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中国:過剰流動性によるマクロ経済上の
諸問題*
国際審査部第 1 班課長 石川 純生
調査役 増井 彰久
仲山 里美 要 旨
1.中国経済は基本的に投資依存型の成長パターンにより、過去四半世紀に年平均 9.7%に及ぶ実質
GDP 成長率を記録した。貯蓄投資バランスをみると、2000 年代に入り国内投資、国内貯蓄とも
に増加傾向が強まり、2005 年にはそれぞれ GDP 比 43%、同 50%という高水準に達している。
貯蓄から投資を差し引いたバランスは国際収支上の経常収支黒字と一致するが、2000 年代には
経常収支、資本収支ともに黒字幅が拡大した結果、2004 〜 2005 年には年間 2,000 億ドルに及ぶ
総合収支黒字を計上している。外貨準備高も 2006 年 6 月末には約 9,400 億ドルまで急増し、世
界一の水準を維持している。一方、かかる大規模な外貨流入に対し、中国人民銀行(中銀)は不
胎化政策を実施することにより、リザーブマネーのコントロールを図っているが、外貨流入を完
全に不胎化することはできず、国内経済では過剰流動性が発生している。
2.2006 年に入り景気過熱の様相が一層強まり、4 月以降中国当局は貸出基準金利の引き上げ、商業
銀行に対する窓口指導、不動産部門に対する投機の抑制措置等により引き締めを図っているが、
2006 年上半期の実質 GDP 成長率は 10.9%となり、依然として成長は加速している。かかる状況
の下、過剰流動性は、投資過熱による設備過剰、生産過剰によるデフレ、不動産価格の高騰等の
諸問題につながっている。特に最近は全国ベースで不動産価格の上昇が顕著となっており、将来
的に不動産資産価格の急落が生じた場合には、経済全体に大きな影響を与えるリスクが高まって
いる。また、現在のような大規模な不胎化政策の実施には、中銀手形の市中消化及び内外金利差
の動向等の前提条件が整う必要があるが、今後の金融環境の変化次第では、不胎化政策の継続が
困難となり、過剰流動性をコントロールできず、更に問題が深刻化するおそれもある。
3.現政権は「経済成長至上主義」から「バランスの取れた経済発展」に方向転換する目標を掲げて
いる。最優先課題である都市・農村間の所得格差問題への対応については、社会保障制度の整
備、義務教育の無料化、農民の都市部への移住(都市化)等の政策により、その解決を図ってい
る。農民所得の引き上げは、消費の裾野の拡大、ひいては消費主導型の成長に転換する観点から
も重要な課題であるが、現下の投資の急増を踏まえると、国内消費の GDP 比率を高めていくこ
とは容易ではなかろう。過剰流動性の原因となっている大量の外貨流入を抑制するための代表的
な政策として、①元の切り上げペースの加速、②対外投資促進のための資本規制の緩和が考えら
れる。中国当局が国内産業保護等の観点から為替の急速な増価を回避するであろうことを前提と
すれば、国内金融システムの安定性に配慮しつつ、対外資産への投資に対する規制を緩和する等、
資本流出を促進するための資本規制の自由化が今後漸進的に進められるものと予想される。
……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
* 本稿は筆者の個人的見解であり、国際協力銀行あるいは国際審査部の公式見解ではない。
2006年9月 第31号 43
はじめに
現在の中国経済の特徴の一つとして、国
際収支黒字に基づく大量の外貨流入と、固
定的な名目為替レートを維持するための為
替介入により、国内経済において過剰流動
性が発生していることが挙げられる。過剰
流動性は投資の過熱を引き起こし、生産過
剰によるデフレや不動産価格の高騰といっ
たマクロ経済上の諸問題につながっている。
本稿では過剰流動性の問題を中心に据えて、
中国経済をレビューし、その課題を整理し
た上で、諸問題の解決策について考察した
い。
まず、過去四半世紀の中国経済を簡単に
振り返り、投資依存型の成長パターンを確
認した上で、過剰流動性に着眼する背景を
説明する。次に、第1章では外貨流入に伴う
過剰流動性の増大を確認し、第2章では投
資過熱により生じる問題を取り上げ、第3
章では不胎化政策の限界に焦点を当てて分
析し、第4章ではマクロ経済上の諸問題の解
決策につき考察することとする。
(過去四半世紀の成長パターン)
1981〜2005年 の 実 質 GDP 成 長 率 は 年 平
均9.7%であり、長期に亘り高成長が維持さ
れている(図表1)
。但し、1980年代の初め
と終わりには成長の減速もみられ、成長率
は5%程度に失速した。いずれもそれに先
立つ景気の過熱を受けて、過剰投資の抑制、
図表1 実質 GDP 成長率に対する内外需寄与度
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物価安定化のために政府により厳しい引き
締め政策が実施された結果である。こうし
た経緯は現在の中国当局も十分認識してお
り、現下の景気過熱に対処する上でも一定
の教訓となっているものと推測される。
更に、1981〜2005年の実質 GDP 成長率に
対する内需と外需の寄与度をみると、経済
成長は外需より内需に連動していることが
分かる。実質 GDP 成長率、内需寄与度、外
需寄与度の標準偏差を計測すると、それぞ
れ2.9、4.1、1.9となっており、内需は外需よ
り変動が大きい。更に、内需を構成する民
間消費、政府消費、投資の成長率に対する
寄与度を計算すると、それぞれの標準偏差
は2.0、0.8、2.9と投資の変動が最も大きい。
すなわち、これまでの成長は、内需、とり
わけ投資の変動が成長を左右するパターン
であったと言える。
(貯蓄投資バランス)
成長を牽引する投資は高水準の国内貯蓄
によりファイナンスされている訳であるが、
2000年以降、国内投資率、国内貯蓄率とも
に増加傾向が強まり、2005年にはそれぞれ
GDP の43%、50%に達している(図表2)。
高貯蓄率が指摘された高度成長期の日本で
も貯蓄率は GDP 比40%台前半であったこと
を考えると、これだけの経済規模の国で国
内貯蓄が GDP の過半を占めるという例はか
つてないであろう。一方、貯蓄投資バラン
ス(貯蓄率から投資率を差し引いたもの)は、
国民所得の恒等式から、経常収支の GDP 比
図表2 貯蓄投資バランス
