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2012年度版 - 物質・材料研究機構

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2012年度版 - 物質・材料研究機構
2012年度 主要研究成果12件
トピックス
1件
2013年7月
NIMS の主な研究成果
(平成 24 年度主要な研究成果の発行について)
独立行政法人 物質・材料研究機構
理事長 潮田 資勝
独立行政法人物質・材料研究機構(National Institute for Materials Science)では持続可能社会の
実現に向け、ナノスケールの構造まで制御する「ナノテクノロジー」を駆使した新材料の創製や、
材料機能の高度化などを可能にする研究を進めています。私は平成 21 年 7 月に独立行政法人物質・
材料研究機構(NIMS)の理事長に就任しました。本年は 5 年目となりますが、独立行政法人となっ
て 13 年目、第 3 期中期計画の 3 年目にあたります。
平成 24 年度における主要研究成果 12 件とトピックス 1 件を選別し、皆様に NIMS の研究内容を
紹介させていただきます。主要成果 12 件は、先端的共通技術領域、ナノスケール材料領域、環境・
エネルギー・資源材料領域の 3 研究領域における主要成果として取り上げました。また、平成 24 年
度に開始された「文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム」プロジェクトにおいて、NIMS
は科学技術振興機構(JST)と共同で事業全体を推進するセンターを運営するとともに、プロジェク
トで実施する 3 つの技術領域プラットホーム(微細構造解析、微細加工、及び分子・物質合成)のそ
れぞれに実施機関として参画しています。特に、微細構造解析プラットホームでは代表機関として
運営に当たっています。本事業は、産学官の研究者にナノテクノロジーに関わる最先端機器の利用
機会を与えるとともに,我が国のイノベーション創出に資することを目的とするものであり、第 3
期中期計画においても NIMS の重要施策のひとつとなるので、本冊子のトピックスとして取り上げ
ました。
NIMS は法人化後、第 2 期中期計画期間中に大きな発展を遂げました。材料科学分野における論
文数や論文引用数では世界でも高く評価されるようになりました。特許出願数、産業界との共同研
究、特許収入などでも顕著な成果をあげました。また、第 2 期中期計画中に文科省の WPI プログラ
ムに採択された「国際ナノアーキテクトニクス研究拠点」は顕著な成果を挙げつつあります。しかし、
本来の意味で物質・材料研究における国際的な Center Of Excellence(COE)となるためにはまだ何
年もかけて努力を重ねる必要があります。
国の中核的機関である NIMS の業務として、これまでに、「国際ナノテクノロジーネットワーク拠
点」、「ナノ材料科学環境拠点」、「低炭素研究ネットワーク・ハブ」等の研究拠点を発足させ、研究
者コミュ二ティからの支援・連携要請に応えてきました。日本が東日本大震災の大きなダメージか
ら全力で復興を図ろうとしている今、我々は以前にも増して社会からの連携要請へ強力に応える必
要があります。特に、国土強靭化に向けた取組として、社会インフラの長寿命化・耐震化を推進す
るため、信頼性評価・補修技術等に関する国内外に開かれた研究開発拠点を構築し、産業界のニー
ズに基づき、実環境を見据えた構造材料の信頼性研究を総合的に推進する予定です。
今後も、先端的共通技術領域、ナノスケール材料領域、環境・エネルギー・資源材料領域の 3 研
究領域を中心に、国家的ニーズに積極的に対応することを目指すとともに、高度な設備のさらなる
共用化を図り、社会に開かれたイノベーションの場を提供してゆきます。また、若手研究者の育成
も NIMS の重要な使命であり、国内外の大学と協力して大学院生の教育にも力を入れてゆく所存で
す。
INDEX
研究成果
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
グラフェン積層キャパシター開発
電気自動車を長航続距離、短時間充電に
…………………… 1
唐 捷
世界最高の超高密度量子ドットの作製 ……………… 3
量子ドットデバイスの高性能化に向けて
間野 高明 佐久間 芳樹
強靭な量子計算機の開発に新しい光 ………………… 5
電子の片割れであるマヨラナ粒子を操る
古月 暁
次世代ディスプレイの金属酸化膜トランジスタ開発に成功 … 7
省エネディスプレイの基礎材料
塚越 一仁
人の手で薬物投与を制御する新材料 ………………… 9
患者に負担を与えない新たな治療手法の提案
川上 亘作 有賀 克彦
チタンと骨との結合を3倍速くするコーティング法 … 11
患者の負担を少なくする新技術
菊池 正紀 高久田 和夫
半導体一次元ナノ構造の機能化と応用研究 ………… 13
未来のトランジスタから太陽電池まで
深田 直樹
ナノ組織高強度精密ねじの実用化 ……………………… 15
ねじ製造時のCO2排出量50%削減
鳥塚 史郎 村松 榮次郎
わずか数原子層のTa膜の挿入で電流が磁化におよぼすトルクが倍増 … 17
不揮発性情報処理技術への展開に期待
林 将光 大野 英男
太陽光を利用した光水分解を可能にする高効率光触媒の理論設計 … 19
水素エネルギー社会の実現に向けて大きな一歩
梅澤 直人 葉 金花
昆虫ミメティクスによる新しい接着技術の開発 …… 21
昆虫が[泡」を利用して水中を歩けることを世界で初めて発見
細田 奈麻絵
高出力光源を守るファラデー回転子 ………………… 23
レーザー加工機の光アイソレーターとして実用化
島村 清史 ガルシア・ビジョラ
トピックス
ナノテクノロジープラットホーム
施設共用による研究・技術開発の新たな展開
…………………… 25
野田 哲二 平原 奎治郎
2012年度の運営 (データ集)
2012年度運営に関するデータ集 …………………… 27
1. グラフェン積層キャパシター開発
研究の背景と狙い
炭素原子 1 個の厚さのグラフェンを積層化させ、グラフェン表面積を広大にしてキャパシター電極とする
ことにより、キャパシターのエネルギー密度 200Wh/kg、出力密度 200kW/kg とすることに成功した。電気
自動車の航続距離の延長や短時間・非接触充電を可能とし、大容量スマートグリッドにも適する。
研究の内容と成果
グラフェンの比表面積が大きいこと、高導電性であること、特異なナノポア現象をもつことを活かして、
高エネルギー密度及び高出力密度のキャパシターを実現するため、つぎの研究を実施した。
Ⅰ.グラフェンの高品質化と積層化
1.グラファイトからの剥離とナノボア導入
① グラフェンは比表面積が 2630m2/g とどの物質よりも大きい。キャパシターの容量は電極の表面積に比
例する。表面積をできるだけ大きくするため、グラファイトから化学的剥離法により、グラフェンを
単層状に剥離した。
② グラフェンは図 1 に示すようなナノポアが容易に生成する。ナノポアは電解液イオンを多量に吸着し、
キャパシター性能を高める。水蒸気加熱法によりナノポアをグラフェンに多量に導入することに成功
した。
電解液イオンを表面の50倍吸着
図1 グラフェンに導入したナノポア
図2 グラフェンとその間に挿入されたカーボ
ンナノチューブ
2.グラフェンの積層化
① グラフェン電極の電解液と接する表面積を大きくするため、グラフェンを積層化した。グラフェン間
に電解液を流出・入させるため、カーボンナノチューブを図 2 及び 3 に示すようにスペーサーとした。
このことにより、グラフェン表面に多量の電解液イオンの吸着が可能となった。スペーサーとして、現
在は数 nm 径のカーボンナノチューブを用いているが、次のステップとして積層グラフェン間を 1 nm
程度とするため、高導電性のナノ粒子を用いる。
② グラフェンの階層構造化
グラフェン積層の性能を活かして、電極とするには、グラフェン積層を煉瓦積みのように整然と方向
を揃えて 3 次元化する必要がある。そのため、グラフェン積層端面の修飾基のカルボキシル基と水酸
基を結合させて図 4 のようなフィルムを作製した。
1 ■ グラフェン積層キャパシター開発
電気自動車を長航続距離、短時間充電に
図3 グラフェン積層の構造
図4 グラフェン3次元階層のフィルム
Ⅱ.グラフェン積層キャパシターの性能
グラフェン積層を 3 次元化したフィルムを用いてキャパシターを試作し、性能を調べた。エネルギー密度
は 200Wh/kg、出力密度 200kW/kg を超えており、現時点では、世界一のキャパシターである。
グラフェン積層
キャパシター
Energy Density (Wh//kg)
図5 開発したグラフェン積層キャパシター性能の位置づけ
発 表 文 献
1) 唐ら:
「グラフェンシート集積体、その製造方法及びグラフェンシートキャパシター」、PCT/JP2011/077651、平成 23
年 11 月 30 日
2)唐ら:「グラフェン電極フィルム、その製造方法及びグラフェンキャパシター」、特願 2012-194833, 2012 年 9 月 5 日
3) 唐 ら:「部分還元グラフェン階層体-連結体、その製造方法、その含有粉及びフィルム」、特願 2012-194792、2012 年
9 月 5 日、他
期待されるイノベーション
開発したグラフェンキャパシターは現在
表1 蓄電デバイスの性能比較
の炭素粉末キャパシターを置き換え、リチ
蓄電デバイス
開発グラフェン積層キャパシター
現在の炭素粉末キャパシター
リチウムイオン 2 次電池
ウムイオン 2 次電池に変わって、急速充
電・非接触充電可能な蓄電デバイスとなる。
お問い合わせ先
エネルギー密度
200Wh/kg
10Wh/kg
300Wh/kg
出力密度
200kW/kg
5kW/kg
2.5kW/kg
先端材料プロセスユニット 一次元ナノ材料グループ 唐 捷
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/jpn
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 2
2. 世界最高の超高密度量子ドットの作製
研究の背景と狙い
半導体レーザや太陽電池などの光デバイスのコア層に半導体量子ドットを適用すると、既存のデバイスを
大幅に超える特性を実現できる可能性がある。しかし、量子ドット一個一個の体積は非常に小さく、それぞ
れの量子ドットが発光あるいは吸収できる光の量には限界がある。そのため、量子ドットを用いた光デバイ
