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地球と - 島津製作所

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地球と - 島津製作所
人と、科学と
毛利 衛
Mamoru Mohri
「ひとつの細胞(自分)が本体(地球)から出て、
外から本体(地球)を眺めている」̶̶。
宇宙飛行士で科学者でもある毛利氏は、スペースシャトルに搭乗し、宇宙から地球を
眺めたとき、こんな不思議な感覚にとらわれたという。人間は、地球というひとつの
「生命」のなかで大きな発展をとげてきた。それがいま、環境問題という言葉で表され
る現象を引き起こしている。一刻も早く有効な手立てを高じなければならないのは間
違いないが、
「ことの本質を見誤ってはいけない」と、毛利氏は力説する。地球を守る
ため、そして人類を滅亡から防ぐため、本当になすべきことはなにか。毛利氏が感じ
得た感覚は、非常に大きなヒントとなるかもしれない。
ジオ・コスモスに映し出されているのは「世界の化学天気予報システム」の画像(提供:
(独)海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター)
11
1
地球を外から眺めて
地
球を外から眺めて
球体であるということを改めて実感させ
球を一周してしまうのです。地球が丸い
とを実感したのです。
して地球は特別な星ではない﹂というこ
スペースシャトルの中から地球を眺め
てみると、表面に水と陸地、そのまわり
ま、そこに生命があるというのが、他の
ま長い期間、水と空気があったから、い
られました。
ったい何を指しているのか、そして何の
をほんとに薄い大気の層が覆っているの
惑星とのわずかな違いなのです。
﹁環境を守ろう﹂という言葉を聞く機会
地球は、 億年前に他の惑星とほぼ同
じ時期に誕生しました。そして、たまた
ために守るのかといった前提がはっきり
が 見 え ま し た。 見 て い る う ち に、 突 然、
は非常に多いのですが、その言葉は、い
していません。まず、この点からお話し
その結果がどうなるかはまだわかりま
にいま進行しています。
物がいた痕跡を探そうという活動がまさ
度々の惑星探査の結果、火星に、水が
あることが証明されました。そして、生
すべての生命がそこにあるのだというこ
そして、ふと振り返ると、そこに月や
火星が見える。そうすると、今度は﹁決
す。
とが、実感として湧き上がってきたので
したいと思います。
分で地
私が、スペースシャトルに乗って宇宙
に出たとき、目の前に地球が広がってい
ました。
スペースシャトルは、ほんの
90
11
2
46
地球と、
毛利 衛(Mohri Mamoru)
1948年北海道余市町生まれ。理学博士。1985年日本初の
宇宙飛行士に選抜される。1992年9月スペースシャトル・エ
ンデバーに日本人科学者として初めて搭乗。1998年NASA
宇宙飛行士の資格を取得。2000年2月再びエンデバーに搭
乗。地球陸地の立体地図作成のデータ取得に成功。同年10
月日本科学未来館初代館長に就任。最先端科学技術を社会に
伝える場作り、および将来日本の科学技術を担う人材育成に
取り組んでいる。またJAXA宇宙飛行士として、さらなる宇宙
飛行へ向けての訓練も行なっている。
近著:『宇宙からの贈りもの』(岩波書店)
日本科学未来館のシンボル《ジオ・コスモス》の前で せ ん が、 お そ ら く、
う 考 え る と、 人 間 が い よ う が い ま い が、
し、おそらくなるだろうと思います。そ
うにならないという保障はまったくない
があるのであって、数億年後、火星のよ
絶妙なバランスが保たれているから生命
もちろん、いま火星に生命の兆候はあ
りません。地球にはまだ水と空気があり、
展が果たした役割は大変大きかったとい
でしょう。その意味では、科学技術の発
で、これを幸せだと表現することは可能
いう本能が、こうした結果を導いたわけ
平均寿命も伸びました。種を保存すると
の 病 原 体 に も 打 ち 克 つ 方 法 を 手 に 入 れ、
ことができるようになり、また細菌など
克服し、冬を暖かく、夏を涼しく過ごす
結果、他の種の生存が脅かされ、ついに
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火星ができたころ
は、 地 球 と 同 じ よ う
に海があったでしょ
う し、 生 命 が い た と
しても不思議ではあ
生 命 が あ ろ う が な か ろ う が、 あ る い は、
りません。
水や空気があろうがなかろうが、そんな
えます。
手に入れました。それによって、飢えを
ことには関係なく、地球は宇宙に浮かん
で存在しているのだ、ということが実感
ところが、利用するエネルギーが大き
くなりすぎたために、大気や水に対して
地球はだれに守られているわけでもな
い。あるがままに在るのです。地球にと
は、それを糧としている人類そのものに
できたのです。
ってみれば、人間がいようといまいと関
も影響がでてきているというのが現状で
大きな影響を及ぼすようになった。その
係がない。私たちは、環境の議論をする
す。
人間という種の危機に関わる
環境問題の本質は
決の糸口はつかめません。
まず人間の生存の原点に立ち返らなけ
れば、問題の本質は見えてこないし、解
とき、まず、そのことを理解しておく必
要があるのではないか、と考えています。
環境問題とは何か
環境問題とは何か
では、環境問題の本質は何かというと、
つまるところ、人間という種の危機とい
う言葉に置き換えられるのではないでし
ょうか。人間は有史以来、産業を発展さ
せ、ばく大なエネルギーを利用する術を
宇宙から見た今日の地球(提供 :SSEC / NASA)
日本科学未来館のシンボルである《ジオ・コ
スモス》は直径 6.5m の球体ディスプレイ。
ここに映し出されているのは、宇宙からの視
点でのリアルタイムな地球の様子
全世界天気予報(提供 :SSEC)
毎朝9時に当日を含めた3日間の天気予報が
表示される。高圧の領域を示す青い等圧線や
低圧の領域を示す赤い等圧線、天候などの移
り変わりを世界規模で見ることができる
地球と、人と、科学と
Cover Feature
日本科学未来館に展示されている、宇宙ステ
ーションの居住モジュール実物大模型の中で
生命のバランスが崩れている
生命のバランスが崩れている
環境問題は、国家間、企業間、個人の
利害を無視して考えることは難しくなっ
ています。
現象として、地球の気温の変化を見れ
ば、過去 万年を見るだけで、氷河期が
あり、また今よりずっと暖かい時期もあ
りました。
い る と い え る の か ど う か、ま だ 十 分 な 検
れの中で、本当に地球の気温が上昇して
ていいでしょう。それが、生命のバラン
加が、環境に影響を及ぼしているといっ
とはいえ二酸化炭素によって生物層が
変化したのは事実です。二酸化炭素の増
もうひとつ、生物に対する影響という
ことでは、われわれが作り出している化
(提供 (
: 独)海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター)
世界の化学天気予報システム
地球上の大気汚染予報が表示される。オレン
ジの部分は光化学スモッグの原因となる光化
学オキシダントの存在を示す
しています。また、南極の氷などに含ま
れている過去の空気を調べるといったこ
とから二酸化炭素が増えているというの
も事実だということがわかってきまし
た。
でも二酸化炭素の増加が本当に人間の
所作によって起きているのか、人間によ
って温暖化が進んでいると結論づけてよ
いかどうかは、さらに客観的、具体的な
証がされているとは言い難いのではない
スに影響を及ぼしているということも研
検証が必要でしょう。
で し ょ う か。た し か に、過 去 1 0 0 年 間
究されてきています。
近年、地球温暖化という言葉が叫ばれ
ていますが、地球の歴史という大きな流
の気温の変化をまとめてみると、上昇は
学物質の存在も非常に大きいものがあり
ます。
自然界でも常に化学反応は起きてお
り、新しい物質が生まれることはありま
す。しかし、人間が作りだしている分子
は、それに比較して、圧倒的に多いので
す。
環境ホルモンといわれるように、そう
した新たに生まれた化学物質が、知らな
いうちに海に溶け込み、ほかの生命のな
かに蓄積され、まわりまわって、人間の
生命活動に影響を及ぼすことが、少しず
つ 解 明 さ れ て き ま し た。 こ の ま ま で は、
近い将来、非常に大きな脅威となるのは
間違いないでしょう。
生命が生きられるバランスは、地球全
11
4
10
体のバランスに依存していることを忘れ
ること。それが必要とされる時期であり、
理解できる時代になってきたのです。
環境を守るための武器
環境を守るための武器
科学技術の発展とそれに続く産業の発
展は、たしかに地球の環境を変化させて
きました。しかし、同時に環境破壊を防
ぐうえで大きな力となるのも科学技術で
す。
事実を正しく検証する。それは多くの
科学技術の進歩によって成されてきてい
まれた発明もそうですが、オリジナルの
ます。ノーベル賞を受賞した島津製作所
このことの意味をよく考えなければい
けないと思います。
しています。
発明が世界の製品となり、発展し、貢献
の田中耕一さんの質量分析の開発から生
地球全体のグローバルな変化が、個人
に届き、そして自分自身の発信が、世界
を動かすこともできる。そういう時代に
置を使って、さまざまな実験をしてきま
私自身、学生時代から、島津製作所の
ガスクロマトグラフ、赤外分光分析装置、
人間の存在が地球の環境に影響を及ぼ
すようになってきたので、そのかわりに、
した。あのころ一部屋を埋め尽くすほど
なってきているのです。
地球の生物である人間、つまり個人個人
大きな装置も、いまでは机の上に乗るほ
一 人 ひ と り が 事 実 を 正 し く 理 解 し て、
一面的ではなく、すべての見方を手に入
に活用していってほしいものです。
意識の持ち方が重要ですので、ぜひ有効
の存在は不可欠です。装置を使う人間の
の実情を知るために、こうした分析装置
上がっています。温暖化や環境ホルモン
