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ネットワーク・ニュース NO.26

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ネットワーク・ニュース NO.26
ネットワーク・ニュース NO.26
2011年 4月16日発行
発行 心神喪失者等医療観察法(予防拘禁法)を許すな!ネットワーク
連絡先 板橋区板橋2-44-10-203 ヴァンクール板橋北部労法センター気付
e-mail :k[email protected]
郵便振替口座 00120-6-561043
加入者名 予防拘禁法を廃案へ!
Apr 2011
目次
___________________________________
2.20「国会報告」検討会を開催・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
双葉病院事件をめぐって
─〈精神病の日本近代〉という歴史からの問題提起・・・・・・・兵頭晶子・・・・・・・ 3
報告・共同作業所での闘い・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
お知らせ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16
______________________________________
3.11院内集会 破綻した医療観察法
先日行われた、医療観察法の院内集会についてレポートさせていただきます。
まさに、地震のあった日のお昼、3月11日の11時から13時まで、衆議院第2議員会館
で、
「どうした?医療観察法、国会報告」というテーマで院内集会を行いました。
参加者は、
20名から30名程度で、
青森や広島という遠隔からも集まっていただきました。
院内集会を行った目標としては、昨年出された医療観察報告に対する国会報告が、あまりに
表面的なもので、議論が一切なされないままに終わってしまっていたため、もう一度医療観察
法について議論し、その問題点を明らかにし、議員に医療観察法の問題点を指摘していこうと
いうものでした。
当日は、まず弁護士の池原から、医療観察法が抱えている現在の問題点について、①公費
の高額な無駄遣い(一人が入院する場合に1ヶ月で200万以上の予算を使っている、手続き
上の問題が芸院で飲むような長期入院が恒常化しており、大体一人2ヶ月∼3ヶ月は本来必要
のない入院をしている)
、②自殺率が異常に高い、③裁判における審判手続きのうち、2割は誤
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判がある、④再入院の運用が明らかになっ
ていないといった4点を中心に話がされま
した。
その後、精神科医の岡田靖雄先生から、
主に自殺率が高いことの問題点を中心に、
精神鑑定の難しさや限界、医療観察法の成
果が一般精神医療に反映されていない事の
問題点等をお話しいただきました。何度も
患者に自分が犯した罪を見つめ直させ反省
を促す内省プログラムが、治療と言う観点
から見て本当に適切なのかという疑問点が
提示され、それが自殺の原因の一つ
と
なっているのではないかと言うご指摘も頂
きました。また、自殺と認定されるために
は、自殺が唯一の死因でなければならず、
自殺未遂で衰弱して死に到った方などもい
ることを考えると、もっと自殺率は高いの
ではないかと言われていました。さらに、
通院後の自殺や、自殺未遂などについては
全く把握されていないという点もご指摘さ
れていました。
その後、実際に医療観察法で入院した当
事者の方からお話を頂く予定でしたが、残
念ながら、今回は来られなくなったということで、質疑応答などをして終了となりました。
私の感想としては、残念ですが、議員の関心がとても低くなっているなと言うことを痛感せ
ざるをえませんでした。当日お越しいただいたのは、共産党の井上哲士議員の秘書の方のみで
した。今後は、医療観察法の問題を明らかにしていく必要がる事はもちろんですが、議員に対
するアピールとしては、