スの特性向上には、量子ドットの高密度化(面密度と体積密度)が必要不可欠である。本研究では当機構で
独自に開発を進めてきた液滴エピタキシー法と呼ばれる歪みの無い量子ドット自己形成手法の高度化を進
め、世界最高の超高密度量子ドットの形成を目指して研究を行った。
研究の内容と成果
量子ドットの形成に広く用いられる S-K と呼ばれる自己形成法では、基板と格子定数が大きく異なる薄
膜結晶の初期成長過程で、歪みエネルギーの蓄積によってナノメートルサイズの三次元の島状構造が自然に
形成される現象を利用している。一方、NIMS では「液滴エピタキシー」と呼ばれる独自の自己形成法を世
界に先駆けて考案し、主にガリウム砒素(GaAs)量子ドットに関する技術開発をすすめてきた。液滴エピタ
キシーには、原料を同時供給する S-K 法とは異なり、構成元素のガリウム(Ga)と砒素(As)を基板上に
別々に供給するという手法上の特徴がある。また、量子ドット形成機構として格子歪みではなく GaAs 基板
と Ga 原子層の間の表面エネルギーの違いを利用していることが S-K 法との大きな違いである。図 1 のよ
うに基板上に Ga 原子のみを蒸着すると、ナノメートルサイズの半球状の Ga 液滴が自己形成する。この液
滴に As を供給することで結晶化が進み、GaAs 量子ドットが形成される。この自己形成機構では、Ga 液滴
が結晶化後の GaAs 量子ドットのサイズや密度を決めるので、量子ドットの面内密度を増加させるには、高
密度の Ga 液滴を形成することが必要である。そのためには、液滴形成時に Ga の拡散が起きにくい性質を
持つ基板表面を選び、さらに成長温度を下げることが有効と考えられる。しかし、一般に基板温度を低下さ
せると As を供給した際の化学反応が十分に進行せず、GaAs 量子ドットの品質が大きく低下するので、良
好な発光特性の実現が難しい。今回我々はこれらの相反する課題を考慮したうえで、新たに複数の要素技術
を開発し、それらを液滴エピタキシーに適用することで超高密度量子ドット形成を達成した。
図1 液滴エピタキシー法の模式図
基板表面にガリウムのみを供給して液滴を形成し、その後砒素照射により結晶化して量子
ドットを自己形成する。
3 ■ 世界最高の超高密度量子ドットの作製
量子ドットデバイスの高性能化に向けて
超高密度化への挑戦
我々は、従来より用いてきた(100)という基板面方位の代わりに(311)A という面方位を用いることで、
基板上のガリウムの表面拡散が大幅に抑制されることを見いだした。その結果、(100)基板と比較して約一
桁高い面内密度の GaAs 量子ドットが形成可能となった。しかし、依然として密度は 1 × 1011/cm2 程度であ
り、まだ十分ではなかった。そこで、ガリウムの表面拡散をさらに抑制するため、基板温度を従来の 200℃
から室温付近(30℃)まで低下させて液滴を形成したところ、5 × 1011/cm2 の高密度化が実現された。また、
ガリウムの表面拡散を考慮した液滴密度のシミュレーションを行ったところ、液滴同士の合体により密度が
減少していることが判明した。そこで、供給するガリウム量を 5 原子層から 3 原子層に減少させて液滴合体
を抑制したところ、図 2 のように 7 × 1011/cm2 という超高面密度の量子ドットが達成できた。これは、直径
12 nm の量子ドットを最密充填した際の理論限界密度 8 × 1011/cm2 に極めて近い値である。一方、このよう
な室温付近の量子ドット形成プロセスでは、一般的には高品質な量子ドットを作製するのは不可能であると
考えられていた。しかし、量子ドットを埋め込む前後に最適化された二段階の熱処理過程を導入すると結晶
欠陥が大幅に修復され、量子ドット集団から強いフォトルミネッセンス発光が観察された。以上のようにし
て、世界最高の面密度を持つ高品質の量子ドットの自己形成を実現した。
図2 超高密度量子ドッ
トの原子間力顕微鏡像
7×1011/cm2の超高面
密度が達成されている。
図3 超高密度量子ドットの発光スペクト
ル。高強度の発光が観察される。
発 表 文 献
1)M. Jo, T. Mano, Y. Sakuma and K. Sakoda: Appl. Phys. Lett. 100(2012)212113.
2)T. Mano, T. Kuroda, K. Mitsuishi, Y. Nakayama, T. Noda and K. Sakoda : Appl. Phys. Lett. 93(2008)203110.
期待されるイノベーション
今回作製した超高密度 GaAs 量子ドットは基板と格子整合しており、歪み蓄積による転位や欠陥発生が原理的に存在しな
い。そのため、量子ドット形成層を AlGaAs のような薄い分離層を隔てて成長方向に多数積層すれば、極めて高い体積密度を
持った量子ドット材料が実現可能である。これを半導体レーザーや太陽電池に適用することで、量子ドットデバイスの特性向
上に向けた研究の加速が期待される。さらに、今回得られた 7×1011/cm2 超高密度量子ドットは面内の量子ドット同士が近
接しているため、きわめて明瞭な量子力学的結合効果を期待できる。今後は、これらの特徴を利用した新規機能性素子の実現
に向けて、イノベーティブな研究にも取り組んでいく予定である。
お問い合わせ先
先端フォトニクス材料ユニット 間野高明、佐久間芳樹
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/units/apm
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 4
3. 強靭な量子計算機の開発に新しい光
研究の背景と狙い
量子計算は量子波動関数の重ね合わせを利用することで、大量の情報を並列に処理し、従来の計算方法を
遥かに凌ぐ計算パワーを持つ。特に、最先端の暗号技術や量子シミュレーション等重要な分野での応用が期
待される。しかし、量子状態が壊れやすく、安定した情報記録と処理が困難である。このデコヒーレンス問
題の克服が喫緊な研究課題である。近年電子の片割れであるマヨラナ粒子を用いたトポロジカル量子計算が
急速に注目を集めている。マヨラナ粒子同士の位置交換が残す軌道が特異なトポロジカル特性を持ち、ノイ
ズ等からの影響を受けにくい強靭な量子計算機に利用できる。我々は電気的に中性のマヨラナ粒子の安定か
つ迅速な操作方法を発見した。
研究の内容と成果
図 1 に示された s 波超伝導、スピン軌道相互作用の強い半導体と強磁性絶縁体の三層ヘテロ構造を使え
ば、トポロジカル超伝導状態を作り出すことができる。超伝導体に量子渦を導入すれば、超伝導ギャップ
内にゼロエネルギー準粒子励起が現れる。このゼロエネルギー準粒子は電子とホールが半々に入る線形結
合であり、いわゆるマヨラナ粒子として振る舞う。実際にヘテロ構造における超伝導状態の準粒子励起を
Bogoliubov-de Gennes(BdG)方程式を用いて解析すると、量子渦の芯及び超伝導体の縁にそれぞれマヨラナ
粒子が存在することが分かった(図 2)
。
図1 s 波超伝導、スピン軌道相互作用の強い半導
体、強磁性絶縁体のヘテロ構造からなるトポロジ
カル超伝導体の模式図。黒い丸は超伝導量子渦。
図2 量子渦の芯と超伝導体の
縁部分に現れるマヨラナ粒子の
波動関数の分布(赤い部分)。
図 1 の超伝導体を二個横に並べ、狭い結合部(以下はくびれ部と呼ぶ)によって繋げた系について、同じ
解析を行うと、芯にあったマヨラナ粒子は残るが、縁にあったマヨラナ粒子が消えてしまう(図 3 上段参照)。
くびれ部を通じて、二つのサンプルが一つの縁で繋がり、それによって囲まれた部分に二つ(偶数)の量子
渦が含まれていることが重要である。即ち、マヨラナ粒子が存在できるかどうかは、縁に囲まれた部分にあ
る量子渦の個数の奇偶で決まる。
図3 くびれ部でのゲート電圧のスイッチングに
よるマヨラナ粒子の運搬。但し、量子渦の芯に捕
まったマヨラナ粒子は表示していない。
この現象をうまく利用して、局所的なゲート電圧の印加で電子の行き来をダイナミクに制御すれば、マヨ
ラナ粒子を操作できる。この過程に関する計算解析の結果が図3に示されている。左側のくびれ部にゲート
電圧が掛かり、縁マヨラナ粒子が左側の超伝導体に局在する状況からスタートする(図 3 上段)。ゲート電
圧を下げると、三つのサンプルが繋がり、縁マヨラナ粒子は系全体を跨る縁に拡散する(図 3 中段)。繋がっ
た系の縁が三つ(奇数)の量子渦を囲んでいるからである。次に右側のくびれ部にゲート電圧を掛け、右側
の超伝導体を他の二つの超伝導体から孤立させると、マヨラナ粒子の波動関数が完全に右側の超伝導体に収
縮する(図 3 下段)。
5 ■ 強靭な量子計算機の開発に新しい光
電子の片割れであるマヨラナ粒子を操る
マヨラナ粒子が電気的に中性にもかかわらず、2 ヶ所の局所的なゲート電圧のスイッチングにより左側の
サンプルから右側のサンプルに運搬されることが判明した。特に、最後のステップ(図 3 中段から下段)の
マヨラナ粒子波動関数の収縮は電子や光子では得られないものであり、その実現には量子渦の個数の奇偶に
支配されるマヨラナ粒子のトポロジカル特性が本質的に重要である。
図4 (a)四つのトポロジカル超伝導サンプルからなるナノ量子デバイスの模式図。
くびれ部のゲート電圧のスイッチングによって、二つの縁マヨラナ粒子の位置交換が
できる。(b)二つのマヨラナ粒子の位置交換に伴う波動関数の時間発展の解析結果。
図 4(a)に示された四つのサンプルからなるナノ量子デバイスを使うと、初期状態では左と右のサンプル
にある縁マヨラナ粒子(赤と緑)の位置を交換することができる。交換過程における二つのマヨラナ粒子の
波動関数の時間発展を時間依存 BdG 方程式によって解析した結果、交換後では一つのマヨラナ粒子のみ、
その波動関数にマイナス符号が現れる(図 4(b))ことが分かった。この結果はマヨラナ粒子同士の位置交換
が非アーベル統計を満たすことを示唆しているため、この系がトポロジカル量子計算に利用できることが証
明されたことになる。また、図 5 に示されているように、我々が設計したナノ量子デバイスは良い集積性を
示し、大規模なトポロジカル量子計算の実装に役立つ。
図5 大規模なトポロジカル量子ビット集積の模式図。
発 表 文 献
1)Q. –F. Liang, Z. Wang, and X. Hu: Europhysics Letters(Editor’s choice), 99(2012)50004
2)特許申請:国内出願番号 3010232238
期待されるイノベーション
