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社 会 と 教 育 の 架け 橋 旅育 と教育 旅で育む〜家族の絆と生きる力 テージにもなります。非日常の世界で子ども かず こ ようになってきています。 き合うことで、好奇心や探究心が芽生え、知 むら た 村田 和子 また「自分らしく豊かで幸せな人生を歩ん でほしい」というのは、親の共通の願いです。 ること、学ぶことの楽しさも自然と身に付き 旅行ジャーナリスト の学びであり、対象は就学前から。そのため しかし、IT化やグローバル化により社会は ます。また、失敗から学ぶこともあるでしょう。 たび いく 「知識の習得」はもちろん、楽しみながら家 急 速 に 変 化 し て い ま す。 教 育 現 場 と 同 様、 た。しかし時代は移り、育児うつや虐待など 十数年前、赤ちゃん連れで旅に出ると聞こ えてきたのは、幼子を連れた親への批判でし 原動力になっています。 いという思いが、現在の『旅育』への大きな もの成長を育む手段として積極的に活用した の姿から、旅が学びに良いことを実感。子ど 輝かせ、多くの人と交流し笑顔になる我が子 重ねるなかで、旅先で初めてみるものに目を 一助になると考えます。さらに、旅での学び は、今の時代にこそ必要であり、学校教育の 大切さや意義を幼いうちに経験から学ぶこと とは少なくありません。本物に触れることの を置いてこそ発見できること、感じられるこ 自ら疑問を口にする機会も多く、それらと向 族の絆、人格形成面での成長を育むことに重 「どう子 どもを育 てるか?」親も試 行錯誤を 旅で子どもの生きる力を育む『 旅 育』が、 注目を集めています。主に家族旅行を通して きが置かれています。 が社会問題となるなか、 「孤立しストレスに つのが難しい子育て世代にと って、「旅は親 と触れ合う十分な時間や、気持ちの余裕をも 核家族や共働き世帯が増加し、日常で子ども 等の声や旅の写真が多く共有されています。 る」 「旅で子どもの新しい興味を発見した」 「仕事や家事から解放され、心の余裕ができ シャル・ネットワーキング・サービス)では、 を 楽 し む 方 が 増 え て い ま す。 S N S( ソ ー 知され、サービスも充実。赤ちゃん連れで旅 在、 家 族 や 周 り と の 絆 を 体 感 す る 最 高 の ス 多様な価値観に触れるなかで、自分という存 感受性などを養います。人との出会いを通じ 物」は、子どもの五感に働きかけ、創造力や じます。例えば、自然・歴史・文化など「本 よりも息子の自信や力につながっていると感 在中学一年生になりますが、旅での経験は何 息子が生後四カ月で初めて旅に行き、九歳 までに全国四十七都道府県を訪れました。現 生きる力を育む『旅育』の効能とは? 頼力」「コミュニケーション力」「知恵を育む 生きること」を目指し、生きる力を「自己信 描く世界と現実のギャップを埋め、よりよく (囲 み参照)。本 メソッ ドでは、「自 分の思い 『 親 子 の「 旅 育 」 メ ソ ッ ド 』 を 発 表 し ま し た 『旅 育』の効果 を高め るためには、 何より も親の関わり方が重要と考え、二〇一三年に 親子の旅育メソッド〜大切なのは親の関わり方 して育まれます。 は体験や思い出とともに、深く生きた知恵と 子の絆を深める場」として特別な意味をもつ 陥りやすい子育て世代の癒し」として旅が認 今なぜ 『旅育』 ? 家族旅行の変化から紐解く ITが発達し、どこでも情報が得られる便 利な時代ではありますが、実際にその場に身 1969年神奈川県生まれ。 「旅を通して生活や人生を 豊かにする」をモットーに、 各種媒体での執筆や情報 提供、講演やコンサルを 行う。 「家族deたびいく」 運営、NHKラジオ「すっ ぴん!」出演中。 12 社 会 と 教 育 の 架 け 橋 『村田和子式 親子の「旅育」メソッド』 味が広がった」という共感の声が多く寄せら るヒントを得た」 「働きかけで、子 どもの興 示すことは難しいですが、 「身近に実践でき 待も千差万別です。