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44 開発金融研究所報
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と一致するが、2002年以降の貯蓄投資バラ
ンスの拡大は、貿易黒字の急増等による経
常収支黒字の拡大に対応している。
(国際収支黒字と外貨準備の急増)
国際収支黒字は外貨準備の積み上がりに
反映されるが、特に2000年以降は、経常収
支黒字幅の拡大に加え、直接投資の流入増
等により資本収支黒字も増大し、外貨準備
の急増が顕著となっている(図表3)
。これ
は、1997年に発生したアジア通貨危機以降、
ASEAN か ら 中 国 へ 直 接 投 資 が シ フ ト し、
また東アジアで形成された生産・流通ネッ
トワークを活用し、中国は大幅に輸出を伸
ばすことに成功した結果とも言える。更に、
中国の外貨準備増大の背景には、1994年以
降対ドル固定相場制を採用した影響も見逃
せない。すなわち、経常収支、資本収支が
ともに黒字であり、外貨流入が大幅に増大
する中、対ドル名目レートの固定を維持す
るためには、中国人民銀行(以下「中銀」
)
は為替市場においてドル買い介入を行う必
要があり、外貨準備が急速に積み上がる結
果となった。加えて、対外資産への投資が
規制されており、資本流出が制限されたこ
とも、外貨準備の増大を加速させた要因で
ある。
図表3 国際収支と外貨準備高
(過剰流動性の発生)
外貨準備が急増するような大規模な外貨
流入により生じる金融政策上の最大の問題
は、リザーブマネーが急増し、過剰流動性
が発生する要因となることである。外貨流
入に伴うマネーの増加を中銀が債券の売り
オペ等により吸収することは可能であるが
(
「不胎化政策」
)
、後述の通り、現在の中国
の場合には外貨流入の半分程度しか不胎化
されていない。マネーサプライ(M2)の推
移をみると、1995年末には GDP 比104%で
あったが、10年後の2005年末には同約161%
まで増加しており、他国と比較してもかな
り高水準となっている(図表4)
。この過去
10年間のマネーサプライの増加(GDP 比で
57ポイント)の内訳をみると、銀行部門(中
銀+商業銀行)の対外純資産(NFA)
、国
内純資産(NDA)の増分がそれぞれ GDP
比で30%ポイント、7%ポイントを占めて
いる。言い換えれば、マネーサプライ増の
約半分は中銀及び商業銀行の保有する NFA
の増加によるものということになる。なお、
中銀の NFA 増(過去10年間で GDP 比23%
ポイント増加)
が商業銀行の NFA 増
(同7%
ポイント増加)を大きく上回っている理由と
しては、前述の通り、資本規制により対外
資産への投資が制限されていたことが大き
いと考えられる。
図表4 マネーサプライとその内訳
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出所)CEIC
2006年9月 第31号 45
第1章 外貨流入に伴う過剰流動性の発生
1.国際収支黒字の急増
(1)経常収支の動き
最近の国際収支の動きをみると、2004〜
2005年に輸出の急増や資本流入の増大によ
り国際収支黒字が急拡大したことに目がと
まる。貿易黒字については、2004年下半期
以降急速に拡大し、2005年には輸出が7,625
億ドル(前年比28.5%増)
、輸入が6,283億ド
ル(同17.6%増)で、
貿易黒字は1,342億ドル(前
年の2.3倍)と過去最大となった*1(図表5)
。
半期毎の輸出の伸びをみると、繊維・機械
を中心に、前年同期比25〜35%と安定的に
高水準である(図表6)
。一方、輸入の伸び
図表5 国際収支
は、2005年上半期には前年同期比14%に下
落したが(これは主に石油輸入急増等によ
り前年上半期の輸入額が比較的大きかった
ため)
、
その後は20%台に回復している。なお、
従来、加工貿易が大きな比率を占めているが、
最近は国内生産能力の急速な向上により、繊
維、金属・化学製品をはじめ原材料、部品の
輸入代替が進んでおり、今後輸入の伸びが若
干スローダウンし、貿易黒字が更に拡大する
要因になるとの見方もある。
サービス収支は毎年90億ドル程度の赤字
で安定している一方、所得収支は、2005年に
外貨準備運用による利子収入の増加、企業の
海外進出による配当金収入の増加等により、
前年より大幅に改善し106億ドルの黒字に転
じている。また、為替増価期待を背景とする
海外居住者(華僑)からの送金増加等により、
経常移転収支の黒字拡大もみられる。
この結果、2005年の経常収支黒字は前年
の2.3倍に相当する1,608億ドルに拡大した。
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(前年同期比)
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出所)CEIC
(2)資本収支の動き
資本収支面では、2005年に直接投資(金
融部門投資を含む)は678億ドルに増加した
が、証券投資は銀行・保険会社等の外国債
券への投資が急増したことを受け、49億ド
ルの赤字に転じた。その他投資は赤字とな
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*1 なお、2005年の対米貿易黒字は1,142億ドル(前年比42%増)に達し、中国の貿易黒字の約85%に相当している。また、香港
経由の中継貿易の関係で、米国側統計によれば、同年の米国の対中貿易赤字は2,016億ドルとなっていることには留意が必要
である。
46 開発金融研究所報
る年と黒字となる年があるが、外貨管理局
による許可制である対外貸出・借入がとも
に急増しているのが特徴である。この結果、
2005年の資本収支黒字は前年の1,107億ドル
から630億ドルへと大幅に減少した。
(3)外貨準備の増大
以上概観した通り、資本収支黒字の減少
を経常収支黒字の増加が埋め合わせる形と
なり、2005年の総合収支は前年と同水準の
約2,000億ドルに及ぶ大幅な黒字を計上した。
その分、外貨準備が急速に積み上がり、外
貨準備高は2006年2月末には8,537億ドルとな
り日本を抜いて世界一の水準となった。そ
の後も増加の一途を辿っており、2006年6月
末には9,411億ドルに達している(図表7)
。