超伝導状態の準粒子励起としてのマヨラナ粒子を、トポロジカル特性を利用して局所的なゲート電圧のスイッチングで移動・
位置交換できること、その位置交換がトポロジカル量子計算に必要な非アーベル統計を満たすことが明らかになった。この研
究成果はマヨラナ粒子の観測と操作、及びトポロジカル量子ビットや量子計算機の開発研究に大きなインパクトを与えること
が期待される。ノイズに強く、デコヒーレンスのない強靭な量子計算機の実現はもう夢ではなくなった。
お問い合わせ先
ナノ物性理論ユニット 古月 暁
ホームページ:http://www.nims.go.jp/mana/lab/theorphys/
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 6
4. 次世代ディスプレイの金属酸化膜トランジスタ開発に成功
研究の背景と狙い
次世代フラットパネルを駆動する高特性トランジスタの実現が熱望されている。高い精細度と高速動作を
実現し、高い生産性を可能とする新材料の開発が必要であり、新たな材料の探索が必須となっていた。本研
究では、酸化膜半導体に少量元素ドープで特性を制御する材料と成膜法を検討し、新元素組成にて特性の高
い金属酸化膜トランジスタを見出すことに成功した。
研究の内容と成果
現代のエレクトロニクスを支えるフラットパネルディスプレイが過渡期にある。基幹要素である薄膜トラ
ンジスタ(TFT)は、現在アモルファスシリコン(a-Si)であるが、次世代の高精細ディスプレイには移動度
が低く、スイッチング速度が十分ではない。また、昨今のスマートホンのディスプレでは、高精細化に伴っ
てディスプレイ部分での電力消費が急上昇し、約 45%程度にも達してしまっている。この改善のためには、
電界効果移動度の高い酸化膜トランジスタの実現が必須である。
しかしながら、現在研究の主流となっている IGZO は、動作電圧等の制御性が不安定であり、高精細パネ
ルの設計や製造において、深刻な問題となっている。この要因は、主元素の 1 つの Zn の酸素不安定性と考
えられるが、取り除いた材料構成で十分な特性を安定的に有することは難しかった。さらに、IGZO では、
400℃に近い温度での熱処理が必要であり、使える基板が限定されるだけでなく、製造工程での昇温・降温
などに余計にかかる時間によって生産性の律速要因にもなっていた。
我々は、従来の酸化物半導体材料を構成する元素を根本的に見直し、従来のコンパウンド酸化物半導体の
材料構成から、元来移動度の高い酸化インジウムに微量の他元素をドープして特性を制御する試みを行っ
た。スパッタ時の酸素分圧を的確に制御することで、伝導特性を正確に作り分けることが可能となった。ト
7 ■ 次世代ディスプレイの金属酸化膜トランジスタ開発に成功
省エネディスプレイの基礎材料
ランジスタとして動作する半導体膜においては、ドープ原子は数 nm3 程度の分散であるが、薄膜の伝導特
性はドープ原子の種類に敏感に変化することも明確になった。ドープ元素にタングステンを用いると、室温
で成膜し 100-150℃で熱処理するだけで、電界効果移動度 20 cm2/Vs(=次世代フラットパネルの必要仕様
を大きく超える値)を示す酸化膜を再現性よく作れるようになった。さらに、加熱による特性変化もドープ
原子の種類に大きく依存することも分かった。
これらの知見を総合的に解析し、動作原理に基づいて適格な添加元素を選び、ドープ量を調整することで、
実用化において酸化膜トランジスタに求められる様々な仕様を調整できるようになりつつある。
図1 新元素構成のスパッタター
ゲット。住友金属鉱山(株)との
共同研究。
図2 試作した新元素構成の薄膜ト
ランジスタの光学顕微鏡写真。
図3 新元素構成の薄膜トランジスタの出力特性。
電界効果移動度20cm2/Vsに達する。
発 表 文 献
1) S. Aikawa, P. Darmawan, K. Yanagisawa, T. Nabatame, Y. Abe, K.Tsukagoshi: Applied Physics Letters 102(2013)
102101.
2) 特願 2012-134940 を含めて計 5 件を出願済み .
3) 報道:オンライン 13 件 + 紙面 4 件に掲載
期待されるイノベーション
スマートホン・タブレット端末の消費電力低下による充電周期の長期化。
次世代の高精細 TV の実現。電子ペーパーなどの次世代表示端末の実現。
お問い合わせ先
MANA パイ電子エレクトロニクスユニット 塚越一仁
ホームページ:http://www.nims.go.jp/pi-ele_g/
メールアドレス:
MANA ファウンドリ 生田目俊秀
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 8
5. 人の手で薬物投与を制御する新材料
研究の背景と狙い
ナノスケールの分子・材料操作に最先端機器は必ずしも必要ではなく、我々の日常生活にも広く浸透して
いる。ゴムを伸ばしたり、髪の毛をドライヤーで真っ直ぐに伸ばしたりという操作においては、いずれも分
子の並び方や分子間相互作用を、手で制御している。そのような性質を持つ材料を人為的に設計しようとい
う試みが大きな注目を浴びており、医療領域でも利用が期待される。
医薬品の多くは口から投与されるが、それが困難なケースも多い。例えば本研究で使用したオンダンセト
ロンは抗がん剤治療で用いられる制吐剤であるが、吐き気を催した患者が薬を口から飲むのは困難である。
本研究では、あらかじめ皮下に投与しておき、必要な時に手で押すことによって薬物投与を行うことを想定
したゲル材料を開発した。糖類の一種であるシクロデキストリンをホストとして利用することにより、薬物
との相互作用を人の手で制御できることが分かった。本研究は、人にやさしい新規薬物投与法を提案するも
のであり、様々な薬物への応用が期待される。
研究の内容と成果
医薬品の効果を最大限に引き出すべく、様々なドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究が活発に行わ
れている。光・熱・磁場などに応じて薬物を放出する刺激応答性担体は、中でも重要な役割を担っているが、
このような刺激を与えるためには高額な機器が必要となる。人の力を薬物投与のための刺激として利用する
ことができれば、投与の環境を選ばないため、医療施設が整っていない発展途上国でも利用が可能である。
先の大震災の被災地では薬物投与が困難な状況が生じたが、人の力はそのような中でも利用することができ
る。
最も汎用される薬物投与経路は経口投与であるが、口からの薬物摂取が困難な状況は意外と多い。本研究
では制吐剤であるオンダンセトロン(ODN)をモデルとして用いたが、抗がん剤治療によって吐き気を催し
ている状況では、薬物を経口摂取することは困難である。従って、水なしで飲める製剤や経口スプレーなど
が開発されているが、皮下に埋め込まれている製剤を押すだけで薬物投与ができれば、患者への負担は大き
く改善されると期待される。
環状構造を持つ糖類であるシクロデキストリン(CyD)は様々な薬物のホストとして機能し、複合体を形
成することが知られている。我々は、天然由来成分であるアルギン酸を CyD で架橋したゲル基材(CCAL)
を設計し、これに ODN を保持させた。ホストーゲスト相互作用を人の力で制御する概念を、図 1 に示す。
外力によって、主鎖のアルギン酸にはそれぞれ異なる方向へのストレスが加わり、それらを架橋する CyD
にも、一時的に僅かな歪みが与えられると考えら
れる。結果としてホストーゲスト相互作用が影響
を受け、薬物が放出されると期待される。この動
作メカニズムは、コンピュータシミュレーション
でも実証することができた。
図1 人の力で薬物を放出するドラッグデリバリーシステム
の概念
ゲル材料は天然由来成分であるアルギン酸を主成分とし、これ
をCyDで架橋した。CyDは、1分子あたり3点でアルギン酸と繋
がっており、薬物はホストーゲスト相互作用によってCyD内に包
接される。ゲルに外力が加わると、主鎖のアルギン酸にはそれぞ
れ異なる方向へのストレスが発生し、それらを架橋するCyDに
も、一時的に僅かな歪みが与えられる。それによってホストーゲ
スト相互作用の結合定数が低下し、薬物が放出される。なおCyD
1分子あたり1点でアルギン酸と結合したゲルの場合には、加圧
に応じた薬物放出は認められない。
9 ■ 人の手で薬物投与を制御する新材料
患者に負担を与えない新たな治療手法の提案
CCAL を用いて実際にゲル材料を作成し、これに ODN を取り込ませて加圧を行ったところ、ゲルを 50%
の厚みになるまで圧縮すると、結合定数は半分に低下した。さらに 40%の厚みにまで圧縮すると、3 分の 1
となった。CyD をアルギン酸と 1 点でのみ結合させたゲル(CGAL)については、加圧による結合定数の低
下は認められなかった。つまり CCAL が図 1 の仮説の通りに機能し、うまくマクロな外力を、ナノスケー
ルの分子間相互作用操作に変換しているものと解釈できた。図 2 は 37℃緩衝液中における、CCAL からの
ODN 放出試験の結果である。ODN を含有させた CCAL もしくは CGAL を、人の手で押す力を模倣して定
期的に加圧したところ、CCAL については加圧に応じて薬物を放出することが確認されたが、このような挙
動は CGAL では認められなかった。CCAL のゲルについては、少なくとも 3 日間にわたって、加圧に応じ
た薬物放出を維持できることが分かった。
ホスト-ゲスト相互作用は DDS 技術において重要
な相互作用のひとつであるが、担体分子を適切に設計
することによって、それが人の手で与えられるような
マクロな機械力で制御できることが、本研究より示さ
れた。この発見は薬物投与の新しい方法論の提案であ
り、DDS 戦略の幅を大きく広げるものと期待される。
図2 加圧に応じた薬物放出(37℃、リン酸緩衝液中)
ゲルからの累積薬物放出量(上)と放出速度(下)。矢印で示す時間に
おいてゲルを30%もしくは50%の厚みにまで圧縮し、それを5分間
保持した。24時間以降の圧縮においては、矢印あたり5分の間隔を
挟んで上記圧縮を5回繰り返した。圧縮しない場合の薬物放出挙動も
併せて示す。加圧に応じて薬物の放出が起こっており、その効果が3
日にわたって持続していることが分かる。
発 表 文 献
1)H. Izawa, K. Kawakami, M. Sumida, Y. Tateyama, J. P. Hill, and K. Ariga: J. Mater. Chem. B 1(2013)169.
