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二酸化窒素 0.概要 - 日本中毒情報センター

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二酸化窒素 0.概要 - 日本中毒情報センター
二酸化窒素
0.概要
二 酸 化 窒 素 ( NO2) は 刺 激 臭 の あ る 気 体 で 、 水 に 比 較 的 難 溶 で あ る が 徐 々 に 反 応 し て
硝 酸 、 亜 硝 酸 と な る 。 そ の た め 、 NO2吸 入 で は 、 吸 入 直 後 は 無 症 状 で あ る が 、 数 時 間 後
に 咳 嗽 、発 熱 等 の 症 状 が 始 ま り 急 速 に 肺 水 腫 へ と 進 行 す る 。ま た 数 週 間 の 潜 伏 期 を 経 て
線 維 性 閉 塞 性 細 気 管 支 炎 ( BFO) を 発 症 す る 可 能 性 が あ る 。
日 本 で は 金 属 の 酸 洗 い ・ 防 錆 な ど 、 金 属 と 硝 酸 と の 反 応 で 発 生 す る NO2の 吸 入 事 故 が
多 く 報 告 さ れ て い る 。 一 方 海 外 で は 、 サ イ ロ 内 で 干 し 草 が 発 酵 し て 発 生 し た NO2を 吸 入
し て 起 こ る Silo filler's diseaseや 、 ア イ ス ア リ ー ナ に お け る 氷 面 再 舗 装 機 の エ ン ジ
ントラブルによる吸入事故が知られている。
ま た 、NO2は い わ ゆ る 窒 素 酸 化 物( NOx)に 属 し 、酸 性 雨 や 光 化 学 ス モ ッ グ の 原 因 と な
る環境汚染物質でもある。慢性吸入により呼吸器に影響を及ぼすことが知られている。
[毒性]
吸入
25-75ppm
軽度の呼吸困難
50-150ppm
刺激性咳嗽、息切れ、胸骨後痛、巣状間質性肺炎
150-300ppm 重 篤 な 肺 水 腫
300-500ppm 致 死 的 な 肺 水 腫
500ppm 以 上 数 分 以 内 に 死 亡
50-150ppm( 1 時 間 曝 露 ) 肺 水 腫
100ppm ( 1 時 間 曝 露 )
重 篤 な 肺 水 腫 5)
[中毒学的薬理作用]
1) 気 管 支 、 肺 胞 に 対 す る 障 害
2) 亜 硝 酸 塩 に よ る 、 メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン 血 症 と 血 管 拡 張 作 用
[症状]
吸入
症 状 は 吸 入 し た NO2 の 濃 度 と 吸 入 時 間 に 依 存 す る
1)数 時 間 の 潜 伏 期 を 経 て 咳 嗽 、 呼 吸 困 難 等 の 症 状 が 発 現 し 、 急 激 に 肺 炎 、 肺 水 腫
へ と 進 行 。 と き に 2∼ 5 週 間 の 無 症 状 期 の 後 に 再 び 咳 嗽 、 チ ア ノ ー ゼ 等 の 急 性
症状が発現し、胸部 X 線写真でびまん性の粟粒結節陰影をみるなど線維性閉塞
性 細 気 管 支 炎 (bronchiolitis fibrosa obliterans:BFO)を 発 症
2) メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン 血 症
3) 血 管 拡 張 作 用 に よ る 皮 膚 紅 潮 ・ 胸 部 う っ 血 ( chest congestion)・ 循 環 虚 脱 ・
低血圧等
4) 刺 激 性 ガ ス で あ る た め 、 結 膜 炎 や 鼻 腔 内 へ の 障 害 あ り
[治療]
・ NO2 に 曝 露 し た 可 能 性 の あ る す べ て の 患 者 は 、 後 に 重 篤 な 症 状 を 呈 す る こ と が
あ る の で 少 な く と も 24 時 間 は 医 療 機 関 で の 経 過 観 察 が 必 要 で あ る
ま た 、急 性 期( 第 1 期 )症 状 が み ら れ た 場 合 は 、曝 露 後 少 な く と も 3 週 間 は BFO
の 出 現 に 注 意 し て 経 過 を 追 う 必 要 が あ り **43)、 さ ら に 、 3 ヶ 月 後 に も 肺 機
