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不登校 発達障害 心身症

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不登校 発達障害 心身症
講義① 過敏性腸症候群
獨協医科大学越谷病院 子どものこころ診療センター長 作田 亮一
本日のお話
1.心身症入門
2.過敏性腸症候群
☞診断
☞機序
☞治療
☞心理的介入
子どもを取り巻くこころの問題
ストレスを抱える子どもの多くは
3角関係の中で生活している
不登校
発達障害
心身症
−1−
子どもの心が関与する疾患や状態
1.ストレス関連身体疾患・身体症状(心身症など):
起立性調節障害、過敏性腸症候群、慢性頭痛、摂食障
害、チック障害、頻尿、夜尿・遺尿、遺糞、解離性・
転換性障害
2.慢性疾患・悪性疾患など身体疾患に関わる諸問題:
3.精神疾患・精神症状:
不安障害、抑うつ状態、双極性障害、
(初期)統合失調症
4.発達障害:精神遅滞、自閉症スペクトラム障害、
注意欠陥/多動性障害、学習障害
5.行動の問題:不登校、引きこもり、反社会的行動、
性的問題行動
6.養育の問題:
虐待、ネグレクト、家族の病気・経済的問題による
養育困難
子どもの心身症の定義
(日本小児心身医学会 2014)
子どもの身体症状を示す病態のうち、その発症や経
過に心理社会的因子が関与するすべてのものをいう。
それには、発達・行動上の問題や精神症状を伴うこ
とがある。
−2−
心理社会的要因の関与を疑わせる臨床所見
1.症状の程度や場所が移動しやすい。
2.症状が多彩である。
3.訴えのわりに重症感がない。
4.理学的所見と症状があわない。
5.曜日や時間によって症状が変動する。
6.学校を休むと症状が軽減する。
心身症のメカニズム:
心身相関とは「心と身体の関連性」
ストレス
身体
こころ
心身相関の理解が治療のゴール
自律神経系
内分泌系
免疫系
ストレスにさらされた子どもは
ストレッサー
ストレス反応
子ども
個人的要因
年齢 性別
価値観
状況:環境 身体 心理
感情・認知・思考
性格
生物学的要因
頭痛
腹痛
めまい
肩こり
食欲不振
睡眠障害
など
ストレス
対処
適応
不適応
不登校
不適愁訴
摂食障害
問題行動
など
日本小児心身医学会ガイドライン集2014版
日本消化器学会 機能性消化管疾患診療ガイドライン2014
過敏性腸症候群(IBS)に基づいてお話をさせていただきます。
・明らかな感染兆候がないのに繰り返す腹痛の大部分
は機能性疾患である機能性消化管障害 (FGIDs:
functional gastrointestinal disease)
・年少児によくみられる反復性腹痛(recurrent
abdominal pain: RAP)および、
思春期以降に多い過敏性腸症候群(irritable bowel
syndrome: IBS)がある
機能性消化管障害: FGIDs
1989年に策定されたRome基準が診断基準
・1999年には、FGIDsの国際分類と診断基準である
Rome IIが発表。この中で、小児のFGIDsは、上腹部
症状を主訴とする機能性ディスペプシア(機能性上
腹部愁訴・機能性胃腸症:FD)と、排便に関連した
下部消化管機能障害である過敏性腸症候群(IBS)が診
断基準に明記。
・2006年Rome III基準で、小児FGIDsの診断基準はさ
らに明確となり、
新生児・幼児(4歳未満)と小児・思春期(4~18
歳)のふたつに分類された。
RomeⅢ診断基準
過敏性腸症候群(IBS)
■腹痛あるいは腹部不快感が
■最近3か月のなかの1か月につき少なくとも3日以上を占め
