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年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察: リッジ回帰適用の試み

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年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察: リッジ回帰適用の試み
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年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察 : リッ
ジ回帰適用の試み
宮野, 勝
北海道大學文學部紀要 = The annual reports on cultural
science, 32(1): 67-97
1983-11-05
DOI
Doc URL
http://hdl.handle.net/2115/33474
Right
Type
bulletin
Additional
Information
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Information
32(1)_PL67-97.pdf
Instructions for use
Hokkaido University Collection of Scholarly and Academic Papers : HUSCAP
年齢・時代・世代の効果の
識別についての一考察
リッジ回帰適用の試み
宮
野
勝
1
.課 題
ある被説明変数に対して,年齢・時代・世代は,それぞれどのような
影響を与えているのだろうか。例えば,政治意識を特定する要因は,年
齢だろうか,時代であろうか,それとも世代なのだろうか。(ここでい
う守世代とは, b
i
r
t
hc
o
h
o
r
tのことである。)
実は,年齢・時代・世代という三つの概念の聞に,年齢と時代とを特
定すると世代が特定されるという特別な関係があるため, この間いに答
えることは,容易ではない。 (1)
どの年齢層においても保守化が進行している場合に,背より今の若者
の方が保守的であるとしても,世代の効果であるのか時代の効果で、ある
のかは即断できなし、。また,社会調査で,仮に年齢の説明力が高いとし
ても,年齢効果のためなのか世代効果によるものなのかは不明で、ある。
この三要因のどれか一つに言及するときには,常に他の二要因の存在を
忘れるわけにはいかないのであるが, このままでは三つの効果を識別す
ることができない。
けれども,年齢・時代・世代という三つの概念は,理論的にもデータ
解析のうえでも重要であり,識別不能性を回避する方法が考えられてき
ている。 (2) ところが, これらの方法には,後述するように,それぞれ難
点があり,充分に解決されたとは言い難い。
- 67ー
北大文学部紀要
本稿では,従来の方法のもつ難点を克服し,各年齢・時代・世代の特
性について判定するための一つの方法として,
リッジ回帰の適用を提唱
する。まず,三効果の意味を説明し,従来の方法を紹介し,続いて,
リ
ッジ回帰の適用を試みる。
2
. 年齢・時代・世代の効果
ここで扱う効果とは,ある世代なら世代に属すことによって一貫して
持ち続ける特性をさす。∞
より具体的に,政治意識の保守・革新を例にして述べてみよう。 (4) 政
治意識が被説明変数で,年齢・時代・世代は説明変数になる。 (5)
第一に,年齢の上昇につれて政治意識は保守化する, といわれること
がある。加齢に伴って時代・世代を越えて保守化するならば,
年齢効果
である。(表 1参照)
<表 1
>
強い年齢効果(単調増加)の仮想データ
~
2
0- 2
9
3
0- 3
9
4
0- 4
9
5
0- 5
9
6
0- 6
9
1
9
5
0
1
9
6
0
1
9
7
0
1
9
8
0
2
0
.
W
W.
W
30¥¥30¥¥30¥¥
50¥¥50¥¥50¥¥
¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥
60¥¥60¥¥60¥¥
~70
7
0
7
0
7
0
このとき,高齢化すると既得権益が増えてその擁護にまわるからか,
扶養家族を抱えてリスクを恐れるようになるからか,変化を嫌って安定
を好む生理的ないし心理的傾向が生じるからか, といったより詳しい因
果説明は,本研究の一歩先の課題である。そのような因果究明の前提と
なる,そもそもいずれかの年齢層で著しい保守性や革新性がみられるの
か否か, ということの判定を扱う。
効果には,二十歳代は革新的で三十歳代は保守的,四十歳代は革新的
-6
8ー
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
で五十歳代になると再び保守化するという,いわば縞模様のものも含め
る。(表 2参照)
<表
2
>
強い年齢効果(縞模様)の仮想データ
λ点ご
2
0
2
9
王9
5
0
1
9
6
0
1
9
7
0
1
9
8
0
~.
w
~_
w
¥¥¥¥¥、¥¥、
3
0- 3
9
5
0
4
0- 4
9
O¥ ¥ 3 0 ¥ ¥ 3 0 ¥ ¥ 3 0
¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥
7
0.
-70_
'
7
0_
7
0
O¥ ¥ ¥ 4 0 ¥ ¥ ¥ 4 0 ¥ ¥
4
0
5
0- 5
9
6
0- 6
9
-5
0_
-5
0
5
0
第二に,時代の進行とともに,人々が全体としてより革新的になった
りあるいは逆に保守的な方向に動いたりする場合がある。
それが一回的な出来事の余波であるのか,持続的な趨勢変化に根ざす
のかは別にして,世代や年齢にかかわりなくみられる変化であれば,時
代効果である。(表 3参照)
<表
!
言
並
々
2
0- 2
9
3
0- 3
9
40 - 4
9
5
0- 5
9
6
0- 6
9
3
>
強い時代効果の仮想データ
1
9
5
0
3
0
1
9
6
0
6
0_
1
9
7
0
1
9
8
0
8
0
2
0
O¥ ¥ 6 0
剖
¥
朗
子
¥
曲
ー
¥
¥
二
¥
¥
二¥2272:00:D3i
Jl
1
1
│
¥
¥
¥
¥
60¥¥
3
0
.
.
