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現状と課題 - 東京理科大学

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現状と課題 - 東京理科大学
「現状と課題」
2011 年 11 月
東京理科大学総合研究機構
現状と課題_表紙.indd
1
2011/11/11
13:49:57
目
次
(
)はメンバー名簿のページ
まえがき..
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. 1
●物質・材料
1.キラルマテリアル研究センター..
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. 2(66)
2.界面科学研究センター..
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. 4(67)
3.グリーン&セーフティ研究センター..
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. 6(68)
4.ものづくり・先端計測科学研究部門..
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. 8(69)
5.先端デバイス研究部門..
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.10(70)
6.太陽光発電研究部門..
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.12(71)
7.エコシステム研究部門..
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.14(72)
8.エネルギー・環境光触媒研究部門..
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.16(73)
9.界面ナノテクノロジーを利用したスマートデバイスの研究開発プロジェクト...18(74)
●バイオ
10.がん医療基盤科学技術研究センター..
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...20(75)
11.戦略的物理製剤学研究基盤センター..
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...22(76)
12.RNA科学総合研究センター..
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...24(77)
13.戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター..
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..26(78)
14.ケミカルバイオロジー研究部門..
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...28(79)
15.トランスレーショナルリサーチ部門..
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...30(80)
16.創薬フロンティア研究部門.
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..32(81)
17.大塚化学糖タンパク質工学研究プロジェクト..
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..34(82)
18.放射線増感剤 SQAG の悪性腫瘍治療効果に関する研究開発プロジェクト..
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...36(83)
19.オーガンテクノロジーズ器官再生工学プロジェクト..
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...38(84)
20.低侵襲性乳がん治療DDS開発プロジェクト..
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..40(85)
●環境・情報・社会
21.火災科学研究センター..
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..42(86)
22.危機管理・安全科学技術研究部門..
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...44(87)
23.次世代データマイニング研究部門..
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...46(88)
24.山岳大気研究部門..
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..48(89)
25.インテリジェントシステム研究部門..
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...50(90)
26.長万部地域社会研究部門..
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..52(91)
●基礎・計測
27.赤外自由電子レーザー研究センター..
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...54(92)
28.先端ホログラフィ技術研究開発センター..
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..56(93)
29.量子生命情報研究部門..
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..58(94)
30.イメージングフロンティア研究部門..
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...60(95)
◆研究技術部
31.研究機器センター..
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..62(96)
◆共同利用・共同研究推進部
32.火災安全科学研究拠点..
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..64(97)
◆総合研究機構本務教員..
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.. (98)
付録
総合研究機構の組織図..
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..99
総合研究機構の変遷..
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..100
ま
え
が
き
2005 年 11 月に発足した総合研究機構は現在 10 研究センター、15
研究部門、5 社会連携プロジェクト、1 共同利用・共同研究拠点および
研究機器センターによって構成されている。この組織は研究重視の伝統
を持つ東京理科大学における研究活動の戦略的中核となることが望ま
れている。各グループはそれぞれ掲げた研究テーマについての徹底した
追求により世界的な評価を得る成果を上げることが期待されている。加
えて、各研究グループ内での研究成果をもとにグループ間の連携による
「理科大ならでは(Only in TUS)」といえる独創的なテーマ発掘も大き
な挑戦課題である。このような研究活動をより具体的にするために
2010 年 4 月には「領域」が導入された。
上記認識に対応して、2008 年より、
「総合研究機構」に属するすべて
の研究グループがそれぞれの組織の現状分析を行いその中から自然に
浮かび上がる「問題点・課題」を整理し、かつそれを機構全体で共有し、
提起された課題等について解決する可能性を追求することを意図して
「現状と課題」が作成された。本冊子はその 2011 年版である。
全学的視点に立った実質的連携研究体制を構築し東京理科大学におけ
る意欲的な研究活動の発展に寄与することを期待する。
2011 年 11 月
福山秀敏
―1―
総合研究機構「現状と課題」2011
キラルマテリアル研究センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
19 年度に設置されたキラルマテリアル研究センター(以下キラル研)は,同じく 19 年度設
置予定であったキラル科学研究部門が母体となり,発展的に規模を大きくしてセンターとし
て設置に至ったのが経緯である。
生体関連化合物は,L-アミノ酸に代表されるように可能な2つの鏡像異性体のうち一方のみ
から構成されておりキラルである。したがって,医薬品等の合成にも鏡像異性体の一方のみ
を与える不斉触媒反応の開発が要請されている。また,生体分子が一方の鏡像異性体に偏っ
た過程や,生体の内臓配置が片寄る過程の研究は生命の誕生と進化を解明することつながる
興味深い課題である。さらに,液晶などをはじめとする機能性材料やその他の幅広い材料分
野においても,鏡像異性体もしくは広義の非対称な現象が果たす役割は重要である。本セン
ターは,キラリティーを軸にキラルな化合物の効率的な不斉合成法の開発,ホモキラリティ
ーの起源や生体の内臓配置の非対称性の起源の解明,広く非対称配置を示す材料の創製や現
象の解明を目的とする。
なお,キラル研の構成員は,平成 19 年度に発足後,平成 22 年度からは,テーマの見直し
を行い,より実効性を高めるため,メンバーの入れ替えを行い,23 名で研究を推進している。
(2)今までの活動状況
キラル研では,毎年キラル研研究成果報告書を発行している。さらに,毎年国際シンポジウ
ムである Symposium on Chemical Approaches to Chirality を開催し,海外から複数の講演
者を招待し,発表,議論を通じてキラル化学の進展を図ると共に,キラル研の研究成果も有
機系ポスターを中心に発表している。
平成 22 年 9 月 29 日に国際シンポジウムである第 7 回 Symposium on Chemical
Approaches to Chirality を開催した。基調および招待講演者は、チェコ共和国から 1 名、
中国から 1 名、ハンガリーから 1 名,アメリカから 1 名,日本から 2 名であった。参加者
は 192 名であった。
平成 22 年 12 月 1 日に国際シンポジウムである第 8 回 Symposium on
Chemical Approaches to Chirality を開催した。基調および招待講演者は、イタリアから 1
名、ポーランドから 1 名、スペインから 1 名,フランスから 1 名,日本から 2 名であった。
参加者は 208 名であった。
平成21年11月25日に国際シンポジウムである第6回 Symposium on Chemical
Approaches to Chirality を開催した。基調および招待講演者はスイスから2名,アメリカか
ら1名,フランスから1名,ロシアから1名,日本から1名であった。参加者は236名で
あった。第 5 回は,平成 20 年 12 月 1 日に開催し,スペインから 3 名メキシコから 1 名,日
本から 2 名が基調および招待講演,第 4 回は,平成 20 年 1 月 29 日に開催し,イタリアから
1 名,スウェーデンから 2 名,デンマークから 1 名,フランスから 1 名,日本から 1 名,第
3 回は,平成 19 年 11 月 15 日に開催し,スイスから 2 名,フランスから 1 名,イタリアから
1 名,日本から 2 名が基調および招待講演を行った。
(3)顕著な研究成果
(1)炭素同位体のキラリティーが引き金となる不斉自己触媒反応:キラル研の川崎常臣
講師(総合研究機構)および硤合憲三教授(総合研究機構併任)の連携により,
「炭素同位体
のキラリティーが引き金となる不斉自己触媒反応」の論文が平成 21 年 4 月米科学誌サイエン
スに掲載された。 川崎講師らは,従来全く不斉反応に用いられたことが無い,炭素同位体(質
量数 12 の炭素と質量数 13 の炭素)の違いによるキラル化合物存在下で不斉自己触媒反応を
行ったところ,同位体不斉化合物の立体に対応したキラル生成物が高い鏡像体過剰率で得ら
―2―
総合研究機構「現状と課題」2011
れることを発見した。 本研究は,炭素同位体不斉が不斉反応を制御することを初めて示した
ものである。また,生成物が自己を合成する不斉触媒として作用する不斉自己触媒反応にお
いて,初期のわずかな不斉の偏りが不斉自己触媒作用により著しく増幅し,ほぼ一方のみの
鏡像異性体に至る現象は,キラル化合物の不斉認識への応用が見込まれている。
(2)キラルな天然有機化合物の不斉全合成:椎名勇教授らは,Botcinolides, Botcinins,
Botcinic Acids などのキラルな天然物の全合成を,不斉触媒反応を用いて実現している。こ
れに関する研究成果が英国化学会誌 Chemical Communications の Feature Article として 2009
年に掲載されている。不斉触媒反応を活用することで,キラルな抗菌活性化合物を効率的に
生産する手段を開発している。また,ラセミ化合物の速度論的光学分割により,キラルな鎮
痛剤イブプロフェンを簡便に与える新反応の発見に成功した。
(3)インフルエンザ治療薬タミフルの短段階触媒的不斉合成:林雄二郎教授らは,独自に
開発した diphenylprolinol silyl ether を有機触媒として用いることにより,インフルエン
ザ治療薬として用いられているタミフルの効率的な合成法を確立した。わずか3つの反応容
器を用いるだけで,従来法よりも遥かに高い収率で,短時間でタミフルを合成できる。さら
に,不斉有機触媒を用いる水中での不斉アルドール反応の開発にも成功している。
ポスター賞等を除く主要な受賞は以下の通りである。
�科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞研究部門、2007 年 4 月(文部科学省)
「受
賞不斉自己触媒反応の発見と不斉の起源解明の研究」
(硤合)
�第 63 回日本化学会賞、2011 年 3 月(日本化学会)
「キラル有機化合物の不斉の起源とホモ
キラリティーの研究」
(硤合)
�有機合成化学協会協会賞 、2011 年 2 月 (有機合成化学協会)
「新しい方法論の開発と、そ
れらを活用する各種生物活性天然有機化合物の合成研究」
(小林)
�学術貢献賞、2009 年 3 月(日本薬学会)「マグネシウムカルベノイドならびに関連反応活性
種の化学の開拓」(佐藤)
�第一三共・創薬有機化学賞、2009 年 2 月(有機合成化学協会)
「実用的不斉有機触媒反応
の開発および独創的天然有機化合物合成」
(林)
�第 28 回学術賞、2011 年 3 月(日本化学会)
「実用的不斉有機触媒反応の開発および独創的
天然有機化合物合成」
(林)
�第 59 回日本化学会進歩賞,2010 年 3 月(日本化学会)
「炭素同位体キラル化合物による不
斉誘導現象の発見と超高感度不斉認識」(川崎)
�科学技術分野の文部科学大臣表彰若手科学者賞,2010 年 4 月(文部科学省)
「炭素同位体
不斉誘起現象の発見と高感度不斉認識の研究」(川崎)
。
(4)克服すべき課題と展望
以上述べたように,受賞等で表される研究成果に対し,一定の評価が得られていると言えよ
う。今後,さらにメンバーの研究バックグラウンドや研究成果を組み合わせる(連携)こと
により,キラル科学における本学総研研究センターならではの独創的な研究成果を挙げるこ
とを目指す。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
評価委員会メンバーは以下の3名の方である。
新藤 斎,中央大学理工学部教授;齋藤幸雄 慶応大学理工学部教授;柴田高範 早稲田大
学先進理工学部教授
―3―
総合研究機構「現状と課題」2011
界面科学研究センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
界面科学研究センターの前身である界面科学研究部門は、初代部門長:目黒謙次郎教授の
もと、1981 年 1 月に発足し、2008 年度、界面科学研究センターに移行した。メンバーは本
学全学部にわたり、国内的にも国際的にも、界面・コロイド科学における先導的役割を果た
してきた。1986 年に箱根で開催された我が国初の界面コロイド科学国際会議(目黒謙次郎・
組織委員長)および、1993 年に本学神楽坂で地区開催された日本化学会の第 46 回コロイド
および界面化学討論会(近藤保・組織委員長)では、いずれも、界面研が学会組織委員会の
中心的役割を果たした。メンバーの一人である河合武司教授は日本油化学会界面科学部会の
前部会長である。大塚英典准教授は、Science of Technology of Advanced Materials(IOP 発
行)の Associate Editor である。センター長の大島広行教授は日本油化学会オレオナノサイエ
ンス部会の部会長であり、界面コロイド科学分野の主要国際誌のうち、2誌、Colloids and
Surfaces B: Biointerfaces (Elsevier)および Colloid and Polymer Science (Springer)のアジ
ア地区 Editor をつとめ、同時に、ISO において界面活性剤の規格を設定する技術委員会 TC 91
の議長である(2009 年 11 月には東京で国際会議が開催され、2010 年には北京で開催される)
。
平成 20 年度文科省戦略的研究拠点形成支援事業に「ナノ・バイオ界面技術の創成とその応
用」のテーマで申請したプロジェクトが採択された。界面研は、バイオ界面(グループ長 大
塚英典)、バイオマテリアル(グループ長 矢島博文)、ナノマテリアル(グループ長 河合
武司)、ナノスペース(グループ長 田所 誠)、界面理論・解析(グループ長 大島広行)
の5つのグループから成る。本プロジェクトでは、時空間的な機能発現の場として界面を捉
え、新しい界面理論に基づき、新規な物性・機能・理論の創出を目指します。具体的な対象
は、バイオ材料、有機・無機ナノ材料であり、時空間制御可能なナノ・バイオ界面技術を創
成することを目的とする。さらに、医療を支えるナノ・バイオデバイス、細胞操作・治療技
術、安心社会・環境を支えるエネルギー貯蔵・変換技術のような分野における革新的ナノ・
バイオマテリアルへ、本プロジェクトの界面技術を応用展開する。
(2)今までの活動状況
2010 年度の活動状況
「先進微粒子ハンドリング科学」セミナーの開催
日本学術振興会 先端研究拠点事業(JSPS Core-to-Core Program)の第43回「先進微粒子ハ
ンドリング科学」セミナーを京都大学工学研究科付属 GL センターと東京理科大学界面科学
研究センターの共催で平成 23 年1月22日に森戸記念館で開催した。本セミナーは界面科学
研究センターの近藤行成准教授によって企画され、講演者は Wisconsin-Madison 大学の
Nicholas L. Abbott 教授、界面科学研究センターメンバーの酒井秀樹准教授と河合武司教授
であった。いずれの講演も界面科学分野の最先端な研究内容で、講演は英語であったが非常
に活発な議論が展開された。
このセミナーを契機に界面科学研究センターのリサーチアシスタントの高橋裕君(近藤研
究室、総合化学研究科博士後期課程2年生)が6月から3ヶ月間 Abbott 教授の下に留学して
いる。
「ナノ空間の水と界面科学」の界面科学研究センターシンポジウムの開催
日本化学会と鶴田フォーラムの協賛を受けて東京理科大学界面科学研究センター主催の「ナ
ノ空間の水と界面科学」のシンポジウムを平成 22 年 11 月 27 日(土)の午後から東京理科大
学森戸記念館第 1 フォーラムで行った。
シンポジウムは大島広行センター長の挨拶から始まり、界面科学研究センターからは、理学
部化学科の由井宏治先生の「AOT逆ミセル内の水の相転移挙動とミクロ物性評価」と田所
誠先生の「分子性ナノ多孔質結晶に閉じ込められた構造水の科学」が発表を行った。
―4―
総合研究機構「現状と課題」2011
「表面・界面の改質・機能化による高機能材料の創製」ファインケミカル特集号の企画
シーエムシー出版のファインケミカル誌(2011 年6月号)において、界面科学研究センターメ
ンバーの河合武司教授が表記の特集号を企画し、界面科学研究センターメンバーの3つの研
究グループ長の田所誠教授、河合武司教授、大塚英典准教授に加えて近藤剛史助教が、それ
ぞれの最新の成果について執筆した。
(3)顕著な研究成果
長鎖アミドアミン誘導体の刺激応答特性とソフトテンプレート機能
(ナノマテリアルG:河合)
表面・界面制御機能を持つ両親媒性化合物はソフトマテリアルとして機能するが、高性能・
高機能なソフトマテリアルを得るには一般的に超分子化する必要がある。超分子の多くは複
雑な分子構造のため、煩雑な合成プロセスが避けられないが、本プロジェクトで開発した両
親媒性化合物(C18AA)が比較的簡単な構造であるにも関わらず、外部刺激応答機能や無機ナ
ノマテリアルのテンプレート機能などを兼ね備えた多機能なソフトマテリアルであることを
明らかとした。以下に具体的な例を示す。
1) 感温性ゲル特性
C18AA をトルエンに溶かした系は通常のオルガノゲルであるが、そこに少量の塩化リチウ
ム水溶液を加えると O/W エマルションを形成し、低温では低粘性であるが、温度を上昇させ
るとゲルになる。すなわち、トルエンゲルと全く逆の熱的挙動を示す感温性ゲルになる。興
味深いことに、ゾルからゲルへの転移温度は、C18AA 濃度の増加とともに直線的に低下し、
ゾルーゲル転移を10℃〜50℃の範囲で精密に調整できることがわかった。ここで重要な
ことは、ゲルの硬さや性質は C18AA の濃度には依存せず転移温度だけが変えられることと、
転移温度幅は何れも2〜3℃と非常に鋭敏な温度応答特性を有していることである。
2) ナノ粒子の相間移動と結晶面の相違による分離
C18AA を相間移動剤に用いることで結晶面の相違によってナノ粒子を分離できることで
ある。ナノ粒子の大きさや形態による分離についての報告はあるが、触媒機能としても重要
な結晶面の相違による分離は本研究が始めてである。
3) 極細金ナノワイヤーの合成
C18AA のトルエンゲルに塩化金酸を溶解させて 55℃に加温した後、油溶性の還元剤を加え
て 8 時間静置すると幅が 2 nm 以下で長さが数μm の極細金ナノワイヤーが得られた。さら
に、極細金ナノワイヤーはトルエンゲル中で合成しているため、有機溶剤中に分散した状態
であるが、トルエンの分散溶液を水相に接触させると金ナノワイヤーは形態を維持したまま
選択的に水相に移動させることができた。つまり、水に分散した極細金ナノワイヤーの調製
にも成功した。
(4)克服すべき課題と展望
3年目の中間評価を経て本プロジェクトも残り2年となり、最終年度の成果報告会を企画・
立案することが必要である。また、これまで以上にメンバー間の交流を図り、共同研究の充
実と活性化が重要な課題である。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
外部評価委員会は、下記の外部有識者3名で構成している。外部評価員には成果報告会に参
加して頂き、プロジェクトの進捗状況について評価をして頂くことになっている。
・岩澤康裕先生(電気通信大学教授、日本化学会会長、前コロイド界面化学部会長)
・今栄東洋子先生(国立台湾科技大学教授、総合科学技術会議議員)
・田嶋和夫先生(神奈川大学教授、前日本油化学会会長、)
―5―
総合研究機構「現状と課題」2011
グリーン&セーフティ研究センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
高度科学技術社会の現代社会は物質的には豊かであるが、安全・安心の点で人が取り残されて
いる。前組織の「グリーン光科学技術研究センター」(以下グリーン研と略)では環境に優しい材料・
技術を開発して多くの成果を得たが、新センターは次の課題として人と物との接点にフォーカス
し、市民のための科学技術の研究開発拠点を構築することをめざして、本年度設立される。すな
わち、人を忘れた最先端研究ではなく、大学にふさわしい人を中心に置いた研究を推進すること
をめざしたい。本学の教育研究理念である「〝理学の知〟と〝工学の知〟を協働させ、人類社会
と自然の調和的かつ永続的な繁栄へ貢献する」と本学のスローガン「科学は良心にむかう」を実
現する研究基盤を本学に形成する試みである。また学内連携として、理学と工学の融合のみなら
ず、科学教育と経営工学のエキスパートも参加することから、本学の特徴を生かした取り組みと
いえよう。安全・安心は社会が持続的に発展していく上での鍵となることから、本学にこのよう
なあたらしい視点の研究拠点ができることは社会に対しても本学のアピールとなることが期待で
きる。
メンバーは、
「人と環境にやさしい先進的材料の開発」
、「安全安心のための計測技術の開発」
、
「人と科学技術とのコミュニケーションの拡大」という3つのテーマグループのいずれかに所属
する。そして、本学で先端的研究者を擁し、かつ安全安心の点で最近大きな問題となっているリ
チウムイオン 2 次電池に代表される「電池」、進歩のめざましい発光ダイオードなどの「光」技術、
市民の関心事である「食と健康」の 3 分野で研究フォーラム(グループ)を組織し、メンバーは専
門と興味に応じてフォーラムに参加し、協働して研究を推進することで研究拠点を形成し、安心
安全を重視した材料・技術開発を行う。そして、人に優しい先端材料、人に安心を与える計測技
術の開発を推進する研究拠点を本学につくることを目的とする。また同時に、社会が持続的に発
展し青少年一般市民が安心して科学技術社会を享受できるような知的基盤の形成を支援する啓発
活動を通して、「国民との科学・技術対話」の推進拠点となることをめざす。
(2)今までの活動状況
本年度の特色ある活動として、
「第 17 回X線分析講習会 蛍光X線分析の実際 (第 6 回)環境試料
中の有害元素の迅速分析法、RoHS/ELV指令への対応」(2010 年 7 月 5 日~7 日の 3 日間)を、
90 名の参加者を得て、当センターが共催して本学で開催した。オープンキャンパス(2010 年8
月7,8日)では、当センターのカラーの紹介パンフレットを作成して配布し、センターのメン
バー4人による講演と、センターの機器測定室で電子顕微鏡体験実習を行った。また、SPring-8
安全安心のための分析評価研究会(第 3 回)を当センターが共催して、
「身の回りの安全安心のた
めの分析評価」をテーマに、本学森戸記念館(2010 年 10 月8日)で開催した。さらに、東京
ビッグサイトで開催された、産学官ビジネスフェア 2010(10 月 13 日~15 日)で、当センター
の光グループと電池グループの研究内容を紹介した。そして、同フェアのワークショップ(10 月
13 日 15:40~16:10)では、
『市民の安全安心を考える理科大の新しい研究拠点グリーン&セ
ーフティ研究センターは何をめざすか』と題する講演をセンター長が行った。また、本学のホー
ムカミングデー(2010 年 10 月 31 日)でも、センターの一般公開を行い、センター長が記念講
演会で講演を行った。さらに、幕張メッセで開催された、アグリビジネス創出フェア(11 月 24
日~26 日)で当研究センターの「食と健康グループ」の活動を紹介し、センター長が講演を行っ
た。2010 年度の総括として研究成果報告会(2011 年 3 月 5 日)を森戸記念館で行い、各メンバ
ーが1年の成果を口頭で発表した。
誌面による紹介では、東京理科大学 TLO の情報誌 RIDAI SCITEC NEWS Vol.11 で、特集と
して当センターが紹介された。さらに東京理科大学学報(2011 年1月 20 日号6面)の Science Lab.
