Comments
Description
Transcript
17「子どもの足と病気」
東 順子の症例研究 №17「子どもの足と病気」 (平成 16 年 10 月 10 日の日本セラピー協会田園調布教室「からだ講座」における講義録) Ⅰ はじめに インターネットで、こんな記事を見つけました。 【足が痛い…母親が気づいたこと】 あるお母さんから聞いた話です。 小学校2年生の男の子が学校から帰ってくるなり、「あー疲れた」と真っ赤な顔をしていいま した。いつもの下校時間より遅かったので、「いっぱい遊んだからでしょう、誰と一緒に遊んだの」 などと会話をしてしばらくすると子どもが足が痛いといいだしました。どこが痛いのと聞くと 足の甲のあたりが痛いようなので、少し休んでいなさいといって夕食の準備にいきました。 夕食の時間になり、食卓につくと子どもの食べるペースが遅いので、どうしたのと聞くとやっ ぱり足が痛いといいだし、どうにか食べさせて、夕食の片づけをしてから部屋で横になってい る子どものそばに座りました。 すると子どもが目に涙をためて、「足が、痛い」と訴え、あっという間に両目から涙が溢れて きました。私はとっさに足をさすっていました。しばらく足をさすりながら子どもの顔を見ている とだんだんとゆったりとした気持ちになり、学校で何をして遊んだのかなどを聴くことができ ました。 足をさすってしばらくすると私も子どもも何となく落ち着いてきて、子どもに「足はまだ痛い の」と聞くと子どもが「痛くなくなったよ」とやや明るい声でいいました。よかったねといったの ですが、何となく足をさすっていたくてしばらくさすってあげました。 ちょっとした出来事だったのですが、ここしばらく、子どもの話をゆったりとした気持ちで聞 けていなかったなあと思いました。 このお母さんがいうには、 「シップでも貼ってすぐに寝なさい」といいたかったのですが、 夕食の準備があったのでいいそびれてしまったそうです。でも結果としてこのことがよか ったのかもしれません。 子どもと素直に向き合えた出来事だと思います。子どもは、親に求めてきます。何を求 めてくるのか。シップを貼って治療をして治してほしいのか。それももちろんあると思い ますが、それよりも、側にきて、一緒にいて話を聞いてもらいたかったのではないでしょ うか。自分のことを大切に思ってほしいと訴えたかったのかもしれません。このお母さん は、とっさに子どもさんの足をさすったそうですが、母親の純粋な愛情だと思います。足 をさすってもらって手をかけてもらってこのお子さんは安心したのだと思います。忙しい ことを理由にして、「もの」を与えることで済ませてしまい、親が、子どもに手をかけて、 1 時間を使って向き合う大切さを忘れてしまいがちになっていることを教わったことでした。 このお話の中では、 「足をさする」ということをスキンシップの一種ととらえていて、た またま「足」だったのかもしれません。男の子が痛いのが手だったら手をさすってもよい し、お腹だったらお腹でもいいわけです。それでいいと、私も思います。 要するに、ゆっくりと時間をかけて「さすってあげる」 「触ってあげる」ことが、特に子 どもの場合は大切なのではないかと思います。 本当に、近ごろの子どもたちは大変なストレスの中で生活しているようです。ストレス が問題行動として現れることもあるし、からだの症状として現れることもあります。そう いうとき、親としてもいろいろな方法を一緒に考えて解決の道を探すわけですが、ひとつ の方法として、 「お母さんが一緒に寝てあげる」というのがあるそうです。高校生とか、大 学生でもです。 「え~!」と思うかもしれませんが、不思議と落ち着くそうです。 足の施術は、さまざまな健康効果があります。でも私は、子どもを対象にした場合は、 精神的な効果をより重要視したいと思います。実際、子どもの足は発達途中で骨も柔らか く、あまり強く揉むことはお奨めできません。ですから、本格的な施術でなくてもいいの です。お母さん、お父さんがじっくり時間をかけて揉んであげることに意味があると思い ます。むずかしい話はしなくてもいいのです。ヘタに話をすると、つい言い争いになった りして、かえってややこしくなります。黙って足を揉んでみてはいかがでしょうか。 お母さん、お父さんもお疲れでしょうが、子どものほうがもっと疲れているかもしれま せん。からだだけでなく、心まで。癒してあげられるのは、施術者よりも、ご両親だと、 私は思います。 今回は、子どもの足の発達について勉強することと、子ども特有の病気(症状)をいく つかとりあげます。そして、病気と足との関連についてもお話したいと思います。 Ⅱ 子どもの足 どもの足 Ⅱ‐1 Ⅱ‐1 子どもの足 どもの足の成長 生まれてすぐの赤ちゃんの足は、まだ配列ができているだけで、実はやわらかい軟骨状 態です。それが成長にしたがって、立つのに必要な部分からカルシウムが蓄積され、骨へ と成長していくのです。