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SAFETY NOTE - 北海道大学サイクリングクラブ

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SAFETY NOTE - 北海道大学サイクリングクラブ
Apr. 1st 2013
SAFETY NOTE
FOR PLESURE AND SAFETY CYCLING
Hokkaido University Cycling Club
初めに
91年夏からクラブでは総力を挙げて安全対策に取り組んできたわけですが、この中で感じ
てきたことは楽しさを追求しようとするとどうしても危険因子を増やしてしまうということ
でした。極力危険因子を減らそうと努力してもそれは皆無にならないものです。これはアウト
ドアスポーツの宿命であり、避けては通れないものだと思います。だからといって楽しさの追
求をやめては本末転倒というものでしょう。結局は増えてしまった危険因子をいかに回避する
かにかかっているのではないでしょうか。
SAFETY NOTE という名前は自転車走行以外の対策を盛り込んだということと、これはあ
くまで安全確保のための「注意書き」であり、「絶対的な唯一の方法」ではないという考え方
があるからです。この冊子が活用されることを望みますが、基本はその場で自分で判断を下し、
自分と他人の安全を守ることだと考えます。
どれほど楽しくとも些細な事故がそれを打ち消します。よくわきまえ、より充実したサイク
リングを目指しましょう。最後に OB からいただいた言葉を紹介します。
「最悪に備えよ」
(銀輪26号、S46年卒 南野真一さんの文章表題)
I
改訂の序
昨年度(2012年)のサークル活動中、救急車で搬送される重大な事故が複数回発生しま
した。これを機に安全への意識を高めようと、大切な内容の凝縮された SAFETY NOTE を改
訂することになりました。より手に取って読みやすいものにしようという思いから、レイアウ
ト、挿絵、製本方法を刷新しました。内容の面では、現在の走行方法に適さないものを改め、
一部を削除、変更、あるいは追記しました。また今回新たに「コラム」の欄を設け、今まで「ア
ドバイス」として記載されてきた内容などをまとめました。
偶然と言われる事故も、後から振り返れば、それを招いた自らの行動が確かにあったことが
わかるのです。発生する前にその状況に潜む危険を心に留め、いかに回避するかを知ることが
大切です。本書の目的はまさにそこにあります。
今後もこの冊子が見直され、より現在の状況にあったものへと改訂され続けることを願って
やみません。
II
目次
初めに I
改訂の序
II
第1章 走行にあたって
第5章 状況別走行注意
1. コーナリング(平地)
17
2. 下り坂
17
1. 走行前の準備
1
3. 橋
20
2. 走行中の注意
2
4. トンネル
20
コラム「マイペースで走ろう」
2
5. ダートラン
22
3
6. ナイトラン
24
7. 登坂
25
8. フリーラン
25
「自転車乗りとしての責任」
第2章 隊列走行
1. 車間距離
4
2. 交互にずれて走行する
4
3. 隊の編成
5
1. 雨天時の注意
26
4. 隊の人数と隊間距離
5
2. 風があるときの注意
28
5. 隊同士の追い越し
6
6. 隊員心得
6
1. 各クラブランにおける注意点
29
7. 注意したい走行状況
7
2. 札幌周辺の道路状況など
29
コラム 「眠気、疲れを感じたら」
「隊を抜かせないでいる車への配慮」
8
8
第3章 手信号と隊内でのコミュニケーション
1. 基本の手信号
9
2. 隊列走行時に重要な手信号
10
3. 重要なコミュニケーション
11
第4章 交差点
1. 交差点での安全確認と安全確保
12
2. 交差点での停止
13
3. 交差点の通過、横断
14
4. 交差点での発進
15
5. 左折/右折
15
6. その他注意すべき交差点
16
コラム「信号の変わり目での判断」
16
第6章 天候に対する走行時の注意
第7章 クラブの主要コースについての注意点
第8章 無雪期登山
1. 計画
30
2. 装備
31
3. 実行
33
第9章 走行以外での注意
1. 集団心理(その特徴と対策)
35
2. 飲酒の心得
36
3. 水泳、水遊びについて
37
第10章 事故報告
38
※ 以下は北大サイクリングクラブが考案するところの安全走行の指針であり、全てのサイクリングにお
いて適切であるとは限りません。
第1章 走行にあたって
通学、通勤、普段の買い物、私たちはほとんど毎日のように自転車に乗っています。しかしスポーツバ
イクに乗り、荷物をつけて長期間のサイクリングに出るということは日用以上に多くの危険と遭遇するこ
とになります。サイクリングを楽しむためにも、その安全と危険について十分知っておく必要があります。
1.
走行前の準 備 ( 点検 と整 備 /ヘ ルメ ッ トの 着用 /パ ッ キン グの 注 意)
2.
走行中の注 意 ( 車道 走行 /歩 道走 行/ 後 方確 認/ 大 型車 との すれ 違 い)
コラム 「マイペースで走ろう」「自転車乗りとしての責任」
1. 走行前の準 備
・ パ ッキ ング
・ 自転 車の 点 検と 整備
サイクリングクラブではたくさんの荷物をサイ
走行中の安全を守るために、走る前に自転
ドバッグに入れ、自転車に積んで走行します。パ
車の点検をする必要があります。特に以下の
ッキングして走行すると車体は重くなり、慣れる
点については十分に注意して確認してくださ
までは、特に走り出しでバランスを崩しやすく注
い。特に経験の浅いうちは異常があれば進ん
意しなければなりません。パッキングに不備があ
で年長者に聞くようにしましょう。
ると崩壊し、道路上に荷物を散乱させたりし、ま
・ ブレーキの作動
た重大な事故の原因ともなります。以下にパッキ
・ ブレーキシューの残量
ングにおける注意点を述べて行きます。
・ ヘッド、ホイール、クランクのガタ
・ 横幅を極力狭 くする
・ ねじやボルトのゆるみの有無
・ 重い荷物を下 に入れて重心を低くする
・ ワイヤーの切れ、ほつれの有無
・ 左右の重量配 分を均等に
・ パッキングの安定性
・ ストラップの 張りは均等になるように
・ ストラップ・ 紐・レインカバー等がホイ
日頃から自分の自転車を整備することで、異
ールに巻き込 まれないように
常にも早く気づくことができます。また、整
・ テントのポー ルはテントと一緒に紐でく
備の方法を知っておけば、万一の故障のとき
くるか、テン トと同じ袋に入れてしまう
にも自分で対応することが出来ます。
・ 鍋の中に火器 は入れない
・ 大鍋にはスト ラップを放射状にクロスさ
・ ヘ ルメ ット の 着用
せる
北大サイクリングクラブではクラブ活動中
・ (小さいもの は特に)出来るだけバッグ
のヘルメット着用を義務づけています。万一
に入れる
の事故の時、ヘルメットは頭部への損傷を軽
・ 走行中にパッキン グを直さない
減してくれます。
1
第1章 走行にあたって
*K.T.さん(当時2 年目)
2. 走行中の注 意
95年の支笏湖ランの復路、樽前山へのアプロー
・ 車道 走行
チの林道を下っているとき、フロントバッグにか
自転車は軽車両であり、本来は車道を走行し
けていたストラップが振動のために外れ、左目に
ます。車道を走行するときは自動車と同じよう
当たって視界を失い、道路の左側にあった幅 1.5
に進行方向の左側の道路の路側帯よりを走行す
メートル、長さ1メートルほどの泥流対策のコン
るようにしましょう。絶対に道路を逆走しては
クリート製の溝に転落。受け身を取ったため大事
(自動車と逆の方向を走ること、進行方向に対
には至らなかった。その後モーラップのキャンプ
して右側の端を走ること)をしてはいけません。
場まで走ったが、足の痛みを訴え、上の方の車に
しかし車道走行には危険が伴います。車道が渋
迎えにきていただいた。
滞している時、天候の悪い時、路面状況の悪い
時など車道走行が危険である場合は歩道を走行
*Z 君(当時1年 目)
します。
95年の由仁ランの復路、白石区内で歩道を走行
・ 歩道 走行
中、フロントキャリアのサイドの枠にむき出しで
歩道を走る場合も原則、進行方向の左側の歩
パッキングしてあったペグの袋が何らかの拍子
道を走るようにします。また、その歩道の車道
にフロントホイールのスポークの間に挟まり、フ
寄りを走行します。それによって建物の影や横
ロントホイールがロックし本人は前方に投げ出
道から現れる歩行者、車、他の自転車との接触
され顔に裂傷を負った。自転車はフロントのスポ
を防ぐことができ、円滑に車道に出ることもで
ークが折れてフロントフォークも曲がった。
きるようになります。
歩道は歩行者優先であることを常に意識し、
瞬時に停止できる速度で走ります(20km/h 以
下)。歩行者、他の自転車を追い越すときには声
をかけましょう。
・大型自動車とのすれ違い
大型自動車が脇を通り過ぎる時、ベルヌーイ効
果と呼ばれる揚力によって車の方に自転車が引
き寄せられます。大型車の接近を確認したら肘を
曲げ、上体をハンドルに近づけて身構えます。
・後方確認
走行するときには前方に注意を払うことはも
ちろんのこと、後方を確認することも大切です。
後方確認なしに大型車の発見は出来ませんし、仲
間と走るときには後続が付いているか、離れてい
るかを知ることが出来ます。 2
第1章 走行にあたって
マイペースで走ろう
無理の無いマイペースで走ることはサイクリングを楽しむために重要なだけではなく、安全の上でとて
も大切なことでもあります。無理をして疲れると視線が落ち、危険の発見が遅れます。危険に対する反応
も遅くなってしまいます。また、経験が少ないのに自分の能力以上のことをしようとすることは重大な事
故の原因となります。下り坂、カーブでは自分を過信せずに走行しましょう。
集中して走ろう
走行中に携帯電話を使用する、走りながらパッキングのずれを補正する、止まらないで地図を確認する、
これらのことは容易に事故につながります。片手で運転することでバランスを崩し、前方不注意のために
障害物を回避することも出来ません。
*K 君(当時二年 目)
T.T.の練習が終わった後に、走行中携帯電話を何度もかけたがつながらず、よそ見をしていたと
ころ駐車車両に衝突した。
*91年6月 30日 グループラン (雨竜沼) 当事者2年目
走行中、テントのポールの袋がホイールに接触していることに気づく。走りながら直そうとし、
ホイールに手を巻き込み前輪がロック。自転車から投げ出される。
自転車乗りとしての責任
スポーツバイクが日本に普及する中で、マナーの無い乗り方、危険な走行などがニュースにもとりあげ
られ、自転車は今社会問題になっています。そんな中で私たちが自転車に乗っている時に何か問題を生じ
させれば「A さんが起こした問題」であると同時に、
「自転車が起こした問題」となります。一人一人が常
に自転車乗りとして責任を持っていることを意識してください。
社会の中では正しい自転車の走行の方法を知らない人たちも多くいます。車道を右側で走行している自
転車もよく目にします。私たちサイクリングクラブの一人一人が正しい走行を身につけ、それを実行する
ことは、そうした人たちへの啓発活動にもつながります。
3
第2章 隊列走行
サイクリングクラブでは複数人で隊列を組んで走行します。隊列走行の際には個々人で走る時以上に注
意をしなければなりません。気をつけて走行できれば単独で走るよりも安全で、楽しいものとなります。
注意したい点を以下にあげます。
1.