O¥ ¥ 6 0
第三に,フランス率命の時代に若者だった世代は齢を重ねてもその後
の反動の時代の若者よりも革新的であったとか,アメリカの大恐慌時代
- 69-
北大文学部紀要
に選挙権を得た世代は民主党を支持する割合が高いとか,主張されるこ
とがある。
幼年期の社会・経済環境のためなのか,青年期の社会化が一生持続す
るからなのかはおくとして,年齢・時代に関係なしにある世代に属する
故に帯びやすい特色であるならば,世代効果とよぶ。(表 4参照。時代効
果・世代効果についても,単調な増減のみでなく,縞模様の効果であり
うる。)
<表4
>
強い世代効果の仮想データ
hq
20 - 2
9
- 3
9
1
9
5
0
1
9
6
0
1
9
7
0
1
9
8
0
50_
40
¥ ¥ 3 0
7
0
-50¥¥¥¥4¥¥¥¥
¥¥¥¥¥
6
0
.7 0 ¥ ¥ ¥ ¥
-40
60¥¥70¥¥
\\\\\50~
6
0- 6
9
-司圃
80¥¥40¥¥¥¥50
80
-40
60
70
3 .三つの効果を識別する五つの方法
それでは,政治意識など(被説明変数〕を年齢・時代・一世氏セ説明し
ようとする場合に,どのような方法があるのであろうか。
1
9
7
0年代前半までは,次の二つの方法が用いられてきた。
(
1
)三効果を同時に判定することを無視ないし断念し,二要因以下で判
定する。 C
i
.e
.l
n
g
l
e
h
a
r
t(
1
9
7
7
),統計数理研究所 (
1
9
7
5
))
(
2
)表などから,視察による比較で,一三つーの)効果の大要を半4
定する。
(
i
.e
.I
k
e(
1
9
7
3
))
1
9
7
3年以降,上の方法への批判が現われ,統計手法を用い,かつ,三
効果を同時に判定することが必要だ,と指摘されてきている。そのため
- 7
0ー
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
の方法として,次の二つが提案されている。 (6)
(
3
)一つの制約条件を加えて,多重分類分析で判定する。 (
i
.
e
. Mason
1
9
7
6
),高橋 (
1
9
7
8
))
e
ta
l(
1
9
7
3
),Knoke & Hout(
(
4
)一つの制約条件を加えて,
ログリニア・モデルで判定する。 (
i
.
e
.
Fienberg& Mason (
1
9
7
8
),Pullum (
1
9
7
7
)(
1
9
8
0
)
)
本研究で提起を試みる方法は,次のものである O
(
5
)制約条件を仮定するととなし
リ vジ回帰を適用する。
4
. データ(被説明変数)
五つの方法の適用の仕方と結果とを比較するために,一つの例を用い
る。統計数理研究所の国民性調査より, I日本の国をよくするためには,
すぐれた政治家が出てきたら,国民が互いに議論をたたかわせるより
は,その人にまかせる方がよい」といろ意見に関する項目を使う。 (7)一
この項目を選ぶ理由は, このデータに (
1
)・(
2
)の方法を用いた研究があ
ることと,政治参加に関わる重要な聞いだと思われることとのためであ
る。データは五年おきに集められており, 1
9
5
3・1
9
5
8・1
9
6
3・1
9
6
8年の
四回分を利用する。ただし,高齢者は人口が著しく減少しているので,
6
9歳までの年齢層に限ることにする。
先の聞いに対する答を,ミ賛成ミとそれ以外とに二分し,と賛成ミのパ
ーセントを数値とする。その数値を年齢層・調査時点ごとに求めると,
(
表 5) のクロス表になる。
このとき,横の各行には等しい年齢層の数値,縦の各列には同ーの時
点の数値,そして,左上から右下への対角線上には同じ世代の数字が並
ぶ。年齢は二十歳から六十九歳まで五歳刻みで十区分,時点は五年おき
の四区分,世代は明治十七年生れから,昭和二十三年生れまでの五年毎
の十三区分になる。
- 7
1ー
北大文学部紀要
<表 5>~ 政治家にまかせるか?~賛成の%
占
年
歯f
T
(
I
k
e(
1
9
7
3
) より)
1
9
5
3
1
9
5
8
1
9
6
3
1
9
6
8
(P1
)
(P2
)
(
P
a
)
(P4)
2
0- 2
4 (
A
叫
。
¥¥26¥¥22¥¥22¥
A9 )
2
5- 2
9 (
3¥¥31¥¥24¥¥25
3
0- 3
4 (
A8)
1¥¥32¥¥24¥¥30
3
5- 3
9 (
A
7
)
4
0- 4
4 (
A
6
)
4
5- 4
9 (
A
5
)
44¥¥35¥¥27¥¥26
5
2
3
4
.
'2
4
.
2
5
51¥¥¥¥31¥¥¥¥29¥¥¥¥34
¥
C
1
3
C2
1
C11
CIO
C9
5
0- 5
4 (
A4)
52¥¥46¥¥¥33¥¥29
C
8
5
5- 5
9 (
A3)
51¥¥42¥¥36¥¥34
C
7
6
0- 6
4 (
A
2
)
51¥¥37¥¥47¥¥43
C
6
6
5- 6
9 (
A1)
57¥¥50¥¥35¥¥39
C
5
C1
C
2
C3
C,
5
. 方法 (
1
)一(
4
)の適用
(
1
)統計数理研究所 (
1
9
7
5
) は,年齢・時代の二要因のみにしぼって回
帰式を立て,効果を判定しようとした。結果は,と賛成ョは年齢ととも
に増加し,時代とともに減少するという,年齢効果プラス時代効果(こ
れを (A+P) 効果と記す。以下同様。)とされた。向
(
2
)
I
k
e(
1
9
7
3
) は,二つのコーホートのみをとり出して(表 6)に縮少
P
) 効果の例
しどちらの世代でも減少の傾向にあるから時代による (
だとした。∞(彼は,
l
i
f
e
c
y
c
1e change (年齢効果に相当), i
n
t
e
r
-
g
e
n
e
r
a
t
i
o
n
a
lchange (世代効果に相当), と区別して, a
d
u
l
tchange
と呼んでいる。成人層全体の一定方向への変化で、あるので,時代効果に
相当する。)
η
年齢・時代・世代の効果の識別についてのー考察
<表 6 >二つのコーホートの比較(Ike(1973) より)
一世代
ClO
世代
20-24
(50-54)
AlO
(
A
4
)
25-29
(55-59)
A9
(
A
3
)
30-34
(60-64)
As
(
A
2
)
35-39
(65-69)
A7
(A1
)
c
.
