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破産手続の概要 - 弁護士宮原一東・弁護士岡本成道のWebサイト

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破産手続の概要 - 弁護士宮原一東・弁護士岡本成道のWebサイト
破産手続の概要 - 民事再生を使わない会社再建。弁護士宮原一東・弁護士岡本成道のWebサイト
作者: Administrator
2011年 5月 13日(金曜日) 16:11 - 最終更新 2011年 5月 13日(金曜日) 16:39
1 破産手続とは
破産とは、債務者がその債務を完済することができない状態、または、そのような状態にある
場合に、債権者に対して財産を公平に配分することを目的として行われる法的手続をいいます
。
破産手続が開始されると、従来、破産者が有していた自己の財産に対する管理処分権は、原則
として裁判所から選任された破産管財人に移転することとなります。
破産管財人は、破産者から引き継いだ財産(破産財団と言います。)の管理・換価と当該財産
をもって債権者に対する公正・公平な返済(配当)を行います。
株式会社の場合、破産手続の開始は、法人の解散原因でもあります。
破産手続の終了によって、法人格が消滅することになります。
2 管財事件と同時廃止事件
破産手続には管財人の選任される管財事件と、管財人を選任しない同時廃止事件とがあります
。
同時廃止事件とは、破産財団となるべき財産が極めて少なく、破産手続の費用を償うに足りな
い場合に、破産手続開始と同時に、破産手続が終了する事件です。
東京では、同時廃止は、現在は個人の自己破産の場合に限り利用され、法人破産では利用され
ていません。
したがって、法人破産は、すべて管財事件とされることになります。
3 おおまかな流れ
破産手続(管財事件)のおおまかな流れは以下のとおりです。
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破産申立て
↓
↓
開始決定=破産管財人の選任
↓
↓
第1回債権者集会 開始決定から約3か月後
↓
↓
①集会を続行せずに破産手続が終了する場合
あ)異時廃止 債権者集会をもって終了
い)簡易配当 債権者集会から約7週目に債務終了集会 → 終結へ
う)正式配当 債権者集会から約9~11週目に債務終了集会 → 終結へ
②集会を続行する場合
第2回以降の債権者集会 前回債権者集会から約2~3か月後
第2回以降については、必要に応じて、適宜、①と同様の扱いとされます。
通常、破産管財人は、第1回債権者集会までの間に、引き継いだ財産(破産財団)の内容を確
認して、換価できるものは随時換価し、財団の増殖を目指して活動することになります。
第1回目の集会までに、すべての財産の処分が終了しない場合には、集会を続行することにな
ります。
③配当手続と異時廃止について
破産手続では、各債権者から届け出のあった債権について、法律上の優先劣後関係が存在しま
す。
破産財団からは、まず、最優先の財団債権の支払が行われ、財産債権を完済した上でなお財団
が存在する場合には、次の優先的破産債権への配当、それでもさらに余剰がある場合に限り、
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破産債権(一般の債権のほとんど)への配当が行われます。
破産手続は、破産債権者への配当を行う手続ですので、破産財団が破産債権者への配当を行う
に足りる程度に存在しない場合(財団債権等の支払しかできない場合)には、以後、手続を進
める必要性はなくなることになります。
そこで、配当を行うに足りる財団が形成できない場合には、異時廃止として手続を打ち切るこ
ととなります。
他方、破産債権者への配当を行うことが可能な場合には、破産管財人によって配当が行われる
こととされ、すべての財産が換価、配当されたときに破産手続は終結します。
破産手続に至る事案では、破産申立ての時点では換価可能な財産はそれほど残っていない場合
が多いこと、また、事業の存続ができなくなるような会社では公租公課の滞納も多く見られる
といった事情から、異時廃止で終結するケースが多いのではないでしょうか。
4 破産手続開始決定の効力
破産手続開始決定(昔の破産宣告)が発令された場合には、次のような効力が生じます。
(1)破産者に対する効果
破産手続開始決定により、破産者はそれまでに保持していた財産の管理処分権を喪失し、破産
管財人がこれを承継することになります(破産法78条1項)。
(2)破産債権者に対する効果
破産手続の開始によって、破産債権者は個別の権利行使が許されなくなります(100条1項
)。
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破産債権者は、以後、債権を届け出て配当を受けることによって自己の権利の実現を図ること
になります。
(3)係属中の訴訟手続等に及ぼす影響
①訴訟手続に及ぼす影響
前述のように、破産手続開始決定によって破産者の財産管理処分権が失われることに伴い、破
産者を一方当事者とする訴訟は中断することになります(44条1項)。
破産管財人は、中断された訴訟を受継することができます(同条2項)。