のページで、当センターの概要が紹介された。このような情報公開を通して、新しく立ち上がっ
た当センターの活動を学内外に紹介した。
(3)顕著な研究成果
◆受賞
①ICAC2010 Student Poster Award: S. Komaba,他 7 名、“Study on Degradation Mechanism of
Electric Double Layer Capacitor with Activated Carbon”2010 International Conference on
Advanced Capacitors (ICAC2010), Kyoto, Japan, PS-21, May 31 – June 2, 2010. (駒場)
②電池技術委員会賞(受賞講演番号:第 50 回電池討論会 2C10)「粉末シリコン系負極に用いる
バインダー構造と高容量特性」平成 22 年 11 月 10 日(駒場)
③日本結晶学会ポスター賞、2010 年度結晶学会年会、「粉末 X 線回折法による「国宝 紅白梅図屏
風」の製法解明」授賞者:阿部善也、指導教員:中井 泉、2010 年 12 月 5 日(中井)
④学校法人 東京理科大学 優秀研究者奨励賞、平成 22 年 12 月 8 日(駒場)
⑤第 2 回半導体材料・デバイスフォーラムポスター奨励賞、“電子線照射による CIGS 太陽電池の
電気的・光学的特性への影響”熊本高専・半導体デバイス研究部 第 2 回 半導体材料・デバ
イスフォーラム 2010-12-18. (杉山)
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総合研究機構「現状と課題」2011
⑥Best Presentation Award,“Growth of Cu(In,Al)(Se,S)2 thin films by selenization and
sulfurization for a wide bandgap absorber”,17th International Conference on Ternary and
Multinary Compounds (ICTMC-17), Azerbaijan National Academy of Sciences, Baku,
Azerbaijan 2010.09.30. (杉山)
⑦ First Place(Student Poster Session) を 受 賞 [Crystal Structures and Dielectric and
Piezoelectric Properties of BaTiO3 Prepared by the Polymerized Complex Method], 218th
ECS Meeting, 2010.10.11, Electrochemical Society、受賞者:Misato Tashiro ,共著者: [Naoto
Kitamura, Yasushi Idemoto] (井手本)
⑧2010 年度色材研究発表会,優秀ポスター賞,コアシェルナノロッドの合成とその光学/分散特
性,大塚 英典 他 2 名,平成 22 年(2010 年)11 月 4 日(大塚)
⑨第 20 回日本 MRS 学術シンポジウム奨励賞,医療応用を目指した肝-非実質共培養スフェロイド,
佐々大塚英典 他 2 名,
(平成 22 年 12 月 21 日)(大塚)
⑩第 3 回日印国際シンポジウム, Excellent poster award, Development of Py-g-PEG stabilized
Silver on Gold core/shell nanorods and application for cancer thermal therapy, Otsuka
Hidenori 他 2 名(平成 22 年 12 月 13 日)(大塚)
⑪第 14 回高分子表面研究討論会奨励賞,ピリジンと PEG からなる共重合体の界面物性とその分子
構造の相関性,大塚英典 他 5 名(平成 23 年 01 月 28 日)(大塚)
⑫Makoto Tadokoro,「Papers of Editors' Choice」(2010) Journal of the Physical Society of
Japan, “Observation of Quasi-One Dimensional Proton Conductions in Molecular Porous
Crystal [CoIII(H2bim)3](TMA)·20H2O” (J. Phys. Soc. Jpn. 79 (2010) 103601) (田所)
◆マスコミ・新聞・テレビ
①『平等院ガラス玉 正倉院そっくり』2010.12.25 朝日(朝刊)他日経、毎日、読売 各新聞(中
井)
②「極上美の饗宴 宮川香山」NHK BS プレミアム 5 月 9 日放映(2011)(中井)
③奇跡の地球物語#65「岡本太郎」テレビ朝日 2 月 27 日放映(2011)(中井)
④「Cover Story: 多様な要求が集まる2次電池」(当研究室のナトリウムイオン電池が紹介)EE
Times Japan, 2010 年 12 月号,pp. 6-11. (駒場)
⑤テクノ編集局 90:ナトリウムイオン電池~二次電池のダークホース?」日刊工業新聞,23 面(2/3
頁の紙面で研究紹介、添付試料参照)平成 23 年 3 月 3 日(駒場)
⑥日経産業新聞 2011.3.4、1面 「透明太陽電池 寿命 20 年越」(杉山)
⑦2010 年 研究トピックス 「安くて気軽に使える太陽電池を開発する」旺文社螢雪時代 臨時
増刊号 全国大学 学部・学科案内号 P612 2010/4(杉山)
⑧(特集記事)由井宏治、イノベーションに資する計測技術の最前線「プラズマと溶液の界面を
利用した新しい計測技術を目指して」日本化学会誌「化学と工業」2010.10 月号 pp 798-799, 2010
(由井)
⑨リチウム電池の正極活物質結晶構造の変化観察,日刊工業新聞, 2010.12.23(井手本)
⑩リチウムイオン電池正極材の構造解析,日経産業新聞, 2010.12.28(井手本)
⑪『科学新聞 第 3281 号』2010.10.22 付「純水の 100 万倍電気を流しやすい水ナノチューブ」(田
所)
(4)克服すべき課題と展望
各メンバーの研究そのものは、きわめて順調に進んでいて、すでに多くの成果が得られている
が、社会との連携においてまだ不十分な点がある。そこで、平成 23 年度の課題は、一般市民から
我々が専門とする科学技術に対する意見を集約することを行いたい。これについては、ウエッブ
アンケートの手法を用いて行う計画である。一方、啓発活動としては、計測技術に関する講習会
を開催し、広く企業研究者、国公立研究機関の研究者への先端技術の普及に努めたい。また、我々
の研究成果を広く市民に情報発信する機会をつくることも重要な課題である。生涯学習センター
の講座を利用して、我々の行っている研究成果を、わかりやすく紹介し、国民との科学技術対話
を推進して行きたいと思っている。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
評価委員会は、3 年目となる来年度に設置し、外部評価を受審する予定である。連携研究は個
人ベースで学外の研究者と活発に実施ししている。
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総合研究機構「現状と課題」2011
ものづくり・先端計測科学研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
本研究部門は材料の合成や改質に関する「ものづくり分野」および評価法や評価薬、センサー
やシステム、計測に供する機器システムや装置開発等に関する「先端計測分野」から成り、分野
融合的な研究領域の開拓を目的としたプロジェクト研究を立ち上げることを目標としている。ま
た、本研究部門は 2006 年度より開始された第 3 期科学技術基本計画を鑑みて本学において本学
の特徴を最大限に生かした「知的創造基盤」を構築・強化し、本学における戦略的な分野と位置
づけ、このような視点に立った上で学内外の研究の特段の高度化を推進する原動力とするために
設立となった。そこで、本研究部門はメンバーの専門領域に応じて 2 分野に大別している。すな
わち、(1)ものづくり分野:阿部・酒井(健)、堀越、山下・岡野、大竹、松本、西尾グループ、(2)
先端計測分野:野島、板垣・四反田、宮村グループ。本目的および目標の短期間での効率的な達
成を目指して上記の分野内または分野間のグループをまとめたいくつかのクラスターを作り、選
定したテーマごとに共同研究を開始している。
(2)今までの活動状況
ものづくり・先端計測科学研究部門では、研究思想の実現性と今後の方向性に関する意見交換
の場として、下記の日程でシンポジウムおよびセミナーを開催している。
○総合研究機構・ものづくり・先端計測科学研究部門 2010 年度第 1 回セミナー
日時:2010 年 6 月 22 日(火) 10:30~12:00
場所:野田校舎 3 号館 4 階総合研究機構ホール
講師:Dr. Joachim Stumpe
題目:「Photo-Induced Anisotropy by Angular Selective Photo-Selection and
Photo-Orientation」
○総合研究機構・ものづくり・先端計測科学研究部門 2010 年度第 2 回セミナー
日時:2010 年 6 月 22 日(火) 14:00~17:00
場所:野田校舎 3 号館 4 階総合研究機構ホール
講師:Dr. Joachim Stumpe
題目:「Diffractive-optical Elements due to All-Optical Patterning of Photochromic Polymers and
Organic-Inorganic Nanocomposites」
○総合研究機構・ものづくり・先端計測科学研究部門 2010 年度第 3 回セミナー
日時:2010 年 12 月 3 日(金) 11:00~12:00
場所:東京理科大学 野田校舎 セミナーハウス講堂
講師:Prof. Boonyarach Kitiyanan
題目:「Catalytic Production of Single Wall Carbon Nanotubes and Purification by Froth
Flotation」
○総合研究機構・ものづくり・先端計測科学研究部門 2010 年度第 4 回セミナー
日時:2010 年 12 月 3 日(金) 13:00~14:00
場所:東京理科大学 野田校舎 セミナーハウス講堂
講師:Prof. Pramoch Rangsunvigit
題目:「Metal hydrides: A viable choice for hydrogen storage」
○第8回 ものづくり・先端計測科学研究部門シンポジウム
「ものづくり・先端計測科学の新展開:若手研究者からの提案(Part 3)」
(材料技術研究協会との「ジョイントシンポジウム」で、材料技術研究協会の 2010 年度討論会
中に開催)
日時:2010 年 12 月 3 日(土) 15:10~17:50
場所: 東京理科大学 野田校舎 セミナーハウス講堂
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総合研究機構「現状と課題」2011
共催:東京理科大学総合研究機構・研究部 ものづくり・先端計測科学研究部門 材料技術研究協会
講演内容
「カゴ型シルセスキオキサンをキーマテリアルとする材料調整」
東京理科大学 郡司天博、阿部憲孝
「界面活性剤分子集合体を鋳型とした高機能化メソポーラスチタニアの合成」
千葉工業大学 柴田裕史
「高感度アニオンUV硬化材料の創製」
東京理科大学 有光晃二
「酸化物イオン伝道性セラミックスの欠陥構造解析」
東京理科大学 北村尚斗
「高機能性ナノポーラスカーボンのデザイン」
諏訪東京理科大学 内海重宜
(3)顕著な研究成果
ものづくり分野および先端計測分野の融合的な研究推進により、従来分散しがちなものづくり、
先端計測等の分野内の強化、従来相互の連携が十分でなかったものづくりと先端計測の分野間の
連携を強化し、新しい研究領域を開拓している。例えば、ナノレベルの高分解能顕微鏡視野下で
物質のナノ成長を観察・制御しながら素子・デバイスづくりに直結するような「ものづくり」を
推進させる研究、ナノサイズの電子材料表面における欠陥・損傷(イオンマイグレーション等)
を可視化した二次イオン質量分析によって明らかにするような「先端計測」を発展させる研究等
を創製し、従来のものづくり・計測分析の概念における限界を突破する研究領域を開拓し、実施
している。また本年度は、第 8 回定例部門シンポジウムおよび 2010 年度部門セミナーを開催し、
今後の方向性に関する意見交換の場となっている。今後のものづくりと先端計測の分野のさらな
る統合的な研究推進に有意義なものである。本研究部門による研究とその成果は、確実に進展し
ており、予定された期間内に十分に評価されうる結果が期待できる。現在、プロジェクトは順調
に進行しており、今後当部門独自のものづくりと先端計測にかかわる技術が創製されると確信し
ている。
また、本研究部門の分野間クラスター(阿部・酒井(健)、山下・岡野、西尾、四反田)は、昨年に
引き続き、地域産学官連携科学技術振興事業補助金イノベーションシステム整備事業(地域イノ
ベーションクラスタープログラムグローバル型(第Ⅱ期))「界面ナノテクノロジーを利用したスマ
ートデバイスの研究開発」に参画し、競争的資金獲得とともに、研究基盤づくりおよび融合的研
究の推進に大いに寄与している。(詳細は社会連携部 界面ナノテクノロジーを利用したスマート
デバイスの研究開発プロジェクトを参照下さい)。
(4)克服すべき課題と展望
本研究部門は、従来の分散的な発展に対し、中心テーマとしてものづくり・先端計測科学の
創成を目指すことにより、その関連性が十分認識されていなかった分野を融合させ、ソフト面で
の組織改革を重点的に進めていく。それにより、バリアフリーのオープンな態勢を築き、相互評
価により強い連携意識を育てることによって、異分野からの助言や新しい方法論の導入を誘って
強い研究活力を磨いていく。さらに、ハード面での拠点整備については明確に焦点を絞り、短期
間での効率的な成果集積を図っていく。本部門は本年度を持って終了となりますが、研究内容を
有機的に継続させて新たな研究展開を図りたい。
また、本研究部門の活動・研究成果を基にして、新規の研究センターを申請・設立も視野に入
れているため、上述のプロジェクト研究の集積化等を図っている。なお、各プロジェクト研究の
効率的な取り組みとして、社会連携部プロジェクト、界面科学研究センター、がん医療基盤科学
技術研究センター等に参画している。
本部門は、本年度を持って終了となりますが、今後も本部門で得た研究成果を基に、継続・努
力して研究に邁進する所存ですので、何卒よろしくお願い申し上げます。ご支援、ご助力等頂き
ました関係者の皆様方に厚くお礼申し上げます。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
なし
―9―
総合研究機構「現状と課題」2011
先端デバイス研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
本学は材料科学を得意とする。材料開発の目的の一つは新しいデバイスへの展開である。
先端デバイス研究部門(Advanced Device Laboratories: 以下 ADL と略す)は、新しいデ
バイスの開発とその科学を目指す。ADL におけるデバイス材料は無機材料が中心であり、材
料作製・評価装置の共同利用を進めている。また、企業との連携強化を進めるため、ADL メ
ンバー外の運営委員として理大 TLO 藤本センター長が就任している。藤本氏より産学連携に
関する助言と指導を受けている。
ADL メンバー14 名は、学内メンバー12 名と学外メンバー2 名で構成される。
・学内メンバー
理学部:大川*、趙*、岡村、出浦、原子、中嶋
工学部:安藤
基礎工学部:藤代*、飯田、西尾、原
理工学部:杉山*
・学外メンバー
山口東京理科大 工学部:木練
UCSB:中村修二
である。ここで*印は運営委員である。
メンバー間での研究交流は、新デバイス作製・評価だけでなく物性評価にも及んでいる。
無機材料・デバイス分野における環境配慮型エネルギー技術の開発を中心に進めているため、
主な研究分野は、
1) 省エネルギーデバイス(高効率LED、レーザ、次世代電子デバイス等)
、
2) クリーンエネルギーデバイス(水素製造システム、燃料電池等)
、
3) エネルギーリサイクルデバイス(熱電変換素子、薄膜太陽電池等)
である。
設立経緯は 2000 年頃にまでさかのぼる。メンバーの一部は、その頃より非公式ながら ADL
と称し活動を始めていた。当時は新設の研究室同士であったため、設備は不十分であった。
メンバーは各研究室の設備の共同利用を推進し、同一設備の導入を避け、設備の充実を図っ
た。新しいメンバーが次々に加わり、現在のような形が 2005 年頃にほぼ出来上がった。ADL
メンバーの研究室は、学会前の共同合宿で研究発表会を重ねた。
現在の ADL は、半導体材料、熱電変換材料、誘電体材料等を高品質に作製できるようにな
った。デバイスプロセスを一通り自前で持ち、高品質な機能材料をデバイス化している。さ
らに微細加工技術等で特殊構造を加えることも可能となった。
(2)今までの活動状況
部門のオープニング式典を 2009 年 5 月家の光会館にて開催し、会場定員(210 名)を超
える参加希望者を得た。参加者内訳は、企業関係者が約 120 名、学内関係者が約 90 名であ
った。企業関係者の参加は有料としたものの多くの方々が集まり、理科大に対するデバイス
分野での期待の大きさを強く認識できた。式典内容は、講演会・パネル展示会・試作機実演
である。講演会では省エネデバイスとしての LED、クリーンエネルギーデバイスとしての水
素発生光触媒、エネルギーリサイクルデバイスとして熱電変換素子の各研究を紹介した。
米国ボストンにおいて、2009 年 9 月 ADL として「技術ショーケース」を開催した。エネ
ルギー関係の企業や米国政府関係者、州政府関係者を前に熱電変換素子、太陽電池、水素発
生光触媒システムに関する技術の取り組みを紹介した。また 2011 年 3 月にも再度ボストン
にてショーケースを開催し、光検知式水素ガスセンサー、透明太陽電池、振動発電デバイス
に関する技術紹介と実演を行った。理科大の環境技術を米国でアピールした。
国内においては、幕張メッセで開催されたグリーンデバイス 2010 に先端デバイス研究部門
として参加した。展示主体はほとんど企業であるが、その中で大学としての参加は本学と名
大だけであった。ADL の展示は研究内容をデモ機で説明するものであり、興味を持った 300
― 10 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
人ほどの名刺を戴いた。さらに反響が大きかった LED 擬似太陽光源、熱電変換素子、透明
太陽電池は日経産業新聞からの取材を受け、一部は一面トップ記事として掲載された。
また研究部門としての企業との共同研究契約は、2010 年度に続き 2011 年度も締結した。
ADL としてのデバイス研究に着目した原料製造企業やデバイス評価装置企業との間でそれぞ
れの分野において共同研究を推進している。
(3)顕著な研究成果
デバイス評価を目的とした企業との共同研究では、大川研と杉山研が連携してデバイスの
劣化の科学を推進している。対象は長寿命とされる LED 分野であり、拡散現象による熱劣化
および高エネルギー電子線を用いた放射線劣化を研究した。その結果、各種の劣化モードを
見出し、共同して学会発表を行った。
熱電変換素子では、企業コンソーシアム(30 社)を形成し、材料開発・デバイス開発・応用
開発・装置開発を進めている。材料はMg2Siである。MgもSiも化学的に活性であるため、そ
の化合物はほとんど注目されていなかった。しかし得られた化合物は熱電特性に優れ、しか
も軽量かつ環境にも優しい材料であった。このような特性は車のエンジンからの熱利用にも
適している。燃費向上のため車体重量の軽減が常に行われているが、軽量で熱電特性が優れ
たこの材料は有望である。特に飯田研と西尾研は企業と共に排熱発電技術研究組合(2010 年
4 月経済産業省認可)をつくり、実用化の検討に入っている。
次世代電子デバイスでは岡村研・藤代研・大川研が共同研究として、不揮発性2次元電子
流制御デバイスの開発に挑んでいる。今まで不可能であった半導体上への強誘電体形成が、
窒化物半導体を使えば可能であることを見出し、2010 年秋の学会において発表を行った。ま
た高出力電子デバイスの熱対策(熱膨張によるデバイス劣化防止)として、西尾研・木練研
は負の熱膨張係数を持った物質の負から正までの熱膨張係数を制御した材料の開発に取り組
んでいる。
(4)克服すべき課題と展望
克服すべき課題は幾つかある。第一は、所在地が神楽坂、九段、野田等と離れているため
の非効率性である。学生らは、ほぼ毎日いくつかの研究室間を実験のために移動する。実験
サンプルを所持しながらの移動である。街の人々には違和感はあっても害はない。しかし材
料科学の観点では、サンプル表面や界面の汚染・劣化は避けられないからである。第二は、
教員の時間不足である。共同研究には必要なフェイス ツー フェイスのディスカッションが
教員間で絶対的に不足している。ディスカッションが不十分な理由は所在地の分散と業務負
荷による時間不足である。週末を含めてもディスカッション開催が困難な状況は、明らかに
問題である。
今後、ADL はメンバーの総合力発揮を目指す。目指す総合力は、メンバーの融和と技術の
融合によって、個々ではできない研究を達成できる力と考える。デバイス研究には材料開発
およびデバイス構造作製やそれらの評価など多面性がある。複数のメンバーで分担しなけれ
ば世界と競合できるデバイス研究はできないと考える。また複数メンバーによる研究は新た
な領域を目指す。例えば、次世代電子デバイスと注目されている GaN 系高周波・高出力デバ
イスである。GaN 系薄膜結晶を成長できるメンバーと電子デバイスを評価できるメンバーは
別である。しかし ADL メンバーが揃えば、研究が可能である。実際、この領域でも前述のよ
うな不揮発性2次元電子流制御デバイス開発の共同研究をスタートした。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
本学 科学技術交流センター長である藤本氏には、部門の運営委員として参画していただい
ている。
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総合研究機構「現状と課題」2011
太陽光発電研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
本研究部門は平成 22 年4月に発足した新しい研究部門である。21 世紀において人類が解決す
べき最大の課題の一つは、地球温暖化問題である。その根本的な解決には、エネルギー供給形態
を化石エネルギーから再生可能エネルギーへシフトすることが必要である。最近起きた原発事故
による放射能汚染の可能性からも、自然エネルギー開発への期待がいっそう高まっている。中で
も太陽光発電技術は、再生可能エネルギーの中核的技術として、その普及が強く求められている。
また、より安価で高性能な太陽光発電技術の確立に向けての研究開発への期待も大きい。
本研究部門では、このような背景を踏まえ、まず東京理科大学における太陽光発電研究を中心
とする太陽エネルギー利用技術研究開発の、より一層の活性化・促進を目的としている。次に、
本研究部門を核として専門分野の異なる研究者が積極的に交流することにより、融合的な研究分
野や次世代型太陽光発電システムを開拓・開発し学外にその研究成果を積極的に発信することを
目的としている。
(2)今までの活動状況
本部部門は、太陽電池デバイスを研究するグループと太陽電池を効率的に使用するための太陽
光発電システムを研究するグループからなっている。
太陽電池グループでは、ナノ結晶シリコン太陽電池、CIGS 太陽電池、SnS 太陽電池、色素増感
太陽電池、有機薄膜太陽電池、マグネシウムシリサイドからなる太陽熱発電の研究において優れ
た研究開発を目指している。
太陽光発電システムグループでは、未来型太陽電池システムの一つである 3 次元太陽光発電モ
ジュールや太陽電池の宇宙システムへの応用、システムの高信頼性・長寿命化の研究開発におい
て独創的な研究開発を目指している。
初年度は、各メンバーによる積極的な対外研究発表のほかに、部門全体としてのプロジェクト
フォーメーションについて議論し、外部予算獲得に向けて申請も行った。
部門の活動状況
第 1 回会議(平成 22 年 1 月 14 日)メンバーの研究紹介
RIST「物質・材料」領域第 1 回 WS「触媒・電池」(平成 22 年 5 月 15 日)に参加
第 2 回会議(平成 22 年 6 月 15 日)メンバーの研究紹介、プロジェクトフォーメーション議論
第 3 回会議(平成 22 年 8 月 5 日)研究計画、プロジェクトフォーメーション議論
総合研究機構フォーラム 2010(平成 22 年 8 月 30,31 日)に参加
RIST「物質・材料」領域第 2 回 WS「次世代有機電子材料」
(平成 22 年 11 月 27 日)に参加
第 4 回会議(平成 23 年 1 月 7 日)部門内共同研究、第 1 回シンポジウムについて
太陽光発電研究部門第1回シンポジウム(平成 23 年 3 月 22 日)
・ 震災により会場の秋葉原コンベンションセンターに不具合が生じ延期となった。
(3)顕著な研究成果
■受賞
1.荒川研究室(工学部第一部工業化学科)
阿波 愛, 山口岳志, 荒川裕則, 日本太陽エネルギー学会大会講演・奨励賞(学生部門),
“Black dye を用いた色素増感太陽電池―色素吸着溶媒が電池性能に及ぼす影響”, 2010 年
5月
2.趙研究室(理学部第二部物理学科)
The Best Poster Award, S. Ishiwata, K. Kinjo, S. Harako, S.Komuro, N. Hirao and X.
Zhao, “Magnetic characteristics of manganese-doped ZnO semiconductor thin films”, 20th
― 12 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
MRS-Japan Academic Symposium, 20-22 Dec. 2010, Yokohama Media &
Communications Center, Yokohama, Japan.
3.飯田研究室(基礎工学部材料工学科)
Poster Award, Materials Research Society 2010 Fall Meeting Symposium LL : “Thermoelectric
Materials for Solid-State Power Generation and Refrigeration”
4.杉山研究室(理工学部電気電子情報工学科)
廣瀬維子 杉山睦 第 2 回半導体材料・デバイスフォーラム奨励賞“電子線照射による CIGS
太陽電池の電気的・光学的特性への影響”2010 年 12 月 11 日
5.杉山研究室(理工学部電気電子情報工学科)
Best Presentation Award, 藤 原 千 佳 杉 山 睦 、 “Growth of Cu(In,Al)(Se,S)2 thin films by
selenization and sulfurization for a wide bandgap absorber”、17th International Conference on Ternary
and Multinary Compounds, 2010 年 9 月 29 日
6.木村研究室(理工学部電気電子情報工学科)
飯山裕人、木村真一 2010 年度電気化学会産業応用部門大会 Young Engineer Poster Competion
優秀発表賞
■報道
荒川研究室で開発している色素増感太陽電池の 10cm 角サブモジュールについて、2010 年 6 月
25 日の日刊工業新聞の一面で紹介されました。
木村研究室の研究成果があかつき相乗り打ち上げの 2 つの衛星(IKAROS、UNITEC-1)で宇宙実
証され 2010 年 5 月 15 日及び 2010 年 6 月 16 日の朝日新聞など各紙で報道されました。
(4)克服すべき課題と展望
各メンバーは積極的に研究活動を行い、その成果を国内外に発信している。これからも、その基
本的なアクテイビテイを維持しつつ、本部門の特徴である融合研究を発展させてゆくべきと考え
ている。本年度は初年度ということもあり、融合研究の進展は必ずしも「良し」とする状況では
なかったが、継続的な努力が必要である。また、引き続き、外部研究予算獲得のためのプロジェ
クトフォーメーションを検討してゆかなければならない。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
現在、評価委員会の設置を行っていない。今後、検討する予定。
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総合研究機構「現状と課題」2011
エコシステム研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
将来に渡って温室ガスの削減が議論されているように、世界的に環境問題がホットな話題
になっている。今春の東日本大震災に直面し、エネルギー関係の開発も重要性が増している。
一方で、未来を考えていく際に、エネルギーを使わない、CO2低減に向かう道筋もより必要に
なっている。すなわち、環境への負荷の低減が重要課題であり、本部門の主題である。
本部門は 2010 年 4 月に設立し、「環境への負荷の低減」に関わるものを包含するエコシス
テムの構築を目指して、先進的に推進、開拓してきた。具体的には、MOTTAINAI に基づくエ
コシステム構築の視点から「省エネ・省資源(使わない)」、「回生・リサイクル(捨てな
い)」をキーワードとし、新たな環境負荷低減材料・プロセス・システムを提言することを
目指す。
(2)今までの活動状況
本研究部門は、2010 年 4 月に設立し、活動を続けている。
これまでに、総合検討グループの運営委員会を 2 回開催し、部門のあり方、活動方針、進
め方を振り返り、今後の進め方などを議論している。
また、2010 年 8 月 2 日にはキックオフミーティングを開催した。部門の方針、趣旨および
全部門メンバーの研究内容に対する講演、質疑応答により、お互いの情報交換、共有化、共
同研究の架け橋など大きな成果が得られた。
部門のホームページは、2010 年 12 月に公開されて、部門の活動、成果の外部発信になっ
ている。トピックス、論文発表など情報は随時更新されている。
なお、2011 年 3 月 28 日に予定していた海外研究者を招いての第1回セミナーは東日本大
震災の影響でキャンセルになった。
「エコシステム研究分野」は、現在の社会的要請、学術的な関心で必要不可欠である。現
在、エネルギー関係の開発も重要である一方で、次世代の全ての生物のために、エネルギー
を現状よりも効率よく発生・使用し、さらにCO2低減に向かう道筋が必要となっている。すな
わち、環境への負荷の低減が重要課題になっている。これを踏まえて、エコシステム研究部
門は、世界の共通語にもなっている「MOTTAINAI」をキーワードに、省エネルギーや環境への
負荷低減につながるエコシステムの構築を「省エネ・省資源(使わない)」・「回生・リサ
イクル(捨てない)」という2つの視点から捉え、開拓しようとしている点に特長を有して
いる。次ページの図に示すように、この2つのキーワードを旗印にグループを編成、各グル
ープで中心的な課題を設定し、これを具現化していく。各グループでは研究テーマ、段階に
応じて、材料創製(合成)、デバイス化(応用)、評価・システムのサブグループに分けて研
究を推進する。サブグループは目的達成のために相互に協力することにより、単に従来の方
法論によるアプローチを行うのではなく多次元的アプローチによる先導的かつ効果的な研究
を実現する。また、グループ相互に共通の方法論を共有し協同的に研究を進めることにより、
開発技術の新しいアウトプットを開拓する。このように目的を共通とする研究グループと方
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総合研究機構「現状と課題」2011
法論を共通とするサブグループをプロジェクトの縦糸と横糸として相互に密に連携するこ
とにより革新的なアプローチが可能となる。さらに、各グループ、サブグループのリーダー、
アドバイザーからなる総合検討グループを設けて、グループ、サブグループの縦横の継続的
な連携および定期的な相互評価を図り、アドバイザーによる異分野、外部機関からの助言や
新しい方法論の導入を図ることでシナジー効果により研究を活性化し、最終的には新たな環
境負荷低減材料・プロセス・システムの創出を目指す。
本研究部門では、2グループに大別し、個々のメンバーの専門領域に応じて、研究課題に
ついて分担し研究を実施している。
(1)省エネ・省資源グループ (山下、有光、湯浅、板垣、桑野、郡司、庄野、近藤、坂井、松
本、井手本、森、小澤) 代替エネルギー、代替資源、新規機能性材料の活用による省エネ型
材料・システム[燃料電池(今年度は固体電解質中心)・光エネルギー利用システム等]の開発
と実用化を目指す。
(2)回生・リサイクルグループ (酒井、藤本、井手本、野島、竹中、佐々木、山下、武田、堂
脇)余剰エネルギーの新たな活用を中心課題とし、テーマの実用化、具現化を図る。
(3)顕著な研究成果
理工学部 工業化学科・井手本 康 教授らの研究チームの「コインセルサイズでリチウムイ
オン電池用正極材料の充放電過程における中性子回析測定」が 2010 年 12 月 23 日付の『日刊
工業新聞』および『日経産業新聞』 2010 年 12 月 28 日付で紹介された。
研究チームは、これまで困難とされていた、コインセルサイズにおける正極を用いて正極
活物質の充放電過程の結晶構造解析を行ない、世界で初めて中性子回折により充放電過程の
結晶構造の変化を捉えることに成功した。今回の研究成果は、今までは原因が分からずリチ
ウムイオン電池の長寿命化の妨げとなっていた、充放電過程における電極特性の劣化要因解
明に高い期待が持てることを示唆している。
(4)克服すべき課題と展望
本研究部門の研究は、この先の未来に向かっていくものであり、エネルギーを有効利用す
る、節約する、代替材料の開発を行うなどがキーとなり、そのために革新的技術開発の方法
を提案することを部門としては目指している。
今後も上記に述べたような連携を保ちながら、研究を推進していくことに主眼をおく。具
体的には、7 月 25 日に研究成果報告会を開催し、お互いの研究内容を共有化し、今後の発展
のために連携を模索していく。また、講演会を適宜開催し、外部有識者、研究者の研究動向
を掌握しながら研究にフィードバックする。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
