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調査報告書(PDF形式:3624KB)
平成 24 年度総合調査研究等委託事業
「就業構造の転換に係る実態調査」
報告書
平成 25 年 3 月
<目次>
第1章 調査の概要 ........................................................................ 1
(1)調査研究の背景・目的 .............................................................. 1
(2)調査の方針 ........................................................................ 2
(3)調査研究の内容・方法 .............................................................. 2
(4)各調査の概要 ...................................................................... 4
第2章 スキルと経験をもつ社会人の成長分野とのマッチングに関する整理 ..................... 11
(1)スキルと経験をもつ社会人の求職・転職動向 ......................................... 11
(2)資料・先行調査等にみる今後の成長分野の市場動向 ................................... 35
(3)
「人を活かす産業」の動向 .......................................................... 45
(4)
「人を活かす産業」のマッチング・教育サービスの現状 ................................ 56
第3章 人を活かす産業のサービスに必要な要素や課題の抽出及び対応策の検討 ................. 73
(1)成長分野において今後求められる人材ニーズ、求められる能力・スキル、採用例 ......... 73
(2)成長分野の人材ニーズに関するミドル層の移動可能性の検討 ........................... 86
(3)各成長分野への円滑な労働移動、マッチングのために必要な社会人の学びの要素 ......... 90
第4章 調査のまとめと今後の取り組むべき課題 ............................................ 104
(1)ミドル層の成長産業への円滑なシフトに求められる事項 .............................. 104
(2)円滑な労働シフトに向けた今後の課題 .............................................. 111
第1章 調査の概要
(1)調査研究の背景・目的
①調査の背景
少子高齢化、経済の情報化が進行する中で、ヘルスケア、クリエイティブ、エネルギーなどの成
長産業、生産部門から開発部門・営業部門といった高付加価値部門、国内市場に加えてグローバル
市場を目指す海外展開など、成長分野における成長牽引力を高めていくことが必要である。
しかしながら、スキルと経験をもつ社会人が、必要なマインドやスキルを身につけて成長分野で
活躍するという流れは、必ずしも大きなものとはなっていない。若年層の流動化は進んでいるが、
ミドル層の流動化は進んでいない。
今後、スキルと経験をもつ社会人の成長分野への進出を促すためには、マッチングと教育訓練
を一体的に提供する「人を活かす産業」の創出・振興」を図る必要がある。
②調査の目的
上記のような問題意識のもと、2 つの目的を掲げ、調査を実施した。

成長分野における人材ニーズを明らかにした上で、これを踏まえた成長分野への有望な人材
の供給ルートを整理する

スキルと経験をもつ社会人の成長分野へのマッチングサービスの課題やその対応策、学び直
しの標準プログラムの構成要素、能力・適正評価の手法を整理する
1
(2)調査の方針
本調査は、下記の方針にそって、整理・分析を行った。
①各成長分野にける人材ニーズの精緻化とミドルの移動に関する評価・検討
今後の成長分野について、「ヘルスケア(医療・介護)」、「環境・エネルギー」、「グローバル」、
「クリエイティブ」分野を設定した上で、当該分野における成長分野企業のキャリア採用における
人材ニーズについて、その職務や職種に着目し、採用例や確保・育成策について整理を行う。さら
に、当該職務や職種へのミドル層の移動可能性について検討する。
②成長分野別にミドル層の移動に必要な学びの要素について整理
(1)で整理したミドル層の移動可能性のある職務・職種について、円滑な労働移動、マッチン
グのために必要な学びの要素について、テクニカルスキル、ポータブルスキル、マインド、資格等
の側面から整理を行う。
③円滑な労働シフトに向けて、各主体別に取り組むべき課題について提言
成長分野を問わず、ミドルの移動に必要な学びの共通要素を整理した上で、円滑な労働シフトに
向けて、①スキルと経験を持つ社会人、②成長分野の企業、③人を活かす産業、④社会(国)のそ
れぞれの主体が取り組むべき課題について整理を行う。
(3)調査研究の内容・方法
①調査研究の全体像
本調査では、①文献・資料調査、②成長企業ヒアリング、③人材ビジネスヒアリング、④有識者・
実務家から構成される意見懇談会、シンポジウムを実施した。
2
調査方針
(1)各成長分野にける人材ニーズの精
(1)各成長分野にける人材ニーズの精
緻化とミドルの移動に関する評価・
緻化とミドルの移動に関する評価・
検討
検討
(2)「テクニカルスキル」、「ポータブルス
(2)「テクニカルスキル」、「ポータブルス
キル」、「マインド」、「資格」の側面か
キル」、「マインド」、「資格」の側面か
ら、成長分野別にミドルの移動に必
ら、成長分野別にミドルの移動に必
要な学びの要素について整理
要な学びの要素について整理
主な調査手法
①文献・資料調査
②成長分野企業
ヒアリング
②成長分野企業
ヒアリング
(3)円滑な労働シフトに向けて、各主体
(3)円滑な労働シフトに向けて、各主体
別に取り組むべき課題について提
別に取り組むべき課題について提
言
言
③人材ビジネス
ヒアリング
③人材ビジネス
ヒアリング
④意見懇談会、シンポジウム
3
(4)各調査の概要
①先行研究・文献調査
1)調査目的
成長領域・分野の特定化と人材ニーズの精緻化を目的として実施する。具体的には、①成長分野の
マーケットの動向、②①で整理した主なマーケットにおける求人企業・求職者の傾向、③実際の労働
移動ケース(事例)について整理を行う。
2)調査方法

WEB 等の求人/求職者サイト、人活産業広報資料等(転職事例の紹介等)を活用した整理・
分析

官公庁、地方部局、地方自治体等の公的団体発行の報告書、民間研究所のレポート、雑誌・
書籍等による整理。

業界誌や新聞等の記事検索による労働移動ケース(企業・求職者)の発掘
3)調査内容

「ヘルスケア」、
「環境・エネルギー」、「グローバル」、「クリエイティブ」分野の基本情報の
整理

上記、成長分野・領域に関するマーケットのセグメント例と市場規模、現状の雇用者数、今
後の雇用吸収力

特に今後注目すべきマーケットにおける主要プレイヤー(企業/団体等)と取組概要

実際の求人内容(職務経験、スキルや能力、資格等の要件)

労働移動ケース
4
②成長分野企業ヒアリング調査
1)調査目的
成長分野企業を対象に、キャリア採用における人材ニーズについて、その職務や職種に着目し、採
用例や確保・育成策について把握する。また、ミドル層や異業種からの採用について企業の考え方を
把握する。
2)ヒアリング調査の対象
ヘルスケア、環境・エネルギー、グローバル、クリエイティブ分野における企業について、文献・
資料調査等を踏まえてヒアリング対象を抽出・選定し、ヒアリングを実施した。
・ヘルスケア分野 5 社
・環境・エネルギー分野 4 社
・グローバル分野 4 社
・クリエイティブ分野 1 社
5
3)ヒアリング項目
1.新規事業・重点事業等に係る人材の確保策~(中途)採用活動等について~

近年の人材確保活動の状況・実績(新卒採用・中途採用、出向・転籍者の受け入れ・派遣等)

現状、上記人材を確保するために、どのような方法を採用しているのか(求人公告の活用、人づ
ての紹介、人材紹介機関の活用、事業提携、出向・転籍制度など)

自社にとって、人材を採用する場合、ポテンシャルのある人材はどういった業界に存在すると認
識しているか。応募者の適性をどのような方法(ツール)で判断しているか。

中途採用者(転職者)の処遇はどのように設定されているか。スペックに見合う人材であれば、
現状の中途採用以上の給与を支払うことはあるか否か。

必要な人材確保や育成のために、人材ビジネス企業等(ヘッドハンティング、通常の有料職業紹
介、アウトプレースメント、ハローワーク)へ期待するものは何か。既存の人材ビジネスへの不
満などはあるか。
2.自社で取り組んでいる(取り組む予定)の新規事業・重点事業等について

今後、事業展開に伴ってどのような人材ニーズが発生することが想定されるか。

上記に対して、現時点で想定している/予定している施策等はあるか

たとえば求人に出す際など、職務を担う人材像をどのように規定しているか。どのような職務経
験やスキル、資格等を擁する人材を求めているのか。
3.中途採用等で採用した人材に対しての施策

中途採用者にどのような能力開発の機会、サポート体制を用意しているか。中途採用者(特に異
職種や異業種からの人材)を採用し活用していくにあたって、課題と感じていることは何か。

上記、能力開発機会や課題解決のために、外部機関(人材ビジネス企業等)を活用しているか。
活用している場合、メリットをどのように認識しているか。

採用後、活躍できるかの見極めにどの程度の時間を要するか。
6
③人材ビジネスヒアリング調査
1)ヒアリング調査の目的
人材ビジネス企業を対象に、各成長分野で求人ニーズの高い職務や職種、需給が逼迫している職務
や職種について把握する。また、成長分野へのミドル層の移動ケースについて、実際の事例や今後の
移動可能性について把握する。
2)ヒアリング調査の対象
ヘルスケア、環境・エネルギー、グローバル、クリエイティブ分野の人材紹介について、比較的注
力している人材ビジネスを対象にヒアリングを実施した。
【人材紹介ビジネス】
・ヘルスケア分野 1 社
・環境・エネルギー分野 2 社
・グローバル分野 2 社
・クリエイティブ分野 1 社
7
3)ヒアリング内容
1.貴社の提供するサービスの特徴や強みについて

取り扱う職業紹介の主な分野、領域、対象としている主な労働者像や企業像

労働移動パターンの傾向(業種や職種の移動パターン)

提供するサービスの特徴と強み
2.新規事業・重点事業等に係る人材の確保策~(中途)採用活動等について~

近年の企業の人材確保活動の状況(傾向)について

現状、上記人材を確保するために、企業は、どのような方法を採用しているのか。(求人公告の活
用、人づての紹介、人材紹介機関の活用、事業提携、出向・転籍制度など)

顧客企業にとって、人材を採用する場合、ポテンシャルのある人材はどういった業界に存在する
と認識しているか。応募者の適性をどのような方法(ツール)で判断しているか。

中途採用者(転職者)の処遇はどのように設定されているか。スペックに見合う人材であれば、
現状の中途採用以上の給与を支払うことはあるか否か。

必要な人材確保や育成のために、人材ビジネス企業等(ヘッドハンティング、通常の有料職業紹
介、アウトプレースメント、ハローワーク)に期待されていることは何か
3.今後、各領域(「ヘルスケア」、「環境・エネルギー」、「クリエイティブ」、「グローバル展開」)で
顧客が取り組まれる新規事業・重点事業等について自社の果たす役割

今後、事業展開に伴ってどのような人材ニーズが発生することが想定されるか。

上記に対して、現時点で企業が想定している/予定している施策等はあるか

たとえば求人に出す際など、職務を担う人材像をどのように規定しているか。どのような職務経
験やスキル、資格等を擁する人材を求めているのか。
4.中途採用等で採用した人材に対して、成長企業が行っている施策

中途採用者にどのような能力開発の機会、サポート体制を用意しているか。中途採用者(特に異
職種や異業種からの人材)を採用し活用していくにあたって、課題と感じていることは何か。