能 の 評 価 を 行 う べ き で あ る と い う 文 献 も あ る **47)
・胸部 X 線、血液ガス分析、肺機能検査など呼吸機能の評価を行う
・細気管支・肺胞上皮の障害により肺胞腔や気道にあふれた浸出液を吸引する
・ 一 般 に 肺 水 腫 の 治 療 と 線 維 性 閉 塞 性 細 気 管 支 炎 ( BFO) の 予 防 を 目 的 と し た
ステロイドによる早期治療、二次感染の予防・治療に抗生物質の投与が行わ
れている
・メトヘモグロビン血症に対してはメチレンブルーの投与を行う
・解毒剤・拮抗剤:無し
・ 禁 忌 事 項 : NO2 は 水 と 反 応 し て 硝 酸 に な る が 、 ア ル カ リ に よ る 中 和 は 禁 忌 で あ
る
1.名称
起因物質名(一般名)
化学名:二酸化窒素
別 名 : Nitrogen dioxide
商品名:
CAS No.: 10102-44-0
化 学 式 : NO 2
2.分類コード
6− 69− 1298− 980
二酸化窒素
3.成分・組成
4.製造会社及び連絡先
5.性状・外観
・ 常 温 で 黄 色 の 液 体 ま た は 赤 褐 色 の 気 体 。 刺 激 臭 あ り 13)
・低濃度では、無色もしくはわずかに黄色で、漂白剤に似たにおいがあり、
高 濃 度 で は 、 orange-brown 色 で 、 塩 素 あ る い は ア ン モ ニ ア の よ う な 不 快 な 刺 激
が あ る **48)
[構造式]
[ 分 子 量 ] 46.01
15)
[ 比 重 ] 1.491(0℃ )
13)
[ 融 点 ] -9.3℃ 16)
[ 沸 点 ] 21.15℃ 16)
[ 蒸 気 圧 ] 400mm(80℃ )
13)
[ 蒸 気 密 度 ] 3.3g/L(21.3℃ )
16)
[粘度]
[溶解性]比較的水に難溶性であるが、徐々に水分と反応して硝酸、亜硝酸と
な る ( NO2+ H2O→ HNO3)
[液性]水溶液(硝酸)は強酸
[化学反応性]
1)
・ 徐 々 に 水 分 と 反 応 し て 硝 酸 、 亜 硝 酸 と な る ( NO2+ H2O→ HNO3)
1)
・ 気 相 で は NO2 と N2O4( 四 酸 化 二 窒 素 : NO2 の 二 量 体 で 無 色 ) と の 平 衡 状 態 に
あ り 、 低 温 度 で は N2O4 と し て 存 在 し て い る
10)
・ 体 温 ( body temperature) で は 約 30%が NO2 と し て 存 在 し て い る
3)
・ NO2 自 体 は 爆 発 性 ガ ス で は な い が 、 炭 素 、 リ ン 、 硫 黄 の 燃 焼 を 助 長 す る
・強力な酸化剤である
9)
6.用途
工業用品製造過程における酸化、拡散反応に使用
その他の発生原因
16)
7)
1) 10) 13)
1. 硝 酸 が 関 係 す る 反 応 :
硝酸・硫酸の製造、金属類の酸洗い・防錆、電気メッキ、ガス及び電気
溶接、配管作業、肥料製造、有機化学合成における硝化、木綿漂白など
2. サ イ ロ 作 業 、 ダ イ ナ マ イ ト の 爆 破 、 デ ィ ー ゼ ル エ ン ジ ン の 排 気 、 ニ ト ロ セ
ルロースの爆発、アイスアリーナの氷面再舗装機の内燃機関への酸素取り
込 み 過 剰 、 ガ ス ス ト ー ブ ( ケ ロ セ ン や LP ガ ス の 使 用 )
国 内 文 献 26 報 ( 37 症 例 )
金属と硝酸の反応
*17)-42)に お け る NO2 発 生 原 因
: 19 報 ( 25 症 例 )
金属の溶接・切断作業: 3 報(7 症例)
サ イ ロ 内 NO2 ガ ス 充 満 : 2 報 ( 3 症 例 )
不明
: 2 報(2 症例)
7.法的規制事項
なし
8.毒性
[ヒト中毒量]
・経口
最小中毒量:データなし
・吸入
25-75ppm
軽度の呼吸困難
50-150ppm
刺激性咳嗽、息切れ、胸骨後痛、巣状間質性肺炎
150-300ppm 重 篤 な 肺 水 腫
300-500ppm 致 死 的 な 肺 水 腫
500ppm 以 上 数 分 以 内 に 死 亡
50-150ppm( 1 時 間 曝 露 )
100ppm ( 1 時 間 曝 露 )
肺水腫
重篤な肺水腫