これを「骨化」といいます。骨化が完全に終了するのは 18 歳頃で、 人生の 4 分の 1 から 5 分の 1 の長い期間をかけて、人間の足は完成するのです。 次のページの表のような過程をたどって、子どもの足は成長します。 2 図‐1 足の成長 図‐3 土踏まずのアーチ 土踏まずのアーチの まずのアーチの成長 子どもの足の成長は 1~2 歳半くらいまでは 半年で約 1cm、それ以降は半年で約 0.5cm のペ 図‐2 足根骨の 足根骨の成長 ースで大きくなっていきます。 足根骨(図‐2 参照) 参照) 歩き始める 1 歳頃の足根骨は 4 つ(踵骨・距 骨・立方骨・第 3 楔状骨)で、足根骨が全部そ ろうのは 4 歳を過ぎた頃です。また、最初は一 つ一つの骨が小さく、離れ離れでできていくの で、この頃の子供の足は非常にもろい状態なの です。 このように赤ちゃんの足は軟骨部分が多く柔 らかいため、足に合わない靴でも履けてしまい ますが、結果として足の正しい成長を阻害する 要因になります。赤ちゃんの靴は大人以上に大 切で、かかとのしっかりした靴が必要です。 図‐4 子どもの足 どもの足と大人の 大人の足 足のアーチ(図‐3 参照) 参照) 全身を支え、いろいろな運動に推進力、つま 3 り弾みをつけたり、衝撃を和らげるのに大切なのが足のアーチで、大人になると 3 つのアー チでからだを支えています。 このアーチも、生まれたての赤ちゃんにはほとんどありません。厚い脂肪に被われており、 成長にともなって脂肪がとれ、骨が形成され、そしてアーチができてくるのです。このアー チ形成が始まるのは 3 歳頃で、足の趾をしっかり使って運動することでアーチの発達が促進 されます。大人のようなアーチに近づくのは 6~7 歳です。 子どもの足 どもの足と大人の 大人の足のバランス(図‐4 参照) 参照) 足の長さを同じにしてみると、子どもの足は大人の足に比べて、 ①足幅が広い②指の部分が扇形である③土踏まずが未完成 などの違いがあります。 Ⅱ‐2 Ⅱ‐2 子どもの足 どもの足の変型 大人の足に比べ、軟骨部分が多く柔らかい子どもの足は、外的圧力に弱く変形しやすい、 デリケートな足です。靴がきつすぎたり、ゆるすぎたり、運動不足だったりすると、正常 な発達が阻害されるだけでなく、いろいろな症状の原因にもなります。 子どもの足をチェックすると、趾の変形や「浮き趾」が多いのに驚きます。以下は、靴 メーカーの“MIZUNO KIDS”のデータです。 小学 5・6 年生の足を調べると… ●内反小趾を含む第 5 趾の変型(図‐5) 188 足(94 人)のデータ 20 足 24 足 35 足 57 足 ●第 5 趾の完全な浮き趾(図‐6) 188 足(94 人)のデータ 4 17 趾 19 趾 30 趾 29 趾 幼稚園児の足を調べると… ●趾の変型…193 人 386 足のデータ(図‐7) 外反母趾 10 足(2.6%) 第2趾 7 足(1.8%) 第3趾 49 足(12.7%) 第4趾 200 足(51.8%) 第5趾 279 足(72.3%) ●浮き趾…200 人 400 足のデータ(図‐8) 第2趾 8.0% 第3趾 3.7% 第4趾 第 2 趾~5 趾:浮き趾 第 4 趾・5 趾:浮き趾 第 2 趾・3 趾:不全接地 全接地(正常) 18.4% 14.9% 11.4% 不接地 18.4% 不全接地 第5趾 0.0% 51.7% 20.0% 22.7% 40.0% 60.0% 80.0% 100.0% なぜ浮 なぜ浮き趾がおこるのか? がおこるのか? 浮き趾の主な原因は、直立したときの足裏にかかる荷重の重心が後方(踵寄り)にある ためです。足に合わない靴や、運動不足のため、足趾で踏ん張っていないということです。 なぜ浮 なぜ浮き趾ではいけないのか? ではいけないのか? 足裏全体でからだを支えられていない状態なので、からだのバランスが悪いといえます。 踏ん張りが効かないので転びやすく、かけっこも遅いなど、子どもの運動能力にマイナス の影響があります。 また、趾が浮いた姿勢から動き出す際、趾が接地するまでに 0 コンマ何秒かの遅れが生 じるので、スポーツ選手などでは、それがタイムロスとなります。たとえば陸上競技では 5 記録に、サッカー選手では一瞬のボールの競り合いなどで不利です。 Ⅱ‐3 Ⅱ‐3 子どもの足 どもの足の変型を 変型を防ぐために 正しい靴選 しい靴選び 靴選び ○1~3 歳…足裏全体で着地しやすい、かかとの安定しやすい靴。素材がやわらかく、足の 負担にならない靴。 ○3~7 歳…はだし感覚で足趾が使いやすく、屈曲性がよい靴。 ○7~10 歳…クッション性がよく、アーチサポートのある靴。 ○足長の成長速度(3~7 歳で年間 8mm~1cm)と、つま先の余裕(5mm)を考えると、 年間 2 足は買い替えが必要です。 ○ヒールカップ…踵を包み込むような立体的な形状で、踵をしっかりと安定させる。 はだし教育 はだし教育について 教育について 足は感覚器官であり、子供の頃からしっかり刺激することで、脳を活性化し、成長を促 進します。足趾の力をつけ、運動能力も向上させるでしょう。そのため、子どもたちをは だしで育てようという「はだし教育」に取り組む幼稚園や保育園が増えたのはご存知でし ょう。しかし、最近になって、 「はだし教育」に疑問を投げかける意見が多くなっています。 というのは、硬いフローリングの床や、舗装された運動場で、はだしでとんだりはねた りするのは、骨や関節に負担がかかりすぎるということなのです。たしかに、きれいな砂 場や、やわらかい土の上で遊ばせるのが本来の「はだし教育」だと思います。 はだしに適した環境かどうかも、考えてあげる必要があります。 Ⅲ 足からみるこどもの健康状態 からみるこどもの健康状態 Ⅲ‐1 Ⅲ‐1 むくみ むくみにもいろいろなタイプがあります。大人の場合は運動不足や冷えが原因で静脈や リンパ管の流れに滞りがある、というパターンがほとんどですので、必ずしも急を要する 症状とはいえないのですが、子どもの脚や顔にむくみがあったら、即病院です。 子どものむくみの原因として、まず考えられるのは、ネフローゼ、急性腎炎などの腎臓 の病気です。腎炎の場合は、血液のろ過装置である腎臓の糸球体の働きが悪くなり、尿と して体内に水分が出せなくなり、むくみます。ネフローゼの場合は、腎臓の異状によって 血液中のタンパク質が尿中に流れ出します。血液中のタンパク質が減ると、水分を引き止 めておけなくなり、水分が血管外にしみだし、むくみます。 また、心臓病で、心臓の機能が弱まると全身の静脈の圧力が高まり、水分が血管外に出 てしまうので、むくみが生じます。 6 <むくみチェック> むくみチェック> 子どもの場合、大人と同様のむくみが生じることはまれで、 むくみが見られたら、まず腎臓の障害、次に心臓の障害を疑 うべきです。 子どもの足部は、未発達の段階では脂肪に被われていて、 むくみと見分けにくいのですが、すねのむくみチェックで判 10cm 定できます。 腎臓の障害の場合には、やがてまぶたがはれぼったくなり、 からだがだるくなるなどの症状が出て気づくのですが、でき るだけ早く治療を開始したほうが治療効果が上がりますので、 ふだんから足を観察しておくことが大切です。 すねの前側の、足首から 10 センチくらい上の骨の上の部分に手 の親指を 2 本重ねてゆっくりと押していきます(骨は痛いので、ガ ツンと押さないこと)。これ以上いけないというところで 10 秒止 めます。そしてゆっくり親指を離します。親指のあとが大きくくぼ んで、なかなか元に戻らないようなときは、むくみです。 図‐ 9 むくみチェックの位置 むくみチェックの位置 Ⅲ‐2 Ⅲ‐2 趾の異常 「Ⅱ‐2 子どもの足の変型」でご紹介したような、趾の変型や浮き趾がある場合には、反 射区からみると、首から上のさまざまな器官の異常が考えられます。趾が変型していると いうときには、おそらく靴によって圧迫を受けているのでしょうが、どの趾にも共通する のは【2 前頭洞】の反射区で、頭痛やイライラ、集中力がない、鼻炎などが考えられます。 ほかには、変型している趾によっては、鼻、目、耳、喉まわりのトラブルになりやすいの で、できるだけ早く原因を取り除くようにしましょう。 子どもの足は、変型の原因を取り除けば、正しい形に成長しますので、早い段階での対 処が何よりも大切だと思います。 重症の場合は、当然のことですが整形外科を受診するとか、シューフィッターのアドバ イスを受けることもよいと思います。 Ⅲ‐3 Ⅲ‐3 足首から 足首から脚部 から脚部の 脚部の異常 子どもの足は必ずしもまっすぐではありません。図‐1 に示したように、変化しながら成 長しますので、お子さんが現在どの段階なのかを考えながら、異常なのか正常なのかを判 断します。 ただし、正しい姿勢や歩き方を小さいうちから教えておくのは、これからの長い人生を 健康に暮らすために、非常に大切なことだと思います。 7 歩き方や姿勢が、私たちの健康に大きく影響しているというのは皆さんご存知のことと思い ます。ところでこの歩き方、立ち方、座り方、走り方といった動作を、私たちは先天的に知ってい るわけではありません。教育によって身につけるのです。 江戸時代の人は、私たちとはまったく違う歩き方をしていたそうです。どちらかの片足が常に 前に出ていて、斜め横を向いて歩くのです。走り方にいたっては、知らなかったそうです。私たち はスポーツとして走り方を学習したのですが、江戸時代はスポーツという発想はなかったでしょ うから。 昭和 27 年生まれの私は、体育の時間に「キヲツケ」「ヤスメ」「マエヘナラエ」「マワレミギ」 「マエヘススメ」なんてさんざんやりましたが、最近はあまりやらないのだそうですね。