2)ニュートン 2013 年 6 月号,5 ページ
期待されるイノベーション
本研究はまだ基礎段階であるが、患者の生活の質を大きく改善する、新しい薬物投与法を提案するものと言える。この手法
では、患者の意思によって時と場所を選ばずに容易に薬物投与ができ、また投与に特殊な機械を必要としないという特長を有
することに加え、薬物が常に体内に準備されているという心理的安心感は、病状発症の抑制にも繋がる可能性がある。本技術
が一般的になればなるほど、軽微な病気にも応用が可能となる。花粉症なども、本技術で簡単に治療できる日が来るかもしれ
ない。
お問い合わせ先
生体機能材料ユニット 川上亘作
メールアドレス:
超分子ユニット 有賀克彦
メールアドレス:
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/jpn
NIMS 研究成果 ■ 10
6. チタンと骨との結合を3倍速くするコーティング法
研究の背景と狙い
矯正歯科で使われている骨膜下デバイスは、生体への侵襲が少ない点で優れているが、治療に利用出来る
までには最短でも 3 ヶ月程度の待機期間が必要になるという問題がある。本研究では、従来のデバイスの 3 ヶ
月後と同じ骨被覆率を 1 ヶ月で実現できるコーティング法を開発した。
研究の内容と成果
1.臨床ニーズ
歯科矯正では歯並びや骨の成長・吸収を制御するために、生体組織に対して規定された力を負荷できる装
置を利用して治療を行っている。例えばいわゆる「出っ歯」を後の方に引っ込ませるには、多くの場合に奥
歯と前歯の間に引張力を発現する装置を入れる。すると時間の経過とともに前歯と奥歯の間の距離が縮まっ
ていくが、奥歯が前に出る距離よりも前歯が下がる距離の方が大きいために、前歯を引っ込ませることが出
来る。しかし奥歯も多少は前に出てしまう。このような問題を解決するために、更には歯と歯の間だけでは
なく上顎と下顎の間などにも荷重を負荷できるようにするために、骨を固定原として利用する方法が研究さ
れている。
一つの方法としてはデンタルインプラントのようにスクリューを骨に打ち込んで利用することが考えられ
る。しかし骨への穿孔が必要であることからリスクが高くなるという問題が新たに生じる。これに対して、
骨に孔を開けずにすむよう、骨膜の下にデバイスを置き、骨と接合して用いる方法も提案されている。しか
しこの骨膜下デバイスは骨の表面という骨形成に必要な細胞の動員が骨内部よりも困難な場所で骨と結合す
る必要があるため、これまでの製品では HAp コーティングされたチタン材料を利用しても、骨に強固に結
合して治療に利用出来るまでには 3 ヶ月程度の時間を要しており臨床応用上の問題点となっていた。
2.成果の内容
今回開発した方法は、骨接合を促進するためにチタン材料にコーティングを施すものである。具体的には、
チタンに水酸アパタイト/コラーゲン骨類似ナノ複合体(HAp/Col)をディップコーティングするという手
法である。HAp/Col は、物質・材料研究機構が東京医科歯科大学とともに開発した材料であり、その骨補
填材料としての有効性は既に臨床試験において多くの患者で確認されている。
このコーティング手法の有効性は、直径 0.5 mm、長さ 12 mm の純チタンワイヤーを用いて、機械仕上
げのみの表面(以下、未処理)、および水酸アパタイトをコーティングした材料(従来の製品に対応、以下
HAp)を比較対照として、材料を骨膜下に埋植する動物実験で確認した。
接合強度をせん断強度試験にて測定した
結果、図 1 に示すように接合強度が無処理
で 2.8 N であったものが、HAp では 6.0 N
と 2 倍の改善を見せた。更に HAp/Col では
16.4 N と HAp と比較して 2.5 倍以上、未処
理と比較すると 5 倍以上の改善が認められ
た。
図1 骨との接合強度
11 ■ チタンと骨との結合を 3 倍速くするコーティング法
患者の負担を少なくする新技術
これまで市販されている製品は直径 7.7 mm の円盤形で形状が異なるため、接合強度の単純な比較はでき
ない。そこでデバイスの固定性の良否を判断するために有効な材料表面の骨被覆率(60%以上の被覆率が必
要と考えられている)で比較すると、4 週の時点で HAp/Col が 62.2%、HAp で 20%、従来品(オンプラント :
文献値)は 36.2% と、従来 3 ヶ月(12 週)を要していたものが、1 ヶ月( 4 週)で同程度の被覆率を達成する
ことができた。この数字は平均値であるが、臨床的には最悪の場合でも最低限の有効性を保証できるかどう
かが重要となる。4 週での比較を図 2 に示す。図中黒く見えるのはチタンワイヤーである。この時点では未
処理や HAp では最悪の場合に骨(茶色い部分)に接触しないで軟組織(図中ピンク色の部分)に覆われてい
る場合もあるのに対し、HAp/Col では常に安定した骨との結合が実現されている。
未処理
HAp
HAp/Col
図2 骨との接合状況
一般にデバイスの固定に必要な骨との接合強度については、300 N 以上の強度が必要と言われており、ま
だ強度的には十分ではない。しかし今回は試験片が小さく単純な棒状の形状で実験を行っている。臨床的な
大きさと形状においてデバイスを最適化することで強度を改善することが期待できる。現状の接合強度のま
までも規定の強度を達成することはデザインにより可能であり、更に形状を工夫して固定効果を高めるよう
に出来ることも確認済みである。
3.波及効果と今後の展開
このコーティングには医療用グレードのコラーゲンが原材料として含まれているため、従来の HAp に比
べると材料コストは多少増加する。しかし特別に高価な機器を要しないため、総合的には従来の HAp コー
ティングと同程度のコストで作製が可能と思われる。すでに実用化を目指して企業との共同研究もスタート
している。また所期の目的である歯科矯正用骨膜下デバイスだけでなく、人工歯根、人工関節など様々な分
野での応用も期待される。
発 表 文 献
1) M. Uezono, K. Takakuda, M. Kikuchi, S. Suzuki, K. Moriyama: J. Biomed. Mater. Res. Part B: Appl. Biomater., DOI:
10.1002/jbm.b.32913.
