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物理学は、我々の知覚作用と密接に関係している。見たり、聞いたり、感じ

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物理学は、我々の知覚作用と密接に関係している。見たり、聞いたり、感じ
はじめに(物理学はどんな学問なのか)
物理学は、我々の知覚作用と密接に関係している。見たり、聞いたり、感じたりする
日常身の周りにある現象がどのような規則(法則と呼ばれている)に従って起っているかを
調べることを目標としている学問である。我々が、日常、殆ど無意識のうちに利用し
ている電気やそれを基にして機能する様々な電気製品、テレビ、ラジオ、コンピュー
ター、さらには自動車や飛行機などなど、枚挙に暇が無い程沢山の物の恩恵を、物理
学に負っている。従って物理学は、現在の我々の日常生活において、直接的なあるい
は間接的な基盤をなしているといっても言い過ぎではない。
人類が営々と築いてきた科学文化の中で、科学者達は、自然界で起こる現象を注意
深く観察し、そこに隠された自然を支配する原理あるいは法則を見つけ出してきた。
これを利用することによって、人類は、より快適に、より便利に生活する為の手段を
開発してきた。
科学が進歩していくにつれて、物理をある程度勉強しておくことは、身の回りにあ
るさまざまな機器を、円滑に操作するためにもかなり役立つと考えられる。
このテクストでは物理学がどのようにして発展してきたかを示すと同時に、我々
が日常、目にしている現象が、どのような自然界の原理によって起こっているのかを
説明することを目標にしている
物理学の原理や法則を言い表すための手段は数学しかない。従って物理の勉強に
とって数学は欠くことは出来ないが、このテクストで利用する数学は、ベクトル以外
は殆どで、数学といっても、高校 1、2 で習う程度の基本的な事柄しか使わない。最初に
ベクトルという概念を説明するが、これは物理で扱う色々な量(物理量という)を表現す
るのに欠くことが出来ない道具なのである。
ベクトルをまだ習っていなくても、丁寧に説明してあるので、丹念に読めば十分に
理解できるはずである。また以下の説明では、物理の本質を理解する妨げにならない
ように、覚えるべき公式は出来るだけ数を少なくしてある。
物理は敷居が高い科目であると感じている生徒諸君も多いと思うが、このテクス
トを読むことによって、物理を楽しんでもらえたらと期待している。
1
§1 スカラーとベクトル
B1. (スカラーと単位) 1) 時間、距離、温度、長さ、重さ、速さ、などのように数値だけで
定まる量を「スカラー量」と呼ぶ。
2) 物理ではスカラーに単位というものをつける。例えば、長さや距離には、メート
ル(m)を、時間には、秒(s)、質量には、キログラム(kg)、をつけて表す。m, kg, s が単
位である。また、m, kg, s を用いる単位を MKS 単位系と呼んでいる。
B2. (ベクトル)
「自動車が南東に向かって、時速 50 km の速さで走っている」とか「私は A 市か
ら北西に 67km の距離にある B 町にすんでいる」と言うように、数値のほかに方
向を添えることによって定まる量を「ベクトル量」あるいは「ベクトル」と呼ぶこと
にする。また 50 km や 67 km のように数値の部分を「ベクトルの大きさ」と言うこ
とにする。
B3. (変位、速度、加速度の定義)
1) 「どの方向に、どれだけの距離移動したか」を表すベクトル量を「変位」と呼ぶ。B2
によると「変位の大きさ」は、移動距離となる。
2) 「1 秒間にどれだけの速さで、どの方向に進んだか」を表すベクトル量を「速度」と
言う。B2 によると「速さ」は速度ベクトルの大きさを表している。
3) 「1 秒間にどの方向に、どれだけ速さが増したか」を表すベクトル量を「加速度」と言
う。また加速度の大きさを、「加速さ」と言うことにする。
注意:加速度の大きさを言い表す言葉は無いが、この塾では、「速さ」からの類推で
加速度の大きさを「加速さ」と言うことにする。
注:物理で扱ういろいろな量を物理量と呼んでいる(変位、速度、加速度、…など)。
§2 ベクトルの計算
上に述べたように物理ではベクトル量を利用するので、その定義とベクトル間の計
2
算の仕方を以下に説明するが、ベクトルの概念は高校 2 年生の数学で習う
B.4(ベクトルの定義 ) ベクトルとは線分の一端に矢印をつけた線分(有効線分と呼ぶ)の事
をいう。
(下の図参照)
A
線分 AB
B
A
ベクトル AB
B
B.5 (ベクトル記号と大きさの表し方)
1) ベクトル AB を記号で、 AB と書き A を始点 B を終点と呼ぶ。また始点と終点を明
 