「医療観察法」に絞るのではなく、精神障害、更には障害に対する社会
の無関心、無関心による社会排除といった大きな枠での呼びかけも検討する必要があるかと思
います。あまりに医療観察法と、専門的にしてしまうと、新人事院も多くなっており、なかな
か関心を得るのが難しいのかなと思っております。
何にせよ、一番重要なのは、継続的に、粘り強く活動を続けていくことだと思っております。
(柳原由以・弁護士)
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2・20 「国会報告」検討会を開催
渡辺乾(連帯労組・成増厚生病院)
2010年11月に行われた「国会報告」の内容に対しての検討会を、2月20日(日)に
ネットワーク、なくす会の共同で開催した。分析とその報告は中島直医師、池原毅和弁護士に
お願いした。
中島医師からは、
「国会報告」で列挙された数字を細かく分析して見えてきた不可解な点、疑
問点が指摘された。簡単な数字の列挙では、一見「うまくいっている」と思えてしまう内容に
なっているが、治療の効果や、かかった期間の妥当性、人員配置の適正などの問題は全く無視
されており、問題点を洗い出すだけのものになっていないとの見解が示された。
池原弁護士からは、指定入院医療機関や保護観察所が退院許可を求めても、裁判所が申し立
てを棄却した事例があること、入院が長期化し新たな社会的入院を作り出している実態などが
問題として提起された。
参加者から出た意見は、
「どの程度の罪の人が対象なのか」
「誤診はなかったのか」
「対象疾患
は何か」
「再犯率は下がったのか」
「法の理念に基づいた運営がされているのか」などの疑問が
出された。
検討会を行った結果、
「国会報告」の内容がいかに形式的で、医療観察法の5年間の運用実態
を明らかにするには不十分なものであるかが再確認された。そして、本当に明るみにしなけれ
ばならい情報を開示させていくことが今後必要であることを全体で共有した。
(中島直さんの論文、
「医療観察法『国会報告』について」は「精神医療」NO.62 に掲載さ
れています・・・・・編集部)
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双葉病院事件をめぐって──〈精神病の日本近代〉という
歴史からの問題提起
兵頭 晶子(歴史学)
2011 年3月 11 日に起きた「東日本大震災」に伴い、ある痛ましい事件が起きた。福島第一
原子力発電所の事故により避難を余儀なくされた、同原発と同じ大熊町に位置する精神科病
院・双葉病院の患者が、搬送に際して必要な医療的引き継ぎが行われず、搬送中と搬送後に、
計 21 人が相次いで死亡したという事件である。
この事件の報道をめぐり、病院関係者から「誤報」を指摘する反論の声が上がったが、そう
した関係者の証言を照合した上でも、14 日以降に開始された自衛隊による搬送に病院職員の付
き添いがなかったことと、同原発で起こった三度目の水素爆発を受け、15 日午前1時に警察の
指示で隣の川内村へ病院職員が避難した際、90 数名の高齢重症患者が現地に「置き去りにされ
た」という最も重大な問題点は、今なお揺るがぬ事実である。
死亡した 21 人の死因は現時点でいずれも不明だが、震災に伴い電気・ガス・水道が停止し
たことや、食料・輸液などが不足していた影響はおそらく少なくないだろう。患者の中には、
一日の全栄養所要量を輸液で補給される中心静脈栄養を受けていた人たちもいたという。そう
した困難な状況のもと、12 日に大熊町役場から派遣された5台のバスで、自力で歩ける人を中
心に、209 人の患者が数十名の職員とともに避難し、関東圏の病院へ無事に転院できたという
経緯などをふまえるならば、最終段階で「置き去りにした」ことだけを取り上げて「患者を死
なせた」と非難するのは、確かに偏っているかもしれない。
ただ、同時に、そうした努力がなされていたからと言って、自衛隊による搬送時に医療的引
き継ぎが行われなかったことと、最終段階で 90 数名の高齢重症患者が「置き去りにされた」
という事実まで、丸ごと免責されていいはずがない。なぜ警察がその場に居合わせ、患者を置