2006年上半期の貿易黒字が前年比約5割増と
なり、貿易黒字が引き続き拡大している中、
外貨準備高は年末には1兆ドルを超えるとの
見方も強い。
図表7 外貨準備高(期末値)
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増加につながるのではなく、中銀が不胎化
政策により市場からの資金吸収を行った場
合には、その資金吸収分を差し引いた分が
リザーブマネーの増分となる。リザーブマ
ネーの伸びをみると、名目 GDP 成長率を
上回る水準ではあるものの、前年同期比で
20%を超えない範囲におさまっている(図
表8)
。しかし、
リザーブマネーの伸び率(前
年同期比)に対する中銀 NFA の寄与度を
みると、2004年第4四半期以降概ね30%以上
となっている一方、不胎化政策のための中
銀手形(期間1年以下の中銀債)の大量発行
により中銀負債が増加するため、中銀 NDA
の寄与度は▲20%程度と大幅なマイナスと
なっている。これは、大規模な外貨流入の増
加(NFA の増加)によるリザーブマネーの
急増を抑えるため、中銀が不胎化政策による
市場から資金を吸収していること(中銀手形
発行による NDA の減少)と一致している。
後述の通り、中銀手形の市中消化等の制約か
ら不胎化政策には一定の限界があり、リザー
ブマネーの伸び率は中銀が本来意図する水準
より高くなっている可能性がある。
また、マネーサプライの動きをみると、リ
ザーブマネーの増大に加え、2005年中に景気
減速懸念から金融政策が若干緩和されたた
め銀行融資が急速に伸びたこともあり、同
年第3四半期以降のマネーサプライの伸び
率は前年同期比17〜19%程度と名目 GDP 成
長率を上回る水準で推移している(図表9)
。
出所:CEIC
図表8 リザーブマネー伸び率(前年同期比)
2.過剰流動性の高まり
前述の通り、国際収支黒字に伴う外貨流
入は、国内経済においてはリザーブマネー
の増加につながっているが、ここでは最近
のマネーの動きを確認したい。中銀は外貨
流入に伴う為替増価を抑制すべくドル買い
介入を実施し、外国為替市場からドルを購
入した分、外貨準備が増大している。これ
をリザーブマネーとの関係でみると、外貨
準備の増加分がそのままリザーブマネーの
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出所)CEIC
2006年9月 第31号 47
図表9 マネーサプライ
(M2)
増加率
(前年同期比)
年同期比10.3%に上昇し、全社会固定資産投
資、社会消費品小売総額の名目伸び率はそ
れぞれ前年同期比27.7%、同12.8%まで加速
した *2。2006年通年の全社会固定資産投資
の名目伸び率の政府目標は18%であり、投
資活動はこれを大幅に上回るペースとなっ
た(図表10)
。また、2006年第1四半期の金
融機関による新規融資増加額は1.26兆元と
なり、年初の3カ月間のみで中銀が定めた通
年増加額目標(2.5兆元)の過半に達した*3。
こうした状況を受けて、2006年4月末に中銀
は窓口指導会議を開催し、商業銀行に対し
過剰投資業種への貸出抑制等を求めるとと
もに、銀行融資に適用される法定貸出基準
金利を年率0.27%ポイント程度引き上げた*4。
利上げ幅自体は小さく、直接的な投資抑制
効果よりも、市場に対し中国当局の景気過
熱懸念を示すアナウンスメント効果の意味
合いが強いとみられる。これ以降、中国当
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出所:CEIC
以上のような観点からみると、大量の外貨
流入により、中銀が国内金融システムにお
いてマネーをコントロールすることに困難
が生じつつあり、過剰流動性が高まってい
ることが推測される。
第2章 投資過熱とその問題点
図表10 実質GDP成長率、投資・消費の実質伸び率
(前年同期比)
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1.景気動向
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2006年 に 入 り 景 気 過 熱 の 様 相 が 一 層 強
まったことを受け、4月以降中国当局は利
上げ等により引き締め措置を導入している
が、これまでのところ経済成長は引き続き
加速している。
2006年第1四半期の実質 GDP 成長率は前
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出所)CEIC
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*2 2006年第2四半期の実質 GDP 成長率、全社会固定資産投資・社会消費品小売総額の名目伸び率はそれぞれ11.3%、29.8%、
13.9%となり、更に成長期は加速している。なお、全社会固定資産投資は、プロジェクト投資、不動産開発投資、宅地建設投
資、農村部の投資等を含む固定資産投資活動を示す代表的な指標である。社会消費品小売総額は、各業種が消費者に販売し
た消費財の総額で、消費活動を示す代表的な指標である。
*3 更に、2006年1〜5月の新規融資増加額は1.79兆元となり、中銀の通年目標の7割に達している。
*4 更に、2006年8月、中銀は貸出基準金利及び預金基準金利を引き上げている。2006年4月時の貸出基準金利の上げ幅は期間1
年以上では一律(年0.27%)であったが、今回は長期ほど上げ幅が大きくなっており、運転資金等向けの短期融資ではなく、
地方政府や企業による過剰投資につながる融資を抑制する狙いがあるとみられている。
【貸出基準金利】
(年率、%)
上げ幅
0.18
【預金基準金利】
新金利
5.58
1年
1〜3年
3〜5年
5.85
6.03
6.12
6.12
6.30
6.48
0.27
0.27
0.36
3ヶ月定期
6ヶ月定期
1年定期
1.71
2.07
2.25
1.80
2.25
2.52
0.09
0.18
0.27
5年以上
6.39
6.84
0.45
2年定期
3年定期
5年定期
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6ヶ月
48 開発金融研究所報
普通預金
旧金利
0.72
(年率、%)
新金利
上げ幅
0.72(据え置き)
旧金利
5.40
