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設置の趣旨等を記載した書類 ア 設置趣旨

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設置の趣旨等を記載した書類 ア 設置趣旨
設置の趣旨等を記載した書類
ア
設置趣旨
(a)経
緯
神戸国際大学の設立母体である学校法人八代学院は、昭和 43 年創設以来、建学の精神
である『神を畏れ人を恐れず人に仕えよ』を掲げ有為な人材を世におくってきた。
設置校である神戸国際大学(経済学部経済経営学科及び都市環境・観光学科)及び、
神戸国際大学附属高等学校の卒業生は 2 万 6 千人にのぼる。
これらは、建学の精神に発する人間主義的立場を基本観点として、全人格教育を通じ
豊かな教養と確かな専門教育の育成を目的として、特に人間としての自己実現を目指す
べく教育研究を推進し今日にいたっている。
本学(神戸国際大学)設立から今日までの経緯はそれを如実に示している。大学創設
における経済学部・経済学科設置、その後の都市文化経済学科の増設、さらに近年カリ
キュラムを含む教育計画の大幅改革と両学科の名称変更(経済学科を『経済経営学科』・
都市文化経済学科を『都市環境・観光学科』とする。平成 19 年度より)等を行ったが、
その申請書の設置趣旨、及び変更届書の理由には一貫して、建学の精神に発する人間主
義的立場が明記されている。
経済学部・経済学科設置にあたっては、その設置経緯を示す付属文書に、設置の趣旨
本来は『福祉人間学』を志向したものであり、本学の経済学はいわゆる『物』に関わる
展開ではなく、あくまで人間主義に基づき人間に主軸をおいたものとすることが述べら
れている。まさに画期的な主張であった。
その後平成 6 年都市文化経済学科が設置されるが、これは『都市学と文化経済学』を
融合させたものであり、この展開はわが国最初の設置であった。この根底も『人間福祉』
を理念としたものである。
さらに平成 19 年度より発足する新教育計画と学科名称変更は、今日激変する人間を
取り巻く状況に積極的に対応するため、新たな人間主義経済学の実践であった。
これらの経緯の示すとおり、本学が医療福祉特にリハビリテーション学に着目するの
は建学の精神の実践的使命とするものである。
付記するが、本学はキリスト教世界聖公会関連大学(アングリカン・コミュニオン)
の一翼を担い活動としてきたことも本構想と無関係ではない。この団体は世界五大陸に
またがり、150 大学が運動のネットワークを結ぶ組織体として連帯している。活動の内
容は大学間のコラボレーション、
コミュニケーションネットワークを運動の基盤として、
プログラム・学生・教員の交流、交換、相互サポート、共同研究、人材育成、国際サー
ビス・ラーニング、出版活動を展開している。本学がキリスト教系国際大学の一つとし
て、この連帯を重視する立場から本構想を推進する意義は極めて大きいものがあると考
えている。
1
(b)背
景
≪一般的状況≫
今日わが国の経済、文化、社会の状況はまさに歴史的変化のさなかにある。それらは
個々の生活、特にそれを取り巻く環境の激変をともない、対応しなければならないさま
ざまな課題に直面する事態をともなっている。
健全な社会にとってもっとも重大であり、人々が切望する健康保持、心豊かな生活の
確保等について、それを取り巻く環境はどうか。例えば尐子高齢化等は、国家の福祉に
とって切実な問題を提起する。一般状況においても、経済社会環境の影響のなかでスト
レスを深化させ、いわゆる『心の痛み』におちいる人たち。また、疾病により長期の身
体的困難をかかえ、日夜辛苦しながら社会復帰を切望する人たち。多発する交通事故の
被害者の一日も早い日常生活復帰への期待。これらの人々は多くの場合、身体的障害を
ともない、幸せな日常生活を営めない状況にある。
これは一例ではあるが、これらの人たちへの適切な対応、特に医療への期待は計り知
れずその責任は重大である。まさに時代が要請する社会的課題といって差し支えない。
障害を持った人たちに健全な生活の営みを確保向上させ、社会復帰を早めるためのリ
ハビリテーション医療の課題はますます大きくなりつつある。その担い手である『理学
療法士』の育成は社会的急務とされている。
厚生労働省の高度福祉社会を目指す各種政策(平成 18 年度厚生労働白書-安全・安心
で質の高い医療提供体制の充実)に、
『理学療法士』等メディカルスタッフの積極的人材
養成は不可避課題であることが述べられていることに注目したい。
わが国は、長寿化、尐子化により、かつて経験したことのないスピ-ドで高齢社会が進
んでおり、介護を必要とする高齢者の数は 2000 年(平成 12 年)218 万人、2007 年(平成
19 年)447 万人、2008 年(平成 20 年)463 万人となっており、増加率は著しいものがあ
る。(図表1)
このように高齢社会の進行に伴い、医療活動はもとより、疾病や介護予防、健康寿
命を延ばすための健康維持・増進、要介護者に対する在宅ケアの推進等も、重要な
社会的課題となっており、保健健康医療に対する要請は近年著しく亢進し、これら
医療に直接係る理学療法士への期待もますますたかまってきている。
本学設置地兵庫県ならびに神戸市の状況も全国的状況に等しくこの傾向は一貫してい
る。
人口1万人に対する理学療法士の配置状況をみると、全国規模では 4.54 人、兵庫県で
は 3.22 人、地元神戸市では 2.54 人であり、全国レベルからみても非常に尐ない状況であ
る。このように 1 理学療法士に対する人口比が尐ないほど理学療法士の介入効果を国民
