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亜鉛添加が黒毛和種去勢牛の産肉性及び肉質に及ぼす影響 Effects of

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亜鉛添加が黒毛和種去勢牛の産肉性及び肉質に及ぼす影響 Effects of
愛 知 農 総 試 研 報 39: 51-59 (2007 )
Res.Bull.Aichi Ag ric.Res.Ctr. 39: 51-5 9(200 7)
亜鉛添加が黒毛和種去勢牛の産肉性及び肉質に及ぼす影響
*
瀧 澤 秀 明 ・森 下
*
*
忠 ・ 榊原 隆 夫 ・ 石 井 憲一
*
摘 要 : 黒 毛 和 種 去 勢牛 7 頭 を 用 い て、 肥 育 中 期 以 降 の有 機 亜 鉛 ( 亜 鉛メ チ オ ニ ン ) 及び 無
機 亜 鉛 ( 炭 酸 亜鉛 ) 添 加 が 産 肉性 及 び 肉 質 に 及ぼ す 影 響 に つ いて 検 討 し た 。 試 験期 間 は 13
か 月 齢 か ら と 殺 前 日 ( 28 か月 齢 ∼ 30か 月 齢 )の 15∼ 1 7か 月 とし 、 亜 鉛 は 15か 月 齢 か ら 試 験
終 了 時 ま で 添 加 し た。 有 機 亜 鉛 区 は亜 鉛 メ チ オ ニ ン 製剤 を 1 日 1 頭 当た り 4.0g( 亜 鉛と し
て 400mg) 添 加 し 、 無機 亜 鉛 区 は 炭 酸亜 鉛 を 1 日 1 頭当 た り 1.2g( 亜鉛 と し て 800mg)添 加
し た 。 な お 、 対照 区 は 亜 鉛 を 無添 加 と し た 。
1 乾 物 摂 取 量は 亜 鉛 添 加 区 が多 い 傾 向 が 見 られ た 。
2 枝 肉 重 量 は亜 鉛 添 加 区 で 有意 に 多 く な っ た。
3 脂 肪 交 雑 基 準 は有 機 亜 鉛 区 で 高く な っ た 。 ロ ー ス芯 面 積 は 有 機 亜鉛 区 が 有 意 に 大き く
なった。
4 筋 間 脂 肪 の脂 肪 酸 組 成 で は、 不 飽 和 脂 肪 酸が 亜 鉛 添 加 区 で高 く な っ た 。
5 血 中 亜 鉛 濃度 は 有 機 亜 鉛 区が 有 意 に 高 く なっ た (p< 0.01)。
6 粗 収 益 は 亜鉛 添 加 区 が 10∼12万 円 程 度 上 回っ た 。
以 上 の 結 果 か ら 、亜 鉛 の 添 加 は 増体 を 改 善 さ せ 、 有機 亜 鉛 は 肉 質 を改 善 す る 可 能 性が 示
唆された。
キ ー ワ ー ド : 亜鉛 、 黒 毛 和 種 、産 肉 性 、 肉 質 、不 飽 和 脂 肪 酸
Effects of Supplemental Zinc on Fattening Performance
and Meat Quality of Japanese Black Steers
TAKIZAWA Hideaki, MORISHIT A Makoto, SAK AKIBARA T akao and ISHII Kenichi
A bstract: Seven ja panese bla ck steers were used to ex amine the effect of zinc f eeding on
f attening perf orm ance a nd m ea t quality. The experim ental period w as during 15-1 7
m onths from 1 3 to 28 -30 months of a ge.Tw o steers of organic zinc group fed zinc
m ethionine (4 00m g as zinc) and two steers of inorganic zinc group fed zinc carb onate
( 800m g a s zinc) per da y from 15 m onths of age to the day befor e sla ughter.T hree steers
of c ontrol group w ere fed no supplem ental zinc.
T he r esults ob ta ined are sum mar ized a s follows :
1 . Both zinc gr oups showed higher dry m atter intake than that of control group.
2 . Both zinc groups of the dressed c arcass weight were significa ntly higher tha n tha t of
c ontrol groups.
3 . The b eef ma rbling sta ndard number of orga nic zinc gr oup w as highter than those of
the other groups.T he loin eye area of i nor ga ni c zi nc gr oup w a s si gni fi ca ntl y l ar ge r
than those of the other groups.
4 . The rate of unsaturated f atty aci d in the f at b etween l oin ey e a rea an d r ib in zin c
gr oups were higher tha t of contr ol g roup.
5 . T h e ser u m zin c i n t he i no rg a n ic zi nc gr o up dur i ng ex per i m en ta l p er io d w a s
significantly higher than that of the other groups.
6 . The profit of the zinc fed groups were 1 00,000 -120 ,00 0 y en hi gher tha n tha t of the
c ontrol group.
T hese r esults suggest that feeding either f orm of zinc i n ja pa ne se b la c k steer s wer e
effective f or body w eight gain a nd especially zinc metionine is useful for m eat qualities.