上記、能力開発機会や課題解決のために、外部機関(人材ビジネス企業等)を活用しているか。
活用している場合、企業はメリットをどのように認識しているか。

採用後、活躍できるかの見極めにどの程度の時間を要するか。
8
④意見懇談会の開催、シンポジウム開催
シンポジウムの企画内容の検討及び調査の整理の方向性について検討を行うことを目的に、有識者、
成長企業の人事・企画責任者、人材ビジネス責任者から構成される意見懇談会を開催した。
1)意見懇談会の開催概要
【開催日時】
平成 25 年3月 11 日(月)10 時~12 時
【開催場所】
経済産業省 経済産業省本館西1面談室2会議室
【議事】
1.ご挨拶
2.シンポジウム開催趣旨について
3.委員自己紹介
4.シンポジウムの進め方について
5.
「就業構造の転換に関する実態調査」結果についての報告
6.意見交換
【配布資料】
資料1 シンポジウム開催概要
資料2 シンポジウムの進め方について
資料3 「就業構造の転換に関する実態調査」結果概要について
【委員】
<座長>
須東 朋広 (株)インテリジェンス HITO 総合研究所主席研究員
<委員>
水谷 智之 (株)リクルートキャリア 代表取締役社長
(代理) 池目 雅紀 (株)リクルートホールディングス 企画渉外担当部長
小寺 一輝 ナゴヤパッキング製造(株)経営企画室・アジア事業開発室室長
飯塚 忍
<事務局>
橋本 泰輔
前場 卓也
(株)やさしい手 管理本部人事部・総務部兼任部長
経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室 室長補佐
経済産業省 経済産業政策局 産業人材政策室
山岡 由加子 みずほ情報総研株式会社 社会経済コンサルティング部 上席課長
田中 文隆
みずほ情報総研株式会社 社会経済コンサルティング部
野中 美希
みずほ情報総研株式会社 社会経済コンサルティング部
9
2)シンポジウム開催概要
スキルと経験をもつ社会人の成長分野での積極的な活用に関する社会的機運の醸成及び成長分野を
拓く人材のキャリアチェンジを図るため、そのような人材が成長分野へ移動し活躍している事例等を
紹介。また、キャリアチェンジに向けて成長分野の事業者や人材ビジネス事業者がどのような取組を
行えばよいか、社会人はどのようにキャリアを繋いでいけばよいか、等の議論を深めるシンポジウム
を開催した。
主催
経済産業省
企画・運営
みずほ情報総研、株式会社キューズ
開催日時
2013 年 3 月 14 日 14:00~17:00
会場
ベルサール九段 イベントホール
1.開会
2.開会挨拶
西山 圭太 経済産業省経済産業政策局審議官(経済社会政策担当)
3.基調講演(14:10-14:40)
演 題:「想定外変化の時代のキャリア形成」
講 師:高橋 俊介 慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任教授
4.事例報告(14:40-15:20)
【成長分野企業の人材確保と登用策】
(報告者)
小寺 一輝 ナゴヤパッキング製造(株)経営企画室・アジア事業開発室室長
飯塚 忍
(株)やさしい手 管理本部人事部・総務部兼任部長
<休憩>
5.パネルディスカッション(15:35-16:55)
○テーマ :成長分野を拓く人材のキャリアチェンジと多様な人材の活躍による事業展開の新
たな可能性」
○ファシリテーター:須東 朋広 (株)インテリジェンス HITO 総合研究所主席研究員
○パネリスト
水谷 智之 (株)リクルートキャリア 代表取締役社長
小寺 一輝 ナゴヤパッキング製造(株)経営企画室・アジア事業開発室室長
飯塚 忍
(株)やさしい手 管理本部人事部・総務部兼任部長
奈須野 太 経済産業省経済産業政策局参事官(産業人材政策担当)
6.閉会
(※)別添シンポジウム実施報告書にて詳細を記載。
10
第2章
スキルと経験をもつ社会人の成長分野とのマ
ッチングに関する整理
(1)スキルと経験をもつ社会人の求職・転職動向
① 産業構成、職種構成の推移
スキルと経験をもつ社会人の就業動向と人材需要について把握するために、産業別・職業別にみた
就業者数の推移をみる。
1)産業別就業者数の推移
【産業別就業者数の推移(実績)
】
「製造業」は、2002 年に 1,202 万人であったところが 2011 年には 1,049 万人と 153 万人減少し
ている。
「建設業」は 2002 年比で 60 万人減少する一方、
「医療,福祉」が 2002 年比で 204 万人増
加している。
図表 1 産業別就業者数の推移(実績)
(万人)
1,400
製造業1,202万人
1,200
1,049万人
1,000
800
678万人
建設業618万人
600
医療・福祉474万人
502万人
400
200
0
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
建設業
製造業
情報通信業
運輸業,郵便業
不動産業,物品賃貸業
卸売業,小売業
学術研究,専門・技術サービス業
金融業,保険業
宿泊業,飲食サービス業
生活関連サービス業,娯楽業
教育,学習支援業
医療,福祉
資料:総務省統計局「労働力調査」長期時系列データ
(注)2011 年は被災三県(岩手県,宮城県及び福島県)で労働力調査の実施が一時困難となったため補完的に推計
した値(2010 年国勢調査基準)。
11
【産業別就業者数の変化・予測】
リクルートワークス研究所の予測によると、
「製造業・建設業」の就業者数は 2020 年には 1,149
万人に減少し、他方、
「情報・サービス業」は 3,098 万人に増加する見込みである。
「情報・サービ
ス業」の中では、
「医療・福祉」が 653 万人から 863 万人へと増加幅が大きい。
図表 2 産業別就業者数の変化・予測
(万人)
3,500
情報・サービス業3,098万人
3,000
2,500
2,099万人
2,000
1,962万人
製造業・建設業
1,149万人
1,500
1,000
500
0
1990
1995
2000
2005
2010
製造業・建設業
情報・サービス業
金融・保険・不動産業
農林水産業
546
198
387
239
288
653
500
2020
流通業
情報・サービス業の内訳(一部抜粋) 2010年 2020年
運輸業・情報通信業
学術研究・専門・技術サービス業
宿泊業・飲食サービス業
生活関連サービス業・娯楽業
教育・学費支援業
医療・福祉
その他サービス業
2015
630
169
378
207
268
863
559
10年間の
増減
84
-29
-9
-32
-20
210
59
資料:リクルート進学総研ホームページ
(注)1.1990~2010 年は、総務省統計局「労働力調査」
(基本主計)
2.予測方法:産業全体の経済成長率予測の前提の下で、産業ごとに 2002~2009 年における就業者の動向
を 2020 年まで延長することで予測した。産業全体の経済成長率予測は、日本経済研究センターが 2011 年
6 月に発表した 2011 年から 2015 年は平均 0.4%、2016 年から 2020 年は同 0.6%を用いた。
出典:リクルートワークス研究所「2020 年の「働く」を展望する 成熟期のパラダイムシフト」
12
【上場企業の希望・早期退職者募集の状況】
2012 年の上場企業の希望・早期退職者募集は 63 社である。総募集人数は、3 年ぶりに 1 万
5,000 人を超えて前年より倍増の 1 万 7,705 人に上った。業種別では、電気機器の 19 社、次いで
小売 6 社、卸売・機械・金属製品・精密機器・情報通信が各 4 社と続いている。
図表 3 主な上場企業 希望・早期退職者の募集実施推移
(人)
(社)
45,000
250
実施企業社数
総募集人数
200
200
191
40,000
35,000
30,000
150
132
25,000
126
20,000
100
85
80
73
60
57
68
58
63
46
50
15,000
10,000
5,000
0
0
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
資料:東京商工リサーチ「データを読む」
(注)募集人数で募集枠を設けていないケースは募集人数をカウントした
13
2010
2011
2012
2)職業別就業者数の推移
【職業別就業者数の推移】
職業別就業者数の推移をみると、
「製造・制作・機械運転及び建設作業者」が 2000 年比で 1,580
万人から 1,278 万人へ減少している。一方、
「専門的・技術的職業従事者」が 856 万人から 986 万
人へと増加し、
「保安職業・サービス職業従事者」は 677 万人から 817 万人へと増加している。
「管
理的職業従事者」は 206 万人から 161 万人へ減少している。
図表 4 職業別就業者数の推移
(万人)
2,000
1,800
製造・制作・機械運転及び
建設作業者製造業1,580万人
1,600
1,400
1,278万人
1,200
986万人
1,000
800
専門的・技術的職業従事者
856万人
600
保安職業・サービス職業
従事者677万人
817万人
400
200
管理的職業従事者
206万人
161万人
0
1990
1992
1994
1996
専門的・技術的職業従事者
販売従事者
運輸・通信従事者
労務作業者
1998
2000
2002
管理的職業従事者
保安職業・サービス職業従事者
採掘作業者
資料:総務省統計局「労働力調査」
14
2004
2006
2008
2010
事務従事者
農林漁業作業者
製造・制作・機械運転及び建設作業者
【職業別・産業別の人員構成】
職業別・産業別就業者の構成をみると、先の図表 4 で増加がみられた「専門的・技術的職業従事
者」の多くを「医療,福祉」が占めていることがわかる。
図表 5 職業別・産業別有業者の人員構成
(人)
総数
電気・ガ
ス・熱供 情報通信
運輸業
業
給・水道
業
総数
農業、林
業
漁業
鉱業
34,324,200
278,400
52,500
22,400
2,300
300
600
258,000
743,000
40,900
788,500
23,000
178,100
1,800
200
600
28,900
82,900
6,200
14,300
24,600
59,600
専門的・技術的職
6,426,300
業従事者
管理的職業従事
453,300
者
建設業
製造業
2,979,400 7,439,600
341,700
卸売・小
売業
1,543,000 2,123,500 4,895,500
事務従事者
8,131,100
21,800
3,200
5,700
478,400
1,339,600
123,400
422,800
444,700
1,178,000
販売従事者
4,602,600
3,700
1,000
1,500
210,100
572,200
24,000
164,500
51,000
2,505,700
サービス職業従
事者
2,136,700
900
500
-
3,400
3,800
100
1,200
13,400
120,300
保安職業従事者
839,400
0
-
0
3,500
7,500
300
200
5,500
1,800
農林漁業作業者
330,800
233,300
44,500
-
17,400
2,800
-
-
0
2,200
運輸・通信従事者 1,482,500
1,200
700
2,000
29,500
46,800
200
93,500
1,162,300
26,200
生産工程・労務作
9,102,700
業者
13,300
2,100
11,900
146,400
56,500
397,800
820,900
0
-
-
100
1,600
1,200
2,800
分類不能の職業
819,000
総数
総数
600
2,100
サービス
公務(他
業(他に
金融・保
飲食店, 医療,福 教育,学 複合サー
に分類さ 分類不能
不動産業
分類され
宿泊業
険業
れないも の産業
祉
習支援業 ビス事業
ないも
の)
の)
34,324,200 1,199,100
専門的・技術的職
6,426,300
業従事者
管理的職業従事
453,300
者
1,949,600 4,638,900
360,900
819,600
3,549,100 1,773,500
383,600
32,400
7,900
5,500
2,239,000 1,400,500
17,200
571,300
111,700
6,100
48,600
5,500
2,200
17,500
8,800
26,500
47,800
76,600
700
3,767,200 1,921,100
874,300
事務従事者
8,131,100
646,200
140,700
103,000
513,000
248,300
244,900
販売従事者
4,602,600
466,900
126,900
81,900
8,600
7,300
66,800
297,100
-
13,700
サービス職業従
事者
2,136,700
1,000
59,900
600,400
726,600
30,700
1,500
570,600
900
1,600
保安職業従事者
839,400
800
4,100
800
2,800
6,800
100
183,200
621,500
200
農林漁業作業者
330,800
-
100
400
100
5,400
10,600
12,700
1,200
-
運輸・通信従事者 1,482,500
1,000
400
2,300
11,000
24,300
2,000
61,800
15,900
1,400
生産工程・労務作
9,102,700
業者
1,100
15,300
22,900
29,400
40,700
13,800
913,600
23,200
5,100
分類不能の職業
1,100
-
300
900
600
200
3,300
-
804,100
819,000
資料:総務省「就業構造基本調査」平成 19 年
(注)総数と内訳の数値が一致しない場合があるが、統計表のまま掲載。
15
1,105,900 1,069,900
41,500
②労働者の転職動向
スキルと経験をもつ社会人の転職の動向について把握するために、転職者規模をみると共に、産業
別・職業別にみた入職・離職の動向などをみる。
1)転職市場規模
【男女別/年齢階級別にみた転職者数・転職率の推移】
男女別にみた転職者数は、25~34 歳がピークで男女合計で 80 万人を超える。男女別に比較して
みると、15~54 歳の間は、女性の方が転職者数が多いが、55 歳以上では男性の方が多い。
図表 6 年齢階級別男女別にみた転職者数(平成 22 年平均)
(万人)
45
40
男
女
35
30
25
20
15
10
5
0
15~24歳 25~34歳 35~44歳 45~54歳 55~64歳 65歳以上
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 23 年平均(速報)
(注)1.転職者とは就業者のうち前職のある者で,過去1年間に離職を経験した者
2.データは非正規雇用(一般雇用の有期契約者、1 ヶ月以上 1 年未満の臨時雇用者、1 ヶ月未満の日雇
者)を含む
年齢階級別転職者数を年次推移でみると、15~24 歳及び 25~34 歳において平成 20 年から 22 年
にかけての転職者の減少幅が大きい。35~44 歳についても転職者数の減少がみられる。
65 歳以上については、平成 20 年以降、転職者数が微増している。
16
図表 7 年齢階級別転職者数の推移(男女計)
(万人)
120
100
80
60
40
20
0
平成19年平均
20年
15~24歳
45~54歳
21年
25~34歳
55~64歳
22年
35~44歳
65歳以上
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 23 年平均(速報)
(注)1.転職者とは就業者のうち前職のある者で,過去1年間に離職を経験した者
2.データは非正規雇用(一般雇用の有期契約者、1 ヶ月以上 1 年未満の臨時雇用者、1 ヶ月未満の日雇
者)を含む
年齢階級別に転職者比率(就業者に占める転職者の比率)をみると、15~24 歳、25~34 歳と、
ほぼ年齢が若い順に比率が高い傾向にある。
転職者比率の年次推移をみると、15~24 歳において比率の低下幅が最も大きい。25~34 歳及び
35~44 歳についても、平成 21 年から 22 年にかけて比率が低下している。
図表 8 年齢階級別転職者比率の推移(男女計)
(%)
16.0
14.0
12.0
10.0
8.0
6.0
4.0
2.0
0.0
平成19年平均
15~24歳
45~54歳
20年
22年
21年
25~34歳
55~64歳
35~44歳
65歳以上
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 23 年平均(速報)
(注)1.転職者とは就業者のうち前職のある者で,過去1年間に離職を経験した者
2.データは非正規雇用(一般雇用の有期契約者、1 ヶ月以上 1 年未満の臨時雇用
者、1 ヶ月未満の日雇者)を含む
3.転職者比率(%)=転職者数÷就業者数×100
2)産業別・職業別の入職・離職動向
17
【産業別入職・離職の状況】
産業別に入職率をみると、
「宿泊業,飲食サービス業」が 27.6%と最も高く、次いで「生活関連
サービス業,娯楽業」が 20.4%となっている。
離職率をみると、「宿泊業,飲食サービス業」が 27.2%と最も高く、次いで「生活関連サービス
業,娯楽業」が 22.2%となっている。
入職超過率をみると、
「医療,福祉」が 3.5 ポイント、
「教育,学習支援業」が 0.6 ポイント
と高く、「建設業」及び「生活関連サービス業,娯楽業」が-1.8 ポイントと離職超過となっている。
図表 9 産業別入職率・離職率
資料:厚生労働省「平成 22 年度雇用動向調査結果の概要」
産業別に入職者数・離職者数をみると、入職者は「卸売業,小売業」が 112 万人と最も多く、次
いで「宿泊業,飲食サービス業」が 103 万人、
「医療,福祉」が 96 万人の順となっている。
離職者は「卸売業,小売業」が 124 万人と最も多く、「宿泊業,飲食サービス業」が 102 万人、
「製造業」が 80 万人の順となっている。
18
図表 10 産業別入職・離職の状況
資料:厚生労働省「平成 22 年度雇用動向調査結果の概要」
19
【職業別入職・離職の状況】
職業別に入職・離職の状況をみると、入職者は「サービス職業従事者」が 152 万人と最も多く、
「専門・技術的職業従事者」が 140 万人、
「生産工程・労務作業者」が 105 万人の順となっている。
他方、離職者は「サービス職業従事者」が 150 万人と最も多く、次いで「専門・技術的職業従事
者」が 126 万人、
「生産工程・労務作業者」が 118 万人の順となっている。
図表 11 職業別入職者数・離職者数
資料:厚生労働省「平成 22 年度雇用動向調査結果の概要」
職業別に入職率をみると、
「サービス職業従事者」が 24.9%と最も高く、次いで「保安職業従事
者」が 19.2%となっている。離職率は、
「サービス職業従事者」が 24.7%と最も高く、次いで「保
安職業従事者」が 20.2%となっている。
入職超過率をみると、「事務従事者」が 1.4 ポイント、「専門・技術的職業従事者」が 1.3 ポイ
ントと入職超過となり、「管理的職業従事者」が-2.7 ポイント、「販売従事者」が-2.2 ポイントと
離職超過となっている。
図表 12 職業別入職率・離職率
資料:厚生労働省「平成 22 年度雇用動向調査結果の概要」
20
【転職者の前職と現職の産業】
転職者の前職の産業をみると、転職者規模が大きい産業としては「卸売業,小売業」、「サービス
業(他に分類されないもの)
」
、
「宿泊業,飲食サービス業」などが多い。
転職者の産業について前職と現職の関係性をみると、同じ産業間での異動が多いのは「医療,福
祉」や「卸売業,小売業」である。異なる産業への異動として相対的に多い流れとしては、「宿泊
業,飲食サービス業→卸売業,小売業」、「卸売業,小売業→製造業」、「卸売業,小売業→サービス
業(他に分類されないもの)
」が挙げられる。
図表 13 現職の主な産業,前職の主な産業別転職者数(平成 23 年平均)
(万人)
前職の産業
現職の産業
総 数
総数(転職者総数)
農業,林業
非農林業
建設業
製造業
卸売業,小売業
宿泊業,飲食サービス業
医療,福祉
サービス業(他に分類されないもの)
[273]
[6]
[268]
[15]
[31]
[43]
[26]
[37]
[38]
農業,
林業
[3]
[1]
[2]
[0]
[0]
[0]
[0]
[0]
[0]
非農林業
[270]
[4]
[266]
[15]
[30]
[43]
[26]
[37]
[38]
建設業
[17]
[1]
[16]
[8]
[1]
[1]
[1]
[0]
[1]
製造業
[30]
[0]
[29]
[1]
[13]
[4]
[1]
[1]
[3]
卸売業,
小売業
宿泊業,
飲食
サービス業
[46]
[0]
[46]
[1]
[5]
[18]
[4]
[4]
[5]
[34]
[0]
[34]
[1]
[1]
[6]
[14]
[3]
[3]
医療,
福祉
[29]
[0]
[29]
[0]
[1]
[1]
[1]
[21]
[2]
サービス業
(他に分類
されないも
の)
[38]
[0]
[37]
[1]
[4]
[4]
[2]
[3]
[15]
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 23 年平均(速報)
(注)1.[ ]内の実数は,岩手県,宮城県及び福島県を除く全国の結果
2.転職者とは就業者のうち前職のある者で,過去1年間に離職を経験した者
3.データは非正規雇用(一般雇用の有期契約者、1 ヶ月以上 1 年未満の臨時雇用者、1 ヶ月未満の日雇者)を含
む
4.労働者派遣事業所の派遣社員については,派遣元事業所の産業について分類しており,派遣先の産業にかか
わらず派遣元産業である「サービス業(他に分類されないもの)」に分類している。なお,派遣先の産業につい
ては調査していない
産業別に転職者数をみると、「卸売業,小売業」(43 万人)、「サービス業(他に分類されないも
の)
」
(38 万人)が多い。
就業者総数に占める転職者割合をみると、「サービス業(他に分類されないもの)
」、「宿泊業,飲
食サービス業」の割合が高い。
図表 14 産業別にみた転職者数及び割合(平成 23 年平均)
就業者総数
(万人)
建設業
製造業
卸売業,小売業
宿泊業,飲食サービス業
医療,福祉
サービス業(他に分類されないもの)
[384]
[961]
[909]
[305]
[617]
[430]
転職者数
(万人)
[15]
[31]
[43]
[26]
[37]
[38]
総数に対する
転職者割合
(%)
3.9
3.2
4.7
8.5
6.0
8.8
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 23 年平均(速報)
(注)1.[ ]内の実数は,岩手県,宮城県及び福島県を除く全国の結果
2.転職者とは就業者のうち前職のある者で,過去1年間に離職を経験した者
3.データは非正規雇用(一般雇用の有期契約者、1 ヶ月以上 1 年未満の臨時雇用者、1 ヶ月未満の日雇
者)を含む
21
【産業別にみた転職希望者数と転職希望比率】
産業別に転職希望者数をみると、最も希望者数が多いのは「卸売業,小売業」であり 117 万人、
次いで「製造業」が 94 万人である。
就業者に占める転職希望者に割合でみると、最も割合が高いのは「サービス業(他に分類されな
いもの)」が 14.3%、次いで「情報通信業」が 13.8%、「運輸業、郵便業」と「宿泊業、飲食サー
ビス業」がともに 12.9%である。
図表 15 産業別転職希望者数・希望者の就業者に対する割合(産業大分類)
希望者の就業者に対する割合
転職希望者数
(万人)
140
(%)
16.0
14.0
120
12.0
100
10.0
80
8.0
60
6.0
分 類 不 能 の産 業
公 務 (他 に 分 類 さ れ る も の を
除く )
サ ー ビ ス 業 (他 に 分 類 さ れ な
いも の )
複 合 サ ー ビ ス事 業
医 療 、福 祉
教 育 、学 習 支 援 業
生 活 関 連 サ ー ビ ス 業 、娯 楽 業
宿 泊 業 、飲 食 サ ー ビ ス 業
学 術 研 究 、専 門 ・技 術 サ ー ビ
ス業
不 動 産 業 、物 品 賃 貸 業
金 融 業 、保 険 業
卸 売 業 、小 売 業
運 輸 業 、郵 便 業
情報通信業
電 気 ・ガ ス ・熱 供 給 ・水 道 業
製造業
0.0
建設業
2.0
0
漁業
4.0
20
農 業 、林 業
40
資料:総務省「労働力調査」
(基本集計)平成 22 年平均
(注)1.転職者とは就業者のうち前職のある者で,過去1年間に離職を経験した者
2.データは非正規雇用を含む
22
【職業別にみた転職希望者数と転職希望比率】
職業別に転職希望者数をみると、「生産工程・労務作業者」(176 万人)、「事務従事者」(124 万
人)が多い。
就業者に対する転職希望者比率をみると、「運輸・通信従事者」、「生産工程・労務作業者」、「保
安職業、サービス職業従事者」
、
「販売従事者」で比率が高い。
図表 16 職業別転職希望者数及び希望者の就業者に対する割合(職業大分類)
(万人)
14
12
10
8
転職希望者
数
6
4
2
分 類 不 能 の職 業
生 産 工 程 ・労 務 作 業 者
運 輸 ・通 信 従 事 者
農林漁業作業者
保 安 職 業 、サ ー ビ ス職
業従事者
販売従事者
事務従事者
管理的職業従事者
専 門 的 ・技 術 的 職 業 従
事者
200
180
160
140
120
100
80
60
40
20
0
(%)
0
資料:総務省「労働力調査」
(基本集計)平成 22 年平均
(注)1.転職者とは就業者のうち前職のある者で,過去1年間に離職を経験した者
2.データは非正規雇用を含む
23
希望者の就
業者に対する
割合
【過去 1 年間に離職を経験した者の状況】
過去 1 年間に離職を経験した者(現在就業者)の年齢別・前職の産業をみると、35~44 歳層で
は、「サービス業(他に分類されるものを除く)」、「卸売業,小売業」、「製造業」の順で多い。45~
54 歳層については、「卸売業,小売業」と「医療、福祉」が最も多く、次いで「製造業」と「サー
ビス業(他に分類されるものを除く)
」が続く。
図表 17 過去 1 年間に離職を経験した者の年齢別・前職の産業
上段:人数(万人)下段:年齢別総数に対する割合(%)
総数
15~24歳
25~34歳
35~44歳
45~54歳
55~64歳
65歳以上
総数
農業・林
業
漁業
282
100.0
54
100.0
82
100.0
61
100.0
38
100.0
38
100.0
10
100.0
3
1.1
1
1.9
1
1.2
1
1.6
0
0.0
1
2.6
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
総数
総数
15~24歳
25~34歳
35~44歳
45~54歳
55~64歳
65歳以上
282
100.0
54
100.0
82
100.0
61
100.0
38
100.0
38
100.0
10
100.0
鉱業,採石
業,砂利採 建設業
取業
0
0.0
0
0.0
0
0.0
-
18
6.4
2
3.7
5
6.1
4
6.6
3
7.9
3
7.9
1
10.0
製造業
31
11.0
3
5.6
8
9.8
8
13.1
5
13.2
6
15.8
1
10.0
電気・ガ
ス・熱供 情報通信 運輸業、 卸売業、 金融業,
給・水道
小売業
業
郵便業
保険業
業
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
7
2.5
1
1.9
3
3.7
2
3.3
1
2.6
1
2.6
0
0.0
16
5.7
1
1.9
4
4.9
4
6.6
2
5.3
3
7.9
1
10.0
50
17.7
15
27.8
14
17.1
9
14.8
6
15.8
4
10.5
1
10.0
6
2.1
0
0.0
1
1.2
2
3.3
1
2.6
1
2.6
0
0.0
学術研
生活関
サービス業 公務(他
不動産業,
宿泊業,
究,専門・
連,サー 教育,学 医療,福 複合サー (他に分 に分類さ 分類不能
飲食サー
物品賃貸
技術サー
ビス業, 習支援業
祉
ビス事業 類されな れるもの の産業
ビス業
業
ビス業
娯楽業
いもの) を除く)
4
1.4
1
1.9
1
1.2
1
1.6
0
0.0
1
2.6
0
0.0
5
1.8
1
1.9
2
2.4
2
3.3
1
2.6
1
2.6
0
0.0
36
12.8
15
27.8
8
9.8
6
9.8
4
10.5
3
7.9
1
10.0
12
4.3
4
7.4
3
3.7
2
3.3
1
2.6
1
2.6
0
0.0
11
3.9
2
3.7
4
4.9
2
3.3
1
2.6
2
5.3
1
10.0
31
11.0
3
5.6
10
12.2
7
11.5
6
15.8
4
10.5
0
0.0
1
0.4
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
0
0.0
39
13.8
4
7.4
14
17.1
10
16.4
5
13.2
4
10.5
2
20.0
8
2.8
0
0.0
2
2.4
1
1.6
1
2.6
3
7.9
0
0.0
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 22 年平均
(注)表の「-」は 0 人であることを示し、表の「0」は四捨五入した結果で 0 人であることを示さない
24
3
1.1
1
1.9
1
1.2
1
1.6
0
0.0
0
0.0
0
0.0
過去 1 年間に離職を経験した者(現在就業者)の年齢別・前職の職業をみると、35~44 歳層、
45~54 歳層ともに、
「事務従事者」と「製造・制作・機械運転及び建設作業者」の比率が高い。
図表 18 過去 1 年間に離職を経験した者の年齢別・前職の職業
上段:人数(万人)下段:年齢別総数に対する割合(%)
総数
282
100.0
54
100.0
82
100.0
61
100.0
38
100.0
38
100.0
10
100.0
総数
15~24歳
25~34歳
35~44歳
45~54歳
55~64歳
65歳以上
製造・制
保安職
作・機械
専門的・
管理的職 事務従事 販売従事 業,サー 農林漁業 運輸・通 採掘作業
労務作業
運転及び
技術的職
ビス職業 作業者 信従事者
業従事者
者
者
者
者
建設作業
業従事者
従事者
者
36
3
54
47
55
3
8
0
52
20
12.8
1.1
19.1
16.7
19.5
1.1
2.8
0.0
18.4
7.1
4
7
14
18
0
0
7
3
7.4
13.0
25.9
33.3
0.0
0.0
13.0
5.6
13
0
18
13
13
1
2
0
16
5
15.9
0.0
22.0
15.9
15.9
1.2
2.4
0.0
19.5
6.1
8
0
13
9
10
1
2
12
4
13.1
0.0
21.3
14.8
16.4
1.6
3.3
19.7
6.6
6
1
8
6
7
0
1
7
2
15.8
2.6
21.1
15.8
18.4
0.0
2.6
18.4
5.3
4
2
7
4
6
1
2
0
8
4
10.5
5.3
18.4
10.5
15.8
2.6
5.3
0.0
21.1
10.5
1
1
1
1
2
0
1
2
1
10.0
10.0
10.0
10.0
20.0
0.0
10.0
20.0
10.0
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 22 年平均
(注)表の「-」は 0 人であることを示し、表の「0」は四捨五入した結果で 0 人であることを示さない
過去 1 年間に離職を経験した者について、現職の職業と前職の職業との関係をみると、同じ職業
間の移動が最も多いが、「事務従事者」、「販売従事者」、「保安職業、サービス職業従事者」の間の
移動は比較的多くみられる。
図表 19 過去 1 年間に離職を経験した者,前職の職業×現職の職業
上段:人数(万人)下段:年齢別総数に対する割合(%)
前 職
総数
総数
専門的・技術的職
業従事者
管理的職業従事者
事務従事者
販売従事者
現
職
保安職業,サービ
ス職業従事者
農林漁業作業者
運輸・通信従事者
採掘作業者
製造・制作・機械運
転及び建設作業者
労務作業者
282
100.0
40
100.0
3
100.0
55
100.0
42
100.0
52
100.0
6
100.0
11
100.0
0
0.0
44
100.0
25
100.0
製造・制
保安職
専門的・
作・機械
管理的職 事務従事 販売従事 業,サー 農林漁業 運輸・通 採掘作業
労務作業
技術的職
運転及び
業従事者
者
者
者
者
ビス職業 作業者 信従事者
業従事者
建設作業
従事者
者
36
3
54
47
55
3
8
0
52
20
12.8
1.1
19.1
16.7
19.5
1.1
2.8
0.0
18.4
7.1
25
0
4
3
4
0
0
2
1
62.5
0.0
10.0
7.5
10.0
0.0
0.0
5.0
2.5
0
1
1
0
0
0
0.0
33.3
33.3
0.0
0.0
0.0
4
1
33
7
5
0
0
0
3
2
7.3
1.8
60.0
12.7
9.1
0.0
0.0
0.0
5.5
3.6
2
0
5
20
8
0
0
4
2
4.8
0.0
11.9
47.6
19.0
0.0
0.0
9.5
4.8
2
0
5
7
28
1
0
0
6
3
3.8
0.0
9.6
13.5
53.8
1.9
0.0
0.0
11.5
5.8
0
0
1
0
0
1
0
0
2
0
0.0
0.0
16.7
0.0
0.0
16.7
0.0
0.0
33.3
0.0
0
0
1
1
0
5
2
1
0.0
0.0
9.1
9.1
0.0
45.5
18.2
9.1
0
0
0.0
0.0
2
0
3
4
5
1
1
25
3
4.5
0.0
6.8
9.1
11.4
2.3
2.3
56.8
6.8
0
0
3
3
4
0
1
0
7
7
0.0
0.0
12.0
12.0
16.0
0.0
4.0
0.0
28.0
28.0
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 22 年平均
(注)表の「-」は 0 人であることを示し、表の「0」は四捨五入した結果で 0 人であることを示さない
25
職業別就業者における過去 1 年間に離職を経験した者の割合をみると、「労務作業者」と「保安
職業,サービス職業従事者」がともに 6%を超えて高い。
図表 20 職業別就業者に占める転職者(過去1年以内に離職を経験した者)の割合
(%)
0
1
2
専門的・技術的職業従事者
管理的職業従事者
事務従事者
販売従事者
保安職業,サービス職業従事者
農林漁業作業者
運輸・通信従事者
採掘作業者
製造・制作・機械運転及び建設作業者
労務作業者
資料:総務省「労働力調査」
(詳細集計)平成 22 年平均
26
3
4
5
6
7
8
【転職前後の業種移動のパターン】
転職前後で業種の移動パターンをみると、「同業種間移動」は 4 割弱で、
「異業種間移動」への移
動が約半数である。
正社員・正職員では「同業種間移動」と「異業種間移動」がそれぞれ 45.2%、42.3%とほぼ同じ
割合を占めている。正社員・正職員以外の「同業種間移動」は 3 割前後となっている。
「同業種間移動」は男性が 43.8%であるのに対して、女性では 32.0%となっている。
年齢別では、男性において 40~49 歳層では「同業種間移動」の比率が他の年齢層に比べて高い。
図表 21 図表 業種間移動(大分類間パターン)
(全体/性・就業形態別/性・正社員年齢別)
<直近2年以内転職経験者 n=2075>
(単一回答:%)
2010年 全体
正社員・正職員
18~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~49歳
50~59歳
契約社員・嘱託
フリーター
パートタイマー
派 遣
業務委託
男性計
正社員・正職員
18~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~49歳
50~59歳
契約社員・嘱託
フリーター
パートタイマー
派 遣
業務委託
女性計
正社員・正職員
18~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~49歳
50~59歳
契約社員・嘱託
フリーター
パートタイマー
派 遣
業務委託
n
同
業
種
間
移
動
異
業
種
間
移
動
2075
789
38
175
148
144
161
123
227
323
497
211
28
886
505
12
94
104
108
98
89
112
181
28
44
16
1189
284
26
81
44
36
63
34
115
142
469
167
12
37.1
45.2
39.5
43.4
41.9
47.9
46.6
48.8
38.8
27.2
32.4
31.8
28.6
43.8
49.5
25.0
44.7
45.2
52.8
58.2
49.4
42.9
27.6
25.0
59.1
43.8
32.0
37.7
46.2
42.0
34.1
33.3
28.6
47.1
34.8
26.8
32.8
24.6
8.3
48.2
42.3
44.7
45.1
47.3
38.9
36.6
43.1
49.8
57.0
51.9
47.9
39.3
45.6
41.6
58.3
46.8
45.2
39.8
30.6
43.8
47.3
58.6
64.3
29.5
25.0
50.2
43.7
38.5
43.2
52.3
36.1
46.0
41.2
52.2
54.9
51.2
52.7
58.3
そ
の
他
・
無
回
答
14.7
12.4
15.8
11.4
10.8
13.2
16.8
8.1
11.5
15.8
15.7
20.4
32.1
10.6
8.9
16.7
8.5
9.6
7.4
11.2
6.7
9.8
13.8
10.7
11.4
31.3
17.7
18.7
15.4
14.8
13.6
30.6
25.4
11.8
13.0
18.3
16.0
22.8
33.3
資料:リクルートワークス研究所「ワーキングパーソン調査 2010」p.135
27
【転職前後の職種移動のパターン】
転職前後の職種移動のパターンを探ると、「同職種間移動」が 48.7%で、「異職種間移動」の
42.7%よりやや多い。
正社員・正職員、契約社員・嘱託、派遣は「同職種間移動」が「異職種間移動」より多い。
転職前後の職種に業種を加えた変化パターンでは、「異業種内で異職種移動」が最も多く約 3 割
を占める。正社員・正職員、契約社員・嘱託では「同業種内で同職種移動」が 3 割程度で、「異業
種間で異職種移動」とほぼ同水準にある。
40~49 歳層は、男性の場合、「同業種内で同職種移動」が最も多く、次いで「異業種間で同職種
移動」が多い。他の年齢層に比べて「同業種内で異職種移動」の割合が高い特徴もみられる。同年
齢層の女性の場合、
「異業種内で同職種移動」が最も多い。
図表 22 図表 職種間移動(中分類)/職種移動パターン
(全体/性・就業形態別/性・正社員年齢別)
<直近2年以内転職経験者 n=2075>
(単一回答:%)
職種間移動
2010年 全体
正社員・正職員
18~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~49歳
50~59歳
契約社員・嘱託
フリーター
パートタイマー
派 遣
業務委託
男性計
正社員・正職員
18~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~49歳
50~59歳
契約社員・嘱託
フリーター
パートタイマー
派 遣
業務委託
女性計
正社員・正職員
18~24歳
25~29歳
30~34歳
35~39歳
40~49歳
50~59歳
契約社員・嘱託
フリーター
パートタイマー
派 遣
業務委託
n
同
職
種
間
移
動
異
職
種
間
移
動
そ
の
他
・
無
回
答
2075
789
38
175
148
144
161
123
227
323
497
211
28
886
505
12
94
104
108
98
89
112
181
28
44
16
1189
284
26
81
44
36
63
34
115
142
469
167
12
48.7
59.9
50.0
56.6
55.4
62.5
65.8
62.6
48.9
28.8
42.5
53.1
39.3
50.0
60.8
58.3
58.5
56.7
63.9
63.3
61.8
44.6
27.6
17.9
50.0
56.3
47.8
58.5
46.2
54.3
52.3
58.3
69.8
64.7
53.0
30.3
43.9
53.9
16.7
42.7
35.5
42.1
39.4
38.5
32.6
30.4
34.1
43.2
57.3
46.9
36.0
50.0
41.0
34.3
33.3
37.2
36.5
31.5
31.6
34.8
45.5
56.9
57.1
31.8
37.5
44.0
37.7
46.2
42.0
43.2
36.1
28.6
32.4
40.9
57.7
46.3
37.1
66.7
8.6
4.6
7.9
4.0
6.1
4.9
3.7
3.3
7.9
13.9
10.7
10.9
10.7
9.0
5.0
8.3
4.3
6.7
4.6
5.1
3.4
9.8
15.5
25.0
18.2
6.3
8.2
3.9
7.7
3.7
4.5
5.6
1.6
2.9
6.1
12.0
9.8
9.0
16.7
同
業
種
内
で
同
職
種
移
動
22.2
29.9
31.6
30.9
28.4
29.9
28.6
31.7
25.1
13.9
17.9
15.2
17.9
26.6
31.5
25.0
31.9
29.8
32.4
32.7
31.5
26.8
14.9
7.1
29.5
31.3
18.9
27.1
34.6
29.6
25.0
22.2
22.2
32.4
23.5
12.7
17.9
11.4
-
業種×職種パターン
同
異
異
業
業
業
種
種
種
内
内
内
で
で
で
異
同
異
職
職
職
種
種
種
移
移
移
動
動
動
5. 3
21. 1
31. 1
5. 8
23. 8
24. 8
2. 6
18. 4
28. 9
5. 1
21. 1
28. 6
6. 1
23. 6
27. 0
6. 9
24. 3
20. 8
6. 8
26. 1
19. 9
4. 9
26. 0
26. 8
7. 5
19. 8
30. 8
3. 4
11. 8
44. 9
5. 2
20. 5
34. 4
4. 3
28. 4
26. 5
3. 6
14. 3
28. 6
6. 2
20. 0
30. 5
6. 3
25. 0
25. 0
-
33. 3
25. 0
3. 2
22. 3
30. 9
4. 8
24. 0
26. 9
7. 4
25. 9
22. 2
10. 2
25. 5
18. 4
6. 7
25. 8
27. 0
8. 9
16. 1
32. 1
4. 4
9. 9
45. 3
-
10. 7
53. 6
9. 1
20. 5
20. 5
6. 3
18. 8
12. 5
4. 6
21. 9
31. 6
4. 9
21. 8
24. 6
3. 8
11. 5
30. 8
7. 4
19. 8
25. 9
9. 1
22. 7
27. 3
5. 6
19. 4
16. 7
1. 6
27. 0
22. 2
-
26. 5
26. 5
6. 1
23. 5
29. 6
2. 1
14. 1
44. 4
5. 5
21. 1
33. 3
3. 0
30. 5
28. 1
-
8. 3
50. 0
資料:リクルートワークス研究所「ワーキングパーソン調査 2010」p.146
28
そ
の
他
・
無
回
答
20. 3
15. 6
18. 4
14. 3
14. 9
18. 1
18. 6
10. 6
16. 7
26. 0
22. 5
25. 6
35. 7
16. 7
12. 3
16. 7
11. 7
14. 4
12. 0
13. 3
9. 0
16. 1
25. 4
28. 6
20. 5
31. 3
23. 0
21. 5
19. 2
17. 3
15. 9
36. 1
27. 0
14. 7
17. 4
26. 8
22. 2
26. 9
41. 7
【職業紹介市場における求人・求職動向】
一般社団法人日本人材紹介事業協会ニューズレターにて大手人材派遣会社 3 社の転職紹介人数を
みると、次のような傾向が確認された。