に還元することが効果的になってくる。ちなみに高齢福祉国家として実績をもつ北欧諸
国の例をみると、理学療法士 1 人に対する人口比は 700 人でありわが国の 2,203 人、兵
庫県の 3,105 人、神戸市の 3,933 人と比べて、そのサービス提供は、はるかに潤沢であり、
すみずみに行き渡っていることがわかる。もとより基本的環境、諸条件が異なる国家と
2
の比較には、然るべき判断が必要だが、福祉先進国の北欧の状況は理学療法士の重要さ
を示す一例として着目したい。
兵庫県の状況(平成 19 年)
兵庫県の人口 5,595,601 人。65 歳以上の高齢者 1,657,222 人(30%)。要介護者(県認定
者)193,906 人。身体機能障害者(障害者手帳所有者)219,474 人。実に 414,380 人が潜
在的対象者である。
医療施設(病院・診療所)5,172 か所。介護保険関連施設 6,177 か所。
しかしこれに係わる理学療法士は兵庫県で約 1,800 人(平成 19 年)であり、全国的に
みても低く、現実の要請に対応できるものとはなっていない。
さらに理学療法士への期待は以前のように病院勤務だけでなく、在宅医療をふくめ、社
会活動等広範に及び、今後これらの活動はますます重要となる。その一例だが、健康・
疾病予防・健康維持支援活動等、県行政が行う高齢者・障害者支援活動は、20 団体、81
プロジェクトに至っている。これらの事業を推進するため、県行政は 117 億円の予算を
計上し重点施策として位置付けているが、これらの支援活動はその企画・計画・実施等
に理学療法士の専門的知見・技術が極めて有効とされている。
「兵庫県リハビリテーション施設のあり方検討委員会」答申
神戸市の状況(平成 19 年)
神戸市においても基本的に状況はかわらず、その数値は実証的である。
神戸市の人口 1,532,305 人。65 歳以上高齢者 320,252 人(20.9%)
。要介護者 59,403 人
医療施設(病院・診療所)1,665 か所。介護保険関連施設 1,963 か所。
ところが理学療法士は 389 人であり、県レベルからみても低く、現状の要請に対応でき
るものにはとてもなっていない。 (図表2-1~4)
卒業後の進路であるが、前述したようにますます深化する高齢社会を迎え、理学療法士
の需要と期待はさらに高まっているのが現状である。しかもその守備領域はさらに広範
なものとなっている。医療機関、介護老人保健・福祉施設、通所・訪問施設等の介護保
険関連施設、健康維持や障害予防にかかわる生活習慣病予防施設、スポーツ・フィット
ネス関連施設、その他関連事業の展開はますます広く、需要期待推測は極めて堅実なも
のがある。
2008 年(平成 20 年)現在全国の理学療法士資格者は 65,000 人と推定されるが、今後
10 年間に現在数の 3 倍以上は必要との関係機関の実証的研究もある。
兵庫県には理学療法学を設置している大学は国立 1、私立 4 の 5 大学で、入学定員の合
計は 200 人であり、私立 4 大学の卒業生がその 1.3 倍、国立が定員どおりと仮定しても、
卒業生は 254 人にとどまる。専門学校の卒業生を考慮しても、必要度からみて、需要状
況は一貫して高く、この状況はかわらない。
3
一例だが、兵庫県に設置されている某専門学校の 2008 年度(平成 20 年度)求人状況は
この分野の環境を示す。卒業生 38 人に対し、求人は 749 施設、2,046 人であった。地域
別にみると兵庫県 180 施設、大阪府 106 施設、京都府 47 施設、和歌山県 24 施設、滋賀
県 15 施設、
奈良県 14 施設、その他 363 施設である。
さらに某専門学校の介護保険関係施設からの求人状況では、2006 年度 12.3%、2007 年
度 13.7%、2008 年度 15.1%となっており、3 年間をみても年々増加しており需要が活発で
ある状況の一端を示している。
卒業後の進路について重要な今日的観点として着目するのは、医療機関以外にもう一つ
の要請、社会的活動である。兵庫県が数年前設置した「リハビリテーション施設のあり
かた検討委員会」の答申に示された活動計画には、リハビリテーション施設の活動領域
を病院等医療施設以外に地域・在宅をふくめ広範囲にその対象を設定している。前述し
た通り、たとえば地域住民の健康増進、障害者スポーツの推進等、生活支援等の活動に
理学療法士への期待が十分伺われるものになっており、その後県の重要施策としてこの
方針が着々と進められている。
卒業後の進路の主要なものは病院等医療施設であるが、これからの近未来を想定したと
きに兵庫県の施策に関心をもたざるを得ない。
学生確保の見通しについては、近畿圏は高校生進学率は全国トップに位置する。京都府
63%(1 位)
、兵庫県 58%(2 位)
、大阪府 56%(3 位)。3 府県の志願者数は 2007 年(平
成 19 年)96,969 人、2004 年(平成 16 年)から 0.2%減尐にとどまっているが、他圏域
との流入出は流入が圧倒的に高い。
理学療法士の養成は従来専門学校でなされていたが、近年この分野が専門化、高度化す
るに従い、次第に大学の課程に組み込まれていった。大学としての設置は 10 年ほど前だ
が、本格的展開は数年前である。近畿圏では 12 大学(私立)で設置されているが、2007
年(平成 19 年)の受験倍率(受験者数/入学定員)は平均 13.7 倍であった。28.6 倍を最
高に 20 倍以上 4 大学、10 倍以上 2 大学、5 倍以上 2 大学、3 倍以上 3 大学となっている
(情報公開大学のみ)
。以上総合的に見て、学生確保の見通しは明るい。
4
図表1
資 料
2007年7月末
1.
