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茨城県中性子ビームライン 産業利用促進プログラム 平成20年6月 茨 城
茨城県中性子ビーム 茨城県中性子 ビームライン ビーム ライン 産業利用促進プログラム 産業利用促進 プログラム 平成20 平成 20年 20 年 6 月 茨 城 県 - 目 次 - はじめに ....................................................................................................................... 1 (1)J-PARC 計画 ..................................................................................................... 1 (2)サイエンスフロンティア 21 構想 ...................................................................... 2 1.茨城県中性子ビーム実験装置(県 BL)の設置目的 ............................................. 4 2.県 BL の性能と産業応用 ....................................................................................... 6 2.1 中性子ビームの特徴と J-PARC の中性子源について .................................... 6 2.2 茨城県中性子ビーム実験装置 1-材料構造解析装置(iMATERIA)- ............11 2.3 茨城県中性子ビーム実験装置 2-生命物質構造解析装置(iBIX)- .............. 17 3.県 BL に係る組織体制......................................................................................... 21 3.1 総合支援センター機能 ................................................................................. 22 3.2 運営委員会 ................................................................................................... 23 3.3 茨城大学 ...................................................................................................... 23 3.4 県 BL 利用者支援フォーラム(仮称) ........................................................ 23 3.5 県 BL 課題採択委員会(仮称) ................................................................... 23 3.6 県 BL ビームタイム調整会議(仮称) ........................................................ 24 3.7 利用者交流のための協議会・懇談会等 ........................................................ 24 4.利用方法・ユーザー支援..................................................................................... 26 4.1 ユーザー支援の概要..................................................................................... 26 4.2 相談・利用フロー ........................................................................................ 27 4.3 優遇措置 ...................................................................................................... 30 4.4 県 BL の利用枠 ............................................................................................ 31 4.5 県 BL の利用料金......................................................................................... 34 5.産業利用促進の具体的な取組み(ユーザー獲得方策) ...................................... 37 5.1 ユーザー獲得方策の概要 ............................................................................. 37 5.2 中性子利用促進研究会活動の推進 ............................................................... 38 5.3 中性子産業利用早期成果創出プロジェクトの推進 ...................................... 38 5.4 広報・情報発信 ............................................................................................ 39 6.産業利用促進の具体的な取組み(研究を支える環境整備) ............................... 43 6.1 産学官共同研究施設の整備 .......................................................................... 43 6.2 地域環境の整備 ............................................................................................ 43 6.3 国際化への対応 ............................................................................................ 43 6.4 研究者コミュニティの活性化 ...................................................................... 44 7.広域ネットワークの整備..................................................................................... 45 7.1 つくば~東海~日立連携の推進................................................................... 45 7.2 首都圏量子ビーム連携ネットワーク ........................................................... 45 7.3 産業クラスターなどとの連携 ...................................................................... 45 7.4 兵庫県,佐賀県などの量子ビーム施設の立地する自治体との連携 ............. 46 8.人材育成等教育・理解増進活動 .......................................................................... 47 8.1 県民向け理解増進活動 ................................................................................. 47 8.2 理科・科学技術教育への活用 ...................................................................... 47 8.3 中性子利用関連研修の充実 .......................................................................... 47 9.アクションプラン ............................................................................................... 49 9.1 H20~H22 年度 ........................................................................................... 50 9.2 H23~H25 年度 ........................................................................................... 52 9.3 H26~H30 年度 ........................................................................................... 52 9.4 H31 年度~ .................................................................................................. 53 10.参考資料 (1)J-PARC(文部科学省資料より) .................................................................... 55 (2)サイエンスフロンティア 21 構想 .................................................................... 57 (3)茨城県中性子利用促進研究会 .......................................................................... 58 (4)茨城県の中性子利用促進活動 .......................................................................... 61 (5)つくばスパイラル ............................................................................................ 65 (6)中性子産業利用推進協議会 ............................................................................. 66 (7)J-PARC/MLF 利用者懇談会 ......................................................................... 67 (8)県 BL の利用料金の事例 ................................................................................. 68 本プログラムは,茨城県が J-PARC 内に独自に整備を進めている中性子ビーム実験装置 の産業利用を促進するため,運用体制の整備と利用促進の具体的な取組みについて定めた ものである。 はじめに ( 1 ) J- PARC 計画 大強度陽子加速器施設 J-PARC( Japan Proton Accelerator Research Complex )は,世 界最高クラスの大強度陽子ビームを生成する加速器と,そのビームを利用する実験施設で 構成される最先端科学の研究施設であり,日本原子力研究開発機構(JAEA)と高エネル ギー加速器研究機構(KEK)が共同で建設,運営を行っている。 J-PARC は,平成 13 年度(2001 年度)から,JAEA 東海研究開発センター原子力科学 研究所(東海村)の敷地内に建設が進められており,平成 20 年度(2008 年度)中に中性 子 実 験 設 備 の あ る 物 質 ・ 生 命 科 学 実 験 施 設 (MLF Experimental : Material and Life Science Facility)へのビーム供給が開始される予定となっている。 図1 J-PARC の概要 高いエネルギーまで加速された陽子を原子核標的に衝突させると,原子核反応により, 中性子,K 中間子,π 中間子,ミュオン,ニュートリノ,反陽子などの多様な二次粒子が 1 生成される。このうち,中性子を用いた様々な研究を行う施設として,物質・生命科学実 験施設(MLF)が設置され,23 本の 中性子ビームポートに様々な実験装置が設置される。 県では,この物質・生命科学実験施設(MLF)内に,2 本の中性子ビーム実験装置を設置 し,中性子の産業利用を促進することとしている。 