...

米輸出の計量分析 - 岐阜大学応用生物科学部

by user

on
Category: Documents
4

views

Report

Comments

Transcript

米輸出の計量分析 - 岐阜大学応用生物科学部
岐阜大学食品経済学研究室
ワーキングペーパー2015-4
米輸出の計量分析
荒幡克己
要約
日本米輸出に関しては、対立的な二つの意見、即ち「日本米は品質が良いから高くても
売れる」という主張と、
「輸出拡大のためには価格を引き下げなければならない」という主
張がある。輸出国日本の販売戦略として、この論点は、「価格引き下げを補って余りある販
売量増加があり、トータルとして販売金額が増加するのか否か」ということである。即ち、
経済学的に言えば、価格弾力性が-1.0 よりも大きいか小さいかの問題である。
本稿では、この議論に資する目的で、日本の米輸出について、その相手国の輸入需要の
価格弾力性について計測した。また、併せて、所得弾力性、訪日外国人の増加との関係も
計測した。
分析の結果、価格弾力性は世界全体で見て、過去 9 年間では-1.712 程度、最近 6 年では
-1.476 程度となっている。これは、コストダウンにより価格を引下げて数量増加を目指せ
ば、ある程度の販売額総額の増加が期待できることを意味している。
特に、注目したいのは、アジア市場である。アジア市場では、価格弾力性は極めて高い
値を示している。このことは、「アジア市場では、大幅な輸出増加のためには、コストダウ
ンを通じた販売価格の切り下げが必要」であることを示唆している。これに対比する意味
で、欧米市場を見ると、価格弾力性は余り高くない。価格引き下げによる販売増加の効果
は、アジアほどではないことが示唆される。
所得弾力性は、概して言えば、価格弾力性とは逆に、アジア市場では有意ではない。こ
れに対して、欧米市場では、大きい所得弾力性が計測されている。ただし、これは、経済
成長により輸出増加が見込める面があるものの、その反面、景気変動の影響を受け易いこ
とを意味する。
「直近の訪日観光客の人口比率」は、観測期間 9 年の世界全体は有意であり、欧米市場
は有意でないものの、アジアでは強く有意で数値も高い。この結果は、アジアに限れば訪
日観光客を増やして本場の日本米を味わってもらうことが米輸出に効果的なことを示唆し
ている。
1
1. 緒言
米輸出は、政府の農産物輸出戦略の一環として、今後、強く推進していくこととされて
おり、大きな期待が寄せられている。しかし、その見通しについては、見方が分かれる。
減反廃止によって余剰となった水田を活用した増産余地があることを前提として、数十
万トンはおろか、100, 200 万トン規模での米輸出を期待する見方もある。欧米の農産物過剰
では、輸出による処理のウエイトが高かったこともあって、その反面日本では減反という
消極的な姿勢に終始した反省から、積極的に海外に打って出ることを支持する見解も、こ
の方針の背景にある場合も少なくない。
更に、論者によっては、財政支援による輸出振興も視野に入れている。この場合、明示
的な輸出補助金1ではなく、不足払い等による「隠れた輸出補助金2」のような形であるが、
いずれにしても、財政支援を行えば、その市場価格押し下げ効果3があるので、輸出を後押
しすることは間違いない。
これに対して、米輸出を限定的とする見方も多い。特に、農業専門家の間では、悲観的
見通しが大半を占めている。特に、中国については、贈答品に限定され、価格設定自体が、
行政当局の裁量によって、中国産コシヒカリ等と明確な価格差をつけて、作為的に高値で
販売されているため、一層悲観的な見通しが多い。
こうした大きな見解の相違がある中で、将来展望を示すのは簡単ではないが、少なくと
も農業専門家以外が楽観的に期待しているような、「200 万トンにも及ぶ米輸出が短期間に
実現する」という見通しは、簡単ではない。米輸出は、増加させたいし、またそれは可能
であろうが、
「10 年以内に 200 万トン」というのは、無理のある想定である。
しかし、その一方で、米輸出に否定的な姿勢一辺倒であるのも、望ましくない。量の話
はさておき、米「輸出」は、製造業を含む他のあらゆる分野の「輸出」と同様に、産業に
活気を与える。スポーツの分野でも、国際的な交流がなく沈滞していたような種目でも、
海外遠征で世界の実情を知り、それが励みとなって、競技種目自体が活性化する例は、枚
挙に暇がない。「輸出」は、産業の「元気」を取戻し、成長していく起爆剤となる。積極的
に取り組むべきであろう。
輸出補助金は、現在の WTO 規約上は、既に実績のある欧米はその削減に努めることとな
っており、
「禁止」ではなく「削減対象」という意味で、Amber Box(日本語では「黄色の政
策」)であるが、日本の場合は、新たに輸出補助金を新設ということになるため、
「削減対象」
ではなく「禁止」とされており、WTO 上の政策区分では「赤」となる。
2 ガットウルグアイラウンドの交渉の過程では、EU は、アメリカが EU の輸出補助金を貿
易歪曲的であるとして批難したのに対抗して、アメリカの融資不足払い、更には不足払い
制度を、「隠れた輸出補助金」である、と批難した。
3 デカップリング型支払では、生産刺激することなく助成するため、その受取金は、そのま
ま生産者の手取りとなるが、そうでない通常の補助金であれば、補助の分だけ増産され、
価格が低下するため、方向は逆だが「課税の転嫁」等と同様のメカニズムが働き、補助金
の一部は需要側(流通・消費サイド)に移転し、一部だけが生産者の利得として帰着する。
1
2
さて、米輸出に取り組むとしても、更に見解の相違がある。一つに「日本米は品質が優
れているのだから、高くても売れる」という見方がある。この見方の延長として、「コスト
ダウンよりも高品質保証が大切」という戦略が浮上する。ところが一方で、「輸出促進のた
めには、価格引下げが不可欠」とする見方がある。この延長として、
「コストダウンによる
価格引下げが重要」という戦略になる。
ここで、経済学的に見るならば、ポイントは、価格弾力性である。それがマイナス 1.0 よ
りも大きいか小さいか、ということである。以下では、こうした背景から、計量モデルに
より、米輸出市場における価格弾力性の分析を行う。また、合わせて、所得弾力性等も計
測する。
2. 分析フレーム、モデル及びデータ
(1) モデルの概要
日本からの米輸出は、アジアでは 1990 年代末から始まったものの、本格化したのは、2000
年代半ば以降である。また、欧米への輸出は、アメリカ等一部の国ではやはり 1990 年代か
らあるが、その他の欧米の国では、輸出実績が断続的であったり量的に極めて少ない場合
も多い。本格化するのは、アジアよりも更に遅れ、2000 年代末からである。また、輸出開
始後も、断続的に実績がゼロとなる例も見られる。
こうした中で、最近六か年程度、断続的実績ゼロもなく、継続して実績が得られるのは
13 カ国に限られる。しかし、六か年程度では、余りにデータの期間として短すぎる。
そこで、より正確な計量分析結果を得るために、観測期間は極力長く取りつつも、その
一方で、地域別分析も行うため、一本の推定式ではなく、幾つかの推定を実施して合わせ
て判断することとした。
具体的には、地域別分析では、比較的以前から安定的な輸出実績があったアジアと、最
近になって輸出が始まった欧米等では、違いが大きい。そこで、地域によって別モデルと
しないために地域別比較は、輸出実績が始まってから途切れなくデータがある最近 6 か年
として、通常の OLS で計測した。その一方で、世界全体に対しては、輸出ゼロの期間も包
括的に観測期間として計測が可能な「トービットモデル(切断型)」4を用いることとした。
「トービットモデル」を狭義の意味で用いる場合には、この言葉の起源となった 1958 年
のトービンの論文で用いられた、いわゆる「閲覧モデル」(英文では censored model)にの