1965
2004年9月末
1952
2002年4月末
1289
2000年4月末
842
0
1000
1055
1112
965
711
要支援・要介護1
1445
629
960
775
4465
4024
3029
2182
2000
3000
要介護2・3
4000
5000
要介護4・5
介護保険事業報告(厚生労働省)より改変
図表2-1 神戸市の年齢別人口割合の推移
5
図表2-2
図表2-3
6
図表2-4
≪医学・関連科学≫
近年の医学及び関連科学の急速な進歩は、医学・医療を大きく変貌させた。それとと
もに、これまでの医学教育・研究体制・医療体制についても、これまでの枠組みを超え
新しい対応が要請されている。
すなわち、医療技術の高度化とともに、その細分化、専門化が進み、一方で医療情報
は増加の一途を辿る。さらに、高齢化社会を迎えて多様化する疾病構造の中で、患者の
立場に立った、患者中心の医療『全人的な医療』の実現が強く求められている。この目
的を達成するためには、分化される専門的領域において、その知識、技術の進歩だけで
なく、これらの有機的統合と、さらに、人間の生命の尊重という倫理性をも加えた調和
のとれた医学・医療の総合的な発展を目指すことが必要となっている。
1 高齢化社会による疾病構造の変化への対応。2 ノーマライゼーションの理念に基づく
自立生活への希求。3 社会保障の再構築。4 活力ある福祉社会の構築。これらの要請はむ
しろ緊急課題であり、積極的対応が要請されている。
≪リハビリテーション医療≫
理学療法士の資格制度がわが国に誕生してから 40 年を経過し今日ようやく「リハビリ
テーション」という言葉が国民に浸透し、理学療法は一般に理解されるようになった。
これらを背景に理学療法士に対する社会的期待や要望も大きくなってきており、専門家
としての能力はもちろん資質・品性も大いに問われる時代となっている。
また、わが国の医療技術系の教育は、これまで専門学校を中心としてなされ一定の成
果をあげてきた。しかし今日、医学・医療の著しい進歩にあわせ、細分化・専門化が急
速に進んできた状況がある。そのなかで、これら専門領域に求められる知識技術のます
ますの高度化、緻密化等、高等教育機関によってこそ果たし得る課題があきらかになっ
てきた。さらに、生命の尊厳という医の倫理を軸として、有機的な統合とシステムの今
7
日的確立等、将来課題を展望したとき、これら新しい高度な医療体制を担う指導的人材
の育成は避けて通れない課題である。学部教育においてもそれを十分見据えたものとし
なければならないだろう。本学にとっては将来課題であるが、大学院レベルの教育研究
による修士・博士育成への課題である。
今日、これらの状況を俯瞰したとき、将来にわたりこの分野の使命は極めて重要であ
り、このような背景をもとに、本学ではリハビリテーション学部・理学療法学科を設置
し、これら社会的要請にこたえるものとしたい。
(c)理念目的
本学、リハビリテーション学部は医学・医療の原点である『全人的復権』の基に『人
間の保健・福祉』を追求する学問的基盤にたって、特にリハビリテーションの中核的な
担い手である理学療法の高い専門的知識と技術、及び豊かな教養と人間性を持つ有能な
理学療法士を養成することを理念目的とする。
(d)どのような人材を養成するか
リハビリテーション医療への期待と可能性、その進歩と発展は社会や経済、文化の構
造的変貌と密着し、まさに人間の営みと連動して高まってきた。身体活動や意識精神活
動の自由は人間存在の基本的条件、まさに権利といって差し支えない。個人個人が『幸
せ』を希求する。この当然のありようにリハビリテーション医療がどう応えていくか、
その実践者である理学療法士の資質は極めて重要である。
特に今日の経済社会状況あるいは環境はリハビリテーション医療への需要を極めて積
極的なものとしている。本設置趣旨“背景”の《一般情勢》でも述べたが、健全な社会
にとってもっとも重大であり、人々が切望する健康保持、心豊かな生活の確保が、今日、
経済、社会、文化、自然等人間を取り巻く環境の変化によって、かならずしも意を満た
している状況といえない現実がある。
経済社会環境の影響のなかでストレスを深化させた人々、また疾病により長期の身体
的困難をかかえ、社会復帰を切望する人々、交通事故の被害者の一日も早い日常復帰へ
の期待、一例であるがこれらの人々の切実に希求する医療への期待は、その数的、質的
を問わず、日とともに深まっており、これらに対応する医療はまさに、時代が要請する
社会的課題といって差し支えない。
障害をもった人々に健全な生活の営みを確保させ、社会復帰を一日も早く実現するた
めリハビリテーションの課題はますます大きくなりつつある。平成18年度厚生労働白
書にもこれらメディカルスタッフの養成は今日不可避課題であることが述べられている
が、その担い手である『理学療法士』の育成は、社会的急務とするところである。
*十分な知識と技術及び豊かな人間性を持つ有能な理学療法士。
*医療における高度な知識や技術の取得のみではなく、特に人間性あふれる理学療法士。
8
*医療の現実に意欲的かつ柔軟に対応できる理学療法士。
*医療集団のなかでリーダーシップ能力を発揮できる理学療法士。
*国際的感性と視野に立ち、国際活動を可能とする能力を持った理学療法士。
①医療の高度化に対応しうるリハビリテーション医療技術専門分野での中核となる理学
療法士の養成
現在わが国の高度に伸展した医療は、医療の分担を目的とした病院群の機能分類、
家庭での医療体制への対応など、新しい課題を提起している。すなわち、高度に展開
される医療に機能的に対応するとともに、病院医療をすませた患者や障害者にたいし
て、従来の家庭の世話ではなく、家庭において医療を行い、地域社会が広くこれに対
応することが強く要請されている。これに伴い地域社会に核をもつ公的集団から派遣
される人材、特に理学療法士が果たすべき役割が極めて重視されているが、これらの