らかにしなくても良い時は、文字の上に単に矢印を書いて、 a , b のように表す。
2) AB の大きさ(数値にあたる部分)を線分 AB の長さで表すことにし、それを記号
で | AB | と表すことにする。
B.6 (ベクトルの相等) あるベクトルを平行移動することによって、そのベクトルの始
点と終点を他のベクトルの始点と終点にそれぞれ一致させることが出来るとき、こ
れら 2 つのベクトルは互いに等しいと定める。
B.7 (ベクトルと実数との掛け算)



k を正の実数とする。 k a は a と向きが同じで、大きさが、 a の k 倍であるベクトル、



また (k) a は a と逆向きで大きさが a の k 倍のベクトルを表す。
例1
3
B.8(ベクトルの足し算と引き算)






1) 2 つのベクトル a と b の和 a  b とは、 a の終点に b の始点が重なるように平行


移動した時、 a の始点から b の終点に向かうベクトルと定める。






2) 2 つのベクトル a と b の差 a  b とは、 a と b の始点が重なるように平行移動し




た時、 b の終点から a の終点へ向かうベクトルのこと。( b  a も図で確認せよ。)
・ベクトルの足し算と引き算の図:




注意:上の定義によって a  b  b  a が成り立つことを図を描いてみれば確認でき




る。 また a  b と b  a は等しくないこともわかる。
B.9(2 つのベクトルのなす角)
2 つのベクトル AB と CD のなす角(右図の K)とは、 始点 A と
始点 C が重なるように平行移動する時 線分 AB と線分
CD がなす角のうち 180  以下の角のこと。
。
B10.(ベクトルの向き)
1) 2 つのベクトルが同じ向きであるとは、これらのなす角が、 0 のときを言う。
2) 2 つのベクトルが逆向きであるとは、これらのなす角が180 のとき言を言う




 
B.11(ベクトルの内積) 2 つのベクトル a と b の内積 a  b を次のよ
 


うに定める。 a  b  | a |  | b | cos 
(θは a と b が成す角)
4
(注意) 内積は「仕事」の計算に利用する大切なものである
§3 ベクトルの成分表示
ベクトルの計算は、いちいち図を描かなければならないので不便である。そこでベ
クトルを数に結び付けて、ベクトルの計算を数の四則演算を利用して、行えるように
考え出されたのがベクトルの成分表示である。
(1) 数直線内のベクトルの成分表示:
数直線内のベクトルの始点を原点 O に一致するように平行移動した時、各々のベ
クトルを原点に関する位置ベクトルと呼ぶ。位置ベクトルの終点の座標を、そのベ
クトルの成分表示と定める。例えば、数直線内にあるベクトル AB の始点 A を原点に
合わせるように平行移動した時、終点 B の座標が a になるならば、 AB と a を同一視
して、 AB = a と書いて AB の成分表示と呼ぶ。






例えば、右図では p, q の成分示は、 p  c 、 q  d である。( p, q の終点が原点に一致しているこ
とに注意する)
(2) 平面内のベクトルの成分表示:
xy 座標平面内にあるベクトルの始点を原点 O に一致するよ
うに平行移動した時、各々のベクトルを原点に関する位置ベク
トルと呼ぶ。位置ベクトルの終点の座標を、そのベクトルの成分
表示と定める。
例えばベクトル AB の始点 A を原点 0 に合わせるよう
に平行移動した時、終点 B の座標が ( a, b) であったとする。この時 AB と座標 ( a, b) を同
一視し AB  ( a, b) と書いて、これを AB の成分表示と呼ぶ。
・問 1 次のように成分表示されたベクトルを数直線内に図示せよ


a  5, b  3,


c  2, d  3.5,

e 4
5
・問 2 次のように成分表示されたベクトルを xy 座標平面に図示せよ。

x  (2, 4),

y  (3, 0),



z  (4, 3), u  (0,5),
B.11(成分の計算定理) (ア) 数直線内のベクトル
v  (3,6)
OP  a, OQ  b
に対して、これら
の和と差、に対しては、次の計算公式がある。
 
