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ダイバー障代って精巧な海中作業を行う こと を目的と したマニピュレータ

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ダイバー障代って精巧な海中作業を行う こと を目的と したマニピュレータ
1.バ イラテ ラル・サーボ方式のマニピ ュレ ータの自重補 償法について *1
堀
田
宏 、*2 大
塚
清 、*2 土
屋
利
雄*2
ダイバーと代っ て精巧 な海中作業 を行 う 二とを目的 とした7 ニピ ュレ ー タ(機械 の腕 )は力 を操縦者 にツ イード バ ッ ク
する機能 を持っ てい ること が望 ましい。 このよ うなマニピュレ ー タ・ シ ステム に適 した制御方式としてバイラテラ ル・サ
ーボ機 構が知ら れてい る。 フ ィード バ ッ クさ れる力 にはマニピ ュレ ー タに加っ た負荷 のほ か、自 重や可動部 の摩擦抵 抗 力
など余計 なもの まで含 ま れている。 この自重 を補償す るのが本論文 の目的 であ る。 その対象と なるマニ ピュレ ー タ・ シ ス
テムは主 に洋上 で運 用 するこ とを想 定し てい るため、自重補償 の方式、 および構成 要素は保 守・ 管理 が難 しく、 高価 な電
子 計算機は使用せず、 で きるだけ簡素で、し かも極く一般的 な部 品 を使用 するよ うに心 がけた。 今回、 自重 補償 を行った
関 節は肘部曲げ のみであった が、 その測定 結果 は極め て良 好で、マ ニピュレ ー タに加っ た負荷 をより 敏感に感 じるこ とが
で きた。 また、操縦 者 に掛 かる負担 が大幅 に軽 減さ れ、操作性 、作業能率 が格段 に良 く なった。
On the Self- Weight Compensation Method of Bilateral Servo Controlled
Manipulator
Hiroshi HOTTA
Kiyoshi OHTSUKA
lt is desirable that the manipulator
(mechanical arm)
Toshio Tsuchiya
operated for the
purpose of doing elaborate underwater work is able to transfer a force to the
operator by feedback. Bilateral
servo control system is proposed for the control
system which is suitable to such
a manipulator system. Bilateral servo control
system is the servo system combined with position servo and force servo systems。
The feedback force to the operator includes not only the load gripped by th む
manipulator but surplus forces such as the weight of the manipulator itself and
fricative resistance of movable parts. This paper describes an experimental study
to compensate the weight of the manipulator itself (self-weight). We supposed that
the manipulator system is mainly applied in the ocean of the continental shelf, so
we did not use a computer which is expensive and required diffic ult maintenance
and care. We also used the most general parts composing the self-weight compensation apparatus so as to simplify the method。
We have found from the detailed experiment about several under water works
that a joint of elbow is moved constantly in any underwater work. We have done
the self-weight compensation relating to only one joint of elbow, but the result
was very satisfactory and the load which was participated in the manipulator was
*1 本研究 は昭和48年度 より 3ヵ年 計画で科 学技術
庁研究 調整局 海洋 開発課 より委託 さ れた「 バ イ
ラテ ラルサ ーボ方式 のマニ ピュレー タの研究」
に関連 して行 われたもので ある。
-
海 洋 開 発 技 術 部
Marine
1
-
D eveloP m ent Tech
りology
De partm ent
felt very sensitively.Moveover
reduced
the burden
greatly,in consequence,handling
ved widely. The
method
to be imposed
on the operator was
and operation performance
was impro-
introduced in this paper is able to apply to any other
joints but the calculation of feedback force about the joints of shoulder will be
more
difficult.