中核的、指導的人材の養成を目指す。
②より高度で人間愛に富んだ医療を提供できる理学療法士の養成
いつでも、どこでも、だれでも、どのような状況・条件にあろうと今日到達のレベ
ルと同じ医療サービスを受けられることが必要であり、患者が切実にもとめる医療と、
その根底にある『人間的営み』への希求に応えるには、人間愛に満ちた全人格的資質
が不可欠である。しかしこれらの養成に応えられる人材は現在、数・量ともけっして
満足できる状態にはない。この課題に積極的に対応できる人材養成を目指す。
③地域医療・在宅医療などの医療の広汎化に対応できる理学療法士の養成
活力ある福祉社会の構築には地域医療の確立が必要であるが、医療の高度化と社会
的期待にともない、単独でも医療の多くを担当しその役割と責任を果たすことが要請
されてくる。これらの要請にこたえるには専門能力とともにリーダーシップ能力が必
要となる。これらの養成に十分応えられる人材の養成を目指す。
④医療活動のプロデューサー・コーディネーター・マネージャーのできる理学療法士の
養成
チーム医療の一員としての活動の他に、それぞれの活動分野の中核として、スタッ
フをリードし、さらに他の分野との連携、調整等の役割を担う人材が必要とされる。
これらの要請に十分応えられる人材の養成を目指す。
⑤国際活動の一員として活動できる理学療法士の養成
医療先進国の一員としての、わが国の果たさなければならない課題と役割は重要で
ある。特に発展途上国への支援活動等国際協力に貢献できる人材の養成は急務とされ
ている。そのためには国際的感性と視野は基本的資質となる。国際活動を可能とする
能力を持った理学療法士の養成。これらの要請に十分応えられる人材の養成を目指す。
9
イ
学部学科等の特色
中央教育審議会の答申(平成 16 年 12 月)
『我が国の高等教育の将来像』の提言する『高
等教育の多様な機能と個性、特色の明確化』には次のような視点が示されている。
(新時
代の高等教育とは、全体として多様化するとともに、学習者のさまざまな需要に的確に
対応して個々の高等教育機関が自らの資源を重点的に投入し、質的向上を図ることが求
められている。
)
これらに立脚し本学新学部はその役割、機能を明確化し、個性、特色を確保するもの
とする。
(a)リハビリテーション学部理学療法学科の基本的教育目標を以下の通り設定する
①より高度な専門的知識と技術を有する理学療法士の養成を目指す
②理学療法士の教育機関の指導者養成を目指す
③障害者が生体の機能や能力を十分発揮でき、社会復帰させるための基礎理学療法学を
指導できる人材を養成する
④障害者に対する治療学としての物理療法の原理と応用を教育し、これを実践できる人
材を養成する
⑤運動療法(理学療法基礎治療)での生体工学的、運動力学的な面を理解し機能的理学
療法を指導できる人材を養成する
⑥障害者の残存機能の有効利用ならびに機能を喪失したものへの義肢装具の有用性や開
発の方法論を主とした運動器障害理学療法を駆使できる人材を養成する
⑦循環器、代謝性疾患、感覚器系疾患などによる臓器障害に対するリハビリテーション
としての臓器障害理学療法に対処できる人材を養成する。
⑧健康増進のためのスポーツに対する基礎的、臨床的なスポーツ理学療法の展開ができ
る人材を養成する。
⑨世界における健康水準の格差を知り、問題意識をもち国際貢献できる人材を養成
する。
⑩科学的・倫理的思考、創造的探求心、研究志向性を持った人材を養成する
(b)医療技術者の養成
リハビリテーション学部理学療法学科では、理学療法士の資格取得を第一義とするが、
それだけでなく、今日細分化が進み、多様化した医療技術分野に対応できる幅広い学問
的資質を有する人材の養成を目指す。
(c)組織とカリキュラム
システムを含め学習形態の有効設定を工夫する。例えば学習の専門分化が進むと、総
合的全体的であるべく「人」への接近を、ややもすると見失う危険性がある。それへの
対応を目的意識的に行うため、講座の細分化をできるだけ避け、複数教授による対応と
10
開放的で柔軟な組織的形態を取る。
また、教養科目及び一部の専門科目においては、経済学部の学生と共に学べる機会を
多くし、相互理解と人間交流を深め、協調性に富む人間形成を目指す。
(d)教育指導者・研究者の基盤となる資質の確保
医療活動の従事者は高度な学識、技術、さらに倫理的感性が要求されるが、それらの
資質の養成のためには、大学院レベルの教育が必要とされる。本学はあくまで学部・学
科の設置であるが、その方向性を重視し、教育指導者、研究者の養成のための基盤とな
る教育の確保を目指す。
(e)国際化に対応した保健・医療の推進
国際交流を重視する立場から、発展途上国への支援活動等に医療技術専門職として、
参加できるための能力、その養成を含め目指す。
ウ
学部、学科の名称及び学位の名称
(a)リハビリテーション学部(Faculty of Rehabilitation)、理学療法学科(Department
of Physical Therapy)
リハビリテーション医学とは、身体の機能・構造の障害に基づき発生する、活動の制
限や参加の制約を受けている全ての障害のある人を対象とし、障害を持つ人の「完全参
加と社会的平等」の実現を追求する学問であり、健康増進、疾病・障害予防、病人・障
害者の治療及び介護、社会復帰あるいは適応等のための援助等、その分野はきわめて広
い。
本学部は理学療法学科を設置するが、その学問基盤はリハビリテーション医学にあり、
学部・学科名称として最も適当である。
英語名称は国際的な通用性について熟考検討した結果、教育課程等から適切な名称で
あると考えられるので、Faculty of Rehabilitation 及び Department of Physical Therapy
とした。
(b)学位の名称
学士(理学療法学)
本学科の卒業要件を満たしたものには学士の学位を授与する。本学科で教授する理学