■下記の2項目以上の特徴を示す
1)排便によって改善する
2)排便頻度の変化で始まる
3)便形状(外観)の変化で始まる
少なくとも診断の6か月以上前に症状が出現
最近3か月間は基準を満たす
腹部不快感=腹痛とはいえない不愉快な感覚
(Longstreth GF,et al. Gastroenterology 2006)
【過敏性腸症候群の特徴】
成人過敏性腸症候群(IBS):大腸を中心とした消化管
機能異常により、排便に伴う腹痛・腹部不快感・下
痢・便秘などの便通異常を慢性的に訴える症候群であ
る。排便頻度と便性により、
(1)便秘型、(2) 下痢型、(3)下痢・便秘混合型、
(4) 分類不能型
の4群に分類される。
IBSの頻度はきわめて多く、世界の有病率は約10%、
本邦での報告では、小学生1~2%、中学生2~5%、
高校生5~9%であり年齢とともに増加する
(Lovell RM: Clin Gastroenterol Hepatol 2010、宮本信也:平成5年度厚労科研報告書、
1993)
【小児IBSの診断】
Rome III診断の基準を用いる。成人の診断
とは罹病期間が2か月と短くなった点くらいで
大差はない。
小児FGIDsは年齢によって分類され、
■4歳未満は乳児疝痛、機能性下痢症
■年少期はRAP
■9~12歳以降は成人と同様に便通異常が便
秘型・下痢型など
■13~14歳の思春期前期には、症状は成人
と同様となり、ガス症状を主訴とするタイプ
が加わる。
過敏性腸症候群
(IBS)
RAP型
下痢型
便秘型
乳児疝痛
機能性下痢症
ガス型IBS
反復性腹痛(RAP)
機能性ディスペプシア(FD)
post‐infectious IBS(PI-IBS)
0
1
4
13
18
年齢
腹痛関連機能性消化管障害の年代別表現型
島田章、他:心身医学30、1990
一部改変
20(歳)
【反復性腹痛 reccurent abdominal pain : RAP】
●年少から始まる反復性腹痛 (RAP):Apleyにより、「日常生
活に影響するほどの反復性発作性腹痛のエピソードが、少なく
とも3か月以上にわたり、3回以上独立して認められるもの」
と定義されている。
●機能性消化管障害の診断には2006年のRome III基準による
診断と治療が主流である。 Apleyの定義では、器質的疾患も含
まれる恐れがあるので、その点を考慮する必要がある。RAP
の診断の約半数は自然に軽快し、残りの25%は不変、25%は
がIBSへ移行すると言われている。
●従来から用いられるRAPという診断に関しては、思春期の
IBSの前段階と位置づけ成人へ移行しうるものと考えると理解
しやすいであろう。
【post-infectious IBS: PI-IBS】
●感染性腸炎後に発症するIBS
感染の原因は、細菌性、ウイルス性どちらもある。
●IBS全体に占めるPI-IBSの割合は5~25%
(Halvon HA: Am J Gastroenterol 2006(メタ))
●感染性腸炎罹患後2~3年はIBS発症リスクが高い。
感染性腸炎後のIBS発症率は約6~7倍増加する。
→感染性腸炎罹患時のプロバイオティクス有効性。
IBS治療においてもエビデンスレベルAで推奨。
(腸管上皮への病原菌付着抑制、バリア機能強化、発酵
による腸管内環境変化・酸性化、免疫調整作用、ストレス
誘因となる腸管粘膜透過性亢進・内臓知覚過敏の軽減)
4~18歳におけるRome III基準:その他の腹痛関連機能消化管障害
1. 腹部片頭痛
abdominal migraine
・1時間以上持続する激しい急性発作性の臍周囲痛
・発作の間に無症状な状態が数週間~数ヶ月ある
