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欧州エネルギー/環境 サマリー

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欧州エネルギー/環境 サマリー
欧州エネルギー/環境
サマリー
JETRO(日本貿易振興機構)
ウィーン・センター
2006 年 9 月
欧 州 エ ネ ル ギ ー /環 境 サ マ リ ー
2006 年 9 月 号
目次
はじめに ............................................................................................................................ 2
Ⅰ.気候変動問題.............................................................................................................. 3
1.ポスト京都議定書(2013 年以降)の議論 .............................................................. 3
2.EU-ETS.................................................................................................................. 3
3.JI・GIS .................................................................................................................. 4
4.その他 ..................................................................................................................... 4
Ⅱ.再生可能エネルギー、従来型エネルギーの新しい利用形態 ....................................... 6
1.風力 ........................................................................................................................ 6
2.太陽光・太陽熱....................................................................................................... 6
3.バイオ燃料.............................................................................................................. 6
4.地熱 ........................................................................................................................ 8
5.その他 ..................................................................................................................... 9
Ⅲ.石油・天然ガス .........................................................................................................10
1.OPEC ....................................................................................................................10
2.エネルギーセキュリティ........................................................................................17
Ⅳ.電力 ...........................................................................................................................19
1.M&A......................................................................................................................19
2.原子力 ....................................................................................................................20
Ⅴ.環境問題 ....................................................................................................................21
1.大気汚染 ................................................................................................................21
2.水質汚濁 ................................................................................................................21
3.廃棄物・リサイクル...............................................................................................21
4.欧州環境規制 .........................................................................................................22
5.アスベスト.............................................................................................................22
6.その他 ....................................................................................................................22
Ⅵ.新興経済国 ................................................................................................................23
1.中国 .......................................................................................................................23
2.ロシア ....................................................................................................................23
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JETRO Wien
欧 州 エ ネ ル ギ ー /環 境 サ マ リ ー
2006 年 9 月 号
はじめに
本レポートは、欧州でのエネルギーおよび環境関連トピックを、JETRO ウィーンが取
りまとめたものです。特に、日本のメディアでは取り上げられることが少ない、欧州内部
の情勢、および日本以外の国と欧州の関係を中心に、最新のトピックを毎月まとめており
ます。
JETRO ウィーンは欧州の JETRO 拠点のひとつとして、オーストリアのほか、ブルガ
リアやスロバキア、旧ユーゴ諸国を管轄しており、主に中・東欧のビジネス情報を調査・
発信しています。また、JETRO ウィーンでは欧州のエネルギー・環境情報に関する調査・
情報発信も行っております。ウィーンには OPEC や IAEA(国際原子力機関)の本部があ
り、エネルギー関連の情報が集まりやすいほか、欧州とロシアのエネルギー企業の活動が
活発な中・東欧地域の情報も集積しています。
もともとウィーンは西欧のなかでも最も東に位置し、東欧のみならず中東やロシアなど
とも交流が深く、欧州と外国の接点として発達してきました。JETRO ウィーンではこの
ような背景を踏まえ、日本から注目が集まりにくく、情報が不足しがちな以下の 3 点に焦