5)
TCLo:男 性 、 2ppm/4H で 気 管 ・ 気 管 支 の 構 造 的 ・ 機 能 的 変 化
TCLo:男 性 、 90ppm/40M で 咳 、 呼 吸 困 難 、 肺 水 腫
TCLo:男 性 、 6200ppb/10M で 肺 血 管 抵 抗 の 変 化
TCLo:ヒ ト 、 64ppm
13)
3)
4)
6)
・経皮:データなし
・静注:データなし
[ヒト致死量]
・経口
最小致死量:データなし
・吸入
LCLo:ヒ ト 、 200ppm/1M
15) ← 出 典 論 文 不 明
・経皮:データなし
・静注:データなし
[動物急性毒性]
吸 入 ラ ッ ト ; LC50:88ppm/4H
15)
マ ウ ス ; LC50:1000ppm/10M
15)
イ ヌ ; LCLo:123mg/m(3)/8H
15)
[その他の毒性]
刺 激 性 : 眼 刺 激 性 ( ヒ ト ): 刺 激 あ り
10)
眼 刺 激 性 ( ウ サ ギ ; 70ppm/8H): 角 膜 混 濁
10)
変 異 原 性 : 吸 入 ラ ッ ト : 30ppm/1H で DNA の 塩 基 置 換
15)
(参考)
許 容 濃 度 : 日 本 産 業 衛 生 学 会 勧 告 値 ; 時 間 荷 重 平 均 値 5ppm( 9mg/m(3))
( 提 案 年 度 1980)
ACGIH 勧 告 値 ; 短 時 間 暴 露 限 界 値 ( TLV-STEL)
時 間 荷 重 平 均 ( TLV− TWA)
5ppm(9.4mg/m(3))
3ppm( 5.6mg/m(3))
10)
10)
環 境 基 準 : 1 時 間 値 の 1 日 平 均 値 が 0.04-0.06ppm 以 下 で あ る こ と
( 環 境 基 本 法 第 16 条 第 1 項
臭 い 閾 値 : 1-3ppm
大気汚染に係る環境基準)
11)
9.中毒学的薬理作用
1)気 管 支 、 肺 胞 に 対 す る 障 害 1)
NO2は 気 道 か ら 吸 収 さ れ 粘 膜 上 の 水 分 と 接 触 し 、 徐 々 に 硝 酸 、 亜 硝 酸 と な
る ( NO2+ H2O→ HNO3) が 、 NO2が 水 に 比 較 的 難 溶 性 で あ る た め 接 触 時 間 や
接触面積の狭い上気道の障害は比較的少なく、高濃度では末梢気管支や
肺胞に強い障害を引き起こす。
また、組織障害性のフリーラジカルによる血管透過性亢進、脂質の過酸
化、肺表面活性物質の低下、コラーゲンやエラスチンの変性、二次的感
染なども機序として考えられている。
2) 亜 硝 酸 塩 に よ る メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン 血 症 と 血 管 拡 張 作 用 1)
亜硝酸が組織中のアルカリと反応して亜硝酸塩となる。亜硝酸塩は容易
に血液に吸収され、へムを直接酸化してヘモグロビンをメトヘモグロビ
ンに変える。また、亜硝酸塩がグアニレートシクラーゼを活性化し、
サ イ ク リ ッ ク GMP量 を 増 加 さ せ る こ と に よ り 血 管 拡 張 作 用 を し め す 。
10.体内動態
[吸収]
NO2 は 粘 膜 上 の 水 分 と 反 応 し て 硝 酸 や 亜 硝 酸 と な り 、 亜 硝 酸 は イ オ ン と し て
肺 か ら 速 や か に 吸 収 さ れ る 10)
[分布]
[代謝]
約 60% の 亜 硝 酸 イ オ ン が 代 謝 を 受 け 、 代 謝 物 は ア ン モ ニ ア で あ る
10)
[排泄]
40% 近 く の 亜 硝 酸 イ オ ン が 未 変 化 体 の ま ま 尿 中 に 排 泄 さ れ る
10)
11.中毒症状
[概要]
吸 入 : 症 状 は 吸 入 し た NO2 の 濃 度 と 吸 入 時 間 に 依 存 す る 。 一 般 的 に は 吸 入 後 数 時 間
の潜伏期を経て咳嗽、呼吸困難等の症状が発現し、急激に間質性肺炎、肺水
腫へと進行する。十分な管理が出来ていれば通常症状は回復するが、ときに
数週間後に再び咳嗽、チアノーゼ等が発現し線維性閉塞性細気管支炎
(bronchiolitis fibrosa obliterans:BFO)を 発 症 す る こ と が あ る 。
濃 度 と 症 状 5)
