありますけれども、その クオリティーマークの質を維持するために、FOSではどういったことを具体的に 行っているのかお話します。 FOSにはクオリティー担当ディレクターがいます。彼女はシニアな管理職であ りまして、特にクオリティーだけを担当というわけでもないですけれども、すべ てのスタッフが、クオリティーが大事であるということを忘らないようにと仕事 をしています。きちんと構築された組織においてQ&Aというのはやはり仕事のモ ニタリングということにかかわってきます。ミスがないように普段から気をつけ、 難しい分野であってもあらかじめどういったところがミスの起こりがちなところ かを知って予防し、最終的には質のいいサービスを提供するようにします。多国 籍企業出身の彼女は、経験が豊富で、クオリティー関連の業界では有名です。ク オリティー・アウォードというのがありますけれども、そのジャッジも務めてい ます。 消費者と事業者を相手にしていますから、クオリティーというものを考えると きに、自分たちの考えるクオリティーと、相談者、利用者の見るクオリティーと いうものがずれていてはいけないので、例えば、6週間後その紛争がクローズし たときにアンケートを送って感想を聞きます。自分たちで内部データをどう判断 するかということだけに頼らず、外部の判断も取り入れるようとしています。 −68− Cost per case 160,000 140,000 120,000 ¥ 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 2000/01 2001/02 2002/03 2003/04 2004/05 2005/06 Business Years (p.50)次はコストです。私たちの仕事の量も、ここ数年、短期間の間に非常 に大きく膨らんできました。やっていく中で、より効率的な仕事のやり方をつく ってきました。現在、FOSのコストを事案の数で割ると1事案当たりのコストは かなり小さくなってきています。私たちの組織は大きくなりましたが、事案(ケ ース)当たりのコストを下げることができました。 p.50の表は全組織の費用を全案件数で割ったものです。コストが急激に下がっ ていることがおわかりいただけると思います。2000年、2001年はちょうど昔のオ ンブズマンの組織が新しく一元化された頃ですけれども、そのとき15万円ぐらい だったのが、最近はもう8万ちょっとになっていますので、かなり効率的になっ てきたと思います。ケースが増えて固定費を薄く満遍なく延ばすことができたの で、コストが下がったということが言えると思います。 Cost n free to consumer n average cost of case = < ¥100,000 n firms pay yearly levy (25% of cost) n firms pay case fee (75% of cost) −69− (p.51)私たちは準司法的な組織と言えます。私も彼も弁護士で、管理体制の行 きわたった環境の中で仕事をしていて、効率的なサービスを提供しているわけで すけれども、このサービスは消費者に対しては無料です。オンブズマンサービス の目的が、消費者が何も不安を持たずに利用できるサービスの提供ですので、消 費者から手数料を頂くことはいたしません。 平均のコストはかなり下がってきており、今は10万円を割り込んでいます。裁 判所よりずっと安い費用ですね。 この費用はすべて金融会社の側から払われています。苦情が上がっていようと いまいと、オンブズマンサービスのコストの25%は金融会社が年間拠出金として 払っています。 事業者からは2種類の方法で負担をしてもらっています。まず、1年間の拠出 金を毎年払ってもらいます。これはコストの25%をカバーします。それから、ケ ースとして取り上げた都度金融会社からいただくケース一件毎(ただし毎年最初 の2件まで無料の例外あり)の事案手数料(ケース・フィー)です。これがオン ブズマンサービスのコストの4分の3をカバーしています。 Yearly levy based on market share n bank pays ¥1 for every 2 bank accounts n insurance company pays ¥1 for every ¥100 of premiums n small intermediary pays ¥10,000 (p.52)その年間の拠出金ですけれども、金額はその金融会社のマーケットシ ェアを基準に計算していますが、計算方法は業界によって幾つか異なる計算式を 用意しています。銀行業界ですと、年間の拠出金はその銀行の持っている銀行口 座の数とリンクしています。口座2つについて1円払ってもらいます。これは利 益と比較すれば、非常にわずかな金額だと思います。銀行にとってみればこのぐ らいのお金は大したことはありません。保険会社の場合は、保険料100円に対して 1円を毎年の拠出金として払ってもらいます。そして中小仲介業者の場合、小さ なブローカーのようなところもありますけれども、こういった小さなところには 毎年全額で1万円を年間拠出金として負担してもらっております。このような形 −70− でオンブズマンサービスの拠出金を払っていただいています。 Case fee n ¥72,000 fee per case but first two cases per year are free n only 7% of 26,000 firms covered pay case fees n 11 largest groups pay >50% of case fees (p.53)それから、事案手数料ですけれども、勝とうが負けようが事案手数料 1件当たり7万2,000円を払ってもらいます。毎年最初の2つの事案に関しては無 料です。これは中小の事業者への配慮からです。3件目から手数料がかかります。 小さな金融会社のことを考えてみますと、お金をためておく、引き当てておくと いうのはなかなか大変で、毎年最初の2つの事案に関しては無料という形にして います。 勝っても負けても結局お金がかかってくるということになると、どうしてもオ ンブズマンサービスの方に訴えてやるというような、確かに非常に難しいお客様 がいます。そういった不安を緩和するために、最初の2件については無料という 制度でやっております。最初の2件は無料なので、小さな金融会社の場合にはあ まり苦情が上がってきません。 どこからケースが来るのかといいますと、2万7,000ぐらいの金融会社の中でも、 ごく少数の会社が事案の多数を占めているというところがありますね。11の一番 大きなグループが、全体の50%以上の事案手数料を払ってくれています。結局は カバーされている2万6,000の会社のうちの7%ぐらいの会社しか事案手数料を払 っていないことになります。 ケース・フィー(事案手数料)についての補足(3月12日の質疑の転記) ○田中 プレゼンテーションで、1件当たり7万2,000円の事案手数料が要るとい うお話でずが、それに対しまして、例えば中小の金融サービス企業が7万2,000円 の事案手数料を払ってFOSに参加するということがどういうことなのか。苦情の 金額が7万2,000円以下のものであった場合でも、企業側は7万2,000円の事案手数 料をFOSに支払うことになるのか。それから、FOSの話では消費者側は無料で企 業側が手数料を払うということですけれども、そういうシステムができた背景と −71− いうのは、何かイギリスの特別な理由があったのかというのが高橋さんからのご 質問の趣旨だったと思いますが、よろしいですか。この事案手数料のことについ てもう少しお話しいただけないでしょうか。 ○トーマス 保険オンブズマンが1981年から始まったとき、保険会社は、これは 消費者には無料のサービスにしてほしいというふうに言っていたのです。これを 自分たちの責任の延長上、自分たちの苦情処理の延長上だと考えたかったわけで す。ただし、それを独立のところでやってもらいたいという希望がありました。 障壁のない方が、顧客がアクセスしやすいと思ったわけです。不満を持って怒っ ている消費者たちがあちらこちらに行って怒りをぶちまける、それに、オンブズ マンに例えば100ポンド払わなければいけないということになるともっと怒るわけ ですね。保険会社の方はこれを解決してもらいたかったのです。それで、オンブ ズマンの制度というのは、すべて無料のサービスで、だれもがアクセスできる、 だれもが使える形になっています。 金融会社から集めている事案手数料7万2,000円ですけれども、これは組織の費 用を賄うものです。このコストというのはあくまで金融業界が払うべきものだと 考えで、税務当局、政府、税金を払っている納税者の方々からの資金というのは もらっていません。当然のことながら、資金は必要で、やはり苦情の多い会社が 多く払っていただくというのが単純なやり方だと思います。たくさんの苦情が出 ている会社には、たくさんの費用を負担してもらわなければならないという考え 方です。そして、私たちの費用を賄って、私たちの抱えている人材の給与も払っ ていくことになります。 最も単純なモデルは、会社が1件ごとに手数料を払い、結果がどうであれ手数 料を払っていただくことです。3分の2ぐらいは、金融機関側が何も悪いことを やっていないケースですが、それでもやはり手数料を払ってもらわなければ困り ますね。事務所の家賃を払わなければいけませんし、私の給料ももらわなければ いけないということです。そんなに高い給料ではないかもしれませんけれども、 ほかにも1,000人いますから、全員の給料を払っていかなければ困るのです。 これが私たちのモデルです。固定的なモデルではありませんので、ほかの方法 でも資金を集めることができるかもしれません。例えば毎年拠出金を払ってもら う、加入料などを払ってもらうことができるかもしれません。ただ、その場合に −72− は苦情がいっぱいある会社に多い拠出金を払うことにならないので、年会費だと 不満が出るかもしれません。 