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使用済みフッ酸含有溶液の 再利用技術開発

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使用済みフッ酸含有溶液の 再利用技術開発
使用済みフッ酸含有溶液の
再利用技術開発
フッ酸(ふっ化水素酸)含有溶液
の代表例
• 金属チタン表面の酸化スケールなどを除
去するために用いられる硝フッ酸酸洗液
(硝酸とフッ酸の混合水溶液)
• シリコンウエーハー(単結晶の金属シリコン
を板状にスライスしたもの)の表面を溶解
するために用いられる混酸(フッ酸、硝酸、
酢酸などの混合水溶液)
現状のプロセスと問題点
• 金属チタン表面の酸化スケール除去やシ
リコンウエーハー表面の溶解によってフッ
酸含有溶液中のフッ酸濃度が低下し、使
用できなくなる(廃液の発生)。
• 廃液にアルカリを添加して残存する酸を中
和し、溶液中に溶け込んだチタンやシリコ
ンを沈殿・分離して廃棄する(酸およびア
ルカリの浪費&産業廃棄物の発生)。
本技術開発の目的
• 使用済みフッ酸含有溶液中に残存するフッ
酸などの酸を有効利用する。
• 使用済みフッ酸含有溶液中の溶解物質(チ
タン、シリコンの化合物)を回収し、資源とし
て再利用する。
• 有害な産業廃棄物を削減する。
本技術の基本的アイデア(1)
• チタンは6ふっ化チタン酸(H2TiF6)、シリコ
ンは6ふっ化けい酸(H2SiF6)として溶解し
ているので、ふっ化カリウム(KF)を添加し
て6ふっ化チタン酸カリウム(K2TiF6)また
は6ふっ化けい酸カリウム(K2SiF6)の沈殿
に変え、同時にフッ酸(HF)を再生させる。 H2TiF6 +2KF→ K2TiF6 +2HF (1) H2SiF6 +2KF→ K2SiF6 +2HF (2)
本技術の基本的アイデア(2)
• 6ふっ化チタン酸カリウムまたは6ふっ化け
い酸カリウムの沈殿をろ過分離した後の溶
液をチタンやステンレス鋼の酸洗に用いる。
• ろ過分離した6ふっ化チタン酸カリウムまた
は6ふっ化けい酸カリウムの沈殿にアンモ
ニア水(NH3+H2O)を加えて加熱・分解し、
水酸化チタン(Ti(OH)4)や含水けい酸
(SiO2・nH2O)の沈殿に変える。
本技術の基本的アイデア(3)
• このとき、ふっ化カリウムとふっ化アンモニ
ウム( NH4F )が生成する。 K2TiF6+4NH3+4H2O→Ti(OH)4+
2KF+4NH4F (3) K2SiF6+4NH3+4H2O→SiO2・nH2O+
2KF+4NH4F+(2-n)H2O (4)
• 水酸化チタンや含水けい酸の沈殿をろ過
分離し、資源として再利用する。
本技術の基本的アイデア(4)
• 水酸化チタンや含水けい酸の沈殿を分離した後
の溶液に水酸化カリウム(KOH)や水酸化カルシ
ウム(Ca(OH)2)等の強アルカリを加えて、アンモ
ニアを発生させる。
• アンモニアは蒸留分離して再利用し、ふっ化カル
シウム(CaF2)の沈殿も分離してふっ素資源とし
て利用する。
NH4F+KOH→NH3+KF+H2O (5)
2NH4F+Ca(OH)2→2NH3+CaF2 +2H2O (6) 本技術の基本的アイデア(5)
• 前記の(1)~(6)式の化学反応において、
消費される化合物と生成する化合物の分子数
は、チタンまたはシリコンの1原子当たり、
下記のとおりである。
消 費
化合物
KF
NH 3
分子数
2
4
生 成
KOH Ca(OH)2
4
2
HF
KF
NH 3
CaF 2
2
2+4
4
2
本技術の工業的応用案(1)
• チタンの酸洗槽の近くに反応槽とろ過装置
を設置し、酸洗液を循環・使用する。
ふっ化カリウム
沈殿
(K2TiF 6)
ろ液
酸洗液
酸洗槽
反応槽
ろ過装置
フィルター
本技術の工業的応用案(2)
• シリコンウエーハーの表面を溶解した混酸
からシリコンを除去した後、金属チタンやス
テンレス鋼の酸洗に用いる。
ふっ化カリウム
シリコン含
有混酸
沈殿
(K 2SiF 6)
フィルター
反応槽
ろ過装置
金属チタン
やステンレ
ス鋼の酸洗
シリコン
を除去し
た混酸
本技術の工業的応用案(3)
• 廃液から析出させた沈殿(K2TiF6、K2SiF6)
からチタンやシリコンの酸化物(TiO2、SiO2)
を回収し、資源として利用する。
沈殿
(K 2TiF 6,
K2SiF6)
酸化物(TiO 2,SiO 2)
アンモニア水
沈殿
(Ti(OH)4,
SiO 2・nH 2O)
ヒーター
フィルター
反応槽
ろ過装置
ろ液
乾燥・焼成炉
技術開発の進捗状況と
今後の展開
• 基礎試験 : 実施済み(HF再生による酸洗
能力向上確認、TiO2やSiO2回収など)
• 関連特許出願 : (1)特許第4595048号
(2)特許第5392576号
• 実用化試験 : 今後検討
「使用済みフッ酸含有溶液の再利用技術開発」のスライドを説明するナレーション
スライドNo. ナレーター
ナレーション
A
使用済みのフッ酸含有溶液を再利用する技術の開発をご提案申し上げます。
B
フッ酸含有溶液とはどのようなものですか?