25-75ppm
軽度の呼吸困難
50-150ppm
刺激性咳嗽、息切れ、胸骨後痛、巣状間質性肺炎
150-300ppm 重 篤 な 肺 水 腫
300-500ppm 致 死 的 な 肺 水 腫
500ppm 以 上 数 分 以 内 に 死 亡
50-150ppm( 1 時 間 曝 露 ) 肺 水 腫
100ppm( 1 時 間 曝 露 )
重篤な肺水腫
症 状 の 時 間 経 過 1) 14)
第 1 期 ( first acute phase)
通 常 3∼ 30 時 間 ( と き に 72 時 間 ) の 潜 伏 期 を 経 て 、 咳 嗽 、 呼 吸 困 難 、
発熱、胸部絞扼感等が急速に出現
同時に肺胞上皮も傷害され肺水腫となる
第 2 期 ( asymptomatic period)
第 1 期 を 経 過 し た 後 、 全 く 無 症 状 の 期 間 が 2∼ 5 週 続 く
この期間は胸部 X 線写真も全く異常がみられない
第 3 期 ( second acute phase)
2∼ 6 週 目 に 再 び 発 熱 、 進 行 性 の 呼 吸 困 難 、 咳 嗽 及 び チ ア ノ ー ゼ 等 の 急 性
症 状 が 出 現 し 、 い わ ゆ る 線 維 性 閉 塞 性 細 気 管 支 炎 ( bronchiolitis fibrosa
obliterans: BFO) を 発 症 す る こ と が あ る
この第 3 期では慢性呼吸不全へ進行し多くの例が多少とも不可逆性の呼吸
機能障害、特に閉塞性障害を来すといわれている
[詳細症状]
*吸入
( 1) 循 環 器 系 症 状
亜 硝 酸 塩 の 血 管 拡 張 作 用 に よ り 、 皮 膚 の 広 範 な 紅 潮 ・ 胸 部 う っ 血 ( chest
congestion)・ 循 環 虚 脱 ・ 弱 い 頻 脈 ・ 低 血 圧 等 が 起 こ る 10)
( 2) 呼 吸 器 系 症 状
肺 水 腫 : 通 常 3∼ 30時 間 ( 時 に 72時 間 以 上 ) の 潜 伏 期 を 経 て 発 症 す る
発症初期
・笛声音の聴取
・ 血 液 ガ ス 分 析 で は 動 脈 血 酸 素 分 圧 ( PaO2) の 低 下
時間経過と共に
・湿性ラ音の聴取。咳嗽、泡沫状の喀痰、呼吸促迫、呼吸困難
・ 血 液 ガ ス 分 析 で は 呼 吸 不 全 が 進 行 し 、 肺 胞 性 低 換 気 に よ り PaCO2が 増 加
・ 胸 部 X線 所 見 で 肺 門 部 を 中 心 に 肺 野 に 広 が る 斑 状 の 細 葉 性 陰 影 の 散 布 が
現れる
・肺機能検査で、肺活量・残気量の低下、肺拡散能力の低下、死腔換気率
の 増 加 、 MEFV 曲 線 で の V50、 V25 の 低 下 が み ら れ る
国 内 文 献 26 報 ( 37 症 例 ) *17)-42)中 、
咳 嗽 : 27 症 例 ( 73.0%)、 呼 吸 困 難 : 33 症 例 ( 89.2%) で 発 症 。
そ の う ち 発 症 時 間 が 明 記 さ れ て い た も の に つ い て は 、 咳 嗽 で 33.3%、
呼 吸 困 難 で 64.7%が 曝 露 後 4 時 間 以 降 に 発 症 。
ま た 、 26 症 例 ( 70.2%) が 肺 水 腫 と 診 断 さ れ た 。
線 維 性 閉 塞 性 細 気 管 支 炎 ( BFO):
・肺水腫等の症状が一旦回復した後、数週間後に進行性の呼吸困難、咳嗽等
の 症 状 が 出 現 し BFO を 発 症 す る こ と が あ る
・胸部 X 線写真ではびまん性の粟粒結節陰影をみる
・組織学的には広範な間質のリンパ球浸潤と線維化を伴った閉塞性細気管支
炎の像で肺胞腔は多数のマクロファージで充満されている
国 内 文 献 26 報 ( 37 症 例 )
2 症 例 で BFO 発 症
1)
8)
*17)-42)中 、
*26) 39)。 発 症 時 期 は 第 15 病 日 と 第 26 病 日 。
う ち 第 15 病 日 よ り 呼 吸 機 能 が 再 度 悪 化 し た 症 例 で は 、 第 20 病 日 に
患者死亡
*26)。
また曝露後 4 ヶ月で、胸部 X 線上は異常がないにも関わらず残気量
