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平成 27 年度 NMIJ 成果発表会 物理計測標準研究部門 発表テーマ

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平成 27 年度 NMIJ 成果発表会 物理計測標準研究部門 発表テーマ
平成 27 年度 NMIJ 成果発表会 物理計測標準研究部門 発表テーマ
日時:2016 年 2 月 10 日(水)
場所:産業技術総合研究所 つくばセンター共用講堂
【時間標準研究グループ】
1. 超低熱膨張材料を用いた新しい狭線幅レーザーの開発
保坂一元、安田正美、赤松大輔、田邊健彦、小林拓実
高フィネス光共振器に対してレーザーの周波数を安定化させる方法では、光共振器の共
振器長の変化が、共鳴周波数の変化となって観測される。このため、共振器を構成する
材料のごく僅かな熱膨張や経年変化の知見を得る事が出来る。本発表では、ガラスやセ
ラミックを用いた光共振器の特徴を示し、これらの光共振器を用いた新しい狭線幅レーザ
ーを提案する。
2. 光格子時計を用いた地殻変動の計測-システムの可搬化に向けた光制御型低速原子
線源の開発-
安田正美、赤松大輔、田邊健彦、小林拓実、保坂一元
光格子時計を重力ポテンシャルセンサーとして利用する場合や、有線・無線通信による
周波数比較で所望の精度が得られない場合、将来的には光格子時計の可搬化が必要
となる。光格子時計の構成要素のうち、従来型の熱的原子線源は、冷却水や大電力が
必要であり、可搬化の制約となっている。本発表では、光誘起原子脱離現象を利用する、
新しいタイプの光制御型低速原子線源の開発を目指した探索的研究について報告す
る。
3. Sr 原子の時計遷移周波数の精密測定と光格子時計の長期運転に向けた取り組み
田邊健彦、赤松大輔、小林拓実、高見澤昭文(高周波標準研究グループ)、
柳町真也(高周波標準研究グループ)、池上 健(高周波標準研究グループ)、鈴山智也、
稲場 肇(周波数計測研究グループ)、大久保章(周波数計測研究グループ)、安田正美(周波数計測研究グ
ループ)、
洪 鋒雷(横浜国立大学)、大苗 敦(周波数計測研究グループ)、保坂一元
ストロンチウム原子の時計遷移は、SI 秒再定義の有力候補の一つである。今回、我々は
その絶対周波数測定を改めて行い、前回の 1/3 以下の不確かさでの測定に成功した。ま
た、秒の再定義後の光時計による、国家標準 UTC(NMIJ)の生成や国際原子時の校正と
いう観点からは、現状の連続運転時間が数時間程度の光格子時計を、長期間にわたり
連続的に運転可能にすることが重要な課題である。本発表では、光格子時計の長期運
転に向けた取り組みについても併せて報告する。
4. イッテルビウム光格子時計の高精度化
小林拓実、安田正美、赤松大輔、田邊健彦、保坂一元
時間標準研究グループの光格子時計 1 号機および 2 号機は不確かさが 10-16 レベルで、
現在の秒の定義を実現する Cs 原子時計の不確かさより小さくなりつつある。当グループ
では、現在、不確かさの大きな要因となっている黒体輻射による影響を低減させるために、
3 号機として低温動作光格子時計の開発に着手した。本発表では、開発の現状を報告す
る。
5. 協定世界時 UTC の現状及び周波数遠隔校正の長期特性評価
鈴山智也、奥田敦子、雨宮正樹
高信頼、高安定な時間周波数の国家標準である UTC(NMIJ)を連続的に発生させ、周波
数標準器の持込及び遠隔校正を実施している。新規や持込校正からの移行も含めて遠
隔校正の件数は年々増加しており、着実に普及している。本発表では、協定世界時 UTC
の現状と併せて周波数遠隔校正の長期特性評価結果について報告する。
【周波数計測研究グループ】
6. デュアルコム分光法によるガス分析装置の開発
大久保章、岩國加奈、大苗 敦、佐々田博之(慶應義塾大学)、洪 鋒雷(横浜国立大学)、稲場 肇
環境ガスや工業用ガスをリアルタイムかつ精密に分析するために、高い分解能と短時間
での測定を両立する検出法が求められている。2 台の光コムを用いたデュアルコム分光
法は、高い分解能、広い帯域を併せ持つ分光スペクトルを短い測定時間で得ることがで
きるため、リアルタイムでの精密ガス分析に活用できる。本発表では、デュアルコム分光
