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水ガラス・ポリマーゲル充填による有道床軌道の 補修法の開発

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水ガラス・ポリマーゲル充填による有道床軌道の 補修法の開発
特 集 論 文
特集:軌道技術
水ガラス・ポリマーゲル充填による有道床軌道の
補修法の開発
中村 貴久* 村本 勝己* 三田地 利之**
Development of a Repairing Method for Ballasted Track by Filling Composite
Gel Consisting of Water Glass and Polymer
Takahisa NAKAMURA Katsumi MURAMOTO Toshiyuki MITACHI
Where ballasted tracks include a high mix ratio of fine-particles, track irregularity tends to increase soon after
the maintenance performed by tie tampers since the track maintenance impairs the density of the ballasted layer
compacted by cyclic loading for trains. Therefore, in this study, we developed a method filling the gap under the
sleepers with fill material for the realignment of tracks without impairing the density of the existing ballasted layer.
Furthermore, we performed the test to confirm the validity of the foregoing method. Consequently, we could confirm that the foregoing method is effective for repairing the ballasted tracks.
キーワード:バラスト軌道,細粒土混入バラスト,軌道補修法,充填材,試験施工
1.はじめに
周期を延伸することができると考えられる。また,道床
バラスト軌道は列車の繰返し荷重を受けて塑性沈下が
の削減にもつながる。
生じるため,定期的に軌道変位の測定を行い,基準値を
本研究においては,充填材の材料特性について検討
超過した場合には,マルタイやタイタンパー等を用いた
を行い,充填材の強度特性を把握するために一面せん
軌道補修を行う。この軌道補修は,まくらぎ下に道床バ
断試験を行った。さらに,実施工に適用できる充填装置
ラストを押し込むことで軌道整正を行うものである(図
の開発を行い,試験施工によって補修工法の効果確認
1)。道床バラストの細粒土混入率が低い場合は,締固め
を行った。
交換を行わずに効果的な補修ができるため,保守コスト
による密度変化が小さいことから,マルタイ等による補
修後の初期沈下は小さい。しかし,細粒土混入率が高い
場合は,締固めによる密度変化が大きく初期沈下も大き
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いことから,補修後,すぐに軌道変位が増大してしまう
ことが多い。すなわち,細粒土混入率が高い道床バラス
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トを,道床交換を行わずにマルタイ等で補修を行うのは
効率的ではない。
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そこで,まくらぎ下の道床を緩めずに軌道補修を行う
方法として,空圧によりまくらぎ下に充填材を充填する
工法を考案した。これは,英国で実用化されている Stone
Blowingや日本での豆砕石敷込み工法と同様の原理で軌
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道補修を行うものであり,締め固められた道床を緩めず
に軌道補修を行うことができる。マルタイ等による補修
では,一般に補修作業を行うたびに道床バラストの細粒
化や細粒土の混入によって,保守周期は短くなる。これ
に対し,まくらぎ下に充填材を充填する工法では,保守
* 軌道技術研究部(軌道・路盤)
** 日本大学(生産工学部 土木工学科)
RTRI REPORT Vol. 23, No. 10, Oct. 2009
図1 タイタンパーによる軌道整正の概念図
23
特集:軌道技術
ポリマー複合充填材と称する)について検討することと
2.充填材の開発
した。この水ガラス・ポリマー複合充填材は,主材であ
2. 1 充填材の要求性能
る硅砂による内部摩擦角と,ポリマーと水ガラスとで形
Stone Blowing や豆砕石敷込み工法における軌道補修
成される複合ゲルによる化学的なセメンテーションによ
では,ジャッキアップにより持ち上げられるまくらぎ下
る粘着力の双方の材料特性を有するものである。
の空隙が 20mm ~ 30mm 程度であることから,9mm 程度
の小粒径の砕石を用いた補修を行う(図 2)。しかし,細
2. 2 水ガラス・ポリマー複合充填材の開発
粒土混入バラスト区間において,浮まくらぎ状態のまく
2. 2. 1 水ガラス・ポリマー複合充填材の概要
らぎ下が滞水している場合は,まくらぎのポンプアク
水ガラス・ポリマー複合充填材(図 3 参照)は,水ガ
ションに伴う水流によって,粒径の小さい粒状材料はま