IT業界は、前年同期比 118%と、2011 年度 4-9 月期の前年同期比 114%に対して改善。

電機/機械/化学等製造業界は、前年同期比 127%と、2011 年度 4-9 月期の前年同期比
129%に対して改善は鈍化。

メディカル業界は、前年同期比 114%と、2011 年度 4-9 月期の前年同期比の 115%に対し
て改善は鈍化。

金融業界は、前年同期比 100%と、2011 年度 4-9 月期の前年同期比も 98%であるため、
2011 年は業界として横ばい。

コンシューマー業界は、前年同期比 113%と、2011 年度 4-9 月期の前年同期比の 110%に
対して若干改善。
29
図表 23 カテゴリー別3社合算半期毎 転職紹介人数
2012年度
2011年度
4-9月
(人)
10-3月
(人)
前年同期比
(%)
4-9月
(人)
前年同期比
(%)
14,637
114
15,773
115
16,999
116.1
IT・通信
2,515
114
2,722
118
3,093
123.0
電機/機械/化学等製造
2,454
129
2,748
127
2,735
111.5
1,555
115
1,598
114
1,572
101.1
772
98
725
100
830
107.5
3,063
110
3,463
113
3,847
125.6
8
100
10
111
11
137.5
10,367
115
11,266
117
12,088
116.6
2,789
112
2,874
114
3,065
109.9
1,043
112
1,216
112
1,362
130.6
65
86
86
125
90
138.5
149
105
135
91
159
106.7
219
114
195
95
233
106.4
5
25
1
2
2
40.0
2,515
122
2,762
126
3,101
123.3
電機/機械/化学等製造技術者
求
職
メディカル系専門職
者
金融系専門職
在
住
営業系
地
管理・企画系
経
その他・一般事務
験
職 首都圏計
種
別 関西圏
1,611
116
1,733
117
1,802
111.8
527
112
576
127
620
117.7
480
127
526
127
568
118.2
2,144
113
2,251
111
2,371
110.6
1,671
110
1,839
115
2,019
120.8
357
102
371
92
421
117.9
9,305
116
10,057
117
10,901
117.2
2,832
111
2,961
112
3,153
111.3
(
全 体
前年同期比
(%)
1,377
113
1,503
106
1,587
115.3
276
97
339
113
326
118.1
302
107
303
105
380
125.8
九州エリア
442
107
460
113
483
109.3
その他
103
136
150
171
169
164.1
(
求
メディカル
人
金融
企
業
コンシューマー
その他
業
種
別 首都圏計
関西圏
入
社 中部圏
実 北海道・東北エリア
績
中国・四国エリア
)
九州エリア
その他
IT・通信系技術者
入 中部圏
社 北海道・東北エリア
実
績 中国・四国エリア
)
求
職
者
転
職
時
25歳以下
1,853
110
1,841
110
2,056
111.0
26~30歳
6,585
116
6,977
113
7,235
109.9
31~35歳
3,791
116
4,187
117
4,506
118.9
年
齢
別
36~40歳
1,361
105
1,665
122
1,924
141.4
41歳以上
1,047
111
1,103
114
1,278
122.1
資料:一般社団法人日本人材紹介事業協会ニューズレター
30
③産業別・企業規模別の処遇
産業別・企業規模別の処遇状況について賃金等で確認する。
1)産業別賃金
主な産業別に賃金をみると、男性では、「金融業,保険業」(492.3 千円)が最も高く、次いで
「教育,学習支援業」
(449.3 千円)となり、
「運輸業,郵便業」
(264.4 千円)が最も低くなってい
る。女性では、「教育,学習支援業」(307.4 千円)が最も高く、「宿泊業,飲食サービス業」
(186.9 千円) が最も低くなっている。
産業別に賃金カーブをみると、男性では、
「金融業,保険業」は 45~49 歳で賃金がピークとなり、
その後は大きく下降している。また、「運輸業,郵便業」、「宿泊業,飲食サービス業」は他の産業
に比べ賃金カーブが緩やかとなっている。女性では、「金融業,保険業」、「教育,学習支援業」は、
年齢階級が高くなるとともにおおむね賃金も上昇しているが、「製造業」、「運輸業,郵便業」、「宿
泊業,飲食サービス業」は他の産業に比べ賃金カーブが緩やかとなっている。
図表 24 産業、性、年齢階級別賃金
資料:厚生労働省「平成 23 年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」
31
図表 25 主な産業、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び年齢階級間賃金格差
32
2)企業規模別賃金
企業規模別に賃金をみると、男性では、大企業が 386.1 千円(前年比 0.8%増)、中企業が 316.1
千円(同 0.2%減)、小企業が 282.4 千円(同 1.0%減)、女性では、大企業が 262.8 千円(同
3.2%増)
、中企業が 230.9 千円(同 1.6%増)
、小企業が 208.1 千円(同 0.6%増)となっており、
男性は大企業が前年を上回り、女性は全ての企業規模において前年を上回っている。また、大企業
の賃金を 100 とすると、中企業の賃金は、男性で 82(前年 83)
、女性で 88(同 89)
、小企業の賃金
は、男性で 73(同 75)
、女性で 79(同 81)となっている。
賃金がピークとなる年齢階級を企業規模別にみると、男性では、全ての企業規模において 50~
54 歳で、大企業 510.3 千円(20~24 歳の賃金を 100 とすると 240)
、中企業 406.4 千円(同 205)
、
小企業 327.4 千円(同 174)となっている。女性では、大企業及び小企業が 45~49 歳で、大企業
301.3 千円(同 145)
、小企業 224.9 千円(同 130)であり、中企業が 40~44 歳で 252.6 千円(同
131)となっており、男性に比べ賃金カーブが緩やかとなっている。
図表 26 企業規模、性、年齢階級別賃金
資料:厚生労働省「平成 23 年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」
33
図表 27 企業規模、性、年齢階級別賃金、対前年増減率、企業規模間賃金格差及び年齢階級間賃金格差
資料:厚生労働省「平成 23 年賃金構造基本統計調査(全国)結果の概況」
34
(2)資料・先行調査等にみる今後の成長分野の市場動向
資料・先行調査等をもとに、今後の成長分野として期待されるヘルスケア分野、環境・エネルギ
ー分野、グローバル展開、クリエイティブ分野における市場動向について整理する。
① ヘルスケア分野の市場動向
1)ヘルスケア分野の市場規模、雇用創出規模
ヘルスケア分野(医療・介護・健康支援)における将来的な雇用創出効果については、大きな伸
びが予測されている。
図表 28 「日本再生戦略」におけるヘルスケア産業の成長性と雇用創出規模
領域
医療・介護・健康関連サービス全体
市場規模
新市場
約 50 兆円
雇用創出効果
新規雇用
284 万人
うち、革新的医薬品・医療機器の創出並び
に再生医療、個別化医療及び生活支援ロボ
ットの開発・実用化、先端医療の推進によ
る経済波及効果
1.7 兆円
新規雇用
3 万人
うち、健康関連サービス産業
25 兆円
新規雇用
80 万人
日本企業の獲得市場規模
約 20 兆円
-
海外市場での医療機器・サービス等ヘルスケア
関連産業
資料:「日本再生戦略」
(2012 年)
図表 29 「社会保障国民会議」における医療・介護従事者数の将来推計
現状(2007年)
385.0万人(うち、介護従事者147.2万人)
将来(2025年)
①現状投影シナリオ
551.7~563.8万人(うち、介護従事者265.2万人)
②改革が進んだ場合(穏やかな改革)
627.8~641.3万人(うち、介護従事者321.9万人)
資料:「社会保障国民会議最終報告」
(2008 年)
35
2)ヘルスケア分野の市場マップ
ヘルスケア分野については、下のような市場マップで捉えることができる。
図表 30 ヘルスケア分野の市場マップ
医薬品
医療機関
医療
先端医療研究
CSO
(注)
CSO:医薬品販売業務受託機関
CRO:受託臨床試験実施機関
SMO:治験実施施設管理機関
臨床検査・治験支援
CRO・SMO
医療機器
医療観光
医療IT
介護保険サービス
○介護保険施設
介護
福祉用具
介護対応住宅改修
○在宅介護サービス
サービス付き高齢者住宅
健康増進支援サービス
健康
関連
特定保健指導
生活支援サービス
(緊急通報/見守り・
安否確認サービス/
配食サービス)
健康器具・
健康用品
健康食品産業
特定保健用食品
フィットネス
公的
非公的
(注)各種資料よりみずほ情報総研作成
3)ヘルスケア分野における各セグメントの市場規模
ヘルスケア分野における各セグメントの市場規模は 2004 年時点で下のように示されている。
図表 31 ヘルスケア分野における各セグメントの市場規模
資料:経済産業省「新産業創造戦略」
(2004 年)
36
② 環境・エネルギー分野の市場動向
1)環境・エネルギー分野の市場規模、雇用創出規模
環境産業全体の市場規模は 2000 年から 2003 年にかけて約 52 兆円で横ばいの動きにとどまっ
ていたが、2004 年以降徐々に増加傾向が強まり、2006 年には 70 兆円台に達した。
環境産業全体の雇用規模については 2008 年までは一貫して増加傾向となっており、2008 年時
点での雇用規模は約 181 万人と、2000 年の約 128 万人の約 1.4 倍に達している。
図表 32 環境・エネルギー分野の市場規模推移
資料:環境省「2010 年版環境産業の市場規模・雇用規模の推移」
OECD による産業分類に基づく環境省の推計によると、わが国の環境ビジネスの市場規模は、
2000 年の 29 兆 9 千億円に対して 2020 年は 58 兆 4 千億円とされ、各産業平均の労働生産性から
割り戻した雇用規模の推計値も、2000 年の 77 万人から 2020 年の 124 万人へと約 60% の成長が
見込まれている。
図表 33 環境ビジネスの市場規模・雇用規模推計
1997 年
2000 年
2010 年
2020 年
出典
市場規模
247,426
-
400,943
-
1999 年度調査
(億円)
-
299,444
472,266
583,762
2002 年度調査
雇用規模
695,145
-
867,007
-
1999 年度調査
(人)
-
768,595
1,119,343
1,236,439
2002 年度調査
資料:環境省「わが国の環境ビジネスの市場規模及び雇用規模の現状と将来予測についての推計について」
(2003 年 5 月)
37
2)環境・エネルギー分野における各セグメントの市場規模
環境産業の分野別市場規模では、「省エネルギー自動車」等の環境温暖化対策分野における市場
規模の近年の増加が大きい。
図表 34 分野別環境産業の市場規模概況(単位:兆円)
資料:環境省「環境成長エンジン研究会
環境への取り組みをエンジンとした経済成長に向けて」
(2012 年 5 月)
38
③ グローバル展開に関する市場動向
1)中小企業の海外展開の状況
中小企業の海外直接投資企業数は、2001 年(4,143 社)、2006 年(5,795 社)、2009 年(5,630
社)で推移している。2009 年における、海外子会社を持つ全企業 7,977 社のうち、7 割の 5,630 社
が中小企業となっている。
海外展開を行っている中小企業 5,630 社のうち、約半数の 2,869 社が製造業となっている。残り
の半数は、卸売業、小売業、その他のサービス業である。
図表 35 海外展開の状況
(社)
中小製造業
中小卸売業
中小小売業
その他中小企業
大企業
9,000
8,000
7,000
6,000
5,000
4,000
3,000
2,000
1,000
0
1,931
986
125
1,019
(中小企業)
4,143社
2,347
1,343
142
1,366
1,318
145
1,298
(中小企業)
5,795社
2,944
2,013
01
中小企業が占める割合
68.2%
2,416
06
中小企業が占める割合
70.6%
(中小企業)
5,630社
2,869
09
(年)
中小企業が占める割合
70.6%
資料:総務省「事業所・企業統計調査」、「平成21年経済センサス-基礎調査」再編加工
(注)1.ここでいう直接投資企業とは、海外に子会社(当該会社が50%超の議決権を所有する会社。
子会社又は当該会社と子会社の合計で50%超の議決権を有する場合と、50%以下でも連結
財務諸表の対象となる場合も含む。)を保有する企業(個人事業所は含まない。)をいう。
2.ここでいう大企業とは、中小企業基本法に定義する中小企業者以外の企業をいう。 出典:中小企業庁「2012 年中小企業白書」
39
2)最も重視している直接投資先(拠点機能別)
中小企業が最も重視している直接投資先を、販売拠点設立先と生産拠点設立先に分けてみると、
販売拠点設立先、生産拠点設立先ともに、中国が過半を占めて最も高く、タイが続いている。販売
拠点設立先では、北米が 3 番目に重視されているものの、直接投資先全体としては、アジアの国・
地域が上位に並んでいる。
図表 36 最も重視している直接投資国(機能拠点別)
フィリピン
2.9%
台湾
3.4%
韓国
3.9%
ベトナム
4.3%
北米
7.4%
その他
15.8%
その他
11.7%
韓国
3.6%
インドネ
シア
4.9%
中国
53.8%
ベトナム
6.1%
タイ
11.4%
販売拠点設立先(n=931)
中国
58.2%
タイ
12.6%
生産拠点設立先(n=897)
資料:中小企業庁委託「海外展開による中小企業の競争力向上に関する調査」
(2011年11月、三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株))
(注)1.海外に販売拠点を保有する中小企業、海外に生産拠点を保有する中小企業、それぞれについて
集計している。
2.中国には香港を含む。
出典:中小企業庁「2012 年中小企業白書」、経済同友会(2012)「日本企業のグローバル経営における組織・人
材マネジメント」
40
3)グローバル人材需要量の見込み
2017 年初におけるグローバル人材の需要量(人数)の推計は、4,118,562 人であった。この人数
は、会社企業全体(アンケートの対象外とした業種や規模の企業も含む。ただし公務は含まない)
の総常用雇用者数の 2017 年初推計値 47,233,362 人の 8.7%に該当する。
図表 37 グローバル展開の段階
5,000
(千人)
4,119千人
4,000
グローバル人材量
(日本人)
3,000
2,000
グローバル人材量
(外国人)
1,688千人
1,000
0
2012年初
2017年初
資料:経済産業省委託調査事業「大学におけるグローバル人材育成のための指標調査」
(みずほ情報総研)
(注)企業において以下の①②③の全てを満たす人材をグローバル人材とする。
①現在の業務において他の国籍の人と意思疎通を行う必要がある
②①の意思疎通を英語で(あるいは母国語以外の言語で)行う必要がある
③ホワイトカラー職(※)の常用雇用者である
ここで言う「ホワイトカラー職」とは、現行の日本標準職業分類における大分類 A~D(管理的職
業従事者、専門的・技術的職業従事者、事務従事者、販売従事者)とした。
41
4)海外に勤務する人材の育成方法
海外に進出実績があるか、もしくは今後進出の予定がある企業に対して海外に勤務する人材の育
成方法について尋ねたところ、全産業では「現有人員から経験、適性により選抜し、本人に対応を
一任」が 48.9%と半数近くを占めた。「現有人員から経験、適性により選抜、一定の実務研修を課
す」23.9%と合わせ、約 7 割の企業が現有人員の戦力化による対応を志向している。「海外実務に
精通した日本人を即戦力として新規採用」が 9.7%、「海外実務経験や日系企業に勤務経験のある
外国人を即戦力採用」が 9.9%と、経験者の即戦力採用も日本人・外国人合わせ約 2 割程度あった。
図表 38 海外に勤務する人材の育成方法
現有人員から経験、適性により選抜、本人に対応を一任
現有人員から経験、適性により選抜、一定の実務研修を課す
海外実務に精通した日本人を即戦力として新規採用
海外実務経験や日系企業に勤務経験のある外国人を即戦力採用
取引先等から海外実務に精通した日本人の派遣・出向を受け入れる
その他
経験者の即戦力採用
19.6%(9.7+9.9)
現有人員の戦力化
72.8%(48.9+23.9)
0%
20%
40%
全産業
(n=524)
48.9
製造業
(n=325)
47.4
非製造業
(n=199)
80%
60%
9.7
23.9
29.2
51.3
15.1
9.9
8.0
12.6
資料:商工中金「中小企業の海外進出に関する認識調査」
(2012 年 7 月調査)
42
100%
3.4 4.2
9.2
11.1
2.83.4
4.5 5.5
④ クリエイティブ分野の市場動向
1)クリエイティブ市場の定義
経済産業省「平成 21 年度中小企業支援調査 生活文化産業支援のあり方に関する調査(博報堂受
託)」では、イギリスのクリエイティブ産業の 13 産業分野に、日用品である家具/食器/ジュエリー
/文具と皮革製品の 5 産業を加えた 18 産業分野を日本におけるクリエイティブ産業と定義している。
図表 39 クリエイティブ市場の定義
資料:経済産業省「平成 21 年度中小企業支援調査
生活文化産業支援のあり方に関する調査(博報堂受託)」
2)クリエイティブ分野の市場規模、雇用創出規模
先述の定義のもとでクリエイティブ分野の市場規模を算出したところ、2000 年から 2004 年にか
けて、全産業の売上高が 0.3%増加する中、クリエイティブ産業の売上高は 12.2%減少し、2004 年
の市場規模は 45 兆円と算出されている。
内訳としてはクリエイティブ産業内の製造業が 39.1%減と落ち込みが激しく、同産業内のサービ
ス業は 5.1%減。特に製造業ではアパレル/家具/玩具が、サービス業では建築の減少幅が大きい。
サービス業のコンピューターソフトサービス/出版は売上が増加している。
43
図表 40 クリエイティブ分野の市場規模
資料:経済産業省「平成 21 年度中小企業支援調査
生活文化産業支援のあり方に関する調査(博報堂受託)」
2000 年から 2004 年にかけて、全産業の従業員数が 12.7%減少する中、クリエイティブ産業は
9.7%減少している。内訳としてはクリエイティブ産業内の製造業が 33.7%減と落ち込みが激しい。
一方、同産業内のサービス業は 4.7%増加しており、うち、コンピューターソフトサービスは、45
万人から 61 万人に増加している。
図表 41 雇用規模
資料:経済産業省「平成 21 年度中小企業支援調査
生活文化産業支援のあり方に関する調査(博報堂受託)」
44
(3)「人を活かす産業」の動向
① 人材ビジネスサービスのサービス類型・ビジネスモデル
「人を活かす産業」である人材ビジネスサービスにどのようなサービス類型やビジネスモデルが現
状あり、また今後ありうるのかということについて、既存の資料をもとに整理する。
1)日本における既存の人材ビジネスサービス
【主なビジネスモデルの整理】
主な既存の人材ビジネスである労働者派遣、請負、職業紹介(人材紹介)の契約関係、指揮命令
関係は以下のとおりである。
図表 42 労働者派遣・請負・職業紹介の違い
=契約金額支払
=給与支払
=派遣料
支払
=給与
支払
=手数料支払
資料:厚生労働省「労働者派遣パンフレット」
さらに、求人広告を含めた、4 種類の方法による人材確保・サービスにおける人材マッチングま
でのサービスの流れは以下の通りである。
45
図表 43 求人広告・人材紹介・人材派遣・請負におけるマッチングまでの流れ
採用確定後に企業から人材サービス会社に年収に応じ
て費用を支払うのが一般的。金額に対する比率は 20~
30%が一般的とされるが、ケースバイケース。
就業開始後、勤務実績に応じて企業から人材サービス会社
に費用支払。就業者は人材サービス会社から給与が支払わ
れる。人材派遣会社の手数料は 25~35%とされる(JETRO)
委託契約に定められた金額を企業から人材サービス会
社に支払。就業者は人材サービス会社から給与が支払
われる。
資料:人材サービス産業の近未来を考える会「より多くの人々に多様な就業機会を
ービス産業の役割」2011 年 11 月、みずほ情報総研加筆
2020 年の労働市場と人材サ
人材紹介のなかでも、企業のトップ等エグゼクティブ層については、サーチ型、ヘッドハンティ
ング等と呼ばれ、一般的な人材紹介とは区別される。この場合、事前に登録されている転職希望者
から探すのではなく、人材紹介会社に人材要件、年収等の希望を出し、人材紹介会社が適切な人材
を探してくるかたちとなる。採用までの大まかな流れは、以下の通りである。
46
図表 44 東京エグゼクティブ・サーチにおけるサービスの流れ
47
資料:東京エグゼクティブ・サーチ㈱ホームページ
また、ヘッドハンティングにおける人材紹介会社への報酬支払は、リテイナー方式、コンティン
ジェンシー方式、セミリレイナー方式とすることが多い。なお、報酬総額は、一般的には決定者の
初年度年収の 35%~50%程度が相場とされている。
図表 45 ヘッドハンティングにおける報酬支払方式
方式
リテイナー方式
支払方法
契約月と翌月、翌々月に想定年収から計算される報酬の
三分の一ずつを三回にわけて支払う方式。最初から支払
い日が決まっており、その時点で人材が決まっていなく
ても支払うことになる。
セミリレイナー方式
人材紹介会社への報酬総額を 3 分割し、1 回目は契約時、
2 回目は候補者紹介時、3 回目は決定時に支払うのが一般
的だが、2分割タイプ等もあり
コンティンジェンシー方式
成功報酬型。採用確定時に一括して報酬を支払う。
資料:東京エグゼクティブ・サーチ㈱他各種ホームページよりみずほ情報総研作成。
上記のほか、出向や転籍を支援する人材サービスも存在する。ここでは、(財)産業雇用安定
センターが行う出向・移籍支援サービスの流れを紹介する。なお、同センターのサービス利用に
あたっての登録・相談・斡旋はいずれも無料となっている。
48
図表 46 出向・移籍支援サービスの流れ
資料:(財)産業雇用安定センターホームページ
49
2)アメリカにおける既存のサービス
アメリカにおける人材ビジネスの事業領域と主なサービスは以下の通りである。
図表 47 アメリカにおける人材ビジネスの事業領域
資料:リクルートワークス研究所「アメリカの人材ビジネス 2010」
(注)RPO:採用代行。ASP:インターネットを通じてアプリケーションソフトウェアを顧客に提供する事業者
もしくはサーバのこと。ユーザはブラウザソフトを使用して ASP 事業者のサーバに接続することでアプリ
ケーションを利用できる。ドラッグテスト:薬物検査。PEO:他の企業のために給与の支払や諸給付、そ
の他使用者としての法律上および管理上の責任を継続的に引き受ける事業形態。
図表 48 アメリカにおける人材ビジネスの商品サービス
資料:リクルートワークス研究所「アメリカの人材ビジネス 2010」
50
② 日本における人材関連サービスの市場規模
日本における人材関連サービスの市場規模について、既存の資料から整理する。
1)市場規模
日本における人材関連ビジネスは、大きく「労働者派遣事業」と「職業紹介事業」の 2 つに分類
され、リクルートワークス研究所によれば、2010 年度の市場規模は 5 兆 5,631 億円とされる。そ
のうち、労働者派遣事業が 5 兆 3,468 億円、再就職支援事業が 291 億円となっている。
図表 49 人材関連ビジネス市場規模の推移
資料:リクルートワークス研究所「日本の人材ビジネス 2010」2012 年 3 月更新版
また、人材サービス産業の近未来を考える会「2020 年の労働市場と人材サービス産業の役割」
の試算によれば、労働者派遣、職業紹介のほか、求人広告、業務請負(アウトソーシング)を含め
た人材サービス産業の市場規模は、8 兆 1,254 億円と試算されている。
51
図表 50 人材サービス産業の市場規模
資料:リクルートワークス研究所「日本の人材ビジネス 2010」2012 年 3 月更新版
(注)人材サービス産業の近未来を考える会「2020 年の労働市場と人材サービス産業の役割」における試算
2)人材ビジネスサービスの事業所数
厚生労働省人材サービス総合サイトによると、2012 年 8 月 1 日現在、人材派遣事業所登録数は 8
万 2,692 事業所、職業紹介事業所登録数は 1 万 9,924 事業所である。地域別にみると、労働者派遣
事業所数は、大都市をもつ都道府県に多く、その他のエリアでは少ない傾向が見られる。
図表 51 都道府県別の労働者派遣事業所数(2012 年 8 月 1 日現在)
都道府県
北海道
青森
秋田
岩手
山形
宮城
福島
栃木
茨城
群馬
埼玉
東京
神奈川
千葉
新潟
石川
事業所数
2679
347
260
318
400
1236
1135
913
1724
1131
2425
19629
5851
2967
975
588
都道府県
富山
長野
山梨
静岡
福井
岐阜
愛知
三重
和歌山
奈良
滋賀
大阪
京都
兵庫
鳥取
島根
事業所数
658
917
385
2358
409
835
6668
1340
281
320
966
7674
1088
3596
139
190
資料:厚生労働省人材サービス総合サイト
52
都道府県
岡山
広島
山口
香川
愛媛
徳島
高知
福岡
佐賀
長崎
大分
熊本
宮崎
鹿児島
沖縄
合計
事業所数
1122
2327
680
601
573
210
170
3301
192
829
622
648
284
463
538
82692
(参考)地域ごとの労働者派遣事業所数
ブロック