療法の領域は、理学療法の観点から保健・医療・福祉活動の中でリハビリテーションを
担う専門職として、疾病あるいは障害に応じて観察評価し、治療計画を立案及び治療を
行うに必要な知識・技能に関する領域であり、また他職種や関連機関との連携を適切に
行う能力を有することを必要とする領域でもある。これらを教育・研究する専攻分野と
しては既存の学問領域に限定しうるものではなく、その専攻分野は総じて理学療法学と
11
称すべきものと考えられる。それゆえ本学が授与する学位の専攻分野の名称を学士(理
学療法学)とする。
エ
教育課程編成の考え方及び特色
(a)理学療法学科における教育の基本は以下の 6 項目である
①豊かな人間性・社会性及び豊かな教養に基づく生命の尊重を基本理念とし、理学療法
の専門職業人として、その倫理観を醸成することを目的とし、社会における責務を遂行
する能力を養う。
②理学療法の観点から、疾病あるいは障害に応じて観察評価し、治療計画の立案及び治
療を行うに必要な高度な知識・技術力を養う。
③障害を持つ人を全人的(身体的、精神的、社会的存在)にとらえ、個々人に対し、あ
るいは社会的、地域的なニーズに応じ、意欲的かつ柔軟に、適切な理学療法介入が行え
る能力を養成する。
④保健・医療・福祉活動の中でリハビリテーションを担う専門職として、多くの他職種
や関連機関との連携を適切に行う能力及び、その中でリーダーシップがとれる能力を養
う。
⑤国際化社会に対応するために、国際的視野に立ち、国際的感性を高め、国際的活動を
可能とする能力を養う。
⑥専門職業人としての自立を目指すとともに、科学的・倫理的、創造的探求心、研究志
向性を養い、教育者、研究者としての基礎能力を養う。
(b)教育課程の基本構成
本学部の設置趣旨、目的に従って、授業科目を「教養科目」
「専門基礎科目」「専門科
目」の各科目群によって体系的に構成する。
≪教養科目≫
リハビリテーション医学の対象は「人」である、しかも“こども”から高齢者まで幅
広い。このような対象者と良好な人間関係を築くためには幅広い一般教養が必要となる。
「教養科目」は豊かな人間性・社会性及び豊かな教養をもち、また国際化、情報社会に
対応できることを念頭におき、一般教養と専門教育への基礎を兼ねた科目を学習する。
「教養科目」では、
「必修科目」と「情報科学」、
「自然と科学」、
「人間形成と思考」、
「歴
史と文化」
、
「ことばと文化」の選択科目 5 分野を教育内容として位置づけた。
「必修科目」
と「自然と科学」
(選択科目)では、人間の生命の尊厳を倫理面のみならず、生命、環境、
社会的、健康科学的側面といった多角的な視点から理解する。
必修科目の「統計と社会」及び選択科目の「情報科学」分野では、科学的思考を基盤と
し、IT機材の設備を使用して情報処理能力を養う。国際化社会に対応するために、
「英
語」及び「医学用語・英語」の科目を開講するとともに、
「歴史と文化」、
「ことばと文化」
12
を設置し、充実させた。
≪専門基礎科目≫
「専門科目」における知識や技術を習得するための基盤となるもので、理学療法士と
いう専門職を目指す動機付けにつながることをねらいとして、
「人体の構造と機能及び心
身発達」
「疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進」「保健医療福祉とリハビリテーシ
ョンの理念」を教育内容として位置づけた。
「人体の構造と機能及び心身発達」では、身体の構造機能、身体の生理機能を系統的
に理解するとともに、実習科目を多く配当することでこれらの知識の習得を図る。
「疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進」では、主要疾患の病因、病態、診断、
治療法を理解する。
「保健医療福祉とリハビリテーションの理念」では、現代社会における社会保障の理
念や意義を体系的に学ぶとともに、リハビリテーションの概念を包括的に理解する。
さらに「医療経済学」を必修科目として設け、医療専門職者の行動を規定する医療保
険制度を含む現在の医療経済の現状と、その問題点や今後の課題を理解する。
この特色は近未来を視野に入れた本学の独自性を示したものであり、今後理学療法士に
開業権が獲得された場合にも対応できるよう配慮した。
≪専門科目≫
理学療法士としての専門性を高めるために必要とされる「基礎理学療法学」
「理学療法
評価学」
「理学療法治療学」
「地域理学療法学」
「臨床実習」を教育内容に位置づけた。
「基礎理学療法学」では、理学療法の概要と基本を学ぶとともに、理学療法士として
の問題解決のための基本的な能力を養う。
「理学療法評価学」では、理学療法の現場で必要とされる評価法の知識と評価技術を
学ぶ。
「理学療法治療学」では、各種疾患、各種障害に対する理学療法の知識と理学療法技
術を学ぶ。
さらに「国際援助論」を選択科目として設け、国際的な医療・福祉について学び、医
療・福祉の向上のための援助活動やその方法論について学ぶことで、本学の独自性を示
すとともに、国際活動を可能とする能力を養う。
「スポーツ障害学」
「健康増進・スポーツコンディショニング」「トレーニング実践実
習」を選択科目に設け、健康増進のためのスポーツに対する基礎的、臨床的なスポーツ
理学療法の展開能力を養う。
「地域理学療法学」では高齢者、障害者、患者を取り巻く制度的環境や生活環境、地
域における社会資源について修得し、実習を通して、地域社会に根ざした理学療法士と
してのあり方を学ぶ。
「臨床実習」では社会人としての基本的な遵守事項を身につけるとともに、理学療法
の展開に必要な評価や情報収集の修得、その統合と解釈の仕方、治療計画の立案、基本
的な理学療法ができるように教育する。
13
「理学療法研究法」
「研究法セミナー」「卒業研究」では、科学的・倫理的、創造的探
求心、研究志向性を養成する。
(c)教育課程の展開方針
