...

こちら - 教育委員会事務局

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

こちら - 教育委員会事務局
もくじ
はじめに
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
Ⅰ.どうして規範意識を育むことが大切なのか?・・ 2
1.規範,規範意識とは?・・・・・・・・・・・・・・ 2
2.学級経営と規範意識・・・・・・・・・・・・・・・ 3
3.規範意識を育むために付けたい力・・・・・・・・・ 4
Ⅱ.規範意識を育むために(小学校編)
・・・・・・ 5
1.望ましい集団活動と規範意識の育成との関係・・・・ 5
2.規範意識を育む活動プログラム例の構成・・・・・・ 6
3.規範意識を育む授業の視点・・・・・・・・・・・・ 6
4.教科等での集団活動を活用した
活動プログラム例(低学年Ⅰ)・・ 8
5.休み時間を活用した活動プログラム例(低学年Ⅱ)・・10
6.宿泊学習を活用した活動プログラム例(中学年Ⅰ)・・12
7.集会活動を活用した活動プログラム例(中学年Ⅱ)・・14
8.係活動を活用した活動プログラム例(高学年Ⅰ)・・・16
9.学芸会を活用した活動プログラム例(高学年Ⅱ)・・・18
Ⅲ.規範意識を育むために(中学校編) ・・・・・・20
1.中学校における規範意識の育成について・・・・・・20
2.「活動プログラム例」のポイント・・・・・・・・・21
3.「活動プログラム例」の実施に当たって・・・・・・21
4.合唱コンクールを活用した
活動プログラム例(中学校Ⅰ)・・22
5.職場体験を活用した活動プログラム例(中学校Ⅱ)・・24
6.生徒会役員選挙を活用した
活動プログラム例(中学校Ⅲ)・・26
おわりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28
1
はじめに
金子みすゞの詩に「みんなちがってみんないい」という一節があります。こ
の詩からは,
「それぞれの人間がもつ個性をありのままに受けとめ,認めよう」,
そして,「それぞれの個性が輝き合うことで豊 かな生活が築けるのだ」という
メッセージを受け取ることができます。生きていく中でうまくいかないことは
必ず起きます。様々な挫折,失敗や葛藤の中で,自分に自信がもてなくなった
とき,この詩は,勇気を与えてくれるでしょう。
一方,この詩に対する反対のとらえ 方を耳にすることがあります。「個性」
という言葉を,単に「他者との違い」ととらえ,自分の置かれている立場や周
りの人たちのことを考えない自分勝手な言動までも,「個性」とされている実
態があるのではないでしょうか。また,現状に甘んじてよりよい自分になろう
という意欲を示さない態度を「個性」ととらえていることがあるのではないで
しょうか。「個性」が他者や集団との関係の中で輝く「開かれた個」ではなく,
自分の殻に閉じこもってしまった「閉じた個」であることが多くなってきてい
ることを危惧する声もあります。
このように,子どもたちが自己中心的な価値観をもつようになってきている
ことの背景には,少子化や核家族化,高度情報化など,様々な社会的問題があ
ります。これらの問題から,子どもたちの人間関係は希薄化し,集団生活を営
むために必要な規律や規則を遵守するという意識も低くなり,自己の価値観が
優先する傾向が強くなってきているように思います。自己の価値観を優先する
子どもたちが学級に集まってくれば,学級集団を形成することは難しくなりま
す。望ましい学級集団を形成していくためには,子どもたちに集団の規範を大
切にし,多様な価値観を認めながら,他者と協調して活動することのできる規
範意識を育むことが求められます。
そこで,本ブックレットでは,実践研究を基に「規範意識を育む活動プログ
ラム例」を示しました。道徳,学級活動,各教科等の集団活動を有機的に関連
させ,構成しています。そして,それぞれの授業において,大切にしたい視点
を提示しました。この活動プログラム例で示す規範意識を育むポイントや授業
の視点などを参考に,学級の実態に合わせて活用していただくことを願ってい
ます。
- 1 -
Ⅰ.どうして規範意識を育むことが大切なのか?
1.規範,規範意識とは?
文部科学省によると「規範」「規範意識」は次のように定義されています。
規範………人間が行動したり判断したりするときに従
うべき価値判断の基準
規範意識…規範を守り,それに基づいて判断したり行
動しようとする意識
規範は行動するときの価値判断の基準であることから,集団における規範とは,
「集団に望まれる行動様式や行動基準を表すものである」ととらえることができま
す。以下に示す図 1 は,規範を大きく二つに分類したものです。
規範
規範
行 動 目 標 的 な 規範 に
向かって行動する
行動目標的な規範
・生活をよりよくするためのもの
・人間関係を豊かにするもの
生活をよりよくする
規範意識
最低限の規範
・集団形成に必要なもの
・集団形成に必要なもの
・人として,してはならないこと
・人としてしてはならないこと
最低限の規範を守る
最低限の
規範意識
図 1 規範と規範意識
図 1 に示したように,集団生活に必要で
あり守らなければならない「最低限の規
規範意識の高まり
範」と道徳の内容項目に示されるような
自律
「行動目標的な規範」があります。この二
つの規範を守ろうとする意識を,それぞれ
生活をよりよくする
規範意識
「最低限の規範意識」「生活をよりよくす
行動目標的な
規範を志向
る規範意識」としました。そして,規範意
ことを図 2 のように示しました。
他律
識 は ど の よ う に 高 ま っ て い く の かという
最低限の
規範を遵守
子どもたちは与えられた規範を身に付
けていく段階から,成長していくにつれ
て,周囲の様々な規範を受け入れていくよ
うになります。家族に対する認識から,学
- 2 -
規範を自己
のものとし
て確立
家族
最低限の規範意識
学校
地域・社会
図 2 規範意識の広がりと高まり
級の仲間・学校・地域社会に対する意識へと,年齢が上がり,空間的な広がりを見
せていくと考えられます。
また,同じ規範に対しても,
「大人が言うから守る」という考えから「自分自身の
考えで守る」というように,他律から自律へと高まっていきます。
図 2 にあるように,規範意識を広げ,高めていくことで「社
会の中で認められる自己の生き方」を自らつくっていくことが
できるようになると考えます。ですから,規範意識をきまりや
規則を遵守するということだけでなく,もっと広い意味でとら
えることが大切です。自分の役割や責任を知り,集団の中でよ
りよい行動を取ることができる「生活をよりよくする規範意識」
を含めたものを規範意識としてとらえています。
2.学級経営と規範意識
学級経営を行っていく中で,子どもの成長を支えていくために豊かな人間関係を
築いていけるようにすることは欠かせないことです。そのために,子どもたちに「他
者とつながりたい」という思い,
「人と関わろう」とする意欲をもたせる必要があり
ます。子どもたちが人とつながっていくための心のエネルギーは,安心して過ごせ
る学級の中で生まれます。安心できる学級の雰囲気の中で友だちとコミュニケーシ
ョンを図り,楽しく活動する中で,豊かな人間関係が築かれていくのです。
安心感のある学級にするためには,人間関係のルールやマナー,学習ルールなど
の規範を学級で共有することが基盤となります。自分勝手な行動がまかりとおり,
だれかが傷付けられるような言動が飛び交う学級では,子どもたちは安心して過ご
すことはできません。規則やルールが守られ,安心して自分の個性を発揮できる学
級をつくっていくことが大切です。
教師が規範を示すのは,規範を 守ることでよりよい生活集団
や人間関係をつくっていくためです。自分もみんなも楽しく過
ごせるための行動の仕方を表したものが,規則やルールといっ
た規範です。そして,その規範を守っていこうとする気持ちが
規範意識です。ですから,規範意識を育むことは,子どもたち
がよりよい人間関係を築き,他者との関係の中で個性を発揮し
ていくための力を育むことにつながるのです。
- 3 -
3.規範意識を育むために付けたい力
活動プログラムを構成する際,発達段階に応じた指導を心がけることが大切です。
例えば下表のように,各発達段階に応じて,子どもたちに付けたい力を考えておく
必要があります。また,他律から自律へ,学級から社会へと規範意識の高まりと広
がりについても考慮することが大切です。この表は,あくまで例なので,各校の子
どもたちの実態に合わせて作成していくことが大切です。
付けたい力
保育所・幼稚園
○他者と意欲的に関わる。
発達段階に応じた指導のポイント
発達段階の特徴
○大人との愛着関係や信頼関 ・自分にとって得るものが
係を築くことができるよう
にする。
あるか,ないかで判断す
るようになる。
○ルールのある遊びやコミ ○規則性のある遊びや対人関 ・大人の表情や態度を見て,
ュニケーションを楽し
係の中で規範にふれること
行動の基準を内面化する
む。
ができるようにする。
ようになる。
小学校低学年
○身近なきまりや約束を守 ○規範を知り,そのよさを感じ ・規則は絶対的なものと考
る。
ることができるようにする。
える段階である。
・自己と他者を明確に区別
○みんなで使うものを大切 ○規則的な行動が進んででき
できず,自己中心的な思
にする。
るように根気強くかかわる
ようにする。
考の段階である。
小学校中学年
○社会のきまりやマナーを ○規範の意義について学ぶこ ・他人の視点に立てるよう
大切にする。
とができるようにする。
になる。
・規則は,集団の成員の合
○集団の中で協調的な行動 ○自分たちできまりをつくり,
守る経験ができるようにす
をする。
意があれば変えてもよい
と考えるようになる。
る。
○ 相 手 の 立 場 に 立 っ て 考 ○向社会的な視点から規範に ・向社会的な考え方が発達
小学校高学年
え,行動する。
ついて考えることができる
してくるようになる。
ようにする。
・規則について否定的な考
○自分の役割を自覚し,責 ○自分たちでつくった規範を
えをもつようになる。
任を果たす。
改善し,よりよい規範に変え
ていく経験ができるように
する。
○社会や集団をつくる一員 ○社会生活の中で守るべき正 ・第三者の視点を取ること
として,生活向上のため
義として規範を大事にする
