...

乾燥地におけるバイマスエネルギー利用の可能性に関する研究

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

乾燥地におけるバイマスエネルギー利用の可能性に関する研究
養成技術者の研究・研修成果等
1.養成技術者氏名: 松本 剛
2.養成カリキュラム名: 乾燥地におけるCO2固定植林およびバイオマスエネルギー評価
3.養成カリキュラムの達成状況
カリキュラムの進捗状況としては順調に進み、しっかりカリキュラムを予定通り終えた。
具体的には、(1) 炭素安定同位体比分析による樹木生育のための水ストレスの検討については、
論文としてまとめ国際会議である Desert Technology VIII で学会発表を行い、沙漠学会へ論文をまと
めた。(2) バイオマスガス化実験装置の設計・開発については、オーストラリアから入手したユー
カリなどの木質バイオマスガス化実験を行い、ガス化温度や圧力などを変化させ様々な条件下でガ
ス化実験を行い、最適条件を決定した。これらの成果を国内外の学会で発表した。
4.成果(A4版2枚程度)
4.1 研究の概要
現在、地球の温暖化が深刻であり主因は CO2 である。そこで、本研究では環境負荷が少ない CO2
固定法の1つであるの植林を取り上げた。温暖化問題緩和のためには、植林を大規模に行う必要が
あるため、食料生産と競合がなく大規模に植林を実施できる乾燥地を取り上げている。また、さら
に、植林した木を木質バイオマスとしてエネルギー利用の検討も行っている。植林した木質バイオ
マスをガス化などにより燃料として利用し、大気中に CO2 が排出されるが、植林により再び CO2
を固定するため大気中の CO2 濃度を上昇させることはない。そのため、大気中の CO2 濃度を上昇さ
せることなく、循環的利用が可能であるため有用なエネルギー源である。
そこで、養成技術者および指導者らは西オーストラリア州レオノラ地域を研究調査対象地として
選択した。
このレオノラ地域を対象としたCO2 固定植林の研究の業務実施内容について以下に記す。
4.2 研究成果の産業への活用
現在、温暖化原因である CO2 排出権取引に関する法の整備および規制化が進んでいる。数年後に
はこの規定が確立されれば、海外での CO2 固定を目的とした植林事業は飛躍的に進み実用化されそ
の際、本研究成果が生かされると考えられる。ここ最近、上記の背景を基に植林事業および研究は
進み始めているが高雨量地域での植林に関する研究が多く、大規模な乾燥地を対象とした植林研究
はほとんどない。乾燥地を植林することは容易ではないが、乾燥地を対象とした植林の評価・検討
することは必要であり、いずれ本研究成果が産業へ大きく寄与することができると考えている。
一方、バイオマスエネルギー利用については、近年、化石燃料に替わるエネルギーとして注目を
集めている。国内においては山脈地帯が多くバイオマスの運搬・加工するには適していないが、オ
ーストラリアなどの海外は山脈が少ない上に広大な土地が確保できるのでの木質バイオマスの利用
に適している。そこで、本研究で取り上げているオーストラリア産ユーカリを用いた検討は貴重で
あり、今後、コスト的な評価により利益確保できれば産業への活用もあると思われる。
4.3 業務実施内容および成果
(1) 炭素安定同位体比分析による樹木生育のための水ストレスの検討
乾燥地植林する上で、水は必要不可欠であるため水ストレス度を把握することが必要であり、本
研究では炭素安定同位体比分析による樹木生育のための水ストレスの検討を行った。
炭素の同位体比は、存在量の多い同位体に対する比(原子数の比),すなわち 13C/12C が測定され
る。これらの同位体比は千分偏差(‰:パーミル)として次式で示すδ値が用いられ、δ13Cとして表
現される。
試料(13C/12C)−標準物質の同位体比(13C/12C)
13
δ C =────────────────────────── ×1000 (単位:‰)
標準物質の同位体比(13C/12C)
ここで、Rstandard:標準物質の同位体比(13C/12C),Rsample :試料の同位体比(13C/12C)
植物の葉は気孔を開いて大気中の CO2 を葉中へ取り込み、光合成により炭水化物を生成(炭素固
定)する。植物の葉は気孔を開いて CO2 を葉中へ取り込む際、同時に、葉から大気へ水を蒸発(蒸
散)させる。これらのメカニズムによる炭素安定同位体比の値は次のように変化する。大気中の炭
素安定同位体比δ13C はおおよそ-8‰であるが、大気中から植物の気孔から取り込まれるときおよび
植物中で炭水化物が生成される過程で-10∼-20‰程度の同位体分別が起こる。
例えば、水が足りないとき、植物は少ない水の蒸発で炭水化物をつくっている。この状態が水利
用効率が高い状態である。水が乏しく 12C が反応に使われ少なく 13C が多い場合は、13C/12C の値
は大きくなり、δ13Cは大きくなる。つまり、この状態は、水効率が高く、乾燥性が高い。一方、