み用いられる。しかし、より広義に、いわゆる「切断モデル」(英文では truncated model)
を含めた広義の意味で、両者をともに一括りにして「トービットモデル」と称している解
説書も少なくない。このため、ここでは、
「トービットモデルの「切断型」」という表現で、
本稿で用いるモデルを表現する。
因みに、海外の解説書では、トービン発案の censored model のみを Tobit model という
例も多い。例えば、Greene(2012, p.888)は、制限従属変数型の三類型として truncated data,
censored data, sample selection をこの順序で取り上げ、censored data のモデルについて
のみ"Tobit"という名称が Tobin(1958)に因んで名づけられたことを明記している。
4
3
観測期間は 9 年間である。
従属変数は、各国への日本からの米輸出量である。説明変数は、それぞれの輸出先国で
の「価格(CIF 価格)」、各国の「一人当たり GDP」の基本的な二つに加えて、和食との接触
度が米輸出に影響すると仮定して、
「訪日観光客の人口比率」を採用した。
なお、言うまでもなく、米を食べること自体、その国の食文化に大きく規定されている。
よって、その輸入は、本稿で取り上げようとする(価格、所得等当該国の経済事情を表す)
説明変数もさることながら、それ以前の問題として、こうした文化的要因が大きい。
そこで、本稿では、これらが全てパネル分析モデル上、国別固定効果の中に、ダミー変
数として体現される、との仮説を設定する。この仮定は、食文化として日本との相違が大
きければ、それは潜在変数で大きなマイナス値がダミー変数として埋め込まれていると考
えれば良い。世界各国を網羅的に取り上げたデータの場合は、かなり制約が強過ぎる仮定
であるかもしれない。しかし、サンプルがここ数年で日本からの米輸出が確認された十数
か国に限定されていることからすれば、この仮説はそれほど無理のない設定である。
一方、係数ダミーとしての相違はないものと仮定する。係数ダミーの可能性がない訳で
はない。しかし、分析目的は、各国別の米輸入事情を詳細に分析することではない。日本
からの米輸出に世界がどう反応しているかを分析することである。だとすれば、世界共通
やアジア共通等の価格弾力性や所得弾力性を総括的に計測することが一義的な分析目的で
あり、これを各国別係数ダミーによって別々に把握したのでは、目的が達せられない。こ
の意味では、係数ダミーを設けない、共通の弾力性算出こそが重要なのである。
なお、本稿の趣旨からして、弾力性を求めることが主目的であり、両対数型の関数形で
の推定が分析のメインとなるが、データの性格からして、時系列変化では前年の数値と当
年の数値が無関係な訳ではなく、単位根の存在や系列相関も危惧される。そこで、参考と
して、差分による推定も併せて行う。
(2) データ
観測データとした 13 カ国は、アジアでは、台湾、香港、シンガポールの 3 カ国である。
中国本土は、日本が民間レベルで輸出努力を行っても、価格設定等は中国政府の行政当局
Maddala(2001, p.336), Heij et al. (2004)や Murray(2006)も、このような用語法である。
しかし、海外のものでも、例えば、Wooldridge(2002)や Cameron and Trivedi(2005)は、
両者を合わせて Tobit とし、切断型にも"truncated tobit model"という名称を明示している。
よって、本稿もこれに従う。
なお、和文解説書での用語法では、本稿で取り上げる切断型にも、トービットという表
現を用いている例が圧倒的に多い。例えば、縄田(2007)は、「(タイプ 1 の(よく知られた
Amemiya(1985)による 5 分類の中の 1 型))トービット・モデルは、
「途中打ち切り回帰モデ
ル」と「切断回帰モデル」に分類される」と整理している。牧(2001)も、Wooldridge のよ
うに、「切断されたトービット」という表現を用いている。蓑谷(2007)も、説明の多くを打
ち切り型のデータによるトービットに割きつつも、「切断型」もまたトービットの中に位置
づけている。
4
によって恣意的に設定され、市場原理がほとんど通用しない市場であり、分析しても正常
な結果が得られないため、分析対象からは除外する。欧米等では、アメリカ、イギリス、
カナダ、フランス、ロシア、オーストラリア、スイス、ドイツ、ニュージーランド、サウ
ジアラビアの 10 カ国である。全体として、観測期間は、2005~2013 年の 9 年間、対象国は
13 カ国5、サンプル総数は 117 である。
データは、財務省貿易統計を用いた。価格については、同統計の輸出額を輸出量で除し
て円建て FOB 価格を求めた後に、世界銀行の World Development Index の為替レートを用い
てこれを輸出相手国市場の通貨に換算し、CIF 価格と見做した6。一人当たり GDP は、WDI
の 2011 年基準の実質ベースの値である。
なお、この他の貿易データとしては、UN Comtrade のデータも利用可能であり、相手国市
場での他国からの輸入品との正確な価格比較では、その方が望ましい。しかし、実際にデ
ータを取ってみると、日本からの積み出し実績と数量が一致しないものが多かった。この
ため、日本からの輸出量の正確さを優先すれば、財務省貿易統計に優位があると判断し、
これを利用することとし、UNComtrade は、基本的に利用しないこととした。
なお、価格については、FOB 価格、CIF 価格名目値、CIF 価格の相手国インフレ率による
実質ベース換算値の 3 種類のデータが利用可能である。本稿では、このうち、最も相手国
マーケットベースの動向として適切な「CIF 実質ベース換算値」を用いることとした。一方、
日本からの輸出業者の価格引き下げの輸出増進効果としての実感に近い「FOB 価格」での
計測も補足的に行った。
「直近の訪日観光客人口比率」は、日本政府観光局のデータを用いて、前年、前々年の
訪日観光客の和の人口比率を説明変数とした。
「訪日観光客人口比率」については、単年度、
二年度累計、三年度累計と幾つか方法があり、また二年度累計にしても、その当期から遡
って二年、前期から遡って二年等、幾つものデータの取り方が選択肢として可能である。
そこで、これらについては、実際に比較のための推定を行い、最も有意性が高いものを採
用した。それが、前期から遡って過去 2 か年分の累積値である。
3. 予備的分析
(1) 単位根検定
過去 9 カ年の累積輸出量が多い上位 16 カ国の中から、中国本土を除き、それ以外で、OLS
分析を実施する上で必要な条件として、最低限、最近 6 カ年(2008-2013)は連続して輸出実
績がある国、13 カ国を選定した。マカオ、ノルウェーは、ニュージーランド等とほぼ同水
準の累積実績があるものの、マカオは 2010 年、ノルウェーは 2012 年、それぞれ実績ゼロ
となっており、データの扱いで不都合となるので除外した。
6 正確な CIF 価格は、言うまでもなく運賃、海上保険料を加えた額であるが、このデータ
の入手には困難性があるので、単純な為替レート換算値を用いた。全輸出国につき同じ処
理を行うので、統計処理上は、さほどの問題を生ずることはないものと考えられる。
5
5
パネルデータの単位根検定は、実に多くの検定方法が考案されており、どれを採用する
かは、悩ましい問題である。Maddala(2001)によれば、パネルデータの単位根検定は、百家
争鳴の感があり、その優劣が比較されているが、そもそも帰無仮説自体が、「単一クロスセ
クションでの単位根の存在をも逃さずに検出するもの」なのか、「全クロスセクションを通
じて検出するもの」なのか等、大きく異なる設定となっているので、
「単純比較は意味がな
い」と指摘している。北村(2005)も、帰無仮説、対立仮説が異なる各種のパネルデータの単