る要素 で あ るマ ニピ ュレ ー タの自 重 補 償法、 回路 の
1. ま え が き
試作 、 お よ び その 実験 結 果 につ い て 報告 す る。
放 射 性 物 質 の取 り 扱 い や 海 中 作 業 な ど、 直 接 人 間
なお 、本研 究 を行 うに あた り、 東 京 工業 大 学森 政
が立 入 る こ と の で き ない 特 に悪 い 環 境 下 で の作 業 や
弘 教 授 を座 長 とす る研 究検 討 会 の 方 々 に は適 切 な助
危 険 な作 業 を 行 うこ と を目 的 と す る マ ニ ピ ュレ ー タ
言 と熱 心 な議 論 を戴 い たこ と を感謝 す る。
(機械 の 腕 ) は 、 位 置 の 制 御 と 同 時 にマ ニピ ュ レ ー
2 . 力 帰還 型 バ イ ラテ ラ ル・ サ ーボ機 構 の 特性
タ が受 け た 拘 束 力 を操 縦 者 に感 覚 と し て フ ィ ー ド バ
ッ クす る こ と が望 まし い 。 こ の よ う な位 置 サ ー ボ系
今 回 自重補 償 を行 っ たマ ニピ ュレ ー タは制御 関 係
と カ サ ー ボ系 の 双 方 が組 合 わさ れた サ ー ボ機 構 は 特
が電 気式 で駆 動 関係 が油圧 式 の「 電 気 一油圧 式 力帰
にバ イ ラ テ ラ ル ・ サ ー ボ機 構 と 呼 ば れて おり 、 通 常
還 型 バ イラ テ ラ ル・ サ ーボ方 式 の多 関係 型 マ ニ ピ ュ
の サ ー ボ 機 構 と 比 べ て、 そ の 特 性 は 極 め て 複 雑 で あ
レ ー タ」 で、 その外観 を図 1 に示 す。 力帰 還 型 バ イ
る。
ラテ ラ ル・ サ ーボ機 構 の基 本 型 は図 2 に示 す よ うに、
バ イ ラ テ ラ ル ・ サ ー ボ機 構 に は 次 の 3つ の基 本 型
従 動 側 は通常 の位 置 サ ーボ と全 く同 様 で あ る が、主
が提 唱 さ れて い る。
(i) 対 称 型 バ イ ラテ ラ ル・ サ ー ボ 機 構
(ii) 力 逆 送 型 バ イ ラ テ ラ ル・ サ ー ボ機 構
(Ⅲ) 力帰 還 型 バ イ ラ テ ラ ル・ サ ー ボ機 構
そ れ ぞ れ の 方 式 には 一 長 一 短 があ り 、
(i)
の対称 型
は一 番 簡 単 な 機 構 で あ る が、 無 負 荷 時 の 操 作 力 が 重
い と い う欠 点 が あ り、
(ii)
の 力逆 送 型 は 従 動側( こ こ
で は マ ニ ピ ュ レ ー タに 相 当 す る) で 発 生 し たト ルク
を検 出 し 、 そ れ を あ る関 数 関 係 で 拡 大 、 あ る い は縮
小 し て 主 動 側 に こ で は 操 縦 装 置 に相 当 す る) に逆
送 し てい る た め 、 特 に 重 負 荷 を取 り 扱 う マ ニ ピ ュ レ
ー タ に適 し た 方 式 で あ る。
(iii
)
の 力帰 還 型 は 一 口 に い
Man Hand
う と従 動 側 の 位 置 サ ー ボ と主 動 側 の カ サ ー ボ の 組 み
合 せ で あ り 、 無 負 荷時 の操 作 力 が軽 く、 感 覚 伝 達 と
い う点 から 上 記 3方 式 のう ち最 も性 能 が優 れて い る
も の と 目 さ れて い る。 し か し、 実 際 の装 置 で は マ ニ
ピ ュ レ ー タ には 自 重 が あ り 、 拘 束 力 を受 け て い な い
時 で も絶 え ず下 向 きに 自 重 モ ー メ ン ト に よ るト ル ク
が発 生 し 、 操 縦 装 置 (マ ン ・ ハ ン ド ) に フ ィ ー ド バ
ッ クさ れ る。 こ の 傾 向 は 肩 部 に近 い 関 節 程 顕 著 で あ
る。 従 っ て 、 マ ニ ピ ュ レ ー タの操 縦 者 ( オペ レ ー タ
は マ ニ ピ ュ レ ー タ が無 負 荷 の と きで も絶 えず こ の 下
向 き に働 く 力 を腕 に受 け な が ら 操 縦 し な け れば なら
Underwater