OP  OQ
(1)

ab

(2) OP  a (これは原点から点 P までの距離となる)

(3) OP  OQ  a  b
(4) k OP  ka
 
(5) OP  OQ  a  b
( k は定数 )
(イ) 平面内のベクトル OP  ( a, b), OQ  (c, d ) に対して次の計算公式がある。



(1) OP  OQ  a  c, b  d

(2) OP 

a 2  b2

(3) OP  OQ  ( a  c, b  d )
(4) k OP  ( ka , kb)
 
(5) OP  OQ  ac  bd
・注:(ァ)(イ)における(5)は仕事の計算に使う内積の計算公式である
例 1 OP  2, OQ  3 のとき、B10(ア)を利用して、次のものを求めよ。
(1)
OQ
(解) (1)
(4)
・例 2
(1)
(解)
(2)
(3)
OP  2OQ
OQ   3  3
(2)
OP  ( 1, 2), OQ  (3,  4)
(1)
(2)
(5)
OP  OQ =
(5)
3OQ  OP
OP  2OQ = 2  2  (3)  4
3OQ  OP = 3  (3)  2 =  11
OP  2OQ
(4)
3OP
OP  OQ
(3) 3OP = 3  2  6
2×(−3) =
6
−
のとき、B10(イ)を利用して、次のものを求めよ。
5OP  2OQ
(3)
3OQ
(4)
OP  OQ
OP  2OQ  (1, 2)  2(3, 4)  (1, 2)  (6, 8)  (1  6, 2  8)  (5, 10)
(2) 5OP  2OQ  5(1, 2)  2(3, 4)  (5, 10)  (6, 8)  (11, 2)
(3)
3OQ  3(3,  4)  (9,12)  9 2  (12)2  15
(4) OP  OQ = (−1)×3+2×(−4) =−11
注意:以上の計算を見て分かるとおり、成分表示によって、ベクトルの計算は数の計算に
結びつけることが出来るので大変便利になる。
§4 変位、速度、加速度
6
・物理における分数の意味について)
物理では分数式が意味することに注目すると、2 つの物理量の間の関係が明確に理
解できることが出来る場合が多いので、ここで分数の持つ意味を再確認しておく。
1) 分数 b は何を表すのか。「 b は a の 1 当たりに対する b の量」を表している。
a
a
例 1 1000 円でだんご 20 個買った時、次の 2 つの分数に注目する。
・
1000 (円)
はだんご 1 個当たりの円(つまり値段)を求める式である。
20 ( 個)
・
20 ( 個)
は 1 円当たりのだんごの個数即ち、1 円で買えるだんごの個数を表す。
1000 (円)
例 2 小中学校では、「速さ =
距離
時間
」 と習った。このことを例 1 のように、言葉で言う
と次のようになる。「速さとは時間 1 当たりの移動距離、すなわち 1 時間に移動する
距離のこと」となる。
例 2 の式による速さの定め方は、速さが一定の場合は良いが、刻々と変化する場合
にはこの式では平均の速さしか求めることは出来ない。例えば自動車に乗って、100
km 離れた A 地点から B 地点に行くのに 2 時間半かかったとすると、例 2 で定義した
式によると速さが 100/2.5 = 40 km となる。しかし自動車は途中で信号で止ることや、
徐行することもあるので、40 km は平均の速さということになる。
では「時間に伴って刻々と変化する場合ある時刻における速さはどのようにして
求めたらよいのだろうか ?
この問題を解決した人は、 イギリスが世界に誇るあのニュートン (1643~1727)であ
る。彼は、現在では微分積分学と呼ばれている数学を作り出し、これを使うことに
よって物理の様々な問題を解決して見せた。以下では、ニュートン先生が作ってく
れた理屈の一つ(B.15)を利用して、直線上や平面内で等加速度で運動する物体につ
いて、時刻を与えた時、その時刻での速度や位置を求める方法を紹介する。
B.12 (速度と加速度の定義)
1) 速度とは 1 秒当たりの変位の変化のこと。
2) 加速度とは 1 秒当たりの速度の変化のこと
7
・注意:B.11 は B.3 を言い換えたものであるが、内容は同じものである。また減速す
る時に、「減速度」と言わずに「加速度」と言う言葉を使うのはおかしいが、減速度は加
速度の前にマイナス記号をつけて、負の加速度として扱う。
B.13 (速度・加速度の成分表示)