によるガス検出の原理と、我々が開発したデュアルコム分光装置を紹介する。
7. 光コムの高精度化
和田雅人、大久保章、稲場 肇
光コムは周波数の精確なものさしであり、その性質や特長を活かして環境ガス分析をは
じめ、長さ計測・標準、光時計、テラヘルツ、果ては天文分野にまでその応用が広がって
きている。リアルタイム計測、およびより広い範囲での応用のためには、短時間で高い精
度が得られることが特に重要である。本研究では、光コムの短期~長期の周波数精度に
ついて制限要因を調べ、その改善を目指す。
8. 精密な位相雑音測定におけるサンプリングクロックの影響
平野 育、柳町真也(高周波標準研究グループ)、池上 健(高周波標準研究グループ)、
萩本 憲(時間標準研究グループ)、高見澤昭文(高周波標準研究グループ)
我が国産業界から水晶発振器の時間領域でのより精密な評価技術の需要があるが、そ
のための高精度周波数基準信号は測定器内には具備されていない。このため、被測定
信号のオフセット周波数 12 kHz~20 MHz 等のスペクトル領域からの変換で時間領域の
評価値を得ているが、低オフセット領域での影響は曖昧なままである。我々は、周波数安
定度の非常に高い基準クロックの使用と数値演算の結果から、問題点の指摘と解決方
法の提案を行う。
【量子電気標準研究グループ】
9. SET による微小電流計測
中村秀司、岡崎雄馬、金子晋久
近年、半導体産業、生体センサー(DNA シーケンサー)、微粒子計測、放射線計測など
においてアトアンペアからナノアンペアといった微小電流の精確な計測と発生が求められ
ている。本発表では、単一電子トランジスタ(SET)を用いた単一電子操作による微小電
流計測と微小電流発生の技術について紹介し、あわせて化学センサーや生体センサー
などへの応用を検討する。
10. CCC 電流アンプとその応用
岡崎雄馬、大江武彦、金子晋久
高巻数比の極低温電流比較器(CCC)は、アトアンペアからナノアンペアといった微小電
流の精密測定を可能にし、SET による微小電流計測や高抵抗測定の精度評価を行うう
えで必要となるコア技術である。特に、現在開発している無冷媒式冷凍機を用いた CCC
測定系が実現されれば、液体ヘリウムを用いない簡便な微小電流測定を可能にし、ユー
ザーの利便性も向上する。本発表では CCC の原理、及び現在行っている研究について
紹介する。
11. 集積型量子電圧雑音源を用いた雑音温度計測システムの開発
浦野千春、山田隆宏(ナノエレクトロニクス研究部門)、前澤正明(ナノエレクトロニクス研究部門)、
山澤一彰(温度標準研究グループ)、金子晋久
産総研では超伝導デバイス中に擬似乱数発生回路などの電圧雑音を発生するための機
能を全て組み込んだ、集積型量子電圧雑音源(IQVNS)を開発した。IQVNS を基準とし
た広い温度範囲で使用可能なジョンソン雑音温度計(JNT)を開発し、ボルツマン定数の
再定義、および様々な温度定点の熱力学温度を評価することを目指している。本技術は、
アンプやスペクトル計測装置の校正にも利用可能である。
12. 高抵抗測定技術の高度化および普及の取組
大江武彦、金子晋久
高抵抗の精密測定は、電子部品の絶縁抵抗測定等の広い分野で求められているため、
国家標準に基づく標準供給体制の構築を進めてきた。本年、精密抵抗測定コンソーシア
ムを設立し、産総研の有する高抵抗測定技術の普及を開始した。産総研で開発した自己
平衡型高抵抗ブリッジを用いた高抵抗測定技術と、コンソーシアムの概要を紹介する。
【応用電気標準研究グループ】
13. 高圧直流給電に対応した消費電力モニタリング装置
堂前篤志、金子晋久、(株)寺田電機製作所
交流(AC)/直流(DC)変換による電力損失を削減できることから、直流方式の給電(直流
給電)に注目が集まっており、特にデータセンターへの導入が進んでいる。産総研と寺田
電機製作所は共同で“高圧直流給電に対応した消費電力モニタリング装置(DC-Smart
Energy Monitoring System(SEMS) )”を開発した。開発品は“被測定電力を遮断すること
なく電流センサーの校正が可能な特徴”を有する。
14. リチウムイオン電池の非破壊評価
坂本憲彦
充放電の繰り返しで生じる、リチウムイオン電池の内部インピーダンスの変化を精密に計