共同研究先の外部研究者と適宜意見交換を行い、研究方針、内容、展開などの検討を行っ
ている。
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総合研究機構「現状と課題」2011
エネルギー・環境光触媒研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
地球規模でのエネルギー・環境問題や生活空間における環境浄化に対する革新的な科学技
術の創製が強く望まれている。その技術として光触媒が注目されている。光触媒は,日本発
のサイエンス・テクノロジーであり,現時点でもそのレベルは世界トップを走っている。こ
のよう状況の中,この研究分野をさらに加速することは,国力の向上や国際貢献につながる。
さらに,科学技術の社会への還元という観点からも重要である。この研究分野は,まさに本
学が 21 世紀に向けて発信していることと合致している。本申請メンバーはこの研究分野に精
通した世界トップレベルのポテンシャルを持っており,そのメンバーが本研究部門を通して
連携することで,大きな成果が期待される。さらに本部門の特徴は,国内外からの若手研究
者を参加させることにより,人材育成と国際交流を計るところにもある。これによって,
「東
京理科大学に光触媒研究の拠点ありき」を世界に発信する。これらの活動を通して,将来的
に本学に光触媒研究の拠点を形成するための基礎造りを行う。本部門はエネルギー光触媒グ
ループ,環境光触媒および製品化グループ,光触媒合成プロセスグループから成り立ってい
る。それぞれのグループが連携することにより研究推進の相乗効果が期待され,成果目標に
掲げられたエネルギー•環境問題解決のためのサイエンスとテクノロジーを展開し社会貢献
を行っていく。一方で,光触媒産業の活性化のための市場開拓を行っていく体制となってい
る。
(2)今までの活動状況
部門全体の活動として,10 月にキックオフミーティングを行った。国際交流にも力を入れ,
次に示すような活動を行った。2010 年 11 月に,本学と韓国の KIST 間の協定を締結するサポ
ートを行った。その際に KIST の一団が神楽坂,野田キャンパス,さらに本部門の学外共同機
関である KAST を訪れ,本研究部門の研究者と交流を図った。そして,研究紹介,情報交換を
行い,今後の共同研究の施策について議論した。また,社団法人日本工学アカデミーの日豪若
手研究者交流促進事業で招聘されたオーストラリアの Univ. of Queensland(ARC CoE for
Funct. Nanomaterials,)の Askshat TANKSALE 博士が工藤研究室を訪れ,研究紹介,情報交
換を行った。2011 年 2 月には,中国から環境光触媒を専門とする Jimmy Yu 教授と色素増感
太陽電池を専門とする Qingbo Meng 教授が本学に招聘され,神楽坂,野田キャンパス,さら
に本部門の学外共同機関である KAST を訪問した。そして,本研究部門を中心としたメンバー
と研究紹介,情報交換を行い,今後の共同研究の施策について議論した。3 月には,長年光
触媒研究に携わってきてドイツの University of Erlangen-Nürnberg の Prof. Dr. Horst Kisch
が本学に招聘され,本研究部門を中心とした公開セミナー,本学学生との交流,KAST の訪問
と情報交換等が行われた。次に各研究グループの共同研究を中心に活動内容について述べる。
エネルギー光触媒グループでは,水分解,二酸化炭素固定,硝酸分解に活性な各種の新規
光触媒やワイヤー形状を持つ光触媒を開発した。さらに,太陽光を用いたソーラー水分解の
実証試験用の反応槽の設計・作成を行った。エネルギー光触媒グループと光触媒合成プロセ
スグループは,光触媒の表面修飾の観点から共同研究を行った。こうした共同研究を進める
にあたり,両者のグループでは本年度,2 回,合同勉強会を開催した。色素増感太陽電池に
関して,エネルギー光触媒グループと光触媒合成プロセスグループが,ナノ構造を有する材
料を用いた高変換効率を示す色素増感太陽電池の作製に取り組んだ。さらに,エネルギー光
触媒グループ内の共同研究により金クラスターを用いた色素増感太陽電池の開発についても
取り組むことを計画しており,会合やその準備を進めてきた。環境光触媒および製品化グル
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総合研究機構「現状と課題」2011
ープでは,総研発足前より共同研究を進めていた光触媒微粒子担持チタンメッシュフィルタ
(TMiPTM)の研究開発を中心に活動した。たとえば,理科大動物実験施設などに,紫外線ラン
プとTMiPTMとを組み込んだ試作空気清浄機を設置し,実際の環境での脱臭試験を実施した。ま
た,セルフクリーニングにおいて,新たな形状を持つ二酸化チタン光触媒の構築に成功した。
光触媒合成プロセスグループでは,界面化学的手法を用いた新しいコンセプトの光触媒の合
成および物性について検討を行った結果,従来の合成法ではアモルファス骨格のものしか作
成できなかったメソポーラスチタニアについて,調製時の界面活性剤の分子構造,ならびに
反応条件を最適化することにより,壁膜の結晶化(アナターゼ)に成功した。また,吸着材
料と酸化チタン光触媒を複合化し,有機物の吸着特性に優れる光触媒材料の設計・開発にも
取り組んだ。
(3)顕著な研究成果
「エネルギー光触媒グループ」の研究分野における目標は,太陽光を使って水素と酸素を
生成する高効率な光触媒を開発することである。今までに,水素または酸素を生成できる 2
種類の光触媒を組み合わせた 2 段階励起型Zスキーム系光触媒を開発してきた。この光触媒系
では,その 2 種類の光触媒間で電子の授受をする電子伝達剤の存在が不可欠であった。この
ような背景のもと,2 種類の光触媒粒子を接触させるだけで働くZスキーム系の開発に成功し
た。粉末光触媒の特徴を生かして 2 種類の光触媒を共存させるだけの簡単な光触媒系を構築
できたことは, 大きな意義がある。さらに,これらの光触媒材料を組み合わせることにより,
可視光水分解が可能な半導体光電極の構築に成功した。一方,当研究部門における製品化・
実用化に近い成果のひとつとして,
「環境光触媒および製品化グループ」が開発を進めている
光触媒微粒子担持チタンメッシュフィルタ(TMiPTM)があげられる。TMiPTMは,チタン箔をエ
ッチングして三次元メッシュ構造を形成させ,酸化チタン微粒子を均一に担持することで,
加工が容易で比表面積も高い光触媒フィルタとなっている。これをさらに改良したものとし
て,TMIPTMと,沿面放電プラズマ発生素子とを組み合わせた,光触媒-プラズマハイブリッド
空気浄化ユニットを試作した。このユニットを用いて諸種の空気浄化試験を行ったところ,
高濃度のアンモニア,タバコ臭,エチレンガス等に対して高い分解除去性能を示した。今後,
こうしたハイブリッドの手法を用いて,これまで浄化困難だった環境に対しても,光触媒が
適用できると期待される。
(4)克服すべき課題と展望
上で述べた共同研究を加速すると同時に,新たな共同研究が展開されるべく準備が進んで
いる。たとえば,エネルギー光触媒グループが有する豊富な光触媒材料を活用して,環境光
触媒グループが目指す反応に応用展開する。基礎研究から応用研究まで幅広く展開し,それ
ぞれが協調することにより,本部門を基盤とした更なる相乗効果が期待される。また,部門
内での成果報告会を年数回開くことにより,密接な情報交換と議論を行っていく。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
本部門は 2010 年の 10 月からスタートしたことから,現時点での連携は無い。
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界面ナノテクノロジーを利用したスマートデバイスの研究開発プロジェクト
(1)グループの設置趣旨・経緯
本プロジェクトは、平成 19 年度からスタートした 5 カ年計画の文部科学省知的クラスター創成事業(第Ⅱ期)
〜信州スマートデバイスクラスター〜を提案している財団法人長野県テクノ財団から研究委託されている基本
事業枠の1研究と関係府省連携枠の研究を行うことを目的としている。創成事業(第Ⅰ期)では研究そのもの
の促進を第1目的としていたが、第Ⅱ期では研究成果の事業化を促進することが第一の目的である。我々は、
第Ⅰ期最終年度から関与したが、得られた研究成果が高く評価され、それらの事業化を期待され本研究体制に
参入した次第である。また、統一テーマを「界面ナノテクノロジーを利用したスマートデバイスの研究開発」
とし、サブテーマ 1(高性能界面活性剤としての新規ジェミニ型界面活性剤の開発と実用化研究)、サブテーマ
2(ナノカプセルポリマー充填剤の開発と応用)、サブテーマ 3(機能性ポリマーナノ粒子利用デバイスの研究開
発)、サブテーマ 4(ナノ構造材料を利用したバイオおよびコロージョンセンシングマテリアルの開発と応用)、
サブテーマ 5(高性能ナノ微粒子金属触媒担持多孔質セラミックの研究開発)、サブテーマ 6(セラミックスマ
イクロ/ナノスプリング(CMS)の大量合成に関する研究開発の6つのグループから構成され研究を行ってい
る。
(2)今までの活動状況
○学会名:SURTECH2010
日時:2010 年 7 月 28 日(水)~30(金)
場所:東京ビックサイト
東ホール5・6
共催:地域イノベーションクラスタープログラムグローバル型(第Ⅱ期)
東京理科大学総合研究機構
・社会連携部
(3)顕著な研究成果
界面ナノテクノロジーを利用したスマートデバイスの研究開発プロジェクト材料技術研究協会
(各研究グループの活動報告)
(サブテーマ1)高性能界面活性剤としての新規ジェミニ型界面活性剤の開発と実用化研究
オレイン酸を原料とするジェミニ型陰イオン界面活性剤(スルホン酸型、カルボン酸型、リン酸型)、非イオ
ン界面活性剤の単独および混合系における溶液物性の評価を行い、モノメリック型界面活性剤との比較におい
てその優位性(低い臨界ミセル濃度ならびに最低到達表面張力値)を実証した。また、これらのジェミニ型界
面活性剤の大量合成と応用評価を検討し、特に、リン酸型陰イオン界面活性剤について、大量合成技術を確立
した。さらに、試作品を広く企業に提供し、乳化・分散剤としての実用評価を共同で行った。
(サブテーマ 2)ナノカプセルポリマー充填剤の開発と応用
耐摩耗性・高硬度ナイロンの開発について、硬度と耐摩耗性を向上させるための改質剤とカプセル膜材料の
選定を検討し、耐摩耗性と硬度の評価を目指した。機能性色素ナノカプセルの開発について、カプセル膜材料
の選定とカプセル化の試作を検討し、耐熱性や耐紫外線試験によって評価を検討した。特に、高強度・透明ナ
イロン、CO2削減ポリエチレン、透明・紫外線吸収フィルム、植物性樹脂、リサイクルPET樹脂、生分解疑似餌の
事業化促進を図った。
一方、シリカナノ中空粒子の粒子径均一化と分散性の向上および中空顔料、紫外線反射膜としての特性の評
価を検討した。特に、反応 pH の制御や非イオン界面活性剤との併用などにより、溶媒中での分散性の向上を図
ることができた。さらに、攪拌速度の制御により、粒子のサイズ分布をよりシャープなものにする検討を行っ
た。
(サブテーマ 3)機能性ポリマーナノ粒子利用デバイスの研究開発
ポリイミド前駆体に光酸発生剤あるいは光塩基発生剤を添加すると光照射により表面レリーフパターニング
ができることを見出した。その反応機構の詳細および加工条件の詳細を解明した。また、得られた表面レリー
フを用いて液晶の配向制御に成功した。この技術は表示材料、屈折率膜、散乱膜としての応用が可能である。
さらに材料を化学イミド化処理することにより白濁パターニングも可能であるという特異な特徴をもつ材料系
を開発した。反応条件と光学特性の相関を評価し、実用化のための条件を求めた。
種々の構造のポリイミドについて上記特性を検討したところ、芳香族ポリイミドど脂肪族ポリイミドでパタ
ーンが異なることが分かった。また、ポリベンズイミダゾールを用いても同様なパターン形成ができることを
見出した。本技術の応用展開性が広いことを示す。
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また、分子内に親水性、疎水性、および光応答性をもつモノマーからなるブロックコポリマーを合成し、容
易にナノ相分離構造を誘起することに成功した。この材料に光照射を行うと、ナノ相分離構造を配向させたり、
消去することが可能であるという興味深い技術を発見した。この機能発現の機構を調べ、アゾ基の異性化が起
こり閾値を超えると不連続的な相転移が起こることがわかった。相変化を効率よく起こす条件が解明された。
(サブテーマ 4)ナノ構造材料を利用したバイオ、コロージョンおよび電子センシングマテリアルの開発と応用
a)エレクトロケミカルマイグレーション評価システムの開発と温湿度制御環境下での実証試験、b)導電性ダ
イヤモンドセンサーのプロト試作と実証試験、特に、大量生産に適したダイヤモンド電極の開発、c)超臨界二
酸化炭素(scCO2)環境での導電性高分子ナノ粒子の大量調製、その分散溶液のインクジェット印刷による機能薄
膜化と薄膜特性評価等を目指した。
a)においては、エレクトロケミカルマイグレーションの発生・成長過程を電気化学インピーダンスによって
評価したときの、反応パラメーターの時間変化を自動的に算出可能なソフトウェアの開発を行った。b)におい
ては、導電性ダイヤモンド粉末への表面修飾を行い、過酸化水素の電気化学検出に利用できることを確認した。
また、スクリーン印刷によるダイヤモンド印刷電極を試作し、カーボン印刷電極よりも、高感度センサー用電
極に適していることを確認した。c)においては、scCO2環境下、大型化学酸化重合実験装置を用いて導電性高分
子ナノ粒子を大量調製した。そのナノ粒子/分散剤等から成るインクを用いてインクジェット印刷による良好な
インク吐出と自由度のある薄膜を形成し、帯電防止材料への応用の可能性が示された。
(サブテーマ 5)高性能ナノ微粒子金属触媒担持多孔質セラミックスの研究開発
メソ孔中に生成した金属触媒の性能評価を進展させ、合成条件の再検討および合成条件の最適化を検討し、
メソ孔の細孔径制御と中空状シリカ粒子の合成条件を検討した結果、シリカの孔の形態制御ならびに口径の制
御を可能とした。メソポーラスシリカまたは中空状シリカ粒子に担持した白金ナノ微粒子の触媒性能評価を現
在進めている。また、2元系金属触媒の性能評価の結果を基にした3元系合金触媒の作製ならびに触媒性能評価
を行ったところ、微量な銅を添加したアルミ−白金合金が高い触媒性能と粉砕加工性をもつことが明らかとなっ
た。
(サブテーマ 6)セラミックスマイクロ/ナノスプリング(CMS)の大量合成に関する研究開発
直交実験計画法により大量な合成実験を行なった、高度複合化触媒の調製と温度の精密的な制御を行ない、
TiN マイクロスプリングの大量合成法を確立し、さらに、TiC マイクロ/ナノスプリング(セラッミクスマイクロ
スプリング)の最適合成条件を検討した。得られた CMS の電気-機械特性と触覚センサの特性評価を検討した。
一重らせん CMS(サブミクロンサイズ、コイルピッチが大きい)と二重らせん CMS(数十ミクロンサイズコイル
ピッチが小さい)バルク体と単体の伸び縮み前後の等価回路をそれぞれに検討した。
一方、活性炭などのマイクロ波吸収体を無極性溶媒中で分散させ、マイクロ波照射を行うと活性炭だけが選
択的加熱されることが知られている。本研究ではセラミックスマイクロ/ナノスプリング(CMS)の高い電波吸収
特性を利用して、これを触媒担体として用いることで、新しい触媒反応プロセスの構築とその応用を行った。
Pt/CMS 固体触媒を開発し水素の固定化をモデルとして行った結果、既存法に比べ著しく高い反応効率が得られ
た。このプロセスが省エネや反応温度に利点があることが分かった。
(4)克服すべき課題と展望
商品化段階に入ったテーマは、参加企業や事業協力企業での商品化・試験販売を推進する。事業化が見込める
テーマについては、大量生産や性能評価の検討を進めると共に参加企業と協力しサンプル提供や応用商品に向
けた特性改良等により事業化を推進する。基礎的研究のテーマも具体的商品形態を想定し技術開発に努め、企
業等の協力を得て事業化目標の設定を図る予定である。
また平成22 年度は、委託元の長野テクノ財団の要請により成果の一部についてプレス発表を行った。強酸から強塩基まで任意
のpH の水溶液中で使用可能な、金属ナノ粒子分散剤(ポリエチレンイミン誘導体)の開発について、2011 年 3 月 11 日付の
信濃毎日新聞に掲載された。最終年度である本年度は、期間内に積極的にプレス発表を行うつもりである。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
技術評価委員:小島
陽(長岡技術科学大学元学長),松島
中浜
精一(東京工業大学教授),
元島
栖二(岐阜大学
山田
特任教授)
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克守(東京大学工学部長),
興一(東京大学
総長顧問),
総合研究機構「現状と課題」2011
がん医療基盤科学技術研究センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
本センター設立への発端は平成 19 年度グローバルCOEプログラムに8専攻、4研究センタ
ー、生命研に所属する教員の協力のもとに行った「癌の総合科学的研究とその教育拠点」への申
請にさかのぼる。結果的には採択には至らなかったが、その過程で、本学に展開する異分野領域
の研究者間の交流がうまれ、個々の研究の拡がり、融合領域、新領域の開拓・創成を目指し、教
員間の研究を通じての交流の場、
「東京理科大学研究者ネットワーク」を設立され、各種講演会や
勉強会を通じた活動を行ってきた。更に、近隣の柏の葉地区にある我国有数のがん専門の医療機
関である国立がん研究センター東病院と連携を結び、より高度ながんの診療、予防、治療、のた
めに求められる具体的な標的設定、また、臨床現場での使用を目指す際の問題点の把握、更には、
その有効性の評価法などについて検討を加えてきた。これらの活動を行ってきたメンバーを中心
に本センターは設立された。
以上のように、本拠点形成は、「ものづくり」に関わるすべての理工薬学の研究の場と、「がんの
生命科学」の研究の場、
「がん臨床医療」の現場とのネットワークにより、がん医療の基盤となる
先端科学技術の創出、育成と応用の拠点を形成するとともに、異分野研究者ネットワーク型プロ
ジェクトワークの実施拠点を形成することを目的としている。
(2)今までの活動状況
①研究活動
本研究センターはがんを“小さく見つけて(診断)、よりよく治す(治療)”技術の開発を目標
に、可視化・認識工学連携グループ(VBG)、創薬・DDS科学連携グループ(PDG)、情報戦略グ
ループ(MIG)に分かれて研究を行っている。また、センターの共通プロジェクトである血中を循
環するがん細胞(Circulating Tumor Cell:CTC)の検出法の開発については、グループの枠を越
えた研究進捗報告会を毎月行い研究を進めている。個々の研究グループの研究活動については
(3)にて詳述する。
②異分野連携、新学問領域の創成に向けての 研究会などの開催
学内外の研究者による、公開の「異分野セミナー」を 3 回開催した。また、初年度に引き続き、
効率的な病変の描出・認識を可能にする画期的なインターフェースの開発 をテーマし、描写(芸
術系)、解析(情報系)、認識(医療系)、可視化(生物・工学系)の分野の研究者を集めた、第 2
回 Biomedical Interface Workshop を宮古島にて開催した。
③がん医療に関する公開セミナー
学内の研究者、学生等に「がん」
、「がん医療」についての理解を深めてもらう目的で、本研究
センター員と国立がん研究センター東病院の臨床医によるセミナーシリーズ「今さら聞けないが
んのお話し」を昨年に続き、計 6 回にわたり開催した。
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
可視化・認識工学連携グループ(VBG)は、本研究グループで開発した次世代近赤外 in vivo イ
メージングシステムである、OTN-NIR-IFBI(Over-1000-nm Near Infrared in vivo Fluorescence
Bio-imaging)装置の世界初の産業化を島津製作所と取り組んでいる。また、同システムを用いた
腹腔鏡の試作に向けて設計を行い、現在, 試作機を製作中である。
創薬・DDS科学連携グループ(PDG)のバイオデバイスチーム(BDT)・創薬チーム(PDT)と情報
戦略グループ(MIG)の生物材料チーム(BPT)は共同で血中のがん細胞(CTC)捕捉を目指したマ
イクロ流体デバイスの開発を進めている。本年度は、BPD の作成した実際にがんを発症させたマ
ウスの血液から、BDT で開発中の試作装置によりがん細胞が濃縮出来ることを実証した。また、
PDG は同装置により捕捉したがん細胞の由来、性質、薬剤に対する応答を検討できるよう、光分
解リンカーを用いてがん細胞を生きたまま回収するためリンカーの合成に着手した。さらに、が
ん細胞の細胞死を誘導するβ-カルボリン誘導体はα-チューブリンに特異的に結合し、癌細胞の
アポトーシスを誘導することを明らかにした。
情報戦略グループ(MIG)の数理・情報解析チーム(MIT)では、昨年度に引き続き肝細胞癌の再
発予測システムを開発を進めるとともに、今年度は新たに国立がん研究センターとの共同研究と
して、目の錯覚(錯視:残像錯視&擬似回転錯視効果)を利用して、①元画像の画質維持、②画像
特徴の強調、③画像全体にわたる画質改善(鮮鋭化)を同時に実現できる「内視鏡画像(動画&
静止画像)の画質改善手法の開発」に着手した。研究内容は、国立がん研究センターと共同で特
許申請(2011年3月28日)に至っている。
(4)克服すべき課題と展望
各研究グループ独自の課題と展望については紙面の制限のために記載しない。研究センター全
体としては、2 年間で作られたセンター内の連携グループの成果についての情報交換をより密に
行い、さらなる連携の実をあげていきたい。一方、公募研究者については、1 年間の研究成果を
もとに、本年度は研究者間の実質的な共同研究体制の構築に向けての取り組みが必要である。が
ん研究センター東病院との連携はすでに特許申請、あるいは、臨床現場での使用を念頭に置いた
試作機の開発段階にあるものもあり、今後の成果が期待される。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
本研究センターは 5 名の外部評価委員により適宜、助言を受けて活動している。特に、東京大
学大学院 マテリアル工学専攻の片岡一則教授は最先端研究開発支援プログラム(FIRST プログ
ラム)においてがんなどの難治性疾患の超早期診断から治療にいたる医療システムの構築を目指
す「ナノバイオテクノロジーが先導する診断・治療イノベーション」プロジェクトの中心研究者
であり、片岡教授を通じ、実質的な連携を模索中である。また、RIST のバイオ領域の研究グルー
プとの連携を構築するために、RIST バイオ領域セミナーを開催した。さらに、東京理大全学の有
機化学系研究室から有機化合物.錯体化合物を集めた化合物ライブラリー、およびそれらの研究
室で合成の報告を行った化合物構造のデータを集めたバーチャルライブラリーの構築を開始し
た。
― 21 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
戦略的物理製剤学研究基盤センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
戦略的物理製剤学研究基盤センターは 2010 年度に発足した。
戦略的物理製剤学研究基盤センターでは、
z
肺がん、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器に関する難治性疾患に対する薬物療法を有効
にするための薬物送達法(DDS)として経肺吸収製剤の開発
z
脳腫瘍の治療を目的としたホウ素化合物の脳への効率的送達
z
機能性高分子担体の開発
z
経皮吸収製剤を視野に入れたナノ DDS の開発
z
口内炎や褥瘡治療薬として、高分子を用いた粘膜治療薬の開発
などの研究をおこなう。
本研究センターで開発する DDS は、生体防御系の影響を可能な限り回避するために、病巣部位近辺
からの製剤の投与(local injection)を試みる。あるいは、薬剤をナノサイズにすることで、分子でなくバルクで
ない性質を付与して、従来送達できなかった部位への薬物送達を試みる。
本年度の到達目標としては、
1) 肺がん治療の効果的なDDS製剤の構築に向けた研究を行う。
2) 肺胞マクロファージから外に出てきた結核菌をターゲットにした研究を行う。
3) 機能性高分子担体を開発する。
(2)今までの活動状況
2010 年度の活動状況
① 2010 年 10 月 15 日に、「戦略的物理製剤学研究基盤センター発足記念シンポジウム」を、第 8 回東
京理科大学薬学部 DDS 研究センターと共同で開催した。(場所:東京理科大学森戸記念館)
140名が参加し、6題の講演と21題のポスター発表がなされた。このシンポジウムは毎年開催され、DDS関
連分野の研究者から大きな期待が寄せられている。DDS研究センターにおける研究成果の一端を紹介
するために、各研究グループの研究員及び所属学生がポスター発表を行った。いずれのポスターにも大
勢の参加者が詰めかけ、実りある討論を行うことができた。
② 2010年12月13日~14日に慢性難治性感染症克服のための第3回インド/日本国際シンポジウムを開
催した。(場所:東京理科大学森戸記念館)インド、アメリカ、韓国、ベトナム等国外、国内から、150名が参
加し、13題の講演と、本センターの研究員及び所属学生が17題のポスター発表を行った。インド、アメリ
カ、日本の共同研究により新規結核治療DDSの効果を大型動物で検討するプロジェクトをインドが中心に
なって始めているので、今後はそちらにも参加する予定である。
(3)顕著な研究成果
1.
新規抗マラリア薬の開発(分子設計と薬物開発グループ)
2008 年に Clardy らにより、内生植物菌 CR127A 株より見出された抗マラリア活性物質 Codinaeopsin の
初の不斉全合成を目指して検討を行った結果、これを達成することができた。本化合物は多剤耐性マラリ
ア原虫株にも有効性を示すことが明らかにされている。
2. ポリ(アルキルオキシエチレンホスフェート)の調製(基剤開発グループ)
α,ω-ヒドロキシポリ(エチレングリコール)(PEG)とジメチル亜リン酸を縮合した高分子であるポリ(オキ
シエチレンホスフェート)は、高い水溶性と水中での分解性を持つ。ポリ(オキシエチレンホスフェート)は、
PEG 鎖の分子量を 200〜400 と変化させると分子量は数千から 1 万程度で制御できた。側鎖の炭素数を
1 から 12 まで変化させたところ、C8 ならびに C12 の場合でのみミセル様構造体の形成を、レーザー光の
散乱から確認した。さらに、疎水性化合物であるスダン-III の可溶化を調べたところ、C8、C12 のものでス
ダン-III を溶解し、溶液が橙色に変化した。 以上の結果は、C8、または C12 を側鎖にもつポリ(アルキル
オキシエチレンホスフェート)のフラワーライクミセルが形成されたためと考えられる。事実、動的光散乱で
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総合研究機構「現状と課題」2011
粒径を調べたところ、C8 では 700±130nm、C12 では 122±27nm であり、ミセル様構造の形成が示唆さ
れた。今後は、分子量制御と薬物放出挙動の解析、ならびに高分子の分解挙動の解析を検討する。
3. 小動物を対象とした 経肺薬剤投与器具および経肺薬剤投与装置 の開発(DDS製剤の生理活性
評価グループ)
従来から、「経肺投与」が盛んに行われていたが、この場合の投与は、肺胞を介して治療薬を血液中に
送達する全身性の投与法であった。本研究において必用なのは肺胞全体に治療薬を均一に送達するこ
とを目的とした「蓄肺性」の投与であって、経肺投与とは異なる「経気管投与」である。臨床的な評価に先
立って小動物における試験を行わなければならない。しかし、ラットの肺胞は数ミリリットルという小さな体
積の密閉系であり、ここに治療薬を送達することは極めて困難である。治療薬の経気管投与には、空気と
ともに治療薬を肺に向けて噴霧するとい
う、従来経肺投与において用いられてきた
方法が有用であると考えられたので、空気
注入法を基本とした方法を採用した。この
場合、流体の流れを絞ることによって流速
を増大させる「ベンチュリ効果」を利用する
送達システムを構築した。
特願2010-114759
ベンチュリ式微粒子噴霧装置の概略図
出願日;2010/05/18
出願未公開
4. 経皮吸収の促進高価(DDS開発評価グループ )
平均粒子径 100 nm のインドメタシン含有 PLGA ナノ粒子の経皮吸収製剤化を行った。In vitro 皮膚透
過性はインドメタシン原末より顕著に上昇し、イオントフォレシスを併用すると更に相乗効果が確認され
た。In vivo 検討においても薬物の皮膚内蓄積量、血中及び筋肉移行量はナノ粒子することにより顕著に
上昇し、イオントフォレシスを併用すると相乗効果が確認され、更にラグタイムが減少した。
5. Rofecoxibのラット大動脈弾性繊維への影響(DDS製剤の体内動態と代謝検討グループ)
Rofecoxib(RF、COX-2 選択的阻害剤)の心血管系障害リスク上昇メカニズムに大動脈弾性繊維中のエ
ラスチンの構造を障害が深く関与することを明らかにした。RF の投与による大動脈弾性繊維障害はエラ
スチンタンパク質中の架橋構造の減少に起因し、それによって血管の弾性が低下し、血圧調節機能に障
害が生じている可能性が示唆された。
(4)克服すべき課題と展望
2011 年度、肺結核及び肺がん治療に関しては、DDS の効果を小動物を用いて調べることに重点を置
いて行う予定である。BNCT 治療法に関しては、正常動物ならびに担がん小動物を用いて体内動態を検
討する予定である。口内炎治療薬やゼロ次放出錠剤の開発を行う。また、テラヘルツ分光学の製剤の非
破壊検査や病態評価への応用を検討する。2010 年度に作成した口内炎モデルラットを用いて、口内炎
治療薬の効果を検討する予定である。また、口腔内崩壊錠を調製するために、微粒子の苦味マスキング
に挑戦する。戦略的物理製剤学研究基盤センターでは、1)DDS に対する新しい概念の提起、2)基本概
念に基づく新たな DDS 開発、3)その実用化を行いたい。今後は、臨床試験までも視野に入れた DDS 開
発を行っていく予定である。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
外部評価委員会を設け、永井恒司(永井記念薬学国際交流財団理事長)、川島嘉明(愛知学院大学
薬学部教授)、橋田 充(京都大学大学院薬学研究科教授)、戸口 始(大塚製薬㈱顧問)の方々に評価
委員に就任していただいているほか、平成 23 年度より、片岡一則(東京大学大学院工学系研究科教
授)、岡野光夫(東京女子医科大学大学院医学研究科教授)、菊池 寛(エーザイ㈱)のお三方にも評価
委員として参加して頂く。
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総合研究機構「現状と課題」2011
RNA科学総合研究センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
RNA 科学総合研究センターは、機能性 RNA を多方面から総合的に解析することで、生命
事象の秩序的制御メカニズムを具象化することを目的とし、「RNA を中心とした生命の秩序
的制御メカニズムの総合的解析」に関わるプロジェクトを 5 年計画で実施する。
高等生物にはゲノム情報だけではわからない複雑な機能制御システムが存在することが
明らかになってきた。これらには遺伝情報の転写レベルや翻訳レベルの制御だけではなく、
ゲノムの修飾によるエピジェネティックな機能制御や翻訳後の制御などが含まれており、
様々な場面で機能性 RNA が登場することが明らかになっている。このことは RNA が生命
現象の制御に大きな役割を果たしていることを示唆する。また、生命機能の維持には細胞
間の相互作用が重要な役割を果たしていることが明らかであり、これを担う機能分子の研究
も重要である。
RNA 科学の研究分野は、生命の根本に迫るものであり、新たな学問分野でもある。生命
現象をつかさどる機能性 RNA の未知な機能が明らかになることで新規な医薬品開発やバ
イオマス生産性の増強などの新技術の開発など新たな展開が期待される。このような視点で
の研究プロジェクトは例がなく、我が国における研究拠点となることを目指している。
(2)今までの活動状況
本研究センターは、①RNA の構造と機能獲得に関する研究、②植物における生体 RNA の
機能解析、③細胞間・組織間のシグナル伝達に関わる RNA 機能の解析、④RNAを介した
エピジェネティックな遺伝子機能制御の解析、⑤機能性 RNA の構造と機能に関する研究、
の 5 つの分野における RNA 科学に関する研究課題を実施し、機能性 RNA が基軸的な役
割を果たす生命現象について多面的な研究を行っている。
本研究センターでは、さまざまなバックグラウンドの研究者が集まり、異なる視点で研究を
遂行している。異分野領域の融合による新しい研究が芽吹くことを強く希望している。また、
若手研究者に5名のポスドク研究者を配置し、若手研究者主体の先端的・先導的研究を実
施している。
本研究センターは、野田キャンパスの5号館、6号館のあわせて 210m2ほどの実験室と、6
号館、10号館、11号館、15号館、神楽坂キャンパスの5号館(基礎工学研究科、薬学研究
科、理工学研究科、科学教育研究科)にあるそれぞれのメンバーの研究室で分散して研究
を行っている。どうしてもバラバラに研究を実施しているという感は否めないが、徐々に相互
理解が進み、共同研究の芽が育ちつつある。
昨年度は 2010 年 9 月 21 日に東京理科大学野田キャンパスにおいて「RNA 科学の新た
な展開」をテーマとしたシンポジウムを開催した。150 人を超える多数の参加者があり、活発
な討論がなされた。今年度も7月に同様の公開シンポジウムを開催する。
(3)顕著な研究成果
RNA 科学総合研究センターの各メンバーの研究アクティビティーは高い。平成 22 年
度の研究成果として、86 報の原著論文、216 報の学会発表があった。このほかに多数
の招待講演や総説などの執筆活動を行った。以下に注目すべき成果を述べる。
①RNA 生合成の途中経過をリアルタイムで解析する手法を開発した(村上)。
②RNA の合成(転写)を制御する重要な因子を解明した(Plant Cell 誌に掲載)。ま
た、RNA から蛋白質を合成する際の制御機構について詳しく調べた(島田)。
③mRNA の再構成(スプライシング)が神経の分化誘導に重要な役割を果たすこと
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総合研究機構「現状と課題」2011
を明らかにした(田代)。
④RNA 干渉法を用いた遺伝解析により細胞間の情報伝達経路を詳しく調べた(松