局は、貸出抑制を要請する窓口指導を繰り
返すとともに、過剰流動性を吸収するため、
新規融資の伸びが顕著な4大国有商業銀行
等を対象とした中銀手形の売りオペも実施
した*5。更に7月には約2年振りに預金準備
率の引き上げも実施している*6。
しかしながら、最近発表された2006年第
2四半期の実質 GDP 成長率は前年同期比
11.3%と前期よりも更に加速し、上半期全体
の成長率は同10.9%となった。2006年通年の
成長率も10%を超えるという見方が強まっ
ている。
2.生産過剰によるデフレ傾向
以上に見たような高成長、景気過熱にも
かかわらず、低インフレが維持されている。
消費者物価(CPI)上昇率は、2005年4月以
降、前年同月比2%を切る低水準で推移して
いる(図表11)
。低インフレの背景には、中
図表 11 CPI(消費者物価指数)上昇率
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国経済のグローバル化による国内競争の激
化に加え、鉄鋼、アルミ、自動車等の生産
過剰業種 *7では、過剰投資により生産能力
が需要を上回り、一部においては製造コス
トを割る価格の販売が行われていることが
指摘されている*8(勿論これはデフレ要因
となる)
。また、資源・エネルギーを含む原
材料の価格上昇が相対的に大きく、消費財の
価格上昇は相対的に小さい傾向があり*9、サ
プライチェーンの「川下」ほど価格競争が激
しく企業収益が圧迫されていると言われる。
一方、インフレ要因としては、国際油価高騰
を受けて、政府がガソリン・軽油等燃料油の
統制価格を2005年3月以来6回(ガソリンは
5回)引き上げていることがあるが*10、CPI
統計上燃料油の比重が小さいこともあり、
これまでのところ油価高騰の消費者物価へ
の顕著な影響はみられない。
3.不動産価格の高騰
一般に過剰流動性は一部のセクターへの
投資あるいは投機の集中につながるおそれ
があるが、
中国でもやはり不動産部門へ
の投資の急増が顕著となっている。最近で
は全国ベースで不動産価格の上昇がみられ、
マクロ経済上のリスク要因として懸念され
ている。中国当局による不動産価格動向に
関する発表においても、数年前から高騰が
問題視されていた上海の価格上昇率がマイ
ナスに転じる一方、2005年頃からは北京、
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*5 2006年5月17日、中銀は4大国有商業銀行をはじめとする融資の伸びが顕著な銀行を対象として、1,000億元の1年物中銀手
形を発行した。通常の売りオペでは全銀行を対象とした入札が行われるが、特定の銀行から資金を吸収するのは異例であり、
市場関係者は金融機関の貸出抑制に向けた中銀の強いメッセージと受け止めている。
*6 2006年6月、中銀が法定預金準備率を7.5%から8%への引き上げを発表した(7月実施)。2004年4月以来の引き上げとなる。
*7 2006年3月12付国務院通達では、鉄鋼、アルミ、カーバイド、鉄合金、コークス、自動車を「生産能力が顕著に過剰な業種」、
セメント、石炭、電力、紡績を「生産能力が潜在的に過剰な業種」に指定している。
*8 過剰設備、生産過剰の問題は依然深刻ではあるものの、統計データをみる限り、最近やや緩和されているとの指摘もある(世
銀北京事務所、China Quarterly Update - May 2006(P12, Box2)参照)。
*9 2005年12月に実施された商務部による消費財需給調査によれば、主要製品600品目中430品目が供給過剰とされている。
*10 2006年5月の値上げで、北京ではガソリン店頭価格が9.5%引き上げられ、1リットル=5.09元(約75円)となった。
2006年9月 第31号 49
深セン等、その他の主要都市の価格上昇率
が高まっていると言われている *11。また、
高所得者向けの住宅あるいは投機の対象と
なる高級住宅については、これまでの新規
建設ラッシュにより一部では既に空室率の
上昇もみられ、供給過剰が懸念され始めて
いる。しかし一方、中低所得者向けの住宅
については、開発業者が建設にあまり積極
的ではなく、供給不足が広がっており、国
民の不満が高まり社会問題化している。こ
うした状況を受け、2006年5月29日、国務
院が「住宅供給構造を調整して住宅価格を
安定させることに関する意見」
(6カ条)を
発表し、住宅ローンの頭金比率の引き上げ
(20%から30%に)や住宅物件の転売に対す
る課税強化等により不動産部門に対する投
機の抑制を図っている。こうした政策の効
果を注視する必要があるが、将来的に投機
的資金が不動産部門から急速に逃避する場
合には、資産価格の急落を通じて、企業・
銀行双方の財務状態が悪化するとともに、
不良債権が増加し、経済全体に大きな影響
を与えるおそれもある。
表12)
。中銀手形の発行残高増加分だけ外貨
流入が不胎化されたと仮定すると、2005年中
には約2千億ドルの外貨流入のうち、半分程
度が不胎化された計算となる*13(逆に言え
ば、残り半分は不胎化されず、そのままリ
ザーブマネーの増加につながっている)
。現
在のような大量の外貨流入が継続する環境
の下では、中銀は不胎化政策によりリザー
ブマネーを本来意図する水準に抑制するこ
とが困難となる。その場合、マネーサプラ
イの増加を十分コントロールできず、過剰
流動性の問題が更に深刻化することとなる。
不胎化政策の前提として、発行した中銀
手形が円滑に市中消化される必要がある。
これまで商業銀行等により大量の中銀手形
図表 12 中銀手形の発行残高
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第3章 不胎化政策の持続可能性
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図表 13 金融機関預金残高
1.不胎化政策の前提条件
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ここでは少し角度を変えて、不胎化政策
について論じ、その示唆するところについて
考えてみたい。前述の通り、中銀は不胎化
政策のために中銀手形を発行しているが*12、
2006年3月末時点で中銀手形の発行残高は
約2.8兆元(GDP 比14.9%)にも達している(図