どまで小さくなり、しかも格段に精度が
質量分析装置、天びんなどの分析計測装
が環境を制御するメカニズムが必要にな
ってきたのだと思います。
大事なのは、人間一人ひとりが地球環
境の一部であるということを理解するこ
とではないでしょうか。
私たちは、決して一人では生きられな
いし、人間だけ他の種から切り離して生
かも一つの生命のように絶妙なバランス
れる必要があるのではないでしょうか。
き延びることはできない。地球が、あた
の上に成り立っていることに、自分自身
ちょうど、地球を外から見るように。
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てはなりません。
個人の力が流れを変える
個人の力が流れを変える
そうした脅威に対処するには、国や企
業の役割以上に、私は、これからは個人
の力がおおいに大切になってくると考え
ています。
人類の歴史を眺めたとき、今一番急速
な変化が起きているのは、情報の流れで
す。それも、世界と個人を結ぶ情報の流
れに激しい変化が起きています。一人ひ
とりが携帯電話を持ち、どこにいても世
界 の 情 報 を 入 手 す る こ と が 可 能 で す。
反対に自分自身からの発信も、インター
ネットの普及によって非常に簡単になっ
ています。
環境を守るために
科学技術を上手に使う
人間の意識が重要
1階の地球環境ブースでは、太陽電池で得られた電力を使い燃料電池
を働かせる実験モデルも展示。実はこのモデル、
島津理化器械(株)製。
も関与しているのだということを理解す
田中耕一フェローのノーベル賞受賞を紹介する
パネル展示も行われている
東京都江東区青海 2-41
☎03-3570-9151
http://www.miraikan.jst.go.jp
地球と、人と、科学と
Cover Feature
MeSci( ミーサイ)
日本科学未来館
最先端の科学技術に触れ、楽しむことができる
参加体験型の施設。科学を文化のひとつとして
身近に感じることをコンセプトに、展示、セミ
ナー、ライブラリーなどの運営を行っている。
同時に科学技術に関する情報発信拠点として、
国内外へのネットワークを広げている。
発売当時の日本は、第二次大戦での壊滅的
打撃から急激に復興し、国民総生産で世界第
位に踊り出た一方で、イタイイタイ病、水
1964年に発表されたレイチェル・カー
ソン著﹃沈黙の春﹄は、合成殺虫剤の招く危
そのため、カーソンの問題提起は、大きな反
し、高度経済成長のひずみが生じ始めていた。
それから 年が経過し、問題の合成化学物
質︵DDT、PCB、ダイオキシン︶が、性
うな先例が何一つないからなのです﹂
もわかりません。それは、道しるべとなるよ
どうなるかは、ふたを開けてみるまでは誰に
付けられています。∼中略∼ 実験の結果が
その影響もますます増幅されていくことが裏
質は、動物実験を通じてきわめて有害であり、
どだれ一人としていません。実際この化学物
恐るべき化学物質から逃げおおせている人な
為は人類にとって前代未聞の実験です。この
﹁残留性化学物質を環境中にまき散らす行
カーソンは晩年に行ったある講演でこう述
べている。
俣病、四日市ぜんそくなどの公害病が問題化
険性を雄弁に警告した環境問題の古典ともい
響を呼んだ。
まだ
だま
だだ
デー
がタ
足ら
な足
い りない
ま
ま
デター
が
分析技術が地球を救う
とどまるところを知らず拡大しつづける人間の活動
は、今や、人類のみならず、すべての生物、そしてその生
存基盤である地球そのものに多大な影響を及ぼしてい
る。このことに気付きはじめた人類は、ようやく対策
を考えはじめたが、
まだ根本的な解決策を見つけるには、
遠い道のりが必要だ。地球環境を守っていくため、今
える書だ。そこには、残留性化学物質が自然
東京大学理学部卒業、大学院工学研究科修了後、1972
年東京都衛生研究所に入所し、環境衛生や環境モニタリ
ングの基盤構築に尽力。1978 年国立公害研究所(現国
立環境研究所)に移り、主に水質汚染、土壌汚染などの
環境モニタリングの手法を確立。1995 年より、現職。
界を汚染し、さらには人体を汚染していく様
森田 昌敏(工学博士)
我々がなすべきことは何か、国立環境研究所 統括研
究官の森田昌敏氏に聞いた。
2
発達障害や行動、生殖異常を引き起こしてい
るのではないかと疑われるデータが次々と発
表され、社会的関心も高まってきた。
国立環境研究所でも、いわゆる環境ホルモ
ンについては積極的に研究を重ねてきている。
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6
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子が克明に描き出されていた。
国立環境研究所 統括研究官
環境問題解決のカギは人の育成
時間はかかるのですが
﹁有機スズによって野生生物の生殖活動が
環
境対策の基本は
環境対策の基本は﹁モニタリング﹂
﹁モニタリング﹂
7
11
抑えられているのは間違いありません。また
人間においても近年妊娠の効率が落ちてきて
いるのは事実です。精子の形状がおかしくな
ったり、精液中に含まれる精子の量も減って
いる。性器の奇形が増えていることもわかっ
ています﹂
と、統括研究官の森田昌敏氏は言う。
﹁しかし、まだすべてが解明されたわけで
はありません。有害であることはわかった。
だが、どの化学物質がどう作用して、生殖異
常をもたらすのか、それを解明するには、ま
だまだデータが足りない﹂
環境
境問
題題
の難
さしさ
環
問
のし難
森 田 氏 は、 レ イ チェル・カ ー ソ ン の﹁ 沈 黙
の春﹂発行の 年後︵1972︶に、大学院
﹁確信的な証拠がない以上、規制をかける
合、経済活動のコストを上昇させる。
現在は統括研究官として、同研究所の多くの
必要はないという意見と、疑わしいのであれ
見が環境施策を検討する過程では必ず出され
グだと、森田氏は力説する。
ば、すべて予防的に排除するべきだという意
環境ホルモンの調査研究における国内の第
一人者であるが、その氏をしても、環境ホル
ます。そのどちらにも一理あるわけで、最終
﹁モニタリングは、環境問題解決の基本で
このジレンマを解消するには、どうすれば
よいか。それには、何よりもまずモニタリン
モンの問題に結論を呼び込むのは難しいとい
的には行政に判断をゆだねる他はないという
環境保護、環境改善への動きは、多くの場
うのだ。
あり、そして何よりも重要な手順です。その
イラスト提供/国立環境研究所
ことも多い﹂
研究に目を配っている。
その後、国立公害研究所︵現国立環境研究
所︶に移り、さまざまなプロジェクトに参画。
方法の基盤を形作っていった。
系を次々と確立。今日ある環境モニタリング
調査をはじめ、まだぜい弱だった検査方法体
後、化学物質による水道水や食品汚染の実態
を修了し東京都衛生研究所に入所した。入所
8
ためにも優れた分析装置の存在を欠くことは
できません﹂
例を一つ挙げてみよう。1993年、水質
の汚染に関する環境基準が作られた。これは、
兆分の1グ
あるが、温暖化とならび、長い目で慎重かつ
人材育成がカギ
人材育成がカギ
﹁もっとも重要なのは、人の育成ではない
着実に監視と対策を講じていくべきものだろ
う。
でしょうか﹂
70年代に相次いで高精度な分析装置が登場
が進められている。この基準の成立は、19
在、この基準に基づいて、土壌の維持・改善
ラム単位で規定する極めて厳密なもので、現
が高い。とはいえ、具体的にどれをやめなさ
けば、将来環境に大きな影響を及ぼす可能性
を続けています。この調子で成長を続けてい
たとえば現在、中国が猛烈な勢いで経済成長
﹁それは、アジアにおける環境破壊です。
﹁私たちがそれぞれの国に出向いて環境早
ル作成などを進めている。
進や環境政策オプションの検討のためのモデ
学などと協力しつつ、環境モニタリングの推
国立環境研究所では、開発途上国の環境問
題の解決への道筋を探るため、国際機関や大
と森田氏は言う。
したことを抜きにして語ることはできない。
いとはいえない。水がこれ以上汚れたら飲め
期警報システムを作って、警鐘をならすこと
その一方で、現在はっきりと目に見えてい
る脅威もある、と森田氏は顔を曇らせる。
分析技術が飛躍的に向上したことで、信頼性
なくなるというのはわかっていても、早く豊
水中に残留する化学物質の量を
の高い分析データが蓄積された、それをもと
はできます。しかし、開発途上国に環境を守
ことは難しいことなのです。仮に自国の環境
かになりたいという願望を止めることは難し
監視を自分たちの手で行ってくださいと、分
に、リスク評価がなされ、規制がかけられた。
限られた国土のなかで、国民に便利で安定
した生活を保障しようとすれば、どんな国で
析装置の提供をしても、正しい分析手法を用
るためのデータを提供して、その国の人びと
も工業化を選択することになる。欧米、日本
いて正確に計測しなければ、信頼性の高いデ
が、危機的な状況と理解しても、行動に移す
もそうだったように、中国がそれを望んだと
ーターは得られません。高度なモニタリング
国連大学プロジェクトを支援
技術を習得するには、時間と経験が必要です﹂
すら数十年という時間がかかった。いま中国
国連大学プロジェクトを支援
程が奇跡と呼ばれたこともあったが、それで
しかし、事態は決して楽観できる状況では
ない。日本の戦後復興から高度経済成長の過
しても止める手段はない。
い﹂
環境ホルモンの検出には、さらに高感度な
分析装置が必要だが、現在も分析データの蓄
積が進んでおり、近い将来、こうしたデータ
が基準作りに役立つものと期待される。
いまそこにある危機
いまそこにある危機
環境ホルモンは、現状では、ある意味﹁見
えない脅威﹂である。非常に大きな脅威では
は、ものの数年でそれをやってしまおうとし
ている。
そこで、各国技術者が分析技術を習得でき
るプロジェクトができた。島津製作所が19
96年から支援している国連大学のプロジェ
﹁今後、中国は極めて深刻な状況を迎える
ことになるといわざるを得ないでしょう﹂
国立環境研究所もプロジェクトの開始当初か
ク ト﹁ 東ア ジ ア 地 域 の 環 境 監 視 と 分 析 ﹂ だ。
そして次は、インドネシアやインドで同じ
ことが起きると予想されている。インドネシ