位根検定方法では、相互に代替関係にあるとは言えない旨を指摘している。
とはいえ、実務的7には、いずれかの検出方法の数値に依拠して、単位根があるのかない
のかを判定しなければならない。そこで、本稿では、Maddala(2001)も指摘しているように、
パネル分析の単位根検定では最も一般的に用いられている Levin, Lin and Chu のテスト(LL
検定)を判定基準の一つとして用いることとする。
Levin, Lin and Chu8は、全クロスセクションで共通の単位根過程があると仮定しての推定
である。ただし、Hsiao(2002)も指摘しているように、LL 検定の「共通の単位根過程がある」
との仮定は、ある意味では強すぎる制約である。そこで、これを緩めた検定方法として、
「LL
検定のように共通する単位根過程を持つ訳ではない」という前提で9、検出力が強い ADF も、
もう一つの判定基準として採用する。ADF は、単一時系列の単位根検定では最も馴染のあ
る方法である。
単位根検定の手順としては、山澤(2004)の指摘に従い、まず定数項、トレンド項の双方を
入れたモデルで、目的とする変数をレベルで推定し、トレンドが有意の場合には、そのま
ま単位根検定結果を受け入れる。トレンドが有意でない場合は、トレンドを除いたモデル
で推定し、これを検定結果とする。さらに、全てについて一通り一階差分の単位根検定も
行う。このプロセスを、生の数値、対数の双方について行う。
表 1(A) 単位根検定の結果(13 カ国データ、実績ゼロを含む)
例えば、Verbeek(2012)は、"Second Generation Panel Unit Root Tests"と称して、最新
の論争を紹介しているが、そこで注目している Cross-Sectionally Augmented DickeyFuller test (CADF)は、既存統計ソフトで簡単に大量に作業ができるものではない。実務的
に、採用は困難である。
8 Kennedy(2012)は、
Hlouskova and Wagner が「モンテカルロ実験の結果に基づき Levin ,
lin and Chu が最も推薦できる方法である」として指摘していることを引用しつつ、暗にこ
の方法の妥当性を支持している。
9 この前提であれば、Im, Pesaran and Shin のテスト(IPS 検定)も、強い検出力を持つ。
Maddala も、LL 検定の次に、比較的よく用いられる検定として、共通の単位根過程ではな
い想定では IPS 検定を挙げている。しかし、松浦・マッケンジー(2012)が指摘するように、
IPS 検定の最大の欠点として、balanced data でのみ使える、という制約がある。本稿では、
米輸出開始初期では、ゼロ実績がある年次も取り込んで分析するため、パネルデータは、
balanced ではない。よって、IPS 検定は使えない。
7
6
変数
輸出量
絶対値(level 値)
対数
定数+trend
定数のみ
一階差分
定数+trend
定数のみ
一階差分
0.0000***
trend は有意
0.0000***
0.0000***
trend は有意
0.0000***
(0.0000)***
(0.0207)**
(0.0389)**
(0.0000)***
trend は有意で
0.0006***
0.0000***
trend は有意
0.0001***
0.0000***
ない
(0.3302)
(0.0003)***
でない
(0.2455)
(0.0001)***
訪日観光客人口比
trend は有意で
0.1245
0.0002***
trend は有意
0.1065
0.0000***
率
ない
(0.7861)
(0.3181)
でない
(0.7765)
(0.2502)
CIF 価格実質換算
trend は有意で
0.0000***
0.0000***
0.0000***
trend は有意
0.0000***
ない
(0.0000)***
(0.0000)***
(0.0007)***
0.0000***
trend は有意
0.0000***
0.0000***
(0.0000)***
(0.0002)***
GDP
FOB 価格
(0.0000)***
(0.0000)***
trend は有意
0.0000***
(0.0000)***
表 1(B) 実績ゼロを含まない 7 カ国を対象としたパネルデータの単位根検定の結果
変数
絶対値(level 値)
対数
定数+trend
定数のみ
一階差分
定数+trend
定数のみ
一階差分
0.0000***
トレンドは有
0.0000***
0.0003***
トレンドは有
0.0000***
(0.2019)
意
(0.0002)***
(0.1641)
意
(0.0002)***
トレンドは有
0.0016***
0.0000***
トレンドは
0.0007***
0.0000***
意でない
(0.2417)
(0.0048)***
有意でない
(0.2094)
(0.0040)***
訪日観光客人口比
トレンドは有
0.1059
0.0011***
トレンドは
0.0990*
0.0004***
率
意でない
(0.5545)
(0.3701)
有意でない
(0.5746)
(0.2462)
CIF 価格実質換算
トレンドは有
0.0000***
0.0000***
0.0005***
トレンドは有
0.0000***
意でない
(0.618)*
(0.0000)***
(0.1269)
意
(0.0000)***
0.0000***
トレンドは有
0.0000***
0.0000***
トレンドは有
0.0000***
(0.0110)**
意
(0.0000)***
(0.0696)*
意
(0.0001)***
輸出量
GDP
FOB 価格
注 1) 各欄の上段は、LL 検定の結果の P 値である。下段カッコ内は、ADF 検定の結果の P 値である。
2) 一階差分は、いずれもトレンドを含まない式による検定である。
3) ***は 1%水準で有意、**は 5%水準で有意、*は 10%水準で有意、△は 20%で有意、無印は有意でないこ
とを意味する。
4) 網掛け部分は、「単位根がある」という帰無仮説が棄却できなかった検定結果である。
5) 太字部分が、実際に後述する推定で用いられるデータである。
推定結果を見ると、最も中心となる弾力性推定に用いる対数式では、訪日観光客人口比
率を除くと、残り全ての変数で、少なくとも LL 検定では、単位根はないことが確認された。
「訪日観光客人口比率」では、10%の水準でも有意でなかったが、10%近くであり、全く有
7
意でない訳ではなかった。一方、検出力の強い ADF 検定では、「一人当たり GDP」と「訪
日観光客人口比率」で有意でなかった。
とはいえ、
「従属変数に単位根がある」という帰無仮説は強く棄却できる。推定結果の信
頼性については、これである程度確保できる10。よって、対数式による弾力性推定をそのま
ま実行し、推定後に残差の単位根を再度調べることで、推定に問題がないかどうかをチェ
ックすることとした。
差分については、LL 検定では、全ての変数で単位根は検出されず、また、検出力の強い
ADF 検定でも、
「訪日観光客人口比率」のみが有意でなかったが、それ以外は強く有意であ
った。差分については、かなり高い確度で「単位根があることによる深刻な問題が生じて
いることはない」と言えるが、これに関しても、念のため、推定後の残差についての単位
根検定を実施することとした。
なお、データは、実績ゼロの年次を含む unbalanced panel であるため、そのことによる影
響も危惧される。そこで、参考までに補助的検定として、対象国を 13 カ国から、実績ゼロ
を含まない 7 カ国に絞って単位根検定を行った11。その結果、LL 検定に関しては大きな違
いはないものの、ADF 検定については、輸出量と CIF 価格に関して、やや悪化した。
