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1.テーマ「卒業記念DVDの作成」
Ⅰ 「卒業記念DVDの作成」 長沼武志先生(北杜高校) DVDの作成についてはこの5年で大きな環境の変化があった。以前は快適なDVの編集には 専用のボードが必要であったが,PCのスペック向上によりIEEE1394端子さえあれば良 くなった。DVD-Rドライブも特別なものではなくなり,DVD-Rの価格も初めて卒業記念 DVDを作った頃は県内では1枚500円程度していたが,スピンドルなら今は40円ほどにな っている。DVDを作成するソフトも統合型で操作も簡単で安価になり,だれでも作成できる状 況となっている。 このような状況を受けて北杜高校では卒業文集などに代わり,卒業記念DVDをクラスで作る のが普通になってきた。作成は生徒,担任,あるいはその両方の合作である。20年3月にはC Dにデータ形式で焼いたものまで含めると,実に8クラス中7クラスが映像ディスクを用意し生 徒に配布した。もはや卒業式の定番となった感がある。 <DVDのメリット> ・コピーが容易 ・盤面印刷可能 ・映像が手元に残る ・クラス独自 ・校内の様子がわかる(保護者にも好評でした) など <DVDのデメリット> ・時間がかかる(素材選び,キャプチャ,編集など) ・操作の習得が必要(初めての場合は特に編集ソフトが大変) ・将来的にメディアが読み込めない可能性(紙と違って再生不可になる)など 今回は3回目の作成でもあり,3年間持ち上がりのクラスだったので素材は1年次からDV, 写真とも準備をしておいた。画質などの関係から結果として4時間3枚組に落ち着いた。こだわ った点は市販と同レベルの黒のトールケースの使用(Mロック式),何年かあとで見ても楽しめ るように生徒の一人一言を収録,動画とスライドショーの併用,卒業式当日の様子を収録(この ため最終HRでは一部分のみを再生して紹介,後日配布),ディスクの外周部はエラーが出やす いので,画質と容量の両立のためビットレートの調整などである。 実際に作成したものの写真を紹介しておく。<写真1>は表紙のパッケージである。左から順 に2003年度,2004年度,2007年度である。この写真ではわからないが,ケースやパ ッケージの紙は徐々に良いものになっている。<写真2>は07年度の中身で,Disc2とD isc3である。レーベル面は学園祭時に作ったクラスのTシャツやポロシャツを使用している。 また,Disc2の裏側にDisc1があり,その向こうにチャプターリストを載せたリーフレ ットがある。ケースの色はクリアーや白もあるが,DVD-Rを長期間持たせようと思うとなる べく記録面に光が当たらないことが望ましいのであえて黒を選択している。<写真3>はジャケ ット裏側でクラスのメンバーと担任,3年間の副担任の氏名や各学年の集合写真を載せてある。 <写真1> <写真2> <写真3> 各クラスで使用したソフトをあげておく。Microsoft Windows ムービー メーカー,ULEAD デジカメ DVD スタジオ 2,digitalstage LiFE* with PhotoCinema2, Adobe Premiere Pro など である。私が使用したのは,スライドショー作成に EPSON デジカメ de!!ムービーシアター 3, 動画編集に Thomson Canopus EDIUS Pro version 4 で ある。 <デジカメ de!!ムービーシアター 3 の良い点> ①簡単にできる(テンプレート) ②タイムラインを使い自由に編集できる「こだわり編集」モードもある(テロップ,ロール なども使える。また,テンプレートで作ったものの修正も可能) ③時間指定ができる(曲にあわせて効果の時間を自動設定) ④注目エリアの設定が可能(ズーム時などに効果のかかる目標エリアを指定可能) ⑤トリミングが可能(高解像度の写真から一部分だけを使用。あらかじめ Photoshop など で加工しておく必要がなく手間がかからない) 視聴覚室に LiFE*もあるが②以外の点でムービーシアターの方が使い勝手が良い。今回は書 き出した映像を EDIUS に渡したが,付属ソフトで DVD まで作成できるので価格を考えてもお すすめである。 < EDIUS4 の良い点> ①動作が軽い(Pentium4 クラスでもストレスを感じない) ②マルチフォーマット・リアルタイム混在編集(mpg と AVI を同じタイムラインで編集) ③無限のアンドゥ・リドゥ ④シーケンス機能(タイムラインの入れ子構造が可能。シーンごとの編集に重宝) ⑤マルチカム編集(スイッチャーと同じ。今回は最大6トラック使用) 現行のバージョンでは Premiere Pro や Final Cut も⑤は搭載しているが,北杜高校の学園祭 ではクラス発表で生徒が映像を作ることが多く,発表の様子も左右2台のカメラで収録している ので3トラックの切り替えは必要で,学園祭の発表を後日編集するにはとても便利である。また, 今回の編集で一番便利だったのは④で,行事ごとに編集してあとで1本につなげた。書き出しを しなくても別のタイムラインの素材として利用できるのはありがたい。もとのタイムラインを編 集するとつなげた方も自動的に変更されるので効率的に作業を進められた。 実際に DVD を作成するためには,このあとエンコードとオーサリングが必要である。簡易的 なものならもちろん EDIUS の中でもできるのだが,こだわったものはできない。この作業に使 ったソフトはエンコードに Pegasys TMPGEnc 4.0 Xpress , オーサリングに TMPGEnc DVD Author 2.0 である。統合型のソフトだとビットレートを細かく変更することができないが, TMPGEnc 4.0 は 50Kbps ずつ調整ができ可能な限り高画質にできる。また,マルチコアに対応 しており,Core2 Quad では実時間の 2/3 程度で mpeg2 に変換が終わった。高速である。DVD Author 2.0 は,当時のこのクラスとしては珍しく音声に AC-3(ドルビーデジタル)を使えるこ とが魅力だった。動作も軽く扱いやすい。現行のソフトは TMPGEnc Authoring Works 4 とな っており,Blu-ray も扱える。個人で購入できるソフトでは使える方だと思う。学校であれば, Adobe や Apple の suite の方がさらに細かいことができる。特殊効果をつける Adobe After Effects は学園祭や DVD のオープニングなどで使用したが,あればおもしろいソフトである。 作成上のこつとしては,素材は日頃からためておくことである。行事などはこまめに自分で撮 っておくと良い。撮影自体は生徒に任すとおもしろくて使えるものが多い。デジカメは解像度も 高めにしておくと素材としては使いやすい。素材の選定やキャプチャなどは時間がかかるので余 裕をみて長期休暇などに始めた方が無難である。また,編集ができる生徒を育てることも大事で ある。1 年次から学園祭でビデオ作品を作らせたのでソフトの扱いもなれているし,生徒の感性 は非常におもしろいものを生み出す。今回も私が作った 3 枚以外に NG 集1枚を生徒が作り好 評だった。 生徒になにか記念になるものを残したいとの思いで始めてみたが,映像の力は強く,自分自身 にとっても良い思い出になっていて,時々眺めている。作業は長くなるので,苦しいが生徒の喜 ぶ顔が楽しみにもなる。パッケージなどもこだわり,少し手間をかけると良いものになる。既に Blu-ray も立ち上がってきているが,様々な家庭がある中で再生環境を考えるともう少し DVD だと思う。機会があったら是非作成して欲しい。