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第3章 施業集約化促進のための森林情報整備検証

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第3章 施業集約化促進のための森林情報整備検証
第3章 施業集約化促進のための森林情報整備検証
1. 本手法以外の事例調査
(1) 事例調査手法
本実証事業の手法以外でも航空レーザ計測データ、標高データ等を活用し、画像により森
林境界の確認を実施している事例がある。これらの事例について聞取り調査や資料調査を
行い、境界明確化の現場の状況に応じて、多様な手法の中から適したものを選択できるよう
に整理することとした。
調査対象は表 3.1 のとおり、都道府県 2 例、林業事業体 1 例、民間企業 4 例、他分野と
して国土交通省 1 例を取り上げた。
表 3.1 事例調査対象
分類
都道府県
調査対象
富山県 農林水産総合技術センター 森林研究所
徳島県 林業戦略課
林業事業体
東京都森林組合
民間企業
アジア航測株式会社
株式会社パスコ
国際航業株式会社
パシフィックコンサルタンツ株式会社
他分野
国土交通省 土地・建設産業局地籍整備課
調査は以下の手順に沿って実施した。調査項目は表 3.2 の通りである。なお、一般的に
事業体が年間で実施する境界明確化面積は約 300ha であると想定し、経費を整理する。
①
聞取り調査の事前に、事業趣旨・質問項目を送付する。
②
電話による聞取り調査、資料調査を実施する。
③
調査結果を事務局にて取りまとめ、調査対象者が補足・修正する。
25
表 3.2 事例調査項目
分類
a) 手法概要
質問
手法の特徴
必要データ
作業手順(現地での杭設置・測量は含まない)
問合せ先
b) 実際に手法を適用した実績
場所、面積、所有者数、筆数(区画数)
各作業にかかる人日、経費
所有者、森林組合等の反応
c) ha あたり、又は筆数(区画
数)あたりの経費
(年間 300ha を実施すると
想定した場合)
データ経費
人件費
その他
実施可能な最小面積
なお、調査した事例は、境界確認の工程の一部を対象としているものが多く、それぞれ違
った工程を対象としていた。そのため、境界確認の工程を、境界確認に関係する行政情報を
整理する「基本情報の整理」、境界確認を実施するために各種情報を収集・作成する「事前
準備」、収集した情報から境界を推定する「境界の推定」、推定した境界を確認する「森林所
有者への確認」の 4 工程に分け整理した(図 3.1)。
図 3.1 各事例の工程比較
26
(2) 事例調査結果
1) 富山県
農林水産総合技術センター
森林研究所
特徴
a ) 手法概要
複数時点の過去の空中写真を用いて判読した施業界を参考に、森林境界の推定
を行う手法である。事前に森林境界を推定しておくことで、現地での確認が容
易となる。
県主導とすることで過去の空中写真を無料で使用できること、フリーソフトを
必要デ ータ等
活用すること等、経費を抑えるよう工夫されている。
・ 公図、登記簿
・ 昭和 20~40 年代(複数時点)の空中写真を簡易デジタルオルソへ変換
・ 基本図、計画図等の GIS(フリーソフト)データ
・ 集落、山、林道等の GIS(フリーソフト)データ
作業 手順
森林研究所が過去の空中写真を簡易デジタルオルソへ変換し、県の農林振興セ
ンターや森林組合で表示、閲覧できるよう、GIS(フリーソフト)用のデータと
して提供している。
森林組合では異なる時期の空中写真(オルソ)を判読、比較し、森林素図(公
図+登記簿情報)を併用して森林境界の推定を行う。推定した森林境界は GIS
データとして作成し、現地調査前の所有者との協議資料作成、ハンディ GPS の
データとして変換できるようにする。
現地調査ではノート PC やハンディ GPS に空中写真(オルソ)を表示して ナ
ビゲーションを行いながら、現地での境界の痕跡(境界木、杭、植生の違い等)
を探す。所有者に報告し同意が得られれば、境界の保全測量を実施する。
