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21PF05 - 海外農業開発コンサルタンツ協会

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21PF05 - 海外農業開発コンサルタンツ協会
パラグアイ共和国
パラグアイ国東部農業生産強化計画調査
チリ共和国
持続的参加型総合農村整備実施計画調査
プロジェクトファインディング調査報告書
平成 21 年 12 月
社団法人 海外農業開発コンサルタンツ協会
ま
え
が
き
本報告書は、パラグアイ共和国及びチリ共和国において平成 21 年 11 月 29 日から 12 月 22 日
までの 24 日間に実施された「パラグアイ国東部農業生産強化計画」と「チリ国持続的参加型
総合農村整備実施計画調査」のプロジェクトファインディング調査について取りまとめたもの
である。
パラグアイ共和国の基幹産業は農牧林業であり、同国の経済は農牧林業の生産及び同産品の輸
出に依存している。従って、農牧林業は同国の経済において最も重要な位置を占め、農作物の
生産と国際価格の動向は同国の経済を大きく左右する状況である。同国の経済発展には基幹産
業である農牧業の強化は欠かせず、MERCOSUR 関連諸国、特に近隣のアルゼンチン、ブラジル
への農産物輸出強化は喫緊の課題である。
「パラグアイ国東部農業生産強化計画」は、同国東部地域にあるヤシレタ貯水池を水源とした
約 15 万ヘクタールの農業開発であり、地域の農牧業の中格農家等を中心とした農牧業の活性
化を通じて、雇用の創出と小農の生活向上を目指した農業生産強化計画である。これは、ODA
の重点課題の一つでもある「持続的成長」の観点から、中長期的な同国の農牧業支援の一環と
した案件の形成である。
現在、JICA の技術協力として「小農支援のための総合的農村開発」が進行中であるが、同国
の農業生産強化には東部地域の全体的な農牧業の活性化と底上げが求められ、生産の安定、自
給率向上による貧困削減に加え、これまで培った農牧業の技術を礎にした生産拡大および域外
輸出による持続的な開発を視野に入れることも重要である。
一方、チリ共和国は経済の大部分が輸出により成り立っており、農業関連製品は輸出品目の第
二位を占めており、ラテンアメリカの中でも工業化された国の一つである。然しながら、全人
口の約 30% がいまだ貧困層に当たると言われており、これらの貧困層は、相対的に天水農業
による零細農業を営む南部の農村部に多く偏在しており、政府は貧困層への対策を重要政策課
題として掲げている。
これらの天水農業地域への対策としては、
「中南米西部諸国等土壌浸食対策調査」が実施され、
その成果として、1994 年に住民組織による水・土壌保全連絡網が整備されるとともに、1995 年
には水・土壌保全委員会が設置され、水と土壌の保全を踏まえた小規模灌漑技術を各農家に導
入し、併せて栽培作物の多様化等による農業収入の増大を図ることを目標とした活動が提言さ
れた。これを受けて国際協力機構は 2000 年 3 月から 5 年間のプロジェクト方式技術協力「チ
リ住民参加型農村環境保全計画」(CADEPA) が開始された。CADEPA はチリ内陸乾燥地における
住民参加型持続的農業と環境保全のための技術を開発し、小農支援モデルを形成する内容を包
含している。
「チリ国持続的参加型総合農村整備実施計画調査」はこれまで実施してきた日本の支援、
「土
壌保全を考慮した環境配慮型の農業」、
「貧困削減および持続的な農村部の開発に資する住民参
加型アプローチを使った農村開発」等の基本技術を利用し、チリ国の適用可能な地域に対して
面的に展開する為の基礎調査と実行プランの検討である。また、農業に不可欠な水源が地域住
民の衛生および健康面に影響を与える現状を考慮した集落排水の観点を盛り込む。なお、この
アプローチは同国の重点課題である観光開発にも資することが期待される。この案件を通じて、
我国の援助重点課題である貧困削減、環境と開発の両立への支援を行うことができる。
上記のような状況にあるパラグアイ共和国及びチリ共和国の農業・農村に対して、我が国農業
の経験を活用した支援がなされ、地域の農民の生活改善、貧困削減、環境保護及び農業生産振
興に資するとともに、当該諸国と我が国の友好がより一層強化されることを願うものである。
調査の実施に当たり、パラグアイ共和国及びチリ共和国関係機関の多大な協力を得た。
ご指導、ご協力いただいた両国大使館、JICA 事務所、政府関係諸機関の方々に深甚なる謝意
を表する次第です。
平成 22 年 2 月
ADCA パラグアイ共和国及びチリ共和国
プロジェクトファインディング調査団
高田 一樹
保久 太洋
目
次
まえがき
I. パラグアイ共和国
1
2
パラグアイ共和国の一般状況
1.1
自然条件 ························································································I - 1
1.2
社会状況 ························································································I - 2
1.3
経済状況 ························································································I - 3
1.4
農牧業の現状 ··················································································I - 4
1.5
農業開発援助の動向 ·········································································I - 5
パラグアイ国東部農業生産強化計画調査
2.1
計画地域の現況 ···············································································I - 8
2.2
計画の背景および目的 ······································································I - 13
2.3
計画の必要性及び優先度 ···································································I - 13
2.4
計画の妥当性 ··················································································I - 13
2.5
計画の概要 ·····················································································I - 14
2.6
総合所見 ························································································I - 15
II. チリ共和国
1
2
チリ共和国の一般状況
1.1
チリ共和国の一般状況(I.N.E.による国勢調査 2002 より) ····················II - 1
1.2
政治体制 ························································································II - 1
1.3
自然条件 ························································································II - 3
1.4
社会状況(INE による国勢調査 2002 より) ········································II - 5
1.5
経済状況 ························································································II - 7
1.6
農牧業の現状 ··················································································II - 8
1.7
農業開発援助の動向 ·········································································II - 13
チリ国持続的参加型総合農村整備実施計画調査
2.1
計画地域の現況 ···············································································II - 18
2.2
計画の背景および目的 ······································································II - 19
2.3
計画の必要性 ··················································································II - 21
2.4
計画の妥当性 ··················································································II - 22
2.5
計画の基本構想 ···············································································II - 22
2.6
計画の概要 ·····················································································II - 24
2.7
総合所見 ························································································II - 25
C-1
添付資料
1. 調査団員略歴····················································································· 添付-1
2. 調査日程表························································································ 添付-1
3. 面談者一覧························································································ 添付-2
4. 収集資料一覧····················································································· 添付-5
5. 写真 ································································································· 添付-6
C-2
I.
パラグアイ共和国
1
パラグアイ共和国の一般状況
1.1
自然条件
パラグアイ共和国(Repubica del Paraguay) は、
南米大陸のほぼ中央に位置し、北をボリビア、東
をブラジル、南と西をアルゼンチンの 3 カ国に囲
まれた内陸国である。面積は約 41 万平方キロメー
トルで日本の約 1.1 倍である。国土は、最も標高
の高いアマンバイ山地・マラカジュ山地でも海抜
600~850m程度で、いたって平坦であり、北から
南に流れるパラグアイ川によって東側と西側に二
分されている。国土の 40%を占める東部パラグア
イ(ブラジルおよびアルゼンチンとの国境地帯)
には「テラローシャ(Tierra Roja)土壌」と呼ば
れる農業に適した肥沃な赤土が広がっており、多
くの日系移住地もここに集中している。
一方、残りの 60%を占めるチャコ地方と呼ばれている西部パラグアイは、平坦で草原および潅
木地帯となっており、人口も少なく主に放牧に利用されている大平原となっている。
パラグアイ国東部地域は、ラプラタ川水系の 2 大支流であるパラグアイ川とパラナ川に挟まれ、
森林の多い丘陵と平原が波状に交錯した、なだらかに波打った地形と平坦な低平地で特徴付け
られている。パラグアイ川がパラナ川に合流する南西部の沖積低地は広く、毎年のように洪水
が発生する。パラナ川沿いにはテラローシャと称される肥沃な赤褐色ラトソルが、270 万 ha に
わたって広く分布している。
気候は亜熱帯気候に属し、西部(チャコ地方)か
ら東部(ブラジル国境地帯)へ向かうにつれて年
間降雨量が増す。また、内陸性の気候のため、気
温の年較差が大きく、アスンシオンの年間平均気
温は約 23 度だが、真夏(11 月~3 月)には 40 度
近くになり、真冬(6 月~8 月)には場所によって
は降霜が見られることもある。 また気温の日較差
も激しく、特に春(9 月~10 月)および秋(4 月
~5 月)は早朝と日中の温度差が 20 度を超え、一
日のうちに四季があると言われている。
I-1
地理的には亜熱帯気候区に属すが、湿潤亜熱帯気候であり、年較差、日較差、年次変動が大き
い大陸性の特徴を示している。季節は、11 月から 3 月までの長い夏と、6 月から 8 月までの短
い冬に大きく分けられる。月平均気温は、17~27℃であるが、夏季には 40~42℃を越えるこ
とも一般的であり、冬季には、東部のイタプア、アルトパラナ地方では氷点下になることもあ
る。年平均降水量は 1,300~1,900 mm で、西部から東部にかけて帯状に増加する。
1.2
社会状況
人 口
パラグアイ国の人口は約 600 万人(2006 年、DGEEC)と推計される。人口密度は約 14.5 人/km2 で
ある。人種構成は、先住民と白人との混血が全体の 97%を占めており、残りの 3%が欧州系の
移住者、純粋な先住民、日系人等の東洋人である。
人口はアスンシオン市(52 万人)、エステ市(33 万人)、エン
カルナシオン市(7 万人)を結ぶ三角地帯にその 80%が集中し
ている。東部地域の人口密度は 37.5 人/km2 である。首都アス
ンシオン市とセントラル県に広がる都市部も含めたアスンシオ
ン首都圏は 170 万人近くの人口を擁する大都市である。パラグ
アイ国では、徐々に人口増加率は低下しているが、年増加率は
依然 2.2%(1992-2000 年)と高い。そのうち、都市人口の年増
全国主要人口統計指数
(2000~2005)
出生率
26.94%
死亡率
5.71%
乳幼児死亡率
35.5%
合計特殊出生率
1.7%
平均寿命
70.76 歳
出典:統計局(DGEEC)
加率は 3.4%で、その中でもアスンシオン市に隣接するセントラル県の都市人口増加率は年率
5.5%、またブラジル国境のカニンデジュ県は年率 7.2%と高い伸びを示している。他方、全国平
均の農村地域の人口増加率は、年率 0.8%しかなく、人口が農村部から都市部に急速に流出する
傾向にある。これらの都市人口、農村人口の傾向は、県別にも異なり、東部地域の北端コンセ
プシオン県及び南端ニェエンブク県では農村人口増加率がマイナスになっており、人口が流出
