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2. プロセス用・現場用分析機器 - JAIMA 一般社団法人 日本分析機器

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2. プロセス用・現場用分析機器 - JAIMA 一般社団法人 日本分析機器
2. プロセス用・現場用分析機器
2. プロセス用・現場用分析機器
〈概 説〉
例のものである。
(1)プロセス用・現場用分析機器の特徴
プロセス用分析計は,プロセスの特定の現場に設
置して,連続的にまたは一定周期毎に繰返して測定
中には防爆性のほかに防滴,防湿,耐食性を考慮
して設計されたものがある。
(2)ガス分析計
するように設計されたものである。これに対し現場
ここに述べるプロセス用ガス分析計は,研究用連
用分析計は,プロセスに持込みながら比較的短時間
続ガス分析計,生産管理用ガス分析計,省エネルギ
に使用するもので,可搬形,ポータブル形等とも称
ー用ガス分析計,公害用ではないが製品や作業に影
している。
響するガスの分析計等が挙げられる。
<プロセス用分析計>
原料ガスや脱酸素用のアルゴン,窒素の純度の測
プロセス用分析計は,プロセスにおいて測定対象
定,反応工程における生成物の検査,反応雰囲気ガ
物の濃度や状態を計測し,これを設定した範囲内に
スの純度測定,農作物の育成研究・管理のための二
制御したりまたは監視するためのもので,分析計の
酸化炭素,一酸化炭素,酸素の連続測定,また森林
設置の状態からインライン分析とオンライン分析の
における一酸化炭素,メタンの測定など全地球の雰
二つの方式がある。
囲気を研究するためにも連続ガス分析計が用いられ
インライン分析は,化学プロセスなどにおいて測
ている。
定対象の反応タンクや流路の試料中にプロセス分析
生産管理用として特に多いのは,
環境保全を前提と
計の検出器を直接挿入し,分析・記録・伝送を連続
してプラントを制御するものであろう。例えば,排
的に行う方式であり,一方オンライン分析は,プロ
煙脱硝装置をはじめ化学反応などにともなって排気
セスのバイパス等から分析試料の一部を採取して分
筒など発生源から排出されるガス中のアンモニア濃
析部に導入し,分析・記録・伝送を行う装置による
度の測定がある。これは乾式排煙脱硝装置へのアン
連続分析をいう。前者ではプロセスの測定対象に試
モニア注入量の制御とその装置の管理という面で,
薬の添加や前処理など何等手を加えることなく分析
必要不可欠のものである。煙道の酸素,一酸化炭素,
出来る場合に限定され,例えば隔膜式ガスセンサや
二酸化炭素,窒素酸化物,炭化水素,水分,二酸化
pH計など選択性の高いセンサタイプのものに多い。
硫黄などを測定して,
公害ガスはできるだけ排出を少
後者のものは最適な条件下で分析を行うための前処
なくなるようにする一方,各種の測定された値をフ
理操作を必要とするものに多くみられる。例えば,
ィードバックして燃料や助燃剤のボイラヘの供給量
試料中の夾雑物やダスト,ミストの除去,試料の圧
を制御して燃料効率を高め,省エネルギーにも役立
力や温度の調整,希釈,濃縮,抽出等による濃度調
てている。鉱工業においては,鉱石の処理過程,石
整,干渉成分の試薬添加による除去等を自動的に行
炭,石油の燃焼において発生する硫化水素,二酸化
う前処理装置が分析装置の前段に設置される。この
硫黄,塩素などの無機ガスの回収のための測定,配
前処理装置はサンプリング装置と呼ぶこともある。
管からの漏れの検査等の目的にも使用される。その
プロセス用分析装置の稼働率はこの前処理装置のメ
他,種々のプロセスにおいて生産管理用としてその
ンテナンスに依存するといっても過言ではない。
利用範囲は広い。
プロセス分析計には点検保守の周期を延長させる
特に,プロセス用ガス分析計は公害用との関連も
ため,検出部の自動洗浄機能,自己診断機能,自動
深いのでⅢ項も充分参照されたい。
校正機能等を付加させたものがある。また装置を設
(3)溶液分析計
置した環境条件に合わせ,防爆構造,高圧ガス保安,
溶液分析計は,その名称の示すとおり溶液を主体
放射線取扱い等の関連法規に適合させた製品がある
としたプロセスに関係する。その代表例は上下水道
のもプロセス分析計の特徴である。
のプロセスに関する計測と制御に用いられる分析計
<現場用分析計>
で,これには溶液の状態を示すpH計,ORP計,導電率
現場用分析計はラボ用分析計を可搬形にした形態
計,色度計のほか,各種の処理と制御のために必要
で一般に直流電源で駆動し,
軽量小形のものが多い。
な特定成分を計る分析計として,アルカリ度・酸度
現場にチェック用として持ち込んで測定したり,短
計,残留塩素計,濁度計,溶存オゾン計,溶存酸素
時間ながら測定試料のモニター用として使用する事
計が使用されている。なお,導電率計は酸・アルカ
111
プロセス用分析機器 現場用分析機器 サンプリング装置 多目的プロセス用分析計
2. プロセス用・現場用分析機器
リ溶液の特定範囲の濃度溶液では濃度と導電率が比
メタンおよび水分などの測定用があり,溶液分析計
例するので各種濃度計としても用いられている。
としてはpH,溶存酸素,シアン,各種イオン,残留
また,火力発電所のほかに各種工業用ボイラの用
水管理には前記上水用分析計が同じく重要項目とし
塩素,汚泥濃度のほか水質計として,これらの複合
化したものなどがある。
て用いられているほか,特に高圧ボイラ用缶水の管
また,このほかに原理名称のまま多目的に現場で
理のためにはシリカ計,ヒドラジン計,水硬度計な
用いられるものに赤外線ガス分析計,熱伝導度式ガ
ど特定成分の分析計が用いられている。
ス分析計,光電光度計及び比色計などがある。
その他,非水溶夜中の水分計,各種溶液の粘度計,
高濃度溶液・スラッジ溶液の密度計などがある。
(4)固体分析計
固体分析計に分類されている厚さ計は,紙パルプ
(7)その他のプロセス用・現場用分析計
(2)∼(6)のいずれにも分類できない分析機
器として,石油精製プラントにおいて製品の品質管
理のための沸点の検出を行う沸点計,
またガソリン,
のプロセスにおいて,一般用紙,新聞紙,各種ボー
ジェット燃料など石油製品の蒸気圧を測定する蒸気
ル紙,ダンボール用紙などの厚さを測定するほかに,
圧計などがある。
各種プラスチックフィルム,ゴムシート金属薄板,
メッキ厚さ,ガラスなどの厚さ測定と制御が行われ
ている。なお,厚さ計は分析計に分類されるもので
はないが,前記した各種用紙の厚さ測定の場合には,
同時に水分,灰分を測定して種々演算をして精度の
高い厚さ,水分,灰分を測定するため分析機器を含
めてシステム化していることによる。灰分計につい
ては前記各種用紙に含まれる灰分(アッシュ)の測
定のほかに,石炭・コークスなどの固形燃料中の灰
分測定にも用いられている。
(5)多目的プロセス用分析計
プロセス用分析機器は,
(2),
(3),
(4)に記述した
とおり,用途に対応した専用機として分類できるも
ののほかに,原理分類された各種分析機器がある。
いずれもプロセス用としてプロセスの設置条件,試
料採取,環境などの各種条件に対応できる構造に設
計されたものである。
これには可視・紫外線分析計,赤外線分析計,熱
伝導度式ガス分析計,密度式ガス分析計,液体クロ
マトグラフ,ガスクロマトグラフ,蛍光X線分析計,
タイトレータ式分析計,比色式分析計,ポーラログ
ラフ式分析計などの原理名称のものであって目的と
する測定成分の測定法に,その原理が連合するもの
をプロセス用の分析計として利用する。多くの場合
前処理装置を付属し,全体で専用機として用いられ
る。
(6)現場用分析計
現場用分析計は,主として目的とする測定成分に
対応した名称の専用機として使用されている。これ
には,ガス分析計として一酸化炭素,二酸化炭素,
二酸化硫黄,窒素酸化物,酸素,オゾン,炭化水素,
112
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1 測定対象別プロセス用・現場用分析計
2.1.1(1)
アルゴン計
Argon analyzer
〈原理〉
アルゴンの熱伝導率は他のガスに比較し
アルゴン(0.9%)である。
これらの成分を分離精製す
て小さく,1.58×10−4J/cm・s・K(at 0℃)である。
るための空気分離プラントに於いて,精製アルゴン
これは空気の熱伝導率の約65%であり,この特性を
の純度を測定するために本アルゴン計が使用され
利用してアルゴン濃度を測定する。
る。なお,複雑なガス組成中のアルゴン計測にはガ
図1にアルゴン計の原理を示す。検出器の内部は測
スクロマトグラフや質量分析計が使用される。
定室と比較室があり各々の内部に細い金属抵抗線が
張られている。2本の抵抗線は2個の固定抵抗と組
み合わされてブリッジ回路を形成する。抵抗線を特
定の温度に加熱するため,回路には一定電流が流さ
れる。比較室には基準ガス(通常空気)が封入され,
測定室には測定ガスが導入きれる。測定ガス中のア
ルゴン濃度が高いと測定室内の熱伝導率が低下し抵
抗線からの放熱が減少して温度が上昇する。この温
度の変化を電気抵抗として取り出し,アルゴン濃度
を測定する。微少な温度変化の検出を測定原理とし
ているため,周囲温度の影響や測定ガス流による熱
伝達の影響を無くするための種々の配慮がされてい
る。本アルゴン計は原理的に選択性が低く測定ガス
中の他の成分比率が変動する条件での使用は好まし
くない。
〈特徴〉
アルゴンは希ガスであるため化学反応し
ない。このため複雑なガス成分中のアルゴン計測の
例は少く,ほとんどが空気,窒素,酸素中のアルゴ
ン計測である。このような場合,本アルゴン計は低
価格で簡便に使用できるのが最大の特長である。
〈用途〉 空気の主成分は窒素
(78%)
,酸素(21%),
113
アルゴン計 熱伝導率 ブリッジ アルゴン
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(2)
アンモニア計
Ammonia analyzer
〈概要〉
アンモニアの連続分析法として溶液導電
被測定物質が検出器に封入されるが,アンモニアの
率法,非分散赤外線吸収法がある。アンモニアは水
場合はガスの安定性や内壁への吸着を考慮して,吸
に対する溶解度が非常に大きく,試料ガス中に水分
収帯の重なるガス(例えばエチレン)を代わりに封
が多量に存在する場合は,凝縮水が生じないように
入する場合もある。
する必要がある。通常サンプリング導管等を加熱し
また,図2のように酸化触媒を用いて試料ガス中
て水への溶解損失による誤差を防止している。
のアンモニアを一酸化窒素に変換した後,一酸化窒
〈原理及び特徴〉
(1)溶液導電率法:図1に構
素分析計(非分散赤外線ガス分析計)で,一酸化窒
成例を示す。試料ガスと吸収液を一定の割合で接触
素の濃度を測定することにより,アンモニアの濃度
させ,試料ガス中のアンモニアを吸収液に吸収させ
とする方法もある。測定範囲は,セルの長さを選ぶ
て,吸収前後の導電率の変化を測定することにより
ことにより0∼50ppmから0∼100%まで広範囲に
アンモニアの濃度を測定する方法である。試料ガス
使用できる。選択性が良く,取り扱いが簡単で保守
と吸収液の混合比の変化は測定精度に直接影響する
管理が容易であるという特徴がある。
ため,両者の流量は一定に制御されている。アンモ
〈用途〉
ニアの吸収速度や導電率は温度により変化するので
イラ,加熱炉などの排ガス分析及び脱硝プラントの
吸収部や測定部は恒温槽内に収められている。また
脱硝効率の管理に用いられる。非分散赤外線ガス分
試料ガス中に共存する酸性ガス(SO2,HCr,Cr2など)
析計は構造や取り扱いが簡単なところから,化学プ
の影響を除去するためアルカリ性のスクラバを通す
ロセスの成分分析や工程管理,各種ボイラや加熱炉
場合もある。この方法は試料ガスと吸収液の混合比
などの乾式脱硝プラントの脱硝効率や環境監視に用
を変えることにより,0∼10ppmから0∼1%まで
いられる。
溶液導電率法による分析計は主に各種ボ
の広い測定範囲が可能であるという長所がある反
面,日常の保守管理が面倒になる点や共存ガスの影
響を受けるという欠点がある。
(2)非分散赤外線吸収法:この方法はアンモニア
の赤外領域における吸収を利用し,試料ガス中のア
ンモニア濃度を連続的に分析するものである。
通常,
非分散赤外線ガス分析計は選択性を高くするため,
114
アンモニア計 非分散赤外線吸収法 溶液導電率法
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(3)
一酸化炭素計
Carbon monoxide analyzer
〈概要〉
一酸化炭素を測定する方法としては,非
出器自体で共存成分の妨害を除去できるようにした
分散赤外線吸収法が一般的であるが,ほかに定電位
ものも使用されている。半導体検出器の場合も測定
電解法がある。試料ガス中の粉じんを除去するとと
原理は同様であるが,検出器そのものには選択性が
もに,水分を一定に保つための試料前処理部と分析
無いため干渉フィルタを使用して一酸化炭素の吸収
部から構成されている。
帯のみが検出器に入射するようにしている。ガス封
〈原理及び特徴〉
非分散赤外線吸収法の構成例を
入形検出器の方が,半導体検出器よりも一般に高感
図1に示す。赤外領域の4.7mmにおける一酸化炭素
度である。特徴は
(1)試料ガスの前処理操作が簡単
による吸収を利用したもので,光源からの赤外線が
である。(2)応答速度が早い。(3)選択性が高い。
一酸化炭素に吸収され,光量が減少するのを検出部
(4)高感度測定が可能である。
(5)長期の連続測定
にて検出する。検出器には,ガス封入形検出器と半
が可能である。
(6)
保守の頻度が少なく容易である。
導体検出器が主として使用される。ガス封入形検出
定電位電解法は,一定電位で一酸化炭素濃度を求め
器には一酸化炭素が封入されていて光源からの赤外
るものである。図2にこの方式の原理図を示す。
線のうち,一酸化炭素の吸収帯のみを吸収して応答
〈用途〉
する。光源と検出器の光路中に一酸化炭素を含む試
の測定用として,0∼1%から0∼100%の範囲で工
料ガスを通過させるようにサンプルセルを設けてお
程管理や燃焼管理の目的で使用されている。石油化
くと,検出器に入射する赤外線のうち一酸化炭素の
学や精製プラントなどでは,工程管理や安全管理の
吸収帯の光量が減少し,検出器の吸収応答が変化す
目的で,0∼50ppmから0∼5%の範囲で使用され
る。これを信号として取り出す。ガス封入形検出器
ている。
鉄鋼,金属,窯業等の炉ガスや排出ガス
は選択性をもっているために,光源からの赤外線の
波長領域を規制する必要はないが,共存成分の吸収
波長が近接する場合には,あらかじめ検出器に入射
する赤外線の波長領域を制限するために,共存成分
ガスを封入したフィルタセルを使用して,共存成分
の吸収帯を赤外線が検出器に入射しないようにした
り,干渉フィルタにて一酸化炭素の波長領域のみが
検出器に入射するようにすることもある。また,検
115
一酸化炭素計 非分散赤外線吸収法 定電位電解法 半導体検出器
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.11(5)
塩素計
Chlorine analyzer
〈原理〉
各種プロセスガス中に含まれる塩素濃度
差圧吸光方式である。図2にこの方式の構成例を示
を連続測定する装置である。塩素は近紫外域の光線
す。図において,試料セル出口の電磁弁を開放し,
を選択的に吸収する性質があるので,これを利用し
大気圧で試料を流通させ,受光部の検知器の出力が
て塩素濃度を求めるが,この方式には2波長演算方
一定値になるようにアンプ感度を自動校正し,その
式と差圧吸光方式の2種頬があり,測定対象濃度に
値を記憶させておく。次に試料セル出口の電磁弁を
応じて,いずれかを選ぶことになる。
閉じ,サンプリングポンプにて約1気圧に試料セル
2波長演算方式は,試料中の塩素のみが吸収をも
内を加圧し,そのときの検知器出力を大気圧時の値
つ波長を測定波長とし,塩素及び他の共有成分によ
とつき合わせる。両者の差を演算増幅し,濃度に対
る吸収の差より塩素濃度を求める方式である。
しリニアな信号として指示記録する。以上の一連の
図1に2波長演算方式の構成例を示す。図におい
プログラムを1サイクル30秒で繰り返し行うことに
て,光源(ハロゲンランプ)から出た光は集光レン
より,連続測定値が得られる。
ズ,光学絞りにより平行光束となり,試料セルを通
〈特徴〉
過したのちハーフミラーによって2本の光束に分け
化及びセル窓の汚れの蓄積などによるドリフトが,
られる。一方の光束は,測定波長の光のみを通す光
効果的に補償されるので,長期間の連続測定を行う
学フィルタを経て測定側検知器に入り,電流出力に
ことができる。
2波長演算方式は,光源の輝度の経時変
変換される。他方の光束は,基準波長の光のみを通
差圧吸光方式は,その原理上,全くドリフトを生
す光学フィルタを経て基準側検知器に入り,電流出
じないので,通常の吸光度測定方式の約10倍の安定
力に変換される。両者の出力をプリアンプ及びメイ
性が得られる。
ンアンプにより増幅演算し,濃度リニアの信号とし
〈用途〉
てメータ指示及び出力発信される。
空気中の0∼2%Cr2濃度測定,ホスゲン
中の0∼0.1%Cr2の測定,サンプリングシステムと
差圧吸光方式は,つぎの原理を用いている。気体