図2 物質・生命科学実験施設の鳥瞰図 ( 2 ) サイエンスフロンティア 21 構想 県では,J-PARC の建設を契機に,その周辺地域に総合的原子科学分野の先進的な研究 開発の拠点を形成し,わが国の科学技術を先導する県としての基盤づくりを進めるため, 平成 13 年度に「サイエンスフロンティア(SF)21 構想」を策定した。 SF21 構想の実現に向けて,J-PARC などの世界最先端の研究施設が持つ可能性を最大限 に活用し,国際的な研究開発の支援による「知的フロンティア」,産学官連携による「産業 フロンティア」,地域経済の活性化と国際化を始めとする環境整備による「社会フロンティ ア」の形成が重要との判断から,そのアクションプランとなる「サイエンスフロンティア 21 構想推進基本計画」を平成 14 年度に策定し, ①産業利用・産業波及支援機能の整備 ②総合原子科学の研究や技術を担う人材育成機能の整備 2 ③国内外から訪れる数多くの研究者・技術者の研究や生活を支える環境の整備 を 3 本柱とする方向性を明確に示し,この基本計画に基づき,現在,具体的な施策を展開 している。 ①産業利用・産業波及支援機能の整備 茨城県中性子ビーム実験装置の整備による産業界の中性子利活用機会の増大,中性子 利用促進研究会による研究と産業のインターフェース機能の強化,総合相談機能の整備 などにより,産業界が中性子を利用しやすい環境の構築を進めている。 ②総合原子科学の研究や技術を担う人材育成機能の整備 茨城大学大学院理工学研究科応用粒子線科学専攻,および東京大学大学院工学研究科 原子力専攻(専門職大学院)等の設立に対して,県としても支援を行った。茨城大学,東 京大学ともに,総合原子科学人材の育成を深化させ,多くの優秀な研究者や技術者を輩 出していくことが期待されている。 ③国内外から訪れる数多くの研究者・技術者の研究や生活を支える環境の整備 県では,産学官の共同研究や交流を促進するための施設の整備を進めており,また, 地元自治体でも,外国人向け研究者の滞在や居住のための環境整備に関する検討も進め られている。 図3 SF21 構想の基盤となる茨城県の研究機関・産業集積等の現状 3 1 . 茨城県 茨城 県 中性子ビーム 中性子 ビーム実験装置 ビーム 実験装置( 実験装置 ( 県 BL) BL ) 1 の 設置目的 ○ 大強度陽子加速器(J-PARC)に,本県独自に 2 本の中性子ビーム実験装置を設置 ○ 広く産業界に開放することにより,次のような将来像の実現を目指す ・ 中性子の産業利用による新事業・新産業の創出 ・ J-PARC を核とした一大先端産業地域の形成 ・ 科学技術の振興 J-PARC に設置される中性子実験施設は,世界最高性能を有する核破砕型パルス中性子 を発生させることができ,基礎研究から産業応用まで幅広い分野の研究開発に活用される 予定である。(2008 年供用開始予定) 県では,J-PARC の建設を契機として地域振興を図るサイエンスフロンティア 21 構想に 基づき,J-PARC 内に県独自に 2 本の中性子ビーム実験装置を設置して幅広く産業界に開 放することとしており,これにより中性子の産業利用を強力に推進し,次のような将来像 の実現を目指している。 ( 1 ) 中性子の 中性子 の 産業利用による 産業利用 による新事業 による 新事業・ 新事業 ・ 新産業の 新産業 の 創出 産業界による中性子の利用を拡大することにより,物質科学や生命科学分野における研 究開発の飛躍的な発展に貢献し,新機能・高性能の材料創製や高付加価値型製品の開発, 地域におけるベンチャーの創出,さらには,研究開発に必要となる各種の技術サポートを 担う支援産業の育成が図られる。 ( 2 ) J- PARC を 核 とした一大先端産業地域 とした 一大先端産業地域の 一大先端産業地域 の 形成 本県の東海地区には,研究用原子炉 JRR-3,JRR-4 があり,つくばには国内有数の放射 光施設 PF(Photon Factory)がある。また,つくばには,PF を有する KEK(高エネル ギー加速器研究機構)の他にも,最先端の研究機関や企業の研究所も数多く立地するとと もに,日立地区には,高度なものづくり産業が集積している。 これらの研究機関や企業の集積に加えて,J-PARC の稼働と県 BL の設置により中性子 の産業利用が一層拡大し,産業界を含めた多くの研究者・技術者の集積がより一層進むと ともに,企業の研究所や事業所等の立地も進むことにより,本県に,一大先端産業地域の 形成が図られる。 1 県 BL:県ビームライン 4 ( 3 ) 科学技術の 科学技術 の 振興 本県は,つくば,東海,日立地域に,広範な分野にわたる世界的な研究機関や原子力関 連研究施設,ものづくり産業の集積を擁しており,トップレベルの最先端科学,基礎科学, 産業技術など,他に例をみない知識資源の集積を有している。 この度の J-PARC の稼働に加えて,本県独自に中性子ビーム実験装置を整備することに より,世界に先駆けた中性子の研究成果を早期に創出し,研究者や技術者,企業関係者は もとより,学生や一般市民においても,科学技術に対する理解と共感が深まり,地域が科 学技術を支えていく一体感が醸成されるとともに,将来の科学技術分野を担う人材の育成 にも貢献し,科学技術創造立国を先導するいばらきづくりが推進される。 図4 茨城県 BL/J-PARC が開く茨城県の将来像 5 2 . 県 BL の 性能と 性能 と 産業応用 2.1 中性子ビーム 中性子 ビームの ビーム の 特徴と 特徴 と J- PARC の 中性子 中性 子 源 について ( 1 ) 中性子ビーム 中性子 ビームとは ビーム とは ○ 中性子は,陽子や電子などと同様,物質を構成する粒子の一種 ○ サイズは原子のサイズ(1 億分の 3cm 程度)の更に 10 万分の1程度 ○ 電気的に中性 ○ 減速された中性子はほぼ原子間隔程度の波長の波動性を持つ ○ 物質の構造を原子レベル~ナノレベルで解析可能。 中性子は,陽子や電子とともに,物質を構成する基本粒子の 1 つである。中性子は,原 子の直径(およそ 3Å(オングストローム 2))の更に 10 万分の1というきわめて小さな粒 子であり,電気的には中性である。 中性子や陽子,電子などのあらゆる物質は,波の性質を持っている(物質の波動性)。こ の波動性を活用することで,X 線や電子線と同様,物質の構造を精密に解析することがで きる。 図5 2 原子の構造(KEK) オングストローム:長さの単位。1 億分の 1cm に相当する。 6 ( 2 ) 中性子固有の 中性子固有 の 特徴 ○ 【長 中性子の特性(X 線や電子線との比較) 所】 ①高い透過性 【短 ②軽元素に対する高い感度 ④分子振動に対する高い感度 ⑤同位体・類似元素の識別が可能 ⑥位相コントラスト調整が可能 ⑦微量元素分析が可能 など 所】 ①電子分布把握が一般的には困難 ②一部の実験試料は放射化(含有元素に起因) ③実験装置を設置できる場所が極めて限定的 ○ ③大きな磁気散乱 など 中性子は X 線等と相補的利用より,相乗的効果を期待できる。 中性子は,X 線や電子線とは大きく異なる特性を持っている。 長所としては,以下が挙げられる。 ①高い透過性 中性子は,電気的に中性であり,原子の体積の大部分を占める電子殻とはほとんど相 互作用せず,原子の中心にある極めて小さな原子核により散乱,吸収される。結果とし て,X 線や電子線よりも,物質内部への浸透力が大きくなり,物質の表面付近だけでな く材料の内部の状態を知ることができる。 ②軽元素に対する高い感度 X 線や電子線は電子と相互作用をするため,電子の数が多い重元素に対して高い散乱 能 3を持ち,一方,電子がほとんどない水素やリチウムのような軽元素に対する散乱能は 低い。一方,中性子は散乱能の原子番号依存性がほとんど無いため,水素やリチウムな ど軽い元素を検出しやすい。 ③大きな磁気散乱 中性子は磁気モーメントを持っていることから,物質の磁気特性を原子分子レベルで 知ることが可能となる。 ④分子振動に対する高い感度 中性子計測に使用する熱中性子や,より長い波長を持つ冷中性子の持つエネルギーは 散乱能:散乱のしやすさ。散乱能が大きな元素ほど、同じ入射ビームに対して強い散乱 光を出すことができ、短時間で解析に必要なデータを得ることができる。 3 7 熱振動と同じ程度の大きさであることから,分子振動などを精密に計測・評価すること が可能である。 ⑤同位体・類似元素の識別が可能 中性子を用いれば同位体の識別が可能となる。原子には,原子番号が同じ(すなわち 化学的性質がほとんど同じ)で重さの異なる“同位体”が存在するが,この同位体の持つ 電子の数は変わらないことから,X 線や電子線ではこの同位体を識別することができな い。一方,中性子は原子核により散乱されるが,この原子核の特性は同位体により大き く異なることが多い。なお,同位体の識別のみならず,鉄とニッケルのように原子番号 の近い元素を電子線や X 線で識別することは通常困難であるが,中性子では簡単に区別 することができる場合が多い。 ⑥位相コントラスト調整が可能 水素と重水素の混合比を変えることで,あたかも水素も重水素も存在しないような状 態を実現することができる(水素と重水素では散乱因子の符号が逆となっているため)。 この方法をコントラストマッチングといい,水溶液中に存在する有機分子などを詳細に 解析するとき,特定の分子からの散乱だけを強調することが可能となる。 ⑦ 微量元素分析が可能 中性子の照射により,構成元素は放射化し,短時間で元に戻る。この安定化過程で発 生する元素固有のガンマ線を計測することにより,簡便に試料全体の高感度分析が可能 となる。 短所としては,以下が挙げられる。 ①電子分布が見えない 電子分布は,化学反応や結合状態に直接関係するが,中性子は電子によってはほとん ど散乱されないため,電子分布に関する情報を得ることは困難である(ただし、電子分 布の偏りに起因して磁気モーメントが発生する場合は、磁気散乱を通して電子分布を求 めることができる)。 ②実験試料の放射化 元素によっては中性子の長時間照射で放射化する場合がある。コバルトを含む材料な どでは中性子実験後に,試料を施設外に持ち出せるようになるまで時間を要する場合が ある。 8 ③ビーム源が大規模 中性子ビーム源としては,一般に原子炉や大型加速器が必要となり,設置できる機関 が極端に制限される。このため,X 線のように,大学の実験室で基本的操作や解析技術 を学習する,といったことができない。 ( 3 ) J - PARC の 中性子源 ○ J-PARC の中性子発生方法は“核破砕”型 ○ 大量の陽子を水銀に照射し“パルス”中性子を発生 ○ ピーク強度は JRR-3 の(原子炉中性子)の約 100 倍 茨城県の中性子実験装置は物質・生命科学実験施設(MLF)内に設置され,MLF の中 性子源から中性子の供給を受けるが,この J-PARC の中性子は“核破砕 4”という方法で発生 する。 これは,毎秒 25 回,光速の 97%に加速した大量の陽子を水銀に照射し“パルス”中性子 を発生させるというもので,ピーク強度は JRR-3 の(原子炉中性子)の 100 倍以上にも なる。 発生した中性子を熱振動とおなじエネルギーレベルまで減速した後,茨城県中性子実験 装置まで導く。 図6 4 核破砕による中性子発生の模式図 核破砕:原子核を破壊することにより、中性子を発生させる方法。 9 この核破砕型実験施設としては,米国(SNS)と欧州(ISIS)にも類似のものがあり, 日本(J-PARC)は主要3極の1極を担うことになる。 図7 世界の中性子ビーム源 (アンダーラインは 2007 年時点で建設中・構想中のもの) 10 2.2 茨城県中性子 茨城県 中性子ビーム 中性子 ビーム実験装置 ビーム 実験装置 1 - 材料構造解析装置(iMATERIA) 材料構造解析装置 (iMATERIA)- (iMATERIA) - ( 1 ) 概要 ○ 材料構造解析装置(iMATERIA)は,多様な材料の構造を解析できる多目的中性子回 折装置 ○ 高分解能散乱検出器,特殊環境測定用検出器,低角散乱検出器,小角散乱検出器 を有し粉末構造解析,液体・アモルファス構造解析,材料組織解析,ナノ構造解 析(小角散乱)を 1 つの装置で実現 ○ 残留応力解析,磁気構造解析なども対応可能 ○ X 線に比して 1/10~1/5 の時間で集合組織の測定が可能 図8 茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)のイメージ図 茨城県が設置する材料構造解析装置(iMATERIA)は,多様な材料の構造を解析できる多 目的中性子回折装置である。 この実験装置は,物質・生命科学実験施設(MLF)のビームラインポート 20 番(BL20) に設置される。この装置は主にビームライン部と実験装置本体から構成され,中性子源か ら試料までの距離が 26.5m におよび,中性子の試料への到達時間の差を利用することで, 効率的に散乱データを取得することができる。 材料構造解析装置(iMATERIA)は,図 8 に示すように,高分解能散乱検出器,特殊環 11 境測定用検出器,低角散乱検出器,小角散乱検出器の 4 つの検出器バンクを有する。これ らの 4 つの検出器バンクを利用することで,1 つの装置でありながら,粉末構造解析,材 料組織解析,液体・アモルファス構造解析,ナノ構造解析(小角散乱),集合組織解析など に必要なデータを測定することができる。 また,入射中性子に対して 90 度位置に設置された特殊環境測定用検出器を用いること で,高圧セル内に封入した物質の構造変化などを,高い S/N 比 5で測定することができる。 集合組織解析については,X 線に比して 1/10~1/5 の短時間で測定可能である。なお, 将来的には,残留応力解析,磁気構造解析なども可能となるよう,拡張性を考慮した設計 となっている。 ( 2 ) 主要機能・ 主要機能 ・ 性能 ○ 高速な試料測定が可能(5~10 分程度/試料) ○ 0.09Å~800Å範囲の構造情報の取得が可能 ○ 特殊環境下(加熱,ひずみ/応力負荷応答,充放電など)での実験が可能 材料構造解析装置(iMATERIA)は,多様な試料に対し,高速(5~10分程度/試料)で 計測をできる世界最先端の中性子実験装置である。試料量も通常の実験室向けX線粉末構造 解析装置と同じ程度(数100mgの試料量)で測定が可能となる。 