・疼痛によって通常の活動が妨げられる
・疼痛が以下のうち2つ以上と関連する
食欲不振、悪心、嘔吐、頭痛、羞明、蒼白
・症状の原因になるような炎症性、形態的、代謝性、腫瘍性病変がない
■12ヶ月間にわたり2回以上、基準を満たしていること
2. 小児機能性腹痛: FAP
・偶発的または持続的な腹痛
・他のFGIDs(FDやIBS)の基準を満たすには不十分
・症状の原因になるような炎症性、形態的、代謝性、腫瘍性病変がない
■2ヶ月以上前から症状があり少なくとも週1回以上、基準を満たしている
3. 小児機能性腹痛症候群: FAPS
小児の機能性腹痛の基準を満たし、下記の項目の1つを少なくとも25%以上の
割合で伴う
・日常機能の何らかの喪失
・頭痛、下肢痛、睡眠困難などの付加的な身体症状
■診察前少なくとも2ヶ月間にわたり、週1回以上の基準を満たしていること
機能性ディスペプシア:functional dyspepsia
(FD) 4~18歳におけるRome III基準
1.上腹部(臍より上)を中心とした持続性または反復性の
疼痛や不快感
2.排便によって寛解されない、あるいは排便回数や形状変
化と関連がない(すなわち過敏性腸症候群ではない)
3.症状の原因になるような炎症性、形態的、代謝性、腫瘍
病変がない
■2ヶ月以上前から症状があり少なくとも週1回以上、
基準を満たしていること。
★ディスペプシアとは、消化不良を意味しますが、「機能性ディスペプシア」
とは、胃や十二指腸における痛みやもたれなどのさまざまな症状を示す。
【子どもの腹痛を診療するにあたっての注意点】
1.器質的疾患の有無:繰り返す腹痛を診療するときは、必ず
器質的疾患の有無について注意を払う必要がある。消化管出血
の有無は重要であり、消化性潰瘍、血管性紫斑病、潰瘍性大腸
炎などを否定するための検査も考慮する。また、尿路感染症、
虫垂炎などの否定も重要である。急性腸炎回復後も腹痛や腹部
膨満、下痢症状が持続する病態があり、腸炎罹患後のIBS
(post-infectious IBS)という。患者のストレス感受性が高いこ
とが原因と考えられている。
2.患者の日常生活の困難さ、睡眠、食欲、体重増加などの問
診:検尿、腹部超音波検査、腹部単純レントゲン検査などは最
初にチェックすべきである。
3.上記のように、器質的疾患を念頭に簡単な検査を行うとと
もに、患者の社会心理学的問題点の有無を問診:学校不適応
(不登校)、強度の不安を抱えている子どもは少なくない。こ
れらが、明らかになれば、原因となるストレスへの対処を患者、
患者家族と一緒に考えていくことになる。
小児IBSの各病型特徴
1 RAP型
頻回に臍部を中心とする腹痛を訴えるのが特徴。便通は一定
しない。起床時に症状が強く、長い時間トイレにこもること
が多い。午後は自然に腹痛は治まることが多い。低年齢児に
多い。
2 便秘型
下剤を用いなければまったく便意が生じない場合と、便意は
頻回にあるにもかかわらず、実際には排便できない場合があ
る。女子に多いが、比較的頻度は少ない。
3 下痢型
起床時、すぐに腹部不快感や腹痛、便意が始まる。頻回の便
意のため、何度もトイレに行くが、すっきりせず不快感も軽
くならない。便性症状は初め軟便で、次第に下痢便となる。
排便へのこだわりは、そのまま不登校にもつながることもあ
る。子どもにとって「朝」は苦痛の多い時間となる。男子に
多い。
4 ガス型
放屁や腹鳴、腹部膨満感などガス症状に対する恐怖・苦悩が
強い。便通そのものはあまり問題にされない。静かな狭い教
室内でとくに症状が強くなる。20代になれば多くは軽快す
るが、一部は治療に抵抗性を示し、精神疾患へ発展すること