ず 、 非 常 に負 担 が大 きい 。
図 1 本 論 文 で は オペ レ ー タに と っ て 非 常 に負 担 と なり
バ イ ラ テ ラ ル サ ー ボ 方 式 の
マ ニ ピ ュ レ ー タ ・ シ ス テ ム の 外 観 図
ま た 、 バ イ ラ テ ラ ル・ サ ー ボ 機 構 に と っ て も 有 害 な
-
Manipulator
Outside View of Bilateral seyvo manipulator system
2 動 側 へ は 両 側 のト ル クの 偏 差 を小 さ く す る向 き に力
を伝 え て い る。
マ ニ ピ ュ レ ー タ、 お よ び マ ン ・ ハ ンド の 各 関 節 に
は図 3 に示 す よ うな ラ ッ ク・ ピ ニ オ ン型 油 圧 ア クチ
ュ エ ー タが 設 け ら れて お り 、 ピ スト ンの 直線 運 動 を
歯 車 で 回 転 運 動 に変 換 し て 関 節 の 動 きを再 現 し て い
る。 各 関 節 で 発 生 す る ト ル クは ピ スト ン 両端 に掛 か
る圧 力PI 、P2 を圧 力 検 出 器 で 検 出 し、 そ の 出 力 差
電 位 か ら 算 出 し て い る。 こ の 方 法 につ い て 、 図 3 を
用 い て 説 明 す る。 図 中 で 用 い ら れ て い る記 号 の 意 味
は
図2 力 帰 還 型
W :指 部 に掴 ま せ る 荷 重 〔kg 〕
Force feedback type bi l ateral
Wo :
servo system
回 転 中心 から 先 端 ま で の 自 重 の先 端 換 算 自
重 〔k
g〕
Fy : 摩擦 抵 抗 の 先 端 換 算 抵 抗 力 〔kg 〕 、 こ れぼ
腕 を上 に持 上 げ た と き を 正値 と す る。
L : 回 転 中 心 から 先 端 ま で の 長 さ 〔cm 〕
R: ピ ニ オ ン歯 車 の ピ ッ チ 径 〔cm〕
A、 、 A,: ピ スト ン 両 端 の受 圧 面 積 〔c㎡〕
で あ る。 こ の と き、 回 転 軸 回 り の ト ル クの 釣 合 い は
( W 十 Wo十F)
L = {(A,+A2)
P, ―
(A,十A,)P2} R
= (A, 十A,) (P,-P,)R (1)
と な る の で 、 腕 を静 止 し た状 態 の と きの 油圧 ア クチ
ュ エ ー タ の発 生 ト ル クTq は、 ∠IP− PI 一 P2 と お く
図 3 ラ ッ ク・ ピ ニ オン型 油 圧 ア クチ ュ エ ー タ
と
Tq
Rack-Pinion type hydraulic actuator
= (W 十 Wo十(A,
+ A2)JPR (2)
と 表 わ せ る の で 、PI お よ びP2 を測 定 し 、そ の 差 に定
数c=
(A, 十A,)
R を電 子 回 路 的 に掛 け れ ば 求 め
るこ と がで き るo た だ し 、 こ の場 合 、 マ ニ ピ ュ レ ー
タの 自 重 、 お よ び 摩 擦 抵 抗 に よ る発 生 ト ル クを も 合
せ て 検 出 し て し ま うこ と に注 意 し な け れば な ら な い 。
力 帰 還 型 バ イラ テ ラ ル・ サ ー ボ機 構 の ブ ロ ッ ク・
ダ イ ア グ ラ ム を図 4 に示 す。 細 い線 で 描 い た ブ ロ ッ
クは 位 置 サ ー ボ系 で 、 太 い 線 で描 い た ブ ロ ッ クがカ
サ ー ボ系 で あ るo カ サ ー ボ系 で は マ ニピ ュ レ ー タ の
ア クチ ュエ ー タで発 生 し た ト ル クTq に バ イ ラ テ ラ
ル比 (マ ン・ ハ ン ド に帰 還 す るト ル クの 比 率 )k か
乗 じ 、 その 値 から マ ン ・ ハ ン ド の ア クチ ュ エ ー タで
発 生 し た 卜 ル クtq を差 引 き、サ ー ボ ア ンプ で 増 幅 し
図 4 力 帰 置 型 バ イ ラ テ ラ ル ・ サ ー ボ シ ス テ ム の