測することにより、電池内部の劣化状況を評価する手法を紹介する。近年普及し始めた
大容量蓄電池は、内部インピーダンスが低いため、mΩ レンジのインピーダンス評価装置
を開発した。微弱な交流電気信号を印加して評価するため、電池に負荷を与えることなく、
非破壊での評価が可能となった。
15. 電力品質の向上に資する高調波電圧電流計測技術
山田達司
スマートグリッドが推進される中、国内では太陽光発電を主とした分散電源の普及が進
み、電力系統に電力供給するためのパワーコンディショナが急増している。パワーコンデ
ィショナは電力品質の低下を引き起こす高調波を発生するため、その高調波発生量を事
前に測定することが義務付けられている。そこで産総研では、複雑な波形の電力に含ま
れる高調波を高精度に測定できる技術を開発した。本技術は高調波計測器(パワーアナ
ライザ)の評価等に利用され、電力品質の向上に貢献している。
16. 酸化物超伝導体を用いたゼーベック係数の絶対測定技術の開発
天谷康孝、島崎 毅(極限温度計測研究グループ)、河江達也(九州大学)、藤木弘之、山本 淳(省エネルギ
ー技術研究部門)
未利用熱の利活用のため、排熱を電気エネルギーに再資源化する熱電発電が注目を集
めている。熱-電気変換の指標となるゼーベック係数の測定には、熱と電気の両方の計
測が要求される。産総研では、従来の鉛等の金属材料ではなく、酸化物超伝導体を用い
た熱電対回路を試作し、液体窒素温度で白金のゼーベック係数の評価を進めている。独
自に開発した断熱型クライオスタットとその性能、白金の温度依存性の評価結果を報告
する。
17. サーマルコンバータの直並列回路化による低周波特性の改善
天谷康孝、藤木弘之
交流電圧の 10 Hz 以下の不確かさを改善するため、サーマルコンバータの直並列回路
法を提案する。電気-熱回路解析により、ヒータ抵抗を直並列化することで発熱量が低下
し熱的非線形効果が抑制される効果に加え、熱電対回路を直列に接続することで、出力
電圧が理論上低下しないことが示される。4×4 の直並列回路を試作し、素子単体の特性
と比較したところ、10 Hz 以下の交直差が大幅に低減することが示された。
【電磁気計測研究グループ】
18. 農産物水分量のリアルタイム計測を実現する電磁波センシング技術
昆盛太郎、堀部雅弘、松尾守展(国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 生物系特定産業技
術研究支援センター)
穀物や家畜用飼料などの水分量をリアルタイムに計測するための電磁波センシング技
術の開発に取り組んでいる。本技術は従来技術に比べて、非破壊で全数検査が可能で
あることや、屋外を含むその場計測が可能な点で優位性がある。本技術について、現在
の開発状況や測定結果の例などについて報告する。
19. 窒化ガリウム半導体デバイスの高周波伝送特性評価
岸川諒子、堀部雅弘、川﨑繁男(宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所)
高速動作が可能で、高い宇宙線耐性を持つ窒化ガリウム半導体は、宇宙機内の無線通
信や無線電力伝送への応用が期待されている。しかし、高精度な高周波伝送特性の評
価方法とその結果に基づくデバイスモデリング技術が確立されておらず、回路設計にお
いてデバイスモデルが実用に耐えないといった課題がある。そこで、測定に影響を与える
要因を定量的に評価し、測定結果の信頼性を明確化するための技術を開発している。こ
れにより、デバイスモデルの高精度化への寄与を目指す。この技術は宇宙に限らず無線
技術全般に活用可能で、特に送受信機の効率的な設計に役立てることができる。
20. 印刷技術による高周波平面回路のための設計と計測技術
坂巻 亮、堀部雅弘、吉田 学(フレキシブルエレクトロニクス研究センター)
通信やセンサなどの様々な分野で高周波技術を用いた製品の利用が進んでいる。特に
近年、軽量化・薄型を目的とした樹脂基板の利用や、低価格化といった要求から、印刷
配線技術が注目されている。そこで、印刷配線技術の高周波回路への応用を検証する
ため、高性能な伝送線路の設計・試作および評価を行なっている。これまで、ミリ波帯で
従来より低損失で耐久性の高い伝送線路を実現した。更なる技術の応用先として、ウェ