の 明 ら か な 増 加 を み た BFO 疑 い が 1 症 例 あ る
17)
そ の 他:喘 息 や 慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 (chronic obstructive pulmonary disease: COPD)
患者においては、気管支収縮を引き起こすような化学物質に対する気道
抵抗を高める作用があり、呼吸器系症状が発現しやすくなる
**43)
**44)
( 3) 神 経 系 症 状
倦怠感、不穏、不安感、精神錯乱、頭痛、傾眠、集中力の低下等が起こる
こ と が あ る 10)
( 4) 消 化 器 系 症 状
NO2吸 入 時 に 嘔 気 、 嘔 吐 、 腹 痛 が 起 こ る こ と が あ る
( 5) 肝 症 状
窒素酸化物で黄疸が起こる
10)
8)
( 6) 泌 尿 器 系 症 状
比較的まれであるが、窒素酸化物中毒で腎障害が報告されている(おそら
く メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン 血 症 に よ る 溶 血 で 起 こ る 二 次 作 用 で あ る ) 8)
( 7) そ の 他
酸 ・ 塩 基 平 衡 : 肺 水 腫 発 症 初 期 は 呼 吸 性 ア ル カ ロ ー シ ス ( pH上 昇 )、
後 に 代 謝 性 ア シ ド ー シ ス ( pH低 下 ) へ と 進 行 す る
血 液 : 亜 硝 酸 塩 に よ る メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン 血 症 10)
眼 : 刺 激 性 が あ り 結 膜 炎 が 起 こ る 10)
鼻 : 高 濃 度 で 直 ち に 障 害 を 受 け る 8)
皮 膚 : 低 酸 素 血 症 を 発 症 し た 結 果 、 チ ア ノ ー ゼ が 起 こ る 10)
その他:発熱
*眼
強度の刺激性あり
液 体 の NO2 が 飛 入 す る と 、 角 膜 や 瞼 に 重 篤 な 傷 害 が 生 じ る
**43)
*経皮
液 体 の NO2 に 接 触 す る と 、 接 触 部 位 に 傷 害 が 生 じ る
**43)
*経口
起こる可能性は低い
液 体 の NO2 を 飲 み 込 ん だ 場 合 は 、 口 腔 咽 頭 部 に 傷 害 を 生 じ る た め 、 声 門 浮 腫 や
窒息を来す
**43)
[後遺症]
慢 性 呼 吸 不 全 1)、 慢 性 閉 塞 性 肺 疾 患 14)( 呼 吸 困 難 が 主 体 で 、 胸 部 X 線 上 は
異 常 を 認 め ず 、 肺 機 能 で は 気 管 支 拡 張 剤 に 反 応 し な い 閉 塞 パ タ ー ン 2)) な ど の
呼吸機能障害を残すことがある
[予後]
BFO 発 症 ま で 症 状 が 進 行 し た 場 合 は 、 そ の 後 慢 性 呼 吸 不 全 へ と 進 行 し 予 後 不 良
と な る こ と も あ る ( 死 亡 例 あ り ) 1)
BFO の 発 症 を み な い 場 合 は 一 般 的 に 良 好 で あ る
[相互作用]
[ 慢 性 症 状 ] 呼 吸 器 系 感 染 症 に 昜 感 染 と の 指 摘 も あ る が 不 明 12)
慢性曝露
肺機能検査:肺活量の低下を伴う肺機能低下、換気量の減少、肺コンプライア
ン ス 低 下 、 残 気 量 の 増 加 8)
症 状:労 作 性 呼 吸 困 難 、湿 性 ラ 音 、喘 鳴 や 咳 嗽 で 、肺 気 腫 の 症 状 と 類 似 す る 8)
12.治療法
[概要]
・ NO2 に 曝 露 し た 可 能 性 の あ る す べ て の 患 者 は 、 後 に 重 篤 な 症 状 を 呈 す る こ と が あ
る の で 少 な く と も 24 時 間 は 医 療 機 関 で の 経 過 観 察 が 必 要 で あ る 13)
ま た 、 急 性 期 ( 第 1 期 ) 症 状 が み ら れ た 場 合 は 、 曝 露 後 少 な く と も 3 週 間 は BFO
の 出 現 に 注 意 し て 経 過 を 追 う 必 要 が あ り **43)、 さ ら に 、 3 ヶ 月 後 に も 肺 機 能