て サ ー ボ バ ルブ を制 御 す る。 そ の 結 果 、 マ ン・ ハ ン
ブロ ッ ク ダ イア グラム
ド の 位置 、 お よ び ト ル クが 制 御 さ れ、 新 し い状 態 に
B10ckdia9 ram.0f force feedback type bilateral
遷 移 す る。 こ め7 ン ・ ハ ン ド の 新 し い 状 態 が マ ニ ピ
servo system
ュ レ ー タの状 態 に 影響 を与 え る、 と い う具 合 に 位 置
-
3 −
サ ー ボ系 とカ サーボ系 で フ ィ ード バ ッ クループ を使
っ て い るの がバ イラテ ラ ルサ ーボ機 構 の 大 きな特 徴
で あ り、 バ イラテ ラ ル(双動 型) と呼 ば れてい る所
以 で も ある。
3 . 自重 補 償法 の 原 理
マ ニ ピ ュレ ー タの 自 重 によ り ア クチ ュエ ー タに発
生 す るト ル クは腕 の状 態 (関節 の回転 角 度) によっ
て異 なるの で 、 ポ テ ン ショ メ ー タか ら角度 の情 報 を
もら い、 自重 補償 量演 算 回 路 で補 償 すべ き関 節 の補
償量 を演 算 し た結 果 をマ ン・ ハ ンド に帰還 す るト ル
クから差 引 い てマ ニピ ュレ ー タの 自 重 を補 償 し てい
る。 図 5はこの 説明 の た め に、図 3 からカ サ ーボ系
を抜 出 した電 気 一 油圧 回 路 図 で あ る。 Com.と 書 い
たブロ ッ クが自重 補償 回 路 で、 実 際 の場 合 は、 この
入 力 は 複数個 で あ るの が普 通 で あ る。 以 下 に、 自重
図 5 カ サ ー ボ 系 に 関 す る 電 気 一 油 圧 回 路 図
Eijectric-hvdraulic circuit drawi
to the force servo system
補償 法 の原理 につ い て 、肘 曲 げ関 節 を例 に とっ て簡
ng relating
単 に説 明 す る。
い ま、マ ニピ ュレ ー タの 指部 に W 〔k9〕 の荷 重 を
持 たせ 、図 6 に示 す よ うに肩 部 前後 振 り角 度 がθ1、
肘 部 曲 げ 角度 が∂2の状 態 の と きの肘 曲 げ関 節 に発 生
す る荷 重、 お よび 自重 に よ るモ ーメ ントm は
m = (W1 十Wol')
s in {0l十∂、) (3)
と な る。 た だ し、1 は肘 曲 げ関 節 から指 部 の中 心 ま
での距 離 で あ り、 また1 ’は前腕 と指部 の 自 重 の和Wo
の重 心 と肘曲 げ関 節 間 の距 離 で あ る。
一 方、 肩部左 右 振 り 角度θ、を図 7の よ うに と る と、
肘 の曲 げ方向 に対 す るθ、の 影響 は 余弦 的 に な るの で、
結局、 肘 曲 げ 関節 に発 生 す るモ ーメ ントM は
M=
(W1 十Wol')
sin
十θ、) c o s 03 (4)
図6 肘部曲げ関節の自重補償原理図
と な る。 従 っ て、 自重 に よ るモ ー メ ントの 分 だけ マ
Se1f-weiqht compensation principle
relating to the joint of elbow
ニピ ュレ ー タの肘 部 曲 げ関 節 の発 生 ト ル クTq か ら
差引 い ておけ ば 、 自重 に よ る バ イテ ラ ルサ ーボ に与
え る影響 が除 去 で きるこ と に な る。 し かし な がら 、
実際 の装置 で は、 ( 2) 式 中 に現 わ れて い る ア クチ
ュエ ー タや 可動部 の シー ル部 分等 で発 生 す る摩擦 に
よ るモ ーメ ント (f。×1)が働 い て い る。 この要 素は
挙動 が 不確 かなため 、電 子 回路的 に補償 す るこ とは
不可 能 で あ る。 従 っ て、 マ ニ ピ ュレ ー タに持 たせ た
荷重 とマ ン・ハ ンド で 発 生 す る力 との 比 がバ イ ラテ
ラ ル比 とは なら ない。
4. 自重 補 償 回 路 の 構成