様々な計測ニーズに対応するため,材料構造解析装置(iMATERIA)は,3つの測定モー ドを有している。 ①通常モード 中性子パルスの発生周期は25Hzであり,通常はT0 チョッパーおよび波長制限チョッパ ーの回転数も25Hzとしている.この場合,背面検出器バンクで0.18 < d(Å) < 2.5の範囲 が測定可能で,このときの平均分解能は∆d /d=0.16% 6となる.さらに,分解能が変化しな がら2.5 < d(Å) < 400の範囲が測定可能である。 ②High-Qモード(予定) T0 チョッパーの回転数を50Hzに増加させることにより,背面バンクにおいて非常に微 細な領域( d min=0.09Å: Qmax < 70Å -1)の領域の測定が可能になる。このモードは結晶質 試料や液体・アモルファス試料の局所構造解析(PDF解析)を行うために,非常に効果的で ある。 5 6 S/N 比:シグナル/ノイズ比。 △ d / d:格子定数の計測誤差。 12 ③Wide-dモード ナノスケールの領域を測定するためには,波長制限チョッパーの回転数を12.5Hzに減 少させる(Wide- d モード)ことが可能である。このとき,0.18 < d(Å) < 5.0の範囲が ∆d /d=0.16%の分解能で測定可能で,0.18 < d(Å) < 800の範囲がカバーされる。このモー ドは単位格子の大きな物質の測定や磁気構造解析,ナノ構造解析に有効である。 この他,加熱や冷却,ひずみ応力負荷応答,充放電特性といった“動的”な計測に必要な 試料環境装置を追加整備していく予定である。また,実験データから材料構造を知るため の専用リートベルト解析ソフトウェアを整備し,操作法の指導などにより,初心者でも一 定の解析ができるように支援する体制も整備する。 13 ( 3 ) 期待される 期待 される産業応用分野 される 産業応用分野 ○ 材料構造解析装置(iMATERIA)で期待される産業応用分野 ・環境・エネルギー関連材料(電池,触媒など) ・新機能材料(フォトニクス材料,希土類代替材料,スピントロニクス材料など) ・構造材料(マグネシウム合金,耐熱合金,セメントなど) ・医薬品,高分子,プラスチック,化粧品,生体関連材料 など 材料構造解析装置(iMATERIA)単独でも興味深いデータを得ることができるが,X 線 や電子線などを用いた実験データと iMATERIA で得ることのできるデータを総合するこ とにより,様々な材料系について,構造と機能との関係がより詳細に明らかになり,高付 加価値製品の製造や不具合解明などを通じて産業界の競争力強化に資すると期待される。 例えば,環境・エネルギー関連材料(電池,触媒など),新機能材料(フォトニクス材料, 希土類代替材料,スピントロニクス材料など),構造材料(マグネシウム合金,耐熱合金, セメントなど),医薬品,高分子,プラスチック,化粧品,生体関連材料,などへの応用が 期待される。 図 9 に,材料構造解析装置(iMATERIA)の利用分野例を,また,表 1 に,想定される 主要産業応用例を示す。 14 図9 茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)の産業利用イメージ 15 表1 茨城県材料構造解析装置(iMATERIA)の主要産業応用例 16 2.3 茨城県中性子ビーム 茨城県中性子 ビーム実験装置 ビーム 実験装置 2 - 生命物質構造解析装置( 生命物質構造解析装置 ( iBIX)- iBIX )- ( 1 ) 概要 ○ 生命物質構造解析装置(iBIX)は,タンパク質などの単結晶や繊維状高分子の構造 を精密に計測できる装置 ○ 高感度の検出器を放射状に配置して測定効率を向上 ○ 特殊環境下(低温ガスの噴きつけなど)での実験が可能 生命物質構造解析装置(iBIX)は,タンパク質を始めとした単結晶の構造を精密に計測 するための単結晶構造解析装置である。生命構造解析装置(iBIX)は物質・生命科学実験 施設(MLF)のビームポート 3(BL03)に設置される。主にガイド管と実験装置本体か ら構成され装置全体で約 40m あり,試料により散乱された中性子は,周囲に放射状に設置 された高感度検出器により計測される。このデータから,専用の解析ソフトを用いること で,タンパク質や有機分子結晶などの巨大分子の結晶構造を正確に求めることができる。 試料を固定し,中性子ビームと軸合わせするために,中心部付近には 3 軸のゴニオメー ターが設置されている。また,上部にポートを設けているため,試料結晶を低温下で測定 するための He や N 2 ガスの噴きつけ装置などを設置することが可能である。 図10 茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)のイメージ 17 ( 2 ) 主要機能・ 主要機能 ・ 性能 ○ 従来装置(BIX-3,BIX-4)に比べ,100 倍以上の測定効率(フルパワー時) ○ 1 試料(タンパク質)あたり 2 日で計測(単結晶サイズ1mm 3 a=60Å,分解能 2Å) ○ 試料中の水の位置情報を原子レベルで把握 生命物質構造解析装置(iBIX)は,世界的にも高品質(高分解能)のデータを出してき た既存の高性能中性子回折計BIX-3やBIX-4 7(JAEA JRR-3)に比べて100倍以上の測定効 率(J-PARC 1MWフルパワー時)を持つ超高性能装置である。 タンパク質のような巨大分子の場合,構造解析の精度(分解能),分子量,試料(結晶) サイズの間には密接な関係がある。一般に,分子量が大きいほど,結晶サイズが小さいほど, また,高分解能なほど,計測時間が延びる。iBIXの場合,単結晶サイズが1mm3 の場合,1 試料あたり2日で計測可能(a=60Å,分解能2Å)である。 なお,中性子は水素に対する感度が極めて高いこと,原子核散乱であり理想的な質点散乱 とみなされることなどにより,分解能2.5Åで水素の位置の特定は可能である。2Åを切れば 水分子の乱れや水素/重水素置換の状態も知ることができる。 ( 3 ) 期待される 期待 される産業応用分野 される 産業応用分野 ○ 生命物質構造解析装置(iBIX)で期待される産業応用分野 ・医薬(創薬) ・高機能食品や農産物の開発 ・有機・無機機能デバイス用材料,無機機能デバイス用材料 ・化学反応機構詳細解明 など 生命物質構造解析装置(iBIX)を用いることで,タンパク質や核酸を始めとする生体高 分子や有機・無機化合物の単結晶,および,繊維状高分子の分子内部や周囲の水素や方向 も含めた水の位置情報を原子レベルの分解能で知ることができる。この情報と,X 線構造 解析や,中性子非弾性散乱(J-PARC に装置設置予定)などを組み合わせることで,医薬 (創薬),高機能食品や農産物の開発,有機機能デバイス用材料,無機機能デバイス用材料, 化学反応機構詳細解明などへの産業応用が可能になると期待される。 図 11 に生命物質構造解析装置(iBIX)の利用分野例を,また,表 2 に,想定される主要産 業応用例を示す。 7 BIX-3,BIX-4:原子力機構(JAEA)の研究用原子炉に設置されている中性子実験装置。 18 図 11 茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)の産業利用イメージ 19 表2 茨城県生命物質構造解析装置(iBIX)の利用が期待される産業応用分野例 20 3 . 県 BL に 係 る 組織体制 ○ 茨城県中性子ビーム実験装置の運営体制 本 庁・・・全体統括 東海駐在・・・総合支援センター機能 ワンストップ利用窓口の設置 プロジェクトディレクター,産業利用促進コーディネーター等の配置 ○ 各種委員会等の設置 運営委員会, 県 BL 利用者支援フォーラム(仮称),県 BL 課題採択委員会(仮称) 県 BL ビームタイム調整会議(仮称) ○ など 運転維持管理業務・・・茨城大学フロンティア応用原子科学研究センターが実施 茨城県BL 茨城県BLの BLの運営体制図( 運営体制図(案) 県BL運営 運営に 運営に 係る主要事項 の検討依頼 利用促進に 利用促進に際しての協力 しての協力 茨 城 県 J-PARC 本庁( 本庁(全体統括) 全体統括) BL設置契約 設置契約、 設置契約、 利用契約 運営委員会 指導・ 指導・助言 東海駐在 県BL利用 BL利用の 利用の総合支援センター 総合支援センター機能 センター機能 (ワンストップ利用窓口 ワンストップ利用窓口、 利用窓口、利用促進・ 利用促進・支援) 支援) プロジェクトディレクター 産業利用促進コーディネーター 産業利用促進コーディネーター 運転維持管理 業務委託 茨城県BL 運転 維持管理 指導・ 指導・助言 県 BL課題採択 課題採択 県BLビームタイム ビームタイム 委員会( 委員会(仮称) 仮称) 調整会議( 調整会議(仮称) 仮称) 必要に 必要に応じ て協力依頼 県BL利用者支援 利用者支援フォーラム 利用者支援フォーラム( フォーラム(仮称) 仮称) 協力 ・筑波大学 ・日本原子力研究開発機構 日本原子力研究開発機構 ・産業技術総合研究所 ・高 エネルギー加速器 エネルギー加速器 研究機構 ・物質・ 物質・材料研究機構 ・宇宙航空研究開発機構 茨城大学 ・農業・ 農業・生物系特定 産業技術研究機構 フロンティア応用原子科学研究センター ・国立環境研究所 利用申請 利用承諾 技術相談 技術相談 指導・ 指導・助言 共同研究 ・茨城大学 ・東京大学物性研究所 ・東北大学金属材料研究所 ・ ・ ・ 協力 日本原子力研究開発機構 日本原子力研究開発機構 高エネルギー加速器研究機構 エネルギー加速器研究機構 産業界ユーザー 産業界ユーザー 利用 中性子産業利用推進協議会 パワーユーザー( パワーユーザー(大企業) 大企業)等 図 12 茨城県 BL の運営体制案 21 県内中小企業中性子利用連絡協議会 3.1 総合支援センター 総合支援 センター機能 センター 機能 プロジェクトディレクターおよび産業利用促進コーディネータ等のもと,産業界ユーザ ーのためのワンストップ利用窓口業務や利用促進・支援を行う。 ( 1 ) プロジェクトディレクター 県 BL の運営及び中性子の産業利用促進に係る業務を統括する。 【主要業務】 ・県 BL の運営業務の統括 ・中性子の産業利用促進業務の統括 ・県プロジェクト研究の推進と統括 ・J-PARC への意見具申と提案,ならびに,茨城大学の指導・監督 ・県内企業の中性子の産業利用促進策の推進と統括 ・国内外への情報発信 ( 2 ) 産業利用促進コーディネータ 産業利用促進 コーディネータ 産業界ユーザーからの具体的な技術相談を受け,専門的観点からの指導,助言を行う等, 特に中性子の利用経験がない県内企業ユーザーに対して,充実した支援を行う。材料構造 解析装置および生命物質構造解析装置に各々1 名のコーディネータを配置する。なお,コ ーディネータ自身の専門性と異なる場合には,県 BL 利用者支援フォーラム(仮称)から の協力を得つつ,ユーザーに対して支援を行う。 【主要業務】 ・企業ユーザーからの技術相談に対する専門的知見からの指導と助言 ・ユーザーの測定・解析支援を担う茨城大学等との連携 ・県 BL 利用者支援フォーラム(仮称)との連携 ・J-PARC のコーディネータとの連携・協力 ・県プロジェクト研究の推進 ・県中性子利用促進研究会の指導・助言 ・国際的な情報発信 ( 3 ) 利用窓口 産業界ユーザーからの利用申請を受け,利用承諾や利用契約等に係る事務を行う。 【主要業務】 ・利用申請窓口業務 ・利用契約締結業務 ・ユーザーが行う各種事務手続に対する支援業務 22 3.2 運営委員会 運営委員会は,茨城県の BL の運営方針や運営計画,利用促進策などに係る諮問機関で ある。外部有識者により構成し,県からの依頼を受け,産業界ユーザーが利用しやすい運 営システムや利用促進の観点等から県 BL の運営に関する主要事項について専門的な指 導・助言を行う。 【県 BL の運営に関する主要事項】 ・県 BL の運営方針 ・県 BL の運営計画 ・県 BL の利用促進策 ・県 BL の運営実績の評価 3.3 等 茨城大学 茨城大学は平成 20 年 4 月に「フロンティア応用原子科学研究センター」を開設する。 同センターでは BL 開発研究部門を設置し,県 BL の調整運転や運転管理・維持管理を行 うとともに,産業界ユーザーに対する県 BL 利用の現場支援や BL の高度化研究を行う。 【主要業務】 ・県 BL の調整運転 ・ユーザーに対する支援(測定支援,解析支援等) ・県 BL の運転管理・維持管理 3.4 県 BL 利用者支援フォーラム 利用者支援 フォーラム( フォーラム ( 仮称) 仮称 ) コーディネータからの依頼を受け,コーディネータの下,ユーザーに対して,専門的知 見からの高度な指導,助言を行う。このフォーラムの構成員は,研究機関に所属する研究 者およびその OB,ならびに企業の OB を予定している。なお,研究機関としては,東京 大学,筑波大学,物質・材料研究機構,産業技術総合研究所等の大学や公的研究機関を想 定している。 【主要業務】 ・企業ユーザーからの技術相談に対する専門的知見からの高度な指導と助言 3.5 県 BL 課題採択委員会( 課題採択委員会 ( 仮称) 仮称 ) プロジェクトディレクター,コーディネータ,および外部有識者から構成される県 BL 課題採択委員会(仮称)を設置し,産業利用公募枠等の課題採択を行う。 23 3.6 県 BL ビームタイム調整会議 ビームタイム 調整会議( 調整会議 ( 仮称) 仮称 ) 茨城県のもと,プロジェクトディレクター,コーディネータ,県 BL の現場責任者等か ら構成される県 BL ビームタイム調整会議(仮称)を設置し,採択された課題についてビ ームタイムの割り当てを行う。 3.7 利用者交流のための 利用者交流 のための協議会 のための 協議会・ 協議会 ・ 懇談会等 県では,中性子の利活用に関する産業界等の交互交流や共同研究の場として設置される 協議会・懇談会と連携し,これらの活動を支援することにより,利用者のニーズに対応し た運営体制づくりと産業利用の促進を図っていく。 ( 1 ) 中性子産業利用推進協議会 【組織の概要】 J-PARC の世界最先端の装置を企業が活用し,我が国企業の技術開発力をより高度な ものにするため,産業界が結集して J-PARC の利用を推進するとともに,産業界が利用 しやすい仕組みや充実した施設の整備について,国や施設へ提言し要望していく産業界 組織である(平成 20 年 5 月発足)。 【構成員】 趣旨に賛同する企業(会費制)。 【活動内容】 ・特定テーマに関する産学官共同研究等。 ・産業応用に関する講演会,分析技術等の講習会,施設見学。 ・産業応用動向調査研究,研究成果配信,県・J-PARC・JAEA との連携。 ( 2 ) 県内中小企業中性子利用連絡協議会 【組織の概要】 県内企業の中から中性子のユーザーを発掘し確保していくには,親切丁寧に手厚く指 導していくことが必要である。 J-PARC の最新情報の提供や,有識者と企業との意見交換等による産学官共同研究の テーマの探索など,中性子の産業利用の有効性を啓発するとともに,J-PARC に関する 実験周辺装置の開発検討・指導などにより,地域に実験支援産業の育成を支援するため の連絡協議会である。 【構成員】 ・J-PARC・県 BL の利用に興味を持つ県内企業。 24 ・県内企業を支援する公的研究機関ならびに大学等の有識者。 【活動内容】 ・J-PARC 活用に関する情報提供。 ・産学官共同研究の立ち上げにかかわる情報交換。 ・周辺機器等開発にかかわる情報交換。 ( 3 ) J- PARC/ PARC/MLF MLF 利用者懇談会 【組織の概要】 J-PARC/MLF 利用者懇談会は,J-PARC や物質・生命科学実験施設(MLF)のユーザ ー及び異分野の研究者や技術者の総意を形成することにより,より良い利用を推進する ことを目的とした利用者団体である(平成 19 年 9 月 7 日設立)。 【構成員】 ・一般会員:J-PARC/MLF を利用する外部研究者および J-PARC 内部スタッフ。 ・学生会員:J-PARC/MLF を利用する学生。 ・協賛会員:J-PARC における中性子・ミュオン科学の推進に賛意を持つ民間の企業や 団体。 【活動内容】 ・会員相互の情報交流,施設利用・将来計画におけるユーザーの総意(要望・見解・立 案等)の取りまとめおよび J-PARC センターならびに関連諸機関への提言。 ・物質・生命科学実験施設(MLF)のユーザーへの情報提供,および研究者・組織との 交流・協力。 ・J-PARC 各種委員会への中性子・ミュオン科学分野委員の推薦。 ・MLF シンポジウム等,学術的会合の開催,関係諸団体,諸機関,他の学協会との交流・ 協力。 25 4 . 利用方法・ 利用方法 ・ ユーザー支援 ユーザー 支援 4.1 ユーザー支援 ユーザー 支援の 支援 の 概要 ○ コーディネータによる技術相談,指導・助言 ○ 県 BL 利用者支援フォーラム(仮称)や茨城大学による協力体制 ○ データ測定,データ処理,標準的データ解析の支援 ○ データ析評価(解釈)における特別支援 中性子の利用経験が少ないユーザーであっても安心して利用できるように,以下のよう な充実したユーザー支援を行う。 ( 1 ) 技術相談 技術 相談 ユーザーからの申請課題について,コーディネータが,専門的知見から,県 BL を利用 する課題として適切であるか否かについて判断し,指導と助言を行う。 ( 2 ) 具体的な 具体的 な 技術相談 技術 相談 コーディネータが,必要に応じて県 BL 利用者支援フォーラム(仮称)の協力を得なが ら,具体的な技術内容について専門的知見からの指導・助言を行う。 また,コーディネータが,茨城大学と連携し,具体的な測定方法等(測定時期,測定時 間,試料の数量,実験方法等)について調整する。 ( 3 ) データ測定 データ 測定 茨城大学が,BL 現場において,測定準備からデータ測定,測定後の片付けに至るまで の一連の支援を行う。 ( 4 ) データ処理 データ 処理 茨城大学が,測定データの処理方法の説明を行うとともに,必要に応じてデータ処理を 支援する。 ( 5 ) 標準的データ 標準的 データ解析 データ 解析 茨城大学が,標準的な解析ソフトウェアの操作方法の説明を行うとともに,必要に応じ てデータ解析を支援する。 ( 6 ) 解析評価( 解析評価 ( 解釈) 解釈 ) ユーザーからの要望があれば,県内企業を優先として,コーディネータのもと,主とし て茨城大学及び県 BL 利用者支援フォーラム(仮称)のメンバーが,解析結果の評価(解 釈)の支援を行う。 26 なお,利用促進の観点から当面は無償で支援を行うが,将来的には有料化することを想 定している。 4.2 ○ 相談・ 相談 ・ 利用フロー 利用 フロー 相談フロー ユーザー → ○ → ユーザーズオフィス窓口 装置確定(県 BL またはその他の装置) → → コーディネータによる相談 実験課題申請(県 BL の場合) 利用フロー 課題申請 → 採択(県 BL 課題採択委員会) ム割当(県 BL ビームタイム調整会議)→ → 実験実施 利用契約 → → ビームタイ 報告書提出 ユーザーが中性子を利用したいと考えて県へ連絡した時点から,実際に県 BL を利用し 報告書の提出を行うまでの全体の流れを,(1)相談フローと(2)利用フローに分けて以下に示 す。 ( 1 ) 相談フロー 相談 フロー ユーザーが県へ連絡した時点から,利用窓口(県)へ利用申請を行うまでの流れは以下 の通り。 ・ユーザーは県中性子ビーム実験装置(県 BL)の利用を考えた際には,県ユーザーズ オフィスにコンタクト(電話,メール,来所等)する。オフィスは,直ちにコーディ ネータに連絡を行う。 ・コーディネータは,ユーザーからの技術相談を受け,専門的知見から,県 BL を利用 する案件であるか否かについて指導・助言を行う。 ・コーディネータが県 BL の利用案件であると判断した場合には,必要に応じて県 BL 利用者支援フォーラム(仮称)の協力を得ながら,具体的な技術内容について指導, 助言を行う。なお,県 BL の利用案件ではない場合には,J-PARC の他 BL や放射光 施設等への利用相談を行うことを助言する。 ・利用相談後,ユーザーが県 BL の利用を決定した場合には,コーディネータは課題申 請書の記載方法について助言し,ユーザーは利用申請書を利用窓口(県)へ提出する。 27 ユーザー 技術 相談 コーディネーター 指導 ・ 助言 J-PARC, , 放 射光 ・ その他施設 その 他施設 ユーザー 具体的な 技術 相談 連携 J-PARCの の コーディネーター コーディネーター 指導 ・ 助言 必要 に 応 じて協力 じて 協力 県 BL利用 利用 者 支援 フォーラム( フォーラム ( 仮称 ) ユーザー 課題申請 利用窓口 ( 県 ) 図 13 相談フロー(案) ( 2 ) 利用フロー 利用 フロー 利用申請から県 BL の利用,報告にいたるまでの流れは以下の通り。 ・J-PARC がユーザーから提出された課題申請書について課題審査および安全審査を行 い,その後,県 BL 課題採択委員会(仮称)が採択の可否を決定する。 ・利用窓口(県)がユーザーへ利用の可否を通知し,利用可の場合にはユーザーと県と の間で利用契約を締結する。 ・県 BL ビームタイム調整会議(仮称)がビームタイムの割り当てを行い,利用窓口(県) がユーザーへ利用日時を通知する。 ・ユーザーは,県 BL の運転維持管理を担っている茨城大学から,測定や解析等の支援 を受け,県 BL を利用する。 ・ユーザーは,県 BL の利用終了後,利用窓口(県)へ所定の報告書を提出する。 28 ユーザー 課題 申請 利用窓口 ( 県 ) J-PARCによる による 課題審査 , 安 全審査 審査結果 県 BL課題 課題 採択委 員会 ( 仮称 ) による課題採択 による 課題採択 利用承認 利用契約 の 締結 県 BLビームタイム ビームタイム調 ビームタイム 調 整会議 ( 仮称 ) によるビームタイム による ビームタイムの ビームタイム の 割 り 当 て ユーザー 測定 支援 , 解 析支援 茨城大学 県 BLの の 利用 報告書提 出 利用窓口 ( 県 ) 図 14 利用フロー(案) 29 4.3 ○ 優遇措置 県内企業に対する特別優遇措置 ①負担金の軽減 ○ ②県 BL の優先的利用 ③充実した利用支援,技術支援 利用促進策(負担金の優遇措置) ①県内企業(半額) ②試験的運転時(無料) ③利用促進期間(半額) ④茨城県版トライアルユース(無料) ( 1 ) 県内企業に 県内企業 に 対 する特別 する 特別優遇措置 特別 優遇措置 優遇措置の内容 ①負担金の減額(50%割引) 1 万円/時間(県外企業:2 万円/時間)。 ②県 BL の優先的利用 優先的に,ビームタイムを配分。 ③充実した利用支援・技術支援 中性子の利用経験が全くない企業においても,安心して利用できる支援の実施。 ( 2 ) 利用促進策 中性子の産業利用は未だに萌芽的であることから,負担金を減額することによって,よ り多くのユーザーに県 BL を利用してもらい中性子利用の有用性を実感してもらうために, 以下のような利用促進策を講じる。 ①県内企業に対する負担金の優遇措置 負担金は半額(再掲)。 ②試験的運転時の負担金の優遇措置 負担金は無料(平成 20 年 12 月~平成 21 年○月(本格的運転開始時))。 ③利用促進期間の負担金の優遇措置 負担金は半額(平成 21,22 年度の 2 年間)。 ※平成 23 年度も対象期間とするかは,利用実績を踏まえて検討。 ④茨城県版トライアルユース(仮称)時の負担金の優遇措置 負担金は無料(平成 21~22 年度の 2 年間) ※平成 23 年度も対象期間とするかは,利用実績を踏まえて検討。 30 4.4 県 BL の 利用枠 ○ 県 BL の利用枠 ○ ①β枠 (県枠 :県の裁量で利用するビームタイム) ②100-β枠 (J-PARC 枠:J-PARC 側が主体的に運営するビームタイム) β枠(県枠)の利用形態 ①産業利用公募枠(定期受付枠および随時受付枠) ②県プロジェクト枠 ③緊急利用枠 県 BL は様々な形態で利用することが可能である。具体的には,①産業利用公募枠(定 期受付枠および随時受付枠),②県プロジェクト枠,③緊急利用枠の 3 つの利用形態があ る。また,この他にも,J-PARC 枠として,J-PARC が主体となり課題公募を行う枠があ る。 ( 1 ) ビームタイムの ビームタイム の 利用枠 県 BL のビームタイムは,全ビームタイムのうち一定割合(β%)は県の裁量で利用で きるが,残りのビームタイム((100-β)%)は J-PARC に供することになっている。β の 値は,実験装置ごとに,J-PARC 実験装置計画検討委員会で審議されるが,県 BL では, 現状で 80%を想定している。 県 BL の β 枠は,産業利用公募枠,県プロジェクト枠,緊急利用枠に大別する。このう ち,ユーザーが利用できる枠は産業利用公募枠および緊急利用枠であり,県プロジェクト 枠は県が中性子の産業利用を促進する目的で利用する枠である。 β枠 県選定産業利用 枠 産業利用公募枠 常時受付枠 定期受付枠 県プロジェクト枠 県主導プロジェクト枠 産業利用促進枠 緊急利用枠 100-β枠 J-PARC 枠(一般共同利 用) 図 15 県 BL の利用枠(案) 31 ①産業利用公募枠 ・定期受付枠:数ヶ月以上先の利用希望に対応するための利用枠であり,上期及び下期 の年 2 回公募を実施。 ・随時受付枠:直近の利用希望に対応するための利用枠であり,利用を希望するサイク ル開始日の約 1 ヶ月前が申請締切りの予定。 ②県プロジェクト枠 ・県主導プロジェクト枠:県が主導する産学官の共同研究プロジェクト枠。 ・産業利用促進枠:県 BL のユーザー確保にむけて,中性子利用の有用性を産業界にア ピールするための利用枠。 ③緊急利用枠 ・随時受付枠よりもさらに緊急度を要する課題に対して適用される枠。 ※ J-PARC 枠(100-β 枠): J-PARC が主体となり,課題公募を実施 32 ( 2 ) 年間の 年間 の 県 BL の ビームタイムと ビームタイム と 利用枠 平成 20 年度の試験的運転時及び平成 21 年度以降の本格的運転時について,年間のビー ムタイムと利用枠を以下に示す。 県枠(β枠) 80% 試験的運転時 (H20.12~) 本格的運転時 (H21.○~ ) 70% 10% 県選定産業利用 枠 メンテナンス 産業利用公募枠 (定期受付枠) 産業利用公募枠 (随時受付枠) 県プロジェクト枠 BL総合調整運転 産業利用公募枠 (定期受付枠) 30% 図 16 J-PARC枠(100-β枠) 20% 県プロジェクト枠 50% 緊急 メンテナンス 利用枠 15% 5% 年間の県 BL のビームタイムと利用枠(想定案) ①平成 20 年度(試験的運転)の利用計画 県 BL は平成 20 年 12 月以降に供用開始予定であり,平成 20 年度の稼働日数は 40 日 程度を予定している。 平成 20 年度には BL 総合調整運転を行う必要があることから,課題が採択されても測 定ができないリスクがあることを公知の上で,産業利用公募(定期受付枠)を行うこと としている。また,県プロジェクト研究を実施し,中性子利用の有用性をアピールする ことにより,本格的運転時のユーザー確保につなげていく予定である。これらの利用枠 の配分は以下を想定している。 【利用枠の配分(想定)】 ・BL 総合調整運転 :約 50%(計 20 日)。 ・産業利用公募枠(定期受付枠):約 25%(計 10 日)。 ・県プロジェクト枠 :約 25%(計 10 日)。 ※平成 20 年度は,J-PARC 枠(100-β 枠)は設定されない予定 33 ②平成 21 年度以降(本格的運転)の利用計画 試験的運転終了後,平成 21 年○月から,本格的運転に移行する。本格的運転開始後は, β 枠からメインテナンスに要する日数を減じた県選定産業利用枠(全ビームタイムの 70%を想定)のうち,80%を産業利用公募枠(定期受付枠,随時受付枠)に設定し,中 性子の産業利用を積極的に促進していく。また,県プロジェクト枠は 15%,緊急利用枠 は 5%とする予定である。 