の場合,測定対象成分による紫外線吸収の強さは,
組合わせることにより,EDC(1,2−ジクロロエタン)
液中のCr2濃度測定に用いられる。
濃度とセル内の圧力により変化する。セル内圧力を
2様に切り替えて,それぞれの圧力での吸収の強さ
を比較すると,圧力差が一定の場合は濃度が高いほ
ど吸光度の差が大きくなるという原理を用いたのが
116
ガス中塩素 塩素濃度 塩素計
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(6)
オゾン計
Ozone Analyzer
〈概要〉
オゾンは強い酸化力を持ち,水道原水や
気体試料と,オゾンを除いた気体試料が交互に導入
下水の高度処理,食品工業における材料,加工食品
される。それぞれの気体の紫外線の透過量をIx,I0と
の殺菌,半導体製造工程におけるウエハの洗浄など,
すると,オゾン濃度=k log(I0/Ix)(kは定数)と
従来使用されて来た塩素に代り,あるいは新用途の
なる。
開発とともに急速に利用が拡大している。一方光化
(3)吸光光度法:青い色素であるインジゴトリス
学スモッグの主原因であるオキシダントの主成分と
ルホン酸カリウムは,pH2でオゾンにより定量的
して環境問題にもなっている。オゾンの管理上その
に分解する。その際青色がオゾン量に比例して褪色
測定は重要であり,以下に述べる測定法のほかにも
する。したがってこの褪色を分光光度計で測定すれ
化学発光法,検知管法,熱量法等種々開発,実用化
ばオゾン濃度を求めることができる。測定は次のよ
されている。
うに行う。色素と緩衝剤を入れた試薬びんに試料水
〈原理及び特徴〉
を加えたのち,6000nmの波長で吸光度を測定する。
(1)ヨウ素滴定法:オゾンは水溶液中でヨウ化物
対照としてオゾンを含まない純水について同じ操作
イオンを酸化する。生成したヨウ素をチオ硫酸ナト
を行う。オゾン濃度は上の式により与えられる。
−
リウムで滴定すればオゾン量が求められる。2I +O3
(4)隔膜電極法:検出器にクラーク型の電気化学
+H 2 O=I 2 +O 2 +2OH − ,I 2 +2Na 2 S 2 O 3 =2NaI+
セルを使用している。このセルは内部に陰陽の電極
Na2S4O6次のようにして自動測定が行われる。オゾ
を備え,臭化カリウムを含む電解液で満たされてい
ンをヨウ化カリウムと過剰のチオ硫酸ナトリウムを
て,半透膜を介してオゾンを含む気体または液体と
含む試薬に加えれば,これらの反応が引き続いて起
接するようになっている。(図2)。膜を透過したオ
る。反応後に残るチオ硫酸ナトリウムを電量滴定す
ゾンにより陰極ではO3+H2O+2e−=O2+2OH−,ま
れば,最初に存在したチオ硫酸ナトリウムの量との
た陽極ではAg++KBr=AgBr+K++e−の電極反応
差がオゾンの量になる。
が起る。その結果両電極間に試料中のオゾン濃度に
(2)紫外線吸収法:オゾンは254nmの紫外線に強
比例した電流がながれるので,これからオゾン濃度
い吸収を示す。低圧水銀灯が発する253.7nmの紫外
を求めることができる。両電極間には測定対象に適
線に対する試料(気体または液体)の吸光度を測定
した分極電圧をかけて選択性を高めている。
すればオゾン濃度を求めることができる。気体試料
〈用途〉
の測定系を図1に示す。測定セルにはオゾンを含む
殺菌浄化,電子部品の洗浄,大気汚染の観測など。
上下水道,プール,魚飼育槽の水などの
117
オゾン ヨウ素適定 紫外光吸収 吸光光度 隔膜電極
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(7)
酸素計
Oxygen analyzer
〈概要〉
酸素は空気中に約21%存在し,生物の呼
に強い。急激な周囲温度の変化や,ガス組成(CO2)
吸作用や,燃料の燃焼に不可欠の要素である。各種
の大きな変化に影響を受けないよう対策が必要。
の化学プロセスにおいても酸素が反応に関与してい
(2)電気化学的性質を利用する方式
る場合が多く,酸素濃度の計測と制御はプロセスの
(a)ジルコニア方式 高温に加熱されたジルコニ
管理上非常に重要である場合が多い。
ア素子の両端に電極を設け,その一方に試料ガス,
酸素濃度の測定には種々の方法があるが,主なも
他方に空気を流して,酸素濃度差を与えて両極間に
のは(1)酸素の常磁性を利用するものと,(2)電
生じる起電力を検出する。検出部が高温度に耐え,
気化学的な性質を利用するものとである。
ダスト,水蒸気にわざわいされないため,炉へ直接
〈原理及び特徴〉(1)常磁性を利用する方式。
挿入して測定する事もできる。可燃性ガス(炭化水
(a)磁気力方式(圧力検出形・磁気圧式)
素,CO,H2等),腐食性ガスの影響を受け易い。
不均一な磁界中に酸素
(常磁性の気体)
が存在すると,
(b)電極方式 液体の電解質に溶存した酸素濃度
酸素は磁界の強い方に引きつけられ,その部分の圧
に比例した電解電流を検出する。定電位電解形,ポ
力が上昇する。この圧力上昇を非磁性体の気体(例え
ーラログラフ形,ガルバニ電池形がある。小形で暖
ばN2)を使って,磁界外に取り出し,この圧力変化を
機時間が短いので可搬計として使用される。安定性
検出する。検出部が試料ガスに触れないので,腐食
や,外気温度が低い場合に問題があるため,長時間
性ガスに強い。共存ガスの熱的性質
(熱伝導率等)
や,
の連続測定には適さない。
可燃性ガスによる指示誤差がない。補助ガスが少量
〈用途〉
必要だが,ゼロドリフトフリーの性能が得られる。
(1)燃焼プロセスにおける空燃比制御。
(b)磁気力方式(ダンベル形)
(2)可燃性ガスの爆発の危険防止。
ダンベルと試料
ガス中の酸素との磁化の強さの差によって生じるダ
(3)接触反応プロセスの酸素分圧制御。
ンベルの偏位量を検出する。可燃性ガス,熱伝導率
(4)炉内雰囲気中の酸素濃度測定。
の大きいガスの影響がない。強い衝撃や,強振動等
(5)酸素をきらう工程における不活性ガス中の酸
の機械的外乱影響への注意が必要。
(c)磁気風方式 磁界内で吸引された酸素分子の
素濃度の監視。
(6)酸素工場における酸素の純度測定。
一部が加熱されて磁性を失う事によって生じる磁気
風の強さを熱線素子によって検出する。衝撃,振動
118
酸素計 磁気力方式 磁気風方式 ジルコニア方式 電極方式
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(9)
水素計
Hydrogen analyzer
〈原理〉
水素ガスの分析には,主に熱伝導方式が
〈特徴〉
熱伝導方式ガス分析計は,ガスの熱伝導
採用されている。図1に,熱伝導式ガス分析計の原
率の差を利用して,ガス濃度を測定するため,ガス
理図の例を示す。ホイートストンブリッジを形成し
の種類に関係なく,熱伝導率の差によって測定され
ている白金線は電流を流すことによって加熱されて
る。このことは,試料ガスの成分による選択を行っ
いる。比較室には基準ガスが封入されており,測定
ていないことを意味しており,したがってガスの種
室には測定されるガスが主流から拡散によって導か
類が2成分の場合,又は,共存ガスの組成変化が少
れるようになっている。測定ガスの組成が変化する
ない場合にのみ使用できる。しかし,熱伝導方式ガ
と,その熱伝導率が変化し,測定室側の白金線の温
ス分析計は構造が単純堅ろうで,故障し難いことか
度が変化するため,白金線の抵抗値が変わる。この
ら,プロセス用・現場用分析計として適したものと
抵抗値の変化を,ホイートストンブリッジの不平衡
いえる。
電圧の変化として検出し,
測定ガスの混合比の変化,
分析計の最低測定範囲は,測定ガスとその他の共
つまり測定すべき成分の濃度変化と対応させてい
存ガスとの熱伝導率の差によりきまり,差が大きい
る。表1に主な気体の熱伝導率の空気を1としたと
ほど低濃度の測定ができる。共有ガスを空気とした
きの比を示す。水素ガスの熱伝導率が他のガスに比
ときの最低測定範囲の一例を次に示す。水素0
べて高いことから,水素ガスの検出によく用いられ
∼1%,二酸化炭素0∼10%,二酸化硫黄0∼5%,
るこの方式では,比較室や測定室を構成するブロッ
アンモニア0∼ 20%,塩素0∼5%
クは,良好な熱伝導率を有する金属でできており,
〈用途〉
また,周囲の温度の影響を少なくするために一定温
ント用,アンモニアプラント用などに使用されてい
度に調節されている。測定ガス中に含まれるダスト
る。
水素計は,炉ガス管理用,食塩電解プラ
等は,白金線を汚染するので,1mm程度のフィルタで
前処理する必要がある。また.ミスト等を含む場合
(特に酸性ミスト)は,指示に影響するほか,腐食
等の原因になるので,除湿器等を用いて測定ガスの
前処理を行う必要がある。なお比較側に封入するガ
スは,測定ガスの成分,及び濃度に応じて,適切な
ものが選ばれている。
119
プロセス用水素計 熱伝導方式ガス分析計 ガスの熱伝導率 測定室 比較室
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(10)
水分計
Moisture meter
〈概要〉
プロセスにおけるガス中の水分を連続的
化する。
に測定するもので,水分を選択吸収する物質に試料
検出器を通った試料ガスは,冷却除湿器により乾燥
ガスを接触させて水分を吸着させ,この物質の状態
状態となってからポンプ,絞り弁,流量計を経て外
変化を誘電率の変化,あるいは水晶発振器の周波数
部に放出される。
変化,電気抵抗変化などにより求める方式が主であ
この装置には,乾燥空気に一定量の水蒸気(純水
るが,その他に,近赤外線の水分による吸収を計る
を蒸発させたもの)を添加して標準ガスを作る機構
非分散赤外線方式もある。
が含まれており,計器感度の自動校正を行うことが
〈原理及び特徴〉(1)誘電率式水分計の原理
できる。
図1に示すように互いに絶縁して対向させた2枚
の多孔質導電性極板間に,水に対する選択性のよい
吸着剤を充填して検出器を構成し,この検出器に,
(2)誘電率式水分計の特徴
(a)各種試料ガス中の水分量を%単位で直読でき
る。
極板と垂直方向に試料ガスを流通させる。試料ガス
(b)
試薬などを加えず,非破壊状態で測定できる。
中の水分は吸着剤に吸着され,その量は試料ガス中
(c)検出器が安定で,消耗や腐食されないため,長期
の水分に応じて吸着平衡に達する。水は誘電定数が
きわめて大きいことから,2枚の導電性極板で構成
の連続測定ができる。
(d)塩化水素など腐食性の強い成分が共存している
されているコンデンサのキャパシタンスは,他の共
ガスについても,安定な測定値が得られる。
存成分の影響を受けることなく,試料ガス中の水分
〈用途〉(1)金属の熱処理工程での水分管理を行う
に対応したものとなる。従って,あらかじめ水分量
ことにより,製品品質が向上する。
既知の標準ガスにより,水分とキャパシタンスの検
(2)煙道ガスの水分管理は,燃焼装置の損傷防止,
量線を求めておけば,電気信号としての水分測定が
助燃材の節約,白煙の防止ができる。またそのほか
可能となる。
にも低NOx燃焼,エネルギー回収,焼却熱による発
誘電率水分計の構成例を図2に示す。試料ガスは
サンプリングプロープより100℃以上に加熱された
電の効率向上,電気集塵機の集塵効率の向上にも,
役立っている。
導管を通って恒温槽内に導入される。熱交換器で一
(3)繊維工場での室内湿度コントロールに適する。
定温度となった試料ガスは検出器を通過するが,こ
(4)炉内ガスの水分モニタに使用できる。
のとき水分量に応じて検出器のキャパシタンスが変
120
プロセス水分 誘電率式水分計 水晶発振器
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(11)
炭化水素計
Hydrocarbon analyzer
〈概要〉
プロセス用炭化水素計には,非分散赤外
(2)水素炎イオン化検出法 試料ガスと水素とを
線吸収法(NDIR),水素炎イオン化検出法(FID)及
混合してノズルから流出させ,燃焼させた場合に,
びガスクロマトグラフ法(GC−FID)がある。いずれ
コレクタ電極と対極間に流れるイオン電流を測定し
の方式の場合も,プロセスラインのサンプル採取点
て炭化水素濃度を測定する。この方式は各炭化水素
と分析計の間に試料前処理装置をおき,試料ガスの
に対して選択性がないので,仝炭化水素として測定
温度,圧力及び流量の調節,ダストの除去,除湿,
することになる。また酸素干渉などの問題で,炭化
流路の切換などを行い,試料ガスを分析計に適した
水素各成分ごとの応答が一定でないので,混合成分
状態にする必要がある。
においては,その測定値の定量的判断をどうするか
〈原理及び特徴〉 (1)非分散赤外線吸収法 炭化
の問題がある。通常CH4,C3H8換算などで定量して
水素(CH4,C2H 4,C 2H6,C3H6,C3H 8など)の赤外
いる。
領域における吸収を利用して炭化水素の濃度を測定
(3)ガスクロマトグラフ法
するものである。光源からの赤外線が炭化水素に吸
(1)及び(2)は連続測定できるが,この方式は,メタ
収されて光量が減少するのを検出器で検出する。
ンと非メタン炭化水素を分離カラムで分離した後,
検出器には,ガス封入形検出器,半導体検出器など
FIDにて測定し合算する方式であるので,間欠測定
がある。共存成分の吸収波長が近接する場合には,
になるが,共存成分の干渉がない。また,キャリヤ
共存成分ガスを封入したフィルタセルを使用して共
ガスがN 2であるので炭化水素成分はすべて酸素と
存成分の吸収帯の赤外線が検出器に入射しないよう
分離されてFIDに流入するため,酸素干渉はなく,炭
にしたり,干渉フィルタを用いて,目的炭化水素の
素数に比例した応答を示す。分析周期は5∼10分程
波長領域のみが検出器に入射するようにすることも
度である。また試料ガス中の炭化水素各成分を分離
ある。半導体検出器の場合も測定原理は同様である。
させ測定する場合もある。
ガス封入形検出器の方が,半導体検出器よりも一般
的には高感度である。NDIR法による炭化水素計は,
(a)測定濃度範囲が広いこと,
(b)応答速度が速いこ
と,
(c)
選択性が高いこと,
(d)
連続測定できること,
(e)試料ガスの前処理操作が簡単であること(f)保守
測定濃度範囲は,
いずれの方式も数ppmから100%
までである。
〈用途〉
ボイラ,各種炉などの煙道ガス分析,石
油化学,都市ガスなどの工程管理分析,自動車排ガ
ス分析,環境監視用などに使用される。
が容易であることなどの特徴がある。
121
炭化水素計 分散赤外線吸収法 水素炎イオン化検出法 ガスクロマトグラフ法 半導体検出器
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(12)
窒素酸化物計
Oxides of nitrogen analyzer
〈概要〉
排ガス中窒素酸化物計は,各種排ガス中
速度が早い。(c)選択性が高い。(d)小型化が可
の窒素酸化物を連続して測定するもので,排ガス中
能であり移動測定定置連続測定のいずれも可能であ
の粉ジンを除去し,必要に応じて水分を除去する試
る。等の特徴から多方面での使用に適している。
料採取部及び分析計により構成される。これに用い
〈用途〉
る分析計は主として化学発光測定方式(Chemilum-
排ガス,雰囲気の監視等に用いられる。
(a)
自動車用
inesence Method)が用いられるが,ほかに赤外線
ガソリン,ディーゼルエンジン排ガス
(b)
ボイラー,
吸収方式(Non-Dispersive Infrared)がある。
ストーブ等各種燃焼排ガス(c)環境監視等分析計の
〈原理及び特徴〉
特徴を生かした多方面での使用に有用である。
化学発光測定方式は,試料ガス
各種内燃,外燃機関からの排ガス,煙造
中の一酸化窒素(NO)とオゾン(O3)とが,反応し
て二酸化窒素(NO2)を生成する際に生じる発光現象
を利用した分析計であり,その発光強度は反応槽に
導入される一酸化窒素の質量流量に比例する。実際
の分析計は図1の様に1)オゾン発生器 2)NOx
コンバータ 3)反応槽 4)真空ポンプ部 5)
電気部により構成される。
この分析計は0∼数%の濃度にわたって直線関係が
存在しているので低濃度から高濃度まで任意のレン
ジに電気的に切換が可能である。通常10∼5000
ppm程度のスパンレンジを実試料測定に便利なよ
うに分割したものが提供されている。この分析計の
測定値の再現精度は全目盛に対し±1%程度であ
り,分析計そのものの応答速度は90%応答時間で1
秒以下である。ゼロならびにスパンの安定性は周囲
温度,気圧,電源電圧によっても左右されるが,一
般的な使用条件においては問題なく使用可能であ
る。この分析計の特徴は(a)高感度である。
(b)応答
122
窒素酸化物計 ケミルミ法 非分散赤外線吸収法
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(13)
二酸化硫黄計
Sulfer dioxide analyzer
〈概要〉
二酸化硫黄の連続分析法として溶液導電
造が簡単で取り扱いやすく,光路の長さの異なるセ
率法,非分散赤外線吸収法,炎光光度法がある。い
ルを適当に選ぶことにより測定範囲も0∼100ppm
ずれの方法も試料ガス中に水分が共存すると,金属
から0∼100%まで幅広く使用できるという特徴が
材料部品が腐食したり,二酸化硫黄の水への溶解損
ある。
