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4.固定資産税(PDF:280KB)

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4.固定資産税(PDF:280KB)
第2章
Ⅳ.固定資産税
Ⅳ.固定資産税
固定資産税の概要
固定資産税は、土地、家屋及び償却資産(これらを総称して固定資産という)の資産
価値に対して課される市町村税で、賦課期日である毎年 1 月 1 日現在の所有者に対して
課される税である。
税額は課税標準額の 1.4%であり、課税標準額は原則として、固定資産課税台帳に登
録された価格による。ただし、住宅用地のように課税標準の特例措置が適用される場合
は、課税標準額は価格より低く算定される。
固定資産税には非課税制度がある。非課税とは、地方団体が課税することを法律によ
り禁止するものである。固定資産税において非課税とされた項目については、その固定
資産所在市町村の意思のいかんにかかわらず、原則として課税権を行使することができ
ない。
①物的非課税
次に掲げる固定資産に対しては、その固定資産の用途又は性格に鑑み、固定資産税を
課することができない。
(イ) 国及び地方公共団体が公共の用に供する固定資産
(ロ) 宗教法人が専らその本来の用に供する宗教法人法に規定する境内建物及び
境内地
(ハ) 墓地
(ニ) 公共の用に供する道路等
(ホ) 保安林に係る土地
(ヘ) その他一定のもの
②物的非課税資産が課税される場合
(イ)有料借り受けの所有者課税
固定資産を有料で借り受けた者がこれを①の固定資産として使用する場合には、
当該固定資産の所有者に課することができる。
(ロ)目的外使用の課税
市町村は、①の固定資産をその目的以外の目的に使用する場合には、これらの
固定資産に対し、固定資産税を課する。
同一区内に同一人が所有する土地、家屋、償却資産のそれぞれの課税標準額の合計が
次の場合には、固定資産税が課税されない免税点が置かれている。
①
土地
30 万円未満
②
家屋
20 万円未満
54
第2章
③
償却資産
Ⅳ.固定資産税
150 万円未満
納付は普通徴収により、年 4 回に分けて納付する。口座振替も可能であり、浜松市で
は平成 21 年度より固定資産税のコンビニ納付対応も始めている。ただし、もともと固定
資産税の収納率は高いため、コンビニ対応は収納率の上昇というより県外在住者の納付
が便利となるという効果が得られたとのことである。
浜松市の職員全体に占める税務職員の割合は下表のとおりである。
H18
H19
H20
H21
市職員数(①)
6,349
6,216
6,092
5,926
税務職員(②)
290
286
286
276
4.57%
4.60%
4.69%
4.66%
22
25
31
37
②/①
上記のほか
非常勤職員数
(税務業務)
※ 各年 4 月 1 日現在の職員数
上記税務職員のうち、固定資産税の賦課・資産評価に直接関わる職員は、浜松市役所
財務部課税管理課資産税グループ 11 名、各区税務課(7 区合計)66 名である。
職務分担としては、本庁資産税グループは、
・固定資産税及び都市計画税の賦課等の総括に関すること
・固定資産の評価の総括に関すること
・土地家屋縦覧帳簿の縦覧並びに固定資産課税台帳、土地家屋名寄帳及び地籍図等の
閲覧の総括に関すること
を担当している。また、各区税務課は、
・固定資産税及び都市計画税の賦課等に関すること
・固定資産の評価に関すること
を担当している。
つまり、本庁において全体的な方針や総括を行い、各区にて評価、賦課を行っている
状況である。ただし、償却資産の評価、賦課については中区のみで担当している。
平成 20 年度の浜松市における固定資産税収入は 53,908 百万円であり、全歳入に対す
る割合で 19.02%、市税収入に対する割合で 39.4%と、高い割合を占めている。
55
第2章
Ⅳ.固定資産税
1.賦課決定手続
・固定資産評価員
市町村長の指揮を受けて固定資産を適正に評価し、かつ、市町村長が行う価格の決定
を補助するため、市町村に、固定資産評価員を設置する。
・実地調査
市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の
状況を毎年少なくとも 1 回、実地に調査させなければならない。
・評価(土地又は家屋)
固定資産評価員は、実地調査の結果に基づいて当該市町村に所在する土地又は家屋の
評価をする場合には、当該土地又は家屋の基準年度の価格又は比準価格によって評価を
しなければならない。
(1)土地
①賦課決定
市が、その 1 月 1 日の現況地目により、賦課決定を行う。評価額は、地価公示価格や
不動産鑑定士が行った鑑定評価価格を基礎とした標準宅地の適正な時価に基づき決定さ
れる。実務上の負担を考慮し、3 年に 1 回の評価替えの制度が採られている(地方税法
第 341 条、第 409 条)。
②税負担調整措置
当年度と前年度の課税標準額がかなり離れている場合、課税の公平及び制度の簡素化
の観点から、当年度の評価額に対する前年度の課税標準額の割合が低い(負担水準が低
い)土地について、負担調整措置が取られている。
③特定市街化区域農地の宅地並み課税
平成 20 年度から、地方税法の規定により、市街化区域にある農地は特定市街化区域農
地として宅地並み課税となった。特定市街化区域農地とは、三大都市圏(首都圏、近畿
圏、中部圏)における政令指定都市等の特定市の市街化区域にある農地をいう。
④住宅用地に対する課税標準の特例
住宅用地については、住宅政策の見地から税負担を軽減するため、その面積から小規
模住宅用地とその他の住宅用地に分けて特例措置が適用される。
1)住宅用地
専用住宅(専ら居住用とされている家屋)の敷地
併用住宅(1 階が店舗で 2 階が住居となっている家屋など)で、居
住部分の割合が 1/4 以上であるものの敷地に一定の率を乗じた後の
面積
56
第2章
2)小規模住宅用地
Ⅳ.固定資産税
住宅用地のうち、200 ㎡までの部分
→
固定資産税の課税標準額=評価額×1/6
3)その他の住宅用地 小規模住宅用地以外の住宅用地
→
固定資産税の課税標準額=評価額×1/3
上記の規定があるため、市町村長は、住宅用地の所有者に、当該市町村の条例の定め
るところによって、当該年度の賦課期日現在における当該住宅用地について、次の事項
を申告させることができる。
(イ)その所在及び面積
(ロ)その上に存する家屋の床面積及び用途
(ハ)その上に存する住居の数
(ニ)その他固定資産税の賦課徴収に関し必要な事項
ただし、前年度の賦課期日における住宅用地の所有者が引き続き当該住宅用地を所有
し、かつ、その申告すべき事項に異動がない場合は、この限りでない。
(2)家屋
①賦課決定
市が、その年 1 月 1 日に存する家屋につき、下記区分により評価し、賦課決定を行う。
1)新築家屋 再建築価格×経年減点補正率
再建築価格とは、評価の対象となった家屋と同一のものを、評価の時点において
その場所に新築するものとした場合に必要とされる建築費をいう。