所有者説明会で境界確認を行う際には、フリーソフトを使って鳥瞰図を見せる
こともできる。
問合せ先
富山県 富山県農林水産総合技術センター 森林研究所
森林環境課 小林裕之
住所
〒930-1362 富山県中新川郡立山町吉峰3
TEL
076-483-1511
e-MAIL
[email protected]
参考文献等
FAX
076-483-1512
富山県農林水産総合技術センター森林研究所 研究レポート No.8
Jun.2014
27
b ) 実績
対象地
場所
富山県滑川市・魚津市・黒部市・入善町・朝日町地区
所有者数
160,112 名
費用
実施主体
区画数
36,952 筆
面積
72,244ha
新川森林組合
森林組合また
空中写真購入(198 枚)
:
は外部委託
簡易デジタルオルソへの変換:
0 円(県から提供 679 枚)
8,044,600 円(275.5 日×測量技師)
基本図、計画図等の GIS データ:
集落、山、林道等の GIS データ:
森林組合作業
森林素図(公図+登記簿情報)作成:
509 円/筆
森林境界の推定:
450 円/筆
現地調査、所有者説明会データ準備:
現地調査:
9,700 円/ha
所有者説明会:
森林所有者等の反応
101,500 円/回
50,000 円/回
・ 過去のオルソ写真を同時に複数表示し、現在位置を確認できるこ
とは非常に便利である。
・ 電子コンパス内臓のハンディ GPS では GPS 保持者の進行方向に
合わせてオルソ写真画像が回転し、非常に便利である。
・ タブレット PC より、ノート PC の方がオルソ写真の複数表示に
適している。
・ 所有者説明会では、鳥瞰図の表示が、所有者の記憶を呼び戻す効
果が大きく、大変有用である。
c ) 平均的な費用(ha あたり、筆数または区画数あたり)
費用
年間 300ha 程度を実施するとした場合。
森林組合ま
空中写真購入(13 枚):
たは外部委
簡易デジタルオルソへの変換:
託
39,000 円
208,000 円
基本図、計画図等の GIS データ:
県提供
集落、山、林道等の GIS データ:
県提供
森林組合作
森林素図(公図+登記簿情報)作成:
1,272,500 円
業
森林境界の推定:
1,125,000 円
現地調査、所有者説明会データ準備:
現地調査:
101,500 円
2,910,000 円
所有者説明会:
50,000 円
28
事前に準備が必要なハードウェア、ソフトウェア等の費用。
ハードウ
ノート PC(Bluetooth 対応):
ェア例
GPS ロガー(Bluetooth 対応):
ハンディ GPS:
100,000 円
HOLUX m-241
10,000 円
Wintec WBT-202
12,000 円
ガーミン eTrex30
33,000 円
ガーミン eTrex30J
65,000 円
ソフトウ
簡易無料 GIS:
カシミール 3D
0円
ェア例
無料 GIS:
Quantum GIS
0円
業務用 GIS
(簡易デジタルオルソ変換作業を実施する
場合に必要)
:
800,000 円
TNTmips
29
2) 徳島県 林業戦略課
特徴
a ) 手法概要
『森林境界「完全」明確化事業』委託(委託期間:平成 27 年 12 月 8 日~平
成 28 年 3 月 25 日)。今年度より 3 年間の計画で、全県実施を目標としている。
現地での森林境界明確化事業に先行し、机上において、様々な機関が所有する
森林境界及び所有者情報を森林 GIS に一元化し、現存する情報をより精度の高
い調査図素図として作成し、以降の森林境界明確化事業等の現地確定作業の効
率的な実施に寄与することを目的とする。
県が主導して境界明確化に必要なデータを行政間手続きの一環として整備す
ることから、境界明確化事業をはじめ、森林施業の集約化を促す際の資料収集及
び所有者探索における負担の軽減を図るとともに、境界明確化や地籍調査が完
了したデータについても一元管理し、その後の施業実施を促進することも想定
委託事業の受託者に貸与される資料
区分
基礎情報
必要デ ータ等
した取組みである。
データ名