もっとも、破産手続開始前に、破産者を被告として破産債権に基づく訴訟が係属している場合
であれば、破産債権者は、以後、破産手続の中で債権届出等によって権利行使を行うことにな
るため、破産管財人が中断した訴訟を受継することはないでしょう。
②保全・強制執行に及ぼす影響
破産手続開始決定が発令されると、破産債権又は財団債権に基づく強制執行や保全処分は新た
に行うことができず、既にされているものも破産財団に対して効力を失うことになります(4
2条1項、2項)。
そのため、特定の債権者によって仮差押や強制執行が行われようとしている場合には、早急に
破産手続開始を求めることで、ある程度、個別的な権利の実現を回避することが可能となりま
す。
もっとも、国税滞納処分は、開始決定後「新たに」行うことはできないとさているものの、「
既に」されている場合には続行することができます(43条1項、2項)。
したがって、国税滞納処分が行われる可能性がある場合には、無用な混乱を回避するためにも
、早急に破産手続の開始を求めることを検討するべきです。
(国税等公租公課は財団債権ないし優先的破産債権となるため、滞納処分を受けなかったとし
ても、破産手続中優先回収の対象となるものです。
そのため、破産財団が十分に見込まれる場合であれば、滞納処分を続行したとしても、実際上
の不都合はそれほど生じないものと思われます。
しかしながら、財団債権を十分に賄うだけの財団が見込まれない場合で、他に租税債権と競合
する財団債権(労働債権等)が存在する場合に滞納処分が先行してしまうと、結果として租税
債権のみが優先回収をすることとなってしまい、財団債権相互の間で不均衡が生じることとな
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ります。
したがって、滞納処分の実行を避けることで妥当な解決が得られる場合も多いものと思われま
す。)
→「 税金滞納と破産手続の関係 」
5 破産手続への破産者関係者の関与について
(1)破産者の義務
①説明義務
破産者の財産状態を明らかにするために、破産管財人等の請求により、破産者は破産に関し必
要な説明をすることが義務付けられております(説明義務。40条)。
破産者が会社の場合の取締役だけでなく、破産者の従業員にも同様の義務があります(ただし
、従業員に説明を求めるのは裁判所の許可がある場合に限られます。)。
②重要財産開示義務
破産者は手続開始後遅滞なくその所有する不動産、現金、有価証券、預貯金その他裁判所が指
定する財産の内容を記載した書面を裁判所に提出しなければなりません(41条)。
通常は、破産手続開始申立時に作成する財産目録の提出をもって足りるものとされています。
③居住制限
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破産者は、裁判所の許可を得ることなく居住地を離れることはできません(37条1項)。こ
れは会社の取締役等破産者に準じる者も同様です。
その一環として、破産者が破産手続中に旅行に出かけたり、出張したりすることの自由が制限
されることになります。
実務上は、破産者代理人が事前に破産管財人に書面で申請して同意を得ることで対応すること
になります。
④引致
裁判所は、破産者が説明を尽くさなかったり、財団の占有管理を妨害したりする場合など必要
と認めるときは、破産者の引致(裁判所による一種の身柄拘束)を命じることができます(3
8条)。
⑤通信の秘密の制限
破産手続開始決定によって、破産者宛の郵便物はすべて破産管財人に転送され(81条)、開
封・閲覧の対象とされます(82条)。
(2)実務上の手続関与
①管財人面談
破産者(法人破産の場合の代表者)は、破産手続開始の前後に、破産管財人(開始決定発令前
は破産管財人候補者)との面談を行うことになります。
法人破産で会社の財産状況等に詳しい方(経理担当者)がいる場合には、その方にも同席をし
ていただくことがあります。
その後も、破産管財人からの求めに応じて、適宜、必要な情報の提供、説明等に対応していた
だくことになります。
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②債権者集会への出頭
破産者(法人の場合の代表者)は、原則として、債権者集会に出頭しなければなりません。
個人破産の場合で、理由なく出頭に応じなかった場合には、免責不許可等の制裁を受ける可能
性があります。
債権者集会は、破産管財人による管財業務の遂行状況の報告等が主たる議題となるものであり
、たとえば、破産者が債権者らに対して謝罪をするといったことが求められるものではありま
せん。
そのため、破産者に発言を求められること自体それほどないと思われます。
もっとも、多数の債権者が出席するような場面では、各債権者から直接質疑応答を求められる
ことがあるかもしれません。
一般論として、生きている会社が突然破産するに至った場合には、それによって迷惑を受けた
債権者らが多数出席することが多いでしょう。
他方、会社としての機能を停止してある程度時間が経過しているような場合や、関係債権者が
ほとんどいない場合には、誰も出席しないこともあります。
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