の 評 価 を 行 う べ き で あ る と い う 文 献 も あ る **47)
・ 一 般 に 肺 水 腫 の 治 療 と BFO の 予 防 を 目 的 と し た ス テ ロ イ ド に よ る 早 期 治 療 、 二
次感染の予防・治療に抗生物質の投与が行われている
・解毒剤・拮抗剤:無し
・ 禁 忌 事 項 : NO2 は 水 と 反 応 し て 硝 酸 に な る が 、 ア ル カ リ に よ る 中 和 は 禁 忌 で あ る
*吸入の場合
( 1) 基 本 的 治 療
A. 新 鮮 な 空 気 下 に 速 や か に 移 送 。 救 助 者 は 防 護 に 努 め る
B. 呼 吸 不 全 を 来 し て い な い か チ ェ ッ ク
C. 汚 染 さ れ た 衣 服 は 脱 が せ 、 暴 露 さ れ た 皮 膚 、 眼 は 大 量 の 流 水 で 洗 う
( 2) 生 命 維 持 療 法 お よ び 対 症 療 法
A. 呼 吸 ・ 循 環 管 理 :
・ 胸 部 X線 、 血 液 ガ ス 分 析 、 肺 機 能 検 査 な ど 呼 吸 機 能 の 評 価 を 行 う
・呼吸困難、頻呼吸が強く通常の酸素投与では低酸素血症が改善しない
場 合 は 気 管 内 挿 管 し PEEPを 加 え て 人 工 呼 吸 を 行 う
1)
・細気管支・肺胞上皮の障害による浸出液が肺胞腔や気道にあふれてくる
ため、分泌物の吸引を行う必要がある
1)
B. 痙 攣 対 策 :
C. 血 圧 低 下 対 策 :
D. 肺 水 腫 対 策 :
兆候が現れたら十分な酸素投与を行う。同時にフロセミドなどの利尿薬
も投与する
1)。 し か し 利 尿 薬 に つ い て は 無 効 と い う 意 見 も あ る
11)
E. 不 整 脈 対 策 :
F. 発 熱 対 策 :
G. 代 謝 性 ア シ ド ー シ ス :
H. そ の 他 の 治 療 法 :
・不穏状態に対しては鎮静剤、モルヒネの投与
1)
・ ス テ ロ イ ド の 投 与 は 肺 水 腫 、 線 維 性 閉 塞 性 細 気 管 支 炎 ( BFO) へ の 進 行
防 止 に 有 効 と さ れ 、 早 期 大 量 投 与 ( パ ル ス 療 法 や 経 口 投 与 )、 以 後 漸 減
療法が行われる
1)
投与法:
メ チ ル プ レ ド ニ ゾ ロ ン を 125mg( 成 人 )、 2-5mg/kg( 小 児 ) を 初 回 量 静 注
す る ( と も に 30mg/kgを 超 え な い )。 必 要 に 応 じ て 繰 り 返 し 投 与
**47)
第 1病 日 に メ チ ル プ レ ド ニ ゾ ロ ン 200mgを 静 注 。 第 2病 日 よ り プ レ ド ニ ゾ ロ
ン 50mgを 経 口 投 与 し た 例 が あ る
18)
た だ し モ ル モ ッ ト を 用 い た NO2曝 露 実 験 で 、 ス テ ロ イ ド 投 与 が 肺 水 腫 を
増悪させる傾向を示し、致命率の増加も認めたとの報告もある
・二次感染の予防・治療には抗生物質の投与
2)
1)
・気管支収縮状態の患者にはアミノフィリンや気管支拡張薬の投与が勧め
られる
11)
・ 血 液 メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン : メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン 血 症 ( メ ト ヘ モ グ ロ ビ ン が 30%
以上)に対してはメチレンブルーを投与
Ⅰ.検査:細気管支や肺胞の病理・組織学的検査
( 3) 特 異 的 治 療
解毒剤・拮抗剤:なし
排泄促進方法:なし
*眼に入った場合
( 1) 基 本 的 処 置
直 ち に 大 量 の 微 温 湯 で 少 な く と も 15 分 間 以 上 洗 浄 し 、 フ ル オ レ セ イ ン 染 色
で 角 膜 の 傷 害 を 確 認 す る **43)
( 2) 生 命 維 持 療 法 お よ び 対 症 療 法
洗浄後も刺激感、疼痛、腫脹、流涙、羞明が続く場合は、眼科的診察を
受ける
( 3) 特 異 的 治 療
A. 解 毒 剤 ・ 拮 抗 剤 : な し
必要に応じて、上記吸入の場合に準じて治療する
*経皮の場合
( 1) 基 本 的 処 置