また,県 BL の年間稼働日数は平成 21 年度では 120 日程度と想定されているが,そ の後経年的に増加し,定常運転時 * には 200 日程度になる予定である。 なお,定常運転時には年間の J-PARC(県 BL)のビームタイムは,夏季および冬季の 長期停止期間を除いた合計 10 サイクルにより構成され,1 サイクルは 3 週間運転(1 日 24 時間運転)でサイクルとサイクルの間に 1 週間の停止期間が入る予定である。 ※定常運転時 出力が定常的に 1MW のフルパワーを維持する状態での運転(平成 25 年度頃~を予定) 4.5 ○ 県 BL の 利用料金 県 BL の利用料金(負担金) ユーザーのために要する経費(支援スタッフ等)について相応の負担金を徴収 ○ ○ β枠(県枠)の利用負担金(①+②) ① 県への支払い ・・一律 2 万円/時間(成果公開,成果非公開とも) ② J-PARC への支払い・・無料(成果公開),J-PARC 規定料金(成果非公開) 100-β枠(J-PARC 枠)の利用負担金 ② 県への支払い ・・なし(成果公開,成果非公開とも) ③ J-PARC への支払い・・無料(成果公開),J-PARC 規定料金(成果非公開) 県は,β 枠を利用する全てのユーザーから負担金を徴収することとしている。ただし, 成果非公開の利用の場合には,ユーザーは,県の負担金に加え,J-PARC に対して利用料 金(B)を支払う必要がある。 一方,ユーザーが J-PARC 枠(100-β 枠)を利用する場合には,県へ負担金を支払う必 要は無く,J-PARC の利用料金体系が適用される。 34 J-PARC へ の 支払い 利用料金 利用料金( (円/日) (A-2) 茨城県への 支払い (負担金) [BL 部 分 ] J-PARCへの 支払い (A-1) J-PARCへの 支払い [ビ ー ム 発生部分] (B) 茨城県への 支払い (負担金) ? 100- β -β枠 茨城県BL BL 茨城県BL 100-枠 100 茨城県 茨城県 BL 枠 J - PARC J -100- PARC 茨 城県 茨 城県 枠 (成果公開) ) (成果非公開) 成果公開) (成果非公開) 成果非公開) (成果公開) 成果公開 成果非公開) ( 成果公 開 ) ( 成果非 公開 ) ( 成果公 開 ) ( 成果非 公開 ) 図 17 J-PARC における利用料金(イメージ) ( 1 ) 負担金徴収の 負担金徴収 の 考 え 方 ①基本的な考え方 県 BL の純粋な維持管理に係わる経費(機器保守費,人件費,等)は県費を充当する ため,支援スタッフ等のユーザーのために要する経費について相応の負担金をユーザー から徴収する。 ②ユーザー支援範囲 本負担金に基づくユーザー支援は,以下に示すユーザー支援の流れのうち,a.~e.の 範囲を対象としている。ただし,4.1に示したように,解析評価(解釈)については, 利用促進の観点から当面は無償で支援を行う予定である。 【ユーザー支援の流れ】 a.技術相談 b.具体的な技術相談 c.データ測定 d.データ処理 e.標準的データ解析 f.解析評価(解釈) ( 2 ) 県 BL( BL( β 枠 ) の 利用料金 ①県への支払い 成果公開の利用,または成果非公開の利用にかかわらず,一律 2 万円/h の負担金を徴 35 収する。 ※負担金に対して講じる減額の優遇措置については,4.3を参照。 ②J-PARC への支払い 成果公開の利用の場合には無料である。 成果非公開の利用の場合には J-PARC へ利用料金(B)を支払う必要がある。ただし, 利用料金(B)は現時点では未定である。 36 5 . 産業利用促進の 産業利用促進 の 具体的な 具体的 な 取組み 取組 み ( ユーザー獲得方策 ユーザー 獲得方策) 獲得方策 ) ○ 中性子利用促進研究会の再編強化 ①材料構造解析研究会 ②生命物質構造解析研究会 ③中性子ビーム産業利用研究会 ○ ○ 5.1 中性子産業利用早期成果創出プロジェクトの推進 ①県プロジェクト ②地域企業中性子利用リーディングプロジェクト ③県版トライアルユース ④競争的資金の獲得によるプロジェクト 広報,情報発信 ①中性子産業応用セミナー等の開催 ②中性子産業利用ホームページの充実 ③広報媒体・マスコミ等の活用 ④分かり易い解説書等の作成・配布 ユーザー獲得方策 ユーザー 獲得方策の 獲得方策 の 概要 茨城県は中性子の産業利用を促進するため,平成 16 年度より,個別研究会活動,各種 セミナーなどの開催,個別企業訪問など,様々な活動を行ってきた。これらの成果を踏ま え,今後はユーザー獲得のため,図 18 に示すような産業利用促進活動を行う。 図 18 産業利用促進活動の全体イメージ 37 5.2 中性子利用促進研究会活動の 中性子利用促進研究会活動 の 推進 茨城県は,中性子の産業利用を推進するため,平成 16 年度より,茨城県中性子利用促 進研究会を運営している。研究会の中心的な活動として,産学官からなる 13 テーマの個 別研究会を設置し,中性子の産業利用の有効性の検証,モデル実験の実施,一般への普及 広報など,多様な活動を行ってきた。 平成 20 年以降は,この中性子利用促進研究会個別研究会を,県 BL の産業利用テーマ発 掘(早期成果創出)および地域企業の中性子産業利用を促進するグループに再編し,研究 会活動を強化する。 ( 1 ) 材料構造解析研究会 材料構造解析 研究会 茨城県材料構造解析装置での早期産業利用成果創出を主目的とする。内部に個別の研究 テーマを設け,それぞれチームリーダーを筆頭に研究活動を行う。企業や関係研究機関の 研究者等が主要な構成メンバーとなり,材料構造解析装置(iMATERIA)の保守・運用・ 機能向上を担当する研究者並びに茨城県 BL 産業利用促進コーディネータから指導・助言 を受け,研究会活動を推進する。 ( 2 ) 生命物質構造解析研究会 生命物質構造解析 研究会 茨城県生命物質構造解析装置での早期産業利用成果創出を主目的とする。内部に個別の 研究テーマを設け,それぞれチームリーダーを筆頭に研究活動を行う。企業や関係研究機 関の研究者等が主要な構成メンバーとなり,生命物質構造解析装置(iBIX)の保守・運用・ 機能向上を担当する研究者並びに茨城県 BL 産業利用促進コーディネータから指導・助言 を受け,研究会活動を推進する。 ( 3 ) 中性子ビーム 中性子 ビーム産業 ビーム 産業利用研究会 産業 利用研究会 地域企業のニーズが高い分野ではあるが,県ビーム実験装置では構造上対応することが 不可能な課題に対応し,地域企業の中性子産業利用を促進するため設置する。 内部に個別の研究テーマごとにサブワーキングチームを複数設置し,それぞれチームリ ーダーを筆頭に研究活動を行う。 研究会ではそれぞれの装置の特徴を把握する勉強会,実際に装置を利用したモデル実験 等を行うとともに,公設試験研究機関との連携を強化し,研究テーマを共同研究に発展さ せるなど,地域企業の中性子利用を牽引する。 5.3 中性子産業利用早期成果創出プロジェクト 中性子産業利用早期成果創出 プロジェクトの プロジェクト の 推進 学術的な成果ならびに原則非公開となる企業の有償利用のみでは中性子産業利用の成果 を効果的にアピールすることはできない。このため,県が主導的に実施する産業利用プロ ジェクトが必要である。実施するテーマ候補は,①中性子利用促進研究会個別研究会など 38 の研究会活動から生まれるテーマ,②個別の企業との交流の過程で生まれる(企業がオー プンにしても良い)テーマ,③県 BL 装置開発グループなどから生まれるテーマ,が考え られる。それぞれ,公募により,産業利用成果創出という点での審査を経て選定し,県の 直接的な関与の下,早期の産業利用成果を創出する。 ( 1 ) 県 プ ロジェクトの ロジェクト の 推進 県 BL を利用し,特に産業界に向けて早期に魅力的な成果を提供できるテーマを厳選し, 県が主導する産学官の共同研究プロジェクトとしてビームタイムを確保して実施する。テ ーマは茨城県中性子利用推進研究会およびその他の研究機関等から公募する。 ( 2 ) 地域企業中性子利用リーディングプロジェクト 地域企業中性子利用 リーディングプロジェクト 地域中小企業の中性子産業利用を促進するため,主に県内企業や公設試験研究機関との 共同により,参画企業の研究開発に貢献する中性子実験テーマを実施する。 県 BL に限定せず,他の J-PARC 装置や JRR-3 等の装置の利用も対象とする。 ( 3 ) 県版トライアルユース 県版 トライアルユースの トライアルユース の 推進( 推進 ( 県 BL 対象) 対象 ) 企業セミナーや中性子産業利用促進個別研究会活動,更には県で設置する利用窓口を通 じて中性子利用に興味を有する企業を対象に,トライアルユースを積極的に働きかけ,先 ず,自身の課題に対する中性子の適用性を実地に判断してもらう機会を増やす。 ( 4 ) 競争的資金の 競争的資金 の 獲得による 獲得 によるプロジェクト による プロジェクト推進 プロジェクト 推進 様々な公的機関から,競争的資金の公募がなされている。これらの制度に積極的に応募 することで,中性子利用成果創出のための資金を獲得する必要がある。県 BL や地域企業 の中性子利用に係るテーマでの競争的資金獲得に対して,茨城県は積極的支援を行なう。 また,競争的資金を獲得したプロジェクトについて,①県 BL の一定利用枠を提供する, ②マッチングファンド的な支援予算を提供する,といった制度も整備する。 5.4 広報・ 広報 ・ 情報発信 ( 1 ) セミナー等 セミナー 等 の 開催 県 BL のユーザーを拡大するため,様々な地域,対象向けセミナー等を開催する。 ①県外中性子産業応用セミナー(県外セミナー) 広く一般市民や企業人に中性子の産業利用の原状を周知し,特に,企業人に自社での 企業セミナーの開催や研究会活動への参加を促すため,県外大都市圏において,年 2,3 回程度開催する。 39 ②県内中性子産業応用セミナー(地域セミナー) 地域セミナーは,地域企業や茨城県の一般県民を対象としたものである。県内企業人 に,地域企業向け企業セミナーや研究会活動への参加を促すという位置づけで,県内で 年 2,3 回程度開催する。 ③業界団体向けセミナー 中性子の産業利用の意義や現状を産業界に遍く啓蒙するため,利用が期待される企業 が属する業界団体など向けのセミナーを実施する。 ④企業訪問セミナー,幹部向けセミナー及び実験相談会 研究者と共に企業研究所を訪問し,企業のニーズに即した個別セミナーを行うほか, 希望により,J-PARC 現地にて視察案内や実験相談会を開催する。なお,これに先立ち, 企業幹部,特に,研究開発担当の幹部にも中性子利用の意義を認知してもらうためのセ ミナーを開催することも重要である。 ( 2 ) 県中性子産業利用ホームページ 県中性子産業利用 ホームページの ホームページ の 充実 ①県 BL 実験テーマ募集ページの充実 県 BL は県独自に実験テーマの公募を行う。県中性子産業利用ホームページ内に,実 験公募関連情報を提供する。将来的には,ホームページ上で直接ユーザーからの申し込 みを受け付ける機能を用意する。 ②中性子産業応用事例紹介ページの充実 中性子の産業応用事例はこの数年において急激に増加しており,最新の事例を産業界 に紹介することにより,更に多くの企業が中性子産業利用に関心を持つことが期待され る。県中性子産業利用ホームページでも県 BL 等を活用した中性子の産業応用事例を分 かりやすく紹介し,県 BL の利用促進につなげていく。 ③動画ページの充実 産業界に県 BL を利用して実施できる実験やその手法を具体的に理解してもらうため, ホームページ上に実験の準備や実験の様子,機器の操作方法など解説するコンテンツを 実写動画を交えて掲載し,実験者の県 BL の理解度を高める。 ④メーリング情報提供システムの開設と情報発信 中性子に興味を持つ個人(利用者懇談会よりも広い範囲:例えば初等・中等教育機関 の教師や学生,一般市民,一般企業など)に広く情報を提供するため,メーリング情報 提供システムを開設する。なお,ホームページからこの情報提供システムへの登録がで 40 きるようにする。 ⑤関連施設・機関等とのリンクの充実 中性子や量子ビームに関連する施設,研究者,団体,行政などと連携し,相互のリン クを充実させることで,ユーザーが中性子や他の量子ビームに関連する技術情報,支援 情報,利用先や利用方法などの広範な情報を収集する際の利便性を向上させる必要があ る。 ( 3 ) 広報媒体等の 広報媒体等 の 活用 ①専門誌への記事掲載 企業の研究者等に中性子利用への関心を導き出すには,それぞれの研究分野の学会誌 や業界誌などへの情報発信が効果的である。J-PARC に設置される BL の情報や最新の 中性子研究成果を定期的に掲載することにより,J-PARC および県 BL の産業利用を進 めていく。 ②各種展示会への出展 国や地方自治体または企業団体等により,全国各地で様々な地域産業振興事業(展示 会等)が開催されている。展示会等には,大手企業とともに地域の中核となる企業も数 多く参加しており,中性子ユーザーを発掘するうえで,効率的な情報発信が可能な機会 である。 このような会場において,J-PARC や県 BL の情報発信の場や展示スペースを確保し, 積極的な広報活動を行う。 ③マスコミの情報発信力の効果的活用 マスコミとの連携を強化し,県 BL に関する新聞掲載やテレビ報道の機会を拡大させ ることで、企業関係者や一般市民への積極的な情報提供を行う。 また,県域や地域で発刊されている情報誌やコミュニティ放送局など活用したきめ細 かい広報を実施し,県 BL の認知度を向上させる。 ( 4 ) 分 かり易 かり 易 い 解説書等の 解説書等 の 作成・ 作成 ・ 配布 ①中性子産業応用事例集 中性子の産業利用を広く普及させるには,企業の経営者,技術者に,最新の学術成果 に基づく中性子の産業利用方法について,専門的な知識が無くても分かり易く,かつ放 射光などとの特徴の違いを明確に解説することが重要である。 