ことし後半、この事案手数料、拠出金の制度を改正していくことが考えられま す。今のモデルでも若干不満が出ていますので、これを改定していくことが必要 になったと思います。 Future funding of the Financial Ombudsman Service FSA/PN044/2006 3 May 2006 The Financial Services Authority and the Financial Ombudsman Service today outline, in a joint Discussion Pap er, possible options for the future funding of the ombudsman service’s compulsory jurisdiction. Currently more than 70% of the ombudsman service’s funding comes from the fees which it charges firms for considering complaints (usually £360 – the first two cases per firm per year not being charged for). The remaining funding comes from annual fees payable by all firms, calculated according to their role in the different industry sectors they are involved in. FSA Director of Retail Themes Vernon Everitt said: "This is a sensible point at which to have a discussion around funding the ombudsman service since we can look at it in parallel with the exercise already underway to review the funding of the Financial Services Compensation Scheme. We have an open mind on the outcome and look forward to hearing the views of all concerned." The Chief Ombudsman Walter Merricks said: "The way in which the costs of the ombudsman service are divided amongst financial firms is a subject close to the heart of many in the industry. The "two free cases" concept that we introduced for firms two years ago - in recognition of the fact that 95% of firms have fewer than three disputes referred to the ombudsman each year - has been warmly welcomed, especially by smaller firms. We now look forward to hearing more ideas and feedback on other possible funding options - as part of a broader debate on how firms should pay for the ombudsman service." The Discussion Paper sets out a wide range of options for future funding: • continuing the existing arrangements whereby the ombudsman service is financed by a combination of a case fee and a levy; • raising all the funding by annual fees only, with no case fees, or −73− alternatively by case fees only; or • adopting a new approach which would combine a small flat-rate annual fee for all firms, and a case fee. The paper discusses a number of possible combinations of the flat-rate fee, the case fee and the number of cases a firm is allowed each year before the ombudsman service begins to charge case fees. After evaluating responses to the Discussion Paper, the FSA and the ombudsman service will publish a Consultative Paper in Autumn 2007, proposing changes to the future funding arrangements (and transitional arrangements if required). This review is proceeding in parallel with the FSA’s review of Financial Services Compensation Scheme (FSCS) funding, reflecting the different roles and activities of these institutions. This should enable firms to see the overall impact of these issues on them. Notes for editors 1. Discussion paper 06/2 'Financial Ombudsman Service compulsory jurisdiction: funding review' is available on the FSA website. Responses are sought by 31 July 2006. 2. The proposals in the Paper relate only to the compulsory jurisiction of the ombudsman service. The ombudsman service also has a voluntary jurisdiction and, under the Consumer Credit Act 2006, will have a new consumer credit jurisdiction. In both these cases, it is the ombudsman service which sets the annual fees as well as the case fees (subject to FSA approval). The funding of these other jurisdictions raises distinct issues and will be dealt with separately. They will not necessarily follow the same model as the compulsory jurisdiction. 3. Discussion Paper 06/01 'FSCS Funding Review' is available on the FSA website. 4. The Financial Ombudsman Service was set up under the Financial Services and Markets Act 2000 to resolve disputes between consumers and financial service firms quickly and with minimum formality. It is a company limited by guarantee without share capital. The Financial Ombudsman Service deals with around 120,000 cases a year, emp loys 1,000 staff and has an annual budget of £52 million. 5. The FSA regulates the financial services industry and has four objectives under the Financial Services and Markets Act 2000: maintaining market confidence; promoting public understanding of the financial system; securing the appropriate degree of protection for consumers; and fighting financial crime. 