経年減点補正率は、家屋の建築後の年数の経過によって生ずる損耗の状況による
減価等をあらわしたもので、総務大臣の定めた固定資産評価基準に従い計算される。
2)新築家屋以外の家屋
評価額は新築家屋の評価と同様の算式により算出。ただし再建築価格は建築物価
の変動を考慮するため、資材の上昇、下落により上下することがありうる。評価額
が前年度の価額を超える場合には、通常前年度の価額に据え置かれる。
土地評価と同様、実務上の負担を考慮し、3 年に 1 回の評価替えの制度が採られ
ている(地方税法第 341 条、第 409 条)。
②新築住宅に対する減額
新築家屋のうち、一定の要件を満たした住宅については、1 戸あたり 120 ㎡までにつ
き、税額が 1/2 に減額される。減額期間は 3 年間(一定の場合は 5 年間)である。
③政策上の減額
バリアフリー改修工事、耐震改修、省エネ改修工事を行った既存住宅、長期優良住宅
について、それぞれの要件を満たしたものについては、本人の申告により、一定期間、
固定資産税の 1/2 又は 1/3 が減額される。
57
第2章
Ⅳ.固定資産税
(3)償却資産
①賦課決定
市が、その年 1 月 1 日に存する償却資産につき、固定資産評価基準に基づき、取得価
額を基礎として、取得後の経過年数に応ずる価値の減少(減価)を考慮して評価し、賦
課決定を行う。
償却資産とは、工場や商店などを経営している会社や個人、又は駐車場やアパートな
どを貸し付けている会社や個人が、その事業のために用いている構築物、機械、器具及
び備品などのうち、土地、家屋以外の一定の資産をいう。
②償却資産の申告
賦課に先立ち、償却資産の所有者(総務大臣指定資産の所有者及び大規模の償却資産
の所有者を除く。)は、総務省令の定めるところによって、毎年 1 月 1 日現在における当
該償却資産について、次の事項を 1 月 31 日までに、当該償却資産の所在地の市町村長に
申告しなければならない。
1) 所在
2) 種類 3) 数量
7) 見積価額
4) 取得時期
5) 取得価額 6) 耐用年数
8) その他課税台帳の登録及び当該価格の決定に必要な事項
2.閲覧・縦覧
・固定資産課税台帳の閲覧
市町村長は、固定資産税の納税義務者等の求めに応じ、固定資産課税台帳のうちこれ
らの者に係る納税義務に係る固定資産等に関する事項が記載をされている部分又はその
写しをこれらの者の閲覧に供しなければならない。
・名寄帳の閲覧
市町村長は、納税義務者から固定資産課税台帳の閲覧の求めがあったときは、土地名
寄帳又は家屋名寄帳(以下「名寄帳」という。)に固定資産課税台帳の登録事項と同一の
事項が記載をされている場合に限り、上記により閲覧に供するものとされる固定資産課
税台帳又はその写しに代えて、名寄帳又はその写しを当該納税義務者の閲覧に供するこ
とができる。
・縦覧制度
納税者が、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る土地又は家屋について土地課
税台帳等又は家屋課税台帳等に登録された価格と当該土地又は家屋が所在する市町村内
の他の土地又は家屋の価格とを比較することができるよう縦覧制度が設けられている。
58
第2章
Ⅳ.固定資産税
3.審査申出・不服申立
・固定資産評価審査委員会
固定資産課税台帳に登録された価格に関する不服を審査決定するために、市町村に、
固定資産評価審査委員会を設置する。
(1)評価額に不服がある場合
固定資産税の評価額に不服のある納税者は、浜松市固定資産評価審査委員会に、4
月 1 日から納税通知書の交付を受けた日後 60 日までの間に、審査の申出をすることが
できる。
土地及び家屋の審査申出は、評価替え年度及び新築後の最初の年度に行うことがで
き、据え置き年度である第 2、第 3 年度においてはできない。ただし、土地の地目変
換、地価の下落による価格修正、家屋の増改築・損壊などによる価格の変更があった
場合は審査申出が可能である。
(2)納税通知書の内容(評価額以外)に不服がある場合
行政不服審査法に基づき、課税者である区長の上級庁である浜松市長に審査請求を
行うことができる(その処分のあったことを知った日の翌日から 60 日以内)。
4.更正決定手続
地方税法第 17 条の 5 第 3 項により、賦課決定は、法定納期限の翌日から起算して 5
年を経過した日以後においては、することができない。加算金の決定についても同様で
ある。
59
第2章
Ⅳ.固定資産税
1.土地の路線価算定
概要説明
固定資産評価員は、実地調査の結果に基づいて当該市町村に所在する土地又は家屋の
評価をする場合には、当該土地又は家屋の基準年度の価格又は比準価格によって評価を
しなければならない。
ただし、法附則第 17 の 2 の規定の適用を受ける土地については、修正価格によって評
価をしなければならない。
市町村長は固定資産評価基準及び修正基準によって固定資産の価格を決定しなければ
ならない。
土地評価額の算定は路線価により行われ、路線価は三年度ごとの基準年度において公
示価格を参考に評価計算される。平成 21 年度は基準年度であり、例年どおり、不動産鑑
定士に依頼し標準宅地の時価算定を行った。その算定を基に、評価の安全性のため、地
価公示価格の 7 割程度となるよう固定資産税の路線価を決める。更に、評価額の確認の
ため、国税庁の資料である相続税の路線価(地価公示価格の 8 割程度となっている)と
の比較、検討も行っている。
監査結果
【土地路線価の比較結果(指摘及び意見なし)
】
浜松市の路線価(地価公示価格の 7 割程度)と国税庁の路線価(地価公示価格の 8 割
程度)を比較し、異常な差異が無いかを確認した。
具体的には、浜松市の土地路線価図及び国税庁の路線価図から数箇所を抽出し、価格
差の比率を調査した。調査個所は中区 9 ヶ所、東区 6 ヶ所、浜北区 10 ヶ所、西区 6 ヶ所
の 31 ヶ所で行った。その結果、特に異常な価格差比率の所は無く、31 ヶ所の国税庁の
路線価を「1」とした平均比率は約 0.87 であり特に問題はない。
土地家屋の評価は三年度ごとの基準年度において行われ、基準年度でない年度におい
て一部土地価格が下落している場合等の価格修正はあるが、原則その価格が第二年度及
び第三年度に引き継がれる。したがって土地の評価における基準年度の路線価の算定は
三年度間の土地の税額に大きな影響を与えるため、精度の高い適正な評価を行う必要が
ある。
60
第2章
Ⅳ.固定資産税
2.固定資産の実地調査状況
概要説明
1.固定資産の実地調査
地方税法第 408 条(固定資産の実地調査)
市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定
資産の状況を毎年少なくとも一回実地に調査させなければならない。
これは、固定資産税が賦課課税方式の税であるため、課税主体である自治体に実態の
調査を義務づけ、適正な課税を行うことを目的とするものである。土地に対する固定資
産税の課税はその土地の地目、利用状況によって評価額及び課税標準額並びに税額が大
きく変わる。そのため、地目及び利用状況の正確な把握は、適正かつ公平な課税の実現