北海道・東北
関東
中部・北陸・甲信越
事業所数
ブロック
6375 北海道・東北
34640 中国・四国
13793 九州・沖縄
事業所数
6375
6012
6877
資料:厚生労働省人材サービス総合サイト
(注)1.一般労働者派遣事業所と特定労働者派遣事業所の合算による。
2.地域はサイト上の色分けにしたがって区分
職業紹介事業所数は、各地方の中心に事業所が集中している。東北地方、北陸・甲信越地域では
中心の県における事業所もあまり多くない。
図表 52 都道府県別の職業紹介事業所数(2012 年 8 月 1 日現在)
都道府県
北海道
青森
秋田
岩手
山形
宮城
福島
栃木
茨城
群馬
埼玉
東京
神奈川
千葉
新潟
石川
事業所数
527
90
68
90
100
289
230
259
333
273
593
5501
882
518
192
169
都道府県
富山
長野
山梨
静岡
福井
岐阜
愛知
三重
和歌山
奈良
滋賀
大阪
京都
兵庫
鳥取
島根
事業所数
176
288
121
523
108
341
1400
263
77
111
156
1890
356
621
90
80
資料:厚生労働省人材サービス総合サイト
53
都道府県
岡山
広島
山口
香川
愛媛
徳島
高知
福岡
佐賀
長崎
大分
熊本
宮崎
鹿児島
沖縄
合計
事業所数
308
497
106
194
164
116
76
857
70
107
136
189
109
151
129
19924
3)求人数
ハローワークインターネットサービスにおける都道府県別の求人数(フルタイム)を地域別に比
較すると、人材紹介事業所の事業所数の多寡と比べて地域差が少ないようである。
なお、民間人材ビジネスは非公開求人が多く、データとして信頼に足りうるものはみあたらなか
った。
図表 53 都道府県別の一般求人数(フルタイム)
都道府県
北海道
青森
秋田
岩手
山形
宮城
福島
栃木
茨城
群馬
埼玉
東京
神奈川
千葉
新潟
石川
資料:厚生労働省
求人数
19070
5278
4721
7894
6148
13399
10303
8206
10759
6761
16164
47389
20888
14948
11180
5264
都道府県
富山
長野
山梨
静岡
福井
岐阜
愛知
三重
和歌山
奈良
滋賀
大阪
京都
兵庫
鳥取
島根
求人数
5636
8731
2719
13558
4153
8981
29753
6613
3245
3706
5019
30499
10047
17077
2632
3661
ハローワークインターネットサービス
54
都道府県
岡山
広島
山口
香川
愛媛
徳島
高知
福岡
佐賀
長崎
大分
熊本
宮崎
鹿児島
沖縄
求人数
10182
11327
6287
5870
6051
3550
2922
19304
3521
5518
5363
6706
4667
7195
3174
4)出向・移籍支援サービスと実績
出向・移籍支援は、(財)産業雇用安定センターが実施しており、2011 年度実績は、人材受入
(求人)情報(人数)約 4.1 万人、人材送出(求職)情報(人数)約 1.4 万人、成立(就職)人数
約 8600 人となっている。
図表 54 産業雇用安定センター 出向・移籍支援サービス実績
資料:(財)産業雇用安定センターホームページ
55
(4)「人を活かす産業」のマッチング・教育サービスの現状
① 適性検査・能力評価サービスの現状
現在、人材ビジネスサービス等で提供・活用されている適性検査・能力評価サービスの現状につい
て、既存の資料から整理する。
1)日本における既存の適性検査
適性検査には、(1)能力適性検査、
(2)性格適性検査、(3)興味・指向適性検査、(4)総合適性
検査(
(1)~(3)をあわせたもの)の 4 種類がある。
様々な会社が適性検査を実施しており、それにより対象とする範囲や測定する適性・能力が異な
るが、例えば、株式会社リクルートキャリアが提供する「総合検査 SPI3 シリーズ」では以下を測
定領域としている。
図表 55 適性検査の種類
資料:適性検査.jp(http://hr-tekisei.jp/ 運営:株式会社アイ・キュー)
図表 56 株式会社リクルートキャリア 総合検査 SPI3 シリーズの測定領域
成果創出モデル
成果
行動
コンピテンシー
専門知識
専門技能
実践的能力
指向
経験により獲得されたもの
知的能力
性格
SPI3
基本的な資質
資料:株式会社リクルートキャリア
総合検査 SPI3 シリーズ案内ページ
56
もともとは、日本では新卒一括採用が中心であったこともあり、当初は新卒採用を想定して企画
された適性検査が多い。しかし、転職サイト等の情報では、特にリーマンショック以降には中途採
用でも適性検査を採用する企業が増えている。
株式会社インテリジェンスの調査によれば、筆記試験のある求人は全体の 51%と、約半数の求
人で筆記試験を選考に取り入れていること、筆記試験の内容は「性格適性検査+能力適性検査」を
実施する求人が 59%、
「性格適性検査」が 24%、
「能力適性検査」が 10%と、適性を見る試験が 9
割以上を占める結果であった。
図表 57 筆記試験の内容
資料:株式会社インテリジェンス「転職サービス「DODA」中途採用の実態調査」、同「筆記試験の実施
率」
同調査について職種別に見てみると、筆記試験が最も多い職種は「技術系(機械/電気)」(66%)、
次いで「技術系(化学/食品)」(63%)と、製造業(メーカー)の技術職は筆記試験が多いことが
わかる。製造業の技術職は、専門領域の知識やスキルを段階的に習得するため、中長期的にキャリ
アを形成していく傾向があり、職務や職場との適合性がより重視されるが、こうした適合性は、職
務経歴書や面接のみでは測ることが困難なため、筆記試験が用いられると考えられると、同調査で
は分析している。一方、最も筆記試験が少ない職種は「クリエイティブ系」(38%)、次いで「医療
系専門職」
(39%)が続く。
57
図表 58 筆記試験ありの求人割合(職種別)
資料:株式会社インテリジェンス「転職サービス「DODA」中途採用の実態調査」、同「筆記試験の実施
率」
さらに、詳細の職種(55 職種)別に、筆記試験ありの求人の割合を見てみると、最も筆記試験
が多い職種は「技術系(IT/通信)」の「パッケージ・ミドルウェア開発」の 85%、次いで、「講師
/教師」
(75%)が続く。さらに、6 位以外の 3 位~9 位には「技術系」の職種が入っている。一方、
最も筆記試験が少ない職種は「薬剤師」の 14%、次いで「店長/店舗管理」
(20%)が続いている。
図表 59 筆記試験ありの求人割合(詳細職種別)
順位
職種大分類
職種詳細
筆記試験あり率
1
技術系(IT/通信)
パッケージ・ミドルウェア開発
85%
2
販売・サービス系
講師/教師
75%
3
技術系(機械/電気)
生産管理/生産技術
71%
4
技術系(機械/電気)
工場運営
71%
5
技術系(機械/電気)
品質管理/品質保証
70%
6
金融系職種
金融事務
68%
7
技術系(化学/食品)
開発/分析/評価
67%
8
技術系(機械/電気)
設計開発/評価/実験
66%
9
技術系(化学/食品)
研究
65%
10
営業系
MR
63%
11
技術系(機械/電気)
整備/カスタマーサービス/技術サポート
61%
12
技術系(機械/電気)
基礎研究/製品企画開発
60%
13
医療系職種
品質管理/品質保証
59%
14
技術系(化学/食品)
生産/製造
58%
14
クリエイティブ系
出版・印刷関連
58%
14
技術系(建築/土木)
設計
58%
17
専門系職種
リサーチャー
57%
17
企画・事務系
購買/物流/貿易
57%
17
技術系(化学/食品)
工場運営
57%
17
技術系(IT/通信)
社内システムエンジニア
57%
21
技術系(化学/食品)
品質管理/品質保証
56%
58
順位
職種大分類
職種詳細
筆記試験あり率
21
企画・事務系
総務/人事/法務
56%
21
医療系職種
申請
56%
24
金融系職種
審査/査定
52%
25
技術系(建築/土木)
施工管理
50%
25
企画・事務系
経理/財務
50%
25
企画・事務系
マーケティング/企画/広告宣伝
50%
25
技術系(IT/通信)
IT コンサルタント
50%
29
専門系職種
コンサルタント
49%
29
技術系(IT/通信)
インフラエンジニア
49%
29
営業系
営業職(MR 以外)
49%
32
技術系(IT/通信)
業務アプリケーション開発
47%
33
企画・事務系
エグゼクティブ/経営企画/事業統括
46%
34
販売・サービス系
宿泊施設・ホテル関連職種
45%
34
クリエイティブ系
ゲーム・マルチメディア
45%
36
医療系職種
研究
43%
37
金融系職種
商品開発/サービス企画
43%
38
金融系職種
バックオフィス
42%
38
医療系職種
学術・マーケティング関連
42%
40
企画・事務系
秘書/受付
41%
41
クリエイティブ系
広告/制作/編集
40%
41
クリエイティブ系
サイト運営・コンテンツプロバイダ
40%
41
医療系職種
臨床開発/臨床企画
40%
41
技術系(機械/電気)
技術営業(FAE)
40%
41
販売・サービス系
テレマーケティング/カスタマーサポート
40%
46
金融系職種
投資銀行系業務
39%
47
販売・サービス系
販売職
36%
48
金融系職種
営業職
35%
49
技術系(IT/通信)
テクニカルサポート・ヘルプデスク
34%
49
技術系(IT/通信)
プリセールス
34%
51
専門系職種
不動産運用/プロパティマネジメント
33%
51
クリエイティブ系
Web サイトコンサルティング・制作
33%
53
金融系職種
運用系業務
32%
54
販売・サービス系
店長/店舗管理
20%
55
医療系職種
薬剤師
14%
資料:株式会社インテリジェンス「転職サービス「DODA」中途採用の実態調査」
、同「筆記試験の実施率」
2)日本における既存の能力評価検査
能力評価は、例えば、厚生労働省「職業能力評価基準」、「ジョブカード制度」、(独)情報処理推
進機構「IT スキル標準」がある。また、内閣府が「キャリア段位制度」を導入し、レベル認定を
開始したところである。
59
3)海外における既存の適性検査・能力評価
能力評価は、イギリスの全国職業資格(National Vocational Qualification:NVQ)が有名であ
る。その主な特徴として 4 点挙げられる。
・職業訓練とその評価・公証がワンパッケージとなった制度で 1986 年創設。
・試験方式ではなく、職業訓練のプロセス・成果の評価により資格付与を決定。
・NVQ は約 700 タイトル(職種)に及び、それぞれレベル 1 から 5 までの 5 レベルを設定。
・エンジニアリング、ヘルスケア、建設、製造現場等を中心に年間延べ 4~50 万人が取得。制度
発足以来、2007 年 6 月末までに、約 625 万人が NVQ を取得。
また、適性検査で一般的なものは、アメリカ労働省開発の GATB(General
Aptitude test
Battery)がある(1934 年公表)
。これをベースに、日本では厚生労働省雇用安定局が 1952 年には、
日本版の GATB を公表している。その後、改訂が重ねられ紙筆検査、器具検査を含む 15 種類の下位
検査から構成され、各種の職業の遂行に必要とされる能力(適性能)を測定するものとなっている。
② 教育・トレーニングに関するサービスの現状
現在、人材ビジネスサービス等で提供・活用されている適性検査・能力評価サービスの現状につい
て、既存の資料から整理する。
1)日本における教育・トレーニングに関する既存サービス
【市場規模】
矢野経済研究所によると、2011 年度の企業向け研修サービスの市場規模は 4,520 億円(推計)
とされており、2013 年度まで拡大傾向と見込まれている。
図表 60 企業向け研修サービス市場規模の推移
資料:株式会社矢野経済研究所「企業向け研修サービス市場に関する調査結果 2012」
(2012 年 7 月 5 日発表)
(注)1.事業者売上高ベース
2.
(予)は予測値(2012 年 7 月現在)
60
【人材ビジネスが実施する一般的な教育・トレーニング等の内容】
アウトプレースメントサービスにおいて、キャリアのたな卸しなどのキャリア・コンサルティン
グ、履歴書の書き方などの一般的な教育はなされているが、異業種や異職種への転職を想定したス
キル習得支援を目指したような研修プログラムは、総じて少ないようである。
たとえば、㈱リクルートキャリアコンサルティングが行うアウトプレースメント支援では、キャ
リア・コンサルティングなどのほか、研修は面接セミナー、ファイナンシャルプランセミナー、独
立支援セミナー、パソコンセミナーが行われている 1。
また、(財)産業雇用安定センターが行う「キャリアデザインセミナー」のプログラムは以下の
通りである。さらに、研修事業会社である株式会社ライフワークスでは、以下のようなプログラム
のミドル・シニア社員向け研修を実施している。
図表 61 産業雇用安定センター「キャリアデザインセミナー」の概要
資料:(財)産業雇用安定センターホームページ
1
同社ホームページによる。http://www.recruit-cc.co.jp/rcc/support.html(2012/9/24)
61
図表 62 ㈱ライフワークス キャリアデザインセミナープログラム(例)
資料:㈱ライフワークスホームページ「ミドル・シニア社員向け研修サービス」案内ページ
【成長分野への人材シフトと関係が深い教育・トレーニング等の内容】
既述の一般的な人材ビジネスにおける教育・トレーニング以外に、人材需要が強い成長分野につ
いては、一部で教育訓練とセットで雇用につなげるケースがある。
例えば、成長分野への人材シフトを促すような特徴的なソリューションとして、株式会社インテ
リジェンスが、新エネルギー領域への就業を希望する人材を直接雇用し、独自の教育プログラムに
て人材開発を行ったうえで、企業に人材を派遣するというサービスを提供しているものが挙げられ
る。サービスの形態は、業務内容や受け入れ状況、企業の要望に応じて、派遣、アウトソーシング
のどの形態でも対応している。
また、ヒアリング調査によれば、人材ビジネス P 社では、技術者を派遣するにあたり、派遣先企
業に応じた技術研修を実施したり、異業種への転職を斡旋する場合には斡旋先企業の特徴などを採
用された人材に対して研修してから就職させるような取り組みを行っている。
ただし、インテリジェンスや人材ビジネス P 社のような例は少なく、人材ビジネスへのヒアリン
グ調査結果からは一般的な転職支援サービスでは、通常、キャリアのたな卸し、面接対策、書類の
書き方指導程度しか行われていないことがわかった。
62
図表 63 ㈱インテリジェンス 新エネルギー産業専門人材ソリューションサービス(例)
資料:㈱インテリジェンス「新エネルギー産業専門人材ソリューションサービス」案内ページ
2)海外における教育・トレーニングに関する既存サービス
アメリカの再就職支援の中身もほぼ日本と同じような流れになっており、特別な職業訓練などは
あまりなされていない。
海外における教育・トレーニングとしては、デンマークで行われているモビケーションという取
り組みがある。
【デンマーク モビケーション 2】
デンマークの失業対策の中核となっている考え方に「モビケーション」(移動+訓練)技能を訓
練で高めて新たな成長産業に移動させるというものがある。
これは、1990 年代前半、かつて基幹産業だった繊維産業が落ち込む中、失業が長期化し、政
府・経営者団体・労働組合、3 者の代表が協議して、打開策として打ち出された政策であり、
“低迷する分野から人を移動させ新たな成長分野で働ける人材に生まれ変わらせること”を目指し
て導入された。この方針の下、90 年代にはバイオや製薬産業、2000 年代に入ると風力など環境産
業の人材を重点に育成してきている。その成果として、例えば、世界一のシェアを誇る風力発電機
の工場の従業員の多くが職業訓練で専門技術を習得した人たちで構成されている。
なお、実際の職業訓練プログラムを作っているのは各地域にある職業訓練校で、地域ごとの実情
に合わせて訓練の内容が細かく調整されている。
2
日本放送協会ホームページ等各種情報による。
63
③ マインドセットに関する人材ビジネス等による取組について
転職や職業生活設計におけるマインドセットを支援する人材ビジネス等の取組について、既存の資
料から整理する。なお、マインドセットに関する人材ビジネスの取組は、先にみた適性検査・能力評
価サービスや、教育・トレーニングに関するサービスと重複する部分も多いため、以下の整理では前
述に示した具体例等は除いて示す。
1)マインドセットに関する取組
転職や職業生活設計におけるマインドセットを支援する人材ビジネス等の取組について整理する枠
組みとしては、様々な捉え方をすることができる。ここでは、①職業紹介や再就職支援等における転
職支援サービス、②キャリア・コンサルティング、③適性診断・自己分析等のツール、④理論的アプ
ローチの 4 つの枠組みから整理することとする。
図表 64 マインドセットに関する取組の種類
種類
概要
①職業紹介や再就
・ 再就職支援、職業紹介等における転職支援サービス。個別の再就職支援
職支援等における
転職支援サービス
のほか、教育研修サービス等を実施。
・ 再就職支援会社や教育研修事業者が実施
・ シニアのキャリアチェンジ支援等のテーマで行うものが多い
②キャリアカウン
・ 個人の職業生活設計に関する相談支援を行う
セリング/キャリ
・ 職業紹介事業者や再就職支援会社が転職の付随サービスとして実施する
アコンサルティン
ほか、キャリアカウンセリング/キャリアコンサルティングのみを取り
グ
出して行う事業者もある
③適性診断・自己
分析等のツール
・ 転職に際して自分自身に気づき、仕事に関する適性を見出すための各種
診断ツール
・ 能力に関する診断の他に、性格傾向や志向、転職に際しての心理面につ
いて診断し、転職に際しての自己理解を支援するものもある。
・ ①②の実施に際してツールとして活用されることもある。
④理論的アプロー
チ
・ キャリアチェンジに際してのマインドセットの変革に関する理論的アプ
ローチを活用
・ ①②③の理論的背景として活用されていることもある。
64
2)職業紹介や再就職支援等における転職支援サービス
中高年者の再就職支援に関しては、個別の相談支援のほか、再雇用決定者向けの教育研修サービス
等がみられる。「仕事」に関わる教育研修等サービスは多数あるが、そのうちいわゆる「転職」や
「キャリアチェンジ」に関わるサービスはさほど多くはみられない。
現時点で既存資料から把握された転職支援サービスとしては、次のものが挙げられる。
図表 65 マインドセットに関する取組の種類
実施主体・メニュー
日本マンパワー
50 歳代社員のキャ
リア開発支援サー
ビス「マインドチ
ェンジ研修」
※「職種転換・再
配置のための能力
開発支援サービ
ス」の一環として
実施
内容・方法
職種転換・再配置の対象となる社員が、それを受容し、新たな職務へ前向き
にチャレンジしていくための意識改革“マインドチェンジ”をすることで、
自己の能力を最大限に活かし、意欲的に組織貢献を図ることを支援するサー
ビスとして実施。Step1 として「マインドチェンジ研修」、Step2 として「職種
転換・再配置のための能力開発支援研修」を実施。 「マインドチェンジ研
修」の内容は以下のとおり。
<ねらい>
職種転換を前向きに捉え、新たな職務へチャレンジしていくための意識改革
“マインドチェンジ”を行う。
<内容>
1)「環境変化とその対応」、「自律・自己責任」などに関して、キャリアデ
ザインの概念とともに解説
2)これまでの転機を振り返り、今回の大きな転機をより良い方向へ乗り越
えるべく「プランドハプンスタンスセオリー※」を基に、転機に対する対
処の仕方を習得
3)個人ワークやグループシェアを中心とした実習を通じて自己理解を深め
る
4)自己の能力、コアスキル、価値観や特性を整理・再認識し、今後の課題
を明確にする
※「プランドハプンスタンスセオリー(Planned Happenstance Theory)」=
「計画された偶発理論」偶然の出来事は人のキャリアに大きな影響を及ぼ
す。その予期せぬ出来事をキャリアの機会ととらえ続けることができた
時、その人は望ましいキャリアを得ることができる。
<研修内容例>
・ 本研修のねらい(企業講話)
・ オリエンテーション
・ 自律的なキャリアデザインの重要性
・ 人生の転機を考える(講義/実習/発表/講評)
・ 自己理解演習(講義/実習/発表/講評)
・ 自己理解のまとめ(講義/実習)
・ 私の目標と決意(講義/実習/発表)
http://www.nipponmanpower.co.jp/cp/training/gt/program/details.php/S
331WW7G/
65
実施主体・メニュー
日本マンパワー
「再雇用決定者向
け意識転換研修」
日本マンパワー
「再就職支援サー
ビス」
内容・方法
<ねらい>
新たな立場・役割に向けて意識をリセットし、再雇用場での仕事に向けたモ
チベーションを再点火する。
<内容>
1)セカンドキャリアを視野に入れた、自立的なライフマネジメントを実践
することの重要性の認識
2)これまでの仕事経験を振り返り、自己の強みや持ち味を整理
3)自己の性格特性を知り、再雇用後の職場におけるコミュニケーション上
の課題を確認
4)今後留意すべきこと・強みとしていきたいこと・やりたいことの 3 点を
基に、再雇用段階と再雇用終了後のキャリアビジョンを設定
<モデルスケジュール>
午前
・ 本研修のねらい(企業講話)
・ オリエンテーション
・ 自己の振り返り(グループワーク)
・ 60 歳からの働き方を考える(講義)
午後
・ 自己の性格特性を知る(個人ワーク/グループワーク/講義)
 性格特性テスト(エゴグラム)
 職場コミュニケーションについて
・ 良いキャリアとは(講義)
・ 今後の働き方を考える(個人ワーク/グループワーク)
・ まとめ(講義)
http://www.nipponmanpower.co.jp/cp/training/gt/program/details.php/0
KFSM8UC
日本最大規模のキャリアカウンセラー(CDA)養成機関であり、CDA がマンツ
ーマンで再就職活動を支援。3 つのステップで再就職を支援。
Step1 効率的な再就職のための下地づくり
 専任カウンセラーとの顔合わせ
 適性・適職診断
 自分のキャリアの「棚卸し」
 「自分のカタログ」づくり
 再就職の実践ノウハウ研修
Step2 求人情報の収集と応募・面接
 求人情報収集と応募の絞込み
 求人先の特長に合った応募書類づくり
 面接の準備とトレーニング
 再就職の「活動拠点」のご提供
 再就職に役立つ無料ライフプランセミナー
 能力開発講座の優待
Step3 内定後&入社後のアフターフォロー
 内定後の雇用条件の確認
 内定先企業の調査
 入社後 6 ヶ月間のアフターフォロー
http://www.nipponmanpower.co.jp/cp/evaluate/op/
66
実施主体・メニュー
内容・方法
㈱日本雇用創出機
失業のない転職のため、企業からの人材を機構が一定期間(原則 1 年間)在
籍出向等の形で受入れ。機構において、転職に向けての活動方針の策定・キ
ャリア形成を行い、よりスムーズな転職を支援するサービス。
<サービスの概要>
○市場価値を知る
・企業人事担当者に聞く(企業が求める人物像の確認)
・ミドル、シニアの転職市場を知る(求められる人物像、活かせるキャリ
ア)
○自分自身を知る
・セカンドライフプランを立てる
・自分自身を分析する(強み、弱み、職務の棚卸)
○転職先を知る
・働き方の多様性(メリット、デメリット)
・転職企業の実態(大企業と中小企業の相違点)
○自分自身の売り込み
・キャリアの棚卸、キャリアシートの作成、面接の心得
・人材に適った転職活動の方法
http://www.nihon-kikou.co.jp/service_BB.html
<所要時間>
6~12 時間
<目的>
いままでの自分の行動を振り返り、今後の課題を整理し、その解決策を考え
ることで、気持ちと思考をリフレッシュさせ、意欲とモチベーションの向上
を図ることを目的とする。
<内容>
1.いままでの自分を振り返る
1)過去 1 年間の実践状況を確認する
2)強み・課題の再確認
3)強みを活かすには・・
4)課題を解決するには・・
2.自分の特徴を知って活用する
1)エゴグラムチェック
2)自分の特徴を理解する
3.自己表現力を磨く
1)アサーティブ・コミュニケーションとは
2)アサーティブ・ゲーム
4.心のベスト・コンディションを創る
1)リソースにアンカリング
2)リソース・ポイントを発見しよう
5.達成力をアップさせる
1)未完了を完了させる
2)自身の未完了を抽出する
http://www.tokushikan.com/kenshu7.html
構
「人材ブリッジバ
ンク」
ビジネス塾篤志館
「マインドセッ
ト・リフレッシュ
研修」
資料:各社パンフレット及び各社ホームページ等により、みずほ情報総研㈱作成(いずれも,2012/11/13,14 確認)
67
3)キャリア・コンサルティング
【キャリア・コンサルティングとは】
アウトプレースメントや転職支援などで行われるキャリア・コンサルティングについては厚生労働
省が推進しており、個人が、その適性や職業経験等に応じて自ら職業生活設計を行い、これに即した
職業選択や職業訓練等の職業能力開発を効果的に行うことができるよう個別の希望に応じて実施され
る相談その他の支援を行うことと定義し、以下のような流れで個別相談を実施するものと整理してい
る。
図表 66 キャリア・コンサルティングの定義と個別相談の流れ
○「キャリア・コンサルティング」とは、「個人が、その適性や職業経験等に応じて自ら職業生
活設計を行い、これに即した職業選択や職業訓練等の職業能力開発を効果的に行うことがで
きるよう個別の希望に応じて実施される相談その他の支援」のことを言います。
(引用)平成 19 年 11 月、厚生労働省「キャリア・コンサルタント制度のあり方に関する検討会」報告書
http://www.mhlw.go.jp/houdou/2007/11/h1116-2.html
○「キャリア・コンサルティング」は、必ずしも個人に対する相談支援に限らず、企業の職業能
力開発制度や学校のキャリア教育プログラムの設計・運用・評価等そのほかの支援を含むも
のです。
「キャリア・コンサルティング」の中心となる個別相談の流れ