Murray(2006)(pp.764-770.)は、単位根のある変数が推定式の中で、説明変数にある場合、
被説明変数にある場合、双方にある場合の三つそれぞれについて、詳細な検討を行ってい
る。そして、典型的な spurious regression(見せかけの相関)が生ずるのは、被説明変数、説
明変数双方に単位根がある場合としつつも、片方でのみ単位根がある場合でも、被説明変
数にある場合は、パラメータ推定値の一致性がないことを指摘している。その上で、説明
変数の側にのみ単位根がある場合、
「一致性では、むしろ通常の場合以上に速く真のパラメ
ータの値に収束する性質(super consistent)さえある。しかし、漸近性(asymptotically
unbiased)はない」と指摘している。ここで、問題の所在は、
10
β*=β+(Σ(Xt-Xav)Ut)/Σ(X-Xav)2
β*: パラメータ推定値、β: 真のパラメータの値、Xav: 平均値、Ut: 誤差項
で右辺第二項がゼロに収束しないことであるから、片方の単位根だけでも問題が生じ、通
常の t 検定の結果が妥当でないこととなる。ただし、説明変数の側だけの場合は、少なくと
も一致性はあるため、問題は軽微である、ということである。
この Murray の分類に従えば、本件は、三番目のケース、即ち「説明変数に単位根があ
るが被説明変数にはない」というケースである。大標本の場合には一致性があることによ
りその t 検定の結果等は妥当であるが、本件のような時系列 9 年分程度の小標本では、その
推定値は、それほど高い信頼性を置けない、というものである。
以上の単位根検定の結果を総合勘案して、本件では、対数式での推定は、説明変数に単
位根があるため、その推定結果については、小標本では t 値が通常の推定値のように確証を
持てるものではないものの、一致性は確保できるため、そのまま対数値を説明変数として
採用する。推定結果の妥当性については、事後的に誤差項の単位根検定により確認する。
11 補助的検定として、6 カ年のデータに絞れば、13 カ国の単位根検定も一応数値の算出が
可能である。しかし、年限を短くすると、単位根は検出しにくくなる傾向があるため、こ
こでは、同じ 9 年を期間として確保しつつ、国の数を絞ることとした。
8
(2) 推定方法の選抜その 1 「固定効果かランダム効果か」
本稿では、データの性格からして、クロスセクション方向では国別であり、無作為に抽
出したようなものではないため、ランダム効果には馴染まない。また、時間軸方向では、
固定効果を設定する理論的根拠が薄い。一方で、歴史的、文化的背景等を踏まえた分析と
するには、国別固定効果が、理論的には最も相応しい。
以上のことを念頭に置きつつも、ここでは一通り、パネル分析における基本的な手続き
として、クロスセクション方向と時間軸方向の固定効果とランダム効果、そして、プール
ド推定の 5 通りの妥当性を検定する。ただし、本稿のデータではフルサイズの 13 カ国 9 年
間のデータでは、実績ゼロという欠落データが多数ある。このため、balanced data として正
常な検定ができない。そこで、念のため、その 13×9 以外にも、実績がすべてそろって balaned
data となる 13×6 についても、パネル推定形式のテストを行う。
表 3(1) 個別効果の選択に関する推定結果(13 カ国 9 年間データ(実績ゼロを含む))
pooled
cross
fixed
cross
period
random
fixed
period
random
cross-period
2 次元配置
価格(CIF ベース)
+0.175
-1.404***
-1.168***
+0.391△
+0.175
-1.116***
一人当たり GDP
+0.161
+3.689△
-0.393
+0.419
+0.161
-0.864
訪日観光客人口比率
+0.662***
+1.026***
+0.819**
+0.661***
+0.662***
+1.510**
自由度調整済決定係数
0.3660
0.8884
0.4568
0.4667
0.3660
0.8967
ダービー・ワトソン比
0.6731
1.2273
0.8605
0.6625
0.6731
1.3099
F 検定
-----------
0.0000***○
------------
0.0016***○
--------------
0.0000***○
0.0205**○
Hausman test
-----------
------------
×
------------
×
-------------
残差単位根
0.0000***
0.0000***
0.0000***
0.0000***
0.0000***
0.0000***
(0.0052)***
(0.0018)***
(0.0034)***
(0.0000)***
(0.0052)***
(0.0000)***
○
○
○
○
○
○
0.0000***×
0.0299**×
0.0000***×
0.0000***×
0.0000***×
0.1212○
残差系列相関簡易検定
表 3(2) 個別効果の選択に関する推定結果(13 カ国 6 年間データ(全期間で輸出実績あり))
pooled
cross
fixed
cross
period
random
fixed
period
random
cross-period
2 次元配置
価格(CIF ベース)
+0.214
-1.476***
-1.256***
+0.309
+0.214
-1.369***
一人当たり GDP
+0.379
+2.814△
-0.437
+0.462
+0.379
+0.211
訪日観光客人口比率
+0.616***
+0.642△
+0.667*
+0.613***
+0.616***
+1.563**
自由度調整済決定係数
0.3857
0.9307
0.5140
0.4196
0.3857
0.9293
9
ダービー・ワトソン比
0.9869
1.9776
1.6219
0.8316
0.9869
2.0161
F 検定
------------
0.0000***○
------------
0.1118×
------------
0.0000***○
0.5891×
Hausman test
------------
------------
×
------------
×
------------
残差系列相関
0.0000***×
0.9213○
0.0000***×
0.0000***×
0.0000***×
0.9710○
注) 1) ***は 1%水準で有意、**は 5%水準で有意、*は 10%水準で有意、△は 20%で有意、無印は有意でないことを意味
する。
2) いずれの式でも、t 検定に用いる共分散は、系列相関に対応できる White の時間軸方向の共分散を用いている。
3) 残差の系列相関は、本来は、Breusch-Godfley LM test を実施すべきであるが、簡易な方法として、Wooldridge(2002,
pp.282-283.)の指摘に従い、残差を一期前の残差で、定数項なしの式で回帰して、そのパラメータが有意かどうかを見る
こととした。
4) 単位根検定は、( )外が LL 検定、( )内が ADF 検定である。また、いずれもトレンドを交えず定数項のみでの検定
である。なお、13×6 のデータの推定では、観測期間が短く、単位根の検出が弱いので、検定は実施せず、単位根検定の
判定は、13×9 の結果のみで判断した。
メインの推定である 13 カ国×9 年間の推定結果を見ると、単位根検定ではいずれのモデル
も問題なかったが、DW 比が全体的に低く、系列相関も簡易テストで検出されるものが多か
った。
この点にも配慮しつつ、個別モデル毎にパフォーマンスを見ると、クロスセクションラ
ンダム効果は、ハウスマンテストの結果が否定的であり、またそもそも、理論的に考えて