属性
データ仕様
森林基本図
地図
シェープファイル(座標有)
空中写真
画像
TIFF ファイル(ワールドファイ
地図 (
境界)情報
ル付)
森林計画図(林班図) 所有界
シェープファイル(座標有)
公図
※ 町村により形式が異なる
所有界
XML ファイル(座標無)
シェープファイル(座標有)
所有者情報
行政区分地図
大字界、字界
シェープファイル(座標有)
森林境界明確化実績
所有界、地番
シェープファイル(座標有)
地籍調査実績等
所有界、地番
シェープファイル(座標有)
森林簿
林班名等、所有
Excel ファイル
者、地番、住所、
樹種
登記簿
所有者、地番、 Excel ファイル
住所、地目
森林施業履歴
所有者、地番、 Excel ファイル
樹種
森林境界明確化実績
所有者、地番
シェープファイルの属性データ
地籍調査等実績
地番
シェープファイルの属性データ
30
作業 手順
県は、『森林境界「完全」明確化事業』委託発注の事前に、市町村、法務局等
から必要データを収集した。市町村では、当該データをシェープファイルに変換
する作業を行った。
以下(1)~(3)は、事業の受託者が実施する作業である。
(1)地図レイヤの作成
地図、空中写真及び境界情報を重ね合わせ、精度の高い境界を配置した地図レ
イヤを作成する。なお、ポリゴンの作成単位は、基本的には公図(地番)単位で
作成し、境界情報の優先順位としては基本的に次の順位で検証するものとする。
①
地籍調査、行政区分地図(大字界)
②
森林境界明確化
③
公図
④
森林計画図
(2)属性データの作成
地図レイヤにあわせて以下の属性データを作成する。
・ 林班、小班群、小班、枝番
・ 住所
・ 地目
・ 地番
・ 樹種
・登記、未登記区分
・ 氏名
・成果事業区分
・管理人コード
・管理人氏名
(3)データのとりまとめ
(1)及び(2)の結果を取りまとめた情報をポリゴンデータの属性に格納し、
シェープファイル形式データとしてとりまとめる。
完成したデータは県・市町村が管理し、境界明確化を実施する事業者は、市町
村から必要な手続きによって入手する。
問合せ先
徳島県 農林水産部 林業戦略課 森林企画担当
住所
〒770-8570
TEL
088-621-2447
e-MAIL
[email protected]
参考文献等
徳島市万代町1丁目1番地
FAX
088-621-2861
徳島県林業戦略課ホームページ
b ) 実績(平成 27 年度実施中)
対象地
場所
徳島県神山町、佐那河内村、那賀町の森林計画対象森林
面積
76,462 ha
実施主体
費用
区画数
公図筆数
小班数
111,826 筆
80,293 小班
徳島県
準備作業
県
法務局、市町村への依頼期間
市町村によるシェープへの変換作業
外部委託
契約額 11,112,000 円(消費税抜き)
31
3~4 ヶ月
1~2 ヶ月
費用
c ) 平均的な費用
県、市町村の準
算定なし
備作業
外部委託
(平成 27 年度契約金額より算定)
32
157 円/ha
108 円/筆
3) 東京都森林組合
特徴
a ) 手法概要
境界確認のための現地到達を円滑にするため、過去の空中写真の立体視判読を
元に境界推定線を GIS データとして作成する。GIS データを PDA に載せ、現
地確認のナビゲーションとする。
境界推定線を作成しておくことで、現地確認を効率よく実施することができ
必要デ ータ等
る。
・ 公図、登記簿
・ 昭和 20~40 年代の空中写真(立体視用データへ変換)
・ 現在の空中写真(オルソ)
作業 手順
森林組合が、公図に登記簿から所有者を記入した森林素図を作成する。
過去の空中写真の立体視判読による境界推定線作成、現地測量は一般社団法人
日本森林技術協会(以下、「日林協」という)に委託している。
日林協では、以下の作業を実施している。
1.
過去の空中写真を購入し、立体視用データへ変換する。
2.
森林組合が作成した森林素図を元に、立体視判読をしながら境界推定線を
作成する(GIS ラインデータ。属性は、境界の根拠とした情報(尾根、沢、
林相など))
。
3.