野)。
⑤RNA ウイルスを標的とした核酸結合因子を in silico 解析し、新規な阻害剤候補を
見つけた(田沼)。
⑥RNA に刻まれている遺伝暗号の謎を解くために RNA の酵素反応性について詳細
な解析を行った(田村)。
また、以下の研究成果についての新聞報道がなされた。
①高品質作物開発に道 -貯蔵たん白・生合成制御 キー遺伝子を発見(平成 22 年 10
月 27 日・化学工業日報)(島田)
②イネの免疫機構制御~たんぱく質を発見(平成22年7月13日・日経産業新聞)
(朽津)
③イネの病原体感染を防御~新規タンパク質を発見(平成22年6月18日・科学新聞)
(朽津)
④イネの免疫機構制御~たんぱく質を発見(平成 22 年 6 月 11 日・日刊工業新聞)
(朽
津)
⑤生命の定義覆すか(平成 22 年 12 月 12 日・日本経済新聞)
(田村)
⑥イネの 1 世代あたり 2 ヶ月の促進栽培法(平成 22 年 9 月 25 日・読売新聞、平成
22 年 10 月 1 日・科学新聞、平成 23 年 1 月 20 日・日経産業新聞)(木下)
(4)克服すべき課題と展望
RNA には様々な種類のものが存在する。このプロジェクトでは、RNA 科学に関する基盤研
究を実施しており、生命の多様性をもたらす RNA の機能解明を目指している。
このセンターで最も重要視していることは、世界に通用する研究拠点を構築することであ
る。このために異分野交流を活性化し互いに刺激し合うことで、さらなる飛躍・発展がなされ
ることを強く期待している。今年は相互理解と共同研究の推進を行いたいと考えている。
また、若手の研究者を育成したいと考えている。これにより将来の東京理科大学の研究を
リードする中心的な研究者となることを期待している。そのために可能な限り多くのポスドク
研究員やリサーチアシスタントを雇用し、若手研究者の育成を積極的に行いたいと考えてい
る。また、シンポジウム、研究会を積極的に開催し、これらの学生の教育の場を提供したいと
考えている。
2年目になって、予定数のポスドク研究員を確保できそうな状況となった。予定していた研
究体制が確立されるものと考えている。よりより高いレベルの研究成果を期待している。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
本センターには、4名の外部研究者による研究推進委員会を設けている。研究推進委員会
は、年に1度程度開催し、研究成果の報告と研究の遂行に関する助言を受けている。昨年
度は9月に実施した。今年度は7月に実施する予定である。また、中間年度および最終年度
には、学内外の有識者から構成される評価委員会を設け、これによる研究成果の評価を受
ける予定をしている。
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総合研究機構「現状と課題」2011
戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
趣旨
近年、人々を取り巻く社会環境や生活環境は大きく変わってきており、それに伴い、健康に悪
影響を及ぼす新たな要因が出てきている。特に環境要因が子どもの成長・発達にもたらす影響に
関して、国内外で大きな問題になっている。当センターでは、大気環境中のナノ粒子をはじめと
する環境要因が次世代の免疫・アレルギー、さらに脳や肺、肝臓、腎臓等の代謝・機能に及ぼす
影響を調べ、次世代の子どもが健康に生活できる社会を築くため、予防法確立を含めた戦略的研
究基盤を形成する。
経緯
本研究センターは2011年度文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業に採用され、5年
間のプロジェクトとしてスタートした。
当センター長らは、先に(独)科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業CRESTにおいて、ディ
ーゼル排ガスに含まれる超微小粒子が母マウスから胎子に移行し、胎子の脳血管や精巣血管を通
り抜けること、その粒子は出生後も子の特定の細胞の特定の部位に蓄積された状態で残り、脳神
経系・生殖系という生体の維持にとって最も重要な高度統合システムに影響を及ぼす可能性を示
唆する結果を得た。その結果に基づき引き続いて文部科学省私学研究助成事業学術フロンティア
において、ナノ粒子健康科学の研究を実施した。その結果、環境中に放出されたナノ粒子やナノ
テクノロジーの基盤材料として生産されるナノマテリアルが妊娠中の母体から仔に移行し、様々
な健康影響を及ぼすことを動物実験系により明らかにした。
本センターではナノ粒子(ナノマテリアル)が次世代の健康に及ぼす影響の実体をさらに明ら
かにすることに加え、運動や栄養が子どもの健康や発達にいかに影響を及ぼすかを解明するため
に、学内からは薬学研究科をはじめ他研究科の専攻分野の異なる研究者が参集して環境次世代健
康科学研究センターを設立、連携して研究を推進することにした。学外からは、ナノ粒子健康科
学研究センターにおける共同研究で実績を挙げた臨床医学・病理学研究者(菅又昌雄栃木臨床病
理研究所長)をはじめ多くの優れた研究者が本プロジェクトに参加している。
(2)背景と今後の展開
近年、環境要因が子どもの成長・発達にもたらす影響については国内外で問題になっている。
環境省では、子どもの健康と環境に関する全国的な疫学調査(エコチル調査、15年間)が平成22
年度から開始されている。この調査の目的は、「胎児期から小児期にかけて、環境因子が、妊娠・
生殖、先天奇形、精神神経発達、免疫・アレルギー、代謝・内分泌系等に影響を与えているので
はないか」という仮説の検証である。
ナノ粒子やその他の環境要因が疾患の原因や背景因子になる次世代の子どもの病気を予防し、
国民の健康を増進すると共に、自動車産業、ナノテクノロジー産業の健全な発展を促す。当セン
ターでは、意図的・非意図的に生産されるナノ粒子(ナノマテリアル)の健康への影響、特に次
世代への影響を解明し、その克服法を開発する。それにより、次世代の健全な成長発達が保証さ
れる環境を確保することを目指す。
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)克服すべき課題と展望
当センターでは、次世代の子どもが健康に生活できる社会を築くための戦略的研究基盤を形成
することを目標とする。そのため理工系総合大学の叡智を結集し、外部研究機関の協力を得なが
ら次世代の健全な成長発達が保証される環境を確保すること、さらに運動、栄養がもたらす健康
影響を明らかにし、その予防(治療)や健康増進法を確立する。
1)ナノマテリアルの次世代への健康影響に注目している諸外国の研究機関はまだほとんどない。
そのような現状の中で、すでに我々は一定の成果を得ている。ここに結成した新チームでさら
に世界をリードする環境次世代健康影響の研究を展開できることを期待している。
2)最近増加している子どものアレルギーや自己免疫疾患、脳神経疾患、若年性の生活習慣病な
どの環境要因を明らかにするとともに、その病理・分子的基盤を明らかにし、対処法を確立す
ることが期待される。
3)霊長類(サル)を用いたモデル実験系において、排ガス由来の微粒子及び様々なナノマテリ
アルが次世代に及ぼす影響を明らかにし、ヒトへの外挿可能なデータを得るとともに、その対
処法を確立することを目指す。
4)日常の生活環境には様々なナノ粒子が非意図的に産生され、環境中に放出されている。主に
ディーゼル排ガスやタバコ煙中に含まれるナノ粒子の性状を解析し、ナノ粒子の次世代への健
康影響を明らかにする。その他の微粒子発生源から出されるナノマテリアルの性状及び作用を
解析することにより、子ども及び次世代への健康影響の解明が期待される。
5)環境要因による次世代健康影響を予防するため、運動、栄養が果たす役割を明らかにする。
また、症状が現れる発達初期にそのプロセスを薬で調整することにより疾病の予防法を見出す
ことを目指す。
(4)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況及び課題
これから諮問委員会を設置し、学内外の有識者のアドバイスを積極的に取り入れ、連携し
ながら研究を推進する予定である。総研内の他のグループの研究者とも積極的な交流をはか
りたい。
当センターが掲げた目標は、従来型の医学研究や環境研究を通して達成することはできない。
ナノマテリアルの健康科学という基礎的学問(ナノスケールの物性学、化学、分析学、毒性学、
病理学、分子生物学)と新たな視点からの次世代健康科学(免疫学、栄養学、運動学、薬学、医
学)の学問的融合が必要である。その過程で当センターは、総合理系大学の特徴を活かした新し
い境界・複合領域の学問の発展と若手研究者の育成を課題としたい。
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総合研究機構「現状と課題」2011
ケミカルバイオロジー研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
本研究部門は、設立当時の総合研究機構における部門のポリシーに従い、予算的な裏付けや研
究センターを持たずに認可された。部門設立の趣旨は、以下の三点に集約される。
① 外部資金の受け入れ組織となること
② 文部科学省「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に採択されること
③ 研究センターを持つこと
この目的を実現するため、有機化学を基盤として生命科学研究を行うケミカルバイオロジーを
推進し、化学から生命科学にわたる広い分野の研究協力体制により、化学系領域の研究と生命科
学研究との融合を目指す。有機合成化学によりさまざまな薬理作用や生理活性を示す低分子化合
物をプローブとし、生命機能を探ることのできる物質を探索・設計・創製し,さらに分子生物学
によりその細胞内標的分子を明らかにする。
(2)今までの活動状況
松野は、第 1 回「発生システム」シンポジュウム(平成 22 年 2 月千葉)や第 6 回日本病理学
会カンファレンス(平成 21 年 7 月つくば)などでその研究成果を積極的に発表するとともに、第
32 回日本分子生物学会年会ワークショップ「Notch シグナル:セルバイオロジーから見えた新た
な制御機構」
(平成 21 年 12 月横浜)、The Notch meeting(平成 21 年 9 月アテネ)、Notch 研究
会(平成 21 年 7 月三島)など、国内外のオーガナイザーを務めた。国際化推進プログラムによる
第 5 回東京理科大学国際連携ワークショップ 5th Tokyo University of ScienceInternational
Collaboration Workshop - TUS-ICW 開催に協力し尽力し、カリフォルニア大学デイビス校を中
心に海外から 14 名の教員を招聘し、本学教員とナノマテリアル、バイオサイエンスに関する日ご
ろの研究活動ならびに交換留学制度について意見を交換した。
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
部門員である安倍の「がん医療基盤科学技術研究センター」プロジェクトは「私立大学戦略的
研究基盤形成支援事業」に、坂口・菅原の「放射線増感剤 SQAG の悪性腫瘍治療効果に関する研
究開発」は医薬基盤研究所受託研究に、引き続いて今年度も採択された。
(4)克服すべき課題と展望
克服すべき課題として、本研究部門は研究センターを持たないことがあげられる。
一般的に、
「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」の採択事業のほとんどが施設を要求してお
り、その面からも研究センターを持たない本部門の活動は制約されており、部門設立後に申請と
いう、設立当時の趣旨は現実的なものとは言えないことが明らかになったといえる。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
なし
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総合研究機構「現状と課題」2011
トランスレーショナルリサーチ部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
これまでの我が国の医療研究体制に共通する問題点として、優れた基礎研究、技術を数多く有し
ながら、これらの成果を臨床の現場に生かすために必要な橋渡しをする研究(トランスレーショナ
ルリサーチ:以下 TR)体制の整備が海外に比較して遅れていることが指摘されてきた。このような
弱点を克服するために、最近、全国の医学部を中心に学内に TR 部門を設置し、各大学の持つ基礎研
究成果の臨床応用を推進するための体制の整備が始まっている。
本学には、明日の医療に貢献することを目的とした研究に取り組む教員が数多く在籍しており、
臨床応用の実現性が期待されるシーズが多数、学内に集積している。しかしながら、本学には医学
部、附属病院などが学内に存在しないため、これらのシーズを臨床応用するノウハウが不足してお
り、これまでの研究成果を臨床に還元しにくい状況にある。この問題を克服するためには、医療現
場との共同研究の窓口になる研究部門を学内に設置し、近隣の医学部、医療機関と連携して橋渡し
研究を強力に推進することが不可欠である。
以上の背景に基づき、本学の研究者が、医学部、医療機関と連携して基礎研究と臨床研究の橋渡
しとなる研究を行うことにより、本学で発見、発明、開発されたシーズを臨床応用可能にまで育成
することを目的として、総合研究機構の中に TR 部門が設立されるに至った。
TR 部門の具体的な行動目標として、第一に、本学の研究者が開発した新薬、新技術等を臨床応用
するために必要な臨床試験を近隣の医療機関と連携して行うことである。第二の目標は、医療機関
から提供された臨床検体(生体試料)を病態解析することにより得られた知見を、医療の現場に還
元することにより、個々の患者の診断、治療に生かす個別化医療の実現を目指すこと(back
translational research)である。第三の目標は、TR を通じて、基礎研究と臨床研究の両者に熟達
した Clinician Scientist を学内で養成することである。
(2)今までの活動状況
1.筑波大学医学系との共同研究の推進を目的とした GCZP セミナーの開催
2009 年度より、TR 部門では筑波大学との連携による TR 推進のための若手人材育成
を目的として、筑波大学次世代医療育成センターセンターとの共催による GCP(Good
Clinical Practice) Seminar を定期的に開催している。2009 年度は、本学工学部の浜田知
久馬教授が臨床試験のデザインと解析に関する講演を行筑波大学で行い、本学からも多数の
教員、学生が本セミナーに参加した。2010 年度は、筑波大学から、TR を専門とする 2 名の講
師(遺伝医学、有波忠雄教授、及び附属病院治験管理室、土岐浩介教授)を本学に招聘し、
本学野田キャンパスにおいて、東京理科大学 GCP セミナーを行った。このセミナーでは、臨
床研究に関する厚労省指針を中心にした講演が行われ、臨床研究に興味を持つ 40 名余りの教
員、学生が参加した。
2.本学における臨床研究体制の整備
本学における TR を推進するには、本学における臨床研究の倫理規程を制定することにより、
本学の教員が学外の医療機関との共同研究に参加できる体制を整備することが不可欠である。
2009 年度は、TR 部門に所属する学内教員が中心になって、臨床研究倫理規程作りに向けたワ
ーキンググループを立ち上げ、他大学の実例を参考にしながら、本学における倫理規程の整備
に寄与し、H23 年 1 月には、本規程に基づき、本学教員が計画した臨床研究の倫理審査委員会
を行った。
3。研究スペースの確保
本部門が発足した時点において、本部門専用の研究スペースを確保することが困難であっ
たため、2010 年 4 月より、柏市にある東葛テクノプラザ内に、53 m2 の貸研究を確保し、TR
において得られるヒト血液、尿などの臨床検体を処理、保存するするための実験機器類を設
置し、臨床検体の保存を開始した。東葛テクノプラザは、TX の柏の葉キャンパス駅、常磐自
動車道の柏 IC に近く、本部門の客員研究員が所属する国立がんセンター東病院、東京慈恵会
医科大学柏病院、筑波大学附属病院などの医療機関とのアクセスが良好であることから、近
隣の医療機関、研究機関等との共同研究の場として利用されている。
4.TR 推進のための公開シンポジウムの開催
学内教員と学外の共同研究者の情報交換の機会として、2010 年 3 月 20 日、学外の客員研究
員 6 名を学内に招聘して、TR 部門主催で第 1 回公開シンポジウムを開催した。シンポジウムで
は、本部門の学内教員との共同研究として行われている研究プロジェクトがいくつか報告され、
今後の共同研究を推進するうえで、非常に有意義な機会であった。第 2 回目の公開シンポジウ
ムが、2011 年 3 月 12 日に予定されていたが、前日に起きた東日本大震災のために、翌年度に
― 30 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
延期されることになった。
(3)顕著な研究成果
2011 年 3 月現在、本部門には学内の研究者 11 名 (薬学部 9,基礎工学部1、理学部1)
が参加している。本部門に参加した研究者の研究テーマは、新薬、新技術の開発面においては多
種類のテーマが同時に進行しているが、部門長である谷中は、本部門が発足した 2009 年度より、学
外の医療機関と共同で、がん予防を目的とした機能性食品の開発、花粉症に対する機能性食品の抑
制効果の研究等を行い、一定の成果を上げている。特に 2010 年度は、バナナに強力な花粉症予防効
果があることを発見し、マスコミを通じて報道された。現在は、そのメカニズムの解明とヒトにお
ける臨床試験が行われている。また、他には、消化器系における慢性炎症の治療を目的とした共同
研究(深井)、アンチエイジングのための生活習慣、ならびに予防薬の開発(樋上)
、ホウ素中性子捕
捉療法の効率化のための DDS 開発(牧野)、感染症予防を目指した抗体医薬品の開発(千葉)、高脂血
症治療のための核酸医薬品の開発(鳥越)、神経系疾患に対する神経ペプチドによる治療法の開発
(岡)、抗寄生虫薬イベルメクチンを疥癬症治療薬としての適応取得のための基礎研究と臨床試験(廣
田、小茂田)等が進行している。
、これらのプロジェクトのいくつかは、今後、臨床応用されること
が期待される。今後、各々の研究テーマについて、同一の分野で臨床研究を行っている研究者を医
学部、医療機関から募り、本部門との共同研究を推進することにより、本学が保有しているシーズ
の臨床応用を目指したい。
(4)克服すべき課題と展望
本部門における現在の問題点として、第一に、外部医療機関との連携が未だ不十分であること
があげられる。今後は、個別の研究テーマ毎に、外部の有力な専門家を客員研究員として迎える
ことで、連携の幅を広げて行きたいと考えている
第二の問題点は、TR 部門としての研究予算の不足である。今年度は、是非、本部門に参加する
研究者が共同で大型の予算プロジェクトに申請し、まとまった金額の研究費の獲得を目指したい
と考えている。
第三の問題点は。本部門に所属する教員が教育や管理業務などの日常的なに時間を取られてし
まい、本部門の教員が一堂に会して意見を交換する時間が取りにくい点があげられる。今後は、
現在のメンバーである教授、准教授以外に、助教を中心にした若手研究者を積極的に本部門のメ
ンバーに加えることにより、共同研究に必要な情報交換の機会を拡充して行きたいと考えている。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
本部門では、これまでに TR 推進のために、同じテーマで研究に取り組む外部の研究者に客員
として本部門への参加を現在依頼してきた。その結果。これまでに具体的なテーマで本部門への
参加が決定している外部研究者は以下の通りである。
○新規大腸がん予防薬の開発、
基礎研究部門:国立がんセンター研究所がん予防基礎研究プロジェクト(武藤倫弘室長)
臨床研究部門:筑波大学附属病院消化器内科(兵頭一之介教授、鈴木英雄講師)、
○炎症性腸疾患に対する新規治療薬の開発
東京慈恵会医科大学柏病院消化器内科(大草敏史教授)
筑波大学附属病院消化器内科(鈴木英雄講師)
○慢性肝疾患に対する新規治療薬の開発
東京医科大学茨城医療センター消化器内科(松崎靖司教授)
○ホウ素中性子捕捉療法の効率化のための DDS 開発研究において、
筑波大学附属病院脳神経外科 (松村 明教授)
○生活習慣病、肥満研究、
湘南鎌倉総合病院(竹下 聡循環器科部長)、
朝永クリニック糖尿病生活習慣病予防センター(朝長 修センター長)
○若手研究者(Clinician Scientist)養成、倫理委員会整備、研究プロトコール作成支援
筑波大学次世代医療育成センター(原田義則教授)
○バイオバンク設立にむけた協力
筑波大学附属病院消化器外科、バイオバンク長(大河内信弘教授)
筑波大学附属病院病理診断部(野口雅之教授)
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総合研究機構「現状と課題」2011
創薬フロンティア研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
「創薬フロンティア研究部門」は、2001 年~2008 年に私立大学高度化推進事業学術フロンテ
ィアによって設立された「ゲノム創薬研究センター」が母体となり、発展的にテーマを絞り込み、
それにフォーカスした新しい研究体制を構築して設置に至った経緯がある。
最近、製薬企業では上市に至る新規医薬品の減少と、相次ぐ大型医薬品の特許切れやジェネリ
ック医薬品の浸透による販売額の大幅な減少が問題となっている。このような事態を招いた最大
の原因は、創薬を志向した基礎科学の遅れと、独自性の高い低分子化合物の開発戦略が十分でな
いことによるものと考えられる。このような現状を踏まえ、当部門では、新規リードの創成をゴ
ールに設定し、独自の創薬標的分子の同定と in silico 創薬手法の開発を基礎としたリード創成研
究を推進する事を目的とすることとした。
(2)今までの活動状況
本研究部門は以下の 3 つの研究グループと外部の研究者との連携により、最終ゴールである新
規リード化合物を創成することを目標としている。今までの各グループの活動状況を以下にまと
める。
1.創薬標的探索グループ
村上教授は、独自に開発した大規模ウェスタンブロットスクリーニング法、及び新生 RNA
を対象とした DNA マイクロアレイシステムにより新規創薬標的タンパク質分子を数種見出し
た。松野教授は、ショウジョウバエを用いた大規模遺伝学的解析法を創薬標的分子探索に活用
するシステムを構築した。
2.創薬リード創成グループ
田沼教授は、タンパク質-タンパク質相互作用およびタンパク質-酢酸相互作用を標的とし
た新しい創薬方法論を考案し、それを実装する手法として、それぞれ COSMOS 法及び BIOS
法を開発した。内呂准教授は、新規低分子化合物の新規全合成ルートの開発、及びメタロハイ
ブリット化合物の標的タンパク質分子との相互作用の解析をα軌道を中心に実施し、新しいコ
ンセプトによる分子設計評価及びそれを実装するソフトウェアの開発を進めている。
3.機能解析評価グループ
古市教授は神経変性疾患のモデルマウスを作製し、そのモデル系を用いて、創薬リード創成
グループで開発したリード化合物の評価系を確立した。鍜冶教授は、新規金属ハイブリッド化
合物の血管内皮細胞に及ぼす影響について解析した。廣田教授は、いくつかのリード化合物に
ついて、体内動態解析をマウス実験系を用いて実施した。
4.外部研究者としては、内山教授は金属ハイブリッド化合物のライブラリーの構築を行い、近
藤分野長・松村部長・黄講師らはヒト臨床検体を用いた薬効評価系の確立を行った。
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
1) DR396, an apoptotic DNase γ inhibitor, attenuates high mobility group box 1 release
from apoptotic cells. Yamada Y, Fujii T, Ishijima R, Tachibana H, Yokoue N, Takasawa
R, and Tanuma S. Bioorg. Med. Chem., 19, 168-71, 2011
アポトーシスの分子メカニズムの解明は、新規制がん剤の開発などにつながる重要な研究テー
マである。本論文は、アポトーシスで重要な役割をになっている DNase γ の阻害活性を有する
DR396 の機能を解析した結果をまとめたものである。
2) Genetic analyses using a mouse cell cycle mutant identifies magoh as a novel gene
involved in Cdk regulation. Inaki M, Kato D, Utsugi T, Onoda F, Hanaoka F, and
Murakami Y. Genes Cells. 16, 166-178, 2011
細胞周期調節で重要な役割を担っている Cdk の制御に関する新たな知見をまとめた論文であ
るが、従来、出芽酵母においてのみ可能であった遺伝学的解析手法を哺乳類でも用いることが
できるようにした意義は大きく、今後の創薬標的分子の探索で役立てていく予定である.
3) Roles of Drosophila Deltex in Notch receptor endocytic trafficking and activation.
Yamada, K., Fuwa, T. J., Ayukawa, T., Tanaka, T., Nakamura, A., Wilkin, M. B., Baron,
M., and Matsuno, K. Genes Cells 16, 261-272, 2011.
創薬標的分子の探索研究において、ショウジョウバエは大規模遺伝学的解析を行うことがで
きる重要なモデル生物である。本論文は、Notch 情報伝達系において重要な機能を担っている
Deltex の役割を解明につながる成果である。Notch 情報伝達系は最近制がん剤の重要な標的と
一つとして位置づけられている。
(4)克服すべき課題と展望
各 3 グループの研究そのものは、順調に進んでおり、多くの成果が得られているが、相互の連
携をさらに密に行い、大学病院等でのトランスレーショナルリサーチを実施できる程のリード化
合物の創成を早めに行うことが重要な課題となっている。また、知財の確保や導出先の製薬企業
への早い段階から連携交渉を行い、臨床治験をスムーズに実施できるルートを模索する必要があ
る。そして、本部門の独創的かつ実質的な研究成果を挙げることにより、社会に還元できること
を目指す。さらに、我々の研究成果を学術的雑誌に発表するとともに、国民にも分かりやすく紹
介することを行う予定である。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
現在、外部評価委員会として、防衛医科大学校の四ノ宮成祥教授、及び北海道大学触媒化学研
究センターの高橋保、並びにパデューウ大学根岸英一教授にアドバイスを受けている。今後さら
に学内外の有識者による諮問委員会を設置し、適正な評価を受けながら研究を推進する予定であ
る。また、総合研究機構内の他のセンター、及び部門の研究者とも積極的な交流を図ることによ
って連携を深めたいと考えている。
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総合研究機構「現状と課題」2011
社会連携部 大塚化学糖タンパク質工学研究プロジェクト
(1)グループの設置趣旨・経緯
バイオ医薬品は、組換え DNA 技術や細胞培養技術を用いて製造された、生体内に存在す
る生理活性物質を有効成分とする次世代医薬品である。その多くは糖鎖が結合した糖タンパ
ク質であり、腎性貧血薬であるエリスロポエチンや肝炎治療薬のインターフェロン、がん治
療に向けた抗体医薬品などが知られている。最近の研究成果から、糖鎖はタンパク質の立体
構造安定化や薬理作用発現に重要な役割を果たしていると考えられている。本研究プロジェ
クトは、数兆円を超えるバイオ医薬品市場である生物製剤の糖鎖部分に注目し、新たな糖タ
ンパク質医薬品の製造技術の開発を目指している。
本プロジェクトの共同研究者である、大阪大学大学院理学研究科の梶原康宏教授らは、世
界に先駆けて糖鎖を酵素化学法により大量調製する技術、糖鎖合成品をペプチドに修飾する
技術、さらに糖鎖修飾されたペプチド同志を連結し、糖タンパク質を完全に化学合成する技
術を開発した。これらの技術を基に、新たな化学合成技術(大阪大学)や生物機能の研究(東
京理科大学、本プロジェクト)
、医薬品化に向けた産業化のための展開研究(大塚化学株式会
社糖鎖工学研究所)を連携して進めていくことにより、新しい機能を有する糖タンパク質医
薬品の開発や、より安全性の高い糖タンパク質医薬品の製造技術を開発し、社会に貢献する
ことを目指している。
(2)今までの活動状況
本プロジェクトは、2007 年 7 月に民間企業との共同研究を推進するために総合研究機構に
初めて組織化された研究プロジェクトである。大塚化学株式会社 糖鎖工学研究所の研究員
4 名(うち、1 名は東京理科大学、客員教授)
、大阪大学教授 1 名、ポストドクトラル研究員
1名から構成され、生体内における糖鎖の機能を解明し、ペプチド糖鎖修飾技術および糖タ
ンパク質合成技術を確立することにより、バイオ医薬品の製造技術、創薬に新しいコンセプ
トを提示することを目指して研究を進めている。
(3)顕著な研究成果
「糖ペプチドの化学合成と生物評価に関する研究」
生理活性ペプチドは、生体内ではホルモンとして作用し、様々な生理現象を調節し、生命
機能の維持に重要な役割を担っている。生理活性ペプチドはその高い特異性と強力な生理活
性から医薬品への応用が期待されているが、生体に投与した場合、生体内で分解酵素により
速やかに分解されてしまう、分子量が小さいために腎クリアランスを受ける、アミノ酸配列
によって溶解性が低くなる、非ヒト配列等抗原性ペプチドに対する抗体が生成される、など
の理由から、生理活性ペプチドが生体内で生物活性を発現できず、医薬品化の大きな障害と
なっている。その改善に向けて、ペプチドの血中安定性を高めて生物活性を発現させる技術
として、ペプチドの化学的修飾技術やアミノ酸配列を改変する技術の開発が進められている。
大塚化学株式会社・糖鎖工学研究所では、酵素化学法を用いてヒト型 2 分岐糖鎖ライブラ
リーを作製し、得られた様々な構造の単一な糖鎖をペプチドに化学的に修飾した生理活性糖
ペプチドを合成している。本プロジェクトでは、消化管ホルモン GLP-1(glucagon-like
peptide-1)のトカゲホモログである糖尿病治療薬 Exenatide(Bayetta)を糖鎖修飾し、
Exenatide の生理作用に対する糖鎖修飾の効果を解析している。Exenatide(Bayetta)は、
治療のために反復投与すると、患者の血中に抗 Exenatide 抗体が出現することが知られてい
― 34 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
る。糖鎖修飾 Exenatide は生物活性を保持しつつ、抗体量が減少することが明らかとなり、
糖鎖修飾技術は、血中安定性を向上させるだけでなく、非ヒト配列に起因する抗原性を低下
させる作用を有しており、既存の分子改変技術と並んで生理活性ペプチドの機能を向上させ
る技術として有用であることを明らかとした。これらの研究により、医薬品化が困難であっ
た生理活性ペプチドの創薬に向けた新たな化学修飾技術の開発に取り組んでいる。
「T 細胞活性化における N-結合型糖鎖の構造と機能に関する研究」
糖タンパク質に付加する糖鎖は、発生・分化またウイルス感染や免疫応答などの様々な生
物学的機能に密接に関与すると考えられているが、糖鎖が糖タンパク質の機能発現にどのよ
うな影響を及ぼしているのかは、いまだ不明な点が多い。
本プロジェクトでは、T 細胞の活性化における N-結合型糖鎖の構造と機能に関する研究を
進めており、糖鎖の機能を明らかにすることにより、ペプチド医薬品やタンパク質医薬品を
糖鎖修飾により高機能化するための応用を目指している。
「糖タンパク質医薬品の新規合成と生物評価に関する研究」
糖タンパク質医薬品は細胞培養系で生産されており、細胞の種類や製造ロット間で糖鎖構
造の違い(多様性)を生じるため、低分子化合物医薬品のように化学的に均一な構造ではな
いこと、また動物細胞で生産するため、未知のウイルスや異種生物由来因子の混入の可能性
があるなどの理由により、品質管理レベルの高さが求められている。
本プロジェクトでは、大阪大学の梶原教授らのグループにより開発された糖タンパク質化
学合成技術の汎用性を検証するため、化学合成された生理活性糖タンパク質の生物評価を行
なっている。これらの研究を通して、従来型の培養細胞由来糖タンパク質と化学合成糖タン
パク質との生物機能の比較を行い、糖タンパク質化学合成技術の確立と医薬品化を目指す。
(4)克服すべき課題と展望
本プロジェクトは、民間企業との産学連携を組織的に推進するためのモデルとして総合研
究機構に組織化されており、アカデミックにおける基礎研究と民間企業による実用化技術を
産学連携の中で直線的に推進していくことが重要だと考えられる。今後も、糖鎖の生物学的
機能の解明、生体内反応を制御する新しい創薬ターゲットの探索や機能発現に最も適した糖
鎖が付加することによって高機能化した糖タンパク質・ペプチドを応用したバイオ医薬品の
研究開発を進めると共に、本学の産学連携の具体的な施策の成果として、学外に向けて研究
成果を発信していくことが課題である。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
特になし。
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総合研究機構「現状と課題」2011
放射線増感剤 SQAG の悪性腫瘍治療効果に関する研究開発プロジェクト
(1)グループの設置趣旨・経緯
SulfoQuinovosyl-Acyl-Glycerol (SQAG)は、私達が発見した強力な抗癌作用を有する含硫
糖脂質である。この実用化を目指し早くから“理科大横断的・異分野専門家のグループ研究
集団”を形成した。その結果、SQAG の持つバイオ活性を多方面から明らかにし、全合成や類
縁体の有機合成経路を初めて確立することに成功した。SQAG は放射線増感剤として末期固形
癌の治療に有効であり、これまでの化学療法剤ではなし得なかった新規癌治療法の確立へ大
きく貢献することが期待されている。これまでの異分野横断的基礎研究によって、抗癌剤と
して次のような SQAG の性質を明らかにした。これらの性質を併せ持つ制癌剤は、現在のとこ
ろ、国際的に SQAG 以外に存在しない。
・固形癌のみに集中して貯留する。結果として、重篤な副作用はほとんど全く示さない
・現在有効な薬物が存在しない腺癌や扁平上皮癌(癌患者の半数以上)にも著効を示す
・癌組織内部の血管新生のみ著しく阻害する毛細血管新生阻害作用を示す