点をあて、欧州政府・企業のエネルギー・環境戦略を分析・レポートしています。
① 日本以外の第三国と EU の関係
② 日本以外の第三国と OPEC の関係
③ EU 内部の情報
それぞれの項目における 2006 年 9 月の注目の動きとして、以下のトピックをとりあげま
す。詳細は参照ページを御覧下さい。
① 気候変動問題を軸に、欧州と中国が結びつきを強めている。温家宝首相はブレア英
首相と会談し、気候変動問題で英中がより緊密な協力体制を築くことで合意した。
CO2 排出量ゼロの石炭火力発電所建設のほか、油田の共同開発や航空エンジンの売
込みなど、多様な分野で英中間のビジネスが活性化しつつある(23 頁参照)。
② 最近の原油価格下落を受け、OPEC は非公式協議を開催し減産を検討している。ナイ
ジェリアとベネズエラは一足早く自主減産を表明したが、その他の加盟国は追随し
ておらず、今後の協議の行方、特に OPEC 最大の産油国であるサウジアラビアの動向
が注目されている(12 頁参照)。
③ EU は、9 月 26 日に新たな廃電池指令を発表した。新指令は、2012 年および 2016 年
までの過去 3 年間における回収率の目標をそれぞれ 25%、45%と定めている。また、
新指令では既に 2000 年に禁止されている水銀以外にもカドミウムの使用が禁止され
る予定である(21 頁参照)。
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2006 年 9 月 号
Ⅰ.気候変動問題
1.ポスト京都議定書(2013 年以降)の議論
カナダのディオン前環境相は、気候変動問題に関するレポートを発表し、京都議定
書離脱やアジア・パシフィック・パートナーシップ(APP)への参加を示唆してい
るハワード現政権を批判し、国内排出権市場創設などにより、京都議定書の削減目
標達成は可能との見識を示した。また、2013 年以降、米国やインド、中国を巻き込
んだ新たな温暖化ガス排出削減のための国際協力体制を構築する必要性を示し、カ
ナダがこの問題で主導的な役割を果たすべき、とコメントした。
欧州議会では 9 月中旬、緑の党(Greens)が報告書を発表し、2013 年以降、航空・
海運業界を対象とした国際的な CO2 排出規制枠組みを設立するべきであると指摘し
た。同報告書では、必ずしも同業界を EU-ETS に編入する必要はないとしながらも、
世界的に増加し続ける同業界からの排出量を何とかして抑制しようとする方針を示
している。
2.EU-ETS
ポーランド政府は 9 月初旬、排出権取引関連の法改正の一環として、EU-ETS 対象
施設が、想定以下の生産量(電力や紙、セメントなど)に起因する余剰排出権の売
却を認めない方針を明らかにした。このため、国内産業界からは強い反発を招き、
欧州委員会も EU 指令に反するとして抗議した。このため、政府は 9 月中旬には早
くも方針を撤回することとなった。
ルーマニア政府は 9 月初旬、2007 年の国別割当計画(NAP)と、2008∼2012 年の
割当計画(NAP2)を発表した。今後は欧州委の審査・承認手続きを経る予定だが、
2007 年は 222 施設に対し計 8,132 万トン、2008∼2012 年には 221 施設に対し年間
計 9,148 万トンを割り当てる予定。また、EU-ETS 対象施設の京都メカニズム利用
上限が割当量の 10%と設定された。
オランダでは、発電事業者に対して必要量の 85%しか割り当てない、とする NAP2
のドラフト案が 9 月初旬、下院議会で否決された。現在も議会で審議中だが、議会
承認を経て欧州委に提出されるのは 10 月以降になる見込み。
国際排出権取引機構(IETA)は 9 月中旬、
「2012 年以降は、EU-ETS の目標遵守の
ための CDM/JI からの排出権を制限するべきではない」と勧告した。EU-ETS 第 2
期間は、各国とも NAP 上、CDM/JI からの排出権の利用量を制限しているが、これ
を EU-ETS 第 3 期間からは無制限にすることで、より排出権取引を活性化すること
が背景にある。IETA はまた、最近急速に注目を集めている、米国の排出権取引市場
にも言及し、カリフォルニア州や RGGI(北東部)の排出権取引制度と EU-ETS を
リンクする作業を進めることも提案した。
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3.JI・GIS
ルーマニアの NAP2 によると、2008∼2012 年の JI リザーブ(ダブルカウント防止
用の排出枠で、原則として EU-ETS 対象施設では、これ以上の排出権を創出する JI
は実施不可能)は、5 年間で 535 万トンと定義された。
ブルガリアは 9 月中旬、フィンランドとは 10 月中に、ドイツとは今年末までに JI
に関する MOU(覚書。政府間で締結しないとブルガリアでは JI 実施不可。)を締結
する方針と発表。ブルガリアは現在オランダ、オーストリア、デンマーク、スイス、
日本、スウェーデン、世銀(PCF)の 7 ヵ国・組織と MOU を締結している。
ベラルーシは 9 月下旬、京都議定書批准に必要な手続きを全て完了したと発表し、
11 月の COP/MOP で正式に批准する予定。同国は気候変動枠組条約上は「先進国」
(Annex1 国)であるため、議定書批准後は、同国での JI 実施が可能になる。同国
は基準年(1990 年)の GHG 排出量 1 億 1,200 万トンに対し、2004 年は約 5,000
万トンしか排出しておらず、2008 年以降も年間 3,500 万トン程度しか排出しないと
みられており、有望な JI・GIS ホスト国として期待されている。
オランダは 9 月中旬、世銀と立ち上げたファンドを通じて、ウクライナでの水力発
電リハビリプロジェクトによる JI 案件で排出権買取契約(ERPA)を締結したこと
を明らかにした。世銀関連のファンドがウクライナで ERPA を締結するのは初めて。
計 100 万トンの排出権がオランダに移転される予定。
ロシアは 9 月上旬、温暖化ガスインベントリ(排出管理簿)の最終版を国連に提出
し、京都メカニズムを利用した国際的な排出権取引へ向けて大きく前進した。今後
は省庁間の協議により、国内の排出権取引手続き(排出権関連法案の成立など)を
進める必要があり、JI プロジェクトに対して LOA が発行されるのは来年以降になる
見通し。
一方、ロシアはドイツと共同で 9 月 14 日、環境政策に関する政府間会合を開催し、
JI ハンドブックの作成や JI の法手続き整備の促進など、多くの分野においてロシア
−ドイツ間で協力を進めることが確認された。
JI 監督委員会(JISC)は第 4 回会合を 9 月中旬に実施し、JI トラック 2 の承認手続
き整備作業を終え、10 月 26 日から正式に承認手続きを開始する、と発表した。同
会合で JISC は、JI トラック 2 用の承認手続きのほか、ベースライン設定ガイドラ
インやモニタリング方法、PDD フォーマットなどを決定した。承認手続き費用とし
て、排出権 1 トン当たり、毎年 0.1 ドル(1 万 5,000 トン以上は 0.2 ドル)を JISC
が徴収することも決定した。
4.その他
欧州委は 9 月 5 日、EU 加盟国共通の新しい自動車炭素税を適用する案を支持した。
これまで加盟国間でばらつきが大きかった自動車登録税に代えて、自動車から排出
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される CO2 排出量に応じた年間走行税(Annual Circulation Tax)を導入する案が
提出されていた。
クロアチアは 9 月中旬、2010 年を目処に国内に排出権取引制度を導入し、EU-ETS
とリンクする方針を明らかにした。同国は 2007 年に EU 加盟を実現することを目標
に、昨年から EU 加盟交渉を続けている。また、国際的な排出権取引を可能にする
ため、京都議定書批准手続きを進めており、2007 年に批准する目標を立てている。
化石燃料発電施設からの CO2 排出量を低減することを目的とした「欧州化石燃料発
電ゼロエミッション・プラットフォーム」
(ZEP)は、CO2 の回収・貯蔵技術(CCS)
を EU-ETS に導入し、CCS プロジェクトに相応の排出権(EUA)を割り当てる計画
を、今後欧州委に提案する方針を明らかにした。
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Ⅱ.再生可能エネルギー、従来型エネルギーの新しい利用形態
1.風力
世界風力エネルギー協会とグリーンピース・インターナショナルは、「Global Wind
Energy Outlook 2006」を発表し将来の風力発電におけるポテンシャルについて調査
を行った。この報告書によると、各政府が中長期的な目標設定を行うことが不可欠
という条件で、2050 年までに世界の電力の 34%が、2020 年では 16.5%が風力発電
より供給が可能であると報告されている。さらに、その結果 2020 年までには 15 億
トンの CO2 が排出削減されるとも報告されている。
2.太陽光・太陽熱
ドイツのドレスデンで 9 月 4 日、第 21 回欧州太陽光発電会議が開催され、世界 95
ヵ国から約 2,700 人 が参加した。2005 年には、世界で 110 万 kW の太陽光発電設