K ey W ords: Zinc, Ja panese b lack, Meat pr oduction, Meat qualities, Unsaturated fatty acid
*
畜産研究部
(2007.9.10 受 理 )
瀧 澤・ 森下 ・榊 原 ・石 井: 亜鉛 添加 が黒 毛和 種去 勢牛 の産 肉性 及び 肉質 に及 ぼす 影 響
緒 言
52
材料及び方法
飼料中 の微 量成 分を コン トロ ール して肥 育牛 の肉 質及
1
試 験期 間
1)
び増 体を 改善す る技 術は いくつ か知 見があ る 。
試 験期間 は硫 酸亜 鉛メ チオ ニン を給 与す る区( 以下 有
ビタミ ンC を添 加す るこ とに より 牛の脂 肪前 駆細 胞か
機亜鉛 区) は2005年 1月 26日 ∼2006年 5月 25日 、炭酸 亜
ら脂 肪細胞 への分 化を促 進する ことが 実証さ れてお
鉛を給 与す る区 (以 下無 機亜 鉛区 )は 2004年11月8日 ∼
2)
3)
り 、 大橋 ら
2006年4 月13日、亜 鉛を 添加 しな い区 (以 下対 照区) は
は黒 毛 和種 肥育 牛の 肉質 及 び増 体に 効果
が あった こと を報 告し てい る。 また 、ビタ ミン Aは 脂肪
2004年 9月 11日∼ 2006年1月 10日 まで とした 。
細 胞の分 化時 期に 低レ ベル にコ ント ロール する こと で肉
質 、特に 脂肪 交雑 に効 果的 であ るこ とが明 らか にさ れて
いる
2
供 試頭 数及び 試験 区分
4 ,5 )
供 試牛の 血統 を表 1に 示し た。 供試 牛は 10か月 齢の 県
。
牛にお ける 亜鉛 要求 量は 日本 飼養 標準に おい て飼 料1
kg当たり 30mgとさ れて いる
6)
内産 黒毛和 種去 勢牛 7頭 とし た。 供試 牛は 3か月 間馴 致
が 、我 が国 の85%の地 域で
した後 、試 験を 開始 し、 当場 の慣 行に より28∼30か月 齢
牧 草中の 亜鉛 は含 量は 不足 して いる と言わ れ、 また 穀類
でと殺 し終 了した 。
中の 亜鉛 濃度 は20∼30mgで あり 牛に 対し て補 給され るべ
試 験牛は 有機 亜鉛 区、 無機 亜鉛 区に 2頭 、対照 区に 3
7)
き 元素 であ る と報 告さ れて いる 。 また 、 亜鉛 を添 加す
頭を 振り 分 けた 。 有機 亜 鉛区 は15月 齢 時(2005年4 月 15
る ことに より 牛の 脂肪 前駆 細胞 から 脂肪細 胞へ の分 化が
日)から硫 酸亜 鉛メ チオニ ン製 剤( 商品 名ジン プロ ®100、
促 進され るこ とが 実証 され てお り、 米国で アバ ーデ ィン
ジンプ ロ社 )4.0g( 亜鉛 量と して 400mg、 メチ オニ ン800
ア ンガス 種に 亜鉛 を補 給し たと ころ 、脂肪 交雑 に効 果が
mg) を粉砕 した 圧ぺ んト ウモ ロコ シに 混合 して1 日1 回
8 )
あ った と報 告 され てい る 。筆 者ら は、 黒 毛和 種去 勢牛
濃厚 飼料に 振り かけ て試 験終 了時 まで 給与 した。 無機 亜
の 肥育中 期に 有機 亜鉛 の添 加は 血中 亜鉛濃 度を 増加 し、
鉛区は 15月 齢(2005年 1月 27日 )か ら炭 酸亜 鉛を1.2g( 亜
ル ーメン 内発 酵パ ター ンの エネ ルギ ー転換 効率 を改 善す
鉛量 と して 800mg)を 粉 砕し た圧 ぺ んト ウ モロ コ シに 混
る ため、 増体 に効 果的 であ り、 今後 は、増 体を 中心 とし
合し て1日 1回 濃厚 飼料 に振 りか けて 試験 終了ま で給 与
た 亜鉛の 添加 量、 添加 時期 や安 価な 無機亜 鉛に つい ても
した。
9 )
検 討が 必要 で ある と報 告し た 。そ こで 今 回、 黒毛 和種
肥 育牛の 肥育 中期 から と殺 前日 まで 有機亜 鉛、 無機 亜鉛
3
を 添加す るこ とに よる 肉質 及び 増体 に及ぼ す影 響に つい
管 理方 法
管理 は開 放追 い込 み牛 舎( 3.2m× 6.4m :1 牛房) で
て検 討し た。
2ま たは3 頭1 群の 群飼 育と した 。飼 料は ドアフ ィー ダ
により 個体 管理し 、1 日量を 朝夕 2回 に分け て給 与した 。
給水は ウォ ーター カッ プを用 い自 由飲 水とし た。
表1
区
分
生年 月日
と 殺日
父
供試牛
牛
父 方 祖父 牛
母方 祖 父牛
有機 亜 鉛区
3号 牛
2003.12. 3
2006. 5.25
神 茂福
紋 次郎
糸晴波
4号 牛
2004. 1.23
2006. 5.25
神 茂福
安
福
糸
光
2003.10. 5
2006. 4.13
福
栄
藤
桜
糸
光
2号 牛
2003.10.11
2006. 4.13
福
栄
紋 次郎
対
区
無機 亜 鉛区
1号 牛
照
第12西丸
15号 牛
2003. 8. 6
2006. 1.10
神 茂福
第 7糸 桜
晴
美
16号 牛
2003. 8.15
2006. 1.10
福 谷福
安 福 165の9
谷
水
17号 牛
2003. 8.21
2006. 1.10
菊 百合
安 福栄
藤
桜
53
愛 知 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 39 号
表2
供試 飼料
( 原物 % )
区
分
濃
D M
C P
TDN
計
飼
料
前期
中期
後期
87.6
15.2
73.5
87.6
13.4
73.7
87.5
11.8
71.8
28
18
12
15
8
10
8
1
32
24
6
15
12
4
6
1
32
35
0
25
0
1
6
1
100
100
100
トウモロコシ
大麦
グレインソルガム
一 般 ふす ま
コーングルテンフィード
大豆粕
大豆皮
ミ ネ ラル 類
合
厚
粗
飼
料