1953
1958
1963
1968
Pl
P2
P3
P4
(
3
)方法(
3
)は,方法仏)や方法 (
5
)も含めた統計的手法の基礎をなすもので
あり,かつ,適合度の判定の仕方に若干の改訂をほどこすことにするの
で,解釈方法の概要(10) を述べ,数式で説明しておこう。
Masone
ta
l(
1
9
7
3
) にならって,一つないしそれ以上の制約条件を
与え,七つのモデルをつくり,各モデルの適合度を比較する。
ただし,
Mason等は,決定係数 R
2 を用いたが,回帰モデルの適合度の比較に
は
,
2
*,F統計量,残差プロット,の三者の方
自由度修正済決定係数 R
が指針として優れているので,
こちらを用いる。結果は(表7)に示し
た。(解釈の詳細は,注帥参照)
<表 7
>
方法(
3
)によるモデルの適合度の比較
モデル番号
説明変数
自性l
皮
決定係数
R
2
自由度修正済
決定係数
R
2
*
F 分布
F1
直
0
.
5
%有意依
3
.
6
残差
Model
1
A
1
9十P
1
3
+
C
1
1
12
3,
1
6 0
.
9
2
8
目
。8
2
6
9
.
0
2 **
Mode12
A
l
9ト1'1
3
1
2,
2
7
0
.
8
6
1
0
.
7
9
9
1
3
.
9 **
3
.
2
8
Mode13
P
l
3十C
1
1
2
1
5,
2
4
0
.
9
0
7
0
.
8
4
9 1
5
.
7 **
3
.
2
5
乱1
o
d
e
l
4
C
l
1
3トA
l
9
2
1,
1
8
0
.
8
7
2
0
.
7
2
3
5
.
1
3
4
*
*
3
.
5
0
時代
Mod
巴1
5
A
l
9
9,
3
0
42
6
0.
0
.
2
5
3
2.
4
7*
3.
45
時代
乱1
o
d
e
1
6
P
l
3
C
1
1
2
3,
3
6
0.
43
5
0
.
3
8
7
9.22**
5
.
1
4
世代 o
r
年齢
1
2,
2
7
0
.
7
2
6
0
.
6
0
'
1
5目96**
3
.
2
5
時代
乱1
o
d
e
l
7
- 7
3ー
北大文学部紀要
結論だけ言えば, (表7)より,時代と世代との (P+C) 効果である。
く数式による説明 1 :方法 (3)>
(i)年齢層
A
i
'時代 P
"世代 Ckの各効果を,a
i,b
"C
k とし,それら
の線型結合によって被説明変数の数値 Y
i
jが決定されていると考える。
平均項を μ,誤差値を e
i
j とすると,
(
1三
玉t
三1
,1三
玉j豆J
)…①
}i
j=μ+at十 b
k十 e
i
j
十C
i
①式を,ダミー変数を用いて表現する。 Ai
,P
,
j
Ck を Oか 1のダミ
ー変数とし,①式と一致するように , 0か 1かを決めることにする。
巴j に対して ,Ai
,P,
j C
i
+
j
l の三つのダミー変数のみを 1とし,他の
ダミー変数をすべて Oにすると,
A1+…+aIA1+b1P1+…+bJP
Y
i
j
=μ+al
+
J
+
C
ICl+…+CKCK+eij
・
・
・
②
となり、,②式は①式に一致する。((表 5) などにおいて , k=i+j-1
が恒等的に成り立つ。)
ダミー変数の値を上のように決めるとき,恒等的に,
I
K
J
呂
ム =l,E1Pj=1,E1Ch=I(K=I+J-1)
が成立する。それ故,
・
・
この A
iP,
j C
k で説明変数行列を構成する
と,その列ベグトノレの聞に,線型従属関係が生じ,例えば
A1=1-(Az+…+A1)
となってしまう
・③
o Pi
,Ck
A
iに関して
・
・
④
についても同様の関係が生じる。これを避け
- 7
4ー
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
るためには,③を②式に代入し,各要因から 1カテゴリーずつ減らして
おけばよ L、。例えば,
Ah
Ph C を消去すると,
j
Yi
( 十α
j+bj+Cj)+(a2-aj
)A2
十 … +(
aI-aj)Ar
j= μ
十
十
(
b2-bj
)P2十 … +(bJ-bj)PJ十
…+(CK-Cj)CK十 eij
(
C
2C
j
)C2
+
・
・
⑤
という回帰式になる。①式のように各要因から 1カテゴリーずつ落と
して回帰分析をおこなうのが,通常のダミー変数回帰である。
(
表 5) の例では,Aj~Ajo, Pj~P4' Cj~Cj3 の 27変数で, A.P・C
の各々から一つずつ落とすので, 27-3=24
変数となる。((
i
)については
Masone
ta
l(
1
9
7
3
) 参殿、)
(
i
i
)ところで,年齢・時代・世代に関しては,⑤式でもなお線型従属関
係を含んでいるので,通常の回帰分析では,解が求まらない。
,Cι
,(
i
, j,k
孟2
)
証明を試みよう。次のような係数をもった Ai,Pi
の線型結合 X を考える。
(j-1
)
, Ck の係数を
(
Ai,Pj の係数を添字より 1小さい (i-1
)
,
c
1-k) とおく。)
+(i-1)Ai十 … +(I-I)AI+IP2十 … 十
+(J-l)PJ十 (ー 1)C2十 (-2)C3+・・+(l-K)CK
X=lA2
+2A3+…
この⑥式は恒等的に Oである。なぜなら,
………⑥
i
jに対応する X
任意の Y
の成分 Xりでは,ダミー変数のうち,Ai,Pi,C
l+
j-1のみが 1で,他は
Oになるので,
X
i
j= (i-1)+(j-1)+(l-i-j+l)= 0
人
x=o
ゆえに,回帰式の説明変数行列を構成する列ベクトル Ai
,Pi
,Ck ,
i
(
- 7
5ー
北大文学部紀要
j
,k孟 2) は,自明でない一次関係式を満足し,完全な共線関係にある。
(証明終)
このために,三効果の識別には,制約条件が 1つ必要になる。飽和モ
デルで、ある Model1においては,⑤式よりもさらに変数を一つ落とし
て分析することになる。(表 5) の例では, 27-3-1=2
3の説明変数に
なる。
ienberg& Mason(
1
9
7
8
),Pullum(
1
9
7
7
)(
1
9
8
0
),
(
4
)方法(
4
)として, F
avis (
1
9
7
4
),Upton (
1
9
7
8
),Haberman (
1
9
7
8
) を参考にして,
また, D
ログリニア・モデルを適用する。
基本的な考え方は, (
表 5) のクロス表の各セルの期待値を求め,それ
を実測値と比較 Lて,独立性についての
t 検定をし,適合的なモデル
を選び出すものである。
七つの各モデ‘ルを(表 8) で比べると,時代と世代との
(P+C)効果
'がよいと結論できる。
のモデル 3
<
表8
>
方法仏)によるモテ、ノレの適合度の比較
モデル番号
説明変数
自由!文
t
!