もある。圧倒的に女子に多い。
小児のIBS診断フローチャート
腹痛・腹部不快感・便通異常
2か月以上
あり
精査
器質的疾患の警告症状
なし
異常あり
精査
・右下または右上腹部痛 ・嚥下困難
・遷延性嘔吐 ・消化管出血
・炎症性腸疾患や消化性潰瘍の家族歴
・眠りを妨げる夜間の腹痛 ・夜間の下痢
・関節痛 ・肛門病変 ・口内炎 ・体重減少
・発育遅延 ・思春期発来遅延・不明熱 など
通常検査
・血液検査【血算・赤沈・CR
P・AST(GOT)・ALT
(GPT)・γ-GTP・Al
p・LDH・アミラーゼ・甲状
腺機能】
・尿潜血 ・尿沈渣 ・便培
養 ・便潜血 ・便虫卵 ・腹
部単純X線 ・腹部超音波検査
・(H.Pylori 感染症検
査:症状に応じて)
異常なし
Rome IIIの基準に沿って診断
IBSの診断
FDあるいはFAPの診断
警告症状:発熱、関節痛、血便、6か月以内の予期せぬ3Kg以上の体重減少、
異常な身体症状(腹部腫瘤、波動、直腸診による腫瘤、血液付着)
【IBSの病態】
神経伝達物質セロトニンの大半は消化管に存在する。
セロトニンが小腸の粘膜にあるクロム親和細胞内から
放出されると末梢神経を刺激し、消化管の蠕動や腸液
の分泌、血管拡張、痛み反射を引き起こし、その結果、
吐き気、嘔吐、腹痛、腹部膨満感などの消化器症状を
起こすと考えられる。
【IBSの病態:脳腸相関】
IBSの病態は不明であるが、内臓神経の過敏性によ
り健常人に比べて“痛み”を感じやすくなっていると
される。また、ストレスに陥りやすく不安状態を抱え
やすい人がIBSとなる可能性が高い。小児期特有の原
因についての報告はみられていない。
精神的なストレスは、小腸や大腸運動に影響を与え
る。このメカニズムで有名なのはセロトニン神経系が
関与していると考えられる「脳腸相関」である。
腸脳相関モデル
ストレス
知覚閾値低下
認知機能異常
腹痛
CRF
腹痛
食事・アレルギー
腸脳相関
腸内細菌叢の変調
感染
炎症
腸管神経系ENS
内臓知覚過敏
知覚閾値低下
透過性亢進
消化管運動異常
内圧亢進
CRF:corticotropin
releasing factor
便通異常
過敏性腸症候群ガイドラインの治療フローチャート:3段階
第1段階
症状の説明と食事指導・生活習慣改善および優勢症状に対する薬物治療。
治療目標:患者自身の評価による症状改善。
第2段階
第1段階において改善が認められない場合、精神症状に対する抗うつ薬
・抗不安薬の投与、簡易精神療法(ストレスマネージメント)を行う。
精神症状、他の器質的・神経内分泌疾患が認められない場合、治療薬の
追加・併用を行う。
第3段階
専門医による重症のIBS患者の治療。薬物療法無効例への対応。
専門的で体系的な心理療法として認知行動療法・催眠療法・弛緩法(リラ
クゼーション法)など行う。
【治療法】
1.病態の理解と食事指導・生活習慣の改善
1)正常な排便のメカニズムの理解
胃結腸反射が重要である。食物が胃に入る刺激に
よって、便塊を肛門側へ送り出す蠕動運動が結腸に生
じる反射である。この反射により、便塊は直腸に至り、
直腸が一定の内圧に達すると直腸肛門反射により便意
を生じ肛門括約筋が弛緩、便が排泄されるのである。
胃結腸反射は朝が最も強く出現する。
排便のメカニズムをわかりやすく患者、保護者に伝
え理解してもらうことが重要である。IBS症状が改善
するのは、健康な胃結腸反射がよみがえることであり、
食事・睡眠・運動などの生活指導を中心に、快適な排
便習慣を確立することを目的とする。
大脳 便意
内容移動
脊髄
排便中枢
S2
S4
求心性刺激
内圧上昇
骨盤内膜神経
S6
陰部神経と肛門挙筋神経
弛緩
