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DSL 専門委員会標準制定状況 - TTC 一般社団法人情報通信技術委員会
2006 年第 1 四半期 DSL 専門委員会標準制定状況 DSL 専門委員会 副委員長 藤川 同 DSL 仕様検討 SWG リーダ 上田 1.はじめに 就一 雅巳 2.標準内容の概略 DSL 専門委員会内の DSL 仕様検討 SWG では、 (1) JT-G993.2 (VDSL2) DSL 標準仕様に関する議論、そこで議論し集約し JT-G993.2 超高速ディジタル加入者線 2(VDSL2) た意見を ITU-T SG15/Q4 へ寄書提出することによ は、VDSL2(Very high speed digital subscriber line 2) るアップストリーム活動、および、DSL 関連の に 関 す る TTC 標 準 で あ る 。 VDSL は ADSL ITU-T 勧告のダウンストリーム活動、というミッ (Asymmetric digital subscriber line) と 同 様 に 、 ションを担っている。 POTS(Plain Old Telephone Services)用に元々敷設 2006 年度第 1 四半期の標準化会議には、ITU-T 勧告を参照する簡略標準の形式にて、DSL 専門委 員会から VDSL2 を中心にこれに関連する以下の 3 件の標準案を付議し、8 月 24 日に制定された。 それぞれの概要について紹介する。 • JT-G993.2 超高速ディジタル加入者線 2 (VDSL2) • JT-G997.1 ディジタル加入者線(DSL) 送受 信機のための物理層管理(PLOAM) • JT-G994.1 ディジタル加入者線(DSL) 送受 信機のためのハンドシェーク手順 されている既存の銅線のインフラ設備を利用し た 高 速 ア ク セ ス 技 術 で あ る 。 ADSL に 比 べ て VDSL は高周波域を利用する(図 1 参照)。これに より短距離では ADSL より高速なサービスを実現 できるため、電話局から集合住宅ビル入り口まで は光ファイバーで接続された FTTB(Fiber To The Building)と組み合わせ、集合住宅ビル内の電話線 を用いて VDSL で高速伝送する利用形態が考えら れる。(図 2) 送信電力密度 ・帯域拡張→高速化 ・帯域拡張→高速化 ・高周波→線路減衰大 ・高周波→線路減衰大 →距離が短い →距離が短い ADSL VDSL ∼ 30MHz ∼2.2MHz 図1 使用周波数 ADSLとVDSLの帯域の違い 既築のマンション等 Internet ISP 公衆電話網 事業者 メタリック 電話線 VDSL VDSL端末装置 光ファイバ(FTTB) 図2 VDSLセンター装置 VDSL設置例 TTC Report 2006-November Vol.21/No.2 31 JT-G993.2(VDSL2)は、以前にTTC標準化済みの C.1 Band plan JT-G993.1(VDSL(*1))を帯域拡張により高速化を C.2 PSD Masks 図ると共に、JT-G992.3(ADSL2)の種々の機能(MIB C.3 Service Splitter によるPSDシェーピング、インパルスノイズ耐性 C.4 Test loops and crosstalk disturbers 向上等)を取り入れた標準仕様という位置付けと 言う事ができる。変調方式(ラインコード)に関 C.1 では、上り伝送と下り伝送に割り当てる周 しては、VDSL1(*1)は、マルチキャリア変調の 波数配置を規定するバンドプランが定義されて DMT(Discrete Multi-Tone)がメインボディに規定、 いる。図 3 に Annex C に記載されているバンドプ シ ン グ ル キ ャ リ ア 変 調 の QAM(Quadrature ランを示す。VDSL1 では上限が 12MHz であった Amplitude Modulation)をAnnexに規定された 2 本 のに対して、これを包含する形で最大 30MHz ま 立てであったが、VDSL2 ではDMTのみに一本化 で拡張されており、上り/下り夫々100Mbps 対称速 された。 1 度を達成する能力を有している。図 3 中の USx (x=0,1,2,3) は上り用バンドを表し、DSx (x=1,2,3) JT-G993.2 では、地域に特化した仕様が Annex は下り用バンドを表す。US0 の仕様は「for further に記載されている。日本向けの仕様は Annex C に study」となっている。従って図 3 中では US0 と 記載されており、大きく以下の4つの節から構成 DS1 の境界周波数が明記されていないが、前記 される。 TCM-ISDN 重畳用の PSD では US0 は使用せず、 DS1 が 640kHz から定義されている。 