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出所)CEIC
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*11 2006年5月25日付中銀報告によれば、2005年12月時点の不動産価格につき、上海が前年同期比で下落する一方、北京は同7.1%
上昇した。また、国家統計局によれば、2006年4月時点の不動産価格は全国平均で前年同期比5.6%(北京は同8.2%)上昇し
ている。
*12 新発の中銀手形の償還期間は3カ月及び1年が主体となっている。2005年1月から2006年3月までの中銀手形発行額は4.6兆元
であり、その償還期間をみると3カ月が全体の33.3%、6カ月が同7.0%、1年が同52.0%、3年が同7.7%となっている。
*13 2005年の中銀手形残高増加額を、同年の国際収支黒字の為替換算額で割ると54%となる。
50 開発金融研究所報
が引き受けられてきた背景には、①銀行預
金残高が年間2割以上のペースで急速に伸
びてきたことに加え(図表13)
、②預金金利
が規制により低く抑えられており(概ね中
銀手形の利回りを下回る水準)
、商業銀行の
立場からは、リスクゼロの資産である中銀
手形をとりあえず購入しておくことは合理
的な選択肢であったことがあると考えられ
る。しかし、①については、中国の場合、
資本市場等が未整備で資産運用手段が限定
されており、銀行預金に資金が集中し易い
構造にあったが、最近の証券市場改革の進
展(ボックス参照)
、対外資産への投資に対
する規制緩和等を受けて、今後、銀行預金
から他の金融資産へのシフトが発生するこ
とも考えられる。また、②については、前
述した新規融資の急増にみられるように、
中銀手形利回りを大幅に上回る貸出の機会
があれば、銀行は与信により積極的となり
中銀手形購入に資金が回らなくなる可能性
もある。このように考えると、今後は中銀
手形の市中消化量に制約が生じ、中銀がそ
の意図する規模で不胎化政策を実施できな
くなるリスクは十分にある。
更には、不胎化政策の継続により中銀手
形の利回りが上昇した場合、不胎化コスト
が増大するとともに、国内金利の上昇を通
じて、更なる外貨流入を誘発するという悪
循環に陥るリスクがある。2005年初以降は、
中銀手形利回り(目安として3カ月物債券
レポ金利を参照)が、外準の運用利回り(目
安として3カ月物米国財務省証券利回りを
参照)を上回っている(図表14)
。このため、
図表 14 市場金利の推移
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出所)CEIC
現状では、不胎化のために発行した中銀手
形の支払いから、介入により得たドルを米
国短期債券等で運用する利益を差し引いた
「不胎化コスト」は非常に低く抑えられてい
ると推測される(あるいは「利鞘」を稼い
でいることも有り得る)
。しかしながら、今
後については、内外金利差が逆転する可能
性は十分にあり、不胎化コストの上昇によ
り、不胎化政策の規模縮小を余儀なくされ
るケースも有り得ると考えられる。
2.中銀のバランスシートと為替政策への示唆
現在のような大規模な不胎化政策の継続
は、中銀のバランスシート(以下「B/S」)
にも大きな影響を及ぼす。現在、外貨準備
が中銀の総資産に占める割合が6割以上に
達している。中銀資産に占める外貨建て資
産の割合が上昇することにより生じる問題
は、元が増価する場合(現在変動幅は小さ
いながら一貫して増価傾向にある)
、中銀の
B/S 上に評価損が発生することであり、こ
れは為替政策上一定の制約となり得る。つ
まり、かかる状況の下、仮に中銀が大幅な
切り上げを実施した場合、あるいは介入を
緩めて大幅な増加を許容した場合には、中
銀の B/S には大きな損失が発生することと
なる。例えば、一定期間に元が10%増価し
た場合を考えると、中銀資産の約6割が外
貨建てであるから、元建てで評価すれば、
中銀資産の6%にも及ぶ差損が発生するこ
とに等しい。勿論、中国当局が為替政策上、
大幅な為替増価を回避したい理由は、国内
産業の保護の観点が第一であると考えられ
るが、中銀の B/S の観点もある程度考慮せ
ざるを得ない局面に差しかかっていると推
測される。
中銀の B/S の推移をみると、大量の外貨
流入による外貨準備の急増を背景として、
2006年4月末時点の中銀 NFA は6.9兆元と
2年前と比較してほぼ倍増している(図表
15)
。一方、不胎化政策のための中銀手形発
2006年9月 第31号 51
図表 15 中銀のバランスシート
行(中銀負債の増加)に伴い、中銀 NDA
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出所)CEIC
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ボックス:証券市場改革の進展
2000年代に入り、アジアの多くの国では、
通貨危機からの経済回復や新興市場国への
資金流入を背景として株価の上昇がみられ
た。一方、中国の株式市場は「非流通株」
という特有の問題を抱え、非流通株を市場
に流通させようとする改革が投資家の信認
が得られず2度に亘り挫折したことから、
株価はその後低迷していた。しかし、2005
年には非流通株改革が再開され、これまで
のところ投資家にも概ね受け入れられてい
るため、株価も回復基調に転じている。
そもそも中国では、1990年代に国有企業
改革が推進される中、多くの国有企業が株
式制企業に転換されたため、政府部門等が
保有する国有株(株式市場で流通しない非
流通株)が上場株式全体の3分の2を占め
るが、これを市場に流通させるべく放出す
るのが非流通株改革である。2004年2月に
発表された資本市場改革の基本計画(
「9条
意見」)を受け、2005年4月、証券監督管理
委員会が非流通化株改革に係る通知を発表
し、非流通化株改革が再開された。2006年
5月現在、上場企業数の3分の2に当たる
868社で各社株主会議にて非流通株改革案が
可決されており(一部実施済)
、同年末まで
にほぼ全企業で改革案が発表される見込み
である。
今後の課題は、①上場企業1,377社(2005
年末)のうち投資対象となり得る、比較的
経営の良好な企業は100社程度と言われてい
るが、コーポレートガバナンスを含め上場
企業の経営改善を着実に行うこと、②2005年