している。また東部地域の中央部の県では小農の全農家に占める割合が高く、逆にブラジル国
境付近では同比率が低く大農・中農が多くの農地を占有している。
県
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
アスンシオン
コンセプシオン
サン・ペドロ
コルディジェラ
グアイラ
カアグアス
カアサパ
イタプア
ミシオネス
パラグアリ
アルト・パラナ
セントラル
ニェエンブク
アマンバイ
カニンデジュ
東部地域
15 プレシデンテ・アジェス
16 アルト・パラグアイ
17 ボケロン
西部地域(チャコ)
全国
人口
(2005)推計
値
519,647
189,749
346,564
260,248
192,530
469,910
149,399
504,736
111,438
236,945
670,072
1,722,691
82,188
122,874
163,610
5,742,601
94,532
11,708
49,809
156,049
5,898,650
面積
(km2)
117
18,051
20,002
4,948
3,346
11,474
9,496
16,525
9,556
8,705
14,895
2,465
12,147
12,933
14,667
159,327
72,907
82,349
91,669
246,925
406,252
人口密度 都市人口
(人/km2)
(2002)
4441.4
10.5
17.3
52.6
57.5
41.0
15.7
30.5
11.7
27.2
45.0
698.9
6.8
9.5
11.2
36.0
1.3
0.1
0.5
0.6
14.5
512,112
68,521
55,855
77,855
61,341
137,581
25,008
139,045
50,165
51,150
370,589
1,177,738
39,211
77,504
35,055
2,878,730
28,894
4,395
16,418
49,707
2,928,437
農村人口
小農世帯の
都市人口 都市人口
農村人口 増加率 (%) 小農戸数 全農家に占 貧困割合
率 (2002) 増加率 (%)
(2000)
(1992(1991年)
める割合
(%)
(%)
(1992-2002)
2000)
(1991年)
100.0%
0.22%
0
0%
13.1
0
0.00%
38.2%
2.02%
14,177
90%
47.8
110,929
-0.02%
34,211
17.5%
3.99%
92%
62.2
262,843
0.81%
33.3%
2.39%
18,776
86%
35.2
155,999
1.29%
18,080
40.7
34.3%
2.63%
91%
117,309
0.23%
31.6%
2.66%
40,854
94%
60.6
297,776
0.60%
17.9%
4.12%
19,538
96%
48.1
114,509
0.16%
35,351
87%
36.8
30.6%
2.31%
314,647
1.66%
7,591
81%
38.3
49.3%
1.28%
51,618
1.41%
23.0%
1.41%
24,448
89%
34.5
170,782
0.40%
17,378
81%
26.3
66.3%
4.87%
188,083
0.65%
86.4%
5.49%
8,836
68%
20.7
185,155
0.46%
7,011
84%
36.5
51.4%
2.25%
37,137
-0.33%
67.4%
2.12%
2,322
71%
39.4
37,413
0.11%
25.0%
7.22%
10,019
85%
38.5
105,082
1.98%
258,592
57.3%
3.42% 2,149,282
0.78%
35.0%
2.99%
36.2
53,599
2.25%
44.6
37.9%
-0.43%
7,192
-0.51%
39.9%
10.28%
32.9
24,688
0.76%
36.8%
4.41%
85,479
1.54%
56.7%
3.43% 2,234,761
34.4
0.80%
I-2
インフラ(道路網)
東部地域の幹線道路は、アスンシオン市、エステ市、エンカ
ルナシオン市の三大都市を結ぶ三角形の舗装された道路網で
あり、その沿線地域は開発が進み人口が集中している。近年、
これ以外の南北及び東西を結ぶ主要道路も舗装されたが、こ
れら以外の道路は都市部を除いて、簡易舗装か未舗装である。
特に農村地域では主要道路でも未舗装の土固めの道路であり、
降雨があると通行が不能となる場所が多く、住民の生活を阻
害している。
教育・保健衛生
農村地域の教育水準は少しずつ改善されているが、就学率は
依然として低い。特に、中学校への進学・就学率が、農村地
域では都市部に比べて大幅に低い。また、保健サービスへのアクセスは向上していない。特に
妊産婦死亡率が、農村地域で非常に高い。一方、上水道の普及率は 1990 年代から増加している
が依然として低い。また、下水処理施設はほとんどなく、衛生的なトイレの設置も不十分であ
る。このように、農村地域の生活環境は依然劣悪であり、改善が急務となっている。
行政区分
パラグアイ国の地方行政は県(Departamento)の単位で執行されており、全国は 17 県といずれ
の県にも属さない独立した首都のアスンシオン市で構成されている。県はさらに郡(Distrito)、
村(localidad)/字(Compania)に細分される。東部地域はアスンシオン市と 14 県及び 218
郡に区分される。
県行政の執行は、県民の直接選挙で選出される知事、県議会が実施する。一定の区域内に少な
くとも 3,000 人以上の居住者が存在し、財政的裏付けがあれば市(Municipio)として認定され
る。市長及び市議会議員は、市民の直接投票によって選出される。
パラグアイ国では、1992 年の新憲法、1994 年の県行政、市行政に関する法律により、地方分権
への方向性が示されたが、実際には、財政的にも人材能力的にも、与えられた権限と責任を果
たすことができない状況である。
1.3
経済状況
パラグアイの GDP 成長率は、1970 年代は 9%の成長を見せていた。1980 年代は 2.8%、1990 年
代の終わりには、マイナス成長となったが、2003 年は 2.6%を記録した。一人あたりの GDP も、
南米南部共同市場(MERCOSUR)加盟以前には、US$1800 ドル代となり、無償資金援助卒業国とな
ったが、2002 年には、US$1,000 ドルを切り、再び、無償資金対象国となった。パラグアイの人
口は 520 万人で、人口増加率は 2.5%、2002 年 8 月にパラグアイ統計局が実施した国勢調査に
よると、アスンシオンの人口は 127 万人で、人口の三分の一がアスンシオン周辺に住んでいる。
I-3
失業率は 10.8%、不完全失業率の 9%をあわせると、労働人口の約 20%が仕事に就いていない。
国連の定める一日一ドルの貧困率は 41%、ただし、国別の貧困ラインでは、21.8%になってい
る。1995 年、パラグアイは、域内貿易の拡大と経済成長を目指し、発足した MERCOSUR に加盟し
たが、周辺国の輸出の圧力に押され、1990 年代後半、経済は低迷、さらに悪化した。そのよう
な状況下、パラグアイ政府、大統領府企画庁は、我が国に対し、MERCOSUR 体制で生き抜くため
に必要な経済開発調査を依頼し、2000 年 10 月、パラグアイ国経済開発調査 EDEP が発表された。
EDEP では、規模の小さな市場の問題を克服するためには、輸出しか方法はなく、そのためには、
パラグアイのアグロインダストリーを強化することが必要不可欠であると提言している。
1.4
農牧業の現状
国立アスンシオン大学の調査(1983 年)によると、東部地域の約 90%は土地利用キャパシティ
ーの観点から、土地分級区分の II から V に含まれ比較的に肥沃である。
東部地域の 45%に相当する 72 万 ha に農用地のポテンシャルがあるが、現況では約 6%しか利
用されていない。一方、牧草地のポテンシャルは地域の 13%あるが、現況ではその 3.7 倍もの
土地が牧草地として利用されている。林業地のポテンシャルは地域の 35%あるが、約 13%しか
利用されていないとしている。しかし、近年の森林伐採による急激な大規模開発により、農用
地は拡大している。特に、ブラジル国と国境を接する地域での大規模な大豆農業の拡大が著しい。
パラグアイ国の主要な農産品は、大豆、綿花、食肉、木材等
主要作物の作付面積と生産量
である。伝統的に、マテ茶、柑橘類、ツング(油桐)、コー
作 物
ヒー等の永年作物を中心に農業生産が行われてきたが、1970
年代後半からは綿花や大豆の一年生作物の生産が急速に拡大
大豆は世界第 4 位の輸出国であり、最近の穀物価格の上昇に
より、去年の経済成長率は 6.4%を記録した。主要な製造業で
ある農産物加工業には、食品加工・飲料、紡績、製材、搾油、
245,000
180,000
20,990
165,490
サトウキビ
75,000
3,200,000
キャッサバ
300,000
4,800,000
トウモロコシ
410,000
1,100,000
大豆
2,200,000
3,800,000
小麦
365,000
620,000
12,970
45,220
綿花
永年作物
バナナ
コーヒー
製糖等があり、その大半は国内向けである。
柑橘類
パラグアイ国の農牧林業部門の国内総生産(GDP)に占める割
合は 25.1%(2006 年)、農産加工を含めると GDP の 36%を産
出している。また、農牧業産物の輸出額は全輸出額の 90%を
生産量(t)
一年生作物
サツマイモ
し、輸出産品の主力となった。
2005/06農年
作付面積(ha)
パイナップル
ツング(油桐)
2,570
3,040
26,785
360,805
4,975
72,450
12,000
45,600
ブドウ
475
2,130
マテ茶
30,480
86.08
出典:農牧業生産2005/06、統計総括、MAG
占めるが、そのうち 56.9%は一次産品である。
一方、就業人口は農業が 35%を占めている。農産加工の就業人口の 10%を含めると、全体で 45%
を占めることになる。このように、パラグアイ国は純粋な農業国であり、パラグアイ国経済は、
農牧林業の生産と生産物輸出に大きく依存している。
パラグアイ国の農産物のほとんど全てが東部地域で生産されている。一方、牧畜業は西部地域
の占める割合が大きく、東部地域の牛頭数は全国の 63%(2006 年、MAG)である。東部地域の
地域ごとの農業の概要は次のとおりである。
I-4
北
部 : 近年開発が開始された地域であり、社会インフラの整備が遅れている。国内移住地
が多数位置し、小農が多く国内で最も貧困な地域である。一方、東側は近年外国資
本による大規模開発が行われている。
中央部 : 昔からの伝統的な農村地域であり、小農の占める割合が最も高い。アスンシオン近
郊は、小農でも比較的に裕福であるが、北部に接する地域には国内移住地も多く、
貧困である。
南東部 : 肥沃なテラローシャ土壌及び降水量に恵まれており、農業生産に適している。ドイ
ツ系、ウクライナ系、日系等の入植地が点在しており中農を形成している。近年、
大森林が開拓され大豆の一大生産地となって、国家経済に寄与している。
南
部 : パラグアイ川がパラナ川に合流する沖積低地が広く分布しており、毎年のように洪
水が発生する。開発が遅れていたが、近年は中農による水稲栽培が盛んである。
2003 年、農業セクターは GDP の 31%(農業 21%、牧畜 8%、林業 2%)を占め、農業部門の輸
出総額はパラグアイの輸出総額の 85%を占めている。
パラグアイの農業人口は 31 万戸と推定され、労働人口の 36%が農業に従事している。農業セク
ターはパラグアイの基幹産業であるが、小農が農業の基本となっているために競争力が弱く、
MERCOSUR 加盟による本格的な市場の自由化の影響を大きく受けている。
農業セクターの阻害原因は、
1.
弱い競争力(MERCOSUR における競争優位があるのは大豆だけである。生産性の向
上、規模の経済の確保が必要;中核農家育成の欠落、流通に関するノウハウと体
制(農民組織、農協)
2.
持続的農業の必要性(森林伐採によって農地を拡大してきた)、
3.
MERCOSUR と WTO の多国間農業交渉(市場の自由化におけるルール作りの強化;品
質問題、検疫措置、
4.
1.5
農業加工品の多様化の必要性などである。
農業開発援助の動向
日本以外の援助国/国際機関の支援も多く、代表的なものとしては IDB の借款事業である「小
規模綿花農家開発支援プログラム(PRODESAL)
」がある。これは、小規模な綿花農家の生産安定
による収入改善を目的としている。一方、生活水準の向上に関する事業は、農牧省の「持続可
能農村開発プロジェクト(PRODERS)」及び大統領府の社会活動局(SAS)の「コミュニティ開発
プロジェクト(PRODECO)」等が代表的である。小農を対象とした活動の大半は、農牧省及びそ
の関連機関と SAS が所管しているが、多くの活動は成果が出ていない。
I-5
日本国の開発支援
対パラグアイ国別援助計画は、策定されていないが、日本国の援助方針は以下のように示され
ている。
パラグアイ国の援助を進めて行くことは「公平性の確保」に合致しており、同じく重点課題で
ある「貧困削減」や「持続的成長」の観点から意義が大きい。また、同国の基幹産業は農牧林
業であるが、経済は農作物の生産状況と国際価格に大きく左右されるため不安定である。この
ことから農業農村開発分野において開発援助を進め、社会的弱者や貧富の格差等を考慮し、同
国政府の貧困対策や経済改革等の取組を行うことは、ODA 大綱の基本方針の一つであり、最重要
課題だと言える。また、パラグアイへは 1936 年に邦人移住者の入植が始まり、現在約 7,000 人
の日系人移住者・在留邦人が在住している。伝統的に友好関係にあることからも、安定した協
力関係を維持することは重要であると言える。
また、パラグアイに対する協力は、無償資金協力、技術協力を中心に実施している。一般プロ
ジェクト無償資金協力は 1999 年をもって終了したが、ブラジル、アルゼンチンの経済危機の影
響でパラグアイの経済状況も悪化し、2003 年に一人当たり GDP が 990 ドルを下回ったことか
ら、2005 年より再び同対象国となった。そして、パラグアイの国家戦略や開発課題を踏まえ、
2007 年 7 月に第 4 回現地 ODA タスクフォースによる政策対話を実施し、
「貧困対策」、
「持続的
経済開発」、
「ガバナンス」を援助重点分野とし、
「貧困対策」については、人間開発、貧困層の
生計向上、「持続的経済開発」については、雇用創出、環境、「ガバナンス」についてはその向
上といったように、それぞれの開発課題について協力を行うことについて確認している。
我が国のパラグアイ国の農業分野に対する援助協力の歴史は古く、多くの開発調査や技プロが
実施されてきた。そのうち、小農を直接対象とした案件としては、
「小規模農業強化計画調査(開
発調査、1995~1997)」
、
「ピラール南部地域農村開発計画(技プロ、1994~2001)」がある。また、
最近の技プロ案件としては、小農の自立支援として「養蜂業多様化支援プロジェクト(2005~
2008)」、「パラグアイ南東部小規模農協強化計画(2007~2010)」がある。さらに、円借款事業
としては、「農業部門強化事業 II(1998~2009)」がある。
I-6
日本国によるパラグアイ共和国への農牧業支援の変遷
JICA 案件
年度
昭和 57 年~60 年
昭和 57 年~平成元年
昭和 62 年
平成 2 年~7 年
平成 2 年~9 年