6. The FSA aims to promote efficient, orderly and fair markets, help retail consumers achieve a fair deal and improve its business capability and effectiveness 大事なのは、仕事をちゃんとこなすためのリソースが必要だということです。 −74− サービスをきちんと提供していくためには、能力のあるスタッフを集め、きちん とした訓練もしなければいけません。金融サービスに関するスキルがなければい けません。商品のことをよく知っていなければいけません。そうでないと、金融 機関の専門家と渡り合って話をすることができないからです。また、それぞれの 消費者の方、一般の人たちと意思疎通を図る、ちゃんと話を聞いて、問題は何な のかということを理解するスキルも必要なわけです。どういう状況なのか、相手 がどんな人なのか、どんな対応をするか、そして自分の考えを皆さんにわかって もらうスキルが要るわけです。 したがいまして、そのような才能、能力のある人たちを集め、研修を行うため の費用を持つことが重要であります。金融業界全体を見ますと、私たちのこの資 金の使い道に関しては大変満足してくださっています。毎年の予算に関しては、 業界と相談して、私たちの予算、支出等について満足しているかということを伺 い予算を立てております。そして満足してもらっているのが現状であります。全 体的な予算としては、非常に妥当性のあるものだと思いますし、金融会社の年商 で考えますと拠出金というのは非常に微々たるもので、ほとんどゼロに等しい金 額ではないかと思いますので、支出に関しても問題はないと思います。 Information … consumer enquiries 0845 080 1800 technical advice 020 7964 1400 publications 020 7964 0092 public website [email protected] [email protected] [email protected] http://www.financial-ombudsman.org.uk (p.54)私たちはさまざまな情報を提供しております。特にサービスを利用し たい方々のために情報提供をしております。消費者からの問い合わせの番号がこ こに書いてあります。何か苦情がある場合、皆さんもイギリスの金融会社に対す る苦情がある場合は、ここに連絡していただければと思います。この番号に電話 をかけると、必要であれば日本語を含めた同時通訳などのサービスも受けること ができますが、私たちに連絡をいただくことになります。そしてお問い合わせを いただくことになるわけです。イギリスのどこから電話をしても料金は同じとい う電話番号になっています。 −75− それから、私たちのサービスの一環としてテクニカルアドバイスを提供してお ります。金融会社を相手に苦情処理のためのテクニカルアドバイスを行います。 例えば、会社の苦情処理部門が電話を掛けてきて、こういった苦情を受け付けて いますが、どうやって取り扱っていいかわからない、オンブズマンのアプローチ はどういったものであるのか、賠償金はどのくらいの金額であれば公平と思われ るのかという相談を受けることがあります。金融会社がこの苦情処理をするため のテクニックを学ぶことで、消費者がわざわざ、私たちのところに来ないように するためのものでもあります。やはり苦情の予防というものも大事だと考えてい ます。 そして、さまざまな出版物を刊行しております。これはだれでも申し込めば講 読することができます。ウェブサイトに登録していただきまして、このような印 刷物を私たちの方から入手をしていただくことができます。 先ほど同僚が説明したとおり、ウェブサイトがあって、サイトには1,000ページ を超える情報があります。アニュアルレポート(年次報告)はウェブサイト上で 公開されています。オンブズマンサービスが開始されてから毎年予算の計画とい うものをつくって、ウェブサイトに載せています。年次報告、これは正直言って 多少退屈なのですけれども、どんなアニュアルレポートもそうでしょう。もっと おもしろい雑誌もあります。毎年10回、オンブズマンニュースという雑誌を出し ております。最新号は50号です。私たちは既に50冊出しております。いずれもウ ェブサイトに掲載されておりますので、これを見ていただきますと、かなりわか りやすい形で、私たちがどういった作業をしているのか、事案に対してどういっ たアプローチをとっているのか、また事例研究などが載っております。ご関心の ある方、もっと詳細を知りたい方のための参考資料として、私たちのやり方、具 体的な問題の取り組み方を見ていただき、私たちのアプローチを参考にしていた だければと思います。 高齢者問題についての補足(3月12日の質疑の転記) ○田中 高齢者の問題について質問させていただきます。日本では貯金を持って いる方に高齢者が多い事実もあって、その方たちがお金を殖やそうとして金融商 品を買ったときに、例えば自分の思っている金融商品と違った場合にトラブルに −76− ならないかという間々田さんからのご指摘です。そのことも含めて、FOSのケー スの中で、高齢者の問題というのはどれぐらいあるのか、イギリスの金融問題の 中で高齢者の問題というのはどういう位置を占めているのか、社会的排除(social exclusion)の問題とも密接に関係していると思いますが、その問題について、ご 説明を頂けばと思います。あとはもう1つ、これは安藤さんから出た問題ですが、 成年後見のような問題があったときに、後見人や代理人が本人にかわってケース を申し立てたような場合の取扱い方、あるいは高齢者の片方が亡くなった場合、 口座をめぐるトラブルなど、具体的な事例というのはあるのかどうか、高齢者と いうものに視点を当てて、具体的に教えていただけるとありがたいです。さらに 1つ追加させてください。司法制度改革の中で、もう1つ、総合法律支援法、法 テラスといって、各相談機関とADRを組む司法制度改革ができましたけれども、 その中で高齢者の問題に焦点が当てられていることからも、少し高齢者問題につ いて教えていただければと思います。 ○トーマス 私たちも高齢者の問題というのが年々敏感になってきています。日 本では、金融資産を持っている方に高齢者が多いということで、その方たちがお 金を殖やそうとして金融商品を買ったときに、例えば自分の思っている金融商品 と違った場合にトラブルになるケースが多いとの指摘があるとのことですが、私 たちFOSでも、高齢者の問題に年々敏感になってきています。 金融サービスは非常に複雑なサービスで、高齢者の問題というのが常にありま すね。高齢者の消費者というのは弱者、弱い立場にある消費者の一部として考え ています。年齢が高齢なため、あるいは身体的に病気とか何か理由があるために、 本当に自分たちの利益を守ることが難しい方々がいるわけです。つまり弱者と言 っていい消費者があると思います。そしてそのことは、国内法がこのような状況 をどのように捉えているかかということに関係するかと思います。法廷が高齢者 とそのほかの消費者をどの程度区別して考えるかということにもよると思います。 イギリスと日本は状況が違っているかもしれません。 もちろん、高齢者の問題は幾つかありますけれども、イギリスでは、それのみ が深刻な大問題というわけではありません。特に高齢者の問題だけが突出してい るわけではありません。銀行で、一番高齢者の問題として多いのは、間違った商 品を売りつけられたということではなくて、口座がほかの親類によって引き出さ −77− れてしまったということです。署名をしろと言われまして、親戚にお金を取って 行かれたというのが、銀行の場合には問題になっているようです。 高齢者がお金をなくすというのはかわいそうだなと思いますが、一方では、お 金をおろそうとするときに、何十分もかけて銀行から根掘り葉掘り聞いていいの かという問題があります。この2つ、微妙なバランスといいますか、難しい問題 だと思います。 投資商品を高齢者に販売するということに関しては、大きな問題ではないにし ても、やはり若干の問題点はあります。例えば、資金が換金性の乏しい長期の投 資にはりつけられてしまうというのが問題です。これはやはり今後増えてくる問 題だとは思っています。 住宅の資産価値が上がっていますし、個人年金も将来的に難しい問題が出てく るかもしれません。エクイティーがらみの商品もどんどん出てきています。投資 会社などが大きな利益を出すという問題もあります。将来的には規制当局がこの ような分野での規則を考えるにますます時間を費やさなければいけないのではな いかと思います。 高齢者の方が亡くなった場合、銀行の口座はどうなるかということですけれど も、私たちにはそんなに難しい問題になっていた記憶はありません。イギリスで は合同で共同名義の銀行口座をつくることができます。どちらかが亡くなられた 場合、例えば夫が亡くなったらその銀行口座のお金は自動的には妻の方に行くわ けで、全く問題がありません。夫の名前だった場合でも、例えば妻の名前が遺書 の中に書かれてあれば当然のことながらその預金をおろせるわけで、余り大きな 問題になっているとは思いません。 金融オンブズマンサービスの規則で、苦情というのは当事者が持ってくること ができまし、その人にオーソライズされた、あるいは法律によってオーソライズ された人が苦情を持ってくることもできます。私が、自分で苦情を持ち込むこと もできますし、弁護士に委託して弁護士に代理人になってもらうこともできます し、親戚に頼んで私の苦情を持っていってもらうこともできます。また、委任状 などを持っていって代理することもできます。私が破産すると、その管財人とい う者が苦情を持っていくことができるようになっています。 −78− Europe … (p.55)もちろん英国の私たちは、地理的にもその他の面でも、ヨーロッパの 一部であります。 