(1) 直線運動:1 数直線において、原点を始点とする位置ベクトル x と、速度




ベクトル v 、加速度ベクトルの成分表示は、それぞれ x  x 、 v  v 、 a  a とか
ける。(§3 成分表示を参照せよ)。

(2) 平面内の運動:xy 座標平面において、原点を始点とする位置ベクトル x 、




速度ベクトル v 、加速度ベクトル a の成分表示をそれぞれ x  ( x, y) 、 v  (vx , v y )

a  (a x a y ) とする。(§3 成分表示を参照せよ) また B.11(イ)(2) によって

速さは | v | = (v x )2  (v y )2 、

加速さは | a | = (a x ) 2  (a y )2
となる。
B.14 (1) 等速度運動とは速度が一定な運動すなわち、時間が経っても速さと
運動方向が変化しない運動のこと。このことから、この運動は、等速直線運動
とも呼ばれている。
(2) 等加速度運動とは、時間が経っても加速さとその方向が変化しない運動の事。
・ 注意:等速度と言うことは、速さと方向の両方が変わらない運動だから、直
線に沿って、速さが一定であることを意味する。
§5 等加速度直線運動



この運動における、位置ベクトル x 、速度ベクトル v 、加速度ベクトル a の成分表示



をそれぞれ a  a 、 x  x 、 v  v とする。速度ベクトルあるは、加速度ベクトルが与え
られたとき時、 v あるいは x を時刻tの関数として求める方法を発見したのが、ニ
ュートン先生なのである。以下の
B.15 がそれである。この公式を利用によって直線に
沿った等加速度運動と、全ての平面内の等加速度運動を解明できる。
・注意:以上の式において  ,  0 , x , x0 , a は全て成分表示されたベクトルであること
8
を忘れてはならない。
B.15 (ニュートンの公式)
数値線上を運動する点 P が加速度が a (一定)ならば、時刻 t にお
ける P の変位を
x、 P の速度を とすると、これらは次のように与えられる。
1)   at  (ただし、 v0 は t  0 の時の速度を表す。)
0
2) x  1 at 2   0t  x0 (ただし x0 は t  0 の時の P の位置の座標である。)
2
v-t
曲線について
B15(1)における   at   0 をグラ
フに描いたものが下の(1)図であ
る。この図で直線 BC の傾きが P
の加速度を表している。
ま た 0t
Bv の 面 積 S は
0
(1)図
S
(2) 図
1 2
at   0 t となり B16(2) 式で x0  0 とした場合になっている。このことから四
2
角形 OABC の面積 S は P が移動した距離になっている。ただし、下の(2)図のように、
v-t 直線が x 軸より下側に出るときには、  t0 At1 の面積は P が逆向きに進んだ距離を
表す。
例 1 一方向に直線運動をする物体がある。時刻 0 秒でスタ
ートし、最初の 2 0 秒間は 0.50m/s2 の等加速度運動次の 20
秒間は 1.0 m/s で等加速度運動を行い、最後の 20 秒間は等加
速度運動を停止した。この物体の速さ  (m / s) を縦軸に、時
刻 t ( m / s ) を横軸として両者の関係をグラフに表すと右図
のようになった。
(1) 図中の点 A における物体の速さを求めよ。
(2) 物体の最高速度を求めよ。
(3) 最後の 20 秒間の加速度の大きさを求めよ。
9
(4) スタートしてから停止するまでに物体が動いた距離を求めよ。
(解) (1) 点 A での速さを v とすると条件から、加速度は v-t 直線の傾きだから、 v/20 =
0.5 よっ v = 10 m/s となる。
(2) 最高速度を u とおくと、同様に考えて(1) の結果と図から、
(u  10) /20 = 1 より
u = 30 m/s
(3) 上と同じように考えて、  30 / 20  1.5 m/s2
(4) 求める距離は x 軸と折れ線が囲む面積だから、
10  20  2  (10  30)  20  2  20  30  20  30  2 = 1.4  103 m
・例 2 数直線上を運動する点 P の加速度が負の向きに大きさ 3 である時、時刻 t に