・強力な放射線増感作用を有しており(増感率>3.0)、電離放射線照射と組み合わせると、
極めて低濃度で劇的な制癌効果を有する
結果として実用化を急ぐため、2008 年度から厚労省医薬基盤研のプロジェクトとして採
用され、理科大でも 2008 年 10 月 1 日付けで総研・社会連携部プロジェクトとして設置され
た。このプロジェクトは理科大横断的なばかりでなく、多数の他大学・研究機関も含めた共
同研究拠点プロジェクトに発展しつつある。治療用放射線量を少なくとも数分の一に下げる
ことが可能なことから、飛躍的な固形癌治療法の確立が予期される。
(2)今までの活動状況
SQAG の癌治療薬としての実用化に関する研究(放射線増感研究)
SQAGを癌治療薬として実用化することを目的とし、医薬品となりうる候補化合物(誘導
体)の取得および製剤化に関する研究を進めている。現在までに、合成した複数の誘導体の
中から放射線増感剤としての開発候補化合物を選定し、大量合成法を確立した。また、この
候補化合物の基礎物性試験を行ってスペックを確立した。現在は製剤化に向けた検討を実施
中である。また、腫瘍細胞についてin vitroおよびin vivo試験を行い、薬物貯留様式の知見を
得た。さらに合成したラベル体(14C標識化合物)を用いてヒト肺癌腫を移植したマウスの全
身オートラジオグラフィーを実施し、薬物の組織移行および腫瘍への貯留性を評価した。
SQAGをマウスに投与した試験においては、投与後に固形癌組織内の低酸素領域(放射線抵
抗性領域)が一時的に高酸素状態になり、血管新生阻害時に起こるとされる腫瘍血管の正常
化(vascular normalization)が見られることも分かった。現在は前臨床試験を委託・実施し、
GLP基準の安全性を確認すると共に、SQAGの分子作用メカニズムの解明に向けた試験を実
施中である。
2 SQAG をコアとしたキャリア物質の開発(DDS 研究)
SQAGの有する物質輸送能と癌集積能を利用することにより、転移がんをはじめとする小
さな癌を治療ターゲットとすることが可能となる。既存の抗癌剤やフッ素、ホウ素等をSQAG
とコンジュゲートさせ、分子イメージング用製剤や中性子補足療法のターゲット物質として
の性質を持たせた複合物質の合成経路を確立した。また、開発候補化合物のラベル体(14C標
識化合物)を化学合成するための予備的な検討合成を行った上で合成経路を確立し、委託合
成によりラベル体を得た。
3 自動照射癌治療ロボットの開発
SQAGを助剤とした放射線治療法を広く普及させるためには、普遍的な治療法を可能とす
る技術の開発が必要不可欠である。造影型SQAGを用いるロックオン型射撃管制装置付き医
1
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総合研究機構「現状と課題」2011
療ロボットの開発により、専門家の技量に依存しない普遍的かつ高精度の放射線治療を多く
の医療機関において同等に実施することが可能となる。SQAGが固形癌に滞留する性質を利
用し、放射性同位元素18Fでラベルした誘導体の合成とモデル動物における誘導体の集積およ
びその画像化について検討した。
(3)顕著な研究成果
SQAG は現在既に前臨床試験の段階に入っており、1~3年以内に臨床治験に入ることを
目指している。固形癌治療の可能性のある最初の医薬品であると私たちは考えている。現に、
麻布大学獣医病院との共同研究においては、イヌの原発性固形末期癌に著効を示し、1年以
上(ヒトの約5年に相当)の延命効果をもたらしたといいう臨床データも出ている(5例実
施し、いずれも良好な成績を収めている)
。そして SQAG の投与では副作用がほとんど現れ
ないことも確認されており、通常の放射線療法と比較して治療照射線量を低下させることを
可能としたことから、実用化への可能性が極めて高いと考えられる。また、日本並びに米国に
おいて既に特許も取得した。
(4)克服すべき課題と展望
現在までの研究経過から、SQAG は複数の性質を併せ持つ化合物であることが分かり、実
際の臨床研究においても著効を示すと共に、副作用をほとんど示さなかった。したがって、
SQAG の実用化への可能性はきわめて高い。一方で SQAG のような化合物は国際的にも前例
が無いことから、現在の理論のみでは説明不可能な、しかし極めて重要な性質が解明すべき
課題として残されている。まず、1)なぜ SQAG は癌細胞のみに集積するのか?、次に、2)
なぜ SQAG は放射線の効果を劇的に増感するのか?という疑問である。がんの診断マーカー
や糖鎖抗原などの基礎研究が盛んに実施されているが、SQAG の集積能を明確に説明する理
論や前例は現在でも皆無である。また、放射線増感作用メカニズムとして、活性酸素種の発
生や DNA 傷害、血管新生阻害作用などが考えられているが、他の増感剤と比較しても SQAG
の増感率は ER>3.0 と驚異的であり、in vitro の試験では細胞毒性も示さない。したがって、
いまだ解明されていない増感機構の存在を予測している。
現在、総合研究機構をはじめとした工学・物理学系の研究室の共同研究により、物理化学
的アプローチに基づいてこれらの解明研究を進めている。今後も多くの分野、学科にまたが
る研究室のお力添えを歓迎したい。そして、理科大発・実質的連携研究体制の真の成功例に
したい。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
本プロジェクトの外部諮問委員会はないが、多くの大学参加の拠点プロジェクトである。
これは理科大が統括リーダーとする拠点プロジェクトでもある。これまで東京医科歯科大学、
札幌医科大学、麻布大学獣医学部、東京女子医大、久留米大学との連携で進められており、
現在も共同研究を継続中である。また、SQAG の実用開発を効率的に実施するために 2008 年 3
月に理科大学発・創薬ベンチャー企業(株)CANGO を設立し、CANGO を介して多数の企業と本
格的な産学連携を開始している。さらに、現在前臨床試験を実施中であるが、次のステップで
ある人の臨床治験も視野に入れ準備を行っている。2010 年 11 月には北海道臨床開発機構(文部
科学省橋渡し拠点整備事業)に於いてインキュベーションシーズに採択され、人の臨床治験に入
るための協議を進めている。
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総合研究機構「現状と課題」2011
オーガンテクノロジーズ器官再生工学プロジェクト
(1)グループの設置趣旨・経緯
次世代再生医療として、疾患や傷害を受けた臓器や器官を、生体外で人工的に作製した器官と
置換する「臓器置換再生医療」を目指した基盤技術開発が期待されている。器官は、胎児期の上
皮・間葉相互作用によって誘導された器官原基から発生し、器官を構成する複数種の機能的な細
胞や神経、血管などが高度に組織化されて形成される。私たちは、器官発生の生物システムと工
学的な技術を用いて、単一化細胞から細胞操作により器官原基を再構築するための「器官原基法」
を世界に先駆けて開発し(Nature Methods 2007)、外胚葉性器官である歯や毛を高頻度で再生させ
ることを可能とすると共に、再生歯胚移植による機能的な歯の再生を可能とした(PNAS 2009)。
これらの技術開発から「臓器置換再生医療」の実現可能性が大きく高まったと考えられている。
臓器・器官の再生医療の基盤技術開発は、学術的な基礎研究としての高い価値を有するだけで
なく、再生治療に関わる基盤技術の知的財産を日本が保護して産業として育成することにより高
い経済効果が期待され、国策ともいうべき重要な課題としての意義を有している。そこで本研究
プロジェクトでは、民間企業と連携して、次世代再生医療としての「臓器置換再生医療」の基盤
技術開発を進め、その実用化技術を創出することを目指している。
(2)今までの活動状況
本研究プロジェクトは、2009 年 1 月に、東京理科大学と株式会社オーガンテクノロジーズ社の
共同研究の推進、並びに学外共同研究機関(岡山大学、東北大学、日本歯科大学)との連携研究
を推進するために設立された研究プロジェクトである。2010 年度は、東京理科大学総合研究機構
助教、並びにプロジェクト研究員 1 名、ポストドクトラル研究員 3 名、学外連携研究者 4 名、企
業からの共同研究員 1 名、技術者 1 名の体制で研究を実施した。2010 年度からは神奈川歯科大学、
民間企業 1 社も参加し、臓器置換再生医療に向けた研究開発に包括的に取り組んでいる。
(3)顕著な研究成果
本プロジェクトは、研究課題として、1)歯の再生医療システムの開発、2)毛髪の再生医療
システムの開発、3)臓器培養技術の開発を計画しており、本年度は、3)毛髪の再生医療システ
ムの開発で顕著な研究成果を得た。
●毛髪の再生医療システムの開発
私たちは胎児期における毛包発生メカニズムを再現できる「器官原基法」を開発し、胎児毛包
原基の上皮細胞と間葉系細胞より、成長方向の揃った毛包を人為的な三次元的細胞操作により再
生可能であることを示した(Nature Methods, 2007)。本年度に私たちは、毛髪の再生医療の実現
を目指して、成体毛包由来細胞による再生毛包原基が、成体皮膚内において正常な機能を保持し
た毛包再生するかについて研究を行った。
成体皮膚内において再生した毛包が周辺皮膚組織と正常に接続できるように、
「上皮組織間接続
形成法」を開発し、この技術を用いることで再生毛包原基から再生した毛包より高頻度で体表面
より発毛可能であることが明らかとなった。成体毛包の上皮性幹細胞領域細胞と毛乳頭細胞より
再生毛包原基を作製し、皮膚内移植することで、毛包の再生と発毛が可能であることを示した。
さらに、細胞の由来する毛包の種類に応じて、体毛と髭を作り分けることが可能であることが示
― 38 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
された。この再生毛は、毛種依存的な毛周期を長期間に渡って再現しているばかりか、毛種に特
徴的な様式により立毛筋と神経が接続しており、薬剤刺激により立毛応答可能であることが明ら
かとなった。これらのことから、再生毛包原基移植による毛髪再生医療の実現可能性があると共
に、器官の再生に伴う周辺組織との接続と相互作用に関する研究に応用可能であり、幅広い臓器
と器官の再生への波及効果が期待される。
本研究成果について、第 10 回再生医療学会にて研究発表を行い、第 16 回日本臨床毛髪学会学
術集会合同学術集会においてシンポジウム講演に招聘されたほか、器官再生に関する講演に 26 回
招聘された。毛髪再生に関する研究成果は以下の新聞および雑誌に取り上げられ、本研究分野に
対する期待の高さを示すと考えられた。
東京新聞(1 面、2011 年 2 月 27 日、
「毛を再生、生え換わりも
功
東京理科大学 大人のマウスで成
脱毛症治療に道」)、産経新聞(25 面、2011 年 2 月 27 日、
「毛の再生 マウスで成功
毛治療に応用へ」)、静岡新聞(2011 年 2 月 27 日、
「毛の再生に成功 東京理科大学
世界初 脱
マウス実験 頭
髪に応用期待」)、愛媛新聞(2011 年 2 月 27 日、
「毛の再生 マウスで成功 東京理科大学教授ら世
界初 自己移植治療へ期待」)、信濃毎日新聞(2011 年 2 月 27 日、
「マウスで毛の再生成功 東京理
大教授ら脱毛症に応用期待」)、読売新聞(14 面科学、2010 年 6 月 24 日、
「毛作り細胞」増殖研究
進む)、集英社週刊プレーボーイ(2010 年 10 月 18 日号)。
(4)克服すべき課題と展望
本プロジェクトは、民間企業、並びに学外研究機関との産学連携を組織的に推進してアカデミ
ックな基礎研究と民間企業による実用化研究を推進している。本プロジェクトは、歯の再生をモ
デルとした基礎研究としてインパクトのある研究成果を上げており、今後も下記の再生医療技術
の開発を学外研究機関、民間企業と共同で推進する。
(1) 歯の再生医療システムの開発
再生歯胚移植に加え、完成させた再生歯ユニット移植による歯の再生技術を開発する。今
後は胎児由来幹細胞以外に、成体由来幹細胞の探索と共に、iPS 細胞からの歯の誘導技術の
開発を目指す。
(2) 毛髪の再生医療システムの開発
2010 年度の研究を更に進め、成体由来毛包幹細胞を用いた毛髪再生医療の基盤技術を確立
する
(3) 臓器培養技術の開発
これまでの技術により培養した肝臓の生体移植を実施して、その有効性を明確化する。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
特になし。
― 39 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
低侵襲性乳ガン治療DDS開発プロジェクト
(1)グループの設置趣旨・経緯
低侵襲性乳がん治療 DDS 開発プロジェクトは 2009 年(平成 21 年)に発足したが、その前身は
東京理科大学総合研究機構 DDS 研究センターである。DDS 研究センターは、2004 年(平成 16 年)
に文部科学省私立大学学術研究高度化促進事業“ハイテクリサーチ・センター整備事業”に採択
されたことにより設立されたが、2008 年度にこのプロジェクトが終了したのに伴い、社会連携プ
ロジェクト「低侵襲性乳ガン治療 DDS 開発プロジェクト」として再発足したという経緯がある。
2008 年(平成 20 年)に、DDS 研究センターは独立行政法人科学技術振興機構(JST)の“独創
的シーズ展開事業”に、乳がん治療のための DDS 研究に関するプロジェクトを申請した結果、“初
期乳がんのイオントフォレシスを用いた治療システム”とする 7 年間のプロジェクトが採択され
た。本事業の開発実施企業の大鵬薬品工業株式会社が、東京理科大学 DDS 研究センターと共同し
てこのプロジェクトの実用化を目指すことになった。従って、2008 年度においては、このプロジ
ェクトに関する研究は DDS 研究センターにおけるプロジェクトの 1 つとして実行に移され、DDS
研究センターにおけるハイテクリサーチ事業が終了した 2009 年度からは、社会連携部のプロジェ
クトとして行われることになった。この様な経緯があるために、ハイテクリサーチ事業として DDS
研究センターで行われていた種々の研究プロジェクトは、引き続き社会連携部のプロジェクトの
一環として、その後も引き続き行うことになった。
しかし、2010 年度に、“戦略的物理製剤学研究基盤センター”(物理製剤学研究センター)が
新に発足したので、これらの研究プロジェクトは、主として物理製剤学研究センターにおいて行
い、“乳がんプロジェクト”は社会連携部において独立して行うこととした。但し、乳がんプロ
ジェクトの研究内容は物理製剤学センターにおいて行っている研究と基本的に同一の研究理念に
基づいているので、社会連携部においても、物理製剤学研究センターとの共同課題を行っている。
すなわち、社会連携部においては、下記の研究を行っている。
z
手術を行うことなく治療できる低侵襲性の乳がん
治療法の開発に関する研究
が中心課題であるが、これに加えて、
z
経肺吸収製剤を用いた、結核などの慢性難治性感染
症克服のための DDS
z
肺がん治療を目的とした経肺吸収製剤の開発
などの研究もおこなう。
図 1.低侵襲性乳がん治療法の
本研究センターにおける DDS 研究は、
概念図
z
生体の仕組み、特に生体防御系を活用した DDS
z
生体防御系の影響を可能な限り回避するために、病巣
部位近辺からの製剤の投与(local injection)を試みる
の 2 点である。すなわち、低侵襲性乳がん治療のために、乳
頭からイオントフォレシスによって抗がん薬を投与する(図
微粒子製剤
1)ことに加えて、結核などの慢性難治性感染症の治療を効率
的に行うために、結核菌が集積している肺胞マクロファージ
をターゲットにし、抗結核薬含有 DDS 製剤を肺胞に直接投与
結核菌
する。この方法は、生体防御系を構成しているマクロファー
マクロファージ
ジの貪食能を活用したものである。また、同様のコンセプト
によって、肺がん治療をも行うことを試みる(図 2)。これら
図2.肺胞マクロファージをターゲット
2.経肺投与による結核治療
図
は、local injection となる経肺投与を採用しており、乳ガ
の概念図
にした DDS
ン治療においても乳頭を介した乳管への local-injection
が DDS 製剤の投与法の基本となっている。
― 40 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
本年度の到達目標としては、
1) 低侵襲性乳がん治療はJSTのプロジェクト研究のプロトコールに従い、臨床試験を視野に
入れ、製剤開発、製剤の動物(イヌ)に対する有効性試験などの研究を進展させる。
2) 肺結核治療のDDSは、小動物試験レベルにまで到達させる。
3) 肺がん治療は効果的なDDS製剤の構築に向けた研究を行う。
(2)今までの活動状況
① 2010 年 10 月 15 日に、
「第8回東京理科大学薬学部 DDS 研究センターシンポジウム」を、
物理製剤学研究センターと戦略的物理製剤学研究基盤センター発足記念シンポジウムと
して東京理科大学森戸記念館において共同で開催した。このシンポジウムには 140 名が参
加し、6 題の講演と 21 題のポスター発表がなされた。DDS 研究センターシンポジウムは毎
年開催され、DDS 関連分野の研究者から大きな期待が寄せられている。本シンポジウムで
は、社会連携部と物理製剤学研究センターにおける研究成果の一端を紹介するために、各
研究グループの研究員及び所属学生がポスター発表を行った。いずれのポスターにも大勢
の参加者が詰めかけ、実りある討論を行うことができた。
② 2010 年 12 月 13 日~14 日に慢性難治性感染症克服のための第3回インド/日本国際シンポ
ジウムを東京理科大学森戸記念館において開催した。インド、アメリカ、韓国、ベトナム
等国外、国内から、150 名が参加し、13 題の講演と、本センターの研究員及び所属学生が
17 題のポスター発表を行った。インド、アメリカ、日本の共同研究により新規結核治療
DDS の効果を大型動物で検討するプロジェクトをインドが中心になって始めているので、
今後はそちらにも参加する予定である。
(3)顕著な研究成果
1) 低侵襲性乳ガン治療DDS開発:当初の計画よりもやや遅延が認められるものの、基本的に
計画を見直すことなく研究は進展している。
2) 生体の免疫能を活用した肺がん治療法に顕著な進展が見られた。
3) ナノDDSの発展の一つとしてナノコンポジット製剤の開発に成功した。
(4)克服すべき課題と展望
DDS 研究センターでは、1)DDS に対する新しい概念の提起、2)基本概念に基づく新たな DDS 開
発、3)その実用化を行いたい。DDS 研究センターの基本概念の 1 つである、生体システムに学び、
生体防御系を活用する DDS は極めてユニークであり、テクノロジー先行型の DDS とは異なってい
る。この基本コンセプトを生かして、新たな DDS の開発研究を行っていきたい。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
評価委員会を設け、永井恒司(永井記念薬学国際交流財団理事長)、戸口 始(大塚製薬㈱顧問)、
川島嘉明(愛知学院大学薬学部教授)
、橋田 充(京都大学大学院薬学研究科教授)、山下修司(大
塚製薬㈱顧問)の方々に評価委員に就任していただいている。
― 41 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
火災科学研究センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
火災科学研究センターは、前身の総合研究所火災科学研究部門を核とする組織が、平成15年度文部
科学省・21世紀COEプログラム「先導的建築火災安全工学研究の推進拠点」に採択されたことを受けて
設置された組織である。
本センターでは、火災に係わる諸現象を物理化学的な視点のみならず、社会学的な観点からも安全
対策を検討し、より確かな科学的根拠に基づいた建築物の火災安全評価および設計体系を構築すべ
く、火災物理・化学現象、火災時の人間挙動、火災統計・リスク評価に関する最先端の研究を推進し、そ
の成果を広く社会に還元、普及させる先導的な役割を担ってきた。
平成20年度採択されたグローバルCOEプログラム「先導的火災安全工学の東アジア教育研究拠点」で
は、21世紀COEプログラムの成果である “理論”としての性能的火災安全設計体系と“実践”としての大
型実験施設の活用による実験的研究を両輪に、さらに発展・深化させ、主に東アジアを対象として都市
化に伴う空間(超高層、地下)の出現および工業化・省エネルギー化に伴う材料(主にアルミニウム、プ
ラスチック)の利用に伴って増大する潜在的火災リスクの抑制を目的としている。
グローバルCOEプログラムを通して、先端的な研究推進のみならず、国際シンポジウム・セミナー、海
外集中講義の主催、査読付き英文研究論文集“International Journal for Fire Science and Technology”
の刊行(1981年創刊、2007年電子ジャーナル(J-STAGE)として世界中の人々に無料で公開)、活動を紹
介するNEWSレターの発行(季刊紙)、日本語と英語の2ヶ国語によるアジア諸国で発生する火災ネットニ
ュースの配信、火災科学のビデオ教材の制作、実験棟を活用した産官からの研究受託等を充実させ、人
材育成、国際協力、社会貢献も含めて、多面的に火災科学分野の発展に寄与する活動を展開してい
る。
また、アジア地域で唯一総合的に火災科学分野の教育研究を行う国際火災科学研究科の開設(平成
22 年度)は、本プログラムの主に教育拠点形成計画の核をなす部分であり、第 1 期生として留学生 1 名を
含む 18 名の大学院生を受入れ、主な科目に英語講義を採用した新大学院教育プログラムを実行してい
る。また、この修士課程を梃子に博士後期課程への進学意欲が促進されることが期待されるため、国際
火災科学研究科に国内初の火災科学分野に特化した博士後期課程を新設する構想を持っている。
(2)今までの活動状況
22.4.30
22.6.22
先端学術研究人材養成事業 若手研究者によるワークショップを開催(森戸記念館)
第 6 回セミナー「アジアの新たな火災危険と防火システムを考える」バングラデシュ・ケー
ススタディを開催(東京)
22.7.19-20 チリ・カトリカ大学において国際セミナーに参加、講演
22.7.22-27 バングラデシュ・ダッカにおいて火災調査
22.8.24-30 トルコ・イスタンブールにおいて過去の火災被害調査
22.10.6-7 韓国・ソウルにおいて国際フォーラムに参加、講演
22.10.18 公開講座「江戸東京の火災被害の歴史」を開催(森戸記念館・東京)
22.11.25 住宅火災安全シンポジウムの開催(森戸記念館)
22.11.21-23 バングラデシュ・ダッカにおいて集中講義を開催
22.12.27-29 ベトナム・ハノイにおいて集中講義を開催
23.1.3-6 バングラデシュ・ダッカ及びその近郊において大規模縫製工場の火災調査
23.3.27-30
東日本大震災の津波と火災の現地調査
※平成 22 年度の活動のみ紹介
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
○ 平成 22 年 4 月、神楽坂キャンパスに設立した国際火災科学研究科において、従来、学内で分散さ
れていた教育・研究体制の集約を図り実行に至った。(グローバル COE プログラムの拠点形成計画
の一環)
○ 火災科学のビデオ教材の作成:教育活動での導入支援として、火災科学の基本を説明する 3 作目
「耐火構造」のビデオを製作した。
○ 国際学術交流協定の推進:従来の 10 校に加え、新たに韓国・湖西大学と学術交流協定を締結した
(22.4)。
○ 海外出張講義:平成 21 年度に引き続きハノイ(ベトナム)の国立建設大学(National University of
Civil Engineering)、及びバングラデシュにおいて建築防火の海外出張講義を実施した。このような海
外出張講義は、今後の東アジア諸国との国際交流のモデルとなると考えている。
○ 海外火災被害調査:東アジア及びその周辺地域の各地の防火事情や主な火災事故の調査を目的と
して、バングラデシュ、トルコ、韓国へ調査団を派遣した。この活動は、現地の消防機関や政府・行
政・大学機関にアプローチして実施し、調査にあたっては、現地の消防機関関係者と一緒に行動し、
問題点を指摘することにより教育的効果を出すとともに、改善の方向付けを行っている。また、調査団
の参加者を選定する際には、必ず若手研究者を含めるようにして、若手研究者の体験教育の機会と
なるようにしている。
○ 住宅火災安全シンポジウム:研究者や消防官などを招き、GCOE 住宅防火研究会における研究成果
や今後の研究計画の発表を兼ねて、死者火災の統計データ分析や避難行動・煙性状に関するシミ
ュレーションなどを題材として住宅火災安全のパネルディスカッションを開催した(22.10)。
○ 東日本大震災火災被害調査:今後の防災計画に役立てるため、「TUS 東日本大震災調査本部」を設
置し、現地での火災被害の調査分析を行った。報告会では、調査から見えてきた、東日本大震災の
津波被害、火災被害の実態だけでなく、地震調査全体の動き、地震火災の全体的な特徴などにつ
いて、学内関係者・学生を対象に講演し、USTREAM によるライブ配信も試みた。
(4)克服すべき課題と展望
○ 火災科学研究センター実験棟の経済的自立に向けた運営方策(受託実験等による収益事業の展
開。上記装置の購入資金返済のための収益事業の展開)
○ 国際火災科学研究科修士課程における入学者の確保(留学生への支援策も含む)、及び博士後期
課程の設置構想の実現
○ グローバル COE プログラム終了後の教育研究活動の継続
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
グローバル COE 外部評価委員による中間評価を独自に実施している。
● 室崎 益輝 氏(関西学院大学 教授)
● 橋爪 毅 氏(能美防災株式会社 代表取締役社長)
● 山崎 登 氏(日本放送協会 解説副委員長)
● Prof. Elizabeth Weckman(Professor, University of Waterloo)
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総合研究機構「現状と課題」2011
危機管理・安全科学技術研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
本部門は近年社会的に益々重要となってきた危機管理・安全科学技術研究分野において、科
学技術開発研究、人材育成、国際的危機管理情報収集を三つの柱とする教育研究基盤を、東
京理科大学内に構築することを目的として、平成 20 年 10 月 1 日に設置された。従来の縦割
り型の研究が多数を占める本総合研究機構において、本部門はこれらの科学技術研究の成果、
および外部の研究成果を自在に採り入れると同時に、社会のニーズに敏感に反応して、新し
い社会技術とも言うべきシステム化技術を研究し、注目すべき科学技術の「社会実装」を目指
すこととした。また、研究成果から、シンポジウム等において危機管理の教育と情報発信を
行ない、事業継続管理(BCM)を進める人材を育成することに社会的な特色を有する。
(2)今までの活動状況
当部門は理科大専任教員 11 名と、様々な分野の最前線で活躍する客員教員 16 名で構成されて
いる。今年度は重点研究課題の 5 分野について、ワーキンググループ単位に活動し、本部門研究
者、及び外部の専門家を招いて討論を重ねた。研究結果は部門主催のシンポジウムで学内外に発
信した。
危機管理・安全科学技術研究部門の活動概要
企業リスクマネージメント部会
企業の事業継続等の問題を扱う。2009 年 11 月に第 3 回シンポジウム『企業の危機管理
の国際標準-BCM の最新動向』を企画・実施。
国民生活リスクマネージメント部会
2009 年 5 月 29 日に第 2 回シンポジウム『世界的危機と安心・安全社会』、2010 年 11 月
に第 5 回シンポジウム「日中それぞれの防災危機管理」を企画・実施。
コーポレートコンプライアンス部会
コンプライアンスの観点から企業の危機管理手法を考察する。2010 年 3 月に第 4 回シン
ポジウム『安全安心な日本社会へ-英国における事故防止システムを参考に』を企画・
実施。研究成果の冊子を発行。
人間の安心安全部会
人間の生体情報を分析することにより、安全安心・快適・健康生活へと導く手法を研究す
る。2009 年 3 月 第 1 回シンポジウム『人間安心技術』を企画・実施。さらに安全安心に
関する人間情報センシング技術の開発を行い、2011 年 7 月 12 日開催予定の第 7 回シン
ポジウム『酷暑・節電日本の健康危機管理』を企画。
自然・人工物・環境安全部会
鳥と航空機との衝突、クマやイノシシ、カラスによる人への襲撃、渡り鳥による感染症
の伝播など、自然環境における野生動物と人間生活との軋轢について研究する。またバ
イオテクノロジーやセンサテクノロジーを用いた環境工学の研究を行う。2011 年 3 月開
催のシンポジウム『野生動物と人間生活との軋轢-その実態と対策』を企画し、多くの
参加申込みがあったが、震災のため延期。2011 年 9 月、開催予定。
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
1. 安全安心な日本社会へ-英国における事故防止システムを参考に
福知山線脱線事故、港区エレベーター事故等に関して、事故防止に関する制度、及び運用
の在り方が問題にされている。この問題を、事故防止という社会の要請に応えるコンプライ
アンスという観点から検討した。コンプライアンスを、議会が決定した国家の方針を反映し
て政府が作成するポリシーを実施する全ての仕組みと取り組みととらえる英国における制度
と運用の実情、企業のコンプライアンスの取組み等について、英国から議会の大物を招聘し、
国家としてのコンプライアンスシステムが、安全安心な社会の実現にとっていかに重要であ
るかを議論した。そして、この問題に関する日本の各分野の専門家を交えたパネルディスカ
ッションにより、安全安心な社会に向けて、日本における事故防止の制度、企業の取り組み
等についてとりまとめ冊子を発行した。
2. 日中それぞれの防災危機管理
日本も中国も地震大国である。次の巨大地震への備えは、日中両国の危機管理にとって最
大課題の一つであり、地震以外にも台風や洪水、異常気象といった危機に対する対応は如何
に行うべきか。日本と中国の現状を調査研究し、事業継続の考え方も加えて今後の日本と中
国の防災とそこでの協力のあり方についてとりまとめた。
3. 酷暑・節電日本の健康危機管理
未曽有の東日本大地震による近年の電力不足は、地球温暖化の潮流と相まって、酷暑の到
来時に熱中症やヒューマンエラーなどによる重大事故の原因となり、事業継続計画(BCP)に
も深刻な影響を与えることが危惧される。このような日本社会の危機に対処するために、人
間の体温調節システムをウェアラブル技術で実現し、環境の変化に即応する科学技術につい
てとりまとめた。
(4)克服すべき課題と展望
危機管理と安全安心の研究の本質は、人工物・自然環境の中に存在する人間そのものの研究
に帰着する。事故やリスク、病気、温暖化などの外部要因に反応する人間の挙動を科学的デ
ータに基づき、すなわちエビデンスベースで記述し、体系化することが求められる。センサ
や IT ネットワークを駆使した人間の研究と、それらが集団化した時の人間群研究を工学・医
学・心理学・社会学の専門家と体系化を考えるジェネラリストの協業が不可欠である。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
・東京大学名誉 教授、原発事故調査・検証委員会 委員長 畑村 洋太郎(危険学)
・情報セキュリティ大学院大学 学長 林 紘一郎
・英国国会科学技術研究所 所長 Prof. David Cope(事故防止)
・東京大学大学院医学系研究科 教授 矢作 直樹(救急医療)
など、グループ外の有識者と連携しながら、危機管理安全科学の研究を進めている。
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総合研究機構「現状と課題」2011
次世代データマイニング研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
表1 構成メンバー
現代の科学技術活動の基盤には,莫大なデ
職名
所属
氏 名
主な研究分野
ータからどのように意味のある情報を抽出
し,知識として獲得するかが極めて重要であ
人工知 能, デー
理工学部経営
教授
大和田勇人
工学科
タマイニング
り,ミクロレベルでは遺伝子・分子設計から,
マクロでは地球環境まで,大規模データの収
創薬, 分子 ライ
薬学部生命創
教授
青木 伸
薬科学科
ブラリ
集とそこからの意味の抽出は,今や計算機科
学の手を借りなければ一歩も進まない状況と
理工学部経営
教授
尾島善一 統計工学
工学科
なっている.本研究部門の前身である知識イ
ンタフェース研究部門は,こうした問題意識
理工学部応用
教授
朽津和幸 システム生物学
のもとで,大規模データの収集から意味の抽
生物科学科
出・提示までを研究対象にし,幅広い分野に
理工学部土木
教授
小島尚人 画像処理
対して学際的な方法論を展開した.これに対
工学科
して,次世代データマイニング研究部門は,
理工学部経営
教授
基本的な問題意識は同じであるが,応用分野
鈴木知道 多変量解析
工学科
を医療・生命系に絞り,そこで必要となるデ
分散コ ンピ ュー
理工学部情報
ータマイニング技術に焦点を当てて,人工知
教授
武田正之
科学科
ティング
能や統計学を専門とする研究組織の下で次世
人工知 能, デー
理工学部経営
代データマイニングソフトウェアを研究開発
教授
溝口文雄
工学科
タマイニング
することが目的である.具体的には,医用画
像データベース,生命系データベース,薬物・ 理工学部経営 教授
森 俊介 時系列解析
工学科
化合物ライブラリから得られる知見を生か
し,そうしたデータベースからの知識や規則
理工学部情報
准教授 滝本宗宏
コンパイラ
科学科
性の抽出を行うデータマイニングツールを伝
統的な統計的方法と人工知能による高度推論
理工学部情報
講師
佐藤圭子 情報理論
科学科
エンジンを組み合わせて開発することで,新
しい高度情報処理技術を創生することを目指
プログ ラミ ング
理工学部経営
講師
西山裕之
工学科
す.
言語
従来から統計的なデータ解析は工業,農業
遺伝的 アル ゴリ
理工学部経営
講師
原田 拓
などにおいて広く利用されてきたが,ゲノム
工学科
ズム
情報を代表とするような大規模データに対し
理工学部経営
助教
安井清一 統計工学
ては,統計とデータベースを組み合わせたデ
工学科
ータマイニング技術が有効であるとされ,
様々なマイニングソフトウェアが学術レベル,商用レベルで開発されている.しかしながら,
大規模データから意味ある情報を知識として獲得するには,人工知能で扱われている学習機
能が不可欠であり,こうした高度な情報処理を前面に出したマイニングソフトウェアは世界
的に見てもほとんどない.唯一の例外はインペリアルカレッジ計算機科学科教授である S.