ら協力している、このプロジェクトの成果は、
千万人、インド
億人がこの奔流に
億
東アジア地域の環境データベースの構築はも
ア
飲み込まれたとき、いったいどうすれば止め
10
ちろんのこと、最も注目すべきは人の育成と
5
ることができるのだろうか。
2
11
8
10
環境問題を解決するために
装置メーカーの果たす役割は非常に大きい
した社内に持つ基盤技術を横断的に結びつけ
器事業でもばく大な技術の蓄積がある。こう
とだ。
て新しい分析の仕組みを作りだしてくれるこ
研究者の人的ネットワークつくりができたこ
﹁プロジェクトに参加している東アジア地
資源などの深刻な問題が一気に押し寄せてく
とを期待しています﹂
これがなければ何もはじまらない。ですから、
る。果たして人類はこうした地球的規模の諸
21
域の研究者の分析技術は、発足当初に比べこ
まずは高感度で正確な測定ができる分析装置
問題を乗り越えることができるのだろうか。
こ数年で飛躍的に進歩しました。国内の研究
習得すれば、自分たちでモニタリングと監視
は必要不可欠です﹂
いずれにしろ、分析装置がその鍵のひとつを
環境の世紀と呼ばれる 世紀。今世紀の半
ばには、環境問題に加えて、人口、食料、水、
を続けていくことができます。彼らの活躍を
﹁さらにいえば、もっと小さくて扱いやす
握っていることは、間違いない。
者と比べても遜色ないでしょう。分析技術を
心から願っています﹂
いものが出てきてほしいと私は熱望していま
そうなれば、そうした研究者たちがオピニ
オンリーダーとなり、政策に影響を及ぼす可
島津製作所では、1996 年から
国連大学の環境管理プロジェクト
「東アジア地域の環境監視と分析」
の支援を続けている。
同プロジェクトでは、日本、中
国、シンガポール、韓国、タイ、
インドネシア、マレーシア、ベト
ナム、フィリピンの 9 カ国の主要
研究機関が参加し、環境汚染物質
の分析法の標準化とそれによる環
境調査、研究のための環境モニタリングを実施。島津は、資金援助の他に、参
加国に対するガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)など分析機器の貸与、
および分析技術・ノウハウの提供、国際シンポジウム・トレーニングワークシ
ョップの実施に協力している。
島津製作所が支援している
現在、このプロジェクトは第 3
「東アジア地域の環境監視と分析」
期を迎えており、東アジアの沿岸
プロジェクト
水域の河川や淡水圏での残留性有
第一期(1996年∼1998年)
機汚染物質(POPs)の汚染状況
技術移転と環境管理
を調査・モニタリングし、それら
第ニ期(1999年∼2001年)
のデータをもとに環境汚染の抑制
河川・沿岸水域における環境ホルモン
と防止のための早期警報システム
第三期(2002年∼2004年)
の開発を目標として活動。着実に
東アジア水圏におけるPOPs(残留性有機汚染物)
成果が集まってきている。
す。実際のフィールド
国連大ハンス・ファン・ヒンケル
学長から感謝盾を受ける矢嶋会長
国連大学の環境プログラムに生きる
島津の分析機器
能性も出てくる。
と同時にすぐ分析でき
でサンプルを採取する
装置メーカーにかかる期待
て、結果を確認できる
ような装置。そういう
装置メーカーにかかる期待
ものがあれば、サンプ
リングの効率はぐっと
山積みの環境問題を解決していく上で、装
置メーカーの果たす役割は非常に大きい、と
森田氏は言う。
はカメラ付き携帯電話
ならぬ﹃ガスクロマト
グ ラ フ ィ 付 携 帯 電 話﹄
が登場してくれたら、
本当にうれしいんです
﹁島津製作所は単な
が︵笑︶
﹂
る分析機器メーカーで
はない。分離分析や分
光分析技術、センサー
技術はもとより、バイ
オ分野に対する取り組
みも活発だし、航空機
向上します。個人的に
公害裁判の判決が出され、国連人間環境会議が
開催されるなど、環境についての関心が大きく高
まった、1974 年「国立公害研究所」として設立。
理学、工学、農学、医学、薬学、水産学、経済学
等、あらゆる分野の研究者が一堂に会し、環境問
題に対して総合的に取り組む体制を作っている。
1990 年改組にともない「国立環境研究所」と改称。
地球温暖化問題、循環型社会の構築、化学物質対
策など、極めて多岐にわたり複雑なテーマに対し
て、データの蓄積・分析、対策の提案などを行い、
日本における環境施策の拠り所として大きな成果
を上げている。
﹁環境問題解決の基本はモニタリングです。
独立行政法人国立環境研究所
現在、同プロジェクトでは、島津のガスクロマトグラフ質量分析計装置(GCMS-QP2010)
8 台が稼働し、データの蓄積に活用されている
11
9
環境対策に欠かせない島津分析計測機器
環境問題の対策には、高精度の分析計測技術が欠かせません。正確な分析・計測と現状把
握が、環境対策の第一歩です。島津は分析計測機器のトップメーカーとして、現代社会が
抱える環境問題解決をサポートすべく取組んでいます。
大気に含まれるアルデヒド類や揮発性有
機化合物(VOC)の分析をはじめ、大
気粉塵中の無機成分やフロンガスな
ど大気中の問題物質の分析計測、高
分解能二酸化炭素測定装置とCO2固
定化システムの開発、排気ガスに含
まれる有害物質等の測定分析、室内
環境におけるホルムアルデヒドや臭
気、トリレンジイソシネアート(TDI)
の分析等広く対応しています。
大気
水道法 水質基準改正への対応
不溶解性有機物を含
めて、高感度測定 全有機体炭素計 TOC-V シリーズ
フェノール類の分析
ガスクロマトグラフ
質量分析計 GCMS-QP2010 バージ&トラップ分析
システム
第五次水質総量規制への対応
最大の実績をもつ
オンライン全窒素・全りん計
4110 シリーズ
建築物衛生法(ビル管法)改正への対応
大気中浮遊粉塵対策
シアン・塩化シアン・
臭素酸の分析に
高速液体クロマトグラフ
Prominence 応用システム
シアン・臭素酸併用システム
▼
ナノ粒子分級、観察システム
■ 理研ベンチャー:ワイコフ科学 微分型電気移動速度測定装置 DMA
■ 島津
▼
浮遊粒子サンプラ SSPM-100
■ 島津
水道水に含まれる、陰イオンやシアン
化合物、臭素酸イオン、アクリルア
ミド、カビ臭、その無機成分など、
微量な有害物質をも計測分析しま
す。また水道水の源となる河川
水や湖沼水に含まれる様々な物
質や、排水の計測分析、モニタ
ーシステムなど、上水から下水ま
で水環境におけるあらゆる分析計
測に対応しています。
水
走査型プローブ顕微鏡 SPM-9500J3
産業廃棄物規制と WEEE/RoHS & ELV への対応
C d、P b、H g、C r
などの微量元素分析
エネルギー分散型
蛍光 X 線分析装置
EDX-HS シリーズ
シーケンシャル型
高周波プラズマ発光分
析装置 ICPS-7000
RDF 製造、利用施設への規制対応
燃焼熱の計算に
自動ボンベ熱量計
CA-4PJ
CO-CH4 などの
連続濃度監視
固定発生源監視用
赤外線式ガス測定装置
NSA-3080
土壌・地下水汚染規制への対応
土壌・地下水・産業廃棄物
中の金属を高感度分析
原子吸光分光光度計 AA-6800 シリーズ
さらに詳しい情報はHP
10
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燃料規制への対応
微量硫黄分析システム
ANTEK 7090 つき
GC-2010
土壌
廃棄物
土壌中に残留している有機化合物(VOC)
や金属元素の分析をはじめ、廃棄物に含
まれる有害物質の計測分析、ダイオキシ
ン類に代表される POPs 対策、焼却灰
やその溶出液に含まれる無機成分の分
析、農薬分析、不撹乱土壌のコアサン
プル分析、有機リン系農薬の分析、ばい
じん自動分析システムの構築、廃プラス
チック材の選別などに対応しています。
http://www.shimadzu.co.jp/products/earth/をご覧下さい。
SHIMADZU GROUP
(株)島津テクノリサーチ
●代表者 代表取締役社長 石田泰夫
●本社 〒604-8436 京都市中京区西ノ京下合町1番地
●TEL/075-811-3181 ●HP http://www.shimadzu-techno.co.jp/
分析機器と分析技術を活かした受託事業を展開
正確なデータを迅速にお届けする技術集団としてその高度な技術力と信頼性は、分析・測定事業
の分野で高く評価されている。
最先端機器を揃えた分析センター
(株)島津テクノリサーチは、設立されたのが32年
業者、作業環
前。環境行政に伴う様々な法改正が行われた1972
境 測 定 機 関、
年当時に独立分社化され、
「分析・測定・計測・評価」
第1種嗅覚測
の受託業務を柱として、環境分析・測定、材料試験
定認定事業
分析、医薬品関連試験の受託や環境コンサルティン
所、ISO/ IEC
グなどを展開しており、専門性の強い企業として高
17025、ISO
い評価を受けている。
9001を取
現在、もっとも大きなウェイトを占めている事業
得。試験分析
は、ダイオキシン類測定やPOPs(残留性有機汚染
関連でも ISO / IEC 17025(Cd、DXN、PCB)
物質)
・環境ホルモン類などの超微量環境汚染物質
と率先して取得している。
に関する分析受託業務だ。特にダイオキシン類に対
一方で現在、同社が力を注いでいるのが、医薬品
する取り組みは業界で最も早く、ダイオキシン類関
関連の試験受託業務だ。製薬会社等と提携し、創薬
連の受注検体数は年間1万2000検体に上る。これ
事業の一環としてその最先端技術を生かしている。
は国内トップシェアで、日本全体の総需要検体数が
こちらも毒性試験には欠かせないGLP適合A評価を
10万∼15万検体と言われているので、1割前後を
獲得。さらに米国 FDAにおける c− GMP適合(※1)
占めることになる。 を受けるなど、注目を集めている。
この他、水質や大気・土壌・農薬・におい・騒音
さらに新規事業としては、土壌汚染調査・残留農
振動などの一般環境分析、また、製品や材料に含ま
薬の一斉分析(※2)
・有機ヒ素化合物分析・自動車室
れる物質を測定する一般試験分析、環境コンサルテ
内VOC測定・新水道法対応などに期待が寄せられて
ィング業務など、手掛ける事業は多岐に渡る。特筆
いる。