おける速度と位置(原点からの変位のこと)を求めよ。ただし、 0  1, x0  5 とする。
また t = 4 における P の運動状態を言え。
3
2
(解)a = −3 であるから、ニュートンの公式 B.15 によって   3t  1, x   t 2  t  5
t = 4 の時、   12 + 1 =  11 、 x   3  42  4  5  15 従って、P は原点から左へ 15 m の
2
地点を負の方向に速さ 11 で進行中である。
・例 3 数直線上を等加速度で運動する点 P の時刻 t での位置
が x  t 2  9t  18 で与えられる時、
(1) t = 0 の時の P の位置を言え。
(2) P が原点を通過する時刻を言え。
(3) P の時刻 t における速度と加速度を求めよ。
(4) P が負の向きに原点を通過する時刻を求めよ。
(5) 時刻 t = 0 から t = 9 までの移動距離を求めよ。
(解)(1) 与えられた式で t = 0 とおくと x = 18、 すなわち P は原点から右へ距離 18
の地点にいる。
(2) x = 0 を解けばよいので t2 – 9 t + 18 = 0 より t = 3 or t = 6 の時、すなわち
出発してから 3 s 後また 6 s 後に原点を 2 回通過する。
10
(3) x  1 ( 2t 2 )  9t  18 と変形すれば B.15 から、
2
a = 2,
(4)
  2t  9 となる。
t = 3 と t = 6 の時、原点を通過するが、この時の P の速度はそれぞれ – 3 , 3
である。P の進行方向は速度の方向だから t = 3 の時、P は負の向きに原点を通過
する。
(5)
  2t  9 をグラフに描いてみると右図、t = 0 ∼9 の間で、この直線が
x 軸と囲む図形の面積を求めればよい。
1
1
 4.5  9   (9  4.5)  9  40.5m になる。
2
2
図から
・注:t = 9 の時、x = 18 となる。 x の値は、数直線上の P の座標を示す数値であっ
て、P が進んだ距離ではないことに注意せよ。
練習 1 数直線上を運動する点 P の時刻 t における位置(原点からの変位)が
x(t )  t 2  9t  18 である時、次の問に答えよ。
(1) 時刻 t における P の速度と加速度を求めよ。
(2) P が正方向に移動している時間を求めよ。
(3) P が正の向きに原点を通過する時刻を求めよ。
(4) P が静止する時刻と、その時の P の位置を求めよ。
(5) P が正方向に最も変位する時刻とその時の位置を求めよ。
(6) t  10 における P の運動状態を言え。
練習 2 数直線上を加速度 – 3 で運動する点 P の t = 0 における速度と位置はそれぞ
れ 9、
12 である。
−
(1) 時刻 t における速度 v と位置 x とを求めよ。
(2) 静止した P が負の方向に動き始める時刻を求めよ。
(3) P が時刻 t = 0 から t = 10 までの間に移動した距離と時刻 t における位置を
求める。
練習 3 数直線上を運動する物体の時刻 t における速度が v = 6 t – 18 で与えられる
時、次の問に答えよ。
11
1) 加速度と初速度( t = 0 での速度のこと)を求めよ。
2) t = 2 での速さを求めよ。
3) t = 5 での位置を求めよ。
§6 平面内の等加速度運動
・例 1 x-y 平面内を等加速度 (  2 , 1) で運動する点 P の時刻 t における速度を (v x , v y )
とし、位置を (x , y) とする。ただし t = 0 における速度は (6 , 0) 、 位置は (−5 , 2)
とする。
1) 加速さを求めよ。
2) v x ,  y , x, y をそれぞれ求めよ。
3) t = 2 での P の運動状態を言い、この時の速度と加速度のベクトルを図示せよ。
解) 1) 条件から
(a x , a y ) = (  2 , 1) だから成分の計算公式 B.10(イ)の(1)から a x  2 、
a y  1 となるので、加速さは成分の計算公式 B12(2)から、 (2) 2  12  5 となる。