US0 .025 DS1 US1 DS2 3.75 5.2 図3 US2 8.5 DS3 US3 12 18.1 30 MHz VDSL2のバンドプラン(Annex Cの場合) -56.5dBm/Hz -100dBm/Hz -110dBm/Hz -56.5dBm/Hz DS1 -56.5dBm/Hz DS2 DS3 -120dBm/Hz -56.5dBm/Hz -100dBm/Hz -110dBm/Hz -56.5dBm/Hz US1 -56.5dBm/Hz US2 US3 -120dBm/Hz 12k 22.5k 図4 640k 5.2M 8.5M 12M TCM-ISDN重畳用のPSD Mask *1 JT-G993.2(VDSL2)と区別するために、ここでは JT-G993.1(VDSL)をVDSL1 と呼ぶ。 32 3.75M TTC Report 2006-November Vol.21/No.2 18.1M 30M C.2 で は TCM-ISDN 重 畳 用 の PSD(Power Spectrum Density) が定義されており、他の PSD は 験線路構成、ケーブル特性、試験用印加雑音モデ ルが規定されている。 「for further study」となっている。図 4 に PSD の概 要図を示す。 (2) JT-G997.1 (PLOAM) VDSL1 と同様に VDSL2 においても、VDSL 信 JT-G997.1 ディジタル加入者線(DSL) 送受信機 号に重畳される ISDN または POTS 信号を ISDN の た め の 物理 層 管理 (PLOAM) は 、DSL のための /POTS スプリッタにより VDSL 信号から分離す PLOAM(Physical Layer Operations, Administration る(図 5 参照)。C.3 ではこの VDSL2 用 ISDN/ and Maintenance)仕様を規定したものである。本標 POTS スプリッタの電気特性(挿入損失、不整合 準で定義されるパラメータは図 6 中の Q−インタ 減衰量、不平衡減衰量等)が規定されている。 フェース上のものである。 C.4 には VDSL2 のための試験モデルとして、試 LPF ISDNスプリッタの場合 HPF ISDN 0.026 0.138 0.32 0.64 DS1 1.1 US1 3.75 5.2 0.026 0.138 0.32 DS1 0.64 1.1 US1 3.75 5.2 POTSスプリッタの場合 LPFのみ 0.004 アナログ 0.026 図5 ISDN/POTSスプリッタの役割 NMS Q NT AN Management entity TE Management entity Broadband network xTU-C xTU-R TE G.997.1_F5-1 T/S T-R U-R U-C V-C V Management flow in ITU-T Rec. G.997.1 図6 JT-G997.1のシステム構成 TTC Report 2006-November Vol.21/No.2 33 本標準参照元の ITU-T 勧告 G.997.1 としては3 (3) JT-G994.1 (Handshake) 度目の改訂版であり、今回の改訂は VDSL2 用の JT-G994.1 ディジタル加入者線(DSL) 送受信機 MIB 定義の追加が主な変更内容である。TTC 標準 のためのハンドシェーク手順は、DSL 送受信機が立 としては、今回の追加内容が重要との判断から、 ち上げ手順の中で能力情報を交換し、かつ共通の JT-G997.1 としては初版の形で標準化された。 動作モードを選択するための柔軟なメカニズム を規定している。パラメータは DSL 送受信機に関 VDSL2 は MIB により規定の範囲内で動作を柔 係するものだけでなく、サービスやアプリケーシ 軟に変更することができる。これは JT-G993.1 ョンに関するものも含んでいる。本 TTC 標準は改 (VDSL1)には含まれていなかった仕様である。例 訂であり、VDSL2 用に追加された仕様が主な変更 えば、MIB により PSD(MIB PSD mask) を規定の 内容である。 PSD(Limit PSD mask)の範囲内で図 7 に示すよ うに形を変化させることができる。 3.最後に 今回 TTC 標準化された JT-G993.2(VDSL2)を中 Limit PSD mask 心に 3 件の関連標準の概要について紹介した。現 在 ITU-T では、VDSL2 改訂勧告化に向けた議論 MIB PSD mask が盛んに行われており、本委員会の SWG におい ても、そのアップストリーム審議を行っている。 改訂勧告完了の際には、会員の要望に応じて、そ −80 dBm/Hz STOPBAND_PSD_ftr 1 tstart1 tstop2 図7 34 STOPBAND_PSD_ftr 2 tstop1=ftr1/4.3125 kHz tstart2=ftr2/4.3125 kHz MIBによるPSDの変形例 TTC Report 2006-November Vol.21/No.2 の TTC 標準化を実施していく予定である。