そのせい でしょうか、近ごろの若い人は歩き方、立ち方、座り方がヘタです。その結果、足首が曲がってい て O 脚であったり、猫背であったりします。健康状態もあまりよくありません。 「立つ」というのも、意外に難しいもののようです。私は講師のトレーニングで思うのですが、 正面を向いて「すっく」と立つというのができない人が多いです。 バレエをやっていた人は立ち方がきれいです。修行を積んだお坊さんも立ち方がきれいで す。 大人になってからでも治りますが、できれば小さいうちから、幼稚園とか小学校で教えてくれ るといいのですが。 Ⅳ 子どもの病気 どもの病気 小児科全般をとりあげることはできませんので、施術者が知っていたほうがよいだろう と思われる病気をいくつかとりあげます。 Ⅳ‐1 Ⅳ‐1 ADHD 注意欠損( 注意欠損(欠陥) 欠陥)多動性障害 なぜか最近増えている病気です。教育現場では大いに問題になっており、みなさんも耳 にしていると思います。 注意欠陥( 注意欠陥(欠損) 欠損)多動性障害 ADHD = attention deficit hyperactivity disorder 注意不足( 注意不足(欠陥) 欠陥)障害 ADD = attention deficiency [deficit] disorder ADHD の症状 集中力に欠け、衝動的で、落ち着きが無く、学校教育現場で問題になることが多い。特に程度 のひどいものは「ADHD」という症候群として治療の対象になることがあります。 俗に「多動症」「ハイパーアクティブ」ともいいます。 多動の顕著なもの:注意欠陥多動性障害( ADHD ) 多動性の目立たないもの:注意欠陥障害( ADD ) 症状が軽い場合、単に性向の問題(「だらしない」など)として看過されやすい傾向があります。 なお、あくまで“この範囲の症状を ADHD と呼ぼう”ということであって、ADHD=1種類の病気と いうことではありません。“熱が出る症状”や“咳をする症状”の原因にはいろいろなものがあるように、 注意欠陥という症状をもたらす原因にはさまざまなものがあります。 8 脳の性質や遺伝要因で起きるものは ADHD、ADD とされますが、似た症状をもたらすものとして 睡眠障害、タバコの煙、食品、人間関係のストレスなどが挙げられており、それらの原因を解消する ほうが ADHD、ADD として治療するより適切なことがあります。 リタリン(商品名) Ritalin =塩酸メチルフェニデート 注意の拡散を抑えて集中力を出すために ADHD の子供に投与されることが多い、麻薬のコカイ ンのような特性を有する向精神薬。依存性が強く耐性もあり、だんだん量を増やしていかなければ ならないこともあります。 アメリカでは、毎日保健室で問題児にリタリンを飲ませてから授業を受けさせる、という光景がかな り日常化しているそうです。 ADHD の中には単に睡眠障害を治療するだけで快癒するものもあるわけで、安直な子供への向 精神薬処方について危惧する意見もあり、賛否両論です。 ADHD 症を有する子供達は、ほとんどの場合大人になっても症状が続くので、仕事をする能力 に支障をきたします。 ADHD の行動パターン 行動パターン (表‐1) 注意力散漫 1 勉強や仕事や他の活動において、注意深くできなかったり、自分の誤りをほとんど気にしない 2 仕事や遊びや活動において、注意力が続かない 3 人の話に耳を傾けない 4 ほとんど指示に従わず、勉強、仕事、職場で与えられた任務を最後までやり遂げることができない 5 組織的な仕事や活動がほとんどできない 6 精神的努力が必要な仕事をすることを避けたり、嫌ったり、気が進まない 7 鉛筆など仕事や活動にとって必要な道具をよく失う 8 車のホーンのかん高い音や鳥の飛行などの外部からの刺激によって、簡単にかき乱される 活動亢進、衝動的行動 1 よく席で手や足をそわそわさせたり、身をよじったり、落ち着きがない 2 必要がない時に走ったり、その辺をよじ登ったりする 3 落ち着きがなく、教室などで、すぐに席を離れる 4 レジャー時に、みんなで楽しむことが難しい 5 絶えず動いていて、車に追い込まれるように過度に動いている 6 よく過度に話す 7 最後まで質問を聞かずに答を言ってしまう 8 一列になって待つのが難しい 9 よく他人の邪魔をしたり、人の話に割り込む 米 国 精 神 医 学 会 (APA) が 出 版 し た 「 The DIAGNOSTIC AND STATISTICAL MANUAL OF MENTAL DISORDERS IV(神経攪乱の治療と統計の手引き書 IV)」より 9 ADHD 診断のための 診断のための付加基準 のための付加基準 ( 表‐ 2 ) 1 これらの行動は、7 歳より前の幼い時期から始まっていなければならない 2 子供のこれらの行動は、同じ年代の他の子供達よりもはっきりとしていなければならない 3 特にこれらの行動は、私生活、学校、家庭、職場などの社会的環境の少なくとも 2 つ以上に おいて、実際に障害が発生していなければならない。