アラブル機器を念頭においた、フレキシブル基板上の伝送線路技術についても設計・評
価を進めており、現在の開発状況と今後の展望について報告する。
21. ナノ材料の電磁波遮蔽特性とその評価方法 ~評価方法の違いによる結果の差異の解
析 ~
加藤悠人、堀部雅弘、長谷川雅孝(ナノ材料研究部門)、石原正統(ナノ材料研究部門)、
中西 毅(機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター)
軽量かつ電気伝導性に優れた炭素系ナノ材料は、エレクトロニクス応用に向けた新たな
機能材料、特にモバイル機器の電磁波対策部材への活用が期待されている。しかし、部
材の性能を表わす電磁波遮蔽特性の評価方法は統一されておらず、異なる方法間の比
較についても十分には検討されていない。今回、プラズマ CVD グラフェンを用いて実現し
た透明な薄膜状の電磁波遮蔽材を評価する過程で、日本で一般的な KEC 法と世界的に
最も利用されている ASTM 法(ASTM D4935)の比較を行った。その結果、1 GHz 以下の
評価結果に差異が現れたが、その原因について理論的に解析した結果を報告する。
【高周波標準研究グループ】
22. テラヘルツ波微弱電力の精密測定技術の開発
飯田仁志、木下 基、雨宮邦招
情報の高密度化により、近い将来テラヘルツ帯を利用した無線通信の実現が期待されて
いる。そこではテラヘルツ波の正確な電力計測が重要となるが、一般にテラヘルツ波は
発生電力が極めて小さいため、極低温環境が必要となるなど測定は容易ではなかった。
そこで我々は液体ヘリウム冷却を行わずに常温で測定するための高感度センサを開発
し、精密な絶対電力測定を実現した。
23. 空間中におけるラビ周波数に基づく電磁場測定
木下 基、石居正典
一般的な電磁場センサは金属アンテナで構成され、その測定原理はマクスウェル方程式
に帰着する。しかしこの場合、原理上、金属アンテナ自身が被測定電磁場を乱す侵襲性
が存在する。これに対して我々は量子力学に基づき、原子との相互作用を解析すること
で電磁場強度を測定する新しいセンサ技術を提案する。本原理では金属アンテナを必要
としないため低侵襲性センサの実現が期待される。今回、原子と電磁場との結合度合い
を表すラビ周波数に基づく電磁場センサについての初期検討を行った。
24. 長期連続運転に適した電気的冷却方式低温サファイア発振器の開発
池上 健、渡部謙一(レーザ放射標準研究グループ)、柳町真也、高見澤昭文、
平野 育(周波数計測研究グループ)、萩本 憲(時間標準研究グループ)、John G.Hartnett(アデレード大)
水素メーザーより優れた周波数安定性を有する低温サファイア発振器(Cryogenic
Sapphire Oscillator、CSO)は、大陸間の距離の精密決定や、銀河中心のブラックホー
ルを撮像するための VLBI(超長基線干渉計)の性能向上などへの貢献が期待される。
産総研の 2 台の液体ヘリウム冷却方式 CSO を改造し、冷凍機と振動抑制クライオスタッ
トを用いた電気的冷却方式に改造することで、年単位の連続運転を可能とした。
25. センサ端末同期用小型・低消費電力原子時計の開発
柳町真也、高見澤昭文、池上 健、高木秀樹(集積マイクロシステム研究センター)、倉島 優(集積マイクロシ
ステム研究センター)
近年、小型かつ低消費電力の原子時計の開発が全世界的に盛んに進められている。米
国ではすでに商品化されており、大きさは数センチ角、消費電力は 150 mW 程度である。
一方、無線センサネットワークの時刻同期への利用を目標とした場合、長期安定度は十
分な性能に達していない。そこで我々は、長期安定度の向上へ寄与するため小型ガスセ
ル開発を進めている。
26. セシウム原子泉一次周波数標準器 NMIJ-F2 の開発
高見澤昭文、柳町真也、萩本 憲(時間標準研究グループ)、
平野 育(周波数計測研究グループ)、渡部謙一(レーザ放射標準研究グループ)、池上 健
秒の単位を決めるセシウム原子泉一次周波数標準器の 2 号器(NMIJ-F2)の開発の現状
について報告する。磁場による 2 次ゼーマンシフト、原子間衝突による衝突シフト、および
マイクロ波の漏れなどに起因するマイクロ波パワー依存シフトなどの主要な不確かさ要