すべきは2002年5月以後、臭素系難燃剤のPBB・
「当社へのご用命は、『機器を保有できない』
『専門
PBDEなどWEEE&RoHS関連の分析受託が増加し
家に任せたい』
『すぐに分析する必要がある』などの
ていることである。商品や部品・材料などに関する
理由で分析・測定をご依頼されるケースと、
『品質
試験分析依頼の多くは、環境問題とその対策に密接
を証明する』
『精度管理された正確な測定値が要求
なかかわりを持っており、島津テクノリサーチが得
される』
『法令により義務付けられている』といっ
意とするところである。どんな難しい依頼にも応え
た《第三者証明》を必要とする委託分析のニーズが
られるプロ技術集団の誇りを持って、信頼される結
あります。クライアントに正確なデータを迅速にお
果の提供を常としている。
届けし、環境マネジメントの基礎を支えていくこと
その裏付けとなるのが各種ライセンスの取得。環
が当社の使命です。」(廣
則行 事業戦略室 室長)
境関連としては計量証明事業登録、特定計量証明事
廣 則行 事業戦略室室長
※1
FDAは米国の厚生労働省にあたる機関で、米国内で販売する医薬品の承認を行っている。その検査データ承認の
ための測定基準における信頼性の審査認定がFDA c−GMP適合。国内で医薬品の受託試験機関としては唯一、島
津テクノリサーチがFDAの査察を受け適合を獲得している。
※2
我が国における食品中の農薬の規制は、「残留基準値以上での使用を禁止する農薬」を指定するといったネガティ
ブ法であった。しかし、2003年5月厚生労働省より「残留基準値以下であれば使用できる農薬」を指定するポジテ
ィブ法の導入が発表された。今後数年のうちに対象となる約700種類の農薬が決定され、その残留基準値も定め
られる。現在、残留農薬を一斉に検出できる技術が注目を浴びている。
11 11
SHIMADZU GROUP
●代表者 代表取締役社長 前田憲一
●本社 〒101-0047 東京都千代田区内神田1-15-10 福島第1ビル2F
●TEL/03-3219-0220 ●HP http://www.shimadzu-inter.co.jp/
(株)島津インターナショナル
海外進出する企業をサポートする
“技術商社”
(株)島津インターナショナルの「ラボ・パッケージ」の評価が高まっている。機器の選定からアフタ
ーケアまで、海外での最新のラボ作りを一挙に引き受ける同社の事業を紹介する。
海外に製造拠点を求める企業が増え続けている。
パッケージ」として事業を拡大していった。
その流れは大企業のみならず、中小企業にも波及し
「最近では大企業だけでなく中堅企業も続々と中国
ており、高度成長の続く中国を中心に実にバラエテ
に進出するようになり、実に様々な業種から引き合
ィ豊かな企業が進出している。
いが来るようになりました」
(前田憲一代表取締役社長)
実際、取り引き先の業種は、従来からのプラント
(株)島津インターナショナルでは、そんな企業の海
メーカーはもちろん、食品、ファインケミカル、情
外進出をサポートする「ラボ・パッケージ」を提供し、
報産業、製薬、自動車など幅広い。この中には海外
話題を集めている。これは海外工場に品質管理用実
拠点を持つことに慣れていない企業も少なくないが、
験室等を設ける際、ラボの設計や必要機器の選定、
ラボ・パッケージを利用することにより複雑な問題
調達、法的手続き、輸送、据付などを一挙に引き受
もクリアし、スピーディーに進出できたと高く評価
けるというものだ。
されている。
通常、海外に実験室を設けるには、たいへんな手
また、特に中国に力を入れており、2003年10月
間がかかる。機器を導入するだけでも何十にも及ぶ
から島津製作所上海事務所に駐在員2名を派遣し、
メーカーとのやり取りが必要で、日本と異なる海外
日本企業の進出前後の支援を強化している。
の法的な規格基準をそれぞれ一つひとつ確認手配す
「私たちは研究施設立ち上げに関わる“技術商社”
る必要もある。
として、島津製品を核にしながら、お客様のニーズ
だが、このラボ・パッケージを利用すれば、複雑な
に合う最適な製品をご提案しています。さらに機器
やり取りはすべて島津インターナショナルが手配。
を設置したら終わりではなく、現地オペレーターの
国ごとにの規格基準や法体系などの情報もきっちり
養成や、アフターケアなど企業の力を伸ばすお手伝
と把握しており、豊富な経験と実績によるノウハウ
いも重要だと考え。力を入れています」(前田社長)
を持っているため、導入までの時間と手間を大幅に
面白いことに、ラボ・パッケージの売り上げを見
短縮できる。 ると、島津製作所グループの製品は2割で、残り8割
さらに、現地でオペレーターのトレーニングを行
は他社のもの。お客様のニーズに幅広く対応し、必
ったり、島津製作所グループのネットワークを通し
要な商品を一括で納品している。
て故障時も迅速に対応できるなど、アフターサービ
ラボ関連以外でも、政府開発援助(ODA)事業にも
スも充実している。
力を注いでおり、イラク・アフガニスタンの復興支
この事業は、1960 年代に石油精製や電力開発な
援などでも大きな活躍を見せている。さらに、島津
どに関わるプラントメーカー向けのパッケージ事業
グループの海外製造拠点からの半製品の輸入及び部
として島津製作所内でスタートした。平成 9 年に島
品、コンポーネントの輸出なども行っている。
津インターナショナルが設立され、同社が「ラボ・
まさに国境を越えた活躍を見せる島津インターナ
▼
ラボ・パッケージの
引き渡し
▼
詳細仕様書などの
ドキュメント作成
▼
輸出業務全般の支援
▼
据付・指導技術員派遣
▼
必要機器・
機材の調達︵国内外︶
▼
予備品・
消耗品リストアップ
▼
レイアウト
プランニング
▼
分析手法のコンサルト
機器選定・メーカ検索
11
規格・分析メソッド
解読
ラボパッケージの概念図
前田憲一 代表取締役社長
12
▼
ショナル。拡大す
る国際社会の中
で、同社の役割は
さらに重要になっ
ていくだろう。
世界最大級のPETセンター
医療連携において「お待たせしないPET診断」を実現
7 月1日に神奈川県新横浜にオープンした『医療法人社団ゆうあい会ゆうあいクリニック』は、
PET
(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影装置)12台を含む最先端機器
を揃えた大規模な画像診断施設で、医療関係者を始め多くの人の注目を集めている。そこで同
クリニックが担うべき役割や、PET 診断の可能性について、片山敦理事長に語っていただいた。
地域医療連携を念頭においた大規模な設
地域医療連携を
備
念頭においた大規模な設備
PET装置をはじめ最新医療機器が
備えられていると伺いましたが?
台備わっています。PET
台備えたクリニックは、日本だけで
診断装置が
す。
なく世界的に見ても最大規模だと思いま
を
3
台、超音波
ゆうあいクリニックに設置されている島津製作所製PET 『Eminence-G』
ては、すぐに検査が必要な場合でも、待
台 と い う 数 を 揃 え、
﹁お待
っていただく事態が起こります。そこで、
思い切って
たせしないPETセンター﹂を実現する
ことにしたわけです。
で、ならば地域の医療機関が共同で利用
ETの必要性を強く感じていましたの
話がでまして、私も内科医の経験からP
ト ロ ン の 施 設 ま で は 持 て な い。
﹂という
ま り で、
﹁ P E T は 欲 し い が、 サ イ ク ロ
片山
数年前になりますが、神奈川県内
の大学病院放射線科の先生方の私的な集
勤めの方々の利用を考え、土日も検査検
無休診療の体制を可能にしました。会社
ん。そこでサイクロトロンを 台導入し、
コース︵FDG︶の製造が追いつきませ
癌の検査薬であるフルオロデオキシグル
は稼動できず、PETの台数を揃えても
テナンスなどを考えると、年間
%前後
できる﹃利用しやすく役に立つ、地域に
診を行います。
20
は医療機関からの依頼に基づく画像診断
分に考えられるわけです。当クリニック
要請があった患者さんは、すみやかに診
を図っています。各医療機関の先生から
片山
現時点で大学病院を含め、神奈川
県内で100箇所以上の医療機関と連携
日後にはその結果をお届
き る 環 境 が 必 要 で す。 ほ と ん ど が、
﹁数
では、検査が必要となればすぐに使用で
ズを満たすことはできません。臨床の場
そのためには1台や 台のPET装置
を備えただけでは、提携医療機関のニー
る と い う よ う な ケ ー ス も 減 る は ず で す。
開したけれど転移が多くてそのまま閉じ
いのかを正確に推測できますし、いざ切
術前にどの部位をどの程度切除すればよ
実際、PET診断を行うことにより、手
断を行い、約
日先に診断を行いたい﹂というような切
例えば胃癌の摘出手術を行う際に、周囲
け で き る シ ス テ ム を 構 築 し て お り ま す。
羽詰まったスケジュールでオーダーされ
行ないます。
と、個人の方を対象にした検診の両方を
ンターはまだありませんから、需要は充
神奈川県は850万人以上の人口を抱 現在、医療連携を行う予定の医療機
えながら、本格的なクリニカルPETセ
関はどれほどでしょうか?
動を開始しました。
根ざしたクリニック﹄を設立しようと活
思います。サイクロトロン1台ではメン
2
2
のリンパ節をどこまで切除するか、でき
2
を稼動させるのに欠かせない医療用サイ
台、MRが
3
2
11 13
※1 PET(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影装置)診断においては、半減期の短い放射性同位元素にブドウ糖を標識し
た18F-FDG(フッ素・18−フルオロデオキシグルコース)という薬剤を体内に入れ、FDGの体内動向を3次元的に検出する。そのため2時間
以下という短半減期の放射性同位元素をつくり出すための装置『サイクロトロン』を同じ施設内に備えることが不可欠となっている。
12
12
片山
PET装置は 台︵開設当初は
大規模クリニック設立のコンセプト 世界でもサイクロトロンを 台揃えて
いるのは、他に例がないのではないかと
台 稼 動 。 順 次 増 設 予 定 ︶、そ し て P E T
はどのようなものですか?