直ちに付着部分を石鹸と水で十分洗う
除去した衣類は、二重の透明なビニール袋に入れ、密封してラベルし、離れ
た 場 所 に 保 管 す る **43)
( 2) 生 命 維 持 療 法 お よ び 対 症 療 法
洗浄後も刺激感、疼痛が残るなら医師の診察必要
( 3) 特 異 的 治 療
A. 解 毒 剤 ・ 拮 抗 剤 : な し
必要に応じて、上記吸入の場合に準じて治療する
*経口の場合
( 1) 基 本 的 治 療
液 体 の NO2( 沸 点 21.15℃ ) を 経 口 摂 取 し た 場 合 は 、 口 腔 咽 頭 部 に 傷 害 を 生
じ る た め 、 催 吐 、 胃 洗 浄 は 禁 忌 で あ る **43)
( 2) 生 命 維 持 療 法 お よ び 対 症 療 法
( 3) 特 異 的 治 療 法
A. 解 毒 剤 ・ 拮 抗 剤 : な し
必要に応じて、吸入の場合に準じて治療する
13.中毒症例
(1) 吸 入
a) 典 型 例 17)
54歳 、 男 性 。 ボ イ ラ ー サ ー ビ ス セ ン タ ー で 防 錆 作 業 に 従 事 。
硝酸ソーダを主成分とする防錆剤を使用し、水洗する前のほぼ密閉状態のボイラ
ー 内 に 約 20分 間 入 っ た 。 こ の と き 、 強 い 刺 激 臭 は 感 じ た が 自 覚 症 状 は 全 く な か っ
た。
約 2時 間 後 、 軽 い 息 苦 し さ を 感 じ 出 し た 。
3時 間 後 に は 呼 吸 困 難 の 増 強 及 び 38℃ の 発 熱 、 乾 性 咳 嗽 が 出 現 し た 。
7時 間 後 に 近 医 に 緊 急 入 院 。 入 院 時 呼 吸 数 56回 /分 、 血 圧 108-60mmHg、 脈 拍 120回 /
分 、 軽 い チ ア ノ ー ゼ を 認 め 、 酸 素 吸 入 と hydrocortisone 250mgの 投 与 を 受 け た 。
翌 日 、 呼 吸 困 難 、 乾 性 咳 嗽 が 増 強 し 39℃ の 発 熱 ,乏 尿 を 伴 っ た 。 胸 部 X線 写 真 で 肺
炎 が 疑 わ れ 、 輸 液 と 抗 生 物 質 ( cephaloridin 4g/日 ) の 治 療 が 開 始 さ れ た 。
3日 後 に 大 学 病 院 に 検 査 の た め 転 入 院 し 、急 性 肺 水 腫 及 び 細 気 管 支 炎 と 診 断 さ れ て
predonine 60mg/日 投 与 が 開 始 さ れ た 。
そ の 後 臨 床 症 状 、検 査 所 見 の 改 善 と 共 に predonineは 漸 減 さ れ 、総 投 与 量 1,450mg、
投 与 日 数 83日 で 中 止 さ れ た 。
被 曝 後 4カ 月 目 に 施 行 さ れ た 呼 吸 機 能 検 査 で は 肺 活 量 、1秒 率 は 正 常 で あ っ た 。MEFV
曲 線 で V50、 V25の 軽 度 低 下 と 残 気 量 、 残 気 率 の 増 加 が み ら れ た が 、 自 覚 症 状 、 胸
部 X線 写 真 上 の 増 悪 は 認 め ら れ な か っ た 。
b) 死 亡 例
*26)
39歳 、 男 性 。 硝 酸 精 製 工 場 従 事 者 。
保 管 し て あ っ た 60%硝 酸 入 り の ポ リ 容 器 が 破 損 し 、流 出 し た 濃 硝 酸 が 外 装 の 鉄 製 ド
ラ ム 缶 と 反 応 し た 。そ の 際 多 量 の 茶 褐 色 の ガ ス が 発 生 し 、こ れ を 数 分 間 吸 入 し た 。
直後の症状は、喫煙時咽頭不快感、乾性咳嗽のみであった。
4時 間 後 、 呼 吸 困 難 、 嘔 気 が 出 現 。 そ の 後 、 急 激 な 呼 吸 困 難 、 全 身 倦 怠 感 増 悪 。
5時 間 後 に 受 診 。受 診 時 、脈 拍 114回 /分 、体 温 37.3℃ 、呼 吸 は 浅 表 性 で 促 迫 。胸 部
聴診にて全肺野に粗い湿性ラ音を聴取。チアノーゼも認められた。
入 院 時 検 査 で 、赤 血 球・白 血 球 の 増 多( 血 液 濃 縮 )と 血 小 板 減 少 、FDP増 加 、プ ロ
ト ロ ン ビ ン 時 間 延 長 と 凝 固 異 常 あ り 。 胸 部 X線 像 で 両 側 全 肺 野 に 雲 状 影 、 斑 状 影