因について実験的・理論的に調べ、全体の不確かさを 7×10-16 と評価した。
【電磁界標準研究グループ】
27. 30 MHz 以下の EMI 試験装置評価のための対数目盛コムジェネレーターの開発
飴谷充隆、黒川 悟
無線充電装置や電磁調理器等の高周波利用装置の普及や、インバーターの高周波化
に伴って、9 kHz~30 MHz の電磁ノイズ源が増加しており、30 MHz 以下の伝導/放射エ
ミッション試験の必要性が高まっている。本研究では、これらの試験装置の日常点検ある
いはラウンドロビン試験の仲介器として利用可能な、対数目盛コムジェネレーターを開発
している。本装置は FPGA と DA Converter を用いたデジタル回路を利用しており、従来
のアナログ式コムジェネレーターでは実現できない対数周波数軸にほぼ等間隔なスペク
トルを安定に出力でき、9 kHz~30 MHz までの全帯域にわたり周波数特性がフラットな
コムを発生することが可能である。
28. 近接イミュニティ試験用電界分布測定
She Yuanfeng、廣瀬雅信、黒川 悟
携帯端末が発する強い電波が周辺の電子機器や人体に影響を与えることが懸念されて
いる。端末周辺の電界強度を模擬する近接イミュニティ試験が行われており、その国際
標準化も進められている。そこで、近接イミュニティ試験に用いる放射アンテナ近傍の電
界を、5 mm 角程度の非常にコンパクトな光電界センサーを用いて測定する技術を開発
している。小型センサーを用いることで、センサー自身の影響を低減させ、より正確な電
界分布の測定を可能にする。
29. 光電界センサによる精密電界強度計測
森岡健浩、黒川 悟
デバイスの省電力化や筐体の軽量化が進み、機器の外来電磁波に対する耐性の評価
が重要となっている。強電界を機器に照射する試験における電界強度の測定には、三軸
の市販電界センサが用いられているが、空間分解能や測定精度などが十分でない場合
がある。そこで、標準電界により校正された光電界センサを用いて、20 MHz〜2 GHzの
広帯域で高精度に測定する技術を開発した。本技術は、今後の EMC 計測で必要となる、
より高い空間分解能での測定を可能とした。
【温度標準研究グループ】
30. 音響気体温度計(AGT)によるボルツマン定数測定
ウィディアトモ・ジャヌアリウス、三澤哲郎、山澤一彰、狩野祐也(工学計測標準研究部門 流体標準研究グル
ープ)
国際単位系(SI)における熱力学温度の単位であるケルビンの定義は、水の三重点温度
による定義からボルツマン定数による定義へ改定が進んでいる。ボルツマン定数測定に
向けて、擬球形の無酸素銅製共鳴器を用いた音響気体温度計(AGT)を開発した。水の
三重点温度における音響共鳴および電磁波共振の観測から、アルゴンガス中の音速お
よびボルツマン定数を推定した。
31. スズ点セルの長期的安定性の評価
ウィディアトモ・ジャヌアリウス、佐藤公一、山澤一彰
抵抗温度計のための国家標準であるスズの凝固点(231.928℃)は、1990 年国際温度
目盛において定義定点として定められている。その実現に用いるスズ点セルの長期的安
定性を評価するため、定点炉や実現手順を変えながら、複数のセルの相互比較を行った。
その結果、一種類の実現方法を繰り返したところ、実現温度に系統的変化が見られたが、
異なった実現方法を導入することで初期の値に復帰し、その後の変化も最小にできるこ
とが分かった。この変化の要因について検討を行った。
32. 1600 ℃以上の金属-炭素共晶点を用いた熱電対校正技術の開発
小倉秀樹、井土正也、山澤一彰
1600 ℃以上での高温域ではガラス、半導体、セラミックスなどの素材産業等の分野で、
製品の品質管理やエネルギー効率の向上のため熱電対を用いた高精度の温度測定が
求められている。しかし、現在、産総研から供給されている熱電対による温度標準の上
限は 1554 ℃であるため、1600 ℃以上での熱電対による温度標準供給開始に向けて、
熱電対校正用 Rh-C 共晶点(1657 ℃)、Ru-C 共晶点(1953 ℃)実現装置の開発を進
めている。
【極限温度計測研究グループ】
33. 低温流体の安全・高効率な貯蔵・輸送のための音叉型水晶振動子を用いた低温圧力セ
ンサの開発
中川久司