資料:厚生労働省、各社ホームページ等により、みずほ情報総研㈱作成。
(2012/11/13,14 確認)
68
【キャリア・コンサルティングを提供する民間サービス】
現時点で広知情報から把握されたキャリア・コンサルティングを提供する民間サービスとしては、
次のような事例が挙げられる。
図表 67 キャリア・コンサルティングを提供する民間サービス
実施主体・メニュー
特定非営利活動法人
キャリアカウンセリン
グ協会
㈱インテリジェンス
DODA 転職支援サービス
における「キャリアカ
ウンセリング」
㈱リクルートキャリア
リクナビ NEXT 編集部
「転職カウンセリン
グ」
㈱スタイルブランディ
ング
内容・方法
仕事や今後のキャリアについての悩みや迷いを感じている人に対する相
談。1 時間ほどの個別キャリアカウンセリング(相談者自身のキャリア
についての相談を GCDF-Japan キャリアカウンセラーと行う)という形
式で実施。医療・治療・法律相談・具体的企業の紹介や、ツールを用い
ての自己分析・適職診断等は対応していない。
<相談内容例>
・今後の働き方について
・転職、就職について
・職場での人間関係について
・やりたい仕事について等
http://www.career-npo.org/soudan/
業界・職種に精通した選任のキャリアコンサルタントによる支援。本人
のキャリア、保有するスキルを総合的に判断し、現在の転職市場におい
て強みとなる点、弱みとなる部分を整理。その上で、「今できること」
「将来やりたいこと」を軸に、次のキャリアステップをどこに置くかを
話し合う。自分の強みを自覚することで、自信を持って転職活動を進め
ることができる。
http://doda.jp/promo/s/
転職を少しだけ考えた人を対象とした、「転職活動をはじめる前の、転
職カウンセリング」。ネット上のカウンセリングツールを用意。前半
は、転職について「考えた方がいいのか」を一問一答形式で質問。後半
は、「転職を考えている人に便利なツール」を用意。様々な条件を設定
して、実際の求人情報にアクセスできる。独自の調査データを基に、条
件を決めるためのヒントも用意。
http://next.rikunabi.com/01/hajimerumae/index01.html
就職活動・転職活動を開始する、または始めているという人を対象とし
たカウンセリング。「自分をきちんと伝えることができるようになる」
事を目標にする。
実際に今まで積まれてきたキャリアと、これからやりたいと思っている
事を、
1.want(やりたいこと)
2.can(できること)
3.do-did(やってきたこと)
4.must(ゆずれないこと)
で整理し、カンセリングで顕在化された内容を加味していく中で、
何を伝えていくのかを明確化する。
方法論としては、自身でそれぞれの項目に該当するキーワードを複数書
き出し、それぞれの内面的事実の因果関係を探っていく。
http://www.style-branding.com/careercounseling/jobchanging.asp
資料:各社ホームページ等により、みずほ情報総研㈱作成。
(いずれも,2012/11/13,14 確認)
69
4)マインドセットに関わる適性診断・自己分析等のツール
適性診断、自己分析等のツールは、再就職支援における相談支援の過程の中で、自分自身の適性や
強み・弱みの分析のために活用されることがある。
現時点で広知情報の中で、転職支援の過程で活用しているとして挙げられた主なツールには下のよ
うなものがある。
図表 68 マインドセットに関わる適性診断・自己分析等のツール
ツール名
エゴグラム
エニアグラム
概要・内容
アメリカの心理学者エリック・バーン博士が創始した「交流分析」という
人間関係の心理学理論に基づいて作られた性格診断テスト。エゴグラム性
格診断テストでは、人の性格を 5 つの心の領域(CP・NP・A・FC・AC)に分
けて分析。
○CP(controlling parent):理念力、
「支配的な親」の自我状態
正義感や道徳心、責任感、良心などを表す。
○NP(nurturing parent):支援力、
「養育的な親」の自我状態
優しさ、思いやり、寛容性、受容性、共感性などを表す。
○A(adult ego state):論理力、「合理的な大人」の自我状態
知性、理性、冷静さ、論理性、判断力、現実志向性、情緒安定性、など
を表す。
○FC(free child):活発力、「天真爛漫な子ども」の自我状態
直感力、創造性、自由奔放さ、好奇心、自発性、活気、愉快さ、表現
力、などを表す。
○AC(adapted child):協同力、
「従順な子ども」の自我状態
素直さ、協調性、忍耐力、奥ゆかしさ、礼儀正しさ、などを表す。
https://www.peacemind.com/egogram.php
エニアグラムは個人の特性を9つのタイプに分類したもの。エニアグラム
とは9つの点をもった円周と、それを繋ぐ線からできているこういう図形
のことをいう。
エニアグラムの性格論は、1960 年代に作られたもので、70 年代からアメリ
カで精神医学や心理学の研究者が注目し、研究を重ね、理論を発展させ続
けているもので、新しい人間学、心理学として世界各国に広がった。日本
でも人間関係改善のために学ぶ人が増え、教育関係者、弁護士、医師、心
理療法士のほか、大手企業でも研修に導入するところが出ている。
■エニアグラムの目的
(1)自分を理解すること(自分の中の何を伸ばし何を改めるべきかを知る)
(2)他人を理解すること(他人とよりよい関係をもつこと)
■エニアグラムを理解することでの効用
(1)自己理解と自己受容が深まる。
(2)自己理解と自己受容が深まるにつれ、他者理解、他者受容ができるよう
になり、人間関係の改善につながる。
(3)人間としての成長のしかたが分かり、自分をよりよく活かす、自己実現
を目指せる。
http://www.enneagram.ne.jp/
http://shining.main.jp/enneagram/index.html
70
ツール名
概要・内容
自己分析・適職診断プ
ビジネスマン2万人のデータをもとに、興味・価値観・志向を詳細に分析
する自己分析・適職発見プログラム。
① どういうスタイルの働き方があなたにとって心地よいか。
② どんな上司がいる職場がいいのか
③ あなたと近い価値観を持った人はどんな仕事について満足しているの
か
④ どんな風土の職場が居心地がいいのか
など、多角的に知ることができる。
15 ページもの詳細な結果報告書で自分の興味・志向・価値観を客観的に分
析。
「適職」や「向いている職場環境」などがわかる。
付属の自己分析を深めるワークブックや仕事研究を深めるジョブカタログ
をあわせて使うことで、説得力のある志望動機を作成することができる。
http://www.recruit-ms.co.jp/service/service_detail/org_key/A019/
MATCH(Mynavi Aptitude Test & Chart)は、仕事に関する個人の行動傾向を
測定するために作成された検査。1970 年代後半から、イギリスで官民合わ
せた組織で研究開発が行われ、1984 年に、同じくイギリスにて世界で初め
て導入された診断テストを基に、これから就職する日本の学生向けにつく
られた。 MATCH の基礎となった診断テストは、1984 年の導入後も学際的な
研究を重ね、現在は 20 年以上にわたって蓄積された人事データベースを持
っている。毎年、世界 40 カ国で 1,000 万人が受検。豊富なデータベースか
ら、適性を客観的に割り出すことができる。仕事における本人の特徴を診
断する「パーソナリティ診断」と、仕事で重視する価値観を診断する「バ
リュー診断」の2つの診断から、本人の強み、適職がわかる。
http://job.mynavi.jp/14/pc/forward/forwardMatch/index
キャリア理論の世界的権威である職業心理学者ホランドの「職業選択理
論」に基づく診断方法。人材がどんな仕事に興味があるかを見る「興味検
査」と、どんな能力に自信を持っているかを見る「能力自己評価検査」の
2 つの検査から構成。職業に対する興味の特性は 6 つのホランド・タイプ
として捉える。さらに、仕事の方向性を[データ/アイディア]、[ひと/
もの]の 2 つの軸によって位置づける。これらの結果を、さまざまな職業
を 23 種のグループに分類したジョブ・ファミリーに照らし合わせ、具体的
なキャリアの方向性を提示する。
http://www.nipponmanpower.co.jp/ps/think/cpsj/
ログラム R-CAP
㈱リクルートマネジメ
ントソリューションズ
自己分析定番ツール
適職診断 MATCH
㈱マイナビ
適職診断 CPS-J
日本マンパワー
資料:ピースマインド・イープ㈱HP、NPO 法人日本エニアグラム学会 HP、コーチシャイニング HP、㈱リクルートマネジメ
ン ト ソ リ ュ ー シ ョ ン ズ HP 、 ㈱ マ イ ナ ビ HP 、 日 本 マ ン パ ワ ー HP 、 か ら 、 み ず ほ 情 報 総 研 ㈱ 作 成 。( い ず れ
も,2012/11/13,14 確認)
71
5)マインドセットに関わる理論的アプローチ
転職に関連したマインドセットに関わる主な理論的アプローチとしては、次のようなものが挙げら
れる。
図表 69 マインドセットに関する理論的アプローチ
理論名(論者)
概要
キャリア・アンカー論
組織と個人の関係からキャリアを考え、キャリア・アンカーという考え方
(シャイン)
を提唱。 キャリア・アンカーとは、キャリアに関する自己イメージをさ
し、次のような 3 つの側面がある。
能力: できること
欲求: やりたいこと
価値観: やるべきこと
これらは、キャリアスタート時にはあいまいなものが、キャリアを積むプ
ロセスで個人の内面で無意識に固まってくるとし、
キャリア選択の際の基本方針として、キャリアを方向づける重要な役割を
果たすものとなっていく。シャインの研究により、キャリア・アンカーは
8 つのカテゴリーに分類することが可能であることがわかった。
1.専門/2.経営管理/3.自立/4.安定/5.企業家的創造性/
6.社会への貢献/7.チャレンジ/8.全体性と調和
トランジション 3 段階
「トランジション」は、過渡期もしくは転換期を意味し、誰もが人生の中
理論(ブリッジス)
で迎える不安や葛藤を抱えやすい時期とされる。
ブリッジスは、トランジションを年齢にかかわらず発生するものと考え、
そのプロセスを 3 段階に分けて考えた。
STEP1: 何かが終わる時
STEP2: ニュートラル・ゾーン
STEP3: 何かが始まる時
4-S トランジション・
シュロスバーグによると、人生はトランジション(転機)の連続からな
モデル(シュロスバー
り、人のキャリアは、それを乗り越えるプロセスを経て形成されていくと
グ)
し、トランジションを乗り越えるための対処法(4-Sモデル)を提唱。
トランジションが起こると、①役割(ライフ・ロール)、②人間関係、③日
常生活、④自分らしさ(自己概念)の変化などが起きるとし、まずは、自
分が転機に入ったことを受容することが大切だとしている。
そして、トランジションを乗り越えるためのフレームワークを4-Sモデ
ルとして提唱。4-Sとは、状況(シチュエーション)・自分自身(セル
フ)
・支援(サポート)・戦略(ストラテジー)を指す。
資料:日本キャリア・コーチング協会HP「キャリア理論講座:キャリア発達の理論」
http://www.jacca.jp/category/1250415.html を参考にみずほ情報総研㈱作成(2012/11/13,14 確認)
72
第3章
人を活かす産業のサービスに必要な要素や課
題の抽出及び対応策の検討
(1)成長分野において今後求められる人材ニーズ、求められる能力・スキル、採用例
本項では、ヒアリング調査結果をもとに、成長分野において今後求められる人材ニーズ、求めら
れる能力・スキル、実際の採用例について分野ごとに整理をする。
① ヘルスケア
1)人材ニーズ/採用例
医療分野においては、基本的に有資格者及び経験者が優先的に採用される傾向はあるが、CSO 事
業(医薬品販売業務受託事業)の MR(医薬情報担当者)及び CRO 事業(臨床試験実施受託事業)
の CRA(臨床開発モニター職)については未経験者の受入れもみられている。医薬に関わる者とし
ての倫理観・コンプライアンスや、営業活動にあたってのコミュニケーション能力が求められてい
る。
介護分野においては、現場の介護スタッフが比較的中高年の人も受け入れ、かつ資格要件も低い
職種として位置づけられる。高齢化社会の進展のもとで、有料老人ホームやサービス付き高齢者住
宅の拠点拡大を進める事業者においては、それら施設等のマネージャー職も他業界からの入職事例
としてあるとの回答があった。
○ CRA(臨床開発モニター職)
【医療A社】
職種別にみると、従業員数が多いのは CRO 事業の CRA(臨床開発モニター職)
、ヘルスケア事業の
CRC(治験コーディネーター)
、CSO 事業の MR の 3 つであり、人数はそれぞれ数百名程度である CMO
事業については工場(製造ライン)であり、売上ほど従業員数は多くない。「三大」職種(CRA、C
CRC、MR)については、すべて未経験者を受け入れている。ただし、それぞれ間口が異なっている。
その年によって採用の傾向は異なるが、昨年度で言えば、CRA は中途・未経験者を数十名採用した。
中途採用の際に見るポイントは、達成志向の高さとコミュニケーション能力である。また、特に強
めているのは倫理観、コンプライアンスの部分であり、これは CRA 及び CRC であるとより必要性が
高くなる。また、数字を正しく説明できる論理性も求められる。営業については、即戦性が高い人
が求められる。教育する必要があるのは、当社の理念やビジョンで、そこが合致すればよい。
○ MR
【製薬C社】
新薬が出来たことで、営業活動を強化するためMRを増強している。新薬を発明できた会社は増
強したが、そうでない会社は増強しておらず、また、営業体制の構造改革や、特許が切れ売上が減
少することもあるので、MR増強は薬品業界全体の傾向とはいえない。MRについては職階転換ご
とに個人から組織貢献度へ比重が高まる。多くの場合生涯MRとして活動していく。中途採用者は
基本的に 20 代、未経験者が 8 割。採用してから教育期間のなかでMR資格認定試験対策が可能と考
えているため未経験者が多い。
73
○ 現場介護スタッフ職
【介護B社】
現場の介護スタッフについていえば、たとえば 1 つの事業所を開設すると、運営が安定するまで
に 20 人程度採用する。そのうち 6 割程度は経験者(有資格者)となる。最低半分は経験者がいない
と、運営が回らない感覚がある。業界未経験で、異業種からの人が 4 割程度いるが、最近の傾向と
して、30~50 代男性が増えてきた。職業訓練で介護の訓練を受けてきた人、リストラや業務縮小で
早期退職した人などが増えている。
【介護D社】
年間でおおむね新卒採用(正社員のみ)が年間 50 人程度、中途採用者が 120~150 人程度採用し
ている。中途採用者の年齢層は、男性と女性で異なるが、男性は 30 代、40 代が多い。この世代は、
次の業界を探したい、骨をうずめたいと、職業として仕事を探して来ている。また、50 代後半も増
えているが、この年齢層の人たちは、早期退職や両親の介護をきっかけに資格を取り、介護の仕事
を始めたいという人が多い。
○施設のマネージャー職
【介護B社】
マネージャーも中途採用している。現在、サービス付き高齢者住宅等の出店ペースをかなり早め
ており、次の 2 年間で 30 店舗程度開設する予定がある。そうすると、内部人材からの管理職層の登
用だけでは間に合わない。また、現場の介護職からの登用もあるが、予算管理、労務管理などマネ
ジメントに不足がある場合がある。そのため外部人材を採用しており、大手企業の再就職支援を並
行して取り入れている。製造業、ホテル、証券会社など全く異業種からも採用している。とはい
え、厳しく選考するので狭き門ではある。
2)採用や育成に関する取組
医療分野においては、MR も CRA も未経験者の場合には 2~3 ヶ月の導入研修が必須となっており、
このための研修機会を企業の方で用意している。
介護分野においては、施設マネージャー候補の場合であっても、介護の現場についての理解がマ
ネジメントにあたって必須であるとの考えのもと、入職後初期の段階において現場を経験する機会
を設けている企業が多い。
中途採用者が一定数以上ある企業では、中途採用組においても「同期」をつくってもらう機会を
意識的につくることで、悩みの共有や新たな職場に向かう気持ちづくりを支援しようとする企業も
ある。
○ CRA(臨床開発モニター職)
【医療A社】
中途採用者の試験は、一般的な学力・知力検査と面接である。知力検査にあまり重きは置いてお
らず、人物像をかなり見る。外部機関のツールを採用し、性格診断のような行動様式を測るテスト
も並行して行っている。
CRA の中途採用の未経験者については、3 ヶ月 200 時間が目安。その後は年間 40 時間の継続研修
が施される。研修は自社で行っており、その内容は、治験に関する倫理、規制要件、医薬品開発の
流れ、医学・薬学の基礎、モニタリング業務(ロールプレイングを含む)などについてである。
74
○ MR
【製薬C社】
MRの場合、300 時間、短くて 2 カ月、自社の場合 4 カ月 MR になるために必要な導入教育を行う
ことが義務付けられる。この中で企業に対する帰属意識、業界の知識、企業グループの一員として
の姿勢なども教育しやすい。300 時間とは資格試験を受けるための要件として 4 冊のテキストを一通
り学習する期間。
○ 現場介護スタッフ職
【介護D社】
中途採用者の入社時研修では、介護業界について、会社について、キャリア、ISO などをテーマに
行う。しかし内容よりも、一番の狙いは同期を作ってもらうこと。中途採用者に対し入社半年後に
行うフォローアップ研修では、悩みの共有、他者の経験を聞くことにより自分が何を経験できてい
ないか明確化したりする。また、この機会を気持ちのリセットの場とし、何のためにこの職場に来
たのか、今後どうしたいのか、改めて考える場にしている。
○ 施設のマネージャー職
【介護B社】
違う業界から、現場のことを知らずに落下傘型でマネージャーがいくと、専門職の側から「現場
のことも知らないのに」と不満が出てうまくいかない。介護職の人たちは腕でやっている人なの
で、専門性を尊重しながら一つのベクトルに向けることが必要となる。現場スタッフの気持ちをく
み取って、この方向で頑張ろうと思えるようなマネジメントが出来る人ではないといけない。「施設
長だから」といったポジションパワーが通用しない。
異業種コンバート組の転職者は、マネージャーとして、半年ぐらいで育てる育成プログラムを作
成している。研修は、5~6 人いれば集合研修を行う。すでにマネージャーとして従事している人も
いるが、その人も含め定期的に集め、課題を出している。本社主導のプログラムで、会議の持ち
方、面談方法、採用の仕方、進捗管理方法、目標管理の方法や、介護職・福祉職としていかにやる
気を引き出すかという部分を研修で教育している。
【介護D社】
マネージャー職(支配人、訪問介護のエリアマネージャーなど)は、介護を直接はやらないが、
現場の仕組みや業務の流れ、手順、利用者を見る視点などを養ってほしいので、まずは現場から入
ってもらう。
異業種の人が突然マネージャーとして行くと反発があるので、しっかり現場からやってもらうよ
うにしている。その期間は、半年の人から 2~3 年の人もいる。同時に、次のポジションが待ってい
ることを示し、どういう道に進みたいかということを確認しながらやっていく。キャリアの道筋が
見えないと、本人がやっていけない。採用時にも、そうしたマッチングを行っている。
【介護D社】
一般的な内容の教育・研修は外部機関に出して、内部でもつ教育・研修は自社に特化したもの
(事業計画、戦略など)という形で出来るとよい。ビジネス、コーチング、改善のノウハウ、介護
業界の動向など、介護用のカリキュラムを開発してほしい。
75
3)人活ビジネスの取組
ヘルスケア分野において、事前に教育研修を施して人を送り出すという人活ビジネスの動きはま
だ一般的ではない。医療関連受託事業や福祉事業を展開しつつ、教育事業も有する企業では、教育
→資格取得→就労の流れの中でサービスを提供しようとする事業者がある。
○ MR や CRA(臨床開発モニター職)等の職業紹介
【人材ビジネスR社】
MR や臨床開発モニター(CRA)の職業紹介の取り扱いが多い。ただし、CRA の決定者数は減少傾
向。無資格者の決定はいても限定的。他の職種では薬事系、品質保証・品質管理、統計解析、DM の
求人が比較的多いが、これらは経験者に限る。
○ 教育→資格取得→就労の流れでサービス提供
【介護E社】
医療関連受託事業(医療事務業務を受託し人材提供)、福祉事業(介護・保育サービス)、教
育事業を展開。教育事業を起点に各ビジネスを展開するのが最大の特徴で、教育→資格取得→
就労の流れで各サービスを提供する。
○ メディカル分野の求職者に対する教育研修等:基本は行わない
【人材ビジネスR社】
メディカル分野の求職者に対する事前の教育研修等のサポートは行っていない。企業は採用者を
3ヶ月試用するため、その間のフォローアップはするが、教育はしない。MR について、かつては求
職者支援制度に基づく教育研修を行ったが、6 人しか集まらず、資格を取れた人は 2 人だけだった。
内容は MR の基礎知識を教えたり、ロールプレイングを行った。
4)異業種からの移動に関する人材ニーズと移動ルート
医療分野については、MR は文系出身者の入職も可能だが、CRA(臨床開発モニター職)は基本的
に有資格者が条件として強く、無資格でも理系出身であることが必要とされている。医療機器は基
本的に経験者のみに限った求人が多い。
介護分野については、サービス業からの移動が多くみられるという。
○ MR:文系出身者が入職可能
【人材ビジネスR社】
MR は文系出身者が多い。
○ CRA(臨床開発モニター職)
:基本は有資格者だが、理系出身者も応募可能
【人材ビジネスR社】
臨床開発モニター(CRA)の求人について、メディカルの有資格者で 30 歳未満であれば異業種か
らであっても応募できる。無資格者でも大手の CRO 会社には理系であれば応募できることがある
が、有資格者と比較して彼らの決定率はきわめて低い。(ライフケア・ネットワーク)MR は文系出身
者が多い。
76
○ 医療機器:基本は経験者のみ
【人材ビジネスR社】
医療機器業界においては未経験の就職はない。資格は必要ないが、循環器や整形外科領域の医療
機器会社での経験者に限った求人が多い。
○ 介護スタッフ
【介護E社】
サービス業からの移動では、アパレル・飲食業など多様であるが、特に飲食業が多い。サービス
業から移動しやすい理由として、前職賃金が安いことが重要ポイントである。サービス業は全産業
の中で最も賃金水準が低く、介護業界も同水準のため移動しやすい。低賃金労働者も多いため、知
識をつけスキルアップという形で移動しやすい。
② 環境・エネルギー
1)人材ニーズ・採用例
環境・エネルギー分野において異業種からの転職がみられる職種としては、環境機器関連の販売
職、スマートハウス営業、再生可能エネルギーに関する施工・管理技術者、環境や安全に配慮した
装置技術者(組み込みソフトウェア技術者)、エネルギーマネジメントに関する企画・コンサルテ
ィング職などである。
このうち、スマートハウス営業については宅建資格取得者のみが対象となるため住宅・不動産関
連業界からの転職が多い。また、再生可能エネルギーに関する施工・管理技術者については、電機
施工管理技士、第二種電気工事士など資格を持った人に限られる。
○ 環境機器関連の販売職
【家電量販F社】
太陽光関連で、営業および販売員として数百名を採用。給与は月額固定+販売インセンティブ
(歩合)である。退職年齢の 60 歳まで雇用。30 代から 40 代。営業職採用。太陽光業界の経験者は
1 割も満たないため、大多数が異業種からの転職である。商品知識は入社後の社内教育で対応する。
大部分が離職後の転職者である。
○ スマートハウス営業職
【家電量販F社】
宅建アドバイザーとして、宅建資格者を採用。嘱託社員(準社員)として採用している。給与は
月額固定+販売インセンティブ(歩合)で 1 年間の有期雇用である。65 歳まで契約(自動)更新があ
る。中途採用者は、30 代後半から 60 代前半。50 代がボリュームゾーン。前職はほぼ住宅会社、不
動産会社経験者。宅建資格取得者のみ。(商品知識は不問。入社後の社員教育にて対応)土地取得な
どの交渉経験や営業経験が 3 年以上。
○ 再生可能エネルギーに関する施工・管理技術者
【建設・住宅I社】
2012 年 4 月以降、営業職、設計職、工事職、事務系をそれぞれ数十名中途採用した。中途採用者
をここ数年増やしているのは、既存事業が好調であるため業容拡大をしているからである。受注が
取れれば設計・工事部隊が必要となるため、特に設計職、工事職の需要がかなり増加している。ど
こもそうだと思うが、資格を持った建築設備系の人員がものすごく少ない。今、メガソーラーや太
陽光発電の補助金政策があるが、その制限があり電気施工管理技士、第二種電気工事士など資格を
77
持った人しか施行できない。そのために、こうした人たちについては業界内で取り合いになってい
る状況にある。
○ 環境や安全に配慮した装置技術者(組み込みソフトウェア技術者)
【ソフトウェアG社】
ここ数年、中途採用で十名程度採用している。採用しているのは、エンジニアのみで、年齢対象
は、29~40 歳ぐらいである。車、ソフトウェア、組み込みソフトウェアのスキルだけでなく、品質
保証に関する考え方や管理方法が各社で全く違うので、それも学ぶ必要がある。それには 7~10 年
かかるので、採用年齢として、40 歳あたりを限界としている。採用者の前職は、ソフトウェア経験
者が多い。自動車業界のソフトウェアを経験している人は非常に少ないので、自動車以外の分野の
経験者が主体である。
○ エネルギーマネジメントに関する企画・コンサルティング職
【エネルギーH社】
通年で中途採用を行っている。昨年は全体で百名以上採用し、そのうち4割程度が正社員。採用
した職種は、営業職・開発職(ハード・ソフト)・事務職・企画職など、多岐にわたる。転職してく
る業界はさまざまで、大企業の方もいれば、ベンチャー企業からの方もいる。エネルギーや電力関
係からの転職は少なく、1割にも満たない。
業界未経験でも受け入れるというスタンスで採用を行っており、職種転換の方も受け入れてい