このため,茨城県では平成 18 年度に中性子の産業応用事例を総合的に取りまとめた ハンドブック「中性子産業応用事例集」を作成したが,特に昨今の中性子研究では,ナ 41 ノテクやバイオ分野以外にも,例えば,建設業界や農業分野での研究事例が数多く発表 されるなど,新しい研究成果と産業応用事例が輩出されている。よって,これらの内容 を盛り込んだ改訂版事例集を作成しセミナー等での利用を進めていく。 ②中性子広報用 DVD 予備知識の無い人に J-PARC や県 BL を説明するには,画像を用いた説明がイメージ を捉えやすく効果的である。さらに,動画であれば,中性子発生のメカニズムや実験装 置の動作を正確に伝えることが可能であり,遠隔地のユーザー等が,J-PARC 施設を理 解するうえで大きく貢献する。 このような観点から,J-PARC 及び県では,それぞれ施設紹介 DVD を作成し,セミ ナーや企業訪問に活用している。 県 BL 供用開始以後においては,産業応用事例集と同様に,県 BL による新しい研究 成果や装置の具体的な仕様・特徴を盛り込んだ新しい県 BL 紹介 DVD を作成し,ユー ザー獲得等に活用する。 ③初心者向け広報冊子および一般向け冊子 中性子の産業利用を推進していくうえで,一般県民の理解と協力を得ることは必須事 項である。 中性子を一般県民に理解してもらうには,産業応用事例集や DVD よりも更に簡単で 分かり易いメディア,例えば,漫画やイラストで中性子の性質や実生活にどの様に利用 されているのかを易しく解説した冊子が有効である。冊子の構成もパンフレットのよう な産業界を意識したものではなく,親子で一緒に楽しめる絵本のような体裁として製 作・配布することにより,より大きな効果が期待できる。 42 6 . 産業利用促進の 産業利用促進 の 具体的な 具体的 な 取組み 取組 み ( 研究を 研究 を 支 える環境整備 える 環境整備) 環境整備 ) ○ 産学官共同研究施設の整備 利用相談窓口,ユーザーズオフィス,産学官研究交流の拠点整備 ○ 地域環境の整備 来訪する研究者への多様なサービスの提供 ○ 産業利用の国際化の対応 海外企業の県 BL 利用促進 ○ 研究者コミュニティの活性化支援 新しい視点・観点から中性子産業利用のテーマを発掘 6.1 産学官共同研究施設の 産学官共同研究施設 の 整備 J-PARC などの原子力関連研究施設の集積を活かし,産学官共同研究やその成果を活用 した新事業や新産業の創出を支援するため,産学官共同研究施設を設置する。 この施設には,J-PARC センター,大学,公的研究機関および民間企業など,様々な研 究機関などがオフィス,実験・研究室などを構え,J-PARC 等を利用する際の窓口や研究 活動拠点,さらに,様々な機関の情報交流の場として活用されることになる。 将来的には,つくば・東海の研究機関と地元企業との産学官連携の舞台として,特に X 線・放射光・中性子などいわゆる量子ビームをベースとした産業応用・医療応用研究の拠 点として発展させる。 また,この施設内に,J-PARC や県 BL の資料なども展示し,来場者の説明に供する。 6.2 地域環境の 地域環境 の 整備 J-PARC が本格稼動すると,海外を含め,年間 4,000~5,000 名(延べ)の研究者等の来 訪者が想定される。これらの来訪者の居住・研究環境に対して利便性を向上させるため, 環境整備を地域に促すための活動を推進する。 環境整備の例としては,飲食施設,宿泊施設の整備や外国語表示,公共交通機関の充実, などがあげられる。 6.3 国際化への 国際化 への対応 への 対応 県 BL は国内産業利用のみならず,広く海外の産業界にも活用してもらうことを期待し ている。このための第 1 歩として,以下の活動を推進する。 (1)県中性子関連ホームページの英文化 (2)国内開催の国際会議等での展示や講演 43 6.4 研究者コミュニティ 研究者 コミュニティの コミュニティ の 活性化 つくばには幾つかの組織横断的な研究交流のコミュニティが存在する。その一つに,様々 な研究者による異分野交流から新しい研究テーマを発掘する「つくばスパイラル」 (高エネ ルギー加速器研究機構教授の提唱によるネットワーク)がある。 つくばスパイラルでは,中性子の新しい利用研究を検討し,コンクリートの強度評価や 冷凍食品の解凍復元性の解明,考古学遺物の非破壊年代測定や噴火・地震予知など,前例 にとらわれない大胆な発想から新しい研究テーマへの展開が生まれている。 これらの新しい研究開発テーマを産学官の共同研究に発展させることにより,①新産業 の担い手となるベンチャー企業の創出,②先端 R&D への参画による既存地域企業の技術 力向上-自社事業の発展,など,新事業・新産業の創出へとつなげていく。 44 7 . 広域ネットワーク 広域 ネットワークの ネットワーク の 整備 ○ つくば~東海~日立連携 つくば(放射光施設),東海(中性子施設),日立(ものづくり技術)の連携 ○ 首都圏量子ビーム連携ネットワーク イオンビーム(高崎市),RI ビーム(和光市)等多様なビーム施設との連携 ○ 産業クラスターなどとの連携 関東圏の産業クラスターなどとの連携による,東京・神奈川・千葉等の研究開発 型企業への利用啓発 ○ 量子ビーム施設を有する自治体との連携 兵庫県,佐賀県などとの相互交流による広域な普及啓発活動の推進 7.1 つくば~ つくば ~ 東海~ 東海 ~ 日立連携の 日立連携 の 推進 県 BL の産業利用を加速するために,中性子と放射光を相補的に利用できるという仕組 みづくりは有用である。産業界にとって,放射光は中性子よりもなじみがあることは, SPring-8 の産業利用状況などから明らかである。つくば(高エネルギー加速器研究機構) に立地する放射光施設 PF(Photon Factory)の産業利用についても検討を進め,県 BL との 相補的利用の実現を目指す。 7.2 首都圏量子ビーム 首都圏量子 ビーム連携 ビーム 連携ネットワーク 連携 ネットワーク 首都圏内には,J-PARC を始めとし,多くの最先端量子ビーム施設が存在する。日本原 子力研究開発機構高崎量子応用研究所の TIARA(イオン照射研究施設;群馬県高崎市), 理化学研究所和光研究所の RI ビームファクトリー(埼玉県和光市),放射線医学総合研究 所の HIMAC(千葉県千葉市)等により,材料照射,同位体元素の製作,重粒子線による がん治療などが行われている。さらに,日本原子力研究開発機構 JRR-3・4(茨城県東海村), 高崎量子応用研究所コバルト 60 照射施設などでは,これまでも,中性子による試験研究・ 医療応用,農作物の改良,医療器具の放射線滅菌などが行われてきた。 これらの量子ビーム施設が比較的近いエリアに設置されている利点を生かし,関係する 自治体や研究機関が連携を深めることにより,量子ビーム連携ネットワークを構築し,ビ ームの相補的利用を図り,量子ビームの産業利用を推進する。 7.3 産業クラスター 産業 クラスターなどとの クラスター などとの連携 などとの 連携 関東圏には,首都圏北部ネットワーク(栃木県,群馬県,茨城県北部地域,埼玉県北部 地域),東葛・川口つくば(TX 沿線)ネットワーク,首都圏西部ネットワーク(埼玉県南 西部,東京都多摩地区,神奈川県県央部)などの地域が産業クラスター地域として活動を 進めている。産業クラスター地域には,産学官連携を推進し,地域イノベーションの要と なる先進的技術開発型企業が数多く存在するため,これらのクラスターとの連携を強化し, 45 量子ビームの産業利用の有効性を広報することにより,各量子ビーム施設,ひいては J-PARC の産業利用につなげていく。 7.4 兵庫県 兵庫 県 , 佐賀県 佐賀 県 などの量子 などの 量子ビーム 量子 ビーム施設 ビーム 施設の 施設 の 立地する 立地 する自治体 する 自治体との 自治体 との連携 との 連携 量子ビーム施設・機器を保有している地方自治体としては,兵庫県,佐賀県がある。兵 庫県では,大型放射光施設(SPring-8)内に 2 本の専用放射光ビームラインを有し,佐賀 県では光源(シンクロトロン加速器など)も独自に整備した九州シンクロトロン光研究セ ンターを設置し,それぞれ放射光を利用した産業振興に努めている。 愛知県でも民間企業と連携し,放射光施設の設置を検討しているところである。 放射光と中性子は相補的な利用による相乗効果を期待できることから,自治体連携によ る放射光と中性子の相補利用の共同研究を推進し具体的な成果を公開することにより,企 業による多様な量子ビームの利活用を促すことが期待される。また,量子ビームラインを 有する自治体が地理的に離れていることをむしろ好条件として捉え,展示会や成果報告会 など連携して行うことにより,より広域な範囲でより効率的に普及啓発活動が可能となる。 46 8 . 人材育成等教育・ 人材育成等教育 ・ 理解増進活動 理解増進 活動 ○ 県民向け理解増進活動 ・公共施設の掲示板等を利用した情報発信など ○ 理科・科学技術教育への活用 ・サマースクール,理科教職員向け研修等での広報活動 ○ 中性子利用関連研修の充実 ・企業人を対象とした初心者,中級者,上級者向け中性子利用研修の実施 8.1 県民向け 県民向 け 理解増進活動 一般県民向けの理解増進活動として以下を実施する。 ( 1 ) 県民の 県民 の 目 に 触 れる広報活動 れる 広報活動の 広報活動 の 推進 水戸駅,県庁の掲示板,県関連施設の掲示板などの活用により,J-PARC や県 BL につ いて定期的に広報を進める。 ( 2 ) 産学官連携施設を 産学官連携施設 を 使 った広報活動 った 広報活動の 広報活動 の 推進 産学官連携施設に J-PARC や県 BL の常設展示を行う。具体的には,一般的な情報に加 え,最新の研究事例等を掲示することで,中性子の産業利用の有効性を広報する。 ( 3 ) 一般県民向け 一般県民向 け セミナー等 セミナー 等 の 開催 県民に J-PARC や県 BL の意義を理解してもらうため,定期的に県民向けセミナーやサ イエンスカフェを開催する。単なる学術講演ではなく,分かり易い言葉で解説する,講演 者と聴衆とが近い距離で説明する,といった配慮が必要である。 8.2 理科・ 理科 ・ 科学技術教育への 科学技術教育 への活用 への 活用 中学生・高校生向けのサマースクール(合宿),研究機関を活用した教員向けの研修,リ テラシー向上のためのボランティア活動支援などを通じて,普及広報活動を推進する。こ の活動は,単なる中性子に関する理解増進・広報活動ではなく,J-PARC を含め,茨城県 に数多く設置されている先端科学研究施設を一種の教材として活用することで,広く科学 人材を育成することを目的とする。 8.3 中性子利用関連研修の 中性子利用関連研修 の 充実 自社情報の秘匿の観点から,本格的に中性子利用を構想する企業は,自社において実験 実施やデータ解析を望む場合がある。これらのニーズに対応するため,複数のレベルの企 業向け研修プログラムを構築し,推進する。 47 ( 1 ) 独自カリキュラム 独自 カリキュラムによる カリキュラム による研修 による 研修プログラム 研修 プログラム ①初心者向け 年 1,2 回程度,企業の初心者向けの教育研修を開催する。ここでは,量子ビーム実 験経験がない企業人に対し,X 線,放射光および中性子の基礎をとともに,基本的なデ ータ取得から基本的な解析までの流れを学習させる。研修終了後には,指示された手法 を用いて解析の基本操作を自ら実施できるようになることを目標とする。 ②中級者向け 年 1 回程度,初心者向け研修卒業者,もしくは1手法以上の量子ビーム実験の経験者 を対象として開催する。ここでは,研修対象の手法について,適切な実験系や試料の選 択ができるとともに,解析結果を適切に解釈できるようになることを目標とする。 ③上級者向け 中級者向け研修の卒業者もしくは同等の知識や経験を有し,実際に中性子を利用する 実験の経験者を対象に最先端の測定技術を習得することを目的に年数回適宜開催する。 企業にとっては,原子力機構や KEK,あるいは東京大学等が開発した最先端の測定技術 を駆使して材料開発や材料評価を行うことによって,世界市場で勝てる製品の創出が最 重要事項である。そのため,新しい測定技術が開発され次第,適宜,個人別での研修を 実施する。 ( 2 ) 大学院等高等教育機関を 大学院等高等教育機関 を 活用した 活用 した研修 した 研修プログラム 研修 プログラム 茨城大学応用粒子線科学専攻では,社会人を含め,年 10 名前後の大学院生を受け入れ ている。中性子関連授業科目として, 「粒子線科学特論」 「X 線・中性子分光」 「中性子タン パク質構造解析学特論」 「中性子材料強度物性学特論」 「中性子機能性材料学特論」 「粒子線 結晶解析学特論」「結晶科学特講」「中性子生物機能解析学特講」などがある。 また,KEK(高エネルギー加速器研究機構)と茨城大学連携事業として,『中性子回折 散乱実験技術 A to Z 体験学習』を平成 17 年度より開始し,15~20 名の大学院生が体験学 習を受けている。 このような取組みとも連携をとり,効果的な人材育成を推進する。 48 9 . アクションプラン ○ H20~22 年度(利用試行期) ・産業界にアピールしうる実験成果を創出する ○ H23~25 年度(利用拡大期) ・効果的に成果を広報し,利用者の拡大を図る ○ H26~30 年度(利用発展期) ・利用者が増大し,恒常的に成果が創出される *中小企業の利活用はパワーユーザーの動向に影響を受けるものと想定 図 19 に県 BL の産業利用ロードマップを示す。 図 19 県 BL の産業利用ロードマップ 49 9.1 H 20~ 20~ H22 年度 この時期は,産業界ユーザーの組織化並びに産業界にアピールしうる実験成果の創出を 最優先とする。県プロジェクトの推進など,県のイニシアティブが重要となる。 ( 1 ) J- PARC の 動向 2008 年 5 月末に初ビームが物質・生命科学実験施設(MLF)と 50GeV シンクロトロン に届く。以降,11 月末まで施設の調整が行われ,12 月から本格的に供用が開始される。 当初はビームが弱く,また,装置の調整にビームタイムを取られることが予想されるが, 基本的には中性子装置は利用できる状態になる。 