平成 6 年~11 年
平成 9 年~14 年
平成 10 年
平成 14 年~16 年
平成 14 年~16 年
平成 17 年~19 年
平成 17 年~22 年
平成 17 年~22 年
平成 18 年~20 年
平成 19 年~22 年
平成 20 年~22 年
案件名
①ヤシレタダム隣接地域農業総合開発計画
②家畜繁殖改善計画
③農業部門強化計画(円借款)
④農牧統計強化
⑤主要穀物生産強化
⑥ビラール南部地域農村開発計画
⑦大豆生産技術研究計画
⑧農業部門強化計画2(円借款)
⑨中小規模酪農技術改善計画
⑩酪農を通じた中小規模農家経営改善計画
⑪養蜂業の多様化支援プロジェクト
⑫農業総合試験場プロジェクト
⑬広域協力を通じた南米南部家畜衛生改善のための人材育成プロジェクト
⑭ダイズシストセンチュウおよび大豆さび病抵抗性品種の育成プロジェクト
⑮南東部小農強化計画プロジェクト
⑯小農のための総合的農村開発計画
出典)JICA ナレッジサイト、外務省 ODA 大綱
I-7
2
パラグアイ国東部農業生産強化計画調査
2.1
計画地域の現況
「パラグアイ国東部農業生産強化計画」は、東部地域を対象とした農牧業の発展を狙い、地域
の農牧業の中格農家等を対象とした農牧業の活性化を通じて、雇用創出と農民の生活向上を目
指した農業生産強化計画の作成である。
長期的には東部地域の全体的な農牧業の活性化が求
められ、生産安定、自給率向上による貧困削減だけでなく、これまで培った農牧業の技術を礎
にした生産拡大および域外輸出による持続的な開発を視野に入れた案件である。其の先駆けと
して、生産拡大および域外輸出の立地条件に恵まれたヤシレタダム隣接地域の開発を推進して
いる。
ヤシレタダム隣接地域は、首都アスンシオンから南東へ約 300km 離れたパラナ川右岸沿いの低
湿地帯で、パラグアイ川とパラナ川が合流して形成するニエンブク大湿原の東南端にあたる。
行政区分上はイタブア県とミシオネス県の両県にまたがっており、東はサン・コスメ、西はジ
ャベビリ~サン・イグナシオ道路を境とし、北は丘陵部裾部、南はパラナ川を境とする、東西
約 80km、南北 30km におよぶ総面積約 15 万 ha の地域である。
ヤシレタダム隣接地域の北部及び東部は、国道 1 号線を陵線とする丘陵地であり、標高 180m を
最高に 100~150m の起伏のある地形が続いている。しかし、標高 80m からは平坦な低湿地帯と
なり、60~70m で南縁のパラナ川に達している。計画地区の西部はニエンブク大湿原に続く低湿
地で、ジャベビリ~サン・ イグナシオを結ぶ道路で区切られている。中央部も西部と同様に標
高 60~80m 低湿地帯であり、常時湛水状態の皿形地形となっている。パラナ川沿いは河川から
の堆積物により自然堤防を形成しており、標高は 75m 程度で、これに接する低湿地帯に比べて
若干高くなっている。
ヤシレタダムは 1994 年、首都アスンシオンか
ら南東に約 320 km、アルゼンチンのコリエン
テス州とパラグアイのミシオネス県アジョラ
ス市地区を流れるパラナ川に建設された。ヤシ
レタダムは発電を目的として建設され、電力の
殆どは隣国アルゼンチンに輸出されている。ダ
ム建設に伴う水位上昇により、様々な影響が予
想され、現在の貯水位は計画水位を下回り、発
電量も計画の 60%と言われている。
ヤシレタダム
ダム建設による上流水位の上昇による影響と
して、パラナ川支流アグアペ川下流部の広大な農地及び農家の水没、同地域の生態系への悪影
響、貯水池上流の町エンカルナシオンの一部水没、等に対する対策が求められている。
I-8
I-9
計画位置図
ヤシレタ ダム
ヤシレタダム隣接地域農業開発地域
アグアペ川下流部の水没に対しては、貯水池からの逆流入を防止するためアグアペ川の河口を
堤防で塞ぎ、アグアペ川をパラナ川下流で放流するためのバイパス水路を 2008 年 6 月末に完成
した。これによりアグアペ川の下流部農地および近隣農家の水没、同地域の生態系への影響は
回避される事となった。貯水池上流の町エンカルナシオンの一部水没の対策は現在、住民に対
して代替地、住宅を用意するなどの対策を行っているが、いまだに住民が住んでいる状態が続
いる。ヤシレタ公団では近い将来水位を上げる計画で影響を受ける道路、橋などの架け替えを
急ぐと同時に住民への説得を行なっている。また、現在、エンカルナシオン商業地区の移転地
が確保・整地され、基礎インフラの整備(上下水)を残すのみとなっている。
アグアペ川バイパス 水路
アグアペ川河口閉塞堤防
パラグアイ政府およびアルゼンチシ政府の両国政府の間で 1973 年に締結された「ヤシレタ協定」
によると、両国政府は農業開発のため 108 ㎥/sec の取水を行う権利を持っている。計画取水位
は 80mであるが、上述のように上流の町エンカルナシオンの水没問題が解決していない為貯水
池の水位は海抜 78~79 メートル程度に保たれている。このような状況がダム完成後、既に、15
年以上続いており、本来の取水が出来ず、開発計画地域は手付かずの状況が続いている。
一方、ヤシレタ公団は公団の責務として、取水口の建設、基幹用水路への導水路の建設、アグ
アペ川バイパス水路横断水路橋の建設を約束しており、既に取水口門扉の土木工事(取水ゲート
は未設置である)は完成している。また、基幹用水路への導水路の建設約 1,500m および導水路
のアグアペ川バイパス水路横断水路橋は未着工であるが、アグアペ川バイパス水路建設の完了
によりバイパス横断水路橋の建設が可能となり、追加契約の予算措置を行っている状況である。
建設済みの取水口門扉
建設済みの取水口門扉
I - 10
計画地域内に農地を確保した一部の大農家は独自にポンプ揚水し、独自に設置した用水路を用
いて灌漑農業を営んでいる。生産物(米)の殆どはパラナ川を利用してブラジルに輸出されて
いる。同地域にあるアジョラ市は灌漑事業に非常に興味を持っている。現市長は旧農牧省職員
で、JICA による調査結果を知っており、当地区の農業開発によって町の再興を期待している。
大農家によるポンプ取水
大農家による用水路
大農家所有の穀物サイロ
I - 11
I - 12
基幹道路
ヤシレタダム隣接地域農業開発地域
基幹用水路
取水口
アグアペ川バイパス水路
導水路水路橋
ヤシレタ ダム
「ヤシレタダム隣接地域農業総合開発」概略計画図
2.2
計画の背景および目的
パラグアイ政府は、ヤシレタダム建設によって生じた取水権を有効利用し、ヤシレタ島付近パ
ラナ川右岸に拡がる広大な未利用地を開発し、近代農法によるかんがい農業を実施し、輸出農
産物を生産し外貨の獲得を図ると共に、周辺農家の就労機会を生み出すことにより、将来のパ
ラグアイ農家の先進的地域としての役割を果たす事業であると考えている。このプロジェクト
が実施され、道路、灌漑・排水施設の整備により安定した農業生産を確保し、地域におけるア
グロインダストリー発展の環境を生み出し、地域の特徴を充分に利用した新たな農業生産構造
を創出する事を期待し、長期的には東部地域の全体的な農牧業の活性化を促す足掛かりになる
と期待している。
2.3
計画の必要性及び優先度
60 余年にわたり政権を担ってきた与党コロラド党に代わり、ルゴ新大統領が就任し、野党連合
による新政権が誕生した。ルゴ新大統領は選挙中から、
「新しい発展モデル」を掲げ、貧困撲滅、
汚職一掃、農地改革等を訴えており、貧困対策を重視しつつ、社会の正常化に向けた改革に取
り組むとみられている。国民からは、停滞する国内経済の建て直しに期待する声が強く寄せら
れており、その為、国の基幹産業である農牧業の強化を政策の一つに掲げている。
パラグアイにおいて農林水産業が GDP に占める割合は 2005 年で約 27%、また、輸出に占める割
合は約 84%であり、経済に占める農業の割合は非常に高い。こうした経済状況を踏まえ、パラグ
アイ政府は、農産物輸出の増加による経済成長、国内の食料安定・安全の確保、農産物の市場
競争力強化、インフラの強化、農産物の多様化等は国家戦略(2008-2013)の一つであるとの認識
に立ち、農業生産の拡大を目指している。特に輸出作物の競争力の強化は国の経済・財政の建
て直しに必須・喫緊の課題であり、生産性の高い東部地域を対象とした農家の生活水準の向上、
格差の是正を目指しており、当該地域における農業生産強化計画の作成は優先度の高い計画と
思われる。
2.4
計画の妥当性
ヤシレタダム隣接地域の開発計画は 1985 年に JICA が行っているが、その後実施に移されるこ
となく既に 25 年が経過している。ヤシレタダム建設後既に 15 年以上が経っており、懸案であ
ったダムによる水没の問題に対しヤシレタ公団側も着々と対応を進めてきており、近い将来ダ
ム貯水池よりの取水が可能になる日が近づいている。然しながら、開発に必要な計画は上記の
ものしかなく、地域内外の社会経済状況は一変しており、計画の見直しが必要となっている。
この地域は気象、土壌など自然条件が農業開発に適しているのに加え、ヤシレタダム建設に伴
う社会インフラの整備、比較的豊富な労働力、アスンシオン、エンカルナシオンなど大都市へ
の交通網の整備などからみて、パラグアイにおける他の地域に比べて開発の可能性が高い。ま
た、大消費地であるブラジル、アルゼンチンの両国に隣接しており、農産物の輸出基地とし好
I - 13
立地条件下にある。地域開発も含めた新たなコンセプトの基に開発計画の見直しを早急に行う
ことは妥当と言える。
2.5
計画の概要
当地区の農業開発計画は1985年にJICA が「ヤシレタダム隣接地域農業総合開発計画実施調査」
を行っている。調査実施後既に25年が経過しており、国内の社会経済状況、地域内の土地所有
の形態、インフラ、環境等、また、これ等の開発に関わる法的枠組みもこの25年の間に変更さ
れてきており、関係者は計画の見直しを必要と考えている。加えて、近隣河川の流域も同様に
開発を必要としており、上記開発事業の見直しをする際に同地域も対象に検討することも考え
られている。
本開発計画では、上記前回調査の見直しをすると同時に、新たな情報を加えて、開発の基本構
想の再構築を行い計画地区の決定、農業計画、かんがい計画、排水計画、農地開発計画、環境
保全、土地利用等についての計画を策定する。以下に調査の主な項目を掲げる。
(1)
(2)
計画地区の現況の把握
自然環境
: 地形、排水状況、気象・水文
農業基盤
: 土地利用、農業及び農業生産、農産加工施設、市場
農業制度
: 試験研究機関、普及、指導、農業金融、農民組織
入植の状況
: ヤシレタダム建設後の入植状況、入植制度
社会基盤
: 人口、土地所有、社会インフラ
開発計画
農業計画
: 営農類型、作付体系、農業機械化計画、労働力計画、収量及び生産
量、栽培管理、畜産及び酪農
かんがい計画
: かんがい用水量、かんがい面積、かんがい施設
排水計画
: 計画諸元の検討、流出解析モデルの検討
農地開発計画
: 圃場区画、On-farm 施設、道路計画
農産加工施設
: 米の農産加工施設、大豆、小麦の農産加工施設、冷蔵貯蔵施設、牛
乳処理センター
環境保全
: 森林法、現況森林、森林の保全、森林造成の方法、野生動物の保護
土地利用
市場・需要予測 : 市場の動向、国内需要予測、プラジル需要予測、市場性
(3)
事業実施制度
農業制度
: 農業金融、農業普及、農民組織、農業機械銀行、優良種子供給シス
テム
I - 14
(4)
事業制度
: 事業実施組織
施設管理
: 施設管理組合、水管理システム、維持管理費
施工計画及び事業費
施工計画
事業費
(5)
開発計画の評価
財務分析
: 営農財務分析、事業財務分析
経済評価
: 経済価格、経済評価、感度分析、波及効果
2.6
総合所見
本計画地域は、地形上灌漑稲作に適した平坦地であるヤシレタダムの隣接地域で、既に灌漑用
の取水権が担保されている。将来は野菜および果樹、畜産等多様な農業の可能性を持つ農業ポ
テンシャルの高い地域で、中長期的には東部の農業生産基地として近隣地域への波及効果が期
待できる地域である。本計画の実施により、当該地域の小農の雇用機会の拡大、農家所得の増
大が図られ生活水準が向上する。また、米の輸出にともない、外貨獲得にも貢献するとともに、
地域内外の経済活性化にも寄与するものと思われる。
パラグアイ国は、現在、大統領府および大蔵省に力がある。現在の農牧省については、企画総
局があるが、省単体としての力は不足しているとの印象を受けた。その中で、農牧業に係る支
援を実施する場合、農牧省だけでなく、大統領府等を通じて実施する体制をとっているのが現
状である。
従って、本計画を進めるに当たり、どの機関が責任を持って実施する必要があるのか検討する
必要がる。農牧省(INDERT、INCOOP 等)、ヤシレタ公団、県政府、市役所等の間で事業実施のチ
ームを形成する必要がある。なお、ヤシレタ公団は灌漑事業に興味を大変持っているが、ヤシ
レタ公団本来のミッションではない。
また、本事業は計画地区を域外輸出基地として繁栄させる事により、地域の農業を強化するも
のであるが、将来、計画地域の農業インフラ整備だけでなく流通・販売に必要な道路・港湾の
整備等のインフラ整備が必要となることが予想され、日本の有償資金協力により実現が可能で
ある。
I - 15
II
チリ共和国
1
チリ共和国の一般状況(I.N.E.による国勢調査 2002 より)
チリ共和国(以降チリ国)は、1810 年 9 月 18 日に宗主国であったスペインより独立し、2010
年には建国 200 年を迎える。北にペルー、東にアルゼンチン、北東にボリビアと接してお
り、西と南は太平洋に面している。南アメリカ大陸太平洋沿いを南北に走る細長い国でそ
の南端は南アメリカ大陸の最南端に位置する。国土面積は 756,096km2(日本の約 2 倍)、イ
ースター島に及ぶ領海を含めると 2,006,096km2、全長は南北に約 4,300m に渡る。南北に長
いチリ国は、州監督官を長とする 15 の州、県知事を置く 53 県(各州に平均 3.5 県)から
なる共和制国家で、地方行政機関の最小単位である市は全国に 346 ある。なお、アルゼン
チン、イギリスと同様にチリ領南極として知られる南極の 1,250,000 km²の領有権を主張し
ている。以下に「政治体制」、
「自然条件」、
「社会状況」、
「経済状況」、
「農牧業の現状」、
「農
業開発援助の動向」について詳細を示す。
1.2
政治体制
チリ国は立憲共和制で、故アウグスト・ピノチェトによる軍政が終結した 1990 年 3 月以降
民政に移管され、キリスト教、社会党、民主主義のための党など 16 政党が統一協定を結ん
だ政党連合コンセルタシオン(中道左派)が現在まで同国の政権を握ってきた。
現大統領は 2006 年 3 月に就任したミチェレ・バチェレ大統領、チリ史上初の女性大統領で
ある。同大統領は 2010 年に任期 4 年を迎えるため、我々の調査期間中であった 2009 年 12
月 13 日には大統領選挙が実施された。当選に必要な 50%超の得票率を獲得した候補者はな
く、中道右派の野党同盟(アリアンサ)のセバスティアン・ピニェラ元上院議員、左派の
与党連合のエドゥアルド・フレイ元大統領の上位 2 候補が決選投票に進んだ。決選投票は
2010 年1月 17 日に実施され、その結果、セバスティアン・ピニェラ候補が得票率 52%で、
エドゥアルド・フレイ元大統領の得票率 48%を上回り当選した。チリでは 20 年にわたって
左派政権が政権を保守してきたが、右派候補の当選により同国で軍政終結後初の政権交代
が実現した。
議会は上院(38 席、任期 8 年)と下院(120 議席、任期 4 年)からなり、大統領選挙と同
じく実施される選挙により選出される。今回の選挙では上院 18 議席が改選され、下院につ
いては全議席が改選された。しかし、両党とも議席の過半数を占めるには至らず、上院は
コンセルタシオンが 28 議席中 19 席、下院ではアリアンサが 120 議席中 58 議席を獲得した。