n EUROPEAN UNION (EU) Austria, Belgium, Cyprus, Czech Republic, Denmark, Estonia, Finland, France, Germany, Greece, Hungary, Ireland, Italy, Latvia, Lithuania, Luxembourg, Malta, Netherlands, Poland, Portugal, Slovakia, Slovenia, Spain, Sweden, United Kingdom n EUROPEAN ECONOMIC AREA (EEA) European Union plus Iceland, Liechtenstein and Norway (p.56-57)イギリスは日本の半分ぐらいの規模ですけれども、広いヨーロッ パ・コミュニティーがあって、イギリスは24のほかの国とともにEUの一員です。 イギリスは最近の拡大によって25カ国になったEUの加盟国のEUの一員なのです。 そして、私たちは、欧州経済地域(EEA)、これは25のEU加盟国プラス3カ国、 合計28カ国が加盟している欧州経済地域のメンバーであります。これは重要なグ ループだと思います。 n EEA ‘passport’ rights Financial firms authorised in one EEA member state can provide services in or into any other EEA member state n For example – UK-based internet bank directed at Spain and working in Spanish (p .58 )イ ギ リ ス は24 のほかの 国 とともにEUの 一員 です 。 欧州経済地域 (EEA)というものもありますけれども、金融的にも非常に重要なわけです。こ れはパスポートライト(パスポート権)があるからです。銀行であれ、生命保険 会社であれ、1つの経済地域で許可されていれば、欧州経済地域のほかのどこの 国でも追加的に許可を取らず、サービスを提供することができます。これで少な くとも金融の単一マーケティングを可能にするものであります。消費者は当初、 金融サービスを海外から買うことに抵抗がありましたけれども、しかし、こうい −79− った現象はすでに起きております。例えばイギリスの消費者が少なくとも知って いるイギリスのある銀行が支店を開設し、スペイン向けのスペイン語のインター ネットバンキングサービスを提供しております。イギリスからサービスを提供し ていますけれども、このサービスがスペインに向けられているということがあり ます。パターンは非常に複雑になっているわけですね。これはイギリス発のサー ビスでありますので、私たちの管轄内となります。ここのスペイン語の顧客から 何か苦情があれば取り扱わなくてはいけないということで、私たちは通訳のサー ビスを提供しております。先ほど説明にあったとおりです。 FIN-NET « financial redress body network « refer cross-border complaints « advise on local law « meet six-monthly http://europa.eu.int/comm/internal_market/finservices-retail/finnet/index_en.htm (p.59)それからもう1つ、私たちはFIN−NET(Network for settling crossborder financial disputes out of Court )というネットワークのメンバーでありま す。ADR、ヨーロッパ全域の金融サービスのためのネットワークです。これはヨ ーロッパの欧州経済地域の中で金融問題を扱うネットワークになっています。消 費者というのは得てして混乱してしまいますが、消費者がどのADR、スキームに 行っていいかをわかるようにします。国境を越えた苦情の照会、付託などをする わけです。そして適切なADRを受けていただくということです。特に越境的な問 題の場合、金融会社がある国にあって消費者が別の国にいる場合、より適切なア ドバイスができます。FIN−NETでお互い苦情ないしは法律アドバイスを提供し ております。地元の国内法に関してもお互いに助け合っています。例えば、イギ リスの銀行がスペインの消費者に対してサービスを提供している場合には、スペ インの法律と状況というものがわかっていなければなりません。スペインでは ADRがどうなっているのか知っていなければいけません。FIN−NETは、6カ月 に1回欧州委員会を開き、情報交換の機会を設けています。欧州委員会とも情報 交換をしております。このウェブサイトにアクセスしていただければその情報を −80− 見ることができます。 1998 European recommendation on principles for redress bodies « transparency « due process « independence « legality « effectiveness (p.60)ここには、98年のヨーロッパ原則をうたったADR団体に関する原則の 勧告の内容が載っております。救済機関のための原則ですけれども、EC欧州委員 会によって認知されるために満たしていなければいけないものです。透明性がな ければいけません。明確な規則がなければいけません。みんながわかるような規 則でその団体が運営されていなければいけません。ADRを扱っている人たちは自 分たちの権限、手続は何であるかをわかるようにしなくてはいけません。適切な 双方にとって公平なデュープロセスを経なければなりません。独立性がなければ いけません。法律に準拠し適法性がなければいけません。法的な権利を剥奪して はいけません。効果がないといけません、と言われています。効果がないと時間 の無駄に終わってしまうということになります。そういった内容がここに書かれ ております。 Alternative dispute resolution of financial complaints in the UK Walter Merricks -- chief ombudsman David Thomas -- corporate director and principal ombudsman Financial Ombudsman Service (p.61)以上で私たちからのプレゼンテーションは終わりです。後ほどまた質 疑応答の時間があるかと思いますので、そのとき質問していただければと思いま す。最後に、主催者の方々にお礼を申し上げたいと思います。このような機会を いただき、本当に感謝申し上げます。そして、忍耐強く聞いてくださった皆さん に感謝申し上げます。また、通訳にも感謝を述べたいと思います。ありがとうご ざいました。(拍手) −81− パネルディスカッション 「英国FOSに学ぶ日本のADRの展望と可能性」 ○犬飼 それでは、これから約45分にわたりまして、パネルディスカッションと Q&Aセッションを始めさせていただきます。まずこれまでのセッションを総括し て、山本先生と田中さんより感想をいただきたいと思います。その後、日本の ADR、日本の金融ADRを念頭に置きまして、デビッドさんとウォルターさんのお 二方より、日本の実態を考えた場合にどのようなアドバイスをいただけるかお聞 きしたいと思っております。それが終わりましたら、まだ時間が若干残ると思い ますので、壇上だけではなくて、本日ご出席の皆様のご意見、ご感想、ご質問を お受けさせていただきたく、フリーディスカッションにさせていただきたいと思 います。 まず、私の方から若干感想を述べさせていただきます。今回、やっぱり「百聞 は一見にしかず」と言いますけれども、実際にトップオンブズマンのお2人に来 ていただきまして、FOSの活動について長時間、昨日・本日と、詳しく、公式的 な場、非公式的な場、あわせてお聞きすることができて本当によかったと思って おります。1つ、私が発見した新しいファインディングとしては、FOSのオンブ ズマンの方々、そしてオンブズマンのスキーム自体がイギリス全体から歓迎され、 尊敬されているということです。そして、そのスキームとオンブズマンをやって おられる皆様、お2人を含めた方々が非常に尊敬されている、押しつけではない 権威がある、当然経験がある、そして、情熱と忍耐力もある、そういうことがオ ンブズマンの必要条件ではないかと感じました。それに対して、われわれが思い 描いてきたオンブズマン、金融のADR を担当するその部局、人間、組織、そうい うものには、そこまで詳しくは考えていなかったのではないかと思います。そし て、どうもこれまでは、金融機関みずからが組織している相談窓口と、消費者対 応をされておられる民間のNGO、NPO、あるいは消費者問題をご専門にされてお られる司法書士並びに法律家の方々と、いわばある意味対立的な構図としてオン ブズマンが考えられていた節があるということが言えるかと思います。ただ、今 日わかりましたのは、イギリスのオンブズマンは、実際に金融機関の方に、そう いうインディペンデントな仕組みで結局は得するといった意識があって、オンブ −82− ズマンがつくられたということです。これは、私、今日初めて知ったことです。 その辺がやっぱり日本の議論とイギリスの実際に起きていることの違いではない かなという感じを持った次第です。それともう1つ、お二方とも弁護士、ローヤ ーでいらっしゃいます。デビッドさんの方はバンキング専門、そしてウォルター さんの方は保険のご専門とお聞きしましたけれども、私、勘違いをいたしまして、 もしかして、昔、お二方とも金融機関にお勤めだったのかなと思ったのですが、 とんでもないということでした。要するに、日本の場合はそういう金融機関に勤 めていた方がオンブズマン的なというか、相談員をやられるということが十分あ り得るわけですけれども、その辺、FOSは非常にきちっとした立て分けがあるの かな、そこは後ほどまたちょっとお聞きをしてみたいなと思いますが、やはり権 威の源泉、その公正性、中立性の源泉みたいなものが、かなりリジッドな形で厳 格に維持されているという感じがいたしました。