χ2.色
'
9十P,
3十 C,
l
1
Modell
' A
1
4
7
.
2
2
Model2' A,
9十P
i
3
2
5
1
3
.
6
8
Model3' P,
3十 C
'
'
1
2
2
1
8
.
6
5
1
2十A,
9
Model4' C,
1
6
1
2
.
2
1
Model5' A
l-臼
2
8
5
2
.
5
8
Model6' P,
3
3
3
1
7
.
2
8
ModelT C
t
1
2
2
4
1
5.
48
ぷ分 :
{
f
iで の 上 1
H
U政 率
.95-.90
.975-.
9
5
.
昔
日5
-.99
.75-.
5
0
(
.
0
0
5以下)
ヰ
.
9
7
5
.95-.90
方法(
3
)・仏)は,方法(
1
)・(
2
)に比べて,検討すべきモデルが,少くとも
7つあることを明示したうえで,各モデルの適合度を検討できる点で,
より優れた方法だといえる。
- 7
6ー
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
6
. リッジ回帰(方法(
5
)
) の提唱
1
)以上では,全体としての,年齢・時代・世代の効果を扱ってきた。
しかし,全体としては時代効果や世代効果がある (P十 C) としても,そ
れは単調な増減なのか,それとも縞模様なのか。また,一定の変化率な
のか,それとも,例えば戦中派と戦後派の聞に大きな断絶があるのだろ
うか。年齢効果が全体としては弱し、としても,それは一貫して弱いのか
それとも 1~2 箇所では裂け目があるのに,平均化されるために隠れて
しまったのだろうか。
このような一段詳しい聞いに答えるには,各要因
カテゴリー (Al~Al0' Pl~P4' Cl~C13)
(
A,P,C
) 内の各
ごとの効果を知りたし、。
2
)方法(
3
)も仏)も各カテゴリーを 1・Oの値をとるダミー変数として扱
っている。そこで,各カテゴリーについて計算される係数から各カテゴ
リーの効果を比較することが考えられる。
ところが,これらの方法では,計算に必要とされる制約条件のおきか
たによって,回帰係数の値は激しく変動してしまう。(表 9参照)
そして, どの制約条件が優れているのかを判断するのは困難である。
他の情報を参考にして制約を課すことが考えられている (
F
i
e
n
b
e
r
g&
Mason (
1
9
7
8
),Rodgers (
1
9
8
2
),Smithe
ta
l(
1
9
8
2
)
)が,その倫u
約が
実際に適当であったか否か,当該データに適切であったか否かを吟味す
る方法がなく,基本的な解決にはなっていないと思われる。
3
)値の変動は何故生じたのだろうか。回帰係数が僅かな説明変数の入
れ替えで大きく変動したことは,多重共線型の存在を推測させる。
多重共線性とは,説明変数行列の中に線型従属またはそれに近い関係
がある場合のことである。説明変数行列が線型従属関係を含むか否かは
説明変数行列のランクの問題と同値であり,また,説明変数行列 X と
転置行列
xtとの積の行列 x
t
xの Oでない固有値の数の問題と同値に
なる。
通常の回帰分析に用いる,最小二乗法による推定では,行列
-77ー
x
t
xの
北大文学部紀要
〈表 9>
方法 (
3
)・方法(
4
)による係数の値
方法 (
3
) (標準化回帰係数)
,
ムェ叫=AlO!日2!P3~P私ニC2IC12=Cl,,1
A2
~
A~A2!A9=Al件叶戸P4!Cl=C2ド12=C日
0
.
6日 0
.
9
0 0
.
2
8 A,
,~ -0.86-2.05
A
(
4
)
法
方
______
0
.
2
30
.
5
8 0
.
41 0
.
2
8 0
,
:
l
4
/ よ-
0
.
1
40.
t
1
0 0
.
3
5 0
.
2
5 0
.
2
9
〆
0
.
7
31
.
79 0
.
5
6 0
.
8
2 0
.
2
8 A2
0.
100
.
1
40
.
3
1 0
.
18 0
.
1
2 0
.
1
5
0
.
0
60
.
6
71
.6
0 0
.
4
6 0
.
6
9 0
.
2
1 A3 A3 0
.
1
300
80
.
1
6 0郎
A.
j
.
j
0
.
0
50
.
5
31
.
3
20
.
4
<
10
.
6
4 0
.
2
3A
目
0
.
0
5 0
.
0
7
∞ O.ω0.00
0.
15 0
.
0
0 0ωO.
0
.
0
70
.
4
41
.
10 0
.
3
7 0
.
5
5 0
.
2
0 A5 A5 -
0
.
0
20
.
3
10
.
6
6 0
.
3
3 0
.
21 0
.
2
6
0
.
8
1 0
.
3
7 0
.
5
0 0
.
2
3 A6 A6 -0ω0.28-
。
ω-0.120
.
5
1 0
.
3
7 0
.
1
7 0
.
2
6
A7
0
.
0
60.
130
.
3
9 0お 0
.
2
6 O
.
:
l
O
0
.
2
3 A8
0
.
0
60
.
0
30
.
2
1 0
.
2
9 0
.
2
2 0
.
2
5
0
.
1
3~ 0
.
1
3 0
.
16 0
.
19 0
.
1
2 A9
Ag -
O
.
ω
.
--0
.ω0.16 0
.
13 O
.
H
A7
0
.
0
30
.
0
20
.