のうえで重要な要素の一つである。
他方、地方税法第 384 条は住宅用地の所有者につき、
1)第 1 項において前年に引き続き住宅用地を所有し、その異動がない場合を除き、住
宅用地の所有者に所在、面積等の事項を申告させることができる、とし、
2)第 2 項において、住宅用地から住宅用地以外の土地への変更があり、かつその者が
その土地を引き続き所有している場合には、その所有者に申告を求めることができ
る、としている。
これを受けて浜松市税条例第 75 条は下記のとおり申告義務を定めている。
第 75 条
1
賦課期日において、住宅用地を所有する者は、当該年度の前年度に係る賦課期日
から引き続き当該住宅用地を所有し、かつ、その申告すべき事項に異動がない場
合を除き、当該年度の初日の属する年の 1 月 16 日までに次の各号に掲げる事項を
記載した申告書を市長に提出しなければならない。
(1)住宅用地の所有者の住所及び氏名又は名称
(2)住宅用地の所在及び地積
(3)住宅用地の上に存する家屋の所在・所有者・家屋番号・種類・構造・用
途・床面積・居住の用に供する部分の床面積及び居住の用に供した年月日
並びにその上に存する住居の数(法第 349 条の 3 の 2 第 2 項に規定する住
居の数をいう。)
(4)その他市長が固定資産税の賦課徴収に関し、必要と認める事項
2
当該年度に係る賦課期日において住宅用地から住宅用地以外の土地への変更があ
り、かつ、当該年度の前年度に係る賦課期日から引き続き当該土地を所有してい
る場合には、当該土地の所有者は、当該年度の初日の属する年の 1 月 16 日までに
その旨を市長に申告しなければならない。
61
第2章
Ⅳ.固定資産税
また、同条例第 76 条は、上記申告がない場合の過料を定めている。
これらは、自治体の調査のみでは把握できない変動事項につき納税者本人に申告を求
めているものである。
2.実地調査の現状
浜松市では固定資産の課税について、土地、家屋については各区税務課、償却資産に
ついては中区が担当している。各区は固定資産の実態把握のため、下記機関より課税調
査権に基づいて資料収集している。
(1)法務局
登記情報(地方税法第 382 条)
(2)市建築行政課
(3)市保健所
建築確認
開業情報
(4)市農業委員会
農地転用情報
(5)市課税管理課
法人設立届、事業開廃業届
(6)市各区社会福祉課
生活保護受給開始・廃止通知
土地・家屋の年 1 回の定期調査については、下記のとおり行われている。なお、新築
情報や地目変更届がある箇所については定期調査とは別に実地調査を行っている。
(1)中区、南区、東区、西区、北区
合併前の旧浜松市地区については合併前より年 1 回の実地調査が行われており、
現在も継続されている。また、旧浜松市以外の地域である西区及び北区の一部に
ついても合併後についてはできるだけ実地調査を行っているが、山林などで確認
できない箇所については航空写真、公図を基にした地形図等で確認している。
(2)浜北区
実地調査は新築物件、各種変更届、変更情報入手時に行い、定期的な実地調査
は行っていないが、航空写真、公図を基にした地形図等で確認を行っている。
(3)天竜区
調査可能な箇所は実地確認を行っている。山林等は航空写真で確認。
また、償却資産については全ての区の業務を中区で担当している。
実地調査は平成 18 年度に 49 件行ったが、平成 19 年度は政令指定都市・区割導入によ
る分掌業務等で業務煩雑となり実地調査 0 件、平成 20 年度はエルタックス(電子申告)
導入準備、導入による事務増大のため、実地調査 0 件であった。
62
第2章
Ⅳ.固定資産税
監査結果
【現地調査を行った結果(指摘)】
中区所在の土地 2 地区につき現地調査を行い、課税状況に誤りがないかどうかの確認
を行った。地目につき現地調査を行った結果、2 地区について特に誤りは確認されなか
った。非課税土地についても誤りは確認されなかった。
浜北区所在の土地 3 ヶ所につき現地調査を行い、課税状況に誤りがないかどうかの確
認を行った。その結果 2 ヶ所について誤りは確認されなかった。
1 ヶ所について、台帳地目「畑」、課税地目「畑」とされている場所が、現況は空地化
されており畑として耕されている状況にはなかった。また、近隣の方の話では 15 年以上
前に畑として貸していたことはあったように思うが、その後は畑として使用されている
ことはないと思う、との話であった。訂正の必要があると思われる。
浜北区では基本的に新規・変更時の実地調査を行っており、他は航空写真を基にした
システムでの調査となっているが、上空からの写真では畑と空地等は確認が困難であり、
限界があると思われる。人員不足対策として航空写真方式は検討に値するが、上空から
では確認できにくい箇所や地目については実地調査を併用する必要がある。
【申告制度の周知(意見)】
住宅用地以外の土地から住宅用地に変更があった場合には、市税条例第 75 条第 1 項に
より所有者に申告義務がある。しかしながら、事業用土地を住宅用地に転用していたが、
申告がなくまた外観では不明確であったものが、平成 20 年度の実地調査で判明し、過年
度分を含め複数年の更正決定がなされていた案件があった。
浜松市では 11 月の広報で、住宅用地、被災住宅用地、家屋滅失の申告について周知を
図っているが、申告の件数は多くない。更正件数の減少や還付加算金の減少のため、簡
易な届出や取壊し業者への届出制度周知活動など、制度の周知方法を検討することが望
ましい。
【土地・家屋の実地調査の方法(意見)】
実地調査の状況が区により異なるため、統一化をする、あるいは地域や地目により異
なる調査方法(例えば宅地地域は毎年の実地調査の実施、山林地域は航空写真を利用し
た調査方法、など)を認める一定のルール化をすることが必要と思われる。
また、航空写真の活用方法を検討することが望ましい。浜松市では、都市計画法第 6
条の基礎調査を目的として、都市計画課においておおむね 5 年ごとに航空写真を撮影し
ており、市各課が必要に応じて利用している。前回は合併時平成 17 年に撮影しており、
浜北区、天竜区、北区・西区の旧市町村で地図情報システム(公図や税情報を航空写真
に重ねて表示させるシステム)として現在利用している。航空写真は上空から状況確認
ができるため、特に山間地などで効率的に実地調査が行えない地域では、実地調査事務
63
第2章
Ⅳ.固定資産税
負担軽減方法の一つとなる。ただし、上空からでは識別しにくい耕作されていない畑と
雑種地の別や、航空写真撮影後の変更などは確認が困難である。そこで、確認が困難な
地目や地域に絞り込んでの実地調査を合わせて行うことにより、効率的な実地調査が行
えると考える。
なお、航空写真は、全ての固定資産についての実地調査が困難であるため、補完的に
周辺市でもそれぞれ利用しており、3~5 年に 1 回撮影しているとのことである。費用と
の兼ね合いがあるため、周辺市町村で一括依頼すること等により費用軽減を図り、例え
ば評価替えの年毎(3 年に 1 回)撮影することにより評価替え時点で確認を行えるよう
にするなどの検討を行ってはどうかと考える。