常に、水が豊富にあると 12C が豊富あるので 13C/12C の値は小さくなり、δ13Cは小さくなる。こ
の状態は水効率が低く、乾燥性が小さいことを意味する。同位体比分析により乾燥地で地下水利用
などにより生育している樹木と、地下水利用などをおこなっていない樹木を比較すると、地下水利
用している樹木の炭素安定同位体比は軽く、地下水利用していない樹木の炭素安定同位体比は重い
傾向にある。
そこで、本研究では、豪州の雨量の違うパース(年間雨量 500mm)やレオノラサイト(年間雨量
220mm)の中の塩濃度の違う場所の樹木(ユーカリ、アカシア)の水利用状況を炭素同位体分析によ
り把握した。採取方法としてサンプル採取地域、樹木種類、箇所、数および管理法についてサンプ
ルは葉のみで、先端部の最も新しい葉(当年にできた葉)の採取を行った。サンプル箇所・数は、
それぞれ樹木1本に対して胸高あたりで 5 点程度採取した。これらサンプル採取を行い、森林総研
で炭素安定同位体比分析を行い、水ストレスを受けている樹木および水ストレスを受けていない樹
木などを把握・考察を行った。その結果、ユーカリにおいては、年間降雨量の少ないレオノラサイ
トの方が、年間降雨量の多いパースよりも水ストレスを受けていない、つまり水条件が良いことが
分かった。この理由としては、年間降雨量の少ないレオノラサイトでユーカリが生育している地域
は、クリークと呼ばれる小川付近であり水が比較的豊富にあるためだと思われる。よって、今後、
レオノラのような降雨量の少ない乾燥地で植林するには、クリーク付近に植林することが望ましい
ことが分かった。
(2) バイオマスガス化実験装置の設計・開発
近年、CO2 排出の主因とされる石油・石炭などの化石燃料に代わるエネルギーが必要とされてい
る。その1つとして大気中の CO2 濃度を増加させない、いわゆるカーボンニュートラルであるバイ
オマスエネルギーが注目されている。一方で、著者らは地球温暖化ガスの CO2 削減法として乾燥地
への大規模植林に着目し、具体的には西オーストラリア乾燥地にユーカリなど早生樹種を試験植林
しバイオマス生産について検討している。当該地域の非常に広大な面積に植林後、成長し生産され
る膨大なバイオマス生産が期待されており、ユーカリ木質バイマスなどのガス化挙動を把握するこ
とは必要である。
そこで本研究では、西オーストラリア産ユーカリ木質バイオマスを用いてガス化実験を行い、ガ
ス化挙動を把握した。具体的に、西オーストラリア産ユーカリ木質バイオマスを用いて CO2 ガス化
実験を行い、小型流動層ガス化装置を用いてチャーのガス化反応速度測定および熱重量測定装置
(TG)を用いてガス化の重量減少量測定することを目的とした。流動化媒体としてアルミナ粒子を
流動層に投入し、シリコニットを用い窒素雰囲気で実験温度まで昇温して保持した。実験条件に保
持しながら、窒素雰囲気下の流動層内に試料バイオマスを投入し、10 分乾留した後、CO2 濃度 20%
を流し、ガス化を開始させた。生成ガスを 20 分間サンプリングし、ガスクロマトグラフィーにて
ガス分析し、チャーのガス化反応による CO 生成速度を求めた。流動層装置を用いることにより、
バイオマスのチャーのガス化速度を測定できた。小型流動層ガス化装置を用いた 1073K でのチャ
ーのガス化反応による CO 生成速度測定結果、最大で反応速度は 0.002 程度であった。1073K での
TG を用いたガス化の重量減少量測定結果では、ユーカリ木質バイオマス重量の約 0.5%が、ガス化
することが分かった。
5.成果の対外的発表等(平成17年度の成果を対象とする)
(1)論文発表(論文掲載済、または査読済を対象。論文のコピーを添付。
)
なし。
(2)口頭発表(フェロー本人が発表したものを対象。予稿集等のコピーを添付。
)
・Tsuyoshi MATSUMOTO, Jun AOKI, Tomohisa KATAYAMA, Nobajyoti SAIKIA, Toshinori KOJIMA,
Evaluation of Thermal Characterization and Gasification using Eucalyptus Woody Biomass, 14th
European Biomass Conference , Paris.,2005.
・ ユーカリバイオマスを用いたガス化実験, 松本剛、青木淳、片山知久、小島紀徳 2005, 化学
工学会第 37 回秋季大会, 岡山.
・T. Matsumoto, S. Kato, S. Sinha, T. Abe and T. Kojima , Estimation of Water Availavility Condition for
Afforestation in Desert of Western Australia using Carbon Stable Isotope Analysis, The 8th International
Conference on Desert Technology, 2005, Nasu. JAPAN
発表件数: 3 件
(3)特許等(出願件数を記載。
)
なし。
Fly UP