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建築分野での気象データの活用について

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建築分野での気象データの活用について
2013.3.30(Sat)
―2012年度Live-E!高大連携事業成果報告会―
建築分野での気象データの活用について
福留 伸高(首都大学東京)
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1
1.建築における気象データの位置づけ
2.建築分野において求められている気象データ
とは・・・
3.活用事例
①東北の風土に適した環境建築推奨マップ
②海外気象データの現状、活用例
③首都大・多摩地域の気候特性調査
4.今後期待されること
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2
はじめに・・・
温暖化に伴う影響
1.集中豪雨の発生頻度の増加 2.真夏日・猛暑日の増加 (2007年:多治見・熊谷で最高気温40.9℃。) 3.暖冬傾向?(最近は極端気象・・・) ⇒地域性によらず,都市部において顕著。
☆エネルギーの消費に依存しない 社会環境へのシフトが必須!!
真夏日の日数
夏季の平均気温
地球シミュレータによる予測結果(出典:環境省HP)
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3
0.建築学における”環境”の立ち位置
建築と環境のかかわり・・・
気象学、農学、
資源化学など
土木工学など
建築環境学の主な
研究領域
[出典元:田中ら,井上書店,最新建築環境工学(改訂2版)pp.13より]
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4
建物における”気象”との関係
[出典元:田中ら,井上書店,最新建築環境工学(改訂2版)pp.15より]
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5
”気象条件”を活かした建築事例
北側
南側
GLA Building
(London City Hall)
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6
大阪富国生命ビル
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7
太陽光
アクロス福岡
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8
サンルーム
アースチューブ
聴竹居(戦前の環境共生住宅)
-京都・大山崎-
食堂
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9
1.建築における気象データの位置づけ
建築物の計画 環境シミュレーション
基本・実施設計
構造シミュレーション
温熱・光・空気環境 ⇒ 気象条件によって形成 近年の温暖化防止に向けた世界的な取り組みにより,環境を考慮 した計画の重要性が高まる。(将来予測も絡んだ計画・・・)
建設地近辺の気象データが必須!!
温熱環境・光環境へ与える主要因 ⇒ 気温・風向風速・日射量データなど(地点による変化が著しい。) 気象官署の観測データの重要度:極めて大
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10
“快適な環境”を実現する「空調」の概念
熱負荷
[冷房のイメージ]
湖に浮かぶ穴が開いたボートに
侵入する水を外に掻き出す!!
[暖房のイメージ]
穴の開いたバケツに水を注入
し、一定の水位を保つ!!
[出典元:田中ら,井上書店,最新建築環境工学(改訂2版)pp.31より]
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11
2.建築分野において求められている気象データとは・・・
空気
熱
風向
気温
風速
水大気放射量
気圧
雲量 光
太陽位置
湿度 降水量
日射量
日照時間
照度
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12
日本の気象官署のデータ ・・・ 気温,湿度,風向風速,全天日射量,気圧, 降水量,日照時間,大気現象など
気象台・特別地域気象観測所
地域気象観測所(AMeDAS)
旭川
全国155地点 ↓ 全天日射量の観測:66地点
全国1311地点 [うち4要素観測:838地点(2013.1.31)] 建物の建設地点によっては,かなり離れた 地点の気象データを利用する場合あり。
地点のカバーはできるものの,日射量など データ要素は充実していない。
観測要素:気温,降水量,日照時間, 風向風速(1時間間隔で観測) ©N.FUKUDOME(TMU) All Rights Reserved
13
建築分野で用いる気象データの紹介
[国内] ・実在年気象データ ・標準年気象データ ⇒ シミュレーションに多用 ・設計用気象データ(安全率あり)
[海外] ・EPW(EnergyPlus Weather data files) ⇒ 参照年データ(reference year data)として 世界各地のデータ有(DOEで公開)。 ・WEADAC ⇒ 世界3700地点余りのデータを収録 ©N.FUKUDOME(TMU) All Rights Reserved
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日本建築学会編(販売:㈱気象データシステム hUp://www.metds.co.jp/ ) 拡張アメダス(EA)気象データ[1981-­‐2000](Expanded AMeDAS Weather Date) 全国の気象台・アメダスで観測された20 年間の気象データを利用。
日照時間
気温
雲量
水蒸気圧
湿度
日射量,大気放射量,湿度を推定
・アメダスにおける欠測データの補完 ・日射量,大気放射量,湿度を時別デー タとして補充
完成,ライセンス公開
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15
EPW気象データについて…
DOEサイト:hUp://apps1.eere.energy.gov/buildings/energyplus/weatherdata_about.cfm?・・・
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16
タイ・バンコクの気象データ
-EPW形式のデータファイルの様子-
国内シミュレーションソフト対応の データフォーマットへの変換
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3.活用事例
事例①東北における環境建築の推奨区分マップ
クラスター分析で気候区分マップを作成!!