【償却資産の実地調査(意見)】
平成 18 年度の実地調査では、49 件の調査で増加・減少合わせて合計 380 万円余の税
収となった。平成 19 年度、20 年度は業務煩雑等のため実地調査がなされていないが、
適正な申告につながるため、毎年一定件数は定期的な実地調査を行うよう、調査業務の
優先化、他業務のスリム化を図ることが望まれる。
64
第2章
Ⅳ.固定資産税
3.新築家屋の評価
概要説明
市町村長は固定資産評価基準によって固定資産の価格を決定しなければならない。
家屋の評価は新築時の評価額を基礎とし、基準年度ごとに固定資産評価基準に従って
一定額の減額した額と前基準年度の金額の少ない方を評価額とする。従って、新築時に
おける家屋の評価額の算定が適正な課税の基礎となる。
新築家屋の評価の流れは下記のとおりである。
まず、建築確認や登記情報等をもとに新築家屋所有者に連絡を取る。新築家屋の所有
者宅を訪問し、図面の提供を受け、現地調査を行って、評価額の算定基礎資料を収集す
る。この現地調査を基に、固定資産評価基準に従い細かく評価を行う。更に、グループ
内で再チェックを行い、評価が適正になされているかを確認する。評価額は、実際の購
入価格の 5~6 割程度となるが、購入価額には建築業者の利益部分も入っており、再建築
価額である評価額としては妥当と思われる。
監査結果
【新築家屋の評価(指摘及び意見なし)】
新築家屋の評価について、抽出案件につき、評価の過程で誤りが生じていないかを確
認した。具体的には、平成 21 年度新築物件 21 件につき、担当者への聞き取りを行い、
登記情報との照合、担当者現地調査評価書と計算書入力事項の照合を行った結果、特に
問題となる点は確認されなかった。
【専門職員の養成(意見)】
本庁財務部及び各区税務課職員につき、適正な評価の基礎となる専門性を確認するた
め、税務課所属年数を確認した。浜松市の本庁財務部及び各区税務課職員の税務課所属
年数は下表のとおりである。評価に関わる各区税務課職員は比較的経験年数が多いが、
ここ数年、人数の減少もあり、3 年未満の職員が増えている。
家屋の新築時における評価はその後の税額に大きな影響を及ぼす。このため適正な評
価が重要であり、特に非木造大規模物件の評価については高度の専門知識と経験が必要
となる。研修制度のさらなる拡充や異動のない専門職員の養成が必要と思われる。
65
第2章
Ⅳ.固定資産税
税務経験年数別職員数
(単位:人)
1年 2年 3年 5年 7年 10年 15年 20年 20年
未満 未満 未満 未満 未満 未満 未満 未満 以上
財
務
部
区
役
所
税務総務課
課税管理課
納税課
債権回収対策課
計
中区役所 税務課
資産税 土地担当
資産税 家屋担当
他
東区役所 税務課
資産税 土地担当
資産税 家屋担当
他
西区役所 税務課
資産税 土地担当
資産税 家屋担当
他
南区役所 税務課
資産税 土地担当
資産税 家屋担当
他
北区役所 税務課
資産税 土地担当
資産税 家屋担当
他
浜北区役所 税務課
資産税 土地担当
資産税 家屋担当
他
天竜区役所 税務課
資産税 土地担当
資産税 家屋担当
他
区役所合計
合計
1
6
6
4
17
4
2
2
1
1
1
2
3
13
4
22
7
2
8
14
13
37
7
2
4
1
4
7
2
1
1
4
4
1
1
4
2
2
3
1
1
1
3
1
1
1
1
1
17
34
1
3
1
1
1
2
1
3
20
5
29
11
2
1
8
0
1
1
3
2
1
1
2
1
2
2
0
1
4
1
3
9
4
1
3
3
1
2
3
1
1
1
1
1
4
6
8
1
19
9
1
2
6
3
2
1
4
1
3
1
2
5
11
1
19
8
1
2
5
4
1
1
2
5
1
1
3
4
1
2
6
1
2
1
9
1
4
1
1
1
1
1
1
1
1
0
1
0
0
0
0
0
0
1
1
2
1
1
0
1
29
48
3
12
1
3
7
1
1
1
1
1
2
2
1
1
1
1
1
1
22
59
17
39
5
1
1
3
0
19
48
3
2
1
3
1
3
2
1
3
2
2
1
2
3
2
19
28
1
2
26
45
4
4
1
3
2
※ 平成 21 年 4 月 1 日現在(非常勤職員含む)
※ ただし、確認できた資料では、税務課所属年数のみの確認であり、例えば土地担当者は
土地担当だけを年数分行ってきたわけではないとのことである。
66
計
15
39
80
31
165
52
7
12
33
19
3
5
11
20
3
5
12
17
3
4
10
17
4
5
8
19
4
5
10
11
2
2
7
155
320
第2章
Ⅳ.固定資産税
4.家屋の未登記物件及び増築家屋の把握方法
概要説明
家屋の課税物件の把握は、登記簿に登記されているものは登記情報により、未登記の
家屋については建築確認申請、現地調査により、また、増改築された家屋も建築確認申
請、現地調査により把握することとなる。未登記物件については所有者の届け出によっ
ても把握している。
監査結果
【手続の網羅性及び統一性(指摘)
】
家屋の課税物件の把握方法のサンプルとして、旧浜松市地域から中区と旧浜松市以外
の地域から浜北区を抽出し、未登記家屋及び増築家屋の把握方法を質問し、把握漏れが
生じないか確認した。
中区では登記情報、建築確認申請、現地調査により、浜北区では登記情報、建築確認
申請、航空写真等により把握している。中区においてはすべての家屋について現地調査
を行っているが、担当職員が少人数であることからすべての物件の確実な調査は困難で
ある。浜北区においては基本的には現地調査を行っていないが、定期的な現地調査によ
る目視の現況確認も必要であり、土地の実地調査と合わせて、地域を区切って数年に一
度は家屋についても現地調査をするべきである。
また、土地と同様、区によって(旧浜松市と旧浜松市以外の市町村)現況調査の方法
が異なり手続の統一性が無いため、課税の公平性の見地から検討が必要である。
67
第2章
Ⅳ.固定資産税
5.損耗等の要因による家屋の評価額の減額更正
概要説明
市町村長は、固定資産評価員又は固定資産評価補助員に当該市町村所在の固定資産の
状況を毎年少なくとも 1 回、実地に調査させなければならない。
固定資産評価員は、実地調査の結果に基づいて当該市町村に所在する家屋の評価をす
る場合には、当該家屋の基準年度の価格又は比準価格によって評価をしなければならな
い。
家屋の評価は三年度ごとに、評価基準に従って評価され減価していくが、損耗の状況
が著しく大きい場合などには、特別な損耗減点補正を行っている。
既存家屋の評価は固定資産評価基準に従って評価されるが、上記のとおり評価要素に
家屋の損耗度に応じた減額がある。しかし、この損耗等は細かい実地調査を行わない限
り把握することは困難であり、納税者からの申出があって実地調査が行われ、損耗度に
応じた減額更正が行われることとなる。
監査結果
【損耗等の把握(意見)
】
既存家屋の評価手続について質問し、損耗減点補正を行った物件について内容を確認
した。平成 21 年度は 13 の納税義務者について減額補正が行われ、大規模物件において