備が導入され、最大はドイツの 60 万 kW で、日本 30 万 kW、米国 10 万 kW が続い
た。
スペインの建設大手アクシオナは 9 月 21 日、ポルトガル南部のモウラに世界最大規
模(発電容量 6 万 2,000kW、年間総発電量 9,100 万 kWh)の太陽光発電所を建設し、
2008 年にも運転を開始すると発表した。 総投資額は 2 億ユーロ(1kW 当たり約 48
万円)。
欧州太陽光発電協会(EPIA)とグリーンピース・インターナショナルが共同で発表
した報告書によると、2025 年までに太陽エネルギーによって 20 億家屋の電力供給
が可能であるという。また、太陽エネルギー発電は技術進歩や生産設備への投資な
どにより CO2 を排出しないクリーンエネルギーとして、電力市場における重要な技
術に成長したと報告されている。ただ、今後太陽エネルギー発電の拡大のためには
産業分野だけでなく政府の支援も必要であると述べられている。
ドイツの Michael Mueller 環境相は、Systaic 社での太陽電池設計センター開設に伴
い、建築物へ供給するエネルギー源の 1 番手は再生可能エネルギーであると述べた。
今後、新築構造物や既存建築物のエネルギー面での改修時には太陽エネルギー利用
が必要条件となると予想され、Systaic 社も太陽エネルギーと建築物の一体化をビジ
ネス構想として狙いを定めている。
3.バイオ燃料
スイスの Biopetrol Industries AG は、ロッテルダムにバイオディーゼル製造プラン
トの建設を計画している。生産能力はバイオディーゼルが年間 40 万トン、グリセリ
ンが同 6 万トン、運転開始は 2007 年第 3 四半期の予定。同社はドイツの Rostock
にもバイオディーゼル製造プラントを建設中であり、同社のバイオディーゼル生産
能力は 2008 年には年間 75 万トンに達する見込み。
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フランスの Veolia Environmental Services は、パリ近郊の Limay Porcheville にバ
イオディーゼル製造プラントの建設を計画している。生産能力は年間 6 万トン、原
料は使用済みの食用油、運転開始は 2008 年の予定。
ノルウェーのエネルギー企業 Norsk Hydro と製紙会社 Norske Skog は、木材を原料
としたバイオディーゼルの製造に関する FS の実施を計画している。両社は、FS の
結果が良好なものであれば、プラントを建設し 2012 年にも生産を開始したいとして
いる。
英国の化学メーカーINEOS の子会社 INEOS Enterprises は、スコットランドの
Grangemouth にバイオディーゼル製造プラントの建設を計画している。生産能力は
年間 11 万トン、運転開始は 2008 年の予定。同社は既にフランスの Baleycourt でバ
イオディーゼル製造プラント(生産能力:年間 11 万トン)を操業している。
スロバキアの Slovnaft と米国の Envien の JV である MEROCO は、スロバキアの
Leopoldov にバイオディーゼル製造プラントの建設を計画している。生産能力は年間
10 万トン、原料は菜種油、運転開始は 2007 年末の予定。
ドイツの BASF は、ベルギーの Feluy にある石化工場でイタリアの Neochim が今秋
からバイオディーゼルの生産を開始すると発表した。生産能力は年間 20 万トン、石
化工場でマレイン酸を製造する際に生じる廃熱が利用される予定。
英国の Argent Energy は、イングランド北西部の Ellesmere Port にバイオディーゼ
ル製造プラントの建設を計画している。生産能力は年間 15 万トン、来年初頭に建設
を開始する予定。同社は既にスコットランドの Motherwell で動物性油脂や使用済み
の食用油を原料としたバイオディーゼル製造プラント(生産能力:年間 4 万 5,000
トン)を操業している。また、同社はニュージーランドでのバイオディーゼル製造
プラント建設についても検討している模様。
ドイツ再生資源局は、同国の輸送用燃料に占めるバイオ燃料のシェアが 2006 年の
3.75%(推定)から 2030 年には 25%へ増加するとの予測を発表した。食物繊維等
のセルロースを原料とする次世代バイオ燃料の生産量が増加することで、シェアが
増大するとしている。同国のバイオディーゼル生産能力は、2005 年の年間 230 万ト
ンから 2006 年には同 340 万トンへと増加しているほか、エタノール生産能力も 2005
年の年間 90 万トンから 2006 年には同 100 万トンへと増加している。
英国の D1 Oils は 、燃料添加 材メーカー Lubrizol からイングラ ンド北東部 の
Merseyside にある燃料・潤滑油製造工場を購入した。購入額は 300 万ポンド(約 560
万ドル)だが、同社は更に 800 万ポンド(約 1,500 万ドル)を投じてバイオディー
ゼル製造プラント(生産能力:年間 11 万トン×2)と貯蔵施設(貯蔵能力:2 万 4,000
トン)を建設し、バイオディーゼルの生産・貯蔵・流通センターに改装する予定。
フィンランドの Neste Oil は、Honkajoki Oy 及び Findest Protein Oy と動物性油脂
の長期購入契約を締結した。同社は動物製油脂等を原料としたバイオディーゼルの
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生産を 2007 年夏から開始する予定。
オーストリアの Bio Diesel Vienna は、ウクライナの Ivano-Frankivsk にバイオディ
ーゼル製造プラントの建設を計画している。生産能力は年間 10 万トン、原料は菜種
油、投資額は 5,000 万ユーロ(約 6,300 万ドル)、建設開始は 2008 年の予定。
また、同社はウィーン近郊の Lobau でバイオディーゼルの生産を開始した。現在の
生産量は年間 9 万 5,000 トンだが、2008 年には同 40 万トンへ拡張する予定。
オーストリアの Bio Diesel Krems は、同国の Krems でバイオディーゼル製造プラ
ントの建設を開始した。生産能力は年間 6 万トン、投資額は 1,000 万ユーロ(約 1,260
万ドル)、運転開始は 2007 年 5∼6 月の予定。
ドイツの情報サービス会社 Oil World は、2006 年 10 月∼2007 年 9 月に EU 内で消
費される菜種油の約 63%がバイオ燃料の原料として利用されるとの予測を発表した。
同社は上記期間における EU 内の菜種油の消費量は、前年同期の 647 万トンから 716
万トンへと増加し、バイオ燃料の原料としての使用量も同様に 390 万トンから 450
万トンへ増加するとしている。また、輸入量も前々年同期の 4 万トンから 47 万トン
へと増加すると予想している。
欧州委は、バイオディーゼルの生産能力が 2007 年には年間 800 万トン、生産量は
450 万トンに達するとの予測を発表した。一方、バイオディーゼル市場と食料市場の
両方の需要を満たすだけの菜種を EU 内で生産することは難しいと指摘し、バイオ
ディーゼル製造プラントの分解能力を高める必要があるとしているほか、大豆油や
パーム油等の輸入量が増大するだろうと予想している。
フィンランドの Neste は、既存の精製事業とバイオディーゼル生産プロジェクトに
今後 10 年間で数百万ユーロを投資する計画を発表した。各国でバイオディーゼル製
造プラントを単独もしくは他社と共同で建設するとともに、バイオディーゼルの研
究開発を進める。同社は、2016 年には年間 200 万トンの生産能力を有する世界最大
のバイオディーゼルメーカーを目指すとしている。また、オーストリアの OMV の
Schwechat 製油所と、フランスの Total の Dunkirk 製油所に、共同でバイオディー
ゼル製造プラント(何れも生産能力:年間 20 万トン)の建設を計画しているほか、
米国カリフォルニア州でもプラント建設を検討している。また、同社は 2009 年以降
バイオガソリンを生産するため、フィンランド国営の Altia と年間 7 万 6,000 立方メ
ートルのエタノール購入契約を締結したことも発表した。
4.地熱
ハンガリー南西部にある Szentlorinc 市は、総額 128 億フォリント(約 4,700 万ユー
ロ)を投資し地熱発電所を建設する計画であると発表した。投資金額は、自己資金
の他ノルウェーファンドなどの再生可能エネルギー支援補助金から賄われる。発電
能力は 10MW で、市で必要な電力の 3 倍の能力を持ち、余剰分は売電される予定で
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ある。運転開始は、2007 年か 2009 年を予定している。
5.その他
ド イ ツ 連 邦 環 境 省 と ド イ ツ 連 邦 経 済 協 力 省 の 出 資 を 受 け 、 REN21(Renewable
Energy Policy Network for the 21st century)1が「Global Status Report for 2006」
を公表した。これによると、2005 年は再生可能エネルギーへの設備投資が 2004 年