次世代エネルギーである水素や超伝導機器用寒剤などの低温流体の貯蔵・輸送には、
十分な安全性と効率化が求められる。一方、現状では、安全性確保のため室温部の圧
力センサなどにより流体圧力などを監視している。我々は、時計などの周波数基準であ
り、極低温下でも圧電効果により稼働する高 Q 値の音叉型水晶振動子(QTF)に注目し
た。QTF は共鳴周波数や半値幅の変化として、流体自身の粘性や密度変動すなわち圧
力・温度変動を直接的に、高感度に捉える。高い安全性とより効率的な貯蔵・輸送のた
めに低温流体の圧力分布などをその場測定可能な QTF を用いた圧力センサを開発して
いる。
34. 低温度センサ評価の基準となる³He 気体温度計の長期再現性の評価
中野 享
リニアモーターカー等の超伝導利用や燃料電池自動車等に用いられる水素の輸送では、
その安全・品質管理から 25 K 以下での低温度計測が重要になってきている。産総研で
は、その温度計測の基準となる温度目盛を 1990 年国際温度目盛に従い 3He 気体温度
計により実現するとともに、その温度目盛と任意の低温度センサを比較測定する温度セ
ンサ評価システムを開発している。基準となる温度目盛を作る³He 気体温度計は、7年以
上の長期間において、1 mK の不確かさの範囲内で再現した。このため、産総研での低
温度センサの評価も、10 mK オーダーの不確かさで可能なことを確認した。
35. 標準用白金コバルト抵抗温度計のサーマルサイクルに対する安定性
島崎 毅
再生可能エネルギー導入量の増大、並びにエネルギー変換効率の向上が積極的に進
められている。これらを背景に、水素社会の実現や超電導機器の普及に必要な極低温
領域での精密な温度計測へのニーズが高まっている。対応する温度範囲では標準用温
度計のひとつとして、白金コバルト抵抗温度計が使用される。これまで余り報告が無かっ
た標準用白金コバルト抵抗温度計のサーマルサイクルに対する安定度について報告す
る。
36. 量子化ホール抵抗の普遍性の検証
三澤哲郎、福山康弘(量子電気標準研究グループ)、岡崎雄馬(量子電気標準研究グループ)、
中村秀司(量子電気標準研究グループ)、名坂成昭(東京工業大学)、笹川崇男(東京工業大学)、
富永淳二(ナノエレクトロニクス研究部門)、金子晋久(量子電気標準研究グループ)
量子化ホール抵抗の普遍性の検証として、これまで様々な 2 次元電子系における量子
化ホール抵抗が相互比較され、差異のないこと が確認されてきた。普遍的な値を高い
精度で示すことから、今日では量子化ホール抵抗は抵抗の一次標準に用いられている。
しかし、近年発見されたト ポロジカル絶縁体においては、量子化ホール抵抗の測定が、
十分な精度で行われていない。本発表では、量子化ホール抵抗の普遍性検証のため、ト
ポロ ジカル絶縁体と既存の 2 次元電子系との間で、量子化ホール抵抗を高精度比較す
る方法について検討する。
37. 接触式表面温度計の校正技術の開発
斉藤郁彦、中野 享、丹波 純
測定対象物に圧接させて使用する接触式表面温度計を、実際の使用状態と同様な条件
で校正する方法として、一定温度に保持した金属ブロックに温度計を圧接させる方法が
ある。この校正では、温度計が金属ブロックに接している部分の温度の推定と、その不確
かさ評価が重要になる。本研究では、150 ℃において金属ブロック内部の温度分布を高
精度に測定し、接触面の温度を 0.1 ℃以内の不確かさで評価することを可能とした。
【応用熱計測研究グループ】
38. 合金の溶融反応に基づく高温温度履歴モニターの開発
笹嶋尚彦、山田善郎
SiC パワー半導体を製造する際の高温熱処理においては、温度分布の測定と制御が重
要である。しかし、放射温度計による測定ではウェハ位置や測定窓の問題があり、一方、
高温熱電対による測定では、熱電対の配線や測温接点による温度分布の乱れ等が問題
になるため、正確な測定は難しい。そこで、熱処理装置内のウェハ面内の温度分布を評
価するため、溶融合金と試料の表面状態の変化から到達温度を判断する温度履歴モニ
ターを開発している。本研究では、共晶点技術を応用した試料を高温炉内で熱処理し、
試料の表面や断面の状態を評価することにより、到達温度の違いを明らかにする。
39. カーボンナノチューブ熱放射源の実用化
清水祐公子、山田善郎
