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LIDARを用いた車線境界線の検出と予測

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LIDARを用いた車線境界線の検出と予測
LIDAR を用いた車線境界線の検出と予測
A Study on Traffic Lines Recognition and Prediction Using LIDAR
○赤松 駿一 (電通大)
冨沢 哲雄(電通大)
Shunichi AKAMATSU, The University of Electro-Communications, [email protected]
Tetsuo TOMIZAWA, The University of Electro-Communications
The purpose of this study is to develop traffic lane recognition system. The system consists
of white line detection part and lane prediction part. The detection part extracts the painted lane
marking by applying a special operator to the reflection intensity of the LIDAR. The prediction
part estimates the shape of the forward road from the white line detected in the past. Finally,
its performance and efficiency through experiments at the real environment are shown.
Key Words: Traffic lines, LIDAR, Reflection intensity
1
はじめに
自動車における運転支援・自動運転は今後ますます普及してい
くことが考えられる.路上での運転を支援するためには,白線の
検出や前方の車線がどちらの方向に進んでいくかを知ることが不
可欠である.
従来研究として,カメラ画像を用いた前方の車線認識 [1] や
LIDAR を用いた車両直下の白線の検出 [2] が行われている.カ
メラ画像を用いた前方の車線検出は,トンネルの入り口や出口と
いった明るさがダイナミックに変化する場所や逆光など,照明条
件に検出精度が左右されやすい.また,前走車との車間距離が渋
滞などで縮まると前走車によって前方の車線が隠れてしまい,車
線を検出できなくなるという問題がある.LIDAR を用いた車両
直下の白線の検出では,車両側面に LIDAR を取り付けているた
め,車線を検出するためには複数の LIDAR が必要となる.
本研究では,照明など明るさのダイナミックな変化に対してロ
バストに車線境界線を検出する方法,および,将来の車線境界線
の予測手法を示す.具体的には 1 レイヤの LIDAR を車両前方に
取り付け,一つの LIDAR で車線の検出を行う.LIDAR から取
得することができる距離データと反射強度のデータを使用するこ
とで,トンネルの出入り口など明るさがダイナミックに変化する
場合にも正しく検出することが期待される.
2
2.1
車道中央線
車線境界線
Fig.1 Road surface marking
3.25m~3.5m
12m
8m
12m
LIDAR を用いた白線検出システム
車線境界線
車道には,白や黄色のペイント剤を用いて区画線が書かれてい
る.区画線は,図 1 に示すように,車道外側線や車道中央線,車
線境界線などから構成されている.車線境界線は,実線,鎖線の
場合があるが,高速道路の場合,道路構造令によって 図 2 のよ
うに規格が定められている.車線の広さは 3.25m∼3.5m,線の
幅は 15cm,鎖線部分に関しては,線が書かれている部分の長さ
は 8m,書かれていない部分の長さは 12m となっている.
また,区画線には,視認性をよくするために再帰性反射材が混
ぜ込まれている.LIDAR を用いて区画線の反射強度を測定する
と,再帰性反射材が混ぜ込まれている区画線部分は周囲に比べ相
対的に高い反射強度を得ることができるので,反射強度ベースの
観測システムを構築するものとした.
2.2
車道外側線
15cm
Fig.2 Traffic lane line
TopURG のスキャン水平角は-135 度∼+135 度であるが,車線
境界線の認識では,-90 度∼+90 度の範囲を用いている.
2.3
LIDAR の デ ー タ 処 理 に 使 用 し て い る パ ソ コ ン の 環 境 は
Ubuntu12.04 である.LIDAR は USB でパソコンに接続され
ており,SSM[3] を用いてセンサ情報の管理を行っている.
ハードウェア構成
車両の周辺にある車線境界線を検出することで,車線の検出
を行う.1 つの 1 レイヤの LIDAR で車両の左右にある車線境界
線を観測するために,図 3 に示すように路面から 1.42m の高さ,
40 度下向きに,車両の左前ミラーに取り付けた.本研究で使用す
る LIDAR は北陽電機社製の TopURG(UTM-30LX)である.