例えば、たとえ学校で過度に活動的で あったとしても、他との関係がうまく機能しているのであれば、ADHD 症候群と診断されない 米 国 精 神 医 学 会 (APA) が 出 版 し た 「 The DIAGNOSTIC AND STATISTICAL MANUAL OF MENTAL DISORDERS IV(神経攪乱の治療と統計の手引き書 IV)」より ADHD 症の要因 1)遺伝と環境 ADHD 症の原因はよくわかっておらず、遺伝的性質と環境要因が重なったものと考えられていま す。最近の研究は、出産前における、鉛、たばこの副産物、アルコールへの曝露に焦点が当てら れてきました。食品着色料が子供達の ADHD 症を悪化させること、栄養不良が ADHD 症の一因と なること、さらに最近の研究では、殺虫剤や、特に甲状腺ホルモンに影響する工業用化学物質へ の低濃度曝露が関与する可能性があることが示されました。そして、これら全ての要因が互いに関 係し合うことが重要な要因だと考えられています。 2)栄養不良 アメリカ合衆国の ADHD 症を有する子供のほとんどが栄養不良であり、栄養不良は ADHD 症を 引き起こす可能性があると考えられています。 3)食品着色料 これまでの研究から、食品着色料が子供の ADHD 症を悪化させる可能性があると考えられてい ます。1976 年における、6- 11 歳のアメリカの子供達に対する調査では、平均 76mg/日の食品着 色料を摂取していることが明らかになっています。食品着色料の生産量は年々増加しており、現在 では 1976 年時点における食品着色料の生産量に対し、約 50%増加しています。 4)内分泌攪乱化学物質(環境ホルモン)の関連性 内分泌攪乱化学物質による人体への影響は、発癌、生殖と発達系への影響、神経系への影響、 免疫系への影響などが疑われていますが、かつて絶縁油や熱媒体として用いられたポリ塩化ビフ ェニール(PCBs)や、かつて流産防止用に用いられたジエチルスチルベストロール(DES)など一部 の有害化学物質を除き、十分な確証が得られておらず、今後の研究が重要とされています。 しかし、食用油に混入したポリ塩化ビフェニール(PCBs)中に含まれていた、ジベンゾフラン (PCDFs)やコプラナーPCBs が原因とされる、台湾の油症事件で生まれた子供達の IQ が低かった ことや、ADHD 症の中で甲状腺に異常を有する子供の割合が正常者に比べて 5 倍も高かったこと などの間接的な証拠から、ADHD 症の要因の 1 つが、内分泌攪乱化学物質を含む環境汚染化学 物質である可能性が疑われています。しかし、研究データが少なく、断定はできない状態であり、 今後の研究が必要とされています。 10 ADHD とアダルトチルドレン アダルトチルドレンの育つ過程で、ADHD であったということはよく聞くことがあります。しかし、子 どもが ADHD であったとしても、親がなかなかそのことに気づけません。現在でこそ情報が流通す るようになって、ADHD を知ったという人もいます。 育てていく中で子供が ADHD とわかれば、ADHD の育て方があるのですが、気づかずに育てた とするとアダルトチルドレンも併発する恐れがあります。 悪循環の例 ADHD→無理な躾→心に傷を負う→アダルトチルドレン⇔ひきこもり⇔トラウマ(心 的外傷)→心的外傷後ストレス障害( PTSD )→多々の神経疾患を併発 良い循環の例 ADHD→子供に合わせた躾→のびのび育つ→学問や知識の発達→人に貢献す る→学者や発明家→神経疾患を併発しない ADHD は才能に 才能に恵まれた人 まれた人が多い 1)坂本龍馬(1835~1867):一時敵同士であった薩摩と長州を再び結びつけるという発想を思い ついた。 2)レオナルド・ダ・ビンチ(1452~1519):美術史上で数々の名作を残した画家であるとともに、発 明家・建築家・天文学者・音楽家としても一流の多彩な才能をもちあわせていた。 3)トーマス・エジソン(1847~1931):1000件を越える特許を獲得した。 彼ら3人に共通する「天才や英雄たり得た理由」は、世間の常識に何らとらわれることのない発想力 と、一心不乱に目的に突き進む行動力でした。近年、ある研究の結果、3人に共通する精神的な 傾向が子供のころのエピソードから判明しました。3人に共通する精神的な傾向とは「ADHD」つま り注意欠陥多動性障害です。他にもアーネスト・ヘミングウェイやケネディ元大統領も ADHD であっ たと考えられています。彼ら天才たちは ADHD であったがためにその業績を残せた可能性があると いうのです。 