図 7 肩 部 左 右 振 り 関 節
-Joint of shoulder {Front of
view)
-
以 上述 ぺ て きた自 重 補 償 法の原 理 に従 っ て補 償 回
4
号 を直接 関 数発生 回 路 に 入 力 す る と、 入 力電 圧 が負
値 の場 合 があり 不 都合 なの で、 その間 に絶 対値 回路
を設け て負値 は符 号変 換 を行 っ た。
以 上の よ うに加 算 回路 を経 て きた信 号 は 約 5V 程
全体的 にレベ ルが低 く なっ てい るの で、腕 を垂 直 に
下 し た と き(肩 部 前後 、左 右振 り 角度 が0 °、肘部 曲
げ 角度 が−90 ° の と き) 自 重 補償 量 が0 と な るよう
図8
肘 部 曲 げ 関 節 に関 す る自 重 補 償 回 路 の
ブ ロ ッ ク ダ イ ア グラ ム
に、 バ イ アスとし て約 5V の電 圧 を加 算 し た。
Blockdi&gram
of self-weight
compensation
circuit relating
to'the joint
of elbow
す る肘 部 曲 げ 関節 の 自重 補 償 は完 了 す る。 次 に肩 部
以 上 まで で 肩部 前後振 り と肘 部 曲 げの 両関 節 に関
左 右 振 り 角 度 の肘 部 曲 げ関 節 へ の 影 響 につ い て で あ
る が、 こ れは 前述 と同 様の 関 数 発 生回路 で正弦 波 を
作 り 、 その 出 力の極性 を逆 に変 換 し て先の 補償量 に
乗 じ るこ と に より 行 うこ と がで きる。
5.
自重 補 償回 路の 試作
今回 試作 し た自重 補 償機構 は、 ダイバ ーに代 っ て
いろ いろ な海中 作 業 を行 うこ との で きる水 中 マ ニ ピ
ュレ ー タに組 込 み、 主 に洋 上 で操 作 す るこ と を目的
と し てい るため、 保 守 管理 に特別 な配慮 を必 要 と す
る内部 機 構 の 複雑 な電 子 計算機 は使 用せ ず 、 極 く あ
り ふ れた部 品 で構 成 し、 で きるだ け 簡素化 した。 自
重 補 償機構 の 試作 で 用い た能 動 素子 は広 く一 般 的 に
使 用 され てい る オペ レ ー ショ ン・ ア ンプ用 リ ニ ア
図 9 関 数発 生 回 路 の入 出 力特性
I.e. と低電 圧 直流 安定化 電 源 用 の ト ラン ジス タで
Input-Output characteristic of
function generator
あ る。
図 8 のブ ロ ッ ク・ ダ イ ア グラ ムの 加 算 回路 ( 1)
路 の構 成 につ い て説 明 す る。 図 8 にこの 回 路 の ブロ
から関 数発 生 回路 までの 回 路図 を図11 に示 す が、 こ
ッ ク・ ダ イ ア グラ ム を示 す が、 この中 の 関 数 発 生回
の回路 の基 本 は、 入 力抵抗Ri
n と フ ィード バ ッ ク抵
路 は正 弦 波 を作 るブロ ッ クで、 今回 の 装 置 で は0 °
抗Rfb /Rin が増幅 率 に なるとい うリ ニ アI.C. の特 性
∼90° の 正 弦 波 形 を3 本の直線 で近 似 し た。 こ の回
を利 用 し てい る。 絶 対値 回 路 に肩 部 前後振 り、 お よ
回 の入 出 力特性 を実測 した ところ 、 3 本 の近 似 直線
び肘 部 曲 げ の 両関 節 の ポ テ ン ショ メ ー タの電 圧 を 入
の接 続 部 分 は 半 導体 素子 の特 性 から、図 9に示 すよ
力す ると図12 に示 す よ う な入出 力特 性 が得 ら れ るの
うに少 し な まり、 結 果的 には好 都合 で あっ た。 理 論
で、 その 出 力 を関 数発 生回路 に入 力 すると図13 に示
値 との 誤 差 は 最 大で約 2% 程 度 で あ っ た。 近 似 直線
の数 をも っ と増 せば、 誤差 は 少 なく な る は ずで あ る
が、 今回 の 装 置 で は あ まり 厳密 な値 は 必要 と し ない