る。経験よりは、スキルやベンチャースピリット、会社の将来の方向性に共感いただける方等、ハ
ートの部分を重視して採用を行っている。
2)採用や育成に関する取組
即戦力としていきなり成果を期待するわけではなく、採用後の社内教育は内部で研修の機会を設
けたり OJT によって育てていく方針で対応している企業が多い。環境や安全に配慮した装置技術者
(組み込みソフトウェア技術者)については、新規事業分野であることもあり、人材要件がまだ明
確ではなく、その要件の明確化を図ろうとしている。これについては、技術だけでなく、流体、物
性、機械など多様な専門性が必要であり、論理的に考える力も求められるといった意見がある。
○ 環境機器関連の販売職・スマートハウス営業職
【家電量販F社】
社内教育は外部委託せず、社内の専用部署で教育している。集合研修から開始。商品知識だけで
なく、会社の仕組みに慣れ、仕事の流れを知るには 3 ヶ月かかる。
太陽光事業の入社導入研修では、入社から 4 日間集合研修を行い、太陽光発電の基本システム・
素材知識・顧客へのアプローチ方法を学ぶ。その後、配属店舗にて就業。宅建アドバイザーも商品
知識は違うが、流れは同様である。
○ 再生可能エネルギーに関する施工・管理技術者
【建設・住宅I社】
採用では、当社で使っている適性検査を行い、当社のハイパフォーマーと波系がどれぐらい似て
いて、どこの適性が高いか、ハイパフォーマー分析をしている。また、昨年当社で現場のトップ、
新人育成の OJT 担当者等に「求める人物像」調査を実施したが、それによって逆に「求めない人物
像」が明確になった。「求めない人物」としてデータとして出てきたのは、他責傾向のある人であ
る。
2 泊 3 日の「キャリア採用者研修」があり、当社のビジョン、言い方はよくないが「DNA」のよう
78
な部分を学んでもらうことを大事にしている。創業者の記念館の見学、社の歴史など新入社員教育
と変わらない部分を大切にしている。
○ 環境や安全に配慮した装置技術者(組み込みソフトウェア技術者)
【ソフトウェアG社】
人材の要件がまだ明確ではないところがあるので、まさにこれから技術部と詰めようと思ってい
る。「ソフトエンジニア」という言い方をするが、必ずしもソフトだけを知っていればいいわけでは
ない。自動車の組み込みソフトは、プログラムを書くわけではなく、ソフトの設計が主体である。
それには、ドライバーが何を欲しているか、車にはどういう特性があるか、車の構成部品の特徴な
ど様々なことを理解している必要がある。プログラムが書けるという基本の上に、流体、物性、機
械など多様な専門性が必要であり、論理的に考える力も求められる。しかし、こうした人材要件の
具体化については、今後、社内コンセンサスを取っていく予定である。
○ エネルギーマネジメントに関する企画・コンサルティング職
【エネルギーH社】
研修は、電力の需給管理業務のみで行っている。入社直後、仕事内容を中心に「こういった業務
をやっている」というのを知ってもらう場を設けている(1 日弱)。それ以外の部署は先輩社員から
の OJT のみである。
即戦力として活躍する期間は、職種によって違う。PPS(電力の小売代行業務)の営業は法人のお
客様に対し「PPS から電気を買ってください」というものではなく「PPS になりましょう」という内
容なので、長いスパンで多方面からのアプローチが必要である。そのためには、エネルギーの知識
はもちろん、ファイナンス・会計知識などのベースがしっかりとし、さらにお客様の業界動向等を
しっかり理解していないと、お客様と話にならない。広範囲の知識が必要なので、好奇心が多い方
ほど良いが、育てるにはある程度時間がかかる。会社としてもすぐに即戦力になるとは考えていな
いので、じっくり育てていくという考えである。一方、BEMS(ビル管理システム)の営業は売り方
をある程度定型化しているので、即戦力の人材を採用する。
3)人活ビジネスの取組
技術者やエンジニアに特化した人材紹介や人材派遣への取組がみられており、人材派遣において
は顧客企業のニーズに応じた技術研修が実施されている。
ある企業では、キャリアアップに対しての問題意識の高い人を集める手法として、技術者同士が
情報交換できる講習会(キャリアラボラトリー)を開催する取組がみられる。
○ 技術者・エンジニア特化の人材紹介
【人材ビジネスT社】
①既存の登録型というような紹介の仕方ではなくて、30 代~40 代前半を中心としたスカウトやヘ
ッドハント型の人材紹介、②既存のハードウェア、家電のメーカー、ウェブサービス等の技術者・
エンジニアに特化した人材紹介(スカウト候補者の9割が技術者・エンジニア)である。
○ 派遣技術者に対する技術研修
【人材ビジネスQ社】
技術者を送る相手企業先に応じて派遣技術者を教育し、その準備のために常に多くの技術研修を
開催している。また、その次世代の技術を狙う研修コースも開催。自己研鑽のきっかけにもしてい
る。異業種から異業種への転職の場合、お客様向け研修を行う。新卒もお客様向けにカスタマイズ
した研修後に派遣している。
79
○ 技術者同士の交流会やビジネススキル UP のための講習会(キャリアラボラトリー)
【人材ビジネスT社】
現職やキャリアアップに対しての問題意識の高い人を集める手法として、技術者同士が情報交換
できる交流会やビジネススキル UP を目的とした講習会(キャリアラボラトリー)を行っている。
4)異業種からの移動に関する人材ニーズと移動ルート
広義に技術者またはエンジニアと捉えた場合には、専門性が必要とされるため転職者の前職も同
様の人が多い。しかし、より狭い領域ごとにみた場合には、再生可能エネルギー等については、そ
の事業領域自体が新しい産業であることから、いわゆる経験者はほとんどおらず、既存メーカーで
応用可能な知識やスキルを持つ技術者が移動してくる状況がある。
○ 技術者・エンジニア:職務や経験が近い領域からの移動
【人材ビジネスT社】
ターゲットが技術者・エンジニアのため、転職者の前職についても職務内容や経験が近い人材が
大半(未経験者はほとんど皆無)。
○ 事業収益につなげる人材のニーズが増える可能性
【人材ビジネスT社】
プログラミングを中心としたエンジニア(プロジェクトマネジメント)のニーズが強いが、今後
はそれらを統括していき、事業の収益性にどのようにして繋げていくかというディレクションがで
きる中堅以上(事業運営)のニーズが増えていく可能性もある。
○ 再生可能エネルギー分野への近接領域技術者の移動
【人材ビジネスS社】
再生可能エネルギーは新しい産業であるため、いわゆる「経験者」がほとんどいない。このた
め、既存メーカーの応用可能な知識やスキルを持つ技術者が、「比較的近い経験を有する者」として
捉えられ、求人企業側からのニーズがある。例えば、「電気知識が少しある土木技術者で資格がある
人材」を家電メーカー等が太陽光・風力発電事業のために採用するケースがある。
○ IT系(制御系ソフト)技術者のニーズ
【人材ビジネスQ社】
IT系(制御系のソフト)の需要は非常に多い。特に人口も多く流動性の高いSE。メーカーは
人材育成などの仕組みがあるので離職率は低いが、IT企業は高い。アプリ開発、Eコマースなど
も多く需要があり、むしろ慢性的に人材不足である。
③ グローバル
1)人材ニーズ/採用例
グローバル分野において求められる人材としては、販路開拓や拠点立ち上げ、現地パートナーと
の橋渡しのための人材が挙げられている。
これらの人材に求められる要件としては、海外勤務・海外駐在経験等がある方が海外への適応の
側面において望ましいが、語学や知識以前に「行けば何とかなる、何とかする」といったような、
タフな、ある意味修羅場に強い人材が求められている。
80
○ 販路開拓人材・拠点立上げ人材
【製造業M社】
海外展開要員である A 氏は、鞄メーカーの出身で現在の中国拠点の董事を務める。上海留学経験
があり、メーカーでは中国は出張ベースで行き来しており、主に国内量販店向けの営業企画・営業
管理を含む営業活動に従事していた。当社の中国への進出と同時に現地勤務の条件で採用した。
もう一人の海外要員である B 氏は、大手家具SPAで6年働いたのち単身アメリカに渡り自力で
仕事を見つけ、帰国後、当社へ再就職を果たした。帰国後海外で働ける職場を探したところ当社が
採用するに至った。タイでの事業立ち上げに注力してもらうべく採用。
【生活サービスL社】
海外にいる日本人スタッフのうち、事務職は全員他社(輸入雑貨、石油販売など前職)での海外
赴任経験者である。また、学生時代に留学経験もある人が多い。海外では思い通りに事が進むこと
の方が稀であり、こういう事象に対して逃げずに突破することにやりがいを感じる冒険心や耐久心
が何よりも重要である。サービス業であると、最少人数で拠点を立ち上げるケースが多く、製造業
よりも個人の力が重要となってくる。
○ 現地パートナーと本社の橋渡し人材:技術指導・品質管理に関するスーパーバイザー
【飲食K社】
国際部は数名で、海外展開、海外店舗のサポートをしている。国際部長は現場のアルバイトから
中途入社で、中国人スタッフと、新卒採用スタッフで構成。豊富な経験(シニア層)とか、現地の
食習慣に詳しいとか、行政とのパイプとか、あまり必要は感じない。どちらかというと現地パート
ナーのやる部分、サポート業務のような感じなので、知識がいらないということはないが高いクオ
リティは必要ない。
あまり言葉が話せなくても、行けば何とかなる、何とかするというような人材が今は必要かと思
う。よいパートナーと、その橋渡しをうまくしてくれるような人がいると一番よい。技術も持って
いるけど、そのパートナーとうまく橋渡しする。日本に軸足を置きながら、現地パートナーと本社
の間をつなぐ橋渡しみたいな役目をしっかりとやってくれる人材がいると安心する。
【アパレルJ社】
海外店舗(中国本土、クアラルンプール、シンガポール、台湾、香港)の運営形態は代理商(日
本でいうフランチャイズ)である。海外店舗の開発業務は社長、フォローアップなどの海外展開は
4名が携わっている。海外業務に携わる人は外から採らないで、社内で育てた人を充てている。4
名のうち1名は中国人で、他の3名は特に海外業務の経験があったというわけではなく、メインの
言語である中国語も流暢であるわけではなく、会話ができる程度である。海外に行き、品質管理や
販売指導をする人は、入社して2~3年、年齢では 20 代が多い。体調とか年齢とか考えると、若い
人が早く行って経験を積む方がよいと思う。処遇は日本にいるときとまったく変わらない。
2)採用や育成に関する取組
グローバル分野において求められる人材の採用については、人材紹介会社を経由して確保する場
合も、経営ビジョンを明確にして伝えることが特に中小企業では重要であるとの意見がある。
採用後に関しては、社内 SNS 等を活用して社員同士の情報共有を促進することで互いに学び合う
環境をつくっているとする企業がある。
81
○ 販路開拓人材・拠点立上げ人材
【製造業M社】
人材紹介会社を経由して確保している。中途採用では募集の仕方がポイントである。経営のビジ
ョンが明確でないと、優秀な人材は来ない。30 代以下の世代はお金のために働く人が少ない。主に
大手、中小でもかなり規模の大きい企業でないと 30 代でグローバルなフィールドで働けない。中小
企業が彼らを呼び込むためには、大企業で得られない経験を与えられることを明確なビジョンとと
もに示して説得する必要がある。しっかり説明できれば、会社の立ち位置(ポジション)以上の人
材を採ることも可能だと考えている。
【製造業M社】
どのような仕事をするのかの情報を共有して互いに学びあう姿勢を持てる環境づくりを進めてい
る。当社では社内 SNS を活用して、中国拠点のメンバーのやり方を国内の社員にも共有している。
成功した日本の社員を大幅にネット上でも祝福するなどの演出を行い、自社のグローバル化も手が
けている。
○ 現地パートナーと本社の橋渡し人材:技術指導・品質管理に関するスーパーバイザー
【生活サービスL社】
海外店舗を指導するトレーナーはまったく語学(英語・北京語・広東語)は話せず、赴任当初は
会社の費用で語学学校に行かせているが、技術を教えることに関しては、言葉が話せなくても(身
振り手振りで示しつつ)苦労しながらなんとかなる部分はある。
3)人活ビジネスの取組
グローバル分野の人材についての人活ビジネスの取組は特段みられない。英語面接の練習、英文
レジュメの添削は必要に応じて対応している事業者がある。
○ 必要に応じて英語面接等への支援
【人材ビジネスP社】
能力開発等は行っていない。英語面接の練習、英文レジュメの添削は必要に応じて対応してい
る。
4)異業種からの移動に関する人材ニーズと移動ルート
メーカーでの駐在経験があるなど、実際に海外でのプロジェクト管理や運用の経験、海外現地で
の契約や現地パートナーとの折衝経験のある人へのニーズが高い。
○ メーカーでの海外業務経験者から中堅中小企業メーカー、サービス業へ
【人材ビジネスP社】
メーカーでの駐在経験がある場合、海外展開を目指す中堅中小企業メーカーからも非常にニーズ
が強く、学び直しなども不要で仕事を紹介できる。紹介実績も数十件程度ある。メーカーでの海外
業務経験はサービス業界でも活きると思われる。サービス業においては同業界限定とすると人材確
保が難しいことから、業界経験が応募要件となることがメーカーの場合に比べてかなり少ない。
○ 海外駐在経験者へのニーズ
【人材ビジネスP社】
この 2 年程で増加している仕事は海外駐在員で、ほとんどの企業が経験者を求めている。同様
に、国内本社で海外子会社の管理や支援業務や海外向け営業企画業務も求人が増えている。こうし
た求人は、海外出張があったり、電話ベースで海外とやり取りができることが求められる。また、
82
国内業務がメインだが海外の案件もできるといった人材のニーズも 2 倍くらいの勢いで増加してい
る。これらの業務も当然、業務経験者が必要とされる。ただし、人材確保が深刻な地方のメーカー
においてはグローバル人材の採用に非常に苦労していることから、英語に抵抗がない方、英語アレ
ルギーがない方であればよいとする場合もある。
○ 海外プロジェクトへのエンジニアの活用
【人材ビジネスS社】
ODA のインフラ関連業務を行うコンサルティング会社で、海外プロジェクトの管理・運用経験が認
められ、エンジニアリング業界で活躍した 60 代が採用された例がある。また、海外メーカーが、日
本の技術を導入したいということでエンジニアリング業界の人材を確保するケースもある。昨今の
グローバル化の中、海外に工場や生産拠点を新設するメーカー等の企業では、語学力、契約書を読
み作成する能力、現地のコントラクターと折衝し事業を進めていく能力などを有するプラント業界
経験者への期待が大きい。新規分野として発展途上国での鉄道整備・都市計画等、大規模なインフ
ラ整備事業があり増加している。
④ ④ クリエイティブ
1)人材ニーズ/採用例
クリエイティブ分野において求められる人材としては、E コマースなどのウェブマーケティング
やエンジニア、コンシューマー向けのウェブサービスもしくはソーシャルゲームのエンジニア等が
ニーズが高いとされる。
IT業界全体として、技術の進歩が早いため常に学び続ける姿勢がある人材を求めるとの意見が
あるほか、現在はプログラミングを中心としたエンジニアのニーズが高いが、今後は収益に結びつ
ける事業運営を先導する人材のニーズが高まるだろうとの意見もある。
○ Eコマースなどのウェブマーケティング人材、エンジニア
【人材ビジネスO社】
BtoC の業種、なかでも小売、卸、通販会社、通信系企業で、マーケティング人材のニーズが増大
している。ウェブマーケティングに関していえば、E コマース、さまざまなマスメディアの連携がで
きる人が求められている。また、依然として、E コマースのエンジニアの人材ニーズも強い。
○ コンシューマー向けウェブサービス・ソーシャルゲームのエンジニア
【人材ビジネスT社】
ニーズが高い分野・領域の一つは、コンシューマー向けのウェブサービス、もしくはソーシャル
ゲームの技術者。
○ プログラミング中心から事業運営へニーズが移行
【人材ビジネスT社】
今のところ、プログラミングを中心としたエンジニア(プロジェクトマネジメント)のニーズが
強いが、今後はそれらを統括していき、事業の収益性にどのようにして繋げていくかというディレ
クションができる中堅以上(事業運営)のニーズが増えていく可能性もある。
83
○ IT 業界全般
【WEB N社】
会社として年齢制限をしていることはないが、技術進歩も早く、様々なことを学ばなければなら
ない業界であるため、新しいことにチャレンジし続け、学び続ける姿勢をもてなければ難しい。と
はいえ、IT 業界は、フレキシブルに働け、あまり技術がなくてもできる職種は存在し、仕事自体は
ある。また、その経験を積むことによって、IT 業界としての実務経験を重ねていくことが出来る。
2)採用や育成に関する取組
自社独自でWEBサイト、ブログ等も活用し、勉強会での交流やソーシャルネットワークを通じ
た人づてによる採用がマッチングの面でも有効であるとして、それに取り組む企業がみられる。
○ 口コミマーケティングで人材採用
【WEB N社】
当社 WEB サイトおよびブログを活用し採用活動を行っている。勉強会での交流、ソーシャルネッ
トワーク(wantedly 等)による人づて採用が中心となっている。技術者の交流においては、誰がど
のようなコードを書くかにより、その人の技術、能力が一目瞭然。勉強会に参加して、当社を好き
になってもらえたら、いわば「ヘッドハンティング」する。しかし、無理に追いかけはしない。こ
のような採用方法は、2011 年から採用している。
「口コミマーケティング」と言われるように、口コ
ミの力が大きい時代。採用に関しても口コミを活用している。現状、採用者と当社はうまくマッチ
ングし、退職者は発生していない。
3)人活ビジネスの取組
リサーチャーを配置し、様々な情報を用いて採用候補者を広く発掘すべく取り組む企業がある。
○ リサーチャーを配置して採用候補者を発掘
【人材ビジネスO社】
コンサルタントの有する人脈のほか、同社ではリサーチャーと呼ばれる専門職 15 名を配置して採
用候補者を発掘している。このほか、特許情報、文献調査、外部調査会社など様々な情報を用いて
候補者をリストアップしている。
○ フェイス to フェイスで適性診断
【人材ビジネスT社】
適性診断のテストは一切行わず、フェイス to フェイスで話をして、クライアント企業とスカウ
ト候補者の適性を判断している。クライアント企業側で適性診断や性格診断のテストを行っている
場合もあるが、それを評価の軸にしている企業は多くない。
4)異業種からの移動に関する人材ニーズと移動ルート
IT業界は異業種からの転職も可能であるが、即戦力としてエンジニアへの転職は難しいとの意
見がある。営業職であれば異業種からの転職も可能のようである。ウェブマーケティングについて
は業界経験が必要なため異職種からの転職は難しいが、分析系の職種であれば分析能力があれば異
業種からの転職も可能であるとの意見がある。
84
○ IT 業界営業職:他業種からの転職も可能
【WEB N社】
IT 業界は、異業種からの転職も可能であり、業種的制約はないと思う。一般の人でもスマホを使
いこなしたり、PC の操作に長けていたりと、IT に詳しい方がいる。ただ「詳しい」のレベルは、ユ
ーザーレベルであり、即戦力としてエンジニアに転職することは難しいと思う。IT 業界における営
業であれば転職できる可能性があるのではないか。またヘルプデスクやコールセンター等も、他業
種からでも転職しやすい分野ではないかと考えられる。たとえば、生命保険の外交員などは、IT リ
テラシーも高く、顧客対応もなれているので向いていると思う。
○ ウェブマーケティング人材:同職種内の異動が基本
【人材ビジネスO社】
ウェブマーケティングは、業務経験がなければできない専門性の高い業務であり、異職種からの
転換は現実的ではない。ただし、ウェブマーケティングの経験があれば、業種を問わず移動でき
る。例えば、広告代理店でウェブマーケティングをやっていた方は、事業会社にも十分対応でき
る。
○ 分析系職種:異業種からでも転職可能
【人材ビジネスO社】
デジタル分野のなかで、異業種からでも転職しやすいのは分析系の職種である。分析能力があれ
ば転職可能であるため、ポスドク、リサーチ会社、インターネット効果測定担当者、検索エンジニ
ア、シンクタンクなどから移動可能である。
85
(2)成長分野の人材ニーズに関するミドル層の移動可能性の検討
本項では、(1)で整理した成長分野において今後求められる人材ニーズ、求められる能力・ス
キル、採用例を踏まえた上で、スキルと経験を持つ社会人(ミドル層)の移動可能性について、①
年齢/②資格/③必要経験・スキル等から移動の要件を整理のうえで検討・評価する。
1)ヘルスケア領域
職種
移動の要件
【①年齢/②資格/③必要経験・スキル/④その他】
スキルと経験を持つ
社会人(ミドル層)の
移動可能性の検討・評価
①特になし
有資格者が優先されるた
②未経験者も受け入れ。有資格であると良いが、資格
め門戸は少ないが、理系
が無くても理系出身者であれば採用される可能性があ
出身者であれば可能性は
■CRA(臨床開
る。
ある。
発モニター職)
③特に求められるのは倫理観、コンプライアンスの部
分。また、数字を正しく説明できる論理性、入社後、
相当時間数(数百時間)の研修が行われることから、
高い学習意欲・学習態度が求められる。
①おおむね 30 代前半まで
30 代前半までであれば入
②採用してから教育期間のなかでMR資格認定試験対
社後研修の仕組みがある
■ MR ( 医 薬 情
策が可能と考えているため未経験者が多い。文系出身
ため未経験者でも移動し
報担当者職)
者の採用も多い。
やすい。
③入社後、相当時間数(数百時間)の研修が行われる
ことから、高い学習意欲・学習態度が求められる。
①30~50 代男性の採用ケースもみられる。
介護拠点の増加に伴い人
②ホームヘルパー2 級資格を基礎資格として、介護系
材需要のボリュームが一
資格の保有が望ましいが、資格はなくとも移動は可能
定程度見込める。年齢・
であり、入職後に資格取得が可能。
資格等の採用要件も比較
③有資格者/経験者と未経験者が、役割を分担し、即戦
的緩いため、ミドル層の
■現場介護スタ
力として業務に当たるため、未経験者でも活躍の場が
移動可能性が高い。処遇
ッフ職
ある。
面が課題。
④介護拠点の増加に伴い、一定ボリュームの人材需要
がある。拠点増加の基調を受けて、業界未経験、異業
種(飲食ビジネスや対人販売等)からの採用もみられ
る。処遇面が課題であるが、現場職から管理職層への
キャリアパスを示している企業もある。
■介護拠点・施
①マネジメント経験が重視されるため、ミドル層への
介護拠点の増加に伴い、
設のマネージャ
ニーズも高い。
マネジメント経験のある
ー職
②特になし
ミドル層への人材需要が
86
③内部人材からの管理職層への登用だけでは間に合わ
見込める。ただし、介護
ないため、予算管理、労務管理などマネジメントスキ
現場の理解に基づくマネ
ルを重視し、外部人材を採用。「施設長だから」といっ
ジメントスキルが必要と
たポジションパワーが通用しないため、スタッフの動
され、従来のマネジメン
機付けやコーチング等のスキルが必要。前職のマネジ
トスタイルからの切り替
メントスタイルを捨てる覚悟等があるか否かを問われ
えを必要とする場合もあ
る場合もある。
る。
④大手企業の再就職支援を通じて入職するケースもあ
る。
2)環境・エネルギー領域
職種
移動の要件
【①年齢/②資格/③必要経験・スキル/④その他】
スキルと経験を持つ
社会人(ミドル層)の
移動可能性の検討・評価
①30 代から 40 代
業界そのものが新しく経
②特になし
験者が少ないため、異業
■環境機器関連
③営業経験者のニーズが高い。
種の営業経験者の移動可
の販売職
④太陽光業界の経験者がそもそもいないため、大多数
能性が高い。
が異業種からの転職となる。業界動向や商品知識は入
社後の社内教育で対応するケースもある。
■スマートハウ
ス関連の企画・
営業職
■再生可能エネ
ルギーに関する
施工・管理技術
者
①30 代後半から 60 代前半。50 代がボリュームゾーン
住宅・不動産関連の経験
②宅建資格取得者が重視される。
者について移動可能性が
③前職は住宅会社、不動産関連の経験者。土地取得な
あり、特に宅建資格取得
どの交渉経験や営業経験も重視される。
者が移動しやすい。
①特になし
電気工事施工管理技士、
②メガソーラーや太陽光発電の補助金政策の進展に伴
電気工事士など資格が必
い、電気工事施工管理技士、電気工事士など資格を持
要。有資格者であれば、
った人材ニーズが急騰。
業種の転向先として移動
③上記②の有資格であることが前提
可能性がある。
④有資格の人材については、業界内で取り合いになっ
ている状況にある。
①40 歳代までが多い。
技術者について、40 歳代
■環境等に配慮
②特になしだが、技術者であることが前提
までを中心にソフトウェ
した装置技術者
③採用者の前職は、ソフトウェア経験者が多い。基幹
ア経験者からの移動可能
(組み込みソフ
系のシステム技術者よりも、ハードウェアもわかる技
性がある。
トウェア技術
術者が重視されている。ソフトウェアのスキルだけで
者)
なく、顧客である業界や会社に特有の品質保証に関す
る文化や慣習等への対応が求められる。
87
①特になし
資格・経験よりも、ベン
②特になし
チャースピリットに共感
③経験よりは、スキルやベンチャースピリット・会社
できる人材については、
■エネルギーマ
の将来の方向性に共感できる人材であるか否かが重視
移動可能性があるルート
ネジメントに関
されるケースもある。
の1つ。
する企画・コン
④大手企業等の子会社や共同出資により創業される社
サルティング職
歴の浅い企業からの人材ニーズが高い。転職してくる
業界はさまざまで、大企業、ベンチャー企業から採用
されている。エネルギーや電力関係からの転職者は少
ない。
3)中堅・中小企業のグローバル展開領域
職種
■販路開拓人
材・拠点立上げ
人材
移動の要件
【①年齢/②資格/③必要経験・スキル/④その他】
スキルと経験を持つ
社会人(ミドル層)の
移動可能性の検討・評価
①特になし
業種は未経験でも駐在経
②特になし
験・海外経験がある者、
③業種特化の知識よりも新興国等でのタフな修羅場経
たとえ経験はなくとも海
験や商習慣に関する知識等が重視されている。大企業
外で働くことに抵抗感が
と比べた中堅・中小企業で働くことのやりがいや違い
ない者については移動可
等に関するマインド面での整理、経営者の考え方の共
能性が高い。
感等が求められる。海外経験はなくとも、海外で働く
