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保育園における労務管理の基本事項

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保育園における労務管理の基本事項
認可化移行セミナー(認可保育所等の運営上の基本事項について①)
~保育園における~
労務管理の基本事項
ソフィア横浜社労士事務所
社会保険労務士
島本たか子
2013年11月9日(土)
1
労務管理とは
 企業(保育施設)の経営資源=金銭的資源、物的資源、人的資源等
 労務管理
人的資源(保育士さん等)が、本来のスキル・能力を発揮できるように
働く環境を整備すること。
・適性のある人材の採用
・適職への配置
・労働条件の整備:労働時間、休憩、休日、賃金
・職務能力を向上させる研修
・仕事の成果の公正な評価
・評価にもとづく処遇(賞与、昇給、昇格)
・安心して働いてもらうためのリスク管理
2
労務管理の基本事項
 基本的な労働条件を整備する
– 労働時間、休憩、休日等
 ルールを見える化する
– 労働契約書・就業規則の作成・周知
 社員をリスクから守る
– 社会保険への加入
 モチベーションを高める
– 研修・評価制度の導入
3
■基本的な労働条件を整備する
• 1) 労働時間、休憩、休日について
• 2) 年次有給休暇の定め
• 3) 賃金支払いの5原則と例外
• 4) 時間外労働、休日労働が必要なときは
• 5) 出産、育児にかかわる制度
• 6) 職員の健康管理のために
4
■基本的な労働条件を整備する
1) 労働時間、休憩、休日
• 労働時間とは
– 労働者(職員)が、使用者(園、上司)の指揮命令下で働く時間
• 労働時間の定め
– 原則は1日8時間(休憩時間を除く)、1週40時間
– 10人未満の施設は例外
• 法定労働時間と所定労働時間
– 所定労働時間:労働契約で定められた一定期間内の労働時間
– 正職員は8時間、パートタイム職員は5時間など
• 法定労働時間を超えて働くときは
– 事前の届け出が必要=36協定
5
■基本的な労働条件を整備する
1) 労働時間、休憩、休日
• 休憩時間の定め①
– 労働時間が6時間以下の場合:なくてもOK
– 労働時間が6時間を超え、8時間以下の場合:少なくとも45分
– 労働時間が8時間超の場合:少なくとも1時間
• 休憩時間の定め②
– 原則は一斉付与+自由利用
– 保育園は一斉付与および自由利用の例外
6
■基本的な労働条件を整備する
1) 労働時間、休憩、休日
• 休日の定め①
– 一般には週休2日(1日8時間、週40時間の場合)
– 祝日、年末年始、夏期休暇は法律の定めはない
– 年間を通して休日を調整できる1年単位の変形労働時間制
• 休日の定め②
– 振替休日:あらかじめ休日に出勤させることがわかっている場合
– 代休:急に休日に出勤しなければならなくなったとき
7
■基本的な労働条件を整備する
2) 年次有給休暇の定め
• 年次有給休暇とは
– 休養をとって心身の疲労を回復させること、ゆとりある生活を実現するこ
とを目的とする制度。
• 年次有給休暇が発生する要件
– 採用された日から6カ月の間、継続勤務(最初の付与の場合)
– 全労働日の8割以上出勤(有給休暇を取得した日は出勤とみなす)
• 年次有給休暇の日数
–
–
–
–
–
6カ月経過後に10日、1年に付与される日数は最大20日
翌年までは繰り越しできる
出勤日数が少ない人も付与必要
夏期休暇を有給にすることも可能
半日単位、時間単位の付与もOK(管理の負担は増す)
8
■基本的な労働条件を整備する
2) 年次有給休暇の定め
• 年次有給休暇の付与日数
6カ 月
1年6カ月
2年6カ月
3年6カ月
4年6カ月
5年6カ月
6年6カ月~
10日
11日
12日
14日
16日
18日
20日
週4日
7日
8日
9日
10日
12日
13日
15日
週3日
5日
6日
6日
8日
9日
10日
11日
週2日
3日
4日
4日
5日
6日
6日
7日
週1日
1日
2日
2日
2日
3日
3日
3日
9
■基本的な労働条件を整備する
3) 賃金支払いの5原則と例外
1. 通貨払いの原則
– 労働者の同意を得れば、金融機関への口座振込もOK
2. 直接払いの原則
– 本人の代わりに親や配偶者が受け取ることはできない
3. 全額払いの原則
– 社会保険料など一定のものは控除できる。
– 旅行積立金などは労使協定が必要
4. 毎月1回以上払いの原則
5. 一定期日払いの原則
– 年俸制でも月ごとに分割して支払う必要がある
– 臨時の給与や賞与は例外
10
■基本的な労働条件を整備する
4) 時間外労働・休日労働が必要なときは
1. 残業は使用者の命により行うことが原則
– 不要な残業を減らすために許可制にするなど工夫するとよいでしょう
2. 採用時にも、残業があることを明確にしておく
– 時間制約のある人もいるので、一定の考慮をしてあげてください
3. 36協定を締結して届け出る
– 残業をさせる場合は、36協定の締結と届出が必要です
4. 割増賃金をきちんと支払う
– 時間外労働の割増:25%
– 深夜労働の割増:25%
法定休日労働の割増:35%
5. 労働時間を正しく把握する
– 管理監督者についても労働時間の管理は必要
– 職員が精神的に疲弊しないために
11
■基本的な労働条件を整備する
5) 出産・育児にかかわる制度
 充実してきたさまざまな両立支援制度
–
–
–
–
–
–
産前・産後の休業
育児休業
妊娠中~産後の母体保護にかかわる制度
育児短時間勤務制度、所定外労働の免除等
子の看護休暇
休業中の社会保険料の免除制度(育児休業中+産前産後休業)
 トラブルを防ぐために
–
–
–
–
–
制度を明確に伝える
一人ひとりの価値観を尊重する
妊娠中から定期的に面談の機会をもつ
職員同士の人間関係に配慮する
小さな組織だからこそ、相手に合わせて運用する
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■基本的な労働条件を整備する
6) 職員の健康管理のために
 雇入れ時の健康診断
– 労働者を雇い入れたときは、医師による健康診断を実施してください。
– 労働者には、パートタイム職員も含みます。
– 採用時に、最近3カ月に受けた健康診断書を提出してもらうことでもOK
 定期健康診断
– 1年以内に1回、定期的に健康診断を行ってください。
– 使用者には安全配慮義務が課せられています。リスク対策としても、健康
診断を受けることは義務であることを伝え、履歴を管理してください。
– 定期的に深夜業がある場合は、6カ月に1度の定期健診が必要です。
 労働災害で職員が休業したとき
– 休業日数が4日未満:1~3月などの期間における労災事実について報告
– 休業日数が4日以上:労働者死傷病報告書を遅滞なく労働監督基準署へ
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■ルールを見える化する
 必ず用意したい雇用契約書/労働条件通知書
–
–
–
–
有期契約職員の場合
パートタイム職員の場合
正規職員の場合
トラブルを予防するために
 安心して働ける職場づくりの基本:就業規則
– 就業規則とは、①職員との間の雇用契約そのもの、②会社の経営理念や価
値観を伝える手段、③働き方に関する教育テキスト、④業務の簡易手引書
– ひな型をそのまま使うリスク
– 特に服務規律や懲戒規定は、業種や価値観により大きく違う
– 固有の就業規則を作る過程をとおして、法律を学び、課題やリスクを把握
し、より働きやすい職場づくりへの施策に取り掛かることができます
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■ルールを見える化する
 就業規則の絶対的記載項目
– 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇など
– 賃金の決定、計算および支払いの方法、賃金の締切、支払い時期、昇給に
関する事項
– 退職に関する事項
 就業規則の相対的記載項目
– 退職手当の定め、臨時の賃金、食費等の負担(該当する場合)、安全衛生
に関する定め、職業訓練に関する定め、災害補償に関する定め、表彰及び
制裁など
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■社員をリスクから守る社会保険制度
■社員をリスクから守る:社会保険制度
• 労災保険
• 健康保険
• 雇用保険
傷病
失業
 働く人のリスクと4つの保険制度
老
• 厚生年金
死
• 労災保険
• 厚生年金
• 健康保険
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■社員をリスクから守る社会保険制度
1) 労災保険:仕事や通勤でけがをしたとき