の で、 3本 の 直線 で近似 した。
また、図 8のV(
、V()
、お よ びV()
は
それ ぞれ肩部 前後振 り、 肘 部曲 げ、 お よ び肩部 左 右
振 り の各関 節 の回 転 軸 に付 い てい るポ テ ン ショ メー
タ出 力電 圧 で、図10 に示 す よ う な特性 に なっ てい る。
肩部 両関 節 は腕 を垂 直 に 下 し た状 態 が0 ° で、 肘 曲
げ関 節は肘 を直角 に曲 げ て い る状 態 が0 ° で 、 肘 を
伸 した状 態 が−90 °で あ るo 従 っ て、 加 算 回 路 の 出
力電 圧 は約 一 5V∼+5V
図10 ポ テ ン ショ メ ー タの 角 度 と
出力 電 圧 と の関 係
の範囲 内 に あ る。 こ の信
Characteristic of Potentiometer
5 −
図11 自重補償回路図
Self-weight
すような出力電圧 が得られる。この出力 を図5に示
6
compensation
electric
circuit
自重補償特性の測定および結果
したようにサーボアンプの出力回路 に入力し、前腕
次 に 、 バ イ ラテ ラ ル・ サ ーボ 方式 の マ ニピ ュレ ー
を上げたときにマ ン・ハンドの肘部曲げ関節が軽く
動くように調整する。
タに 今回 試作 し た自重 補 償機構 を組 み込 んで 、 その
実際の調整段階では、無負荷の状態で上腕を垂直
効 果 につ い て測 定 し た結 果 を述 ぺ る。 測 定 方 法 は マ
に下し(肩部前後、左右振 り角度 が0 °)、 肘 を−
ニ ピ ュレ ー タに荷 重0 、16k9 、30kg 、50k9 の 各 お も
90° (前腕 を垂直に下した状態)、および0 °(上腕
り を持 たせ、 バ イラ テ ラ ル比 を0 ∼1.0 に変 化 さ せ
を水平 に上げた状態)にしたときのマ ン・ハンドお
た と きのマ ン・ハ ンドの 肘 部 曲 げ関 節 に発 生 す るト
よびマニピュレータの肘部曲げ関節の角度 と発生ト
ル ク、 お よ びマ ン・ ハ ンド の 先端 保持 力 を測 定 した。
ルクをレコーダで記録しながら、自重補償量の最小
バ イラテ ラ ル比 が0 とい うこ とはカ サ ーボ系 がない
値と最大値 を調整した。また、肘部曲げ角度の中間
値として−30° および−00° を選び、図11 に示した
補償回路図の中の関数発生回路部にある3つの可変
抵抗器を調整して、最適 な自重補償量 を設定した。
この回路全体の消費電力は約200mW で、5 cm X 10cm
のプリント基盤上に全て配置することができた。
肩部左右振り関節の影響 をも含めた肘部曲げ関節
の自重補償回路は、今まで述べてきた手順と同様の
方法で容易に試作可能である。ただし、 アナロ グ信
号の乗算回路についてはいくつ かの方式 があるが、
構成 が多少複雑 で、調整も容易ではなく、また、隕
られた紙面でこれらの説明 を行 うことは不可能 なの
で、本論文では詳細 な説明 を省略する。
正弦波を発生させる方法 としては他に、軸の回転
角に応じて正弦波信号を出力として取り出すこ との
できる特殊なポテンショ メータがある。し かし、こ
れは通常のポテンショメータと比較して形が大きく、
これをマニピュレータの各関節の回転軸に取り付け
図12 るこ とはマニピュレータの形状、機構、 その他 に影
響 を与え、あまり好ましいとはい えないであろう。
絶 対値 回 路 の入出 力 特性
Input-output character!stic of the
absol ute value circuit
6 −
ユ ニ ラテ ラ ルサ ー ボ機構 と同 じで 、 マ ン・ハ ンドに
はマ ニピ ゴ し一 タから 力 がフ ィード バッ クさ れ ない
状 態 で あ る。 また 、 バ イ ラテ ラ ル比 が1 と い うこ と
は、マ ニ ピ ュレ ー タで発 生し た ト ル クを その ま ま(
1 対1 で) マ ン・ ハ ンド にフ ィード バ ッ クさ れ る状
態 であ る。 従 っ て、 マ ニピ ュレ ー タで発 生 した ト ル