2)特願 2012-096056
期待されるイノベーション
ひと月程度でチタンと骨の直接結合が実現できるため、歯科矯正用骨膜下デバイスはもちろん、人工歯根での咬合開始時期
や、人工関節での歩行開始時期など早めることなど、患者の QOL を高める様々な用途での応用が期待できる。
お問い合わせ先
生体機能再生材料ユニット 菊池正紀
東京医科歯科大学 高久田和夫
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/jpn
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 12
7. 半導体一次元ナノ構造の機能化と応用研究
研究の背景と狙い
現在のトランジスタおよび太陽電池に利用されている材料の主流はシリコン(Si)である。しかしながら、
構造、機能等の革新的な変革なくしては、これ以上の性能向上は見込めない。そこで、高度に機能化した Si
系のナノ構造体を構築することで現行のデバイスを凌駕する新規材料の開発を行っている。
研究の内容と成果
1.高速トランジスタへの応用
トランジスタの性能向上に関しては、これまで素子寸法の微細化により推し進められてきたが、従来通り
のスケール則に従った微細化による高機能・高集積化には限界が指摘されている。そこで、次世代のデバイ
ス構造として、トランジスタの縦型立体構造化が提案されており、半導体のナノワイヤを縦型立体構造トラ
ンジスタのソース、ドレイン、チャネル材料に応用することが考えられている(図 1 )。ナノワイヤの細い伝
導チャネルを取り囲むようにソース、ゲート、ドレイン電極を垂直に配置した縦型構造では、トランジスタ
の高密度化・短チャネル化が図れるとともに、ゲートからの電場をチャネル周りの全ての方向から制御でき
るため、チャネル中のキャリア密度を効率的に制御できる。したがって、相互コンダクタンスが増加し、短
チャネル効果やサブスレッショールド特性が改善された超低消費電力のトランジスタとなる。
(b)次世代型:縦型立体構造
(c)
Si, Geナノワイヤ
(a) 従来型:平面構造
高集積
歪制御
界⾯制御
高速・低消費電力
ソース
n+-Si
ゲート
p-Si
ドレイン
高制御性
n+-Si
40nm
ドーピング
技術
位置・配列
制御
図1 (a) 従来型および(b) ナノワイヤを利用した次世代縦型トランジスタの比較図.(c) CVDにより成長したSiナノワイヤの
走査電子顕微鏡写真とその拡大図
半導体ナノワイヤは次世代トランジスタの
チャネルとして最も期待されている材料である
が、不純物散乱による移動度低下が解決されなけ
れば実用化は困難である。そこで、ナノワイヤ
を Si と Ge のコアシェル構造から形成し、それ
らのバンドオフセットの構造に基づいて不純物
をコア層或いはシェル層の一方に位置制御ドー
ピングし、不純物のドーピング領域とキャリア
の輸送領域を完全に分離した、不純物散乱を徹
底的に抑制できる新しいタイプの高移動度チャ
ネル材料を作製することに成功した(図 2 )
。こ
の特殊な構造は、ナノワイヤの特徴を最大限に
引き出させる優れた構造となっている。
13 ■ 半導体一次元ナノ構造の機能化と応用研究
(a)
20nm
(b)
B‐doped Si shell
undoped
Ge core
図2 (a) Ge/Siコアシェルナノワイヤの組成分析結果と(b)モデ
ル図.
未来のトランジスタから太陽電池まで
2.高効率太陽電池への応用
現在の太陽電池の主流は原料の安全性、資源の豊富性、変換効率の観点で多結晶 Si が用いられている。Si
を利用しているため比較的低コストであるが、材料の種類・構造等の変革なくしてはこれ以上の性能向上は
難しい。そこで、次世代の太陽電池材料として有望な一次元構造の Si ナノワイヤを機能的に構造制御し、Si
材料の削減による低コスト化および変換効率向上を両立した、新しい次世代太陽電池材料の開発を行ってい
る(図 3)。
Si ナノワイヤを利用した太陽電池の第一の特徴としては、個々のナノワイヤ内部に pn 接合を形成するこ
とで、一つ一つのナノワイヤが、極微小な太陽電池として働くことが挙げられる。第二に、ナノワイヤを利
用した太陽電池材料では、表面がモスアイ構造を呈していることから、表面反射による太陽光の吸収ロスを
大幅に軽減することができる。実際に、ナノワイヤを成長した基板は、黒色を示す。第三に、ナノ構造化に
よる光吸収効率の増大と先に述べた反射の低減から、Si の使用量を理想的には 1/100 以下まで低減させるこ
とができる。現在までに、内部に pn 接合を有する Si ナノワイヤを形成し、太陽電池セルの作製と評価まで
できている。現在、高効率化のための研究を行っている。
(a)
(b)
1 m
(c)
p n p
図3 (a) Siナノワイヤ太陽電池の作製法、(b)作製されたSiナノワイヤの走査電子顕微鏡像
と(c)単一Siナノワイヤの透過電子顕微鏡による観察像.
発 表 文 献
1) N. Fukata, M. Mitome, T. Sekiguchi, Y. Bando, M. Kirkham, J-I. Hong, Z. L. Wang and R. L. Snyder : ACS NANO
6(2012)8887.
2)M. Dutta, L. Thirugnanam, K. Sato and N. Fukata: Mater. Exp. 3 (2013) 1.
3)特願 2010-113778
期待されるイノベーション
高度に構造の制御された Si/Ge ナノワイヤをトランジスタ材料に応用することで、トランジスタの高速化・低消費電力化が
可能になる。Si ナノワイヤ内部に pn 接合を形成することで、Si でありながら従来の Si 太陽電池の性能を凌駕する高効率な新
規太陽電池材料の実現が期待できる。
お問い合わせ先
無機ナノ構造物質ユニット 深田直樹
ホームページ:http://www.nims.go.jp/group/g_atomicnetwork/index.html
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 14
8. ナノ組織高強度精密ねじの実用化
研究の背景と狙い
結晶粒の直径がミクロン(千分の一 mm)以下のサブミクロン微細粒金属は、世界中で研究がなされてき
たが、実用化例はなかった。我々は、高強度であるにも関わらず、高い成形性を持つ 200 nm 超微細組織を
開発し、その線材量産技術も確立して、ナノ組織高強度精密ねじとして実用化を達成した。
研究の内容と成果
1.結晶粒微細化とその問題点
サブミクロン微細粒金属は、世界中で極めて多くの研究がなされているにも関わらず実用化例はないの
は、第一に、せっかく結晶粒微細化して強度を著しく上げても、伸びが著しく低下してしまうこと、第二に、
超微細粒組織をもった材料を量産する技術がなかったことが原因である。
2.強度と成形性の両立に挑戦
まず、我々は、高強度であるにも関わらず、高い成形性の両立に挑戦した。多くの研究者は、結晶粒微細
化に伴う延性の低下を、第 2 相との複合化によって解決しようとしたが、必ずしも成功していない。私たち
は、むしろ第 2 相の全くない純鉄に近い組成を追求し、延性の一種である絞り特性を高めることによって、
成形性を良好な状態を実現できた。
高強度化
成形性低下
1m
高強度化
成形性良好
1m
図1 普通鋼(フェライト+パーライト複相鋼)の高強度化による成形性低下の例と
極低炭素超微細粒組織の持つ高成形性の実証例
例えば、図 1 の上に示すフェライト+パーライト組織を冷間加工すれば、1 GPa の強度は出せるが、ねじ
に成形したら割れてしまう。図 1 の下に示す純鉄に近い組成の極低炭素フェライト単相組織を 200 nm まで
微細化した。その結果、1.1 GPa の高強度と延性に指標である絞り値 80%の高延性が得られ、ねじ成形して
も割れのない高成形性を実現できた。超微細粒鋼は、普通鋼に比べ、数百倍の粒密度であり、これが高強度
を発現する。また、純鉄に近い組成なので、セメンタイトなどの破壊の起点となる第 2 相がなく、高成形性
をもたらした。
15 ■ ナノ組織高強度精密ねじの実用化
ねじ製造時のCO2排出量50%削減
3.超微細粒材料の量産化に挑戦
結晶粒微細化プロセスは世界中で多く行われてきた。ECAP 法などさまざまな方法が開発されてきたが、
いずれも実験室規模をでなかった。私たちは、圧延にこだわり、連続温間多方向圧延技術を完成させた。そ
れによって、超微細粒金属の量産化が可能になった(図 2 )。
図2 超微細組織鋼の量産コイル
(大阪精工株式会社と共同)
4.高強度精密ねじの量産と実機採用
この超微細粒鋼長尺線材を素材として、高強度精
密部品であるマイクロねじ製造に適用し、ナノレベ
ル微細組織を持ったねじとして世界初の実用化に成
功した。本ナノ組織ねじは、パナソニック初のスマー
トフォン P-07C(2011 年 8 月)に採用された。現行
の P-07D_ELUGA X に至るまで採用され続け、ね
じの累計製造個数は約 600 万個を超えた。
5.CO2 排出量削減
ねじ製造 1 トンあたり、490 kg の CO2 を排出す
るが、本ナノ組織ねじは、製造工程における 5 つの
熱処理の削減により、従来製造法に比べ CO2 排出量
50%削減を可能にした。
図3 パナソニック
スマートフォンP-
07Cに採用された
ナノ組織ねじ((株)
降矢技研と共同)
図4 CO2排出量比較
発 表 文 献
1) S. Torizuka, E. Muramatsu, T. Komatsu and S. Murty:Nanostructured metals and alloys 1, Woodhead publishing,
Cambridge UK, 715-746, 2011.
2)鳥塚史郎,村松榮次郎,井上忠信,長井寿:日本金属学会誌,72,8,571-580,2008.