ソフトウェア構成
3
3.1
車線境界線の検出
車線境界線の検出方法
LIDAR から得られる反射強度を図 4,5 の青線で示す.車線
境界線の部分は周囲と比べて相対的に強い反射強度を得ることが
できる.反射強度が周囲に比べ高くなっている部分が車線境界線
4000
yit
sn 3000
et
In 2000
no
it
ce
lf 1000
eR
0
Fig.3 System overview
-2
-1
4000
2
Fig.5 Reflection intensity of highway (b)
tyi 3000
sn
ten
I 2000
no
it
ce
lf 1000
eR
×
0
Fig.6 Operator
-2
-1
0
1
Position [m]
2
Fig.4 Reflection intensity of highway (a)
である.なお,図 4,5 に示している反射強度値は北陽電機社製
の TopURG から得られる値である.
この車線境界線を検出するには,反射強度の値を閾値で区切
り,閾値を超えた部分の幅を測定する,といった手法が考えられ
る.しかし,反射強度は路面の状況によってノイズの値が車線境
界線部分より大きくなるなど,大きく変動することがある.その
ため,一定の閾値を用いて検出を行うと,車線境界線の検出をで
きない恐れがある.
そこで,閾値で判定するのではなく,車線境界線部分とその周
辺部分の反射強度の差に着目する.画像中から輝度差に注目して
特定の太さの白線の候補を検出するオペレータを林らが提案して
いる [4].このオペレータを,本システムから得られる反射強度
に対して適用を行う.
図 6 に h1 以上,h2 未満の幅を持つ線に反応するオペレータ
の構造を示す.また,道路部分と車線境界線部分の反射強度の
差の最低値を th1 ,同じ車線境界線部分の最高の反射強度の差を
th2 とする.図 6 の×点を中心としたとき,その位置に車線境界
線があるかを判定するには,a,b,c,d,e の 5 点のみの反射強
度を用いる.a 点の反射強度が I(a) として表されるとき,以下
の式を満たすと×点に車線境界線の候補が存在する.ここでは,
th1 = 800,th2 = 300 とした.
3.2
0
1
Position [m]
I(a) − I(c)|
>
th1
(1)
I(e) − I(c)|
>
th1
(2)
I(b) − I(c)|
<
th2
(3)
I(d) − I(c)|
<
th2
(4)
車線境界線のトラッキング
3.1 節で,車線境界線の候補を求めることができた.しかし,
路面には,行き先を示す文字や矢印などが書かれているため,そ
れらは 3.1 節で示したオペレータによって誤検出されてしまうこ
とがある.
一方,高速道路上の車線境界線は,料金所などの一部分を除い
て実線,鎖線ともに連続的に続いている.そこで,前回検出され
た車線境界線の位置から次に検出される場所の予測を行うことで
車線境界線候補のトラッキングを行い,車線境界線候補の関連付
けを行う.このトラッキングによって,文字など車線境界線以外
の誤認識を排除し,車線境界線のみの検出を行う.
3.3
実環境における車線境界線検出結果
中央自動車道にてデータの収集を行い,実環境における車線境
界線の検出実験を行った.図 4 および図 5 に青線で高速道路を走
行中に取得した路面の反射強度を,赤丸で検出した車線境界線の
位置を示す.図 4 および図 5 はデータを取得した場所の路面状況
がそれぞれ異なるため,反射強度の強さが異なるが,どちらの場
合も正しく車線境界線を検出できていることがわかる.
図 7 には,車線境界線のトラッキング結果を示している.白色
の点が反射強度の高い部分であり,赤点が車線境界線のトラッキ
ングを行った結果である.トラッキングによって道路上の文字の
影響を受けずに車線境界線を検出できていることがわかる.
4
4.1
車線境界線の予測
車線境界線の予測方法
過去の車線境界線に対して二次曲線のフィッティングを行うこ
とで将来の車線境界線位置を予測する.フィッティングに使用す
る過去の車線境界線の距離は,二次曲線に対してフィッティング
した際に得られる標準偏差から決定する.直線やカーブの途中な
ど,道路の曲率が一定となる部分では,過去の長い距離に対して
二次曲線のフィッティングを行っても標準偏差は大きくならない.