クの中 に 自 重 に よ る モ ー メ ント成 分 が含 ま れ てい る
と、マ ニ ピ ュレ ー タが無 負荷 の場 合 で も、 バ イ ラテ
ラ ル比 を上 げ て行 く に従 いマ ン・ ハ ンドの操 作 力 が
増大 す るこ と に な る。
図14 、 (a) お よ び (b ) が その 測定 結 果 で、
前者
が自重 補 償 を行 う前、 後 者 が自 重 補償 を行 っ た と き
の デ ー タで あ る。 マ ン・ハ ンド の先端 保 持 力 は指 部
中 心 をバ ネ秤 でつ るし て測 定 し た。 マ ン・ハ ンドの
図13 ア クチ ュエ ー タの 発 生 ト ル クが0 の と きで も バ ネ秤
肘 部 曲 げ関 節 に関 す る
自重 補償 回 路 の入 出力 特性
の 目盛 が約2k9 を指 し てい るの は、マ ン・ハ ンドの
Input-output characteristic of
self-welght compensation circit
relating to the joint of el
bow
自 重 と摩擦 抵 抗 力 が働 い てい る からで あ る。
測定 デ ー タから も分 るよ うに、 自重 補 償 の効 果は
絶 大 で 、 マ ニ ピ ュ レ ー タ が 無 負荷 の と きの操 作 力
は バ イ ラ テ ラ ル比 を上 げ てい っ ても あ まり変 ら ず、
各 種作 業 に合 わせ て最適 なバ イ ラテ ラ ル比 を選 ぶ場
合 で も その 選択 範囲 が格段 に広 く なり、 ま た、 オペ
レ ー タに か か る負担 が大 幅 に軽減 さ れた。
7. む
す
び
マニ ピ ュレ ー タ を用 い て各種 作 業 を行 う場 合 、 そ
れ が人 間 に よっ て操 作 さ れる もの であ る以 上 、 オペ
レ ー タの腕 と 全く同 様 な機 能、性 能 を有し 、 オペレ
ー タにマ ニピ ュレ ー タを操作 し てい るとい う意識 を
図14(a)
持 たせ ず に、 あた かも自 分の腕 が遥 か遠 く 隔 れた所
で作業 を行 っ て い るよ う な感 じ を起 こ させ るこ と が
肘 部曲 げ 関 節 の 自重 補 償 特 性 比 較 図
Characteristic
of joint
self-weight
compensation
relati
ng to the
of sl bow
(non compensation)
望 ましく 、 そ れこ そ優 れたマ ニ ピ ュレ ー タで あ る、と
い えよ う。
この よ うな観 点 から 、 我々は マ ニピ ュレ ー タとマ
ン・ハ ンド が電 線 だ け でつ な が れ、 そ れら の相 対位
置関係 が任 意 に選 べ 、 な お かつ マ ニピ ュレ ー タから
の 力の フ ィード バ ッ ク機 能 を有す る電 気 一 油圧 式 バ
イ ラテ ラ ル・ サ ーボ 方式 のマ ニ ピ ュレ ー タを試作 し、
いくつ かの 作 業 実験 を行っ た。 その 結 果 、 人間 の腕
がい かに優 れた もの で あ る かを新 め て知 ら さ れた。
本 論文 に報 告 したマニピュレータの 自重 補償 法 が、人
間 の作 っ た機械 の腕 を少 し で も人 間 の腕 に近付 け る
ための 1つ5 手段 で あ ると考 える こ と がで きれば幸
い であ る。
図14(b)
肘 部 曲 げ 関 節 の 自 重 補 償 特性
Characteristi c of Self-weight compensate
on
rel ate to the joint of el bow {compensated)
7 −
江尻正員,鴨井 章“サーボマニピュレ ータ
参 照 文 献
と制御, 1963, P.483 ∼490
上野大平“リニ アIC 活用ハンドブック CQ出版社, 岡村辿夫“OP アンプ回路の設計"CQ
246P, P. 173∼179
1973, 287P, PA03- 107
-
8 −
計測
出版社, 1973
Fly UP