の 300 億ドルから 380 億ドルまで上昇し最高記録を更新したことが分かった。中で
もドイツと中国がそれぞれ 70 億ドルと最も投資を行っている。その他、再生可能エ
ネルギーにおける選別指標を添付資料に示す。
オーストリアにおける環境関連の補助金の利用が新記録となった。利用されたプロ
ジェクト数は 671 に達し、1 億 6,380 万ユーロの合計投資金額のうち 1,660 万ユー
ロが補助金として利用された。補助金額全体のうち、気候変動対策を焦点としたプ
ロジェクトが 95%を占めている。この気候変動対策により年間 24 万 800 トンの CO2
が削減されたとされる。また、気候変動対策のうち、85%が再生可能エネルギー関
連分野に割り当てられている。
英国は、再生可能エネルギー利用促進のため 100 万ポンド(約 1,500 万ユーロ)を
投資すると発表した。この新事業「Partnership for Renewables(PfR)」は、地方自
治体や病院、その他公共部門における再生可能エネルギープロジェクト整備に利用
される。このプロジェクトは、カーボントラスト社によって運営され合計 500MW
の再生可能エネルギープロジェクトを計画しているが、手始めに 3-5MW の風力発電
タービンプロジェクト(建設中か、今後 5 年間で開発されるものが対象)が行われ
る。
REN21 とは、先進国および発展途上国における再生可能エネルギー源の利用拡大のための活動や意見
交換を行う政策提言ネットワークである。
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Ⅲ.石油・天然ガス
1.OPEC
(1)原油価格動向
国際指標である NYMEX WTI の 9 月平均価格は 1 バレル 63.9 ドルとなり、対前月
比 9.2 ドル下落した。
上旬:今年大西洋で発生するハリケーンの予想数が下方修正されたことや、EIA
発表の週間在庫統計でガソリン在庫が減少予想に反して増加したこと、BP がア
ラスカ州プルドーベイ油田は 10 月末までに復旧可能と発表したこと等から下落。
中旬: EIA 発表の週間在庫統計で中間留分と天然ガスの在庫が大幅に増加し冬
場の需給逼迫懸念が後退したことや、8 月の米国卸売物価指数と住宅着工件数が
市場予想を大幅に下回り米国の景気減速懸念が広がったこと等から下落。
下旬: イランのアフマディネジャド大統領がウラン濃縮活動に関し交渉による解
決に前向きな姿勢を示したことや、EIA 発表の週間在庫統計で石油製品在庫が大
幅に増加したこと等から下落。
米国の原油・石油製品在庫が冬場の需要期を前に順調に積み上がっていることや、
イラン核開発疑惑をめぐる議論が比較的ポジティブに進められていること等を背景
に、原油価格は急落している。今後の原油マーケットは、減産に向けて動き始めた
OPEC の動向が大きな鍵を握ることになるだろう。
最近の原油価格推移
($/B)
80
70
60
50
NYMEX WTI
OPEC BASKET
40
05年10月 05年12月
06年2月
06年4月
06年6月
06年8月
06年10月
($/B)
2005年
06年1Q
06年2Q
6月
7月
8月
9月
NYMEX WTI
56.7
63.5
70.7
71.0
74.5
73.1
63.9
OPECバスケット
50.7
57.7
64.7
64.6
68.9
68.8
59.3
10
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2006 年 9 月 号
(2)油価高騰に対する反応・対応
カタールのアティーヤ・エネルギー産業相は 9 月 6 日、イランからの原油供給が減
少もしくは途絶した場合、OPEC はどのように対処するのかとの質問に対し、「OPEC
にとって、日量 300 万バレル以上の供給不足を満たすことは困難なことであり、そ
れは非常に大きな問題となるだろう。」と述べた。
イランのアルデビリ OPEC 理事は 9 月 9 日、「理想的な原油価格は、平常時であれば
50∼60 ドルだ」と述べた。
アルジェリアのケリル・エネルギー鉱業相は 9 月 17 日、「全ては世界経済の成長次
第だ。米国で景気が後退すれば、石油需要はすぐに影響を受けるだろう。市場には
大量の原油が供給されている」
「米国経済の成長は、今後数年の石油需要にとって非
常に需要であり、我々は注意深く見守っている」と述べ、今後の世界経済、特に米
国経済の動向を注視していくことを強調した。
IEA のマンディル事務局長は 9 月 18 日、
「市場で原油が売れないのであれば、来年始
めにも OPEC が生産量を削減することは理解できる」「市場に十分な量の原油が供給
されているのであれば、売れない原油の生産を産油国に対して求めることは出来な
い」と述べ、来年以降の OPEC 原油の生産量削減に関して肯定的な見解を示した。
サウジアラビアのナイミ石油鉱物資源相は 9 月 19 日、「石油業界は現在の原油価格
がリーズナブルだと納得している」
「現在の原油価格は産油国と消費国の双方に報い
るものであり、世界経済に対する影響は小さい」と述べた。
OPEC のダウコル議長は 9 月 19 日、「1 日や 2 日原油価格が下落したからといって、
生産枠の大幅な見直しに繋がるわけではない。今は、市場の動きを見守る段階だ」
と述べた。また、
「冬場に向かう中、市場は底固いと確信している」との認識も示し
た。
クウェートのシハブエルディン前 OPEC 事務局長代行は 9 月 22 日、
「地政学的状況に
よっては、原油価格は 2007∼2008 年に 40 ドルまで下落するかもしれない」
「原油価
格が 2003 年以前の水準まで戻ることは考えにくい」「過去 3 年間で劇的に変化した
需給ファンダメンタルズが、40∼60 ドル、あるいはそれ以上の水準に原油価格をサ
ポートすることになるだろう」と述べた。
OPEC のダウコル議長は 9 月 26 日、「原油価格は非常に低くなっており、投資にとっ
て好ましくない」と述べ、最近の原油価格の下落に対して懸念を表明した。また、
「市
場を安定させる為に何かを行う必要がある」と述べ、生産枠引き下げの可能性を示
唆した。
リビア国営石油会社 NOC のガネム総裁は 9 月 27 日、「中東にある種の平穏や静けさ
があれば、原油価格は変化せずに安定するようになるだろう」と述べ、原油価格の
高騰は中東情勢の緊張によるものとの認識を示した。また、
「我々は原油価格が急落
する可能性についてはそれほど懸念していない」とも述べた。
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2006 年 9 月 号
アルジェリアのヘリル・エネルギー鉱業相は 9 月 28 日、「今のところ、我々は(緊
急)会合が必要だとは考えていない」
「アブジャでの総会は、必要な決定を下すには
良い機会となるだろう」
「加盟国は常に連携している。頻繁に連絡を取っており、議
長には会合を招集する権限を与えている。しかし、今のところ会合は必要だとは判
断されていない」と述べ、12 月に開催される次回 OPEC 総会の前に緊急会合を開催す
る可能性について否定的見解を示した。また、
「価格は来年初頭には再び上昇するだ
ろう」
「原油価格の下落は需要の減少によるものだが、これは夏の需要期が終わり天
候の穏やかなこの時期にはありふれた現象だ」
「確かに原油価格は 78 ドルから 61 ド
ルに下落したが、今は安定している。冬が迫っており、中間留分にはかなりの需要
があるだろう」と述べ、今後原油価格は上昇するとの見解を示した。また、
「我々に
はフロア価格といったものはなく、大切なのは価格が下落するスピードを見ること
だ」とも述べた。
匿名のナイジェリア石油省関係者が 9 月 28 日、ロイター通信の取材に対し「OPEC 加
盟国間で非公式協議が行われ、ナイジェリアは 10 月 1 日から(生産量を)5%削減
する」と述べた。また、サウジアラビアとクウェートも減産を実施するとも述べた。
OPEC のダウコル議長は 9 月 28 日、ナイジェリアが 10 月 1 日から減産を実施すると
の報道に関し「私は本件について全く関知していない」
「もちろん、最近の価格下落
は共有の関心事ではあるが、
(他の加盟国との)協議は依然として続いている」と述
べた。
クウェートのアリ・エネルギー相は 9 月 28 日、「我が国は原油生産を一切削減して
おらず、また削減するつもりもない」と述べ、同国がナイジェリアに追随して減産
するとの報道を否定した。また、
「私の知る限り、減産実施に関する合意は公式・非
公式を問わず存在しない」とも述べた。60 ドル近辺の水準にある現在の原油価格に
関しては、
「OPEC にとって全く受け入れ可能なものだ」と述べた。また、イラン核開
発をめぐる緊張の緩和と米国原油在庫の増加が価格下落の要因であるとの認識を示
した。
OPEC のバルキンド事務局長代行は 9 月 28 日、ナイジェリアが 10 月 1 日から生産量
を削減するとの報道に関し「需要に合わせて供給を抑えることで合意したが、取り
決めがあるわけではない。各国が任意ベースで供給を削減し、OPEC が何らかの決定
をする前に市場がどのように反応するかを見るということだ」と述べた。また、サ
ウジアラビアのナイミ石油鉱物資源相と週前半に会談したことを明らかにし、
「サウ
ジアラビアは減産を続けている。彼らは減産している」と述べた。
OPEC の広報担当者は 9 月 29 日、