車間距離
2.
交互にずれて走行する
3.
隊の編成 ( トッ プ/ サ ブト ップ / オー ラス /初 心 者)
4.
隊の人数と隊間距離
5.
隊同士の追い越し
6.
隊員心得 ( トッ プ心 得 /サ ブト ッ プ心 得/ オー ラ ス心 得/ 隊 長心 得)
7.
注意したい走行状況 ( 歩道 への 進 入/ 車道 へ の進 入/ 路駐 車 回避 )
コラム 「眠気、疲れを感じたら」「隊を抜かせないでいる車への配慮」
1. 車間距離
2. 交互にずれて走行する
平地では最低でも自転車半分(約1m)の車間
交互にずれて走行することで全ての人が前
距離をとります。不意に前の人が減速、ある
方を確認しやすくなります。また追突や接触
いは停止したときに追突することを防ぐため
を防止する効果もあります。交互にずれて走
です。下りに入ったらスピードに比例して車
行する余裕の無いときには一直線に並び、い
間距離を広くとりましょう。上り坂では車間
つも以上に車間距離を広くとるなど工夫しま
距離がせばまりがちで接触が多発します。十
す。
分な車間距離をとるようにしましょう。
進行方向
1m
1m
4
第2章 隊列走行
3. 隊の編成
4. 隊 の人 数と 隊 間距 離
隊列で走行する場合には、隊員は隊の中で走
隊の人数は目安として5人以下とします。ま
る順番に応じて異なった働きをします。また、
た、隊ごとに60m 以上の間隔(隊間距離)を
初心者を含んで走る場合には他の隊員でサポー
おきます。隊間距離を置くのは自動車が隊を追
トします。
い越しやすくするためです。隊と隊の間に自動
・ トッ プ
車(大型自動車も含む)が退避することが出来
隊の先頭を走る人をトップと言います。常に
るだけの距離をとります。特に車の多い市街地
道路の先の状況を把握し、手信号を真っ先に出
を走行する場合、または歩行者の多い歩道を走
して隊の進行の安全を図ります。隊員の能力に
行する場合には予め合流地点を決めて前後の隊
合わせたペースで走ることも大切な役割です。
が別々に走る方法もあります。
・ サブ トッ プ
先頭から2番目、トップの直後を走ります。
トップの補助をし、トップからは直接見えない
オーラスとのコミュニケーションを取りながら
60m 以上
隊の進行の安全を図ります。トップより少し車
道側を走り、トップを保護します。
・ オー ラス
隊全体の最後尾を走り、全体よりも車道側を
走って車から隊を保護します。車と手信号を通
じてコミュニケーションをとります。
・ 初心 者
一年目 などの初 心者を上 級生が挟 むこと
で、その自転車やパッキングの異常、乗って
いる様子がよく分かります。一年目だけでか
ためてはいけません。上の年目が近くに走っ
ていることで初心者も早く隊列走行になれる
ことができます。
二年目以上
二年目以上
一年目
5
第2章 隊列走行
6.
5. 隊同士の追 い越し
隊 員 心 得( 隊 員 心 得 / ト ッ プ 心
隊同士の追い越しは原則禁止です。追い越し
得 / サ ブト ッ プ 心 得 / オ ー ラ ス
には常に接触事故の危険性が伴います。ただ
心得/隊長心得)
し、隊と隊の速度の差が明確で、走行に支障が
・ 隊 員心 得
あるときには追い越しを認めます。これは前述
・ 救急セットを携帯しその正しい使い方
の隊間がつまり過ぎるのを防ぐためです。
を把握すること
追い越すときには次のようにします。
・ 工具、予備パーツを携帯し、その正しい
1. 後続に車両がいないことを確認
使い方を把握する
2. 隊員一人一人に速度を上げられるか確認
・ セーフティーノートを熟読する
した上で、前の隊に追い越すことを伝える
・ 水分、補給食を十分に持つ
・ 保険証を携帯する
また、追い越される隊は可能な場合は歩道
・ 視力が低い場合は矯正する
に上がって一次停止して退避するとより安全
・ 走行前には準備運動をする
です。
・ パッキングは左右同じくらいの重さに
追い越しの際には特に次のことに注意してく
し、バランスをとる
ださい。
・ 十分な車間を確保する
・ サイドバッグをつけている場合、接触に注
・ 前の人のパッキング状態に注意する
意する
・ 体調が悪化したときに他の隊員、ならび
・ 追い越し後の急な減速をしない
に隊長へアピールする
・ 追い越す隊のトップは追い越した後に隊
とある程度距離が開くまで速度を落とさ
・ ト ップ 心得
ない
・ 道路の状況、隊員の状況に合わせたペー
スで走行する
・ 後ろをちぎっていたら待つ
・ 手信号は行う動作、障害物の3秒以上
前、20m 以上手前で出す
・ 狭い横道に出入りする車両にも注意す
る
・ 前隊と後ろ隊の打ち合わせを忘れずに
行い、目的地へのルートや次の休憩ポイ
ントを確認する
・ 状況がわからないときは止まり、後続も
6
第2章 隊列走行
・ サ ブト ップ 心 得
7. 注意したい 走行状況
・ トップのフォローをする(障害物、路駐車の
・歩 道へ の進 入
道路状況の悪い場合、右折左折する場合の手
見落としなど)
前(詳しくは第5章交差点を参照)などでは状
・ 行程を把握し、トップに指示できるようにす
況を判断して歩道へ上がります。歩道と車道と
る
の間には段差があることが多く、そこでは転倒
・ 道路の状況、隊員の状態を確認し、トップに
事故が多発します。十分に減速をし、安全に歩
ペースを指示する
・ トップよりも少し車道側を走行する
道に入ります。また後方確認をし、後ろからほ
→トップを保護する。また、トップと同様に前
かの自転車、及び歩行者が接近していないかな
方を確認するため
どを確認してから上がるようにします。
(歩道走
・ 手信号は行う動作、障害物の3秒以上前、2
行の注意点は第1章2節を参照)
0m 以上手前で出す
・車 道へ の進 入
・ オーラスと細かく連携して意思疎通を図る
オーラスの指示があるまでは車道へは出ませ
・ 後方確認を頻繁に行う
ん。オーラスは車道の安全を十分に確認してか
ら隊全体を車道に出させます(隊を車道に出さ
・ オ ーラ ス心 得
せる前にオーラスが自ら車道を走り、後方の安
・ 無理の無い走行計画を立てる(隊長)
全を確認することが好ましい)。車道に出る際に
・ 出発前に忘れ物を確認する
は個々人が十分に後方の安全を確認して出るよ
・ 救急セットを携帯する
うにします。
・ 故障者、けが人を安心させる
・ 路 駐車 回避
・ 隊列全体より少しだけ車道よりを走行する
路駐車の存在などにより車線を変更しなけれ
(隊全体を自動車から守る)
ばならない場合には、手信号を出し、「路駐!」
・ 車にアピールするためにも手信号を出す。ま
と叫びます。オーラスは手で後方の車を止める
たドライバーとの意思疎通を図る
などの安全を確保して「オーライ」の指示を出
・ 隊員の走行状態のチェックをする
します。路駐車を通り過ぎる際には、急な扉の
・ 有事の場合には前後の隊、必要に応じて執行
開閉に備えて1m ほど間隔を空けて走り、通過
部、救急、警察と連絡を取る
する際にはスピードを上げます。通過後は滑ら
かに左側に戻ります。
第2章 隊列走行
7
第2章 隊列走行
疲れ、眠気を感じたらためらわずに周囲に伝える
自分だけのために隊の進行を止めてしまうことを申し訳なく思ってしまうかもしれませんが、ためらう
必要はありません。疲労が蓄積すると周囲への注意が薄れ、また判断力が鈍り、普段なら回避することが
できることで事故に結びつくことがあります。また自転車走行中にも睡魔が襲うことがあります。ためら
わずに周囲に伝え、休憩をとりましょう。
*90年8月6 、7日 ツアー中連続 追突転倒事故
連日の疲労がたまり、また単調なコースで居眠りをした状態で隊全体が高速の走行をしていた。
トップが停止したが後続がそれに気づけず追突。結局隊のほぼ全員が衝突して転倒した。
隊を抜かせないでいる車への配慮
隊の走行が自動車の進行を妨げている場合があります。また自動車が隊を追い抜かせないでいる場合が
あります。車に分かるように手で「行け!行け!」と合図したり、場合によっては自転車が一次停止して
歩道に入るなどして自動車に道を譲ることも必要です。
8
第3章 手信号と隊内でのコミュニケーション
車やバイクにはウィンカーがありますが自転車にはありません。それの役割を果たし、自分のこれからの動作
を後続に表明して伝える役割を果たすのが手信号です。また、隊列で走行する場合にはその中でも情報を伝達し
ながら走ることでより安全に走行することができます。特に隊の中で後ろを走っているときには前方が見にく
く、障害物の認知が遅れます。後ろに何も伝えずにブレーキをかけると追突を招きます。仲間同士の危険を回避
し、安全を図るためにもコミュニケーションは重要です。
1.
基本の手信号(停止、徐行/左折 /右折/路駐、車線変 更)
2.
隊列走行時に重要な手信号(停止 、徐行/障害物、段差 、溝/路駐、車線変更 )
3.
重要なコ ミュニケーシ ョン(大型車の 接近/声を出 す/ 車を止め る/歩 道に 入る
/車道に出る)
1. 基本の手信 号(停止、徐行/左折
・ 左折 の手 信 号
/右折/路駐、車線変更)
左手を地面に平行に横に出し、左を指差しま
手信号は危険を回避するために出します。意
す。「左行きます」「左折します」などの声もか
識して積極的に出しましょう。また隊列走行時
けます。
左行きます
には前が出した手信号を伝言ゲームのようにつ
ないで行きます。全てが伝わったらオーラスが
左折
「オーライ!」と言います。また、
「基本の手信
号」は隊列走行時だけでなく、一人で走る際に
・ 右折 の手 信 号
も自動車に示すために重要です。
右手を地面に平行に横に出し、右を指差しま
す。「右行きます」「右折します」などの声もか
・ 停止 、徐 行 の手 信号
けます。
「ストップ!」と声を出しながら片手を後ろ
右行きます
にまわし、背中につけます。後続に「スピード
右折
を落として!」と伝える感覚です。ブレーキを
かける時、停止する際には必ずこの手信号を出
・ 路駐 よけ 、 車線 変更 の 手信 号
します。手信号なしでブレーキをかけると後続
路駐車を発見するなどして車線の変更が必要
が衝突し、事故の原因となります。
である時、手のひらでその方向を押すようにし
て合図します。「路駐!」と声を出します。
ストップ!