Ⅳ‐2 Ⅳ‐2 川崎病 1967 年に当時東京渋谷区の日赤中央病院(現在の日赤医療センター)小児科の川崎富作先 生がこの病気を発表しました。今日、川崎病(KAWASAKI DISEASE)として世界共通の病名で呼 ばれ、全世界の乳幼児を襲っており、いまだその原因は不明です。 川崎病の 川崎病の症状 川崎病は高熱が続き、両目が赤く充血し(目やには出ない)、唇が真っ赤になり、舌がイチゴ状 に赤くなり、喉の粘膜も赤く腫れ、手足や体に大小さまざまな形の発疹が出、首のリンパが腫れて 痛がり、手足が硬く腫れ、手のひらや足の裏が全体に赤くなります。熱が下がる頃、指先の皮がむ ける等の症状が特徴的です。ただし、こうした症状が出そろわない、いわゆる不全型の川崎病もあ ります。高熱のある間は非常に不機嫌で重い病気の感じがありますが、発病から2~3週間を過ぎ ますと症状も軽くなり、血液検査成績も正常となり、もとにもどります。 川崎病にかかる子どもは1歳前後をピークに4歳以下の乳幼児が多く(全体の 80%以上)、男子 11 がやや多いです。再発することが2~3%あります。 川崎病の 川崎病の後遺症 川崎病は全身の血管に炎症を起こす病気と考えられており、もっとも問題となるのは、心臓の筋 肉に酸素や栄養を送る冠状動脈という血管に後遺症が残るかどうかという点で、全患者の約 10% 前後の子どもが冠状動脈障害を残してしまい、冠状動脈が拡張したり、瘤(コブ)ができてしまいま す。(図‐10 参照)しかし、いったん拡張したり、瘤ができた冠状動脈も、自然に小さくなり、正常な大 きさになる場合がほとんどです。非常に少ないケースではありますが、瘤の中で血液の固まり(血栓) ができてしまい血流を塞いだり、瘤の出入り口が狭くなり、冠状動脈が詰まってしまい、いわゆる心 筋梗塞発作を起こし死亡するケースもあります。そのた め、冠動脈に障害が残った場合は血液が固まらないよう に薬を飲み続けなければなりません。しかし、薬を飲み 続けていても、残念ながら狭くなったり、詰まってしまう場 合もあります。こうした例に対してはカテールという管を 入れ、風船を膨らませて押しひろげたり、血管の内側の 肥厚している膜を削る治療も試みられており、また、外 科的治療としてバイパス手術を施行する場合もありま す。 図‐10 川崎病の 川崎病の後遺症 川崎病が発表されてから 30 余年。かかった子どもが将来どのような経過をたどるかは、まだまだ わかっていません。川崎病にかかり冠状動脈に後遺症が残ってしまった子どもはもちろんのこと、 たとえ後遺症がないといわれた場合でも定期的な検査を受けることが大切です。また川崎病では 心臓以外にも全身のいろいろなところに炎症が起きて多彩な症状を示します。例えば髄膜炎、関 節炎、胆のう炎などです。これらの炎症は発病 2~3 週間で自然に治り後遺症を残すことはまれで す。川崎病の急性期の治療はガンマグロブリンの大量療法が主流になっています。しかし、そのガ ンマグロブリン療法をおこなっても、解熱せず、炎症反応が続く例があり、そうした症例に対してど のような治療をすればいいのかが問題になっており、結論はでていません。 現時点における川崎病の最大の問題は、急性期に冠動脈が腫れたのか、腫れなかったのか、腫 れた場合はどのくらい腫れたのかということです。 また、罹患した子どもさんが将来、動脈硬化の 年齢に達した場合、影響がでるのではないかと危惧されています。今後にどのような影響を及ぼす かは解明されていません。 Ⅳ‐3 Ⅳ‐3 夜尿症 小さな子どもがオネショをするのはあたりまえですが、あまり頻繁だと、心配になります。また、小 学校くらいになってもしていると、「大丈夫かしら?」と思います。中学生くらいだと、本人が悩みま す。それ以上だと、社会生活に支障をきたします。でも、どこまでが正常で、どこからが病気なのか 12 というのがあいまいです。私は、中学生くらいの女の子に、小さな声で「(足の健康法で)夜尿症は 治りますか?」と聞かれたことがあり、「大丈夫!気にしないことが一番よ!」などと明るく答えてしま いましたが、実はよくわかっていなかったのです。ごめんなさい。この機会にきちんと勉強したいと 思います。 夜尿症治療のポイント 夜尿症治療のポイント 夜尿の治療で最も重要なことは、夜尿の原因を明確にし、原因に基づいた治療を選択すること です。まず最初に、尿量(特に夜間尿量)が多いための夜尿なのか、膀胱が小さいための夜尿なの か の見極めが大切です。 夜尿の 夜尿の原因分類 1)多尿型夜尿症 尿量が多いためにおこる夜尿です。表‐3 に平均的な小児の尿量を示しますが、昼間の尿量が正 常でも 夜間睡眠時尿量が 5ml/kg以上(体重1kgあたり 5ml以上) の場合も多尿型夜尿症と分 類されます。 夜間睡眠時尿量=[夜尿の量]+[朝一番の尿の量]です。 5ml/kg以上とは、20kgのお子さんの場合で100ml以上、 30kgのお子さんの場合は150ml以上となります。 