「公式・非公式を問わず、生産量の削減に関する OPEC
としての合意は存在しない」
「電話での協議は行われているが、いかなる形であれ会
合や合意は存在しない」と述べた。
ベネズエラのラミレス・エネルギー鉱業相は 9 月 29 日、「ベネズエラは過去数週間
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にわたる原油価格の下落を抑えるため、生産量を日量 5 万バレル削減する」との声
明を出した。同国の現在の原油生産量については明らかにしなかった。また、世界
の原油生産量は日量 50 万バレル余剰であり、OPEC は地政学的緊張と市場の構造変化
について注意深く観察を続けるべきだと指摘した。
(3)イラン関連
イラン石油省のホセイニアン副大臣は 9 月 6 日、
「イランが自発的に原油生産を停止
することはないと思う」
「国連安保理が禁止しない限り、イランは顧客に対して原油
を輸出すべきだ」と述べた。また、
「経済制裁は原油価格を上昇させ、世界中の人々
にとって頭痛の種となることから、国連安保理が制裁を課すことはないと思う」と
も述べた。
(4)ナイジェリア関連
ナイジェリアのダウコル石油資源相は 9 月 11 日、ニジェールデルタ地帯の石油関連
施設に対する武装勢力の攻撃により、日量約 87 万 2 千バレルの原油生産が停止して
おり、現在の同国の原油生産量は日量 230 万バレルに止まっていることを明らかに
した。
ナイジェリアの石油労働者組合 PENGASSAN と NUPENG は 9 月 13 日、ニジェールデル
タ地帯で武装組織による石油関連労働者の誘拐や、武装組織とナイジェリア軍の衝
突により労働者が危険に晒されていることに抗議するため、3 日間連続の警告ストラ
イキに突入した。しかし、政府当局が労組の懸念事項に関するハイレベル協議の継
続実施を提案したことを受け、同労組は 14 日、当初予定より 1 日早くストライキを
終了させ、組合員に職場復帰を呼び掛けた。なお、海運筋によれば、今回のストラ
イキにより、ブラスリバーとエスクラボスの輸出ターミナルで荷役が中断したが、
生産現場では非組合員が操業を継続したため影響は出なかった模様。
(5)ベネズエラ関連
ベネズエラのチャベス大統領は訪問先のアンゴラでドス・サントス大統領と会談し、
両国間の石油部門における協力関係を強化していくことで合意した。また、ベネズ
エラのラミレス・エネルギー鉱業相とアンゴラのコスタ・エネルギー相は、両国間
の石油部門における協力協定に調印した。協定には、ベネズエラ国営石油会社 PDVSA
とアンゴラ国営石油会社ソナンゴルによる石油開発・精製の共同プロジェクトの可
能性も盛り込まれている。
ベネズエラのラミレス・エネルギー鉱業相は 9 月 12 日、外国企業が操業しているコ
ロコロ、ゴルフォ・デ・パリア・エステ、ラ・セイバの 3 油田に関し、国営石油会
社 PDVSA が権益の過半数を握るように、外国企業との契約形態の変更を検討してい
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ることを明らかにした。これらの油田は 1997 年に探鉱契約が締結され、コノコフィ
リップスやエニ、エクソンモービル、ペトロカナダ等の外国企業が探鉱活動を行っ
ている。
ベネズエラのエネルギー鉱業省は 9 月 25 日、オリマルジョン2の生産を今年末で終了
することを発表した。同省は声明の中で、
「徹底的に検討した結果、オリマルジョン
はベネズエラ超重質油の利用方法としては適切でないとの結論に至った」としてい
る。オリマルジョンは、国営石油会社 PDVSA と中国の CNPC の JV であるシノベンサ
が、日量約 10 万バレルを生産している。来年からは、超重質油と軽質油を混合して
販売する予定。
(6)イラク関連
イラク石油省の報道官は 9 月 21 日、アフダブ油田を新政府の発足後初の開発油田と
することを発表した。開発作業は国際石油企業と契約を締結してすぐに開始すると
だけ述べ、具体的なタイムテーブルは明らかにしなかったが、開発コストは 7 億ド
ル、当初の産出量は日量 3 万バレルで 2 年以内に同 9 万バレルへ増加するとしてい
る。同油田は、フセイン政権時代の 1997 年にイラク政府と中国の CNPC が 12 億ドル
の開発契約を締結しているが、シャハリスタニ石油相は「我々は前政権が締結した
いかなる契約にも責任を持たない」と述べた。シャハリスタニ石油相は 10 月に中国
を訪問する予定になっており、その際に CNPC と同油田に関し何らかの話し合いがさ
れるものと見られている。なお、アフダブ油田の次は、現在日量 1 万 5 千∼2 万バレ
ルの重質油を生産している東バグダッド油田の開発が計画されており、シャハリス
タニ石油相は同油田への投資に関して多くの企業と交渉中であることを明らかにし
た。
(7)リビア関連
リビア政府は、石油開発計画を評価・査定し、国営石油会社 NOC を管理する石油・
ガス評議会を創設すると発表した。評議会の構成員には首相を始め、経済相、財務
相などの主要閣僚の他、中央銀行総裁や NOC 代表が含まれる予定となっている。こ
の石油・ガス評議会に関し、リビア国営石油会社 NOC のガネム総裁は「評議会は、
石油・ガス開発を妨げたり、減速させたりするものではない。官僚的な形式主義を
取るものでもないし、石油・ガス開発を促進するものでもない」
「小さな諮問委員会
だ。リビアは、海外の投資家にとって魅力の薄い国になろうとしているわけではな
い」としている。
2
ベネズエラのオリノコ川流域で産出される超重質油(オリノコ・タール)に約 30%の水と微量の界面
活性剤を加えて乳化(エマルジョン化)することにより、流動性を付与したボイラー用燃料。
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(8)生産・精製能力の増強に向けた動き
インドネシアのプルノモ・エネルギー鉱物資源相とベネズエラのラミレス・エネル
ギー鉱業相は 9 月 12 日、インドネシアの新規製油所プロジェクトに関する覚書に調
印した。精製能力は日量 30 万バレル、建設地は東ジャワのトゥバンか、西ジャワの
バンテンの何れかとなる見込み。プロジェクトの総投資コストは 40 億ドル、出資比
率はインドネシア国営石油会社プルタミナとその子会社 PT エルヌサが合計 30%、イ
ラン国営石油会社 NIOC 傘下の NIORDC が 25%、ベネズエラ国営石油会社 PDVSA が 25%、
住友グループが 20%となっている。また、製油所で生産される石油製品の 70%は丸
紅が引き取ることになっている。
インド国営石油会社ヒンドスタンの関係者によれば、クウェート国営石油会社 KPC
傘下のクウェート・ペトロリアム・インターナショナルとフランスのトタールは、
ヒンドスタンのバシャカパットナム製油所の精製能力を現在の日量 15 万バレルから
2008 年半ばまでに同 30 万バレルへ倍増させ、更に年間 100 万トンのベンゼンとパラ
キシレンを生産する石化プラントを併設するプロジェクトに、それぞれ 25∼30%の
出資比率で参画することを検討している模様。プロジェクトの総投資コストは約
1,400 億ルピー(約 30 億ドル)と見込まれている。
南アフリカのサソールは 9 月 13 日、カタールのオリックス GTL プラントにおいて技
術的問題が発生し、今年中を予定していた最初の製品出荷は、来年第 1 四半期に遅
れると発表した。オリックスは、世界初となる商業規模の GTL プラントであり、生
産能力は日量 3 万 4 千バレル。サソールとカタール国営石油会社 QP が共同で操業し、
欧州と米国における製品マーケティングの殆どをシェブロンが行う予定になってい
る。
ノルウェー国営石油会社スタットオイルとインドネシア国営石油会社プルタミナは
9 月 13 日、石油開発プロジェクトを共同で実施することを検討する覚書を交わした。
現時点では特定の対象プロジェクトは存在しないが、まずはインドネシア国内のプ
ロジェクトについて検討する予定となっている。
アブダビ国営石油会社 ADNOC のユセフ総裁は 9 月 18 日、「今後数年で、アブダビ首
長国は世界有数の天然ガス生産・輸出国となるだろう」と述べ、天然ガス生産量を
現在の日量 45 億立方フィートから 2008 年には同 60 億立方フィートへ増加させる計
画を明らかにした。また、同国の天然ガス埋蔵量については、「200 兆立方フィート
と推測される」と述べた。また、原油・コンデンセート生産量については、
「現在は
日量 290 万∼300 万バレルだが、今後数年で同 400 万バレルに増加すると見込まれる」
と述べた。
ベネズエラのラミレス・エネルギー鉱業相は 9 月 18 日、同国とイランが、シリアに
新規製油所(精製能力:日量 15 万バレル)を共同建設することを検討していること
を明らかにした。また、チャベス大統領と同国を訪問中のイランのアフマディネジ
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ャド大統領が、エネルギー・製造業部門における最大 60 億ドルの投資計画を含む経
済協力に関して合意したことも明らかにした。
インドネシア政府は、バイオ燃料産業の育成に向けて来年度予算として 13 兆ルピア
(約 14 億ドル)を計上するとともに、50 万ヘクタールの用地を確保する。予算の大
半は、特定農園における灌漑システムや道路の整備に充てられる予定となっている。