私の感想は以上でございます。 大変恐縮でございますが、山本先生、これまでのセッションをお聞きになられ ました感想をお願いいたします。 ○山本 私も本日は大変勉強させていただきました。このADRの議論、特に金融 関係のADRの議論は、金融審議会でありますとか、先ほどお話しした金融トラブ ル連絡調整協議会の議論などでも、たびたびイギリスの金融オンブズマンサービ スのシステムについて議論がされ、大変注目されているところですが、こういっ た形でまとまって勉強をさせていただいて、大変よくそのシステムが理解できま した。私の理解するところでは、日本でもこのようなシステムを採用するという ことは、法的に見てあるいは理論的に見て、決して不可能なことではないという ふうに思います。このような片面的な仲裁のスキームというのは、日本でもほか に例がないわけではありませんし、結局、業者側だけが拘束される、業者側だけ がその後裁判所に行く権利を放棄するというスキームということになると思いま すけれども、それはそれらの金融機関が任意にこのスキームに参加するという形 をとる限りは、憲法が保障する裁判を受ける権利に反するものではないというふ うに言えるのだろうと思います。ただ、もちろんそのような形にいたしますと、 任意に加入した金融会社だけが構成するスキームということになりますので、そ のスキームに参加しない業者、いわゆるアウトサイダーの問題が生じるであろう と思いますけれども、そこはそういう業者の問題はそもそもADR で本来取り扱う −83− べき紛争ではないということで整理ができるのかもしれません。また、任意で参 加するということになりますと、本当にその金融機関が任意にそのようなスキー ムに加入するというような体制作りというのは、実際にはなかなか難しい側面を 持っております。先ほどお話ししました金融トラブル連絡調整協議会で作成しま した金融ADRのモデル2 の中でも、やはりその点は非常に大きな争点になりました。 つまり、金融機関がADRの提示した調停案を受諾する義務があるのかどうかとい う問題であります。結論的に、このモデルでは金融会社はADRが調停案を提示し た場合には、それを尊重しなければならないということにしました。そして、そ れを金融機関が拒絶する場合には、その拒絶する理由をADR機関に対して説明し なければならないということにしました。そして、その説明された理由がADR機 関から見て正当なものではないというふうに判断した場合には、その金融機関名 等を公表することができるという形にしております。これはある意味で非常に日 本的な解決方なのかもしれませんけれども、そのような形で間接的に、金融会社 に調停案の受諾を強制するわけで、それを受諾しない場合に、一種のレピュテー ションリスクが発生するという、間接的な制裁をも受けるということに留めたわ けです。ある意味ではそれが限界だったかもしれません。しかし、今後のさまざ まな議論の進展の中では、このFOSのような形で、それを正面から強制するとい うスキームがあり得えるのではないと私は思っております。ただ、このようなス キームをつくる場合なかなか難しいなと思う問題は、そういう機関、オンブズマ ンのような機関が、業界側と消費者側のいわば中間の線を進まなければならない ということでありまして、その判断が業者寄りであるという評価がなされれば、 恐らく申し立てる消費者はいなくなるでしょうし、逆にその判断が消費者寄りで あるということになった場合には、そのオンブズマンのファイナンスは業界が持 っているわけでありますから、当然業界側からかなりの不満が出てくるのではな いかというふうに考えるわけであります。そういう意味で、非常に細い中間のラ インを行かなければならないということですけれども、先ほど犬飼さんから、業 界側がオンブズマンをつくることによって得をするというお話があったので、私、 2 http://202.232.190.90/jp/singi/sihou/kentoukai/adr/dai4/4siryou_list.html http://202.232.190.90/jp/singi/sihou/kentoukai/adr/dai4/4siryou5.pdf −84− もう少しそこを踏み込んで、後で両オンブズマンの方からコメントをいただけれ ばと思っております。以前、私はオーストラリアのオンブズマン制度を見に行っ たことがありますが、オーストラリアはイギリスの制度とかなり類似していると いうか、イギリスの制度を参考にしてつくられたのだろうと思いますが、そこの オンブズマンに聞いたところ、自分たちは裁判所よりもやはり消費者にとって有 利な解決をしなければ存在意義がないものだというふうに考えているということ でした。それはそうすることによって業界が得をするということもあるけれども、 業界としても、そういうようなスキームをつくらないと監督機関から非常にプレ ッシャーを受ける、つまり消費者に対して十分な紛争解決の方法をとらないと、 今度はその監督機関から圧力がかかって、逆に規制が強化されてしまうので、そ のようなことを避けるためにオンブズマンのスキームを設けている面もあるので はないかというような指摘もありまして、その点、私は非常に興味深いと感じた わけであります。イギリスの方の事情、こういうオンブズマンのスキームがつく られるについて、業界はどのような考え方を持っているのかという点について、 また、後にもしお時間があればご教授をいただければと思います。私からは以上 です。 ○犬 飼 山本先生ありがとうございました。そ れ と、先ほど2 万6,000 社、2万 6,000ファームというお話がありましたけれども、これは当然2000年の金融サービ ス市場法における、そこで認められたというかパーミットされたあるいはオーソ ライズされた会社であると思います。この金融業の参入規制上の問題があります が、その2000年金融サービス市場法で金融業を営んでもよいというふうに認めら れた会社であるというところの話と、このFOSの2万6,000の会社がどういうふう に絡んでいるのか、それは全く同じものだと私は理解したのですけれども、それ によるある種の権威づけのようなものがどこまでどういうふうに影響しているの か、法と組織との問題というのはどうなのだろうというのをお聞きしてみたい気 がいがします。それでは、続きまして、田中さんの方からご感想をお願いできま すでしょうか。 ○田中 私の方からの感想としては、いろいろな制度の枠組みの違いはあるもの の、FOSに年間60万件のアクセスがあるのはどういうことなのだろうという事で す。人口の比較からすれば、イギリスの人口の方が日本より少ないわけですから、 −85− そこに60万件アクセスするところの意味は一体どういうことなのだろうというこ とを考えました。彼らを訪問するたびに、「私たちは、アドバイスは与えない ADR機関として、第三者として存在しているのですよ」ということを、何回も何 回も口すっぱく説明されるわけです。それに反して、日本のADR というのは、相 談機関でさえまだ件数が少ないというのが現状です。日本ではパイオネット 3など の数字の約20倍の消費者がそこに苦しんでいると言われている中で、彼らがアク セスするポイントも見つからないというのは、日本全体の問題として考えなけれ ばならないし、それが彼らが言っているFOSとFSAとFSCSの三姉妹の関係に結び ついていくのではないでしょうか。つまりもっと大きな枠組みでで金融ADR とい うものを考えていく必要があるのじゃないかという感想でした。もう1点、この二 日間で感銘を受けましたのは、一番初めのインシュアランスオンブズマンのとき に、消費者団体が既にそこに参画していてオンブズマンを立ち上げたといったこ とでした。だからこそ、いろいろな意味で利用者が利用しやすいオンブズマンが 制度として基になり、それが発展していったのが今のFOSのスタイルだったので はないかと思います。つまり、私どももNPOで消費者団体を発祥にしましてつく っていきましたけれども、これからADRという組織をつくる場合も、利用者から 見て一体どういうものが利用されやすいのか、そして第三者というのは、利用者 から見た第三者といったら何なのかというところを常にフィードバックしながら 改革していかないと、イギリスのような形の発展形にはいかれないのだろうなと いうのは、反省を踏まえながら2日間議論させていただきました。そしてこの考 えこそがADRのマネジメントにかかわってくる問題だと思いました。その点も含 めて、日本のこれからまだまだ未熟なADR がより発展するためには何が必要なの かといったところをご示唆いただければありがたいなと思います。最後に手続実 施者の問題です。未熟ではございますがNPOの中でメディエーターやケースマネ ジメントをやらせていただく中で、自分の役割というものが見えてこない、見え なくなってしまうことはよくあります。同様にトレーニングをブームの中でいろ いろやらせていただく中で、特に法律家の方たちに、私たちが一体何をトレーニ 3 PI O−NET(パイオネット:全国消費生活情報ネットワーク・システム)。複雑化、多様化、広域化す る消費者被害に迅速に対処するため、国民生活センターと全国の消費生活センターをオンラインネッ トワークで結び、消費生活に関する情報を蓄積・活用している。 −86− ングしていけばいいのかといったところは常にジレンマを抱えています。その中 で、今回、オンブズマンのトータルのシステムの中で、オンブズマン、法律家の 役割が最終決定をする方たちの役割で、その前の段階のアジュディケーターとい った役割と、はっきり分かれていることが それぞれの立場でしっかり認識され ていることが、大きな示唆だったと思います。アジュディケーターの中にももち ろん法律家の方はたくさんいらっしゃるわけです。その中で一体彼らが何をする のかといったこと、つまりそれぞれの役割を認識することはきちんとトレーニン グもされています。