体重にかかわらず、夜間睡眠時尿量が250mlを越える場合は、 典型的な多尿型夜尿症です。 正常小児の 正常小児の尿量 (表‐3) 年齢 3~5 歳 5~8 歳 8~14 歳 14 歳以上 1 日尿量 500~600ml 600~800ml 800~1200ml 1000~1500ml 2)膀胱型夜尿症 機能的膀胱(ぼうこう)容量(尿を我慢して最大限に尿をためた時の尿量)が 体重1kgあたり7ml 以下の場合です。 つまり体重が20kgのお子さんの場合140ml以下、30kgのお子さんの場合は210ml以下の場 合が 膀胱型夜尿症です。 実際に膀胱の容積が小さい場合と、膀胱自体は小さくないが充分に尿をためることができず 漏 れてしまう場合があります。 3)未熟型夜尿症 排尿機能が未熟なための夜尿です。 夜間睡眠時尿量は多くなく、また機能的膀胱容量も小さくないのに夜尿が続く場合は、 排尿機 能が未熟なための夜尿の可能性があります。 4)その他 一度止まっていた夜尿が、再び始まった場合は二次性夜尿といい、心理的な原因が隠れている ことが多いようです。 13 夜尿症の 夜尿症の重症度… 重症度…すぐに治 すぐに治るかてこずるか 表‐4 は、重症度、つまり、治しやすさ治しにくさの表です。 表‐ 4 夜尿の 夜尿の重症度 1点 2点 3点 年齢 6~7歳 8~10歳 11歳~ 夜尿の頻度 週に数回 毎晩1回 毎晩2回以上 夜尿の尿量 少量(パンツのみ) 中等量(パジャマ) 多量シーツまで 6~9歳 151~200ml 101~150ml 100ml以下 10歳以上 201~250ml 151~200ml 150ml以下 我慢尿量 表の点数を合計して評価します。 軽症(早く治る):4~6 点 中等症(少してこずる):7~9 点 重症(かなりてこずる)10~12 点 生活指導( 生活指導(多尿型にも 多尿型にも膀胱型 にも膀胱型にも 膀胱型にも) にも) “あせらず、おこらず、おこさず”の三原則は、どのタイプの夜尿の治療にもあてはまります。 夜尿の治療は辛抱強く“あせらず”続けることが必要で、本人が寝ている間のことなので“おこら ず”、また中途覚醒は睡眠リズムを狂わせ、 抗利尿ホルモンの分泌を一層低下させるので“おこさ ない”。 主として多尿型夜尿症 として多尿型夜尿症を 多尿型夜尿症を治すためのトレーニング 水分摂取コントロールと塩分の制限----お子さんの自主性にまかせて、無理のない範囲でおこな ってください 1) 水分は午前中に充分とらせます。 今までよりも多めに飲んでもかまいません。昼食の時も、水分は特別制限しません。 2)午後、昼食後からは あまり水分はとらないようにし、のどが乾いても一回に飲む水分は150ml 以内にとどめます。 3) 夕方4時以降は、なるべく水分をとらないようにし、 夕食は早めにすますようにします。夕食の 時の水分は、お茶150ml程度にします。汁物は控え、特に牛乳、みそ汁、フルーツは控えめにし、 午前中にとらせるようにします。 風呂上がりにのどが渇く場合は、うがいをしたり、氷を口に含んだりして、のどを潤すようにしてく ださい。 主として膀胱 として膀胱型 膀胱型夜尿症を 夜尿症を治すためのトレーニング 排尿抑制訓練 排尿を制限し、体重×7ml以上の尿 (例えば体重20kgなら140ml)を膀胱内にためる訓練を おこないます。 具体的な方法は、一日一回(学校から帰宅後が良いでしょう)、尿を我慢して、膀胱内に最大限、 尿をためます。これを繰り返していると、次第に膀胱に尿が多くたまるようになってきます。何mlたま るか記録をつけておきましょう。 腎疾患がある場合はこの訓練は絶対にしてはならないので、医師の指導のもとにおこなってくだ 14 さい。 (膀胱型夜尿症以外のお子さんでも、この方法はある程度有効です) 夜尿を 夜尿を治す薬 1)多尿型夜尿症の治療薬 抗利尿ホルモンの分泌を促したり、膀胱の “閉まり” をよくしたりする薬を用います。それが無効 の場合は、抗利尿ホルモンを用います。ただし水分制限をせずに、この薬を用いてはいけません。 2)膀胱型夜尿症の治療薬 膀胱の緊張を緩め、膀胱容量を増やす薬を用います。 3)未熟型夜尿症の治療薬 未熟型夜尿症を治すのは難しいのですが、薬なしでトレーニングを中心にするか、 漢方薬を用い て時間をかけて治療するか になります。 足の施術と 施術と夜尿症 関連すると思われる反射区は次の通りです。 【3 小脳・脳幹】【4 脳下垂体】:抗利尿ホルモンの分泌調整。 【22 腎臓】【23 輸尿管】【24 膀胱】【尿道】血液のろ過機能の調整、蓄尿機能の改善、排泄反射の改 善など。 心身のストレスを解除するためには、【20 腹腔神経層】【25 小腸】【49 鼠蹊部】【62 坐骨神経】なども 有効です。 