ラス(珪酸ソーダ)とポリマー水溶液を混合し,その水
くらぎ下より流出してしまうことから,補修効果が低減
溶液に酸を加えて pH を下げると,まず水ガラスがゲル
することがわかっている1)。
化し,それに刺激されてポリマーのゲル化も促進される
そこで,充填材に要求される性能として,以下の条件
ことで形成される。水ガラスとポリマーのゲルは互いに
を満たす必要があると考えられる。
独立した物質であるが,構造的に絡み合って繊維状の複
① レールを介してまくらぎに作用する荷重を支持する
合ゲルとなり,じん性とともに引張強度を発揮する。た
だし,この複合ゲル自身は,単独では列車荷重を支える
十分なせん断強度を有していること
② 滞水した浮まくらぎのポンプアクションに伴う水流
のに十分な圧縮・せん断強度を持たない。列車荷重を支
持する圧縮・せん断強度は,骨材として混合している 3
によって流されない粘着力を有していること
③ 簡易な充填装置によって施工可能な粒径であること
号硅砂が発揮する。これまでの実物大模型試験や試験施
まくらぎ下に適用する充填材の強度には,粒状材料に
工の結果から,短期的には 3 号硅砂単独でも十分に列車
おける粒子間の摩擦やかみ合いによる内部摩擦角に起因
荷重を支持できることがわかっている1)。したがって,
する成分と,セメンテーションによる粘着力に起因する
水ガラス・ポリマー複合充填材は,硬化途上であっても
成分とがある。内部摩擦角に起因する強度成分は拘束圧
列車を通すことが可能であるので,短い列車間合いでも
の影響を受けることから,拘束圧が非常に大きく変化す
施工が可能となる。
る列車荷重条件下の充填材の耐久性向上のためには,拘
束圧に依存しない粘着力に起因する強度成分の向上が必
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要であることがわかっている。しかし,早強モルタルや
合成樹脂のようなセメンテーションによる粘着力に起因
した強度を有する材料は,現場において分単位で所定の
強度発現をコントロールするのが困難であるため,施工
条件が限定されてしまう。したがって,既設線の補修に
使用する充填材には,短期的に列車荷重を支持できる程
度の内部摩擦角を持ち,なおかつ,滞水時の浮まくらぎ
に対してもまくらぎ支持強度を発揮する粘着力を合わせ
持つ材料が望ましい。
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そこで,硅砂および水ガラスを主材とした粒状体と,
ポリビニールアルコール水溶液(以下,ポリマー水溶液
と称する)とを反応させる複合充填材(以下,水ガラス・
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図2 粒状充填材による軌道整正方法
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図3 水ガラス・ポリマー複合充填材
RTRI REPORT Vol. 23, No. 10, Oct. 2009
特集:軌道技術
表2 試験ケース
水ガラス・ポリマー複合充填材の形態として,ポリマー
は充填材だけでなく,細粒土混入バラストの改良材とし
CASE1
ても機能する2)ことから,水溶液として使用することと
CASE2
3 号硅砂 + ポリマー水溶液
した。また,水ガラスと酸は水溶液と固体の両形態での
CASE3
水ガラス・ポリマー複合充填材
3 号硅砂 + 水
使用が可能であるが,できるだけ粒状充填材として使用
したいため,固体として硅砂と混合してまくらぎ下に充
硅砂とした。水ガラス・ポリマー複合充填材の配合とし
填して使用することとした。なお,固体の水ガラスは通
ては硅砂が固形分の約 7 割を占めている。供試体寸法は
常は粉体であるが,施工性や安全性を考慮して粘土鉱物
高さ 40mm,直径 60mm であり,せん断変位は接触型変位
を用いて特殊な造粒処理をした粒状水ガラスを新たに開
計により,せん断力は上せん断箱に接触するロードセル
発した。また,硅砂については,これまでの試験施工の
によって測定を行った。せん断時の垂直応力は,それぞ
結果から自然硅砂は細粒化しやすいことがわかっている
れの試験ケースごとに 5kPa (軌道自重相当)および
ので,硬度の高い人工硅砂(硅石を砕石した砕砂)を採
100kPa(列車荷重相当)の 2 種類とし,圧密時間は 1 時
用した。表 1 に水ガラス・ポリマー複合充填材の基本構成
間とした。なお,せん断変位速度を 1mm/min とした。
を示す。
図 5 ~図 7 にせん断応力とせん断変位の関係を示す。
なお,本工法で使用するポリマー水溶液は生分解性を
CASE1 ではせん断応力にピークがみられ,垂直応力
持つ土壌改良材として認可されている。また,水ガラス
100kPa において最大せん断応力は約 100kPa である。こ
は地盤改良材として土木工事に一般的に使用されてお
れに対し,CASE2 のせん断応力にはピークがみられず,
り,スルファミン酸は食品添加物であることから,水ガ
変位の進行とともに徐々に増加するが CASE1 に比べて
ラス・ポリマー複合充填材は環境負荷が小さい材料で構
小さい。CASE3 においては,垂直応力 100kPa の場合,せ
ん断変位2mm付近に変曲点がみられるが,変位の進行と
成されているといえる。
共にその後再びせん断応力が増加している。一方,垂直
表1 水ガラス・ポリマー複合充填材の基本構成
応力5kPaの場合は,明確な変曲点はみられずにせん断応
力が増加している。すなわち,CASE3 の変曲点は,拘束
材料
諸元
備考
ポリマー水溶液
ポリビニールアルコール
(PVA)
12% 水溶液
土壌改良材
粒状水ガラス
3 号珪酸ソーダ造粒体
地盤改良材
えられる。したがって,水ガラス・ポリマー複合充填材
有機酸粉末
スルファミン酸粉末
食品添加物