同国の政策、開発計画や戦略は以下に示す主要閣僚が担当するセクター毎に必要な政策・
法・制度が策定され、それを議会が認定している。なお、農村・農業開発および地域開発
に関係する閣僚については下線で示す。
内務大臣、外務大臣、国防大臣、財務大臣、大統領府官房長官、内閣官房長官、経済大臣、
II - 1
企画・調整大臣、教育大臣、法務大臣、労働・社会保障大臣、公共事業大臣、保健大臣、
住民・都市計画大臣、農業大臣、鉱業大臣、運輸・通信大臣、国有財務大臣、エネルギー
大臣、女性事業局担当大臣、文化・芸術評議会、環境大臣
なお、地方行政としては、1974 年には州(Región)、県(Provincia)、市(Comuna)が地方
部の経済開発を担当する自治体として設置され、現在の地方行政区分の基礎が構築された。
その後、地方行政区分の見直しが行われ、現在は 15 州、51 県、346 市から形成されている。
州政府は大統領の直接任命による州監督官が各省庁の地域開発に関係する地方支所を統括
し運営し、法制度および司法に関する権限が与えられている。県政府も大統領に直接任命
される県知事が県経済・社会審議会を通じて県の経済開発等を管轄している。県は複数の
市から形成され、市長は一般投票により選出され、同市長が市経済・社会審議会および市
役所所員とともに公共サービスの提供や地域開発に携わっている。以下に地方行政区分と
地方自治体の図1を示す。
州政府監督官
州審議会
州レベル
事務管理
サービス
州知事
各省庁支所
県経済・社会審議会
県レベル
市役所
市長
市審議会
市役所の
各部門
市経済・社会審議会
市レベル
市代表
出典・抜粋:Atlas Geográfico para la Educación
図1:地方行政区分と地方自治体
住民との距離が最も近い地方行政の末端である市は、内務省の地方・行政開発次官官房
(SUBDERE2)の指導の下、運営している。なお、市役所は地域振興開発部(DIDECO3)、公共
事業部、教育部、保健・医療部、社会部、事務管理部等から形成され、公共サービスの提供
と地域・経済開発等を包含した市の開発計画4を作成している。市は開発計画を基に、独自
1 1973 年および 1974 年に発令された法 Ley No.212, 573, 575 より
2
3
4
SUBDERE:Subsecretaria de Desarrollo Rural
DIDECO:Dirección de Desarrollo Comunitario
SUBDERE が支援する「Plan de Desarrollo Comunal」の策定を市が行っている。
II - 2
予算による開発事業を実施するだけでなく、中央の各省庁とその関連機関、州・県政府、
NGO 等の開発事業の受益者との仲介となり、地域開発の核となる機関である。
自然条件
アリカ
気候:南北に長い海岸に沿って、北部の
25
0.35
0.3
20
平均気温(℃)
降水量が極めて少ない砂漠が広がる乾
燥地域、中部の限られた降雨が冬季に集
0.25
15
0.2
10
0.15
降水量(mm)
1.3
降水量
気温
0.1
5
0.05
中する半乾燥地域、南部の年間を通じて
7月
8月
9月
10
月
11
月
12
月
3月
4月
5月
6月
1月
0
2月
0
月
降水量が多い湿潤地域に大きく分類さ
平均気温(℃)
れる。気候は、北部は世界でも最も乾燥
した砂漠とされるアタカマ沙漠がある
40
16
35
14
30
12
25
10
20
8
15
6
降水量
気温
10
4
5
2
砂漠気候、中部の半乾燥地域はアカシ
降水量(mm)
セレナ
18
9月
10
月
11
月
12
月
6月
7月
8月
3月
4月
5月
1月
0
2月
0
月
ア・カベン等に代表される潅木が自生す
るステップ気候と地中海性気候、南部は
サンチアゴ
25
温暖で雨量も比較的多い西岸海洋性気
50
40
10
30
10
0
0
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月11月 12月
月
響で沿岸地帯は季節により霧が発生す
プエルト・モント
16
るとともに、北部の砂漠気候でも気温は
250
14
200
平均気温(℃)
12
10
150
8
100
6
4
降雨mm
気温℃
50
2
7月
8月
9月
10
月
11
月
12
月
5月
6月
3月
4月
0
2月
0
1月
物相に大きな影響を与えている。なお、
降水量
気温
20
5
に端を発する寒流フンボルト海流の影
あまり上昇せず、同国の沿岸地域の動植
降水量(mm)
60
15
降水量(mm)
にわたった気候がある。海岸線には南極
70
平均気温(℃)
候から最南端のツンドラ気候まで多岐
80
20
月
乾燥地の南限セレナ周辺の年間降水量
は約 90mm、半乾燥地域のサンティアゴ
プンタ・アレーナス
周辺の年間降水量は約 280mm、寒冷気候
45
12
40
ント周辺では年間降水量が約 1,700mm
あり、南部に向かって季節的降雨が通年
35
30
8
25
6
20
4
15
降水量(mm)
で降水量が確保されているプエルト・モ
平均気温(℃)
10
降水量
気温
熱帯
砂漠(霧)
砂漠
砂漠(寒冷)
半乾燥(濃霧)
半乾燥(雨季あり)
半乾燥(寒冷)
温暖(濃霧)
温暖(雨季あり)
温暖(地中海性)
温暖(多雨)
寒冷(多雨)
ツンドラ
寒冷(高地)
南極
10
2
5
0
0
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月
月
降雨に変化してゆく。右図に気候区分お
よび月別平均気温・降水量を示す。
地勢:北部は東の 6 千メートル級の山岳
地帯、平原地帯、沿岸山脈が代表的な地
出典・抜粋:理科年表 平成 13 年度版
国立天台編 最新世界各国揺籃 8 訂
版 (1995) 、 Atlas Geográfico para la
Educación
図2:気候区分および月別平均気温・降水量
形である。中部は東の山岳地帯から沿岸にかけて徐々に標高が低くなる地形と山岳地帯から
扇状地と平原を経て海岸丘陵地帯になる 2 つの地形パターンからなる。南部の第 9 州周辺は
中部と同様の地形であるが、南に向かうにつれてフィヨルド地形の海岸線に山岳地帯が迫
り、山岳地帯東部はパンパが広がる地形となる。以下の図にチリ国の地形の特徴を示す。
II - 3
中部
北部
南部
中部
出典・抜粋:Atlas Geográfico para la Educación
図3:チリ共和国の地形の特徴
チリ国には合計 122 の流域
グラフ1:州別の流域面積(km2)および流量(㎥/秒)
(560,410 平方 km、国土の
面積
流量
州別流域面積、および流量
74%)があり、その内の 50
120,000
3,000
沿岸地域に向かって流れて
100,000
2,500
80,000
2,000
60,000
1,500
40,000
1,000
20,000
500
いる。北部は低い降水量の
ためにワジが多く、中部で
は季節的な降雨により一時
的に通水する河川があり、
南部では豊富な降水量によ
りほぼすべての河川に通年
面積(平方キロメートル)
域である東部に端を発し、
0
XV
I
II
III
V
RM
S
0
VI
VII VIII
IX
XIV
X
XI
XII
面積 18,1 7480 35,4 57,3 47,6 14,2 23,9 25,2 50,2 53,8 29,2 38,9 35,1 106, 17,4
流量 4 0.36 3 11 45 66 133 276 1,01 1,54 984 117 1,38 2,78 61
で水が流れている。第 VI
州から南部の州で河川の流
IV
流量(㎥/秒)
が水無川で、一般に山岳地
州
出典:DGA, MOP, 2004
量が安定し、第 XI 州以南には湖泥も多く見られ、豊富な水資源が確保されている。以下に
州別の流域面積、全長および流量を示す。
II - 4
1.4
社会状況(INE による国勢調査 2002 より)
人口統計:人口は 15,116,435 人(日本
の約 12%)、人口密度は 20 人/km2(日
グラフ2:州別都市部および農村部の人口
州別都市及び農村部の人口
本の約 5%)、都市部人口が 86.6%、農村
部人口が 13.4%を示し、住民の大多数
が都市部で居住している。第 IV 州から
7000000
6000000
第 IX 州に人口の約 8 割が集中して居住
5000000
しており、その中でもメトロポリタン
4000000
州には全人口の約 4 割が居住している。
3000000
また、農村部の人口割合については、
2000000
北部の第 XV 州から第 IIV 州までが 10%
1000000
にも満たないのに対して、第 IV、VI、
0
農村部
都市部
XV
I
II
III
IV
V
RMS
VI
VII
VIII
IX
XIV
X
XI
XII
州
V~XI 州は約 20%以上を占めている。
出典:INE 国勢調査 2002
(グラフ2を参照)
人口ピラミッドは 15 歳以下が全人口の 25.7%に対して、60 歳以上は 8.1%、15-44 歳までの
5 年毎の人口がほぼ同率に安定しており、それ以降は徐々に人口割合が減少する釣鐘型を形
成している。出生率は 1000 人あたり 15.5(日本の 11.3 倍)5、死亡率平均寿命は 77.8 歳6と
南米の中では高い値を示している。
グラフ3:年齢・男女別人口数
男性(M)
M
F
60歳
以上
女性(F)
M
F
15-60歳
以上
M
F
15歳
以下
(出典:INE 国勢調査 2002)
住民の多くは白人で、スペインの侵略を端に移民が到来し、スペイン系が 75%を占め、ド
イツ、イタリア、英国、フランス、スイスからの移民が多い。また、東ヨーロッパとアイ
5
6
INE 発表の 2003 年の情報
INE 発表の 2002-2005 年における情報
II - 5
ルランドからも少数が移住し、旧ユーゴスラビアの崩壊前後にはユーゴスラビアからの移
住者も受け入れている。
非識字率:チリ国の非識字率は 3.52%で、ラテンアメリカ国の中でも教育の普及率が高い。
19 世紀に近代教育制度をフランスとドイツを模範に、6 歳から 13 歳までの 8 年間の初等教
育と前期中等教育が無償の義務教育期間とした。義務教育後は後期中等教育(日本でいう
高校)、高等教育を個人の意思で選択することができる。非識字率の高い州としては第 IV
州以南の第 XI 州が 5%を上回り、これは農村部の人口が多い州と一致し、農村部住民への
教育サービスが遅れていることがわかる。以下の図に州別の非識字人口および非識字率を
示す。
グラフ4:州別の非識字人口と割合
州別の非識字率と非識字人口(人)と割合(%)
非識字人口
(人)
(%)
非識字率
160
9
139.543
140
120
8
7.68
7.27
6
94.733
5.33
4.8
80
58.242
3.02
2.74
1.78
1.78
XV
I
II
35.456 2.14
24.002
3.822 3.483 7.256
19.115
4.009
7.501
III
IV
V
3
52.449
40.965
39.291
0
5
4
3.6
2.41
40
20
5.97
6.09
100
60
7
6.43
6.31
RMS
VI
州
VII
VIII
IX
XIV
X
2.74
2
1
0
XI
XII
出典:INE 国勢調査 2002
先住民:チリ国にはスペインによる
グラフ5:州別都市部および農村部の人口
侵略に対して、南米でも最も長い期
州・先住民別人口
間、抵抗し続けた先住民、マプチェ
250,000
ヤガン
ラパヌイ
ケチュア
マプチェ
コヤ
アイマラ
アタカメーニ
カウェスカル
族がチリ国南部に居住しており、同
200,000
い続けた。現在、国内には 8 つの先
住民が存在し、その人口は約 69 万人
で全人口のわずか 4.5%である。南部
人口(人)
族は 300 年以上にわたり侵略者と戦
150,000
100,000
50,000
に拠点を置くマプチェが約 60 万人、
北部のアイマラとアタカメーニョが
約 4.2 万人おり、この 3 部族がチリ
0
XV
I
II
III
IV
V RMS VI
VII
VIII
IX
XIV
X
XI
XII
州
出典:INE 国勢調査 2002
国の先住民の大多数を占める(全人
口の 97%)。グラフに州別の先住民の人口数を示す。先住民は一般に農村部に多く、労働力
として都市部への出稼ぎで生計を立てるとともに、都市部へ定着し、農村部の労働力不足
や過疎化の問題を引き起こしている。
II - 6
貧困:チリ国では貧困を図る際に、UNDP による
人間開発指数を活用し、極貧、貧困、それ以外
グラフ6:州別都市部および農村部の
人口
の 3 つに分類している。Mideplan による 2007 年
貧困率
の統計資料によると、全人口あたりの極貧と貧困
100%
者の人口割合は 1990 年で約 38%が 2006 年には約
61%が 2006 年に約 86%に増加した。これは、同
国の貧困削減の政策が成功裏に進んでいること
80%
人口(率)
13%に減少し、貧困以外の割合が 1990 年に約
61%
60%
1990
2006
40%
20%
を証明している。
86%
26%
13%
3%
11%
0%
州別では、州の全人口当たりの極貧と貧困の人口
極貧
貧困
それ以外
割合が 15%以上の州は第 XV、IV、V、VII、VIII、IX、XIV 州で、北部の乾燥地域は 1 州の
みで、中部以南で 6 州が州内の貧困者人口割合
出典:INE 国勢調査 2002
が高い。これは、貧困者が多い農村部の人口割合が高いためと考えられ、北部 1 州につい
ては都市部の貧困者が多いことが貧困の人口割合を高めていると考えられる。以下に各州
内の極貧、貧困、その他の人口割合を示す。
表1:各州内の極貧、貧困、その他の人口割合
州
極貧(①) 貧困(②)
XV
4.19%
14.39%
I
2.35%
9.40%
II
2.06%
5.25%
III
2.92%
7.68%
IV
2.81%
13.06%
V
2.87%
12.42%
RMS
2.39%
8.18%
VI
2.14%
9.26%
VII
4.20%
13.52%
VIII
5.17%
15.51%
IX
6.05%
14.00%
XIV
5.21%
13.56%
X
2.79%
9.04%
XI
4.16%
5.06%
XII
2.50%
3.79%
出典:INE 国勢調査 2002
1.5
=①+②
18.59%
11.75%
7.31%
10.60%
15.87%
15.29%
10.57%
11.40%
17.72%
20.68%
20.05%
18.77%
11.84%
9.22%
6.29%
その他
81.41%
88.25%
92.69%
89.40%
84.13%
84.71%
89.43%
88.60%
82.28%
79.32%
79.95%
81.23%
88.16%
90.78%
93.71%
経済状況
チリ国は 1970 年代当初、中南米諸国に先駆けて、国家主導型産業育成政策から民間主導、
開放経済へと政策を転換した。1980 年代初めには債務危機を克服し、1980 年代は実質 GDP
成長率は平均で 6.4%、1990 年代には経済は順調に拡大し、一時は実質 GDP 成長率が 8.3%
に達した。1999 年以降のアジア経済危機、世界経済の低迷を受け、主要輸出品目である銅
II - 7
価格が低迷し、輸出量も伸び悩むとともに、国内需要が冷え込み、失業率は高くなった。
しかし、2002 年からリーマン・ショックによる世界的な金融危機の発生までは、国家を挙げ
て金融緩和政策を継続し、国内需要が回復していた。なお、国家財政は 2008 年の歳入が 23