6
てきます。しかし、導入装置数が少なく
2
12
クロトロン ︵※1︶を 台備えています。そ
の他、CTが
2
ところで、 台のPET装置の半数
に、島津製品を導入された理由について
判断が可能になるわけです。患者さんに
す。しかしPETを使った全身スクリー
診、大腸癌検診、乳癌検診、子宮癌検診で
片山
島津製作所は国内唯一のP E T装
置メーカーで、P E T技術にも長い歴史
お聞かせ下さい。
癌の検診に関していうと、日本で一般
れば最小限の切除で済ませたいという時
に行われてきたのが、肺癌検診、胃癌検
対して適切な治療を行うためには欠かせ
ニングを行えば、一般の癌検診に比べ約
にPET診断を行うことで、より的確な
ない装置であり、同時に患者さんの体へ
仮に転移しても、それを早い段階で察知
また術後の経過、特に癌の転移・再発
の 観 察 に は P E T診 断 は 欠 か せ ま せ ん。
ことができるので、それだけ早期発見が
センチ前後のより小さな病巣を見つける
されていた癌も発見できること、また1
ます。従来の部分ごとの検診では見のが
速でしっかりしているということも大き
頼があります。それにサポート体制が迅
てについて周知しているという安心と信
T検診を行って、癌を早期に発見し治療
考え方次第だと思います。定期的にPE
という費用がかかります。しかしこれも
T検査、MR検査、生化学検査、超音波
されるかたには、PET検査に加えてC
いています。ですから、癌検診をご希望
せんし、肝臓に関してもMR等の方が向
どの癌に関しては見つけることができま
れからは重要だと思いますね。
とはもちろんですが、こういった面もこ
圧迫感がありません。基本性能が高いこ
ら評判がいいですよ。丸みを帯びていて
更にはデザインがかわいいと患者さんか
んにやさしいシステムになっています。
あり、被ばく量や検査時間の面で患者さ
導入した島津製作所の Eminence-G
は全
身用P E Tとしては世界最高の分解能で
いできる会社の製品を選びました。今回
ポートが不可欠ですから、長くお付き合
く、バージョンアップも含め、日々のサ
いですね。機器を導入して終わりではな
して処置できます。PET診断が一般化
できるというのも、大きな特徴でしょう。
と期待されています。
保険の適用が可能︶
。PET検診の場合、
を行えれば、治癒率が上がるばかりでな
万8000円∼
一方で個人対象の検診プログラムも
充実していると伺っておりますが?
く、医療費といった面でも少なくて済む
ベーシックコースでも
片山
最近はPET検診の有用性が一般
の方にもだいぶ知られるようになりまし
年々増加する
年々増加する﹃ 検診﹄への期待
﹃PET検診﹄
への期待
た。当センターへの期待も大きく、実は
検査を加えた検診をスタンダードとして
胃 癌 と 子 宮 癌 に 関 し て は 不 十 分 な の で、
可能性があります。それを考えれば生命
で、年に 1回 PET
胃カメラ検査と婦人科検診も行っていた
日のオープンまでに、600件も
月
検診を受けていただ
お勧めしています。ただこれでも早期の
理事長
保険や各種個人医療保険を掛ける感覚
PET
の検診オーダーが入っていたほどです。
敦
だければ、ほとんどの癌は早期発見でき
波検査をセットしたものをスタンダード
TEL 045-540-8211
検診予約専用ダイヤル:03-3222-5201
医療機関からのご予約:03-3222-5203
http://www.shinyokohama.jp/
1
医療法人社団ゆうあい会ゆうあいクリニック片山
けるのではないでし
るはずです。
としています。これにより脳梗塞や脳血
神奈川県横浜市港北区新羽町248
ただし、癌検診に関しては保険が適用
さ れ ま せ ん︵ 医 療 連 携 に よ る 診 断 で は、
することで、治癒の確率がさらに高まる
の負担も軽減することができます。
を持っておられます。部品に至るまで全
12
倍の確率で癌が見つかると言われてい
して万能ではありません。膀胱や腎臓な
別室でモニタリング
ょうか。
PETの他にも
MRIやCTなどを
また脳検診も行っており、こちらもP
ET検査、MR検査、生化学検査、超音
導入していますが?
管異常、動脈瘤、アルツハイマーなどの
発症徴候を検査することができます。
医療法人社団ゆうあい会 ゆうあいクリニック
8
片山
これほど優れ
た PETですが、決
11
14
10
1965年静岡県生まれ。横浜市立大学医学部卒業。民
間総合病院にて内科医として勤務後、世田谷区にて
診療所院長を務める。その後、医療法人ゆうあい会
理事長に就任、現在に至る。2004年7月、横浜市港
北区にゆうあいクリニック開業、院長に就任。日本
内科学会、日本核医学会、日本医学放射線学会会員
7
太陽電池反射防止膜製造用インライン式プラズマCVD装置
戸が必
用インライン式プラズマCVD装置がそれだ。
変換するために
太陽光をロスなく電気に
太陽光をロスなく電気に
変換するために
太陽電池反射防止膜製造用インライン式プラズマ CVD 装置
SLPC-71H4
30
型シリコンとp 型シリコンを組み合わせる
n
割以上を
るかどうかの決め手になる。そのため、変換効率
できるかが、家を建てる施主が太陽電池を購入す
その面積の中でいかに投資に見合う発電量を確保
屋根の上に太陽電池パネルを並べることを考え
たとき、設置できる面積は非常に限られている。
とだった。
では発電効率が他方式に比べてやや劣るというこ
占めるまでになっている。だが問題は、そのまま
熟しているため、現在では国内市場の
的安価で製造することができる。しかも技術が成
に出る、シリコンの端材を有効利用しており比較
だ。半導体の基板となるシリコンウェハを作る際
ルク系多結晶シリコン太陽電池﹂と呼ばれるもの
太陽光発電装置の多くに使われているのは、
﹁バ
素材や製造方法などによって、さまざまな方式
があるが、一般住宅の屋根に取り付けるタイプの
だせるという仕組みだ。
と、光のエネルギーが直接電気に変換され、取り
なる
発生するという性質を持っている。電気特性の異
ると内部の電子にエネルギーが与えられ、電圧が
太陽電池の増産体制が急速に進んでいる。欧州を中心に自然エネルギーの有効
利用への関心が高まるとともに、太陽電池の市場規模は年率 %程度拡大しつ
つある。その中でも特に一般住宅用などの民生品の普及は著しい。その普及に
おけるキーとなった技術が、島津にあった。
SLPC -71H
太陽電池の普及へ道筋を付けた
島津の成膜技術
年に
に超
形ダ
1ム
個分
発分
電量
年
超大大
形ムダ
1の個
のを発電量を
生産
産す
太陽
池電
メー
ーーカー
生
するる
太電陽
池カメ
キ
割以上に達しており、電力の出力
個分に匹敵する量だといえる。
ると、日本有数の超大形ダムである﹃黒四ダム﹄
いる計算だ。これはダムによる水力発電を例にと
0000戸分の電力を太陽電池発電に置き換えて
要とされる電力量はほぼまかなえるので、年間6
ロワットのシステムがあれば、一般住宅
に換算すると、250メガワットを超える。
世界シェアは
太陽電池は日本のメーカーが世界のトップシェ
アを占めている。日本の主要 社による生産量の
3
太陽電池は、パソコンなどと同じ半導体を主要
素材としている。半導体は光のエネルギーを受け
7
1
3
4
その日本製太陽電池の製造工程に、実は島津の
技術が活かされている。太陽電池反射防止膜製造
1
11 15
多くの研究がなされてきた。
の向上は、太陽電池普及の最大のポイントとして、
があるためで、化学的に安定しようとして、発生
て し ま う。 シ リ コ ン の 化 学 組 成 上、
﹁余った手﹂
変換効率を高めるうえでカギとなるのは主に①
光を十分に吸収すること②発電した電気のロスを
特性を不活性化させることができ、発生した電子
が開発した手法を用いることで、このシリコンの
この二つの作用により、バルク系多結晶シリコ
ン太陽電池の発電効率は大きく向上︵約 %↓約
した電子をつかんでしまうのだ。ところが、島津
なくすこと、の二つだ。すなわち、光を太陽電池
だった。
を進め、より短時間でしかも歩留まりを高める装
製品搭載時︶
。その後、島津は独自に改良
太陽電池の表面を拡大してみると、ごつごつと
した黒い結晶粒が並んでいるのが見える。この状
置を開発。それが島津のインライン式プラズマC
15
した研究が進んでいる。
く染める﹂を合言葉に、さらなる性能向上を目指
深みのある青色は、この反射膜の特徴だ。島津
の 太 陽 電 池 開 発 チ ー ム で は、
﹁ 日 本 の 屋 根 を、 青
い。
日の普及を下支えしてきたといっても過言ではな
持つ製品を生み出すことにつながった。それが今
ルの価格でありながら、十分な変換効率を合わせ
にした。その結果、民生用として普及できるレベ
島津の技術は、その二つを一度に行うことを可能
り、製造コストの多くを割く必要があった。だが、
太陽電池を製造するうえでもっとも手間がかか
従来、反射を抑え、電子が消えてしまうのを防
ぐための加工の工程は、バルク系多結晶シリコン
メ ー カ ー は、 製 造 過 程 で﹃ SLPC-71H
﹄シリー
ズを採用し、事実上の業界標準となっている。
結晶シリコン太陽電池を生産するほとんどの主要
技術を持つことが出来た。現在国内でバルク系多
%
態でも電池として成り立つが、この結晶粒を島津
これにより、均一でしかも吸収効率の優れた反射
防止膜を形成できる。
さらに、この技術にはもうひとつ大きなメリッ
トがある。光が当たったときに発生した電子をな
るべく多く電気として取りだせればよいのだが、
バルク型多結晶シリコン太陽電池電池では、通常
▼
の反射防止膜で覆うと美しい青色になる。変換効
12
た電子を逃すことなく捕まえる二つの技術が必要
を効率的に取りだすことができたのだ。
反射防止膜成膜後
(島
津の反射防止膜で覆
うと美しい青色に)
の表面で反射することなく吸収し、また、発生し
反射防止膜成膜前
VD装置﹃ SLPC-71H
﹄だ。長年の実績により、
安定した品質のものをスピーディーに作り上げる
率を高める二つの技術が、この青い膜にあった。
日本の屋根を青く染める
日本の屋根を青く染める
を混ぜて先に説明した
- 接合を形成。これを4
00∼500度に加熱し、シランとアンモニアと
シリコンを鋳造してウェハを作り上げ、不純物
化したうえで成膜させる方法だ。
その過程で導かれたのが、この反射防止膜を最適
初頭より、将来を見据えて研究開発を続けてきた。
島津は長年にわたってさまざまな半導体製造装
置を開発してきた。太陽光発電についても 年代
80
いう原料ガスをプラズマ状態にして吹きつける。
n
発生した電子の何割かは、シリコン内で再び消え
11
16
p
産学連携が生む最先端テクノロジー Vol.2
世紀の新事業創出コンソーシアム参画から生まれた
ナノテク技術バイオチップ
が狙えるのでは、と勢いづいている。
携わっていた。分子、原子など小さい粒 その研究課目のひとつ﹁細胞機能解析