しかしカーブの曲がり始めや曲がり終わりなど,曲率が変化して
いる部分では,過去の長い距離に対して二次曲線のフィッティン
グを行うと標準偏差が大きくなる.標準偏差が大きい場合は,二
次曲線のフィッティングにずれがあるため,将来の車線境界線の
位置を正しく予測できない.そこで,標準偏差が閾値より小さく
なるまで使用する過去の車線境界線の距離を短くしながら二次曲
線のフィッティングを再帰的に行う.ただし,標準偏差が閾値よ
1.4
車道外側線
Section (a)
Section (b)
1.2
車線境界線
Error [m]
1
0.8
0.6
0.4
道路中の文字
0.2
0
0
100
200
300
400
500
600
Position [m]
Fig.7 Reflection intensity image of highway
Fig.9 Error of Experimental section
5
Section (a)
Section(b)
おわりに
本稿では,LIDAR から得られる反射強度を用いて,オペレー
タによる車線境界線候補の検出,検出した車線境界線候補のト
ラッキング,将来の車線境界線の予測を行う方法について述べた.
提案したオペレータを用いて車線境界線の検出を行うことで,路
面の反射強度が変化する場合でもロバストに車線境界線を検出す
ることができることを示した.
また,実環境における実験として,高速道路での車線境界線の
検出および車線境界線の予測を行った.今回実験に用いた区間で
は車両の 2 秒先の車線境界線位置を 1.4m 以下の誤差で予測でき
ることを示した.
Fig.8 Experimental section
References
り大きい場合でも,20m 以上過去の車線境界線を使用するもの
とした.
4.2
実環境における車線境界線の予測結果
車線境界線の予測精度を検証するため,セクション (a) として
中央自動車道八王子 JCT∼八王子 IC 間(図 8-a),セクション
(b) として青梅 IC(図 8-b)を走行しながら路面の反射強度を取
得し,車線境界線の検出,車線境界線の予測を行った.セクショ
ン (a),セクション (b) ともに約 600m の区間であり,セクショ
ン (a) では約 80km/h,セクション (b) では約 40km/h で走行し,
車両の 2 秒先の車線境界線位置を予測した.
車両の左側の車線境界線について,車両の 2 秒先の予測位置
と実際の位置との誤差を図 9 に示す.セクション (a) の区間は,
約 80km/h で走行していたため,約 44m 先の車線境界線位置を
予測している.この時の誤差は最大で 1.1m であった.セクショ
ン (b) の区間はインターチェンジであるため約 40km/h で走行し
ており,約 22m 先の車線境界線位置を予測している.また,セ
クション (b) の区間はセクション (a) に比べ急なカーブとなって
いる.このときの誤差は,最大で 1.3m であった.特に,右カー
ブから左カーブへ切り替わる地点(470m 付近)で誤差が大きく
なっている.
[1] 山口直人,田森信行,塩見彰睦,“適応エッジ保存平滑化を用いた
白線検出手法 (画像処理・解析, < 特集 > 画像の認識・理解論文)”,
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-パターン処理
J88-D-II(8), pp.1421-1431, 2005.
[2] 菅沼直樹,魚住剛弘,“レーザレンジファインダを用いた白線検出
および白線曲率推定”,自動車技術会論文集 42(2), 563-568, 2011.
[3] 竹内栄二朗,“移動ロボットの基本機能のモジュール化と環境地図
生成に関する研究”,筑波大学 2007 年度博士論文, 15-32, 2008.
[4] Naohiro Hayashi, Tetsuo Tomizawa, Takashi Suehiro, Shunsuke Kudoh,“ A robust white line detection technique for double circular operator ”, Proc. of the 2012 IEEE Int’l Conf. on
Mechatronics and Automation, pp.1949-1954, Chengdu (Aug.
2012)
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