そのため、効果を数値で ます。子どもはそれぞれ個性があり、親の期 の自信や責任感などを育み日常へとつながり きることも多く、小さな成功体験は、子ども 区切りがある旅だからこそ、親子共に達成で やすい六点を提唱しています。時間や場所に ンスを積極的に得るために、具体的で実行し たなことを創造できること」を旅で学ぶチャ 他者を理解し協調すること、経験から学び新 力」の三つと定義。 「自分を愛し認めること、 会との繋がりや環境問題を考える内容が豊富 学や、夏休みなどに実施するキャンプも、社 企業が社会貢献活動の一環として行う工場見 けの鑑賞イベントも頻繁に開催されています。 ように工夫された解説書を配布し、子ども向 や美術館等の施設では、子どもが興味をもつ 中心となり全国で実施されています。博物館 うウォーキング等は、自治体や企業・団体が えば自然体験、伝統工芸の体験、ガイドを伴 ビスを提供するケースが多くみられます。例 象とした学び要素のある体験」と捉え、サー 『旅育』には、明確な定義はありませんが、 観光業界では一般的に「未就学〜小学生を対 観光業界の『旅育』への取り組み なると考えます。 くことは、今後『旅育』が広がるうえで鍵に 学力への効果も期待できることを啓蒙してい を実感できる時期だけに、残念でなりません。 も本格的になり、旅の体験と知識の結びつき 天体や植物、社会科の地理や歴史などの学習 家族旅行をしない家庭が増加します。理科の なる と、部活や中 学受験 の準備等で 忙しく、 ての改革も期待したいところです。高学年に 場として機能していることから、休暇につい ハードルはあがります。旅が親子の絆を育む 就学すると、旅行をするのは週末か長期休 暇 と な り、 時 間 と 費 用 の 両 面 で 家 族 旅 行 の 『旅育』の課題と今後 もと社会との接点が希薄になるなか、祖父母 然遊びの経験も豊富。核家族化が進み、子ど とは違う価値観や知識の引き出しがあり、自 また「三世代旅行」「孫旅」の流行も、『旅 育』の追い風になっています。祖父母は、親 む好機としても存在感が高まりつつあります。 おり、自主性やコミュニケーション能力を育 と離れ、子どもだけで参加するものも増えて 上で有効なツールとなっています。最近は親 る多彩な プログラ ムは、『旅育』を実 践する 気軽に参加でき、未知の世界や人と触れ合え 歳ごろまでは実体験が重要といわれており、 し相乗効果をあげ、多くの子どもたちが「自 えられます。教育現場と家庭での学びが連携 前の家庭での取り組みが大きく影響すると考 聞かれる「主体的に学び考える力」は、就学 しょう。また、達成度テストの議論でも度々 まれた「絆」や「成功体験」は、将来に渡り ます。家族旅行という楽しく心地よい場で育 という観点からもますます重要になると考え 的な場で学ぶ『旅育』は、学校教育との連携 大学入試制度を始め、教育現場で様々に議 論や改革が進むなか、家庭が中心となり実践 おわりに で人気です。脳科学的にもとくに三歳から九 と時間を共有し得られる学びや絆は、親とは 分らしく豊かで幸せな人生」を歩めるように 子どもたちの財産となり心の支えになるで 異なる貴重なものとなるに違いありません。 ……切に願い、貢献していきたいと思います。 13 れ支持を得ています。 1:旅の計画や準備に積極的に参加させる 2:役割や目標を決め、褒める 3:旅先で家族別々に過ごす時間を作る 4:「本物」に多く触れ、関心の芽を育む 5:親が楽しみながら学び、手本となる 6:思い出を形にして記憶に残す ※各項目、メソッドの詳細は、 http://allabout.co.jp/gm/gl/27563/ を参照 ■自己信頼力 自信、自立心、積極性、責任感、粘り強さ 等 ■コミュニケーション力 他者理解、共感力、社会性、協調性、表現力 等 ■知恵を育む力 体験で裏付けられた知識やノウハウに、自分の考えや他 の経験を結び付けて活用、あるいは新たな発見ができる 力。観察力、論理性、判断力、思考力、創造性、ひらめ き 等 旅育メソッドにおける「生きる力」とは?