は、減額税額が約 1,600 万円のものがあった。前記物件は、長期不使用による屋根の亀
裂、雨水、浸水、壁剥離、カビ等が原因であった。これらの物件についての実地調査状
況の記録を確認した結果、評価基準に従い適正に処理されていた。
既存家屋の評価は固定資産評価基準に従って評価されるが、評価要素の一つに家屋の
損耗の状況による減額補正がある。これは実地調査により把握することになるが、すべ
ての家屋について損耗度を把握し評価することは困難であり、実務的には納税者からの
申出に基づき実地調査により損耗度を算定し、その損耗度合に応じた損耗減点補正を行
い固定資産税額を減額している。実地調査及び評価の過程は適正に行われているが、鉄
筋コンクリート造りなどの大規模な家屋については評価額及び固定資産税額が多額であ
り、評価減による税額の還付金額及び還付加算金の額も多額となる。そこで、大規模か
つ相当年数を経過している物件については 5 年に一度程度の実地調査を行って損耗度を
把握し、評価に反映させることが望ましい。
68
第2章
Ⅳ.固定資産税
6.償却資産の申告に関する案内(ハガキ)の記載
概要説明
固定資産税は賦課課税であるが、償却資産については納税義務者の申告を基に賦課決
定がなされる。地方税法では固定資産税の納税義務がある償却資産の所有者に申告義務
が課されており(同法第 383 条)、不申告者に対しては条例で過料を科すことができると
されている(同法第 386 条)。
これをうけて浜松市税条例は、
「固定資産の所有者が、申告すべき事項について正当な
事由なく申告しなかった場合においては、その者に対し 3 万円以下の過料を科する(浜
松市税条例第 76 条第 1 項)。」としている。
つまり、固定資産税は賦課課税方式の税とはいえ、償却資産に関しては納税者の申告
なしには現状把握をすることは困難であり、申告は課税の前提となっているものである。
そのため、浜松市は、償却資産の所有者につき、
(1)新規事業者には新規事業者用「償却資産申告書提出のお願い」、申告の手引き
及び申告書類原紙
(2)既存事業者のうち、以前申告がなされ、その際免税点以下であった事業者に
は「固定資産税(償却資産)の申告について(お願い)」のハガキ
(3)既存事業者のうち、
(2)以外の者については、申告の手引き及び申告書類原
紙をそれぞれ送付している。
(3)については原紙送付後、3 月までに申告のないものについて 3 月中旬に督促
状発送し、その後さらに申告がない場合、データが市側にあるものについては 5 月中
旬に職権課税し(第 2 期目からの納期に間に合わせる)、新規事業者等データが市側に
ないものについては個別に調査等を行うこととしている。
過去 3 年度分の送付実績は下記のとおりである。
ハガキ発送件数
平成 19 年度
21,453 件
平成 20 年度
25,021 件
平成 21 年度
26,240 件
申告書原紙送付件数
発送枚数
督促枚数
職権課税件数
平成 19 年度
15,773
(不明)
216
平成 20 年度
14,735
2,640
221
平成 21 年度
14,715
2,203
219
69
第2章
Ⅳ.固定資産税
また、平成 21 年度償却資産の申告件数(日毎)を集計したものは、下記のとおり
である。
申告時期
受付件数
1/5~2/4
12,670
2/5~3/2
1,924
3/3~3/31
682
4月
178
5月
223
6月
173
前期合計
15,850
※ 1 月末日が申告期限であるが、月末が週末のため、平成 21 年の申告期限は
2 月 2 日であった。また、2 月 3 日、2 月 4 日には郵送提出到着分や各区受
付申告後郵送到着分が多いため、分析の都合上、期限内申告の中に入れる
こととし、集計した。
※ 期限内申告後、修正申告がなされた分についても件数として集計している
ため、重複分がある。
監査結果
【お知らせハガキの様式(意見)】
浜松市税条例によれば、
「償却資産の不申告者には過料を科する」とされているが、他
の市町村と同様にこれまで過料を科した例はない。
別稿記載のとおり、償却資産に係る固定資産税の更正決定のうち、約 66%が期限後申
告、修正申告によるものである。また、上記償却資産申告件数集計表によれば、郵送分
としての到着遅れを考慮し、2 月 4 日までの受付分を期限内申告件数としたとしても、
半期合計に占める期限内申告件数は 8 割に過ぎない。
これらが正しく期限内に申告されることにより、一時的に課税処理の負担は大きくな
るが、現地調査等、適正な課税業務に時間を割くことが可能となる。
「固定資産(償却資産)の申告について(お願い)」のハガキは、申告書を送付しない
ことによる経費節減と、課税対象償却資産に増加、減少があった場合に申告を要すると
いうお知らせの意味を持つ。経費節減効果は認められるが、増加、減少があった場合の
申告のお知らせとしての意味あいについては、ひな型の文章の最後にただし書で触れら
れている程度である。この部分を強調し、また罰則である過料についての文言も記載し、
要申告についての注意喚起と期限内申告への協力要請を強めてはどうかと考える。
70
第2章
Ⅳ.固定資産税
7.償却資産に係る固定資産税の更正手続
概要説明
1.申告状況
償却資産に係る固定資産税の申告、賦課、納税通知書送付の流れは下記のとおりであ
る。
1)毎年 1 月末日までに資産所有者が資産状況を申告
↓
2)申告のないものについて、3 月中旬に督促状発送
↓
3)4 月中旬に納税通知書を送付
↓
4)督促後も申告のないものについて、5 月中旬、職権課税
平成 21 年の償却資産に係る固定資産税の時期別申告受付状況は、下記のとおりである
(再掲)。
申告時期
受付件数
1/5~2/4
12,670
2/5~3/2
1,924
3/3~3/31
682
4月
178
5月
223
6月
173
前期合計
15,850
2 月 4 日分までを期限内申告したものとして集計すると、前期受付合計に占める期限
内申告件数の割合は約 8 割となる。
納税通知書送付後に修正申告があった場合、又は職権課税後期限後申告があった場合
には、更正決定により賦課金額の訂正となる。対象年が異なるため正確な比較は難しい
が、平成 20 年度の更正決定の理由毎の件数は下記のとおりである。
71
第2章
現年度
期限後申告
Ⅳ.固定資産税
過年度
227
5
訂正申告
54
20
賦課誤謬
54
24
職権課税
62
0
3
0
26
21
0
187
426
257
減免
その他(価格の配分修正等)
過年度課税
件数
上表によると、現年度分更正決定のうち、期限後申告・訂正申告の占める割合は約 66%
である。
監査結果
【更正理由の区分(意見)】
上記更正決定のうち「賦課誤謬」については、庁内の自己チェック等で気づいたもの
のほか、納税者本人による申出(訂正申告等)によるものも含まれている。このため、
同じ更正理由であっても本人の申し出遅延の場合と市側の賦課誤りの場合との区別が不
明確となっている。これにより、現状把握が困難となり、有効な対策に結びつかない。