兆 4,000 億ペソ、歳出は 18 兆 7,200 億ペソで黒字となり、安定した財政収支を維持してい
る。7
チリ国の 2008 年の国内総生産(GDP)は 1,694 億 5,789 万 USD(180 カ国中第 47 位)、中南
米諸国の中ではブラジル、メキシコ、アルゼンチン、ベネズエラ、コロンビアについで第 6
位、世界 180 か国中では第 47 位である。2005 年には実質 GDP 成長率が 5.6%に達し、それ
以降徐々に成長率は下がり 2008 年には 3.2%にとどまった。一人当たりの GDP は
10,123.82USD で世界 180 カ国中第 57 位、中南米諸国では第 6 位に位置し、2009 年にはマ
イナス成長が予測されている。これは、リーマン・ショックによる世界的な金融危機の影
響と考えられ、クレジット縮小の影響で個人消費が伸び悩んだ(0.8%)こと、世界経済の
先行きを見越した民間企業の設備投資を抑制したこと等が影響したと考えられる。8
なお、2006 年に実施された国勢調査では、所得上位 10%の国民が、チリの全所得の 44.7%
を得ており、他方、同下位 10%は、同全所得の 1%しか得ていないことから、所得格差は
高いと言える。以下に 2005~2008 年の主要経済指標を示す。
表2:チリ共和国の主要経済指標
指標
実質経済成長率
名目 GDP(億ドル)
一人当たり名目 GDP(ドル)
消費者物価上昇率(%)
失業率(%)
経済収支
出典:チリ国中央銀行、INE
1.6
2005
5.6
1,182
7,288
3.7
2.5
1,449
2006
4.6
1,464
8,921
2.6
3.0
7,154
2007
4.7
1,640
9,884
7.8
0.5
7,189
2008
3.2
1,727
10,302
7.1
1.3
△3,440
農牧林業の現状
農牧林水産業は 1980 年には国内総生産の 10%、労働人口の 25%を占めていたが、2007 年
では国内総生産の 5.0%、労働人口の 11.5%に減少し、活動が低迷している傾向にある。同
じく、作付面積も減少傾向にあり、1997 年には 88 万 8,850ha であったのが、2006 年には
64 万 7,660ha となり、その中でも、特に穀物の作付面積が減少傾向にあった。しかし、チ
リ国政府は各国の食糧の安全保障の政策による食糧需要の高まりを受けて、輸出品目の強
化の一環として、農牧林水産の競争力強化を政策として推進し、その結果 2007 年には穀物
および豆・塊根類ともに作付面積は増加している。
7
8
出典:チリ国中央銀行
出典:IMF World Economic Outlook(2009 年 10 月版)
II - 8
グラフ7:作付面積
作付面積
700000
600000
面積(ha)
500000
400000
2004
2005
2006
2007
300000
200000
100000
0
穀物
豆・塊根類
工業用作物
作付
出典:INE、農牧センサスより
注:穀物(小麦、米、大麦など)
、豆・塊根類(大豆、ジャガ
イモ等)、工業用作物(菜種、ビート、ひまわりなど)
輸出品目である農牧林業、水産業、鉱業、製造業の GDP の 2008 年の実質 GDP の伸び率を見
ると、全体的にマイナス傾向の中、唯一農牧林業が 3.0%の伸び率を示すことが見込まれて
おり、基幹産業である鉱業の低迷に対して、同国の基幹産業の一つとして国を挙げた開発
振興が進んでいると考えられる。
表3:部門別実質 GDP(単位:10 億ペソ(2003 年価格)、%)
部門
2006
2007
2008
伸び率
農牧林業
2,324
2,334
2,404
3.7
水産業
728
768
763
△0.7
鉱業
4,437
4,575
4,345
△5.0
製造業
9,896
10,200
10,200
0.0
出典:チリ国中央銀行、INE
注:2007 年暫定値、2008 年見込み値
農業:チリ国は、北部の乾燥地帯、南部の南極に近い寒冷多雨地帯は農耕に適さず、首都
サンティアゴ周辺中部地帯以南に南北アメリカ大陸の中でも生産性の高い農業生産地を持
つ。主要農産物として、小麦、トウモロコシ、米、大麦、ジャガイモ、豆類(レンズ豆、
えんどう豆、インゲン豆等)、果樹(ぶどう、りんご、西洋梨、プラム、桃、アボガド等)
を生産している。その中でも生鮮果実、野菜の輸出は活発で、ぶどうは世界最大の輸出国
となっている。昨今の生鮮果実輸出の伸びは、2003~2004 年に EU および米国と取り交わさ
れた自由貿易協定(FTA)により、生鮮果実が無税で輸出できるようになったためと考えら
れる。また、中国、韓国、インドとの間で植物防疫協定を 2004 年に取り交わし、果実輸出
の拡大を目指している。以下の表に主要農産物の輸出量を示す。
II - 9
表4:主要農産物生産量(単位:トン)
農産物
2004
2005
2006
穀物
109,297
82,331
99,815
大豆
435
698
1,492
菜種
149
2,541
786
ジャガイ
1,503
495
986
モ
トマト
977
247
62
たまねぎ
85,146
54,700
41,016
バナナ
450
688
93
ぶどう
693,206
738,469
823,198
りんご
738,985
639,515
725,002
出典:FAO「FAOSTAT」
表5に示すとおり、チリ国は第 IV 州から第 X 州が農業生産の盛んな地域で、穀物、野菜、
およびぶどうを筆頭とした果実の栽培が盛んである。乾燥地である北部では、果実や酪農
に必要な飼料作物の栽培、都市近郊部での野菜栽培が行われているが、水資源の不足から
その生産量は低く、主に北部の域内をターゲットに農産物が生産されている。これに対し
て、水資源が雨季に限られた中部では豊富な日照量と灌漑技術を用いて果樹栽培、人口の
集中する首都サンチャゴを消費地とした野菜栽培が盛んである。水資源が豊富且つ、土壌
も肥沃な南部では穀物栽培が盛んとなるとともに、急峻な山岳地や海岸丘陵地が多く、こ
のような農地としての利用が難しい土地での植林が盛んである。また、牧草の生育条件が
よいために畜産が盛んで、必要な飼料作物の栽培面積も高くなっている。
表5:主要農産物栽培面積(単位:ha)
小規模
その
飼料作
ブドウ
州
穀物
野菜
果物
栽培
他
物
棚田
XV
10
25
24
2,522
2,459
1,613
38
I
165
39
0
498
423
558
1
II
87
13
0
775
1,890
129
0
III
220
102
0
1,855
1,742
8,804
937
IV
3,605
7,567
287
8,952
44,100 16,087
10,073
V
12,113
3,481
637 12,611
21,579 35,114
2,046
RMS
10,941
2,110
34 10,888
14,161 16,734
1,309
VI
57,992
7,806
3,692 18,580
22,456 57,486
12,643
VII
109,602
25,731 20,389 19,969
61,981 35,523
29,709
VIII 149,336
28,577 20,784
9,555
90,366
9,076
19,667
IX
198,085
23,652 17,980
4,502 119,176 11,994
11
XIV
218
147
64
114
1,472
305
0
X
13,535
13,885
773
2,129
51,081
5,819
0
XI
874
358
0
123
11,647
10
0
XII
0
179
0
104
1,724
0
0
出典:INE による農牧センサス 1997 年
II - 10
苗床
植林
4
0
0
10
60
329
2,143
9,738
5,842
1,812
4,551
32
568
0
0
0
0
71
586
4,257
38,171
2,225
60,496
106,637
507,801
276,016
2,271
10,262
8,139
0
人口統計でも述べたとおり第 VIII 州から第 X 州は先住民が多く、丘陵地や山岳地に居住し
ている。小規模の土地所有者9が多く、そのため、同地域の小規模な農家経営の栽培面積も
多くなっている。なお、このような小規模の農家経営は穀物、野菜、果樹、牧畜の複合的
な営農形態を持ち、生産物は主に各農家もしくは域内で消費されている。
生鮮果実の生産は、2007 年にはブドウとりんごがその全体の約 4.2 割りの栽培面積を占め、
年々その栽培面積は増加傾向にある(表4参照)。その一方で、換金作物として、プラム、
桃、クルミ、西洋梨、オレンジ、さくらんぼ、レモン、ネクタリン、キューイ、アーモン
ド、オリーブ、すもも、アボガドの順で生産が活性化している。以下に 2007 年の果樹の作
付別栽培面積を示す。
グラフ8:果樹の作付別栽培面積(ha)
果樹栽培面積(ha)
オレンジ, 7,800
ネクタリン, 6,900
クルミ, 9,230
オリーブ, 6,000
りんご, 36,095
アボガド, 2,400
リモン, 7,000
西洋梨, 7,920
キューイ, 6,640
桃, 13,168
ブドウの棚田, 48,500
すもも, 2,400
プラム, 14,460
その他, 18,402
チェリー, 7,200
アーモンド, 6,200
出典:ODEPA, 2007
畜産:チリ国では、羊、ウシ、山羊、アンデス原産のリャマ・アラパカ等のラクダ科が飼
育されている。その中でも羊の家畜頭数は全体の家畜頭数の約 86%を占め(家禽は含まな
い)、羊毛と食肉として活用されている。しかし、羊の食用肉の生産量は全体の食肉生産量
の 1 割も満たさず、牛と比べて食肉利用の価値は低い。牛は全体の家畜頭数の 11%にすぎ
ないが、食肉牛はその生産量が畜産全体の 18%を占め、収益性性は高い、牛乳は年間を通
じた生産が可能なほか、牛乳以外に加工品を生産することができ、利用価値が高い。家禽
の飼育も盛んで、特に企業レベルの集約的な養鶏(ブロイラー)が展開され、チリ国の食
肉生産量の 45%を占めている。以下のグラフに家畜頭数と食肉生産量を示す。
グラフ9:家畜頭数(%)
9同国の土地所有者は小規模農民(ha
グラフ10:食肉生産量(トン)
以下)
、中規模農民(ha まで)、大規模農民(ha 以上)に大別されて
いる。
II - 11
食肉生産量(Ton)
家畜頭数(頭)
ラクダ科,
0.49%
山羊, 1.44%
山羊
0%
豚
35%
牛, 11.14%
家禽
45%
羊
1%
牛
18%
馬
1%
羊, 86.93%
出典:ODEPA, 2007
州別に畜産の特徴を見た場合、第 XII、X、IX、VIII、VI、VII、RMS、XIV、XI、IV、V 州の
順に家畜頭数が多く、その中でも中部は豚の家畜頭数の割合が高く、中部から南に向けて
牛の割合が増加する。南端にある南部2州はパンパを活用した羊の飼育が多くなる。砂漠
が広がる北部では、乾燥に強い山羊や羊の飼育頭数の割合が高いとともに、馬の飼育頭数
の割合も高い。
グラフ11:州別家畜頭数(頭)
州別家畜頭数(頭)
2,500,000
家畜頭数(頭)
2,000,000
リャマ
アルパカ
馬
山羊
馬
豚
羊
ウシ
1,500,000
1,000,000
500,000
0
XV
I
II
III
IV
V
RMS
VI
VII
VIII
IX
XIV
X
XI
XII
州
出典:INE による農牧センサス 1997 年
林業:チリ国は南部に世界でも有数の森林資源を持ち、2005 年の森林総面積は 1,612 万 ha
(国土の 21%)である。砂漠がある乾燥地を除いた地域は林業適地であることから古くか
ら植林が展開され、2007 年には 213 万 ha の植林地を持っている。植林で生産された材は製
材、パルプ原料、紙・板紙、ベニア、ファイバーボンド、合板等に加工され利用されてい
る。また、植林面積では、2005 年に 13.3 千 ha、2006 年に 12.2 千 ha、2007 年に 10.4 千
ha10が植林され、近年、植林活動は減少傾向にあった。
チップなどの産業用材生産量が盛んであり、アラウコ社、CMPC 社(Compania Manufacuturera
de Papeles y Cartones S.A.)が第 VIII 州で大規模に植林事業およびパルプ工場を展開し
ている。これら大規模資本による林業が中心となり、2004 年に 4.5 百万㎥であった輸出量
が 2006 年には 5.2 百万㎥と増加傾向にあり、輸出で得た収入は過去 10 年間の間に約 3 倍
の伸びを示し、近年飛躍的に発展している。植林の樹種としてはラジアタ松とユーカリが
10
出典:中央銀行発表資料
II - 12
全体の約 9 割を占め、主に製紙用のパルプ材、製材として利用されている。
表6:林産物の輸出量(単位:㎥)
2004
2005
2006
丸太
149,000
111,000
111,000
製材
3,421,000 3,379,300
3,642,000
木質板
1,019,503 1,369,493
1,448,000
材
合計 4,589,503 4,859,793
5,201,000
出典:FAO「FAOSAT」より
1.7
農業開発援助の動向
チリ国の農業開発の現状:
チリ国は、1970 年代より進められた「より小さな政府」を目指すために、民営化・市場化
を中心にした、新自由主義的路線を展開してきた。そのため、他の国によく見られるよう
な国家開発計画は存在せず、セクター毎に担当閣僚・省庁を中心として、法・制度、政策、
開発計画を策定している。なお、国としての方針としては、任期が 4 年の大統領が、任期
期間中の課題を取り上げ、そのための活動を各省庁がそれぞれ策定した計画に取り込んで
いる。これは、大統領交代を通じた政策の転換による、計画の見直しや策定等に時間と資
金を費やすことを避け、一度策定された中・長期計画を継続的に実現するために、各省庁が
管轄するセクターの開発を進めることとしている。11
これまで、新自由主義路線の上で実施されたてきた国の開発として、豊富な資源の中から
特に銅を中心とした鉱業を主要産業にした開発を行ってきた。しかし、昨今のバイオ燃料
の需要高により穀物価格が高騰し、世界的な食糧の安全保障のための農牧林業への関心が
増加している中、原料の輸出に頼ってきた鉱業からの脱却策の一環として、再生利用が可
能な農牧林水産資源が豊富である立地条件を有効に活用した農牧林水産業の開発と振興が
再認識しされている。
このような状況の下、農業省が農業開発を担当し、国家農業政策「Una Politica de Estado
para la Agricultura Chilena Periodo 2000-2010」を策定している。同政策では、①農牧
業の国際競争力の強化、②小規模農家の収入及び生活の向上、③天然資源の持続的利用を
通じた農牧業の発展、が挙げられている。特に②については、小規模農業者に対する資金
援助として、用水路建設のための資金援助、肥料の購入や土壌保全のための資金援助、災
害により被災した農業者に対する支援等が実施されている。
ま た 、 上 記 政 策 を 履 行 す る た め に 、 農 業 省 と し て の 戦 略 を 示 し た 「 Ministerio de
11
国際協力庁(AGCI:Agencia de Cooperación Internacional)の聞き取り調査結果
II - 13
Agricultura Agenda Estrategica 2008-2010(農業省戦略アジェンダ 2008-2010)12」を策
定している。この中で、
「チリ国を有用な農林産物資源を持つ国として築き、農牧業におけ
る競争力の強化、人的資源の強化を図る。」ことを目的とし、以下の課題に対するアクショ