3)特許第 4408617 号“成形品とその製造方法”
期待されるイノベーション
情報家電、自動車、医療用分野など、精密部品を必要としている分野は産業のほと
んどに及ぶ。熱処理省略高強度高信頼性部品の実現が期待できる。地球環境に優しい
高信頼性部品を、世界に広く供給できる。小さなねじとは言え世界で大量に生産され
るため、エネルギー問題、地球環境問題の解決に寄与できる。
お問い合わせ先
材料信頼性評価ユニット 鳥塚史郎
ホームページ:NIMS homepage, http://www.nims.go.jp/jpn
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 16
9. わずか数原子層のTa膜の挿入で電流が磁化におよぼすトルクが倍増
研究の背景と狙い
強磁性体の磁化の向きを電流で制御する技術は、電源を切っても情報が保持される不揮発性メモリや、動
作させるときだけ電流を流す省エネ論理演算集積回路への応用の期待が高まっている。本研究では、極薄の
強磁性層を用いたナノヘテロ構造において、金属層の膜厚をわずか数原子層程度増やすだけで、電流によっ
て強磁性層の磁化方向を反転させるトルクが倍増することを見出した。
研究の内容と成果
− 課題と背景 −
• 消費電力を大きく削減できる磁
気記録技術の確立が急務
− 強磁性体の磁化の向きを電気的
に制御するスピントロニクス技
術が近年発展 −
− 特に不揮発性情報処理技術の開
発が期待されている −
• 省エネ磁化制御技術の開発が課題
一般的な磁気記録のイメージ図㻌
S
S
N
磁石を近づけると…
N
磁化の向きが反転㻌
金属の中を動く電子も「スピ
ン」を持っている㻌
ン」を持っている
S
N
N
S
原子の集まり㻌
・個々の原子は「スピン」を持っている。強磁性体中ではその
スピンの方向がそろっており、「磁化」を形成する。㻌
・磁石を近づけて磁場を印加すると、磁化は反転する。消費
電力が小さい磁化反転技術の確立が必要となっている。㻌
スピンホール効果㻌㻙㻌タンタルに電流を流すと、スピンの流れができる㻌㻙㻌
- 普通の金属の場合 例:銅、アルミなど㻌
例:銅、アルミなど
電流㻌
電流
- 「スピン軌道相互作用」が大きい金属の場合 例:白金、タンタルなどの希土類元素㻌
例:白金、タンタルなどの希土類元素
電流㻌
電流
 㻌電子はスピンの向きによらずすべて㻌
電子はスピンの向きによらずすべて
㻌 㻌 㻌同じ方向に動く(電流と逆向き)㻌
同じ方向に動く(電流と逆向き)
17 ■ わずか数原子層の Ta 膜の挿入で電流が磁化におよぼすトルクが倍増
 電子の動く方向は、各々の持っているスピンの
」が発現㻌
向きで決まる「
」が発現
不揮発性情報処理技術への展開に期待
「ス
図㻌
図
㻙㻌最近発見された新たな磁化反転技術として期待が高まっている㻌㻙㻌
㻌㻌最適な材料、構造の探索、磁化反転機構の解明が課題㻌
強磁性体の
磁化方向
磁化方向㻌
電流を流すと磁
化が反転する!㻌
化が反転する!
電流㻌
電流
強磁性体㻌
強磁性体
(㻯㼛㻲㼑㻮㻕
㻯㼛㻲㼑㻮㻕
(㻯㼛㻲㼑㻮㻕㻌
金属
金属㻌
(タンタル㻕
(タンタル
(タンタル㻕㻌
電池
電池㻌
スピンホール効果によって、右向きスピン
を持った電子のみが磁性体に侵入
を持った電子のみが磁性体に侵入㻌
− 今後の展開 −
• 磁化に作用するトルクが大きくなる材料・構造の
解明 ➡ 省エネ磁化反転技術の確立
4
磁化に作用する力㻌
− 明らかになったこと −
• わずか数原子層程度の厚みのタンタルを挿入する
ことで、磁化反転に作用する力(トルク)が倍増!
• 磁化に作用するトルクの起源は、タンタル層で発
現する「スピンホール効果」に起因していること
が判明
3
2
1
1原子層:~0.3 nm
0
0.0
0.5
1.0
1.5
タンタル層の膜厚(㼚㼙)㻌
2.0
発 表 文 献
1) J. Kim, J. Sinha, M. Hayashi, M. Yamanouchi, S. Fukami, T. Suzuki, S. Mitani and H. Ohno, Nature Materials 12,
240(2013)
2) M. Hayashi, M. Yamanouchi, S. Fukami, J. Sinha, S. Mitani and H. Ohno, Appl. Phys. Lett. 100, 192411(2012)
期待されるイノベーション
MgO
• 原子レベルで積層膜の構成を制御し、界面特有の電子状態などを利用して新たな磁化制御技術を
CoFeB
確立
• 電源を切っても情報を保持する「不揮発性」情報処理技術の開発と、それらを用いた省エネ論理
演算集積回路への展開
1nm
お問い合わせ先
Ta
磁性材料ユニット 林 将光
ホームページ:http://www.nims.go.jp/apfim/spin/indexJ.html
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 18
10. 太陽光を利用した光水分解を可能にする高効率光触媒の理論設計
研究の背景と狙い
水素は環境に優しいエネルギー源として期待されており、低コストで水素を製造できる技術の開発が待た
れている。光触媒は太陽光を利用して水から水素を生成できる材料として期待されているが、明確な設計指
針が無かったために、系統的に効率を改善することが困難であった。そこで今回、計算機を用いた詳細な解
析によって有望な材料をあらかじめ選定すことで探索の負担を軽減し、新規材料の発見を促進する試みを実
施した。
研究の内容と成果
チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)は光触媒としての応用が期待されているが、太陽光の大部分を占める
可視光を吸収できない。そこで、クロム(Cr)などの遷移金属を添加する(チタンサイトを置換する)ことで
可視光吸収を増幅する試みがなされている。図 1 にクロム添加によって SrTiO3 試料に色が着く(可視光を
吸収する)様子を示す。近年、2 種類の元素を添加することで光触媒活性を改善する研究が進められている
が、添加する元素種の選定に明確な指針が存在しなかった。我々の詳細な理論的解析から(参考文献 1 )、系
のフェルミ準位を高くすることで 3 価のクロムが安定化され、光触媒活性が高くなることが示唆された(図
2 )。今回、この設計指針に基づき、様々な元素と Cr を共に添加した場合のフェルミ準位の変化を計算し、
最適な組み合わせを検討した。その結果、SrTiO3 中に伝導電子を生成する能力の高い La を Cr と共に添加
した場合に最も活性が高くなることが理論的に予測された(図 3a)。実際、この材料の水素発生効率が高い
ことが実験的に確認され(図 3b)、理論の正当性が実証された(参考文献 2 )。
本研究から、光触媒の開発に理論設計が有効であることが実証され、更に活性の高い材料の開発に向けて
新たな道を切り開いた。環境・エネルギー問題の解決に大きく貢献できるものと期待される。
図1 純粋なSrTiO2(左)とクロムを添加した場合(右)の試料の色
19 ■ 太陽光を利用した光水分解を可能にする高効率光触媒の理論設計
水素エネルギー社会の実現に向けて大きな一歩
図2 フェルミ準位の位置がCrの価数と光触媒活性に与える影響。(a)フェルミ準位が低いときには、高価
数(6価〜4価)のCrに起因する非占有準位に光励起電子が捕獲されるため活性が低下する。(b)フェルミ準
位を高くして非占有準位を占有準位に変えることで(3価のCrを安定化する)ことで、水分解反応が促進さ
れる。
図3 水素発生効率の理論予測と検証実験(a)各種元素をドープした場合のフェルミ準位の位置とCr濃度の
関係。光触媒活性を促進する低価数Crの濃度は、SrをLaで置換した場合にもっとも高くなることが理論的
に予測された。(b)Crと各種元素をSrTiO3中に共ドープした試料を水中に入れて可視光を照射した場合の水
素発生実験。LaとCrを共ドープした場合に最も活性が高い事が確認され、理論の正当性が実証された。
発 表 文 献
1) Pakpoom Reunchan, Naoto Umezawa, Shuxin Ouyang, and Jinhua Ye, Phys. Chem. Chem. Phys., 14, 1876-1880, 2012.