労災保険とは
– 労働者の業務上の災害または通勤中の災害に対して、国が保険給付を行い、労働者を保
護する制度
– 労働者を1人でも雇用すると、強制適用になる

労災保険のメリット
–
–
–
–
–
–

病院で治療を受けるとき:療養費
休業が必要になったとき:休業(補償)給付(平均賃金の約60%)
1年6カ月経っても治癒せず、状態が重いときは:傷病(補償)年金
障害が残ったときは:障害(補償)年金
死亡した時:遺族(補償)年金、遺族(補償)一時金、埋葬料
介護(補償)給付
労災保険の対象者
– 全労働者(パート、アルバイト、外国人も含む)※保険料は全額事業主負担

労災保険の保険料
– 業種により保険料率が定められている。保育園:3.0/1000
17
■社員をリスクから守る社会保険制度
2) 雇用保険:職を失ったとき、育児休業のとき
 雇用保険とは
– 労働者が失業したり、雇用の継続が困難になった場合などに必要な給付を行い、労
働者の生活および雇用の安定をはかることを目的とした保険
– 法人は強制適用、個人事業は5人以上雇用する場合に強制適用
 雇用保険の加入メリット
–
–
–
–
①休職者給付(失業したとき) ②就職促進給付(早めに就業したとき)
③教育訓練給付(労働者が主体的に能力開発をしたとき)
④雇用継続給付(高年齢、育児休業、介護休業)
その他:能力開発事業、雇用関係助成金など
 雇用保険の対象者
– 適用事業に雇用される労働者+週の所定労働時間が20時間以上
– 退職に関する事項
 雇用保険の保険料
– 13.5/1000(うち、8.5/1000が事業主負担)
18
■社員をリスクから守る社会保険制度
3) 健康保険:業務外でけがや病気にかかったとき