9
第3章 手信号
2.
隊 列 走 行時 に重 要な 手 信 号( 停
・ 路駐 、車 線 変更 の手 信 号
止 、 徐 行/ 障害 物、 段 差 、溝 /
路駐車の存在などにより車線を変更しなけれ
路駐、車線 変更)
ばならない場合には、「路駐の手信号」を出し、
前の出した手信号は伝言ゲームのように後続
「路駐!」と叫びます。オーラスは手で後方の
に伝えます。最後まで伝わったらオーラスが「オ
車を止めるなどして変更する車線の安全を確保
ーライ!」と返事をします。前の人が手信号を出
して「オーライ」の指示を出します。路駐車を
していなくても必要と判断したら自分から積極
通り過ぎる際には、急な扉の開閉に備えて1m
的にだします。
ほど間隔を空けて走り、通過する際にはスピー
ドを上げます。通過後は滑らかに左側に戻りま
・ 停止 、徐 行 の手 信号
す。
「ストップ!」と声を出しながら片手を後ろに
まわし、背中につけます。後続に「スピードを
オーライ!
落として!」と伝える感覚です。ブレーキをか
ける時、停止する際には必ずこの手信号を出し
ましょう。追突の危険性があります。また、手
を離せない状況では声で伝えます。
・ 障害 物、 段 差、 溝の 手 信号
道路に落ちているものを指差し、
「障害!」と
言います。また個別に「瓶!」「カン!」「ガラ
ス!」などと言ってもかまいません。
段差ではその手前で「段差!」と言います。
道路に縦に溝が入っているところではタイヤ
がはまり、ハンドルを取られることがあります。
「溝!」と言って、その溝を指でなぞるように
手信号を出します。
障害!
障害物の恐ろしさ
* 90 年3 月5 日 個人 ラン 中の 事 故( 当事 者 2年 目)
下り坂走行時に空き缶をふみ、空き缶が巻き込まれ
て前輪と泥よけの間に挟まる。前輪がロックし、自転
車から投げ出され、一次意識を失うほどの事故になっ
た。
10
第3章 手信号
3.
重 要な コミュニケー ショ ン(大
後方も確認して入ります(歩道を走る自転車を巻
型 の接 近/歩道に入 る/ 車道に
き込むことがないように)。その際には十分減速
出る/声を 出す)
してください。
・ 大型 車の 接 近
・ 車道 に出 る
オーラスは常に後方確認を怠らず、大型車が
オーラスが既に車道に出ていることを確認
接近したときには「大型!」と叫びます。隊員
し、後ろの人に分かるように路駐の手信号を出
は後ろからの伝言ゲームを行い、トップが全て
す。その際「車道出ます」と言い、後ろの人が
伝わったことを示すために「オーライ!」と返
「オーライ」などの指示を出した後、自分でも
事します。ダート走行時には大型でなくても自
車道の安全を確認して車道に出ます。指示が無
動車が接近したらそれを伝えます。
ければ車道には出ません。
大型車が接近し、なおかつ大型車が隊を抜か
オーライ!
せないでいる場合もあります。一車線で対向車
車道出ます!
線の交通が多い、同じ車線の大型車の通行が多
いなどの場合には大型車が隊を抜くことが出来
ず、隊の後ろに何台も大型が連なってしまうこ
とになりがちです。特に長い橋などでは注意が
必要です。
このようなときには、
・ 声を 出す
・ 十分 な路側帯 がある ならば隊 全体と して
雨の日、交通量の多い時、またハンドル操作
歩道側に寄る 。
に慣れていないときなど、手を離して手信号を
・ 十分 な路側帯 が無い ならば、 サブト ップ
出すことが返って危険な場合があります。その
はあ まり車道 側に出 ないよう にし、 一列
ようなときには無理せず声で伝えるようにしま
に並 ぶように 隊列の 形を変え る。オ ーラ
しょう。
スは 車線を確 保でき る程度に わずか に車
道側に出る。
ただし走行が危険であると判断されるならオ
ーラスが車を止める、または歩道に入るなどの
措置をとるようにします。
・ 歩道 に入 る
車道を走行することが危険だとトップが判断
した場合には「歩道入ります」などと声をかけ、
路駐の手信号のように歩道側へ手を押し出すよ
うにします。後ろの人が「オーライ」と指示を
出した後、歩道の状況を確認し、また歩道側の
11
第4章 交差点
車は交差点内で右折、左折、直進、停止などの様々な動きをします。このため交通事故の約半分は交差
点内で起きています。また、車のドライバーはしばしば私たちの予想と全く違う動きをします。細心の注
意を払って、いつでも止まることが出来るように心にゆとりを持つことが大切です。
*K 嬢
信号の無い交差点を横切る際、車の速度がつかめず危うく追突しそうになった。
1.
交 差点で の安全 確認と 安全確保(確認は自分で/確認はみ んなで /ドライ バー と
の意思疎通)
2.
交差点での停止(どんなと き停止するか/どこで停止するか)
3.
交差点の通過、横断(信号のある交差点/信号の無い交差点)
4.
交差点での発進
5.
左折/右折
6.
その他注意すべき交差点(Y 字交差点/渋滞中/左折レーンの存在)
コラム 「信号の変わり目での判断」
1. 交 差 点 で の 安 全 確 認 と 安 全 確 保
交差点が危険なのは自動車だけではありま
(確認は自分で/確認はみんなで /
せん。交差点の隅は砂利や釘、ガラスなどの障
ドライバー との意思疎通)
害物がたまりやすくなっています。そこを通過
したときにパンクしたり、またスリップして転
・確認 は自分 で
倒したりする危険もあります。
交差点に入る前に自分で前方、後方、左右の
確認をします。 前の人が行ったから大丈夫
・ド ライバ ーとの 意思疎 通
などと思ってはいけません!車はわずかな隙
後ろから接近してくる左折車、対向車線の右
間に入ってくることがあります。
「交通の流れ」
折車のドライバーと積極的にコンタクトをと
もポイントです。車が多いか少ないか、などで
るようにします。相手に自分の存在を気づか
交差点での車の動きがある程度読めます。
せ、また時には道を譲り合うことは、安全の面
・確 認はみ んなで
ではもとより、心地よい道路走行にとって大切
交差点に差し掛かった時、後ろの人が左折車
です。
の接近に気づいていても前の人が気づけない
ときもあります。前の人に「左折車!」などと
声をかけるようにしましょう。前の人が、左折
車の急な接近に驚いてしまうこともすくなく
なります。
12
第4章 交差点
2. 交 差 点 での 停止(ど んな と き停 止
するか/ど こで停止するか)
・ど んなと き停止 するか
次の場合、交差点の手前で必ず停止しなければ
なりません。
A
・ 赤信号
B
C
・ 黄色信号(ただし、安全に停止できない場
*N 嬢 91 年7月 28日 東北 プレリ ュ
合もある。第2章「注意したい走行状況」
ード でのダ ンプと の事故 (当事 者2年 目)
信号での停止を参照。)
国道4号線を走行中、交差点待ちをしていた
・ 点滅する赤信号(一旦停止して安全を確認
ダンプの横に入る。ダンプと並んで発進した時
してから通過します。点滅する黄色信号
にダンプがクラクションを鳴らし、驚いて左側
は、徐行し、交差する車に注意しながら通
の歩道に避けようとするがバランスを崩し、サ
過します。)
イドバッグが歩道の段差に引っかかり、自転車
・ 「止まれ」の標識のあるところ
にまたがったまま車道へ転倒。その上をダンプ
・ 見通しの悪い交差点(標識、信号がなくて
の後輪が通過した。幸い命は助かったが、仙骨
も)
を骨折。本人はダンプの後輪に直接触れること
・ 優先道路に出たところ(広い幅、同じくら
はなかったものの、ひかれた自転車のホイール
いの幅の道路に出るとき)
は大破した。
・ 踏切手前
・ど こで停 止する か
A. 車より先に交差点に入った時→停止線上
B. 路側帯が十分に広い時→停止線上
※ドライバーに自分の存在を知らせるため
C.路側帯に十分な幅がなく、かつ前方に車が止ま
っている時→車の後ろ
※前方に左折車が止まっているときには、左折
車より後ろでとまります。
※また、大型車が前方に止まっている時には、
大型車より後ろで止まります。
何ら かの理由 で停止 線よりも 前に出て しまっ
た場合には、 歩道に上がります。
13
第4章 交差点
3. 交 差点の 通過、 横断(信号の ある
・左折レーンが 存在する場合
交差点/信 号の無い交差点)
安全が確認できれば路駐避けと同じ要領で車線
交差点を通過、横断するときには特に次のこと
を変更して交差点を通過します。危険なときは歩
に注意してください。
道に入る判断をします。どの場合もトップとオー
ラス、またはサブトップがコミュニケーションを
とりながら判断します。
・前を走る車が 左折しようとしている場合
車の横に入り、そのまま進もうとすると車の左
折に巻き込まれてしまいます。左折車は追い越さ
ず、後ろで待ちましょう。
・信号のない交 差点の通過、横断
交差する道路よりも明らかに広い優先道路を走
っている場合には、安全を確認しながらそのまま
・対向車線の車 が右折しようとしている場 合
通過します。交差、横断する道路が優先道路であ
右折車が自転車の存在に気づいていない場合
る場合、一時停止し、トップはオーラスに判断を
には突っ込んでくる可能性があります。コンタク
求め、安全が確認できれば通過します。見通しの
トをとり、安全を確かめて交差点を通過しましょ
悪い交差点では飛び出さず、一旦停止します。
14
第4章 交差点
4. 交差点での 発進
5. 左折/右折
左折右折とも に、原則歩道で行います。
・ 隣に 車が い ない 時
後方確認し、車の接近がないか確認して隊に知
・左折
らせてから発進します。急発進は隊をバラバラに
左折する時には一度手前で歩道に入り、歩道で
してしまいます。また発進時には対向車線の右折
左折します。歩道に入る前には必ず手信号で合図
車にも注意してください。
します。再び車道に出るときにはオーラスの指示
を仰いでください。オーラスの指示なしで車道に
・ 隣が 直進 車 /右 折車 の 時
出てはいけません。
発進時には自転車が不安定なので、車と、ある
いは自転車同士での接触に十分気をつけます。ま
た、車に追突することにも気をつけてください。
車との幅に余裕がなく、またドライバーが自転車
の存在に気づいていない場合には全ての車を先
に見送るのもよいでしょう。
・ 隣が 左折 車 の時
状況にあわせて以下の方法をとります。
・歩道に上がって、横断歩道を利用する
・左折車を先に行かせる(左折車が少ない場合)
・左折車を止めて、先に行かせてもらう(左折 車が多い場合)
歩道がないところで左折する場合、交差点に入
る前に後方に左折車がいないことを確認して左
折します。後ろに左折車がいた場合には手信号を
出して先に行かせます。車と並走して 左折はし
ま せ ん 。 自動車が曲がるときに発生する内輪差
によって、十分に余裕があると思っていても巻き
込まれて接触を起こす可能性があるからです。
・ 右折 右折する時には一度手前で歩道に入り、歩道で
右折します。
15
第4章 交差点
6. その他注意すべき交差点(Y 字交
差点/渋滞中の交差点)
・ Y 字 交差 点
石狩街道の麻布付近、石山通の石山付近などの
Y 字交差点では、いったん歩道に上がってから横
断歩道を利用して横断します。
・ 渋 滞中 の交 差 点
渋滞中の交差点では特に注意が必要です。
歩道がないところでも、歩行者と同じように二
・ 対向右折車が車の隙間から突然飛び出し
回に分けて右折します(二段階右折)。自動車の
てきます(車の影になってお互い見にくく
ように直接右折してはいけません。
なる)
・ 交差点に差し掛かった左折車が突然左折
することがあります
交差点以外にも渋滞中はのろのろと動く自動
車への追突や、無理に路側帯を進行しようとする
ことから起こる自動車との接触が発生します。著
しく混雑した道路においては歩道を通行し、安全
を確保しましょう。
信号の変わり目での判断
目の前で信号が変わってしまった時、交差点を通過するか、停止するのかをとっさに判断しなければな
りません。特に初心者ではこれは難しいものです。信号が変わったからといって急停止することは追突を
招き危険です。安全に停止することが出来ない場合、「ストップ!」と手信号を出しながら自らは交差点
を通過し、歩道で後続を待ちます。
また、歩行者信号の点滅が信号の変わり目の目安となります。交差点の手前で歩行者信号の点滅を確認
したら、隊の速度を速める、あるいは予め減速して停止に備えるなどすると安全です。
ス トッ プ!