インドネシア政府は、2010 年までに燃料消費量に占めるバイオ燃料のシェアを 10%
まで引き上げることを目標としている。
サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは 9 月 30 日、2007 年第 1 四半期からモ
ニーファ油田の開発に着手すると発表した。2011 年半ばの生産開始を目標としてお
り、アラビアンヘビー原油が日量 90 万バレル、随伴ガスが 1 億 2,000 万立方フィー
ト生産される予定。
(9)各種レポート
IEA は 9 月 12 日、9 月の石油市場月報を発表した。世界の石油需要については、北
米の仮データが修正されたことや、欧州の消費量があまり伸びていないこと、太平
洋地域における需要が停滞していることなどを背景に、2006 年と 2007 年を前月号対
比でそれぞれ日量 10 万バレル、同 16 万バレル下方修正した。また、
「経済成長に関
するリスクが高まっているという一般的なコンセンサスがある。従って、石油製品
需要の増加予測に関するリスクも明らかに上昇している」と指摘した。非 OPEC の原
油生産量については、第 4 四半期にメキシコや英国、ブラジル、アンゴラで生産が
低迷するとの見通しを背景に、2006 年と 2007 年を前月号対比でそれぞれ日量 6 万バ
レル、同 14 万 5 千バレル下方修正した。OPEC の 8 月原油生産量については、イラン
やイラク、インドネシア、UAE での生産減を背景に、前月比で日量 27 万バレル少な
い同 3,000 万バレルと推測している。イラクを除く OPEC10 の 8 月原油生産量につい
ては、7 月の日量 2,772 万バレルから同 2,804 万バレルへ増加し、公式生産枠(日量
2,800 万バレル)を上回ったとしている。また、OPEC 原油に対するニーズについて
は、2006 年と 2007 年をそれぞれ日量 2,890 万バレル、同 2,840 万バレルとし、前月
号から据え置いた。
OPEC は 9 月 15 日、9 月の石油市場月報を発表した。2006 年の世界石油需要の伸びに
ついては、米国における今夏のガソリン需要が当初予想より弱かったことを背景に、
前月号対比で日量 15 万バレル下方修正し、同 115 万バレルとした。一方、2007 年に
ついては、日量 129 万バレルで据え置いた。2006 年の非 OPEC 原油生産量の伸びにつ
いては、日量 2 万バレル上方修正し、109 万バレルとした。一方、2007 年について
は、日量 184 万バレルで据え置いた。OPEC 原油へのニーズについては、2006 年と 2007
年を前月号対比でともに日量 17 万バレル下方修正し、それぞれ同 2,894 万バレル、
同 2,814 万バレルとした。特に 2006 年第 4 四半期については、日量 32 万バレルの
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大幅な下方修正を行い、同 2,886 万バレルとした。OPEC 原油生産量の推移は下記の
通り(単位:日量千バレル)。
4Q05
1Q06
2Q06
JUN06
JUL06
AUG06 AUG/JUL
アルジェリア
1,374
1,376
1,368
1,357
1,352
1,359
7.3
インドネシア
935
922
914
906
894
880
-13.3
イラン
3,911
3,849
3,800
3,835
3,918
3,904
-13.5
イラク
1,675
1,711
2,001
2,120
2,065
2,054
-10.8
クウェート
2,548
2,532
2,513
2,517
2,507
2,513
6.3
リビア
1,665
1,680
1,699
1,702
1,708
1,712
3.7
ナイジェリア
2,469
2,257
2,212
2,277
2,213
2,219
6.1
808
817
820
823
826
840
14.5
サウジアラビア
9,426
9,416
9,133
9,129
9,183
9,226
0.0
UAE
2,518
2,528
2,535
2,540
2,571
2,558
-12.8
ベネズエラ
2,584
2,595
2,574
2,555
2,461
2,521
60.2
OPEC‐10
28,237 27,973 27,570 27,640 27,631 27,732
101.2
OPEC‐11
29,912 29,684 29,570 29,759 29,696 29,786
90.4
カタール
2.エネルギーセキュリティ
(1)ガスプロム関連
ガスプロムは 9 月初旬、トルクメニスタンとの間で、10 月 1 日から同国からのガス
購入価格を 1,000 立方メートル当たり 65 ドルから 100 ドルへ引き上げることで合意
した。ロシアからのガス供給依存度が高い欧州各国は、この合意により急激にガス
供給価格が上がるとは考えていないが、カザフスタンやウズベキスタンなども同様
にロシアへのガス販売価格を引き上げる可能性を懸念している。
ウクライナは今年初めにガスプロムとの間で 1,000 立方メートル当たり 95 ドルの供
給契約を締結したが、他国の半値近い価格のため、常にガス供給価格引き上げ圧力
を受けてきた。8 月にヤヌコビッチ新首相がロシアを訪問し、ガス供給価格の年内据
え置きをロシア政府幹部と合意してきたが、ガスプロム幹部は年内にも引き上げた
い意向を示している。
ロシア天然資源監督局は 9 月 5 日、サハリン 2 プロジェクトの事業主体であるサハ
リン・エナジー社が環境保全措置を履行していないと指摘、計画第二段階の FS を承
認したロシア天然資源省の決定取り消しを裁判所に申請した。また、ロシア天然資
源省は 18 日、同プロジェクトの環境計画の承認取り消しを発表した。同省の報道官
は「プロジェクト自体が中止になるわけではない。計画の進め方や環境に関する承
認について再考する必要がある」としている。同プロジェクトはシェルが 55%、三
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井物産が 25%、三菱商事が 20%出資する外資 100%の事業だが、ガスプロムが事業
参画を強く求めており、一連の圧力はプーチン政権によるガスプロム参画に向けた
揺さぶりと見られている。
ノルウェーのノルスクハイドロは、ガスプロムの英国子会社に 10 月 1 日から 1 年間、
5 億立方メートルの天然ガスを供給することで合意したと発表した。天然ガスは、ノ
ルウェーの Nyhamna とノルウェー領北海の Sleipner ガス田、英国東岸の Easington
を結ぶ全長 1,200 キロメートルの Langeled パイプラインで輸送される。
バレンツ海のシュトックマン・ガス田の開発プロジェクトに関し、ガスプロムはパ
ートナー選定のためノルウェーのスタットオイルやノルスクハイドロ、米国のコノ
コフィリップスやシェブロン、フランスのトタールと交渉を行っている。結論が出
るのは 2007 年以降となる模様。同ガス田の推定埋蔵量は、天然ガスが 3 兆 7,000 万
立方メートル、コンデンセートが 3,100 万トンとされている。
ガスプロムは、ウズベキスタンのウズベクネフチガス及びカザフスタンのカズムナ
イガスと、天然ガスのスワップ契約を締結した。数量は年間 35 億立方メートル、期
間は 2007 年から 2009 年まで。ウズベクネフチガスがガスプロム経由でカザフスタ
ン南部に天然ガスを輸送し、カズムナイガスは同国北西部のガス田からガスプロム
向けに輸送する。
オーストリアの OMV は、契約期限が 2012 年までとなっていたガスプロム子会社と
のガス供給契約を延長したと発表した。数量は年間約 70 億立方メートル、期間は
2027 年まで。
(2)パイプライン
ガスプロムとハンガリーの MOL は、ロシア産天然ガスをトルコ経由でギリシャやイ
タリア、イスラエルへ輸送するブルーストリーム 2 パイプラインの建設に関する FS
を実施する予定。ブルガリアやルーマニア、ハンガリー、オーストリアへの供給に
ついても検討する。
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Ⅳ.電力
1.M&A
(1)仏 GDF 対伊エネル
仏エネルギー企業スエズを巡る買収問題は、仏ガス大手 GDF(ガス・ド・フランス)
と伊電力大手エネルが買収合戦を繰り広げてきたが、ここにきて GDF による買収が
大筋で決まりつつあり、エネルは GDF とスエズの合併後に売却される資産を狙う戦
略に切り替えたものと見られている。
GDF とスエズは 9 月下旬、合併の最大の関門であった欧州委の承認をスムーズに獲
得するため、
「譲歩案」を欧州委に提示した。その中身は主に両社のベルギーでの事
業の縮小案で、以下の譲歩案が含まれている。
① ベルギーの独占ガス供給会社ディストリガス(スエズが株式 62%所有)の大口
顧客事業からの撤退
② ベルギーのゼーブルージュ港(Zeebrugge)に欧州最大の LNG 基地を持つ
Fluxys 社(スエズが株式 51%所有)の株式一部売却
③ ディストリガスが所有していたフランス国内のガス販売権利(シェア約 3.5%)
を他社へ売却
④ ベルギー電力 2 位の SPC 社(GDF が株式 25.5%所有)の株式売却
欧州の主なエネルギー企業の売上高(2005年、連結)
エーオン(独)
EDF(仏)
RWE(独)
買収?