アルファルファ チモシー乾 草 トールフェスク
ヘイキューブ
ストロー
89.0
15.6
49.4
89.8
6.7
56.3
89.6
5.1
46.0
稲わら
87.8
4.7
37.6
成 分値 は日 本 標準 飼料 成分 表 (2001年 版) に よる
表3
飼 料給 与量
( 原 物k g)
濃
厚
飼
料
期
中
期
後
粗
月齢
前
13
4∼5
14
4∼6
15
−
1 6 ∼2 1 −
22∼
−
4
−
−
5∼ 7
7∼ 10
−
期
−
−
−
−
8 ∼10
供試 飼料
飼
アルファルファ
ヘイキューブ
チモシー
乾草
0.5
−
−
−
−
3∼ 4
−
−
−
−
料
稲 わら また は
トールフェスクストロー
−
2∼ 3
2∼ 3
1∼ 3
1∼ 3
7肋 骨間を 切開 して 、ロ ース 芯面 積、 ばら の厚さ 、皮 下
供 試飼 料を 表2 に示 した 。濃 厚飼 料は14か月 齢ま では
前期 飼料 を、 21月 齢ま では 中期 飼料 を、そ れ以 降は 後期
飼 料を 給 与し た 。な お 、成 分 量は 日 本標 準 飼料 成 分表
10 )
脂肪 の厚さ 等の 計測 を行 い、 肉質 は枝 肉取 引規格 の評 価
11 )
法
に 従っ て評価 した 。
(3) 脂肪 酸組成 分析
に基づ いて 計算 した 。給 与量 は表3 に示
枝 肉検査 時に 枝肉 左半 丸の 第6 ∼第 7肋 骨間を 切開 し
した 。試 験開 始時 に1 日1 頭当 たり 5kgか ら開 始し て、
部位 の筋間 脂肪 を採 取し 、脂 肪抽 出後 に脂 肪酸組 成の 分
そ の後月 齢に 応じ て増 給し た。 粗飼 料は試 験開 始時 はア
析に供 した 。脂 肪酸 組成 はO'keefeら
ル ファ ル ファ ヘイ キ ュー ブ を0.5kgと チモ シ ー乾 草4 kg
脂肪 をナト リウ ムメ チラ ート でメ チル エス テル化 し、 ガ
を給 与し た。 アル ファ ルフ ァヘ イキ ューブ は14か月 齢ま
スク ロマト グラ フで 分析 した 。脂 肪酸 メチ ルエス テル の
で給 与し 、チ モシ ー乾 草は 14か 月齢 まで給 与し た。 その
分離は 、キ ャピラ リー カラム(DB-225、J&W SCIENTIFIC )
後 試験終 了ま では トー ルフ ェス クス トロー また は稲 わら
を装 着し た ガス クロ マ トグ ラフ ( 5890 SERIESⅡ、 HEW-
をそ れぞ れ1 ∼3 kg給 与し た。 また 、21か月齢 以降 ビタ
LETT PACKARD)を 使用 した。
(2001年版)
ミ ンA D 3 E剤 ( 商品 名 デュ フ ァゾ ー ル®A D3 E 、 共立
製薬 )を 2か月 おき に20mL経口 投与 した。
12 )
の 方法 により 、
脂 肪酸組 成比 の定 量は 、飽 和脂 肪酸 3種 (ミリ スチ ン
酸、 パルミ チン 酸及 びス テア リン 酸) と不 飽和脂 肪酸 5
種(ミ リス トレイ ン酸、パル ミト レイ ン酸、オレ イン酸 、
5
調査 項目
リノー ル酸 及びリ ノレ ン酸)の 計8種 類に ついて 行っ た。
(1) 飼 料摂取 量及 び体 重、体 高
(4) 肉色 及び脂 肪色 検査
飼料摂 取量 は給 与量 から 残飼 量を 差し引 いて 求め た。
肉色 及び 脂肪 色に つい ては 、色 彩色 差計( CR-200、 ミ
体重及 び体 高は 試験 開始 時か ら4 週間毎 に測 定し た。
ノル タカメ ラ株 式会 社) を用 い、 光電 色彩 法によ り、 明
(2) 枝 肉検査
度( L値)、 赤色 度( a値)、 黄色 度( b値) を求め た。 検
と 殺48時間 後に 枝肉 重量 を測 定し た。ま た、 第6 ∼第
査は第 6∼ 第7肋 骨間 切開6 時間 後に 行い、測定 部位は 、
瀧 澤・ 森下 ・榊 原 ・石 井: 亜鉛 添加 が黒 毛和 種去 勢牛 の産 肉性 及び 肉質 に及 ぼす 影 響
ロ ース 芯、 腎脂肪 及び 皮下 脂肪 とし た。
54
(8) 統計 処理
(5) 血 しょ う中 亜鉛 濃度 測定
両 区の 平 均 値 の 比 較 をt − 検 定 で 行 い、 危 険 率 5 %
16か 月 齢 か ら試 験 終 了 時 ま で1 か 月 毎 に 試 験 牛の 頸
以下 を有 意と した 。
静 脈か ら 採血 し 、3,000回転 で 10分 間 遠心 分 離を 行 い、
結
血 し ょ う を分 離 し て 凍 結 保 存 後、 血 液 性 状 分 析に 供 し
果
た。
血 中 亜鉛 濃 度 は テ スト ワ コ ー Z n( 5 -Br-PAPS法 )
1
を 用い て吸 光度測 定に より 測定 した 。
飼料 摂取 量及 び増 体成 績
飼料 摂取 量を 表4 に示 した 。13∼16か月 齢の乾 物摂 取
(6) ル ーメ ン内 VF A性 状測 定
量は 有機亜 鉛区 、無 機亜 鉛区 、対 照区 の順 に多く 有意 差
16か 月 齢 か ら試 験 終 了 時 ま で1 か 月 毎 に ル ー メン カ
が見 られ た (P<0.01)。 16月 齢 以降 は 無機 亜鉛 区 、有 機
テ ー テ ル を用 い ル ー メ ン 内 容 液を 採 取 し 、 2 重ガ ー ゼ
亜鉛 区、対 照区 の順 に多 く、 無機 亜鉛 区は 対照区 より 有
で ろ過 した 後に各 測定 に用 いた 。
意に 多か っ た(P< 0.05)。な お、 1 日1 頭 当た り の飼 料
揮 発 性 脂肪 酸 ( V F A ) の 測定 は ル ー メ ン 内容 液 に
由来 の亜 鉛 量( 亜 鉛無 添 加時 )は 353∼468mgで 、亜 鉛
対 し1/5容 の20% メ タリ ン 酸含 有5 N 硫酸 で 除蛋 白 した
添加時 の有 機亜 鉛区 の亜 鉛量 は756∼ 868mg、無 機亜鉛 区
ものをキャピラリーカラム( TC-FFAP、GL Sciences Inc.)