1 年次には科学的志向の基礎として教養科目を主に履修する。その教養科目において
は、経済学部の学生と共に学べる機会を多くし、相互理解と人間交流を深め、協調性に
富む人間形成を目指す。
1 年次から 2 年次にかけては、基礎医学、臨床医学、リハビリテーション医学の基礎
科目を履修する。
3 年次には理学療法の専門科目及びその実習を中心に学習する。
4 年次には研究法セミナーや卒業研究を通して、科学的・倫理的思考、創造的探求心、
研究志向性を持った人材を養成する目的で実施する。
さらに理学療法を学んでいく意欲を高めるために、1 年次から医療の場である病院に
おいて患者の生活及び医療職者の行う医療行為を見学・体験することにより、医療に取
り組む動機づけと医の心・社会的使命感を養う。このような臨床実習は、2 年次にも実
施し、より専門意識を持って実習を行う導入とする。3 年次には実際の臨床の場で、臨
床において遭遇するさまざまな疾患及び損傷に対する理学療法評価技術を習得・理解す
る。4 年次には、臨床の場での理学療法の全プロセスを修得理解するための実習を実施
する。
(d)教育方法
カリキュラムの具体的な展開は、教育理念に基づく教育目標の達成を目指すものであ
り、教育方針に基づく周到に準備された教授方法によって実現されるものである。それ
には講義、学内実習及び地域の各種医療施設等での臨床実習を通して教授する。学内で
の視聴覚教材の活用と実習室でのデモンストレーション等により臨床実習との一貫した
教育内容を実施する。各講義科目においては、Problem based learning を積極的に導入
し自己啓発学習方法を取り入れる。また、グループ学習、セミナー方式による学生の自
主的な参加と研究態度を重視した教育を取り入れる。
(e) 学生への教育支援
学生が学生生活を送る上には、学生同士の交流・支援ばかりでは解決できない学生生
活上の問題や履修・教育上の問題が発生することがある。そこで、学生が有意義で充実
した学生生活を送るためには、大学生活において発生する学生生活上の問題や履修・学
習上の問題については、教務委員・学生委員を中心とした全教員による教育支援を実施
し対応する必要がある。そのひとつの方法として各教員がオフィス・アワーを週 1 回設
定し学生が自由に教員に面談できるように web 等にて開示し、大学在学中における学生
の生活及び教育の履修・学習に関する問題に関する個別相談に積極的に対応する定期的
な時間を設定すると共にオフィス・アワー以外にも適宜対応に努める。さらにその相談
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内容によっては月1回の定期的な学科会議および必要に応じて学科会議を開催し教員間
の連携を図り対応する。
履修・学習においては学生により習熟度のバラツキも予想される。各科目において学
生の理解度が学習到達目標に十分達成できていない学生に対しては、授業の空き時間等
を利用してリメディアル(補習)教育を実施し学生の学習の習熟に対応する。
また、
「研究法セミナー」
「卒業研究」では、尐人数制の教育指導を実施し、学生個々
の学習を支援するように対応する。
特別なチューター制としての時間や講義科目はもうけないが、以上の学生支援体制を
確立させ、入学後の学生への教育支援を実施する。
15
教
育
理
念
と
教
育
課
程
の
構
成
人の健康増進と生活の自立支援
社会貢献
ヘルスプロモーターとして
障害の予防・治療
高齢者のサポーターとして
地域医療の実践
健康増進
高度な専門性・問題解決能力と実践力・国際的視野と能力
教育課程
専門科目
教養科目
専門基礎科目
教育理念
豊かな教養と人間性、健全な社会性、
高度な専門知識と技術を持った理学療法士の養成
16
カ
教育方法、履修指導方法及び卒業要件
(a)卒業に必要な単位数
教養科目
必修
14 単位
専門基礎科目
必修
30 単位
専門科目
必修
59 単位
選択科目
合計卒業要件単位数
24 単位
127 単位
(b)履修指導方法
本学に入学した学生に対し、入学式直後のオリエンテーションにおいて、履修方法に
ついて説明をし、さらに履修方法を徹底するために尐人数単位あるいは個別でも履修指
導等を行う。本学部、理学療法学科の教育課程には、
「教養科目」、
「専門基礎科目」、
「専
門科目」があり、それぞれの履修に必要な単位数は前記の通りである。
(c)学生の習熟度及び質的保証への対応
本学科は、
「国家試験の受験資格を取得すること」が最重要課題であるので、国家試験
合格を最低ラインの目標として履修・学習することが基本になるが、学生により習熟度
にバラツキが予想される。科目において学生の理解度や学習到達度に応じてリメディア
ル(補修)教育を実施し対応する。
しかし一方で理学療法士は医療従事者として人の健康を管理するという社会的使命を
負っていることから、学生の質的保証をするために、本学では「出口管理」の強化を図
る。具体的には一定の学習到達点に達しない学生については、進級留め置き(留年)あ
るいは進路変更指導や退学勧告を実施することで対応する。
17
ク
入学選抜の概要
(a)本学が求める入学候補者
将来、多くの職種の医療チームの中で、高い専門知識と技術、及び豊かな教養と人間
性を持つ理学療法士として、さらには教育指導者及び研究者として期待されるもので、
学習能力に優れ、社会適応能力を有した人格の優れた人材を求める。
(b)入学資格
①高等学校を卒業した者(卒業見込み含む)及びそれと同等と認められる者
②出身学校長の推薦を得た者
③当該年度大学入試センター試験を受験した者の内、本学が指定する教科・科目を
解答した者
④外国で高等学校に相当する課程を修了し、日本で日本語学校または専門学校を修了し
た者
⑤満 23 歳以上で、大学入学資格を有する者
(c)選抜方法
リハビリテーション学部入試(案)