松本、長谷川:東日本大震災復興住宅の熱環境設計のための気候区分の提案 平成24年度日本建築学会大会学術講演梗概種,D-­‐2,pp.505-­‐506,2012.9
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18
松本、長谷川:東日本大震災復興住宅の熱環境設計のための気候区分の提案 平成24年度日本建築学会大会学術講演梗概種,D-­‐2,pp.505-­‐506,2012.9
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19
事例②:海外で公開されている日本気象データ
とアメダスデータとの比較
478270
鹿児島
476180
松本
477430
境港(美保)
476350
名古屋
477710
大阪
474120
札幌
477620
下関
477150
東京(百里)
478980
土佐清水
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20
暖房負荷[GJ]
冷房負荷[GJ]
EPW(海外サイトからの気象データ)とEA(アメダス気象データ)の比較
東京・・・空調機器(エアコンなど)のエネルギー消費量の目安となる 熱負荷に大きな開きがある。 ⇒この原因は・・・?
[出典元:㈱気象データシステムHP]
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百里基地
約80km
気象庁
EA→気象庁・・・都心部の観測点 夏季の熱負荷が大きくなる傾向。 EPW→百里基地・・・郊外の観測点(約80kmの距離) 冬季の熱負荷が大きくなる傾向。
[出典元:㈱気象データシステムHP]
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伊丹空港
約12km
大阪管区気象台
EA→大阪管区気象台・・・都市部の観測点 EPW→伊丹(大阪国際)空港・・・郊外の観測点 ☆地点間の距離が近く、負荷に大きな違いはない。 ©N.FUKUDOME(TMU) All Rights Reserved
[出典元:㈱気象データシステムHP]
23
事例③:東京都リーディングプロジェクト
多摩地域の気候特性調査
東京都リーディングプロジェクトにおける取り組み
現状⇒建物規模で区分
省エネ東京仕様2007に基づく庁舎への導入例
〜~ CO2排出量量を約3割削減 〜~
(庁舎モデル3,000㎡の場合)
再⽣生可能エネルギーの導⼊入
太陽光発電設備
の設置
都内全域において統一した仕様
建物の熱負荷抑制
屋上断熱50mm→75mm
複層ガラス
気密サッシ
庇(500mm⽔水平)
外壁断熱25mm→50mm
緑化推進
新仕様⇒建物規模・気候特性で区分
設備システムの⾼高効率率率化
<⾼高効率率率機器>
・空調機器、変圧器等
<きめ細かい運転>
・空調・照明スケジュール制御等
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Ⅴ
Ⅲ
Ⅳ
Ⅱ
Ⅰ
気候特性による地域区分(イメージ)
24
アメダスとLive-E!センサ(都内)
・・・都内設置のアメダス地点
・・・Live-­‐E!センサ(既設分)
東京(気象庁)
青梅(4要素)
小河内(4要素)
都立高校へ設置
小沢(降水のみ)
練馬(4要素)
八王子(4要素)
府中(4要素)
江戸川臨海(4要素)
世田谷(降水のみ)
日野キャンパス
羽田(3要素)
南大沢キャンパス ©N.FUKUDOME(TMU) All Rights Reserved
25
多摩地域のLive-E!センサ地点(現在)
気象庁(大手町) ⇒ここが「東京」の 気象観測地点 多摩高校 秋留台高校 国分寺高校 八王子桑志高校 首都大・南大沢キャンパス 首都大・日野キャンパス ©N.FUKUDOME(TMU) All Rights Reserved
26
表1 気象センサの概要(管理センサ分)
⑤ センサ設置建物 ① 大学実験棟(屋上) 八王子アメダス ④ ③ ②
① 気象庁 ● …本学管理センサ ○ …既設センサ(その他) 気象センサ(Vaisala,WXT510)
制御系
BOX
観測開始時期 東京都八王子市南大沢 2010年7月 2011年9月 ② 大学事務棟(屋上) 〃 日野市旭が丘 ③ 都立高校A(屋上) 〃 八王子市千人町 2012年1月 ④ 都立高校B(屋上) 〃 あきる野市平沢 2012年1月 ⑤ 都立高校C(屋上) 〃 青梅市裏宿町 2012年2月 観測気象要素 図2 気象センサの設置分布(東京都内)
所在地 気温、相対湿度、気圧、雨量、風向風速 表2 比較対象期間
データ期間 気候的特徴 A 2011/6/16~18 雨天・曇天 梅雨季で気温は低め。 B 2011/8/11~13 晴天 8/11に八王子周辺で集中豪雨。 C 2012/1/22~24 雨天・降雪 降雪時に風速が欠測。 晴天 気温の日較差が大。 D 2012/1/26~28 備考 データロガー
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都心部と多摩地域(広域での比較):2010.7~ 八王子アメダス
気象庁 首都大 南大沢キャンパス ©N.FUKUDOME(TMU) All Rights Reserved
28
都心部と多摩地域(広域での比較)
H achioji
①
22
20
18
16
気温
14
14
16
18
20
22
24
A M eD A S D A TA (Tokyo)[℃]
D A TA (H achioji,①)[m /s]
D A TA (H achioji,①)[℃]
期 間 B
34
32
30
28
26
24
気温
24 26 28 30 32 34 36 38
A M eD A S D A TA (Tokyo)[℃]
八王子
NE
①
ENE
WNW
3
W
2
WSW
1
風速
0
5