ことに抵抗感を持たない人が望まれる。
④メーカーでの駐在経験がある場合、海外展開を目指
す中堅中小企業メーカーからも非常にニーズが強い。
■技術指導・品
質管理に関する
スーパーバイザ
ー(橋渡し人
材)
①技術や管理システムについて技術的に指導できるだ
体調等を考えると若い年
けの専門性(技術・知識)を有することが必須とされ
代の方がよいとの意見も
ているので、相当の経験年数を要する業種もある。40
あるが、言語障壁は比較
代、50 代以上が多い。
的低いこともあり、技術
②特になし。
力を持つミドル層の移動
③技術を持っており、現地における合弁先やパートナ
可能性はある。
ーと本社の間の橋渡しをうまくしてくれるような人
材。言葉は話せなくても本人次第で対応は可能。
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4)クリエイティブ領域
職種
■ウェブマーケ
ティング人材
移動の要件
【①年齢/②資格/③必要経験・スキル/④その他】
スキルと経験を持つ
社会人(ミドル層)の
移動可能性の検討・評価
①特になし
業務経験がなければ移動
②特になし
は難しい。同じ職種とし
③BtoC の業種、なかでも小売、卸、通販会社、通信系
て別の業界への移動は可
企業における E コマース、さまざまなマスメディアの
能。
連携ができる人が求められている。
④ウェブマーケティングは、業務経験がなければでき
ない専門性の高い業務であり、異職種からの転換は現
実的ではない。ただし、ウェブマーケティングの経験
があれば、業種を問わず移動できる。例えば、広告代
理店でウェブマーケティングをやっていた方は、事業
会社にも十分対応できる。
①特になし。
プログラミング技術があ
②特になし。
るエンジニアであれば移
③プログラミング技術。たとえ IT に詳しくてもユーザ 動可能性はある。IT にユ
■コンシューマ
ーレベルであれば即戦力としての転職は難しい。技術
ーザーレベルで詳しい人
ー向けウェブサ
進歩も早く、学び続ける姿勢が必要。
が即戦力として移動する
ービス・ソーシ
④今のところ、プログラミングを中心としたエンジニ
ことは難しい。激しい変
ャルゲームのエ
ア(プロジェクトマネジメント)のニーズが強いが、
化への対応力も必要とさ
ンジニア
今後はそれらを統括していき、事業の収益性にどのよ
れる。
うにして繋げていくかというディレクションができる
中堅以上(事業運営)のニーズが増えていく可能性も
ある。
①特になし。
異業種からの移動も可
②特になし。
能。
③基本的な IT リテラシー。
■IT 業界の営業
④IT 業界は、異業種からの転職も可能であり、業種的
職等
制約はない。IT 業界は、フレキシブルに働け、あまり
技術がなくてもできる職種は存在し、仕事自体はあ
る。また、その経験を積むことによって、IT 業界とし
ての実務経験を重ねていくことができる。
(資料)各種資料及びヒアリング調査結果により、みずほ情報総研作成
89
(3)各成長分野への円滑な労働移動、マッチングのために必要な社会人の学びの要素
各成長分野への円滑な労働移動、マッチングのために、スキルと経験を持つ社会人がどのような
要素について学び直しを行うことが望ましいかについて、ヒアリング調査結果や意見懇談会・シン
ポジウム等で得られた意見をもとに整理した。この学びの要素については、業界特有のテクニカル
な要素だけではなく社会人として業界横断で活用できるスキルやマインド面にも着目すべきとの考
え方から、テクニカルスキル、ポータブルスキル(汎用可能性の高いスキルで、特に経験等が醸成
する視覚化しにくいスキル)
、マインド、資格・試験という4つの区分に分けて検討を深めた。
① ヘルスケア領域
1)テクニカルスキル
○ 少子高齢社会における成長産業としての医療・介護業界の可能性や動向についての理解
新たな職場となる医療・介護の業界が、少子高齢化がますます進む我が国社会において、いかに
社会的に重要性が高い業界であるかについての理解を持つことが、働く者の意識・意欲を向上させ
るという観点で重視されている。介護業界の動向を知っていく中で、自分達を取り巻く市場環境や
高齢化の中において生産性を高める必要性についても考えが及ぶという観点も指摘されている。
(ヒアリング調査結果から)
【介護 D 社】
・ 今後求める人材としては、ビジネススキルと同時に、今日本の置かれている環境の中で介護業界
は自分のためにも日本のためにもなるという気持ち、問題意識を持ってやれる人。高齢者は増え
るけれど、介護人材は増えない中で、いかに生産性を高めていけるかは、介護業界どこでも同じ
である。そうした広い視野を持てること、また、介護保険法に縛られながらやるものであるが、
その中で出来ることはどんどんやっていこう、というチャレンジ心を持つことなど、中途でも新
卒でも同様に求めたい。
○ 介護業務の特性、介護現場で必要とされる基本的な知識・技術の習得
介護業界で働くためには、現場スタッフだけでなくマネージャー候補者についても、まずは介護
業務の特性や介護の現場がどのように動いているのかについて理解し、基本的な知識・技術を持つ
ことが必要である。介護事業者においては、マネージャー候補者を中途採用する場合も、現場理解
のためにまずは現場での業務経験を入職当初に持たせる取組がみられている。
○ マネジメントスキル(管理ポストの場合)
介護保険制度のもとで、限られた介護報酬の中で高い質のサービスを提供する必要があることか
ら、マネージャー層についてはマネジメントスキルが求められる。要員管理、労務管理、経費管理
ができる能力が必要である。中には、介護版MBAプログラムのようなものがあるとよいという意
見もあった。
また、介護の現場で働くスタッフは技術・専門職であり、それぞれ専門意識が強く熱意ある人も
90
多いため、それらの現場スタッフを動かす力も必要となる。この際には、大企業のラインで働くよ
うな場合にみられるポジションパワーが効かないことも往々にしてあり、このような特性への理解
も求められるとの意見がある。
(ヒアリング調査結果から)
【介護 D 社】
・ 一般的な内容の教育・研修は外部機関に出して、内部でもつ教育・研修は自社に特化したもの
(事業計画、戦略など)という形で出来るとよい。ビジネス、コーチング、改善のノウハウ、介
護業界の動向など、介護用のカリキュラムを開発してほしい。
2)ポータブルスキル
○ 顧客の細かな変化に気付く観察力・変化に応じて慎重に仕事を進める実行力(現場スタッフ)
医療や介護の現場においては、顧客の状態変化は頻繁に、また急に生じることも多く、そのよう
な顧客の細かな変化に気付く観察力が現場スタッフには求められている。
また、それらの変化に応じて慎重に仕事を進めていく実行力も現場スタッフに求められており、
着実に物事を責任を持って遂行する能力が求められる。
○対人サービスセンス(
「サービス」として仕事をする)
・接遇技術
介護保険制度の創設など福祉制度改革のもとで、利用者主体の「サービスとして」の福祉が求め
られており、この理念のもとで利用者の尊厳を尊重し、自立を支援する基本スタンスで仕事をする
ことが求められている。利用者サイドも、世代が変わっていく中で、利用者の権利としてサービス
に求める水準が高くなってくる傾向があり、これに対しサービス事業者としての対応が求められて
いる。
このような中、対人サービスセンスや接遇技術があることを人材に求める傾向があり、接客業の
経験者等が円滑に入職し、活躍している事例も聞かれた。
(ヒアリング調査結果から)
【介護 E 社】
・ 平成 14 年の制度改定以降、福祉サービスにおける自立支援と尊厳が重視され、基本的な接遇と
利用者視点で自らがサービス業であるという意識をしっかり持っていないと受け入れられない時
代になった。接遇技術を身につけ、利用者に質の高い介護サービスを満足してもらう。介護技術
や知識は当然で、それ以前に接遇の基本がないとだめな時代が近い将来やってくる。
3)マインド
○ 倫理観・達成志向
医療・介護の業界においては、利用者本人が十分に意思決定をできない場面も多く、一つの間違
91
いが人の命に影響してしまうようなケースもある。また、それぞれのスタッフが単独で行動する場
面も多く、業務の現場が見えづらい側面もある。そのような中で、倫理観や達成志向の高さが人材
には求められている。
(ヒアリング調査結果から)
【医療 A 社】
・ 中途採用の際に見るポイントは、達成志向の高さとコミュニケーション能力である。また、特に
強く求めているのは倫理観、コンプライアンスの部分であり、これは CRA 及び CRC であるとよ
り必要性が高くなる。また、数字を正しく説明できる論理性も求められる。
○具体的な現場イメージ
例えば介護という仕事自体が「人のため」というイメージで入職前に好印象に思われているもの
の、実際に仕事としてやる場合には利用者とのトラブルや手間がかかる場面、不快さを感じる場面
など、多々難しい点があることについて、転職を決める前に具体的にイメージできていることが、
入職後のミスマッチを防ぐ意味においても重要であるとの意見がある。
現場イメージがないためのミスマッチを防ぐため、面談の最初にその職種についてのオリエンテ
ーションを時間をかけて実施したり、希望者については入職前に現場見学の機会を設けるなどの取
組をしている企業がある。
(ヒアリング調査結果から)
【医療 A 社】
・ MR の仕事のイメージが浅く、それを理解しておらず仕事に合わないことが起こる。これは常に
課題であると言える。当社では、その課題を克服するため、面談の最初に、その職種についての
オリエンテーションを 20 分くらい入れて、面談に入っている。
○ 以前のマネジメントスタイルからの切り替え(管理ポストの場合)
介護の現場で働くスタッフは技術・専門職であり、それぞれ専門意識が強く熱意ある人も多いた
め、それらの現場スタッフを動かす力も必要となる。この際には、大企業のラインで働くような場
合にみられるポジションパワーが効かないことも往々にしてあり、このような特性への理解も求め
られるとの意見がある。
(ヒアリング調査結果から)
【介護 E 社】
・ 異業種からの移動者は多いが、みな非常勤からスタートして経験を積み、信頼を得ている。その
部分を飛ばして管理職というのはやはり難しい。管理職採用を希望するのは 40-50 歳代だが、前
職のプライドが捨てきれずうまくいかないケースも多々ある。介護ヘルパーは技術・専門職のた
め、実務経験の長い先輩が尊敬される徒弟制度のような世界である。そこに知識不足の年上の管
理者が急に指示しても、指示の中身以前に拒否されることも多い。
92
4)資格・経験
○ メディカル職は医療系の資格保有が必要(MRは資格・経験なしでも若ければ入職可能)
メディカル職は医療系の資格(MR、薬剤師、臨床検査技師等)の資格保有が必要であり、これ
を事前に持っておくことが望ましいが、MRは資格・経験なしでも若ければ入職可能で、入職後に
企業内の教育研修制度を活用して資格をとることができる。
(ヒアリング調査結果から)
【人材ビジネス R 社】
・ 3~6 ヶ月間、MR の資格取得のプログラム(特に営業関係)を文系の未経験者に対して行って資
格を取ることができれば、彼らの採用も増えてくると考えられる。
○介護職はヘルパー2級資格(比較的短期間で取得可能)
介護職は、現場で働くために少なくともヘルパー2 級の資格が必要であるが、これは比較的短期
間の研修によって取得できる資格である。企業によってはこの資格を入職後に取得することを支援
している。
93
② 環境・エネルギー
1)テクニカルスキル
○ 環境ビジネスそのものの事業構造に関する知識(国の制度やビジネスの仕組みの理解)
環境ビジネスは、川下から川上産業まで多様な事業モデルを有している。再生可能エネルギー固
定価格買取制度(FIT : Feed in Tariff)のスタートや再生可能エネルギー施設の設備投資等に係る補
助金等の制度も拡充しつつある中、環境ビジネスの事業構造に関する知識等を習得することが重要
となる。
○ 太陽光など再生可能エネルギーの市場動向についての知識
太陽光発電関連の製品営業や BEMS(ビル管理システム)の営業等といった基本的な知識から、
PPS(契約電力が 50kW以上の需要家に対して一般電気事業者が有する電線路を通じて電力供給を
行う事業者、いわゆる小売自由化部門への新規参入者)のようにファイナンス・会計知識などのベ
ースがしっかりとし、さらに顧客の業界動向等をしっかり理解していないと話が進まない、広範囲
の知識が必要な職務もあり、学ぶべき知識は幅広い。
(ヒアリング調査結果から)
【家電量販 F 社】
・ 太陽光事業の入社導入研修では、入社から 4 日間集合研修を行い、太陽光発電の基本システム・
素材知識・顧客へのアプローチ方法を学ぶ。その後、配属店舗にて就業。宅建アドバイザーも商
品知識は違うが、流れは同様である。
【エネルギーH 社】
・ PPS(電力の小売代行業務)の営業は法人のお客様に対し、「PPS」代理業務、PPS の開業支援を
行うもので、長いスパンで多方面からのアプローチが必要である。そのためには、エネルギーの
知識はもちろん、ファイナンス・会計知識などのベースがしっかりとし、さらにお客様の業界動
向等をしっかり理解していないと、お客様と話にならない。
【人材ビジネス S 社】
・ 再生可能エネルギーは新しい産業であるため、いわゆる「経験者」がほとんどいない。このた
め、既存メーカーの応用可能な知識やスキルを持つ技術者が、
「比較的近い経験を有する者」と
して捉えられ、求人企業側からのニーズがある。例えば、「電気知識が少しある土木技術者で資
格がある人材」を家電メーカー等が太陽光・風力発電事業のために採用するケースがある。
○ 組込みソフトウェア、制御技術等に関する知識・実務経験
いわゆるスマート家電に代表されるように、家電や自動車などは、消費者の多様な嗜好への対応
や使い勝手の良さといった付加価値が求められており、その実現には、ハードウェアとソフトウェ
アの連携が重要となる。環境や節電等に配慮した製品需要の高まりにつれて、「ハードウェア目線
でソフトウェア開発を考えることの出来る」人材のニーズが高い。
94
(ヒアリング調査結果から)
【人材ビジネス Q 社】
・ 制御系技術者は電機・機械系の知識等が必要で、人材育成にも時間がかかるため、実務経験者の
みを希望する。
2)ポータブルスキル
○ 業務に関する関連動向のコンスタントな情報収集力及びその習慣
環境・エネルギー分野は、技術革新のスピードや競争環境、国の制度等の変化が目覚しく、絶え
ず情報収集・整理を行っていくことが求められている。海外も含めたインターネットサイト情報や
業界誌等について目を配ることが習慣づいていること、業界動向に関する勉強会等の情報について
把握できる状態にしておき、社外人脈から情報を取ること等のスキル・習慣が活きてくる。
○ 新たなサービスや商品に関して課題を設定し、仕事の進め方を決定していく力
環境・エネルギー分野におけるビジネスは、問題を設定し、仕事(ビジネス)自体をみずから作
っていく過程を経て、事業化へと繋がっていく。日々の仕事が決まっているわけでなく、仕事の進
め方のブラッシュアップも含めて、創意工夫していくスキルが必要となってくる。
(ヒアリング調査結果から)
【エネルギーH 社】
・ 例えば電力の需給管理業務の企画・営業系はビジネスモデルが決まっているわけではないので、
新しいものを作り上げていくための創造性・革新性みたいなものを持っている方が望ましいと思
う。
○ 利害の対立する関係者との調整・合意の獲得
環境・エネルギー分野では、スマートコミュニティ・スマートシティプロジェクトのように多様
な事業者がそれぞれの技術や販路、ネットワークをコンソーシアム形式で進めていく事業が進みつ
つある。こうしたプロジェクトへの参画は、成長機会であるのと同時に、大きな方向性では合意す
るが、それぞれの利害が対立する場面も生じる可能性があることから、合意までの粘り強い調整な
どのスキルが必要とされる。
○ 顧客のニーズを育てながらゴール(契約)まで導くスキル
営業スキルは、比較的ポータブルなスキルと考えられているが、パッケージ化された商品営業と
ソリューション営業では求められるスキルが異なる。ビジネスと直結しない顧客ニーズも含めて、
時にはそのようなニーズにも対応しながら、顧客のニーズを育てていき、契約まで導くスキルが求
められる。
95
(ヒアリング調査結果から)
【建設・住宅 I 社】
営業における即戦力とは、実務経験が近いということである。たとえば、同じ住宅営業でも、ベ
ースとなる考え方、サービスの仕方、お客様への接し方などやり方そのものやそこで注意してい
ることは異なる。たとえば自動車業界は、われわれと近い業界に見えるが、商品のあり方が異な
り、そのために求められる能力も大きく異なる。自動車の場合、出来あがった商品をプレゼンす
る能力が必要だが、住宅の場合、請負になるので、お客様のニーズを聞き出して、それを形にし
ていくため、課題解決能力が必要となる。
3)マインド
○ 新たな会社の組織文化への理解
中途採用者に対して、自社の理念や組織文化に対して理解と納得を求める会社は多い。テクニカ
ルスキルよりも、先ずマインド面での改革を促す企業ケースもあり、会社文化に対して柔軟に馴染
んでいくことを求めている。
(ヒアリング調査結果から)
【建設・住宅 I 社】
・ 営業については、即戦性が高い人が求められる。教育する必要があるのは、当社の理念やビジョ
ンで、そこが合致すればよい。
・ 2 泊 3 日の「キャリア採用者研修」があり、当社のビジョン、「DNA」のような部分を学んでも
らうことを大事にしている。創業者の記念館の見学、社の歴史など新入社員教育と変わらない部
分を大切にしている。
【人材ビジネス T 社】
・ 会社の文化(マインドセット)を意識して転職しないと、結果的に本人にとっても良くない転職
となる可能性が高いと考えている。
○ 新たなビジネスを立ち上げる起業マインド
環境・エネルギー分野では、まだ産業として過渡期であり、同業同職種でのキャリア採用が当然
なわけではなく、業務未経験であっても、起業マインドを有し、会社の将来性について強く共感し、
牽引していく意識のある人材が求められている。
(ヒアリング調査結果から)
【エネルギーH 社】
・ 業界未経験でも受け入れるというスタンスで採用を行っており、職種転換となる方も受け入れて
いる。経験よりは、スキルやベンチャースピリット・会社の将来の方向性に共感いただける方
等、ハートの部分を重視して採用を行っている。
96
4)資格
○ 一部技術者には資格が必要(電気主任技術者等)
環境・エネルギー事業において求められる技術者またはエンジニアの一部については、電気主任
技術者等の資格が必要とされる。特に、建築設備系の有資格者のニーズが多いが、その有資格者が
足りないとの指摘もある。
(ヒアリング調査結果から)
【人材ビジネス S 社】
・ 募集要件で求められる資格は、国内の求人では電気主任技術者が多い。海外業務では資格が要件
となることはないが、より高い業務知識や経験等が求められる。
【建設・住宅 I 社】
・ どこもそうだと思うが、資格を持った建築設備系の人員がものすごく少ない。今、メガソーラー
や太陽光発電の補助金政策があるが、その制限があり電気施行管理技士、第二種電気工事士など
資格を持った人しか施行できない。そのために、こうした人たちについては業界内で取り合いに
なっている状況にある。
・ 早期退職になった方でも、当社の事業領域は広いので、電気の知識を持つ人が環境エネルギー部
門や研究開発部門でなど、違う形で活躍できる可能性もある。それを見出しながら雇用の機会を
創っていけると考えている。
○ エネルギー管理士
エネルギー業界においては、規定量以上のエネルギーを使用する工場についてはエネルギー管理
士の資格を有するエネルギー管理者の選任が義務付けられており、その有資格者が求められている。
○ JASA組込みソフトウェア技術者試験(ETEC)
組込みソフトウェア業界においては、JASA組込みソフトウェア技術者試験が1つの有効な資
格となっている。
97
③ グローバル
1)テクニカルスキル
○ 語学力
語学力については、現地での仕事を進める、あるいは海外パートナーとコミュニケーションをと
るために最低限のスキルは必要であるとされるが、学ぶ意欲があれば入職段階ではそこはさほど重
視されていない。特に技術指導・品質管理等の指導者等で従事する場合には、語学力が多少不足し
ていても、技術を具体的に指導できればといという点で、語学力はなくともなんとかなるという捉
え方がされている。
ただし、語学力があれば応募可能な求人が格段に増えるという側面はある。
(ヒアリング調査結果から)
【生活サービス L 社】
・ トレーナーはまったく語学(英語・北京語・広東語)は話せず、赴任当初は会社の費用で語学学
校に行かせているが、技術を教えることに関しては、言葉が話せなくても(身振り手振りで示し
つつ)苦労しながらなんとかなる部分はある。
【人材ビジネス P 社】
・ 英語力があれば応用が利くため、応募可能な求人が格段に増える。英語を使った業務経験を求め
られることが多いが、英語を勉強していたというレベルでも認めてもらえるケースもある。
○ 当該国・地域に関する経験・知識(商習慣など)
、行政等とのネットワーク・人脈
業種に関する知識よりも、海外展開を図っている当該国や地域に関する経験や、商習慣などにつ
いての知識、行政や現地関係者とのネットワーク・人脈などが重宝されるようである。
(ヒアリング調査結果から)
【人材ビジネス P 社】
・ 外部からの人材確保には“業種”の知識よりも“対象国”に詳しい人材が求められるという一面
があるが、“業種に詳しいことが第一前提で、現地のこともわかる人材を”というニーズも相当
多い。特にターゲット国がはっきりしている求人では、その国の経験が条件にされることが多
い。
○ 技術指導や品質管理の場合、その技術・管理システムについての熟達
技術指導や品質管理の場合には、先に述べたように語学力より前に、まずはその技術や管理シス
テムについて技術的に指導できるだけの専門性(技術・知識)を有することが必須とされている。
(ヒアリング調査結果から)
【建設・住宅 I 社】
・ 当社のグローバル戦略は、日本品質の建設技術を海外に輸出するという発想にあるので、日本で
98
仕事をし十分それを理解した人を現地に派遣して、施工会社を教育しながらやっていくという方
法になる。
【人材ビジネス P 社】
・ 品質管理については、日本の品質管理の信頼性が高いことから日系企業だけではなく現地資本の
企業からも日本人の採用意欲が高い分野であり、比較的業種をまたいで移動しやすい。品質管理
は数字で結果が出る業務であるため、アピールやコミュニケーションが苦手な日本人でも評価し
てもらいやすいのだと考えられる。また、工場の労務管理業務経験も応用が利く範囲が広い。現
地人の付き合い方、動かし方などは、異業種であっても経験が活きる。
2)ポータブルスキル
○ メンバーや部下に高い目標を達成させるため、厳しい内容を納得感高く伝えていく力(技術・品
質管理)
海外展開にあたっては、何もないところから拠点を立ち上げ、かつ高い品質管理を求められると
いった高い目標が掲げられることも多く、この目標達成についてメンバーや部下に達成の意義と方
法論について納得感高く伝え、実行を促していく力が求められる。
○ 多様性の受容、想定外の変化に耐えうる力、臨機応変に対応できる力
海外における業務では、その地域の価値観や文化を理解し、多様性を受容することが求められる。
また、国内では想定されないような事態が生じることもあり、そのような想定外の変化に耐えうる
力、臨機応変に対応できる力が求められている。
(ヒアリング調査結果から)
【生活サービス L 社】
・ 海外にいる日本人スタッフのうち、事務職は全員他社(輸入雑貨、石油販売など前職)での海外
赴任経験者である。また、学生時代に留学経験もある人が多い。海外では思い通りに事が進むこ
との方が稀であり、こういう事象に対して逃げずに突破することにやりがいを感じる冒険心や耐
久心が何よりも重要である。サービス業であると、最少人数で拠点を立ち上げるケースが多く、
製造業よりも個人の力が重要となってくる。
【飲食 K 社】
・ 技術にはこだわるけど住む場所にはこだわらない、というようなオールマイティーさが必要だと
思う。海外に行くと「なぜここでは出来ないのか」と日本を引きずっている。それでは不幸せだ
から、うまく切り替えて「仕方がない」と思えるような大らかさというか、適応が必要だと思
う。
○ 時間見合いでかなり負荷の高い仕事をこなす力
海外展開においては、比較的短期間にスパンを区切って拠点の立ち上げや販売網の構築などをミ
ッションとして活動することも多いため、そうした時間見合いの中でかなり負荷の高い仕事をこな
99
す力が求められる。
(ヒアリング調査結果から)
【製造業 M 社】
・ 現在、①プロジェクトの管理、運営の経験があること、②グローバルマインドをもっているこ
と、③英語または中国語が日常レベル以上話せること、という条件で求人を出している。プロジ
ェクト管理、運営の経験を重視するのは期間を決めてその中で作業を行うことが求められるから
である。グローバル展開では、必要な仕事が転々と変わるため、プロジェクト単位で対応できる
人の親和性が高い。当社ではプロジェクトの形にして期限内に何かしらのアウトプットを出すこ
とを求めている。
○ローコンテクスト文化に対応した指示力
海外の対象国の中では、日本とは異なって、宗教や歴史的背景、教育環境が多様な文化があるこ
ともあり、そのようなローコンテクスト文化の中において、部下・メンバーあるいは現地パートナ
ーの文化的背景に配慮し、画一的ではない指示を出すことができる力が求められる。
○犠牲を伴う決断経験や失敗経験から培われた結果責任を受け入れる力
海外業務の中では、決して当初の目論見どおりに物事が進むわけではなく、様々な想定外の事態
に対してそこで限られた情報の中で決断を下したり、何らかの失敗を覚悟して行動したり、あるい
は失敗そのものを受け止めなければならない事態が発生する。そうした事態が生じることに備えて、
犠牲を伴う決断経験や失敗経験から培われた結果責任を受け入れる力を持つ人材が望ましいとされ
る。
(ヒアリング調査結果から)
【製造業 M 社】
・ 社長が自分よりスキルや知識があるわけでもない中小企業の場合は、自分で完成させることが必
要である。上司がいることを前提に仕事をしてきた人には厳しいかもしれない。こうした環境で
は意思決定に迷ったときに判断を下せる拠り所をもっているかが重要である。仕事の内容も重要
であるが、決断経験をどれだけ高めてきたかということも必要な要素である。
3)マインド