も無作為抽出ではないため採用は不適切と判断されることから、両面で見て採用すべきで
はない。時間軸のランダム効果も、ハウスマンテストの結果から見て、その採用は正当化
できない。また、プールド推定は、最も関心のある価格弾力性のパラメータがプラスであ
り、理論的に整合性がない。このため、採用は不適である。三者は、共通して低い決定係
数、低い DW 比、強い系列相関が検出、という欠点が明確であり、選択肢から除外する。
クロスセクション方向の固定効果は、F テストで有意である。ただし、系列相関が見られ
る、という弱点がある。一方、時間軸固定効果は、確かにプールド推定と同様に価格弾力
性のパラメータがプラスであるものの、固定効果自体は F テストで有意との結果が得られ
る。そこで、この二つを組み合わせた二元配置のモデルを推定した。その結果、価格弾力
性はマイナスで有意な値が計測され、しかも、一元配置のクロスセクション固定効果のみ
では系列相関がみられたものが解消された、また、決定係数も上昇した。依然として「所
得弾力性かマイナスに計測される」という、やや理論的には不整合な部分も残ったが、候
補としては残すこととした。
以上の結果、候補を、一元配置のクロスセクション固定効果と二元配置の固定効果の二
つに絞り、13×6 の推定結果を見ることとする。
10
balanced panel となる 13×6 のデータの推定結果を見ると12、13×9 データの推定結果と 13×6
データの推定結果で異なる点が二つある。一つは、時間軸固定効果が F テストで有意でな
い結果となったことである。これに関連して、二元配置でも、その時間軸固定効果の部分
は有意でない。一方、もう一つの相違点として、前者ではクロスセクション固定効果では
系列相関があったが、13×6 では、それが 0.9213 と強く否定され、問題は解消されている。
この原因は、実績ゼロの部分が強く影響して 13×9 では系列相関が観察されたものの、核心
部分である最近 6 カ年の実績が連続する部分のみでは、それが生じていないことによるも
のと解釈できる。また、時間軸固定効果が 9 年間データで有意だったのは、実績ゼロが多
い観測期間初期の状態が影響したもので、全ての国で連続的輸入実績が開始されて以降で
は、時間軸固定効果は適切ではないものと解釈できる。
以上を総合的に勘案すると、候補として残していた二つのうち、二元配置モデルは採用
しないこととし、クロスセクション固定効果を採用することとする。ただし、9 年間で計測
する場合には、依然として系列相関に注意しつつ、時間軸方向の系列相関に対応可能な共
分散として「White period covariance による標準偏差の補正」を行いつつ t 検定を行うものと
する。
(3) 推定方法の選択その 2 「GLS の推定方法を用いるか否か」
クロスセクション固定効果を用いるとしても、GLS を用いてウエイト付けして推定する
のか、それともウエイト付けせず OLS として推定するか、等の選択がある。この場合、ク
ロスセクション方向の固定効果を用いているので、時間軸方向での GLS は採用できない。
また、クロスセクション方向であっても SUR は、一つのクロスセクションについて十分な
時間軸方向での情報が必要であり、N<T を必須要件とするので、本件データは N>T であ
るため使えない。よって、選択肢は、そのままでは、no weight の OLS とするか、cross 方向
の weight の GLS かのどちらかである。
比較は、固定効果 OLS か、固定効果 GLS か、の二つに加えて、系列相関の恐れも危惧さ
れることから、これへの対処として、一次の自己相関 AR(1)を組み込んだモデル、コクレン・
オーカット法を用いたモデルについても、参考として推定する。また、実績ゼロデータに
よる各種検定結果の撹乱も危惧されるので、実績が揃った最近の balanced data である 13 カ
国×6 年間についても、OLS/GLS の二つにつき参考として比較する。
推定結果を表 5 に示した。これを見ると、GLS(cross weight)は、決定係数が高く、DW 比
も OLS よりも良く、また t 検定では全ての説明変数パラメータで強く有意な結果となって
12
ここでも、ランダム効果については、ハウスマンテストの結果、採用不適となること、
プールド推定では価格弾力性がプラスとなり不適切であること等は、ほとんど 13×9 の推
定結果と同様の結果が観察できる。
11
いるので、一見良好なパフォーマンスに見える。しかし、RESET テストでは、
「定式化の誤
りあり」との診断結果になった。OLS も RESET テストは決して良くないが、それでも 5%
水準では有意ではない。系列相関で問題がある点では、OLS も GLS(cross weight)も同様であ
る。OLS に代わって、GLS(cross weight)を導入すべき積極的な理由は見当たらない13。
表 5 OLS, GLS 等の比較
説明
13 カ国×9 年間データ
13 カ国×6 年間データ
変数
OLS(no
GLS (cross
OLS;
OLS; Cochran
weight)
weight)
AR model
-O model
CIF 価格
-1.404***
-1.427***
-1.239***
-1.243***
-1.476***
-1.459***
GDPcapita
+3.689△
+4.911***
+3.820*
+3.740**
+2.814△
+4.293***
訪日観光客比率
+1.026***
+1.188***
+0.854△
+0.845△
+0.642△
+0.892***
R2
0.8884
0.9571
0.9238
0.8637
0.9307
0.9861
DW 比
1.2273
1.5557
1.8978
1.8090
1.9776
2.0768
F-test
0.0000***○
0.0000***○
0.0000***〇
0.0000***○
0.0000***○
0.0000***○
誤差項単位根
0.0000***
0.0000***
0.0000***
0.0000****
0.0000***
0.0000***
(0.0018)***
(0.0008)***
(0.0000)***
(0.0000)***
(0.0019***)
(0.0015***)
○
○
〇
○
○
○
0.0299**×
0.0196**×
0.4769〇
0.6716○
0.9213 ○
0.7728 ○
-------------
-------------
-------------
-------------
0.1764 ○
0.1969 ○
分散不均一 BPtest
0.4053 ○
0.3384 ○
0.9900 ○
0.8215 ○
0.9993 ○
0.3745 ○
RESETtest
0.0682*△
0.0356**×
(計測不能)
0.2223 ○
0.2580 ○
0.1218 ○
誤差項系列相関
OLS(no weight)
GLS (cross
weight)
(簡易テスト)
Breusch-Godfley LM
test(系列相関)
注 1) OLS, GLS(cross weight)は、時間軸方向の系列相関への対応を行うため、White period 方向での共分散を採用してい
る。それ以外は、通常の共分散である。
2) コクラン・オーカット法モデルでは、逐次数回にわたり再推定を繰り返すケースもあるが、本件では、一回の係数推
定のみで自己相関が完全に除去されたので、その推定値を掲載した。
3) Breusch-Godfley LM test は、実績ゼロ推定があるとできないため、実績データが揃っている 6 年間についてのみ実施し
た。
系列相関への対応を主目的として考案されている AR(1)モデルやコクラン・オーカット法
他のいずれの推定式によっても Breusch-Pagan test の結果、分散不均一はないことが確