Muggleton が提案した帰納的学習法であり,これは述語論理体系での高度な学習機能を実現
する.しかしながら,医療・生命系でのスタンダードなデータに対しては適用不能であり,
こうした対象にも応用可能とするためには,統計学,情報科学,ソフトウェア工学の専門家
の連携によってもたらされる頑健で高性能な情報処理技術を開発する必要がある.こうして
開発されたマイニングソフトウェアは現状のものを大幅に超えたものといえ,そのインパク
トは多大であるといえる.また,これは現代の科学技術開発を支援する新しいツールを提供
するものと言え,その学術的な貢献も非常に大であると考えられる.
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総合研究機構「現状と課題」2011
(2)今までの活動状況
本研究部門は本年度の 4 月に正式に活動を開始しているが,昨年度末より既に先行研究を
実施しており,部門発足直前の 3 月末に米国フロリダで開催された国際会議(ICEME および
IMCIC)にて,2 件の論文が採択され研究発表を行っている(成果 1,成果 2)
.1 つ目の研究
発表(成果 1)はドラッグデザインにデータマイニング技術を応用した研究に関する内容と
なっており,本研究部門の課題に直結した先行研究となっている.2 つ目の研究発表(成果 2)
はスマートフォンを用いたユーザの利用状況やライフログの情報収集に関する研究であり,
本研究部門で学習対象となるデータの収集を可能にする先行研究となっている.
また,新たに開始された研究成果の一部も,8 月にカナダのバンフで開催予定の国際会議
(ICCI*CC)にて採択され発表予定となっている(成果 3)
.この研究発表は成果 2 の継続的な
研究として位置付けられており,スマートフォンを用いた情報収集時におけるユーザビリテ
ィの画期的な改善を実現している.
さらに,同 8 月には,米国カリフォルニアのバークレー大学にて研究発表会を予定してお
り,バークレー大学の D. Tyger 教授,Palo Alto Research Center の M. Sierhuis 博士らと
の研究交流も実施する.本研究発表および交流のテーマは成果 3 の内容を中心としているが,
成果 2 および成果 3 の内容を発展させた研究として,収集した情報をスマートフォン内で解
析および学習するという新しい研究内容についての論議も実施する予定である.
(3)顕著な研究成果
[成果 1] Okada Masato, Tsukamoto Masato, Ohwada Hayato, Aoki, Shin: Consensus Scoring to
Improve the Predictive Power of In-Silico Screening for Drug Design, ICEME 2011,
2011.
[成果 2] Hiroyuki Nishiyama and Fumio Mizoguchi: Design of a User-Support System Based on
Cooperation Between a Smart Phone and a Personal Computer, The 2nd International
Multi-Conference on Complexity, Informatics and Cybernetics: IMCIC 2011, pp.42-47,
2011.
[成果 3] Hiroyuki Nishiyama and Fumio Mizoguchi: Cognitive Support by Smart Phone - Human
Judgment on Cosmetic Skin Analysis Support - , The 10th IEEE International Conference
on COGNITIVE INFORMATICS & COGNITIVE COMPUTING: ICCI*CC 2011, 2011. (accepted)
(4)克服すべき課題と展望
現在、ライフログ研究における個人の行動履歴の情報、スケジュール情報、各種診断結果
等の自動取得と自律的なウエブ検索機能を用いることで個人のための行動支援インターフェ
ースを設計しているが、その際個人情報のセキュリティが問題として挙げられ、これを解決
することが急務である。センサー情報のセキュリティ管理ですでに実績のあるバークレイ大
学と連携を図り、この問題にアプローチする。一方、データマイニングツールに関しては、
画像やセンサー情報から知識レベルの情報を獲得する方法を研究する。データマイニング国
際会議で開催されるツールの性能評価コンテストに参加し、世界一になることを目指す。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
無し
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総合研究機構「現状と課題」2011
山岳大気研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
地上からの影響を直接受けない、高度約 2000m 以上の自由対流圏では、健康影響、物質循環、気候
影響、大気電気の立場からさまざまな観測が行われている。山岳地域は、航空機観測やリモートセン
シングに比べ、比較的安価に連続的に現場の観測ができるメリットがある。山岳大気の観測は、バッ
クグラウンド大気のモニター、中国大陸からの長距離輸送、大気質の物理・化学特性、雲過程、宇宙
線、雷放電時に発生する放射線、電磁波、大気電場、大気伝導率など多岐に及んでいる。国内では、
富士山をはじめ、乗鞍岳、立山、木曽駒ヶ岳、榛名山、丹沢など多くの山で観測されている。
富士山頂は、日本最高の高さを持ち孤立峰であるという立地条件のほかに、測候所というインフラ
が整備されていることから、多くの観測が行われてきた。しかし、気象衛星の発達などにより富士山
頂での気象観測の必要性は低下したとの判断から 1999 年にレーダー観測が停止され、2004 年に富士
山測候所は無人化された。しかし、その後も富士山頂での観測を必要と感じる研究者が集まり、富士
山高所科学研究会を経て、2005 年 NPO 法人「富士山測候所を活用する会」が設立され、2006 年から夏
季限定ではあるが、富士山頂で観測を行っている。
このような状況で、当部門を設立した目的は2つある。
ひとつは、山岳大気研究の連絡会となることである。これまで個々の研究機関、プロジェクトがそ
れぞれの山岳地域で行ってきた成果を交換し、さまざまなノウハウを共有することにより、個々の研
究の活性化を図るとともに、さらなる共同研究をすすめる。
もうひとつの目的は山岳大気観測のネットワーク化をめざすことである。ネットワーク化にあたり、
測定器、測定法の標準化、データ公表の標準化、データ転送・遠隔操作の確立、自動化をめざす。山
岳だけではなく、対照地点とし、各研究者の拠点である平地でも観測を行い比較する。さらに、NPO「富
士山測候所を活用する会」と連携し、東アジア(台湾、韓国、中国など)、ユングフラウヨッホ(スイ
ス)、マウナロア(ハワイ)など、グローバルなネットワークをめざす。
(2)今までの活動状況
2011 年
4 月 1 日 新設
6 月 11 日 第1回山岳大気シンポジウム
神楽坂ポルタ 7 階第3会議室 講演者 16 名、参加者 42 名
山岳大気研究部門の紹介
三浦和彦
部門長、東京理科大学理学部准教授
上空の放射線を富士山頂で見張る
保田浩志
放射線医学総合研究所チームリーダー
地表からのラドン散逸について
児島 紘
東京理科大学理工学部教授
日本の自由対流圏におけるラドンの起源 永野勝裕
東京理科大学理工学部講師
富士山頂での一酸化炭素およびオゾンの測定
加藤俊吾 首都大学東京都市環境学部准教授
富士山におけるオゾン濃度の鉛直分布と季節変化 藤田慎一
初冬期のつくばにおける粒子状物質の鉛直分布
速水
洋
電力中央研究所研究顧問
エアロゾルの新粒子生成、成長と雲凝結核に関する研究
電力中央研究所上席研究員
三浦和彦 東京理科大学理学部准教授
大気中スス含有粒子の形態と水溶性物質との混合状態 上田紗也子 東京理科大学理学部ポスドク
黄砂粒子に含まれる鉄成分の溶解性
緒方裕子
早稲田大学創造理工学部助教
富士山頂での黄砂観測
小林 拓
山梨大学大学院医学工学総合研究部准教授
気象研究所での山岳を利用した大気エアロゾル研究の紹介
五十嵐康人
立山でのエアロゾルモニタリングと、標高差を用いた沈着過程の研究
気象研究所室長
長田和雄
名古屋大学大学院
環境科学研究科准教授
太陽放射観測と積雪断面調査から観る立山の山岳大気研究
青木一真
富山大学大学院准教授
能登半島の山で大気を見る
皆巳幸也
石川県立大学生物資源環境学部准教授
コメント「電子顕微鏡でできること」
加藤大樹
東京理科大学理学部助教
6 月 12 日 富士山観測打ち合わせ
神楽坂ポルタ 7 階第3会議室 参加者 12 名
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
まだない。
(4)克服すべき課題と展望
課題
学内のメンバーを増やす。
展望
新メンバー(6 月 1 日) 1名
上田沙也子 理学部第一部ポストドクトラル研究員
シンポジウム開催後申請中のメンバー 3名
加藤 大樹 東京理科大学理学部第一部助教
野島 雅
東京理科大学総合研究機構講師
浅野 比
山口東京理科大学工学部助教
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
以下の先生方に評価委員をお願いし、シンポジウムにご参加頂いた。
土器屋由紀子 江戸川大学名誉教授 NPO 法人「富士山測候所を活用する会」理事、学術委員長
畠山史郎 東京農工大学教授 NPO 法人「富士山測候所を活用する会」理事長
植松光夫 東京大学大気海洋研究所教授、国際連携研究センター長、大気化学研究会会長
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総合研究機構「現状と課題」2011
インテリジェントシステム研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
インテリジェントシステム研究部門の起源は、昭和 58 年 4 月に発足したバイオシステム研
究部門にあり、その後、昭和 63 年 4 月に工学的システムに「インテリジェンス」をもたせる
ために必要な基礎分野から応用分野にいたる幅広いテーマに関する研究を遂行することを目
的としたインテリジェントシステム研究部門に発展的に引き継がれた。平成 17 年 11 月に総
合研究所が総合研究機構に組織改変されたのにともない、インテリジェントシステム研究部
門は、
「ソフトウェア応用・ネットワーク分野、ハードウェア分野、エネルギー環境分野、基
礎理論分野の相互連携・融合により、人に優しいヒューマンライクなインテリジェントシス
テムの実現を目指す」を研究活動の理念として掲げ、平成 23 年 3 月までの設置期間 5 年間に
渡って積極的な活動を行ってきた。平成 23 年 4 月より、今までの活動から得られた知見を基
に、
「ヒューマンライクで自律性を持つ人に優しいインテリジェントシステムの医療、宇宙応
用に向けての研究開発を行うこと」を目的として、改組の上、新たに 5 年間の存続が認めら
れた。
当部門の研究活動資金は、受託研究費等の民間・公的外部資金の受入れによるもので、各
研究員個々の努力によるところが大であるが、工学的なアプリケーションの研究を行ってい
るメンバが多く、民間企業からの獲得資金が多いのが特徴と言える。当部門は、平成 23 年 6
月 20 日現在で、本学の専任教員 11 名(内訳、理工・電情 6 名、理工・経営 2 名、理工・情
報 1 名、理一・数情・1 名、基礎工・電応 1 名)の併任研究員、諏訪東京理科大学・電子シ
ステム専任教員 1 名、客員教授 2 名、客員研究員 3 名の合計 17 名の研究者から構成されて
いる。
(2)今までの活動状況
当部門は、本年度より改組し、ハードウェア分野、ソフトウェア分野、通信・ネットワー
ク分野、エネルギーシステム分野の4分野に大別し、新体制の下で活動を開始しはじめたと
ころである。しかし、大部分の研究者は前部門より継続的に活動しており、2010 年度は学会、
国際会議等において 107 編(査読付き 27 編、査読無し 80 編)の学術論文を著した。2006 年
~2010 年 3 月末の 5 年間では、119 編の査読つき論文、202 編の査読なし論文を著し、8 件
の特許出願と 5 件の論文賞等を受賞している。また、公的資金や民間からの受託研究費等の
獲得実績も大きく、2006 年~2010 年 9 月までの間に約 1 億 6000 万円の研究活動資金を
獲得している。さらに 2010 年 8 月 30 日、31 日開催の総合研究機構フォーラム 2010(野田校
舎講義棟)では当部門の研究活動における現状と課題について報告し、他センターから共同研
究可能である旨のコメントおよびオファーをいただいた。また、2010 年 11 月 25 日(金)には、
野田校舎講義棟 K510 にて、領域「環境・情報・社会」の第 1 回ワークショップ「コンピュ
ータを支えるサイエンス、コンピュータを活用するサイエンス」を企画開催し、機構長、ア
ドバイザーを交え、各部門・センター代表者による 5 件の講演および質疑応答を行った。ま
た、2006 年度から毎年度末に恒例となっている研究成果報告会を 2011 年 3 月 4 日に、カナ
ル会館にて開催し、植松幸生氏(NTT コミュニケーションズ)による「ネットマーケティン
グのためのユーザ行動抽出技術」
、原田哲也先生による「身近になってきたバーチャルリアリ
ティ技術」の 2 件の特別講演と、各研究グループ代表者による研究活動紹介 7 件、ポスター
発表 41 件の講演が行われた。同報告会開催については、大学および科学技術交流センターホ
ームページを通じて開催案内を学内外に広報し、学外の方々にも多数参加いただくよう努め
た。多くの参加者のもと活発な質疑応答が展開され、貴重なコメントをうかがうことができ
た。併せて同報告会論文集(A4 判 210 頁)を刊行し、同報告会出席者、部門メンバ、東京理科
大学関係各位に配布した。
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
工学的システムに「インテリジェンス」を持たせる研究のハードウェア分野としては、数々
の新しい回路を提案し、その集積回路化,特許化に努めている。この結果、高周波無線機用
の受信要素回路である低雑音増幅器やミキサ回路、高速通信用要素回路、その他、機器にイ
ンテリジェンスを持たせるための可変容易なハードウェアの基礎回路などを集積回路として
実現し、学会発表などを行っている。これらのうち、ミキサ回路については特許出願も行っ
た。また、最先端の微細集積回路化技術において問題となる、ばらつきに対する検討も行い、
学会発表などを行っている。
医療・福祉・ヘルスケアに関する応用分野では、体内埋込み型人工心臓システム、生体内
の筋肉・脂肪分布計測に関してはすでに得られた研究成果は学会や国際会議において発表し
た。カプセル型内視鏡に関してはエネルギー供給法の研究成果を学会にて発表した。電磁波
の癌診断や治療への応用に関する研究では、マイクロ波を用いた乳がん発見に関する電磁界
解析によるシミュレーションにより、早期発見の可能性を示唆する成果を得ており、学会に
て発表を行った。ワイヤレスエネルギー供給に関しては携帯電話への充電エネルギー伝送に
ついて成果を挙げており、学会で発表済みである。
宇宙応用に関しては、マイクロラブサット 1 号機の画像取得装置やソーラー電力セイル実
証機の展開モニタシステム、宇宙ステーション「きぼう」有人宇宙活動支援ロボット手先監
視カメラなど、数多くの実績を上げている。また、関節装置や、移動体位置検出システムに
ついて特許を出願している。
ソフトウェア分野においては、矛盾した知識から自明でない結論を導く推論や、人工生命、
強化学習、不正検出システム、などに関して成果を挙げており、学会発表などを行っている。
通信ネットワーク分野では、高機能誤り制御や協力通信機能を設けた無線通信方式や解析
手法について、すでに数々の方式で成果を挙げている。
エネルギーシステム分野においては、分散型エネルギーシステムや地域交通計画システム
評価で長い実績があり、査読付き研究論文は過去 5 年間に 9 編を出版している。
(4)克服すべき課題と展望
宇宙での応用や体内診断用システムや体内埋め込みシステムに代表される医用生体応用機
器など装置自体にインテリジェンスを持たせるためには、ハードウェアの小型化、省電力化、
通信方式、少ないハード上でもインテリジェンスを発揮するソフトウェアなど総合的な研究
が必要となり、さらには、このような応用に対して有効となるソフトウェア無線など、ソフ
トウェアを搭載するハードウェアの高性能・高機能化が必要不可欠となる。このように、人
とマシンにかかわるこの分野の研究は、改良と発展において、終わりのない研究が必要であ
り、ハード的な知識とを融合させ、インテリジェンスをより高度に応用することは継続され
るべき課題となっている。前部門においては、各グループがインテリジェントシステムの要
素となる技術の研究成果を多数創出し基礎的な部分に関して多くの実績がある。このため、
上記の課題の解決に向けて各グループが問題意識を共有し、いままでの成果を融合させてい
くことで着実に成果を挙げることが出来ると考えている。また、他センターからの共同研究
のお申しでなどもあり、相互に共同研究の必要性が認識され、近々共同研究の第一歩を踏み
出せるものと期待している。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
評価委員会・諮問委員会について、設置を検討している。また、グループ外の学内外有識
者との連携については、現段階では各研究グループや各研究者が個人的に連絡を取り合い連
携している状況である。
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総合研究機構「現状と課題」2011
長万部地域社会研究部門
(1) グループの設置趣旨・経緯
日本は高度成長期からバブル崩壊期を経て、低経済成長、巨額の債務と少子高齢化現象を
抱えた社会(日本病)を迎えた。このような状況下で当然のごとく、日本の大学を取り巻く
環境も大きく変化している。かって「象牙の塔」と呼ばれた大学は、大衆化を経て商業化が
進み、その役割も大きく変貌している。研究と教育に加え、社会貢献が問われるようになっ
た。一方で、自然環境の悪化やエネルギー問題は地球規模化し、その対策が求められている。
このような社会状況下で、これからの大学(人)には“智の探求”や“技術の開発”は無論、
さらに“智と技の統合”による社会貢献が求められる。
25年前に1学部2キャンパス制の基礎工学部が設立され、新入生は1年間北海道長万
部町の全寮制キャンパスで過ごすことになった。初期の頃、小石教授と本田助手(現本田教
授)がホタテ貝殻の再利用法の研究を開始した。最近の長万部町議会において、ホタテのウ
ロのカドミウム汚染や養殖筏へのザラボヤ付着問題等の解決のため、東京理科大学への協力
要請が議論されている。一方で町の少子高齢化は進行し、これに対して町有志による「第3
次まちづくり総合計画」(2111〜2020)がスタートし、その議長は基礎工学部長万
部教養部の榎本教授が務めている。また多くの長万部キャンパスの教職員と学生は長万部町
民であり、町の将来は同時に長万部キャンパスの将来でもある。
以上のような状況を鑑み、長万部地域の問題(将来)を研究しかつ解決法を探求しようと、
基礎工学部の教員を中心に他学部の教員の協力を得て本プロジェクトが設立された。
(2)今まで活動状況
本プロジェクトは平成23年度10月にスタートした。そのために以下の準備を行った。
ホタテ養殖の全行程の現地調査
友岡教授は漁業組合を訪れ、漁港—水揚げの行程から、加工業者の工場および処理後に出
る産業廃棄物の保管場までの全ての行程を視察し、それぞれの行程における問題点の説
明を受けた。
竹内准教授のホタテ貝のカドミウム汚染及び貝殻の現状調査
カドミウム汚染はホタテ漁業地域にとって永年の課題で、竹内准教授はそれぞれの地域
での対応策を調査した。また長万部町では公的補助金を利用して除去プラントを建設し
たが、期待した効果が得られていない等の調査結果をまとめた。
川向教授の長万部町現地視察
川向教授は長万部町を訪れ、事務部長の案内で町を視察し、
「まちづくり」に関して町民
を対象に講演を行った。
新井教授の長万部町現地視察
新井教授は長万部町を訪れ、事務部長の案内で町の歴史的建築物、景勝地等の調査を行
い、さらに町役場を訪れ町長、まちづくり計画の議長(榎本教授)
、友岡教授と懇談した。
町議会議長及び漁協との調整
友岡教授は木幡議長及び漁協組合員と協議し、研究資材としてホタテ貝の東京地方への
輸送方法等を確認した。
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総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
部門がスタートして間もないために、特に記載すべき研究成果はない。
部門発足に際しプレスリリースが行われ、日本経済新聞北海道版、読売新聞北海道版、
北海道新聞、函館新聞が本部門の紹介記事を掲載した。またこれらの記事を参考に、
北海道開発局の職員4名が本部門調査のため長万部町を訪れ、本部門からは榎本教授
が説明を行った。
以上のことは、北海道民にとって本プロジェクトは大きな関心事であり、期待されて
いることが伺える。
(4)克服すべき課題と展望
部門がスタートして間もないために、具体的な「課題」や「展望」には直面していな
いが、以下の点に関して対策が必要である。
1)
研究テーマ毎の連絡会議の結果、1〜2名の分担者の追加が必要と思われ
る。フォーラム等の機会に本部門への参加者を募る。
2)
研究者が東京地区(神楽坂キャンパスと野田キャンパス)と長万部地区に別
れているために、全体会議等の連絡にはテレビ会議等の工夫が必要である。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
評価委員会設立の準備中である。
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総合研究機構「現状と課題」2011
赤外自由電子レーザー研究センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
赤外自由電子レーザー研究センター(FEL-TUS)は、文部科学省科学研究費補助金学術創成研究費
による研究プロジェクト「赤外自由電子レーザーの高性能化とそれを用いた光科学」(研究代表
者:故黒田晴雄)によって平成11年4月に総合研究所の附属研究施設として発足したものである。
特長の一つは、これまで装置開発中心であった自由電子レーザー(FEL)の研究分野において、光利
用研究を中心に推進する施設という点である。また基幹装置は、5-14μmの中赤外領域に発振波
長があるMIR-FELである。
(2)今までの活動状況
・平成11年度~15年度 (科研費学術創成プロジェクト)
赤外自由電子レーザー装置の製作、発振、及び光利用研究の開始
・平成16年度~18年度
装置の安定化・高出力化、光利用(分子科学)における基礎的研究成果
高エネルギー加速器研究機構・大学等連携支援事業(平成17年度~)に採択
・平成19年度~20年度
文部科学省「先端研究施設共用イノベーション創出事業【産業戦略利用】に採択
外部光利用ユーザーとして企業利用開始
・平成21年度~
文部科学省「先端研究施設共用促進事業」に採択
平成21年度より外部ユーザー有償利用開始
平成21年度末に共用体制整備状況評価を受け事業継続
平成 22 年度は 9 利用課題(学内 4、学外 4、共同 1)が実施されており、学内利用グループは
理学部一部化学科築山研究室、理学部一部物理科徳永研究室、本研究センター、学外は企業 3 社
と他大学、独法研究所である。
シンポジウム、セミナー
◎先端研究施設共用促進事業「阪大-理科大合同シンポジウム」(第 3 回)
平成 23 年 1 月 20 日、森戸記念会館第一フォーラム
同事業に光分野で参加している大阪大学レーザーエネルギー学研究センターとの共催
◎FEL-TUS Chemical Physics Seminar
平成 22 年 8 月 6 日、神楽坂校舎 5 号館
講師:登野健介博士(理化学研究所 X 線自由電子レーザー計画推進本部)
X 線自由電子レーザー計画の進捗状況とともに、FEL が切り拓くサイエンスの展望
(3)顕著な研究成果
◎“13C-selective infrared multiple photon dissociation of b-propiolacton by a free electron
laser”, Y. Miyamoto, T. Majima, S. Arai,(大陽日酸) K. Katusmata, H. Akagi, A. Maeada
(大陽日酸), H. Hata, K. Karamochi, Y. Kato(前FELセンター研究員), and K. Tsukiyama
(FELセンター長), Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 269(2011)180-184.
大陽日酸(株)が当センターの MIR-FEL を利用して実施していた同位体分離の実験について、
産業利用に波及する基礎的な学術的成果公表を促進するため、当センターと共著による原著論文
を発表した。
◎“Visible Nonlinear Band-Edge Luminescence in ZnSe and CdS Excited by a Mid-Infrared
Free-Electron Laser”, E. Tokunaga, N. Sato, J. Korenaga, T. Imai, S. Sato, and H. Hamaguchi,
Opt. Rev. 17, 1 (2010).
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総合研究機構「現状と課題」2011
(4)克服すべき課題と展望
・FIR(遠赤外)-FEL
当研究センターには、現在ユーザー運転を行っている MIR-FEL とは別にもう一台 FIR(遠赤
外)-FEL 装置が設置されている。電子ビームの生成・加速、自発光の検出まで成功しているがレ
ーザー発振には至っておらず、そのためには装置運転しながらの高精度な調整等克服しなければ
ならない開発要素が残されている。一方、FIR(THz)光源の開発とその応用は hot topics であり、
周波数混合技術の発展により、既にテーブルトップ中赤外光源において分光計測への応用が報告
されているが、FEL のような強力光源によるものは皆無である。このようなことから、FIR-FEL の
整備を進め当施設の独自性のさらなる展開を図ることは一つの活路である。ただし、MIR と FIR
は共通の高周波大電源により駆動させるが、その出力の限界から二台の同時運転は不可能である。
そのため、文科省補助事業(「先端研究施設共用促進事業」
)による「MIR 外部ユーザー運転の推
進」、
「MIR 学内ユーザー利用」、
「FIR 整備」の三者のバランスが研究推進における課題である。ま
た、上述の通り FIR 発振には課題が残されており、加速器科学を専門とし専従(もしくはそれに
近い)できるスタッフが不可欠と言える。
・運転資金の確保
FEL は既成の装置と異なり、専門性の高い技術、経験等が運転、維持・管理には必要であり技
術者の業務委託を行っており、光熱水費を含め、装置運転に千万円単位の高いコストがかかるこ
とは否めない。自助自立を目指し、文科省補助事業、外部ユーザーからの利用料徴収(平成 21 年
度より有償利用開始)など着実に前進してきているが、引き続きの課題である。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
・評価委員会
平成 22 年度 先端研究施設共用促進事業・事業評価委員会 平成 22 年 6 月 28 日
外部評価委員 岩田 章 (財)新産業創造研究機構 技術アドバイザー
(その他の出席者:センター関連スタッフ、産官学連携課職員および FEL リエゾン)
内容:平成 21 年度実施の MIR-FEL による利用課題の評価等
評価概要:
◎FEL による成果を実用化する場合は、FEL を光源として使うことに問題がある。この問題をクリ
ヤーするためには、赤外領域の波長可変固体レーザーの適用を検討する必要がある。このような
固体レーザーはすでに実用化されている。固体レーザーの利用は決して FEL を否定するものでは
なく、基礎研究段階は光性能の秀でた FEL を使い、実用化段階では、光性能は劣るが取り扱いが
容易で低価格の固体レーザーを適用する、というものである。
◎産学連携を推進するためには技術シーズの PR が不可欠。共用ナビ(文科省運営ホームページ)
のみならず、企業に数多くいる理科大卒業生の目に留まる媒体での PR も活用してほしい。また、
過去の光利用研究の成果も、今後の産学連携の技術シーズとして活用してほしい。
◎技術立国日本が世界に伍していくために、産業界はより先端的な技術シーズを欲している。そ
のような技術シーズを生み出すためにはより先端的な実験ツールが必要で、理科大 FEL センター
はわが国唯一の FEL 共同利用施設としてその期待は大きい。
・学外有識者との連携
高エネルギー加速器研究機構(KEK)・加速器研究施設入射器グループ
(設楽哲夫・加速器研究施設教授 他)
FEL 装置の主要部は電子加速器であり、加速分野において豊富な経験と高い技術力のある KEK
から協力、助言いただいていると共に、KEK の実施する大学等連携支援事業に採択されており、
共同で加速器開発研究を行っている。
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総合研究機構「現状と課題」2011
先端ホログラフィ技術研究開発センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
本センターは、文部科学省平成 23 年度「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」に応募し、
平成 23 年 5 月 31 日に採択され設立された。このセンターの前身は、次世代フォトニック応
用研究部門(平成 18 年 10 月 1 日(設置年月日)~平成 23 年 3 月 31 日)であり、当初から
ホログラフィを用いた技術開発を行ってきた。研究部門での期間中、ホログラフィを用いた
記憶素子、流体計測に関して進展が得られ、さらに、部門内で検討を重ねた結果、これらの
精度をさらに向上できる可能性が出てきた。そのため、ホログラフィ応用分野における研究
拠点を形成することを目標として、研究プロジェクト名を、
「ホログラフィ技術による次世代
記録媒体作製技術および四次元流体計測技術の開発」とし、本センターを設置した。
(2)今までの活動状況
センターは発足したばかりであるが、申請にあたって以下の準備を行ってきた。研究体制
としては、ホログラフィによる記録媒体の作製、転写、記録・再生を行う「ホログラフィッ
クメモリ構築グループ」と、四次元の流体計測を行う「ホログラフィ応用計測グループ」の
2 グループからなる。前者のグループでは、高精度な ROM(Read Only Memory:読込みの
みの記録媒体)の作製を目指して、ナノオーダーの形状創製が可能な電子ビーム露光法によ
り原盤を作製し、これを樹脂へ転写することにより大量生産技術を確立する。また、ディス
ク状(同心円状)に、ピットパターンを刻むために、電子ビーム露光装置(真空装置内)に
回転ステージを導入する必要がある。この開発に、機械要素の開発の先生を新しくメンバー
に加えた。また、ROM 媒体作製では高精度な樹脂流動の解明が必要であり、流体計測グルー
プの技術活用が必須である。次に、ホログラフィ応用計測グループでは、界面付近での流体
の流れを観察するために導波路ホログラムを用いた計測技術を確立する。これは、導波路に
レーザーを入射させ垂直方向から他媒質へ漏れ出す光を用いたもので、界面の流体計測を可
能にする。導波路ホログラムを用いた流体計測では微小領域でのホログラム再生メカニズム
の解明が必要であり、メモリ構築グループの技術活用が必須である。このように、本センタ
ーでは、新メンバーを加え、二つのグループが緊密に連携し、シナジー効果を生かし研究開
発を進めていく。
(3)顕著な研究成果
本センターは発足したばかりなので、研究部門での5年間の成果をまとめる。研究部門時
代には、フォトニックの原理実証、計測手法の開発などを行うグループと、これらフォトニ
ック応用に必要となるフォトニックデバイスを作製するグループとが協調して研究を行っ
た。ホログラフィックメモリの研究では、フォトポリマーの反応拡散過程、記録再生シミュ
レーション技術、信号処理技術などメモリシステムを構築するための設計・シミュレーショ
ン技術が確立された。さらに、外部のシステムメーカおよび媒体メーカとの技術連携体制を
構築し、RAM(書き換え可能な)記憶媒体の実用化を目的とした研究を加速することができ
た。ホログラフィを用いた流体計測の研究では、マイクロチャネル内の流れなど、ミクロン
オーダーの流体の挙動を観察することが可能となった。フォトニックデバイスの作製の研究
では、グラッシーカーボンにイオンビームを照射するだけという簡単なプロセスで、反射防
止構造(モス・アイ構造)を形成できることがわかった。また、この反射防止構造を用いて、
ナノインプリント(ナノオーダーの型押し技術)により樹脂への転写も可能となった。
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総合研究機構「現状と課題」2011
また、流体計測グループとデバイス作製グループとが共同して、ホログラム計測用校正プレ
ートの作製と動作確認を行った。この開発により、ホログラム計測時の奥行きの位置を特定
することが可能となった。また、ホログラムを用いた流体計測技術で、ナノインプリント時
の樹脂の挙動を把握することが可能となった。具体的には、樹脂には光硬化樹脂を用いてい
るが、この樹脂の硬化時の移動量を計測することができた。
(4)克服すべき課題と展望
研究部門時代に、フォトニックの原理実証、計測手法の開発などのグループと、デバイス
を作製するグループが協調して研究開発にあたった。その結果、それぞれの連携による成果
が得られたが、さらなる発展を得るためには不足している技術があることが分かった。例え
ば、ホログラフィックメモリの研究では、ディスクにするためには回転させながらパターン
を作製する必要がある。そのためには、真空中で動作する回転ステージが必要であり、機械
要素の開発のできるメンバーが必要となった。また、ホログラフィ応用流体計測の研究では、
界面の流れの可視化が難しいということが分かった。これを解決するためには、ホログラフ
ィックメモリの研究で検討されていた、導波路ホログラフィの技術を流体計測へ拡張するこ
とにより、界面付近の流れの可視化が可能となると考えている。これらの考察は、本研究部
門内での議論の結果であり、この導波路ホログラフィを行うためにも特殊な装置を開発する
必要が出てきた。
そこで、上記の課題と対策を踏まえて、センター化を行った。現在は、センターになった
ばかりではあるが、目標としている性能が得られるかどうかシミュレーションを行っている。
その後、機械要素設計等に移る予定である。今後の展望としては、まずは、原理実証を行い、
その後、量産を踏まえた研究開発の道筋をつけてゆく。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
現状、センターが発足して間もないため、今後、評価委員会の委員を選定し、依頼を行う
予定である。評価委員は、学内3名、学外7名を予定している。
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総合研究機構「現状と課題」2011
量子生命情報研究部門
(1)グループの設置趣旨・経緯
ここ15年ほど、生命情報と量子情報に関連する研究が様々な形でなされている。本研究部門の研
究者も、これらに関わる研究に長年携わってきたが、お互いの研究について話を交わしているうちに、
生命情報の研究と量子情報の研究が深く関わっていることに気づいてきた。現在は、あまりに性急に
生命情報と量子情報という新しい学問を“役立てよう”とするために、基本的な問題が蔑ろにされて
いるきらいがある。そこで、これら2つの情報分野の原点に立ち戻り、多くの基礎的な問題を整理し、
それらを解決するために2つの分野の相互乗り入れに真剣に取り組むために QBIC を立ち上げ、5年
間の共同研究プロジェクトを実施してきた。このような研究プロジェクトは、世界でも類がないもの
として評価されつつある。しかしながら、本研究課題の最終目標である「生命情報処理を包摂した量
子生命情報論」の構築の第一歩が QBIC においてなされたが、まだ研究途上であり更なる継続的な研
究が必要である。よって、本研究部門での目的は、QBIC において未だ解決できなかった問題に取り
組むことである。
(2)今までの活動状況
本研究部門の前身の量子生命情報研究センター(QBIC)では、本研究課題に関して5年間の共同
研究プロジェクトを実施してきた。
数理・量子情報分野と生命情報科学分野は当初使用言語も異なり、ほとんどの研究者が相互に
理解することが不可能な状態であった。しかし、プロジェクト進行の1~2 年の間の勉強会、セ
ミナー、毎年の国際シンポジウムなどにより、様々な分野の研究者がお互いにそれぞれの概念や
原理を理解し、新たな生命情報解析の方法を見出すことができた。QBIC プロジェクトにおける
研究成果は項目(3)に記載した。
こうした研究成果から、量子論的絡み状態(エンタングルド状態)の理解や量子情報の考え方
を生命活動の情報処理に適用することが生命科学研究者にも可能となり、強い相関を持つ相互作
用が働く多くの生命現象が、実は量子的な情報処理に深くかかわっていることがわかった。見か
け上離れた分野の研究者を集わせた本プロジェクトによって、こうした新たな視点の創出、新た
な研究領域の開拓の可能性がもたらされたことは、大きな成果だと考えている。
QBIC プロジェクトでの活動を踏まえ、我々の未解決な問題に取り組むことが本部門の目的であ
る。それゆえに、QBIC で出された様々な問題が本研究部門の主たる課題である。
(3)顕著な研究成果
<1> 塩基配列、アミノ酸配列から生命の謎を解読する数理の構築
(1) エンタングルメントという考えを取り入れることにより高精度のアライメント手法を開発した。
(2) 各遺伝子上流のシスエレメントの分布を予測し、解析した。
<2> 量子情報理論における課題の解明とその生命情報への適用
(1) 非完全量子エンタングルド状態に対する完全量子テレポーテーションの数理の確立。
(2) 無限次元を含むヒルベルト空間におけるエンタングルド状態の解析。
(3) カオス尺度の数理的研究とその生命現象への応用。
<3> 量子アルゴリズム論の展開と量子ビットの実現へ向けての基礎的研究
(1) アルゴリズム論において大問題であるNPC問題を、カオス量子アルゴリズムおよびAdaptive力学に
よって解決した。
(2) カオス量子アルゴリズムのゲノム整列化への適用。
<4> 生命システム理解と量子計算
(1) タンパク質折り畳みシミュレーションの高速化とFCANALの拡充。
(2) 遺伝子発現の網羅的解析と、細胞内シグナルネットワークの構築。
(3) タンパク質の折り畳み過程をシミュレーションする量子アルゴリズムの提案。
<5> 生命情報処理を包摂した量子生命情報論の提唱
(1)“観る”ことを数理化した適応力学が生命と量子情報の融合に役立つことのいくつかがわかり始め
た.