2
8 0
.
3
0 O
.幻
A8 -
0
.
2
6~_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
~
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_~ A,
0
.
0
9.
-.
-.
-.
-.
A,
O O
.
5
4 0
.
0
0_
_
_
_
_
_
_
_
_
_0
.
7
0
.0
.
8
5 0
.
5
5 P, O
.お 0
.
0
5~ 04
3 0
.
3
1 0
.
3
8
P, 0
.
170.
19_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_0
.
2
8 0
.
3
8 0
.
18 P2 0
.
0
50
.
1
4~ 0
1
.8 0
.
12 0
1
.5
Pz 0
0
.
0
50
.
2
3 0
.
1
4_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_0
.
0
50
.
0
5 P3 0
2
0
.
0
300
.
0
70.
16 0
.
0
7
P3 .
5
7____
_
_
_
_
_
_ P,_
__
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_ 0
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
_
0
.
3
1
_
_
_
_
_
_
.
.
.
.
P4 ム
目
目
汗 /
~
.
6
9 1
.8
3 2
.幻 -0
.
1
0
'
-0
.
1
1
C, 0
.
2
3
. 1
.0
0 18
30
.
0
1~ 0
.
2
1 C, 0
目
1
.
70 2日 0
.
0
7~
0
.
13
C2
0
.
2
7 1
.2
6 2
.
3
10
.
0
3~ 0
.
2
4 C2
問
C3
0
.
17 1
.2
6 2
.
4
201
.6-0.ω01
.4 C3
0
.
5
1 1
.
46 2
.
3
3
01
50
.
1
1 O
.
ω
C4
0
.
3
6 1
.
48 2
.
6
6 0
.
0
2 0
.
13 0
.
3
2 C4
0
.
6
3 1
.4
9 2幻
C5
0
.
3
5 1
.3
4 2
.
4
0 0
.
0
5 0
.
19 0
.
3
3 C5
0
.
6
4 1
.4
0 2
.
1
0 0
.
12 0ω0.26
C6
0
.
16 1
.0
3 1
.9
50.
10 0
.
0
7 O
.J
t
l C6
0
.
4
8 1
.
14 1
.7
5 0
.
0
2-0.040.
14
C7
0
.
0
4 0
.
7
8 1
.5
7 0
.
19 0
.
0
2 0
.
0
2 C,
C8
0
.
0
2 0
.
6
4 1
.
300
.
1
7 0
.
0
7 0∞C8
目
0
.
0
4 0
.
0
5 0却
←
0
.
2
7 0
.
7
5 1
.
180
.
0
50.
17 00
3
目
0
.
1
0 0
.
'
40 0
.
9
30
.
2
5 O
.閃 0.
11Cg
Cg .ω0.37 0
.
6
3 0
.
1
10
.
2
90
.
ω
0.ω0.28 0
;
6
80
.
2
0 0
.
110
.
1
0 C1
C1
0 O
0 ←
.
1
2 0
.
3
1 0
.
4
8
.0
.
0
10
.
2
2 0
.
0
2
0
.
0
0 ・0
.
2
2 0
.
4
50
.
0
7 0
.
2
40
.
0
1 Cn 0
Cn .
0
5 0
.
14 0
.
2
30
.
0
20
.
2
6.
.
0
0 O.ω0.
19""0.ω0.25.~ C1
C1
2 0
2 0
3
1
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
-ツ/0.21.
1C1
3
C1
- 7
8ー
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
oに近い固有値が
固有値に 1より小さいものがたくさんある,または
一つでもある場合には,回帰係数の推定値のベクトノレ β のノルムが真
値のベグトル β のノルムより非常に大きくなってしまい,推定値とし
て好ましくなくなる。それで,多重共線性がある場合には, β のノノレム
が非常に大きくなる。
2: 多 重 共 線 性 と 戸 の ノ ル ム >
く数式による説明
(
i
)回帰分析における回帰式を行列表示すると,
⑦
Y=Xs+e
通常の最小二乗推定(以下, OLS と略称)では, β は
,
宅
空 =0
a
β
を解いて
t
β =(XtX)一1X
y
(
i
i
)このとき,真値
…
・
・
・
③
Fと推定値
乗誤差は, (残差分散
σ2
β との距離を L とすると,全平均二
を用いて, )
t
E[D]=E[(β-s)t(
β一
月)J=σ2
tr
(X
X)-1
……・・・⑨
⑨式より, β のノルムの二乗は,
t
E[
βtsJ=
=stβ+σ2tr(X
X)一1
・
・
⑩
と
, 真値 β のノノレムの二乗より, σ2tr(Xt
X)一1だけ大きいことがわ
かる。他方,行列 Xtxの閤有値を}.I>……,}...>0とすると,
⑪
+
-
i
J
ム(XtX)-1=
i=l Ai
- 7
9ー
北大文学部紀要
よって ,x
t
.
xの固有値んに一つでも Oに近い値がある場合や小さい
固有値がたくさんある場合には,推定値 β のノルムは真値 β のノルム
よりもずっと大きくなるであろう。
この場合,sの成分である各回帰係数は,真値のベグトル β の成分
に比べ,絶対値が大きくなったり,符号が逆転したり,大きくずれるこ
ii
)
は
, H
oerl & Kennard (
1
9
7
0a
),C
h
a
t
t
e
r
j
e
e
とが予想される。((
&P
r
i
c
e(
1
9
7
7
) などを参照)
先に用いた 2
3変数の 1制約条件モデル
(
C12=C13) で固有値を計算す
ると,最小は,え 2
3
=
0
.