2) a x  2 と a y  1 と条件から t = 0 の時、 v x  6 、 v y  0 、なので、これらにニュートンの公
式 B.14 を利用すると
vx=
−2
t + 6, x  t 2  6t  5 、 また vy = t + 0= t
これより
y  1 t 2  2 となる。
2
3) t =2 の時、加速度は(-2 , 1)、速度は (2, 2)、位置は(3 , 4)
P の運動方向は、速度の方向であり、速度ベクトル(2,
2)を図に書くと正の x 軸と 45 をなすから、点 P は t = 2
の時、原点 から距離 5 にある座標(3, 4) の地点を正の
x 軸と 45°の角をなす方向へ速さ
22  22  2 2 で進行中である。加速度と速度の
ベクトルを右図に示す。
例 2 x y 平面内を運動する点 P の 時刻 t における速度(u , v) が、(u , v) = (2 t – 3, 4
– t )で与えられている。また、t = 0 での P の位置は(2 ,
−
6 ) であった。
(1) 速さが最小になる時刻を求めよ。
(2) P の加速度と加速さを求めよ。
(3) 時刻 t における P の位置ベクトルを (x, y) とおくとき、x と y をそれぞれ求め
12
よ。
解) (1)速さの 2 乗は、B11(イ)(2)から (2t  3)2  (4  t)2  5(t  2)2  5 …① となるから、速さ
は t  2 の時最小となり、その値は①から 5 になる。
(2) P の加速度を (a x , a y ) とすると、 u  2t  3 、 v  t  4 であるから、B.15 から a x  2 、
a y  1 となる。したがって加速度は (a x , a y )  (2,  1) であり、成分の計算公式 B12(2)
によって、加速さは 22  (1)2  5 となる。
(3)与えられた条件とニュートンの公式 B15 によって、 x  t 2  3t  2 、 y   1 t 2  4t  6
2
となる。
§7 落体の法則
・次の落体の法則は、イタリアの物理学者、ガリレオ・ガリレイ(1564~1642)によって発見さ
れた。
B.16 (落体の法則)
1) あらゆる物体が(真空中を)落下する加速度は同じである。
2) (真空中を)落下する物体の加速度は、1 秒間に 9.8 m である。
注意: この 9.8 (m/s2) と言う値を重力加速度の大きさと呼んで、記号 g で表すことに
なっている。
落体法則によると、どんな物体でも、真空中を落下する時の速さは、1 秒間に 9.8 m
ずつ加速される。また、真上に上昇する物体の速さは 1 秒間に 9.8 m ずつ減速し、あ
る高さまで上ってやがて止まりその後、真下に向けて、速さを 1 秒間に 9.8 m ずつ増
しながら落ちてくる。
一般に空気中で、物体が運動する時は空気抵抗を受けるので、全ての落体に対し
て、加速さが 9.8 m/s とは言えない。例えば、綿と鉄球が空気中を落下する時の加速
さを比べると、我々の経験上落下の加速さが等しいようには見えない。しかし比較
的重い物体を落下させたり、投げ上げたりする時は、これらの物体に対する空気抵
抗は極めてわずかなので、落体の法則は成り立っていると考えてよい。
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以下では空気抵抗は無視して考える。「落体の法則 B.16 」と、「 ニュ―トン の公式
B.15」を合わせて、空中に投げ出された物体の運動を調べる。
例 2. 地上から真上に初速 vo (m/s) で物体を投げ上げた。投げ上げた瞬間
を t = 0 、投げ上げた地点を原点として、上向きに座標軸を定める。時刻
t における物体の速度の成分表示を v(t)、位置ベクトルの成分表示を y(t)
として、物体の加速度を a とすると、
落体の法則から a   g 、よってニュートン公式 B.15 から
v (t )   gt  vo
y (t )   gt 2 / 2  v0 t  y0 を得る。ここで原点の決め方
から y(0)  y0  0 なので、 y (t )   gt 2 / 2  v0 t
となる。物体が上昇する最高点は、 y(t)
の最大値であるから、この式を平方完成すると、
2v
1 
y (t )   g  t 2  0
2 
g
2