証されているので、分散不均一是正を狙いとする GLS(cross-section weight)の採用は、こ
の観点からも不適である。
13
12
のモデルでは、事実、系列相関は除去されている。ただし、これらの推定方法を前提とし
て、そのまま実績ゼロデータにも適した Tobit モデルに変換しての推定は、困難である。一
方で、OLS による推定は、確かに系列相関があるものの、それが致命的な推定の誤りをも
たらしているというほどではない14。
そこで、AR(1)やコクラン・オーカット法の推定結果を参考としつも、OLS(no weight)を
基にして、実績ゼロを踏まえたモデル(Tobit モデル)による推定へと展開させていく方向が
妥当である。
確認のため、6 年データを見よう。6 年間の実績が揃ったデータの推定結果では、OLS で
も、RESETtest の結果も良好であり、定式化の誤りはないことが確証された。また、簡易な
系列相関検定でも、本格的な Breusch- Godfley LM test でも、良好な結果であり、系列相関
がないことが確証された。
このことからして、9 年分のデータで系列相関が認められたのは、欠落データが原因であ
るものと推察される。揃ったデータに限れば、通常の OLS からの推定で、しかも AR(1)や
コクラン・オーカットを使わなくとも問題がないことが予想される。
4. 分析結果
(1) 対数式による弾力性の推定
1) 全体概観
分析結果を見ると、まず世界全体を計測した三つの推定式については、係数の値自体に
は、若干のズレがあるものの、全体的に符号条件やおよその値はほぼ理論通り、仮説通り
の結果となり、大きな矛盾はなかった。各種検定でも概ねパフォーマンスは良好であった。
データが揃っている 13 か国×6 年間のモデルが最も決定係数が高く、DW 比も 2.0 に近く良
好であった。
北村(2009, pp.151-159.)が指摘するように、OLS 推定とトービットモデルによる推定との
比較では、有意な説明変数では、両者の値は、同じ一定の係数を乗ずることで比較可能で
ある。ここでは、価格と訪日観光客人口比率では、ともに強く有意であり、その係数は
0.79~0.82 (逆に OLS の値から見れば、1.22~1.26)を乗じた値となっている。ただし、北村も
指摘するように、有意が弱い係数では、必ずしもその比率には従わない推定値となる傾向
があり、所得弾力性はそのようになっている。
2) 価格弾力性
因みに、本件では、ラグ付従属変数を右辺に用いていないので、系列相関がある 9 年モ
デルであっても、推定結果は、BLUE の要件は満たさないものの、不偏性と一致性は確保
されている。
14
13
個別にパラメータを見ていくと、価格弾力性は世界全体で見て、過去 9 年間では-1.712
程度である。なお、表に示したのは CIF ベース(相手国実質換算)の価格弾力性(-1.712)であ
る。説明変数に CIF ベース価格に代わって、FOB 価格を代入して計測すると、-1.471 とな
る。日本の輸出企業にとって、価格引き下げに対する売上高の伸びとして実感できるのは、
むしろこの数値である。
数値の解釈について詳述すると、OLS で-1.404 は、実績ゼロを明示的に推定に組み込ん
でいないので過少推定であろうが、一方で、系列相関除去を優先したコクラン・オーカッ
ト法では-1.243 等の計測結果もある。この系列相関完全除去による弾力性数値の低下を見
込 め ば 、 OLS を 基 礎 と し て 切 断 型 ト ー ビ ッ ト モ デ ル と し て 計 測 し た - 1.712 は 、
1.712×1.243/1.404 により、-1.516 と修正される。とはいえ、いずれにしても、9 年間通し
での価格弾力性の絶対値が 1.500 よりも小さくなる可能性はほとんどない。即ち、価格弾力
性は、明らかに 1.000 よりもかなり高い15。
この推定結果からすれば、コストダウンにより価格を引下げて数量増加を目指せば、あ
る程度の販売額総額の増加が期待できることを意味している。少なくとも、「高値で出回り
を制限した方が売上高が伸びる」という考え方は誤りである。
ところで、最近 6 年では-1.476 程度となっている。この数値の低下は、「最近になって
世界各国で日本米の価格弾力性が低下した」と見るべきではなく、「価格弾力性が低い欧米
の国が新たに日本からの米輸入を開始した結果、世界全体の平均が低下した」と見るべき
であろう。
表 6(1) 対数推定式による世界市場分析と地域別比較分析
説明変数
OLS 13×9
比較対象
世界 13 カ国全体の計測
CIF 価格
-1.404***
-1.712***
-1.476***
-3.435***
-1.458***
GDPcapita
+3.689△
+3.385***
+2.814△
-1.471
+4.473*
訪日観光客比率
+1.026***
+1.295***
+0.642△
+1.502***
+0.573
R
0.8884
計測不能
0.9307
0.8762
0.8489
DW 比
1.2273
計測不能
1.9776
1.9297
2.1546
F-test
0.0000***○
0.0000***○
0.0000***○
0.0002*** ○
0.0000*** ○
誤差項単位根
0.0000***
0.0000***
0.0000***
0.0289**
0.0000***
(0.0018)***○
(0.0040)***○
(0.0019***) ○
(0.2741) △
(0.0007***) ○
0.0299**×
計測不適
0.9213 ○
0.9988 ○
0.7164 ○
2
誤差項系列相関簡易検定
tobit 13×9
OLS 13×6
アジア 3×6
欧米等 10×6
地域別計測
15
価格弾力性の推定値は、説明変数三つの中では、最も安定的であり、符号及び数値の確
度はかなり高いものと見て良い。即ち、推定方法を替え、更に観測期間も替えた表 5 の推
定結果でも、このパラメータ推定値は、符号は負で、最大と最小でも 16%の開きしかない。
全て 1%水準で有意である。
14
系列相関 LMtest
計測不能
計測不能
0.1764 ○
0.4695 ○
0.0537 △
分散不均一 BPtest
0.4053 ○
計測不適
0.9993 ○
0.3267 ○
0.9536 ○
RESETtest
0.0682*△
0.8111 ○
0.2580 ○
0.1318 △
0.1329 △
注) ***は 1%水準で有意、**は 5%水準で有意、*は 10%水準で有意、△は 20%で有意、無印は有意でないこ
とを意味する。
特に、注目したいのは、アジア市場である。アジア市場では、価格弾力性は-3.435 と、
極めて高い値を示している。これが意味するものは、もしこの数値が正しいならば、価格
を 10%引下げれば 34.4%の輸出量増加が見込めることである。このことから導かれる結論は、
「アジア市場では、大幅な輸出増加のためには、コストダウンを通じた販売価格の切り下
げが必要」ということである。
これに対比する意味で、欧米市場を見ると、価格弾力性は余り高くない。なお、後述す
る差分で見ても、係数の大小関係は、「世界平均より欧米等がやや小さく、アジアはかなり
大きい」という関係は、ほぼ同様である。この差が物語ることは、価格引き下げによる販
売増加の効果は、アジアが極めて強く、欧米等はそれほどではない、ということである。
ただし、アジアの推定については、3 か国とサンプルが少なく、検定上も誤差項に単位根
が残っていることも危惧され、パラメータ計測値の信頼性はやや劣る。欧米より高い弾力
性である可能性はかなり高いが、3.435 という数値の確度については少し慎重に見る必要が
あろう。
3) 所得弾力性
所得弾力性は、世界全体では、トービットモデルでは、確かに正に強く有意であるが、