0
0
0
2
2であり, 1
/A23キ4
5
0
0なので, β のノルムは著
しく大きくなり,そのため , sの成分である回帰係数の値は激しく変動
したと推測される。
4
)多重共線性のあるデータに対して勧められている方法の一つに, リ
1
9
7
0a
),後藤 (
1
9
7
3
),Hocking
ッジ回帰がある。 (Hoerl&Kennard(
(
1
9
7
6
)C
h
a
t
t
e
r
j
e
e& P
r
i
c
e(
1
9
7
7
) 参照)
リッジ回帰は,残差分散を小さく保ったまま,真値 β に近いノルム
を持つ推定値 β* を求める方法である。リツジ回帰を使えば,安定した
推定値が得られる。
説明変数となる年齢・時代・世代の性格からして,多重共線性に悩ま
されざるをえないので,有益である。
く数式による説明 3 :リッジ回帰〉
(
i
) OLSによる推定値 β が一般に使われているのは,線型不偏推定量
の中で残差分散を最小にする推定値であるためである。そこで, OLSの
特徴であり好ましい性質である,残差分散の小ささはできるだけ保ちな
がら,ノルムも小さい推定値を求める方法を考える。
(
ii
)真値
Pの任意の推定値を 6 とする。 OLSの Aを利用すると , b
の残差分散併は,
-8
0ー
。
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
=(Y-Xb)t(Y-xb)
=(Y-x
:
戸)t(Y-xs)+(
bー β)txtX(
,jーβ)
・
・
⑫
β)t(Y,
Xβ) の大きさは一定である。そ
⑫式で,ゅの第一項 (Y-X;
のため,ゆを小さくするには,第二項のみを問題にすればよい。
φ
2
) を一定に保ったまま
ゅの第二項 (
考える
bのノノレムを最小にすることを
o1
/
J
2=件。の条件下で払を乗数として,ラグランジユ乗数法を用い
る
。
FzbLb+-jE(6-A)官 官 (IJ-p)一件。1
・
・
・
・
⑬
として
。
F _
:
, 1
t
=2b十 一 [
2(X
.
t
X)b-2(X
X)βJ=O
o
b - k
-τ
..…⑭
⑭式を解くと,
I
J
=(X
tX+kll一
) lyty
(
l
lは単位行列)
こうして得られた推定値 b を β* とし,
(
i
i
i
)⑮式は, OLS の
…・・…・⑮
リッジ推定量と呼ぶ。
Aについての⑧式に似た形をしている。すなわ
XtX) の対角要素に k を加えた形になっており,
ち,⑧式において (
k=0 のときは,⑧式に一致する。
(
i
v
)具体的に適用する際には,
0三 k三
五 1の範囲のいくつかの h の値を
代入して βJ を求める。 hの m 個の値 kl> …… km に対応して,
リッジ
推定量ベグトルの組 β1へ…, β J が求まる。この中から,何らかの基準
によって適切なものを選ぶことになる。(以上 , Hoerl
1
9
7
9
) など参照)
(
1
9
7
0a
),Chatterjee & Price (
- 8
1ー
& Kennard
北大文学部紀要
【図 1】年齢ダミー変数の R
i
d
g
eTrace
S*
0.40
0.35
0.3目
0.25
0.20
0.15
1
0.10O
.口5
O
.
ロ
ロ
町
ミミご「i
ι
一
一
四
・
・
=
一
一
一
O
.口5
A9
-圃剛同
幽
自.
1
0
ー
口.
1
5
口.
2
0
目.
2
5
0.0
0
.
1
0.2
0.3
0.4
0.5
κ
- 82ー
日.
6
0.7
0.8
0.9
1
.
0
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
【図 2]時代ダミー変数の R
idgeTrace
B
家
目.
(
0
0.35
0.30
0.25
0.20
0.15
0.10
0.05
P2
0.00
同
0.05
0
.
1
0
-0.15
-0.20
。
声.25
0.0
0
.
1
0.20.ヨ
0.4
'
C
.
5
K
- 83-
0.6
0.7
0
,
.80.9
1
.0
北大文学部紀要
【
図3
]世代ダミー変数の R
i
d
g
eT
r
a
c
e
ノ
、
B
*
0.(0
0.3
雪
0.30
0.2雪
0.20
0.15
0.10
ω
=日
0.05
0.00
-0.05
ー
主 主 一:
;
c
t
3
一
一
:
;
;
-
-0.10
-0.15
"
0
.
2
0
同
0.25
0.0
0.1
0.2
0.3
0..
0.5
H
-8
4ー
0.6
0.7
0.8
0.9
1
.
0
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
【
図 4】年齢ダミー変数についての補正図
ー
8
?
s
5
4
F
AI
3.
:
1
A2
A 圃A A
3 国4 7
2
一
一
A 一ム A
可﹁斗
叫
nu'A
明
56
8
同
唱
一
一
一
四=
-2
ョ
,
-(
-5
-6
-7
ー
冒
-9
0.0
0.1
0.2
0.3
0.(
0.5
0.6
K
- 85-
0.7
0.8
0.9
1.0
北大文学部紀要
【
図 5】時代ダミー変数についての補正図
日〉¥¥
?
s
E
4
ヨ
2
。
P2
-2
-3
-4
5
ーE
7
-8
-9
0.0
,
0
.
1
0.2
0.3
0..
0.5
K
-8
6ー
口.
6
0.7
o
.
e
0.9
1
'
.
0
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
【
図 6]世代ダミー変数についての補正図
s
日
?
E
5
4
ヨ
三
一
日
2
I~ ←
B
-2
ヨ
同
"
4
,
s
-6
-7
回
目
-9
0.0
0.1
0.2
0.3
0.4
0.5
K
- 8
7ー
日.
6
日.
7
O
.日 日 .
9
1
.
(
)
北大文学部紀要
7
.