ができるようになる。
中学校
に進んで貢献する。
ことができるようにする。
・激しい心の揺れを経験し
ながら自己を確立してい
○自分自身で考え,主体的 ○自分の行動について客観的
に行動し,行動に責任を
な視点をもたせ,内省するこ
もつ。
くようになる。
とができるようにする。
※発達段階の特徴として示したものは『学習指導要領解説道徳編』を参考にしています。
- 4 -
Ⅱ.規範意識を育むために(小学校編)
1.望ましい集団活動と規範意識の育成との関係
規範意識は,集団活動を通して育まれていきます。したがって,学校生活の中で
望ましい集団活動を展開していくことが重要になります。図 3 は,望ましい集団活
動と規範意識の育成との関係を示したものです。
望ましい集団活動をしていくための
学級集団
基盤として集団規範,学級のルールを共
有することが必要です。ルールが定着す
望ましい集団活動
ることで,望ましい集団活動を行うこと
規範意識
ができます。その中で,子どもたちは,
きまりや約束を守ることの大切さを感
集団規範の共有
じ,集団規範に対する理解が実感を伴っ
たものになっていきます。
図 3 規範意識の広がりと高まり
そして,より高い集団規範が共有されるようになれば,更に望ましい集団活動が
展開されるようになります。そのようなサイクルの中で,学級の規範を守る雰囲気
がつくられ,一人一人の規範意識が育まれていきます。
また,集団活動の中で与えられた規範を守ることだけではなく,自分たちできま
りや約束を考えたり,自分たちで決めたことに責任をもって遂行したりすることで,
自律的な規範意識を育んでいくことができるのです。
望ましい集団活動のイメージ
望ましい集団活動について,教師がしっかりとイメージをもち,そのイメージに向か
うためにはどのような取組が必要かを考え,学級経営を行っていくことが重要です。
以下に示したア~カは,望ましい集団活動の一般的な条件です。
ア 活動の目標をつくり,その目標について全員が共通の理解をもっていること。
イ 活動の目標を達成するための方法や手段などを全員で考え,話し合い,それを
協力して実践できること。
ウ 一人一人が役割を分担し,その役割を全員が共通に理解し,自分の役割や責任
を果たすとともに,活動の目標について振り返り,生かすことができること。
エ 一人一人の自発的な思いや願いが尊重され,互いの心理的な結び付きが強いこと。
オ 成員相互の間に所属感や所属意識,連帯感や連帯意識があること。
カ 集団の中で,互いの良さを認め合うことができ,自由な意見交換や相互の関係
が助長されるようになっていること。
引用文献:文部科学省『学習指導要領解説特別活動編』
- 5 -
2.規範意識を育む活動プログラム例の構成
子どもが主体的に判断し,よりよい集団を形成しようとする力を育んでいくため
には,自律的な規範意識を育む必要があります。そのためには,集団活動を通して,
自分たちできまりや約束を考えたり,自分たちで決めたことについて責任をもって
取り組んだりする経験を重ねることが大切です。本冊子で挙げている活動プログラ
ム例では,このような経験を積むことができるように,道徳の時間,学級活動,各
教科等で行われる集団活動や体験活動を関連させて構成しています。
◆規範意識を育む四つのポイント
①規範を理解し,重要であると感じること
②自分たちで必要な規範を考えること
③よりよい規範に変えていこうという意識をもつこと
④実感を伴った理解であること
規範意識を育む四つのポイントを意識するために,活動プログラムでは,
「教師が意図して,規範の大切さを子どもに気付かせていく学習(ポイント①)」
「子どもが必要な規範に気付き,規範を考え,つくる学習(ポイント②③)」
「規範の大切さを実感する活動(ポイント④)」の三つを考えています。
活動プログラムの流れを下に示しました。
教師が気付かせて
いく学習
道徳の時間
学級活動 内容(2)
子どもが気付き,
考え,つくる学習
学級活動 内容(1)
規範の大切さを実感
する活動
集団活動
体験的な活動
日常化へ
この流れは例であり,学級の実態によって,プログラムの内容を変えていくこと
も必要です。
3.規範意識を育む授業の視点
「道徳の時間」
「学級活動 内容(2)」
「学級活動 内容(1)」
「集団活動」における規
範意識を育む授業の視点についてまとめ,次ページに示しました。授業を展開して
いく中で意識したい視点です。(学級活動内容(1)の①の視点については,授業の前
に考えておきたい視点です。)
- 6 -
①〈教師が意図して,規範の大切さを子どもに気付かせていく学習〉
【道徳の時間】
1. 人 間 の も つ 弱 さ を 理 解 す る 場
面をつくる。
2.他者の立場に立って考えられる
ようにする。
3.道 徳 的 行 為 の 判 断 規 準 を 視 覚
化する。
【学級活動
内容(2)】
1.結果を予期できるようにする。
2.具 体 的 な 行 動 の 仕 方 を 考 え る
ことができるようにする。
1.
やってはいけないとわかっていてもやって
しまうことがあるというような本音が出せる
場面を設定します。
2.
他者の立場に立って考えることで,客観的に
自分を見つめることができるようにします。
3.
同じ行動を取っていても,どのような判断で
行動したのかは人によって様々です。カテゴリ
ーに分けて板書し,多様な考え方にふれること
ができるようにします。
1.
規範を守ったときの,もしくは守らなかっ
たときの結果を考えることで,自尊感や自責
感に働きかけるようにします。
2.
具体的な行動の仕方を考えることで,自分か
ら規範を守った行動ができるようにします。
②③〈子どもが必要な規範に気付き,規範を考え,つくる学習〉
【学級活動
内容(1)】
1. 生 活 の 中 に あ る 問 題 や 課 題 に
1.
自分たちで取り上げた議題になれば,より
主体的に話し合うことができます。
2.
自分たちで規範を考える経験を重ねます。
気付くことができるようにする。
「~してはいけない」というものばかりでな
2. 目 標 に 向 か う た め の 規 範 を 考
く,目標に向かうために必要な規範を考えるよ
うにします。
えることができるようにする。
3.折り合いを付けることができるよ
3.
っているか,活動の目標が達成できそうかなど
うにする。
4.話合いのルールを意識できるよ
うにする。
理由を付けて話し,その理由が提案理由に沿
を考え,集団で意思決定できるようにします。
4.
ルールを意識して話し合うことで,公的な話
合いであることを意識できるようにします。
④〈規範の大切さを実感する活動〉
【集団活動】
1.事前指導で活動の目標や約束を
確認する。
2. 事 後 指 導 で 活 動 の 振 り 返 り を
する。
1.
活動するグループで目標や約束を確認した
り,学級全体で確認したりします。
2.
必ず活動の振り返りを行い,次の活動につな
ぐようにします。振り返るときは,楽しく活
動 で き た こ と と 規 範を守 って 活 動で きた こ と
をつないで考えられるようにします。
- 7 -
4.規範意識を育むプログラム例(低学年Ⅰ)
教科等での集団活動を活用した活動プログラム例
ねらい
聞くことの大切さを考えたり,ゲームを通して,聞き方を考えたりするこ
とを通して,姿勢を正し,進んで聞こうとする態度を養う。
学習計画(5 月:3 時間程度)
ねらい
時間
1
時間
1
常時
時間
1
ポイントとなる授業
活動内容
お 話 を 聞い て も 【道徳の時間】
らったときの気持
「ねえ,聞いて」(自作資料)
ちを考えることを
主題名 気持ちのよい応対 2-(1)
通して,聞くことの
・公園でちょうちょを見つけたと
大切さを感じ,進ん
きのわたしの気持ちを考える。
で聞こうとする心
・話を聞いてもらえなかったとき
情を育てる。
の気持ちを考える。
・話を聞いてもらえたときの気持
ちを考える。
ステレオゲーム 【学級活動 内容(2)】
を行うことを通し
「聞くってどうすること?」
て,どのように聞く
・集中して聞くゲーム(ステレオ
ことが大切なのか
ゲーム)を行う。
に気付き,姿勢を正
・ゲームの感想を発表する。
して話を聞くこと
・よく聞くための工夫を話し合
ができるようにす
う。
る。
授業の中で聞き ○授業において
方を活用し,実践し
・教師がきき方や姿勢について,
ていく中で,しっか
学んだことを活用できるよう
り聞くことの大切
に言葉かけをする。
さを実感できるよ
・授業後に,しっかりと聞けてい
うにする。
たかどうか評価する。
係活動を通して, 【学級活動 内容(1)】係活動
グループ活動のと
・事前に話の聞き方を確認し,係
きも友だちの意見
での活動に入る。
をしっかりと聞き,
・係で意見を聞き合い,相談する
話し合うことがで
ことができたかを振り返る。
きるようにする。
ねぇ
聞いて
「 あ っ 。」
「 オ オ ム ラ サ キ だ 。」
オオムラサキは,羽が青紫色をしていて,とってもめず
らしくてきれいなちょうちょです。ちょうちょが大好きな
夏子は,オオムラサキを見つけて大はしゃぎ。しばらくオ
オムラサキの様子を見ていましたが,そのうち,だれかに
こ の こ と を 話 し た く て 話 し た く て ,う ず う ず し て き ま し た 。
急 い で 家 に 駆 け 込 み ,ば ら ば ら に な っ た 靴 も そ の ま ま に ,
お父さんの部屋に一直線に向かいました。
「 ね え , ね え , お 父 さ ん , 聞 い て 。」
ところが,なにやら仕事で忙しそうなお父さん。
「 な ん か , 忙 し そ う ・ ・ ・ 。」
- 8 -
① 道徳の時間
「ねえ,聞いて」( 自 作 資 料 )
授業の展開
1) 話 を 聞 い て も ら い た い と 思 っ た 経
験を話し合う。
2)資料を読んで話し合う。
○公園できれいなちょうちょを見
つけたとき,わたしはどのような
気持ちになったでしょう。
○三人に話を聞いてもらえなかっ
たとき,わたしはどのような気持
ちだったでしょう。
◎お母さんに話を聞いてもらって,
わたしはどのような気持ちだっ
たでしょう。
3) 学 校 や 家 で だ れ に 話 を 聞 い て も ら
っているかを振り返り,話し合う。
4)学習のまとめをする。
授業の工夫
中心発問で,わ
たしの表情を実際
にやってみること
で心情に迫れるよ
うにします。