PDA の GIS システムに 2.で作成した境界推定線、過去空中写真オルソ、
現在空中写真オルソ、地形図を載せ、GPS のナビゲーション機能で現地
到達を図る。
現地到達に GPS ナビゲーションは有効であるが、現地での境界設定(杭設置)
において求められる単木単位の位置精度には至らないので、注意が必要である。
問合せ先1
東京都森林組合
住所
〒190-0182
TEL
042-588-7963
e-MAIL
-
問合せ先2
東京都西多摩郡日の出町平井 2759
FAX
一般社団法人日本森林技術協会
住所
〒102-0085
TEL
03-3261-6259
e-MAIL
[email protected]
参考文献等
042-597-5263
林業経営グループ
大久保敏宏
東京都千代田区六番町 7
FAX
-
33
03-3261-3840
対象 地
b ) 実績
東京都あきる野市、奥多摩町、青梅市、
場所
日の出町、八王子市、檜原村
242 所有界
区画数
面積
418ha (6 団地)
東京都森林組合
費用
実施主体
外部委託
過去空中写真購入(25 枚)
154,000 円
現在空中写真オルソ購入
188,000 円
立体視用データ作成、推定線作成
1,944,000 円
(現地確認は別途)
森林組合作業x
森林素図(公図+登記簿情報)
作成
森林所有者等の反応
・ 現地到達の際、ナビゲーションが可能なため、移動距離を
短縮することができる。
c ) 平均的な費用
費用
年間 300ha 程度を実施するとした場合。
外部委託
空中写真購入
111,000 円
現在空中写真オルソ購入
135,000 円
立体視用データ作成、推定線作成
(現地測量は別途)
森林組合
森林素図(公図+登記簿情報)作成
作業
34
1,395,000 円
4) アジア航測株式会社
特徴
a ) 手法概要
この手法の特徴は以下の3点にまとめられる
① 航空レーザ計測データ等の3次元空間情報により境界位置を可視化する。
(空中写真と異なり、樹冠下の作業道跡、巨石なども確認できる。)
② 現地立会ではなく、室内での3次元立会により境界の確定を行う。
③ 得られた各種境界情報は後続の地籍調査や森林施業等、多分野で活用でき
るよう GIS で一元管理するとともに、従来の地籍調査手法により境界情報の高
必要デ ータ等
精度化が可能な箇所については現地測量等を継続実施する。
【基礎資料】
・ 公図、地籍図、森林基本図、森林計画図、公図編纂図、字限図、
【境界調査ベースマップ】
・ 過去、現在オルソ空中写真(航空レーザ計測システムと同時撮影)
・ 赤色立体図(航空レーザ計測データより作成)
作業 手順
・ 航空レーザ林相図(航空レーザ計測データより作成)
以下の手順にて、境界位置の確認用データを作成。
①
公図をスキャニングしたラスター画像の作成
②
収集した各種資料を判断材料として公図を概略位置に配置
③
公図に移動・回転・拡大縮小・偏歪等の操作を行い、ベースマップ上に重畳
④
筆界をデジタイズし、確認用境界データを作成
上記境界位置の確認用データを用いて、全周囲画像を用いた 3 次元立会(3 次
元ビューワ、GIS、全周囲画像など新手法を活用)を行う。
関係者が合意した境界位置情報と地権者情報等の属性データとの関連づけを
行い GIS データ化し、境界調査ベースマップや確認用データ等も境界情報 GIS
データベースとして一元管理する。
詳細な確認を要する箇所については、必要に応じ補足的な現地立会や境界測
量を行う。
問合せ先
アジア航測株式会社
太田
環境部
森林環境課
望洋
住所
〒215-0004 川崎市麻生区万福寺 1-2-2 新百合 21
TEL
044-967-6340
e-MAIL
[email protected]
参考文献等
FAX
044-965-0032
アジア航測株式会社(伊藤史彦、白戸丈太郎、池田晃三、緒方雄一),
3次元空間情報による山間部境界確定の加速化, 「地籍の匠」優秀技
術者受賞論文 優秀賞
35
b ) 実績(または試行)
資料なし
c ) 平均的な費用
年間 300ha 程度を実施するとした場合。
費用(外部委託)
約 20,000 円/ha
*ただし、レーザ計測データは、既往の計測データを利用する
と想定
36
5) 株式会社パスコ
特徴
a ) 手法概要
法務局データと森林簿データが一致しない場合があるため、法務省地図 XML6を
主要な根拠データとし、確認素図を作成する。さらに、森林実体視ソフトウェア「も
りったい」を用いたステレオ実体視表示や、3 次元鳥瞰図(航空レーザ強調図)表
示を用いることで、確認素図の確度を高める。
所有者説明会の前に確認素図付案内書を送付し、事前確認を行う。また、簡単に
説明会に参加することのできない不在村所有者に対しては、クラウド型森林 GIS
システムを用いて事前確認を行う。
所有者説明会では、3 次元鳥瞰図表示システム「Skyline」と、森林実体視ソフト
必要デ ータ等
ウェア「もりったい」を使い、鳥瞰図/ステレオ実体視方式を活用する。
・ 法務省地図 XML
・ 森林簿
・ 航空写真
・ 航空レーザ測量成果
・ 3 次元鳥瞰図表示システム「Skyline」
・ 森林実体視ソフトウェア「もりったい」
作業 手順
・ 過去航空写真(電子国土 Web)
・ 現地の全周写真(電子国土 Web)
1.