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総合研究機構「現状と課題」2011
(2) HIV-1、Influenza A virusなどにおける生体変異の解析に適応力学を応用した。(2) 一般化量子
チューリング機械の構成。
(3) 脳機能を記述する数理モデルをFock空間において構成した。
(4)克服すべき課題と展望
本研究部門で研究課題として取り組む継続研究が必要な未解決問題は以下の通りである。
<1> 塩基配列、アミノ酸配列から生命の謎を解読する数理の構築
(1) 高精度アライメント法を実装したソフトウェアの開発およびWEBでの公開。
(2) 遺伝子を中心としたゲノム配列構造の統一的な理解に向けた数理の確立。
<2> 量子情報理論における課題の解明とその生命情報への適用
(1) これまでのQBICでの研究をベースとして、無限次元ヒルベルト空間における量子エンタングルド
状態の完全な特徴付けと分類。
(2) 無限次元ヒルベルト空間における量子テレポーテーションの構築。
(3) 上記の成果 (2)と同じ方法論を使った様々な生命現象への適用。
(4) 量子 tomography 過程の数理の研究。
(5)Adaptive力学をベースとしたPD(囚人のジレンマ)モデルの解析。
(6) 一般化Fock空間上で定式化した脳の認識過程とPDモデルの関連性の検討。
<3> 量子アルゴリズム論の展開と量子ビットの実現へ向けての基礎的研究
(1)カオス量子アルゴリズムを用いてExponential Timeに係わる問題の解決を試みる。
(2) 光合成反応のプロセスを量子情報理論を用いて数学的に議論する。
(3) デコヒーレンスの時間が長いQubit(量子ビット)の実現。
<4> 生命システム理解と量子計算
(1)タンパク質の折り畳み過程をシミュレーションする量子アルゴリズムの完成。
<5> 生命情報処理を包摂した量子生命情報論の提唱
<1>~<5>の研究テーマの基に QBIC における最終目標と考えていた量子生命情報理論の数理の確立。
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
QBIC プロジェクトにおいて行ってきた研究は、生命情報と量子情報という2つの学問の原点
に立ち戻り、多くの基礎的な問題を整理しそれらを解決するために2つの分野の相互乗り入れを
真剣に目指した点で、世界的に見ても類のないものであった。本研究部門は、この精神・研究の
方向性を引き継いでいる。
本研究部門の研究分担者には入っていないが、多くの学外共同研究者がいる。前身となる QBIC
プロジェクトからの継続研究を行うため、引き続き以下の各大学、研究所の研究者と共同研究を
行う予定である。
京都大学、国立遺伝学研究所、理化学研究所、米国・カルテック大、イタリア・ローマ II 大、ド
イツ大、ドイツ・コトバス大、ポーランド・コペルニクス大、ポーランド・グダニスク大、英国・
ノッチンガム大、ケンブリッジ大、ハンガリー・ブタペスト大、スウェーデン・リンネ大、ロシ
ア・ステクロウ数理研究所(モスクワ大学付置研究所)
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総合研究機構「現状と課題」2011
イメージングフロンティア研究部門
(1) グループの設置趣旨・経緯
多くの生物種のゲノム情報が明らかになった今、生命科学の広範な分野の研究の発展にと
って、生体内の分子の動態やそれらの相互作用を生きたまま解析するライブイメージング技
術は不可欠である。本研究部門では、レーザー技術、新規蛍光プローブ技術、物性理論、多
様な生物種・細胞のライブイメージングの研究者が一体となって学際的な研究を展開するこ
とにより、次世代 in vivo FRET や近赤外 in vivo 蛍光イメージングなど、生命科学のさまざま
な分野にブレークスルーをもたらす、斬新なイメージング技術の開発を目指している。理科
大発の強力な方法論を世界に向けて発信すると同時に、理工学と生命科学の双方の分野に精
通した視野の広い人材を育成する。
本研究部門は、2010 年 12 月に設立された野田イメージングアライアンス(http://www.rs.
noda.tus.ac.jp/~nodaia/index. html)を母体とする。野田イメージングアライアンスは、学
内外のさまざまな分野の専門家の間で互いの研究活動を把握して共同研究を促進すること、
および次世代の担い手である若手・学生の啓発を目的として、ワークショップを定期的に開
催している。本研究部門は、こうした活動を通じて連携研究を模索したメンバーが中心とな
り、2011 年 10 月に発足し、活動を開始した。現在、部門メンバーの構成は、理工・物理2
名、理工・応生3名、生命研2名、基礎工・材工1名の計8名である。このように多様な専
門領域をカバーする本学の特長を生かした連携により、広範な分野に波及効果を持つ革新的
なイメージング技術の創生が期待される。
(2) 今まで活動状況
本研究部門を設立するにあたり母体となった野田イメージングアライアンスでは、イメー
ジング研究に関わる研究者相互の研究内容を理解すること、学生・若手研究者を育成するこ
とを目的として、ワークショップ等の活動を行っている。本研究部門においてもこれを踏襲
し、さらに、生命科学の研究に資する最先端のイメージング技術を開発する研究拠点として
活動を開始したところである。
2011年10月20日、野田キャンパス講義棟K503において、イメージングフロンティア研究部
門セミナーを開催した。小島清嗣博士(オリンパス株式会社戦略担当部長)より「進化する
バイオイメージング」と題してご講演いただき、多数の教員・学生が参加して活発な意見交
換が行われた。また、2011年12月10日には、野田キャンパスカナル会館3階大会議室におい
て、イメージングフロンティア研究部門キックオフシンポジウムを開催する予定である。東
山哲也先生(名古屋大学教授)他のご講演と研究部門メンバー8名の研究活動紹介を中心と
した企画で準備を進めている。
(3) 顕著な研究成果
本研究部門は、2011 年 10 月に発足し、活動を開始したところであり、連携研究の成果報
告は次回に譲るが、既にメンバー間の共同研究を開始している。
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総合研究機構「現状と課題」2011
(4) 克服すべき課題と展望
多光子顕微鏡を用いた蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)センサーによる in vivo FRET イメ
ージングでは、2種類の蛍光タンパク質を用いてその蛍光強度の比をとることで分子活性を
定量するため、蛍光タンパク質間で多光子励起による褪色速度が異なる場合は致命的な問題
となる。そこで、多光子顕微鏡の励起レーザー光に位相制御を施すことにより、新規蛍光タ
ンパク質に対しても褪色を最小限に抑えつつ、ペアの褪色速度を揃えることを可能とする。
ダイナミックレンジの高い in vivo FRET に特化した新規 FRET センサーの開発、量子化学計算
にもとづいた蛍光タンパク質の発光・褪色過程の解析と併せて、汎用性の高い in vivo FRET
イメージングの実現を目指す。
波長 1000 nm を超える近赤外 in vivo 蛍光イメージングでは、可視光の多色イメージングに
対応する多波長イメージングを可能とするため、希土類含有セラミックスナノ粒子から成る
蛍光体プローブとして、Yb-Er 共ドープイットリアに加え、Yb-Ho 共ドープイットリアを用い
る。このような新たな蛍光プローブを開発することにより、近赤外 in vivo 蛍光イメージング
の多波長化を実現する。
また、最先端のイメージング技術の開発には、多様な専門領域の研究者の連携が不可欠で
ある。本研究部門のメンバーとして学外から客員研究員を迎えることで、より幅の広い連携
研究を展開したいと考えている。学内からは助教・PD を含めた多くの研究者を加えることに
より、さらなる部門の活性化を図りたい。また、現状では、それぞれのメンバーの研究室で
分散して研究を行なっているが、連携研究の活動拠点、および相互の理解を深める情報交換
の場として、研究部門のスペースの確保が必要である。
(5) 評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
本研究部門は発足して間もないため、これから評価委員会・諮問委員会等を設置する予定
である。これまで部門メンバーが個々にさまざまな学内外の研究者と連携を図っており、こ
うした学内外の研究者に依頼して、委員として御参加いただくことを検討している。
― 61 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
研究機器センター
(1)グループの設置趣旨・経緯
(A)研究機器センターの設置趣旨・目的
1. 東京理科大学研究体制の強化
2. 先端機器の確保と有効利用による研究環境の構築
3. 研究体制の一元化
4. 施設、設備、装置の効率的な運用
5. 学内研究資源の効率的利用
6. 全学の意志を反映した機器の管理運営
7. 所管設備等の運用の管轄、整備、保守、管理
8. 全学的視野で、将来を見据えた戦略的機器の導入
(B)研究機器センター設立の経緯
1967 年 共同研究施設運営委員会発足
1985 年 機器センター運営委員会
2005 年 総合研究機構設立
2006 年 総合研究機構研究機器センターに改組(総合研究機構研究技術部)
(2)今までの活動状況
(A)研究機器センター改革の推移
1. 研究機器センター規程の制定と改定
2. 研究機器センター細則の制定(設備分類基準の制定と管理台帳システムの変更)
3. 設備の登録・抹消・廃棄基準の制定
4. 終了研究センター所管設備の研究機器センターへの登録及び移管に関する取扱要項
の制定
5. 研究機器センター予算の配分及び執行に関する取扱要項の制定
6. 保守契約の一元化による経費の有効利用
7. 諸書式の簡略化
8. 専門的な技術者による管理と院生の測定指導
9. 学内研究資源の有効活用
(B)登録機器の現状:登録装置総数:90台(2011.6 現在)
○管理形態による分類
1. 集中管理:19台(高性能で、スループットが大きく、メンテナンスに特殊な技術を
要する設備)
2. 共同管理:45台(高性能ではあるが、教育された大学院生でも操作可能な装置であ
り、共通性が大きい設備)
3. 分散管理:23台(学科または研究室に設置する方が効率・効果的な設備)
4. ユーティリティ関連:3台(液体窒素供給設備)
○種類別の分類
質量分析装置(9 台)
、核磁気共鳴装置(12 台)、X線解析装置(7 台)
、蛍光X線分析装
置(2 台)、走査型電子顕微鏡(6 台)、透過型電子顕微鏡(6 台)、原子間力顕微鏡(3
台)
、レーザーシステム(1 台)
、分光光度計(11 台)
、その他1:分析設備等(8 台)
、
その他2:生体材料解析装置(14 台)
、その他3:特殊測定システム(8 台)
、ユーティ
リティ関連設備(3 台)
(C)平成 22 年度登録装置:11 台
1. 高周波プラズマ発光分析装置(平成 21 年度特別設備予算;研究機器センター申請)
2.レーザーマイクロダイセクション(平成 21 年度特別設備予算)
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総合研究機構「現状と課題」2011
3.ICP 発光分光分析装置(平成 21 年度特別設備予算)
4.高速近赤外フォトルミネッセンス測定装置(平成 21 年度特別設備予算)
5.走査透過型・三次元分析電子顕微鏡システム(平成 21 年度特別設備予算)
6.広帯域偏光顕微反射分光システム(平成 21 年度特別設備予算)
7.1 分子蛍光分析システム MF20(終了研究センターより移管)
8.顕微レーザーラマン分光装置(終了研究センターより移管)
9.飛行時間型質量分析装置(終了研究センターより移管)
10.光電子分光装置(終了研究センターより移管)
11.電界放射走査顕微鏡 CL 装置(終了研究センターより移管)
(D)平成 23 年度登録装置:9 台
1. 高速原子間力顕微鏡(平成 22 年度特別設備予算;研究機器センター申請)
2. 高温ガス環境制御型ナノスケール反応解析装置(平成 22 年度特別設備予算)
3. 超高感度等温滴定型カロリメータ(平成 22 年度特別設備予算)
4. 高温高速摩擦試験装置(平成 22 年度特別設備予算)
5. マルチラベルカウンター(平成 22 年度特別設備予算)
6. 電界放出型走査電子顕微鏡(NEDO ナノテク・先端部材実用化研究開発費)
7. 高感度迅速粉末 X 線回折装置(分割再登録)
8. 高感度迅速単結晶 X 線構造解析装置(分割再登録)
9. 電子分光型分析電子顕微鏡観察装置(終了研究センターより移管)
(E)進行中の活動
全学的利用予約システムの構築、研究機器センター登録機器以外の学内装置情報の集約公開
(3)顕著な研究成果
(A)研究機器センターの運営
1. 予算配分・執行方法の見直しと合理化
基本配分予算(執行上限額の提示)、保守契約費、修理・バージョンアップ費
2. 保守契約の一元化と予算の効率化
3. 技術者による装置の管理と測定指導
4. 大学院生教育のための講習会開催費補助の実施
5. 機器利用の手引き (2009 年 3 月刊行;2011 年改定版発行予定)
6. ホームページの充実:http://www.tus.ac.jp/labo/kiki/
7. 依頼分析申込システムの構築と運用:http://www.frcam-fw.tus.ac.jp/
(B)利用実績のモニター
1. 利用状況(稼働率)
: 装置及び運用方法問題点の発見
2. 利用研究室数: 装置の共通性の判断
3. 利用実績における運用研究室占有率: 共通性の判断
4. 利用年数: 登録抹消の勧告、装置の更新
(4)克服すべき課題と展望
1. 専門技術者による装置の管理と測定指導の更なる充実
2. 学内研究資源の更なる効率的利用(
(2)E参照)と学外公開による社会貢献
3. 大学院教育支援の充実(大学院生による先端研究施設・機器利用法の高グレード化
((3)A-4参照)と全学的視野に立った先端機器の重点整備
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
2010 年度から総合研究機構主催で「特別設備研究成果発表会」での実績報告が義務づ
けられた。
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総合研究機構「現状と課題」2011
火災安全科学研究拠点
(1)グループの設置趣旨・経緯
火災安全科学研究拠点は、2009 年 7 月に文部科学省より共同利用・共同研究拠点として認
定され設置された組織である。
本拠点では、東京理科大学における火災安全に関する研究・教育を推進するとともに、全
国の大学等との共同研究及び共同利用に供し、我が国の火災安全研究・教育、次世代を担う
学生・研究者の科学教育・研究の推進に寄与することを目的としている。
具体的には、学外者に対して、火災科学研究センター実験棟の利用を拡大して先端的な学
術研究を推進すべく、学内外の研究者が連携して共同研究を積極的に行うことができるよう
な体制を構築することが本拠点の役割である。国内の知を集約させる役割を本拠点で担うこ
とで、効率的かつ効果的な成果が期待されると同時に、多分野横断型の火災科学“理論”と
大型実験施設による“実践”的対応を中心とした研究が実施され、火災被害損失の低減に大
きく寄与することが期待される。
(2)今までの活動状況
●共同研究の実施
次の①~④に示すテーマを対象とし、産学へ広く公募を行い、平成 22 年度は 8 件の共同研
究を実施した。
1)公募研究テーマ:
①建築物の防耐火・避難対策等に関する実験的研究
例:
「高気密・高断熱と火災安全」
「地震後の火災に関する諸問題」等
②特殊空間における建築・土木分野等の融合
例:
「原子力発電所の火災安全対策」
「地下鉄・トンネル内の火災安全」等
③その他の実験・調査研究
例:「東アジアの火災被害低減のための研究」「防火に関する技術基準(ISO、JIS
等)に関連する研究」等
④若手研究者による独創的な着眼点を有する研究
2)実施期間:2010 年年 4 月 1 日(採択日)~2011 年 3 月 31 日
3)採択課題(組織)
:
「火炎及び煙存在下でテラヘルツ帯電磁波を用いたイメージング及び危険ガス検知
の研究」
(東京大学大学院 総合文化研究科)
「施設の火災防護に関する安全対策の研究」
(株式会社東芝 原子力プラント設計部)
「原子力発電所の火災安全対策のための火災荷重に関する基礎研究」(日立GEニュ
ークリア・エナジー株式会社 原子力計画部)
「地震被害を被った鋼構造物の耐火性能」(筑波大学大学院 システム情報工学研究
科)
「区画内での可燃物の燃焼性状のモデル化に関する研究」(京都大学工学研究科建築
学専攻)
「ポリスチレン/ケナフ/ノンハロゲン難燃剤からなる複合材料に関する研究」(群
馬大学 大学院工学研究科)
「天井流の厚み性状に関する研究」
(横浜国立大学)
「建物内部の室間延焼性状に関する実験的研究」
(京都大学防災研究所)
4)成果発表会:2011 年 7 月 27 日に予定
― 64 ―
総合研究機構「現状と課題」2011
(3)顕著な研究成果
○ 平成 22 年 4 月に実施した平成 21 年度実施報告会による研究の推進への寄与
○ 産学間での 8 件の共同研究の実施
(4)克服すべき課題と展望
○ 火災科学研究センター実験棟の経済的自立に向けた運営方策(受託実験等による収益事業
の展開)
○ 海外からの共同利用・共同研究の受入
○ 共同研究実施のための文部科学省からの予算配分
○ 本拠点での共同研究を推進するための技術者等の人材の充実
(5)評価委員会・諮問委員会等、グループ外の学内外有識者との連携状況
拠点の中心となる運営委員会は、半数以上の学外者を含む委員により構成され、「研究およ
び業務の基本方針」、「予算の原案作成等を含む管理・運営の基本方針」、「公募研究テー
マ等の事業計画」の他、本拠点に関する事項の最高意思決定機関となります。
運営委員会・公募課題選定委員会
青木 義次 (東京工業大学大学院 教授)
鈴木 弘之 (筑波大学大学院 教授)
田中 哮義 (京都大学防災研究所 教授)
萩原 一郎 ((独)建築研究所 上席研究員)
長谷見 雄二(早稲田大学大学院 教授)
山田 常圭 (東京大学大学院 教授)
中村 祐二 (北海道大学大学院 准教授)
― 65 ―
キラルマテリアル研究センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
硤合 憲三
理学部第一部応用化学科
教授
本務教員
川崎 常臣
総合研究機構
講師
併任教員
大川 和宏
理学部第一部応用物理学科
教授
岡村 総一郎
理学部第一部応用物理学科
教授
工藤 昭彦
理学部第一部応用化学科
教授
小林 進
薬学部生命創薬科学科
教授
斎藤 慎一
理学部第一部化学科
教授
齊藤 隆夫
理学部第一部化学科
教授
坂田 英明
理学部第一部物理学科
教授
佐々木 健夫
理学部第二部化学科
教授
佐藤 毅
理学部第二部化学科
教授
椎名 勇
理学部第一部応用化学科
教授
橋本 巖
理学部第一部物理学科
教授
林 雄二郎
工学部第一部工業化学科
教授
本間 芳和
理学部第一部物理学科
教授
松野 健治
基礎工学部生物工学科
教授
宮村 一夫
理学部第一部化学科
教授
山田 康洋
理学部第二部化学科
教授
杉本 裕
工学部第一部工業化学科
准教授
田村 浩二
基礎工学部生物工学科
准教授
鳥越 秀峰
理学部第一部応用化学科
准教授
山下 俊
理工学部工業化学科
准教授
由井 宏治
理学部第一部化学科
准教授
― 66 ―
界面科学研究センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
大島 広行
薬学部生命創薬科学科
教授
本務教員
野島 雅
総合研究機構
講師
併任教員
河合 武司
工学部第一部工業化学科
教授
田所 誠
理学部第一部化学科
教授
深井 文雄
薬学部生命創薬科学科
教授
矢島 博文
理学部第一部応用化学科
教授
有光 晃二
理工学部工業化学科
准教授
大塚 英典
理学部第一部応用化学科
准教授
桑野 潤
工学部第一部工業化学科
准教授
駒場 慎一
理学部第一部応用化学科
准教授
近藤 行成
工学部第一部工業化学科
准教授
坂井 教郎
理工学部工業化学科
准教授
酒井 秀樹
理工学部工業化学科
准教授
庄野 厚
工学部第一部工業化学科
准教授
白石 幸英
山口東京理科大学工学部応用化学科
准教授
山下 俊
理工学部工業化学科
准教授
由井 宏治
理学部第一部化学科
准教授
竹村 哲雄
理学部第二部化学科
講師
磯田 恭祐
理学部第一部化学科
助教
遠藤 洋史
工学部第一部工業化学科
助教
土屋 好司
理学部第一部応用化学科
助教
PD
沓沢 好一
総合研究機構
Frederic DELBECQ
総合研究機構
RA
秦 慎一
客員教授
遠藤 一央
― 67 ―
グリーン&セーフティ研究センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
中井 泉
理学部第一部応用化学科
教授
併任教員
趙 新為
理学部第二部物理学科
教授
井手本 康
理工学部工業化学科
教授
大川 和宏
理学部第一部応用物理学科
教授
川村 康文
理学部第一部物理学科
教授
工藤 昭彦
理学部第一部応用化学科
教授
佐々木 健夫
理学部第二部化学科
教授
田所 誠
理学部第一部化学科
教授
本間 芳和
理学部第一部物理学科
教授
森 俊介
理工学部経営工学科
教授
井上 正之
理学部第一部化学科
准教授
大塚 英典
理学部第一部応用化学科
准教授
桑野 潤
工学部第一部工業化学科
准教授
駒場 慎一
理学部第一部応用化学科
准教授
武村 政春
理学部第一部教養
准教授
常盤 和靖
基礎工学部電子応用工学科
准教授
徳永 英司
理学部第一部物理学科
准教授
鳥越 秀峰
理学部第一部応用化学科
准教授
早瀬 仁則
理工学部機械工学科
准教授
由井 宏治
理学部第一部化学科
准教授
杉山 睦
理工学部電気電子情報工学科
講師
客員教授
伊永 隆史
客員准教授
保倉 明子
客員研究員
吉川 聡
― 68 ―
ものづくり・先端計測科学研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
阿部 正彦
理工学部工業化学科
教授
本務教員
野島 雅
総合研究機構
講師
併任教員
板垣 昌幸
理工学部工業化学科
教授
大竹 勝人
工学部第一部工業化学科
教授
松本 睦良
基礎工学部材料工学科
教授
宮村 一夫
理学部第一部化学科
教授
西尾 圭史
基礎工学部材料工学科
准教授
山下 俊
理工学部工業化学科
准教授
岡野 久仁彦
理工学部工業化学科
助教
酒井 健一
理工学部工業化学科
助教
四反田 功
理工学部工業化学科
助教
客員准教授
堀越 智
客員研究員
貝瀬 千尋
金子 晃久
― 69 ―
先端デバイス研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
大川 和宏
理学部第一部応用物理学科
教授
併任教員
趙 新為
理学部第二部物理学科
教授
安藤 靜敏
工学部第二部電気工学科
教授
岡村 総一郎
理学部第一部応用物理学科
教授
藤代 博記
基礎工学部電子応用工学科
教授
飯田 努
基礎工学部材料工学科
准教授
木練 透
山口東京理科大学工学部応用化学科
准教授
西尾 圭史
基礎工学部材料工学科
准教授
杉山 睦
理工学部電気電子情報工学科
講師
出浦 桃子
理学部第一部応用物理学科
助教
中嶋 宇史
理学部第一部応用物理学科
助教
原 紳介
基礎工学部電子応用工学科
助教
原子 進
理学部第二部物理学科
助教
客員教授
中村 修二
― 70 ―
太陽光発電研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
荒川 裕則
工学部第一部工業化学科
教授
併任教員
趙 新為
理学部第二部物理学科
教授
安藤 靜敏
工学部第二部電気工学科
教授
谷内 利明
工学部第二部電気工学科
教授
飯田 努
基礎工学部材料工学科
准教授
木村 真一
理工学部電気電子情報工学科
准教授
平田 陽一
諏訪東京理科大学システム工学部電子システム工学科
准教授
杉山 睦
理工学部電気電子情報工学科
講師
小澤 弘宜
工学部第一部工業化学科
助教
客員准教授
田島 右副
― 71 ―
エコシステム研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
井手本 康
理工学部工業化学科
教授
本務教員
野島 雅
総合研究機構
講師
併任教員
板垣 昌幸
理工学部工業化学科
教授
佐々木 健夫
理学部第二部化学科
教授
武田 仁
理工学部 建築学科
教授
竹中 正
理工学部電気電子情報工学科
教授
松本 睦良
基礎工学部材料工学科
教授
森 俊介
理工学部経営工学科
教授
湯浅 真
理工学部工業化学科
教授
有光 晃二
理工学部工業化学科
准教授
桑野 潤
工学部第一部工業化学科
准教授
郡司 天博
理工学部工業化学科
准教授
近藤 行成
工学部第一部工業化学科
准教授
坂井 教郎
理工学部工業化学科
准教授
酒井 秀樹
理工学部工業化学科
准教授
庄野 厚
工学部第一部工業化学科
准教授
堂脇 清志
理工学部経営工学科
准教授
山下 俊
理工学部工業化学科
准教授
小沢 幸三
理工学部工業化学科
講師
永田 肇
理工学部電気電子情報工学科
講師
藤本 憲次郎
理工学部工業化学科
講師
綾戸 勇輔
工学部第一部工業化学科
助教
池田 玲子
理工学部工業化学科
助教
岡野 久仁彦
理工学部工業化学科
助教
北村 尚斗
理工学部工業化学科
助教
近藤 剛史
理工学部工業化学科
助教
酒井 健一
理工学部工業化学科
助教
四反田 功
理工学部工業化学科
助教
― 72 ―
エネルギー・環境光触媒研究部門
総研の職
部門長
学長
併任教員
氏名
工藤 昭彦
藤嶋 昭
阿部 正彦
池北 雅彦
安盛 敦雄
湯浅 真
根岸 雄一
齊藤 健二
近藤 剛史
柳田 さやか
客員教授
森戸 祐幸
客員准教授
中田 一弥
客員研究員
落合 剛
所属
理学部第一部応用化学科
理工学部工業化学科
理工学部応用生物科学科
基礎工学部材料工学科
理工学部工業化学科
理学部第一部応用化学科
理学部第一部応用化学科
理工学部工業化学科
基礎工学部材料工学科
― 73 ―
職
教授
学長
教授
教授
教授
教授
講師
助教
助教
助教
社会連携部(界面ナノテクノロジーを利用したスマートデバイスの研究開発プロジェクト) 総研の職
氏名
所属
職
プロジェクト責任者
阿部 正彦
理工学部工業化学科
教授
併任教員
湯浅 真
理工学部工業化学科
教授
有光 晃二
理工学部工業化学科
准教授
内海 重宜
諏訪東京理科大学システム工学部
機械システム工学科
准教授
木練 透
山口東京理科大学工学部応用化学科
准教授
郡司 天博
理工学部工業化学科
准教授
近藤 行成
工学部第一部工業化学科
准教授
酒井 秀樹
理工学部工業化学科
准教授
田村 隆治
基礎工学部材料工学科
准教授
西尾 圭史
基礎工学部材料工学科
准教授
山下 俊
理工学部工業化学科
准教授
岡野 久仁彦
理工学部工業化学科
助教
近藤 剛史
理工学部工業化学科
助教
酒井 健一
理工学部工業化学科
助教
四反田 功
理工学部工業化学科
助教