またお二人のような信頼のある方がオンブズマンとしていら っしゃるからこそ、前段階の役割というのも自覚でき、トレーニングも自分の役 割もはっきり認識されている中で何を目的にしているのか明確かされているとい うご示唆だったではないかと思います。私もかかわっておりますISOにも含まれ ていますが、今回は利用者から見たらだれが手続実施者なのだろうといったこと を、トータルで広げた中での手続実施者、ADR法の中での手続実施者ということ をもう1回考えていくいい機会になったのではないかと思っています。 ○犬飼 ありがとうございます。感想ということで今いろいろ疑問だとか質問が 出ましたが、それに直接お答えいただいても結構ですし、あるいはご感想という ことでも結構です。それでは、デビッドさんからコメントをお願いいたします。 ○トーマス ありがとうございます。忍耐強いというふうにおっしゃっていただ いて、とてもありがたく思っております。先ほど、私たちをとても情熱あって、 忍耐強いというふうに言われておりますが、やはり情熱というのは必要かもしれ ません。また、忍耐も必要かもしれません。ADRにとっても金融会社にとっても そうですね。私たち、金融商品を買っているわけですが、これは約束に過ぎない です。金融というのは、何か実際なものを持って帰るということができないので すね。ADRのスキームというのは、この金融会社によってなされた約束がきちん と履行されるということを確保するためのものなのです。私たちは、イギリスで これまでやってきた実績に関して、ある程度誇りを持っています。これはもとも とスウェーデンで始まった制度なのですけれども、この制度を持ってきまして、 イギリスの状況、それから文化に合わせてこれを修正してまいりました。ですの で、ADRを導入されるに当たって、やはり日本の文化それから日本の状況に合っ たような形で、この制度を導入していかれる必要があるかと思います。先ほどの −87− ご質問ですけれども、金融サービス市場法によって許認可されている会社は全部 含まれています。小売の商品を扱っていない、一般的な消費者とは全く取引がな いということを証明するような証明書を監督当局に送れば別ですけれども、金融 商品を一般人に売っている者であれば、すべて入っています。オーストラリアに 関しましては、メリックスの方が詳しいので、彼にお話をしてもらいたいと思い ます。世界中のオンブズマンの人たちと私たちは、いろいろ話をしてきています。 イギリスにおきまして保険オンブズマンというのが最初にできたわけですが、そ の理由の1つというのは、保険業法が変わるということで、保険会社が懸念を持 っていたことです。法が変わるよりもオンブズマンの制度を導入しようというこ とを考えていたわけで、保険オンブズマンの制度が最初に始まりました。では、 メリックスさん、お願いします。 ○メリックス ありがとうございます。オーストラリアの制度はイギリスの制度 よりも後に発足しています。これも任意のスキームとなっています。規制当局と いうのは、その後に新たにできました。そして、その準拠法に基づいて、その規 制当局がいろいろなスキームを認可して、いろいろな基準というものを設定しま す。業界ごとに、オンブズマンはどういう基準を満たしていなければいけないか という標準を設定したので、オンブズマンの制度は若干違いがありますが、すべ て独立性、説明責任、フリーなアクセス、そのほか幾つかの基準を満たさなけれ ばならないというのは、すべてのスキームに関して共通している点です。 全体のADRスキームにまたがる標準というものも、オーストラリアでは設定さ れています。スキームの詳しいところは若干違いがありますが、基本的な原則と いうのは同じです。すべての金融会社がこれに参加していて、消費者はADR のス キームが使えるようにならなければいけない、無料で自由なアクセスができなけ ればならないという原則です。 裁判外の紛争解決は、ある程度の質を満たしていなければならないという要請 があります。そして、任意の制度との区別として、強制加盟があるわけですね。 当然のことながら私たちの状況、イギリスにおきましては、もともと、任意加盟 のスキームとして始まりました。 先ほど田中さんがおっしゃっていましたけれども、消費者団体もこれに参加し ていたわけです。パートナーとして業界と一緒に参画してくださったのですね。 −88− 今でもそれは大事な点だと思います。私たちは消費者の擁護団体ではありません。 業界寄りであってもいけません。私たちは中立でなければいけません。独立で、 裁判官と同じように中立的な立場で判断できなければいけないと思っています。 金融業界がこのようなオンブズマン制度の価値を認めるというところから、私 たちが存在しています。なぜ価値を認めてくれるのでしょうか。やはり目的に同 意していて、紛争が解決でき、そして裁判に持ち込まれないという利点があるか らです。 もう1つの大事な点は民間の紛争解決です。紛争にどういう会社がかかわって いるのかという名前は公表しません。例えば毎年の件数というものに関しまして は公表しますけれども、この会社の主張を具体的何件擁護したかしなかったかの 数字は出しません。消費者の名前も出さないので、個人情報が公表されなくて済 むわけです。それから生命保険、医療保険に関する細かいことや、保険の時の健 康状況に関しても公表しません。もちろん公表はしないという形で私たちは業界 の方々に信頼してもらって、金融会社から秘密に情報を得ているわけです。 山本先生が先ほどおっしゃっていましたけれども、私たちが一元化される前の スキームに関しては、オンブズマンの決定は技術的には拘束力がなかったのです。 ただの提言に過ぎませんでした。山本先生がおっしゃっていたのと同じ例ですけ れども、オンブズマンの提言というものを金融会社が受諾しない場合、その金融 会社はなぜ受諾しなかったかの広告を新聞に出して理由を説明しなければならな いことになっていました。それが義務づけられていました。10年間の歴史の中で これは2回しか起こったことがありませんでした。ですから、非常に高い率でオ ンブズマンの提言を履行してくださっていたのですね。 自分で広告料を払って広告を載せなければならない。それから、ジャーナリス トたちがいろいろ書き立てるということもあると思います。 これの関連ですけれども、もう一つは合法性の問題です。金融会社と消費者が、 オンブズマン制度の価値を認め、設立の意志と意図があれば、まずは合法性の問 題から始めることができるでしょう。 私たちのモデルですけれども、25年掛かってやっとここにこぎつけたわけです。 1年間でこの25年分ジャンプしてつくってしまうというのは、とても勇気の要る ことではないかと思います。ですから、もう少し時間をかけて、日本のADR をつ −89− くっていかれたらいいのではないでしょうか。確固とした土台の上につくってい くことが必要ですから、時間をかけておつくりになったほうがいいのではないで しょうか。しかし、皆さんがこれほど関心を持ってくださっていることには大変 感謝申し上げたいと思います。ほかの国に関心を持たれることは非常にいいこと だと思います。こちらに伺えて大変光栄に存じます。 ○犬飼 ありがとうございます。山本先生、よろしいですか。 ○山本 はい。 ○犬飼 すみません、1つだけ。先ほどの広告が義務づけられているというお話 ですが、これはどういう法律でしょうか。 ○メリックス そのスキームに関しては、かつてあるセクターに関する法律があ りました。これは先ほど申し上げた住宅組合、S&Lに相当するものですけれども、 住宅金融組合に関する法律の中で、すべての会社は以下のような特徴を持ったス キームに属さなくてはいけないとという要件が課せられました。複数のスキーム という可能性もありましたが、1つのスキームでいいという結論に達したことで、 この住宅金融組合のオンブズマンスキームができました。ただ、この法律の中で うたわれていたことは、このスキームの特徴として、そこで下される最終的な勧 告はあくまでも拘束力を持たない提言でありますが、これを遵守しなければその 会社は広告を掲載しなくてはいけないことが義務づけられていました。これは意 図的にそのようにしたと思います。つまり、その会社に対して、通常、判事、裁 判所のみ強制できる、例えば賠償額をこれだけ払いなさい、といった強制の一歩 手前のところでストップする意図だったと思います。 この広告をだれがどこに載せるかという決定に関心があると思いますけれども、 オンブズマンがそれを決めました。例えば全国に事業を展開している金融会社で あれば全国紙、地元でしか活動していないところであったならば地方紙というこ とになります。 ○犬飼 ありがとうとざました。あと20分ほどございます。これからは皆様のご 質問、ご感想をぜひ聞かせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。恐 縮でございますが、先にお名前とご所属をおっしゃっていただくよう、お願いい たします。 −90− Q&A ○簗瀬 日本仲裁人協会から来ております、弁護士の簗瀬捨治と申します。 今ご紹介いただいている制度を成功裡に導入するには、私が考えますのに2つ のキーポイントがあります。1つは十分な財政的な基盤をこの組織に供給するこ と、これはイギリスの場合にはインダストリーが出しているということで、この 点はなぜインダストリーがそういうふうに資金を供給するか、それによるベネフ ィットがどのような点にあるかという点については、今までの説明とディスカッ ションで十分明らかになったと思います。もう1つのキーは、オンブズマン が非 常に公正であるということで、裁判所ではないけれども、ADRらしい、インフォ ーマルであるけれどもフェアなディシジョンをクイックリーに出せる資質、能力 を持ったオンブズマンをそろえるというのが、実に大切なことだと思います。 お金を出す側では、どうしても人事権を、少なくとも、トップの方の人事は何 とかコントロールしたいと、潜在的に考えるのがごく自然だと思います。 それとの関連で、どのようなプロセスでオンブズマンがアポイントされるのか、 オンブズマンになる前のアジュディケーターズの採用はどのようなプロセスでな されているのかを、ご説明頂けばと思います。