16
第5章 状況別走行注意
これまでは普段の走行のときに注意することについて述べてきました。この章では特に注意が必要な状
況での走行について述べていきます。ダート、トンネル、下り坂などでは特別な注意を要します。走る前
には班員同士で注意を促し合いましょう。また、多くの重大な事故が下り坂で発生していることを心に留
めておいてください。
1.
コーナリング(平地)
2.
下り坂 ( 下り 坂の 危 険性 /下 り 方/ 峠の 下り / 下り 坂の コ ーナ ー)
3.
橋 ( 歩道 通行 の 原則 /急 な 加速 減速 の禁 止 )
4.
トンネル ( ライ ト、 テ ール ライ ト の点 灯/ 歩道 通 行の 原則 / 十分 な車 間 /急 な加 速 原則
の 禁止 /ス ピ ード を抑 え 、落 ち着 い て走 行/ 路 面凍 結注 意 /サ ング ラス を 外す /複 数 の隊
が トン ネル を 通過 する 時 /ラ イト の消 灯 )
5.
ダートラン ( 走行 前/ 走 行中 )
6.
ナイトラン ( ライ トの 点 灯/ 目立 つ 色の 服を 着用 / 十分 な車 間 /声 を上 げ て手 信号 / ス
ピ ード を抑 え 、落 ち着 い て走 行)
7.
登坂
8.
フリーラン ( トッ プ、オー ラス は 2年 目以 上/ 分 岐、危 険 な状 況で は 停止 、後 続を 待つ )
2. 下り坂
1. コーナリン グ(平地)
・ 下 り坂 の危 険 性
・ 急なカーブの手前では十分に減速します。ま
意識を失うほどの、また救急車で運ばれること
た、コーナーに入る手前で後方確認をして
になった重大な事故のほとんどが下り坂で発生
安全を確かめます。
しています。状況によっては下り坂に入る前に隊
・ 特に左に曲がるコーナーでは、内側に砂利が
の進行を止め、注意喚起、また後に述べるように
たまっていることがあります。スリップに注
自転車のチェックをすることが必要です。
意します。
・ 下 り方
・ 曲がっているときは車体が傾いていますの
・確実なスピードコントロール
で、ペダルと地面が接触しないようにペダリ
自分の能力を過信してはいけません。また
ングには十分注意します。(急なコーナーで
無理をしてはいけません。
はペダリングはしない。)
*S 君 12年東北ツ アー(当時2年目)
*11年 T さん(当時1 年目)
トオヌップ展望台からの帰り、下りの直線を
登校時、授業に遅れそうで猛スピードで走って
全力で漕いでいた。1つ目のカーブは曲がりき
いた。左コーナーもペダリングしたまま突入し
ったものの二つ目のカーブは曲がりきれないと
たところ、左のペダルが地面と接触し、激しく
判断。ブレーキをかけるも後輪がスリップし転
転倒。当事者は車体から投げ出され、転倒時の
倒。その際に腕を強く傷め、大事を取って救急
衝撃で後輪のリムは大きく変形した。
車で下山して病院に向かった。
17
第5章 状況別走行注意
・下り坂の車間距離
下り坂では前の車両と十分すぎるほどの
車間を空けます。また、速度に応じて車間距
離を変えることが必要です。前の車両が通過
したところに自分が至までに何秒かかるの
かということを目安に車間距離をとること
をおすすめします。
上から持つ場合
坂を下り終わってなだらかになるとスピ
下から持つ場合
ードが落ちますが、勢いのある後続が迫って
きます。後ろが詰まることを防ぐためにも
・追い越し禁止
「下りが終わったな」と思ったら、前の方の
自分がどんなに速く下れるからといって、
人は意識して少し速度を上げましょう。
下り坂で前の人を追い越してはいけません。
下り坂では追い越し禁止です。
・ブレーキ操作
ブレーキをかけるときは体重を後ろにか
・車と張り合って並走しない
け、前ブレーキをかけるときには後ろブレー
下り坂では車と同じくらい(またはそれ以
キをかけてから使用します。後ろブレーキと
前ブレーキは7:3の力加減で使いましょ
上)のスピードが出ることがあり、車と並走
う。コーナーに入る前にブレーキをかけ終わ
する状態になることも珍しくありません。し
っていなければなりませんが、特にコーナー
かし車に巻き込まれたり、バランスを崩して
中に前ブレーキだけを使うことは危険です。
車に接触したり、場所がなくなり障害物を避
前ブレーキだけを使用することは前輪のロ
けることができなくなってしまいます。車と
ック、そして前方一回転を引き起こし非常に
並んでしまったら安全な場所であることを
危険です。数々の重大な事故が前輪ロックに
確認し、スピードを落として先に行かせま
よる前方一回転で発生していることを心に
す。
留めてください。
強いブレーキが欲しい場合、ブレーキの持ち
方を変えます。ドロップハンドルは通常、上
・ 峠 の下 り
からかぶせるようにして持ち(ブランケット
・一時停止とチェック
持ち)、ブレーキもそのまま力を入れてかけ
峠で休憩することは疲労回復のためにも
ます。しかし急な下り坂などで強いブレーキ
大切です。峠では下る前に一旦止まり、パッ
が必要な場合、ハンドルの下から持つように
キングやブレーキの効き、ねじのゆるみ、ガ
握り方を変えるとよいでしょう。個人によっ
タつきなどがないかチェックします。自分の
て判断してください。
荷物が引っかかる事故、ネジの緩みによる事
故は未然に防ぐことができるのです。
18
第5章 状況別走行注意
・注意喚起
・カーブの手前ではできれば一度後方確認
下りの前では特に上の年目が下りの危険
後続車を確認することでカーブでの巻き
性について注意喚起し、今一度安全に走行す
込み事故を防げます。また、一台車がいたら
ることを確かめ合いましょう。
続けて五台は並んでいると認識した方がよ
・経験者(2年目以上)から先に下る
いでしょう。カーブは車も自転車もラインオ
峠で休憩した後は時間をおいて順々に下っ
ーバーしやすいので気をつけましょう。
て行きますが、下り坂で車間が詰まってしま
カーブの手前で安全確認が出来れば、
うことと、道に迷わないために、2年目以上
out-in-out で曲がって行けばオーバーライ
が先におりていきます。
ンしにくくなります。
ただし、下記の例もあるので後方確認は素
・ 下 り坂 のコ ー ナー
早く行うように心がけましょう。
・コーナーに入る前に十分減速する!