の亜鉛 量は 1,159∼ 1,256mgで あっ た。
を 装着 した ガスク ロマ トグ ラフ を用 いて 測定 した 。
試 験開始 時か らと 殺実 施前 日ま での 増体 成績を 表5 に
(7) 経 済性
示し た。体 重は 添加 剤開 始時 、試 験終 了時 におい て亜 鉛
粗 収 益 は 枝 肉販 売 額 ( 枝 肉 重量 × 出 荷 時 に お ける 県
添加 区 が い ず れ も 対 照区 よ り 有 意 に 高 い 数値 と な っ た
内 主 要 食 肉市 場 の 枝 肉 卸 売 価 格の 格 付 け 別 平 均単 価 )
(添 加剤 開始 時P<0.01、 試験 終了 時P<0.05)。 増体量 は
か ら 素 畜費 ( 10か 月 齢 時 体 重 ×県 内 家 畜 市 場 の 子牛 体
13∼ 16か 月齢は 有機 亜鉛 区が 対照 区よ り有 意に多 くな り
重1 kg当た り平均 単価 +試験 開始 時ま での飼 料代 40,000
(P< 0.05)、無 機 亜鉛 区 も有 意差 は ない も のの 対 照区 よ
円 ) 及 び 試験 開 始 後 の 飼 料 費 、飼 料 添 加 物 費 を差 し 引
り多 くなっ た。 亜鉛 添加 以降 の増 体量 は有 意差は ない も
く こ と に より 求 め た 。 な お 、 出荷 時 に お け る 県内 主 要
のの有 機亜 鉛区 が44kg、 無機 亜鉛 区が 83kgいず れも対 照
食 肉 市 場 の枝 肉 卸 売 価 格 の 格 付け 別 平 均 単 価 はA − 4
区を 上回っ た。 試験 期間 全体 の増 体量 も有 意差は ない も
が 2,094円 、A − 3 が 1,901円、 A − 2 が 1,740円 、
のの 有機 亜 鉛区 が 83kg、 無 機亜 鉛 区が 101kgい ず れも 対
B − 4 が2, 013円、 B − 3 が 1,878円 であ っ た 。 また 、
照区 を上回 った 。体 高は 試験 終了 時の 有機 亜鉛区 が対 照
素 畜 費 の 算出 に 用 い た 試 験 開 始時 に お け る 県 内家 畜 市
区より 有意 に高く なっ た(P< 0.05)。
場 の 子 牛体 重 1 kg当 た り 平均 単 価 は 1,902円 と した 。
表4
有 機 亜 鉛 区
13月 齢
16月 齢
∼
∼
全 期間
16月 齢
試 験終 了 時
飼 料摂 取量
無 機 亜 鉛 区
13月 齢
16月 齢
∼
∼
全 期間
16月 齢
試 験終 了 時
対
照
13月齢 16月齢
∼
∼
16月齢 試 験 終 了時
区
全期 間
1頭 当た り(kg)
濃 厚飼 料
592
3,196
3,788
458
3,629
4,087
422
1,236
366
1,008
1,374
318
673
991
4,410AB
726B
4,065a
4,791A
651C
3,004b
3,656B
粗 飼 料
319
917
D
M
802A
3,609ab
C
P
104
447
551
86
502
588
T D N
581
2,695
3,277
503
3,030
3,533
82
459
2,757
3,178
386
467
2,257
2,716
1頭 1日 当た り (kg/日 )
濃 厚飼 料
6.51
8.13
7.83
4.98
8.46
7.84
4.58
7.00
6.54
粗 飼 料
3.51
2.33
2.55
3.98
2.35
2.64
3.45
1.71
2.04
D
M
8.81A
9.18ab
9.11AB
7.89B
9.48a
9.19A
7.08C
7.62b
7.52B
C
P
1.14
1.14
1.14
0.94
1.17
1.13
0.89
0.98
0.96
T D N
6.39
6.86
6.77
5.47
7.06
6.78
4.99
5.73
5.59
DMにつ いて 検 定、 異符 号 間に 有意 差あ り :a、b… 5% 、 A、 B、C… 1%
55
愛 知 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 39 号
表5
項
目
増体 成 績
有 機亜 鉛区
13 月齢 時 体重 (kg)
16 月齢 時 体重 (kg)
試験 終了 時 体重 (kg)
無機 亜鉛 区
対 照 区
1)
393.0± 24.0
490.5± 15.5A
779.0± 9.0a
411.0±16.0
487.5±15.5A
815.0±39.0a
2)
352.7±15.4
411.0± 5.4B
655.3±22.5b
13 ∼1 6 体重 増加 量(kg)
16 ∼と 殺 体重 増加 量(kg)
13 ∼と 殺 体重 増加 量(kg)
3)
13 ∼1 6 DG (kg/日)
16 ∼と 殺 DG (kg/日)
13 ∼と 殺 DG (kg/日)
97.5± 8.5a
288.5± 24.5
386.0± 33.0
76.5± 0.5ab
327.5±23.5
404.0±23.0
58.3±10.4b
244.3±27.4
302.6±35.1
1.060± 0.09a
0.736± 0.06
0.798± 0.07
0.841±0.01ab
0.758±0.05
0.772±0.04
0.641±0.11b
0.620±0.07
0.624±0.07
13 月齢 時 体高
16 月齢 時 体高
試験 終了 時 体高
125.0± 1.0
130.0± 2.0
145.0± 1.0a
126.0± 3.0
131.5± 1.5
144.0± 2.0a
122.7± 1.9
128.0± 2.2
140.7± 1.2b
(cm)
(cm)
(cm)
1 ) 平均 ±標 準 偏差 、以 下の 表 同じ
2 ) 異符 号間 に 有意 差あ り: a、b… 5% 、A、 B…1 %
3 ) 1日 当た り 増体 量
表6
枝肉 成 績
有 機亜 鉛区
冷却 枝肉 重 量 (kg)
2
ロ− ス芯 面 積 (cm )
バラ の厚 さ
(cm)
筋間 脂肪 の 厚さ (cm)
皮下 脂肪 の 厚さ (cm)
歩留 基準 値
脂肪 交雑 等 級(BMS No)
牛肉 色基 準 (BCS No)
締ま り及 び きめ
と殺 月齢
枝肉 等級