この時期を,実際に試運転,調整を行いつつ,産業界利用者にとって望まれる運用体制 を構築していく時期と位置づける。 ( 2 ) パワーユーザー向 パワーユーザー 向 け 施策( 施策 ( 利用試行期としての 利用試行期 としての施策 としての 施策) 施策 ) ここで言うパワーユーザーとは,既に原子力機構研究用原子炉で実験を行ったことのあ る企業利用者や,大型放射光施設の利用経験のある企業利用者,並びに近い将来にパワー ユーザーとなりうる企業利用者を指す。 これらパワーユーザーにとっても,中性子は決して馴染み深いものではない。特にパル ス中性子の利用経験者はほとんど存在しないと思われる。よって,H20~H22 は利用試行 期と位置づけ,県の積極的な支援により,中性子利用を進めるものとする。具体的には, 主として以下を実施することで,企業の中性子への理解増進,具体的な中性子利用を進め, 実用的成果の創出を行う。 ①中性子産業利用推進協議会活動への協力 (再掲 P.24) 2008 年 5 月より,中性子産業利用推進協議会が活動を開始する。茨城県はこの協議 会活動に協力し,産業界の中性子利用促進を図る。 ②県 BL を活用する研究会の推進 (再掲 P.38) 材料構造解析研究会,生命物質構造解析研究会において,産業的・社会的に意義のあ る実用的な成果の早期創出を目指す。 ③県プロジェクトの推進 (再掲 P.39) 産業界に高い価値のあるテーマを抽出し,県の主導により実験研究を行う。これによ り,産業界にアピールしうる具体的成果を創出する。 ( 3 ) 海外ユーザー 海外 ユーザー開拓 ユーザー 開拓 海外ユーザー開拓としては,広報活動の推進として,①茨城県中性子利用関連ホームペ 50 ージへの英語ページの追加,②英文広報用パネルの作成ならびに国内開催の国際会議など への英文パネルの展示を行う。 ( 4 ) 県内中小企業向け 県内中小企業向 け 施策( 施策 ( 利用試行 利用 試行期 試行 期 としての施策 としての 施策) 施策 ) 県内中小企業に対しては,この時期を利用試行期として位置づけ,先ずは中性子利用へ の理解増進や,大型施設利用の拒否感を低減するための活動を行う。具体的には,以下を 推進する。 ①中性子ビーム産業利用研究会 (再掲 P.38) (再掲 P.39) 主に県内企業への中性子の利用を普及広報するための活動を行う。 ②リーディングプロジェクト 地域企業に,具体的に中性子利用を経験してもらうための活動として,公設試験研究 機関と連携した共同研究を実施する。 ③モデル実験 この時期においては,J-PARC 内の装置のビーム出力は必ずしも十分な出力レベルに は無い。よって,原子力機構の研究用原子炉(JRR-3)を活用するモデル実験も積極的 に推進する。 また,県内企業にとって J-PARC は大規模施設の運用に付随する様々な支援ビジネスの 場としても位置づけられる。県は,これら支援産業の育成をめざし,以下の活動を行う。 ④県内中小企業中性子利用連絡協議会 (再掲 P.24) 県内企業に対し,J-PARC や県 BL に対する技術指導や支援ビジネス関連の様々な情 報や機会を提供する。 ⑤普及啓発と研修事業 様々な情報を県内企業や県民向けに発信し,中性子利用の意義を広く理解していただ く必要がある。また,県内中小企業の支援ビジネスへの参入を容易にするためには,県 内企業に,大型実験施設が必要とする技術や大型実験施設特有のビジネス上の前提・ル ールなどを把握して貰い,足りない部分はスキルアップしてもらう必要がある。このた めの研修を行う。 ⑥小型中性子源などの開発を通じた技術習得 県内研究機関と企業等による小型中性子源の開発構想など共同研究事業を推進し,県 51 内企業の技術力を向上させる。 これらの活動を通じ,一部県内企業は,支援ビジネスへの参入を果たす。 9.2 H23~ H23~ H25 年度 茨城県では,この時期も引き続き,強力なイニシアティブで中性子の産業利用促進活動 を進める。 ( 1 ) J- PARC の 動向 この時期はビームラインの強度が徐々に増加するとともに,利用可能な実験装置の本数 が拡大する時期である。この時期を通じて,様々な中性子計測手法が順次利用可能になり, 中性子の利用者が拡大するとともに,新しい利用法などが順次開発される。 ( 2 ) パワーユーザー向 パワーユーザー 向 け 施策 この時期には,J-PARC のビーム強度が十分に高くなり,タンパク質結晶のような生体 高分子も実用的な時間で解析可能になると期待される。この時期を,利用拡大期と位置づ け,利用試行期で得られた具体的な成果を元に,利用者の拡大を進める。 また,海外利用については,試行期と位置づけ,前のフェーズまでの海外向け広報活動 により興味を示した海外の利用者を受け入れ,海外の利用者向けの支援に習熟するととも に,必要な環境整備を,関係機関とともに進める。 ( 3 ) 県内中小企業向け 県内中小企業向 け 施策 県内企業にとっては,H22 年度までと同様,利用試行期に相当するが,県内の公設試な どと共同して中性子利用実験を実施する企業が複数誕生している段階となる。 また,支援産業育成としては,前のフェーズまでの参入実績を踏まえ,参入のためのノ ウハウの公開や,更に高度な業務を行うためのスキル向上に対する支援を行う。 参入を果たした企業は,支援産業としての経験を本業にもフィードバックし,業務提案 型企業への脱皮を図る。 9.3 H26~ H26~ H30 年度 ( 1 ) J- PARC の 動向 この時期には J-PARC のビーム出力はフルスペックに達し,相当数の実験装置が稼動を 開始する。様々な利用法が創出され,成果非公開の利用も相当数に上るようになる。 ( 2 ) パワーユーザー向 パワーユーザー 向 け 施策 パワーユーザーに対しては利用発展期となる。この段階では,県 BL はパワーユーザー 52 に対しては特に優遇措置をとらなくても十分な利用が見込まれるようになる。ユーザー自 身が自らの構想により新しい実験を行い,次々に成果が創出される。 県は,パワーユーザー向けとしては,つくばスパイラルなどで開拓した新しい利用法や 利用領域の開拓のための活動に対する支援と広報活動を中心に活動する。 海外ユーザーに対しては,この時期は利用拡大期に相当し,前フェーズまでに整備した 海外利用者向けサービスの効果も相まって,相当数の海外利用が進む。更なる海外利用拡 大のため,県としても海外の中性子施設や先端研究拠点の立地する自治体との相互協力や 相互利用協定を定めるなどの活動を推進する。 ( 3 ) 県内中小企業向け 県内中小企業向 け 施策 県内中小企業に対しては,この時期は利用拡大期に相当する。複数の地域企業が自らの 企画・体制で中性子実験を行うようになり,その成果を活用した商品展開なども見られる ようになる。 支援産業も,幾つかはビジネスとして自立し,高い難易度の支援も可能になる。また, この支援経験を契機に,県内企業の技術力,ビジネス力ともに大きく向上し,革新的新商 品を自ら企画し,開発する,提案型ビジネスを行う企業が増加する。 9.4 H31 年度~ 年度 ~ ( 1 ) J- PARC の 動向 J-PARC の全ラインが整備され,大型実験施設として完成する。国内外から年間数千人 規模の利用者が東海地域に訪れるようになり,科学技術先進地域としての東海~日立が世 界的に認知されるようになる。 ( 2 ) パワーユーザー パワーユーザ ー 向 け 施策 パワーユーザーに対しては既に利用発展期段階であり,特段の支援措置を行わなくても, 県 BL の標準的支援サービスで十分に利用者対応が可能となる。しかしながら,常に新し い利用法や利用分野の開拓や,装置の高度化を行わないと,装置が短期間で陳腐化するこ とは明らかである。このため,この時期には,抜本的な改良も含めた県 BL の将来構想を 検討,具体化する。 海外ユーザーに対しては,この時期は利用発展期に相当する。特段の追加支援がなくと も,継続的に海外利用者が訪れ,支障なく実験を行える体制が確立している。 ( 3 ) 県 内中小企業向け 内中小企業向 け 施策 県内中小企業に対しては,この時期は利用発展期に相当する。県内の幾つかの企業は, 希少元素代替材料など,先端材料開発を事業として実施するようになり,中性子が材料開 発のための有力なツールとなる。 53 また,小型中性子源の開発を通じ,サブミクロン~ナノレベルに及ぶ精密加工技術や, 高速制御技術,データ処理技術に関する技術習得が進み,国内最先端レベルの特殊計測・ 試験装置を製造可能な精密機械産業群に脱皮する。 これらの技術を背景として,準汎用機械部品の製造拠点としての茨城県企業の認知が進 むと期待される。 中性子利用促進研究会やモデル実験,県プロジェクト活動を通じ,あいまいで多様な出 口側のニーズに即した機器の企画・設計・開発能力が醸成される。 これらを踏まえ,従来のニーズ対応型から,自ら様々な新しい実験機器群をオーダーメ イド製造し,顧客に提案していく研究開発型装置産業への脱皮が進む。 54 10. 10 . 参考資料 ( 1 ) J- PARC( PARC( 文部科学省資料より 文部科学省資料 より) より ) 55 56 ( 2 ) サイエンスフロンティア 21 構想 57 ( 3 ) 茨城県中性子利用促進研究会 ①中性子利用促進研究会の会員構成 研 究 会数 参 加 研究機関 登録者 H17.3 月末 8 18 98 H18.3 月末 10 28 159 H19.3 月末 13 46 225 H20.3 月末 13 48 234 参加企業 登録者 (県内) (県内) 39 65 (20) (42) 80 116 (49) (74) 141 230 (80) (133) 150 248 (80) (138) 計 163 人 275 人 455 人 482 人 ②平成 16 年度個別研究会 分類 中性 子関 連テ ーマ 放射 線関 連テ ーマ 研究会名称 代表者 概 新薬創生研究会 茨城大学 ・新村 信雄 タンパク質の構造解析 環境調和型材料開発研 究会 茨城大学 ・友田 陽 材料内部の応力解析 次世代電池開発研究会 茨城大学 ・佐久間 ナノ磁性材料研究会 茨城大学 ・西原 非破壊分析・可視化研 究会 原研/東大・中西 友子 (原研 松林 政仁) 界面科学研究会 KEK 生体分子科学研究会 茨城大学 ・高妻 小型ライナック医療応 用研究会 東京大学 ・上坂 ・鳥飼 58 隆 美一 直也 要 新型二次電池や燃料電池の 開発 新しい磁気メモリー等の開 発 植物の根等における水の動 態可視化,微量元素分析 物質の表面・界面解析 孝光 バイオツールの研究・開発 充 医療用小型電子ライナック の開発・利用 ③平成 17 年度個別研究会 分類 研究会名称 中 性 新薬創生研究会 子 関 環境調和型材料開発研 連 テ 究会 ーマ 次世代電池開発研究会 代表者 ・新村 ・友田 信雄 陽 概 要 タンパク質の構造解析 材料内部の応力解析 茨城大学 ・佐久間 非破壊分析・可視化研 究会 界面科学研究会 新型二次電池や燃料電池の 開発 茨城大学 ・西原 美一 新しい磁気メモリー等の開 発 原研/東大・中西 友子 植物の根等における水の動 (原研 松林 政仁) 態可視化,微量元素分析 KEK ・鳥飼 直也 物質の表面・界面解析 未来型材料解析研究会 筑波大学 ・大嶋 中性子標準研究会 ナノ磁性材料研究会 放 射 線 関 連 テ ーマ 茨城大学 茨城大学 隆 建一 新機能性材料の開発 名古屋大学・瓜谷 章 放射線計測機器開発 生体分子科学研究会 茨城大学 ・高妻 孝光 バイオツールの研究・開発 小型ライナック医療応 用研究会 東京大学 ・上坂 充 医療用小型電子ライナック の開発・利用 ④平成 18 年度個別研究会 分類 中性 子関 連テ ーマ 放射 線利 用テ ーマ 事業 化テ ーマ 研究会名称 新薬創生研究会 代表者 原子力機構・黒木 良太 概 要 タンパク質の構造解析 環境調和型材料開発研 究会 茨城大学 ・友田 陽 材料内部の応力解析 次世代電池開発研究会 茨城大学 ・佐久間 ナノ磁性材料研究会 茨城大学 ・西原 美一 界面科学研究会 KEK ・鳥飼 直也 非破壊分析・可視化研 究会 原子力機構・松林 政仁 植物の根等における水の動 態可視化,微量元素分析 未来型材料解析研究会 筑波大学 建一 新機能性材料の開発 中性子標準研究会 名古屋大学・瓜谷 章 放射線計測機器開発 データ解析技術研究会 物質・材料研究機構 ・北澤 英明 量子ビームを用いたデータ 解析手法 分子間反応場研究会 東京工業大学 ・尾関 智二 生体分子科学研究会 茨城大学 孝光 小型ライナック医療応 用研究会 東京大学 中性子技術事業化研究 会 日本アドバンストテクノ ロジー(株)・河口 雅弘 低分子化合物の医療・触媒 への応用 バイオツールに係る要素技 術開発 小型電子ライナックの医療 応用 県内企業に対する中性子利 用によるモデル実験や機器 開発 ・大嶋 ・高妻 ・上坂 59 隆 充 Li や水素を多く含む次世代 電池開発 新しい磁気メモリー等の開 発 物質の表面・界面解析 ⑤平成 19 年度個別研究会 分類 中性 子関 連テ ーマ 放射 線利 用テ ーマ 事業 化テ ーマ 研究会名称 代表者 新薬創生研究会 原子力機構 ・黒木 良太 タンパク質の構造解析 環境調和型材料開発研 究会 茨城大学 ・友田 陽 材料内部の応力解析 次世代電池開発研究会 茨城大学 ・佐久間 ナノ磁性材料研究会 茨城大学 ・西原 美一 界面科学研究会 KEK ・鳥飼 (JAEA・山崎 直也 大) 非破壊分析・可視化研 究会 概 原子力機構 ・松江 隆 秀明 (JAEA・松林 政仁, 飯倉 寛) 要 Li や水素を多く含む次世 代電池開発 新しい磁気メモリー等の 開発 物質の表面・界面解析 植物の根等における水の 動態可視化,微量元素分析 未来型材料解析研究会 筑波大学 ・大嶋 建一 新機能性材料の開発 中性子標準研究会 名古屋大学 ・瓜谷 章 放射線計測機器開発 データ解析技術研究会 物質・材料研究機構 ・北澤 英明 分子間反応場研究会 東京工業大学・尾関 智二 生体分子科学研究会 茨城大学 ・高妻 孝光 小型ライナック医療応 用研究会 東京大学 ・上坂 充 中性子技術事業化研究 会 日本アドバンストテクノロ ジー(株) ・河口 雅弘 60 量子ビームを用いたデー タ解析手法 低分子化合物の医療・触媒 への応用 バイオツールに係る要素 技術開発 小型電子ライナックの医 療応用 県内企業に対する中性子 利用によるモデル実験や 機器開発 ( 4 ) 茨城県の 茨城県 の 中性子利用促進活動 中性子利用促進研究会の活動は,中性子の産業利用の有効性を検討する座学中心のセミ ナー(勉強会)と実際に既存の中性子実験施設を利用して中性子の産業利用の有効性の把 握と装置の利用体験を行うモデル実験,また年間の研究活動を報告し中性子産業利用の情 報を発信する成果報告会などが主なものである。 