コーナリング中、自転車は車体が傾き、遠
*F さん
心力で外に引っ張られ、きわめて不安定な状
90年の個人ラン中、急な下り坂で後方確認のた
態にあります。コーナーに入る手前にブレー
めに後ろを向いていたのだが、後ろの方に焦点を
キをかけて十分に速度を落としましょう。コ
合わせようとしていたためコースアウト。笹薮の
ーナリング中に急ブレーキをかけることは
中を数十メートル走って転倒。ゆっくりと後ろを
非常に危険です。コーナリング中に減速せざ
見ていたために起こってしまった事故だった。
るを得ない場合はブレーキを前後両方とも
かけましょう。
・カーブミラーは必ず確認する。
・コーナーの内側のペダルを上げる。
コーナーの内側のペダルが地面と接触す
・右カーブでは左端を走らない。
るのを防ぐことが出来、またコーナリングの
右カーブのとき、カーブの路肩には砂利や
態勢を安定させることができます。コーナー
ゴミが多いので少し車道側にでて走りまし
では遠心力がかかるため、自然の状態よりも
ょう。この時後方確認を怠らないでくださ
コーナーの外向きに力を受けます。そのため
い。
カーブでは自分の体を自転車よりも内側に
*某体育教師 Y さん
入れる感じで体勢を倒します。
91年夏のプレリュード中、東北のある下り坂
カーブにおいて、カーブを曲がりきれず路肩の砂
利にタイヤをとられて転倒した。彼は体育教師と
しての誇りと自分の運動神経に対する過信から、
道路の標識を甘く見てコーナー手前であまりブ
レーキをかけなかったため、急コーナーに対応で
る
上
げ
下
る
げ
きなかった。
19
第5章 状況別走行注意
4. トンネル
3. 橋
トンネル内は暗くて狭く、また車が後方から轟
橋は路側帯が狭くなっていたり、風が強く吹い
ていたりするので、一般の道路よりも注意が必要
音を上げながら通過して行くので最初のうちは
です。
恐怖に感じるでしょう。以下のことに気をつけて
・歩 道通 行の 原 則
走行しましょう。
・ ラ イト 、テ ー ルラ ンプ の 点灯
橋の手前ではトップがオーラスとコンタク
トをとりながら歩道に入る合図をします。歩道
トンネルに近づいたら手前で隊の進行を停
がない場合や交通量の少ない場合には隊長の
止し、ライト、テールライトを点灯します。走
判断により、路駐避けの手順で車線を確保して
行中にライトをつけようとするとバランスを
そのまま通行する事もあります。
崩して転倒することがあります。ただしトンネ
ルが短い間隔で連続しているときは、点灯した
・ 急な 加速 減 速の 禁止
橋の上で急な加速や減速をすると車間が狭
まま通過しましょう。
まり、隊列が横に広がって危険です。
トンネルを走行するときには必ずテールラ
ンプを点灯させます。
*G さん(当時2 年目)
トンネル内を走りながらダイナモを消そうとい
う無謀な行為を実行。自転車後と空中転回してし
まう。
・ 歩 道通 行の 原 則
トンネル内に歩道がある場合には歩道を通行し
ます。「歩道」と言うものの、両サイドに荷物を
つけた自転車が余裕を持って通れる幅のないも
のや、あっても途中にたくさんの危険な障害物が
あるなど、整備のされていない歩道もあるので、
自転車に乗って走行するか自転車を押して歩く
かはその場で判断しましょう。
対向車線側に歩道がある時、車道を横断して歩道
に移りますが、このときには車に十分気をつけて
ください。トンネルの向こうの対向車は確認しづ
らいからです。場合によっては一度トンネルの入
り口から離れて、対向車線の安全が確認できると
ころで歩道に移動します。
20
第5章 状況別走行注意
性があります。春先、秋頃(4、5、10月)に
は特に気をつけてください。
*F さん(当時3 年目)
92年 GW ランでオロフレトンネル通過の際、
追い越してきた自動車が路面凍結のためスリッ
プしてトンネル側面に衝突。隊員は路面凍結に気
づいて立ち止まったので巻き込まれずに済んだ。
・ サ ング ラス を 外す
トンネル内は視覚の明順応、暗順応の働きを助
けるために出入り口付近を明るく、内部を暗くし
・ 十 分な 車間 距 離
ている場合が多くあります。入り口が明るいから
トンネルは暗く、遠くが見えないために障害物
大丈夫だと思ってサングラスをかけたままトン
の発見が遅れます。前の自転車が急に停止した
ネルに進行して行くとその後道路状況が見えな
り、方向を変えたりしたときに対応できるよう
くなり大変危険です。
に、また自分で安全に障害物を発見して回避する
・ 複 数の 隊が ト ンネ ルを 通 過す る時 、
ことが出来るように、十分な車間距離を保って走
隊 間を 10 0 メー トル 以 上あ ける
行しましょう。
特に長く、歩道のないトンネルの場合、縦に
・ 急 な加 速減 速 の禁 止
連なって走ることは車の走行の邪魔になり、大
トンネルの中では前を走っている人の速度の
変危険です。
変化がわかりづらく、車間が詰まったり逆に車
間が空きすぎたりしますので、急な加速や減速
・ ラ イト の消 灯
はしません。
トンネルを通過してからライトを消灯します
が、トンネル通過直後には止まりません。後ろの
・ ス ピー ドを 抑 え、 落ち 着 いて 走行
人はまだトンネル内を走行中で、その後方からは
多くのトンネルの歩道には投げ捨てられた空き
車が迫っています。必ず全員が安全に止まれる場
缶、トラックから落ちた木切れや砂利など危険な
所を探してから止まり、消灯します。出発前に予
障害物が散乱しています。高速で走行するとそれ
め通過する連続するトンネルの数を把握してい
らの障害物の発見が遅れて避けることが出来ま
れば何度も点灯消灯を繰り返す必要がなくスム
せん。また、サイドバッグがトンネルの壁に擦っ
ーズです。
てしまうことがないように注意しましょう。
・ 路面 凍結 注 意
トンネル内、また橋の上では路面温度が下がり、
それまでの道路が大丈夫でも凍結している可能
21
第5章 状況別走行注意
5. ダートラン
・服装/シュ ーズ
ダートとは、未舗装路の林道や、工事中の砂利
長袖、長ズボンを着用し、軍手をつけて肌
のしかれた道路などの事を言います。砂利にハン
の露出を避けます。これによって転倒時、あ
ドルをとられたり、急に大きな障害物が現れた
る程度のけがを防ぐことができます。うまく
り、整っているように見えても路肩が崩れたりす
受け身をとるためにも転倒の恐怖は事前に
ることがあるので十分注意しながら走行します。
なくしておくように心がけましょう。
工事中の道路では片側通行になっている場合が
トゥークリップや SL ペダルは足が固定さ
あります。臨時設置の信号機や誘導してくれる人
れてとっさに足を地面に付くことが出来な
の指示に必ず従いましょう。
いため、ダートランでは使用しません。予め
幹線道路でなければ未舗装路がしばしば見ら
フラットペダルとシューズを別に用意しま
れます。一昔前には三国峠のように国道であって
す。SPD ペダルは比較的安全に足を離すこ
も舗装がされていない場合がありました。このよ
とができ、また靴底も歩行に適したタイプの
うな道では路面が荒れていて転倒の危険が高く、
ものであることが多いのでダートで使用し
近隣に民家がない場合もあり、事故のときの対応
ても構いません。
が遅れてしまいます。入念な準備が必要です。
・ 走行前
・入念な下調 べを
・パッキング
崖崩れや工事によって道が通れないこと
走行前、及び 走行後には必ずパッキン
があります。事前に情報を集め、当日は地形
グと自転車の 点検を行います。ダートを
図を必ず携帯しましょう。
走行するときには自転車や体に激しい振動
が伝わります。この振動は疲れを増大させる
・非常食と飲 料水の準備
ばかりでなく、パッキングを緩ませ崩壊させ
林道などのダートの道沿いには民家がほ
ることがあります。ねじが緩んで抜けたり、
とんどありません。トラブルが起きても救援
キャリアが折れたりすることで自転車にガ
を求めることが出来ない場合もありますの
タが出やすくなるからです。長距離のダー
で装備を充実させて自己対処できるように
トでは途中の 休憩地点でも点検を行って
しておきます。
ください。また、絶対に走行中 に点検を
したりパッキ ングのずれを直したりして
・熊鈴をつけ る
はいけません 。
森の中を走るダートランでは特に、熊との
*B さん
遭遇の可能性がありますから、熊鈴をつけて
ダートを走り終わった下りの途中で、フロントサ
回避します。熊鈴を持っていない場合には大
イドのパッキングを直そうとし、誤って手を前輪
声を上げて人間の存在を知らせることも有
のスポークにはさみ、前輪がロックして転倒し
効です。万一遭遇したときのためにベアスプ
た。
レー等を携帯するのも一つの安全策です。
22
第5章 状況別走行注意
・走行中
*90年5月 31日 F 嬢(当時1年 目)
・遠くも見て 、道全体の状況を確認する
幌見峠の下りダートで、道に張られていたチェー
次々と障害物が押し寄せてくるダートで
ンの発見が遅れ、突っ込んで自転車ごと一回転。
は足下に注意が集中しがちですが、遠くも確
6日間の入院となる。
認して道全体を把握するようにします。砂利
・カーブのス ピードに注意
の深さ、石の大きさ、轍(砂利が浅く、走り
カーブを曲がったとたんに障害物に出く
やすい)の位置などを早めに認知し、どこを
わすこともあります。また砂利で滑ってカー
走るべきかコース取りをします。障害物の発
ブで転倒することもあります。十分にスピー
見が遅れるので、視力の弱い人は眼鏡などで
ドを落としてカーブを曲がります。
矯正します。
・下るときの 注意
・サドルから 腰を浮かせる
ダートの経験の浅い場合には無理に自転
サドルから腰を浮かせ、膝を使ってショッ
車に乗ることはなく、押して下ります。自転
クを吸収すると深い砂利でもある程度安定
車に乗る場合には腰をサドルから浮かせ重
して走行することができます。
心を後ろに移動させ、ペダルとサドルの両方
にショックを吸収させます。
・車、バイク の音に注意、早めに発見
急カーブが多く、見通しが利かないことが
サドルを下げて重心を下げることもあり
多いので視覚だけには頼れません。車の方は
ます。
自転車の走行を予想していないことが多い
ので、自転車の方が先に気づき、自転車を降
りて止まり、車を追い越させましょう。また
車の接近に気づいたら他の隊員にも知らせ
ます。
・後続と離れ すぎない
林道には地形図には記載されていない分
岐が存在し、チェーンやゲート、溝、路面崩
壊、土砂崩れなど走行に大きな支障を来す障
・走行後にも パッキング確認
害もあるかもしれません。これらの発見が遅
れれば大きな事故や遭難につながります。必
ダートを抜けてからもパッキングの確認
ず後ろが付いてきていることを確認しなが
をしてください。これまでの振動でパッキン
ら、また障害物は確実に知らせながら進みま
グを始め自転車にガタが来ている事が十分
す。
に考えられます。
23
第5章 状況別走行注意
6. ナイトラン
・ 声 を上 げて 手 信号
クラブラン始め、クラブ内での公式行事内では
暗いために動作だけの手信号では伝わりませ
ナイトランは絶対禁止です。走っていて日が暮れ
ん。必ず声を上げて手信号をだします。
た場合には自転車を降り、押して目的地まで向か
・ ス ピー ドを 抑 え、 落ち 着 いて走 行を
います。行程が遅れて日が暮れてしまった場合に
早く目的地に着こうと気持ちが焦り、車間が詰
は特に焦りが募り、より事故につながり易いから
まったり障害物に遭遇したりして事故に直結す
です。
るということがよくあります。「夜の後にはまた
個人ランなどでも余裕のある計画を立て、出来
朝がくるのだ」と余裕をもって、落ち着いて走行
る限りナイトランをする必要がないようにしま
します。
すが、場合によってはせざるを得ないこともあり
ます。深夜、早朝には大型トラックが多く走って
いることがあります。また障害物の発見も遅れ、
車から自転車が発見されることも遅れます。十分
に注意する必要があります。
・ ライ トの 点 灯
普段のライトに加え、テールライトも必ずつけ
ます。また大光量のヘッドランプ(100ルーメ
ン以上)のものも必ず使用します。自転車につけ
るライトだけでは路上の障害物等を確認するこ
とは不可能です。
・ 目立 つ色 の 服を 着用
白の服はそれほど目立ちません。黄色、ショッ
キングピンクなどの目立つ色の服を着用しまし
ょう。またアウターウエアには反射材のあるもの
を着用するとよいでしょう。
・ 十 分な 車間 を
道路が暗く、障害物の発見が遅れます。前の自
転車が急に方向を変えたりブレーキをかけたり
することがありますし、障害の見落としも多発し
ます。後続を走る場合には自分でも路面状況を確
認し、急ブレーキ、前の自転車の転倒にも対処で
きるように十分な車間距離をもって走行します。
24
第5章 状況別走行注意
7. 登坂
8. フリーラン
登坂時は車間がつまり、自転車同士の接触が多
フリーランは、登坂やダートなど、個人のペー
発します。また隊列で走行しているときには個人
スに大きな差が出るとき、それぞれが無理なく走
の体力を考え、後続が付いているか確認しながら
れるスピードで走る、というのが目的です。隊列
走るようにします。個人の体力差が激しい場合に
で走行する事がかえって危険になる場合に隊長
は隊列走行をやめ、フリーランにするなどの対処
の判断でフリーランを実行します。
をします。
・ ト ップ 、オ ー ラス は二 年 目以 上
重たいギヤを踏んでもあまりスピードは上がり
道に迷うことや障害物の発見の遅れを避ける
ません。むしろ軽いギヤで回転数を上げる方が膝
ためにトップは必ず経験者である2年目以上が
にも優しく、スピードも上がります。
走ります。またオーラスは全員が無事に走った
*12 年九州個人ラン T さん(当時1年目 )
ことを確認する責任を持ち、2年目以上(多く
平地から登坂に入ってもギアを変えず、その
の場合はその隊の隊長)がつとめます。
まま力に任せてダンシングしていた。しばらく
無理をしていたところ、突然膝に激痛が走り、
・ 分岐 、危 険 な路 面状 況 では 停止 、後 続
ペダリングはおろか歩行すら困難になる。病院
を 待つ
で腸脛靭帯炎と診断される。その後一ヶ月は痛
フリーランの目的はあくまでも安全に走行す
みと違和感が伴っていた。
ることにあります。分岐では道に迷わないよう
に、また、危険な障害物があった場合には後続
が発見できない場合に備え、待って伝えます。
*N さん(当時1 年目)
92年新歓ランで農場から羊ヶ丘へ向かう途中、
ダートで隊列が乱れたために彼は一人で走って
いた。ゲートに張られた針金に気づかずに衝突。
目の下を切り、7針縫う怪我を負い、コンタクト
レンズも紛失した。
25
第6章 天候に対する走行時の注意
サイクリングがアウトドアスポーツである以上、天候は走りに大きな影響を与えます。いつもの走り慣れた道
もその日の気象条件によっては危険な道路に変わることもあるでしょう。走行前には予め天候をチェックして、
場合によってはコースの変更も考えなければなりません。
それぞれの天気条件で走行するときの注意について述べていきます。
1.