リッジ回帰(方法 (
5
)
) の適用
1
)まず, f
u
l
lm
o
d
e
l として ,Al~Al0,
Pl~P4' Cl~CI3 の全27変数
を用いたモデノレを考え ,k
=
O
.005~ 1. 0でリッジ回帰を試み,
リッジト
レースを描く。
ロッジトレースとは,各 h の値を横軸にとり,対応する各回帰係数
の値を縦軸にとり,各変数について聞を補って結び,連続的なグラフと
したものである。
2
7変数では見にくくなるため,各要因ごとに取り出して描いたのが,
(図1), (
図 2), (
悶3
)であるが,これらは本来は一枚のグラフに描
かれるものである。
標準化回帰係数を用いたが,標準化せずに絶対値での 1単位あたりの
効果を比べられるように,標準偏差で調整したのが, (
図 4)・(図 5)・
(
図 6) である。ダミー変数であるから,後者の(図 4)・(図 5)・(図
6) の組合せで比較した方が意味があると思われる。 (11)
2
)以上の結果から,何が言えるだろうか。
第一に, どのカテゴリーの聞の差が大きいか小さいかをみることがで
きる。いいかえれば,次の三つのことがわかる。
(
i
)
kの値の如何によらず一貫して近い推定値をもっ変数は,被説明変
,A3
数に対して同じような効果を持っと考えられる。例えば,A1-A
z
A
4
' C4
-C
1
Z
C
1
3
0
5,C
7-C
S' C
9-C
1
0,C
(
i
i
)各要因ごとに断絶をさがすことが可能である。例えば,P1/P
Z,Pd
,CZ/C
,C3
/C
,C
/5CSO (
図 7参照)(12)(
1
3
)
P3
3
4
(
i
i
i
)各要因ごとの効果が縞になっているかどうかがわかる。先の例では
年齢・時代の大小の順は単調減少であるが,世代は縞模様の効果がみら
れる。(図 8参照)
第二に,各制約条件の適否を説明できる。例えば, (
表9
)で試みた 6
図 5) よ
種の制約条件のうち,P1=P
2 は不適切な仮定であることが, (
りみてとれる。このような無理な制約の故に, (
表 9) で P1=P
2 の場合
- 88-
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
【
図 7】各カテゴリー間の異同及び大小(【図 4】 【図 6]
で,k
=
O
.
3のときの値を用いた。)
年齢
時代
世代
【
図 8]世代の縞模様の効果(【図 6】で,k
=
O
.
3のときの値を用いた。)
世代
年
1945年
の年齢
イ
i
在
C1
1884-1888(明 17-21
)
57-61
8.067
C2
1889-1893(1珂22-26)
52-56
5.835
C3
1894-189i
:
l
(
明 27-31
)
47-51
1.025
C4
1899-1903(明 32-36)
42-46
5.324
C5
1904-1908(明 37-41)
37-41
5.253
C6
1909-1913(明 42一大 2
) 32-36
0.854
C7
1914-1918(大 3-7)
27-31 -1.666
C8
1919-1923(大 8-12)
22-26 -1.691
C9
498
1924-1928(大 13-昭 3
) 17-21 -4.
C1
0 1929-1933(U白4-8)
l2-16 -4.618
1934-1938(昭 9-13)
7-11 -2.894
C1
2 1939~1943( 昭 14-18)
2- 6 -3.335
C11
C1
3 1944-1948(昭 19-23)
一
-
1
- 8
9ー
-3.771
図
万ミ
C1
/ど
C;
¥ ¥
C4
五
ノ
/
C7
f
¥C
1
1
C
J
1
3
北大文学部紀要
の戸のレンジが -2.05~+2.66 と非常に大きくなったのである。
他方,A1=A
C12=C13 は,適切な仮定であり,それらの
2,
model での
1
Fは ful
rに順位や相対的な大きさの点で、近い値になっている。
第三に,適切な制約条件の組を用いて変数の統合をおこない,モデ、イレ
を縮小することも可能になる。例えば, (図7)の区切り方で A が 5,
Pが
, 3,C が 8の 16-3=13変数モデルでは,R
2=O
.9
2
6,R2*=O
.8
8
8
,
F=24.89と,回帰モデルとしては, (表7)のどのモデルよりも適切な
ものを得ることができる。
3
)ただし,
ワッジ回帰にも欠点はある。第一に,不偏推定ではない点
である。第二に,推定に際して, 0三 ki豆 1の幾つかの値 kh k2,……を
用い,その中から選択するのであるが,適切なあを選ぶための基準に
ついては決着がついていない点である。
しかし,
この二点は,重大な欠点とはされていな L、。最尤推定も一般
には不偏ではないし,
リッジトレースを用いての視覚的な選択も単純な
!要約統計量による選択より好ましいともいわれる。少なくとも,これら
の欠点は,年齢・時代・世代の三効果の概要を知るには, ここでの適用
、例からもみてとれるように,大きな難点とはならないであろう。 (15)
8
.結 論
年齢・時代・世代の三つの効果は,
この三概念の聞に特殊な関連があ
べるために,通常の方法では識別できない。
1
9
7
3年以降,統計的手法による三効果の判定がなされてきてはいる。
しかし,いずれも,何らかの制約条件をデータ解析に先立って設定する
f
にもかかわらず,制約のおき方が適当であったか否かを判断する方法を
示していない。そのうえ,一つないし少数の制約条件をおくだけでは,
なお,多重共線性の問題に悩まされ,安定した推定値を得ることはでき
ない。
本稿で提起したリッジ回帰の適用は,上述の二つの困難を解決しつつ
-9
0ー
年齢・時代・世代の効果の識別についてのー考察
三効果を識別しようとするものである。リッジ回帰によって,制約条件
の恋意性を回避して,
どの制約条件が適切なものであるかを判断できる
ようになる。かっ,多重共線性の問題への解決策となり,その結果,各
年齢・時代・世代の特徴や断絶の有無を,安定した値で推定できる。さ
らに,変数の統合をすすめて,モデルを縮少し,適合度を高めることも
可能になる。
したがって,
リッジ回帰の適用は,年齢・時代・世代の効果を識別す
るための,一つの有効な方法であると思われる。
く注>
(
1
) 安田 (
1
9
6
9
) は,年齢・時代・世代の三効果の判定を,アイデンティフィケーシ
ーン問題の例として紹介し,識別不可能だとしている。年齢・時代・世代の効果
判定は,基本的な推定モデルのままでは,数学的に不可能なので、ある。しかし,
一つの制約条件をおくことで判定できるようになる。(詳しくは
5節の数式の
項を参照)
(
2
) この分野の研究動向および文献を知るには, Ryder(
1
9
6
5
),Masone
ta
l(
1
9
7
3
),