フッ酸はふっ素と水素から成る酸の1種で、正式にはふっ化水素酸とも呼ばれます。
1
そして、フッ酸含有溶液とは、このフッ酸を含む水溶液を意味します。
A
このたびご提案する技術開発は、このフッ酸含有溶液を使用した後に、再利用する
ことを目指します。
B
どのようなフッ酸含有溶液がありますか?
フッ酸、すなわち、ふっ化水素酸を含む水溶液が工業的に用いられている例として
は、金属チタンやステンレス鋼表面を溶解して酸化スケールや汚れなどを除去する
2
A
ために用いられる、硝フッ酸酸洗液と呼ばれる、硝酸とフッ酸の混合水溶液があり
ます。また、電子部品の基板として用いられるシリコンウエーハーの表面層を溶解す
るためには、フッ酸、硝酸、酢酸などの混合水溶液が用いられています。
フッ酸含有水溶液を用いて行われる、現状のプロセスには、どのような問題点が
B
ありますか?
金属チタンやシリコンウエーハーの製造プロセスにおいて、酸化スケール除去や
表面の溶解に用いられるフッ酸含有水溶液中のフッ酸が消費されますと、濃度が
低下するために、使用できなくなります。使用できなくなったフッ酸含有水溶液を
3
廃液として処理するには、廃液にアルカリを加えて、残存する酸を中和すると同時
A
に、溶液中に溶け込んだチタンやシリコンを水酸化物の沈殿に変えて分離します。
この廃液処理によって、廃液中に残存する酸、すなわち未反応のフッ酸や硝酸が
失われると同時に、酸を中和するためのアルカリが消費されます。
また、中和によって生成したチタンやシリコンの水酸化物には、多量のふっ素が含ま
れるので、これらを産業廃棄物として安全に埋め立て処分する必要があります。
B
技術開発の目的として、どのようなことがありますか?
このたびご提案する技術開発の目的の1つは、使用済みのフッ酸含有水溶液中に
4
残存する、フッ酸や硝酸を有効に利用することです。また、使用済みのフッ酸含有水
A
溶液中に溶け込んだチタンやシリコンの化合物を回収して、資源として再利用するこ
とも目的としています。これによって、有害な産業廃棄物を削減することができます。
B
本技術の基本的アイデアについて、説明してください。
それでは、本技術の基本的なアイデアをご説明します。十分な濃度のフッ酸を含有
する水溶液中では、チタンは6ふっ化チタン酸、シリコンは6ふっ化けい酸と呼ばれ
る化合物として溶解しています。この溶液にふっ化カリウムを添加すると、チタンは
5
A
6ふっ化チタン酸カリウム、シリコンは6ふっ化けい酸カリウムとして沈殿すると同時
にフッ酸が再生します。この時に起きる反応は、1式または2式に示す通りです。
これらの反応によってフッ酸が再生しますので、その濃度が上昇し、チタンやシリコン
などを溶解する能力が高まります。
次に、6ふっ化チタン酸カリウムまたは6ふっ化けい酸カリウムの沈殿をろ過分離し、
ろ液の水溶液に、必要に応じて、酸や水を添加して濃度を調整した後、チタンやステ
6
A
ンレス鋼の酸洗に用います。一方、ろ過分離した6ふっ化チタン酸カリウムまたは
6ふっ化けい酸カリウムの沈殿には、アンモニア水を加えて加熱、分解し、水酸化チ
タンや含水けい酸の沈殿に変えます。
このとき、3式または4式に示す反応によって、水酸化チタンや含水けい酸の沈殿と
7
A
共に、ふっ化カリウムとふっ化アンモニウムが生成します。
水酸化チタンや含水けい酸の沈殿はろ過分離し、資源として再利用します。
水酸化チタンや含水けい酸の沈殿をろ過分離した後の溶液に、水酸化カリウムや
水酸化カルシウムなどの強アルカリを加えて加熱すると、5式または6式の反応に
よってふっ化アンモニウムが分解し、アンモニアとふっ化カリウムまたはアンモニアと
8
A
ふっ化カルシウムの沈殿が生成します。このとき生成したアンモニアは蒸留分離して