( 頭)
A −4
A −3
A −2
B −4
B −3
471.8±
68.0±
7.7±
2.1±
4.1±
75.5±
6.0±
4.5±
4.0±
28.9±
4.9a
1.0Aa
0.0a
0.5AB
0.1
0.4a
1.0
0.5
1.0
0.8
1
1
0
0
0
無機 亜 鉛区
対
照
区
505.8± 25.0a
47.5± 1.5B
7.9± 0.1a
3.3± 0.2A
5.2± 0.8
71.6± 0.0b
4.5± 1.5
3.5± 0.5
3.5± 0.5
30.2± 0.1
396.3±19.8b
55.3± 3.1b
7.3± 0.2b
2.2± 0.0B
3.5± 0.3
74.6± 0.2ab
3.7± 0.5
4.7± 0.5
2.7± 0.5
28.9± 0.2
0
0
0
1
1
0
2
1
0
0
異 符号 間に 有 意差 あり :a、 b…5 %、 A、B… 1%
表7
飽 和 脂 肪 酸 ( %)
ミリ スチ ン 酸
(C14:0)
パル ミチ ン 酸
(C16:0)
ステ アリ ン 酸
(C18:0)
計
不 飽和 脂肪 酸 ( %)
ミリ スト レ イン 酸(C14:1)
パル ミト レ イン 酸(C16:1)
オレ イン 酸
(C18:1)
リノ ール 酸
(C18:2)
リノ レン 酸
(C18:3)
計
筋 間脂 肪の 脂 肪酸 組成
有機 亜鉛 区
無 機亜 鉛区
2.01±0.37
25.19±1.73
8.11±0.83a
35.31±2.93
2.59± 0.06
24.82± 0.88
9.44± 0.54a
36.85± 0.40
1.91± 0.28
23.18± 1.26
15.35± 1.51b
40.44± 2.83
0.75±0.09a
3.55±0.19a
58.28±3.18
2.02±0.03
0.09±0.00
64.69±2.93
1.18± 0.01b
5.67± 0.23b
53.96± 0.61
2.20± 0.36
0.14± 0.09
63.15± 0.40
0.62± 0.11a
3.46± 0.51a
53.28± 2.52
2.11± 0.40
0.09± 0.02
59.56± 2.83
異 符 号間 に有 意 差あ り: a、b… 5%
対
照
区
瀧 澤・ 森下 ・榊 原 ・石 井: 亜鉛 添加 が黒 毛和 種去 勢牛 の産 肉性 及び 肉質 に及 ぼす 影 響
2
枝 肉成 績
3
56
脂肪 酸組 成分 析結 果
枝 肉 成 績は 表 6 に 示 し た 。 冷却 枝 肉 重 量 は 亜鉛 添 加
筋 間 脂 肪 の 脂 肪 酸 組成 比 は 表 7 に 示 した 。 ミ リ ス ト
区 が対 照 区よ り 有意 に 重く な った (P<0.05)。ロ ー ス芯
レイ ン 酸 と パ ル ミ ト レイ ン 酸 は 無 機 亜 鉛区 が 他 の 2 区
面 積は 有 機亜 鉛 区の み が無 機 亜鉛 区 (P< 0.01)、 対 照区
より 有 意に 多 くな っ た(P< 0.05)。 また 、 ステ アリ ン 酸
(P<0.05)よ り有 意 に高 い 数値 とな っ た。 バ ラの 厚 さは
は 対 照 区 が 亜 鉛 添 加 区 よ り 有 意 に 多 く な っ た ( P< 0. 0
亜 鉛添 加 区が 対 照区 よ り有 意 に厚 く なっ た(P< 0.05)。
5)。 不飽 和 脂 肪 酸 は 有 意差 は な い も の の有 機 亜 鉛 区 、
筋 間 脂 肪 は無 機 亜 鉛 区 が 対 照 区よ り 有 意 に 厚 くな っ た
無機 亜鉛 区、 対照 区の 順で 多い 数値と なっ た。
(P<0.01)。 歩留 基 準値 は 有機 亜鉛 区 が無 機 亜鉛 区 より
有 意に 高 い数 値 とな っ た(P< 0.05)。 脂肪 交 雑等 級 は有
4
肉色 及び 脂肪 色検 査結 果
意 差 は な いも の の 有 機 亜 鉛 区 、無 機 亜 鉛 区 、 対照 区 の
肉 色検 査 結 果 は 表 8 に示 し た 。 無 機 亜鉛 区 の ロ ー ス
順 で 格 付け が 高 く な っ た 。枝 肉 等 級 は 有 機亜 鉛 区 で A-
芯のL値 が対 照区 より 有意に 高い 数値 とな った (P< 0.05)
4、 A-3 が各 1頭 、無 機亜 鉛区 でB-4、B-3が 各1 頭、
以外 は差 がみ られ なか った 。
対 照 区 でA -3 が2 頭 、 A-2 が 1 頭 とな り 、 亜 鉛 添加 区
が 対照 区よ り良好 であ った 。
5
血し ょう 中亜 鉛濃 度測 定結 果
1 6か月 齢 以 降 1 か 月 毎に 採 血 し た 血 しょ う 中 亜 鉛 濃
表8
肉 色検 査 結果
有機 亜鉛 区
無 機亜 鉛 区
対
照
区
ロー ス芯
L
a
b
値
値
値
59.2±4.9a
33.3±1.6
9.9±0.0
61.0± 0.7a
32.1± 1.1
9.7± 0.3
56.0± 1.3b
32.5± 1.5
9.1± 0.5
腎脂 肪
L
a
b
値
値
値
96.0±8.8
4.4±0.6
4.7±0.8
90.2± 2.5
11.1± 3.2
4.4± 0.6
86.9± 8.8
12.6± 6.8
5.1± 2.5
皮下 脂肪
L
a
b
値
値
値
90.9±1.0
8.3±1.4
3.6±0.2
87.9± 0.9
11.3± 0.8
3.3± 0.3
91.5± 2.4
8.9± 1.8
3.3± 1.4
異 符 号間 に有 意 差あ り: a、b… 5%
表9
血 しょ う中 の 亜鉛 濃度
(μ g/ d L)
有機 亜 鉛区
無 機 亜鉛 区
133.5± 17.4A
114.3±23.4B
対
照
区
111.4± 16.0B
異 符号 間に 有 意差 あり :A、 B…1 %
表 10
ル ーメ ン内 V FA 性状
有 機亜 鉛区
無機 亜鉛 区
対
V FA 総 量( mol/%) 7.38± 4.38A
6.49±3.92a
5.04±1.81Bb
V FA 組 成比 (% )
酢
酸
64.40± 3.19A
プロ ピ オン 酸
21.88± 2.30
n− 酪
酸
13.72± 1.74Aa
63.52±4.19a
21.07±3.44