セミナー(勉強会)は,大学・研究機関の研究員による中性子活用研究の紹介,また中 性子を利用した経験のある企業から産業応用事例説明を中心に,モデル実験テーマの検討, 実験結果の考察や放射光と中性子とのデータの比較などを行っている。 また,個別研究会の1つである中性子技術事業化研究会では J-PARC 関連機材等の開発 を実施し,J-PARC 発注機材の入札に参加することなどを通じて,企業の技術力の向上と 中性子の理解増進を図ってきた。 ①セミナー(勉強会開催実績) H16 年度: 8 研究会 26 回開催 延べ 836 名参加 H17 年度:10 研究会 33 回開催 延べ 900 名参加 H18 年度:13 研究会 35 回開催 延べ 1,080 名参加 H19 年度:13 研究会 31 回開催 延べ 815 名参加 ②中性子モデル実験(既存中性子実験施設 JRR-3:原子力研究開発機構を利用) H16 年度実施課題 1 鋳造部品の健全性評価 (環境調和型材料開発研究会) 2 鍛造部品の健全性評価 (環境調和型材料開発研究会) 3 磁性材料素材(Fe 16 N 2)の粉末解析 4 標準タンパク質結晶回折データ取得及び解析 5 LiCoO2 の粉末回折実験 (次世代電池開発研究会) 6 カーボンを含む負極材 (次世代電池開発研究会) 7 環境汚染物質標準試料の即発ガンマー線分析 (ナノ磁性材料研究会) (新薬創生研究会) (非破壊分析可視化研究会) H17 年度実施課題 1 タンパク質結晶解析実習 2 熱処理した SUS304 の残留応力測定 (環境調和型材料開発研究会) 3 液体化処理した Al 合金の残留応力測定 (環境調和型材料開発研究会) 4 固体電解質の構造解析 5 (新薬創生研究会) (次世代電池開発研究会) Fe 16 N 2 微粒子の磁気モーメント測定 6 磁気記録媒体の磁気構造の情報取得 7 生花(バラ,菊,ガーベラ)の含有水分測定 8 人工衛星搭載用 LSI の放射線環境下での耐用評価 61 (ナノ磁性材料研究会) (ナノ磁性材料研究会) (非破壊分析可視化研究会) (中性子標準研究会) H18 年度実施課題 1 燃料電池正極材料回折実験(次世代電池開発研究会) *H18 年度はこの他トライアルユース制度を利用した中性子照射実験を実施。 ③トライアルユース H18 年度実施課題 1 タンパク質における弱い相互作用のダイナミクス (生体分子科学研究会) 2 Lysylendopeptidase (LEP)の機能発現機構解明 3 ナノ磁性粒子窒化鉄の磁気構造解析 4 建築材料における水分移動の可視化と定量化 (非破壊分析可視化研究会) 5 土壌粒子および根の分布の可視化 (非破壊分析可視化研究会) 6 植物を用いた水分布および含水量変化の解析 (非破壊分析可視化研究会) 7 農作物中の重金属の即発 γ 線分析 (非破壊分析可視化研究会) 8 中性子光学素子の元素分析 (非破壊分析可視化研究会) 9 地質試料等の多元素同時非破壊定量 (非破壊分析可視化研究会) 10 光ファイバー素子の元素分析 (非破壊分析可視化研究会) 11 古文化財の非破壊可視化観察 (非破壊分析可視化研究会) 12 工業材料の介在物,キャビティおよび第 2 相粒子定量測定法の開発 (新薬創生研究会) (ナノ磁性材料研究会) (環境調和型材料解析研究会) 13 工業用鋳造製品の残留応力測定法の開発 (環境調和型材料解析研究会) 14 材料強度とミクロ組織因子の定量的関係の解明 (環境調和型材料解析研究会) 15 中性子反射率による単分子層修飾金電極の構造解析 16 次世代光記録材料 BiBO 薄膜の深さ方向の組成分布解析 17 ナノ磁性材料窒化鉄の磁気構造解析 18 農作物中の重金属の即発 γ 線分析 (非破壊分析可視化研究会;継続) 19 光ファイバー素子の元素分析 (非破壊分析可視化研究会;継続) 20 土壌粒子および根の分布の可視化 (非破壊分析可視化研究会;継続) 21 建築材料における水分移動の可視化と定量化 (生体分子科学研究会) (界面科学研究会) (ナノ磁性材料研究会;継続) (非破壊分析可視化研究会) H19 年度実施課題 1 創薬標的タンパク質の中性子構造解析 (新薬創生研究会) 2 中性子非弾性散乱を用いた SOFC 用電解質の酸素拡散挙動の観察 (次世代電池開発研究会) 3 磁気記録材料の磁気構造解析 (ナノ磁性材料開発研究会) 4 磁気ヘッド膜の反強磁性/強磁性界面における磁気構造の評価 (ナノ磁性材料開発研究会) 62 5 小規模金採掘に伴う水銀汚染土壌の非破壊分析法の開発 (非破壊分析可視化研究会) 6 即発 γ 線分析法を用いた農産物産地同定の試み (非破壊分析可視化研究会) 7 光ファイバー検出器の高度化と分析 (非破壊分析可視化研究会) 8 中性子反射率法によるシロキサン樹脂膜の評価 9 TiO 2 薄膜の 5nm 不完全極薄膜の薄膜密度の測定技術の調査 (界面科学研究会) (界面科学研究会) 10 合わせガラスにおける中間膜/ガラス界面の評価 (界面科学研究会) 11 Bi 系高密度光記録材料薄膜の深さ方向の組成分布解析 (界面科学研究会) 12 コンデンサー用誘電体皮膜解析 (界面科学研究会) 13 多成分系カルシウムフェライトの結晶構造解析 (データ解析技術研究会) 14 Li イオン伝導体の精密構造解析 (データ解析技術研究会) 15 GMR を有する CaO-CaMnO3 系酸化物の結晶構造解析(データ解析技術研究会) 16 中性子回折装置用 V 合金試料ホルダー及びウィンドウ材の中性子線を用いた評 価 (次世代電池開発研究会) 17 磁気記録材料の磁気構造解析 (ナノ磁性材料開発研究会) 18 磁気ヘッド膜の反強磁性/強磁性界面における磁気構造の評価 (ナノ磁性材料開発研究会) 19 NaI 粉体材料及び NaI(Tl)結晶における不純物解析(非破壊分析可視化研究会) 20 PGA を標準化手法とする環境モニタリング法の開発 (非破壊分析可視化研究会) 21 冷中性子による中性子検出器測定評価と測定回路検討 22 排ガス浄化触媒材料セリアージルコニア化合物の結晶構造の精密化 (中性子標準研究会) (データ解析技術研究会) 23 コンデンサー界面の解析 (界面科学研究会) ④中性子技術事業化研究会による J-PARC 関連機材の開発 1 「自動試料交換装置」 2 「極座標系ゴニオメーター」(実験試料位置を高精度にセット調整する装置) 3 「高真空対応シール技術」 (真空中のビームラインの外側から内側の機材を操作するアームを取り付ける際 の真空シール装置) 4 「超高温・極低温試料環境維持措置」 5 「ディスクチョッパー」(中性子のエネルギーレベルを調節する装置) 63 など ⑤中性子利用促進研究会成果報告会 H16 年度: つくば国際会議場 約 200 名参加 H17 年度: つくば国際会議場 約 240 名参加 H18 年度: つくば国際会議場 約 150 名参加 H19 年度: つくば国際会議場 約 50 名参加 ⑥中性子産業応用セミナー H16 年度: H17 年度: つくば市,日立市,鹿嶋市,下館市 延べ 220 名参加 茨城県農業総合センター 研究員 40 名参加 鹿嶋市,東海村,つくば市 延べ 180 名参加 茨城県工業技術センター 研究員 40 名参加 大阪(120 名参加),東京(90 名参加) H18 年度: 那珂町,守谷市,つくば市 (3 企業研究所で実施 60 名参加) 福岡市(60 名参加),太田市(80 名参加),名古屋市(90 名参加) H19 年度: 鹿嶋市(30 名参加) 宇都宮市(60 名参加),横浜市(85 名参加),神戸市(70 名参加) 64 ( 5 ) つくばスパイラル つくば スパイラル つくばは,建設開始から 30 年,多額の移転経費を費やして建設された日本が誇るそし て世界に例を見ない高密度研究集積都市である。ここには 30 を超える国立・公立研究機 関や 70 を超える企業研究機関が存在する。これらの研究機関はそれぞれのミッションを 達成するとともに,つくばの高密度研究集積を利用し,互いに密接に連携することによっ て,さらにサイエンスと技術を熟成するという大きなシナジー効果への期待が込められて いる。 つくばの研究機関群は大きく 2 種類に分けられる。一つは物質創成を目的とする研究機 関であり,もう一つは物質構造を評価する研究機関である。これら 2 つの異なる研究現場 を直結させ,両者を同時に高度化させるのが「つくばスパイラル」である。スパイラルの 力強さは,J-PARC や次世代 PF 計画の上昇力と「つくば」の高密度研究集積のもつ迅速 さによって既に用意されている。 21 世紀になり,つくばは大きな変革期にある。建設開始から 30 年,公的な研究機関は ほとんど法人化している。平成 17 年 8 月には,つくばと東京を直結するつくばエクスプ レスが開通した。今,つくばは変革を求めている。この時期を逃すことなく, 「つくばスパ イラル」を通して,「つくば」の熟成を進めることができると期待される。 その変革の糸口となる「つくばスパイラル対話シリーズ」が,茨城県の後援で, 「コンク リート」「食品」「考古学」「地球」の 4 つのテーマで開催され,異なった研究分野の研究 者が新しい科学の創成に向けて意見を戦わせた。そこには「新しい科学」 「新しい文化」の 創成に向けた胎動があった。 (発起人によるつくばスパイラル講演資料集前書きより) 65 ( 6 ) 中性子産業利用推進協議会 中性子ビームラインの産業利用促進のため,将来のパワーユーザーとして想定される有 力企業で構成する「中性子産業利用推進協議会」を設立する。 【発起人】 ・日立製作所フェロー 中村道治(経団連産業技術委員会重点化戦略部会長) ・茨城県知事 橋本 ・J-PARC センター長 永宮正治 昌 【活動内容】 ・運営委員会(協議会の運営,産業界の意見と要望の取りまとめ) ・研究会(特定テーマに関する産学官共同研究等) ・講習会及び見学会の開催(産業応用に関する講演会,分析技術等の講習会,見学会) ・情報提供と連携(産業応用動向調査研究,研究成果配信,県・J-PARC 等との連携) 【会費及び運営】 ・会費は 1 社当たり年間 20 万円 ・運営は J-PARC センター内に事務局を配置 【想定される参加業界】 電機,電器,半導体,電子部品,記録デバイス,精密機器,重工・機械,鉄鋼,特殊 鋼,金属,電線,自動車,エンジン,自動車部品,タイヤ,鉄道,建機,化学,繊維, ガラス,電力,ガス,建設,製薬,食品,コスメティクス,分析,団体,公的機関。 66 ( 7 ) J- PARC/ PARC/ MLF 利用者懇談会 平成 19 年 9 月 7 日に設立された J-PARC/MLF 利用者懇談会は,大強度陽子加速器施設 (J-PARC)物質・生命科学実験施設(MLF)ユーザーの相互の交流,各分野の相違を超 えた総意を形成することにより,より良い利用を推進することを目的とした利用者団体で ある。 【活動内容】 主に以下のような活動を行う予定である。 -会員相互の情報交流,施設利用・将来計画におけるユーザーの総意(要望・見解・立 案等)の取りまとめおよび J-PARC センターならびに関連諸機関への提言 -MLF ユーザーのための情報提供,および研究者・組織との交流・協力 -J-PARC 利用者協議会など J-PARC 各種委員会への中性子・ミュオン科学分野委員の 推薦 -MLF シンポジウム等,学術的会合の開催,関係諸団体,諸機関,他の学協会との交流・ 協力 【体制(H20 年 4 月段階】 会 副 長 : 福永 俊晴 会 長 : 鳥養 映子 庶 務 : 林 眞琴 会 計 : 小池 洋二 行事(渉外・交流) : 柴山 充弘,大山 研司 産 業 促 進 : 西島 和三 事務局担当者 : 林 眞琴 【会員種別・入会資格など】 (1) J-PARC/MLF を利用する外部研究者および J-PARC 内部スタッフが入会できる。 (2) 会員は,J-PARC/MLF シンポジウムをはじめとする本会の活動に参加することが できる。また,幹事の選挙権および被選挙権を有する。 (3) 一般会員は,年会費 2,000 円。 (4) 学生は学生会員として入会できる。学生会員の会費は無料。 (5) J-PARC における中性子・ミュオン科学の推進に賛意を持つ民間の企業や団体は, 協賛会員として入会できる。年会費 1 口 10,000 円。 67 ( 8 ) 県 BL の 利用料金の 利用料金 の 事例 ①成果公開利用の場合 一律2万円/h(48万円/日)の負担金を県へ支払う。1課題当たりの利用料金イメージは, 次の通り。 a. 材料構造解析装置 1) 5試料の測定(1時間利用) 2万円/時間 × 1(時間)= 2万円 2) 60試料の測定(8時間利用) 2万円/時間× 8(時間)= 16万円 b. 生命物質構造解析装置 1) 1.03 mm3,1試料の測定(1.6日利用) 48 万円/日 × 1.6(日)= 76.8 万円 ②成果非公開利用の場合 約200万円/日(負担金+利用料金(B))とした場合,1課題当たりの利用料金イメー ジは,以下の通り。 a. 材料構造解析装置 1) 5試料の測定(1時間利用) 約200万円/日 × 1/24(日)= 約8.3万円 2) 60試料の測定(8時間利用) 約200万円/日 × 8/24(日)= 約66.7万円 b. 生命物質構造解析装置 1) 1.03 mm3,1試料の測定(1.6日利用) 約 200 万円/日 × 1.6(日)= 約 320 万円 以上 68