チップの開発﹂を進める上でパートナー
を相手にする研究は得意とすることころ
必要。日本はもともとナノテク分野での
こ ろ か ら バ イ オ 分 野 と の 接 点 を 持 っ た。
1 9 8 0年 代 の バ イ オ ブ ー ム の こ ろ、
﹁小さいものを扱うには、小さい道具が
細胞融合用のマイクロチップを開発した
と考えてお声をおかけしました。﹂︵鷲津
た。今回の研究でもベストパートナーだ
頃から島津の名前はよく知られていまし
として選んだのが島津製作所だった。
日進月歩で研究開発が進むバイオテク
ノロジー。数十年の間に、組織を扱う時
技術力が高く、一分子を観測する技術で
そして、これまで培った工学的知識をバ
だ。
代から、細胞、遺伝子、そしていまや分
も、リードしていました。これをバイオ
﹁バイオチップの開発では、 年代の中
子の一つひとつを扱う時代がやってこよ
教授︶
その開発テーマとはこうだ。
だし⋮。と煩雑な手順がついてまわって
こに試薬を加え、現れた反応物質を取り
階として別のシャーレ等で培養して、そ
時間が経過したのちの反応物質を解析す
従 来、 細 胞 の 機 能 を 解 析 す る と き は、
サンプルプレートの上で、採取から一定
特定産業技術研究支援センターの新事業
学系研究科の鷲
2000年、政府のミレニアム・プロ
ジェクトの一環として実施された生物系
京大学大学院工
創出研究開発事業に応募。見事採用とな
いた。
また、細胞とその反応が常に変化する
るという手法がとられていた。その前段
鷲津教授はも
ともと電気工学
り﹁遺伝子の分子レベル操作技術の開発﹂
イル等の開発に
融合や超電導コ
津正夫教授だ。
の 出 身 で、 か つ
と 言 う の は、 東
もそもの出発点でした﹂
イオに導入できないかと考えたところか
うとしている。
ゲノム解析では一歩遅れをとった日本
だが、ここにきてバイオ分野の巻き返し
鷲津 正夫 教授
90
が始まった。
1981年東京大学工学系研究科電気工学専攻博士
課程修了,工学博士。(株)東芝重電技術研究所,
東京大学研究生,成蹊大学工学部電気電子工学
科助教授・教授を経て,1996年より京都大学
工学研究科機械工学専攻教授,2002年より東京
大学工学系研究科機械工学専攻教授,現在に至
る。マイクロマシンのバイオテクノ ロジー応
用に関する研究に従事。
てはレーザー核
細胞の変化の様子を
細胞の変化の様子をリアルタイムで観察
リアルタイムで観察
研究に取り入れていけば、世界に組みす
その切り札となるのが、ナノテク分野
の高度な技術力だ。
バイオチップの本体は、2cm 四方ほどのサイズ。
この中に実験室が納められている。
ら、今回の研究が始まった。
2
ることができるのでは、と考えたのがそ
小
いい
もの
をの
扱う
はう
、 には、
小ささ
も
をに扱
小
いい
道具
が具
必要
小ささ
道
が必要
島津は2000年から政府のミレニアム・プロジェクトの一環として始まった生物系特定産業技術研究
支援センター﹁遺伝子の分子レベル操作技術の開発﹂コンソーシアムに参画し、
﹁細胞機能解析チップ﹂
を開発した。わずか センチ四方のチップのなかに、培養室、試料注入用のバルブを配し、細胞反応の
様子をリアルタイムで観察することができる、いわば手のひらの上の実験室。東京大学大学院工学系研
究科の鷲津正夫教授は、このコンソーシアムの技術コーディネーターである。
21
11 17
ジレンマがあった。
て解析を行なうことに、多くの研究者の
反応物質は変化することはないものとし
ものであるにもかかわらず、取りだした
ので、鷲津先生から声をかけていただい
ス︵μ TAS︶の研究に着手していました
﹁島津はメムス︵M E M S︶
、マイクロタ
も連続して検出できる。
ム全体を短期間で完成させるためには、
りました。しかし、細胞機能解析システ
た時点で、チップ加工技術のベースはあ
今回開発された﹁細胞機能解析システ
ム﹂はこうした問題点を一気に解決する
幅広い専門家の知識が必要となります。
センチ四方の
そこでその方策として、我々に不足する
可 能 性 を 持 っ て い る。
︵ポリジメチルシロキサン︶とシ
PDMS
リコン、ガラスを組合せ、わずか240
技術や設備をお持ちの大学の先生を訪
∼ というごく微量で、しか
fmol
析システムの開発では京都工芸繊維大学
授、細胞を扱う実験、検出系を含めた解
デバイスの開発では、早稲田大学理工
学研究科ナノ理工学専攻の庄子習一教
必ず求められる技術であることはまちが
ーメイド医療が現実となったときには、
だまだ先の話。でも一人ひとりのオーダ
﹁本当にこの技術が必要となるのは、ま
などで、多いに貢献するに違いない。
授︶
ングさせてくれるとありがたい﹂︵鷲津教
を把握している企業の方がうまくマッチ
かから、実際に利用する人たちのニーズ
だ多くの﹃種﹄が転がっています。そのな
の少量サンプルでも
ードとして働く分子を配列したり、その
かできなかったものが、1万件にも増や
﹁できたとしても、何十年も先の話です
んていうものも作れるかもしれない。
中西博昭
島津製作所 基盤技術研究所 主任研究員
せられた使命といえるだろう。
大学には多くの〝資産 〟がある。それを
どう社会に活用させていくかが企業に課
発を進めてほしいですね﹂︵鷲津教授︶
かで、島津にはぜひ﹃明日﹄を見て技術開
多くの企業が、﹃今日の飯の種﹄を追うな
業というのが、私の持っているイメージ。
﹁島津は、少量多品種高付加価値生産企
ニーズとシーズのマッチングが
ニーズとシーズのマッチングが企業に課
企業に課せられた命題
繊維学部高分子学科の村上章教授と連携
し、まずは要素技術を開発した。そして
昨年夏にそれらをひとつにまとめ、前述
のような成果を見ることができた。
せられた命題
いありません﹂
︵中西主任研究員︶
所基盤技術研究所主任研究員 中西博昭︶
ね、賛同を得て、共同で開発を進めさせ
質を、
10
検出側でも数々の工夫がなされ、試料
注入に応答して細胞が放出したたんぱく
複数の研究室との
複数の研究室とのコラボレートで実現
コラボレートで実現
をリアルタイムで観察できる。
の極めて微量な試料を注入制御できるバ
0
ていただく体制を整えました﹂︵島津製作
の 培 養 室 を 構 成。 そ こ に ・1
単位
2
ルブを設け、試料を加えて変化する様子
nl
京都工芸繊維大学繊維学部高分子学科の村上章教授の元で、島
津製作所の研究スタッフ(基盤技術研究所 主任 務中達也)が
共同でシステムの検証実験を行っている
このシステムによって、ごく微量のサ 鷲津教授の脳裏には、さらなる未来図
ンプルでの検査が可能となる。従来なら
が描かれている。
∼数
1検査に万単位の細胞サンプルが必要だ
分子を並べ替
ナノテク技術を応用して、
える。たとえばDNAを構成する塩基 、
ったが、数
、 、 を使ってトランジスタやダイオ
プルを入手しにくい場合は非常に有効
間を配線で結んだりできないか。うまく
せる可能性がある。このスピードは、結
が︵笑︶
。これに限らず、大学にはまだま
能になり、これまで1日に
だ。また、大量並列のサンプリングが可
検査を行うことができるため同一のサン
A
つなぎあわせれば、分子コンピュータな
C
件の検査し
T
10
果を一刻も早くデータ化したい創薬事業
10
11
18
G
nl
ネットワーク対応型 高速液体クロマトグラフ
高機能・高性能で拡張性の高いガスクロマトグラフGC-2014
分析業務に革新的な変化をもたらす
デジタルフローコントローラや簡単操作の
ユーザーインターフェイスを搭載 Web上でシステムの制御、モニター、メンテナンス管理を行うことが
LC-MS/MS(液体クロマト
キャリアガスの流量・流速を制御するデジタルフローコントローラや簡
単操作のユーザーインターフェイスを搭載した高機能・高性能で拡張性の
高いガスクロマトグラフGC-2014を発売しました。品質管理現場では、
できる限り効率的に使用するため、キャピラリカラムとパックドカラムの
グラフ質量分析計)の普及に
併用などの拡張性が求められています。
伴い、それに適合した性能の
本製品は、いずれのカラムにも対応でき
HPLCが重要で、世界最速の
る高い拡張性を備え、上位機種に搭載さ
れている、デジタル入力が可能な高精度
できる、世界初の制御方式で、高い自由度と効率が上がる作業環境を実
現した高速液体クロマトグラフprominenceを発売しました。また、ラ
イフサイエンス分野における
試料注入、注入した試料の一
部が残留し次の分析を妨害す
フローコントローラをクラスで初めて標
るキャリーオーバーに対応し
準搭載。重要なリテンションタイムの再
ています。
現性(定性精度)を5倍以上改善すると
ともに、誰が設定しても同じ結果が得ら
れる高い信頼性を実現しました。
お問合せ先:分析計測事業部セールスプロモーション課 075-823-1986
お問合せ先:分析計測事業部セールスプロモーション課 075-823-1986
URL http://www.an.shimadzu.co.jp/
ライフサイエンス・創薬研究を加速
高速液体クロマトグラフ質量分析計LCMS-IT-TOF
神戸バイオメディカル創造センターへ入居
世界初! 高速、正負イオン同時測定でMSnの質量の精密測定を可能に
測定する能力があり、HPLCはさまざまな
化合物を分離する能力があるにも関わらず、
これらを結合することは困難とされていま
した。この技術を世界に先駆けて開発し、
両質量分析計の特長を最大限引き出すこと
に成功しました。
お問合せ先:分析計測事業部セールスプロモーション課 075-823-1352
診断分野での事業展開のため、神戸のバイオメディカル
創造センター内の研究室に入居しました。当社は、現在、
医学・製薬などの研究開発で用いられる、たんぱく質解析
用質量分析装置を中心にしたバイオ関連機器、その試薬、
また受託解析の各事業を展開しており、将来はさらに踏み
込んだ、診断分野への参入を目指しています。 これまで
の診断分野への参入は、2002年6月にがんの遺伝子研究
で実績のあるシンガポールのアジェニカリサーチ社への投
資を実施、質量分析装置を用いた、がん発現たんぱく質マ
ーカーの探索に関して共同研究を推進するなど診断に活用
できる特定疾患発現たんぱく質マーカーの探索を進めてい
ます。
URL http://www.an.shimadzu.co.jp/
レーザ回折式粒度分布測定装置SALD-2200
理化学研究所のナノ粒子測定技術をベースに、
理研ベンチャー・ワイコフ科学(株)と業務提携
独立行政法人理化学研究所のナノ物質工学研
究室が開発した世界最高レベルの分析能力を持
つ、ナノ粒子測定技術をベースに、理研ベンチ
ャーのワイコフ科学株式会社と測定装置の量産
に関する業務提携を行ないました。自動車排ガ
ス中に含まれる、人間に悪影響を及ぼすとされ
る100ナノ以下の微粒子の計測を主な目的と
する量産型DMAの製造販売を行うことをめざ