観測期間を替え、推定方法を替えると、必ずしも安定的な数値で、安定的に強く有意とい
う訳ではない。表 5 を併せて見ると、このことがわかる。とはいえ、プラス 3 前後 26%程
度の幅に収まっていることも事実である。相対的には三変数の中では、価格弾力性に次い
で、確度の高い推定結果であろう。
地域別に見ると、価格弾力性とは逆に、アジア市場では、有意でないとはいえ、符号条
件が正常ではない結果となった。これに対して、欧米市場では、理論的に予想された通り
に、正の反応で、しかも敏感であった。
所得弾力性で注意すべきことは、その絶対値が価格弾力性よりも大きいことである。世
界全体で 3.0 以上、最近 6 カ年でも 2.8、欧米市場では 4.0 を超える。これは、経済成長に
より輸出増加が見込める、というプラス面に解釈することも間違いではないしかし、重要
なことは、その反面、景気変動の影響を受け易いことを意味する。
このことで想起されるのは、かつて戦前の日本経済で外貨獲得の主役であった生糸が、
所得弾力性が極めて高い財であったことである。1929 年から 1930 年代にかけて欧米を中心
として世界経済を襲った同時不況は、日本からの生糸輸出に深刻な打撃を与え、東日本を
15
中心とする養蚕農家は貧困に喘ぎ、娘の身売り等の社会問題とさえなった。米輸出は、今
後とも振興していくべきものであるが、特定の稲作地帯や特定経営の米輸出への過度な依
存は、高い所得弾力性からして、世界経済の景気変動の影響を受け易いことに十分に注意
しておく必要があろう。
4) 訪日観光客人口比率
「直近の訪日観光客の人口比率」は、観測期間 9 年の世界全体は有意であるが、最近 6
年間の世界全体ではやや弱い16。地域別に見ると、アジアでは強く有意で数値も高いが、欧
米市場では数値も小さく、10%水準では有意でないが、ある程度の関連性は窺える。最近年
の弾力性の低下は、反応の弱い欧米各国で輸入実績が始まったことが影響しているものと
考えられる。
とはいえ、アジア市場に限れば、強く有意となった推定結果は、訪日観光客を増やして
本場の日本米を味わってもらうことが米輸出に効果的なことを示唆している。大泉(2009)
は、米と言う物品の輸出ではなく、
「ごはん食」という食文化を輸出する姿勢が肝要である、
との指摘している。大泉が言うように、今後の米輸出を考える際には、食文化を輸出する、
という基本姿勢が重要であろう。
(2) 差分式による補助的推定
表 6(2) 差分推定式による地域比較分析
世界 13×9
世界 13×6
アジア
欧米等(選抜国別ダ
ミー)
CIF 価格
-1.327△
-1.864***
-4.737*
-1.483***
GDPcapita
+0.568***
+0.838***
+0.969***
+0.544**
訪日観光客比率
+0.308***
+0.268***
+0.259***
+0.733***
R2
0.5330
0.7571
0.6946
0.2906
DW 比
2.0846
2.6824
2.5198
2.7983
F-test
0.0000***〇
0.0000***〇
0.0036*** ○
(固定効果ではない)
誤差項単位根
0.0000***
0.0000***
0.0000***
0.0000***
(0.0000***)〇
(0.0001***)○
(0.0503*) ○
(0.0001***)○
0.0147** ×
0.1848 ○
0.0132** ×
0.4750 ○
残差一期前推定の係数が
16
訪日観光客比率の説明変数については、単位根検定では、この説明変数に最も強く単位
根が検出された。このため推定パラメータの信頼性は三変数の中では最も劣ることとなる。
事実、表 5 でも、推定値は安定性でやや劣る。大まかに言うならば、弱く正に有意で 1.0
前後の数値となることは確かであろうが、それ以上の確度を求めた議論は避けるべきであ
ろう。
16
-0.5 となる WALDtest
分散不均一 BPtest
0.8444 〇
0.9174 〇
0.6216 ○
0.9251 ○
RESETtest
0.4480 〇
0.8070 ○
0.6181 ○
0.1952 ○
注) 1) 欧米等の差分では、固定効果の Ftest を行ったところ、有意でなかった。このため、各国を個別にダミー変数とし
て入力し、有意でなく P 値が大きいものから逐一除去していった。10 か国で 9 のダミー変数を 5 つに絞り込んだところ
で、個別ダミー変数の P 値で最大のものがほとんど 0.1(正確には 0.1008)になったので、この時点でのダミー変数を残し
て確定値とした。なお、更に 0.1008 のダミー変数も除去し、全ダミー変数の P 値が 0.05 以下になるまで続けると、3 つ
のダミー変数のみが残り、決定係数も 0.3 台にまで上がる。この場合、三つのパラメータは、それぞれ-1.523, +0.491, +0.462
となる。ただし、全体の有意性を F 検定したところ、5 つのダミーの場合と変化はない。表では、5 つのダミー変数の時
の値を確定値として採用し、掲載した。
2) ここに掲載されている差分推定式の係数の推定値は、奇しくも、対数式の推定結果と比較して、価格の係数では-
1.3~4.0 程度、その他の二つ説明変数の係数では、+0.3~1.5 程度と、かなり近い値が得られている。しかし、言うまでも
なく、両者は全く別の算出であり、比較できない性格のものであることを明記しておく。
3) いずれもの推定式でも、系列相関に対応した時間方向の White の共分散を用いて推定している。
4) ***は 1%水準で有意、**は 5%水準で有意、*は 10%水準で有意、△は 20%で有意、無印は有意でないことを意味する。
差分による推定は、通常、強い単位根がある場合等、生の水準値に「代替」して差分式
によるモデルで、従属変数と説明変数の関係を計測することが多い。しかし、本稿では、
対数推定式自体で、誤差項でほとんど単位根が残っていないことが確認できる、比較的良
好な推定結果である。よって、
「代替」ではなく、
「補完的」に差分式による推定を用いる。
対数推定式では、アジアで、誤差項にも単位根が残り、所得弾力性が有意でないとはい
え、負の値というやや不自然な推定結果となった。また、アジアの訪日観光客人口比率は
大きい値となった。これらにつき、差分における推定結果により補完的にチェックしよう。
差分では、アジアの所得の項は正であり、正常で、しかも数値は世界全体とそれほど違
わない。他方、差分では訪日観光客人口比率は、世界全体とほぼ同様で、対数推定式のよ
うに、大きな値という訳ではない。これら二つの変数で、アジアが特別な動きになってい
るどうかは、対数推定式の結果だけで判断せず、さらに慎重に検討すべきであろう。
欧米等の訪日観光客人口比率の対数推定式の結果では、符号は正で理論通りであったが
有意でなかった。しかし、差分推定式では、強く有意で、しかも世界全体の数値よりもむ
しろ大きい値が計測されている。「アジアでこの説明変数が強く有意で、訪日観光客の誘致
が米輸出にも効果的」との結論は、間違いではなかろうが、それと対比して、対数推定式
の結果だけから、「欧米にはこの戦略が効果が薄い」と即断するのは無理があり、慎重に検
討すべきであろう。
これら二つの説明変数と比較して、価格弾力性では、「アジアが世界全体や欧米よりも抜
きんでて大きい」という性格は、対数推定式でも差分推定式でも同様であった。よって、
この傾向(アジアの価格弾力性が明らかに大きいという傾向)は、かなり頑強なものと見てよ
17
いであろう。
なお、差分式による推定で、対数推定式と同様、仮説通りの正常な符号条件となり、係
数も多くが強く有意であったことは、少なくとも、いわゆる「見せかけの相関」ではない
ことを示唆している17。
ところで、差分式では、系列相関がもし無ければ、松浦・マッケンジー(2012)によれば、
誤差項の一期前を説明変数として回帰すれば、係数は-0.5 となるはずであり、これを基に