更正理由については区分を明確化し、更正となった理由が申立者側にあるのか市側に
あるのかを把握し、その上で更正件数減少のための対策を講じる必要があると考える。
【期限内申告呼び掛けの必要性(意見)】
更正手続は通常の賦課決定と異なり、課内で複数の決裁を要して更正決定を得、更正
日以降の税額を変更し、更正通知書及び納税通知書を送付するなど、事務量が多い。
上表によれば、平成 20 年度の現年度分更正 400 件余のうち、期限後申告、訂正申告が
約 66%を占めている(前年に共同住宅等を新築した者のほか、4 月に入って新たに申告
書を送付し、申告があった者の件数も含まれる。)。償却資産については賦課課税である
が、納税者に資産状況の申告義務がある。この申告が申告期限までに行われず、期限後
申告、訂正申告が申告期限後に行われることにより、業務は煩雑になり事務量は増加し
ている。
期限内申告を行っている納税者との公平性からも、例えば、正当な理由がなく申告を
しなかった場合や虚偽の申告をした場合の罰則の適用を検討する、申告期限を守っても
らえるよう期限後申告をした事業所への広報活動を行う、申告内容が適正に行われるよ
うあらかじめの周知を図る、など必要であると考える。
72
第2章
Ⅳ.固定資産税
【所内チェックによる訂正(意見)
】
更正決定を行っているものの中には、①システムの締め後 3 月 16 日の納税通知書印刷
前に課員が賦課誤りに気づき訂正するもの、②3 月 16 日の納税通知書印刷後発送前(3
月 26 日頃まで)に申告がなされた分につき課員が個別に訂正を為し、期限内申告と同じ
く第一期の納付に間に合わせているもの、の 2 種類がある。
①は 3 月 16 日までの手続を見直すことにより減少が可能である。印刷前に誤りに気付
くよう、課内のチェック体制構築を検討することが望ましい。
②は納税者の利便を考慮し課員が行っているものであるが、そもそも申告の期限を大
幅に過ぎているものである。
納税者に申告期限を守ってもらうためにも、また庁内の事務量の増加を招かないため
にも、発送前の個別の訂正ではなく第二期以降の訂正とすることが望ましい。さらに、
訂正後の納税通知書送付時には、
「申告期限が守られなかったため二重手続になりました。
今後は必ず期限内の申告を行ってください。」などの文言を添えることにより、期限内申
告の励行を求める必要があると考える。
73
第2章
Ⅳ.固定資産税
8.固定資産税の減免
概要説明
1.減免規定
浜松市税条例第 72 条では、固定資産税の減免につき、下記のとおり定めている。
第 72 条
市長は、次の各号のいずれかに該当する固定資産のうち、市長において必要があると
認めるものについては、その所有者に対して課する固定資産税を減免する。ただし、天
災等により減免を必要とする場合においては議会の議決を経て減免する。
(1)生活保護法の規定による生活扶助を受ける者の所有する固定資産
(2)公益のために直接専用する固定資産(有料で使用させるものを除く。)
(3)その他特別の事由があるもの
2 (省略)
3 第 1 項の規定によって固定資産税の減免を受けた者は、その事由が消滅した場合にお
いては、直ちにその旨を市長に申告しなければならない。
上記規定を受け、浜松市税条例施行規則第 5 条は、下記のとおり定めている。
第5条
条例第 72 条第 1 項各号に規定する固定資産税の減免は、次に定めるところによる。
(1)生活保護法の規定による生活扶助を受ける者の所有する固定資産
免除
(2)公益のため直接専用する固定資産(有料で使用させるものを除く。)
免除
(3)生活保護法の規定による生活扶助以外の扶助を受け特に納税資力が乏しいと認
められる者の所有する固定資産
免除
(4)宗教法人に準じる神社又は寺院が専らその本来の用に供するもの(有料で使用
させるものを除く。)免除
(5)町又は字の地域団体が専ら会所等の用に供している固定資産(有料で使用させ
るものを除く。)免除
(6)学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)第 124 条に規定する専修学校又は同法第
134 条第 1 項に規定する各種学校で、学校法人でないものが直接教育の用に供す
る固定資産
10 分の 5 以内を軽減
(7)学校法人が設置する幼稚園に準じる幼稚園で直接保育の用に供する固定資産
免除
(8)児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号)第 39 条第 1 項に規定する業務を目的と
する施設であって同法第 35 条第 4 項の認可を受けていないもの(同法第 58 条の
規定により児童福祉施設の認可を取り消されたものを含む。)のうち、市長が、
別に定める基準により指定したものにおいて直接保育の用に供する固定資産(有
74
第2章
料で使用させるものを除く。)
Ⅳ.固定資産税
免除
(9)焼失、潰地等による固定資産に対しては、その損害の程度により固定資産税を
減免する。
(10)前各号に定めるもののほか、特別の理由があると認める者については、固定資
産税を減免する。
2.減免手続
上記規定及び「浜松市固定資産税・都市計画税の減免に関する取扱い」による減免手
続の流れは下記のとおりである。
納期限7日前までに「固定資産税減免申請書」に必要書類を添付して提出
(条例第72条第2項)
<以下要綱>
・納期限7日前までの申請とは限らないもの 生活保護、焼失等、物納
・前年度において減免適用を受け、引き続き同じ理由により減免に該当する一
定のものは、改めて申請しなくても差し支えない。ただし、所有者及び使用状
況等の減免要件に変更があった場合は申請必要(詳細規定省略)
↓
減免申請があった場合は、申請書及びその添付書類に基づき実地調査を行い、
その申請理由及び減免要件の事実確認を行う
↓
主管課長の決裁を得る
ただし、特別の理由がある新規案件については必要書類を添付して区長決裁を
得、本庁課税管理課に合議
↓
決定後速やかに「固定資産税減免の承認(却下)通知書」により通知
75
第2章
Ⅳ.固定資産税
3.減免の状況
平成20年度の固定資産税減免対象は、下表のとおりである(都市計画税除く)
。
固定資産税減免対象一覧表
減免の根拠
72条 5条1
項目
平成20年度(土地・家屋・償却資産)
固定資産税 土地
義務
者数
件数
地積
固定資産税 家屋
義務
者数
減免税額
件数
地積
固定資産税 償却資産
義務
者数
減免税額
1号
1号
生活扶助受給者
60
119
104,946.87
824,600
63
83
5,673.78
875,800
2号
2号
遊園地
111
256
173,097.00
10,869,629
0
0
0
0
2号
2号
屋台置場
102
123
13,977.00
4,550,655
0
0
0
0
2号
2号
消防関係
100
135
7,863.00
1,270,521
0
0
0
0
2号
5号
地域団体の会所等
598 1,208
374,299.00
60,308,249
614
874
93,829.73
57,450,736
2号
6号
各種学校
0
0
0
0
13
30