①推薦入試(指定校推薦 若干名、公募制推薦A※25 名、B 5 名、施設推薦
若干名、
附属高校推薦 若干名、自己推薦A 2 名、B 2 名…2 年目以降)
※の 25 名には指定校推薦、附属高校推薦、施設推薦の募集人数を含む
本学において求める学生像や入学志願者に求める能力を明確にし、調査書の内
容、個別学力検査、面接、小論文等の多様な試験方法により判定するもの
(一例)公募制推薦入試A…学力試験(英語、国語、数学から 2 科目)
、調査
書、面接による総合判定
②一般入試(一般入試A 20 名、B 10 名、C 5 名、D 3 名)
高等学校学習指導要領を踏まえ、本学学部の目的・特性に応じた個別学力検査に
より入学志願者の能力・適性等を合理的に判定するもの
(一例)一般入試A…学力試験(2 科目)
必修 英語
選択 国語(現代文)
、数学(数学Ⅰ・数学A)
、生物Ⅰ、物理Ⅰ
以上より 1 科目を選択
③大学入試センター試験利用した入試(センター利用入試A 3 名、B
3 名、C 2 名)
(2 年目以降)
入学志願者の高等学校の段階における基礎的な学習の達成の程度を判定し、本学
教育を受けるにふさわしい能力・適性等を多面的に判定するもの
18
(一例)センター利用入試A…(3 科目)
、個別試験は課さない
必修 外国語(英語Ⅰ・Ⅱ)
選択 国語(国語総合)
数学(数学Ⅰ、数学Ⅰ・A、数学Ⅱ、数学ⅡB)
理科(化学Ⅰ、生物Ⅰ、物理Ⅰ)
以上より 2 科目を選択
④特別入試(社会人入試 若干名)…小論文、面接による総合判定
(社会人の条件は勤労経験 2 年以上の者)
ケ
資格取得
(a)取得可能な資格
取得可能な資格・・・理学療法士の国家試験受験資格
(b)実習活動
1)実習活動の基本的考え方
①医療の根本である「人間を知ること」
「生命の尊厳について理解すること」を、実際の
体験から修得する。
②対象の個別性を尊重した援助方法を習得する。また、対象の権利を尊重し、これを守
る姿勢を堅持する。
③福祉等他の分野との連携を必要とするため、柔軟かつ創造的な問題解決能力を高める。
また、チームケアの一員としての役割やそのマネジメントを理解する。
④地域社会との連帯を重視するための、地域医療活動を修得する。また、対象のセルフ
ケア能力を高め、自立した生活への援助を身につける。
⑤実践的な専門能力を磨くためにあらゆる課題に対し、自ら考え、自ら判断し、専門職
として適切に行動できる能力を身に付ける。
2)実習の具体的な計画
理学療法医療は対象へ密接に接触する医療である。高度な専門知識・技術を身に付ける
ことはもとより、豊かな人間性、献身性、福祉の心を必須とする。本学では知識力、理解
力、技術力、想像力さらに、情愛の精神を重視する。特に臨床における実践能力の効用を
最重点として位置づける。
臨床実習は、学んだ学習成果を実際の医療現場において展開していく場であり、理学療
法学習者にとって最も重要な教育課程である。これら活動に万全を帰す体制で臨むものと
する。
臨床実習は必修 5 科目 18 単位からなる。これらの実習を展開するには後述の実習前後の
19
学習指導はもとより、実習受け入れ先の施設との連携を特に密にしなければならない。
3)実習前における感染症対策
理学療法学教育の中でも、
病院・施設での理学療法の見学や臨床実習は特に重要である。
しかし、実習現場においては、クライエントからの実習学生への感染が問題になるが、そ
れ以上に実習学生からクライエントへの感染が重大な問題であり、以下の対策を実施する。
なお、この対策は国立大学を含め、近隣大学の例を参考とした。
①入学前に麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎の感染経緯の調査票を配布するとともに
抗体検査を実施する。
②抗体価の低い学生に対しては初期体験実習までにワクチン接種を推奨し感染予防策を
実施する。
③「救急・災害医学」
、
「公衆衛生学」、
「理学療法リスクマネージメント論」、
「医療安全・
感染症予防学」を必修科目として設定する。
④実習前の実習指導者会議において、本学の感染症対策についての情報提供を行い臨床
実習施設側と十分な連携を図る意見調整を行う。
⑤実習前指導においては、実習オリエンテーションを設けリスク管理や、MRSA、結核、
肝炎、エイズ、疥癬、インフルエンザ、O-157 等の感染症への対応として、接触、飛
沫、空気感染を予防すべく手洗い、手袋、マスク、ガウン・エプロン使用等の感染予
防に関する指導を実施する。
⑥感染事故が生じた場合は、早急に臨床実習施設や学生からの情報入手に努め、学生や
クライエントの健康を第一に考え今後の臨床実習について臨床実習施設側と早急に
協議を行い対応する。
以上により、安全で安心できる医療の実現に向けて、感染症ならびに医療事故の防止予
防についての対策を行う。
4)実習水準の確保の方策
年に数回の臨床実習指導者会議を開催し、本学の実習目的、内容、学生評価等の概要を
説明し実習水準を一定に維持することとする。また、実習指導者研修会を開催し実習水準
の維持・向上に努める。その他実習施設訪問時に、施設指導者と諸問題について協議、解
決し実習水準の一定化を図る。
サ
自己点検・評価
本学自己点検・評価の活動は下記のとおりである。
平成 4 年 7 月 24 日「自己点検委員会」の設置を決定、教員 6 名、職員 2 名からなる「自
己点検委員会」を設置し点検活動の具体的実施計画を検討した。
平成 4 年 11 月 22 日「自己点検委員会規定」が作成され発効する。それに基づき、業
20
務及び点検内容を検討その計画を得て、平成 5 年第 1 回自己点検・評価を実施した。
平成 5 年 3 月その結果を公表、平成 10 年 3 月中間報告書としてまとめ公表、平成 11
年 2 月「神戸国際大学の現状と課題」を発行した。さらに、平成 17 年、18 年 3 月に「神