1  v0  v02
t   g t   
2 
g
g

となるから、 t 
v0
の時、物体は最高点
g
に達し、その高さは、 v02 / g となる。再び地上に達する時間は、 y (t )  0 より t  v0 / g
となる。なお t  v0 / g を v(t)
の式に代入すると、 v(v0 / g )  0 となる。当たり前のこと
であるが、最高点では速さはゼロになる。
例 3 高さ 9.8m の建物の屋上から鉛直真上に 9.8m/s の速さでボールを
投げた。ポールが上り得る最高点を A、屋上と同じ高さの点を B、地面
に達する点を C とする。重力加速度の大きさを 9.8 m/s2 として問いに
答えよ。
1) A 点の地上からの高さを求めよ。
2) A、B、C 点に達するのは、投上げてから何秒後か。
3) A、B、C 点における速度を求めよ。
解答: 鉛直正の方向とし、ボールを投げ上げた点を原点 O として、右下の図
のように鉛直上方を正の向きとして y 座標を定める。ボールを投げ上げた
時刻を t = 0 とし、時刻 t でのボールの位置ベクトルの成分表示を y(t)、速度
の成分表示を v(t)とすると、加速度の成分表示を a とすると、a =
9.8 なの
−
で、ニュートンの公式 B.15
から v(t) =
9.8 t + vo 条件から、 vo = 9.8 なので v(t) =
−
14
9.8 t + 9.8…①、
−
これより y(t) =  4.9 t 2  9.8 t + yo 、ここで yo = 0 なので、
y(t) =  4.9t 2  9.8t …② を得る。
1) ②を平方完成すると y(t) =  4.9(t 2  2t )  4.9 (t  1)2  4.9 …③ 。従って t = 1 の時、最
高点の原点からの高さは、4.9 m であり、地上からの高さは、4.9 + 9.8 = 14.7 m とな
る。
2) ③から最高点に達する時間は、③から投げ上げてから 1 秒後である。また
B を通過する時間は y = 0 の時だから、②より 0 =  4.9(t 2  2t)  4.9 t (t  2) より、投げ上
げてから 2 秒後である。また C 点の座標は、y =
−
9.8 だから、②から、  4.9t 2  9.8t =
−
9.8 より t 2  2t  2  0 、解の公式によって、t > 0 に注意すると t  1  3 、これより求め
る時刻は、2.7s となる。
3) A 点は最高点なので、計算しなくとも v = 0 であることは分かるのだが、①において
t = 1 を代入すると v = 0 になる。B 点での速度は、①に t = 2 を代入すると、v =
−
9.8
従って、求める速度は鉛直下向きに、速さ 9.8 m/s となる。また C 点での速度は、①に
おいて、 t  1  3 とすると、 v  9.8 3  17 m/s となる。従って求める速度は鉛直下向
きに、速さ 17 m となる。
例 4 地上の点 P から斜め上方に速度V で投げ上げられた小球の運動について答えよ。
ただし小球が投げ出された直後の速度の水平成分を uo、垂直成分を vo とする。
1) 小球が投げ出されてから、最高点に達するまでの時間と、最高点の地上からの高
さを求めよ。また、最高点での速度を求めよ
2) 小球が地面に落ちた地点を Q とする。PQ 間の距離を求めよ。また P から Q に達す
るまでに要する時間を求めよ。またその時の速さも求めよ。
3) 小球の軌道(小球がそれに沿って飛ぶ曲線)を求めよ。
解答:ただし小球を投げ上げた点 P を原点 O
とし、水平方向の右向きに正方向の x 軸を、
鉛直上方に正方向の y 軸を定める。小球を投
げ上げた時刻を t = 0 とし、それから t 秒後の
小球の位置ベクトルの成分表示を(x(t), y(t))、
またこの時の速度の成分表示を (u(t), v(t))
とする。また重力加速度の大きさを g とする。
15
1) 加速度ベクトルの成分表示を (a x , a y ) とおくと、落体の法則から (a x , a y ) = (0,
)
−g
なので、B.10(イ)(1) と B.15 のニュートンの公式から
a x  0 → u(t )  u(0)  u0
→ x(t )  u0t …①
a y   g → v (t )   gt  v0 …② → y (t )   gt 2 / 2  v0t …③
となる。
④を平方完成すると、 y (t )   g /2  t  v0 /g   v02 /2g となる。これより、最高点に達す
2
る時間は、 t  v0 /g このときの高さは、 v02 /2g である。また最高点では、y 軸方向の
速度は 0 であり、水平方向の加速度は 0 であり、初速は uo なので求める速度は、水平
方向に速さ uo となる。
2) Q 点では y(t) = 0 なので、③から  gt / 2  t  2v0 / g   0 よって、 t  2v0 / g の時地上
に落下する. その時 x 方向の座標は、①より u0 
2v0 2u0v0

となる。 Q 点での x 軸方
g
g
v
v 
向の速速度は u0 、y 方向の速度は、③から、 x  0    g  0  v0 、従がって、速度の
g
g

大きさは u02  (  v0 ) 2  | V0 |
であり、これは投げ上げた時の速さに等しい。
3) 軌道は x、y の関係式のことだから、①と③から t を消去すると、
y  ( g / 2u02 ) x 2  v0 x / u0 を得る。この式から小球は放物線を描いて、運動することが
わかる。
− 以上 −
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