雨天時の注意 ( スピ ード を 落と す/ 車 間を 広く /ブ レ ーキ シュ ー のチ ェッ ク /ラ イト の
点 灯/ 水た ま りの 回避 / 段差・白線・マン ホー ル に注 意/ 手 信号 は声 も 出す /レ イン ウ ェ
ア の着 用/ 頻 繁に 休憩 を /計 画を 変更 す る)
2. 風があるときの注意 ( 車間 に注 意 /横 から の 突風 に注 意/ 頻 繁に 休憩 を )
1. 雨天時の注 意
・ ブレ ーキ シ ュー のチ ェ ック
雨が降っているときにはブレーキの効きも悪
雨天時にはブレーキシューが早く摩耗します。
くなり、また路面もスリップしやすくなります。
ブレーキが効きにくくなったらアジャスターな
雨に遮られて視界も悪く、障害物の発見が遅れま
どでリムとの当たりを調節し、シューが減ってい
す。春先や晩秋の冷たい雨は体温を容赦なく奪っ
る場合には早めに交換します。休憩の度にブレー
て行きます。
キシューはチェックし、特に峠などその後に長い
下りを控えている場合には必ず点検してくださ
・ スピ ード を 落と す
い。
雨天時にはブレーキの制動力が落ち、普段と同
*F 嬢(当時1年 目)
じように減速できません。また急にブレーキをか
雨の日、峠の下りでブレーキが効かなかったのに
けるとスリップして転倒することがあります。加
無視して下り始めた。隊の一番後ろを走っていた
えて視界が悪いので障害物の発見も遅れます。ス
が、ブレーキが効かずにどんどん前の人を抜き、
ピードを出さずに、ブレーキは早めにかけて走行
トップも追い抜いてしまった。
します。
*H さん
ブレーキが効かなくて足ブレーキで止まった。
・ 車間 を広 く
ブレーキの効きが悪いので追突しやすくなり
・ ライ トの 点 灯
ます。また前の人の手信号が見づらく、障害物を
雨や霧の時には著しく視界が悪くなります。自
自分で発見して回避しなければならないことも
動車からも自転車の発見が遅れてしまいます。昼
よくありますので車間を広めにとって走行しま
間でもライト、テールライトを点灯して存在をア
す。シクロクロスなどの泥よけの付いていない自
ピールしなければなりません。また目立つ色、反
転車の後ろは水しぶきをかけられることもあり
射材つきのレインウェアを着用することも大切
ますからより車間が必要になります。
です。
26
第6章 天候に対する走行時の注意
・ 水た まり の 回避
レインウェアは雨を防ぐのみならず、寒い雨の
水たまりの中はよく確認できず、深いのか、段
ときには体温を保ち、十分に防寒着としての役割
差があるのかわかりません。水がたまるほど周囲
も果たします。泊まりがけのランでは必ず携帯す
から低くなっているのでそこには雨で流された
るようにします。また、目立つ色、反射材の付い
たくさんの障害物がたまっていると考えて間違
ているものはドライバーに認識されやすくより
いありません。小さな水たまりは「障害」の手信
よいでしょう。
号で、大きなものは「路駐」の手信号で回避して
ゴアテックスの製品は透湿性があり、汗をかく
行きます。回避できない場合にはスピードを落と
夏場も比較的快適に着用することが出来ますが、
して通過します。
長期の使用で耐水性が低下し、水がしみてくるこ
とがあります。透湿性のない製品は水がしみるこ
*X さん
とは少ないですが、体からの汗でレインウェアの
雨の中、必死に自転車をこいでいた。水たまり
中が蒸れ易くなります。
も何のその、と通り過ぎようとしたら、その水た
まりが意外に深く、前輪がはまりバランスを崩し
・ 休憩 を頻 繁 に
て転倒。
悪天候での走行は肉体的な疲れに加え、精神面
も疲れやすくなります。休憩の回数を増やして疲
・ 段差 、白 線 、マ ンホ ー ルに 注意
れを取りながら安全に走行しましょう。
段差は普段以上に、角度をつけて乗り越えま
・ 計画 を変 更 する
す。白線、マンホールの蓋、側溝の上の金属製の
山に登るコースの時、これから峠を越える時
蓋などの上は特に滑りやすくなっていますので
など、雨天によって危険だと判断される場合には
その上を走らないようにします。
コースを変更して安全な道を選ぶべきです。
・ 手信 号は 声 も出 す
雨で後続が前をよく見ていない事も考えられ
ます。手信号は普段以上に声を張り上げて伝え
ましょう。
・ レイ ンウ ェ アの 着用
レインウェアは必ず一度止まってから着脱し
ます。またレインウェアの足首にはストラップを
巻いて、チェーンリングやペダルへの巻き込みを
防止しましょう。
27
第6章 天候に対する走行時の注意
2. 風があると きの注意
自転車にとって風は、時に友であり、また時に
は強敵となります。坂以上に風が辛い言う人も多
くいます。特に向かい風では体力を奪われ、風を
避けようと上体を低くしますが、視線が下を向き
がちで周囲への注意が足りなくなってしまいま
す。
・ 車間 に注 意
特に向かい風の場合、車間距離に注意してくだ
さい。疲れていると反応が鈍り、急な減速や方向
転換に対応できず追突、接触し、転倒につながり
ます。お互いに注意し合いながら車間をあけまし
ょう。
向かい風では前を風よけにするために車間を
出来るだけ詰め、風の抵抗を少なくしようとうつ
むいて走っている人が多くいます。レースの世界
でそれはありかもしれませんが、私たちは安全第
一のサイクリングを目指します。
・ 横か らの 突 風に 注意
強い横風でハンドルがとられて転倒、または自
動車の車線に大きく飛び出してしまうことがあ
ります。また車間が詰まっていると風にあおられ
て前後の車両と接触する事もあります。
・ 休憩 の回 数 を増 やす
いつも以上に疲れがたまりやすくなります。細
かく休憩をとり、無理せずに走りましょう。
28
第7章 クラブの主要コースについての注意点
1.
各クラブランにおける注意点 ( 小樽 ラン / 積丹 ラン / 支 笏湖 ラン )
2.
札幌周辺の道路状況など( 下手 稲通 り /石 狩街 道 /国 道3 6号 線 /国 道2 7 5号 線/ 白
石 サイ クリ ン グロ ード / 新川 通)
1. 各クラブラ ンのコースにおける注
2.
札幌周辺の道路状況など(下手
意点(小樽 ラン/積丹ラン/夕張
稲通り/石 狩街道/国道36号
ラン/支笏 湖ラン)
線/国道2 75号線/白石サイ
クリングロ ード)
・ 小樽 ラン
張碓峠の小樽側は急な坂です。天狗山に向かう
・ 下手 稲通 り
道はわかりにくいので予めよく確認しておきま
交通量が多く、大型車も通る。市街地を通るの
しょう。また天狗山の坂は距離もあり、非常に斜
で歩行者も多い。車道で走るか歩道で走るかの判
度のきついものです。道幅が狭く、急なカーブが
断が求められる場面が多くある。
多いのですが途中に直線もあり、スピードにのり
・ 石狩 街道
すぎて毎年転倒者が発生します。天狗山の下りを
車が多く、市街地を出るまでは路側帯も狭い。
抜けるとすぐにもとの車道に合流するので、いつ
・ 国道 36 号 線
でも止まることが出来るようにスピードを出し
路駐車が多い。脇道から出てくる車や歩行者に
すぎないよう注意しながら下ります。
注意しながら走行すること。
・ 積丹 ラン
・ 国道 27 5 号線
暗く道幅の狭いトンネルが多いので、ライトを
江別市で石狩川を渡る場合、路側帯がない。基
点灯させた上で注意して通過しましょう。
本的に迂回すべき。札幌から北東方向(岩見沢、
※小樽
余市間の国道5号線にある塩谷トンネ
月形方面)へ向かうときには重要な道路。周囲が
ルは非常に狭いので自転車を降りて歩道を慎重
開けているために、どの方向に向かうにしろ強風
に歩くこと。
に吹かれる。
・ 支笏 湖ラ ン
・ 白石 サイ ク リン グロ ー ド
国道453号線の支笏湖への下り坂は急なカ
豊平橋を通り、東札幌から進入する。途中でエ
ーブが連続しています。しっかりとブレーキ調節
ルフィンロードと名前を変えて北広島駅にまで
して臨みましょう。
至る。歩行者や自転車が多く、フリーランをする
ときには十分注意しながら走ること。
・ 新川 通り
川沿いを通る道で、時に強風が吹き、大型車も
多い。危険だと判断される場合には歩道を通行す
ることを考える。
29
第8章 無雪期登山
無雪期登山に対する心構え
板垣洋 1992年 協力:赤城 良次
山に入って登 山道を歩く。その事に対し て、皆さんはどれぐらいの 危険認識をしていますか。 一度山
に入れば、そ こには人間の世界とは切り 離された、むき出しの自然 環境が広がっています。怪 我にして
も救急車は来 ず、人さえ通らないかもし れません。千変万化する自 然に対する一個人の力がい かに無力
であるか、よ く踏まえた上で登山に臨ん でほしいものです。
次に登山を行 うときの要点を上げて行き ますが、これらは登山のノ ウハウすべてを網羅するの ではな
く、あくまで もそれらのほんの一部です 。実際に登山をするのであ れば個人的に本を楽しむな り、訓練
をするなどの 本人の努力が必要だと思わ れます。
1. 計画 ( 目的 地/ コ ース /計 画 書)
2.