戸国際大学自己点検・評価中間報告書」を作成し教育研究活動の充実発展をめざした。
平成 19 年学科名称の変更とカリキュラムの大改定を実施したが、これらは自己点検・評
価の活動によるものである。平成 20 年「神戸国際大学の現状と課題(2008 年度)
」の発
行を予定している。
今後は、第三者評価及び外部評価に取り組むため「自己点検委員会」の機能・権限等
を強化し、全学をあげて点検活動をさらに充実する予定である。第三者評価に向けて全
学の準備を進めていく。
学生による評価は、平成 14 年 12 月 18 日教授会で策定され、平成 14 年度後期の最終
週に実施された。その後、質問項目を若干変更し、平成 15 年度より毎年、前・後期の各
最終授業の際に実施している。
教育活動の充実、そのための研鑽は教員、職員にかかわらず、大学の全体の課題とし
て取り組む。学生による直接の評価は、その直接性により、より客観的であり、極めて
重視すべき評価内容との立場にたって、今後さらに充実していく予定である。質問評価
項目は資料として示した。
シ
情報の提供
全学の状況、活動内容はホームページで公開している。また、教員を中心とした研究
活動についての情報化は特に組織的に行っている。
本学教員の研究活動の状況に関する情報の提供は、前述の『自己点検報告書』におい
て、全教員の「専門分野」
「現在の研究課題」
「研究業績(主な著書・論文等)
」「学会活
動」
「社会的活動」を公表している。今後さらに、地域との連携を図る観点から、全教員
の「研究業績」や「高校生向け講義テーマ」
「一般向け講義テーマ」等の項目について、
ホームページ等による情報の公開を予定している。
また、教員の研究活動の成果は、神戸国際大学学術研究会が出版する『神戸国際大学
紀要』
『神戸国際大学経済経営論集』
、及び神戸国際大学経済文化研究所が出版する『経
済文化研究所年報』の 3 種類の学術論文集で閲覧できる。なお、
『神戸国際大学紀要』
『神
戸国際大学経済経営論集』に掲載されている論文は、神戸国際大学学術研究会が Web 上
に掲載すべく現在構築中である。
また、2002 年度より講義のシラバスを Web 上に公開している。その他、
『学生便覧』
『情
報センター便り』を印刷し、学生や保護者、地域の人々に情報を提供している。
ス
教員の資質の維持向上の方策
21
このことについて、特に『わが国の高等教育の将来像』
(平成 17 年 1 月中教員審議会
答申)はファカルティ・ディベロップメント(FD)の重要性を述べている。
「教員が授業内容・方法を改善向上させるための組織的取り組みの重要性、特に、教
員の教育能力の向上及び教育技術の開発・向上等、大学教育における質的向上を図る全
ての取り組みの重要性」
。また「教育研究における目的の明確化、成績評価基準等の明示
化、教育内容等の改善のための組織的研修等」が強調されている。
これらに関し大学設置基準等が一部改訂された(平成 17 年 7 月 31 日)
。『大学設置基
準第 25 条 3 項』は「教育内容等の改善のための組織的な研修等」について“実施に努め
なければならない”から“実施するものとする”となり、さらに「教育内容等の改善の
ための組織的な研修等に関する事項」でその義務化が強調されている。
これらの指示もしくは提言をうけ、本学では、
「社会により開かれ、密接に結びついた
大学」を目標とし、教員の資質(教育、研究、管理、社会奉仕等に必要な専門能力)の
維持・向上を目指してきた。この取り組みの中心を成すのが「教育改善委員会」である。
この委員会は外部の専門家を招き、研修会や講習会の開催、授業の公開等を計画・実
施してきたが、今後これらの活動を充実発展させ、従来の特定日程開催を定期的開催と
し、併せて教育研究セミナーの参加を推進、あらゆる機会を活用し、教職員の研鑽と意
識向上を積極的に図っていく。
授業改善アンケートは従来より実施してきたが、この活動をさらに進め、学生の要望
を直接聞き、諸活動に活用する取り組みを推進する。また、保護者からの意見、要望を
直接聞く機会をさらに充実する。そのため、平成 20 年 4 月より「FD委員会」を発足さ
せ、鋭意努力している。
今後の取り組みとして特に学生評価による授業評価を実施する。これについては「F
D委員会」を中心として、従来より実施してきた前期・後期の授業終了時に講義科目お
よび実習科目等について学生評価をさらに充実させる。この学生による評価は、もとよ
り授業を改善するための基礎資料を収集するための作業に過ぎず、アンケ-ト調査で得
られたデ-タを基に授業内容や方法の改善策を立案し、授業にフィ-ドバックする。
その方法としてFD委員会をさらに充実させて、各教員にその評価結果を周知させる
と共に、その結果に対する適切な対応・解説を付け、学生が容易に参照できるように web
あるいは図書館での閲覧を実施する。
また、公開授業や教員間による参観授業を積極的に促進し、教員による教育内容・方
法に関する評価を実施し授業内容や方法の改善に取り組むことも重要である。
特に次の2点に着手する。すなわち 1)授業評価の結果および対応・解説を付け、教
職員および学生への公開、2)公開授業・教員間参観授業の促進により、教員の資質向上
に積極的に取り組む。
また、これまでも実施されてきたように、教育の目的・内容・目標を明確にすると共
に成績判定基準を併せてシラバスに明確に記載し、学生の学習目標を開示する。
これらは講義科目ばかりでなく、実習科目においても重視する。
22
教員の資質向上は不断の課題として位置づけ、定期的な教育研究セミナ-を実施し、
教職員の研鑽と意識の向上を積極的に図っていく。そのためには、教育内容・方法の改
善、FD活動、カリキュラムの検討改革等を総括的に研究開発するため「FD委員会」
が大きな役割を担うことになるであろう。
23
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