19,116.38
9,994,006
2号
7号
幼稚園等
0
0
0
0
1
2
107.23
21,976
3号
8号
火災・潰地
0
0
0
0
27
31
4,386.18
665,255
3号
9号
公衆浴場
4
3号
9号
その他
小計
件数
減免税額
5
975.00
380,263
4
8
624.27
30,982
50 1,791
605,481.00
15,886,603
41
85
66,560.98
43,207,982
7
7
29,056,997
1,025 3,637
1,280,639
94,090,520
190,299 112,246,737
7
7
29,056,997
1,795
4,757
235,394,254
763 1,113
合計
監査結果
【減免手続(指摘)】
固定資産税の減免に関する規定の確認及び中区所管分の減免申請書並びに決裁文書に
ついての確認、関係課員へのヒアリングを行った。
減免申請書及び決裁文書は各所管区にて保管されている。これらのうち、中区所管分
につき、減免手続の確認を行った。
①前年度より継続の場合、減免申請理由証明書類の添付は求められていない。
減免申請書のうち、1 件につき押印のないものがあった。適正に揃置されるべきであ
る。その他、継続案件 139 件の申請書は不足なく揃えられていた。
②新規申請の場合、減免申請書、理由証明書類添付、事実確認書及び決裁印(主管課長)
が必要となる。
新規申請 12 件のうち、生活保護に係る 2 件について、申請書のみ又は申請書及び証明
書類の添付のみで、決裁書類の添付が無かった。適正に揃置されるべきである。
上記のほか、減免申請却下案件 1 件については適正に処理されていた。また、減免申
請後、減免事由消滅届の提出された案件 1 件については、届出後の納期限分につき適正
に課税がなされていた。
【決裁及び報告(意見)
】
76
第2章
Ⅳ.固定資産税
固定資産税の減免は上記のとおり、新規案件については区長、継続案件については課
長決裁により決定されている。
上表のとおり、減免税額のほとんどについては生活扶助、地域団体の会所等であるが、
「その他」に含まれる各種学校、公益法人等、市長が特に定めたものについても土地・
家屋・償却資産で合計 88,151,582 円と、多額の減免税額となる。この中には、第三セク
ター方式により開業した民営鉄道に対する鉄道経営の安定化等に寄与する総合的対応策
の一環として長年に亘り固定資産税を減免している案件、社会福祉法人等その時代にお
ける政策的目的による案件等が混在している。そしてこれら「その他」案件についても、
毎年継続されている件については課長決裁が行われ、特に市長や議会への個別の報告が
されている様子はない。
しかしながら、減免税額が多額であることによる市財政への影響の重要性から、少な
くとも減免対象件数及び減免税額総額につき、議会への報告は必要と思われる。一定額
以上の減免税額案件については議会への付議が必要とすることも一考であると思われる。
また、政策的判断が必要とされる「その他」事由による減免案件については、新規案
件については議会への付議を検討してはどうかと考える。継続案件についても、毎年義
務者毎の減免理由について、市民の代表たる議会に報告されることが望ましい。
77
第2章
Ⅳ.固定資産税
9.固定資産評価審査委員会の審査申出の状況
概要説明
納税者は、その納付すべき当該年度の固定資産税に係る固定資産について固定資産課
税台帳に登録された価格(一定のものを除く)について不服がある場合には、文書をも
って、固定資産評価審査委員会に審査の申出をすることができ、固定資産評価審査委員
会は、審査の申出を受けた場合には、直ちにその必要と認める調査その他事実審査を行
い、その申出を受けた日から 30 日以内に審査の決定をしなければならない。
浜松市においては、平成 20 年度は 3 件の審査申出があった。
監査結果
【審査内容及び手続(指摘及び意見なし)】
固定資産評価審査委員会の審査内容の記録資料を確認し、審査内容及び手続が適正で
あるか確認した。
平成 20 年度の 3 件の審査申し出のうち、2 件は棄却され、1 件は評価の減額を決定し
ている。法規定に従い、実地調査及び事実審査は適正に行われており、細部にわたる調
査により正確かつ適正な審査を行っていると思われる。
78
第2章
Ⅳ.固定資産税
10.延滞金及び過料の賦課状況
概要説明
償却資産は地方税法第 383 条により納税者に申告義務があり、虚偽申告及び不申告の
場合には地方税法第 385 条及び浜松市税条例第 76 条により罰金、過料を科すると定めて
いる。また、浜松市税条例第 73 条において上記により固定資産税の価格を決定し、又は
修正したことに基づいて固定資産税額に不足税額のある場合は、その不足税額を一定の
定めに基づいて計算した延滞金額を加算して徴収するとしている。
監査結果
【延滞金及び過料の賦課(指摘)】
不申告による過料及び期限後申告、決定、更正による納税に係る延滞金についての賦
課状況を質問し確認したところ、不申告による過料は科していないとのことであった。
延滞金については、更正決定や期限後申告により賦課決定された場合、法定納期限から
指定された納期限までの期間に対する延滞金は賦課していないとのことであった。
償却資産の期限内申告がなされず、期限後申告等がされ、固定資産税額に不足額があ
る場合に徴収すべき税額について、浜松市では現在、当該不足額に係る納税通知書の納
付期限後からの延滞金のみを課している。また、過料は科していない。
規定からは、本来の納期限から不足税額の納税があった日までの期間に応じた延滞金
を課さなければならないが、これを課していない状況である。
適法性及び課税の公平性、期限内申告・適正申告の推進及び納税意識の向上のため、
延滞金及び過料を条例どおり課すべきである。
79
第2章
Ⅳ.固定資産税
11.補填金制度
概要説明
1.補填金制度
地方税法第 17 条の 5 は、固定資産税等で課税標準額又は税額を減少させる更正につい
て、法定納期限の翌日から起算して 5 年を経過する日まですることができる、と規定し
ている。
他方、浜松市においては、
「浜松市固定資産税等過誤納金補填金支払要綱」により、時
効により還付不能になったもの(5 年を超えたもの)について、固定資産課税台帳の保
存年限である過去 10 年分まで、また、本人の証明書類により確認できる場合には更に
10 年分(両方で過去 15 年分)を補填金として還付することができる、とされている。
2.他市町村の状況
浜松市の周辺 5 市町村につき同様の制度があるか確認したところ、4 市町村に同様の
制度が存した。1 市については要綱や制度は無いが、個別の案件として対応し、5 年以上
前の還付金が発生した実績があるとのことであった。
3.支払実績
平成 18 年度から平成 20 年度の支払実績を確認したところ、補填金制度により 5 年を
超えて補填金が支給されたケースとしては、
(1)平成 17 年における冷凍倉庫の課税誤りによる過年度分固定資産税等相当額
(2)固定資産税において、過去に事業用建物から居住用建物に変更していたが、事業