のせん断強さは,せん断変位が小さい領域では内部摩擦
硅砂
3 号人工硅砂
圧が高い場合に顕著になることから,骨材である硅砂の
噛合せが破断することにより生じる降伏現象であると考
角が支配的であり,せん断変位が増大するとじん性の大
きい水ガラス・ポリマー複合ゲルによる粘着力が支配的
2. 2. 2 一面せん断試験による強度特性の検討
になると推測される。
水ガラス・ポリマー複合充填材の列車荷重に対する強
図8に各ケースの垂直応力とせん断強さの関係を示す。
度を確認するために,一面せん断試験により強度特性の
CASE2 および CASE3 のせん断強さおよび CASE1 の残
評価を行なった。図 4 に一面せん断試験の概要を示す。試
留強度は,地盤工学会基準3)にしたがって,せん断変位
験ケースは表2に示す3ケースである。
水ガラス・ポリマー
7mm の際のせん断応力とした。50kgN レール,PC3 号ま
複合充填材の強度特性を比較検討するため,CASE1 は水
くらぎからなるバラスト軌道に軸重160kNの列車荷重が
浸させた硅砂,CASE2 はポリマー水溶液のみを混合した
作用する時のまくらぎ下の道床に作用するせん断応力
は,荷重分散を考慮すると概ね 66kPa(無拘束状態で,せ
ん断方向を 45 度と仮定した場合)であり,垂直応力
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100kPa の場合,CASE2 以外は概ね列車荷重を支持する
強度を有していると考えられる。しかし,垂直応力 5kPa
の場合では,CASE3 は 60kPa 程度のせん断強さを発揮す
るのに対し,CASE3 以外の試験ケースはせん断強さが
15kPa 程度と CASE3 の 1/4 程度であった。また,図 8 の
垂直応力とせん断強さの関係より求めた各試験ケースの
内部摩擦角を図 9 に示す。同図より,CASE2,CASE3 お
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図4 一面せん断試験の概要
RTRI REPORT Vol. 23, No. 10, Oct. 2009
よび CASE1 残留強度の内部摩擦角はほぼ同程度である
ことから,CASE2および CASE3 の内部摩擦角は水浸硅砂
の残留状態の内部摩擦角と同程度であるものと推測され
25
特集:軌道技術
る。すなわち,CASE2 のせん断強さは水浸硅砂の残留強
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度と同程度であり,CASE3 の水ガラス・ポリマー複合充
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填材の強度は,水浸硅砂の残留強度に水ガラス・ポリマー
複合ゲルの粘着力を付加したものであると考えられる。
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以上の結果より,セメンテーションを持たない小粒径
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の粒状体をまくらぎ下に充填した場合,短期的には列車
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荷重を支持できるが,滞水した浮まくらぎによってポン
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図5 せん断応力とせん断変位の関係(CASE1)
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てしまう可能性がある。一方,水ガラス・ポリマー複合
充填材は,列車荷重を支持できる十分な強度を有してお
り,軌道自重相当の低拘束圧下においても,高いせん断
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強さおよび粘着力を有していることから耐流動性を持つ
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3.充填装置の開発
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硅砂,水ガラス,酸からなる粒状充填材をまくらぎ下
に充填する装置として,ロングノズル方式(図 10)およ
図6 せん断応力とせん断変位の関係(CASE2)
びエアガン方式(図 11)の 2 種類を開発した。ロングノ
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ズル方式は,ロングノズルをまくらぎ下に差し込み,空
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填する装置である。エアガン方式は,まくらぎ下にノズ
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ルを差し込まずに,まくらぎ側面からエアジェットに
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よって粒状充填材を充填できる装置である。レールレベ
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ルの扛上量とノズル径によって,各充填装置を選定す
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る。なお,ポリマー水溶液は,粒状充填材を充填後に各
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図7 せん断応力とせん断変位の関係(CASE3)