失による測定誤差が生じるため,試料ガスは適当な
(3)炎光光度法 図3に構成例を示す。この方法
前処理を行ってから分析計に導かれる。
は試料中の二酸化硫黄が過剰水素炎中に導入される
〈原理及び特徴〉
(1)溶液導電率法 図1に構
と,炎中で還元反応が起こり,それに伴いS2の分子
成例を示す。試料ガス中の二酸化硫黄を硫酸酸性過
が吸収され,基底状態に戻るとき300∼420nmの光が
酸化水素水溶液に吸収させ,二酸化硫黄を硫酸に酸
放出される。この内394nm付近の強いスペクトルを
化する。二酸化硫黄の濃度に応じて,硫酸濃度が増
光学フィルタにて取り出し光電子増倍管で受光し測
加する。吸収液の導電率は,硫酸濃度が増加すると
定する方法である。二酸化硫黄に対する応答は特異
増加するから,
導電率の変化を測定することにより,
的であり,濃度の1.5∼2乗に比例する。検出感度が
二酸化硫黄の濃度を測定することができる。試料ガ
高く0∼2ppmのように低濃度域の測定が可能であ
スと吸収液の混合比率を選ぶことにより,測定範囲
り,水分の干渉を受けないという長所がある反面,
も0∼50ppmから0∼2000ppmと幅広く使用できる
共存する硫黄化合物(H2Sなど)がある場合には応答
という長所がある反面,試料ガス中に塩化水素,ア
を示し,炭化水素(%オーダー)が共存するとクェ
ンモニアなどが含まれる場合,吸収液に溶解して測
ンチングが起こり感度が減少するという欠点もあ
定に影響を与えることや日常の保守管理が面倒であ
る。
るという欠点もある。
〈用途〉
(2)非分散赤外線吸収法 図2に構成例を示す。
の分析計として溶液導電率法,赤外線ガス分析法が
この方法は二酸化硫黄の赤外領域における吸収
多く用いられる。化学プロセスの成分分析や工程管
(7.3mm付近)を利用して二酸化硫黄の濃度を測定
理用として赤外線ガス分析法が多く用いられる。炎
するものである。二酸化硫黄と吸収スペクトルの重
光光度法は,検出感度が高い点から低濃度の二酸化
なるガスが試料中に共存する場合は,共存するガス
硫黄の測定や二酸化硫黄のみならず硫黄化合物総量
を封入したフィルタセルや干渉フィルタを設けて影
としての分析に用いられる。
各種ボイラ,加熱炉などの煙道排ガス用
響を少なくしている。この方法は選択性が良く,構
123
二酸化硫黄計 非分散赤外線吸収法 溶液導電率法 炎光光度法
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(14)
二酸化炭素計
Carbon dioxide analyzer
〈概要〉
二酸化炭素を測定する方法としては,非
する方法もある。他に,検出器自体で共存成分の妨
分散赤外線吸収法が一般的である。試料ガスの粉じ
害を除去できる構造を備えたものも使用されてい
んを除去するとともに,水分を一定に保つための試
る。半導体検出器の場合も測定原理は同様であるが,
料前処理部と分析部から構成されている。
検出器そのものには選択性が無いため干渉フィルタ
〈原理及び特徴〉
を使用して二酸化炭素の吸収帯のみが,検出器に入
非分散赤外線吸収法における二
酸化炭素の測定は,赤外領域の4.3mm付近の二酸化
射するようにしている。ガス封入形検出器の方が,
炭素に吸収されて光量が減少するのを検出器で検出
半導体検出器よりも一般的には高感度である。非分
する。検出器には,ガス封入形検出器と半導体検出
散赤外線吸収法による二酸化炭素分析計は,
器等が主として使用される。
ガス封入形検出器には,
(1)試料ガスの前処理操作が簡単であること,
二酸化炭素が封入されていて光源からの赤外線のう
(2)応答速度が速いこと,
ち,二酸化炭素の吸収帯のみを吸収して応答する。
(3)選択性が高いこと,
光源と検出器の間の光路中に二酸化炭素を含む試料
(4)高感度測定が可能であること,
ガスを通過させるようにサンプルセルを設けておく
(5)長期の連続測定が可能であること,
と,検出器に入射する赤外線のうち二酸化炭素の吸
(6)保守が容易であること,
収帯の光量が減少し,検出器の吸収応答が変化する
等の特徴があり,広く使用されている。図1に二酸
ので,これを信号として取り出す。ガス封入形検出
化炭素分析計の構成例を示す。
器は選択性を持っているために,光源からの赤外線
〈用途〉
の波長領域を規制する必要はないが,共存成分の吸
スの測定用として,0∼1%から0∼100%の範囲で
収波長が近接する場合には,あらかじめ検出器に入
工程管理や燃焼管理の目的で使用されている。石油
射する赤外線の波長領域を規制するために,共存成
化学などでは,工程管理や安全管理の目的で,0
分ガスを封入したフィルタセルを使用して共存成分
∼50ppmから0∼5%の範囲で使用されている。
鉄鋼,金属,窯業などの炉ガスや排出ガ
の吸収帯の赤外線が検出器に入射しないようにした
り,干渉フィルタによって二酸化炭素の波長領域の
みが検出器に入射するようにすることもある。
また,
共存成分を測定する検出器を別個に設けて,2個の
検出器からの信号を演算して共存成分の妨害を除去
124
二酸化炭素計 非分散赤外線吸収法 半導体検出器
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(15)
ふっ化水素計
Hydrogen fluoride analyzer
〈概要〉
発生源用ふっ化水素計は排ガス中のガス
図1に検出部の例を示す。
ふっ化物イオン電極は,
状ふっ素化合物濃度を連続的に測定するものであ
溶液中のふっ化物イオンに感応し電位を発生し,そ
る。測定法にはイオン電極法と吸光光度法がある。
の電位はイオン濃度の対数に対して直線的に変化す
イオン電極法は保守が容易であり再現性,選択性共
る。検出部は,一定濃度のふっ素イオンを含む水溶液
に良好で,使い易いが,電極に寿命があり交換の必
を満たしたセル及び同液に試料ガスを吸収させた溶液
要が生じる。比色法は長時間の使用に耐えるが,測
を満たしたセルからなり,
各セルにはそれぞれふっ化
定セルが汚れると測定値に影響を与えるなどの欠点
物イオン電極が浸され,
多孔質セラミックなどで液絡
がある。
されている。
試料ガス中にふっ化水素が含まれないと
〈原理及び特徴〉
ふっ化物イオン電極は,pHガラ
きは両セル中の溶液のふっ化物イオン濃度は等しいた
ス電極のように,ふっ素イオンの活量の変化によっ
め電位差はゼロになる。いま,ふっ化水素を含む試料
て起電力が変化する。
ガスを通気したとすると測定セル中の溶液はふっ化
−
R・T
aF
・log
F
aoF−
ここで,E:系の全電位
E=E′
−2.808
水素濃度に応じてふっ化物イオン濃度が増加する。
このとき基準側電極は一定の電位を伴っているのに
対して測定側電極は増加したふっ化物イオン濃度に
E′:電極固有の電位
対応して電位が変化するので,この両電極間の電位
F:ファラデー定数
差を測定することにより,試料ガス中のふっ化水素
R:気体定数
濃度が求められる。図2のように分析計では一定量
T:絶対温度
の試料ガスと吸収液がポンプによって送液されてい
aF−:ふっ素イオン活量
るので,試料ガスは常に一定の比率で溶液に吸収さ
−
aoF :内部液のふっ化物イオン活量
ふっ化水素計の代表的なものとしてオン電極法に
ついて説明する。イオン電極法は,試料ガスを一定
れる。この方法はイオン電極比較方式であるため,
安定した測定ができ,実存する他成分から妨害影響
も少なく,しかも低濃度から高濃度まで測定できる。
の水溶液に吸収し,このときふっ化水素の解離によ
〈用途〉
って生じたふっ素イオン濃度をイオン電極によって
場などの煙道中の排ガスの監視用に用いられている。
ガラス繊維製造工場,
アルミニウム精錬工
定量する方法であり,広く自動分析計に採用されて
いる。以下にこの方法について述べる。
125
ふっ化水素計 ふっ化物イオン ふっ化物イオン電極
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(16)
メタン計
Methane analyzer
〈概要〉
プロセス用メタン計には,非分散赤外線
(2)水素炎イオン化検出法 試料ガスと水素ガス
吸収法(NDIR),水素炎イオン化検出法(FID)及び
とを混合してノズルから流出させ,
燃焼させた場合,
ガスクロマトグラフ法
(GC−FID)がある。いずれの
試料ガス中に炭化水素などの有機成分が含まれてい
方式の場合も,プロセスラインのサンプル採取点と
ると炎の導電率が増加する。この水素炎をはさむコ
分析計の間に試料前処理装置をおき,試料ガスの温
レクタ電極と対極の間に流れるイオン電流を測定し
度,圧力及び流量の調節,ダストの除去,除湿,流
てメタン濃度を測定する。この方式でメタンを測定
路の切り換えなどを行い,試料ガスを分析計に適し
する場合,試料ガス中にメタン以外の炭化水素が含
た状態にする必要がある。
まれていると,この検出器は,全炭化水素としての
〈原理及び特徴〉
応答を示す。スクラバなどでメタン以外の炭化水素
(1)非分散赤外線吸収法 メ
タンの赤外領域における吸収を利用してメタンの濃
をあらかじめ除いて測定する方法もある。
度を測定するものである。光源からの赤外線がメタ
(3)ガスクロマトグラフ法(1)及び(2)では連
ンに吸収されて光量が減少するのを検出器にて検出
続測定できるが,この方式は,試料ガス中のメタン
する。検出器には,ガス封入形検出器,半導体検出
を分離カラムで分離し,FID法により測定するので,
器等がある。共存成分の吸収波長が近接する場合に
間欠測定になる。しかし,分離分析であるため共存
は,あらかじめ検出器に入射する赤外線の波長領域
成分の干渉がまったくなく,微量のメタンを測定す
を規制するために,共存成分ガスを封入したフィル
る場合,非常に有効である。分析周期は,通常2分
タセルを使用して共存成分の吸収帯の赤外線が検出
程度,高速ガスクロ法で30秒程度である。
器に入射しないようにしたり,干渉フィルタによっ
測定濃度範囲は,いずれの方式も数ppmから100%
てメタンの波長領域のみが検出に入射するようにす
までである。
ることもある。半導体検出器の場合も測定原理は同
図1にプロセス用メタン計の構成例を示す。
様である。ガス封入形検出器の方が,半導体検出器
〈用途〉
よりも一般的には高感度である。NDIR法によるメ
自動車排気ガス分析,環境濃度測定用などに使用さ
タン計は,
(a)測定濃度範囲が広いこと,
(b)応答速
れる。
コークス炉など各種炉の煙道ガス分析,
度が速いこと,
(c)選択性が高いこと(d)連続測定で
きること,
(e)試料ガスの前処理操作が簡単であるこ
と,(f)
保守が容易であることなどの特徴がある。
126
メタン計 非分散赤外線吸収法 水素炎イオン化検出法 ガスクロマトグラフ法 半導体検出器
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.1(17)
硫化水素計
Hydrogen sulfide analyzer
〈原理〉
プロセスにおける各種ガス中の硫化水素
出し,比較側は影響を受けない光量を検出するので,
濃度を測定するもので,硫化水素とよう素との反応
両者の差を求めると,試料中の硫化水素濃度を指示
を利用した電量滴定方式のものと,硫化水素が特定
することになる。
波長の紫外線を吸収することを利用した吸光光度方
〈特徴〉
式のものがある。電量滴定方式は検出感度が高いの
100ppm程度の測定レンジが用いられ,
この範囲内で
で,低濃度域の硫化水素が測定できる。
任意の値に警報設定ができる機能をもっている。
(1)電量滴定方式の原理 試料ガスをクエン酸塩
系のSO2スクラバを通して亜硫酸ガスを除去したの
ち,よう素を含む電解液に一定流量で導入させると,
電量滴定方式は0∼1ppmから0∼
SO2スクラバ液や電解液の交換は自動化されてい
て,液の補充は1月に1度でよい。
試料中にダストの多い場合には,サンプリングプ
試料ガス中の硫化水素がよう素と反応し,電解液中
ローブの粗フィルタ部分に,エアによる逆洗機構を
のよう素が減少する。電解液中に挿入した分極電位
付加し,一定時間ごとにブローバックを行うことに
検出電極の信号によって,当量点に対する偏差値に
より,フィルタ交換の頻度を少なくできる。
比例した電解電流を電解電極間に流し,減少したよ
吸光光度方式は0∼1000ppm程度の測定に用いら
う素を発生させ,自動的に補充させる。電解電流の
れる。高濃度の硫化水素は紫外線により分解される
制御回路は,この反応を常に当量点に維持するよう
ので,測定セルの汚れを少なくするため,光源と測
に動作するので,電解電流の瞬時値を読みとること
定セルの間にシャッタを設け,間欠的にシャッタを
によって,試料ガス中の硫化水素濃度が求められる。
開にして吸光度を測る構造になっている。
(2)吸光光度方式の原理
〈用途〉
図2に示すように,光
硫黄回収装置でのテールガス測定,製紙
源(水銀灯)から放射された光は,試料セルを通過
工場での排ガス中臭気成分測定,レーヨン,セロフ
するときに硫化水素が存在すると,特定波長の光が
ァン製造工程での硫化水素監視。
吸収される。試料セルを通過した光は,ハーフミラ
ーによって光束が2つに分割され,一方は測定側干
渉フィルタ(波長254nm)を通過して測定側検知器
(光電管)に集光し,他の光束は比較側干渉フィル
タ(波長365nm)を通過して比較側光電管に集光す
る。測定側は硫化水素によって吸収された光量を検
127
硫化水素計 ガス中硫化水素 硫化水素濃度
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.22(1)
アルカリ度・酸度計
Alkalinity and acidity measuring instrument
〈原理〉
河川,湖沼などの水には種々の物質が溶
た試薬の量を質量で計量して濃度に演算する。この
解しているため,そのpHは酸性かアルカリ性を示し
一連の間欠動作はプログラマにより操作する。また
ている。アルカリ性を示す場合には水酸化物,炭酸
採取した試料量と滴下した試薬液量を容量で計量す
塩などが溶解した場合で,このアルカリの量をアル
る容量方式のものもある。
カリ度,又はこのアルカリ性を中和するのに必要な
(2)電量滴定方式 図2は電量滴定方式の一例で,
酸の量を酸消費量と呼んでいる。一方酸性を示す場
試料,試薬はポンプで一定量連続的に混合される。
合は強酸,有機酸などが溶解した場合で,この酸の
このとき試薬は電解されて滴定試薬が発生する。化
量を酸度,又はこの酸性を中和するに必要なアルカ
学反応にpHによる中和滴定法が使用される場合,一
リの量からアルカリ消費量と呼んでいる。このアルカ
定のpHになるまで電解による滴定試薬の発生が制
リ度や酸度を測定するには,いずれも滴定方式によ
御され,このときの電解電流がアルカリ度に演算さ
る場合が多く,これに電位差滴定方式と電量滴定方
れる。
式がある。
〈特徴〉
(1)電位差滴定方式 当量点において,試料の一
薬の濃度が低く空気の影響を受けるため,使用期間
定量とその濃度の積と,試薬の濃度と加えた量の積
を通じ濃度の管理を必要とする。また図2の電量滴
との間には,一定の化学反応上の関係が成立つ。よ
定方式は連続測定で,試薬の濃度は使用期間を通じ
って試料の一定量と試薬の濃度を決めると,試料の
て精度を余り必要としないが,
試薬の消費量は多い。
濃度は加えた試薬の量に対応する。これを利用した
いずれも試薬の補充が必要である。
ものが滴定方式である。この試料の一定量と試薬の
〈用途〉 アルカリ度(酸度)を測定する事例には,
量を測定するのに容量による方式と重量による方式
浄水場における水処理がある。河川の水の懸濁物質
がある。また化学反応にpH変化を利用したものは中
の凝集・沈降処理には凝集剤が用いられ,この注入
和滴定と呼ばれ,最も多く使われている。このpH変
量には最適条件がある。この最適注入量は河川の水
化を測定するにはpH計が使用され,このときpH電
のアルカリ度のほかに濁度,pH,温度などによって
極からは電位差が発生することから電位差滴定方式
決まるが,特にアルカリ度が重要な影響をもつため
と呼ばれる。図1は質量方式であって,試料の一定量
である。アルカリ度計としての目盛りは炭酸カルシ
図1の電位差滴定方式は間欠測定で,試
を質量で計量し,次にpHを測りながら試薬を加えて
ウ ム の 量 に 換 算 し て 表 し ,0 ∼ 5 0 ,0 ∼ 1 0 0 C a C O 3
いき,定めたpHになると試薬滴下を停止して,加え
mg/r測定範囲である。
128
酸消費量 アルカリ消費量 電位差滴定 電量滴定 炭酸カルシウム
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(2)
硫黄計
Sulfur analyzer
〈原理〉
硫黄計では燃焼中の硫黄測定が代表例で
〈特徴〉
透過式石油硫黄計では,特性X線の透過減
ある。燃料としては気体燃料(石炭系,石油系,天
衰が起ることから励起式に比べ検出器に入るX線の
然ガス系),固体燃料(石炭系,コークス系)及び液
エネルギーが強い。したがって,液槽を堅固にする
体燃料(石油系,なかでも重油)などであるが,燃
ことができるので,汚れによる影響に強く,耐圧性
料としての消費量は重油が圧倒的である。原油には
がある。また,線源の寿命が長いなどの特徴がある。
通常0.
2∼0.
4%程度の硫黄が種々の化合物の形で含
なお,密度の影響を補正するためには,密度計と組
まれ,石油系の灯油では0.