スエズ(仏)
東京電力
エネル(伊)
ガスプロム(露)
GDF(仏)
セントリカ(英)
エンデサ(西)
買収?
OMV(墺)
イベルドローラ(西)
東京ガス
ガスナチュラル(西)
ウニオン・フェノサ(西)
買収?
フェアブント(墺)
億ユーロ
0
100
200
300
400
500
600
700
800
出所:各社アニュアルレポートより JETRO 作成
注:ガスプロムは 2004 年
1 ユーロ=136.85 円(2005 年平均)、0.6838 ポンド(2005 年平均)、35.8192 ルーブル(2004 年平均)で計算。
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(2)独エーオン対ガスナチュラル(スペイン)
スペインの電力 2 位、3 位のイベルドローラ(Iberdrola)とウニオン・フェノサ(Union
Fenosa)が合併交渉を進めていることが、9 月下旬に明らかになった。両社の売上
高合計は約 180 億ユーロで、電力最大手のエンデサに肉薄する。
エンデサの買収を巡っては、独エーオンとスペインのガスナチュラルの間で激しい
買収合戦が繰り広げられてきたが、エネルギー企業の「ナショナル・チャンピオン」
誕生を目指すスペイン政府がエーオンに対して保護主義的な対応を続けてきたため、
9 月 26 日、欧州委は「スペイン政府の対応は EU 競争保護法に違反している」と警
告した。
スペイン政府としては、エンデサとエーオンの合併交渉を遅延させつつ、MOU ひと
つのナショナル・チャンピオンを誕生させるべく、イベルドローラとウニオン・フ
ェノサの合併を後押しする戦略に切り替えつつあるのでは、と見る向きもある。
イベルドローラとウニオン・フェノサの合併の裏では、国内建設最大手グルーポ・
アーセーエセ(GRUPO ACS)が動いており、同社はイベルドローラの株式約 25%
を購入する申請を、スペイン証券公正取引委員会に提出している。
同様に、エーオンによるエンデサの買収でも、建設大手アクシオナがエンデサの株
式を 24.9%まで買い進めており、エーオンによる買収阻止の動きも出ている。
今後も、資金力の豊富な建設会社の動向が、スペインの電力業界再編に影響を与え
るものと見られている。
(3)その他
伊エネルは 9 月上旬、今後 20 億∼40 億ユーロを投じて、ロシアの発電会社を 1、2
社買収する方針を明らかにした。エネルはこれまでブルガリア、フランス、ルーマ
ニア、スペインで発電会社や配電会社を買収しており、今年に入ってからは同社と
しては最大の投資(約 39 億ドル)でスロバキアの国営電力会社(SE)を買収した。
また、年内にはさらに、3 つの国営配電会社が民営化されるトルコの入札案件にも応
札する予定で、同社の海外進出意欲は引き続き旺盛である。
2.原子力
スペイン政府は 9 月中旬、老朽化したガローニャ原子力発電所(1971 年商業運転開
始、出力 46 万 6,000kW)を予定通り 2009 年に廃止することを明らかにした。エン
デサなどの原子力発電事業者は、収益面及び CO2 排出量の観点から、既存原子力発
電所を 40 年以上稼働させる延命化を求めてきたが、政府は原子力反対運動などを考
慮し、同原子力発電所の廃止をあらためて確認した。これにより、スペインの京都
議定書上の削減目標達成はさらに困難化する見込みで、京都メカニズム活用の促進
など、追加的な政策が喫緊の課題となりつつある。
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Ⅴ.環境問題
1.大気汚染
10 月 1 日より、すべての重量商用車(大型トラックやバス)に排ガス規制(ユーロ
4)が施行された。この規制により、大型トラック輸送から排出される粒子状物質が
80%(100→20 mg/kWh)および NOx が 30%(5.0→3.5 g/kWh)低減される。ユ
ーロ 4 は、新型大型トラックおよびバスには既に 2005 年 10 月 1 日より適用されて
いたが、これにより全大型トラックが適用されたことになる。
2.水質汚濁
チャカロフ環境・水相は、出席した Gorna Oryahovitsa 排水処理施設での落成式に
て、2010 年までに 1 万人以上のすべての集落に排水処理施設を設立すると述べた。
これらの建設には、EU 加盟前援助と構造基金によって支援される予定である。
3.廃棄物・リサイクル
EU は、9 月 26 日に新たな廃電池指令を発表し、将来 EU 全体において家庭用廃棄
物から分別回収されることになった。新指令は、2012 年および 2016 年までの過去 3
年間における回収率の目標をそれぞれ 25%、45%と定めている。ちなみに、ドイツ
では市場に出回っている約 35%の乾電池が分別処理されている。また、新指令では
既に 2000 年に禁止されている水銀以外にもカドミウムの使用が禁止される予定で
ある。
ドイツで計画されている容器包装指令の改正について、環境省と産業界、取引業界
が合意した。本改正案は、既存のインフラを変えることなく、デュアルシステム3内
における競争を促すだけでなく、デュアルシステムのビジネス分野と自己処理との
明確な区分けを行う。本改正案により、市場に出回り家庭に持ち込まれる容器包装
物はすべてデュアルシステムによって認可される必要があり、自己処理は認められ
ない。また、食堂や行政機関、病院、教育施設などの取引、産業界から発生する包
装物は自己処理を行う必要がある。改正案は、本年 10 月に提出され、来年初めに決
定されると予想されている。
3
デュアルシステムとは、ドイツで導入されている容器包装リサイクルのためのシステムである。自治体
によって運営されている廃棄物処理システムとは別に、容器包装のリサイクルを実行するために構築され
ており、DSD(Dual System Deutschland AG)社という非営利企業によって運営されている。
容器包装メーカーおよびそれを利用する商品の製造・販売・輸入者は DSD 社が保有する「Gruene Punkt」、
つまりグリーンドット(緑の点)という商標利用の権利を DSD 社から購入することにより、自社製品の
容器包装にこのマークを表示できる。このマークの表示されている容器包装材は消費者によって分別され
て DSD 社によって引き取りされリサイクルされることになるが、これらの運営費は前述のマーク使用料
によって賄われる。つまり、商品の容器包装の収集、輸送、選別・梱包、リサイクルは全て容器包装に関
係する企業によって負担されている。(出典:経済産業省ホームページ)
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2006 年 9 月 号
4.欧州環境規制
廃電気電子機器のリサイクル会社である Cedar Resource Management 社は、ダブ
リンにアイルランドにおける最大規模の WEEE リサイクル施設を建設した。本施設
には、1,200 万ユーロが投資され、年間 3 万トンの WEEE を処理する能力を持ち、
WEEE 指令によって定められた再使用率や回収率の目標も達成可能である。
5.アスベスト
欧州委員会は、9 月 1 日より加盟 25 ヵ国に対しアスベスト飛散に対する危険につい
て注意喚起を行うキャンペーンを始めた。このキャンペーンは、経営者、労働者、
労働検査官を対象にアスベスト飛散がもたらす危険性と防止対策の改善を目的とし
たものである。未だに、年間数千人もの人々がアスベスト飛散の影響で死亡してい
ると言われており、この警告の重要さが伺える。なお、アスベストの取り扱いはど
のような形態であっても 2006 年 4 月より禁止されている。
6.その他
ブルガリアのチャカロフ環境・水相が、欧州議会の会議を前に述べたところによる
と、EU 法体系への調整にむけて自信を見せた。ブルガリアは、この 10 年弱で環境
分野において 8 つの枠組み行動と 80 の規則を導入することで、90 以上の主要な EU
法をブルガリアの環境規則に導入している。