仕方がなく,夏子はおにいちゃんのところへ行くこ
とにしました。
「 ね え ね え , お 兄 ち ゃ ん 。」
でも,返事は返ってきません。
「 ね え っ て ば ・ ・ ・ 。」
「なんだよ,うるさいなぁ。今ゲームがいいところな
ん だ か ら , 話 し か け て く る な よ 。」
「だって庭にとってもきれいなオオムラサキがいたん
だ よ 。」
「 わ か っ た , わ か っ た 。 後 で 聞 い て や る か ら 。」
「 ・ ・ ・ 。 も う い い よ ・ ・ ・ 。」
お兄ちゃんにも話が聞いてもらえず,とぼとぼとお
じいちゃんのところへ行きました。
「 お じ い ち ゃ ん , い る 。」
② 学級活動
〈ステレオゲーム〉
例えば,ライオンが答えになるとき,出 題
者が 4 人,前に出てきて,一文字ずつ担当し,
4 人が 一 斉 に 担 当 の 文 字 を 言 い ま す 。 聞 い て
いる人は,どのような言葉になるのかを考 え
て応えるゲームです。
内容(2)
「聞くってどういうこと」
授業の展開
1) 話を聞いてもらえたときの気持ちを思
い出す。
2)集中して聞くゲームを行う。
・ステレオゲームの説明を聞く。
・ステレオゲームを行う。
・ゲームを通して感じたことや思った
ことを話し合う。
・しっかり聞くための秘訣を考える。
3) どのような聞き方が大切なのかを話し
合い,クラスの合言葉をつくる。
③ 学級活動
規範意識を育む授業の視点
「 具 体 的 な行 動 の 仕 方を 考 え る こと が で き
るようにする」
ゲ ー ム を通 し て , しっ か り 聞 くた め に は
ど の よ う な聞 き 方 が よい の か を 考え る こ と
が で き る よう に し ま す。 姿 勢 よ く聞 け て い
る 子 ど も の写 真 を 撮 って お き , 秘訣 を 考 え
るときの参考にするものよいと思います。
授業の工夫
合言葉をつくることで,学級の約束
とするとともに,日常的に意識できる
ようになります。
内容(1)
授業の工夫
時間を区切って,めりはりをつけて話合いがで
きるようにします。また,各係で話し合ったこと
を最後に報告するよう伝えることで,しっかりと
目的をもって話し合うようになります。
「係活動-係の計画を立てよう」
++
授業の展開
1) 活 動 の 前 に , グ ル ー プ で の 話 合 い の 仕
方,話の聞き方を確認する。
2) 活動後,振り返りをする。
〈係で相談する様子〉
話を聞き合いながら,楽
しく活動を進めています。
日常化へ
目
「話を聞く」という学習のルールは,何よりも大切にし
たいルールです。話を聞くという姿勢がとれなければ,学
習はおろか,友だちとの信頼関係も築くことはできませ
ん。しっかりと聞く姿が定着するまで教師が意識して言葉
かけをする必要があります。また,掲示物を工夫するなど
して日常的に意識できるように心がけたいものです。
口
耳
「・・・」
「 お じ い ち ゃ ん 。」
「 ぐ ー ぐ ー ぐ ー 。」
いねむりするおじいちゃん。
「 な ん だ , 寝 て る の か 。」
「 あ ~ あ , だ れ も 聞 い て く れ る 人 が い な い や ・ ・ ・ 。」
「 つ ま ん な い な ・ ・ ・ 。」
しばらくすると,お母さんが買い物から帰ってきまし
た 。お 母 さ ん は 夏 子 の 様 子 に 気 が 付 い た の か ,優 し い 笑 顔
で声をかけました。
「 ど う し た の な っ ち ゃ ん 。」
「 あ っ , お 母 さ ん 。」
お母さんに気付いた夏子は,駆け寄って言いました。
「 ね え , お 話 聞 い て く れ る 。」
気を付けるところをフ
ラッシュカードにします。
手
授業で考えた合言葉
を掲示物にします。
お母さんはにっこり笑って言いました。
「 ど ん な お 話 か な 。 楽 し み だ な 。」
「あのね,庭にとってもきれいなオオムラサキがいたん
だ よ 。・ ・ ・ 」
「 そ れ で ね ・ ・ ・ 。 そ れ で ね ・ ・ ・ 。」
夏子のおしゃべりは,止まりません。言葉がどんどん
あふれて出てくるようでした。
庭を飛んでいるオオムラサキは,弾むような夏子の話
し声を聞きながら,楽しそうにふわふわと飛んでいまし
た。
- 9 -
5.規範意識を育むプログラム例(低学年Ⅱ)
休み時間を活用した活動プログラム例
ねらい
約束を破ることが,周りにどのような影響を及ぼすかを考えたり,楽しく
遊ぶための約束をつくり,体験の中で約束を守ったりすることで,約束を大
切にしようとする態度を養う。
学習計画(6 月:3 時間程度)
ねらい
ポイントとなる授業
活動内容
①
時間
1
約 束 を 守 ら な か 【道徳の時間】
ったことが,お母さ
「よりみち」
んや先生に大きな
主題名 約束を守る 4-(1)
心配をかけたこと
・よりみちをしているときのわ
を感じているわた
たしの気持ちを考える。
しの気持ちを考え
・夢中になり,時間が遅くなっ
ることを通して,き
てしまったときのわたしの気
まりや約束を守ろ
持ちを考える。
うとする心情を育
・お母さんの涙をみたときのわ
てる。
たしの気持ちを考える。
時間
楽しく遊ぶため 【学級活動 内容(2)】
にどのような約束
「やすみじかんの
や言葉かけが必要
あそびかた」
かを考えることが
・休み時間の様子について話し
合う。
できるようにする。
・どうしたら休み時間が楽しく
過ごせるかを話し合う。
・みんなで考えた解決策を学級
の約束として確認する。
常時
約束を守って活 ○休み時間の全員遊び
動したら,楽しく遊
・休み時間前に約束を
べることを実感で
意識できるように言
きるようにする。
葉かけをする。
・全員遊びをする。
・休み時間後の振り返りをする。
②
1
③
時間
1
休 み 時 間 の 全 員 【学級活動 内容(1)】話合い活動
遊びで出てきた問
・事前に話のきき方を確認し,
題をみんなで話合
係での活動に入る。
い,自分たちでうま
・係で意見をきき合い,相談す
く活動できるよう
ることができたかを振り返
にするための約束
を決める。
る。
① 道徳の時間
「よりみち」( 1 年 )
授業の展開
1) よ り み ち を し た 経 験 に つ い て 話 し
合う。
2)資料を読んで話し合う。
○よりみちをしているとき,わたし
は何を考えていたでしょう。
○通学路に出てかけ出したとき,わ
たしはどのような気持ちだった
でしょう。
◎お母さんの涙を見たとき,わたし
はどのような気持ちになったで
しょう。
3) 学 校 や 家 で の 約 束 に つ い て 話 し 合
う。
4)学習のまとめをする。
規範意識を育む授業の視点
「他者の立場に立って考えられるようにする」
中心発問の前に,
「どうしてお母さん
は涙を流しているのでしょう。」と補助
発問を入れ,お母さんの心配する気持
ちを感じることができるようにしま
す。そのことで,約束を軽く考えたり,
うっかり破ったりすることが,周りの
人に大きな心配や迷惑をかけることに
気付くことができるようになります。
授業の工夫①
常時
約 束 を 守 っ て 行 ○朝の会・帰りの会・休み時間に
動できていたかど
おいて
うかを振り返り,で
・友だちによる評価,よいとこ
きていればほめ,で
ろみつけをする。
きていなければ注
・教師による言葉かけをする。
意をしたり,叱った
りして次の行動を
(ほめる,叱るなど)
考えることができ
るようにする。
- 10 -
挿 絵 は ,お 母 さ ん の 顔 を ク ロ ー ズ ア
ッ プ す る と ,涙 が 流 れ て い る こ と に 子
どもたちが気付けるようになります。
授業の工夫②
授 業 で 考 え た こ と は ,自 分 の 生 活 の
中の約束につなげるようにしたいも
のです。
② 学級活動
内容(2)
「やすみじかんのあそびかた 」
授業の展開
1)休み時間の過ごし方について考え
ることを確認する。
2)休み時間の様子について話し合う
・休み時間は楽しく遊べています
か。
・休み時間にうまく遊べなくて困
ったことはありませんか。
3)どうしたら楽しく過ごせるかをみ
んなで話し合う。
4)約束を守る大切さについて,道徳
の時間に学習したことを思い出
す。
5)みんなで考えた解決策を学級の約
束として確認する。
③ 休み時間
「サ
全員遊び
・休み時間前に約束を意識でき
るように言葉かけをする。
・遊び係がリーダーとなり,全
員遊びをする。
・休み時間後に楽しく
遊べたかを振り返る。
規範意識を育む授業の視点
「具体的な行動の仕方を考えることができ
るようにする」
自分たちの生活の問題に対して,みんなで
話し合って具体的な解決策を考え,行動でき
るようにすることが大切です。解決策を「み
んなが楽しく遊ぶための学級の約束」とし,
守っていくことができるようにしたいもの
です。
授業の工夫①
道徳の時間において学習した「約束を守る
こと」の大切さを再確認することにより,約
束がよりよい人間関係を築いていくためのも
のであることが意識できるようになります。
授業の工夫②
決まったことを掲示することで,約束を意
識できるようになります。
約束についてどのような行動が取れている
かを評価することで,約束が定着していくこ
とになります。
規範意識を育む授業の視点
「事後指導で活動の振り返りをする」
約束を守って全員遊びができたかを振り
返るようにします。約束を守って遊ぶこと
で,みんなが楽しく遊べるということを実感
できるようにします。
全 員 遊 び の 後 ,整 列 し て 挨
拶をするという自分たちで
決 め た 約 束 を 守 る 姿 で す 。次
の 学 習 が 始 ま る ま で に ,挨 拶
を終えることができるよう
に 支 援 し ,自 分 た ち で 決 め た
約束を守っていくことがで
きるようにします。
日常化へ
きまりや約束を守る姿を,教師が積極的に
評価することが大切です。また,約束を守る
姿を友だち同士で評価できるように,帰りの
会などで「よいところ見つけ」をするなどの
工夫ができます。
振り返りのときに,問題が出てきたとき
は,学級会を開き,みんなで問題を解決して
いくとよいですね。
- 11 -
休み時間に,
運動場に出る
前 に は ,約 束 を
自分で確認し
ていました。
自分たちで
約束を守ろう
とする意識が
強くなりまし
た。