6月に改革のため一時中止されていた上場企
業の新規株式公開・増資が再開されたが、株
式の需給観測を悪化させ株価を低迷させるこ
となく、海外市場で資金調達を行っている優
良企業を国内企業(A 株)に呼び戻すこと、
③非流通株の売却益(注)の一部を社会保障基
金に充当する方針が従来示されているが、投
資家の利益を損なうことなく同方針を実施す
る方策を検討すること等である。
株価の動きをみると、2005年4月に非流
通株改革が再開されると、改革が途中で挫
折した1999年及び2001年と同様、株式需給
に対する懸念から上海総合株価指数は4月
初の1,200台から6月には約1,000まで下落し
た。
上海総合株価指数
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出所)Bloomberg
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(注) 2006年7月14日時点の国内株式市場(上海・深セン)の時価総額は4兆9,271億元であり、そのうち66.4%に当たる3兆2,704億
元が非流通株である。非流通株は今後数年以上かけて徐々に市場に放出され、公共性の高い業種の国有株は売却されないこ
ととなるが、現時点の非流通株の時価総額は GDP の約2割に相当し、一定規模の売却益が期待される。
52 開発金融研究所報
は2005年8月に初めてマイナスに陥り、2006
年2月には▲0.8兆元となっている。
政権は「経済成長至上主義」から「バラン
スの取れた経済発展」に政策目標を方向転
わかい
換し、
「和 諧社会」
(調和の取れた社会)を
目指すとしている。では、
「バランス」の中
身とは何であろうか。2006年3月の第10期
全国人民代表大会(全人代)第4回会議で
採択された2006〜2010年を対象とする「第
11次5カ年計画」においては、今後5年間の
実質 GDP 成長率の見通しは年平均7.5%と現
状よりかなり低く設定されている*14。同計
画の数値目標22項目においても、人口・資源・
環境関連、公共サービス・国民生活関連が
それぞれ8項目を占め、所得格差や資源・
環境問題への対応が中心となっている点が
特徴である(図表16)
。また、政府は今回初
めて各数値目標を、法的拘束力があり必達
目標の性格が強い「拘束性」と、市場を通
じて達成が図られる見通しの性格が強い「所
期性」
に分類した。拘束性目標は8項目あり、
第4章 マクロ経済上の諸問題への対応
本章では、これまでにみてきたマクロ経
済上の諸問題につき、中国政府の対応や可
能な解決策につき考察を加えたい。まず、
中国政府が最優先目標の一つとして掲げる
「バランスの取れた経済発展」からみていく
こととする。
1.バランスの取れた経済発展
(1)「第11次5カ年計画」
胡錦涛主席・温家宝首相を中心とする現
図表 16 第11次5カ年計画の主要目標
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注)GDP、都市部と農村部の1人当たり所得は2005年価格。
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主要汚染物質は二酸化硫黄(SO2)及び化学的酸素要求量(COD)
。
出所)関志雄、
「バランスの取れた経済発展を目指す第11次五ヵ年規画」
、
経済産業研究所ウェブサイト(2006年3月27日掲載)
。
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*14 2000〜2005年を対象とした第10次5カ年計画の実質 GDP 成長率見通しは年平均7.0%であったのに対し、実績は9.5%程度と大
幅に上回った。今後5年間の第11次5ヵ年計画においても、目標成長率の数字自体よりも、成長至上主義ではなく、バラン
スの取れた経済発展を目指すという政策メッセージを示す意味があると意見が多い。
2006年9月 第31号 53
社会保障制度の整備や省エネ・環境保護に
ついて、中央政府が特に重視し、地方政府
に対しても目標達成を強く要請するものか
らなっている*15。
「バランス」の具体的内容としては、深刻
化する都市・農村間、地方間の所得格差を
是正することをはじめ、経済成長率を若干
低めに誘導してでも投資主導型成長から消
費主導型成長への転換を図ること、あるい
はエネルギー効率を改善し「成長のための
コスト」を引き下げること(このためには
過剰投資を抑制して投資効率を高めること
も効果的である)等が含まれている。とり
わけ、所得格差の是正については、国民の
最大の関心事であり、社会的安定性の観点
からも政策的取り組みが不可欠であるので、
次項でもう少し詳しくみることとする。
(2)所得格差の是正、三農問題*16への対応
図表 17 都市と農村の所得比較
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出所)CEIC
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都市・農村間の所得格差問題の深刻化が
指摘されて久しい。都市部の一人当たり可
処分所得と農村部の一人当たり純所得*17を
比較すると、その格差は年々拡大し、2005
年には3.2倍に達している(図表17)
。かかる
状況を放置しておくと、社会的安定性が損
なわれるおそれもあることから、現政権は
格差是正、農村対策を最重要課題に掲げて
いる。具体的政策としては、農村税費改革*18
による農民負担の軽減、
「社会主義新農村建設
計画」による農村部でのインフラ整備、新型
農村合作医療制度(農村向け健康保険)の整
備*19、義務教育の無料化等が実施されている。
また、所得格差の是正には、中央から地
方への財政の所得再分配機能を活用するこ
とが不可欠である。中央政府の立場からは、
安定的な歳入を確保しつつ、貧困地域に使
途を限定せず一般財源として配賦される地
方交付税交付金(
「財力性転移支付」
)の比
重を高めていくことが課題の一つとなって
いる*20。しかし一方、中央政府内では投資
効率の低い内陸部農村地域への財政投入に
消極的な意見もあると言われており、現政
権が推進する農村部のインフラ整備や貧困
削減のための社会政策を着実に実施してい
けるかが今後の焦点となろう。
また、第11次5カ年計画では、経済成長
を牽引する都市部に向けて、労働力の移転