○ 起業家マインド、アントレプレナーシップ(前例がないことにチャレンジする精神)
今の時代において特に中堅・中小企業で海外展開を図る際には、そこで動き始める人材が海外事
業展開の先陣を切って、未知の領域にチャレンジする位置づけになることが多い。その意味におい
て、事業のリスクを意識しながらも、起業家マインドを持って前例がないことにチャレンジする精
神が求められる。
100
○ どこでも生きられる逞しさ
気候、食事、文化、生活スタイルなどが日本とは異なる海外において、どのような場所であって
も前向きに生きることができる逞しさが必要との意見がある。
○ 相対的な文化観、異文化の尊重
自分自身の文化、また相手国の文化を相対的に理解し、異文化を尊重することが重要である。商
慣行もまた文化に根付いており、文化への理解なくしてはビジネスとして成功し得ない。
(ヒアリング調査結果から)
【建設・住宅 I 社】
・ 海外展開を担う人材に、基本として求めるものは国内と同じであるが、海外では「修羅場」のよ
うな経験をすることは間違いないので、新卒でも新卒なりの「修羅場」の経験や、キャリアでも
キャリアなりの前職での苦労の経験が求められる。文化、法律、考え方の背景となる歴史等すべ
てが異なる人たちとともにやっていくには、タフさが必要である。
4)資格
○ 語学力を証明する資格
ビジネス上必要とされる語学力を証明する資格の保有者が有利ではある。
101
④ 円滑な労働シフトに向けて必要とされる要素(総括)
1)成長分野別・スキル分類別にみた必要な要素
成長分野別にみた有望な人材の供給先へ円滑にシフトするための要素について、①テクニカルス
キル、②ポータブルスキル、③マインド、④資格の面から整理すると以下のようになる。
図表 円滑な労働シフトに向けて必要とされる要素例(成長分野別)
①テクニカルスキ
ル
ヘルスケア分野における
環境・エネルギーにおけ
グローバル展開における
有望供給先の場合
る有望供給先の場合
有望供給先の場合
○少子高齢社会における
○環境ビジネスそのもの
成長産業としての介護
の事業構造に関する知
(あればよいが、技術指
業界の可能性や動向に
識(国の制度やビジネ
導・品質管理等の分野で
ついての理解
スの仕組みの理解)
は最優先項目ではない)
○介護業務の特性、介護
○太陽光など再生可能エ
○当該国・地域に関する
現場で必要とされる基
ネルギーの市場動向に
経験・知識(商習慣な
本的な知識・技術の習
ついての知識
ど)、行政等とのネッ
トワーク・人脈
得
○マネジメントスキル
(管理ポストの場合)
・要員管理、労務管
○語学力
○組込みソフトウェア、
制御技術等に関する知
識・実務経験
○技術指導や品質管理の
場合、その技術・管理
理、経費管理、現場
システムについての熟
スタッフを動かす力
達
(ポジションパワー
が効かないことへの
理解)
○介護分野に特化した経
営管理に関する知識等
○顧客の細かな変化に気
○仕事に関する関連動向
○メンバーや部下に高い
付く観察力(現場スタ
について抑えるコンス
目標を達成させるた
ッフ)
タントな情報収集力・
め、厳しい内容を納得
習慣
感高く伝えていく力
○顧客の変化に応じて、
②ポータブルスキ
ル
慎重に仕事を進めてい
○新たなサービスや商品
く実行力(現場スタッ
に関して課題を設定
○多様性の受容、想定外
フ)
し、仕事の進め方を決
の変化に耐えうる力、
定していく力
臨機応変に対応できる
○対人サービスセンス
(「サービス」として仕
事をする)
・接遇技術
○能力や経験が大きく異
○利害の対立する関係者
(技術・品質管理)
力
との調整・合意の獲得
○時間見合いでかなり負
○顧客のニーズを育てな
荷の高い仕事をこなす
102
ヘルスケア分野における
環境・エネルギーにおけ
グローバル展開における
有望供給先の場合
る有望供給先の場合
有望供給先の場合
なるメンバーの動機付
がらゴール(契約)ま
けを行う力
で導く力
力
○ローコンテクスト文化
に対応した指示力
○犠牲を伴う決断経験や
失敗経験から培われた
結果責任を受け入れる
力
○倫理観・達成志向
○具体的な現場イメージ
(実務体験等)
○以前のマネジメントス
③マインド
○新たな会社の組織文化
への理解
○新たなビジネスを立ち
上げる起業マインド
タイルからの切り替え
○起業家マインド、アン
トレプレナーシップ
(前例がないことにチ
ャレンジする精神)
○どこでも生きられる逞
(管理ポストの場合)
しさ
○相対的な文化観、異文
化の尊重
④資格
○メディカル職は医療系
○一部技術者には資格が
の資格保有が必要(M
必要(電気主任技術者
Rは資格・経験なしで
等)
も若ければ入職可能)
○介護職はヘルパー2級
資格(比較的容易にと
○語学力を証明する資格
○エネルギー管理士
○JASA 組込みソフトウェ
ア技術者試験(ETEC)
れる)
資料:各種ヒアリング結果及び「成長分野を拓く人材のキャリアチェンジと多様な人材の活躍による事業展開の新たな
可能性」シンポジウム(2013 年 3 月 14 日開催)登壇資料を参考に、みずほ情報総研作成
103
第4章 調査のまとめと今後の取り組むべき課題
(1)ミドル層の成長産業への円滑なシフトに求められる事項
今後、成長分野への円滑な労働シフトを実現するために、下記に示す要素を踏まえた取組が求め
られる。
図表 ミドル層の成長産業への円滑なシフトに求められる要素
要素1 キャリアのたな卸し、適性・
能力の客観的把握
要素2 成長分野の市場動向、労働市場動向の把握
要素3 キャリアを繋いでいくための仕事観の醸成
要素4 アンラーニング、マインドセットの改革
要素5 専門技術に関する必要な教育・
研修サービス(ラーニング)
要素6 ライフスタイルの変化への対応
104
【要素1】キャリアのたな卸し、適性・能力の客観的把握
これまでも、職業紹介事業者や再就職支援事業者等を中心に、転職希望者を対象とした適性診断、
能力評価については、SPI やエニアグラム、認定試験等の既存のツール等が活用されているが、特
に能力の客観的評価については、専門・技術スキルだけでなく、汎用可能なポータブルスキルにつ
いても転職者自身が気付き、成長企業の経営者や採用担当者に対して、説得力のある自己 PR が出
来るようなサポートを行っていく必要があるだろう。その際、キャリアのたな卸しの過程において、
ポータブルスキルの蓄積や発揮に関して、転職希望者自身が気付くようなワークシート活用やコー
チング手法など、創意工夫が求められるところである。
(関連する具体的事例・取組例)
・ 2012 年に設立された「一般社団法人 人材サービス産業協議会」では、「キャリアチェンジプロ
ジェクト」を立ち上げ、ポータブルスキルの類型化、言語化、それらを活用したマッチング手法
開発に取り組んでいる。
・ リクルートキャリア社では、介護業界の活躍人材の要件について SPI2 を用いて、「介護職とし
て活躍している人は『慎重・繊細タイプ』に多い」との結果を得て、採用企業や求職者に対して
情報提供を行い、マッチングに活かしている。
・ ヒアリング調査の対象とした中小製造業 M 社では、グローバル展開に関するキャリア採用の人
「即戦力ス
材に際して、採用コンセプトを「グローバルリテラシー」、「事業成長・修羅場経験」、
キル」に整理して、採用時には、転用可能性が高い「グローバルリテラシー」、「事業成長・修羅
場経験」を重視している。
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【要素2】成長分野の市場動向、労働市場動向の把握
「(1)調査結果のまとめ
①スキルと経験を持つ社会人の供給に関する有望ルート」で整理し
たように成長分野の企業は、新規事業・サービス創出に係る人材や既存事業の事業拡大フェイズに
おいて、積極的にミドル層のキャリア採用を展開している。しかしながら、面接時においてイメー
ジと違っていたり、また入職間もなく離職に至ったりと、少なからずミスマッチが生じているのも
事実である。各企業は、そうしたミスマッチを縮小させるために、業界の成長可能性や労働市場の
動向について研修を行っているが、個人としても転職活動中に基礎的な情報については把握してお
いた方が望ましい。
また、このことはミスマッチを防ぐためだけではなく、転職可能性を高めていくためにも有益で
ある。例えば介護業界では、資格が無くても始められる職務があり、また仕事をしながら資格取得
のための支援を受けることが出来たり、前職と比べて大きく賃金が下がらないように、一定期間の
給与保障を行ったりと各社が工夫を行っている。
(関連する具体的事例・取組例)
・ ヒアリング調査の対象とした介護 D 社では、中途採用者の入社時研修では、介護業界につい
て、会社の基本方針、キャリア、ISO などをテーマに研修を実施している。
・ ヒアリング調査の対象とした介護 D 社では、今後求める人材としては、ビジネススキルと同時
に、今日本の置かれている環境の中で介護業界は自分のためにも日本のためにもなるという気持
ち、問題意識を持ってやれる人材、介護人材は増えない中で、いかに生産性を高めていけるかと
いう広い視野を持つ人材を欲している。
・ インテリジェンス社では、新エネルギー領域への就業を希望する人材をインテリジェンスにて雇
用、独自の教育プログラムにて人材開発を行い、企業へ派遣している(新エネルギー産業専門人
材ソリューションサービス)
。
・ ヒアリングの対象とした医療 A 社では、MR の仕事のイメージが浅く、それを理解しておらず仕
事に合わないことが起きており、その課題を克服するため、面談の最初に、その職種についての
オリエンテーションを 20 分くらい入れて、面談に入っている。
・ リ ク ル ー ト キ ャ リ ア 社で は 、 介 護 業 界 の イ メー ジ を 変 え 人 材 流 動 化を 促 す こ と を 目 的 に
「HELPMAN!●JAPAN」プロジェクトを立ち上げ、出版社と連携し、コミックと連動して介護
の仕事の真実を、求職者向け、採用企業向けに発信している。
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【要素3】キャリアを繋いでいくための仕事観の醸成
一定のスキルと経験を身につけたミドル層が、成長分野への企業へシフトしていく際には、想定
外の変化に対応していく仕事観が重要となる。成長分野企業へ転職するミドル層の中には、企業が
発展途上の段階であり、いったんは賃金や職位等が下がった上で入職する者も少なくない。そうし
た状況下で、環境変化に柔軟に対応できる仕事観が必要となる。こうした仕事観は、企業内におい
て職務遂行する中で醸成されるだけでなく、類似の職種に就く人材との交流や他流試合の過程で気
付き、刺激を受けるケースも多い。なお、仕事観は意識をするだけでなく、それに裏打ちされた言
動が習慣化されることにより、骨太なものとなる。
また、成長企業の中には、キャリア採用者に対して、直属の上司ではなく、他の組織でキャリア
を繋いでいる先輩等をメンターとして相談できる体制を整えていくなどの策を講じているケースも
ある。
(関連する具体的事例・取組例)
・ 人材ビジネス T 社では、現職やキャリアアップに対しての問題意識の高い人を集める手法とし
て、技術者同士が情報交換できる交流会やビジネススキル UP を目的とした講習会(キャリアラ
ボラトリー)を行っている。
・ 高橋俊介教授(慶應義塾大学特任教授)は、6,000 人以上の個人調査データを用いた結果、全般
的に仕事観(規範的仕事観、功利的仕事観、内因的仕事観)が希薄なのは、年代別に言うと 40
代であると指摘しており、想定外変化に対応するためには健全な仕事観の醸成が急務であると警
鐘を鳴らしている。
・ ヒアリング調査の対象とした介護 E 社では、同じような境遇、もしくは同じような志向性を持
っている方々に対して、先輩を紹介し、接点を持たせている。自分がこの会社で 5 年、10 年や
っていくにあたって、キャリアであったり、価値観であったりというものが描けるかどうなのか
ということに対して、中途社員の方々の定着というところに目を向けながら、施策を打ってい
る。
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【要素4】アンラーニング、マインドセットの改革
一定のスキルと経験を身につけたミドル層のキャリアチェンジに必要なこととして、アンラーニ
ングやマインドセットの改革がある。アンラーニングとは、これまで身についてきた自らの思考様
式や行動様式をいかに解きほぐすかということである。そのためには、自分自身の置かれている状
況やこれまでに行ってきたことを批判的に振り返る「リフレクション(内省)」のプロセスが必要
である。いったん職場や日常業務から離れて、冷静に問い直す機会が求められている。
このようなプロセスを経ることによって、成長分野企業へシフトし問題に直面したときも、従来
とは違う方法で解決に当たる態度が生まれたり、仕事の醍醐味や自身の持ち味の活かし方について
幅が広がることが期待される。成長分野の企業の中には、入職後にいち早く、アンラーニング、マ
インドセットの改革に注力しているケースもみられる。
(関連する具体的事例・取組例)
・ 介護 B 社では、違う業界から、現場のことを知らずに落下傘型でマネージャーがいくと、専門
職の側から「現場のことも知らないのに」と不満が出てうまくいかないという。介護職の人たち
は腕でやっている人なので、専門性を尊重しながら一つのベクトルに向けることが必要となる。
現場スタッフの気持ちをくみ取って、この方向で頑張ろうと思えるようなマネジメントが出来る
人ではないといけない。
「施設長だから」といったポジションパワーが通用しない。
・ 中小製造 M 社では、人材紹介会社を経由して確保している。中途採用では募集の仕方がポイン
トである。経営のビジョンが明確でないと、優秀な人材は来ない。30 代以下の世代はお金のた
めに働く人が少ない。主に大手、中小でもかなり規模の大きい企業でないと 30 代でグローバル
なフィールドで働けない。中小企業が彼らを呼び込むためには、大企業で得られない経験を与え
られることを明確なビジョンとともに示して説得する必要がある。しっかり説明できれば、会社
の立ち位置(ポジション)以上の人材を採ることも可能だと考えている。
・ 介護 E 社では、異業種からの移動者は多いが、みな非常勤からスタートして経験を積み、信頼
を得る仕組みとしている。その部分を飛ばして管理職というのはやはり難しいという。管理職採
用を希望するのは 40-50 歳代だが、前職のプライドが捨てきれずうまくいかないケースも多々あ
る。介護ヘルパーは技術・専門職のため、実務経験の長い先輩が尊敬される徒弟制度のような世
界である。そこに知識不足の年上の管理者が急に指示しても、指示の中身以前に拒否されること
も多い。
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【要素5】専門技術に関する必要な教育・研修サービス(ラーニング)
要素1で説明したように、ミドルのキャリアチェンジは、汎用可能なポータブルスキルに着目し
て転用・応用可能性を探ったマッチングや教育が求められるが、成長企業が求める資格やスキル、
知識、経験などのベーシック(基礎編)を学んでおいた方が望ましい。このような学びは、単純に
資格・知識だけでなく、業界特有の組織文化やサービス品質に関する考え方、チームワークづくり
やメンバーシップの引き出し方など、暗黙知となっている内容(形式知化されていない事項、形式
知化することが困難な事項)も多く含まれていることに留意することが必要となる。人材ビジネス
事業者の中には、座学に留まらず、海外でのビジネス訓練など類似の実務経験を積ませる機会をつ
くることによって求職者のスキルを一段高めた上で、マッチングを行っているケースもみられる。
(関連する具体的事例・取組例)
・ 人材ビジネス Q 社では、技術者を送る相手企業先に応じて派遣技術者を教育し、その準備のた
めに常に多くの技術研修を開催している。また、その次世代の技術を狙う研修コースも開催し自
己研鑽のきっかけにもしている。異業種から異業種への転職の場合、顧客の組織文化や品質管理
への考え方などについての研修も行っている。
・ 介護業界 E 社では、平成 14 年の制度改定以降、福祉サービスにおける自立支援と尊厳が重視さ
れ、基本的な接遇と利用者視点で自らがサービス業であるという意識をしっかり持っていないと
受け入れられない時代になったと認識している。接遇技術を身につけ、利用者に質の高い介護サ
ービスを満足してもらうことを目指している。介護技術や知識は当然で、それ以前に接遇の基本
がないとだめな時代が近い将来やってくると認識している。
・ 介護 D 社では、一般的な内容の教育・研修は外部機関に出して、内部でもつ教育・研修は自社
に特化したもの(事業計画、戦略など)という形で出来るとよいと考えている。ビジネス、コー
チング、改善のノウハウ、介護業界の動向など、人材ビジネスには、介護用のカリキュラムの開
発を希望している。
・ パソナグローバルでは、大阪府より委託を受け、「中小企業のためのグローバル人材育成事業」
を実施している。営業実務経験や語学等を含む専門知識・資格を持った求職者を訓練生として新
たに雇用し、国内座学・国内 OJT と海外でのビジネス訓練(シンガポール、香港、インド、ベ
トナム、中国、台湾)を組み合わせて、即戦力となるグローバル人材を育成し、人材不足の中小
企業等に定着させることを目指している。訓練を終えた求職者は、海外経験の成果発表会と併催
される企業合同説明会において、中小企業経営者等との接点を持つ工夫がなされている。
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【要素6】ライフスタイルの変化への対応
ミドル層のキャリアチェンジは、本人のライフスタイルや家族の生活などにも配慮したマッチン
グが求められる。特に地方部では、求人があっても、勤務地の条件で有為な人材が獲得できていな
いケースも見受けられている。
その他、マネープランや健康、子女の教育等についてもキャリアチェンジを契機に振り返り、仕
事と生活のバランスをどのように取っていくべきか、具体的に検討する機会を付与することも必要
であろう。
(関連する具体的事例・取組例)
・ 人材ビジネス Q 社では、技術スキルも必要だがマインドも重要であると考えている。例えば地
方メーカーでの求人などはなかなか人が集まらなく、単身赴任等でも実際は非常に手厚い待遇が
準備されている会社が多いことが知られていないことも大きいという。
・ 人材ビジネス T 社では、転職時の家族や家の問題については、早いタイミングから家族にも話
をしてもらい、一緒に考えてもらうように努めている。転職の可能性の話を、当事者だけで勝手
に進めないようにすれば、最後まで行って破綻することはほとんどない。
・ ㈱ライフワークスでは、「ミドル・シニア社員向け研修サービス」を実施しており、同プログラ
ムではキャリアを振り返るだけでなく、マネープランや健康、ライフスタイルを振り返るセッシ
ョンを設けている。
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(2)円滑な労働シフトに向けた今後の課題
以上の調査結果を踏まえ、円滑な労働シフトに向けた今後の課題について、①スキルと経験を持
つ社会人、②成長分野の企業、③人を活かす産業、④社会(国)のそれぞれの主体が取り組むべき
課題について整理した。
① スキルと経験を持つ社会人
【想定外変化に対応可能な自律的キャリアの醸成】
スキルと経験を持つ社会人には、転職意向の有無に関わらず、想定外変化に対応可能な自律的な
キャリア観を持つこと重要である。想定外変化に対応可能な自律的なキャリア観とは、先ず仕事観
を明確に持つことである。わが国では、これまで会社規範の仕事観(会社の役に立つことに意義・
満足を感じる)が強かったが、経済社会の環境変化により、仕事の内容が大きく変わったり、違う
業界で仕事をすることになったりと、会社組織に属することによって得られる満足感は不安定なも
のとなる可能性がある。こうした変化に対応するためには、仕事規範(仕事のやり方や質そのもの
にプロ意識を持つ)や社会規範(仕事を通じて社会の役に立つ)の仕事観もまた求められてくると
言えるだろう。
こうした仕事観が、40 代以降のミドル層になると希薄になることは既に指摘されており、会社
現場を離れての内省機会やこれまでの自身の思考・行動様式について振り返りを行う、カウンセラ
ーなどの第三者との対話により気付きの機会を得るなどの取組が求められるところである。
なお、こうした取組は、一義的には個人が主体的に取組むべきものであることは当然であるが、
そのような場や機会にアクセスが可能となる環境づくりを後押ししていくことも、今後の人的資源
管理には盛り込まれるべき事項となるであろう。
② 成長分野の企業
【成長分野企業における採用コンセプトの整理と定着プログラムの整備】
成長分野企業は、ミドルの採用と定着の観点から先ず取り組むべきポイントがある。採用に関し
ては、自社の求める人材像を明確化にすることは当然であるが、その要件について整理をした上で、
募集・採用活動を行うことが有効かつ効率的である。特に、成長分野企業は、ビジネスモデル自体
が成長半ばであることもあり、同業他社の人材を採用することが困難である。そうした状況の中に
おいては、闇雲に必要な人材の要件について詳細に求めていくよりもむしろ、採用に関する要件と
入社後の育成に関する要件との整理をした上で、募集・採用活動を行うことが重要である。また、
中小・中堅企業等においては、職務だけでなく、成長基調にある職場のスピード感や裁量性、醍醐
味について、求職者に対して、自社の考え方について積極的に発信していくことも求められる。
また、定着に関してもそのミスマッチが、入職後間もない職務内容や進め方等に関する採用ミス
マッチなのか、待遇や賃金等での雇用管理ミスマッチなのか、自社のケース等を整理・分析した上
で、対応を図ることが求められる。ミドル層であっても、事業展開と個人のキャリアパスの明示な
ど、従業員と経営層が成長イメージを定期的に共有していくこも定着率を高めていく方策である。
111
③ 人を活かす産業
【学び直し支援】
第 3 章でも整理したように、ミドル層の成長産業へのシフトには、テクニカルスキル、ポータブ
ルスキル、マインド、資格のそれぞれの側面について学び直しに関する支援が、人を活かす産業に
は求められる。これまで人を活かす産業は、マッチングと教育のそれぞれを主とする事業者が多か
ったが、今後は求職者の出口(転職先)を見据えた必要な教育とマッチングを一体的に進めること
が必要である。
ただし、こうしたノウハウの活用や事業化に関しては、多くのハードルがあるのも事実であり、
関係者が持ち味を活かしながら、試行的にプロジェクトを立ち上げ、実施していくなかで、その成
果や問題点を共有してくネットワークやプラットフォームが求められている。
【専門スキルに加えた転職者のポータブルスキルの見える化】
ミドル層の成長産業へのシフトがさらに進展していくためには、これまでミドルが多数の仕事経
験から培ってきた態度や能力などの目に見えにくいスキルについても、マッチングの際の重要な要
素となってくる。ミドル層自身においても、テクニカルスキルや資格等を意識するがあまり、自身
のポータブルスキルの展開可能性については、気付きの機会もないまま、またそのスキルをストレ
ッチ(伸ばす)する意識もないままに、高齢期を迎えてしまうケースも考えられる。
このような問題を解決するためにも、専門スキルに加えた転職者のポータブルスキルの見える化
について業界一体となって取り組んでいくことが求められる。
【人材スペックでなく仕事スペックによるマッチング手法の開発】
成長分野の企業の人材ニーズをみると、これまでの既存の職種以外の人材が必要となっている。
このような人材ニーズへ対応するためには、最初から人材要件で整理することが困難であり、クラ
イアント企業の展開したい事業内容について深堀することを通じて、優先されるべき職務を協働で
開発するなどのコンサルティング的要素を含むマッチングサービスも合わせて必要となっていくだ
ろう(仕事スペックによるマッチング手法)。さらに、昨今、職業紹介とは別に多様な求人媒体が
WEB を中心として展開されているが、こうしたサービスとの差別化を図るためにも、人材スペッ
クでなく、このような仕事スペックによるマッチング手法の開発が望まれるところである。
④ 社会(国)
【ミドル層のキャリアチェンジを後押しする流れづくり(実証事業・キャンペーン等のしかけ)】
これまでわが国の労働市場は、主に第二新卒や若年層を中心として流動化してきた。一般には、
30 代半ばを過ぎると、外部労働市場におけるマッチングが難しいと言われてきたが、一部のミド
ル層の意識も変わりつつあり、果敢にキャリアチェンジに挑戦し、キャリアを繋いでいくケースが
見られるようになってきた。受け入れ企業も、キャリア採用のリスクを認識しながらも、ミドル層
を積極的に採用、将来の幹部候補人材として登用するケースが見られる。
こうした個々の取組は、個人や企業の主体的な行動によるものであるが、こうした事例や動きを
今後のスキルと経験をもつ社会人のロールモデル、それらを活用した新たな事業展開の企業モデル
112
として、コンスタントに周知・広報していくことが必要である。また、スキルと経験をもつ社会人
の成長分野での活躍を支援する「人活」支援サービスの創出・振興を促進していくことや、さらに、
わが国の労働政策の考え方を、成長分野への労働シフトの促進という方向性に転換し、個々の制度
を見直しつつミドル層のキャリアチェンジを促進していくことも求められるであろう。
専門性を高めつつも、変化に柔軟に対応し、必要に応じて、学び・気付きを得る態度を持ち続け
ていく、わが国のミドル像について、今後の成長を牽引する新たな戦力として、社会として位置づ
けることができないだろうか。そのためには、女性の労働参画に関するキャンペーン等のような、
ミドル層のキャリアチェンジを後押しするキャンペーンなどの仕掛けも、官民連携で必要となって
くるであろう。
図表 成長分野への円滑な労働移動にむけた各主体に求められる取組
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平成 24 年度総合調査研究等委託事業
就業構造の転換に係る実態調査
報告書
平成 25 年 3 月発行
発行・編集
社会政策コンサルティング部
〒101-8443
東京都千代田区神田錦町2丁目3番地
TEL 03-5281-5276 FAX 03-5281-5443
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