ンを展開している。
1) より充実した技術革新:技術のクラスター化、技術コンソーシアム
2) 気候変動、環境、水
3) 輸出のための新市場、よりよい市場
4) 動植物の遺伝子技術の飛躍
5) 世界の動植物の標準化
6) 農業総合ネットワーク
7) 人的資源、企業家、組織の向上
8) 国民のための森林
9) 農業省の再編
10) アイデンティティと建国 200 周年
なお、この課題の達成は農業省と農業省傘下の関連機関がそれぞれの役割の中で、戦略と
具体的なアクションを達成する活動を行っている。以下に農業省および関連機関の組織図
を示す。
農業省
農業次官
農業政策調査室
( ODEPA)
農牧開発庁
( INDAP)
農牧サービス庁
SAG
森林公社
( CONAF)
国家灌漑委員会
( CNR)
農業牧畜研究所
( INIA)
農業革新財団
( FIA)
農地通信、 技能、
文化財団( FUCOA)
天然資源情報セン
ター( CIREN)
森林研究所
( INFOR)
出典:農業省 HP の組織図より
図3:農業省および関連機関の組織図
12
出典:農業省ホームページ
II - 14
農業省本省は同国の農業・農村開発に関する政策・開発計画の策定を行うとともに、一般
情報を統計的に取りまとめる作業を行っている。また、上位計画のアクションをモニター
し、農業省戦略アジェンダの進捗を管理している。昨今では、自由貿易協定(FTA)を EU
と取り交わし、輸出産業として同国の農業開発振興を行うとともに、経済発展の著しい中
国・インドと植物貿易協定を取り交わし、輸出振興を検討している。一方、灌漑排水、技
術研究と開発、技術普及、小農支援、融資、天然資源管理、林業振興等を上記に示す各機
関が役割を分担し、チリ国の農牧林業の発展のために活動している。以下に関係機関の役
割を示す。
表7:農業省とその関連機関の役割
ODEPA
農牧林業に関係する機関がその活動をすすめるために必要な、国際・国家レベルと
州レベルの情報を提供する。政策・計画策定を行うとともに、統計データを取りま
とめている。
INDAP
農村部の農家と農家が所属する農民組織の持続的な生産活動の開発振興に必要な
アクションの支援をするとともに、必要な能力強化を図る。また、小規模融資、補
助金等の制度も持ち、資金面の支援も行っている。
SAG
農牧林生産資源を衛生、環境、遺伝、地勢の観点から保護する活動を行うとともに、
持続的な競争力を維持するために食料品の品質管理を行っている。
CONAF
チリ国の森林資源を保全するために、資源の管理、活用に必要な活動を行っている。
森林法を定め、植林活動の具体的な手続きの支援、認可、モニター、普及活動を行
っている。
CNR
チリ国の灌漑面積を向上させるための活動を行っている。特に、灌漑排水の建設、
改修工事に係る手続きおよび許認可、モニター等の活動を行っている。
INIA
農牧業に関係する食料の安全保障に貢献する適用技術の研究、開発、普及を行って
いる。
FIA
農牧林業の開発振興を担っており、特に伝統農法・栽培等からの技術革新のための
活動を、小・中規模農家および属する団体・企業に対して行っている。
FUCOA
農業省の政策やその実施に関する情報提供を通じて、チリ国農業の近代化を図る。
CIREN
国家の競争力と技術革新を有効にするために、天然資源や生産物に関する情報を恒
久的に更新・維持するための活動を行っている。また、必要な追加情報を収集して
いる。活動の一つとして、農牧林業に関するサテライト情報を収集・管理している。
INFOR
森林資源およびその環境を取り巻くエコシステムの持続的な活用のために必要な
科学技術の研究を行うとともに、林業の経済的な情報、社会面の情報を調査し、そ
の情報を一般に公開している。
出典:ODEPA 聞き取り調査結果、および農業省ホームページ
II - 15
飛躍的な開発が進み、農業戦略アジェンダでも重点課題としているに林業に関しては、
CONAF(Corporación Nacional Forestal:森林公社)が担当し、1974 年に制定された森林
法を発端に、組織的な植林活動が実施されるようになり、輸出産業として昨今飛躍的な発
展をしている。1998 年には林業振興を盛り込んだ、森林法の改正が行われ、零細農家(小
規模農家と中規模農家)を対象とした森林所有者に対しての植林事業に対する補助金支援
が行われている。
日本国の開発支援
日本はチリ国への開発支援を実施するに当たり「国別援助計画」を策定していないが、外
務省が取りまとめる「チリに対する ODA の考え方」で、以下のとおりその意義を説明して
いる。
(1)チリに対する ODA の意義
チリでは、都市と地方の格差が依然として存在しているほか、貧富の差が大きな問題とな
っており、一部に治安の悪化をもたらしている。社会的弱者の状況や貧富の格差等を考慮
しつつ、これらの問題へのチリ政府の取組を ODA により支援することは、ODA 大綱の基本
方針の一つ「公平性の確保」に合致しており、重点課題である「貧困削減」の観点から意
義が大きい。また、同国は首都サンティアゴの大気汚染や鉱害などの公害問題、オゾン層
破壊の同国南部地域への影響、パタゴニア地方などにおける氷河減退問題等を抱えている
ところ、
「環境・気候変動分野における協力の一層の強化に関する共同声明」に基づき、我
が国の技術や経験を生かしつつ、国際社会全体が協調して対応すべきこれらの環境問題へ
の取組を ODA により支援することは、環境と開発の両立、また ODA 大綱の重点課題である
「地球的規模の問題への取組」の観点から意義が大きい。また、銅などの天然資源が豊富
であり資源の輸入大国である我が国にとって重要な貿易相手国という観点も、同国への ODA
検討にあたって念頭に置く必要がある。
さらに、同国は技術を吸収するだけでなく、地域の条件に合わせて改良・発展させる能力
を有しており、南南協力を通じた我が国の技術の周辺諸国への普及が期待できる。
出典:外務省ホームページ「政府開発援助(ODA)国別データブック 2008」より
(http://www.mofa.go.jp/Mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/08_databook/index.html)
チリ国が抱える上記課題から、わが国の支援の重点分野を「社会格差の是正」、「環境保全
と健康改善」、「貿易・投資環境整備」、「南南協力支援」とし、これら分野に係る技術協力
を行うこととしている。なお、チリ国は一定水準の経済発展を達成しているために、有償
資金協力の対象国とはならない。
このようにチリ国では、都市部と地方部の格差が依然として存在し、貧富の差が大きな問題
となっており、その格差是正のためにも、農村部の開発は重要な課題となっている。チリ国
農業省も小・中規模農家を支援する策を施しており、同国の「貧困削減」達成には農業農村
開発は必要不可欠となっており、日本国も援助重点分野として、貧困地域の経済開発支援
を上げ、貧困層が多いとされる農村地域における農業農村開発分野の支援を行ってきた。
II - 16
日本国政府の取り組みとしては、国際協力機構によるプロジェクト方式技術協力「半乾燥
地治山緑化計画(1993 年~1999 年)」を通じて、土壌保全と流域管理を考慮した農村部の
営農活動のモデルを策定するとともに、
「住民参加型農業農村環境保全計画(2000 年~2007
年)」では住民参加型手法による事業計画の立案・実施等普及活動に係る技術、住民のニー
ズを基に土壌保全対策を含めた営農技術の移転を行ってきた。以下に日本国政府によるに
よるチリ共和国への農牧業支援の変遷を示す。
表8:日本国政府によるによるチリ共和国への農牧業支援の変遷
年度
案件名
昭和 60 年~61 年 ①マポーチョ川流域農業開発計画
平成 5 年~11 年
②半乾燥地治山緑化計画
平成 11 年~16 年 ③小規模酪農生産性改善計画
平成 16 年~21 年 ④チリ国環境回復を考慮した土壌・流域持続的管理コースプロジェクト
平成 12 年~19 年 ⑤住民参加型農村環境保全計画プロジェクト
平成 16 年~21 年 ⑥チリ国環境回復を考慮した土壌・流域持続的管理コースプロジェクト
平成 17 年~22 年 ⑦広域協力を通じた南米南部家畜衛生改善のための人材育成プロジェクト
平成 18 年~21 年 ⑧先住民コミュニティの農家経営向上プロジェクト
平成 18 年~22 年 ⑨第三国研修「小規模酪農家支援」プロジェクト
出典)JICA ナレッジサイト、外務省 ODA 大綱
II - 17
2
チリ国持続的参加型総合農村整備実施計画調査
2.1
計画地域の現況
本計画の対象地域は、以下に示す第 IV 州より南の乾燥気候および半乾燥気候に位置し、農
村部の人口割合が高く、農業基盤が未整備な地域を対象にする。
貧困
チリ国の現状は「1.チリ共和国の一般概況」で示したとおり、中部の第 IV、V 州と南部の
VII、VII、IX、XIV 州の貧困人口割合が高く13、これは各州の農村部の人口割合14と非識字率
15
に比例している傾向がある。このように貧困層は南部の農村部に多く、全人口の 26.3%が
貧困層で、政府はその対策を政策の重要課題としている。
農牧林業
この貧困人口割合が高い州の農村部は乾燥地域もしくは半乾燥地帯に位置し、その地形は
中部ではアンデス山脈から海岸にせり出すように続く山岳地帯、南部ではアンデス山脈か
ら平地を経て海岸丘陵地を形成している。チリ国中南部にある山岳地および丘陵地は植林
産業が盛んな地域でもあるとともに、農村部には自給的零細農牧業と植林を行う小規模土
地所有者が居住している。
中部から南部にかけた乾燥気候および半乾燥気候の農村部では、小規模土地所有者は天水
農業による零細農業を営んでいる。このような地域の小規模土地所有者は、大麦、小麦、
トウモロコシ等の基幹穀物の栽培、たまねぎ・ジャガイモ栽培、自給が主目的かつ余剰生
産物の域内販売を目的とした野菜栽培、自給を目的としたモモ・りんご等の果樹栽培、飼
料作物の栽培、羊を中心とした牧畜に自給目的の家禽類の飼育、ユーカリもしくはラジア
タ松の植林を営む農家が大多数である。これに加えて、伝統的なアンデス原産の穀物キノ
ア栽培や、2000 年より小規模農家を対象に展開されているイチゴ栽培16等の換金作物の栽培
が行われている。
なお、このような乾燥気候の地域では、「降雨が冬期に集中する事により不安定な利水や水
侵食による土壌流亡が発生し、土壌及び水利用条件が劣悪な状況にある。」ために、農業生
産が著しく制限され、農業収入が低くなり、その生活に大きな影響を与えている。このよ
うに、第 IV 州から第 XIV 州にかけた農村部における農民の生活は苦しく、若者の離村の要
因ともなっている。
13
14
15
16
「表1:各州内の極貧、貧困、その他の人口割合」参照
「グラフ 2:州別都市部および農村部の人口」参照
「グラフ 4:州別の非識字人口と割合」参照
INDAP による普及振興
II - 18
社会基盤整備
州中心地から県中心地へ向かう二次幹線道路、県中心地から市中心地に向かう三次幹線道
路はほぼ全域舗装され、農村部とのアクセスの第一段階である市中心部への道路整備はあ
る程度を達成したといえる。しかし、市の中心地から農村部へ進む道路は依然に整備が進
んでおらず、降雨等が原因による自然災害等で陸の孤島となる農村部が第 V 州以南に多く
見られる。17
上水に関しては、全人口の約 93%が上水施設で処理された水を利用できる環境が整い、上水
道施設建設、給水管ネットワークの整備、その持続的な運営維持管理組織の設立と同組織
による運営がほぼ全国に浸透しつつある。しかしながら、都市部の給水人口割合が 97.4%
である一方、農村部では 65.7%であり、農村部での上水施設の整備が短期的な課題となって
いる。このように、チリ国全土の上水整備が進む中、下水道施設と水洗トイレの普及状況
は首都圏、州都、県都の都市部人口の割合 94.8%に対し整備が進んでいる一方、市レベルの
農村部では 40%にとどまっている。18
チリ国では地域住民のニーズを考慮して、上水、道路の順に公共サービスの提供が始まり、
その整備はここ 10 年の経済発展の影響を受けて加速した。しかし、首都圏、州都、県都の
順に整備が進み、その末端にある市の中心地および農村部へのインフラ整備はまだ十分で
はない状況にある。このように、州、県の中心地は道路、上下水、電気、通信が整備され、
その周辺農村部から人口が集中し、農村部のインフラの整備が不十分なことが、離村の要
因の一つになっていると考えられる。
農村部の支援機関
このような市レベルの農村部に対してチリ国政府は、市役所が教育、保健医療、道路・橋
梁、住宅・住居の支援を行うとともに、社会連帯福祉基金(FOSIS)による弱者支援、農業
省および農業省傘下機関による農牧業支援を行ってきた。特に小規模土地所有者に対する
農牧林業の支援は、農牧開発庁(INDAP)による農牧林業全般に対する技術支援、農民組織
の強化、補助金制度もしくは小規模融資による農牧業開発に必要な初期投入費用に対する
資金支援、植林事業への補助金制度等の支援が実施されている。この実施に際して、植林
事業の許認可権を持つ森林公社(CONAF)、農牧業の試験研究および普及を担う農業牧畜研
究所(INIA)は技術的な支援を行い、それぞれの役割の中で、市政府とともに、協働で事
業を行うケースもある。
2.2
計画の背景および目的
チリ国政府は優先課題である「農村部における貧困削減」と「農村部での環境の保全・維
17
18
公共事業省への聞き取り結果より
保健省提供資料より
II - 19
持管理」のための農牧業支援を FAO、GTZ、日本政府の協力の下実施してきた。
日本政府の取り組みとしては、国際協力機構によるプロジェクト方式技術協力(技プロ)
による「半乾燥地治山緑化計画(1993 年~1999 年)」を通じて、土壌保全と流域管理を考
慮した農村部の営農活動のモデルを策定するとともに、
「住民参加型農業農村環境保全計画
(2000 年~2007 年)」では住民参加型手法による事業計画の立案・実施等普及活動に係る
技術、住民のニーズを基に土壌保全対策を含めた営農技術の移転を行ってきた。
次ページに「チリ国住民参加型農村環境保全計画」のプロジェクト概要を示す。
これら手法および技術は、第 V 州のメリピジャ(Melipilla)近郊、第 VII 州のチジャン
(Chillan)近郊の半乾燥地域で実証され、プロジェクト終了後も展示圃場を活用して普及
活動が継続するとともに、その技術体系はマニュアル化され、普及教材として活用されて
いる。また、
「住民参加型農業農村環境保全計画(2000 年~2007 年)」で用いた参加型手法
が、昨年農業省主体で進められた「Proyecto de Desarrollo Rural(地域的開発プロジェ
クト)」において、上記 JICA 技プロ経験者により活用されている。しかしながら、これら
手法および技術の普及を促進する試みはプロジェクト経験をもつ第 VII 州にとどまり、適
用可能な第 IV 州から第 XIV 州にかけて計画的な試みおよび事業は実施されていない。
本調査は「チリ住民参加型農村環境保全計画」の成果を踏まえ、持続的な環境保全を可能
とする農村開発を内陸乾燥地域に広く適用する為の総合農村開発を策定するものである。
土壌侵食防止対策によって環境を保全すると同時に生産性の向上を図り、また、営農、家
畜飼育、灌漑排水、流通・販売、小規模融資等の農牧業支援サービス整備を通して貧困の
軽減を行う。
表:「チリ国住民参加型農村環境保全計画」のプロジェクト概要
プロジェクト概要:
チリ第5州から第8州までの天水農業地域では、不安定な利水状況や水食による土壌侵食の発生等のため、
農業開発が著しく制限されており、貧困層が多く遍在している。そのため日本の FAO へのトラストファン
ドにより 1992 年から 95 年までに第8州における土壌侵食現況調査とその対策の既存技術のマニュアル作