いて避難することを職員らに指示したのか、死亡した 21 人の患者たちが、震災発生時にどの
ような病状であり、何が原因で死んでいったのかということは、震災と原発事故の陰で覆い隠
すことなく、真摯に検証していくことが求められているだろう。21 人の死の前には、それぞれ
にかけがえのない、21 人の「生」が確かにあったのだから。
また、歴史学の立場から見ると、この事件は、百年あまりの日本の近代化において歴史的に
醸成され、蓄積されてきた諸々の矛盾が、震災と原発事故を契機として一気に顕在化したもの
であることが浮き彫りとなる。たとえば、福島県に設立された多数の原発が、関東圏の電気供
給に大きな役割を果たしてきたという事実は、2∼3分おきに走る東京の山手線を動かす電力
が、新潟県の信濃川を犠牲にして造られた発電所から送られていたという事実に象徴される、
社会的格差としての「裏日本」の構図に見事に符合する。いわば福島県も、
「表」としての首都
圏を支えるよう位置づけられた「裏」に他ならないのではなかろうか。今回のように原発事故
が起きた際、その深刻な犠牲を真っ先に被るのは、電気という恩恵を享受していた「表」の区
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域ではなく、
「裏」
として多数の原発を抱えさせられた区域で生活する人々に他ならないことを、
今日の状況は実に露わに示している。
そして、原発の近くに造られた双葉病院は、もう入院の必要がないにも関わらず、様々な事
情で退院することを選べない「社会的入院」者が多い精神科病院だった。他科との格差医療に
晒され続ける精神医療の〈貧困〉に翻弄され、社会からの心ない差別と偏見に傷つきながら、
三十年、四十年もの長きにわたって入院を続け、失意と諦めの内に病棟を終の住処とする社会
.......
的入院者たち。震災と原発事故が起きたとき、彼らはなぜそこに居たのか。なぜ一度は病院職
員らにも置き去りにされ、どんな思いで死んでいったのだろうか。
「福島双葉病院の驚愕実態 患者残して医者が逃げた!」と題した日刊ゲンダイ記事(2011
年3月 19 日)に対して投げかけられた無数のバッシングの中には、
「死んだのはキチガイなん
だから、野放しにしないで正解」などという、あからさまな「精神病」者への侮蔑があった。
この残酷なまでの侮蔑こそ、
「精神病」という病気の意味を、
「どんなはずみで危害を加えるか
も知れない」と言い表されるような〈架空〉の危険と結びつけ、その危険性を殊更に強調して
人々の意識に深く浸透させていった、
〈精神病の日本近代〉という歴史的過程の所産に他ならな
い(兵頭晶子『精神病の日本近代』青弓社、2008 年)
。そしてこうした歴史こそが、今日の医
療観察法へと結実し、今なお、
「精神病」者と精神医療の現場に深刻な問題を引き起こし続けて
いる。今回の事件もまた、これらの問題群と決して無縁ではないことを、先述した「キチガイ」
発言は鮮やかに示しているだろう。
ハンセン病の隔離政策で故郷を追われた病者たちに聞き取りを行った徳永進は、
「隔離」がも
たらす問題性を、次のように述べている。
「ぼくの好きな故郷というのは、例えばらい[ハンセ
ン病]者を、故郷から放り出すということで快い故郷であったのか、と思った。多数の幸福の
ために少数に犠牲を強制し、それによって故郷が平和であったのか、と思った。そんな故郷も、
そんな平和もいらない。ぼくにとって故郷はさまざまな問題を解決できるだけの力を持ち、さ
まざまな問題を抱えた少数の人たちにとってもいい所であり、共に暮らしあえるところであっ
て欲しいと思った。
」
(徳永進『隔離──故郷を追われたハンセン病者たち』岩波現代文庫、2001
年、PP.4-5)
。
同様の命題は、
「精神病」者や原発においても当てはまる。誰かの犠牲や痛みの上にしか成り
立ち得なかったものが 3.11 以前の「日常」だとするならば、その「日常」が揺らぎに揺らいで
いる現在こそ、残酷な偽りに満ちた「平和」と、それを支え続けた多くの「無関心」を根底か
ら問い返し、真の意味で「共に暮らしあえる」未来へと繋いでいかなければならない。双葉病