外肛門括約筋
内肛門括約筋
2)健康な胃結腸反射に戻るための方法
①正常な排便の模式図をイメージし、胃結腸反射の役割を理解
してもらうこと。
②便秘型では、繊維質の多い食物を摂取(年齢+5gあるいは
20~30g/日)し、わずかな便意でも我慢せずに排便する習
慣をつける。便意を我慢し続けると、胃結腸反射は低下する。
③下痢型では、症状を憎悪させる食物や飲み物(カフェイン、
高脂肪食)、排ガスを促進する野菜(イモ類、豆類、タマネ
ギ、ゴボウ、果物)、甘味料としてソルビトール含有の菓子
などで症状が出現する場合はこれらを除く。
早起きの習慣を作り、朝の排便時間にゆとりを持たせる。学
校の授業中のトイレ使用許可や教室から出入りしやすい席な
どの配慮も学校側と話し合う。
重症例では、薬物療法が必要となる。抗コリン薬、消化管ぜ
ん動調整薬、ロペラミド、高分子重合体、必要に応じて抗不
安薬、抗うつ薬などを少量試みる。腹痛時の頓服(整腸剤)
などもあらかじめ用意しておくと安心である。
④排便記録をつけ、患者と保護者で確認する。便形状
の表現は「ブリストル便形状尺度」を用いると便利
である。
⑤食事時間、睡眠、起床時間の評価を行う(睡眠表を
利用する)。
⑥心理社会的要因が大きく、不安・緊張が強い場合は
心理療法などの心理的介入が必要となる。
ブリストル便形状スケール
IBSの治療薬
分類
腹痛に対して
一般名
商品名
薬用量
注意点
臭化チメピジウム
セスデン
30-60 mg/day
ブスコパン
トランコロン
ガスモチン
セレキノン
ガスコン
20-30mg/day
15-30mg/day
7.5-15mg/day
60-200mg/day
120-240mg/day
口渇、目の
調節障害、
尿閉
アコファイド
300mg/day
ガスター
20-40mg/day
抗コリン薬
臭化ブチルスコポラミン
臭化メペンゾラート
モサプリド
腸管運動調
マレイン酸トリメブチン
整薬
上下腹部膨満
ジメチコン
感を伴う腹痛 アセチルコリ
ンエステラー
アコチアミド
ゼ阻害剤
H2受容体拮
抗薬
上腹部痛(心
窩部痛)に対
して
プロトンポン
プ阻害剤
止痢剤
ファモチジン
オメプラゾール
ラベプラゾール
ランソプラゾール
塩酸ロペラミド
オメプラール 0.5mg/kg/day
パリエット
0.5mg/kg/day
タケプロン 0.6-0.8mg/kg/day
ロペミン
0.6-1.2mg/day
腹部膨満
整腸剤
ビフィズス菌
ビオフェルミン 2.0-3.0g/day
下痢に対して 腸内環境調 ポリカルボフィルカルシ
コロネル 1000-1500mg/day
整剤
ウム
5HT3受容体
塩酸ラモセトロン
イリボー
2.5㎍/day
拮抗薬
緩下剤
Clチャンネル
作用薬
抗不安薬
抗うつ薬
酸化マグネシウム
マグラックス
カルメロースナトリウム バルコーゼ
便秘に対して
ルビプロストン
アルプロストン
ロフラゼプ酸エチル
クエン酸タンドスピロン
塩酸イミプラミン
三環系抗う
塩酸アミトリプチン
つ薬
女性適応
1-2g/day
長期連用
1.5-3.0g/day
アミティーザ
24-48㎍/day
コンスタン
メイラックス
セディール
トフラニール
トリプタノール
0.6-0.8mg/day
1-2mg/day
30-60mg/day
20-50mg/day
30-75mg/day
脱力感・眠気
便秘・心毒性
ラモセトロン:イリボー
セロトニン3受容体に結合し、セロトニンがセロトニン3受容体に結合を
ブロックする。
処方適応
・男性における下痢型過敏性腸症候群
5μgを1日1回経口投与。1日最高投与量は10μgまで。
女性に適応が拡大 2015年から!!