2) Pakpoom Reunchan, Shuxin Ouyang, Naoto Umezawa, Hua Xu, Yuanjian Zhang, and Jinhua Ye, Journal of
Materials Chemistry A, 1, 4221-4227, 2013 期待されるイノベーション
理論指針に沿って見通しよく開発を進めることで、太陽光と水から水素を高効率で生成できる夢の光触媒反応の実現が可能
となる。
お問い合わせ先
環境再生材料ユニット 梅澤直人
ホームページ:http://www.nims.go.jp/project/ERM_Theory/index-e.html
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 20
11. 昆虫ミメティクスによる新しい接着技術の開発
研究の背景と狙い
持続型社会の実現のため、強くくっつき簡単に剥がれるリサイクルしやすい次世代の接着技術の開発が求
められている。昆虫の優れた接着性を持つ足裏の毛状構造に着目し、ナノテクノロジーを用いた新技術開発
を行った。特に、これまで不可能と考えられていた水中での技術開発に取り組んだ。
研究の内容と成果
Force [mN]
昆虫が歩けない非着表面を発見
ナノテクで昆虫の歩行調査 1 接着・接合は被着表面の微細形状の影響を受けやすため、表面の微細形状に対する足裏の接着性の調査を
行った。その結果、100 nm 程度の表面粗さが接着の限界であることが分かった。
この成果は、接着・非着設計を可能とし、また化学薬品を必要としない環境にやさしい防虫技術に貢献する
ことが期待出来る。
ホストプラント上のハムシ
Gastrophysa viridula
12
10
8
6
4
2
0
800
nm
0
0
100
200
300
Surface roughness,rms [nm]
表面粗さに対するハムシの牽引力
10
µm
10
µm
0
ハムシが滑ってしまう表面の原子間力
顕微鏡像
ナノ構造を持つ表面のセンシング
ナノテクで昆虫の歩行調査 2 開発した非着表面上にハムシを載せると足が汚れていなくてもグルーミングを頻繁に行うことを観察し
た。摩擦の異なるナノサイズの微細形状表面上でのグルーミングの頻度を測定したところ、ハムシはナノス
ケールの表面形状の違いを感知し、摩擦の減少がグルーミングのトリガーとなっていることを世界で初めて
明らかにした。この成果より、ハムシのグルーミングの頻度を、微小構造に対する摩擦現象のセンサーとし
て用いる手法を開発した。
ハムシのグルーミングの様子
21 ■ 昆虫ミメティクスによる新しい接着技術の開発
足の裏に付着したガラスビーズ
の走査型電子顕微鏡像
グルーミングの頻度と摩擦の関係。
昆虫が[泡」を利用して水中を歩けることを世界で初めて発見
水中歩行調査 大気中で生息する昆虫(ハムシ)が、従来の予想に反し「水中」でも歩行できることを発見。
さらに、水中で「泡」の性質を巧みに利用する歩行メカニズムも解明した。泡は泡自身の被
着表面への接着性とハムシの足裏の水を弾いて剛毛を直接接触させる役割を果たしていた。
足裏の毛状構造は泡の安定な固定に役立っていた。
ぬれ性の異なる表面上を歩くハ
ムシの牽引力。グレーは水中、
白は空気中。疎水性の表面では
牽引力は変化せず、親水性の表
面では牽引力が小さくなる。
水中を歩行するハムシ
(右)水中固定しているハムシの足裏写真(裏側から撮影)。(左)大気中での足裏
写真。黒い点々は接触している足裏の剛毛
開発した「泡を利用した水中接着機構」 毛状接着機構は、繰り返し実験を行っても泡が安定に固定されて
おり、水中を移動する構造体への応用に期待できる。
開発した「泡を利用し
た水中接着機構」を用
いた、おもちゃ(黄色
のブルドーザー)の水
中接着の例。
開発した毛状接着構造。Cassie Baxter 状態を水中で維持。
発 表 文 献
1)特開 2011-246076
2)N. Hosoda and S. N. Gorb, Proceedings of the Royal Society B(Biology)278(2011)1748
3)N. Hosoda and S. N. Gorb, Proceedings of the Royal Society B(Biology)279(2012)4236
期待されるイノベーション
環境調和型技術に求められる環境影響化学物質の不使用や「接着と分離を繰り返せる未来の接合技術」や接着・非着の開発
研究が推進される。特に、クリーンな水中接着技術の開発研究に活用でき、将来は水中監視・作業ロボットへの応用も考えら
れる。
また、先端科学技術であるナノテクノロジー分野と、自然界の生物に学ぶバイオミメティクス(生物模倣)分野を融合させ
た研究手法により、自然にやさしいクリーンな技術開発が推進されることにも期待される。
お問い合わせ先
ハイブリッド材料ユニット 細田奈麻絵
ホームページ:http://www.nims.go.jp/lfn.cluster/index.html
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 22
12. 高出力光源を守るファラデー回転子
研究の背景と狙い
高出力半導体レーザー加工機の利用が産業界で進む中、ファラデー回転子の重要性が増している。ファラ
デー回転子にはベルデ定数が大きく、高出力レーザーに対する耐性が高いと同時に小型であるなど、多くの
特性が要求される。本研究ではこれら全ての要求を満たす新しい材料、Tb3(Sc1-xLux)2Al3O12(TSLAG)単結
晶を開発し、その事業化に短期間で成功した。
研究の内容と成果
レーザー加工機は金属や樹脂、半導体など、幅広
回転角
い素材の精密加工ができ、産業界で広く利用され
始めている。レーザーの光源には半導体レーザー
ファラデー回転子
ファラデ
回転子
(LD)が用いられるが、加工を行う際、対象物から
磁場
レーザーが反射され光源の LD まで戻ってくる(反
射戻り光)。これが LD の劣化、破壊をもたらすた
め、LD を反射戻り光から守る光アイソレーターの
重要性が増している。
偏光面
光アイソレーターの核をなすものがファラデー回
入射レーザー光
転子である。これは磁場下でレーザーの偏光面を回
図1 光アイソレーターの模式図
転する素子であり、回転能(ベルデ定数)が大きい
程よい。従来 Tb3Ga5O12(TGG)単結晶が用いられて
陽イオン
きたがベルデ定数が不足、結晶育成が困難なため品
酸素イオン
質と生産性が悪く歩留まりが悪いなどの問題があっ
A
た。実際にはこれ以外に適当な材料がないため使用
されてきたという側面が強い。TGG の欠点を克服
する材料として Tb3Al5O12(TAG)単結晶が研究され
C
た。TAG はベルデ定数が大きく特性は良いのだが、
D
非調和溶融組成を有するためファイバーサイズの単
結晶しか得られないという問題を抱えていた。
図2 ガーネット型構造の模式図
本研究ではこれらの問題を解決する新しい材料、
TSLAG は全波長域において TGG よりも高い透過
率と約 20% 大きなベルデ定数を示した。ベルデ定
数(V )と吸収係数(α)から算出される性能指数
においては、TSLAG は TGG を圧倒的に凌駕した。
TSLAG はイオン半径のバランスを考慮すること
で設計した材料である。ガーネット型構造は一般に
性能指数 V/(radT-1)
Tb(Sc
3
1-xLux)
2Al3O12(TSLAG)単結晶を開発した。
TSLAG
TGG
40
20
{C3}[A2](D3)O12 と表されるが、TAG の場合 [A] サイ
トの Al のイオン半径(0.535 Å)が {C} サイトの Tb
のイオン半径(1.04 Å)の約半分である。
0
400
600
800
波長 (nm)
図3 性能指数の比較
23 ■ 高出力光源を守るファラデー回転子
1000
レーザー加工機の光アイソレーターとして実用化
そこで TAG の [A] サイトを Al よりも大きなイオン半径 を持つ Sc(0.745 Å)と Lu(0.861 Å)で置換する
ことで TSLAG を設計した。このようにイオン半径のバランスをとることでガーネット型構造が安定化し、
直径 1 インチのバルク単結晶が容易に得られた。
ファラデー回転子は加工機の高出力光源に耐える必要がある。そこで高出力レーザーに対する耐性試験を
行った結果、TGG は砕け散ったが、TSLAG には巨視的欠陥の一つも入らず極めて優れたレーザー耐性を
示した。消光比を測定したところ最大で 46dB を示し、圧倒的に TGG を上回る品質も示した。このように
TSLAG はレーザー加工機のファラデー回転子として、従来の TGG の欠点をおよそ全て克服する優れた材
料であることが分かった。これらの結果を元に TSLAG 単結晶を用いた光アイソレーターを設計、試作した。
TSLAG 単結晶、並びに光アイソレーターは(株)フジクラにて実用化となった。同社からは社長賞が授
与された。現在は直径 2 インチの高品質単結晶が再現性良く得られている。ベルデ定数が大きいことは光ア
イソレーターに使用する NIB 磁石が小さくてすみ、小型化が可能となる。再現性良く高品質大型単結晶が
得られることは歩留まりが良いことも意味するなど、TSLAG はデバイス面でも大きなメリットを生んでい
る。材料開発からわずか数年で実用化をなしたことは材料研究の一つのモデルケースといえるであろう。
図4 直径2インチのTSLAG単結晶((株)フジクラ)
図5 光アイソレーターの試作品
発 表 文 献
1)E. G. Víllora, P. Molina, M. Nakamura, K. Shimamura, T. Hatanaka, A. Funaki, K. Naoe:Appl. Phys. Lett. 99(2011)
011111.
2)E. G. Víllora, K. Shimamura, T. Hatanaka, A. Funaki, K. Naoe : Fujikura Tech. Rev. 41(2012)25.
3)島村清史、E. G. Víllora、畑中翼、船木秋晴、直江邦浩:未来材料 12(2012)22.