wald 検定を行えば、系列相関がチェックできる。これを実施したところ、実績ゼロを含む
世界全体の長めの期間 13 カ国×9 年間では、系列相関が認められたが、13 カ国×6 年間、そ
の欧米地域では、系列相関がないことが確認できた。ただし、アジアでは、系列相関が残
った。
なお、通常 DW 比は、系列相関を表す指標として、2.0 に近ければ OK、遠ざかれば系
列
相関の悪化として利用されているが、本件では、逆の動きをし、系列相関がある 3 カ国×9
年間で DW 比が 2.0 に近く、系列相関ないことが確認できた 13 カ国×6 年間や欧米等で、か
えって DW 比が 2.0 から遠ざかる現象が生じている。とはいえ、DW 比も、系列相関がある
帰無仮説が棄却できない領域ではなく、グレイゾーンの領域に留まっているため、別途の
系列相関判定を優先して、系列相関がる、という帰無仮説は棄却できると判断した。
5. 結論
本稿で得られた計測値は、表 7 の通りであり、結論は、以下の通りである。
価格弾力性の計測結果は、世界全体で見て、過去 9 年間では-1.712 程度、最近 6 年では
-1.476 程度となっている。これは、コストダウンにより価格を引下げて数量増加を目指せ
ば、ある程度の販売額総額の増加が期待できることを意味している。少なくとも、「高値で
出回りを制限した方が売上高が伸びる」という考え方は誤りである。
特に、注目したいのは、アジア市場である。アジア市場の価格弾力性は高く、
「アジア市
場では、大幅な輸出増加のためには、コストダウンを通じた販売価格の切り下げが必要」
と言えよう。これに対比する意味で、欧米市場を見ると、価格弾力性は余り高くない。価
格引き下げによる販売増加の効果は、アジアほどではないことが示唆される。
所得弾力性は、価格弾力性とは逆に、アジア市場よりも欧米市場で、有意で高い所得弾
17
特に本件では、説明変数及び従属変数の内、世界各国への米輸出量、各国の一人当たり
GDP は、いずれも時間とともに増加していく傾向を持つ。さらに言えば、米輸出価格でさ
えも、近年の円安基調で継続的低下傾向が観察される。即ち、単調増加、単調減少の傾向
がある変数同士の重回帰となる傾向がある。このため、統計的に本来有意でない場合も、
いわゆる「見せかけの相関」により、有意な方向に誤判定をする危険性も高い。差分推定
式の結果を見ると、価格の係数はマイナスに、所得及び訪日観光客の係数はプラスになっ
ており、少なくとも符号条件では、不自然な結果ではない。また、係数の数値自体も、数
種の推定式間でそれほど大きな隔たりはない。
18
力性が計測されている。ただし、これは、経済成長により輸出増加が見込める面があるも
のの、その反面、景気変動の影響を受け易いことを意味する。
「直近の訪日経験者の人口比率」は、観測期間 9 年の世界全体は有意であり、特にアジ
アでは強く有意で数値も高い。この結果は、訪日観光客を増やして本場の日本米を味わっ
てもらうことが米輸出に効果的なことを示唆している。
表 7 米輸出の計量分析の結果総括表
モデル
価格弾力性
所得弾力性
(CIF ベース)
直近の訪日
自由度調整済
経験者人口
決定係数(( )内
比率
は DW 比)
13 カ国×9 年間 Tobit Model
-1.712***
+3.385***
+1.295***
-------------
13 カ国×6 年間 OLS
-1.476***
+2.814△
+0.642△
0.9307(1.9776)
アジア 3 カ国×6 年間 OLS
-3.435***
-1.471
+1.502***
0.8762(1.9297)
欧米等 10 カ国×6 年間 OLS
-1.458***
+4.473*
+0.573
0.8489(2.1546)
注) ***は 1%水準で有意、**は 5%水準で有意、*は 10%水準で有意、△は 20%で有意、無印は有意でないこ
とを意味する。
引用文献
大泉一貫、(2009)、「コメ産業の発展可能性と必要な政策」、21 世紀政策研究所、「農業ビッ
グバンの実現」(21 世紀政策研究所
研究プロジェクト(研究主幹: 山下一仁))、
pp.101-117.
北村行伸、(2005)、
「パネルデータ分析」(一橋大学経済研究叢書 53)、岩波書店、pp.101-103,
151-159.
縄田和満、(2007)、
「質的データ、制限従属変数、計数データ」、蓑谷千凰彦・縄田和満・和
合肇共編、「計量経済学ハンドブック」、朝倉書店、pp.819-830.
牧厚志、(2001)、「応用計量経済学入門」、日本評論社、pp.229-232.
松浦克己、コリン・マッケンジー、(2012)、「EViews による計量経済分析(第 2 版)」、東洋
経済新報社、pp.362-363.
蓑谷千凰彦、(2007)、「計量経済学大全」、東洋経済新報社、pp.837-878.
山澤成康、(2004)、「実戦
計量経済学入門」、日本評論社、pp.179-180, 186-187.
Cameron, A. C. and P. K. Trivedi, (2005), "Microeconometrics: Methods and Applica- tions,"
Cambridge University Press, pp.529-544.
Greene, W. H., (2012), "Econometric Analysis, 7th eds.," Pearson, pp.873-942.
Heij, C., P. de Boer, P. H. Franses, T. Kloek and H. K. van Dijk, (2004), "Econometric Methods with
Applications in Business and Economics," Oxford University Press, pp.482-495, 688.
19
Hsiao, C., (2002), "Analysis of Panel Data," Cambridge University Press, pp.298-301. (日本語訳は、
シャオ、C.著(国友直人訳)、(2007)、
「ミクロ計量経済学の方法―パネルデータ分析―」、
東洋経済新報社、pp.328-333.
Kennedy, P., (2008), "A Guide to Econometrics (5th eds.)," Blackwell, p.327.
Kennedy, P., (2012), "A Guide to Econometrics," Blackwell Publishing, pp.186-187, 301-302,
307-309, 323-327.
Maddala, G. S., (2001), "Introduction to Econometrics (3eds.)," John and Wiley & Sons, LTD,
pp.336, 547-555. (日本語訳は、マダラ、G. S.著(佐伯親良訳)、(2004)、「マダラ計量経済分析
の方法(改訂 3 版)」、エコノミスト社、pp.406, 673-674.)
Murray, M. P., (2006), "Econometrics," Perason, pp.829-839.
Verbeek, M., (2012), "A Guide to Modern Econometrics," John and Wiley & Sons, LTD,
pp.410-417.
Wooldridge, J. M., (2002), "Econometric Analysis of Cross Section and Panel Data," MIT Press,
p.559
Wooldridge, J. M., (2009), "Introductory Econometrics," (4th eds.), South-Western Cengage
Learning, pp.487-488.
20
Fly UP