熱画像装置の利用が拡大し、10 µm 帯放射温度計の校正の要望が強くなってきたが、
国家標準である 1.6 µm 近赤外放射温度計から、10 µm 帯へ波長展開するための技術
が十分ではなかった。そこで、産総研では、カーボンナノチューブを利用した波長依存性
のない黒体技術を開発し、10 µm 帯放射温度計の校正技術を確立させた。さらに、波長
依存性のない温度可変黒体炉の製品化も進めている。この炉を用いれば、ユーザー自
ら波長展開が可能となる。
40. 放射率その場補正による表面温度分布の計測
山口 祐、山田善郎
製鉄や半導体、自動車等の製造プロセスの温度制御や熱設計において、正確な温度分
布の測定は、製品品質・歩留まり向上、省エネルギー対策のために極めて重要である。
しかし、物体の表面状態・温度に依存する放射率の特定が困難であるため、実際のプロ
セスにおいて精密な温度分布測定を行うことは困難であった。そこで、2 波長放射温度測
定と反射率測定を組み合わせることにより、対象の放射率をリアルタイムに補正可能な
手法を開発した。これにより、放射率分布と温度分布の同時測定が可能となり、例えば、
塗装鋼板の熱処理における温度制御精度の向上や、溶接プロセスにおける最適条件の
同定、パワーデバイス内の特定発熱部位の定量的観測などの応用が期待される。
41. 赤外放射率の高精度測定のための技術開発
井邊真俊
新規材料・デバイスの開発のためには、放射温度測定や熱設計のために放射率は不可
欠な情報である。しかし、放射率はその物体の表面形状や温度に依存し、測定のために
検出する光の波長や偏光によっても変化するので、その測定は容易ではない。そこで,
現在開発中の放射率の精密測定技術を紹介する。
42. CIPM/CCT 高温定点プロジェクト
山田善郎、山口 祐
金属-炭素共晶による高温定点を一次温度標準として活用するには国際的な合意された
それらの温度値が必要がある。国際度量衡委員会(CIPM)測温諮問委員会(CCT)では、
ワーキンググループ内の活動として選別された高温定点セルの熱力学温度値決定を目
的とするプロジェクト High-Temperature Fixed Point Research Programme を実施し、
このほど測定が完了した。NMIJ が中心的役割を果たした全体計画作成と定点セルの作
成・選別や NMIJ における熱力学温度測定の結果を中心に、プロジェクト全体について報
告する。
【光放射標準研究グループ】
43. 機械強度が高くかつ紫外放射耐性に優れた BaSO4 拡散反射面の開発
蔀 洋司 伊藤 忍((株)オプトコム)、徐 道源((株)オプトコム)、
山田基宏(豊橋技術科学大学)、福本昌宏(豊橋技術科学大学)
拡散反射面は、光学測定における基幹ツールであり、一例として、LED 照明等の各種光
源の評価に用いられる積分球での使用が挙げられる。従来型の硫酸バリウム(BaSO4)
塗装面では、接触による破損、乾燥や基材の歪みによるひび割れ、光学特性の経年劣
化などが問題となっている。そこで本研究では、BaSO4 に最適化された新しい溶射プロ
セスを開発し、緻密かつ密着力の高い BaSO4 溶射皮膜の形成を可能とした。これにより、
従来型の塗装面に比べて、10 倍以上の機械強度と 50 倍近い紫外放射耐性を持つ
BaSO4 拡散反射面を実現した。
44. 新しい輝度評価用光源開発への取組
神門賢二
ディスプレイの高精度化・多機能化が進んでおり、それに伴いディスプレイの輝度を計測
する輝度計の高精度な校正が要求されている。しかし、輝度計を校正する従来の輝度標
準光源は入手が困難、更には輝度レベル範囲、可搬性や安定性という点において問題
があることが知られている。本研究発表では、産総研で開発を進めている、高機能光学
素子やマイクロレンズ技術を利用した新しい輝度標準光源開発について報告する。
45. 極微弱 LED 光源による生物発光反応測定装置の精度管理
丹羽一樹
ホタルなど生物発光反応を組み込んだ培養細胞は、化学物質の生体影響評価に利用で
き、近年では創薬や化学物質安全性評価での応用が拡大している。ここでは薬効などの
判定基準となる発光強度測定が重要であり、我々はこれまで光放射量の国家標準にトレ
ーサブルな絶対計測技術の開発を行ってきた。本発表では極微弱 LED 光源を用いた発