6.規範意識を育む活動プログラム例(中学年Ⅰ)
宿泊学習を活用した活動プログラム例
ねらい
宿泊学習での集団活動と関連させ,身近にあるルールやマナーの意義を考
え,ルールやマナーを大切にしようとする態度を養う。
学習計画(9 月~10 月:26~43 時間)
ねらい
事前に
ルールやマナー
を守って行動した
経験を話し合い,ル
ールやマナーへの
意識を高める。
ポイントとなる授業
活動内容
① 道徳の時間
【朝の会,帰りの会】
・学校内でのルールやマナー
を確認する。
・社会見学などで学んだルー
ルやマナーを振り返る。
お 母 さ ん の 横 顔 【道徳の時間】
を 見 て 自 分 の 行 動 「雨のバス停留所で」
について振り返る
主題 社会のルールを守る
1 よし子の気持ちを
4-(1)
考えることを通し
・バス停に並んでいるときの
て,進んでルールや
よし子の気持ちを考える。
マナーを守ろうと
・自分の行動を振り返るよし
する態度を育てる。
①
時間
子の気持ちを考える。
時間
社会や学校には
様々なルールやマ
ナーがあることを
1
確認し,その意義を
考えることを通し
て,ルールやマナー
を大切にしようと
する態度を養う。
宿泊学習へ向け
5
ての準備活動を通
して,各係や学級,
10 学 年 で の 団 結 を 深
める。
時間~
時間
大自然の中での
時間~
18 体 験 的 な 活 動 を 通
【学級活動
内容(2)
】
「ルール百人一首」
②
・ルールを守ってゲームを楽
しむ。
「雨のバス停留所で」( 光 村 図 書 4 年 )
授業の展開
1)社会見学での行動を振り返る。
2)資料を読んで話し合う。
○どうしてよし子さんは,かけだし
て停留所の一番前に並んだので
しょう。
○並んでいるところまでよし子さ
んを連れていったお母さんは,ど
のような気持ちだったでしょう。
◎お母さんの横顔を見ていたよし
子さんは,どのようなことを考え
ていたでしょう。
3) 身 近 に あ る ル ー ル や マ ナ ー に つ い
て話し合う。
4)学習のまとめをする。
・ルール百人一首を行い,身
の周りにあるルールやマナ
ーを確認する。
【学級活動
内容(2)
】
「宿泊学習に向けての準備」
・宿泊学習の目標,約束を考
える。
・各係での準備や練習をする。
【宿泊学習】
・自然の中で様々な体験をす
時間
して豊かな人間性
る。
や社会性を育む。
・みんなで協力して活動する
集団生活を通し
30
・ルールやマナーを守って活
て,きまりを守る態
動する。
度や協力,奉仕の精
神を養う。
宿 泊 学 習 の 思 い 【学級活動 内容(2)
】
出を振り返り,目標 「サイコロトーキング
に向かってがんば
de 宿泊学習」
れた理由を考える
1
・宿泊学習の思い出を話し合う。
ことを通して,きま
・うれしい思い出や楽しい思い出
りを守ることや協
ができたのはなぜか考える。
力することの大切
・これからの生活に生かしてい
さを感じ,これから
も続けていこうと
くことを書く。
する意欲を高める。
③
時間
- 12 -
規範意識を育む授業の視点
「他者の立場に立って考えられるようにする」
一つめの発問で,役割演技をし,順
番を抜かしたよし子の気持ちを考える
とともに,周りの人の気持ちを考える
ようにします。他者の立場に立って,
ルールを守らないことに対して,客観
的に見ることができるようにします。
「道徳的行為の判断基準を視覚化する」
中心発問で,反省するよし子の気持
ちを分類して板書します。そうするこ
とで,子どもたちは,様々な見方や考
え方があることに気付くことができる
と思います。
「お母さんに
対しての思い」
「ルールに対し
て の 思 い 」「 周 り
の人に対しての
思 い 」の 三 つ に 分
類しました。
〈ルール百人一首の札〉
授業の展開
1)身近にあるルールやマナーはどのような
ものがあるか話し合う。
2)ルール百人一首ゲームを行い,ルールや
マナーについて確認し,その意義につい
て考える。
・ルール百人一首ゲームを行う。
・大切だと思うルールやマナーとその 理
由を発表する。
・ルールやマナーにある共通点を考える。
3)自分が大切にしていきたいルールやマナ
ーについて考える。
③ 学級活動
内容(2)
人の話を
「ルール百人一首」
しっかり
聞こう
内容(2)
しっかり
聞こう
② 学級活動
左 は 絵 札 ,右 は
読み札。指導者
は ,「 人 の 話 を 」
という前半部分
だ け 読 み ,子 ど も
たちは続きを考
え ,絵 札 を 取 り ま
す。
規範意識を育む授業の視点
「具体的な行動の仕方を考えることが
できるようにする」
ゲームを通して,身の周りのルールや
マナーを確認し,具体的な行動の仕方を
考えることができるようにします。
授業の工夫
考えたルー ルやマナーに ついて,絵札を
作成します。使用後は掲示物として活用
し,ルールやマ ナーの意識化 を図ることが
できます。作 成に 1 時間ぐらい必要です。
授業の工夫
「サイコロトーキング de 宿泊学習」
授業の展開
1) 宿 泊 学 習 で の 活 動 を , 写 真 な ど を 見 な
がら振り返る。
2)サイコロトーキングを行い,話し合う
・グループで,サイコロトーキングをし
て,宿泊学習の思い出を話し合う。
・全体交流をする。
3) 宿 泊 学 習 が よ い 思 い 出 に な っ た 理 由 を
考える。
4)学習のまとめをする。
サ イ コ ロ ト ー キ ン グ の 代 わ り に ,ア ド ジ
ャンを使って話し合うこともできます。
アドジャンとは,じゃんけんの要領で,
指 を 何 本 か 立 て ,み ん な の 指 の 数 を 合 計 し
ま す 。そ し て ,合 計 し た 数 の 項 目 の 内 容 に
ついて話し合います。
規範意識を育む授業の視点
「事後指導で活動の振り返りをする」
よ か っ たこ と や 楽 しか っ た こ とを 振
り 返 る だ けで な く , よい 思 い 出 にな っ
た 理 由 を 考え る こ と で, ル ー ル やマ ナ
ー な ど の 規範 を 守 っ て行 動 で き たこ と
に 意 識 を 向け る こ と がで き る よ うに し
ます。
ど う し て?
日常化へ
右の図は,子どもたちが考えたルールやマナー
をまとめたものです。学んだことを意識できるよ
うに,掲示物にするなどの工夫をすることが大切
です。そして,ルールやマナーを大切にできたら,
しっかりとほめることで定着を図るようにします。
また,体育の「ボール運動」で,ルールを守って活動したり,みんなが楽しめるル ー ル
に変えたりして,ルールやマナーへの意識の継続を図ることができます。更に,係活動 で
も,自分たちで活動の約束を考えて活動するなどの工夫が考えられます。
- 13 -
7.規範意識を育むプログラム例(中学年Ⅱ)
集会活動を活用した活動プログラム例
ねらい
集会活動の一連の活動を通して,協調的な態度を養い,自分たちで楽しい
学級をつくろうとする自治的な態度を育てる。
学習計画(7 月:3 時間程度)
ねらい
時間
1
ポイントとなる授業
活動内容
発 表 し た り 鑑 賞 し 【学芸会】
たりすることにより,
・今までの練習の成果を発揮す
集団の一員としての
る。
所属感,連帯感を高め
・みんなで協力してよりよい劇
る。(本研究に関わる
にする。
ねらいのみ掲載)
・一人一人が自分の役割を果た
す。
①
時間
1
資 料 の 登 場 人 物 の 【道徳の時間】
思いや自分の経験を
「ぼくらだって
話し合うことを通し
オーケストラ」
て,協力し合ってより
主題名 協調性 4-(4)
よい学級をつくろう
・教えてくれたなつみに対して,
とする態度を養う。
知らないふりをしていたてつ
おの気持ちを考える。
・なつみに対するてつおの気持
ちの変化を考える。
②
時間
1
時間
1
】
み ん な が 楽 し め る 【学級活動 内容(1)
集 会 活 動 に す る た め 話合い活動
には,どうしたらよい 「楽しいお楽しみ会を開こう」
か , 方 法 や 内 容 を 考 ○議題 みんなで協力して楽しい
お楽しみ会を開こう。
え,よりよい学校生活
・楽しいお楽しみ会にするため
をつくっていこうと
にはどうしたらよいかを考
する意欲を高める。
える。
・お楽しみ会の内容を考える。
集会活動に向けて, 【学級活動 内容(1)
】
一 人 一 人 が 自 分 の 役 集会活動(準備活動)
割を果たしみんなで
・一人一人が役割を果たせるよ
協力し合えるように
うにする。
する。
・友だちと協力して活動する。
③
時間
1
みんなで決めたこと 【学級活動 内容(1)
】
を守って,協力して楽 集会活動
しく活動することで,
・事前指導(活動の約束確認)
学級への所属感や連帯
を行う。
感を高める。
・集会活動を行う。
・事後指導(振り返り)を行う。
- 14 -
① 道徳の時間
「ぼくらだってオーケストラ」(光村図書 4 年)
授業の展開
1)オーケストラの様子の写真を見て,
思ったことを話し合う。
2) 資料を読んで話し合う。
○初めに,なつみに声をかけられた
とき,てつおはどうして知らんぷ
りをしていたのでしょうか。
○練習をしているとき,てつおはど
のような気持ちになっていたで
しょうか。
◎ て つ お は , な つ み に 対 し て ,「 逆
上 が り を 教 え て あ げ よ う か な 。」
という気持ちになったのはどう
してでしょうか。
3) 協 力 し て が ん ば れ た と 思 う 経 験 に
ついて話し合う。
4) 学習のまとめをする。
規範意識を育む授業の視点
「人間のもつ弱さを理解する場面をつくる」
一つめの発問で,なつみのアドバイ
スを素直に聞くことができないてつお
の気持ちに共感できるようにします。
「他者の立場に立って考えられるようにする」
一つめの発問の後,
「なつみは,どの
ような気持ちでアドバイスしていたの
でしょうか。」と補助発問を入れます。
このことで,相手の気持ちを客観的に
考えることができるようにします。素
直になれないときは,相手の気持ちを
悪く考えてしまい,より心を閉ざして
しまうことがあります。相手の親切な
気持ちを考えることで,心を開けるよ
うにしていきたいと思います。
② 学級活動
規範意識を育む授業の視点
内容(1)
「折り合いをつけることができるよう
話合い活動 「楽しいお楽しみ会を開こう」
にする」