健康保険とは
– 業務外の疾病、負傷、死亡、出産に対して給付を行う制度
– 法人は強制適用、個人事業は5人以上雇用する場合に強制
– 労働者本人と、扶養家族が対象

健康保険のメリット
– 医療給付:労働者および扶養家族が疾病・負傷で医療を受けるとき
– 傷病手当金:労働者が傷病で休業するときの所得保障
一部は、要件を満
– 出産育児一時金、出産手当金、家族出産育児一時金
– 埋葬料、家族埋葬料

たせば退職後も利
用できる
健康保険の加入対象者
– 適用事業所に使用される者で適用除外でないもの
※一般には週の所定労働時間が30時間以上で加入義務

健康保険の保険料
– 労働者の賃金(標準報酬月額)×健康保険料率
19
■社員をリスクから守る社会保険制度
4) 厚生年金保険:老後の生活保障
 厚生年金保険とは
– 労働者の老齢、障害、死亡に対して給付を行うことにより、労働者および
遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする制度
 厚生年金保険のメリット
– 老齢厚生年金:公的年金の2階建て部分として一生涯支給されます。
(報酬比例のため、収入が多いと保険料が多く徴収されるが給付も増える)
– 障害厚生年金、遺族厚生年金
 厚生年金保険の加入対象者
– 適用事業所に使用される者で適用除外でないもの
※一般には週の所定労働時間が30時間以上で加入義務
 厚生年金保険の保険料
– 労働者の賃金(標準報酬月額)×厚生年金保険料率
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■社員をリスクから守る社会保険制度
5) 労働保険料のめやす
 労働保険料(労災+雇用保険)
 原則は、1年分をまとめて納付する
 3回に分割して納付する制度もある(要件あり)
 労災保険料:職員の賃金総額×3.0/1000
 全額会社負担
 年収300万の職員10人の場合:年間9万円
 雇用保険料:対象職員の賃金総額×13.5/1000




負担割合: 職員5/1000 + 会社8.5/1000
年収300万の職員10人の場合:年間40.5万円(会社25.5万)
職員分は毎月控除
週20時間未満のパートタイム職員、65歳以上職員は適用除外
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■社員をリスクから守る社会保険制度
6) 社会保険料のめやす
 健康保険料:9.98%(11.53%)
 職員と会社で半額ずつ負担。毎月前月分を納付
 給与20万円30歳:約2万円(職員1万、会社1万)
 給与30万円45歳:約3.4万(職員1.7万、会社1.7万)
 厚生年金保険料:17.12%
 職員と会社で半額ずつ負担。毎月前月分を納付
 給与20万円:約3.4万(職員1.7万、会社1.7万)
 給与30万円:約5万(職員2.5万、会社2.5万)
◎標準報酬月額とは
4月~6月の報酬の平均額を
ある等級表にあてはめて区
分した、保険料徴収のため
の報酬額です。
(例)
4月~6月の平均給与が19.5
万以上21万未満の人の標準
報酬は20万円と定められ、
この標準報酬が1年間適用さ
れます。
 社会保険料総額の試算




社会保険料負担率は27.1%~28.65%
労災・雇用保険も合わせると、給与×15%の支出が必要
年収300万の職員の社会保険料:45万/年間
年収300万×10人:3000万×15%=450万/年間
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■モチベーションを高める
 仕事の能力 = スキル・能力
× モチベーション
 スキル・能力を向上させる ⇒
実務経験(OJT)+研修(Off-JT)
 モチベーションを高める ⇒ 承認、評価、職場環境
 「雇用関係助成金」制度
研修の実施、評価制度構築、職場環境改善を費用面でサポート
(例)




評価制度の構築:40万円
研修制度の構築:30万円
契約社員を正社員に転換:40万×人数(10人まで)
社員に研修を実施(OJT1時間あたり800円、Off-JT1人20万など)
基本的な労務管理を実施、労働保険料納入、解雇しないことが要件
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< 適正な労務管理のために >
•
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法律を知る
制度を整える
制度を周知する
オープンな風土づくり
課題を共有する
PDCAサイクルを回す
各種制度の活用/アウトソース
ソフィア横浜社労士事務所
社会保険労務士・キャリアコンサルタント
島本
ご清聴ありがとうございました。
たか子
E-mail: [email protected]
URL: http://sofia-sr.jp
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