院事件を、事件のままに終わらせてはいけないのだと強く思う。
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報告・共同作業所での闘い
神谷利行(かもめ工房労組)
精神障害者の通所施設である共同作業所・かもめ工房において労働組合を結成しました。04
年 11 月 1 日に、かもめ工房労働組合準備会として「労働協約について」と題して、要求書を提
出してから 7 年が経過します。通所者、労働者の賃金から、本人の承諾もなく 10%をカット徴
収し、私の方から「社会福祉法 77 条に違反している」と指摘し、苦情処理委員会にて、かもめ
工房の経営上部である「福栄会」福祉法人専務と作業所施設長と本人 3 人で会談をもち、不法
不当性について追及してきました。経営者は「経費」としてカットしているので、その様な権
利主張は認めない。
「20%、30%カットもできる」として、私が 7 カ月の入院後、
「過去 10%カ
ットについて言わなければ再契約する」として再契約を拒否し、解雇してきました。上記の
2011.3.2 付のビラは、2009・7・7 以来のビラの一部です。
「不当解雇を撤回せよ!」又、
「労働協約を勝ち取ろう!」
「不当労働行為だ!」
「かもめ工房労働組合に加入しよう!」と主張し、社会福祉協議会や労働基準監督署、労働相
談所を廻り、不当解雇撤回、10%賃金カット反対を訴えてきました。
(春闘解体に突き進む連合
指導部と日本経団連)で主張している件ですが、民主党・連合政権は障害者を「障がい者制度
改革推進会議」に参加させる事で、挙国一致の民営化道州制推進、社会保障解体を容認させる
観点から「会議」をスタートさせました。この会議には、連合や日本経団連がオブザーバーと
して参加しています。春闘と言っても、作業所に通所している病者は、労働法の適用について
は、社会福祉協議会や労働基準監督署でも「公序良俗に違反しない」とか、
「障害者は能力が無
く、社会控除だ」として、かもめ工房労働組合準備会の主張を認めようとしません。これらは、
「社会参加」を推進する推進会議の路線が、労働者として資本の搾取の下へ投げ出すもので、
病者は、労働者階級と団結を勝ち取って労働者解放を共に闘い取ら無くてはならないと考えま
す。
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ネットワーク・定例会
2011 年5月21日(土)13:00 より
6月18日(土)13:00 より
スマイル中野・会議室 (予定)
スマイル中野・会議室 (予定)
ネットワークのケイタイ電話のお知らせ
・ネットワークとしてケイタイ電話を事務局員が所持しています。
・終日というわけにはいかず、以下の時間帯だけですが、何かありましたら、どうぞお電話
下さい。
080−1984−6604(平日の16:00∼19:00)
・よろしくお願い致します。
「ネットワークニュース」 は、メールでも配信しています
ネットワークニュースをメールで受け取れる方は、郵送費節約のためにご協力ください。
ネットワークの事務局まで、連絡ください。よろしくお願いします。
[編集後記]
3 月 11 日は、僕たちは 11 時より院内集会「どうした?医療観察法、国会報告」を行ってい
ました。終了後、午後 2 時 46 分、突然「東日本大震災」に見舞われました。あまりの被害の
大きさに、いまだに多くの方が苦しい日々の生活を送られていることと思います。震災にあわ
れた方には心からお見舞い申し上げたいと思います。
震災に伴い、原発事故が引き起こされ、改めて危険な「原発」の問題が焦点化され、原発の
廃炉に向けた闘いとともに、これからの課題は多く、現在多方面において支援が急がれなけれ
ばいけない状況にあると思います。とりわけ被災されて現地にとどまられている方、震災及び
原発のため避難所生活を余儀なくされているかた、放射線被害にあわれている方の補償等、問
題は山積しています。
今回は「双葉病院」の問題を、最近研究会で報告をお願いした兵頭晶子さんに寄稿していた
だきました。
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