様々な意見が出たときに,いくつかの
議題
意見を合わせて,一つの意見として決定し
交流学級の○○さんと楽しく交流する会
ます。例えば,お楽しみ会で「歌」と「ダ
を開くために話し合おう。
ン ス」と いう 意見が 出て いたら,「踊 りな
がら歌う」というように意見を合わせま
授業の展開
す。このような方法を子どもたちが知るこ
1)議題,提案理由,話合いの柱の確認
とで,よりよい意思決定をしていくことが
2)話合い
できるようにします。
柱 1「どのような内容の集会にするか を
授業の工夫
話し合おう。」
会の名前を考えることで,
「どの
ような会にしたいか」という思い
柱 2「会をどのような名前にするかを 話
が 明 確 に な り ま す 。「 仲良 し 集 会 」
し合おう。」
「にこにこ集会」などいろいろと
3)決定事項の確認,話合いのまとめ
考えられます。名前に込められた
思いを大切にして活動します。
③ 学級活動
内容(1)
規範意識を育む授業の視点
「 事 前 指 導で 活 動 の 目標 や 約 束 を確 認
する」
「 会 の 名前 」 を 意 識で き る よ うに 言
葉かけをします。例えば,
「みんなにこ
にこ仲良し楽しい会」であれば,
「仲良
く 笑 顔 で 活動 し よ う 」と い う 約 束事 を
意識することになります。
集会活動 「お楽しみ交流会」
事前指導
・会の名前を意識して活動する。
集会活動
1) はじめの会
2)交流会
・歌とダンス
・フルーツバスケット
・メッセージカード渡し
3)終わりの会
事後指導
・感想の発表と振り返りをする。
活動時の工夫
お楽しみ会に向けて準備する様子
楽しく活動し
ている前提とし
て ,き ま り や 約 束
を守って活動す
る姿があります。
そこを評価しま
す。
日常化へ
自 発 的 , 自 治 的 な 活 動 を 継 続 し て 行 っ て い け る よ 12 月 20 日 お 楽 し み 会
うに,楽しかった思いやみんなで活動をつくりあげ
たといった満足感を残したいものです。事後指導で,
教師が自発的,自治的に活動できた姿を積極的に評
価することで,次の活動への意欲をもたせることが
大切です。また,活動の様子を掲示し,学級の歴史
を 残 し て い く こ と に よ り , 意 欲 を 継 続 さ せ る こ と が みんなで仲良く活動できた。
できます。
みんなが笑顔になった。
- 15 -
このような
掲 示 物 を 残
し,今までの
活動を振り返
ることができ
るようにしま
す。集合写真
を撮っておく
のもよいと思
います。
8.規範意識を育むプログラム例(高学年Ⅰ)
係活動を活用した活動プログラム例
ねらい
係活動の一連の活動を通して相手の立場に立って行動し,みんなが過ごし
やすい学級をつくっていこうとする態度を養う。
学習計画(9 月~10 月:26~43 時間)
時間
1
ねらい
活動内容
お店に入ろうとした
足が止まったときの
「ぼく」の思いを考え
ることを通して,どの
ように行動することが
よいのかを考え,マナ
ーを大切にする態度を
養う。
【道徳の時間】
「どろだらけのスパイク」
主題名 4-(1) 公徳心
・お店に入ろうとして,足が
止まったとき,「ぼく」は
何を考えていたのかを考
える。
・だれにもほめられたわけで
もないのに,なぜ「ぼく」
はうれしい気持ちになっ
たのか考える。
更に楽しいクラスに
するために,係活動を
時間
1
ポイントとなる授業
①
【学級活動
内容(1)】
②
話合い活動
活発にするためにはど
「係活動を活発にするために」
うしたらよいかを考え
・付箋紙に係活動を活発にす
て話し合う。
る方法を書き出す。
・どうしたら係活動が活発に
なるか話し合う。
時間
【学級活動 内容(1)】
係活動
・各係で活動の計画を立てる。
・各係で活動をする。
休み時間、朝・帰りの会
③
みんなが楽しくなる
ために係活動を創意工
夫することを通して,
自主的,実践的な態度
を養う。
各係がどのような活
動をしているのか共通
理解するとともに,自
分たちの係の活動に生
かせるようにする。
【学級活動
1
内容(1)】
係活動
・活動の報告をする。
・活動の振り返りをする。
「道徳的行為の判断規準を視覚化する」
靴 を 脱 い で お 店 に 入 っ た 行 為 に つ い て ,「 周 り を
気にして」
「相手を思って」
「 自 分 自 身 で 満 足 」と い
う三つの判断規準が出ていた。
- 16 -
① 道徳の時間
「どろだらけのスパイク」
(学研 6 年)
授業の展開
1) 公 共 の 場 所 で の ル ー ル や マ ナ ー に
ついて話し合う。
2)資料を読んで話し合う。
○達也や健太が言ったことを聞い
て,ぼくはどのようなことを考え
たでしょう。
○足が止まったとき,みんなは何を
考えていたのでしょう。
◎だれかにほめられたわけでもな
いのに,なぜぼくは嬉しい気持ち
になったのでしょう。
3) ル ー ル や マ ナ ー を 守 る か 守 ら な い
かで迷った経験について話し合う。
4)学習のまとめをする。
規範意識を育む授業の視点
「人間のもつ弱さを理解する場面をつくる」
一つめの発問で,達也や健太が言っ
た「お客さんだからいいんだよ。」とい
う言葉に対して,よくないという気持
ちとこれぐらいならよいかという気持
ちの両方が引き出せるように,子ども
の発言に対してゆさぶりをかけていき
ます。よくないとわかっていても,や
ってしまうことがあるということに共
感できるようにします。
「他者の立場に立って考えられるようにする」
中心発問の前に,「ぼくは,お店の前
で何を見たでしょう。」と補助発問をし
ます。このことで,きれいに清掃され
た店内や他のお客さんに目を向けさ
せ,他者の立場に立って,自分たちの
行動を考えることができるようにしま
す。
② 学級活動
内容(1)
話合い活動
「係活動を活発にするために」
議題
係活動を盛り上げて,みんなが
楽しめる 6 年 1 組になれるように
ステップアップしよう。
授業の展開
1) 議 題 , 提 案 理 由 , 話 合 い の 柱 の
確認
2)話合い
前半 話合いの柱について,自分
の考えをもつ時間を取る。
後半「どうしたら係活動がステッ
プアップするかを話し合
おう。」
3)決定事項の確認,話合いのまとめ
③ 学級活動
授業の工夫
学級会に向けて,事前の話合いの柱につ い
て,自分の考えをもつ時間を設定すること が
多いようです。しかし,忙しい時期にはこ の
時間をとることが難しいことがあります。そ
こで,話合いの柱を一つにして,前半を係 活
動を活発にするためにどうしたらよいかと
いうことを個人で考える時間に当てました 。
規範意識を育む授業の視点
「目標に向かうための規範を考えることがで
きるようにする」
どうしたら係活動が活発になるのか,その
解決策を考えることができるようにします。
その解決策を活動するときの規範とします。
その際「人任せにしない」
「話し合って協力す
る」といった心構えと「活動する日を決めて
おく」
「活動の報告をする」などといった具体
的な方法が出てくることが予想されます。学
級の実態に合った規範をつくるために,心構
えの約束がよいのか,具体的な約束をつくる
ことがよいのか考えておくことが大切です。
〈係活動カレンダー〉
内容(1)
係活動 「係の計画を立てる」
事前指導
・学級会で話し合ったことを確認する。
係活動
・係の活動計画を考える。
・係の活動を進める。
事後指導
・活動の振り返りをする。
一週間の活動の様子を各係で記入して
います。予定通りに活動できたときはシー
ルを貼ります。このカレンダーを見て,係
活動が活発になるように,お互い言葉をか
け合うようになります。
日常化へ
係 活 動 カレ ン ダ ー など , 活 動 の様 子 を 目 に見 え る 形 にす る こ と で, 意 識 し て活 動 で き る
よ う に し ます 。 朝 の 会や 帰 り の 会で , 活 動 の報 告 の 時 間を 取 っ た り, 簡 単 な 発表 の 時 間 を
設けたりすることも大切です。活動の時間保障し,自発的に活動できるような環境を整え,
自分たちでよりよい学級をつくっていこうとする態度を育てていくことが大切です。
- 17 -
9.規範意識を育む活動プログラム例(高学年Ⅱ)
学芸会を活用した活動プログラム例
ねらい
学芸会の一連の活動を通して,自分の役割について自覚をもち,責任を果たすと
ともに,信頼し合い,協力してよりよい学級をつくっていこうとする態度を養う。
ポイントとなる授業
学習計画(9 月~11 月:12 時間)
時間
1
休み時間など
時間
1
授業など
時間
1
時間
1
ねらい
活動内容
どのような学芸会
にしたいか話し合い,
学級の所属感や連帯
感を高める。
【学級活動 内容(1)
】
「学芸会に向けて①」
・どのような学芸会にしたい
か
・学芸会をどのようにつくっ
ていくか
○台本作成・選択実行委員の決
定
・台本を考える。
・台本の決定
・学級で検討する。
【学級活動 内容(1)
】
「学芸会に向けて②」
・必要な準備物や役割につい
て話し合う。
・一人一人の役割を決める。
○学芸会の準備
・仕事ごとに進める。
○学芸会の練習
・協力して活動する。
自分たちの活動で
あることを意識し,意
欲的に活動しようと
する態度を養う。
一つ一つの役割に
意義があることを確
認し,一人一人が役割
を果たそうとする態
度を養う。
一人一人が責任を
もって自分の役割を
果たそうとする態度
を育てる。
ゆみ子と京子の信
頼し合う気持ちを考
えることを通して,友
だちを信頼し,支え合
おうとする態度を育
てる。
これからの活動を
更によくするための
方法を話し合い,活動
への意欲を高める。
時間
「わたし」の心の動
きを考えることを通
1 して,自分の役割につ
いて振り返り,最後ま
でやり通そうとする
態度を養う。
練習の成果を発揮
し,達成感を味わい,
所属感を高める。(規
範意識に関わるねら
いのみ掲載)
学芸会の取組を振
り返り,自分や学級の
1 成長を確認し,所属感
や連帯感を高める。
時間
6
① ① 学級活動
時間
【道徳の時間】
「共に生きるために」
主題 信頼・友情 2-(3)
・ゆみ子に対する京子の気持
ち,京子に対するゆみ子の
気持ちを考える。
【学級活動 内容(1)
】
「学芸会に向けて③」
・学芸会の中間の振り返りを
する。
・活動を更によくしていくた