再利用し、溶液中に残留するふっ化カリウムも再利用します。また、ふっ化カルシウ
ムの沈殿はろ過分離し、ふっ素資源として利用します。
以上の説明で示した1から6式の化学反応において、消費される化合物と生成する
化合物の分子数は、チタンまたはシリコンの1原子当たり、表に示すとおりです。
すなわち、ふっ化カリウムは、1式または2式の反応によって2分子が消費されます
が、3式または4式の反応によって、2分子が生成します。さらに、強アルカリとして
水酸化カリウムを用いた場合には、4分子の水酸化カリウムが消費されて、4分子の
9
A
ふっ化カリウムが生成します。したがって、この場合には、消費されるふっ化カリウム
より、生成するふっ化カリウムが3倍多くなります。一方、強アルカリとして水酸化カ
ルシウムを用いた場合には、2分子の水酸化カルシウムが消費されて、2分子の
ふっ化カルシウムが生成します。アンモニアは、4分子が消費されますが、4分子が
生成します。
スライドNo. ナレーター
ナレーション
B
本技術は、どのように、工業的に応用できますか?
略図で示すように、チタンの酸洗槽の近くに、反応槽とろ過装置を設置します。酸洗
槽から反応槽へ、使用済みの酸洗液を送り込み、これにふっ化カリウムの水溶液を
注入して、6ふっ化チタン酸カリウムの沈殿を生成させます。これをろ過装置に送り込
10
み、6ふっ化チタン酸カリウムの沈殿とろ液に分離した後、ろ液を酸洗槽に戻します。
A
このろ液の中のフッ酸の濃度は、使用済みの酸洗液に比べて増加しており、酸洗で
溶け込んだチタンも除去されていますので、酸洗能力が向上します。
一方、ろ過分離した6ふっ化チタン酸カリウムの沈殿からは、別途、水酸化チタンや
ふっ化カリウムなどを回収します。
略図で示すように、シリコンウェーハーの表面を溶解するために用いた混酸を反応
槽に移し入れ、これにふっ化カリウムの水溶液を注入して、6ふっ化けい酸カリウム
の沈殿を生成させます。これをろ過装置に送り込み、6ふっ化けい酸カリウムの沈殿
とろ液に分離した後、ろ液を金属チタンやステンレス鋼の酸洗に用います。
通常、シリコンウェーハーの表面を溶解するために用いた混酸には、高濃度のフッ酸
11
A
や硝酸が残存していますので、これを単に水で薄めるだけでも、金属チタンやステン
レス鋼の酸洗に用いることができます。しかし、本技術によって、あらかじめシリコン
を除去した混酸を用いれば、金属チタンやステンレス鋼の酸洗で生じた廃液を中和
処理する際に、中和スラッジの発生量を大幅に少なくすることができます。
また、ろ過分離した6ふっ化けい酸カリウムの沈殿からは、別途、二酸化けい素や
ふっ化カリウムなどを回収することもできます。
略図で示すように、廃液から析出させた6ふっ化チタン酸カリウムや6ふっ化けい酸
カリウムの沈殿を反応槽に移し入れ、アンモニア水を加えて加熱し、水酸化チタンや
含水けい酸の沈殿を生成させます。これをろ過装置に移し入れ、沈殿とろ液に分離
12
A
します。沈殿は十分に水洗したのち、乾燥炉や焼成炉を用いて、二酸化チタンや二
酸化けい素に変え、資源として利用します。ろ液には、別途、水酸化カリウムや水酸
化カルシウムを加えて加熱し、アンモニアおよびふっ化カリウムまたはふっ化カルシ
ウムを回収します。
B
本技術の開発はどの程度進んでいますか?
いわゆるビーカーテストによる基礎試験を行った結果、フッ酸再生による酸洗能力
向上効果を確認しました。また、かなり純度の良い二酸化チタンや二酸化けい素を
13
A
回収できました。さらに、関連特許を2件出願しました。これらの特許については、
権利譲渡および実施許諾が可能です。
実用化試験などについては、今後検討したいと思います。
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