が広汎にみられ、強い水腫性変化を呈していた。直ちに気管内挿管すると、多量
の淡血性黄色泡沫状痰を吸引し、血管透過性亢進による肺水腫と診断された。
メ チ ル プ レ ド ニ ゾ ロ ン ( 1000mg/日 )、 血 液 凝 固 異 常 に 対 し て 血 小 板 輸 血 と メ シ ル
酸ガベキサート及びヘパリン投与、抗生剤投与。持続的陽圧呼吸に高頻度ジェッ
ト換気を併用。
そ の 後 症 状 は 改 善 し 呼 吸 状 態 も 安 定 し て い た が 、 第 15病 日 頃 よ り 再 び 酸 素 化 能 が
急激に悪化した。
第 16病 日 よ り 二 酸 化 炭 素 が 蓄 積 し は じ め 、胸 部 X線 像 で は 小 斑 点 状 の 間 質 影 が 両 肺
全野に広がった。
第 17病 日 よ り メ チ ル プ レ ド ニ ゾ ロ ン の パ ル ス 療 法 が 行 わ れ た が 、 間 質 影 は 増 強 し
呼 吸 機 能 の 改 善 は み ら れ ず 第 20病 日 に 死 亡 し た 。
国 内 文 献 26 報 ( 37 症 例 ) の ま と め
*17)-42)
事故発生状況
金 属 +硝 酸 ( 混 入 事 故 )
5報
(精錬作業中)
2報
(洗浄作業中)
1報
(防錆作業中)
6報
(溶解作業中)
1報
(メッキ除去作業中)
4報
金属の切断・溶接作業中
3報
サイロ内ガス充満
2報
不明
2報
症状
第 1 期 ( first acute phase)
26 症 例 ( 70.2%) が 肺 水 腫 と 診 断 さ れ て い る
呼 吸 困 難 : 33 症 例 ( 89.2%)( 発 症 ま で の 時 間
作 業 中 ∼ 16 時 間 後 )
咳嗽
: 27 症 例 ( 73.0%)( 発 症 ま で の 時 間
作 業 中 ∼ 16 時 間 後 )
発熱
: 18 症 例 ( 48.6%)
喀 淡 /血 痰 : 10 症 例 ( 27.0%)
咽頭痛
: 7 症 例 ( 18.9%)
悪 心 /嘔 気 、 全 身 倦 怠 感 、 頭 痛 、 胸 痛 、 め ま い 、 発 汗 の 報 告 も あ り 。
その他、1 症例で低血圧の報告(既往症なし)
*21)、
血 液 濃 縮 : 2 症 例 、 播 種 性 血 管 内 凝 固 症 ( DIC): 2 症 例 、 白 血 球 増 多 :
14 症 例 、 好 中 球 増 多 : 3 症 例 、 ヘ マ ト ク リ ッ ト 値 上 昇 : 1 症 例
第 3 期 ( second acute phase)
2 症 例 で 線 維 性 閉 塞 性 細 気 管 支 炎 ( BFO) を 発 症
発 症 時 期 は 第 15 病 日 と 第 26 病 日 。
う ち 第 15 病 日 よ り 呼 吸 機 能 が 再 度 悪 化 し た 症 例 は 、 第 20 病 日 に 患 者
死亡
*26)。
また曝露後 4 ヶ月で、胸部 X 線上は異常がないにも関わらず残気量の明ら
か な 増 加 を み た BFO 疑 い が 1 症 例 あ る
17)
その他
メトヘモグロビン血症と診断された症例はなし
処置・治療
・必要に応じて酸素投与、もしくは人工呼吸管理が行われていた
・ ス テ ロ イ ド 使 用 : 30 症 例 ( 81.1%)
肺 水 腫 の 治 療 と BFO の 予 防 ・ 治 療 を 目 的 に 使 用
・ 抗 生 剤 使 用 : 9 症 例 ( 24.3%)
14.分析法
・ NO2 の 血 中 濃 度 測 定 は 、 臨 床 的 に は あ ま り 現 実 的 で は な い **43)
・ 大 気 中 の NO2 濃 度 は 、 吸 光 光 度 法 ( ナ フ チ ル エ チ レ ン ジ ア ミ ン 法 (NIOSH)、 ザ ル ツ
マ ン 法 )、 赤 外 線 吸 収 法 、 紫 外 線 吸 収 法 、 定 電 位 電 解 法 に よ っ て 定 量 す る **46)
15.その他
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ID O28100
16.作成日
20010115
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