めの方法を話し合う。
【道徳の時間】
「わたしたちの努力賞」
主題 役割遂行 4-(3)
・掃除に来なくなってきたと
きの気持ちを考える。
・掃除を続けることができた
理由を考える。
○学芸会
・練習の成果を発揮し,成功
するよう協力する。
・自分の役割を考えて行動す
る。
【学級活動 内容(2)
】
「学芸会を振り返って」
・学芸会でよかったことを話
し合う。
・これからの生活に生かして
いきたいことを書く。
②
③
- 18 -
内容(1)
「学芸会に向けて①」
議題
小学校最後の学芸会を最高の思い
出にするためにどうしたらよいかを
話し合おう。
授業の展開
1)議題,提案理由,話合いの柱の確認
2)話合い
柱 1 「どのような学芸会にしたいか
話し合おう」
柱 2「学芸会の劇をどのようにつく
っていくか決めよう」
3)決定事項の確認,話合いのまとめ
授業の工夫
柱1でどのような学芸会にしたい
か を 話 し 合 っ て ,学 芸 会 の 目 標 を 決 め
ま す 。そ し て ,目 標 を ス ロ ー ガ ン に し
て 表 し ,活 動 の と き に 意 識 で き る よ う
にします。
規範意識を育む授業の視点
「話合いのルールを意識する」
話合いのルールを示すことで,私的
な話合いではなく,集団としてみんな
で意思決定をしていく公的な話合いで
あるという意識をもつことができるよ
うにします。
「折り合いを付けて話し合う」
意見には理由を付けて話すことがで
きるようにしたいものです。理由を付
けて話すことで,それぞれの意見の良
さや問題点を考えて,よりよい意見を
選択することができます。提案理由を
意識して話し合うことも重要です。
② 学級活動
内容(1)
授業の工夫
学芸会の練習や準備の様子をビデオで
撮っておきます。柱 1 の話合いに入る
「学芸会に向けて③」
議題
学芸会の目標を達成するために,これか
らがんばっていくことを話し合おう。
授業の展開
1)議題,提案理由,話合いの柱の確認
2)話合い
柱 1「学芸会の練習や準備の中で,思っ
たことや感じたことを話し合おう。」
柱 2「残りの練習でがんばっていくこと
を話し合おう。」
3)決定事項の確認,話合いのまとめ
③ 道徳の時間
前に,みんなでビデオを見ることで,
自分たちの活動の様子を振り返るこ
とができます。
規範意識を育む授業の視点
「 目 標 に向か う ため の規 範 を考 える こ
とができるようにする」
柱 1 で,活動を振り返り,更によく
な る 点 や改善 点 を出 し合 い ます 。柱 1
での話合いを基に,柱 2 でよりよい活
動 に し ていく た めの 規範 を 考え てい き
ま す 。「一人一人がやる気を出し,自分
の役割を果たす」「自分が思っている以
上の声を出す」といった行動目標的な規
範を考えることができるようにします。
授業の工夫
「わたしたちの努力賞」(光文書院)
授業の展開
1)生活の中で,自分にはどのような役割が
あるかを話し合う。
2)資料を読んで話し合う。
○第 1 回の掃除をしているとき,わたし
はどのような気持ちでしたか。
○回が進むにつれて,だんだんと人が来
なくなったのはどうしてでしょうか。
◎どうしてわたしたちは,掃除を続ける
ことができたのでしょうか。
3) 自 分 の 役 割 を 果 た し た 経 験 に つ い て 話
し合う。
4)学習のまとめをする。
二つめの発問の後,
「来なくなった人たち
はわたしたちのことをどのように見ている
のか 。
」
「わたしたちには,来なくなった
人たちのような気持ちは
な か っ た か 。」と い う 補 助
発問を入れます。このこ
とで,お互いに同じよう
な思いをもっていること
に気付くことができま
す。
規範意識を育む授業の視点
「人間のもつ弱さを理解する場面をつくる」
授業の工夫に挙げたような補助発問
をすることで,本音の意見が出るよう
にします。
「 悪いとはわかっているんだ
けれどもしてしまうことがある」とい
う人間のもつ弱さにふれることができ
るようにします。
日常化へ
子 ど も たち が 自 分 たち の 力 で 活動 を 進 め よう と す る 態度 を 継 続 して 育 ん で いき た い も の
で す 。 そ のた め に は ,子 ど も た ちが 積 極 的 に意 見 を 出 せる よ う , 議題 箱 や 先 生と の 相 談 タ
イ ム な ど を設 け る 工 夫が 大 切 で す。 ま た , この 活 動 プ ログ ラ ム で 培っ た 力 を 係活 動 や 委 員
会 活 動 な どに つ な げ ,自 分 た ち でよ り よ い 学級 や 学 校 生活 を つ く って い け る よう に し た い
ものです。
- 19 -
Ⅲ.規範意識を育むために(中学校編)
1.中学校における規範意識の育成について
◆「疾風怒涛」の中学生
ドイツの詩人ゲーテは,
「思春期」を「疾風怒濤(しっぷうどとう)の時代」と表し
ました。中学生はまさに,そんな思春期の真っただ中の時期です。
小学生のときに,素直だった子どもが,中学生になって急に親に冷たくなったり,
学校の中では,先生の言う事よりも,友だちの言う事を優先させたりすることもあ
ります。そのような中学生とどのように接したらよいのか。大人はいつの時代も頭
を悩ませてきました。
しかし,この時期に,中学生が大人に対して,そのような態度を見せることは当
たり前のことで,人間が発達していく中での通過点に過ぎないのです。このような
状況の中で,周囲の大人が権威的に注意しても,よい結果を得られるとは思えませ
ん。
それでは,中学生の規範意識を育成するためには,どのようなことに注意して,
学級経営をしていくことがよいのか,子どもたちの自尊感情と規範意識との関係を
中心に考えてみました。
◆対人関係能力が低下している中学生
近年の「少子化」や「地域との関わりの減少」,「遊び方の変化」などの原因によ
って,中学生の対人関係能力が低下している傾向があります。このことは,中学校
の中でも,
「自己中心的な発言」や「価値観の同じ友だちとしか遊ばない」といった
状況からも見られると思います。また,人に対して,
「自分は自分,他人は他人」と
いった考え方では,規範意識の育成を望むことはできません。
下の図のように,規範意識は「人間関係の深まり」により「自己肯定感」や「自
己有用感」が生まれることによって育成されていくと考えています。
しかし,
「人間関係の深まり」が進んでも,規範意識が向上しているとは限りませ
ん。友だちは多いけれど「良くない友だち関係」となる場合もあります。そこで,
人間関係を深めることと並行して,
「 道徳的価値」を身に付けていくことが大切です。
人間関係の深まり
自分の存
在が確認
できる
自己肯定感
心の余裕
活動への
意欲が生
まれる
自己有用感
受容的な考え方
規範意識の育成
道徳的価値
そこで,
「道徳の時間」
「学級活動」
「各教科等の体験的な活動」の三つをユニット
化した「道徳教育を軸としたユニット学習」を考えました。そして,そのユニット
学習を中学校 3 年間の中で計画的に実施するための「規範意識育成の活動プログラ
ム例」を作成しました。
- 20 -
2.「活動プログラム例」のポイント
このプログラム例は「道徳の時間」「学
級活動」
「各教科等の体験的な活動 」をユ
ニットにしています。この三つの教育活動
が相互に影響し合い,より効果的に生徒に
人間関係と道徳的価値を身に付けさせる
ことにつながります。
それでは,この三つの教育活動のポイン
トについて,簡単に以下に示します。
規範意識の向上
規範意識に関する
学級活動
波及・発展
人間関係の深まり
道徳的価値
道徳の時間
各教科等の
体験的な活動
補充・深化・統合
波及・発展
①道徳の時間(発言しやすい雰囲気のある
意欲的な活動
話合い活動
意見交流
学級にしよう)
他者の「思い」や「価値観」を聞くこと
は,道徳的価値を高めていくことにつながります。また,学級活動や体験的な活動
での人間関係を考える基礎にもなります。このことから道徳の時間では,
「思い」や
「価値観」を発表する「意見交流」を,いかに活発に行えるかが重要になります。
そのためには,授業での「約束づくり」「発問の明確さ」「発表の手法」などを深く
吟味することが大切になります。
②学級活動(学級の一員であることの自覚がもてるようにしよう)
「話合い活動」を活発に行う学級は,自分たちの手で学級をつくっていく喜びを
知っている学級であるといえます。生徒のリーダーを中心として,諸問題を解決し
たり,約束事を作ったりすることを,教師が意識的に計画したいものです。そのた
めには,生徒との打合せや準備,議事を進める上での適切なアドバイスなど,丁寧
に時間をかけて行う必要があります。学級活動で決められた内容については,道徳
の時間の中で検証することで,更に生徒の道徳性を高めることにつながると考えま
す。
③体験的な活動(意欲的に活動できる学級にしよう)
道徳の時間で学んだことにより,活動への「動機付け」が行われ,体験的な活動
に対する「活動の意欲」が高まります。更に,この活動の中で体験をした生徒は,
道徳の時間の中で,より活発に意見交流を行えると考えます。
中学校の体験的な活動については,例えばユニット学習を各学年に 3 回実施する
と,次のような行事が考えられます。
1年
2年
3年
Ⅰ期
部活動
合唱コンクール
修学旅行
Ⅱ期
体育祭
生徒会役員選挙
学級劇(学年劇)
Ⅲ期
ファイナンスパーク学習
生き方探究チャレンジ体験
卒業式
3.「活動プログラム例」の実施に当たって
このプログラム例を実施する際には,「日常の道徳的心情を育てる取組」「自尊感
情を高める授業内の工夫」
「学校内の状況把握」などを進めておくと更に効果が上が
ります。このプログラム例を用いるための学年や学校全体での話合いが,子どもた
ちの規範意識の育成への第一歩となると考えます。
- 21 -
4.規範意識を育む活動プログラム例(中学校Ⅰ)
合唱コンクールを活用した活動プログラム例
ねらい
学級の一員であることを自覚し,互いを尊重し協力していこうとする態度
を養う。
ポイントとなる授業
学習計画(7 月~9 月:16 時間程度)
ねらい
活動内容
話合い活動を通して,学級 【学級活動
内容(1)】
集団の一員であるという意 話合い活動
1
時
間
識をもたせる。
「合唱コンクールの選択曲
合唱コンクールを皆と協
②
を決めよう」