005%以下から重油では1
み合せ装置化して密度信号も同時に出力している。
∼3%含まれている。この硫黄を分析する方法はボ
励起式石油硫黄計では,発生する蛍光X線を測る
ンブ法(燃焼させて硫酸バリウムに化学変化させて
ことから硫黄分の選択性がよく,他の混入物(金属)
測る),空気法(空気中で燃焼させて発生する全硫黄
及び密度の影響を受けにくい利点があるが,エネル
酸化物を試薬に吸収させて測る),放射線励起法(後
ギーが弱く液槽を堅固な構成にすることが難しいこ
述),放射線透過法(後述)などの方法が用いられて
とから,汚れの影響,圧力の影響などを受け易い欠
いる。このうち連続測定を行うための硫黄計は透過
点がある。いずれの方式も放射線源を使用している
式石油硫黄計(図1)と励起式石油硫黄計(図2)
ので安全については,特別の注意が必要である。
などである。
〈用途〉
(1)透過式石油硫黄計 c 線やX線などの放射線が
黄となって大気汚染の源となるから,石油関連では,
燃料中の硫黄濃度は排ガス中の二酸化硫
試料中を透過する場合,試料中の物質との相互作用
(1)石油の入荷ライン,(2)脱硫装置(3)重油ブ
により透過減衰が起る。石油硫黄計では石油中に含
レンダの出荷ラインなど,また,火力発電所及び一
まれる硫黄の濃度に対して透過減衰が大きいので,
般産業では大形ボイラ,加熱炉などの燃料管理を目
これを利用してC/H比の影響を受けにくく,特性X
的とした(4)
燃料ブレンダ,
(5)
公害用監視に用い
線(20keV)を用いて測る方法である。
(2)励起式石油硫黄計 c 線やX線などの放射線を
られる。測定範囲は主として0∼5wt%である。
試料中に照射すると,試料中の硫黄分から蛍光X線
を発生する。石油硫黄計では石油中に含まれる硫黄
の濃度に比例して発生する特性X線(2.3keV)を用
いて測る方法である。
129
放射線利用 透過式石油硫黄計 励起式石油硫黄計 硫黄濃度
2. プロセス用・現場用分析機器
ORP計
2.1.22(3)
ORP meter
〈原理〉
酸 化 還 元 電 位 差 O R P( o x i d a t i o n −
比較電極はKCr拡散形とKCr補給形の2タイプがあ
reduction potential)とは,一つの物質が他の物
り,
いずれも,
ORP電極の金属電極および液絡部の交
質と反応して,[Red]0[Ox]+ne
−
換ができるものが多い。また,汚れの多い被検液に
のように,n個の電子の授受によって酸化還元が行
は超音波洗浄,
ジェット洗浄,
ブラシ洗浄などアプリ
われる場合,次式によって生ずる電位差をいう。
ケーションに合せて最適な洗浄方式を選定できる。
2.303RT
[Ox]
log
nF
[Red]
[Red]:還元剤の溶液中における濃度
〈用途〉
[Ox]:酸化剤の溶液中における濃度
用,発酵工業でのプロセス管理,下水処理場での嫌
Eh=Eho+
プロセス用ORP計は,生産プロセスにお
ける工程管理および品質管理,クロム酸・シアンな
どの排水処理装置の制御用,排ガス処理装置の制御
気性し尿処理の工程管理および脱リン処理など広範
Eho:標準電位差
このEhoは[Red]=[Ox]のときの酸化還元電位
囲な用途に利用できる。
差で,それぞれの酸化還元系において固有の値であ
表1 電極の単極電位差
る。
ORP計の構成例を図1に示す。基本的にはpH計と
同じであるが,pH電極のかわりにORP電極を使用
する。ORP電極としては,金属電極に白金・金の板
状または棒状の不活性電極を使用し,比較電極には
pH計と同じ飽和カロメル電極または塩化銀電極を
用いる。ORP電極の構成例を図2に示す。
金属電極に発生するEhの値に表1の比較電極の単
極電位差を加えたものが酸化還元電位差となる。
〈特徴〉 プロセス用ORP計は大規模計装および一
般用のORP測定や制御用として最適な2線伝送器
システム,小規模排水処理装置用などに適した指示
温度 飽和カロメル電極
(℃) の単極電位差
(mV)
0
5
10
15
20
25
30
35
40
45
50
60
260
257
254
251
248
244
241
238
234
231
227
220
調節計,さらに防雨形や本質安全防爆構造のものな
ど幅広くある。
130
ORP 酸化還元 金属電極 比較電極 電位差
飽和塩化銀電極の
単極電位差(mV)
223
218
214
209
204
199
194
189
184
179
173
162
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(4)
残留塩素計
Residual chlorine analyzer
〈原理〉 上下水道や各種用水では生息する微生物,
る)を測定している。
菌類又は貝類などを死滅させるための,いわゆる殺
(3)ガルバニ電池法 金と銅などの異種金属の組
菌に塩素処理が行われている。塩素処理を行った用
合わせによる電極を試料に挿入すると,ガルバニ電
水には塩素を多少残存させておかないと処理後に再
池となって両電極間に電位差を生じ,試料中の遊離
度微生物や藻類,その他が生息して汚染する。とく
有効塩素の濃度に応じて電流が流れ,これを測定す
に水道水においては残存する塩素を残留塩素と呼ん
ることで残留塩素(よう素と置換)と遊離形有効塩
で,この下限を規定している。この残留塩素は,最
素を測定している。
近のように河川の汚染によってアンモニア性窒素や
〈特徴〉
有機アミンがあるとこれらと反応して遊離性有効塩
入は測定の妨害となる。とくに吸光光度法では測定
基のほかにクロラミンと呼ばれる結合形有効塩素を
セルの汚れ防止に前処理装置などの付加が必要であ
生ずる。よって残留塩素の測定には残留塩素(遊離
る。ポーラログラフ法,ガルバニ電池法では着色の
型+結合型)と遊離形有効塩素を分離して測定する
影響は受けないが,電極の汚れ対策としてセラミッ
ことが行われている。測定方式としては,図1に示
クビーズによる研磨効果,および超音波,水ジェッ
す吸光光度法,図2に示すポーラログラフ法のほか
トなどの洗浄装置が用いられている。また,吸光光
にガルバニ電池法などがある。
度法は間欠的測定であるが,他は連続測定である。
(1)吸光光度法 オルトトリジン試薬による黄色
〈用途〉
の発色,あるいはDPD(ジエチル-p-フェニレンジア
水処理場の再利用における水処理,また各種用水で
ミン)試薬による赤色の発色の程度を,吸光度で測
はプロセスに必要な工業用水,冷却水の水処理など
定する。
において,殺菌のための塩素処理における塩素濃度
(2)ポーラログラフ法 微小面積の白金極をもっ
の制御・管理に用いられる。また,冷却水として海
た回転白金電極を液中で毎分数百回転させ,対極(白
水を用いる場合では藻,貝類付着除去の処理に用い
金,銀など)との間に塩素または塩素と置換する試
られている。測定範囲は0∼1mg/rから0∼10mg/
薬(よう素,臭素)の電解電圧を加えると,これら
rの範囲である。
測定方式により,濁度,着色,気泡の混
上下水道では浄水場における水処理や下
の濃度に対応した電流が流れ,この電流を測定する
ことで遊離形有効塩素(無試薬方式と,臭素に置換
する試薬方式とがある),残留塩素(よう素と置換す
131
遊離形有効塩素 結合形有効塩素 ポーラログラフ法 ガルバニ電池法 吸光光度法
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(5)
色度計
Color monitor
〈原理〉JIS K 0101工業用水試験方法では,色度
し,試料の色度が連続測定される。
とは,水に溶存又はコロイド状で存在する物質によ
比色計の測定波長は,試料液中の濁度の影響が最
る淡黄色から黄かっ色の程度を示すもので,水1r
も少なく,かつ,色度測定に感度の高い波長が選ば
中に色度標準液1mr(白金1mg及びコバルト0.5
れているが,試料の色調が色度標準液の色調と大き
mg)を加えたときに呈する色を1度とすることにな
く離れているときには,計器目盛の直線性が悪くな
っており,測定方法としては,比色管を用いて目視
ったり,JIS K 0101の目視による測定値との相関が
により色度標準溶液と比較して求める。この方法は
悪くなったりするので,注意する必要がある。
目の個人差が大きく,また,高色度の試料に対して
〈特徴〉 測定範囲は.上水用の場合0∼20mg/r,
は,標準液との色調の相異に妨害されるので測定の
0∼50mg/r程度が用いられる。廃水における処理
個人差が大きい。
水では0∼200mg/r,
0∼500mg/rなどが用いられ
プロセス用分析機器では,吸光光度法による連続
る。
比色計が一般に用いられている。この場合も計器は
浮遊物や濁りの多い試料で,フィルタが詰り易い
あらかじめ塩化白金酸コバルトの色度標準液により
ときには,フィルタエレメントの交換をひんぱんに
目盛校正をしておく。測定対象が上水のときは色度
行うか,或は圧縮空気によるブローバックなどフィ
の変化が少ないので,計器は高感度のものが必要と
ルタの自動逆洗機構を組込んで,試料が常にスムー
なる。排水の色度測定のときは,浮遊物などによる
ズに流入するように注意する。
濁りの影響を受けるので,前処理として,色度に影
〈用途〉
響しないフィルタを装着しなくてはならない。
水の色度監視,プロセス液中の鉄イオンの濃度測定
色度計の構成例を図1に示す。試料液はフィルタ
上水,中水,下水の色度監視,し尿処理
など
を通過したのちオーバーフロー槽に流入し大部分は
溢流して排出される。あらかじめセットしてあるタ
イマの動作で,純粋タンク内の純水(色度ゼロの液)
が送液ポンプによって比色計内の流通セルに導か
れ,計器のゼロが自動校正される。校正が完了する
と,セル内の液は排出され,代ってオーバーフロー
槽内の試料水が,送液ポンプにより流通セルに流入
132
色度計 白金酸コバルト 色度標準液
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(6)
シリカ計
Silica analyzer
〈概要〉
JIS K 0101 には,シリカの分析方法とし
加することで,けいモリブデン黄が,モリブデン青
てモリブデン青法,モリブデン黄法,及び重量法が
に変換される。これは極めて強い呈色になるので低
記載されている。しかし重量法は極めて煩雑な作業
濃度まで測定できる。セルの長さをうまく選ぶこと
を伴うことから一般的に利用されることはほとんど
によって,1ppb付近まで十分に測定できる。この
ない。化学反応を伴うモリブデン青法及びモリブデ
場合,化学反応を伴うので,試料の温度や,反応時
ン黄法は,試薬の補給を必要とするが,低濃度まで
間,試薬等の計量を一定条件に調整しないと正確な
精度よく測定できることから,最も多く利用されて
測定ができない。自動分析計の場合,これらの条件
いる。この方法は,自動分析計としても火力発電所
が一定にしてあり,繰返し再現性は優れている。ま
などでは,すでに以前から利用されており,プロセ
た,極低濃度測定などでは,試薬中に含まれるシリ
ス用として定着している分析計である。図1にモリ
カ分も無視できなくなるので,自動的にブランク値
ブデン青法のフローシート及び図2に測定シーケン
を測定して補正するよう工夫したものもある。この
ス例を示す。
分析計は試薬の補充などの保守作業を必要とする
〈原理及び特徴〉 前処理としてフィルタをとおり,
が,保守を確実に行えば安定な分析計である。
ヒータで温調された一定量の試料水を反応槽に導入
〈用途〉
し,まずブランクの吸光度を測定しておく。次に試
水質がきびしく管理されており,シリカ量も重要な
薬A〔モリブデン酸アンモニウム〕を添加すると約
管理項目の一つとなっている。また,最近では,超
1分後に,試料水中のシリカ濃度に応じてけいモリ
純水製造装置及び純水製造装置のイオン交換で,処
ブデンが生成される。このけいモリブデンは,黄色
理水の純度や,装置の正常動作をモニタする方法と
を呈色し,これを波長400nm付近で測定するのが,モ
して,シリカ量を測定することが多くこの分野でも
リブデン黄法である。しかしモリブデン黄の呈色が
多く使用されている。
火力,原子力発電所では,ボイラ用水の
弱いため,この方法では,1ppm付近か,それ以上
の高濃度領域にしか利用できない。一方,生成した
けいモリブデンに試薬B〔有機酸で,通常しゅう酸
が使用される。これは,シリカと同様の発色を示し
測定誤差を与えるりん酸イオンを隠ペいするために
添加する〕を添加した後,還元剤である試薬Cを添
133
シリカ計 モリブデン青法 モリブデン黄法
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(7)
水分計
Water content measuring instrument
〈概要〉 溶液中に含まれる水分を測定するものでカ
他に,エチレングリコール,プロピレンカーボネートなど
ールフィッシャー試薬(以下KF試薬)で自動滴定する方
の溶剤を主成分とする各種脱水溶剤を用いるとあらゆ
法,2枚の極板間にはさんだ吸着剤に水分を吸着させ,
る公定の水分測定法に採用されていて,きわめて高精
その誘電率から求める方法,近赤外線の水分による吸
度の測定値が得られる。試料の種類に応じて,メタノ
収量を測る方法などが,用いられている。
ールのほかにクロロホルム,ピリジン,エチレングリコ
〈原理及び特徴〉 (1)カールフィッシャー法の原理
ールなどを混合して用いると,ほとんどの試料が測定
よう素,二酸化硫黄及びビリジン等の塩基性化合物か
できる。
らなるKF試薬は,メタノールなどの低級アルコールの
(2)近赤外線吸収法の原理 図2に近赤外線吸収方
存在のもとで水と定量的に反応する。従って,試料を
式水分計の構成図を示す。水は近赤外領域で,1.2,
メタノールなどの溶剤に溶かしたのち,KF試薬で滴定
1.45,1.93,2.95μmに吸収がある。
し,滴定終点までに要した試薬量から,試料中の水分
その吸収量(吸光度)
は水分含有量に比例するので水
を求めることができる。滴定終点は,溶液中に浸した
分の定量に利用される。
2本の白金電極間に,微小の一定電流又は一定電圧
市販装置の多くは二波長方式を採用している。
をかけて分極させておき,滴定が進んでKF試薬が過
一方の波長は水による吸収波長の中で,共存物質の干
剰になると消極し,急激に電流又は電圧が変化するの
渉が少ない波長が,他方はバックグラウンドを消去す
で,この現象を利用して電気的に終点検出をしている。
るに適した波長が選択される。この二波長方式の採用
滴定動作は制御増幅器の信号で作動する電動ピストン
により,共存物質の干渉,セル窓の汚れ,光源や検出
ビュレットによって行われる。
器の経時変化などの影響を除去できる。
図1にカールフィッシャー方式水分計の構成例を示
〈用途〉
(1)
カールフィッシャー方式の用途 石油精製,石油化
す。
KF試薬は保存及び使用中に大気中の水分を吸湿し
てファクターが徐々に低下するので,分析計に標準液
(水または水標準液)
を用意しておいて,適時,試料の
学工業における微量水分測定や各種有機溶剤中の水
分量
測定範囲0∼100ppm−0∼10%H2O程度
代りに標準液を計量注入し,滴定して力価を評価する
(2)誘電率方式の用途 ベンゼン,へキサン,四塩化
ことで計器感度を校正する。
炭素などの0∼数10ppmH2Oの水分測定
カールフィッシャー法は試料に応じて,メタノールの
134
水分計 カールフィッシャー計 近赤外線吸収方式
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(8)
濁度・SS計
Turbidity meter and suspended solid measuring instrument
〈原理〉
水が濁るとは,大雨の後の河川の水に見
面散乱光方式のものは液槽に試料を連続的に流して
られるように,水に細かい粒の土砂などが混入した
溢れさせ,その試料水面に光を当て散乱光を測定す
状態であって,濁りという表現は肉眼で感覚的にと
る方式である。
図2に示す透過散乱光方式のものは,
らえたものである。この濁りの程度を数値にして表
液槽に連続的に試料を流し,窓ガラスのある液槽に
すのに濁度という用語が使われている。濁度の単位
光を当てて通ってきた透過光と粒に当って散乱して
は濁度標準液により決まるが,これには精製カオリ
きた散乱光を同時に測定して比率演算をする方式で
ンを水に混ぜたカオリン標準液と,2種の薬品と水
ある。
を混ぜて生成する細かい粒のホルマジン標準液の2
〈特徴〉
種類があり,指定どおり作ったものを1000度(カオ
ないので汚れによる誤差が起りにくく,同一液槽で
リン)とか400度(ホルマジン)とし,これを希釈
広範囲の測定ができるが,試料が着色している場合
して用いる。また,他の標準では,精製カオリン1mgを
には影響がある。透過散乱光方式では試料の着色の
水1r中に含む場合の濁りを1度(または1mg/r)と
影響は少ないが,
窓ガラスの汚れの影響が起るので,
しているものもある。河川,水道水の濁りは,この
超音波を利用した洗浄装置が付属して汚れを防いで
濁度標準液と比較して数値化する。濁度計の測定範
いる。また,窓ガラスのない落下流水式などもあり,
囲はカオリン標準で0∼1mg/rから0∼500mg/rの
いずれも検出器は採水形が多いが,浸せき(漬)形
範囲が多い。
もある。
濁度を測定するには,光を試料に当て,濁った水
〈用途〉
表面散乱光方式では光の通る窓ガラスが
水道水や工業用水の処理では,原水や上
を通ってきた光の強さを測る方法(透過光法)と,
水及び処理水の濁度測定のほかに.処理の途中の急
光を当てたとき水の中の細かい粒に光が当たって散
速e過池の水の濁度によって凝集剤の注入量や配水
乱する散乱光の強さを測る方法(散乱光法)に大別
流量を制御するために濁度測定が行われている。
できる。実際には透過光方式,散乱光法で一定方向
また,河川,湖沼,排水,下水などでは浮遊物質
(SS:
の光を測定する方式(前方散乱光方式,後方散乱光
Suspended Solid)が法令により規制されている。
方式)
,散乱光と透過光の比を測定する方式(透過散
このSSの測定は水と固形物を分離して固形物の質量
乱光方式)及び濁った水の表面に光を当て表面近く
を測る方式が基礎であるが,SSの量と濁度の値には
の細かい粒からの散乱した光を測定する方式(表面
一定の関係を示す場合が多く,そのためSS計として
散乱光方式)などが利用されている。図1に示す表
利用されている。
135
濁度 SS 透過光 散乱光 透過散乱光
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(9)
導電率計(電気伝導率計)
Specific conductivity meter
〈概要〉
導電率とは溶液の電流の流れ易さの尺度
補償用素子としてサーミスタ,又は白金抵抗体など
を示し,比抵抗の逆数で定義されている。図1のよ
が使用され,温度を測って自動温度補償を行ってい
2
うにr(cm)の距離を隔てて,表面積A(cm )の極
る。
板が対立して溶液中に置かれているとすると,その
電磁誘導法は電極法でみられるような分極,極の
間の液の電気抵抗R(Ω)はR=r・r/Aとなる。r は
汚れによる影響が少ない。測定方式としては図3の
比抵抗(Ω・cm)でこの値が電流の流れにくさを表
ように変圧器Tlの1次コイルC1に交流を流すと,溶
わし溶液によって決まる定数である。
液からなるC2に誘導起電力を生じる。このときに流
導電率L(S/cm)とするとL=J/Rとなる。このときJ
れる電流I は,溶液の導電率に比例しており,この
=r/AでrとAが既知であれば,溶液の抵抗Rを測
電流に比例した変庄器T2に発生する。この電圧を測
定することにより導電率Lを求めることができる。
定する。
Jはセル定数と呼ばれ,測定セル固有の値である。
〈特徴〉
SI単位ではS/mを使用する。
でき,測定回路も簡単な構成ですむ。また電極に白
〈原理〉
金黒をもちいることにより,低い導電率から高い導
導電率の測定方式として電極法と電磁誘
導法がある。
電極法は電極の構造により,微量測定も
電率(10μS/m∼100S/m)まで測定できる。一方,電磁
電極法は溶液中に電極を浸し,溶液の抵抗を測定
誘導法は高い導電率(0.5S/m以上)に使用され電極
し導電率を求める。この方式の代表はブリッジ方式
の汚れ,分極の影響による誤差が少なく,また溶液と
であったが,現在では図2のように演算増幅器(IC)
非接触にできるため耐食性にすぐれている。
を用いた方式が多くなってきている。セルに交流電
〈用途〉
圧を加え,溶液と電極面における分極容量,分極抵
ラ給水,水道水,水耕栽培の液肥などの管理,また
抗をさけ,測定誤差を小さくする必要がある。この
化学食品の製品検査,半導体製造プロセスなど極め
ため周波数は数十∼数千ヘルツの範囲のものを使
て広い範囲の分野で用いられている。
導電率計はイオン交換水等の純水やボイ
い,測定範囲により周波数を切り換えている。電極
は2極のものが多いが導電率の高い溶液の測定に
は,分極の影響の少ない4極のものも使われている。
一方導電率は溶液の温度により大きく変化(約
2%/℃)するので温度補償をする必要がある。温度
136
導電率計 セル定数 電磁誘導法 白金黒
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(10)
ナトリウム計
Sodium meter
〈概要〉
溶液中のナトリウムイオン測定方式の代
付近の極低濃度の測定が,純水を対象として行われ
表的なものに,①イオン電極法と②原子吸光法があ
ているが,この場合,外部からのナトリウムの混入や,
るが,プロセスなどの連続モニタ用として使用され
計器校正の際に用いる標準液への人体からのナトリ
る分析装置のほとんどは,シンプルな装置構成と保
ウムの混入などに十分気をつけなければならない。
守の簡便さからイオン電極法が採用されている。一
図1にナトリウム計の構成を示すが,ここでは校正
方,原子吸光法は,多元素分析の1つとしてナトリ
を,既知の濃度溶液を測定セルに導入しておこない,
ウムを分析する場合が多く,通常,ラボなどで使用
外部からのナトリウムの混入を無くしている。
また,
されている。イオン電極法は,その測定原理より,
この分析計ではpH調整剤の補充と,計器校正を定期
測定範囲が広いため,種々の分野で利用されている。
的に行う。pH調整剤は1ヵ月に1度の補充,計器の
ここでは,プロセスモニタとしてのナトリウム計に
校正は2∼4週間に1度で安定した測定ができる。
ついて説明する。
このように電気化学的センサは,装置の構成が簡単
〈原理及び特徴〉
イオン電極によるナトリウム測
であり,稼働率が高いものが多い。また,測定範囲
定は,ナトリウムイオン電極(以下pNa電極という)
も幅が広いので,どの分野にも使用できる。ただ低
の応答膜が,溶液中のナトリウムイオン濃度に応じ
濃度傾域では,応答性が若干悪く,5∼10分を要す
て電位を発生することを利用したものである。この
るが実用的に大きな問題になることは少ない。
pNa電極と,比較電極及び温度補償電極を組み合わ
〈用途〉
せて,ナトリウムイオン濃度を測定することができ
の水質管理用,とくにアンモニア形のイオン交換式
る。これは広く利用されているpH計と同じ構成で
純水装置には不可欠な計器である。他に,各種プロ
ある。ところが,このpNa電極は,
〔Na+〕と類似の
セスの水質のモニタや,淡水化プラントやボイラ復
+
火力,原子力発電プラントのボイラ用水
特性をもつ〔H 〕の干渉を受け,試料をそのままで
水器淡水ラインへの海水のリークなどのモニタとし
測定することができないので〔H+〕の少ない状態す
てオンラインに組込まれて使用されることもある。
なわち,pH値を高くして測定する。一般的に,アン
モニアや有機アミン類でpH値を10程度に管理して
測定する。0.1μg/rから23,000mg/rまでの広い
範囲を同じ電極で測定できる特徴があり,測定レンジ
にはほとんど制約がない。最近では,0.