法務省地図 XML、森林簿データ等の情報収集・整備。
2.
法務省地図 XML の作成経緯や特徴を考慮し、ブロック単位で接合編集し、
確認素図を作成。
3.
地目等の筆属性も参考情報とし、航空写真と重ね合わせ、確認。
4.
人間の目では判断できない林相の違いを森林実体視ソフトウェア「もりった
い」の林相区分機能を用い自動判読し、確認素図修正に役立てる。
5.
ステレオ実体視表示や 3 次元鳥瞰図(航空レーザ強調図)表示で作成した確
認素図の検証を行う。
6.
所有者に確認素図面付案内書を送付し、事前確認を行う。
7.
簡単に説明会に参加することのできない不在村所有者のためにクラウド型
森林 GIS システムで該当筆の事前確認を行う。
8.
所有者説明会において 3 次元鳥瞰図表示システム「Skyline」と、森林実体
視ソフトウェア「もりったい」、必要に応じて、電子国土 Web の過去航空写
真や現地の全周写真などを活用。
問合せ先
6
株式会社パスコ
中央事業部 営業部 営業二課
住所
〒153-0043 東京都目黒区東山一丁目 1 番 2 号
TEL
03-6412-2101
FAX
03-6412-2573
法務省地図 XML:登記所に備え付けられている地図情報システム(地図及び地図に準ずる図面等を
電子情報として管理し,コンピュータシステムによる事務の処理を可能とするシステム)で取り扱わ
れている地図の形式。
37
b ) 試行
対象地
所有者数
117
名
面積
154 ha
外部委託
42,000 円/ha
森林組合作業
公図、森林 GIS データ、森林簿等の取集
費用
c ) 平均的な費用
年間 300ha 程度を実施するとした場合。
費用(外部委託)
金額:42,000 円/1ha
38
6) 国際航業株式会社
a ) 手法概要
特徴
立体視(実体視)による森林境界確認
必要デ ー タ
等
森林基本図等の GIS データ
1960 年代~1970 年代(拡大造林時代)の航空写真
最新の航空写真
作業 手順
標高データ
1.
林班界・小班界を拡大造林時代の航空写真と重ねて立体視。
2.
形状もしくは位置ずれしている箇所を 3D ビューア(K-Scope2)を用いた
立体視環境で修正。
修正した森林境界を最新の航空写真と重ねて立体視し,修正した境界の妥
3.
当性を確認・検証。
問合せ先
国際航業株式会社
技術本部 地理空間基盤技術部 G 空間推進グループ
住所
東京都府中市晴見町 2-24-1
TEL
042-307-7180
FAX
042-330-1050
b ) 試行
対象地
面積
20ha
費用
外部委託
立体視環境構築作業:250,000 円
森林境界の推定作業:292,000 円(10 日×測量技師)
所有者を交えた森林境界確認作業:78,700 円
(1 日×(主任技師+測量技師))
150,000 円
ハードウ
・
PC
ェア例
・
3D 表示システム
30,000 円
ソフトウ
・
3D ビューア(K-Scope2)ライセンス
50,000 円
ェア例
39
c ) 平均的な費用
費用
、年間 300ha 程度を実施するとした場合。
外部委託
立体視環境構築作業:250,000 円/エリア
(対象範囲が点在しているか否かで変動)
森林境界の推定作業:4,380,000 円(150 日×測量技師)
所有者を交えた森林境界確認作業:78,700 円/エリア
(1 日×(主任技師+測量技師))
(対象範囲が点在しているか否かで変動)
40
7) パシフィックコンサルタンツ株式会社
特徴
a ) 手法概要