ESE
SW
SE
SSW
1
2
3
4
5
A M eD A S D A TA (Tokyo)[m /s]
NNW
H achioji
①
S
NE
八王子
WNW
ENE
①
E
W
2
0
風向頻度[%]
N NNE
3
1
SSE
NW
4
風速
東京
WSW
0
1
2
3
4
5
6
©N.FUKUDOME(TMU)
Rights Reserved
A M eD A S D A TAAll (Tokyo)[m
/s]
E
東京
6
H achioji
①
N NNE
NW
H achioji
①
4
0
38
36
NNW
5
D A TA (H achioji,①)[m /s]
期 間 A
D A TA (H achioji,①)[℃]
24
SW
SE
SSW
S
SSE
ESE
29
風向頻度[%]
都心部と多摩地域(広域での比較)
D A TA (H achioji,①)[m /s]
D A TA (H achioji,①)[℃]
期 間 C
8
H achioji
①
6
4
2
0
-2
気温
H achioji
①
4
2
0
-2
-4
-6
WNW
3
W
気温
-6 -4 -2 0 2 4 6 8
A M eD A S D A TA (Tokyo)[℃]
NE
八王子
ENE
①
E
2
WSW
1
風速
0
5
ESE
SW
1
2
3
4
5
6
A M eD A S D A TA (Tokyo)[m /s]
SE
SSW
6
D A TA (H achioji,①)[m /s]
D A TA (H achioji,①)[℃]
8
期 間 D
4
N NNE
東京
NW
H achioji
①
5
0
-4
-4 -2 0 2 4 6 8 10
A M eD A S D A TA (Tokyo)[℃]
6
NNW
6
10
NNW
H achioji
①
SSE
S
N NNE
東京
NW
風向頻度[%]
NE
八王子
4
ENE
WNW
3
W
2
1
風速
E
①
WSW
0
0
1
2
3
4
5
6
©N.FUKUDOME(TMU)
All R
ights R
eserved
A M eD A S D A TA (Tokyo)[m /s]
ESE
SW
SE
SSW
S
SSE
30
風向頻度[%]
八王子周辺(狭域での比較):2012.1~
④ 福生市
あきる野市
立川市
昭島市
約7km
アメダス
八王子市
約5km
日野市
②
③
約1.4km
約8km
①
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八王子アメダスと各設置センサの位置関係
31
八王子周辺(狭域での比較)
10
6
8
①
②
③
④
D A TA (①~④)[m /s]
期 間 C
D A TA (①~④)[℃]
8
4
2
0
-2
-4
気温
2
0
-2
-4
-6
-8
WNW
気温
-8 -6 -4 -2 0 2 4 6 8
A M eD A S D A TA (H achioji)[℃]
八王子
NE
②
④
ENE
5
3
2
E
W
4
風速
①
②
③
④
WSW
SW
SE
SSW
0 1 2 3 4 5 6 7 8
A M eD A S D A TA (H achioji)[m /s]
NNW
5
SSE
S
風向頻度[%]
N NNE
八王子
NW
4
ESE
③
①
6
①
②
③
④
D A TA (①~④)[m /s]
D A TA (①~④)[℃]
期 間 D
4
6
0
-4 -2 0 2 4 6 8 10
A M eD A S D A TA (H achioji)[℃]
N NNE
NW
7
1
8
6
NNW
② NE
ENE
WNW
3
W
風速
2
1
①
②
③
④
WSW
0
0
1
2
3
4
5
6
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A M eD A S D A TA (H achioji)[m /s]
E
①
④
ESE
③
SW
SE
SSW
S
SSE
32
風向頻度[%]
4.今後期待されること
①海外気象データのQuality向上
海外の観測密度や観測データの質は日本に比べると不十分な部分が多い。 ⇒日本のデータ整備ノウハウを海外(東南アジアなど)に応用する試みが進んでいる。
②長期評価を可能にする将来気象データの普及
40~50年のサイクル
建設時だけでなく、 解体 長い期間での影響を 評価する流れ!!
建設
運用
曽我ら:外皮・躯体と設備・機器の総合 エネルギーシミュレーションツール 「BEST」の開発 (その44)EA 気象データと将来気象 データの開発について 平成21年度空気調和・衛生工学会 大会学術講演論文集,pp.659-­‐662,2009.9
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33
首都大での建築環境教育の取り組み
建築環境演習演習(模型実験、実地調査など)
・・・学生が主体的に取り組む内容を充実させる取り組み。
●学生たちが能動的に環境工学分野のテーマ(PMV、光、空気、水など)に基づく実験の企画と実施、
レポート作成と口頭発表、他の学生・教員との質疑と討論を通じて、新たな建築的視点(建築環境工
学をどのように実際の設計に活かすか・・・など)の発見につながることを実感。
☆教員の負担はかなり大きいものがあるが、こうした演習を通して学生の意識が変化していく様子を
確認してきたことから、今後も学生が主体的に取り組める授業内容として工夫することを第一目標
として授業に携わっていく予定である。
本学で実施している建築環境演習の授業風景
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34
ご清聴、ありがとうございました。
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