客員准教授
堀越 智
― 74 ―
がん医療基盤科学技術研究センター
総研の職
センター長
本務教員
併任教員
PD
技術者
客員教授
客員准教授
氏名
安部 良
安藤 正海
坂口 謙吾
相川 直幸
青木 伸
東 隆親
石黒 孝
大和田 勇人
後飯塚 僚
小島 尚人
小中原 猛雄
小林 進
椎名 勇
菅原 二三男
千葉 丈
深井 文雄
森 俊介
谷中 昭典
湯浅 真
大塚 英典
岸本 英博
曽我 公平
中野 直子
早瀬 仁則
水田 龍信
稲見 圭子
佐藤 圭子
竹村 裕
西山 裕之
秋山 弘匡
池田 玲子
小川 修平
北村 正典
酒井 健一
鈴木 孝洋
鈴木 利宙
月本 光俊
林 もゆる
兵藤 宏
HEMMER EVA
有安 真也
堀江 和峰
村上 明一
大田 信行
金子 和弘
小島 清嗣
藤井 博史
伊藤 雅昭
中面 哲也
横田 秀夫
所属
生命科学研究所
総合研究機構
総合研究機構
基礎工学部電子応用工学科
薬学部生命創薬科学科
生命科学研究所
基礎工学部材料工学科
理工学部経営工学科
生命科学研究所
理工学部土木工学科
理工学部工業化学科
薬学部生命創薬科学科
理学部第一部応用化学科
理工学部応用生物科学科
基礎工学部生物工学科
薬学部生命創薬科学科
理工学部経営工学科
薬学部薬学科
理工学部工業化学科
理学部第一部応用化学科
生命科学研究所
基礎工学部材料工学科
生命科学研究所
理工学部機械工学科
生命科学研究所
薬学部薬学科
理工学部情報科学科
理工学部機械工学科
理工学部経営工学科
基礎工学部生物工学科
理工学部工業化学科
生命科学研究所
薬学部生命創薬科学科
理工学部工業化学科
薬学部生命創薬科学科
生命科学研究所
薬学部薬学科
理学部第一部化学科
基礎工学部材料工学科
総合研究機構
総合研究機構
総合研究機構
総合研究機構
― 75 ―
職
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
准教授
准教授
准教授
准教授
准教授
准教授
講師
講師
講師
講師
助教
助教
助教
助教
助教
助教
助教
助教
助教
助教
戦略的物理製剤学研究基盤センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
牧野 公子
薬学部薬学科
教授
本務教員
安藤 正海
総合研究機構
教授
寺田 弘
総合研究機構
教授
池北 雅彦
理工学部応用生物科学科
教授
河合 武司
工学部第一部工業化学科
教授
菊池 明彦
基礎工学部材料工学科
教授
西川 英一
工学部第二部電気工学科
教授
廣田 孝司
薬学部薬学科
教授
深井 文雄
薬学部生命創薬科学科
教授
村田 雄司
理工学部電気電子情報工学科
教授
山下 親正
薬学部薬学科
教授
吉本 成香
工学部第一部機械工学科
教授
内呂 拓実
薬学部生命創薬科学科
准教授
大塚 英典
理学部第一部応用化学科
准教授
麻生 隆彬
基礎工学部材料工学科
助教
伊豫田 拓也
薬学部生命創薬科学科
助教
入山 聖史
理工学部情報科学科
助教
友田 敬士郎
薬学部薬学科
助教
原 利英
理工学部情報科学科
助教
廣田 慶司
薬学部薬学科
助教
宮嶋 篤志
薬学部薬学科
助教
併任教員
RA
島田 洋輔
竹内 一成
客員教授
Fakhreddin Jamali
Kolio Troev
石井 文由
稲木 敏男
上野 雅晴
岡本 浩一
北里 健二
首藤 紘一
戸井 雅和
松村 明
客員准教授
柴田 聡彦
客員研究員
井戸 亨
加藤 真司
金箱 眞
小室 昌仁
櫻井 一志
鈴木 健一
鳥井 文仁
西林 徹
藤原 成芳
森 静香
― 76 ―
RNA科学総合研究センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
島田 浩章
基礎工学部生物工学科
教授
併任教員
池北 雅彦
理工学部応用生物科学科
教授
石黒 孝
基礎工学部材料工学科
教授
朽津 和幸
理工学部応用生物科学科
教授
小島 周二
薬学部薬学科
教授
田代 文夫
基礎工学部生物工学科
教授
田沼 靖一
薬学部薬学科
教授
友岡 康弘
基礎工学部生物工学科
教授
浜田 典昭
理工学部物理学科
教授
松野 健治
基礎工学部生物工学科
教授
三浦 成敏
基礎工学部生物工学科
教授
村上 康文
基礎工学部生物工学科
教授
内海 文彰
薬学部生命創薬科学科
准教授
太田 尚孝
理学部第一部教養
准教授
齋藤 正寛
基礎工学部生物工学科
准教授
田村 浩二
基礎工学部生物工学科
准教授
十島 二朗
基礎工学部生物工学科
講師
Steven Larsen
総合研究機構
内山 純爾
総合研究機構
楳原 琢哉
総合研究機構
佐藤 祥子
総合研究機構
佘 高志
総合研究機構
十島 純子
総合研究機構
PD
RA
寺村 浩
花俣 繁
客員准教授
伊藤 耕一
木下 哲
客員研究員
吉原 利一
― 77 ―
戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
武田 健
薬学部薬学科
教授
本務教員
野島 雅
総合研究機構
講師
併任教員
清岡 智
理工学部教養
教授
久保 允人
生命科学研究所生命工学技術研究部門
教授
小島 周二
薬学部薬学科
教授
小茂田 昌代
薬学部薬学科
教授
田沼 靖一
薬学部薬学科
教授
浜田 典昭
理工学部物理学科
教授
丸山 克俊
理工学部教養
教授
矢島 博文
理学部第一部応用化学科
教授
市村 志朗
理工学部教養
准教授
小川 修平
生命科学研究所免疫生物学研究部門
助教
立花 研
薬学部薬学科
助教
柳田 信也
理工学部教養
助教
梅澤 雅和
総合研究機構
鈴木 健一郎
総合研究機構
PD
RA
高井 英里奈
客員教授
石見 佳子
菅又 昌雄
中村 伸
客員准教授
井原 智美
光永 総子
客員研究員
李 英姫
― 78 ―
ケミカルバイオロジー研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
菅原 二三男
理工学部応用生物科学科
教授
本務教員
坂口 謙吾
総合研究機構
教授
併任教員
安部 良
生命科学研究所免疫生物学研究部門
教授
鎌倉 高志
理工学部応用生物科学科
教授
小林 進
薬学部生命創薬科学科
教授
椎名 勇
理学部第一部応用化学科
教授
田沼 靖一
薬学部薬学科
教授
早川 洋一
薬学部生命創薬科学科
教授
林 雄二郎
工学部第一部工業化学科
教授
松野 健治
基礎工学部生物工学科
教授
村上 康文
基礎工学部生物工学科
教授
― 79 ―
トランスレーショナルリサーチ部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
谷中 昭典
薬学部薬学科
教授
併任教員
岡 淳一郎
薬学部薬学科
教授
小茂田 昌代
薬学部薬学科
教授
千葉 丈
基礎工学部生物工学科
教授
樋上 賀一
薬学部生命創薬科学科
教授
廣田 孝司
薬学部薬学科
教授
深井 文雄
薬学部生命創薬科学科
教授
牧野 公子
薬学部薬学科
教授
増保 安彦
薬学部生命創薬科学科
教授
鳥越 秀峰
理学部第一部応用化学科
准教授
福本 敦
薬学部薬学科
助教
客員教授
朝長 修
大草 敏史
大河内 信弘
竹下 聡
野口 雅之
原田 義則
兵頭 一之介
松崎 靖司
松村 明
客員准教授
武藤 倫弘
客員研究員
鈴木 英雄
― 80 ―
創薬フロンティア研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
田沼 靖一
薬学部薬学科
教授
併任教員
鍜冶 利幸
薬学部薬学科
教授
廣田 孝司
薬学部薬学科
教授
古市 貞一
理工学部応用生物科学科
教授
松野 健治
基礎工学部生物工学科
教授
村上 康文
基礎工学部生物工学科
教授
内呂 拓実
薬学部生命創薬科学科
准教授
客員教授
内山 真伸
近藤 格
松村 保広
客員研究員
黄 成
― 81 ―
社会連携部(大塚化学糖タンパク質工学プロジェクト) 総研の職
氏名
所属
職
プロジェクト責任者
辻 孝
総合研究機構
教授
客員教授
梶原 康宏
手塚 克成
五十嵐 潤
石井 一之
深江 一博
― 82 ―
社会連携部(放射線増感剤SQAGの悪性腫瘍治療効果に関する研究開発プロジェクト) 総研の職
所属
職
プロジェクト責任者 坂口 謙吾
総合研究機構
教授
併任教員
安部 良
生命科学研究所
教授
板垣 昌幸
理工学部工業化学科
教授
小林 進
薬学部生命創薬科学科
教授
菅原 二三男
理工学部応用生物科学科
教授
春山 修身
理工学部物理学科
教授
溝口 博
理工学部機械工学科
教授
谷中 昭典
薬学部薬学科
教授
酒井 秀樹
理工学部工業化学科
准教授
古江 広和
基礎工学部材料工学科
准教授
岩端 一樹
総合研究機構
金井 良博
総合研究機構
類家 竜司
総合研究機構
PD
客員研究員
氏名
太田 慶祐
― 83 ―
社会連携部(オーガンテクノロジーズ器官再生工学プロジェクト) 総研の職
氏名
所属
職
プロジェクト責任者
辻 孝
総合研究機構
教授
本務教員
大島 正充
総合研究機構
助教
併任教員
齋藤 正寛
基礎工学部生物工学科
准教授
プロジェクト研究員
豊島 公栄
総合研究機構社会連携部
PD
森田 梨津子
総合研究機構社会連携部
客員教授
佐藤 明男
共同研究者
窪木 拓男
園山 亘
山本 照子
― 84 ―
社会連携部(低侵襲性乳がん治療DDS開発プロジェクト)
総研の職
氏名
所属
職
プロジェクト責任者
寺田 弘
総合研究機構
教授
本務教員
安藤 正海
総合研究機構
教授
併任教員
菊池 明彦
基礎工学部材料工学科
教授
西川 英一
工学部第二部電気工学科
教授
廣田 孝司
薬学部薬学科
教授
深井 文雄
薬学部生命創薬科学科
教授
牧野 公子
薬学部薬学科
教授
村田 雄司
理工学部電気電子情報工学科
教授
吉本 成香
工学部第一部機械工学科
教授
内呂 拓実
薬学部生命創薬科学科
准教授
麻生 隆彬
基礎工学部材料工学科
助教
入山 聖史
理工学部情報科学科
助教
友田 敬士郎
薬学部薬学科
助教
廣田 慶司
薬学部薬学科
助教
宮嶋 篤志
薬学部薬学科
助教
客員教授
Kolio Troev
稲木 敏男
江口 至洋
岡本 浩一
北里 健二
高乗 仁
杣 源一郎
瀧 孝雄
戸井 雅和
松村 明
宮城島 利一
客員准教授
稲川 裕之
河内 千恵
柴田 聡彦
客員研究員
金箱 眞
小室 昌仁
鈴木 健一
鳥井 文仁
平井 裕
― 85 ―
火災科学研究センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
菅原 進一
総合研究機構
教授
本務教員
関沢 愛
総合研究機構
教授
直井 英雄
総合研究機構
教授
若松 孝旺
総合研究機構
教授
松山 賢
総合研究機構
准教授
水野 雅之
総合研究機構
講師
小林 恭一
総合研究機構火災科学研究センター
教授
山内 幸雄
総合研究機構火災科学研究センター
准教授
内田 英建
総合研究機構火災科学研究センター
講師
大宮 喜文
理工学部建築学科
教授
衣笠 秀行
理工学部建築学科
教授
倉渕 隆
工学部第一部建築学科
教授
須川 修身
諏訪東京理科大学システム工学部機械システム工学科
教授
辻本 誠
工学部第二部建築学科
教授
森田 昌宏
理学部第一部数理情報科学科
教授
理工学部建築学科
准教授
本務教員
(グローバルCOE)
併任教員
兼松 学
プロジェクト研究員
西田 幸夫
(グローバルCOE)
技術者
申 易澈
(グローバルCOE)
棚池 裕
総合研究機構火災科学研究センター
総合研究機構火災科学研究センター
野秋 政希
総合研究機構火災科学研究センター
田中 傑
総合研究機構火災科学研究センター
PD
(グローバルCOE)
客員教授
(グローバルCOE)
総合研究機構火災科学研究センター
M. A. Delichatsios
金 相大
青木 義次
池田 憲一
上杉 英樹
笠原 勲
佐藤 博臣
鈴木 弘之
田中 哮義
富松 太基
萩原 一郎
長谷見 雄二
原 哲夫
原田 和典
客員准教授
(グローバルCOE)
李 克欣
岡 泰資
佐野 友紀
福井 潔
山田 茂
客員研究員
林 広明
藤原 淳
若松 高志
客員研究員
(グローバルCOE)
唐川 伸幸
鈴木 淳一
― 86 ―
危機管理・安全科学技術研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
板生 清
イノベーション研究科技術経営専攻
教授
本務教員
菅原 進一
総合研究機構
教授
併任教員
安部 良
生命科学研究所免疫生物学研究部門
教授
越地 耕二
理工学部電気電子情報工学科
教授
篠原 菊紀
諏訪東京理科大学共通教育センター
教授
辻本 誠
工学部第二部建築学科
教授
奈良 松範
諏訪東京理科大学システム工学部機械システム工学科
教授
浜田 知久馬
工学部第一部経営工学科
教授
森田 昌宏
理学部第一部数理情報科学科
教授
吉本 成香
工学部第一部機械工学科
教授
長谷川 幹雄
工学部第一部電気工学科
准教授
平塚 三好
イノベーション研究科知的財産戦略専攻
准教授
客員教授
片桐 祥雅
岸 徹
佐々木 健
郷原 信郎
佐藤 元
鈴木 高広
原田 泉
樋口 広芳
保坂 寛
三角 育生
吉田 隆嘉
客員准教授
梅田 智広
楠元 みのり
増田 幸宏
客員研究員
川原 靖弘
― 87 ―
次世代データマイニング研究部門
総研の職
部門長
併任教員
氏名
大和田 勇人
青木 伸
尾島 善一
朽津 和幸
小島 尚人
鈴木 知道
武田 正之
溝口 文雄
森 俊介
滝本 宗宏
佐藤 圭子
西山 裕之
原田 拓
安井 清一
所属
理工学部経営工学科
薬学部生命創薬科学科
理工学部経営工学科
理工学部応用生物科学科
理工学部土木工学科
理工学部経営工学科
理工学部情報科学科
理工学部経営工学科
理工学部経営工学科
理工学部情報科学科
理工学部情報科学科
理工学部経営工学科
理工学部経営工学科
理工学部経営工学科
― 88 ―
職
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
准教授
講師
講師
講師
助教
山岳大気研究部門
総研の職
部門長
併任教員
客員教授
客員准教授
氏名
三浦 和彦
児島 紘
齊藤 進
橋本 巖
永野 勝裕
上田 紗也子
五十嵐 康人
大河内 博
速水 洋
藤田 慎一
保田 浩志
青木 一真
長田 和雄
所属
理学部第一部物理学科
理工学部教養
経営学部経営学科
理学部第一部物理学科
理工学部教養
理学部第一部物理学科
加藤 俊吾
兼保 直樹
小林 拓
松木 篤
皆巳 幸也
― 89 ―
職
准教授
教授
教授
教授
講師
PD
インテリジェントシステム研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
兵庫 明
理工学部電気電子情報工学科
教授
併任教員
青木 正和
諏訪東京理科大学システム工学部電気システム工学科
教授
明石 重男
理工学部情報科学科
教授
江川 嘉美
理学部第一部数理情報科学科
教授
大和田 勇人
理工学部経営工学科
教授
越地 耕二
理工学部電気電子情報工学科
教授
関根 慶太郎
理工学部電気電子情報工学科
教授
森 俊介
理工学部経営工学科
教授
木村 真一
理工学部電気電子情報工学科
准教授
柴 建次
基礎工学部電子応用工学科
准教授
樋口 健一
理工学部電気電子情報工学科
准教授
山本 隆彦
理工学部電気電子情報工学科
助教
客員教授
高橋 渉
巽 英介
客員研究員
青木 広宙
越地 福朗
佐藤 広生
― 90 ―
長万部地域社会研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
友岡 康弘
基礎工学部生物工学科
教授
併任教員
新井 健
理工学部経営工学科
教授
石黒 孝
基礎工学部材料工学科
教授
榎本 一之
基礎工学部教養
教授
川向 正人
理工学部建築学科
教授
向後 保雄
基礎工学部材料工学科
教授
藤井 志郎
基礎工学部教養
教授
本田 宏隆
基礎工学部教養
教授
松野 健治
基礎工学部生物工学科
教授
三浦 成敏
基礎工学部生物工学科
教授
曽我 公平
基礎工学部材料工学科
准教授
竹内 謙
基礎工学部教養
准教授
鳥越 秀峰
理学部第一部応用化学科
准教授
野沢 肇
基礎工学部教養
准教授
古江 広和
基礎工学部材料工学科
准教授
村上 学
基礎工学部教養
准教授
和田 直之
理工学部応用生物科学科
准教授
田村 早苗
基礎工学部教養
講師
客員准教授
古屋仲 秀樹
― 91 ―
赤外自由電子レーザー研究センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
築山 光一
理学部第一部化学科
教授
併任教員
千葉 順成
理工学部物理学科
教授
徳永 英司
理学部第一部物理学科
准教授
理学部第一部化学科
助教
荒木 光典
プロジェクト研究員 今井 貴之
総合研究機構
川崎 平康
総合研究機構
客員教授
Stephen C. Ross
設楽 哲夫
鈴木 俊法
客員研究員
吉田 光宏
― 92 ―
先端ホログラフィ技術研究開発センター
総研の職
氏名
所属
職
センター長
山本 学
基礎工学部電子応用工学科
教授
併任教員
内海 隆行
山口東京理科大学工学部機械工学科
教授
向後 保雄
基礎工学部材料工学科
教授
佐々木 信也
工学部第一部機械工学科
教授
鈴木 康一
山口東京理科大学工学部機械工学科
教授
吉本 成香
工学部第一部機械工学科
教授
佐竹 信一
基礎工学部電子応用工学科
准教授
谷口 淳
基礎工学部電子応用工学科
准教授
松田 一朗
理工学部電気電子情報工学科
准教授
結城 和久
山口東京理科大学工学部機械工学科
准教授
洪 定杓
理工学部機械工学科
助教
本澤 政明
理工学部機械工学科
助教
― 93 ―
量子生命情報研究部門
総研の職
部門長
併任教員
氏名
大矢 雅則
戸川 美郎
富澤 貞男
松岡 隆志
宮崎 智
山登 一郎
渡邉 昇
井上 啓
佐藤 圭子
入山 聖史
田畑 耕治
原 利英
所属
理工学部情報科学科
理工学部情報科学科
理工学部情報科学科
諏訪東京理科大学経営情報学部経営情報学科
薬学部生命創薬科学科
基礎工学部生物工学科
理工学部情報科学科
山口東京理科大学工学部電気工学科
理工学部情報科学科
理工学部情報科学科
理工学部情報科学科
理工学部情報科学科
― 94 ―
職
教授
教授
教授
教授
教授
教授
教授
准教授
講師
助教
助教
助教
イメージングフロンティア研究部門
総研の職
氏名
所属
職
部門長
須田 亮
理工学部物理学科
教授
併任教員
北村 大介
生命科学研究所分子生物学研究部門
教授
朽津 和幸
理工学部応用生物科学科
教授
中村 岳史
生命科学研究所生命情報科学研究部門
教授
浜田 典昭
理工学部物理学科
教授
古市 貞一
理工学部応用生物科学科
教授
曽我 公平
基礎工学部材料工学科
准教授
松永 幸大
理工学部応用生物科学科
准教授
― 95 ―
研究機器センター (☆印:常任幹事会メンバー)
総研の職
氏名
所属
職
センター長
小中原 猛雄 ☆
理工学部工業化学科
教授
運営委員会委員
安藤 靜敏
工学部第二部電気工学科
教授
石黒 孝
基礎工学部材料工学科
教授
井手本 康 ☆
理工学部工業化学科
教授
河合 武司
工学部第一部工業化学科
教授
久保 允人
生命科学研究所
教授
坂田 英明 ☆
理学部第一部物理学科
教授
佐々木 信也 ☆
工学部第一部機械工学科
教授
椎名 勇
理学部第一部応用化学科
教授
島田 浩章 ☆
基礎工学部生物工学科
教授
築山 光一 ☆
理学部第一部化学科
教授
廣田 孝司
薬学部薬学科
教授
元屋 清一郎
理工学部物理学科
教授
山田 康洋
理学部第二部化学科
教授
内呂 拓実
薬学部生命創薬科学科
准教授
郡司 天博
理工学部工業化学科
准教授
― 96 ―
火災安全科学研究拠点
総研の職
氏名
所属
職
拠点長
運営委員(学内委員)
菅原 進一
総合研究機構
教授
森田 昌宏 ◎
理学部第一部数理情報科学科
教授
総合研究機構
教授
大宮 喜文
理工学部建築学科
教授
辻本 誠
工学部第二部建築学科
教授
松山 賢
総合研究機構
准教授
◎=委員長 安藤 正海
運営委員(学外委員)
青木 義次
鈴木 弘之
田中 哮義
萩原 一郎
長谷見 雄二
山田 常圭
公募課題選定委員(学内委員) 辻本 誠 ◎
◎=委員長 大宮 喜文
松山 賢
工学部第二部 建築学科
教授
理工学部 建築学科
教授
総合研究機構
准教授
公募課題選定委員(学外委員) 青木 義次
鈴木 弘之
萩原 一郎
長谷見 雄二
中村 祐二
技術者
沖永 誠治
総合研究機構
― 97 ―
総合研究機構本務教員
総研の職
氏名
所属
職
本務教員
安藤 正海
総合研究機構
教授
坂口 謙吾
総合研究機構
教授
菅原 進一
総合研究機構
教授
関沢 愛
総合研究機構
教授
高柳 英明
総合研究機構
教授
辻 孝
総合研究機構
教授
寺田 弘
総合研究機構
教授
直井 英雄
総合研究機構
教授
並河 一道
総合研究機構
教授
若松 孝旺
総合研究機構
教授
渡部 俊太郎
総合研究機構
教授
松山 賢
総合研究機構
准教授
川崎 常臣
総合研究機構
講師
野島 雅
総合研究機構
講師
水野 雅之
総合研究機構
講師
大島 正充
総合研究機構
助教
藪内 直明
総合研究機構
助教
横山 健
総合研究機構
助教
小林 恭一
総合研究機構
教授
山内 幸雄
総合研究機構
准教授
講師
本務教員
(グローバルCOE)
内田 英建
総合研究機構
プロジェクト研究員 耒須 孝光
総合研究機構
PD
霍 慶凱
総合研究機構
周 春
総合研究機構
― 98 ―
総合研究機構組織図
総合研究機構
理
事
長
研
究
戦
略
委
員
会
研
究
推
進
室
研
究
部
総
合
研
究
機
構
長
学
長
総
合
研
究
評
価
委
員
会
総
合
研
究
機
構
運
営
委
員
会
運
営
幹
事
会
共
同
利
用
・
共
同
研
究
推
進
部
研
究
セ
ン
タ
ー
総
合
研
究
審
議
委
員
会
副
機
構
長
部
研
究
技
術
部
社
会
連
携
部
・ものづくり・先端計測科学研究部門
・ケミカルバイオロジー研究部門
・危機管理・安全科学技術研究部門
・トランスレーショナルリサーチ部門
・先端デバイス研究部門
・太陽光発電研究部門
・エコシステム研究部門
・エネルギー・環境光触媒研究部門
・次世代データマイニング研究部門
・山岳大気研究部門
・インテリジェントシステム研究部門
・量子生命情報研究部門
・創薬フロンティア研究部門
・長万部地域社会研究部門
・イメージングフロンティア研究部門
・火災科学研究センター
・赤外自由電子レーザー研究センター
・キラルマテリアル研究センター
・界面科学研究センター
・がん医療基盤科学技術研究センター
・グリーン&セーフティ研究センター
・戦略的物理製剤学研究基盤センター
・RNA科学総合研究センター
・戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター
・先端ホログラフィ技術研究開発センター
・研究機器センター
研究機器センター運営委員会
常任幹事会
・社会連携プロジェクト
・ 界面ナノテクノロジーを利用したスマートデバイスの研究開発プロジェクト(阿部正彦)
・ 大塚化学糖タンパク質工学プロジェクト(辻孝)
・ 放射線増感剤SQAGの悪性腫瘍治療効果に関する研究開発
プロジェクト(坂口謙吾)
・ オーガンテクノロジーズ器官再生工学プロジェクト(辻孝)
・ 低侵襲性乳がん治療DDS開発プロジェクト(寺田弘)
・火災安全科学研究拠点
火災安全科学研究拠点運営委員会
公募課題選定委員会
平成23年10月1日
― 99 ―
― 100 ―
西暦 1981
組織名
56
◆総合研究機構
研究部
神楽坂 人・未来研究部門
物質界面化学研究部門
インテリジェントシステム研究部門
数学教育研究部門
知識インターフェース研究部門
ものづくり・先端計測科学研究部門
次世代フォトニック応用研究部門
ケミカルバイオロジー研究部門
再生工学研究部門
危機管理・安全科学技術研究部門
トランスレーショナルリサーチ部門
先端デバイス研究部門
太陽光発電研究部門
エコシステム研究部門
エネルギー・環境光触媒研究部門
次世代データマイニング研究部門
山岳大気研究部門
量子生命情報研究部門
創薬フロンティア研究部門
長万部地域社会研究部門
イメージングフロンティア研究部門
研究センター部
赤外自由電子レーザー研究センター
先端材料研究センター
火災科学研究センター
DDS研究センター
ゲノム創薬研究センター
再生工学研究センター
ナノサイエンス・テクノロジー研究センター
グリーン光科学技術研究センター
ホリスティック計算科学研究センター
人間支援工学研究センター
量子生命情報研究センター
ナノ粒子健康科学研究センター
ポリスケールテクノロジー研究センター
キラルマテリアル研究センター
界面科学研究センター
がん医療基盤科学技術研究センター
グリーン&セーフティ研究センター
戦略的物理製剤学研究基盤センター
RNA科学総合研究センター
戦略的環境次世代健康科学研究基盤センター
先端ホログラフィ技術研究開発センター
◆総合研究所
研究部門
火災科学
界面科学
インテリジェントシステム
基礎科学
先端材料
環境・エネルギー
光科学
DDS
数学教育
固体物性
破壊力学
バイオシステム
生命科学・生命科学研究所
計算力学
高温超伝導
静電気
リモートセンシング
研究施設
赤外自由電子レーザー研究センター
先端材料研究部門研究センター
火災科学研究センター
DDS研究部門研究センター
海洋生物研究施設
高機能合成解析センター
◆生命科学研究所附属研究施設
再生工学研究センター
◆情報科学教育・研究機構
計算科学フロンティア研究センター
情報メディアセンター
◆薬学研究科附属研究施設
ゲノム創薬研究センター
◆基礎工学研究科附属研究施設
ナノサイエンス・テクノロジー研究センター
1983
58
1982
57
59
1984
60
1985
61
1986
62
1987
63
1988
元
1989
2
1990
3
1991
4
1992
5
1993
6
1994
7
1995
8
1996
9
1997
10
1998
11
1999
12
2000
13
2001
総合研究機構 組織変遷表 14
2002
15
2003
16
2004
17
2005
18
2006
19
2007
20
2008
21
2009
22
2010
23
2011
24
2012
25
2013
26
2014
27
2015
28
2016
備 考
H17.11総合研究機構へ移行
H17.11総合研究機構へ移行
H17.11総合研究機構へ移行
H17.11総合研究機構へ移行
H17.11総合研究機構へ移行
H17.11総合研究機構へ移行
H17.11総合研究機構へ移行
先端材料に改組
環境・エネルギーに改組
インテリジェントに改組
基礎科学に改組
H17.11総合研究機構へ移行
H17.11総合研究機構へ移行
H17.11総合研究機構へ移行
高度化推進事業
高度化推進事業
高度化推進事業
高度化推進事業
高度化推進事業
高度化推進事業
高度化推進事業
戦略的研究基盤形成支援事業
戦略的研究基盤形成支援事業
戦略的研究基盤形成支援事業
戦略的研究基盤形成支援事業
戦略的研究基盤形成支援事業
戦略的研究基盤形成支援事業
戦略的研究基盤形成支援事業
H20.4 グローバルCOE採択
H19.4 先端研究施設共用イノベーション創出事業に採択
H23.4先端ホログラフィ技術研究開発センターに改組
H20.4 「界面科学研究部門」から名称変更
部門からの申出により平成21年度をもって終了
平成17年11月1日発足
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