森林 GIS システム上に、登記簿データと地籍図(法務省地図 XML)を取り込
み、システム上で森林簿及び計画図を修正する機能を搭載する。
機能を用いれば、行政、事業体の職員が簡単にデータの取り込み、森林簿・計画
図の修正が可能となる。
境界明確化が完了した区域のデータも地籍図と同様に取り扱い、計画図の修
必要デ ータ等
正に用いることができる。
登記簿(CSV)、法務省地図 XML
計画図、森林簿
作業 手順
森林 GIS システム上に搭載する機能は以下のとおりである。
1. 法務省地図 XML を地籍図として森林 GIS システムに取り込む機能(GIS デ
ータ形式への変換)
2. 地籍図と計画図を重ねあわせ、計画図を修正する機能
①
地籍図と計画図を重ね合わせ、計画図で地籍図を分割する。分割され
たポリゴンに対してユーザ属性を付与する。
(市町村、林班、小班、新
小班、地番)
②
分割された地籍図から、面積がある閾値未満(例 0.01ha)のポリゴン
は隣接するポリゴンに加える等の処理を行う。
3. 登記簿の所有者情報(CSV 形式)を森林 GIS 上のデータベースに取込み、
管理する機能
4. 2.で修正した計画図と、3.で管理する登記簿の所有者情報を森林 GIS 上の森
林簿データベースと結合し、森林簿を更新するための補助情報を出力する機能
これらの機能を用いることで、地籍図に基づく計画図の修正、登記簿情報に基
づく森林簿の修正を簡単に実施することが可能となる。
問合せ先
パシフィックコンサルタンツ株式会社
事業マネジメント本部 情報システム部 防災・森林環境室
中村 尚
住所
東京都千代田区神田錦町三丁目22番地
TEL
03-6777-3913
e-MAIL
[email protected]
FAX
41
03-3296-0526
b ) 試行(平成 27 年度試行中)
対象地
費用
場所
茨城県石岡市
面積
林野面積 7820ha
外部委託
300 万円(森林 GIS システム改良及び試行)
森林組合作業
なし
ハードウェア例
GIS 専用端末
ソフトウェア例
森林 GIS(SIS ActiveX Modeller 7.1)
c ) 平均的な費用
費用
年間 300ha 程度を実施するとした場合。
外部委託
システム改良に 300 万円(SIS ActiveX Modeller を利用した場
合)
森林組合作業
システム導入後は、行政職員または森林組合でも作業が可能であ
る。
42
8) 国土交通省
特徴
a ) 手法概要
山村境界基本調査(地籍調査に先立ち、山村の境界情報を調査し、簡易な測量
をした上で、境界に関する情報を図面等にまとめ、保全する)において境界情報
を効率的かつ簡易に保全するための手法を実証した。
本調査方式は、急峻で山に行けない高齢な所有者や現地がわからない所有者等
に、現地の地形などがわかる空中写真(オルソ画像)を見せながら、現地で立ち
会うことなくおおむねの調査点や境界線を確認し、その位置情報を図上計測す
るものである。現地がわからない所有者については現地精通者の助言を得て調
必要デ ータ等
査点を確認する。
公図、登記簿、森林基本図、林班図、地形図等
空中写真(オルソ画像)
標高データ(航空レーザ計測又は 10m メッシュ)
作業 手順
空中写真(オルソ画像)に公図データ等を重ねる。また、調査者は現地確認
1.
を行い現地の状況等を把握する。
2.
1.を二次元画像や標高データを用いて 3 次元画像として表示する。
3.
所有者、精通者と 2.の画像を基に境界情報を確認する。
4.