成等が進められてきた。同協力をベースとして、第8州にモデル地域を選定し、小規模灌漑技術及び土壌
保全技術等、農業環境保全技術の確立と、同技術に基づいた住民参加による農村開発計画の策定 を行うこ
とを主たる目的として、我が国に対するプロジェクト方式技術協力の要請がなされた。
上位目標:
内陸乾燥地域において、小流域の土壌・水保全プログラムを通して持続的農業と貧困緩和が推進される。
プロジェクト目標:
持続的農業開発のための、土壌・水保全の総合技術が、第8州ニンウエ区の小流域において実証される。
期待される成果: 1.小流域レベルにおける適切な農業開発計画が策定される。
2.土壌と水保全の技術が改善される。
3.土壌と水保全の実施可能な総合技術が実証される。
II - 20
活動:
1.小流域における天然資源評価と農業開発計画の策定
1-1 水資源評価
1-2 社会経済調査
1-3 土壌侵食調査
1-4 農業開発計画
2.土壌・水保全の技術の改善
2-1 小規模節水灌漑技術の改善
2-2 水資源開発技術の改善(表流水、地下水)
2-3 土壌管理・保全技術の改善
3.総合的技術の実証
3-1 土壌・水保全および有効利用技術の実証
3-2 土壌・水保全に関するマニュアルの作成
プロジェクト延長期間中は、以下の課題に対応する
1) プロジェクト成果の周辺地域への波及計画の策定
2) サンホセ地区への支援の継続
3) 他地域への技術移転活動のための予算確保
4) 水資源開発調査の継続
5) 不耕起栽培のための包括的技術パッケージの確立
6) 農民組織の強化支援
投入
相手国側投入
日本国側投入
長期専門家(チーフアドバイザー、業務調整、灌漑 延長期間中:長期専門家 1 年間 2 名(営農/栽培、
水資源開発)
/水資源、土壌管理、営農/栽培)
要員:プロジェクト・ダイレクター(1)、プロジェクト・マネージャー(1)、
短期専門家(年間 3~4 名)
灌漑/水資源(2)、土壌管理(2)、
研修員受入(年間 2~3 名)
営農・栽培(2)、事務職員等
機材供与 (実験機器、測定機器、車輌等)
実施体制
(1)現地実施体制:農業牧畜研究所(INIA) 農業省農業計画室(ODEPA)
、第8州政府農業省(SEREMI) 農牧
開発庁(INDAP)
(2)国内支援体制:緑資源機構、国内支援委員会(事務局は緑資源機構に委託)
支援機関:
2000 年 03 月 01 日~2005 年 02 月 28 日
延長期間:
2005 年 03 月 01 日~2007 年 02 月 28 日
出典)JICA ナレッジサイト、プロジェクト情報
2.3
計画の必要性
チリ国農業省は「チリ住民参加型農村環境保全計画(以下 CADEPA)」の成果を認め、手法お
よび技術の適用可能地域に対して自立発展性のある展開を望んでいる。19その一環として、
INIA は CADEPA プロジェクトサイトを展示圃場とした普及活動を行うとともに、その結果を
取りまとめプロジェクト実施対象州でセミナーを実施している。また、ガーナ、キューバ、
ペルーからの研修生が来訪し、国内だけでなく国外に対しても、その活動結果を紹介して
いる。加えて、内陸乾燥地域の水収支の学術的研究を続けるとともに、機関紙・新聞・ホ
ームページ等のメディアを通じた広報および技術紹介を行っている。
CADEPA プロジェクトでは農牧業普及を担う機関 INDAP が参加し、住民側組織の構築・強化、
および技術面の普及支援を行った。この経験を基に、第 VII 州では INDAP および INIA が協
力 し 、 住 民 間 の 自 立 発 展 性 の あ る 技 術 普 及 を 促 進 す る プ ロ ジ ェ ク ト 「 Grupo de
19
チリ国農業省 ODEPA への聞き取り調査結果
II - 21
Transferencia Tecnológica(技術普及グループ)」プロジェクトを実施し、同プロジェク
トの経験を普及拡大しようとしている。
このように技術者レベルの情報共有、プロジェクト対象州内での普及拡大の取り組みは行
われ成果を上げているが、CADEPA プロジェクトの手法および技術が適用可能な第 IV 州から
第 XIV 州への展開は行われていない状況にある。
このような状況の下、CADEPA プロジェクトの経験・知見を適用可能な州へ展開するための
取り組みが必要となっており、カウンターパート機関であった INIA および INDAP を中心と
した州レベルでの関係機関の連携による普及拡大システムの構築が望まれている。
2.4
計画の妥当性
本計画の妥当性を以下のとおり示す。
„
チリ国農業省は国家農業政策の中で小規模農家の収入及び生活の向上を挙げ、本計
画により第 IV 州以南の乾燥地帯および半乾燥地帯の小規模農家の農牧業支援は、
同課題を具現化するのものであり、チリ国政府のニーズに一致している。
„
本計画では、技術導入を INIA が行うとともに、その普及展開を INDAP が担うこと
が想定され、相手国関係機関の役割および小規模農家支援のスキームを充分考慮し
た上で、持続的な支援策を検討する。この結果、相手国政府役人が案件終了後も継
続してプロジェクトを引き継ぐ体制を整える。
„
日本政府はチリ国への開発援助指針として 4 つの重要課題を設定し、本計画はその
中の「環境保全」、「地域格差の是正」に資する案件である。これまで、わが国は、
環境保全分野に関しては国家環境委員会(CONAMA)への支援を長年続け、地域の格
差是正については住民参加型の農村・農業開発事業を農業省関連機関と展開してき
た。本プロジェクトでは上記の協力を通じて蓄積されたノウハウを範例として活用
でき、同分野に対して日本が協力を行なう優位性は高い。
„
チリ国政府は、計画される農村部における営農技術とその普及拡大を適用可能な 8
州で展開することとなる。そのため、裨益効果に係る公平性の観点からも妥当性は
高い。
2.5
計画の基本構想
本計画は、CADEPA プロジェクト終了後の経験から、その普及拡大には以下の取り組みが必
要であることが判明した。
„
CADEPA プロジェクトの経験から、農村部の環境保全型の農村・農業開発の普及拡大
は州単位で行われており、今後の適用地域への普及拡大には州レベルで開発計画を
策定する必要がある。
II - 22
INIA による技術支援、INDAP による普及拡大と補助金制度、銀行および NGO を通じ
„
た小規模融資、地方行政による零細農家支援等、関係機関がそれぞれ小規模農家を
支援しており、その役割を充分に考慮した上で、効率的かつ効果的な普及拡大メカ
ニズムを構築する。
CADEPA で導入した技術に加えて、対象となる各州で必要とされている事項および既
„
に展開され成果を挙げている事項を取りまとめ、小規模農民が農業所得を向上させ
るために必要な技術パッケージを州毎に取りまとめる。また、その技術パッケージ
の担当機関を資金支援、技術支援、資機材支援の観点から取りまとめ、住民組織が
アクセスしやすい環境を整える必要がある。なお、各州で必要とされている事項お
よび展開されている事項としては、換金作物、営農技術、灌漑排水等の基礎インフ
ラ整備、家畜飼育、その他農民支援施設、流通・販売、小規模融資が挙げられる。
上記取り組みは、長期的な視野でもって、チリ国農村部の小規模農家への生産基盤を維持
するための環境保全を考慮した支援機関の農牧業サービスが改善され、貧困を軽減するこ
とを上位目標としている。以下にその基本構想を示す。
案件名:
チリ国持続的参加型総合農村整備実施計画調査
上位目標:
チリ国農村部の小規模農家への生産基盤を維持するための環境保全を
考慮した支援機関の農牧業サービスが改善され、貧困を軽減すること
により、社会格差の是正に貢献する。
プロジェクト目標:
チリ国の貧困者が集中している農村部において、環境保全を考慮した
農村・農業開発が普及拡大されるための、持続的参加型総合農村整備実
施計画調査を策定し、マスタープランを策定する。また、その計画策
定プロセスを通じて、カウンターパートの開発計画のための調査及び
立案能力を向上させる。
期待される成果:
1.対象地域で展開されている、もしくは必要とされる農業技術が整
理される。
2.住民組織がアクセスしやすい技術の普及および拡大のメカニズム
が明らかになる。
3.チリ国政府の農村部の小規模農家に対する支援計画が策定される。
活動:
0. 調査実施の準備
0.1 詳細調査計画を相手国政府関係機関へ説明し、実施体制を構築する。
(具体
的な調査手法、調査工程、調査範囲、カウンターパート機関の役割と調査へ
の参画について)
0.2 本件調査に関係する法制度を調査する。
0.3 相手国政府の上位計画、本件調査に関係する政策を調査・分析する。
0.4 中央レベルで関係機関の現況把握を行う。
II - 23
1. 州レベルで既存の小農支援もしくは必要とされる小農支援のための技術の情報収
集および分析し、各州で必要な技術パッケージを特定する。
1.1 対象州で既存の小農支援の現況把握を行い、同国で展開されている技術を特
定する。
1.2 対象州の小農のニーズを把握し、そのために必要な技術を特定する。
1.3 1.1 および 1.2 の結果を基に、対象州毎に必要な技術パッケージを特定する。
2. 州レベルで農村部の小規模農家を支援する関係機関の支援体制および技術の普及
拡大のメカニズムを特定する。
2.1 対象州毎に小規模農家を支援する関係機関の現況の活動を把握する。
2.2 対象州毎に小規模農家を支援する関係機関の役割を分類する。
2.3 対象州毎に小規模農家を支援する関係機関の技術の普及拡大の連携・調整を
検討する。
3. チリ国政府の農村部の小規模農家に対する州レベルの支援計画を策定する。
3.1 上記結果に基づき、農村部の小規模農家に対して導入する農業技術と普及拡
大のメカニズムを対象州毎に特定する。
3.2 対象州毎に県別持続的参加型総合農村整備実施計画を策定する。
現地実施体制:
カウンターパート機関: 農業省農業計画室(ODEPA)、農業牧畜研究所(INIA)、農牧開発庁(INDAP)、
関係機関:
内務省地方・行政開発次官官房(SUBDERE)
投入:
日本国側:
総括、組織間調整・地方分権化、農業サービス制度、営農技術、家畜飼育、
流通・販売、小規模融資、小規模灌漑、土壌劣保全、ジェンダー
相手国側:
カウンターパートの配置、カウンターパートの活動経費、調査用事務等ス
ペース
対象地域:
2.6
第 IV 州、第 V 州、第 VI 州、第 VII 州、第 VIII 州、第 IX 州、第 XIV 州
計画の概要
本計画は上記 CADEPA プロジェクトでの土壌・水保全の総合技術の実証を踏まえ、全国の乾
燥地域および半乾燥地域において、住民組織の強化を通じて自発的な住民による小流域単
位(もしくは最小行政単位)の農業・農村開発を実施に必要な農業サービスを特定し、効率
的且つ効果的に普及拡大するためのマスタープラン調査計画である。本調査では事業対象
地域の選定を行い、優先順位を検討し実施地域を決定し、事業実施計画を策定する。
II - 24
(1) 基礎調査
− 法・制度の調査(小規模融資、組織化、水資源保全、流通・販売等)
− 社会経済ベースライン調査
− 農家調査
− 土壌浸食現況被害状況調査
− 水源基礎調査(水源現況利用、小規模灌漑技術の現況調査等)
− 小流域の集落形態、人口規模
− 事業実施に係る中央政府、地方政府、末端政府、関係機関の組織とその役割、
− 現況住民組織或いは組合とその役割
− 持続的農業を可能にするための営農形態、作物選定、および市場・流通調査、
− 地域住民参加のための住民(農民)組織の強化策の検討、
− 地域住民参加を可能にするためのインセンティブの検討、
− 持続的農業を支えていくための技術的後方支援体制の強化、
− NGO 等のアウトソーシング人的資源の検討、
(2) マスタープランの策定
(3) 優先地区の F/S 調査及び事業実施計画を策定
なお、本計画は、日本側調査団とチリ国関係機関の協力の下、チリ国が継続的に実施可能
な事業計画の策定を行う。このため、ドナー等の外部の支援に依存するのではなく、チリ
国関係機関が自らの人的、物的及び予算的制約の中で実施可能な事業計画を策定する。
対象地域では、複数の関係機関が農業関連のサービスを提供しているが、関係機関間の役
割分担や連携が十分でなく、必要とするサービスが必ずしも小農に届いていない。ついて
は、本計画を通じて関係機関の活動状況を分析し、関係機関間の役割分担や連携システム
を改善することで、小農に対する効率的・効果的なサービスの提供方法を提案する必要が
ある。
2.7
総合所見
チリ国は民主化と市場化をすすめたことにより、農村部の基幹産業である農業、林業、畜
産業の開発振興は大規模および中規模農家が中心となり、国外輸出を意識した起企業化等
II - 25
の開発が民間を中心に進められてきた。一方で、前述したとおり、貧困に陥っている農村
部の小規模農家は初期投資のための資本が不足するとともに、生計を担う農牧林生産物の
生産工場および販売に対する技術が不足し、その収益性は改善されないまま、貧困からの
脱却が困難な状況であった。
このような状況に対して、同国では、INIA、INDAP により小規模農家への営農技術支援、補
助金制度による資金支援、持続的かつ自立発展性のある農牧業開発のための組織強化を行
ってきている。また、世界銀行により中南米各国に導入された社会連帯基金制度を自国で
運営管理し、農村部も対象とした弱者支援を行ってきている。
このように民間資本による農牧林業開発と、政府による小規模農家への支援による農業・
農村開発が平行に進められてきた。前者は大資本投資により急激に発展する一方、後者は
成果を挙げてはいるが、その進行速度は遅く、地域格差がますます開く結果となっている。
この結果、農村部から都市部へ人口が流出し、地域経済が停滞し、更なる地域格差を生ん
でいると考えられる。
また、対象となる農村部は山岳地もしくは丘陵地の乾燥地にあり、農地改革以降に所有地
が細分化され、小規模農家が持つ農業適地は限られている。土地が細分化されたことによ
り、適切な土地利用ができず、土壌の物理的、化学的、生物学的劣化を引き起こしている。
このため、FAO を中心に、1960 年代から水資源・土壌の保全・管理のための流域管理の概
念が取り入れられ、生産基盤を保全管理し、生産維持・向上につとめる試みがされている。
その経験を基に、住民組織の醸成、環境保全の啓発に加えて、生活を担保する農牧林生産
物の生産から流通・販売までの、一連の開発とその普及・拡大求められている。
本計画は、南米の中で、農牧林業・農村開発の多くの試みが実践されてきたチリ国のこれ
までの経験を取りまとめ、小規模農家を対象にその普及・拡大のメカニズムを策定し、効
率的かつ効果的な行政支援を計画する。これは格差是正がいまだ重要な問題となっている
同国においては、「農村部の自立発展的な経済開発のためにも必要な課題である。」と、政
府官僚・関係者が認識していることを、今回の聞き取り調査を通じて感じた。
本案件を進める上で懸念事項としては、チリ国では市場経済が農村部の小規模農家にまで
深く浸透しており、農牧林業に係る活動に対して個人主義的な農家経営を行う傾向が高い
ことである。これは、政府として小規模農家支援を行う際に必要な組織化の動機付けおよ
び組織形成が困難になるとともに、プロジェクト終了後の自立発展性のある運営維持管理
に対して大きな制約条件となることが考えられる。このために、住民参加型手法を用いて、
地域の自立的な発展促進が望まれている。そのため、本プロジェクトを検討するに当たり、
同国の農村部の小規模農家に対する効率的かつ効果的な技術支援のメカニズムを構築する
ためには、CADEPA プロジェクトを筆頭に住民組織とともに活動を行った経験が同国の農村
部の開発に貢献できると信じ、本プロジェクトをここに報告する。
II - 26
添
1.