光測定装置の精度管理方法、並びに同光源の校正法の標準化(規格文書策定)につい
て紹介する。
46. LED の全光束評価のための新しい標準の開発
中澤由莉、神門賢二、丹羽一樹、座間達也
LED は、前面のみに光が放射されるものが多いことから、球形光束計の壁面に光源を設
置する 2π 幾何条件での全光束測定のニーズが高まっている。このため、2π 幾何条件で
使用できる分光全放射束標準が世界的に必要とされている。そこで、分光放射計を組み
込み高精度な分光放射測定を可能にした配光測定装置を用いた測定・評価により、2π
幾何条件用の分光全放射束標準の開発を行った。
【レーザ放射標準研究グループ】
47. 単一光子によるバイオイメージング技術の開発
福田大治、中川久司(極限温度計測研究グループ)、丹羽一樹、小林 稜、田辺 稔、沼田孝之、雨宮邦招
究極的な感度で光を検出する技術として、超伝導を用いた光子検出デバイスの開発を行
っている。この技術をバイオイメージング等に応用すると、今まで観測できなかった微弱
な光でも精密なイメージ画像を取得できる可能性がある。この単一光子バイオイメージン
グの実現に向け、本発表では、可視波長領域超伝導光検出デバイス及び超伝導素子を
安定に動作させるための無冷媒希釈冷凍機の開発現況を報告する。
48. 精密レーザ加工に必要な高強度レーザのビームプロファイル評価技術の開発
沼田孝之、瀬渡直樹(製造技術研究部門)、雨宮邦招、田辺 稔、福田大治
3D プリンタ等のレーザ加工技術において、加工精度の管理にはレーザ光のビームプロ
ファイルの測定が不可欠である。しかし、加工用レーザに一般的な高次横モードのマル
チモードビームに対するプロファイル評価法が確立されておらず、測定の定量化が進ん
でいない。そこで本研究では、これらのビームの測定に不可欠なイメージセンサ型ビーム
プロファイラの評価を行い、任意のビーム形状を正確かつ定量的に測定する技術の開発
に取り組んでいる。
49. バイメタル MEMS 熱量センサの開発と光放射計測への応用
雨宮邦招、福田大治、沼田孝之、田辺 稔
サーモパイル等の熱量センサは、赤外線センサほか、幅広い用途があり、近年では検出
光の微弱化に伴いセンサの高感度化が求められている。しかし、従来の薄膜サーモパイ
ル方式では高感度と大面積化の両立が困難で、スループットが稼ぎ難い。そこで今回、
バイメタル MEMS センサ方式を検討したところ、少なくとも従来機と同等のノイズ性能が
得られ、熱変位読出し系次第で大面積でもさらに高感度化しうることを確認した。本セン
サは、赤外線等の光放射計用途のほか、バイオ・化学検出用熱量センサにも応用可能と
考えられる。
50. 表面プラズモンポーラリトン導波路を用いた光合分波器の試作~光を用いた量子回路の
実現に向けて
小林 稜、渡部謙一、沼田孝之、行方直人(日本大学)、井上修一郎(日本大学)、福田大治
表面プラズモンポーラリトン(SPP: Surface Plasmon polariton)は金属と誘電体の界面を
伝搬する電磁波である。光を nm スケールの領域に閉じ込めることが出来ることから、集
積度の高い光量子回路への応用が期待されている。本研究では、SPP を用いた光量子
回路を構築するための一構成要素として、SPP 導波路による光合分波器(光カプラ)を開
発している。長距離伝搬型 SPP に適した導波路と光カプラを設計及び試作し、その特性
について評価した。
51. シリコンフォトダイオードの応答非直線性の波長依存性の予測にむけた研究開発
田辺 稔、雨宮邦招、沼田孝之、福田大治
シリコンフォトダイオード(Si-PD)は、広い波長域、10 桁程度のパワー範囲まで計測可能
であるため、光パワー検出器の一つとして広く利用されている。このような領域で精密光
計測するためには、Si-PD が直線性を有することが理想であるが、個体によっては、長波
長で μW 程度以上の領域で数%以上の非直線性を示すことがある。そこで、本研究では、
精密な実測と理論解析を用いて、この非直線性を予測することに成功した。この手法は、
様々な Si-PD に対しても簡易な方法で非直線性を補正できるため、精密光計測へ活用
が期待できる。
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