15.41±3.23b
60.22±4.08B
21.90±3.45
17.88±2.40Cc
A/ P 比
2.99± 0.45
3.10± 0.59
異 符号 間に 有 意差 あり :a、 b…5 %、 A、B、 C… 1 %
A /P 比: 酢 酸/ プロ ピオ ン 酸比
照
区
2.85±0.66
57
愛 知 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 39 号
表11
経済 性
(円 )
枝肉 販売 額 1)
諸 経 費 2)
素 畜 費 3)
飼 料 費
添加 剤 費
粗 収 益 4)
有機 亜 鉛区
無 機亜 鉛区
対
942,893± 55,316a
825,361± 23,486a
634,375± 12,363
187,855± 11,124
3,131±
0
117,532± 78,803a
985,721± 82,779a
895,697± 28,079a
690,484± 26,628
205,022± 1,451
191±
0
90,024± 54,700a
照
区
6)
731,158± 28,664b
740,557± 34,394b
582,704± 27,136
157,853± 8,616
0±
0
- 9,399± 35,695b
1) 枝 肉販 売額 : 枝肉 販売 単価 × 枝肉 重量
2) 諸 経費 :素 畜 費+ 飼料 費+ 添 加剤 費
3) 素 畜費 :10月 齢時 体重 ×県 内 市場 にお ける 平 均kg単価 +40,000円
4) 粗 収益 :枝 肉 販売 額− (素畜 費+ 飼料 費 +添 加剤 費
5) 検 定は 枝肉 販 売額 、諸 経費 、 粗収 益で 実施 、 異符 号間 に有 意 差あ り: a、b… 5%
度 の平 均値 を 表9 に 示 し た 。 対 照 区 及 び 無 機 亜 鉛 区 が
Perryら は18∼ 29Zn/kgDM給 与 に よ り増 体 に 効果 が あ っ
110μg / dL 程 度で あ った の に対 し 、有 機 亜鉛 区は 13
たと報告
3μg /d Lと 有意 差が 見ら れた (P< 0.01)。
ま たは 30ppmZn/kgDM給 与 で 効 果 が な か った と 報 告 し 、
1 4)
15 )
16 )
して いるが、 Pondら 、Nunneryら
は 24ppm
Greeneら は36 0mgZn/日 給与 で 増 体 に効 果 が なか っ た と
6
ル ーメ ン内V FA 性状 測定 結果
8)
報告
し て い る 。 今 回 の試 験 の 増 体 成 績に つ い て は 試
16か 月 齢 以 降1 か 月 毎 に 採 取し た ル ー メ ン 内 容液 V
験開 始 時 に 試 験 牛 の 体重 に 差 が み ら れ るも の の 、 亜 鉛
F A 性 状の 平 均 値 を 表 10に 示 した 。 V F A 総 量 は有 機
添加 期 間 の 増 体 は 亜 鉛添 加 に よ り 改 善 がみ ら れ た 。 こ
亜 鉛区 が 対照 区 より (P<0.01)、ま た 無機 亜 鉛区 も 対照
れは 、 増 体 成 績 に お いて 有 機 亜 鉛 を 給 与す る こ と に よ
区 より 有 意に 高 くな っ た(P< 0.05)。 酢酸 組 成比 は 亜鉛
り向 上し た とい う 他の 報 告と 一致 し てい る
添 加区 が 対照 区 より 有 意に 高 く(P< 0.01)、 酪酸 組 成比
は亜 鉛 添 加 が 増 体 を 改善 す る 要 因 と し て亜 鉛 欠 乏 時 に
17 ,1 8 )
。矢 野
19 )
は 無 添 加 区、 無 機 亜 鉛 区 、 有 機亜 鉛 区 の 順 で 有意 に 高
は血 中 イ ン ス リン 様 成 長 因 子− 1 ( IGF-1)濃 度 が 低 下
く な っ た。( 無 機 亜 鉛 区と 有 機 亜 鉛 区 はP< 0.05 、有 機
する こ とか ら 、IGF-1の作 用 を介 し て筋 肉 蛋白 質蓄 積 増
亜 鉛区 と対 照区、 無機 亜鉛 と対 照区 はP< 0.01)。
加と それ に伴 う増 体の 改善 を導 いたこ とを 挙げ てい る。
酢 酸 / プロ ピ オ ン 酸 比 ( A /P 比 ) は 有 意 差は な い
筆者 ら
9)
は 実 施 し た 既 報の 試 験 に お い て、 肥 育 中 期 に
も の の 無 機亜 鉛 区 、 有 機 亜 鉛 区、 対 照 区 の 順 で低 い 数
のみ 有 機 亜 鉛 を 添 加 した 場 合 に は 増 体 への 効 果 が み ら
値 とな った 。
れな か っ た が 、 今 回 は肥 育 中 期 か ら 肥 育後 期 ま で 添 加
する こ と に よ っ て 増 体の 改 善 が み ら れ た。 こ の こ と か
7
ら、 亜 鉛 を 肥 育 後 期 まで 継 続 的 に 添 加 する こ と に よ り
経 済性
経 済 性は 表 11に 示 し た 。 亜 鉛添 加 区 は 対 照 区 より 素
増体 に効 果的 であ ると 考え られ る。
畜 費 及 び 飼料 費 が 多 か っ た が 、枝 肉 販 売 価 格 も多 か っ
ミ ネ ラ ル 栄 養 素 で ある 亜 鉛 の 増 体 に 対す る 効 果 に つ
た た め 、 粗収 益 は 有 機 亜 鉛 区 、無 機 亜 鉛 区 、 対照 区 の
いて は 、 報 告 に 見 ら れる と お り 種 々 の 条件 ( 無 機 亜 鉛
順 に 多 くな り 、 対 照 区 と 比較 し て 有 機 亜 鉛区 が 約 12万
・有 機 亜 鉛 、 添 加 量 ・濃 度 、 給 与 期 間 、牛 の 品 種 ) に
円 、無 機亜 鉛区が 約10万円 上回 った 。
より 効 果 が 増 減 す る こと が 考 え ら れ 、 今後 も 様 々 な 条
件下 で 検 証 し て い く 必要 が あ る 。 肉 質 にお い て は 有 機
考
察
亜鉛 添加 区で 脂 肪 交 雑 の 改 善 が 見 ら れ た 。 こ の 結 果 は
Sp earsら 及 び Gre eneら の 報告 と 同様 であ っ た。 Spears