したものです。また、現行のワイコフ製DMA
製品と、島津の各種分析計測機器を組み合わせ
ると、分級したナノ粒子の分析・観察・評価シ
ステムが構築できます。これをもとに様々な分
野で重要となってきたナノ粒子に対するトータ
ルソリューションの提案も行っていきます。
国内トップシェアの
スタンダード機種をリニューアル
最も広い分野で用いられるスタンダード機種をリニューアルしたレーザ
回折式粒度分布測定装置SALD-2200/2100を発売しました。
本製品は、従来機SALD-2000シリーズとのデータの互換性・継続性を
重視しつつ、有機溶媒を用いた測定が標準で行え、湿式測定から乾式測定
への切り替えが容易に行えるなど操
作性を向上させています。さらに価
格を15%低減させたコストパーフ
ォーマンスの高い装置です。
電子式水分計MOC-120H
お問合せ先:分析計測事業部セールスプロモーション課 075-823-1352
URL http://www.shimadzu.co.jp/powder/
E-mail [email protected]
普通紙使用の電子天びん用プリンタ EP-80
大型ひょう量皿で高精度な測定を実現
世界に先駆けて開発したアルミー体型質量センサー ユ
ニブロック(UniBloc)を搭載した電子式水分計MOC120Hを発売しました。ユニブロックは、ひとかたまりの
アルミ合金を精密放電加工してセンサーブロックを一体化
したもので、ネジやバネなどを使用しない均一構造により、
温度特性が格段に向上したほか、ゼロ点のドリフトや四隅
誤差などを抑えて安定性が究極レベルまで高まり、信頼性
の高い質量測定を実現しました。
腀
お問合せ先:分析計測事業部衡機部 天びん・はかり情報センター 075-823-1200
印字速度約3倍、"Windows直結機能"搭載
天びん側に内蔵されている島津独自の
"Windows直結機能"を併用できる電子
天びん用プリンターEP-80を発売しま
した。"Windows直結機能"により測定
データをExcelなどに直接取り込め、ま
た、取り込みながら印字記録が残せます。
印字されたデータを保存しておくことが
必要とされるGLP/GMPにも対応がで
きます。
URL http://www.shimadzu.co.jp/balance/ E-mail [email protected]
11 19
N e w s & To p i c s f r o m S H I M A D Z U
高速液体クロマトグラフと、イオントラップ型質量分析計(IT)および飛行時間型質量分
析計(TOF)を世界で初めて結びつけ、分子の詳しい構造を高感度・高精度に分析できる高
速液体クロマトグラフ質量分析装置LCMS-IT-TOFを発売致しました。イオントラップ型
質量分析計はMS n 操作により分子の断片化が可能で、TOFは質量を高分解能に精度良く
N &T
URL http://www.an.shimadzu.co.jp/
外科用X線テレビシステムOPESCOPE PLENO
全身用臨床PETを発売 Eminence-B
将来の薬剤デリバリーでの検査にも最適
高精細デジタル画像技術を搭載
新開発の高感度検出器により少量の薬剤で、短時間に検査
100万画素CCDカメラを搭載したことにより高画質を実現し、血管撮影専用機に
が可能な全身用臨床PETシステムEminence-Bを発売しまし
た。新開発の検出器は、シンチレータに高感度のBGOを採
用し、3D収集に最適化して検出器の径を最小化。従来は逃
していたγ線も収集可能となり、約3割の感度アップを実現
しています。感度を高めたことにより、これまでより少量の
匹敵する高精細画像と画像処理機能で血管造影検査も可能な外科用X線テレビシステ
ムOPESCOPE PLENO を発売しました。高精細で自然なコントラストが得られ、
微細部まで識別しやすく、手術部位の的確な把握ができます。7.5画像/秒の高速リアル
タイムDSA撮影が可能で、血流をなめらかな
動画像として把握でき、手術中の血管走行の
確認に威力を発揮します。通常2度の撮影と
薬剤投与で従来と同等の高精細画像が得られる、患者にもや
なるDSA画像を1度で構成する機能「RSM-
さしいシステムです。
DSA(世界特許)」は、麻酔下で患者が呼吸
を調整できない場合などでも適応でき、術者、
患者の被ばくも低減することができます。
お問合せ先:医用機器事業部 075-823-1271
URL http://www.med.shimadzu.co.jp/
N &T
新会社 島津メディカルシステムズ(株)発足
より高品質なサービスと販売を提供
N e w s & To p i c s f r o m S H I M A D Z U
医用機器のサービスと販売を行っている島津メディカルシステムズ東日本(株)と
島津メディカルシステムズ西日本(株)を合併し、7月1日から島津メディカルシステ
ムズ(株)としてスタートしました。医用機器製品に関する技術サービスと診療所市
場を中心とした販売を日本全国で展開します。島津グループの医用機器部門は、新
会社の発足により、さらに高品質なサービス・販売の提供と、体制の強化を行い、お
客様の満足度向上を目指します。
お問合せ先:医用機器事業部 075-823-1271
URL http://www.med.shimadzu.co.jp/
CT処理ソフトウェア"CT-Solver3"搭載
マイクロフォーカスX線CT SMX-225CT-SV3
オフセットスキャンでのコーンビームCT機能を実装
高精細な3次元画像に
従来できなかったオフセットスキャンでのコーンビームCT機能を初
めて実装し、高精細な3次元画像が得られる新開発のCT処理ソフトウ
ェア"CT-Solver3"搭載のマイクロフォーカスX線CTシステム SMXSV3シリーズ4機種を発売しました。オフセットスキャンは、回転中
心を検出器端に置いて撮像する方法で、サンプルの回転中心を検出器中
心に置いて撮像するノーマルスキ
ャンに対し、同じ倍率のCT像を撮
像する場合に、撮像データの水平
方向の検出器の分解能がほぼ2倍
に上がり、再構成されるCT画像の
分解能が向上します。
URL http://www.shimadzu.co.jp/ms/index.html
大型電子部品検査用デジタルX線透視検査装置SMX-1000L
FPD搭載でひずみのない画像、CT撮影も可能
汎用機の基本コンセプトや操作性はそのままで、フラットパネル検出器
(FPD)を搭載し、ひずみのない鮮明な画像が得られ、大型プリント基板や
パレットに搭載された電子部品など大型サンプルがそのまま検査できる装置
デジタルX線透視検査装置SMX-1000Lを発売しました。電子・自動車・通
信関連分野において、大型プリント
基板やパレット品の微細な部分を、
生産ラインで実物のまま、自由な方
向から高精度に検査できる操作性の
すぐれた装置が求められており、本
装置はそのニーズに応えたもので
す。ワンタッチ化されたユニットを
付加することにより簡単にX線C T
画像を得ることも出来ます。
お問合せ:分析計測事業部 NDIビジネスユニット 075-823-1986
お問合せ:分析計測事業部 NDIビジネスユニット 075-823-1986
URL http://www.shimadzu.co.jp/ndi/
E-mail [email protected]
URL http://www.shimadzu.co.jp/ndi/
E-mail [email protected]
小型X線異物検出装置SLDX-2050XAS
ECRスパッタ装置
500万円を切る低価格で
異物検出能力向上を実現
モバイル情報通信機器の
一層の薄型化を実現
検査対象を乾燥小型包装食品に絞り込むなど、装置構
成を簡略化して低価格を実現するとともに、異物検出能
力など基本性能を向上させた小型X線食品異物検出装置
SLDX−2050XASを発売しました。食品の加工工程
での異物の混入や異状の検出は、PL法に基づく製造物
責任、HACCPの普及、食品の安全に対する消費者の関
心の高まりなどに伴い、X線異物検出装置は、ますます
重要なものとなってきています。
山口大学工学部・松浦 満研究室との共同研究の成果として、
携帯電話をはじめとしたモバイル情報通信機器の薄型化を実現
するキーテクノロジーの一つである、フェライト磁性薄膜を
ECRスパッタ装置を用いて低温・高速で生成できる技術を開
発しました。この開発技術は成膜時の温度が200℃以下で、
薄膜を1分間に50nmという速さで形成することを可能にした
もので、薄膜をこの速さで得ることができる技術は世界で初め
てです。
20
お問合せ:分析計測事業部 NDIビジネスユニット 075-823-1986
お問合せ先:半導体機器事業部 03-3219-5885
URL http://www.shimadzu.co.jp/ndi/
E-mail [email protected]
URL http://www.shimadzu.co.jp/semicon/
E-mail [email protected]
11
外科用X線テレビシステムが「機械工業デザイン賞」を受賞
外科用X線テレビシステム OPESCOPE ACTIVO
授賞式は平成16年7月29日に東京・飯田橋の
ホテルグランドパレスにて行なわれました。
が、日刊工業新聞社主催の第34回機械工業デザイン
賞の「日本電機工業会賞」を受賞しました。この賞
は生産財を対象とするわが国有数のデザインコンペ
で、当社は今回で6度目の受賞となります。
この装置はX線を照射するCアームからケーブル類
をなくすなど、クリーンでポジショニングしやすい
デザインを採用し、常に清潔でスムーズ、効率の良
い外科手術を支援するものです。また、大容量のX線
管を搭載することで長時間連続した透視ができ、X線
N &T
のトータル被ばく量を低減しています。
FPD搭載循環器用X線診断装置が「十大新製品賞」を受賞
X線診断装置「DIGITEX Safire HC」が3年連続9度目となる
日刊工業新聞社主催の第46回「十大新製品賞」を受賞しまし
た。この賞は毎年、企業が開発・実用化した製品の中から優れ
た10点が表彰されるもので、今回は家電、自動車、情報関連
機器メーカーなど107社、129点の応募がありました。
この装置は、世界初の直接変換方式FPD搭載のシステムで、
従来方式に比べ高分解能、高画質の動画像が得られ、また画像
に歪みがなく診断において高精度の血管計測が可能になり、ス
ピーディな操作性と被ばく低減、ワークフローの効率化が図ら
れ、診断・治療に専念できるシステムとして評価されました。
島津製作所 技術誌「島津評論」
技術誌「島津評論」は通冊第200号を迎えました。
●最新号のご案内● 特集:環境分析・測定 島津評論Vol.60【3・4】(2004.3)
●水質総量規制における全窒素・全りん測定装置
●新水道水質基準におけるTOC測定
●EDXによる樹脂中Cd,Pbの蛍光X線分析