・女性における下痢型過敏性腸症候群
2.5μgを1日1回経口投与。1日最高投与量は5μgまで。
主な副作用:便秘、硬便。特に女性では男性に比べて多い傾向。
3日排便がない場合は服用を中止。
重篤な副作用:虚血性大腸炎。腹痛の悪化、下血などの症状に注意。
過敏性腸症候群の認知行動療法
過敏性腸症候群に対する認知行動療法の効果に関する報告
◆Greene &Blanchard (1994)
認知療法群と症状モニタリング群の2群での無作為割り付け臨床試験。認知療法群
において有意に胃腸症状の改善がみられた。
◆Payne&Blanchard (1995)
認知療法群と自助サポート群と症状モニタリング群(待機群)の3群での無作為割り
付け臨床試験。他の2群と比較して、認知療法群において、胃腸症状および抑うつと
不安が有意に改善。
◆Blanchard et al. (2007)
集団認知療法群と心理教育サポート群と症状モニタリング群の3群での無作為割り付
け臨床試験。症状モニタリング群と比較して、集団認知療法群と心理教育サポート群
において、IBS症状が有意に改善。しかし、集団認知療法群と心理教育サポート群に
は有意差なし。
◆Craske et al.(2011)
身体内部感覚曝露を含む認知行動療法群と認知行動療法群と症状モニタリング群の3
群での無作為割り付け臨床試験。全ての群でIBS症状が有意に改善。いくつかの指標
において内部感覚曝露群が有意にすぐれており、特に有効。
腹痛はすぐに消失しない。症状とうまくつき合っていこう。
●IBSと診断し、IBSのメカニズムを患者と親によく説明して
も、腹痛や下痢がすぐに良くなるわけではない。あまり症状の
消失にこだわりすぎず「症状とうまくつきあう」ことを教える
のが重要である。診察の際、毎回同じように症状はあります
か?と聞けば、患者はうんざりしながら、「あります」と答え
るであろう。しかし、症状があったとしても、日常生活や学校、
部活動など、患者の活動状況などを聞いてみると、案外できて
いることが患者の口から出てくる。
●できていることを評価することが大切である。今まで朝起
きられなかったのが、登校準備ができたり、朝ご飯が食べられ
たり、トイレに入る時間が短くなったり、そのような変化に目
を向ける。また、下痢の程度が、10段階で9だったのが7に減
れば改善であり、腹痛が7であったのが5に減れば改善である。
腹痛はすぐに消失しない。症状とうまくつき合っていこう。
●症状が続いていても、その症状が具体的にどの程度かを患
者に問いかけ、患者自身が前回診察時よりも、症状が軽減した
ことを認知することが最善策である。このような面接によって、
患者は少しずつ自信を取り戻し不安感が軽減される。IBSとう
まくつき合う方法を会得すればよいのである。
●IBSのような機能性身体症状は、その消失にこだわりすぎ
ると、医師の方が迷路にはまり、過剰な検査や治療を続けてし
まうことになりかねない。症状中心に関わるのは、それを消失
させるためではなく、症状をコントロールすることによって症
状の存在による不安を軽減し、子どもと家族の心の安定を図る
のが目的だということをしっかりと認識する。
心理社会的要因への気づき
●症状とうまくつき合う状態が続くと、次第に心に
余裕が生まれ、初めて心理社会的要因が関与してい
るという事実を受け入れる心の準備が整う。そのと
き患者に「気づき」が生じる。
●患者自分自身で気づくこともあれば、医師、心理
士、家族、友達、教師など患者を取り巻くすべての
環境の中で気づかれる。家族の気づきも同様に重要
である。家族の理解が進まない場合、家庭環境の問
題(両親の不和、経済的困難さ、無理解、虐待な
ど)を注意深く検討する。
この場合、医師だけでは、対応が難しく、児童相
談所や保健所を通じて対応する場合も考えられる。
小児科外来で可能な心理的介入
●時間的余裕のない一般小児科外来の中で、心理社会的要因に
ついて扱うのは難しい。しかし、一般外来だからこそ、週1回
の通院を確保し、1週間の様子を確かめて、内科的診察を行い、
患者と家族に安心感を与えることは、かかりつけ医だからこそ
可能な診療と言えよう。診療時間は10分で良い。状態が落ち
着けば、2週間に1回、さらに月1回と間隔を延ばす。
●患者にとって、定期的に受診する行為そのものが認知行動療
法となる。
●患者の状況が、深刻な場合。例えば、症状が悪化して外出が
全く出来ない、身体的な健康が保てず体重が著しく減少する、
二次的な精神症状が疑われる(不安、強迫、暴力、食思不振な
ど)があれば、専門機関への紹介が不可欠となる。
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