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図8 垂直応力とせん断強さの関係
図 10 充填装置(ロングノズル方式)
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図9 各試験ケースにおける内部摩擦角
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図 11 充填装置(エアガン方式)
RTRI REPORT Vol. 23, No. 10, Oct. 2009
特集:軌道技術
4.水ガラス・ポリマーゲル充填工法の現地試験
施工
14 は,当該箇所における軌道のレベル測量の結果であ
る。施工後数週間で軌道沈下進みは小さくなり,3ヶ月が
経過しても良好な軌道状態を保っている。しかしなが
2008 年 5 月に鹿児島貨物線において試験施工を行っ
ら,6ヶ月が経過すると継目付近で軌道沈下が増大して
た。施工箇所は,浜小倉~黒崎間(北九州市)の軌道変
いる。調査の結果,これは,既設の継目用並まくらぎが
位が大きく,浮まくらぎおよび噴泥が発生している箇所
腐食していたため,タイプレートがまくらぎにくい込ん
である(図 12)。当該区間のレールは 50kgN レール,ま
で軌道変位が増大し,継目周辺のまくらぎが浮まくらぎ
くらぎは PC3 号(継目は継目用並まくらぎ)であり,年
となって噴泥が発生していたことが判明した。そのた
間通トンは約 1000 万トンである。
め,当該まくらぎを交換するとともに,同工法による当
図13に施工範囲における施工前後の復元高低変位を示
該区間の再施工を行った。再施工区間は,継目部のまく
す。この図より,施工前においては,14k275m付近をピー
らぎと継目部より終点方にまくらぎ 6 本分である。再施
クに軌道変位が増大していることから,本施工では
工前後における軌道のレベル測量結果を図 15に示す。施
14k270m ~ 14k280m の 10m 程度の軌道延長について,水
工 1 週間後から軌道沈下は収束しており,3ヶ月が経過し
ガラス・ポリマーゲル充填工法による軌道補修を行うこ
ても良好な軌道状態を保っていることがわかる。
ととした。なお,本施工は昼間の列車間合いで行った。
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な箇所にはロングノズル方式(図 10)を,扛上量が小さ
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くてノズルの挿入が困難な箇所にはエアガン方式(図
11)を適用することとした。
施工結果を図 13 および図 14 に示す。図 13 は施工 2 週
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施工は,扛上量が比較的大きくてノズルの挿入が可能
間後の復元高低変位を示したものである。この時点では
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ていた箇所が効果的に修正されていることがわかる。図
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図 14 施工箇所のレベル測量結果
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図 15 再施工箇所のレベル測量結果
図 12 施工箇所の状況(起点方)
5.まとめ
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(1)水ガラス・ポリマー複合充填材を開発し,一面せん
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よび充填装置の開発を行い,試験施工を行った。以下に
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図 13 施工前後における復元高低変位
RTRI REPORT Vol. 23, No. 10, Oct. 2009
断試験から,列車荷重に耐える強度とともに粘着力
による耐流動性を有していることがわかった。
(2)水ガラス・ポリマーゲル充填工法に使用する施工装
置について,扛上量により,ロングノズル方式とエ
アガン方式の 2 種類の施工装置を開発した。
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特集:軌道技術
(3)水ガラス・ポリマーゲル充填工法について,昼間の
学会, 2008
列車間合いにより10m程度の範囲にわたって軌道変
2)村本勝己,中村貴久,鳥井原誠,須藤賢,中嶋隆:生分解
位が大きい箇所の試験施工を行った。また,施工後
性ポリマーを用いたバラスト軌道の路盤噴泥対策,第 63 回
の経過観察より,良好な軌道状態を保持しているこ
土木学会年次学術講演会概要集,4-299,pp.595-596,土木
とを確認した。
学会, 2008
3)(社)地盤工学会編:土質試験の方法と解説(第一回改訂
文 献
版),
「第 7 編 第 4 章 一面せん断試験」
,pp.563-600,2000
4)村本勝己,中村貴久,三田地利之,大木茂貴,菅沼辰彦:
1)中村貴久,村本勝己,鳥井原誠,須藤賢,中嶋隆:生分解
ポバールを用いた軌道補修材料の一面せん断試験,第 44 回
性ポリマーを用いた軌道補修材の繰返し載荷試験,第 63回
地盤工学研究発表会,D-06 ,pp.442-443,地盤工学会,2009
土木学会年次学術講演会概要集,4-134,pp.267-268,土木
28
RTRI REPORT Vol. 23, No. 10, Oct. 2009
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