̶形状,厚さ,固定位置の補正を行う定量分析法̶
●土壌汚染対策法とICP‐AES,ICP‐MSによる金属分析
●二酸化炭素固定化システムの開発
●中国における固定発生源排ガス連続監視システム
詳しくは WEB をご覧下さい。 URL http://www.shimadzu.co.jp/products/tec_news/index.html
みなさまの声
診療所勤務の放射線技師です。小規模施設向けのカスタマイズ可能な X 線装置を開
発してください。 (M.K 様)
(boomeran @group.shimadzu.co.jp)
今回から「ぶーめらん」を閲覧させていただきました。情報源として、今後も
活用したいと思います。 (N.K 様)
「サポート力が商品力」記事を読み、島津さんの方針が現れており、すばらし
いと思いました。見えないものを見たいという声で開発するところなど見習わ
なくてはと感心しました。 (T.Y 様)
高い技術力を社会に貢献できる研究所の発展に活かす工夫、努力を惜しまない島津
の姿勢に、ぶーめらんを読む度に感動しています。そこへ集結してくるレベルの高
い研究者、技術者によるこれからの島津の活躍が楽しみです。 (N.A 様)
【編集部より】本誌創刊から 11 号、6 年目となりました。皆様に島津の技術や製品をわかりやすく、
そしてまじめな気持ちをお伝えするにはどうしたら良いかを毎回真剣に考え、取り組んでいます。そして
皆様のお声一つひとつが、私たちへの答えとなり、島津グループの道しるべとなっています。
(編集部一同)
11 21
N e w s & To p i c s f r o m S H I M A D Z U
直接変換方式フラットパネルディテクタ(FPD)搭載循環器用
授賞式は平成16年1月28日に東京・飯
田橋のホテルグランドパレスにて行な
島津創業の精神を社会貢献活動に生かす
島津科学技術振興財団
島津製作所が企業の社会的貢献の一貫として1980年に設立したのが、
“島津科学技術振興財
団”だ。以来、科学計測の分野で成果をあげた功労者の表彰『島津賞』や若手研究者を対象と
した『研究開発助成』などを主要事業として活動を続けてきた。そして、来年は設立25年、
大きな節目を迎える。
表彰・贈呈式は毎年 月に行われます。
科学技術を根幹とする島津製作所が島津科学技術振興
財団(島津財団)を設立したのは、今から24年前の、
1980年6月10日。
「科学技術の普及を通じて、人類の
福祉に貢献する」という島津製作所創業以来の精神を具
現化し、特に科学計測を中心とした分野のさらなる発展
2
N &T
に寄与することを目的としています。
現在は「顕彰」と「助成」の二つの事業を柱に活動し
ています。その一つが、島津財団のシンボルとして位置
付けられている『島津賞』です。「科学計測に関する基
N e w s & To p i c s f r o m S H I M A D Z U
礎研究の分野で、近年著しい成果を挙げた功労者」に贈
多くの企業財団が行っている研究助成の中でも、自然
られる賞で、その選考は、まず財団が指定する39の学
科学分野、特に科学計測を対象としたものは少なく、同
会より推薦された候補者の中から、選考委員会および理
分野で活躍する多くの若手研究者にとってこの助成は、
事会において、厳選かつ公正な審査を経て受賞者が決定
貴重な機会となっています。
されます。現在まで33名が受賞しており、受賞者には
「財団は来年、設立25年を迎えます。年々、優れた研
表彰状と賞牌、副賞300万円が贈られます。この『島
究の応募が増える一方、限られた予算の中で十分に応じ
津賞』は、大変高い評価を受けており、年々候補者の推
られないジレンマはありますが、若い頃に助成を受けら
薦件数が増えています。 れた先生が、後年に『島津賞』を受賞されたケースや、
二つ目は、「優れた研究開発課題の発掘と援助、およ
その後研鑽を積まれ、それぞれの分野で大きな成果をあ
び創造性に富む若い人材の育成」を目的とした『研究開
げられたニュースなどを目の当たりにするたびに、財団
発助成』です。科学計測およびその周辺領域の基礎的な
自身も評価をいただいたようで、こうした実績の積み重
研究を対象に、国内の研究機関に所属する45歳未満の
ねが次の事業への起爆剤となります。
若手日本人研究者に対する助成で、毎年公募をしていま
今後はこれまで行ってきた事業を検証しながら、さら
す。選考委員会で一次、二次と厳正な選考を行い、理事
に次代の若き科学者を育てる一助となるよう、島津製作
会で決定されます。採択されれば1件につき100万円
所の意義ある社会的貢献事業として努力していきます。
」
以下(2004年度助成総額800万円)が助成されます。
(藤見知愛子事務局長)
近年の島津賞受賞者一覧
年 度
受賞者氏名
役 職
受賞時の所属
研 究 業 績
独立行政法人科学技術振興機構
研究開発戦略センター
メガガウス超強磁場物性の開拓
大阪大学大学院
工学研究科
近接場分光法と
ナノフォトニクスの研究
教授センター長
京都大学宙空電波科学
研究センター
大気観測レーダーの開発と
地球大気観測の研究
第23回
平成15年度
三浦 登
(2003)
シニアフェロー
第22回
平成14年度
河田 聡
(2002)
教 授
第21回
平成13年度
深尾 昌一郎
(2001)
第20回
平成12年度
澤田 嗣郎
(2000)
教 授
東京大学大学院
新領域創成科学研究科
レーザーを用いた光音響並びに
光熱変換分光法の開発とその応用
第19回
平成11年度
櫛田 孝司
(1999)
教 授
奈良先端科学技術大学院大学
物質創成科学研究科
サイト選択分光法の開発と
その応用に関する研究
第18回
平成10年度
小川 禎一郎
(1998)
教 授
九州大学大学院
総合理工学研究科
レーザーを活用した新しい高機能・
高感度分析法の開発と応用
第17回
平成9年度
(1997)
教 授
東京大学先端科学
技術研究センター
大気微量気体の高感度測定法の開発と
地球大気化学観測研究
秋元 肇
腀
(受賞者の所属などは受賞当時のものです。)
財団の連絡先:財団法人 島津科学技術振興財団 事務局 〒604ー8441 京都市中京区西ノ京西中合町73
TEL:075-823-3240 FAX:075-823-3241 E-mail [email protected]
URL http://www.shimadzu.co.jp/ssf/
22
11
島津製作所 WEBサイトのご紹介
http://www.shimadzu.co.jp/standard/sitemap/index.html
人と地球の健康のために
粉を測り、
粉を生かす
粉体測定機器
11
地球環境
粉体
http://www.shimadzu.co.jp/products/earth/ http://www.shimadzu.co.jp/products/
powder/index.html
index.html
「ぶーめらん」
2004年9月1日発行 第11巻 年2回発行
株式会社 島津製作所 社外報 ぶーめらん
どこまでも高精度に、
どこまでも使いやすく
天びん
http://www.shimadzu.co.jp/products/
balance/index.html
常に新しいステージを迎える
半導体プロセス
半導体 FPD
http://www.shimadzu.co.jp/products/
semicon/index.html
分析機器
医療用システム
分析(クロマト)
http://www.an.shimadzu.co.jp/
水質/大気/排ガス分析計
http://www.shimadzu.co.jp/products/enviro/jenv-lst.html
医用
http://www.med.shimadzu.co.jp/
次世代のディスプレイとして
注目のアイテム
●発行/株式会社 島津製作所 〒101-8448 東京都千代田区神田錦町1-3 Tel.03-3219-5535
●企画/株式会社 島津アドコム 〒101-0054 東京都千代田区神田錦町1-3 Tel.03-3219-5777
●編集・制作/株式会社 誠報社 〒101-0061 東京都千代田区三崎町2-9-2 鶴屋総合ビル5F Tel.03-3234-1031
HMD
水質総量規制
http://www.shimadzu.co.jp/products/
http://www.shimadzu.co.jp/products/enviro/soryo/index.html aero/hmd/index.html
EVENT NEWS
展示会出品予定
SEPTEMBER
1∼3日
15∼17日
28∼30日
29∼10/1日
■プレゼント 電子辞書
(CASIO EX-word)
2004分析展(幕張メッセ)
VACUUM2004−真空展(東京ビッグサイト)
バイオジャパン2004(新高輪プリンスホテル)
第63回日本癌学会総会 附設展示会(マリンメッセ福岡)
OCTOBER
5∼7日
6∼8日
6∼10日
20∼22日
28∼30日
食品開発展2004(東京ビッグサイト)
2004実装プロセステクノロジー展(幕張メッセ)
2004年国際航空宇宙学展(パシフィコ横浜)
FPD INTERNATIONAL 2004(パシフィコ横浜)
※賞品のデザイン・仕様などは、
写真と異なる場合がございま
す。あらかじめご了承ください。
第40回日本医学放射線学会 機器・医薬展示会(京王プラザホテル)
NOVEMBER
9∼12日
11∼12日
国際粉体工業会2004(幕張メッセ)
日本食品衛生学会(広島県民文化センター)
DECEMBER
1∼3日
1∼3日
8∼10日
■応募方法
今回からアンケートは
Webのみのご応募となりました。
セミコンジャパン2004(幕張メッセ)
全科展in東京2004(東京ビッグサイト)
計測展2004 OSAKA(グランキューブ大阪)
JANUARY
19∼21日
第22回エレクトロテストジャパン(東京ビッグサイト)
19∼21日
第1回国際燃料電池展(東京ビッグサイト)
URL http://www.shimadzu.co.jp/news/events/
0511-08401-20BSH
本誌に対するご意見、ご感想をお寄せください。
boomeran @group.shimadzu.co.jp
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URL http://www.shimadzu.co.jp/aboutus/magazine/
◆応募締切り
2005 年 2 月 25 日(金)17 時まで
◆当選者の発表
厳正なる抽選のうえ、次号の誌面およびWebにて発表致します。
■プレゼント当選者発表
10号プレゼント当選者
【LEXMARK コピー複合機】東京都 奈良井 朝子 様
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