得られた境界情報は 2.の資料に追記し保全する。
(尾根や谷、植生界がはっきりしている所は比較的確認作業が容易であった)
問合せ先
国土交通省
土地・建設産業局
地籍整備課
住所
〒100−8918 東京都千代田区霞が関 2-1-3
TEL
03-5253-8111(代表)
e-MAIL
-
参考文献等
FAX
-
平成26年度山村境界基本調査実施手法検討業務報告書(平成 27 年
3 月、国土交通省土地・建設産業局地籍整備課)
b ) 実績または試行
資料なし。
c ) 平均的な費用
資料なし。
43
(3) 事例調査の考察
各事例は、大きく 2 タイプの事例に分類できることが分かった。一つ目は「都道府県が主
導し、全県のデータを地籍図を中心に整備しておく事例」
、二つ目は「境界明確化の対象団
地ごとに空中写真、航空レーザ由来画像等を用いて事前に境界を推定し、GIS データを作成
しておく事例」であり、二つ目のタイプには、さらに様々なデータを使用するという細分が
あった。タイプ分けを表 3.3 に、タイプごとの効果を表 3.4 示す。
富山県の事例は、県が空中写真を国土地理院から入手し、森林組合は無償で空中写真を使
用しオルソ化して境界明確化に利用していることから、両方のタイプに該当するとした。
表 3.3 事例調査結果のタイプ分け
タイプ
概要
調査対象
使用データ
都道府県主導による
都道府県が主導し、
徳島県
地籍図(法務省地図
事前データ整備
全県のデータを地籍
パシフィックコ
XML )、 空 中 写 真 な
図を中心に整備して
ンサルタンツ
ど。
おく
富山県
対象団地ごとの事前
境界明確化の対象団
東京都森林組合
空中写真の立体視を
境界推定
地ごとに空中写真、
国際航業
中心。
航空レーザ由来画像
本事業実証手法
等を用いて事前に境
富山県
界を推定し、GIS デ
空中写真のオルソ画
像を中心。
ータを作成しておく
アジア航測
空中写真オルソに加
パスコ
え、3D 鳥瞰図、航空
国交省
レーザ由来の情報を
活用。
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表 3.4 タイプごとの効果
タイプ
効果
都道府県主導による
整備済みデータ(法務省地図 XML、空中写真、航空レーザ由来
事前データ整備
データなど)を事業体に提供することで、事業体が入手に要する
手間、費用を削減することができる。
事前に整備しておくことで、都道府県側のデータ提供に関わる負
担を個別対応に比べて軽減することができる。
境界明確化の成果も合わせて、森林域の地番に関わる情報が一元
管理できる。
整備した法務省地図 XML、境界明確化の成果は、計画図・森林
簿の修正作業にも活用できる。
対象団地ごとの事前
可能な限り多種のデータを利用することで、様々な角度から境界
境界推定
を推定できる。都道府県が整備したデータの提供を受けること
で、多種のデータを少ない負担で利用できる。
GIS データを作成しておくことで、現地で GPS ナビゲーション
が可能になる。
本事業が実証した手法は「団地ごとの事前境界推定」に含まれる。実証に利用したデータ
のうち、計画図は秋田県及び群馬県、空中写真(現在の単写真)は群馬県より提供を受けた。
この部分は「都道府県主導による事前データ整備」に考え方が近いが、秋田県、群馬県では
事前に全県分を整備していたのではなく、今回の境界明確化の対象団地分について提供い
ただいた形である。全県分を整備しておくことで、都道府県側も団地ごとに個別対応する手
間を軽減できると考えられる。
境界明確化を実施するのは森林組合等の事業体であり、都道府県はその支援を行うとい
う立場であるが、支援の具体的な手段の一つとして「都道府県主導による事前データ整備」
を位置づけることができる。整備したデータは、事業体のみならず、都道府県の森林簿・計
画図の更新作業にも活用でき、都道府県にもメリットがあるため、今後の取り組みが期待さ
れる。
「団地ごとの事前境界推定」は、いずれも現地確認の負担軽減を目的としたものである。
本実証以外にも多くの事例があり、有効性、必要性が確認された。用いるデータには、本実
証が中心とする空中写真の立体視以外にも航空レーザ由来画像など、多様なデータが用い
られている。境界推定においては、可能な限り多くの情報を用いて、所有者、精通者に分か
りやすく境界推定の根拠を提示できることが重要であるといえる。
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本事業実証手法(以下、
「実証手法」
)と各事例を比較すると、実証手法は現地確認を出来
る限り行わず、境界確認を実施することを前提とした手法であるのに対し、富山県及び東京
都森林組合の事例はともに現地調査を前提とした事例である。富山県では複数時点のオル
ソ画像を活用しており、東京都森林組合では本実証事業と同様に立体視判読を活用してい
る。
また、アジア航測株式会社や株式会社パスコ、国土交通省の事例は使用する情報として、
航空レーザ由来画像やオルソ画像を鳥瞰図として活用している。航空レーザ由来画像を活
用することにより、林内の地物を確認できるため、境界推定の精度が向上する可能性がある。
ただし、航空レーザ由来画像を作成するためには、データ取得に費用がかかり、さらに計測
データを画像化するためには専門的な技術が必要となる。
また、オルソ画像を鳥瞰図として活用することで所有者への説明が円滑になることが期
待できるが、確認できる高さ情報に限界があるため、境界の推定には適さないことに留意し
なくてはならない。
各データの特徴については「第 4 章 1.境界確認に活用するデータ」に詳述した。
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