1∼1.
0μg/r
137
ナトリウム計 イオン電極法
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(11)
粘度計
Viscosity measuring instrument
〈概要〉
プロセス用粘度計は,溶液の粘度を連続
ずり速度が選べるので非ニュートン流体でも見かけ
的に測定するもので,中間製品及び最終製品の品質
粘度が測れる。細管式は古くからある方式で,信頼
管理,中間工程の把握のために多く使われている。
性が高い点が特徴である。測定範囲は0∼50cP−0
粘度計の指示値を相対比較する場合,次の点に注意
∼20000Pである。
(図1)
回転式の原理 スピンドルを流体中で回転させる
する。
測定する溶液が非ニュートン流体の場合,ずり速
と流体の粘性抵抗を受ける。このトルクをポテンシ
度が異なる粘度計で測定すると同じサンプルでも指
ョメータなどで求めるものである。感度,応答性が
示値が違ってくる。従ってプロセス用粘度計を適用
よく,ラボ用粘度計に多く使われている。高圧のケ
するときは,前もってずり速度又はずり応力が変え
ースが多くプロセス用としては,回転体支持部が浸
られるラボ用粘度計で試料のニュートン性を確認し
漬するので信頼性の点で注意を要する。測定範囲は
ておく必要がある。
0∼1cP−0∼50000Pである。(図2)
粘度は温度変化による影響が大きいので,一定温
落体式の原理 一定形状の落下体が一定距離を落
度で測定し,相対比較する必要がある。恒温槽によ
ちるのに要する時間が粘度と相関があることを利用
る温度一定化と,外部演算補償を併用すれば高精度
したもので,原理的に間欠測定となる。1cP以下の
の測定が可能である。
低粘度でも比較的感度よく測定できる点が特長であ
〈原理及び特徴〉
る。測定範囲は0∼2cP−0∼50Pである。
(図3)
プロセス用粘度計に採用されて
いる原理のものには細管式,回転式,落体式,振動
〈用途〉
式等があるがここでは比較的多く使われる前者3例
塗料等の業種に加え,最近では食品,薬品関係でも
について解説する。
導入され初めている。
石油精製,石油化学,一般化学,繊維,
細管式の原理 定流量ポンプで細管中に一定の流
各種油(ボイラ燃料油,反応槽ボトムオイル)
,各
量を流し,細管前後の差圧を求め粘度を知るもので
種合繊ポリマ(重合度管理が主目的)
,各種塗料,接
ある。粘度gは次式で与えられる。
着剤,合成ゴム,電線被覆材,各種食品(ケチャッ
g=pr4(Pl−P2)/8rq
プ,ガム,マヨネーズ,ドレッシング)に適用でき
ただしr:細管の半径 r:細管の長さ,q:流量,
Pl−P2:細管前後の差圧
細管式は細管とギヤボックスの交換により,適当な
138
粘度計
る。
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(12)
ヒドラジン計
Hydrazin analyzer
〈概要〉
ボイラや過熱器などに使用されている鋼
り補給され徐々にセラミック表面から試料水中に流
材は,恒温状態で溶存酸素により著しく酸素腐食を
出する。この状態で,ヒドラジンを含む試料水がカ
受ける。このため火力発電プラントではボイラ水に
ソードの表面を通過すると次の反応によりカソード
含まれている溶存酸素を除くため脱気器による処理
及びアノードの両極間にヒドラジン濃度に比例した
を行うとともにヒドラジンなどの脱酸素剤の注入を
電流が発生し,これを検出し増幅する。
行っている。ヒドラジン計はこの時注入されるヒド
アノードではヒドラジンが酸化される。
ラジン量の注入制御用として使用されるほか,ボイ
N2H4+4OH−→N2+4H2O+4e
ラ水に残留するヒドラジン濃度の監視用として使用
一方;カソードではこれと当量の還元反応が起る。
される。ヒドラジン計の測定方法としては,JIS
O2+2H2O+4e→4OH−または
B 8224に準じた比色方式と電気化学的反応を応用し
4H++4e→2H2
た電極方式がある。前者は間欠測定のためヒドラジ
この時,両極間に流れる電流は,流速の影響を受け
ン注入制御に組み込むことができず設置例は少な
るので流量を一定にすると共に試料水温度を測定し
い。主として連続測定の可能な電極方式が用いられ
補正する必要がある。
ている。
〈特徴〉(1)簡単な構造であるため,保守管理が容
〈原理〉
ポーラログラフ式酸化還元電極方式のヒ
易である。
(2)連続測定が可能である。
(3)電極の寿
ドラジン計の構成例を図1に示す。試料水は定圧槽
命が長いなどである。
及びクーラにより定温(20∼30℃)
,一定流量に調整
〈用途〉
され検出槽に入る。検出槽の中には図2に示す構造
入自動制御用及び残留ヒドラジン監視用として使用
の浸漬(せき)形電極及び温度補償用電極が設置され
される。測定範囲は,0∼50ppbから0∼200ppbなど
ている。この電極は,多孔質セラミックをボディと
であるが,10ppm程度の高濃度まで測定できるもの
し,周囲に白金リボン(アノード)が巻きつけられ
もある。
火力発電プラントにおけるヒドラジン注
内筒にはKCr溶液が充満して上方の複合電極(カソ
ードと比較電極)を浸漬したヘッドタンクに連結す
る。検出系は,アノード及び比較電極の3電極から
構成されアノードには複合電極を基準とした一定の
電圧が印加されている。KCr溶液は,ヘッドタンクよ
139
ヒドラジン計 ポーラログラフ式酸化還元電極方式 ヒドラジン計の構成
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(13)
pH計
pH meter
〈概要〉
水の性質を示す最も基本的な指標の1つ
的に洗浄を行う洗浄器(超音波式,ブラシ式,水ジ
としてpH値がある。pH値は特定の物質の濃度を示
ェット式,薬液式)を付加した検出部が作られてい
すものではないが,金属の腐食に大きな関係がある
る。
ほか,水棲動物の生活,水中の沈でん物の溶解や,
電極ホルダは,開放槽に設置する浸せき形,パイ
生成,農作物,水産物の育成に関係する。このよう
プラインに組み込む流通形や両者の中間のフローセ
にpH計の応用範囲が広いため,プロセス用のpH計
ル形などがある。これらの接液部の材質として,
は各測定場所に適するよう,電極,電極洗浄器,変
PVC,ステンレス鋼,PP製などがある。
換器など,各種の方式,形状のものが用意されてい
変換部は,電極で発生した起電力を,増幅,自動
る。
温度補償する回路が組み込まれ,最近ではCPUを内
〈原理及び特徴〉 プロセス用pH計はガラス電極法
蔵し,校正繰作を容易にしたものや,電極の良否を
と,アンチモン電極法がある。試料中のフッ素成分
自動的に判別する機能をもったものもつくられてい
の濃度が濃く,ガラス電極そのものが侵される場合
る。伝送信号は4∼20mA DCが一般的であり,電源
や,試料中に含まれる付着物によりガラス電極がコ
は100V ACのものの他,24V DCを電源とし,電源
ーティングされ,測定出来ないという特殊な場合を
線と信号線を共用する二線伝送式のものもある。ま
除きガラス電極法が採用されている。図1にガラス
た,設置場所が屋内か屋外かにより屋内形,防滴形,
電極式pH計の構成例を示す。pH計の詳しい原理は,
防雨形のいずれかを,爆発危険場所で使用する場合
ラボ用pH計に記述されている。
は防爆構造のものを選ぶことができる。
プロセス用pH計は,長期間連続測定でき,保守が
〈用途〉
水質測定において,pH測定は重要な測定
容易なもので,信号出力の長距離伝送できる方式の
項目であるため,測定対象としては雨水,河川水,
ものが使用されている。この目的にあうよう,検出
地下水,海水などの自然水から,上下水,排水,工
部に要求されることは,比較電極の内部液の補充回
場のプラント工程水,火力,原子力発電のボイラ水,
数の少ないことと,電極部のよごれ対策等である。
製薬,発酵など水を扱っているあらゆる分野で使用
前者に対しては,比較電極の内部にゲル化したKCr
されている。
を詰めておき,無補充形としたもの(使い捨て形)
や,ヘッドタンクを設けて,KCrを自動補給するも
のなどがある。後者に対しては,電極の汚れを自動
140
pH計 ガラス電極 KCR
洗浄器 ニ線伝送 防爆構造
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(14)
水硬度計
Water hardness meter
〈原理〉
カルシウム塩類及びマグネシウム塩類を
以上のように,全硬度はEBTを指示薬とし,
多量に含んでいる水を硬水といい,それらの塩類の
EDTAで滴定して求めたカルシウムとマグネシウ
少い水を軟水という。水の中のカルシウム及びマグ
ムの合量を炭酸カルシウムに換算して表示するもの
ネシウムのイオンは主としてCaSO 4,MgSO 4,Ca
であるが,カルシウム硬度とマグネシウム硬度は,
(HCO3)2,Mg(HCO3)
2からなっている。
水硬度計は,プロセスにおける各種溶液中のカル
シウム及びマグネシウムイオンの量を測定し,その
値を炭酸カルシウム濃度に換算して表示する装置で
次のようにして求める。
カルシウム硬度はNANA溶液を指示薬とし,
EDTAで滴定して求める。
マグネシウム硬度は,全硬度よりカルシウム硬度
ある。工業用水試験方法JIS K 0101においては,硬
を差し引いて求める。
度は全硬度,カルシウム硬度及びマグネシウム硬度
〈特徴〉
に分けられているが,ここで述べる分析計は全硬度
合量が,全目盛長の±2%以内の再現性で得られる。
0∼10mg/r程度のMg及びCaイオンの
サンプリング−滴定−指示−排液を繰り返すので
を求めるものである。
図1にプロセス用水硬度計の構成例を示す。分析操
約10分ごとの間欠測定となる。
作は次の順序で自動的に行われる。洗浄水で滴定セ
〈用途〉
ルを洗浄したのち,試料液,緩衝液及び指示薬を計
視,ボイラー用水のスケール防止,洗浄用水の硬度
量採取し,滴定セル内に順次注入し,混合させる。
監視,食品工場の用水監視,製紙工場用水の硬度監
緩衝液は試料をpH10に調節する。指示薬にはエリ
視,染色工場用水の硬度監視。
軟水装置の運転管理 工業用水の水質監
オクロムブラックT(EBT)を用いる。
比色計により滴定セル内の液色を監視しながら,
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA)溶
液で光度滴定を行い,滴定終点までに要したEDTA
溶液量を電気信号に変換して発信し,指示記録する。
そのあと,セル内の液を排出し,セル内を洗浄水で
洗浄して1回の測定を終了する。セル洗浄のときに
は,内蔵の回転ブラシで光透過窓をぬぐって清浄に
する機構が付加されている。
141
カルシウム硬度 マグネシウム硬度 全硬度 水硬度計
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(15)
密度計
Density measuring instrument
〈原理〉
密度は,物質の性質や組成を知るうえの
基本的な物理量である。その単位は,計量法によれ
3
チレーション計数管や電離箱が使われている。
振動式密度計は,パイプの横方向自由振動数が,
ば体積1立方メートル中に含まれる質量(kg/m )と
内部に満たされた液体の密度の関数になっているこ
定められ,その補助単位としてグラム毎立方センチ
とを利用した密度計である。図2に振動式密度計の
メートル(g/cm3)が定められている。一般には,こ
構成例を示す。密度変化を周波数変化として検出す
の補助単位の方がよく使われている。
る検出器は,振動子(薄肉のパイプ),振動子を駆動
液体の密度測定には,浮子に働く浮力の変化を利
する圧電素子(振動をピックアップする電極)及び
用した"浮子式密度計”,液中の高さの異なった2点
発振増幅器からなっており,変換器は,標準発振器,
に働く圧力の差,すなわち差圧を利用した"差圧
混合検波回路,周波数/電圧変換回路及び温度補償回
式密度計”
,一定容量の容器例えばU字管中を流れる
液体の重量変化を利用した"重量密度計”,放射線
路などからなっている。
〈特徴〉 c線密度計……(1)被測定物に接触するこ
の透過率の変化を利用した"c線密度計”及び振動を
となく高温・高圧・高粘度の液体やスラリ状液体の
利用した"振動式密度計”などがある。
c線密度計は,放射線源から発生するc線が物質を
測定にも適用できる大きな利点をもち,応用分野も
透過する際の透過率が,その密度により変わること
が必要である。
を利用して密度を測定する装置である。図1に構成
例を示す。今,被測定物がないときのc線の強さをI0,
c線の質量吸収係数〔cm2/g〕をm,被測定物の密度を
qとすると,厚さt cmの物質を透過した後のc線の強
さIは,次の式によって表される。
I=I0・e−mqt
広い。
(2)
放射線を使用するため管理には万全の注意
振動式密度計……
(1)測定感度が高く,安定な測定
ができる。
(2)外部からの振動その他の影響を受けに
くい。
(3)測定が容易で,連続測定ができる。(4)温
度や圧力の影響を考慮する必要がある。
〈用途〉 c線密度計……他の方式では測定困難な
スラリ状液体,高温あるいは高圧下の液体,高粘性
mは,b線や低いエネルギーのc線の場合,物質の種類
液体及び腐食性液体の測定に適している。
にはあまり関係しない。このため,t及びI0を一定に
すると,透過後のc線の強さIは,被測定物の密度の
密測定に適す。特に有機溶剤等の測定には最適であ
関数として表すことができる。放射線源には,セシ
る。
振動式密度計……懸濁物の少ないプロセス液の精
ウム137やコバルト60があり,検出器としては,シン
142
c線密度計 振動式密度計 浮子式密度計 差圧式密度計 重量式密度計
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(16)
溶存オゾン計
Dissolved ozone analyzer
〈原理〉
浄水,水の再利用及び環境保全のための
水質改善に種々な水処理法が行われている。その中
る。またポーラログラフ方式には,図1に示した回
転電極法の他に,
隔膜を使用した隔膜電極法もある。
で塩素による処理など一般的な処理では十分な処理
ポーラログラフ方式は,電極間にオゾンの電解電
が出来ない脱臭,脱色,殺菌,有害物質の分解など
圧をかけて,オゾン濃度に比例して流れる電流を測
を目的として,
オゾンによる処理が行われる。
オゾン
定する。残留塩素の妨害は,試薬を使用して残留塩
は空気中で放電させると多量に発生し,このオゾン
素をクロラミンに変えることにより防ぐ。
を処理する水の中に吹き込むとオゾンの強い酸化力
紫外線吸光方式では,255nmの吸光度を測定する。
によって分解処理が行われる。オゾンの酸化力はふ
残留塩素の妨害は,間欠的に試料中のオゾンだけを
っ素よりは弱く塩素より強い。水中に吹込み分解に
分解除去したゼロ液でゼロ校正を行うことにより防
消費された余剰の溶存したオゾンは比較的短時間に
いでいる。
自己分解して酸素になり無害となる。このオゾンの
〈特徴〉
自己分解は一般の自然水では常温で20∼30分で半減
オゾン処理の指標として適している。
(2)
オゾン処理
するので,長期に高濃度で溶存することはなく処理
で併用される塩素処理においてもオゾンのみの分離
剤として適している。
測定ができる。
(3)回転金電極法では,電極部の汚れ
(1)
連続測定であるので反応の比較的速い
溶存オゾンの分析法としては,よう素法(よう化
対策にビーズを入れて電極の回転による自浄効果を
カリウム溶液と反応させて,よう素を生成させチオ
利用したものがある。
(4)紫外線吸光方式では,測定
硫酸ナトリウムで滴定して測定する),硫酸マンガン
セルの汚れによる影響が大きいので,汚れ防止の対
オルトシリンジ法(硫酸マンガンオルトトリジン試
策が必要である。
薬の反応による発色を測定)
,紫外線吸光法
(紫外線
〈用途〉
がオゾンに吸収されるので光の吸光度を測定)など
ける悪臭物質の処理に使用されるほか,
産業廃水(染
が用いられている。
色,印刷工場廃水の脱色,メッキ廃液のシアン処理,
溶存オゾン計は下水処理,し尿処理にお
各種水処理では塩素処理に加えてオゾン処理が行
コンビナート廃水の三次処理)
,上水の高度処理
(富
われる場合が多い。そのため溶存オゾンは残留塩素
栄養化した湖沼よりの原水の脱臭処理)などに用い
と溶存オゾンが混合している試料から分離測定をす
られる。測定範囲は0∼2mg/r程度である。
る必要がある。プロセス用溶存オゾン計には,図1
のポーラログラフ方式と図2の紫外線吸光方式があ
143
ポーラログラフ方式 回転電極法 隔膜電極法 紫外線吸光方式 溶存オゾン
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(17)
溶存酸素計
Dissolved oxygen meter
〈概要〉
溶存酸素とは,水中に溶解している酸素
を容易にするために中継端子箱を設けることがある。
のことをいうが,溶解する量は,酸素分圧,水温,
また,試料の流速は電極の発生電流に影響するので
溶解塩濃度などに影響される。汚染されてない河川
規定以上の流速を与える必要がある。電極ホルダと
水中にはその温度における飽和値に近い量が含有さ
しては,直接試料水に浸せきする浸せき形,試料水
れるが,還元性物質(硫化鉄,亜硫酸,第一鉄など)
を連続して送液する流通形,試料水を連続して送液
が混入した水中では減少する。また溶存酸素は,水
した中に浸せきする汲み上げ形がある。
中生物,有機物,バクテリアなどにより消費され,
変換部は電極で発生した電流を増幅,自動温度補
水の自浄作用や,水中生物にとって不可欠なもので
償するとともに,入力∼出力間を電気的に絶縁し外
ある。一方,ボイラ給水中に溶存酸素があると,ボ
来ノイズの影響をなくすような方式が採用されてい
イラの腐食が速まるため,ボイラ給水中の溶存酸素
る。図1に溶存酸素計の構成例を示す。変換部の設
は除去され一定値以下に管理されている。
置場所が屋内か屋外かにより屋内形,防滴形,防雨
〈原理及び特徴〉
形のいずれかを,爆発危険場所で使用する場合は防
プロセス用の溶存酸素計として
は共存するイオンの妨害を受けない,保守取扱いの
爆構造のものを選ぶことができる。
簡便さなどから,隔膜電極式が多く採用されている。
〈用途〉
隔膜電極式の詳しい原理はラボ用溶存酸素計に記述
ラ給水の管理,下水の活性汚泥処理の制御,水質汚
されている。
濁監視,発酵プロセスや養殖飼育槽の管理,などが
プロセス用の溶存酸素計の特徴は,長期間の連続
溶存酸素計の用途は多岐にわたり,ボイ
ある。ボイラ給水以外の用途ではmg/rオーダーの
測定ができ,保守の容易なことと,信号出力は長距
測定が殆どであるが,ボイラ給水においてはmg/r
離伝送可能なことなどである。この目的に合うよう
オーダーからμg/rオーダーの測定まで広い範囲が
に,電極の電解液の長寿命化,または電極の先端チ
用いられている。
ップをカートリッジ化してワンタッチで交換可能に
して保守を容易にしたものなどがある。また電極の
汚れ対策として,水ジェット,エアジェット洗浄な
ど用意されているものもある。
設置場所によっては検出部と変換部の距離が,
100m程度になることもあり,この時には電極の保守
144
酸素分圧 飽和値 隔膜電極 電解液 流速
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(18)