装備( 普通 食/ 行 動食 /予 備 食/ 非常 食/ 水 /雨 具/ 靴 /衣 類/ 防 寒具 /地 形 図・コ ンパ
ス /ヘ ッド ラ イト /ラ ジ オ/ 予備 電池 / 火器 /衣 料 品/ テン ト /シ ュラ フ /現 金/ ナ イ
フ /軍 手/ そ の他 )
3.
実行( 天気 /登 山 届/ タイ ム テー ブル /準 備 運動 /パ ー ティ ーの 組 み方 /歩 き 方/ 休憩 /
ル ート ファ イ ンデ ィン グ /水 の確 保/ 遭 難)
1.
計画(目的 地/コース/計画書)
トを設定しておくことです。初心者は長距離に渡
①目的地
ってエスケープルートの取れないようなコース
登りたい山についての情報収集をします。
設定はしない方が無難でしょう。また、地図をよ
これには一般出版物を使うとよいでしょう。そ
く読んで、地形・コース・水場などを頭に入れて
れによってコースタイム、危険箇所、山小屋の
おきましょう。
③計画書
有無などの難易度を見て、自分の技術、体力、
経験、装備レベルにあった山、コースを選びま
一度の山行につき一つ計画書を作成すると
す。
より安全です。計画書には隊員の緊急連絡先、
一日に行動できるコースタイムは、経験者が
登山の行程、山の概念図とコース、装備の分担、
重装備で8時間くらい。軽装備でプラス2、3
食糧計画(いつ何を食べるか決めておけば食糧
時間が目安です。(しかし日頃訓練していない
が足りなくなることが防げる)、緊急時の対応
場合にはこれよりもすぐに限界が来る。)
マニュアルなどを記載します。出発前に平地に
②コース
いる人間にこの計画書を渡していれば遭難時
まず地図(コースタイムが載っている登山地
の対応がよりスムーズになり、また隊員も山の
図がよい。例:
「山と高原地図」
;昭文社)を入
知識をもって臨むことが出来ます。
手し、ルートとスケジュールを決めて行きま
作成した計画書を警察に届けることも重要
す。このとき重要なのは、状況が悪化したとき
です。北海道警ではホームページからオンライ
に備えて、ショートカットするエスケープルー
ンで簡単に届け出を出すことが出来ます。
30
第8章 無雪期登山
2.
装備(普通食 /行動食/予備食/
・ 水
非常食/水/雨具/靴/衣類/
必ず十分な量の水を持って行きます。スポーツ
防寒具/地形図・コンパス/ヘッ
ドリンクを持って行ってもかまいません。水を持
ドライト/ラジオ/予備電池/
って行く場合には塩分の高い行動食を用意する
火器/衣料品/テント/シュラ
か、塩をアルミホイルにつつんで個別に携帯する
フ/現金/ナイフ/軍手/その
などして塩分不足に備えます。
他)
・ 雨具
山の天気は地上と違い、信じられないようなス
・ 普 通食
ピードで変化して行きます。短時間でも、いくら
山では朝、昼、夕食は一度にたくさん食べない
か晴れていても必ず雨具を持って行きましょう。
方が良いと言われています。動きながらのエネル
上下が分かれるレインコートを持って行きます。
ギー補給を心がけましょう。また、時間を稼ぐた
・ 靴
めに早く調理できるものがいいでしょう。長期に
冬山でなければ軽登山靴がいいでしょう。捻挫
なるときは、重いものや日持ちしないものから食
を防止するためにハイカットのものを勧めます。
べるようにしましょう。高カロリーでおいしく食
出発前には防水スプレーをかけておきましょう。
べられるものがよいでしょう。野菜は予め下界で
スニーカー、サンダルでの登山は危険です。
切っておけば手間がかかりません。
・ 衣類
・ 行 動食
綿のものはなるべく避けましょう。羊毛・オー
休憩したときにこまめに食べます。飴、ビスケ
ロン等は濡れても保温力が維持されますが、綿は
ット、チョコレートなど、高カロリーなものを多
保温力が失われてしまいます。またジーパンなど
めに持って行くといいでしょう。
は汗をかいたときに足にまとわりつき、快適な歩
・ 予 備食
行を妨げます。服は出来るだけ長袖長ズボンを着
悪天候などで進行できず、日程をのばすときの
用するなどして肌の露出を避けます。帽子も被り
ための食糧です。内容は普通食と同じものを用意
ましょう。
しますが、ラーメンの様に軽くて持ち運びしやす
・ 防寒具
いものがよいでしょう。
山では地上より気温が低い(100メートル上
・ 非 常食
るごとに約 0.6℃気温が低下する)ため、夏でも
非常時に命をつなぐための食糧であり、完全に
防寒着を持って行きます。
下山するまで手を付けてはいけません。加熱しな
・ 地形図・コ ンパス
くても食べられて、カロリーの高いもの(チョコ
山に入るときには必要不可欠です。地図の北方
レート、飴、サラミ、コンデンスミルク、カロリ
向と磁北とはずれがあるので、予め地形図に磁力
ーメイト、マヨネーズ等)を常備しておきます。
線をひいておくと便利です。コンパスはシルバコ
他の食糧とは別にし、袋に「非常食」と明記して
ンパスがシンプルで使いやすいです。地図とコン
間違って食べてしまうことがないようにします。
パスが使えるようになってから山に入りましょ
う。
31
第8章 無雪期登山
・ ライト
なく張ります。プラスチックペグだけではなく、
道に迷ったりして予定が遅れ、日が暮れてしま
金属ペグもあるとよい。またペグ打ち用に木槌を
った場合、照明がなければ身動き一つ出来なくな
持って行くとよい。テント固定用にロープを持っ
ってしまいます。日帰り登山でも必ず持って行き
て行くと岩場などでも固定できて便利。
ましょう。手を離しても使用することが出来るヘ
・ シュラフ
ッドランプを持って行くことをお勧めします。
地上よりも冷えて、また雨などで湿ることを防
・ ラジオ
ぐためにシュラフカバーで防寒、防水します。
天気予報を聞き、予定変更などを行います。気
・ 現金
象通報を聞いて天気図を作成したり天気の予報
メジャーな山では山小屋設備が整っていると
ができると山では有利になります。(気象通報:
ころが多く、テントサイト料がいるところもある
NHK 第二放送の16時・22時に放送。各地の
ので多めに用意しましょう。
気圧、風向風力、天気、気温などを報告する。こ
・ ナイフ
れをもとに天気図を作成する。)低気圧、前線の
調理するときに包丁のような大きなものを持
動きに注意すること。
って行く必要がないならば、小型のナイフを携帯
また熊鈴を持っていなかったときに熊避けに
します。ビクトリノックスに代表されるような多
ラジオをつけて行動することもあります。
機能ナイフであればより便利です。
・ 予備電池
・ その他
ライト、ラジオ、その他電子機器を持っていて
ポリタンク(2ℓのペットボトルでも可)・食
も電源がなければ使用できません。必ず予備電池
器・トレペ・新聞紙・ビニール袋・ライター・軍
を携帯します。携帯電話、スマートフォン用にも
手・呼び子笛・筆記用具・タオル・着替え・カメ
予備電池を持って行くとよいでしょう。
ラ・サブザック・ガイドブック・ローソク・アイ
・ 火器
ゼン・高度計(位置確認用、また気圧の変動もわ
テント内で使用することもあるので、ガスまた
かる)等を必要に応じて持って行きましょう。
は灯油を使用するものがよいでしょう。火器の故
・日帰り登山、サブ行動で必要なもの
障は重大なので、出発前には使用可能か点検し、
雨具・地図・コンパス・ライト・非常食・防寒
整備、修理方法もマスターしておきましょう。
具・時計・ボトル・医療用品・トレペ
・ 医療品
最低でも消毒液、包帯、胃腸薬くらいは持って
行きましょう。山で怪我をすると破傷風になりや
すいので注意。
・ テント
山で泊まるのであれば、登山用テントがいいで
しょう。あまり安物では風で破損したり、雨漏り
したりする可能性が高いからです。また、ペグを
持って行きテントを固定し、フライシートを緩み
32
第8章 無雪期登山
2.
実行(天気/登山届/タイムテー
スの様に)、体力のない人を前、ある人を後ろに
ブル/準備 運動/パーティーの
配置します。
組み方/歩 き方/休憩/ルート
・ 歩き方
ファインデ ィング/水の確保/
歩き始めはしばらくゆっくり歩いて足慣らし
遭難)
を行います。足の運びは体重移動で行いましょ
・ 天気
う。靴ひもは登りではきつく締める必要はありま
入山前によく天気予報(週間天気予報など)を
せんが、下りでは締めた方が捻挫防止になり、ま
聞き、悪化することが予想されたら中止・延期・
たつま先の負担も軽減することができます。下り
コース変更等を行います。山の状況を市町村の役
では、足を置く場所をある程度先に決めておき、
所に問い合わせるのもよいでしょう。
できるだけ水平移動するようにしましょう。浮き
特に行程に沢登りを含む場合には、当日晴天で
石(ぐらついている石)には乗らないように注意
あっても前日に降雨があると水が増し、非常に危
し、同行者がいる場合には後ろに伝えます。「浮
険を伴うことが考えられます。初めての地で、普
き石注意!」
段の水位を知らない分、安全かどうかの判断を適
万が一落石を起こしたら、すぐに大声で叫んで
切に下すことが出来ないようであれば、計画を変
知らせます。「落石!」「ラク!」
更するべきです。
・ 休憩
・ 登山届
歩き始めて10分くらいで一度パッキングの
氏名・生年月日・住所(緊急時の連絡先)・大
再調整を行い、その後1時間に5
学名・日程・装備・食糧等をまとめ、営林署や役
の休憩をこまめに取ります。このときに行動食を
所、登山口のポストに届けておきましょう。下山
食べて、カロリー補給をしておきます。
届けをする場合は、忘れずに連絡しましょう。
・ ルートファ インディング
・ タイムテー ブル
正確に登山道をたどるのは重要なことです。絶
一般的には山は午後から天気が崩れやすいの
対に自ら道を外れてはいけません。登山道であれ
で、早朝から14、15時くらいの間に行動する
ばたいてい目印(赤い布、ペンキの○印など)が
ようにします。従って、4時起床、6時出発にし
つけられているので常に確認します。もし道を外
ても、8時間のコースを消化するのは結構大変な
れてしまったら、素早くそれに気づいて引き返し
ことです。特に初心者は大幅に余裕のある計画を
ます。踏み跡(足跡や岩の削れ)がなくなったり、
立てましょう。
極端に急な登りがあったりしたら、まずは疑って
・ 準備運動
みることです。すれ違う人に予め道の状況や所要
歩き出す前には必ずアキレス腱をのばし、屈伸
時間を聞いておくとよいでしょう。
をするなどしてよく体をほぐしておきます。特に
・ 水の確保
痛めやすい膝周りは入念に準備運動を行います。
稜線歩きをするときは、最後の水場で十分に水
・ パーティー の組み方
を補給し、計画性を持って使用しましょう。水を
パーティー(隊)を組むときは経験者で前後を
切らして脱水症状を起こした例もあります。
挟み(サブリーダーがトップ、リーダーがオーラ
33
10分くらい
第8章 無雪期登山
・ 遭難
道に迷ったり、怪我をして身動きできなくなっ
たりしたときは、慌てないで体力を温存し、救助
隊を待ちましょう。隊の場合でもバラバラになら
ず、固まって行動しましょう。
負傷者や病人が出て、なおかつ携帯電話等で連
絡の取れないときには近くの山小屋、あるいは集
落に連絡員を派遣します。近くに登山者がいれば
その人に「事故の位置/時刻/原因/程度/事故
者名/パーティーの連絡先/救助の要請先(警察
等)」などを記載したメモを渡します。口頭で伝
えた情報は誤りが多く、不確かです。(一部、福
井県 「山岳遭難防止マニュアル」より)
34
第9章 走行以外での注意
ある団体の中で何らかの事故が発生した場合、「自己責任論」をもちだし、当事者一個人に責任を着せること
はあってはなりません。しかし一方で個々人は、集団の中であれ、常に自らの行動に対して責任を取る意識を持
たなければなりません。
1.