力して取り組もうとする意 ○議題
合唱コンクールでの選択
欲を高める。
曲を決める。
・どのような曲だと学級が団結する
かを考える。
集団の中で自己の責任を 【道徳の時間】
自覚し,自己を高めるために 「合唱コンクールで大切な
1
時
集団生活の向上に努めよう
ものは」
とする意欲を高める。
主題名
①
集団生活の向上
4-(1)
・合唱コンクールで取り組むのに大
間
切なものは何かを考える。
・班に分かれて話合いをし,意見を
まとめて発表する。
互いを尊重して協力して 【合唱の練習】
10 いこうとする態度を養う。
時
・パートに分かれて,CD
一人一人が責任をもって
③
デッキを使って練習を行う。
① 道徳の時間
「合唱コンクールで大切なものは」
授業の展開
1)合唱コンクールの取組に大切なもの
を考える。
・ダイヤモンドランキングを作成す
る。(個人で)
・付箋を用いて意思表示をする。
(とても大切である項目,あまり大
切でない項目)
・それぞれ選んだ理由を意見交流す
る。
2)班の中でダイヤモンドランキングを
完成する。
・班の中で意見交流を行う。
・ダイヤモンドランキングを完成し
発表する。
間 役割を果たそうとする意欲 ・学級全員で合唱練習を行い,よか
をもたせる。
った点,悪かった点を話し合う。
練習の成果を発揮し,一生 【合唱コンクール】
4
時
間
懸命に歌うことで成就感を ・これまでの練習を思い出し,素晴
もたせる。
らしい合唱を全校生徒に聞かせ
学級が自分にとって大切
る。
道徳での三つの約束
(1)しっかり考えよう
(2)積極的に発言しよう
(3)人の話はしっかり聞こう
【 年 度 初 め に 約 束 事 を し て お く と よ い 。】
な集団であることを自覚さ
せる。
A・練習量
どのくらいの時間練習したか
とても大切である
B・団結力
A・練習量
どのくらいの時間練習したか
みんなの心が一つになったか
①
②
C・責任感
自分のすべきことができたか
②
D・思い出
思い出に残る取組ができたか
③
③
④
③
④
E・努力
できるかぎりの活動ができたか
⑥
A ~ J の 10 項 目 を 用 意
し ,「 と ても 大 切 で ある 」 か
ら「あまり大切でない」まで
のダイヤモンド型の空欄に
当てはめます。
F・一生懸命
せいいっぱいがんばったか
G・学級の結果
よい成績を残せたか
⑤
ダイヤモンドランキング
H・感動
感動することができたか
多くの生徒は,
「 団 結 力 」や「 思
い 出 」を 大 切 に 考 え て い ま し た 。
反対に「個人の結果」や「学級
I・個人の結果
自分の技術が上がったか
の成果」については,大切でな
J・友情
友だちとの友情が深まったか
いという意見が多く,生徒の多
くは「みんなと楽しく活動した
い 。」 と 考 え て い る よ う で す 。
あまり大切ではない
- 22 -
② 学級活動
規範意識を育む授業の視点
内容(1)
「合唱コンクールで大切なものは」
授業の展開
1)合唱コンクールについての思いを
高める。
・昨年度のビデオを見て,合唱コ
ンクールのイメージをもつ。
2)話合い活動の中で,学級の選択曲
を決める。
・候補曲のCDを聴く。
・3 曲まで候補を絞り,それぞれの推
薦理由を発表する。
・投票を行い,選択曲を決定する。
「生徒の手による話合い活動ができるように
する」
学級の諸問題を解決する実践力を育てる話
合い活動は大切な取組と考えます。
しかし,中学に入学したばかりの,リーダー
が育っていない1年生の学級や生徒の対人関
係能力が育っていない学級では,つい担任の手
で学級活動を進めてしまいがちになります。
時間と手間がかかりますが,生徒に「自分た
ちの学級」という意識をもたせるために,計画
的にリーダーを育て,話合い活動に取り組んで
いけるようにしていきます。
【生徒の具体的な準備】
・候補曲のプリントの用意 ・投票用紙の用意
・CDデッキの操作練習
・担任との事前の打合せ
③ 合唱の練習
合唱指導のポイント
○まず,先生が歌おう
規範意識を育む授業の視点
「意欲的な活動ができるようにする」
合唱コンクールは,中学校の行事の中でも
特に大切に考える担任教師が多いようです。
なぜなら,この行事は一部の生徒だけの頑張
りでは成果を出すことが難しく,学級全体の
団結力を高める良い機会となるからです。
しかし,担任教師は「勝つ」ことを目標に
して学級をまとめようとするために,部活動
の指導のように厳しく叱責してしまうこと
があります。
学級の人間関係を深めることに重点を置
いて,生徒主体の取組を進めていくことを大
切にしたいですね。
付箋を使って
意思表示する工夫
班(小集団)で
話し合う工夫
規範意識を育む授業の視点
中学生の男子の中には「恥ずかしい」と
いう感情から,ふざけた態度をとる生徒が
いることがあります。そこで,まず,教師
が手本を見せることが大切なのです。
○目標の確認と反省を毎日行おう
リーダーは練習前に「今日の目標」を伝え,
練習後に「今日の反省」をします。もちろん,
教師と事前の打合せもしておきます。
○「君たちには優勝よりすごいものを手に
入 れ て ほ し い 。」
結果ばかりを求めるのではなく,生徒の
思いを,今一度確認してみましょう。
模造紙を使って
表を作る工夫
「活発に意見交流ができるようにする」
意見交流ができる学級は,発言しやすい雰囲気があります。そうするためには,他人か
ら意見を中傷されることがなく安心して意見を出せる学級経営を心掛ける必要がありま
す。道徳の時間では,発問や発表方法の工夫をたくさん取り入れていきましょう。
- 23 -
5.規範意識を育む活動プログラム例(中学校Ⅱ)
職場体験を活用した活動プログラム例
ねらい
正しい礼儀や作法を身に付け,よりよい人間関係を築いていこうとする態度
を養う。
学習計画(12 月~2 月:40 時間程度)
ねらい
活動内容
①
礼儀作法とは感謝や好意 【道徳の時間】
を形に表すということを理 「一枚のはがき」
1
時
間
解させ,時と場合に応じた形
ポイントとなる授業
主題名 礼儀
2-(1)
で実現しようとする心情を ・お礼状を出さなかったのは,それ
育成する。
ほど悪いことであったのかを考
える。
・なぜ,子どもたちに,「お礼状を
忘れるな」としつけているのかを
考える。
聞き手の態度によって会 【学級活動 内容(2)】
1
時
間
話が影響されることを理解 スキル・トレーニング
②
させ,よりよい人間関係を築 「話の聞き方」
いていこうとする意欲をも ・スキル・トレーニングの方法を用
たせる。
い,班活動の中で「聞き方」の技
能を高める。
職場体験学習に対する興 【総合的な学習の時間】
① 道徳の時間
「一枚のはがき」
(文部省 道徳の指導資料とその利用)
授業の展開
1)挨拶について話し合う。
2)資料を読んで意見交流をする。
・筆者が,お礼状を出さなかった
のは,それほど悪かったことな
のでしょうか。
・筆者は,なぜ子どもたちに「お
礼状をわすれるな」と厳しくし
つけているのですか。
3)礼儀の意味を考える。
味や関心を高め,意義やねら 職場体験学習に関する事前の取組
5
時
間
い,留意事項についての理解 ・履歴書づくり
を図り,取組の効果を高め ・面接指導
る。
規範意識を育む授業の視点
・礼儀,挨拶,服装指導
・電話によるアポイントメント
・職場への事前訪問
・面接指導
体験学習を通して,職業の 【総合的な学習の時間】
30 意義や勤労の尊さを体得さ それぞれの職場で体験学習
時 せ,望ましい職業観を育む。 を行う。
間
③
・現地で集合 ・体験活動開始
・現地で解散 ・活動日誌の記入
それぞれの体験を共有す 【総合的な学習の時間】
3
ることによって,職業の意義 ・職場体験の総括
時 や役割の理解を深める。
・お礼状の作成
間
・事後訪問
「礼儀や作法の価値に気付くようにする」
礼儀や作法については「堅苦しい」
と考えずに,身に付けると人との関係
が広がり,よい関係をつくることがで
き ま す 。「 あ り が と う 。」 の 一 言 で , 相
手は嬉しく思いますし,
「また助けてあ
げたい。」という気持ちが,わいてくる
のではないでしょうか。
スキル・トレーニング(話の聞き方)
規範意識を育む授業の視点
話を聞く態度によって,相手が感じ
る印象が変わり,人間関係に影響する
こ と も あ る。「 聞 く 態度 」 や 「 話す 態
度」について,ロールプレイングによ
って体験し,その重要性について話し
合ってみる。
指示カードを見る
「聞き手」の生徒
2 人で 2 分程度の
会話を行う様子
- 24 -
② 学級活動
内容(2)
こ の よ う な「 聞 く 態 度 」で ロ ー ル
プレイングをしていきます。
「話の聞き方」(ロールプレイング)
聞き手の役割カード A
関わりの少ない聞き方で聞いてください
授業の展開
1)聞く態度について,例を見て活動の
手順を理解する。
・事前に 2 人を指名し,練習して
おく。
2)各班でロールプレイングを行う。
・話し手,聞き手,報告係,進行
係の役割を決める。
・「 関 わ り 合 う 聞 き 方 」「 え ら そ う
な聞き方」で 2 分間会話を行う。
3)話 し 手 の 感 じ た こ と に つ い て 話 合
い活動を行う。
【例】
・相手のことを見ないようにする。
・相手に近づかないようにする。
・眠そうにあくびをする。
・横を向く。
・髪の毛や服をいじる。
・うなずいたりしない。
・手遊びをする。
・質問をしない
聞き手の役割カード B
えらそうな聞き方で聞いてください
【例】
・足を組み,腕を組む。
・相手を見くだす。
・相手の話を途中でさえぎる。
・相手に対して一方的に意見を言う。
・鼻で笑う。
・
「そんなことはばかげている」と実際に言う。
・
「ふーん」
「へー」など,えらそうなあいづちをうつ。
聞き手の役割カード C
関わり合う聞き方で聞いてください
【例】
・相手の目を見る。
・身をのり出して聞く。
・何度もうなずく。
・笑顔で聞く。
・いろいろ質問する。
・話に興味があることを態度で示す。
・
「へー」
「なるほど」
「すごいね」などと感心する。
③ 総合的な学習の時間
「職場体験学習」
○月曜日から金曜日までの 5 日間行う。
○開始時間帯と終了時間帯は事業所の事
情に合わせる。(例 9:30~17:00)
○公共交通機関を使って現地で各自集合
し活動を開始する。終了も現地解散と
する。
○事業所が休業の場合は,学校に登校し