4)特願 2011-537270
期待されるイノベーション
TSLAG 単結晶は世界で最も優れたファラデー回転子として知られるようになり、波長 1 µm 帯のレーザー加工機用光アイ
ソレーターとして実用化された。性能指数が示すように TSLAG は可視域でも優れたファラデー回転子であり、超小型高性能
デバイスの実現が可能である。今後は次世代高密度光記憶装置などへの搭載も期待される。
お問い合わせ先
光・電子材料ユニット 島村清史、Encarnación G. Víllora
ホームページ:http://www.nims.go.jp/group/oscg/index.html
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 24
トピックス ナノテクノロジープラットホーム 目的
ナノテクノロジーは、学術のみならず資源・環境・エネルギーやライフなど幅広い産業の技術革新
を先導する基盤技術として、世界各国で重点的に研究開発が行われている。ナノテクノロジーネット
ワーク(H19 〜 H23)の後継として平成 24 年 7 月から 10 年の計画で開始されたナノテクノロジープラッ
トフォームプロジェクトは、ナノテクノロジー研究に関わる最先端の研究設備とその活用のノウハウを
有している研究機関が全国的な施設共用基盤を形成し(図 1 )、施設・設備共用を通じて産学官の研究
者による共同研究の促進と、利用者に最短の課題解決に向けたアプローチを提供することを目的として
いる。プロジェクトは、微細構造解析(10 機関)、微細加工(16 機関)及び分子・物質合成(11 機関)の
3 つの技術領域プラットフォーム(PF)と、さらにプロジェクト全体の調整と活動支援を行うセンター( 2 機
関)の合わせて 39 組織からなる。3 つの技術領域にはそれぞれ代表機関が置かれ、代表機関は、各領域の運
営・活動とりまとめ、実施機関は、各機関における共用設備運用組織のもと研究支援活動を行う。
NIMS ナノテクノロジープラットフォームの概要
NIMS では、3 つの技術領域にそれぞれ実施機関として参画しているほか、微細構造解析 PF の代表機関
ならびにセンター機関を運営している。図 2 には、NIMS が参画している微細構造解析、微細加工、分子・
物質合成分野での支援装置群の概要を示す。微細構造解析では、0.1 nm の原子レベルでの分解能の電子顕
微鏡、Al、Mg、Ti のような重元素イオンの構造まで分析できる世界最高レベルの 930 MHz 強磁場 NMR、
SPring 8 の高輝度放射光を利用した X 線回折、電子状態解析装置等を提供している。また、半導体から金属、
セラミックスまでの数 nm での微細構造パターンを作製・加工できる微細加工装置群、有機化合物の合成や
細胞や遺伝子レベルでの生体材料の構造を決定する分子・物質合成解析設備群などが用意されている。全国
の PF に参画している機関は、それぞれ特色ある装置や専門的研究により、ユーザが求めるほぼほとんどの
支援分野をカバーしている。現在、NIMS の PF に登録されている装置群は約 70 台、PF 全体で約 600 台と
なっている。
図1 ナノテクノロジープラッ
トフォームプロジェクト推進
体制
ナノテクノロジープラットフォーム全体の調整・とりまとめを行うセンターは NIMS と科学技術振興機構
(JST)の共同により運営されている。センターは、プロジェクト全体の運営調整・交流促進と推進エンジン
としての役割を担っている。主な業務は①事業全体の調整・推進、②総合的なユーザ窓口・交流促進、③企
業連携・分野融合、ならびに④人材育成支援・国際連携推進である。
25 ■ ナノテクノロジープラットホーム
-施設共用による研究・技術開発の新たな展開ー
)%PF PF
?@GHDAF
GHL%,
L
,:15
L,+(%=
L&$!"
L0/.53N658
L+%/915
L3;ABK915
L:72-9459
L'PF
>
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#*>IABAJMEKC>)
図2 NIMSナノテクノロジー
プラットフォーム支援領域
①事業全体の調整・推進においては、各 PF 代
表者会議の開催や各 PF 内の活動状況の把握のた
めの実施機関の訪問などの活動、②総合的な窓口・
交流促進では、ナノテクノロジープラットフォー
ムの総合的なユーザ窓口としての Web 機能の構
築(http://nanonet.mext.go.jp/)
(図 3 )を行ってい
る。事業の案内、相談窓口(クイックアクセス)、
利用方法、全国のナノプラットに登録されている
共用設備一覧の他、成果事例紹介、最新ナノテク
ニュース、イベント情報・カレンダー、Web マガ
ジンなどを提供している。交流促進では、PF 全
体交流のための総会、事業説明会、学協会シンポ
ジウム等の企画、さらに、ナノテクノロジーの国
際シンポジウムの開催などの活動を行っている。
③全国に配置した連携推進マネージャーによる試
行的利用等による新規ユーザ開拓、試行的利用等
による産学官の共同研究の促進を図っている。④
PF を活用した学生研修・支援従事者交流、米国
図3 ナノテクノロジープラットフォームWEBページ
の施設共用ネットワーク NNIN など海外での学生
研修、また、若手研究者育成のための米国、欧州
ならびにアジア等とのワークショップも企画・実施している。
ナノテクノロジープラットフォームは、微細構造解析、微細加工、分子・物質合成の分野の実施機関なら
びにセンター機関の一体的な取り組みにより、施設共用のネットワークによる新研究分野・新技術領域、並
びに新産業創出支援と人材育成を目指している。
お問い合わせ先
ナノテクプラットホームセンター センター長 野田哲二 運営室長 平原奎治郎
ホームページ:http://nanonet.mext.go.jp/
メールアドレス:
NIMS 研究成果 ■ 26
2012年度運営に関するデータ集
● 論文被引用数
● 常勤職員数の推移
● 特許出願・実施料収入の推移
● 外部資金等の獲得状況
● 科学研究費補助金の獲得推移
● 機構の組織(平成24年度末現在)
27 ■ 2012年度運営に関するデータ集
2012年度運営に関するデータ集
論文被引用数
論文被引用数
論文被引用数ランキング (Materials Science)
独法化前
独法化後
(1996 – 2000)
Rank
日本の研究機関のみ
2008 – 2012
(2008 – 2012)
Institution
Citations
Rank
Institution
Citations
Rank
Institution
Citations
1
マックスプランク研究所
4,886
1
中国科学院
63,365
1
物材機構
13,687
2
東北大学
3,990
2
マックスプランク研究所
18,764
2
東北大
11,612
3
カリフォルニア大学
サンタバーバラ校
3,204
3
シンガポール大学
16,614
3
産総研
9,787
4
マサチューセッツ工科大学
3,095
4
マサチューセッツ工科大学
13,850
4
東京大
8,698
5
ロシア科学アカデミー
3,026
5
物質・材料研究機構
13,687
5
JST
7,815
6
ケンブリッジ大学
2,570
6
清華大学
13,128
6
大阪大
7,297
7
産業技術総合研究所
2,561
7
ノースウェスタン大学
12,561
7
京都大
6,112
8
ペンシルバニア州立大学
2,517
8
南洋理工大学
11,958
8
東工大
5,650
9
京都大学
2,443
9
東北大学
11,612
9
九州大
3,955
10
大阪大学
2,370
10
ジョージア工科大学
11,239
10
北海道大
3,307
…
…
31
世界第5位・国内第1位
…
金属材料技術研究所
無機材質研究所
※本ランキングは,平成25年5月のトムソン・ロイター
1,570
社のESIデータベースをもとに作成
常勤職員数の推移
(人 )
600
独法化前
500
独法化後
550
547
548
541
547
554
552
120
119
116
111
103
104
94
86
44
48
50
50
400
402
408
401
400
537
559
92
573
91
53
56
414
426
551
542
552
88
90
99
51
47
50
412
405
403
300
200
430
428
432
430
100
0
事務職員
エンジニア職員
研究職員
12年度 13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度 19年度 20年度 21年度 22年度 23年度 24年度
120
119
116
111
103
104
94
86
92
91
88
90
99
0
0
0
0
44
48
50
50
53
56
51
47
50
430
428
432
430
400
402
408
401
414
426
412
405
403
※各年度末の人数(役員は含まず)。
平成24年度の常勤職員数は平成25年3月31日現在の人数。
NIMS 研究成果 ■ 28
特許出願・実施料収入の推移
国内
600
外国
独法化後契約
516
独法化前契約
511
550
3
500
500
246
327
330
131
110
362
341
297
306
151
115
131
177
143
220
100
212
160
164
163
211
実
施
料
収
入
4
400
323
350
2
300
508
187
250
200
百
万
円
409
1
90
150
)
285
270
413
450
(
特 400
許
出
願 300
件
数 200
416
100
10
50
80
64
2
62
60
3
57
321
186
0
0
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H18
平均
H19
H20
H21
H22
H23
H24
外部資金等の獲得状況
公募型研究
受託研究
民間等の研究資金等
公募型研究
10,335
11,000
898
84
10,000
9,000
5,000
6,486
725
56
20
10
12
16
400
14
9,353
300
6,806
3,000
241
500
928
17
4,000
240
313
739
33
764
24
703
266
件数
獲得額(
百万円)
4,766
6,000
743
700
600
8,000
5,719
747
715
688
民間等の研究資金等
239
7,587
7,000
800
受託研究
4,931
493
488
433
5,714
450
361
200
3,821
2,000
100
1,000
0
0
20
21
29 ■ 2012年度運営に関するデータ集
22
23
24
20
21
22
23
24
科学研究費補助金の獲得推移
申請
採択
新規
採択率(NIMS)
35
500
438
450
400
29.1
398
350
300
200
100
88
95
百 500
万
円 400
10
102
59
50
15 %
5
857
481
740
609
442
319
534
)
150
獲
得 700
額 600
(
20.6
20.1
95
848
800
採
20 択
率
( )
件
数 250
900
25
286
1,097
1,100
30
350
25.1
23.9
1,089
1,000
379
継続
300
200
616
421
406
20年度
21年度
480
323
100
0
0
20年度
21年度
22年度
23年度
24年度
0
22年度
23年度
24年度
機構の組織(平成 24 年度末現在)
(平成23年度末現在)
NIMS 研究成果 ■ 30
◆本書の複製権・翻訳権・上映権・譲渡権・公衆送信権(送信可能化権を含む)は、
物質・材料研究機構が保有します。
◆本書に関するご意見・お問合せは下記担当までお願いいたします。
発行:独立行政法人 物質・材料研究機構
2013年 7 月12日発行
担当者:企画部門評価室/小野寺 秀博
〒305-0047 茨城県つくば市千現 1 - 2 - 1
電 話:029-859-2603
FAX:029-859-2201
E-mail:
物質・材料研究からイノベーションを目指して
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