Glenn(
19
7
7
)
,Fienb巴rg& Mason(
19
7
8
)
.Sm;the
ta
l(
1
9
8
2
)などが参考に
なる。また, 1
9
7
0
年代中頃までの研究動向の紹介が,政、治意識への適用例を中心
に,吉田 (
1
9
8
1
) にまとめられている。
(
3
) このような一貫した効果の他に,例えば,
~yder
(
1
9
6
5
)や Glenn (
1
9
7
6
),あ
!るいは, Carlsson& Karlsson(
1
9
7
0
)などが指摘しているように,世代効果が
年齢や時代とともに変化する(拡張すれば,年齢効果も変化する)という, より
複雑なモデルも考えられるが,扱わない。ここでは,一貫して生じる効果がそも
そもあるのか否かを判定する方法を探る。
(
4
) 政治意識の保守・革新の具体的な内容については特定しないが,一例として,政
党支持態度(いわゆる保守政党支持・革新政党支持など)を想定していただけれ
ば十分である。
(
5
) 年齢・持代・世代の効果と総称される中には,高学歴化や職業構造の変化など,
一層具体的な変数が包みこまれていると思われる (Knoke & Haut (
1
9
7
6
)参
照)が,それらとの関係の究明は一歩先の課題であり範囲の外におく。
加
) この他に,中村・鈴木 (
1
9
8
1
) の提案している方法も,一つの制約条件をおいて
解くものである。(中村 (
1
9
8
2
) に詳しい。〕
(
7
) 単一項目についての一回ずつの質問を集計した数字しか入手できないので,信頼
性も妥当性も示せない。それ故,一方法の説明のための例示として用いる。
(
8
) この分析のみ, 1
9
7
3年調査と 7
0
歳以上を 1つにまとめた年齢層とを含んでおり,
- 9
1ー
北大文学部紀要
l
年齢層 1
1,時点 5,と少しデータの範囲は広い。
(
9
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k
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1
9
7
3
)は
, 1
9
5
3年時点に 2
0
ー2
4
歳
, 50-54歳であった二つのコーホートを
とり出した。その理由は.不況と第二次大戦の時期を,、成長期として過ごした
か,成人とじて過ごしたか,という大きな相違を持っと思われるからだという。
帥
l 七つのモデルを,一要因モデル (Mode15~Model 7) ,二要因モデル (Mode12~
Mode14),三要因モデル (Mode11) に分ける。 Davis(
1
9
7
4
)や Upton (
19
7
8
)
にならいつつ,要因数が少ないモデルからスタートして,適合的なモデルの発見
を試みる b
一要因モデノレでは, A要因のみの Mode15は,R
2* も F 値の有意性も低い。
P のみの Mode16,C のみの Mode17では.R2* と F 値は高くなるが,残差プ
ロットをみると,系統的な誤差があり,説明変数が不足していることが明らかに
なるので,これらも排除される O
二要因モデルのうち, (C+A) の Mode14 は ;F 値が低いうえ,~ :残差にも系統
的な誤差がみられ,不適当である。 (P+C)の M
ode13.(A十 P)の Mode12は
,
R肘も F値の有意性も高く,残差もラ ンダムに正規分布するとの仮定を満たして
l
丸いるようであり,適合的なモグノレといえよう。
2*は Mode13 より低く "F値の有
三要因の (A+P+C) の Mode11は,R
ーい:副生も Mode13
貝
,Mode12,公り落ちている。特に複雑な三葉図モラ戸、ノレを用いる利
点はなく,モデノレの簡潔性の原則からみて,排除される。
C
l
HC),(A+l
'
)の二つめモグjレめ閣で、は,決定的な差はないが,R2
ヘF{j直と
もにやや高い (P+C)モデルを選ぶ。
帥 .
f
u
l
lmodel占して,完全な共線関係の場合に適用したが,制約条件を課したモデ
ルは適用することもできる。、 C
'2=C'3 の場合に適用 Lた主ころ, f
u
l
lmodel と
ほぼ同様の結果がえられたが,ここでは省略する。
0
帥争本稿で
の区切りの間に隠隠、れている可能性もあるる口。例えば,C5
/C
/C
6
7という切れ目は,
、実は,C5~C6 前半 1 C 6 後半 ~C7 であるかもしれない。他の切れ目でも同様で
l
ある。切断点を探すには,年齢 1歳刻み時点 1年刻みのデータの方がより適切で
ある。けれども
5年刻みのデータでも,大まかな様相は捉えうる。
M P 要因の推定値については,特に,調査方法,調査時期の特性 j 質問文の含意の
変1
E,調査そのものの社会的文脈中での位置の変化,などがすべて含まれている
可能性があることにも,解釈の際は留意すべきであろう。
(
l
4
) Masone
ta
l(
19
7
3
) は,効果が認められる要因中のカテゴリーに制約条件を課
すのは適当でないとしている。これは,一般的には正当であるが,荒すぎること
がわかる。
ここでの例でいえば,P 要因の効果が明らかなので,Pl~P4 ~こ制約条件を課
すべきでないという主張になる。 P 効果があるということは,少くとも P 要因
-9
2ー
年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
中のカテゴリーに大きぐ異なる効果を持つものが含まれていることを意味するの
で,一般的には正当である。(これが,先の制約条件 P1=P
2 が不適切だった理
由で、ある。〉しかじ , P要因中の一部のカテゴリーは類似した効果をもつものが
ありえ,その場合には制約条件として適切である。(このため,PS=P
4 は,P
1=
P2 より適切であった。〉
同計量的に三効果を識別すること自体に対する批判があるが,数量的手法の機械的
な適用は厳に戒められるべきことは当然として,原理的な問題の所在を明らかに
しデータの少なくとも一つの読み方を示す点で,意義は大きいと思われる。
【参考文献1
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年齢・時代・世代の効果の識別についての一考察
付記
本稿は,第5
4回日本社会学会大会(昭和5
6年1
0月)における発表に手を加えたもの
である。
学会や研究会で,また,個別的に,有益な助言をくださった多くの方向とりわけ
議論の展開を刺激していただいた吉田民人先生, コーホート分析自体を冷静に眺める
視点を示された高橋徹先生,貴重なコメ
γ
トをいただいた綿貫譲治・原純輔・広松毅・
盛山和夫の諸先生に,深く感謝致します c
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