集団心理(その特徴と対策)
2.
飲酒の心得
3.
水泳、水遊びについて
1.
集団心理( その特徴と対策)
持って逆らうことも大切である。個々人が理性的
・集団心理 の特徴
存在であり、人格の主体であることをはっきり意
集団心理は群集心理とも呼ばれます。一個人が
識している限りにおいては集団心理で危険行為
「集団の中の一人」となったときにこの特異な心
にはしることはあり得ない。
理状況が生まれ、以下のような特徴を持つ。
・ その集団の外の状態について考えが及ば
*12年6月17日 桂沢湖ランにおける
なくなる
重大事故
・ 「赤信号みんなで…」のように個人の責任
桂沢湖ランの帰りの日、使用していたファミ
意識が薄れ図々しくなる
リーランドみかさ遊園のキャンプ場の、山の斜
・ 目立とうとする欲求から突発なことをす
面にあった大きな滑り台を出発前に1つの班が
る
使用した。朝に降った雨で滑り台は濡れており、
・ 他人の行動につられる
滑った時に加速し過ぎたため、遊んだ6人のう
・ 場の雰囲気に圧倒され、ストップがかけら
ち4人が着地用の砂場を飛び越えて着地に失
れなくなる
敗。第3腰椎破裂骨折を含む3人の重大なけが
→危険行為につながる(例:1991年古賀
人を発生させた。
さんの水死事故)
1番目の N 君は勢いよく滑り降り、着地面の
集団心理に呑まれているかを判断するために、
小さな砂場に着地し、さらに反動で砂場の外に
「もし自分一人であったらそれを行うか?」と自
飛ばされた。また3番目の K 君は砂場を飛び越
ら問うてみることは一つの基準になる。
え、腰から落下し、自力で立ち上がることが出
来ないでいたので先に滑った人の手を借りてそ
・集団心理 の対策
の場を離れた。それを見てもなお同様に滑り、K
その場においては部員各自が物事の危険認知
君に続く T 君、H 君がそれぞれ骨折と捻挫の怪
を確実に行い、相互に忠告し合うことが前提であ
我を負う。
るが、特に班長・隊長・執行部は危険行為のスト
ッパー役を果たすべきである。
一方で個々人は自らの行動を常に客観視でき
るべきであり、集団全体が危険行為に走ろうとす
る際には自らの判断でその行為を回避し、勇気を
35
第9章 走行以外での注意
2.
飲酒の心得
泥 酔者 の介 抱
つ ぶれ るま で 飲ま ない 、 飲ま せな い!
酔いつぶれて寝てしまった人については周囲
人と酒を酌み交わすことは喜びであり、うまい
の注意が必要です。睡眠中に本人は目を覚ます
酒とともに会話も弾み、楽しいことだ。一方で飲
こと無く嘔吐することもあり、吐瀉物がそのま
み過ぎてつぶれてしまうことは自分の体にとっ
ま気道を塞ぐと窒息死する危険性があります。
て害であるばかりでなく、一緒に飲んでいる人た
酔って立っていられなくなった者に対しては
ちに対しても迷惑をかける。周囲にいるのがサー
回復体位を取らせます。この体位は体に負担が
クル内のメンバーだけであるとも限らない。他の
無く、また吐瀉物が気道を塞ぐことを防止する
お客様、キャンプ場の方々、一般の方たちの信用
ことができます。
を失ってはならない。
飲 酒の 強要 は 絶対 しな い
アルコールを飲むことができない人、どうして
も飲みたくない人もいる。飲酒の強要は、強要さ
回復体位
れた人を傷つけ、せっかくの楽しい場も台無しに
する。強要は絶対にあってはならない。
万 が一 、急 性 ア ルコ ール 中 毒の 患者 が
出 たら 、す ぐ 救急 車! そ れ以 前に そ ん
な に飲 ませ な い!
急性アルコール中毒は命に関わる事態であ
る。「これからのサークルの活動に支障が出るか
ら」などという計算のもとに発覚を恐れて適切な
処置を遅らせてはならない。しかしそれ以前にそ
のような状態になるまで飲ませてはいけない。過
去の恵迪寮や剣道部の悲劇を繰り返してはなら
ない。
*北大恵迪寮・水産 追いコンにて(1995
年9月28日 )
Y さん(仮名)は数度吐くほど飲んでいたが、
さらに七割ほど酒の入った一升瓶を「そーれコー
ル」と共に飲み始め、吐きながらも全て飲み干す。
周りの人の手により意識もなく酔いつぶれた状
態の Y さんは寝かされて毛布をかけられた。約
1時間後、部屋に戻った人がぐったりしている Y
さんに気付く。救急車で病院に運ばれるが死亡が
確認される。
36
第9章 走行以外での注意
3.
水泳、水遊 びについて
・ 遊 泳場 のみ で 泳ぐ
・ 川 では 泳が な い
・ 水 泳は 全身 運 動な ので 、その 日 の行 程
の 後半 でな お かつ 残り の 走行 距離 が
短 いと きに 泳 ぐ( タ イム テー ブ ルを 優
先 させ る)
・ 必 ず準 備運 動 する
・ 泳 ぐと きは 、1人 か 2人 は陸 か ら見 て
い る人 を決 め る( 溺 れそ うな 人 がい た
ら 、速 やか に 救助 を求 め る)
1 99 1年 8 月2 日午 前 11 時2 0分 頃 、そ の 都市 の東 北・道 南ツ ア ーで 、古賀 利矢 さ ん
( 33 期生:当時 教養 部 水産 系2 年 )が 、青森 県十 和 田湖 町奥 入 瀬渓 流で 休 憩中 に水 難 事
故 で亡 くな ら れま した 。古 賀さ ん は、他の 班員 2人 と とも に奥 入 瀬渓 流の 阿 修羅 の流 れ 付
近 で水 遊び を しよ うと し て川 に入 り、うち 1人 が溺 れ そう にな っ てい るの を 助け よう と し
て 水死 しま し た。
渓 流は えて し て水 の流 れ が速 いと 考え る べき で、入っ て はい けま せ ん。そ し て万 が一 溺 れ
そ うな 人が い たと して も 、二次 災害 と して の悲 劇の 恐 れも 頭に お いて おか な けれ ばな り ま
せ ん。
→集団心理の特徴、集団心理の対策の項 を参照してください。
37
第10章 事故報告
事故が無いにこしたことはありません。重大な事故を避ける一番の方法は、常に事故の可能性を意識し
ていることです。1年目で経験が浅く、事故を知らない時、または自分が事故に遭うなどとは考えていな
い時、そんなときに事故が起こります。過去の事故を記憶にとどめ、出来る限り事故を避けましょう。ま
た他人を巻き込む事故、他人に巻き込まれた事故の場合は必ず警察に連絡し、当事者の間で示談によって
解決することはさけなければなりません。(2009年8月東北ツアーの例)
下記の例はいずれも当クラブ員の例であり、決して他人事ではありません。セーフティーノートをよく
読み、同時に経験を積み重ね、より安全で楽しいサイクリング活動を送りましょう。
2 00 6年 8 月 道 南・ 東北 ツ アー Y.M .君 (当 時1 年 目)
八幡平アスピーテラインを下山中カーブにさしかかり、スピードがついていたため外側に大きく膨
らんで、そこに撒き散らされた砂利で滑って転倒。
2 00 6年 8 月 道 南・ 東北 ツ アー S .A .さ ん( 当時 1 年目 )
美笛峠の下りで後方確認をしようとしたら、荷物を左前方にのみつけていたためバランスを崩し、
転倒。
2 00 7年 8 月 道 北ツ アー N. Y.君 (当 時1 年 目)
2007年度のツアーで道東の峠を走行中、下りにさしかかったときに軽いギヤのまま漕いでしま
い、バランスを崩して転倒。
2 00 9年 8 月 東 北ツ アー T.T.君 (当 時1 年 目)
車両との衝突の際、警察を介さずに車の運転手と示談で解決しようとしたため後々トラブルに巻き
込まれた。
2 01 0年 1 0月 支 笏湖 ラン T.A .君 (当 時1 年 目)
支笏湖ランの往路、支笏湖側に下りていく国道453号線の下りのヘアピンカーブを下っている際
に、カーブを曲がりながら後方確認をしたため、自転車の車輪が歩道側にずれて歩道の柵に激突した。
左手の指を激しく負傷したために救急車を呼び、その後もしばらくランに参加することができない状
態になった。
2 01 2年 8 月 東 北ツ アー Y.S.君 (当 時2 年 目)
トオヌップ展望台の帰り、道幅の狭い急な坂を下っていた。舗装された道は以前の雨で湿っており、
落ち葉がつもっていた。直線の下りで漕ぎ続け、カーブにさしかかったところで曲がりきれないと判
断しブレーキをかけたところ、落ち葉でスリップして転倒。腕に強い痛みがあったため救急車を呼び
下山した。
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