二酸化塩素計
Chlorine dioxide meter
〈原理〉
二酸化塩素はガス体で,溶液中にあると
関係を示す。
きは溶存二酸化塩素として存在する。
また,隔膜式二酸化塩素計は,試料に酸を添加した
適当な電解質を含む溶液に溶存する二酸化塩素は,
場合には,亜塩素酸イオン計としても利用できる。
電解することが可能で,定電位電解したときの還元
〈特徴〉
電流値が,二酸化塩素濃度に比例することを利用し
がある。
て二酸化塩素を定量することができる。
・広い測定範囲
溶存ガスを透過する適当な隔膜を利用した隔膜電極
・高い測定精度
は,安定した測定値が得られるうえに使い勝手がよ
・連続測定可能
隔膜式二酸化塩素計には次のような特徴
く,二酸化塩素を測定するときに非常に便利である。
・取扱い簡便
隔膜式二酸化塩素電極は,電解液の中に作用極と対
〈用途〉二酸化塩素計はプール水の殺菌・上水の殺
極があり,作用極に密着して二酸化塩素を透過する
菌/消臭・食品の鮮度保持・畜舎の殺菌/洗浄・俳
隔膜が張られた構造である。
水処理装置/除塵装置の洗浄/脱臭・パルプの漂白
隔膜を透過した二酸化塩素は,隔膜と作用極間のご
・冷却循環水の殺菌などで使用されている。
く薄い電解液層を拡散し,作用極に到達して電気化
学的に還元される。このとき,作用極及び対極では
それぞれ次のような反応がおこる。
作用極での反応:ClO2+4H+ +5e− → Cl−+2H2O
対極での反応:Ag+Cl− → AgCl+e−
二酸化塩素計は上記の反応に伴って流れる電流を増
幅し,温度変化による電流変化を,温度計による温
度計測値で自動補償して,試料中の二酸化塩素濃度
を測定する計測器である。
二酸化塩素濃度と指示値とは,広い範囲で直線関係
にあり,ppbオーダーからppmオーダーまで,広い
濃度範囲の測定が可能である。
図1に二酸化塩素濃度と二酸化塩素計の指示値との
145
二酸化塩素 亜塩素酸イオン 隔膜二酸化塩素電極
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.2(19)
溶存水素計
Dissolved hydrogen meter
〈原理〉
水の中に溶存する水素(溶存水素)の測
〈特徴〉
隔膜電極式は,隔膜により試料と極・電
定法として,隔膜電極式とガスクロマトグラフ式が
解液が隔離されているため,溶液中の妨害イオン(硫
知られている。
化物イオン,亜硫酸イオン等の還元性イオン,次亜
隔膜電極式:図1に示すような隔膜電極を使用す
塩素酸イオン,過マンガン酸イオン等の酸化性イオ
る。隔膜電極は,作用極に貴金属,対極に銀,電解
ン)の影響を受けない。また,電極による測定のた
液に塩化カリウム水溶液,隔膜にテフロン等のガス
め簡単な操作で手軽に,連続で精度の高い溶存水素
透過性の良い膜が通常用いられ,電解液と極は隔膜
の測定ができる。校正については危険を伴う水素ガ
により試料溶液と隔離されている。図2に示すよう
スを使用しないで簡単に実施できるものもある。
に,限界拡散電流を生じる電圧を両極間に印加する
ガスクロマトグラフ式では試料から水素ガスを分
と,隔膜を透過した水素が作用極で酸化され,得ら
離する前処理が必要となり,前処理操作における誤
れた電流が溶存水素濃度に比例することを利用して
差が間題となる。又,装置が大がかりのため手軽さ
溶存水素を測定する。
に欠ける。
〈用途〉溶存水素計の用途は(1)原子力発電プラ
両極での反応は
+
−
作用極で H2→2H +2e
ントでの防食のための冷却水の溶存水素濃度管理,
対極で AgCr+e−→Ag+Cr−
(2)金属材料の腐食に伴う溶存水素増加の監視,
となる。
(3)水素生産菌の培養における溶存水素濃度の測
隔膜電極は水素ガス分圧に応答するが,
定等,防食・バイオマスが主であるが,エネルギー
へンリーの法則*により溶存水素濃度と水素ガス分
関連への適用も考えられる。
圧が比例するため,測定によって得られた電流は溶
存水素濃度に比例する。
ガスクロマトグラフ式:試料から水素ガスを分離
する前処理を行なった後,ガスクロマトグラフで測
*へンリーの法則:気体の液体に対する溶解度は,
溶解度の小さい気体について,気体の分圧に比例す
る。
定する方法である。前処理には(1)不活性ガスに
よるバブリング,(2)煮沸の2通りの方法があり,
検出器には熱伝導度検出器(TCD)又は光イオン検
出器(PID)が使用される。
146
溶存水素計 溶存水素 隔膜電極 ガスクロマトグラフ ヘンリーの法則
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.3(1)
厚さ計
Thickness gauge
〈概要〉
一般に,紙,ポリマーフィルム,金属板
等のシート状物質の厚さを測定するには,ノギス,
測定し,mを逆算する。
透過型厚さ計は,測定放射線強度が大きいため,
マイクロメータ等のゲージ類が用いられる。しかし
非常に高い再現精度が得られる。変動係数で0.5%を
製造ライン中で連続的に測定する場合や,メッキの
切るのは容易であり,条件次第では0.1%以下も可能
ように別の素材に付着した被膜の厚さを,非破壊で
測定するには,b線,c線,X線等の放射線を利用する
となる。
ことが多い。
底状態に戻る際に放射されるX線(蛍光X線)の強
(2)蛍光X線型厚さ計 物質を放射線で励起し,基
放射線厚さ計には,透過型,蛍光X線型,後方散乱
度を元に,物質の厚さを測定する(図2参照)
。蛍光
型等の方式があるが,いずれも放射線と物質との相
X線は物質に固有のエネルギーを有するのでそれを
互作用を利用しているため,本質的には単位面積当
弁別する機能が内蔵されている。
たりの質量(面密度)の測定となる。したがって「長
さ」の単位に換算するためには,物質の密度で除す
必要がある。
放射線以外では,純粋な長さ計として渦電流損,
差動トランス,レーザ等を用いたものがある。
〈原理及び特徴〉
測定される蛍光X線強度Nは,下式で示される。
N=(Ninf−N0)・exp(−mqt)+N0
ここで,Ninfは無限厚の時の蛍光X線強度,N0は厚さ
0の際のX線強度である。mや qの求め方は,透過型
と同様である。
工業用に用いられている放射線
この方法は,被測定物質がメッキのような付着被
厚さ計には,大きく分けて透過型と蛍光X線型の2
膜でも利用できる。また,被膜が多層になっている
通りある。それぞれについて説明する。
場合でも,各層の元素が異なっていれば,それぞれ
(1)透過型厚さ計 線源のX線強度I0と,物質を透
独立に測定する事が可能である。
過して検出されたX線強度Ⅰ(図1参照)との間に
〈用途〉
は,下式の関係が成立する。
スケーキ,製紙業等の製造ラインで用いられる。
透過型厚さ計は,主にゴム,セラミック
蛍光X線厚さ計は,メッキや蒸着膜等の金属被膜
I=I0・exp(−mqt)
qは物質の密度
,
[g/
ここで,
mは質量吸収係数
[m2/g]
測定に多く利用されている。特に電子部品メッキの
m3],tは物質の厚さ[m]である。tを求めるため
にはmとqが既知でなければならないが,通常は被測
品質管理用としては,標準的な厚さ測定方法である
と言える。
定物とqが同じで,厚さ既知の標準試料のX線強度を
147
メッキ 蒸着膜 X線 蛍光X線 吸収係数
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.3(2)
水分計
Water content measuring instrument
〈概要〉
製紙工程のエンドポイントで水分率を測
変化には影響されにくいという特徴がある。
定することは,品質の安定化,原料パルプや蒸気使
最近,日本では,透過率の悪い古紙の含有比率の
用量の節約になり,また製鉄工程で高炉に投入する
高い紙が,多く抄紙されてきており,散乱形だけで
コークス中の水分を管理することは,低燃費操業や
水分測定を行うことは,
大きな測定誤差が発生する。
炉熱管理強化の面からメリットがある。
そこで,透過率の情報の多い散乱形と直進透過形信
〈原理及び特徴〉200∼1200m/minで流れている紙
号の比と,透過率変化には影響されるが水分感度の
の水分を非接触で測定するため,水分子の吸収帯で
高い散乱形信号を用いて,透過率変化に影響されに
ある1.94mmの近赤外線を紙に投光し,紙を透過して
くい水分測定を行う。オンラインでの水分率測定精
きた光量から水分量を測定する。測定器のドリフト
度は2rで±0.3%である。
や坪量(単位面積当りの紙の重量)変化の影響をさ
放射線源を用いるコークス用水分計は,高速中性
けるため,水分子に吸収されない1.8mmの光も紙に
子が衝突断面積の大きい水素原子と衝突し,熱中性
投光し,透過光量を測定する。そして1.94μmと
子に変化してしまう現象を利用した水分計である。
1.8mmの透過光量の比から水分量を測定し,放射線
図2に,コークス用水分計の構成を示す。252Cf(カ
を利用した坪量計からの坪量信号とで,水分率を算
リホルニウム252)
から同時に放射される高速中性子
とc 線をコークスに透過させ,2種類の放射線に感
出するものである。
図1に,散乱及び直進透過の場合の複合形水分計
の構成を示す。光源から放射した光は,1.94mmと
度を有するシンチレーション検出器で検出し,パル
ス波高弁別法により高速中性子とc 線を弁別計数す
1.8μmを透過させるバンドパスフィルタを交互に透
る。c線の計数値から密度信号が出るので,高速中性
過し,測定ギャップに投光される。投光された光は,
子計数値に密度補正を行い,密度変化の影響を受け
紙と上下の散乱面との間で,散乱,反射を繰り返し,
受光器に入る。一方,直進透過形は光源から放射し
にくい水分値を得る。標準試料による水分率測定精
度は,3rで±0.
5%である。
た光の一部が,鏡で反射され同じフィルタを通過後,
〈用途〉
紙に投光され受光器に入る。
のコークスの水分測定。
製紙工場での紙の水分測定,製鉄工場で
散乱形からの信号は,水分感度は高いが,紙の透
過率の変化には影響されやすい。一方,直進透過形
は,散乱形に比べ水分感度は低いが,紙の透過率の
148
近赤外線 散乱 吸収 中性子 シンチレーション検出器 NIR
2. プロセス用・現場用分析機器
2.1.3(3)
灰分計
Ash content measuring instrument
〈原理〉
灰分とは,被測定物を高温度
(約900℃又
ない。そのため坪量計(単位面積当りの紙の重量)
は550℃)
で燃焼させたときの残渣物と定義づけられ
や水分計の測定結果との演算処理が必要で,
(1)
式を
る。この温度では被測定物中のC,H,O成分は燃焼し
さらに発展させた式により求めている。
炭酸ガスや水となって放散してしまい,代わりに
図2に散乱X線方式の構成例を示す。X線源とし
Al,Mg,Si,K,Ti等の金属類が酸化物の形で残され
てはRI(放射性同位元素)を使い,背面散乱線強度
る。これが灰分と呼ばれる。
と灰分率とに相関関係があることを利用している。
灰分計としては被測定物中のこれら金属類を検出
〈特徴〉
透過形方式ではTiターゲットのX線管を
使用し,4.5keVのX線の透過吸収を測定する。X線
することになる。
その方法としては試料にX線を照射し,試料中の
管は小形で水冷が不要となっており,機器外には放
金属化合物で強く吸収されるのを検出する方法と試
射線の管理区域を必要としない。測定範囲は坪量30
料中の金属原子で散乱されたX線を検出する方法が
∼200g/m2,灰分率0∼30%である。従来の手分析で
ある。散乱X線法は事前に試料を粉砕・乾燥処理す
は試料を燃焼灰化させて灰分率を求めるまで約10時
ることが必要で主として石炭等のラボ分析に使われ
間を要していたが,灰分計では瞬時に結果が得られ
る。一方透過吸収法は紙のオンライン灰分測定に使
る。
用されており,試料の前処理は不要である。
図1に示したのはプロセス用の紙の灰分計である。
この場合のX線の透過の式は次式で示される。
I=I0exp(−mx) ……………………(1)
ここで I :透過X線量 m:X線吸収係数
I0:入射X線量
x:X線吸収物質量
散乱形では 55FeのRIよりの5.9keVのX線でエネ
ルギーも低く遮へいも容易で,防X線カバーの採用
により安全である。試料中より発生する蛍光X線を
利用して硫黄分も同時に測定できる。いずれも4分
以内で分析でき,手分析に比べて速い。
〈用途〉
上質紙用抄紙機の坪量・水分計に付加さ
吸収係数μは試料を構成する元素によって大きく
れオンラインで常時測定され,その結果はコンピュ
変化する。あるエネルギーのX線については一般に
ータで灰分原料の流量制御に使われる。それにより
試料の原子番号が大きい程吸収係数が大きい。紙中
品質向上,原料節約等のメリットがある。
の灰分はセルロースに比べて約4倍大きい。
しかし,
紙中のセルロースや水分によってもX線は吸収され
ることからX線の透過率だけからは灰分は求められ
149
灰分 X線管 蛍光X線 透過形灰分計 散乱形灰分計
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2 多目的プロセス用・現場用分析計
2.2.1(1)
プロセス用・現場用可視・紫外線分析計
Visible and ultraviolet analyzer for process use
〈概要〉
プロセス用紫外・可視分析計としては,
も適用できる。2波長方式は図2のように,試料の
紫外吸収を利用したNOx-SO 2 計やアンモニア計な
吸収がある波長(測定用)と,吸収がない波長(比較
どの大気汚染計測用をはじめ,有機汚濁を測定する
用)の二つの波長で測定するので,光源の影響だけ
UV計や比色法によるシアン計,フェノール計,油分
でなく,セル窓の汚れや試料中のダストや濁りなど
濃度計などの水質汚濁計測用のように,環境計測を
の影響も受けにくい。なお,一般に,分析部は1つ
主体とした専用の分析計が多い。
のユニットになっていて,測定対象が異なっても光
また,各種プラントの工程管理を目的とした分析
学フィルターを変更する程度で対応できる。
計もある。この工程管理用分析計では,サンプリン
サンプリング装置は,簡単な例では固形物は除去
グ装置がそれぞれの測定対象に応じてつくられるこ
するフィルタだけのものもあるが,図1,図2のよ
とが多く,分析計としては多種多様である。
うに測定対象に応じた構成になっていることが多
環境計測用についてはそれぞれ専用の分析計の項
い。図1は試料の濃度に応じて希釈率を自動的に切
を参照することとし,以下,主に工程管理用の分析
り替える機構があり,有機酸の濃度測定に適用した
計について述べる。
例である。図2は液体試料中のガス成分を気相側に
〈原理及び特徴〉
測定原理は,試料又は試料と試
移し,冷却,加熱後,ガス状態で測定する例で,有
薬との反応によって生じた成分の紫外又は可視領域
機溶剤中の塩素測定に用いられる。
における光吸収に基づくが,装置構成は分析部とサ
〈用途〉
ンプリング装置に大別される。
分析部は光学系の構造から,
シングルビーム方式,
前述の環境計測用のほか,工程管理用と
し て は 石 油 精 製 プ ラ ン ト の 硫 黄 回 収用 H 2 S 及 び
SO2,ボイラ用水中のシリカ,浄水設備での亜硫酸ナ
タブルビーム方式,2波長方式に分けられる。シン
トリウム,電解プラントの塩素ガスなどの濃度測定
グルビーム方式は構造が簡単で安価,小形化が容易
に使われている。また,濃度測定以外では,精糖プ
などの長所がある半面,光源の輝度や検出器の感度
ラントの糖液,食用油や化学調味料,浄水設備の上
変化の影響を受けやすい。ダブルビーム方式は光学
水や工業用水などの色度測定にも適用されている。
系がやや複雑になるが,光源,検出器,増幅器など
の変動影響を受けにくく,図1のように,波長選択
を光学フィルタの代りに回折格子を用いると,波長
の選択が容易にでき,波長純度を必要とする測定に
150
紫外光吸収 可視光吸収 シングルビーム方式 ダブルビーム方式 2波長方式 UV/VIS
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.1(2)
プロセス用・現場用赤外線分析計
Infrared analyzer for process use
〈原理〉
一般に異なった原子から成る分子(たと
されている。
えば一酸化炭素CO,二酸化炭素CO2など)は,それ
〈特徴〉
ぞれ固有の波長の赤外線を吸収する性質をもってい
て,
る。この特性を利用して気体(または液体)の濃度
(1)安定性の高い連続測定が可能で,保守性に優
を選択的に測定する方法が,非分散形赤外線吸収法
れている。
でありプロセス用の連続濃度分析計として多く用い
(2)低濃度から高濃度測定まで試料セルの長さを
られている。図1に,その代表的な基本構成をあげ
選ぶことにより基本構成を変えずに対応できる。
る。光源,回転セクタ,光学フィルタ,セル部(試料
(3)測定成分を封入した検出器の選択により,い
セルと比較セルから成る),検出器,増幅器,指示計
ろいろな測定成分に対して高い選択性が得られる汎
から成り,光源部から照射された二つの赤外光束が
用性の高い分析計が供給できる。
回転セクタで断続光となり光学フィルタを透過した
などがあげられる。表1に測定成分とその測定範囲
後,一方が試料セル,他方が比較セルを透過し検出
の例を示す。
器に入射する構成が一般的である。原理的には,試
〈用途〉
料セルに導かれた試料ガス中(又は試料液中)の測
セスの監視及び制御用,また石油化学プラントでの
定成分の濃度に対応して検出器に達する試料光束の
品質管理やモニタリング,さらには漏えい監視など
光量が変化し,変化の生じない基準光束との差に比
安全管理面からの利用など,広い分野で幅広い目的
例した信号が検出器の出力としてとり出され,増幅
のために用いられている。また現場設置の場合には
して測定成分の濃度として指示される。また検出器
防爆形が必要となる場合があり,保守の安易な汎用
は,測定成分を一定分圧で封入したものが多く用い
性のある防爆形分析計として制御用などに多く用い
られる。さらに干渉フィルタとして多層膜の光学フ
られている。その他,液体測定用として水中の油分
ィルタを用いるなど測定成分に対する高い選択性が
測定などにも利用されている。
非分散形赤外線分析計の大きな特徴とし
通常,ガス分析計として,煙道及びプロ
得られるよう工夫されている。また,近年はそうし
た基本原理をもとに各社独自に工夫し,干渉補償用
検出器を用いた低濃度測定用分析計,単一光束系の
分析計,多段式検出器や複数の干渉フィルタを用い
た多成分測定用分析計など用途に応じた機種が開発
151
赤外線分析計 ガス分析計 干渉補償用検出器 多成分測定 IR
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.1(3)
プロセス用・現場用熱伝導度式ガス分析計
Thermal conductivity gas analyzer for process use
〈原理〉
熱伝導度式ガス分析計は.ガスの種類に
の回路に電流が流れる。この電流が測定ガスの濃度
より熱伝導率が異なる性質を利用して,混合ガス中
に対応するため,指示計はガス濃度を指示する。
の特定成分を測定するものである。
〈特徴〉
試料セルは,図1のように,金属ブロックと金属
熱伝導度式ガス分析計は,ガスの熱伝導
率の差を利用し,ガス濃度を測定するため,ガスの