図書室で学習をする。
○活動日誌を記入し,事業所の方に確認
してもらう。
*これは中学校の職場体験の一例です。
規範意識を育む授業の視点
「職場における人間関係の大切さを感
じるようにする」
職場体験学習は,様々な大人たちと接
する貴重な機会です。そのためには,生
徒のコミュニケーション能力を高め,意
欲的に接していこうとする意欲がもて
るようにすることが大切です。
実践を行った生徒の感想文の中には,
「礼儀の大切さ」
「挨拶のうれしさ」
「接
客の難しさ」など,対人関係のことが多
く書かれていました。
ポスターセッション
模造紙やホワイトボードなどに,図や表や写真などを書いたものを
貼り出し,発表者が聞き手の前に立ち,適宜説明を行う報告形式です 。
規範意識を育む授業の視点
「形式を大切に考えるようにする」
探究的な学習として職場体験後に「ポスターセッション」の取組
を行うことは,生徒に学級活動で経験した「話の聞き方」について,
更に応用し,礼儀や作法を習得するのに有効です。
また,発表会では,保護者や職場体験でお世話になった事業所の
方々も招待することで,家庭と地域との連携も期待できます。
- 25 -
6.規範意識を育む活動プログラム例(中学校Ⅲ)
生徒会役員選挙を活用した活動プログラム例
ねらい
学校の一員として積極的に生徒会活動に関わり,よりよい環境をつくろうと
する態度を養う。
学習計画(10 月~11 月:11 時間程度)
ねらい
活動内容
社会の一員としての自覚 【道徳の時間】
をもち,みんなと協力してよ 「学級委員」
1
りよい社会を積極的につく
ポイントとなる授業
①
主題名 社会連帯 4-(2)
時 っていこうとする意欲を高 ・藤沢さんと山川さんの行動につい
間 める。
て考える。
・この学級委員選挙は有効か無効か
について考える。
学校をよりよい環境にす 【学級活動 内容(2)】
るためのリーダーについて, 「生徒会選挙と学級役員
1
真剣に考える態度を養う。
②
選挙」
・生徒会選挙の立候補を立て,学級
時
の取組として選挙活動を進める。
間
・後期の学級委員について考え,活
① 道徳の時間
「学級委員」
( 明 治 図 書 中 学 校 道 徳 自 作 資 料 集 3)
授業の展開
1)生徒会選挙について考える。
2)資料を読んで意見交流をする。
・藤沢さんと山川さんの行動につ
いて考える。
・この学級委員選挙は有効か無効
かについて考える。
3) 安 心 し て 活 動 が で き る 学 級 に つ い
て考える。
動する意欲を高める。
3
学校の一員として生徒会 【放課後】
時 選挙の行事に主体的に関わ 選挙運動の事前準備
間 る。
2
③
・ポスターとたすきづくり
よりよい学校をつくって 【登校時】
時 いこうとする行動がとれる。 選挙運動
・投票の呼び掛け
間
自分たちの一票が,学校を 【立会い演説会】
2
つくっていく実感をもち,み ・真剣に立候補者の演説を聞き,投
時 んなで決めたことが大切で
票を行う。
間 あることに気付くことがで
きる。
学級の一員であることを 【学級活動 内容(1)】
2
自覚し,主体的に学級活動に 「後期学級委員選挙」
時 参加していこうとする態度 ・後期の学級委員をみんなで選ぶ。
間 を養う。
規範意識を育む授業の視点
規範意識を育む授業の視点
「主体的に学級に関わろうとする意欲
がもてるようにする」
資料「学級委員」は,気に入らない
山川さんを,藤沢さんたちが結託して
学級委員にさせてしまう内容です。
良くないことに直接関わっていなく
ても,見て見ぬふりをすることは,同
じ悪い行為であることを生徒に理解さ
せます。また,このような学級では,
安心して活動できないことにも気付か
せ,自ら行動する意欲をもたせたいと
考えます。
道徳の授業での(ちょっとした)工夫
規範意識を育む授業の視点
①生徒の発言は否定しない
→様々な「考え方」や「価値観」があります。発言を肯定的にとらえましょう。
②生徒の発言を黒板に書く
→自分の発言を先生が黒板に文字として書くことは,次の発言意欲につながります。
③追質問をする
→先生が真剣に自分の意見を聞いてくれていると感じるようになります。
④時間がなくなってしまったら
→「ごめんなさい。他の人の意見も聞いてみたいのですが,時間が無くなってしまいまし
た。君たちの意見を知りたいので,ワークシートにしっかり書いてくださいね。」
- 26 -
② 学級活動
内容(2)
「生徒会選挙と学級役員選挙」
授業の展開
1)生徒会役員選挙について考える。
・事前に立候補者を把握しておき,
所信表明を行う。
・学級の中で「選挙協力委員」を選
び,学級全体の取組であることを
意識する。
2)後期の学級委員について考える。
・前期の学級委員の話を聞き,拍手
で称賛する。
・リーダーに必要なものを考え,意
見交流を行う。
3) 後期 の学 級委 員にな ろう とする 意思
表示をする。
規範意識を育む授業の視点
「委員に成就感をもたせて終わるようにする」
学級委員に選出されたときに,
「頑張って」
の拍手をすることはよく行います。しかし,
任 期 の最 後に ,「 御苦労 さ ま」 の拍 手 を忘 れ
ていることが多いのではないでしょうか。
この授業では,前期の学級委員さんに,①
仕事の内容を報告してもらう②苦労した点
や楽しかった点を話すということを行い,生
徒の自己有用感を高
めるとともに,後期
の立候補への意欲を
高めることをねらい
としました。
③ 放課後・登校時
「選挙運動の事前準備」「選挙運動」
【放課後】
○立候補者と選挙協力員でポスター
とたすきづくり
【登校時】
○校門前で立候補者が投票の呼びか
けを行う。
立会い演説会・投票
規範意識を育む授業の視点
「主体的に学校に関わろうとする意欲がも
てるようにする」
意欲的に生徒会活動や委員会活動に関わる
生徒を育てることで,ルールや約束事の大切
さを理解し,規範意識が向上することにつな
がると考えました。そこで,
「選挙協力員」を
学級独自で選び,できるだけ多くの生徒が関
わることができるようにしました。
規範意識を育む授業の視点
「規範の大切さを体験できるようにする(ルールをつくり,守る取組)」
規 範 意 識 を 育 成 す る こ と は ,「 ル ー ル を 守 ら せ る 取 組 」 と 考 え て し ま う こ と が あ る 。 し か
し,学校の中には,明文化されていない「道徳」や「慣習」の部分も少なくはありません。
教師は指導の中で,「そうするべきだ。」「あたりまえだ。」と言ってしまい,生徒との関係が
気まずくなることもあります。
この活動プログラムでは,人間関係を深めることで,生徒に自他の権利を守る「ルールや
約束事」の意味を考えることができるようにします。更に,道徳の意見交流や学級活動の話
合い活動によって,学級独自の「規範」をつくり,守る体験を多くさせます。
このことは,ルールや約束事を大切にする気持ちにつながり,規範意識を向上することに
つながると考えます。
- 27 -
おわりに
規範は 8 歳までに身に付けておかないと,その後は身に付くことがない
といわれています。中学生になって規範を身に付けようとしてもなかなか
難しいことなのです。本市において,規範意識の低下は中学校で特に問題
になっています。しかし,このことを考えると,もっと早い段階から規範
意識を育んでいけるように取り組むことの重要性を感じます。
規範自体を身に付けていなければ,それを守ろうとする意識が働くこと
はありません。保育所・幼稚園の段階から,生きていく上で大切な規範を
学ぶことができるようにする必要があります。それは,単に授業を設定す
るということだけではありません。規範を身に付け,規範意識を育む芽は,
子どもたちの遊びや生活の中にたくさんあります。子どもの成長を見守る
教師がその芽を見逃さず,子どもたちに語りかけ,支援していくことが大
切です。
各発達段階において,教師が子どもたちにどのような規範を身に付けさ
せ て い き た い の か と い う こ と を 確 認す る 必 要 が あ り ま す 。 規 範 を 身 に 付
け,規範の意義を理解し,規範を自己のものとして確立していくことがで
きるように適切な指導,支援を行わなければなりません。一つ一つの保育
所・幼稚園,小学校,中学校がそれぞれの取組を行っているだけでは,子
どもの規範意識を育んでいくことは難しいでしょう。それぞれの学校・園
がどのような子どもを育てていきたいのかということを共通理解し,それ
ぞ れ が 連 携 し な が ら 子 ど も た ち の 成長 を う な が し て い く こ と が 必 要 な の
です。
主体的に判断し,行動できる自律的な規範意識を育むことで,将来,子
ど も た ち が 社 会 を 形 成 す る 主 体 者 とし て の 基 盤 を 築 い て い く こ と を 願 っ
ています。
- 28 -
○本冊子で紹介した実践研究の主な内容は,以下の報告書に掲載しています。
京都市総合教育センター
報告
No.544
報告
No.549
報告
No.552
研究紀要
小学校低学年における学級経営の在り方
―体験的な活動を通して規範意識を育てる学級経営年間計画例の提示―
自発的,自治的な集団づくりを通して育む規範意識
―規範を内面化していくための指導行動と活動プログラムの開発―
山口 賢(京都市総合教育センター研究課)
中学校における規範意識の育成をめざして
―他者や集団との関わりを大切に考える活動プログラムの開発―
中大路 浩一(京都市総合教育センター研究課)
○本冊子を作成するにあたり,参考にした文献等
『小学校学習指導要領解説 道徳編』
『中学校学習指導要領解説 道徳編』
『発達をうながす教育心理学』
『ピア・サポートではじめる学校づくり』
『日本の学級集団と学級経営』
『規範性をはぐくむための教材・活動プログラム』
『人間関係向上プログラム 指導資料』
文部科学省
文部科学省
山岸明子:新曜社
滝充:金子書房
河村茂雄:図書文化
広島市教育委員会
神戸市教育委員会
京都発! 確かな教育実践のために 20
子どもたちがよりよい人間関係を築くための
規範意識を育む活動プログラム例
発行日
発 行
平成24年5月
京都市総合教育センターカリキュラム開発支援センター
〒600-8023 京都市下京区河原町通松原上る 2 丁目富永町 344
TEL 075-371-2341
FAX 075-353-4851
- 29 -
Fly UP