を促進すべく、出稼ぎ農民(農民工)に対
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*15 「第11次5カ年計画要領」には拘束性目標には法的拘束力がある旨が明記されており、地方政府に対しても達成が義務付けら
れている。「拘束性」の目標が達成されない場合、中央政府(共産党)による地方政府トップの人事考課に影響するとの見方
もある。
*16 三農問題とは、「農業」の低生産性、「農村」の荒廃、「農民」の貧困を指す。
*17 都市部1人当たり可処分所得と農村部1人当たり純所得は5カ年計画の主要目標に採用される指標であるが、前者は全額消費・
貯蓄に充当されるのに対し、後者はその中から次期の農業生産のため費用(種子・肥料等)も賄う必要がある。
*18 農民に対しては、農業税に加え、末端の行政機構である郷鎮政府等が徴収する様々な費用、都市住民より相対的に重い教育費・
医療費等の負担が課されてきた。こうした過度の負担を軽減するため、地方政府が農民から徴収する医療・教育等の各種費
用を農業税に一本化する農村税費改革が2000年から実施され、2006年1月にはその農業税も廃止された。農業税は一般政府
歳入の約1%程度を占めるに過ぎないが、行政サービスを担う郷鎮政府の収入減を懸念する意見もある。
*19 同制度は年間に中央政府が20元、地方政府が20元、個人が10元、社会団体等が5元を支出して計55元(約7ドル相当)を積み
立てる、農村を対象とした健康保険制度である。加入者は2004年6月時点で6,899万人であり、約8億人の農民人口に対し加入
率は低く留まっている。
*20 現行の財政移転制度は1994年に導入され、①地方政府の制度導入前の税収水準を保証する「税返還」、②プロジェクト毎に資
金使途を限定して配分される「専項転移支付」、③格差是正を目的とした「財力性転移支付」が主要項目である。2005年の予
算上は、税返還が4,500億元、専項転移支付が3,631億元、財力性転移支付が3,093億元となっており、税返還を除く転移支付(計
6,724億元)の国家財政支出(中央+地方)に占める割合は20.8%まで上昇している。
54 開発金融研究所報
する戸籍制度をはじめとする規制を緩和し
ていく方針も示されている。出稼ぎ農民は
既に1億人以上存在すると言われるが、政府
は所得格差の現実的な解決策として、農村
部の抱える余剰労働力を都市部に移住させ、
工業・サービス部門に従事させる政策(都
市化政策)にも相当程度期待している模様
である。現状では、出稼ぎ農民は都市部で
就職しても賃金水準が都市部労働者の半分
程度で、社会保障・公共サービスの対象に
もならない等、農民工の貧困問題も指摘さ
れているため、規制緩和とともに出稼ぎ農
民をフォーマルな経済に組み入れる施策も
必要である。また、都市化政策の前提とし
て都市部において雇用機会が十分創出され
るか、都市住民だけではなく農民も対象と
した社会保障制度(年金制度)の整備を実
施できるか等が、かかる政策の成否の鍵と
なろう。所得格差は消費拡大の制約要因に
もなっており、その是正は次項で触れる消
費主導型成長の実現のためにも重要な課題
であり、今後の取り組みが期待される。
GDP 比は8.4ポイントも減少して、2005年に
は38.2%まで落ち込んでいる。また、2001〜
2005年の粗固定資本形成の伸び率は、2004
年を除いては*21、消費の伸び率を大幅に上
回っており、成長の投資に対する依存度が
年々高まっていることが分かる(図表19)。
こうした趨勢をみる限り、短期的には、投
資と消費の伸びが逆転し、消費の GDP 比が
上昇に転じるのはやや想像し難いシナリオ
にみえる。
図表 18 GDP 支出面(構成比)
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図表 19 投資、民間消費、GDP の伸び率(実質)
(3)投資主導から消費主導への成長モデル
の転換
もう一つの「バランス」問題としては、
先にみた通り、国内投資の GDP 比が40%を
超えており、持続可能な経済成長のために
は、投資に過度に依存した成長モデルを是
正して、成長を支える消費を伸ばしていく
必要がある。政府は投資主導型から消費主
導型の経済成長に転換する方針を示し、農
村所得の引き上げにより消費の拡大を図る
としている。今後実際に消費の GDP 比を引
き上げることは可能であろうか。GDP の支
出面をみると、粗固定資本形成の GDP 比
が2001年の37.3%から2005年に42.1%に急増
している(図表18)
。同期間に、家計消費の
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出所)CEICデータに基づき筆者推計
2. 国際収支黒字への対応策
(1)国際収支の大幅黒字の是正
こ こ で は、 過 剰 流 動 性 の 原 因 と な っ て
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*21 2005年12月、国家統計局は第1回国民経済センサスに基づき再計算した結果として、2004年の名目 GDP を約17%上方修正した。
翌月には GDP データの一貫性を保つために1993〜2003年の GDP データの修正値も発表されたが、2004年の名目 GDP があま
りに大幅に修正されたために、前年の GDP データとの間に一貫性がなく、伸び率等の計算では不整合がみられる。
2006年9月 第31号 55
いる大量の外貨流入を抑制する政策をレ
ビューしたい。国際収支の大幅黒字を是正
するための代表的な政策として、①元の切
り上げペースの加速、②対外投資促進のた
めの資本規制の緩和が考えられる。まず、
元の切り上げペースの加速については、経
常収支黒字の削減、
(為替増価による購買力
増を通じて)消費主導型成長への転換に大
きく貢献することが期待され、現在の中国
が採るべき政策であるとの意見も説得力が
ある。しかし、前述の通り、中国当局が国
内産業の保護、中銀の B/S への影響等を考
慮して、急速な増価はとにかく回避するで
あろうことを前提とすれば、中銀が為替介
入を大幅に緩めて切り上げペースが急に加
速するというシナリオは当面は現実的では
ないようにみえる。
次に、資本輸出促進のための資本規制の
緩和については、中国当局は中国企業の海
外進出を促進する政策の下、対外直接投資