と絶縁して張られた細い熱線(通常は白金線)とで
種類に関係なく,熱伝導率の差によって測定される。
構成されている。熱線に一定の電流を流すと,熱線
このことは,試料ガスの成分による選択を行ってい
はその抵抗に応じて発熱し,一定の温度になる。試
ないことを意味しており,したがってガスの種類が
料入口からガスを流すと,熱線で発熱した熱はガス
2成分の場合,又は,共存ガスの組成変化が少ない
を媒体として,ガスの熱伝導率に応じた熱量を金属
場合にのみ使用できる。しかし,熱伝導度式ガス分
ブロックに伝達する。したがって,ガスの熱伝導率
析計は構造が簡単で単純堅ろうで,故障し難いこと
が大きければ熱線の熱を金属ブロックに多く伝達し,
から,プロセス用・現場用分析計として適したもの
熱線の温度は低くなる。また,ガスの熱伝導率が小
といえる。
さければ,熱線の熱の伝達量が少なくなり,熱線の
分析計の最低測定範囲は,測定ガスとその他の共
温度は高くなる。このようにガスの熱伝導率の差に
存ガスとの熱伝導率の差によりきまり,差が大きい
より,熱線の温度が変化する。この温度変化(熱線
ほど低濃度の測定ができる。共存ガスを空気とした
の抵抗値の変化)を測ることにより,ガスの濃度を
ときの最低測定範囲は水素0∼1%,二酸化炭素0
測定することができる。
∼10%,二酸化硫黄0∼5%,アンモニア0∼20%,
実際にガス濃度を測定する場合は,図2に示すよ
塩素0∼5%である。
うなブリッジ回路などを用いる。標準セル及び試料
〈用途〉 (1)水素計は,炉ガス管理用,食塩電解
セルには熱線が,対照側には固定マンガニン抵抗器
プラント用,アンモニアプラント用などに。
が,ブリッジに組まれており,その両端に,定電流
(2)二酸化炭素計は熔鉱炉用ガス,ボイラ排ガス,
電源が接続されている。いま,標準セルに標準ガス
燃焼管理用などに。(3)二酸化硫黄計は焙焼炉用,
を,試料セルに試料ガスを流すと,標準側熱線の温
硫酸プラント用,脱硫装置などに。
(4)アンモニア
度に対し試料側熱線の温度が,ガスの熱伝導率に応
計はアンモニアプラント用などに。
(5)塩素計は食
じ変化する。その結果,試料側熱線の抵抗が変化し,
塩電解プラント用などに使用されている。
ブリッジに流れる電流のバランスがくずれ,指示計
152
熱伝導度式ガス分析計 ブリッジ ガスの熱伝導率
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.1(4)
プロセス用・現場用密度式ガス分析計
Density measuring gas analyzer for process use
〈原理〉
薄肉円筒の共振周波数が流体密度によっ
振動面の汚れなどによって変化せず,ガス密度に対
て変化する性質を利用したものである。図1に原理
応して変化する。したがって2つのモードを選び,
を示す。
その共振周波数の比Rを測定し演算することにより
円筒を流体中で振動させると周囲の流体も一緒に
振動し円筒から見れば,周囲の流体は慣性負荷とな
流体密度を測定することができる。
主なガスの密度,比重を表1に示す。
って円筒の見掛け上の質量が増え共振周波数が変化
〈特徴〉
する。この変化量は流体密度の関数となるので共振
m3の検出感度で測定できる。またある条件を設定す
周波数を測定することにより流体の密度を知ること
ることにより,測定ガス成分と測定ガス密度との間
ができる。原理を(1)式に示す。
に一定の関係式が成立すれば3成分混合ガス中の1
(i,j)
f
=(1/2pa)
[{Eg∆
(i,j)}/{q(i,j)
(1−r2)}]
成分率測定も可能である。
(1+aT){1+blog(t/t0)}………(1)
振動方式のため,ガス密度を0.
0001kg/N
応答速度は,測定ガス流量0.5r /minにおいて
(i,j)
f
:i,j次モード円筒共振周波数。
90%,10秒以下である。
E:縦弾性係数。r:ポアソン比。q(i,j):密度(共
〈用途〉
都市ガス製造プラント,石油化学プラン
振子密度+円環i,j次モードの当価流体密度)。a:
トにおいてガス密度,比重,分子量等を測定するこ
共振周波数の温度係数。b:経時変化率係数。T:
とによりプラントの運転のコントロール,監視を行
温度。t:経過時間。t0:初期時間。a:円筒半径(内
い安定したプラント運転が可能である。
径)。∆(i,j):i,j次モード周波数定数。g:重力
燃焼ガス(ブタン,プロパンと空気を混合する)
加速度。
の熱量測定,コントロール用として使用されており
薄肉円筒の材料には耐食性を考えステンレス材を
省エネルギーにも役立っている。ボイラ,炉などの
用いている。また薄肉円筒振動子の温度係数や振動
燃焼管理においてCO2濃度測定にも古くから利用さ
面の汚れによる密度センサの誤差を極力少なくする
れている。
ため,多重モード自励発振方式を用いている。
(2)式に多重モード原理式を示す。
R=fi/fj={(qj/qi)
(∆i/∆j)}1/2 ………(2)
R:共振周波数比
すなわち,共振周波数の比Rは,温度,経時変化,
153
密度計 円筒振動式 多重モード発振 成分率測定 都市ガス
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.2(1)
プロセス用・現場用液体クロマトグラフ
Liquid chromatograph for process use
〈原理〉
号にして,データ処理器に送るのである。
薬品など製造ラインから供給される試料の多くは
〈特徴〉
混合物で,含まれる成分及びその比率・量を知る必
医薬品,農薬,化学工業品,食品等の製造ライン
要性から,液体クロマトグラフは,分離と分析を同
より,自動サンプリングを行い,ろ過,希釈等試料
時に行える特性が注目されている。
の前処理をし,測定後送られるデータにより,品質
プロセス用液体クロマトグラフの全体の流路は,
図1に示す通り,大別して,サンプリング機構,ろ
過機構,希釈機構と液体クロマトグラフで成り立っ
ている。
管理や製造ラインの正常運転の監視等に役立て,無
人化による自動運転を行うものである。
製造ラインより供給される試料で非溶解物が含ま
れている場合,ろ過機構内フィルタ(0.
45ミクロン)
サンプリング機構は,DCS又はコンピュータ等の
によりろ過を行い,非溶解物の除去を行う。なお,
指示により製造ラインからのサンプリングを行うも
ろ紙はロール状に巻かれており,一回ろ過を行うと
ので,昼夜(24時間)いつでもサンプリングが行え
次に新しいろ過面が自動的に供給され,一巻のフィ
る。
ルターで600回のろ過が行える。
ろ過機構は,分析に不適切な物質を除去するもの
また,製造ラインより供給される試料は,濃度が
高く液体クロマトグラフ等による分析に適さない場
である。
希釈機構は,試料を分析に適した濃度に希釈し,
合が多いため,希釈機構により試料の希釈を行う。
インジェクタのループ状計量管で計量後,液体クロ
しかし分析結果が測定範囲に入らない場合は,試料
マトグラフに送っている。
の注入量を調節する。この注入量の増減だけでは測
カラムは恒温槽内に設置している。試料中の成分
定不能のときは,希釈率を変えて行い,適当な測定
は,個々の分子量,溶解度,極性などの違いからカ
範囲に入るまで測定を行う。
ラム内の移動速度が異り,速い順序で,カラムから
以上,試料のサンプリング,ろ過,希釈,計量,注
溶出する。
入,分離,検出,データ処理し,測定結果の転送ま
検出器は,紫外線吸収検出器,可視光吸収検出器,
示差屈折計等が一般的に用いられ,カラムから溶出
した成分が,各検出器のフローセルを通過するとき
で一貫して行うものである。
装置全体は,厚板で覆い,防水及びエアーパージ
による防爆構造にしてある。
に生ずる吸光度,屈折率等の変化を測定し,電気信
154
プロセス用・現場用液体クロマトグラフ 紫外線吸収検出器 ろ過 示差屈折計 LC
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.2(2)
プロセス用・現場用ガスクロマトグラフ
Gas chromatograph for process use
〈原理〉
プロセス用ガスクロマトグラフは図1の
カラムは測定成分に完全に分離し,かつ分析時間
ような構成からなるシステム装置で,組成の判明し
をできるだけ短くすることが要求される。また特性
ているプロセスサンプルを一定周期で長期間,定量
は長期にわたり安定していることが必要である。
分析するものである。サンプルとしては,気体はも
ちろん液体でも気化し得るものは分析可能であり,
また多成分を高感度で分析できるため,各種プラン
トに幅広く使われている。
各機器について以下に概説する。
検出器は長期安定性にすぐれている,熱伝導度形
(TCD)と水素炎イオン化形(FID)の2種が一般に
使用されている。
(3)リードアウト:アナライザのバルブ駆動,サン
プリング装置の流路切換などの信号を一定周期でシ
(1)サンプリング装置:プロセスラインからサンプ
ーケンス的に出力するプログラマ部,検出器からの
ルを導入し,ダスト,水分,ミスト,タールなどを
クロマトグラムをピークハイト方式あるいはピーク
除去して,清浄なサンプルをアナライザに供給する
積分方式で処理する波形処理部,クロマトグラムあ
装置。この処理を長期安定に,かつ時間遅れをでき
るいは波形処理後の成分濃度値を記録する記録計か
るだけ少なくするため,プラントおよびサンプルに
らなる。プログラマ部,波形処理部を一体にし,マ
合わせて最適なものを設計する必要がある。
イクロプロセッサで処理するものが一般に用いられ
(2)アナライザ:恒温槽,バルブ,カラム,検出器
から構成されている。危険場所に設定されるため,
ほとんどのものは耐圧あるいは内圧防爆構造である。
恒温槽はメタルブロック式かエアバス式であり,
測定サンプル,使用カラムによって決まる一定温度
に±0. 1℃程度の範囲でコントロールされる。
ている。
〈特徴〉
(1)選択性が良い。サンプル中の他の成分
の干渉を受けない。
(2)測定対象が広い。
(3)高感度
である。TCDで0∼0.1%,FIDで0∼10ppm
測定
範囲が通常可能である。
(4)間欠測定である。分析周
期は0.5∼60分程度であるが,周期短縮の方向に進ん
バルブ,特にサンプルバルブは一定量のサンプル
でいる。(5)再現性が良い。通常仕様ならば1%/フ
を再現性よくキャリアガスラインに注入するための
ルスケールは得られる。
(6)サンプリング装置が必要
ものである。方式としてはスライド式,ダイヤフラ
である。(7)アナライザは防爆構造である。
ム式などがあるが,いずれも可動部があり,サンプ
〈用途〉(1)受入原料の成分測定(2)製品中の不純
ルとの接触による腐食などの問題により寿命が他の
物測定(3)装置の異状監視(4)公害監視(5)装置内
部品に比べて短い。
の中間工程の成分測定など
155
定量分析 カラム 防爆構造 ガスクロマトグラム GC
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.2(3)
プロセス用・現場用蛍光X線分析計
X-ray fluorescence spectrometer for process use
〈原理〉
蛍光X線分析法がプロセス用・現場用に
セスの製品を管理する手法として非常に多く採用さ
適用された例は,多岐にわたる。ここでは亜鉛めっ
れている。これらを業種別にみると以下の如く,各
き鋼板のプロセス用装置をとりあげて説明する。
目的別に機種がある。
励起X線源として,50kV印加されたX線管を用い
鋼板上にめっきするラインは,溶融亜鉛めっき,
亜鉛めっき鋼板に照射すると,めっき表面から亜鉛
電気亜鉛めっき,錫めっき,クロムめっき,合金め
元素特有の波長を持つ蛍光X線が発生する。亜鉛め
っきなどがあり,鋼板上のめっき付着量の表面と裏
っき付着量と蛍光X線強度の間には,図1のような
面の両面を測定することに利用されている。さらに
検量線が得られる。測定結果は,直接g/m2単位でデ
めっき液の成分やイオン濃度のオンライン測定など
ィジタル表示器及び記録計等に表示される。この装
にも利用されている。またこれらと多少異なるが,
置の構成図を図2に示す。
鋼板上に塗布された有機膜である塩化ビニールの塗
〈特徴〉
X線管を採用しているので,励起X線が
布量をコンプトン散乱線を利用して測定し,製品の
高出力であり,また検出器も高計数できるイオンチ
安定化,コストの低減化を実施している例もある。
ェンバーを採用しているので,早い応答性をもって
電磁気関係では,カセットテープに代表される高分
いる。幅方向約30mmの測定面積は,鋼板のストリッ
子フィルム(PETフィルム)上に塗布されている磁
プ幅(約1200mm)に比して小さいので,幅方向のめ
性物質の厚さをオンラインで測定することによっ
っき付着量分布測定が可能である。ストリップの振
て,低コストで品質の良い製品が得られるようにな
動または,鋼板厚み変化による測定ヘッドとストリ
ってきた。
ップの距離が±2mm変化しても測定誤差は小さ
セメント生産工場では,生産ラインのミル出口か
い。鋼板温度は,最大260℃まで適用可能である。測
ら試料を自動採取し,セメント生産に必要な成分を
定範囲は亜鉛めっき付着量で,0∼400g/m2(片面)
自動的に蛍光X線分析計で測定し,その結果をミル
までである。この測定方式の統計精度は,r=0.3g/
前の定量原料供給器に結合し,原料のコントロール
2
2
m (at 200g/m ,測定時間0.5秒)である。また,バス
をすることにより良いセメントの生産のみならず燃
ライン変動±2mmに対して+0∼−0.9g/m 2であ
料の節減に大きく寄与している。
る。板端検出限界は30mmとなっている。
〈用途〉
X線管または,放射性同位元素を用いて
非破壊で非接触で測定する蛍光X線分析法は,プロ
156
蛍光X線分析法 X線管 高計数 付着量分布測定 非破壊・非接触
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.2(4)
プロセス用・現場用タイトレータ
Titration for process use
〈概要〉
容量法(滴定法)は古くから用いられて
って,滴定速度の制御,終点の検出など細やかな繰
いる分析法であるにもかかわらず,定量分析の花形
作が必要になる。近ごろ,マイクロコンピュータ搭
的地位を保っている。タイトレータは,分析者がビ
載のタイトレータが多く,ソフトウェアの開発も進
ュレットと指示薬を用いて行っていた容量分析を機
み,熟練した分析者と同様の滴定操作が可能となっ
器が自動的に行う自動滴定装置である。
ている。
容量法は,目的成分と反応する溶液を選び,目的
手分析の滴定分析の手順を図2に示す。この手順
成分と反応するのに必要な既知濃度の溶液(滴定液)
の全部又は一部を自動化した機器がタイトレータで
の容量を測定する方法である。この過程を一般に滴
ある。図2の手順の次に,洗浄工程を加え,一定周
定と呼ぶ。滴定反応は,一定の化学反応式に従うこ
期で繰り返すものが連続の全自動タイトレータであ
と,当量点にて反応が完結することの2条件を満た
る。例として図3に,中和滴定を行う装置の構成図
す必要がある。そうすれば,滴定液の滴加が当量に
を示した。流路切換方法及び液送システムなどに種
達したとき,目的成分の濃度に対応する特性が急変
類による違いがみられるが,全体として,図2と大
する。この急変点が滴定の終点であり,これを何ら
差はない。
かの方法で知ること(終点検出)で,要した滴定液
滴定目的成分により滴定方法は異なるが,装置の
の容量を測定する。この容量から,目的成分の濃度
構成は,センサ,ポンプ,流路などの違いがあるの
を演算する。
みで,全体の流れは図3と同様となる。よって,イ
〈原理及び特徴〉
手分析では指示薬を用い,その
ージーオーダ的性格を持つ機種もある。
変色点から終点を知るのが一般的であるが,ほかに
採水形で,しかも毎回全流路に何かしらの洗浄が
も種々の方法が考え出されている。多くは,滴定反
なされるので,汚れは問題ないが,弁類の閉塞を防
応により,目的成分の濃度変化と対応して変化する
ぐため,サンプル中のSS分の除去,結晶,沈澱の生
適当な物理量を選び,その値をモニタする方法であ
成には注意を要する。
る。滴定分析を終点検出法別に分類すると,電位差
〈用途〉
滴定,電流滴定,導電率滴定,光度滴定,温度滴定
ム,マグネシウム,H2SO4中の鉄,また水中の硝酸イ
などに分けられる。これら物理量の急変点が滴定の
オンなど)の測定と用途は非常に広い。
めっき液中の
終点に相当する。図1は典型的な滴定曲線例である
遊離酸や金属成分,パルプ蒸解液中のアルカリ成分
が,個々の滴定反応により曲線は異なり,それに従
の測定など用途は極めて広い。
各種のイオン濃度(NaOH中のカルシウ
157
容量分析 自動滴定装置 滴定分析 終点検出 中和滴定
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.2(5)
プロセス用・現場用発光分光分析計
Emission spectorophotometer for process use
〈概要〉
プロセス用・現場用発光分光分析計は,
励起部と分光器は独立しておりその間を光ファイ
光電測光式発光分光分析装置を基本とし,プロセス・
バーで結び励起光を分光器に伝送する機構となって
現場用に設計された装置である。発光分光分析法は,
いる。光ファイバーの長さは5∼10mを用いる。励起
試料をアーク放電またはスパーク放電により励起発
光は光ファイバー分光器を通過後,受光部に入り電
光させ,その光を分光器により分け,スペクトロ線
気的信号に変換,積分器に入りデータ処理部にてデ
の有無と強度から試料に含まれる元素の定性,定量
ータ処理後,定性,定量分析を行う。励起を行うガ
分析を行う方法である。現場用としては,各工程現
ンは2種顆あり,1つはアルゴン照射のスパーク放
場に設置して,試料として切断が不可能なものや装
電を行い,鉄鋼及び鉄合金中の主要元素や炭素の測
置設置場所が設定できない所に対して,光ファイバ
定が可能で主に定量分析に,他の1つはアーク放電
ーを用い遠隔操作にて測定できる装置である。
を行い,定性及び半定量分析に,用いられる。ラボ
プロセス用としては,溶鋼の直接分析に用いられ,
用発光分光分析装置は設置する室の環境条件の温
転炉において形成される火点での発光スペクトルを
度,湿度の管理が必要であるが,現場用発光分光分
測定し,溶鋼中金属元素の分析を行っている。
析計の場合には,設置場所に限定されることなく,
〈原理〉
原子の外殻電子が外部からのエネルギー
温度,湿度,振動に対する管理は必要ない。また本
により,あるエネルギー準位からそれより高いエネ
体にはキャスターが付いており,どこにでも移動可
ルギー準位に上がることによって励起状態となりこ
能である。プロセス用発光分光分析装置については,
の励起状態から再び下のエネルギー準位にもどる際
火点観測部は直接溶鋼部に近接しているので耐熱,
に,エネルギーの差が光として放出される。この光
耐湿,耐震構造となっている。火点観測部より10m
を分光器に入れて光を分散させ,1つの焦点面上に
の光ファイバーを通って空調された室に分光器を設
波長に従って像が結ばれ,光電測光法により検出す
置する。
る。分光器には一例として凹面回折格子を用いたパ
〈用途〉
ッシェンルンゲマウンティング方式を採用し,焦点
置場,鋳物工場,鋼材販売店の資材置場等の各種鋼
距離0.5mか0.