水分の制限や、排尿抑制訓練など、本人の努力も必要でしょうが、やはり、ご家族特にお母さん お父さんが、寝る前に足を揉んであげるというのは、精神的にも肉体的にも非常に効果があると思 います。 Ⅴ おわりに この講義のために読んだ資料の中に、「足のうらをはかる」という子供 向けの本がありました。書いた人は平沢彌一郎という人。この人は、は じめ小学校の先生で、戦後間もない昭和 21 年から足の裏の測定を始 めました。はじめは足の裏に墨を塗って足型を取ります。その足型が、 時間によって、動作によって、面積や形が変ることに注目します。 もっと正確に測定するために、光の反射を利用したピドスコープを開 発し、たくさんの足型を取りました。やがて東京工業大学の教授になる のですが、足の裏の研究は、この先生のライフワークになりました。 その中で、足の裏を足先(F)、中間(M)、踵(R)の 3 つの部分に分け、 図‐11 足裏のバランス 足裏のバランス それぞれの面積の比率を比較したデータがあります。 調査に協力したグループは、たとえばオリンピックの陸上選手(候補)31 人とか、幼稚園児 100 人 とか、盲学校の生徒 167 人、工場で立ち仕事をしている人など多様です。 15 表‐ 5 足のうらの面積 のうらの面積のわりあい 面積のわりあい しらべたところ 人数 F M R (原文)M の面積を 1 として、 浜松市住吉幼稚園 100 1.2 1.0 0.9 東京オリンピック候補選手・陸上 31 1.4 1.0 1.0 静岡大学体育科学生 18 1.1 1.0 0.9 104 1.4 1.0 1.1 浜松市東部中学校生徒 57 1.3 1.0 1.1 プロ野球巨人軍選手 25 1.4 1.0 1.1 167 1.3 1.0 1.3 F と R をくらべてみると、子ど ものころは M に対して F と R の面積が少なく、おとなにな 三方原学園 るにしたがって F1.3、R が 1.0 くらいになります。これ は、足の働きが発達すると、 専売公社浜松工場 土ふまずが広くなってくるか 浜松盲学校生徒 84 1.4 1.0 1.9 大阪学芸大学付属幼稚園 63 1.1 1.0 0.9 らです。オリンピックの陸上 選手は F が 1.4 あります。こ れは、足の指を激しく使うからでしょうか。浜松の盲学校で調べた結果は、やはりオリンピックの選 手と同じで F が 1.4 もありました。これは、目の不自由なことから、重心を普通の人より前にかけ、 足の先のほうをよく使うから発達するのだと思います。(略) ここで困ったことが持ち上がりました。年令は 6 才から 18 才までで、他人のものを黙って持ってい った回数が、なんと最低 50 回という少年たち 104 人について調べた結果が、プロ野球の選手の結 果とぴたり同じに出てしまったのです。学会でこのことを発表しますと、口の悪い友達が私に向か って、「はかった数字だけをみると、この少年たちは野球がうまくなるかもしれない。その反対に、 プロ野球の選手たちはみんな泥棒がうまいのかな―」と冗談をいいましたが、そんなことになろう はずはありません。 この少年たちの F が 1.4、R が 1.1 となるためには、なにか必ずそれなりの理由があるに違いない のです。この少年たちは本当にかわいそうで、小さいときに捨てられてしまい、自分のお父さんや お母さんの顔を誰も知らないのです。はだしであてもなくさまよい、おなかがすくと、手当たりしだ いに食べものを盗んでは食べていたのです。誰も助けてくれる人がいないので、なんとかして自 分一人で生きていかなければならなかったので、すばしこくなり、はやくおとなのようなからだにな ったのでしょうか。 わたしはこの 20 年以上も足の裏をはかってきましたが、この少年たちの時ほど悲しいものはあり ませんでした。 「少年たち」とは、表の中の「三方原学園」の子どもたちのことだと思います。まだ孤児や「浮浪児」 と呼ばれる子どもたちがたくさんいた時代でした。でも、この本の中で、「足の趾の変型」や、「浮き 趾」の問題などどこにも出てきません。たくさんの足型が掲載されていますが、どれも現代人と比べ ると、実に健康で立派な足です。 以上 16 参考文献 インターネット「Mizuno Kids」 インターネット「のびのび☆幼児っこ」 インターネット「子育ての医学情報」 インターネット「Asics Kids Club」 インターネット「Far East Research Co.」 インターネット「Adult Children Self Help Group」 インターネット「進化心理学 進化と社会」 インターネット「住まいの科学情報センター」 インターネット「ぬかた小児科クリニック 夜尿症の治し方」 インターネット「川崎病の子どもを持つ親の会」 「足のうらをはかる」 平沢彌一郎/著 ポプラ社/刊 ¥850(昭和 53 年) 「はじめてであう小児科の本」改訂三版 山田 真/著 福音館書店/刊 (価格不明) 17