亜 鉛 は 、核 酸 、 蛋 白 質 、 炭 水化 物 の 代 謝 に 関与 す る
20)
ら
は ア ン ガス × ヘ レ フ ォ ード 交 雑 種 去 勢牛 で 亜 鉛 添
酵 素 の 必 須成 分 で あ る 。 ま た 、免 疫 等 の 生 体 防御 シ ス
加に よ り 肉 質 等 級 、 枝肉 歩 留 ま り 、 脂 肪交 雑 、 背 脂 肪
テ ムに おい ても重 要な 働き を担 って いる 。
の厚 さ が 増 加 する と 報 告 し てい る 。 Greeneら
日本 飼 養標 準 では 牛 の亜 鉛 要求 量 は飼 料中 30mg/kgと
8)
はアン
ガス 種 去 勢 牛 で 脂 肪 交雑 、 脂 肪 の 厚 さ が増 加 す る 報 告
さ れ 、 我 が国 のほ とん ど の地 域で 牧草 中の 亜 鉛は 含量
をし て い る 。 し か し なが ら 、 黒 毛 和 種 を用 い た 試 験 で
は 不 足 して い る 。 ま た穀 類 中 の 亜 鉛濃 度 は 20∼ 30mgで
は脂 肪 交 雑 に つ い て は一 定 の 傾 向 が み られ て い な い 。
あ り 牛 に 対し て 補 給 さ れ る べ き元 素 で あ る と 報告 さ れ
この 理 由 と し て 和 牛 肥育 の 場 合 ビ タ ミ ンA を コ ン ト ロ
6)
ている
7)
。 亜 鉛 添 加 に よる 増 体 へ の 効 果 に つ い て は 、
ール ( 給 与 抑 制 ) し て脂 肪 交 雑 の 改 善 する 給 与 形 態 が
瀧 澤・ 森下 ・榊 原 ・石 井: 亜鉛 添加 が黒 毛和 種去 勢牛 の産 肉性 及び 肉質 に及 ぼす 影 響
58
挙 げ ら れ る。 亜 鉛 を 添 加 す る こと に よ り 、 脂 肪細 胞 の
後の 代 謝 が 異 な っ て いる と 推 察 し て い る。 筋 肉 蛋 白 質
分 化 促 進 する 作 用 が あ る が 、 ビタ ミ ン A を 抑 制す る こ
や脂 肪 交 雑 を 増 加 さ せる た め の 酵 素 類 の生 産 、 活 性 化
と で も 脂 肪細 胞 の 分 化 促 進 す る作 用 が あ る 。 飼料 へ の
等に 積 極 的 に 利 用 さ れる 場 合 、 血 中 亜 鉛濃 度 が 容 易 に
亜 鉛 添 加 量の 増 加 は 、 血 液 ビ タミ ン A 濃 度 が 高ま り 、
上昇 し な い と い う 報 告も あ る こ と か ら 、今 回 の 無 機 亜
19)
ビ タ ミ ンA 作 用 が 増 強 さ れる と い う 報 告
が あ り、 ビ
鉛に つ い て も 、 同 様 に血 中 濃 度 が 上 昇 しな い ま で も 利
タ ミ ン A のコ ン ト ロ ー ル 時 期 と同 時 期 に 亜 鉛 を添 加 す
用さ れ て い た と 考 え られ る 。 し か し な がら 、 無 機 亜 鉛
る と お 互 いの 働 き を 相 殺 す る こと に な り 、 脂 肪交 雑 の
はス ト レ ス 等 の 要 因 によ り 利 用 が 阻 害 され る こ と が あ
改 善 が み られ な い と 考 え ら れ る。 い ず れ に せ よ脂 肪 交
り、 そ の 効 果 が 不 安 定な 無 機 亜 鉛 よ り も有 機 亜 鉛 の 方
雑 に 関 す る亜 鉛 の 効 果 に つ い ては ビ タ ミ ン A との 関 連
が実 用性 が高 いと 推察 され る。
性 など 更な る検討 が必 要で あろ う。
経 済 性 は 添 加 物 経 費に つ い て は 無 機 亜鉛 の 方 が 安 価
脂 肪 酸 組成 で は 亜 鉛 区 の 不 飽和 脂 肪 酸 の 割 合が 高 く
であ る が 、 有 機 亜 鉛 につ い て も 1 頭 当 たり の 経 費 は 3
な っ た 。 これ は 、 亜 鉛 添 加 区 での 飼 料 摂 取 量 が多 く な
千円 程 度 で あ る た め 枝肉 重 量 の 増 加 が 見込 め れ ば 十 分
っ た こ と が一 因 と 考 え ら れ る 。脂 肪 が 柔 ら か く口 触 り
に投 資効 果が ある と考 えら れる 。
と 風 味 の おい し い 牛 肉 は 脂 肪 中の 不 飽 和 脂 肪 酸の 割 合
以 上 の 試 験 の 結 果 から 亜 鉛 添 加 は 増 体成 績 を 向 上 さ
が 高 い こ とが 報 告 さ れ て い る 。特 に 1 価 の 不 飽和 脂 肪
せ、 有 機 亜 鉛 は 脂 肪 交雑 を 改 善 す る 可 能性 が 示 唆 さ れ
酸 で あ る オレ イ ン 酸 が 多 い ほ ど風 味 が 良 い と され て お
た。 し か し 環 境 等 の 様々 な 条 件 に よ り 発現 す る 機 能 や
り 、 有 機 亜鉛 区 で オ レ イ ン 酸 の割 合 が 高 く 対 照区 よ り
作用 が 違 っ て く る と 推察 さ れ る た め 、 更に 亜 鉛 の 添 加
風 味 の よ いお い し い 牛 肉 に な って い る 可 能 性 が高 い と
時期 や給 与量 を検 討す る必 要が あると 考え られ る。
考 えら れる 。
ル ー メ ン内 性 状 で は 、 V F A総 量 は 亜 鉛 添 加区 で 多
引用文献
く な っ た 。こ れ は 対 照 区 に 比 べて 飼 料 摂 取 量 が多 か っ
た た め と 考え ら れ る が 、 V F A組 成 比 は 亜 鉛 添加 区 で
酢 酸 組 成比 が 高 く な っ た 。既 報 の 試 験
9)
で は 、 有機 亜
1. 全 国 家畜 畜 産 物 衛 生 指導 協 会 企 画 . 生産 獣 医 療 シ
鉛 添加 区で プロピ オン 酸組 成比 が有 意に 高く なっ たが 、
ス テ ム 肉牛 編 . 東 京 ,農 山 漁 村 文 化 協 会 , 90 -10 1
今 回の 試 験で はみ ら れな か った 。 これ は H.M.Arelovich
(1999)
ら の 牛 の 飼料 へ の 無 機 態 亜 鉛 の添 加 は 粗 飼 料 の乾 物 消
2. 鳥居 伸一,松 田恭 子,大山 路世,松井 徹,矢野 秀雄 .