75mを用いている。
材や合金,非鉄金属,非鉄合金等が集積されている
〈特徴〉
現場での異材判定や品質管理に用いられている。
現場用発光分光分析装置の励起部は,ハ
製鉄所の製鋼管理,鋼材保管現場,屑鉄
ンディタイプのガンを用い,試料に押し当てアーク
放電またはスパーク放電を発生させ励起を行う。
158
プロセス用・現場用発光分光分析計 光ファイバー アーク/スパークガン
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.2(6)
プロセス用・現場用比色分析計
Colorimetric analyzer for process use
〈原理〉
比色分析計は主として可視域の光線を用
に誤差を生じることのないように,適時,試料液の
いて,プロセス液中に含まれる特定成分による光吸
代りに上水を比色セルに流し,比色計の校正を自動
収を測定し,その濃度を測定したり,試料液の濁度
的に行う機構を内蔵している。
や色度を測定する装置である。
〈特徴〉
比色分析計は,製造プロセスその他の液
比色分析の原理に関しては,JIS K 0l15吸光光度
体の流れから試料をサンプリングして,連続的に試
分析通則などに記述されているので,ここでは省略
料の濃度や着色度,あるいは反応生成物を測定する
するが,波長選択に光学フィルタを用いた比較的構
ことができる。
造の簡単な光度計を用いている装置を比色分析計と
検出方式は,光学的に行うため試料の温度やpH,
称し,溶液を透過する光量と,標準溶液を透過する
共存塩類などの影響が少く,
安定した測定ができる。
光量と比較し,試料溶液中の特定物質の定量分析を
又,比色分析計は構造が簡単なため,比較的低価格
行うものである。
であり,繰作が簡単であり,メンテナンスも簡単であ
比色分析計の1例として,図1に水溶液中の次亜
る。
塩素酸ナトリウム濃度を連続測定するプロセス用比
〈用途〉
色分析計の構成例を示す。
試料はフィルタを通って,
ントロールに用いられる。
測定を妨害する浮遊物や濁りを除去してからオーバ
ーフロー槽に入り,
常時オーバーフローさせておく。
排水中の着色,メッキ液の濃度監視やコ
脱臭設備における次亜塩素酸の連続監視や濃度制
御に用いられる。
オーバーフロー槽内の試料は,送液ポンプにより比
測定波長を変えることにより,紫外線域から近赤
色計内の流通型比色セルに導かれ,比色測定された
外線域までの特異な吸収帯を持つ特定成分を測定し
のち排出される。次亜塩素酸イオン
(CrO−)
は近紫外
て製品の品質管理や生産管理に利用できる。
−
域に吸収帯があリCrO の濃度が吸収の強さと対応
することを利用し,試料をセルに連続的に流しなが
ら吸収の強さを測定し,得られた電気信号を増幅し,
次亜塩素酸ナトリウム濃度に換算して指示記録す
る。
比色計は連続使用中に光学系の汚れ,光源ランプ
の輝度変化,検出器の性能変化などのために,指示
159
プロセス用比色計 次亜塩素酸イオン
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.9(1)
プロセス用・現場用ポーラログラフ
Polarograph for process use
〈概要〉
プロセス用・現場用ポーラログラフは,
ある。
通常のポーラログラフを主体に,検水採取部,分析
(2)アノーディック・ストリッピング法 キャピ
部,試薬貯槽部,記録部などを設け,プログラマ部
ラリーの先端に一定量の水銀滴を吊下げ,分析対象
からの指令で全て自動的に作動するように設計され
物の半波電位よりもさらに負の電位に一定時間保
た連続分析装置である。マイクロプロセッサを使用
ち,水銀滴の表面に分析対象物を還元濃縮する。次
したデータ処理部を設け,分析部で得られた信号を
に水銀滴の電位をプラス側に掃引すると,半波電位
自動的に演算処理し,結果をプリンタで打ち出す方
の順に溶出してくる。そのときの酸化電流値を読
式のものもある。測定対象は主として重金属イオン
みとる。加電圧の方式は,通常,微分パルス法が用
であるが,原則的にポーラログラフで分析できるも
いられる。図2にこの方式により,得られるポーラ
のは全て測定対象になり得る。分析法としては通常
ログラムの一例を示す。水銀の使用量が極めて少な
のポーラログラフ法もあるが,最近では低濃度の場
く,感度も高いが,精度よく水銀を吊下げるための
合に有利なアノーディック・ストリッピング法(陽
機構がやや複雑になる欠点がある。
極溶出法)も採用されている。
〈用途〉
〈原理及び特徴〉
図1に流路の1例を示す。試料
重金属イオン(例えばCu2+,Pb2+,Cd2+,Zn2+)の
採取部でろ過された試料は,一定の水圧で試料計量
モニタとして使われているが,今後はメッキ工場に
管に導入され計量される。一方,試薬タンクより支
おけるメッキ液の監視など生産工程の中でも利用さ
持電解液がポンプ(P1)で試薬計量管へ導入され計
れようとしている。
主として工場排水,あるいは河川水中の
量される。次に両者は測定セルへ注入され,窒素ガ
スで除酸素された後,通常のポーラログラフ法又は
アノーディック・ストリッピング法により分析され
る。
(1)通常のポーラログラフ法 滴下水銀電極を用
いてプラス側よりマイナス側に加電圧を掃引し電流
値を読みとる。加電圧の方式は直流又は微分パルス
法が用いられている。構成が単純であり再現性もよ
いが,水銀の使用量が多く感度が低いなどの欠点が
160
プロセス用・現場用ポーラログラフ 陽極溶出法 除酸素 アノーディック・ストリッピング法
2. プロセス用・現場用分析機器
2.2.9(2)
プロセス用・現場用X線回折分析計
X-ray diffractometer for process use
〈概要〉
X線回折法は,回折角h,回折強度I,格子
面間隔dが計測値として得られる。これ等データの
組合せ方で,物質の定性,定量の他,ミクロンオー
され減衰してしまうからであり,白層厚さt は次式
で求められる。
力,ひずみ量,結晶化度,結晶粒度,硬さなどが測
−sinh
I
1n
2m
I0
I0;無窒化面の回折強度,
定出来る場合があり,しかも非破壊,非接触という
I ;白層のある場合の回折強度,
特長を有している。ここでは,X線回折でしか出来
m;白層の線吸収係数 h:回折角度
ダの深さを含む表面薄層に限定されるが,厚さ,応
t=
ない厚さ測定について,鋼の表面硬化法である処の
図2は測定ヘッドの概念図を示す。窒化膜厚さの場
窒化処理により生成される窒化膜厚さ測定装置をと
合の検出器はa(211)ピークと適当なバックグラウ
りあげて説明する。
ンド強度計測の2本で充分であるが,酸化スケール
〈原理及び特徴〉
厚さ測定を非破壊的に行えるの
の監視ないしは厚み測定用としての場合も含め3本
は渦電流,超音波,放射線後方散乱,蛍光X線分析
示した。当然の事ながら検出器としてPSPCであれ
法などあるが,材質の電磁気特性,密度,組成元素
ば,バスラインの上下変動の許容差を大きくする事
の混入などの理由で測定出来ない場合がある。窒化
が出来る。
処理法とは,鉄鋼材料を500℃程度の窒素ガス雰囲気
〈用途〉
にさらすと,表面から鋼中に窒素が拡散し,最表面
であれば以下の現場用X線回折分析が可能である。
薄層にあっては,FexZnyの化合物を生成する。
この層は,白層とも呼ばれ,HV1000以上もあり,
窒化膜厚さを例に述べたが,図2の装置
① 溶融Zn合金化度測定
② 化成塗膜厚さ測定
耐磨耗,耐食性に優れている。この白層厚さは窒素
③ 窒化膜厚さ測定
ガスの濃度,温度や処理時間に依存しており,炉内
④ 酸化膜厚さ測定とディスケーリング管理
での状況で厚みが変動する事がある。
⑤ 残留オーステナイト定量
図1に白層を含む拡散硬化層の金属顕微鏡写真とX
⑥ スキンパス圧延率測定
線プロフィルを示すが,白層厚さが薄い場合は,地
⑦ 連続軟化焼鈍管理
鉄からの回折線a(211)のピーク強度は明瞭に現れ
⑧ 圧延集合組織
るのに対し,白層がない場合のa(211)強度は著しく
⑨ 結晶粒度測定
低下している事が判る。これは,地鉄からの回折線
が白層というフィルム層を透過する際にX線が吸収
但し,実際の導入に際しては,他の方法との較正
を含めた検証が必要である。
161
X線回折法 厚さ測定 窒化鉄
2. プロセス用・現場用分析機器
2.7
プロセス用・現場用分析の複合装置(水道水用水質自動測定装置)
Water quality monitoring for water supply
〈原理〉
水道水用水質自動測定装置は,今迄人手
に頼っていた水道水末端の水質測定を連続的に測定
はビーズによる検知極の連続研磨を行っている。
センサチェック機能としては,pHセンサにpH7の
標準液を測定セルへ供給し電極の良否の判別が行な
する目的で作られた装置である。
測定項目としては,厚生省令第56号(水質基準に
われ,色度/濁度センサには試料水をろ過してゼロ水
関する省令)の中の重要な項目であるpH,濁度,色
を供給し,ゼロ点のズレを補正する機能が設けられ
度,と給水管管理指標の残留塩素,電気伝導率(導
ている。
電率),水温,水圧,の7項目である。
〈用途〉
上水道末端の給水栓や,団地,高層ビル
図1に装置の測定系統図の例を示す。
の受水槽など水質監視用に用いられる。測定項目は,
測定系統図において試料水は試料水入口より入り
下記の7項目の中から必要な項目を選択して装備す
水圧センサで水圧を測定した後分枝され各々の減圧
弁で減圧して一方は水温,電気伝導率,残留塩素,
ることが出来る。
測定項目と方式の例
pHのセンサで各測定が行われて排水ラインへ排出
測定項目
測定方式
測定範囲
される。またもう一方は色度,濁度センサで色度と
水温
白金抵抗体方式
0∼50℃
濁度が測定されて排水ラインへ排出される。
濁度
色度
透過光方式
0∼5mg/L
2波長吸収方式
0∼20DEG
各々のセンサで得られた信号は,変換器で,それ
を経由してテレメータを用いて送出される。
pH
残留塩素
また,濃度異常の場合はコントローラユニット内の
導電率
交流2極法
0∼50mS/m
異常識別機能でセンサ異常か,濃度異常かの判別が
水圧
静電容量法
0∼1MPa
ぞれの濃度信号に変換されてコントローラユニット
ガラス電極法
0∼12pH
ポーラログラフ法 0∼2mg/L
行われて,該当する異常信号が送出される。
〈特徴〉
水道水用の分析計は試料水が貴重な飲料
水であるので,本装置は少量の試料水で各々の測定
が精度良く行われるように工夫されている。
また水質測定の箇所が水道末端であるので無保守
で長期間安定した連続測定が行えるように,
色度/濁
度センサは自動ワイパ洗浄を行い,残留塩素センサ
162
水道水末端 色度 濁度 残留塩素
2. プロセス用・現場用分析機器
2.9
2.9.1
その他のプロセス用・現場用分析機器
蒸気圧計
Vapor pressure analyzer
〈概要〉
石油精製工業では,一般的な分析計の一
る。このノズル開口部の出口圧力が,その試料の蒸
つで,主にガソリンの重要な製品規格である蒸気圧
気圧に対応するので,絶対圧力変換器P/Iによって
を測定するために用いられる。
電流信号(4∼20mA DC)に変換され伝送される。
ガソリンの蒸気圧の大きいものは,貯蔵,運搬,
この方式は,試料を一定温度100°F(37.8℃)のも
その他の取扱いに当り,蒸発による損失を起こしや
とで,一定圧力でノズルから噴出させ,蒸気化したと
すく,また引火の危険性も高くなる。その反面,ガ
きの圧力から試料の蒸気圧を測定するもので,いわ
ソリンエンジンの始動を容易にするには,蒸気圧は
ゆ る 動 的 蒸 気 圧 法( Kinetic vapor pressure
ある程度大きいことが必要である。JIS K 2258にそ
method)と呼ばれるもので,JISに規定されているリ
の試験法が規定されている。
ード法(Reid vapor pressure method)とは相関が
〈原理及び特徴〉 JISによると「あらかじめ冷却し
ある。
た試料を満たした定められた容器を,37.8℃の恒温
〈用途〉ガソリン混合装置や揮発油安定化装置など
水浴中に浸し,圧力が平衡に達するまで,定期的に
で用いられ,測定範囲は,0∼0.1MPaAbs,又は0∼
取り出して振り,取り付けられた圧力計の読みを蒸
0.15MPaAbs,等がある。又設置場所は危険場所と
気圧とする。」とあるが,プロセス分析計では,種々
なり,
装置としては,
d2G4の防爆の検定に合格したも
の制約から,このままを取り入れることができず,
のを使うことが望ましい。また使用する上では,リ
この方法にある程度似た方式,サンプルを加圧した
ード法による手分析値との相関を求めることが必要
ノズルから噴出させノズルの背圧を測定する方式が
である。
とられ図1及び図2にこれらの原理図を示す。図2
の方式を採用した国産の分析計の概略のフローシー
トを図3に示し,説明する。
ストレーナY1を経て,レギュレータ(圧力調整器)
VGで所定の圧力(通常0.3MPa)に調整された後,恒
温槽に入る。恒温槽には,触媒体として不燃性絶縁
油Bが入っており,この温度が37.8℃に保たれてい
る。試料は,熱交換器Eを通過する間に,温度が平
衡に達し,ノズル部Nから高速で噴出され蒸気化す
163
ガソリン ノズル JIS防爆 動的蒸気圧法 リード法
2. プロセス用・現場用分析機器
沸点計
2.9.2
Boiling point analyzer
〈概要〉
石油精製工業では,一般的な分析計の一
スコ内に入る。バルブV2が閉じて,ヒータがONとな
つで,ガソリン,灯油,軽油などの製品規格である
り,フラスコが加熱される。蒸発した試料は,冷却
蒸留点を測定するために用いられる。石油製品は多
水を通した冷却管を経て,液化し,検知管に滴下す
成分の炭化水素の混合物であり,蒸留の範囲でガソ
る。検知管に滴下した試料は,U字管に入り,留出
リン,灯油,軽油などに分けており,蒸留試験は石
量に応じて上昇する液面を液面検出器で検出する。
油製品の基本的な製品規格の一つであり,JIS K
液面検出器はイメージセンサで構成され,液面の
2254(燃料油蒸留試験方法)にその試験法が規定さ
上昇は連続的に記憶される。あらかじめ設定された
れている。
留出量に対する留出温度をコントローラで計算する
〈原理及び特徴〉
沸点計(又は蒸留点計)には間
とともに,逆に留出温度に対する留出量をコントロ
欠式と連続式があり,間欠式では試験室の試験と同
ーラで計算し,コントローラから出力することがで
じく試料をバッチ式に採取し,常温から加熱蒸留し
きる。全試料の蒸留が終了すると,留出温度は下り
任意の留出点における留出温度を測定する。連続式
はじめる。その点をE. P.(終点)として検出し,記
の沸点計は,連続的に試料を採取しある決められた
録し,ヒータをOFFにし,バルブV4を開き,蒸留液
留出点の留出温度を連続測定する。連続式の方が応
を排出し,一工程が終了する。以上の動作を繰り返
答時間が短く,監視又は制御留出点が1点でよい場
し測定する.
合は便利である。一方,間欠式の場合は,通常15∼
このほか,プロセス用ガスクロマトグラフィーを
30分の周期を要するが,5∼6留出点の留出温度を
用い,その保持時間と応答値をデータ処理し,蒸出
見ることができる特長をもっている。いずれの場合
曲線を作成する方法がある。この方法も完全自動化
も試験室のJISによる試験結果と照合して,使用する
された装置として市販されている。
必要がある。ここでも国産のものが多く使われてい
〈用途〉主として常圧蒸留装置,ガソリン混合装置
るので,その測定原理について説明する。
などで用いられるが,最近では,接触流動分解装置
図1はその測定系統図である。試料はフィルタ,流
などでも用いられている。いずれの場合も,危険な
量計,バルブV1を経て計量カップに入る。計量カッ
場所の設置となるものについては,
防爆構造(d2G4)
プ内で約50mrに計量され,それ以上の試料はオー
のものを使うことが望ましい。
バーフローラインを通って排出される。バルブV1が
閉じ,バルブV 2が開くと,計量された試料がフラ
164
蒸留試験 蒸留点 留出点 液面検出器
Fly UP