透明性と中立性の確保というのは 非常に大事で、お金を出す方から見ると結構つらいものがあるのかもしれないけ れども、人事は中立性を保つという意味では非常に重要な点だと思っております。 ○メリックス では、私からスタートします。 最初のオンブズマンがつくられたとき、当時は任意のスキームでありましたの で、そこには保険会社そして消費者の両方の利害を代表するような、そういった 構造が必要でありました。保険会社が単にだれかオンブズマンを選んでしまった のならば、これはもう信頼性がなくなってしまうということで、彼らはそこで非 常に複雑な構造をつくってうまくいきました。それはどういったものかといいま すと、そこには2つのスキームを管理、統一する機関がありました。 まず、このスキームを所有している会社、そしてお金を持っている会社、これ はいわゆるボードという形をとりました。このボードというのは理事会に相当す るものでありますけれども、これは保険会社の代表で構成されました。このボー ドは保険会社からお金を徴収し、スキームを運営しておりました。 −91− 一方で、カウンシル という協議会のようなものがつくられました。このカウン シルの方では、大多数の人たちは消費者でありました。カウンシルはこのスキー ムのための予算を組む責任を持っておりまして、予算案をボードに提案する役割 を担っておりました。そこでカウンシルとボードの間で、どのぐらいのお金でこ のスキームを運営できるかの協議をすることもありました。 カウンシルの方がオンブズマンを選定しておりました。この消費者が過半数を 占めるところがまずオンブズマンの募集広告を出します。カウンシルの方では、 保険会社の代表は少数派で、この人選プロセスにかかわっておりましたけれども、 消費者がいわゆるその任命に当たっては過半数を占めておりました。 予算は非常に大事なことであります。というのは、オンブズマンのスキームを 運営するためにはお金が必要であります。オンブズマン、スタッフの給与を払い、 システムにある程度お金を投入しなくてはいけないということで、カウンシルの 方で予算案を出すということになりました。 このモデルは、法的なスキームではなかったのですが、任意のイニシアティブ としてつくるに当たって重要であったと思います。したがって、多少複雑になっ てしまいましたけれども、任意のスキームとしては適切な構造ではなかったかと 思います。 その後、金融オンブズマン、FOSができたわけでありますけれども、これは法 律に基づいてできたわけですので、その際には、もはや今申し上げたような複雑 な構造は必要なくなってしまいました。FOSの独立性そのものが法律によって保 障され、議会がそれを求めたわけですから、中立性の心配はなくなりました。 今現在、私たちが監督、統治しているのは1つの機関であります。ここには金 融会社の代表が一部入っておりますけれども、主に一般の代表であります。一般 国民の代表ということで、こういった人たちがボードを構成しております。この 理事会が私を任命しておりますし、デビッド・トーマスさんもこのボードを通じ て選ばれたわけであります。その他のオンブズマンもすべて、このボードを通し て任命されております。 2つだけつけ加えたいと思います。アジュディケーターのことについて聞かれ ましたけれども、私たちが彼らを選んでおります。オンブズマンがこのように任 命された後、実際にオンブズマンが組織を運営しておりますので、私たちはその −92− 判事役であると同時にまたマネジャーの役割を果たさなくてはいけないというこ とで経営者であります。私たちは非常に積極的に、効率性を追求しながら経営を しております。 さっき説明したカウンシル、協議会を設ける構造を選んだ場合、私は銀行から スタートしましたけれども、銀行家は少数派でありました。消費者の代表が何人 かいて、そしてどちらにも属さない委員長や有名な弁護士がいる、そういったや り方をとりました。 消費者の信用を勝ち取るためには、知名度の高い、非常に尊敬されている人物 がいることが大事になります。銀行のオンブズマンの場合には、テレビのアンカ ー、キャスターの人たちなどがおりました。同僚たちはみんな善人でしたよ。ビ ジネス界ではよく知られた人たちでしたし、政府ではよく知られているが、消費 者はあまり知らない人たちでした。ところが、毎晩テレビでこの顔を見て、その 彼らがいいと言うのであればいいのではないかというふうに信用を勝ち取ること ができたのですよね。皆さんのコミュニティーの中で、有名人でしかも尊敬を勝 ち取っていた、こういった人たちを組み込むことが重要でしょう。こういった人 たちが信用性につながると思います。 ○犬飼 大変興味深い内容だったと思います。本当にありがとうございました。 このほか、いかがでしょうか。何でもこの際お聞きください。 ○石戸谷 弁護士の石戸谷と申します。 日本弁護士連合会の消費者問題対策委員会というところでずっと活動しており まして、日本でビッグバンのとき、慌てて98年スタディーグループをつくりまし てロンドンに勉強に行ったことがあります。バンキングオンブズマン、それから インシュアランスオンブズマンの方も訪問いたしまして、トーマスさんからもお 話を伺いまして、その節は大変お世話になりました。 そのときオンブズマンの話を知りまして、これは大変いい制度で、日本に帰っ てきて、これをぜひ日本にも、特に金融の関係に導入したいということで、本で 書いたり日弁連の意見書で提言したり審議会で発言したりしましたけれども、ま ったくだめでした。なぜかというと、金融業界の反対が非常に強かったのです。 先ほどのお話で、イギリスの方では金融業界の方がオンブズマン導入を希望した というお話があったのですが、日本は全く逆でありまして、そこの違いが大変大 −93− きいと思います。いろいろ紛争の現場でやってきた感覚からすると、非常にわか りやすい例だと、偽造キャッシュカード、盗難キャッシュカードで預金を取られ てしまったというケースで、銀行に預金の払い戻しの請求に行くと、銀行は、 「それはカードを盗まれたあなたが悪い、カードを偽造されたあなたの責任です よ」ということで、一切の払い戻しに応じなく、話し合いにならないわけです。 ADRというところで解決する余地がなかったのです。やむを得ず、裁判をどんど ん起こして、裁判所の判断も次第に「これは銀行の対応はおかしい」ということ で、判決がずっと積み重なって、それが国会で問題になって、ようやく昨年、預 金者保護法という新しい法律ができて、ことし2006年のつい先月、2月から預金 者が保護されるような法律が施行されました。 例は山ほどあるのですが、これは非常にシンプルでわかりやすい例だと思いま す。金融機関の方はADR志向がなかなか見えず、裁判でいきたいたがっています。 なぜかというと、日本の場合は、解決の基準が、法律に従ってやらなければいけ ないという意識が非常に強く、イギリスでお話を聞いたときに大変うらやましい と思ったことがあります。オンブズマンは何を基準に判断するかといったときに、 当然法律とかバンキングコードとかいろいろあるけれども、最終的にはケース・ バイ・ケースで何が公正かというところで決めるのだということで、大変うらや ましく思いました。 日本はとにかく、法律どおりにやらなきゃいかんという考え方が非常に強く、 なおかつ、その法律が非常に金融機関に有利にできているものだから、裁判志向 がさらに強くなると、こういう循環になっております。したがって、今の国会に 出る金融商品取引法にも残念ながらオンブズマンというのは十分な形では入って いなくて、ルールそのものがわれわれの方から見るとまだまだ不十分な状態があ って、悪循環となります。ルールがきちっと、消費者の方にもバランスのとれた ルールになれば、裁判に持っていかなくても、ADRでもって同じように解決がで きるはずが、そこのところがうまくいっていないので、日本の状況はうまくいっ ていないのじゃないかというのが私の感想ですが、ほかの先生方にもこれに対し てそうじゃないというお話がございましたらお伺いしたいと思います。 ○犬飼 山本先生、いかがですか。 ○山本 別にそうじゃないというコメントはありません。ぜひコメントをいただ −94− ければ。 ○田中 私も同様に感じているところがあります。確かにADRと裁判と、非常に 兼ね合い難しい所がありますし、法律の問題というのが日本ではすごく大きいか なというのは、海外のADRに行けば行くほど感じる点であります。ただ、FOSの 方々がおっしゃっていたように、そして私も海外に行くと言われるのは、ゆっく り時間をかけてやらなければならない部分というのは確かにあります。オンブズ マンの概念をゆっくり育てなければいけないのではないかなと考えます。信頼性 という問題がよく言われていますが、ADR の信頼というのは認証があるからどう という問題ではないわけで、機関が本当に中立的な解決をしていくという信頼を 勝ち取れば、次第に成り立っていくのではないかという気がしております。それ をつくる意味で、金融機関側がそこのADR に行けば、名前も公表されず顧客のた めにも自分たちのためにもなったという、そういう実績をどんどん積み上げてい くことで、これからのADR の発展を願わずにはいられません。そこがまさしく先 ほどからウォルターとデビッドがおっしゃっている、お互いの価値を認めていく といったところがADRの基本ではないかなという気がします。消費者も金融機関 もADR側も行政側もそれぞれの価値をいかに認めていくかを、少し哲学的な話に なってしまいますが、少し年月をかけてつくっていくべきところだと思いますの で、それを法律ができたからといって、一、二年ですぐADRに行けというのは、 なかなか難しいでしょう。ただ、ADR がしっかり根付くまでに被害が累積されて いては意味がありません。いかに早く被害を少なくしていくかは早急に考えなけ ればならない問題です。そこはADRの問題と一緒に、例えば相談が寄せられたら、 問題の背景を視野に入れ、関係者同士が連携していくこと、それがまさしくFOS とFSAの関係だとは思いますが、連携するような形で何かつなげていくことが、 今の日本のADR や社会全体のできる仕組みなのかなというふうに、私はお2人の 話を聞いて思いました。 ○犬飼 ありがとうございます。やはりこの問題は時間かけなければいけないの はそのとおりですが、ただ時間をかければすぐできるかというと、そういう問題 でもありません。そういう意味で言うと、きょうのこの会というのは、いろいろ なお立場の方にお集まりをいただきまして、ご興味と志とその必要性をお感じの 方々には引き続きお集まりをいただくなり議論を継続させていただくなりという −95− ことを、ぜひ引き続きさせていただきたいと思っております。この後、意見交換 会をかねた懇親会が1階で用意されておりますので、ぜひご参加ください。それ では、パネルディスカッションはこれで終わらせていただきます。ありがとうご ざいました。 −96− フォーラム講師 プロフィール紹介 ¦ Financial Ombudsman Service (FOS) The Financial Ombudsman Service was established by law to resolve complaints by consumers and small businesses against financial firms, acting as an alternative to the civil courts. Its jurisdiction covers 26,000 financial firms - including banks, building societies, insurance companies, investment companies and investment/insurance/mortgage intermediaries. It has power to award compensation up to ¥20 million per case. It has 32 ombudsmen and more than 1,000 staff, who deal with about 615,000 enquiries and 111,000 cases a year. It uses a variety of dispute resolution techniques so that over 90% of the complaints are resolved without the use of its statutory powers. ¦ Walter Merricks Walter Merricks qualified as a lawyer in England and Wales in 1970. His legal career included: pioneering public practice (as founding director of the Camden Community Law Centre); academic law (devising and teaching a welfare law programme at Brunel University); legal journalism (a writer for the New Law Journal); and professional regulation and representation (as Assistant Secretary-General of The Law Society). In 1996 he was appointed as the Insurance Ombudsman. Since 1999 he has been the Chief Ombudsman and head of the Financial Ombudsman Service. He is Vice-President of the British Insurance Law Association and an honorary fellow of the Chartered Insurance Institute. He won the Achievement Award at the British Insurance Awards 2004. He is also a board member of the Human Fertilisation and Embryology Authority and honorary secretary of the Donor Conception Network, a self-help charity supporting families that include donor conceived children. He is a past chairman of the British and Irish Ombudsman Association, and was a member of the Royal Commission on Criminal Procedure and of the Committee on Fraud Trials Committee. −97− ¦ David Thomas David Thomas qualified as a lawyer in England and Wales in 1969, and as a lawyer in Ireland in 1991. His career as a private practice lawyer culminated in leading a firm of lawyers with offices in Liverpool and London. He also lectured on practice management, quality, commercial contracts and competitive tendering. In 1997 he was appointed as the Banking Ombudsman. Since 1999 he has been a Principal Ombudsman with the Financial Ombudsman Service. He previously headed the Financial Ombudsman Service's work on banking, mortgages, pensions and split-capital investment trusts. He is now Corporate Director - responsible for corporate policy, which includes: legislation and rules; relations with government, regulators and the European Commission; and cases with wider implications. He is also a member of the Accountancy Investigation and Discipline Board, a member of the Disciplinary Pool of the Actuarial Profession and a committee member of the City of London Law Society. He is a past President of Liverpool Law Society and was a Council member of The Law Society for nine years. * * * * * * * ¦ 山本 和彦 (やまもと かずひこ) 一橋大学 大学院 法学研究科 教授 1984 年 3 月:東京大学法学部卒業 1984 年 4 月:東京大学法学部助手(1987 年 5 月まで) 1987 年 6 月:東北大学法学部助教授(1996 年 3 月まで) 1991 年 9 月:リヨン第3大学法学部客員研究員(1993 年 7 月まで) 1995 年 4 月:一橋大学法学部助教授(2000 年 3 月まで) 2000 年 4 月:一橋大学大学院教授(現在に至る) 2000 年 9 月:金融庁・金融トラブル連絡調整協議会委員(座長代理)(現在に至る) −98− 2002 年 1 月:司法制度改革推進本部・ADR 検討会委員(座長代理)(2004 年 11 月まで) 2003 年 4 月:放送大学客員教授(非常勤) ¦ 田中 圭子 (たなか けいこ) 特定非営利活動法人 日本メディエーションセンター 代表理事 消費生活アドバイザー、消費生活専門相談員、産業カウンセラー 清泉女子大学英文学科卒。 日本火災海上保険(株)(現日本興亜損保)国際業務部 退職後、国民 生活センター(非常勤)等へ勤務。(社)日本消費生活アドバ イザー・コンサルタント協会 消費生活研 究所 研究員、電子商取引推進協議会(ECOM) ADR プロジェクト研究員を経て、2003年より現職。 (財)法律扶助協会 理事。 ¦ 犬飼 重仁 (いぬかい しげひと) 総合研究開発機構(NI RA) 主席研究員 慶應義塾大学法学部卒。ハーバードビジネススクール AMP 修了。75 年三菱商事入社後、ロンドン金 融子会社を含め 18 年間の同社財務部門勤務等を経て、2002 年 NIRA に出向、2004 年より現職。 2005 年 3 月、NIRA 研究会リーダーとして 「日本版金融サービス市場法」制定に向けた提言公表。 2005 年 5 月、『NIRA Market Governance Report 2005 (NIRA 研究報告書), 包括的・横断的市場法 制のグランドデザイン 「日本版金融サービス市場法」制定に向けての提言 (3分冊)』を編集・出版。 早稲田大学法学学術院客員教授、慶應義塾大学経済学部企業金融論講師、成蹊大学法科大学院非 常勤講師、日本資本市場協議会事務局長を務め る。 −99−