用建物のまま課税がなされており、直近の現地調査で変更が判明したことによる過年
度分固定資産税相当額
(3)同じく固定資産税において、家屋の滅失登記がなされていなかったため過去に滅
失していた建物に課税されていたことにより発生した過年度分固定資産税相当額
などが見受けられた。
過去 3 年間の補填金支払実績は下記のとおりである。
(単位:円)
本税
加算金
還付額合計
平成 18 年度
18,959,410
7,634,688
26,594,098
平成 19 年度
3,564,700
1,531,115
5,095,815
平成 20 年度
2,857,300
1,018,811
3,876,111
25,381,410 10,184,614
35,566,024
合計
80
第2章
Ⅳ.固定資産税
このうち、平成 18 年度分には、冷凍倉庫についての下記補填金が入っている。
本税
冷凍倉庫分(円)
加算金
17,417,110
7,080,246
還付額合計
24,497,356
冷凍倉庫の評価誤りについては全国的に問題となったこともあり、過去分も含めて訂
正する自治体が多くあったため、浜松市も同様の措置を取ったとのことである。この冷
凍倉庫分を平成 18 年分還付実績より控除した場合、還付実績は下記のとおりとなる。
(単位:円)
本税
加算金
還付額合計
平成 18 年度
1,542,300
554,442
2,096,742
平成 19 年度
3,564,700
1,531,115
5,095,815
平成 20 年度
2,857,300
1,018,811
3,876,111
合計
7,964,300
3,104,368
11,068,668
監査結果
【補填金制度の運用状況(指摘)】
中区及び浜北区において、平成 20 年度の更正決定を概観したところ、補填金対象と思
われる案件が存した。中区においては、過去 5 年以内分は更正、5 年を超える年分は補
填金制度の適用が行われていたが、浜北区においては 2 件につき、平成 19 年以前の更正
は行われていなかった。更正、補填金の運用が異なっているようであり、運用の統一が
必要である。
【補填金制度(意見)】
①制度の必要性の検討
地方税法では、還付の対象となる年限は 5 年とされている。他方、要綱で定められた
補填金制度は、地方税法に定める年限を超え、6 年前~20 年前分を対象としている。
しかしながら、地方税法の規定を超えた還付を行う必要があるのか不明である。少な
くとも納付については時効にかかり、原則として 5 年を超えての徴収はできない。
補填金要綱は、平成 6 年度に、すべての納税者に課税明細を送付することになった際、
各市町村で定めることとなったとのことである。明細送付が開始された当初、遡っての
対応を想定したためと思われる。しかし、毎年の送付が継続されている現在、必要性の
ある案件は数も少ない。また、法の範囲を超えての還付であり重要性もある。したがっ
て、個別に議会に付すことで制度そのものは不要と思われた。制度の必要性につき検討
されたい。
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第2章
Ⅳ.固定資産税
②制度の条例化
制度を存続する場合でも、制度を条例化する必要があると思われる。
この補填金支払要綱は、要綱という性質上、庁内の内部規定である。この要綱が成立
した当時、要綱についての議会の承認が為されたか否かは確認できなかったが、地方税
法に定める更正による還付対象期間を超えて還付を行うためには、地方税法により個別
に委任された各自治体における個別規定、議会の議決を経た条例により支出根拠を定め
るのが本来と思われる。
もちろん、各年度において補填金還付のための予算又は決算として、各支出金額につ
き議会の承認は得られている。しかしながら、上記補填金還付実績からも見受けられる
ように還付の金額は多額であり、立法機関の個別規定ではない内部規定により補填が為
されることは適当でない。
なお、周辺市町村にも問い合わせたところほとんど同じ内容の要綱が存しており、同
時期にほとんどの自治体で同様の要綱を定め、これに応じて運用がなされていると思わ
れるが、個別の案件に応じて弾力的に対応できるよう議会で規定を定めればよいことで
あり、いずれにせよ内部規定のみによる運用が市民の納得を得られるか疑問である。
③利息相当額還付の必要性・利率
補填金要綱第 3 条第 3 項は、
「利息相当額は、還付不能金の納付のあった日の翌日から補填金の支出を決定した
日までの期間の日数に応じ、当該還付不能金の額に年 5 パーセントの割合を乗じて
計算した金額とする」
と規定している。
上記還付実績表の「加算金」がこの利息相当額に該当する。しかし、そもそも利息相
当額の返金は必要か。上記のとおり、本税の還付自体特例として認めているものであり、
利息まで付ける必要があるとは思えない。
平成 20 年補填金返金実績によれば、例えば平成元年 4 月分還付金 9,000 円に対し利息
相当額 8,674 円と、年数が多くなるため還付金と殆ど変らない金額の利息が支払われて
おり、3 年間合計では利息だけで 1,018 千円が支払われている。必要性の検討が必要と
考える。
また、仮に利息相当額を還付するとしても、年 5%は高率ではないか。平成 18 年~20
年の本税延滞金、還付加算金の利率は下記のとおりである。
平成 18 年
年 4.1%
平成 19 年
年 4.4%
平成 20 年
年 4.7%
還付が必要としてもせめて本税の延滞金、還付加算金の利率を超えないよう、調整が
必要と思われる。
82
第2章
Ⅳ.固定資産税
【補填金支出状況(指摘及び意見なし)】
平成 20 年度の補填金申請案件につき、補填金支出の実施がなされているか確認した。
振込用紙への記載、振込の実施は全て行われており、支払われていないものは無いこと
を確認した。
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第2章
Ⅳ.固定資産税
12.本庁と各区の意思及び方針統一
概要説明
浜松市は、平成 17 年 7 月 1 日に 3 市 8 町 1 村が合併し、平成 19 年 4 月 1 日に政令指
定都市となり、同日に 7 区の行政区が置かれ、現在に至っている。
監査結果
【意思及び方針の統一(意見)】
7 区のうち、3 区の税務課を訪問し、固定資産税関連業務の状況を確認したが、旧浜松
市と合併した市町村とでもともと現地調査方法等が異なっていた。各課の長、各課の担
当毎に連絡会などが設けられているが、意見をくみ上げて改善、実行という形というよ
り本庁の方針を伝えるという形のようである。
業務の効率化、合理化のためには、執行方法が統一化され、かつ個別の事案に対応で
きる体制が必要と考える。例えば、本庁にて意思及び方針の統一を図るべく現場の状況
を確認する、現場の意見を吸い上げ実行する体制を造る、また意思統一がしやすいよう
区の数を見直すなど、検討が望まれる。
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