に必要な許可手続の簡素化や外貨交換規制
の緩和を進めてきている。更に、2006年4
月には、中銀は国内適格機関投資家(QDII)
制度の導入を発表し、7月以降国内銀行数
行に対して、外国債券に投資するための投
資枠の付与を開始している*22。今後も国内
金融システムの安定性に配慮しつつ、国際
収支の過度な黒字を是正すべく、資本規制
の自由化が漸進的に進められるものと予想
される。
(2)為替政策の見通し
対 ド ル 為 替 レ ー ト の 増 価 幅 を み る と、
2005年7月の管理フロート制への移行後、
(移行当日の約2%の切り上げを除けば)年
率1.5%程度に留まっている(図表20)
。前述
の通り、現在の内外金利環境では「不胎化
コスト」は非常に低く抑えられており、ま
た為替の増価を現在のような漸進的なペー
図表 20 対ドル為替レート
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スに留めれば、中銀の外貨資産に生じる評
価損は小幅になり、中銀の B/S の悪化は限
定的となる。こうした観点から、当面は為
替の増価ペースは多少加速したとしても年
間3〜4%以内に抑えられるとの見方がある。
また、現在の1ドル=約8元水準につい
ては、米国、欧州との貿易摩擦が激化して
いることもあり、中国国内でも過小評価で
あるとの意見も多い模様である。具体的に
国民が受入可能な名目為替レートの目安は
1ドル=7.5元程度という指摘もある。これ
は、1993年以前に二重為替制度が採用され
ていた際、公定レートが1ドル=5元の下
で、市場レートは同7.5元まで増価したこと
があり、この経験を根拠とする見方である。
第5章 おわりに
以上みてきた通り、外資企業の貢献も含
めた輸出の急増や WTO 加盟以降の直接投
資流入増を背景とする国際収支黒字と、固
定的な名目為替レートを維持するための為
替介入により、過剰流動性が発生しマクロ
経済の諸問題につながっている。特にマク
ロ経済上のリスク要因として、従来から指
摘されている投資過熱による設備過剰、生
産過剰の問題に加え、不動産価格の高騰を
取り上げた。不動産価格動向については十
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*22 外貨管理局の発表によれば、適格国内機関投資家(QDII)制度の下、2006年7月には中国銀行(25億ドル)、中国工商銀行(20
億ドル)、香港の東亜銀行(3億ドル)に対し、8月には中国建設銀行(20億ドル)、交通銀行(15億ドル)に対し、海外債
券への投資枠が与えられている。
56 開発金融研究所報
分な統計データがなく分析が困難な面もあ
るが、日本における不動産バブルの経験も
踏まえ、投機的資金が不動産部門から急速
に逃避する場合には、経済全体に大きな影
響を与える可能性があることには引き続き
留意が必要である。
また、不胎化政策については、既に中銀
手形の発行残高が GDP 比約15%にも達し
ており、今後、中銀手形の市中消化が円滑
になされないケースも十分想定される。最
近では米国の利上げにも打ち止め感が出て
おり、また中国では引き締め政策により国
内金利が上昇するとすれば、
「不胎化コス
ト」が増大し、十分な不胎化政策が持続で
きなくなるおそれもある。2006年上半期も
貿易黒字が引き続き拡大していることに加
え、国内金利が上昇すれば更に投機的な外
貨資金の流入が促進されることを考えると、
不胎化政策によるリザーブマネーのコント
ロールが持ちこたえられるうちに、国際収
支の過度な黒字を是正する政策を実行して
いく必要があろう。
所得格差の問題についてはやや詳しくみ
たが、国民の最大の関心事であるとともに、
農村部所得の底上げにより消費の裾野の拡
大を図ることが、消費主導型成長に移行す
る上でも重要である。新型農村合作医療制
度の整備、義務教育の無料化等の社会政策、
あるいは農村部の抱える余剰労働力を都市
部に移住させる政策(都市化政策)が着実
に実施できるかが、現政権の目指す「バラ
ンスの取れた経済発展」を実現するための
鍵となる。しかし、本稿では過去数年の投
資の急速な伸びをみる限り、また今後も貧
困削減のためにも相応の高成長は必要とさ
れることを前提として、成長モデルを投資
主導型から消費主導型に移行することは当
面は困難であろうと論じた。
過剰流動性の解決策として、中国当局が
国内産業の保護等を考慮して急速な為替増
価を嫌うことを前提すれば、対外投資促進
のための資本規制の緩和により、国際収支
の大幅黒字を是正する政策が有効であると
考えられる。開放経済のトリレンマ理論か
らは、現在の中国は、
「固定的な為替レート」
(現在の為替制度は管理フロート制である
が、名目為替レートは介入によりかなり小
幅な変動に留められている)と「金融政策
の独立性」の2つを選択し、
「自由な資本移
動」を放棄している(すなわち資本規制を
実施している)状態であると言える*23。今
後はより柔軟な為替レートへの移行措置あ
るいはマクロ経済の安定性を確保するため
の政策手段として、介入を漸進的に緩める
こと等により為替レートの柔軟性を高めつ
つ、一方で資本規制の自由化を図っていく
こととなろう。今後中国当局が為替制度あ
るいはその運用を如何に調整し、資本規制
の詳細設計を如何に変更していくのかが注
目される。
以 上
…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………
*23 開放経済のトリレンマとは、①自由な資本移動(資本取引の自由化)、②固定的な為替レート、③金融政策の独立性という3
つの政策目標を同時に達成することは不可能であるとする理論である。これによれば、当該国が優先度の高い目標を2つ選択
すれば、残り1つは自動的に放棄されるという関係が成立する。
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○
固定的な為替レート
(為替の安定)
○
×
○
○
自由な資本移動
中国
日本
香港
(カレンシーボード制)
金融政策の独立性
○
○
×
2006年9月 第31号 57
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58 開発金融研究所報
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