資
料
調査団員略歴
高田
一樹
1972 年
東京農工大学農学部卒業
1972 年~1982 年
パシフィックコンサルタンツ株式会社入社
1982 年~2008 年
㈱パシフィックコンサルタンツインターナショナル農業開発部
2008 年~現在
オリエンタルコンサルタンツ株式会社
保久
2.
付
環境・地域開発部
太洋
1997 年
鳥取大学 農学部卒業
1998 年~2000 年
国際協力事業団 青年海外協力隊
2000 年~2008 年
㈱パシフィックコンサルタンツインターナショナル農業開発部
2008 年~現在
オリエンタルコンサルタンツ株式会社
環境・地域開発部
調査日程表
1
2
日
付
11 月 29 日
11 月 30 日
曜日
日
月
宿泊地
機中
Asuncion
3
12 月 1 日
火
Asuncion
4
12 月 2 日
水
Asuncion
5
12 月 3 日
木
San Jose
Bautista
6
12 月 4 日
金
7
12 月 5 日
土
Asuncion
8
12 月 6 日
日
Asuncion
9
12 月 7 日
月
Asuncion
10
12 月 8 日
火
Santiago
工程及び調査内容
移動(東京から Asuncion へ)
Asuncion 到着
JICA パラグアイ事務所(在パラグアイ日本大使館同席)表敬
訪問・会議
農牧省計画局訪問(MAG) ・会議
STP 表敬訪問・会議
農牧省統計局訪問・会議
協同組合庁(INCOOP) 表敬訪問・会議
農地改革庁(INDERT) 表敬訪問・会議
San Jose Bautista へ移動
San Jose Bautista SEAM 訪問・会議
San Jose Bautista – Ayolas へ移動
Yacyreta 公団訪問・会議
Yacyreta Dam 現地視察
Yacyreta 大規模米作農家視察
Yacyreta 農業開発地域視察
Asuncion へ移動 途中 JIRCAS 試験圃場視察
資料整理
JICA パラグアイ事務所調査結果・帰国報告
在パラグアイ日本大使館調査結果・帰国報告
日系移住者野菜栽培農家訪問・会議
(祭日) 資料整理
Santiago へ移動
添付-1
11
12 月 9 日
水
12
12 月 10 日
木
13
12 月 11 日
金
Santiago
14
15
12 月 12 日
12 月 13 日
土
日
Santiago
Santiago
16
12 月 14 日
月
Conception
17
12 月 15 日
火
18
12 月 16 日
水
Santiago
19
12 月 17 日
木
Santiago
20
12 月 18 日
金
Santiago
21
22
23
24
12 月 19 日
12 月 20 日
12 月 21 日
12 月 22 日
土
日
月
火
Santiago
機中
機中
3.
面談者一覧
3.1
パラグアイ国
Santiago
Santiago
Santiago
在チリ日本大使館表敬訪問・会議
在チリ日本大使表敬
JICA チリ事務所表敬訪問・会議
地方・行政開発次官官房(SUBDERE)表敬訪問・会議
保健省(MINSAL)表敬訪問・会議
国際協力庁(AGCI)表敬訪問・会議
農業牧畜研究所(INIA)表敬訪問・会議
農業政策研究所(ODEPA)表敬訪問・会議
国家環境委員会(CONAMA)表敬訪問・会議
訪問記録取りまとめ
休日
Conception へ移動
Bio Bio 州政府 SUBDERE 表敬訪問
Arauco 市 Laraquete 汚水処理施設管理団体との会議
Rangucahue 汚水処理施設視察
Terehuaco 汚水処理施設視察
INIA Quilamapu 表敬訪問・会議
Niue 市表敬訪問・会議
San Juan CADEPA プロジェクトサイト視察
Santiago へ移動
San Antonio 州知事表敬
San Antonio 市市長表敬
El Tabo 地場産業振興のための地方行政強化プロジェクト対
象地区視察
日智商工会議所で資料収集
国家統計局(INE)で資料収集
国家地理院(IGM)で資料収集
国会図書館(BCN)で資料収集
公共事業省 (MOP) 表敬訪問・会議
在チリ日本大使館調査結果・帰国報告
JICA チリ事務所調査結果・帰国報告
訪問記録取りまとめ
移動
移動
東京着
パラグアイ国側関係者
農牧省:Ministerio de Agricultura y Ganadería (MAG)
計画総局:Dirección General de Planificación (DGP)
Mr. Marciano Barreto
Director General
Mr. Carlos Romero Roa
Director
Miss Patricia Melgarezo
PNDS 担当
添付-2
農牧センサス・統計局:Dirección de Censo Estadísticas Agropecuarias (DCEA)
Mr. Francisco Ibarra
Vice Director
大統領府社会担当室 Gabinete Social
Mr. Andrés Peralta
Asesor de Director Técnico
大統領府計画庁 Secretaria Técnica de Planificación (STP)
Dirección de Cooperación Internacional
Mr. Monserrat Fretes
Encargada
国立協同組合院:Instituto Nacional de Cooperativismo (INCOOP)
Presidencia
Mr. Carlos Ortiz Guanes
Presidente
土地農村開発院:Instituto Nacional de Desarrollo Rural y de la Tierra (INDERT)
計画政策局:Dirección de Planificación y Políticas
Mr. Arecio Villalba
Gerente
Mr. Odilon Mereles V.
Abogado
サン・ファン・バウティスタ水利用者組合 Junta de Usuario de Agua de San Juan Bautista
Mrs Julia Borda
Presidente de la Junta
環境庁ミシオネス事務所 SEAM en Dept. Misiones
Ing. Agr. Silverio Jara
Encargado
Lic. Asunción. M. Monzón
Encargado
ヤシレタ公団:Entidad Binacional Yacyretá
計画政策局 Dirección de Planificación y Políticas
Dr. Alfredo Cryciuk
日本国側関係者
在パラグアイ日本国大使館
藤本
和巳
氏
書記官
JICA パラグアイ事務所
桜井
英充
所長
岩谷
寛
次長
Mr. Tasao Watanabe
Mr. Shinichi Kondo
3.2 チリ国
チリ国側関係者
内務省:Ministerio del Interior
地方・行政開発次官官房:Subsecretaria de Desarrollo Regional y Administrativo (SUBDERE)
Mr. Nemesio Arancibia Torres
Jefe Division Desarrollo Regional
添付-3
Mr. Sergio Espinoza Hetreau
Coordinator Programa de Infraestructura
Rural Para el Desarrollo Territorial (PIRDT)
Mr. Rodrigo Alarcon Carrizo
Profesional de Apoyo Oficina Provincial de
Desarrollo Productivo
サンアントニオ県:Provincial Gobierno de San Antonio
Mr. Alfredo Nebreda le Roy
Provincial Governor
保健省:Ministerio de Salud (MINSAL)
Oficina de Cooperacion y Asuntos Internacionales
Mr. Jose Miguel Huerta Torchio
Jefe
Department de Salud Ambiental Division de Politicas Saludables y Promocion
Mr. Julio Monreal Urrutia
Jefe
国際協力庁:Agencia de Corporacion Internacional (AGCI)
Mr. Iván Mertens
農業省:Ministerio de Agricultura (MA)
農業牧畜研究所:Instituto de Investigaciones Agropecuarias (INIA)
Dr. O. Mario Paredes Carcamo
Jefe de Cooperacion Internacionales
Mr. Ernesto Labra Lillo
Sub Director
農業省農業政策研究局:Oficina de Estudios y Politicas Agrarias (ODEPA)
Mrs Cecilia Rojas Le-Bert
Jefe de Departmento Politica Comercial
国家環境委員会:Comision Nacional de Medio Ambiente (CONAMA)
Departmento de Estudios
Mr. Claudio Bonacic Fuica
Member
Mr. Violeta Sepulveda Anguita
Member
公共事業省:Ministerio de Obras Pubricas (MOP)
Dirección General de Aguas (DGA)
Mr. Rodrigo Weisner Lazo
Director General
Mr. Carlos Salazar Mendez
Sub Director de Coordinacion
日本国側関係者
在チリ日本国大使館
林
渉
氏
大使
今井
泰志
氏
参事官
米田
太一
氏
一等書記官
Miss Wako Okubo
調整員
JICA チリ出長所
長町
昭
氏
所長
Mrs. Toshimi Kobayashi
次長
添付-4
Mrs. Tazuko Ichinohe
調整員
Mrs. Masumi Harada
調整員
4.収集資料一覧
番号
国
資料の名称
JICA による開発調査「パラグアイ国
小農のための総合的農村開発計画(東
部 14 県:2008-2010)」のリーフレッ
ト
Propuestas para un crecimiento
económico con inclusión social en
Paraguay
Marco Estratégico Agrario
Campaña Agrícola 2009-2010(配布資
料)
Cerrito I de PEES - Talle Fijación de
Prioridades Cerrito II de PEES - Retiro Taller de
Planificación Informe 2009 Gobierno Nacional
Manual del Empaderonador (Censo
Agropecuario Nacional 2008)
Ficha de Censo Agropecuario Nacional
2008
Anuario 2008 (年報 2008 年)
Informativo No.4 Abril/Mayo Año
2009 (リーフレット)
Resolución No. 170/96
地図(ヤシレタ周辺)
Resumen Ejecutivo Estudio de
Soluciones de Saneamiento Rural
PIRDT (Programa de Infraestructura
Rural para el Desarrollo Territorial)
Conservacion del Medio Ambiente y
Desarrollo Rural Participativo en el
Secano Mediterranoeo de Chile
発行機関
JICA パラグアイ
リーフレット
大統領府
電子ファイル
農牧省
電子ファイル
農牧省
書籍
大統領府
デジタルファイル
大統領府
デジタルファイル
大統領府
農牧省農牧センサ
ス・統計局
農牧省農牧センサ
ス・統計局
国立協同組合院
デジタルファイル
1
パラグアイ
2
パラグアイ
3
パラグアイ
4
パラグアイ
5
パラグアイ
6
パラグアイ
7
パラグアイ
8
パラグアイ
9
パラグアイ
10
パラグアイ
11
パラグアイ
12
13
パラグアイ
パラグアイ
14
チリ
15
チリ
16
チリ
17
チリ
Organigrama SUBDERE 2009
内務省地方・行政
開発次官官房
18
チリ
Presentación Institucional
保健省
19
20
21
22
23
24
チリ
チリ
チリ
チリ
チリ
チリ
Censo Agropecuario y Forestal 2007
Censo Agropecuario 1997
Censos de Poblacion y Vivienda
Estadisticas de Medio Ambiental
全国地勢図
全国土壌分布図
国家統計局
国家統計局
国家統計局
国家統計局
国家地理局
国家地理局
添付-5
形態
デジタルファイル
アンケート用紙オ
リジナル
書籍
国立協同組合院
書籍
大統領府
国土地理院
内務省地方・行政
開発次官官房
内務省地方・行政
開発次官官房
デジタルファイル
地図
農業牧畜研究所
コピー
コピー
パワーポイント資
料
パワーポイント資
料
パワーポイント資
料
アクセスデータ
エクセルデータ
PDF
デジタルファイル
地図
地図
パラグアイ国東部農業生産強化計画調査
アグアペ川河口閉塞堤防
および
アグアペ川バイパス水路
アグアペ川バイパス水路橋
アグアペ川バイパス水路
ヤシレタ公団が設置した取水口
(ゲートは未設置)
大農家が独自に引いた用水路
アグアペ川バイパス水路横断水路橋
添付-6
チリ国持続的参加型総合農村整備実施計画調査
AGCIとの会議
INIA Quilamapu 事務所訪問
San Juan CADEP プロジェクトサイト
不耕起栽培
San Juan CADEP プロジェクトサイト
ため池(小流域水源開発)
San Juan CADEP プロジェクトサイト
節水灌漑(ドリップ灌漑)
添付-7
Fly UP