化 率 に 影 響を 及 ぼ さ ず 、 ル ー メン 内 プ ロ ピ オ ン酸 モ ル
黒 毛 和 種 か ら単 離 し た 脂 肪 前 駆 細 胞の 脂 肪 細 胞 へ の
比 を 上 昇 させ 、 酢 酸 : プ ロ ピ オン 酸 比 を 減 少 させ た と
分 化 に お け るビ タ ミ ン 及 び 脂 肪 酸 の影 響 . 肉 用 牛 研
し て い る報 告
21)
と 異な る 。 こ れ は 、今 回 の 試 験 は亜 鉛
究 会報 .60, 27-28(1995)
添 加 区 の 肥育 後 期 の 粗 飼 料 を 稲わ ら か ら フ ェ スク ス ト
3. 大 橋 秀一 , 瀧澤 秀 明, 森 田宏 . 和牛 に おけ るビ タ ミ
ロ ー に 変 更し た た め に 粗 飼 料 摂取 量 を 増 加 し 、酢 酸 産
ン C給 与が 肉質に 与え る影 響.愛 知 農 総 試 研 報 .31 ,
245-252(1999)
生 量が 高く なった と考 えら れる 。
飼 料に 添 加す る 有機 亜 鉛あ る いは 無 機亜 鉛 につ い て、
Greeneら
8)
は亜 鉛 メチ オ ニン 添加 は 酸化 亜 鉛添 加 及び
亜 鉛 無 添 加よ り 脂 肪 交 雑 が 多 く脂 肪 も 厚 く な った と 有
機 亜鉛 の 有効 性を 報 告し てい る 。一方 、Malcolm-Callis
ら
2 2)
は 酸 化 亜 鉛 、 アミ ノ 態 亜 鉛 、 多糖 態 亜 鉛 の 3種 類
を 比 較 し 、発 育 性 、 産 肉 性 に 差は な か っ た と 報告 し て
4. 矢 野 秀雄 , 金聖 元 .肥 育 牛の ビ タミ ン A栄 養と そ の
後 の展 開. 肉牛ジ ャー ナル .11,64-71(1997)
5. 農 林 水産 省 農林 水 産技 術 会議 事 務局 編 .日 本飼 養 標
準 肉用 牛(2000年版 ). 104-107(2000)
6. 農 林 水産 省 農林 水 産技 術 会議 事 務局 編 .日 本飼 養 標
準 肉用 牛(2000年版 ). 47(2000)
は酸 化 亜 鉛 、蛋 白 態 亜 鉛の 両
7. 農 林 水産 省 農林 水 産技 術 会議 事 務局 編 .草 地に お け
方 と も 肉 質、 脂 肪 交 雑 に 同 程 度の 効 果 が あ っ たと 報 告
る ミ ネ ラ ル の 分 布 と 動 態に 関 す る 研 究 . 研究 成 果 .
い る 。 また 、 Spearsら
2 0)
し て い る 。今 回 の 試 験 に お い て有 機 亜 鉛 区 、 無機 亜 鉛
区 の 産 肉 性及 び 肉 質 に つ い て 総合 的 に 見 て 有 機亜 鉛 区
106 (1978)
8. Greene L.W., D.K. Lunt, F.M. Byers, N.K. Chirase,
C.E. Richmond, R.E. Kn utson, G.T. Schelling,
が 無機 亜鉛 区より も優 れた 成績 であ った 。
今 回 の 試験 に お い て 有 機 亜 鉛を 添 加 す る こ とで 血 中
Performance and carcass quality of steers supplemented
亜 鉛 濃 度 が有 意 に 上 昇 し 、 一 方無 機 亜 鉛 区 は 血中 亜 鉛
with zinc oxide or zinc methionine. J. Anim. Sci.
濃 度 の 上昇 が み ら れ なか っ た 。 Greeneら の 報 告
8)
によ
66, 1818-1823(1988)
る と ア ン ガス 種 を 用 い た 試 験 で有 機 態 の 亜 鉛 を添 加 し
9. 瀧 澤 秀明 , 森下 忠 ,石 井 憲一 . 有機 亜 鉛添 加が 黒 毛
た 場 合 、 内臓 脂 肪 量 や 脂 肪 交 雑が 有 意 に 増 加 した が 、
和 種 去 勢 牛 の産 肉 性 及 び 肉 質 に 及 ぼす 影 響 . 愛 知 農
無 機 態 の 亜鉛 で は 内 臓 脂 肪 量 や脂 肪 交 雑 に 影 響を 及 ぼ
さ な か っ たこ と か ら 有 機 態 亜 鉛と 無 機 態 亜 鉛 では 吸 収
総 試研 報. 37,159-165(2005)
10. 独立 行 政 法 人
農 業技 術 研 究 機 構 編. 日 本 標 準 飼
59
愛 知 農 業 総 合 試 験 場 研 究 報 告 39 号
料 成分 表(2001年 版).(2002)
18. 岩 井 俊 暁, 山 本 稔 , 松 下厚 志 . 高 品 質牛 肉 「 京 都
11.日本 食肉 格付 協会.新し い牛 枝肉 取引 規格,(1988)
肉 」 の 合 理 的生 産 技 術 の 確 立 ∼ 有 機亜 鉛 の 飼 料 添 加
12.O'Keefe, P.W., G.H. Wellington, L.R. Mattick and
が 黒 毛 和 種 去勢 牛 の 増 体 と 肉 質 に 及ぼ す 効 果 . 京 都
J.R. Stoufferand. Composition of bovine muscle
lipids at various carcass locations. J. Food Sci.
33,188-192(1968)
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