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Ⅵ.新興経済国
1.中国
温家宝首相は 9 月 13 日、ブレア英首相とロンドンで会談し、気候変動問題で英中が
より緊密な協力体制を築くことで合意した。また、ミリバンド環境相と中国国家発
展改革委員会の馬凱主任は、英中気候変動作業部会を設立する協定に調印した。
両国は昨年のグレンイーグルズ・サミット以降、気候変動問題分野において急速に
関係を深めており、省エネや再生可能エネルギー技術における協力のほか、ビジネ
スレベル、企業レベルでも気候変動問題を軸に関係を深めている。
今年 2 月に英国は「G8+5 気候変動問題ダイアログ」を設立し、G8 と中国やインド
など新興経済国との間で、政治・経済・民間レベルで 2012 年以降の気候変動合意に
向けたコンセンサス構築に向けた取り組みを開始している。
英国はこのダイアログのなかでも、中国を重視しており、
「ゼロエミッション石炭火
力発電所」など、中国との具体的な共同プロジェクトをすでに開始している。
また、今回の温家宝首相訪英に際し英国側は、①中国国際航空による英ロールスロ
イス製エンジンの購入(総額 8 億ドル、2008 年 6 月から納入)、②中国海洋石油と
ブリティッシュガスによる南シナ海での共同石油採掘事業、③英設計グループ Arup
による雲南省昆明国際新空港の設計契約(同空港は中国で 4 番目に大きなハブ空港
になる予定)、という 3 つの大きな商談をまとめた。
「省エネ・環境技術の移転」や「気候変動問題における国際協力体制(もしくはそ
の枠組み作り)への中国の参加支援」といった協力の引き換えに、英国企業の中国
進出をサポートする、英国のしたたかな戦略が浮かび上がる。
2.ロシア
欧州復興開発銀行(EBRD)は、ロシアのエネルギー会社である GidroOGK 社に対
し Volga-Kama 地域にある 9 つの水力発電所の近代化に対し 63 億ルーブル(1 億
8,500 万ユーロ)を提供することで合意した。EBRD 関係者は、ロシアにおける主要
な再生可能エネルギー源は水力発電であると指摘している。なお、GidroOGK 社は
エネルギー産業の開発として再生可能エネルギー(風力、波力などを含め)の可能
性を模索するとしている。
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2006 年 9 月 号
Annex
第 2 期欧州排出権取引制度(EU-ETS)国別割当計画(NAP2)の進捗状況(9 月末時点)
単位:百万トン、%
1,015
386
659
NAP1
05-07 年
各年
499
239
245
NAP2
08-12 年
各年
482
257
237
増加率
NAP2/
NAP1
▲ 3.4
7.6
▲ 3.4
519
583
233
186
▲ 20.0
スペイン
289
428
174
153
▲ 12.5
フランス
567
563
150
142
▲ 5.9
オランダ
214
218
96
99
3.9
ギリシャ
ベルギー
スロバキア
フィンランド
ポルトガル
オーストリア
エストニア
アイルランド
リトアニア
ラトビア
ルクセンブルク
デンマーク
スウェーデン
111
147
73
71
60
79
43
56
51
26
13
69
73
138
148
51
81
85
91
21
69
20
11
13
68
70
71
63
30
45
38
33
19
22
12
5
3
34
23
69
62
41
40
34
33
25
23
17
8
4
n.a.
25
▲ 2.5
▲ 1.3
35.3
▲ 12.8
▲ 11.2
▲ 0.6
29.5
1.3
34.1
67.4
22.3
10.0
チェコ
196
147
98
n.a.
-
ハンガリー
スロベニア
キプロス
マルタ
122
20
6
2
83
20
9
3
31
9
6
3
n.a.
8
n.a.
3
▲ 5.7
1.9
ルーマニア
263
155
81
91
12.5
ブルガリア
EU25
EU15
142
5,371
4,266
62
4,979
4,227
51
2,181
1,730
62
-
21.6
-
基準年
排出量
2004 年
排出量
1,230
565
768
イタリア
ドイツ
ポーランド
英国
CDM/JI
の制限
進捗状況
(○は欧州委に提出済)
12 ○
n.a. ○
8 ○
PC 受付中、11 月以降提出
10
予定
PC 受付中、11 月以降提出
n.a.
予定
10 ○
ドラフト完成、下院議会で
n.a.
審査中
n.a. ○
8 ○
7 ○
12 ○
n.a. PC 受付中、10 月提出予定
20 ○
n.a. ○
n.a. 政府承認済
n.a. ○
n.a. ○
n.a. ○
n.a. ドラフト作成中
20 ○
ドラフト作成中、12 月提出
n.a.
予定
n.a. ドラフト作成中
17.8 PC 受付中、10 月提出予定
n.a. ドラフト作成中
n.a. ○
9 月ドラフト完成、政府承認
n.a.
済み
n.a. 10 月ドラフト完成予定
-
出所:欧州環境庁(EEA)、欧州委 Web サイト、各種プレスリリースから JETRO 作成
PC:Public Consultation
「CDM/JI の制限」とは、EU-ETS 対象施設・企業が、目標達成のために京都メカニズム(CDM/JI)を
利用してよい上限値で、数値は割当量に対するパーセンテージ。
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Annex
「Global Status Report for 2006」再生可能エネルギーに関する選別指標と上位 5 カ国
選別指標
再生可能エネルギー投資規模(年間)
再生可能エネルギー発電容量(現存規模、大規模水力発電除く)
再生可能エネルギー発電容量(現存規模、大規模水力発電含む)
風力発電容量(現存規模)
系統連携型太陽光発電容量(現存規模)
太陽光発電量(年間)
太陽熱利用容量(現存規模)
エタノール生産量(年間)
バイオディーゼル生産量(年間)
政策目標設定国
政策導入を実施している州/省/国
RPS 制度4を実施している州/省/国
バイオ燃料規制を実施している州/省/国
1位
2005 年 年間導入設備容量
年間投資額
風力発電
太陽光発電(系統連携型)
太陽熱利用
エタノール生産量
バイオディーゼル生産量
2位
2004 年
300 億ドル
160GW
895GW
48GW
2.0GW
1,150MW
77GWth
305 億リットル
21 億リットル
45
37
38
22
3位
4位
2005 年
380 億ドル
182GW
930GW
59GW
3.1GW
1,700MW
88GWth
330 億リットル
39 億リットル
49
41
38
38
5位
ドイツ/中国(同額)
米国
ドイツ
ドイツ
日本
中国
トルコ
ブラジル/米国
ドイツ
フランス
米国
スペイン
米国
ドイツ
中国
イタリア
日本
スペイン
インド
中国
スペイン フランス
インド
日本等5
スペイン/インド
米国
チェコ共
和国
中国
ドイツ
米国
スペイン
米国
中国
ブラジル
カナダ
小規模水力発電
風力発電
中国
ドイツ
日本
スペイン
米国
米国
バイオマス発電
米国
ブラジル
地熱発電
米国
太陽光発電(系統連携型)
太陽熱利用
ドイツ
中国
フィリピ
ン
日本
トルコ
フィリピ
ン
メキシコ
2005 年 現存設備容量
再生可能エネルギー発電容量
(大規模水力発電は除く)
大規模水力発電
米国
日本
インド
日本/ロ
シア
イタリア ブラジル
インド
デンマー
ク
ドイツ/スウェーデ
ン/フィンランド
インドネシア/イタ
リア
スペイン オランダ
ドイツ
イスラエ
ル
4 RPS(Renewable Portfolio Standard)制度とは、電気事業者等に一定比率の再生可能エネルギーの供給
を義務付ける制度のこと(出典:東京都再生可能エネルギー戦略)
5 日本の他、オーストリア、ギリシャ、オーストラリア
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